さたんとぶう (7)

「ナンバーーワーーーン!!」
救国の英雄ミスターサタンは今回の武術大会も一番弟子であるミスターブウを負かし優勝した。

大会終了後、そんな彼の元に一人の僧侶が訪れた。
「なんだ、サインが欲しいのか?後にしろ、後に!」
サタンは訪問者が僧侶と知ると不機嫌さを隠さずに野良犬でも追い払うかの様に態度をとった。

「拙僧は蒼月紫暮と申します。この度は光覇明宗を代表してお願いをしに参りました」
蒼月紫暮と名乗った僧侶は不躾なサタンの態度に対し恭しく頭を下げた。

彼は政府高官を連れてきており、サタンは渋々ながらもその話を聞くことにした。

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蒼月紫暮が語る所によれば、日本列島の海中深くに『白面の者』という妖が封印されているという。
そして『白面の者』を倒せるのは『けものの槍』の使い手だけである。
彼の所属する光覇明宗は、『白面の者』の打倒する為に作られ、『けものの槍』を護り、使い手を育成してきたとのことだった。

「我々は伝承候補者を育成してまいりましたが、いずれも伝承者足りえませんでした。そこであのミスターサタン殿ならもしやと思い、協力を仰ぎに参った訳です」

蒼月紫暮は付け加える。

「通常、外部からの伝承者となると反対する者もおりましょうが、ミスターサタン殿ならば誰も文句を言わないでしょう。なにとぞ協力をお願いします」

そう言って頭を下げた。

サタンは今のご時世に妖怪も無いだろうと耳糞をほじりながら聞いていた。

そして存在しないものを適当に追い払って、感謝されるのも悪くないと思った。

耳糞をほじっていた指を止め、それに息を吹きかけ払うと、咳払いを一つした。

「そこまで頼まれた以上は仕方がない。このミスターサタン様がその化物を退治してやろう」

豪快に笑いながらサタンは蒼月紫暮の頼みごとを受け入れた。

ミスターサタンはその一番弟子であるミスターブウと共に案内されるままに蒼月紫暮について行った。

飛行機に乗り数時間。さらにそこから車で二時間ほどの場所だった。

「ここです」

蒼月紫暮に案内された場所は、東京の郊外みかど市。そこにある古寺の蔵の前だった。

蒼月紫暮は蔵を開け、その中にある地面に作られた扉を指さす。

「この戸を開けられることが伝承者への試練の一つです」

サタンにそれだけを言うと、試してみてくださいと言わんばかりであった。

ミスター・サタンはローブを脱ぎ棄てると、

「はっはっはっ!!そこでこのミスター・サタンが開けるさまを見ているがよい」

「はぁああああ~~~~!!」そう言って気合を入れると、サタンは取っ手に手をかけた。

そして中腰となり、「ぐぬぬぬぬ~~~…!!」力んだ声を出すが扉は全く動かない。

「ふぅ……」

取っ手から手を離したミスター・サタンは深く息を吐いた。

「……やはりミスター・サタン殿でも無理でしたか」

蒼月紫暮は諦めた様な声を出した。

「な、なにを言っておる!この程度のものはわたしが開けるまでも無い事が解ったから手を離したのだ!!」

「な、なんと!!他にも開けられる者が居るとでも………」

サタンの宣言を聞き、蒼月紫暮は驚きを隠さなかった。

「こんなのはわたしの一番弟子でも十分だ」

サタンはそう言うとミスター・ブウに歩み寄り、耳元で囁いた。

「ブウさん、お願いします。あの戸を開けてください」

それを聞きブウはうなずく。

「いいぞ。開けてやる」

ブウはそう言って扉に歩み寄ると軽々とそれを開け、勢いのまま扉を引きちぎった。

いいね、ぶう
期待

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