【ケモノ】ナイン・テイル【風俗】(128)
獣人世界の娼館にて起きる、9人の姫達による物語です。
酷評はお控えください。
気楽に読んでいただければそれで。
第一話『金と銅貨のワルツ』をお届けします。
登場ケモノは姫が熟女のキツネ。相手が柴犬の青年。
内容に一部、アナル描写を含みます。
長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいました!
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです(正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きやエロシーンにおける表現等、これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じています。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのような感情に浸れたのか、それは人それぞれだと思います。
少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう!」という気持ちになってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよろしくお願いします!ではこれにて。
皆さんお疲れ様でした!
【 1 】
後悔が無いという訳ではない――否、レェスはこの後に及んでもなお悩んでいる。
送迎の馬車(ブルーム)に揺られて街の遊郭へ向かおうとしているその最中でさえあっても、レェスの心はなお葛藤を続けていた。
伸びた鼻頭(ノズル)と鋭角に立った大きな耳、そして茶の毛並みもふくよかに外へ丸まった大きな尾のレェスは、世間一般では犬狼型に分類される獣人である。
今年の四月――晴れて成人し親元を離れた彼は、故郷より遠く離れた帝都の街中に居た。大概の若者達がそうであるように、田舎暮らしで華の時間を浪費してしまうことを惜しんだレェスは、「自分試し」などという説得力のかけらもない理由をつけて離郷を果たしたのだ。
そんな世間知らずの田舎者にとって都会の風はそれなりに強く冷たいものではあったが、それでも日々そこで感じる未知の世界はレェスの愚かな独立心を励ましてやまなかった。自分は生涯をここで生き、そしてここで死ぬのだと、もはや使命感にも似た感動(かんちがい)を胸に抱いたほどである。
しかしながらそんな生活も半年が過ぎると途端にその光(いろ)を失っていった。
せわしない都会の時間(ながれ)にも慣れ、仕事も憶えてサボりの要領を得てくると、途端にレェスは脱力した。
このままでいいのか? 結局は、ここでも自分はつまらない仕事に時間を浪費していくばかりなのではないのか? ――朝目覚めると、いつもそんなことを自問した。……しかしながらそれも「哲学」などといった鹿爪らしい命題ではなく、単に仕事をサボりたいが故に毎朝起き上る、自堕落で甘えた妄想ではあるのだが。
とはいえしかし。それに気付けぬレェスにとってのそれは、今の自分を崩壊せしめぬほどに重要な問題であったのだ。
しかしながら若者ゆえの浅はかで計る問題のこと、その解決策は実にあっさりと彼の中で紡ぎだされた。
『 そうだ、彼女を作ろう! 』
要は寂しかった訳である。
都会暮らしに慣れて余裕が出てくると、途端に独り身が沁みた。しかしながら、望郷や人恋しさを認めてしまうのは、少年のちっぽけなプライドが許さない。
ゆえに遠回りに自分探しなどを考えさせては、その寂しさを紛らわせるパートナー探しを理想(ハードボイルド)の自分に認めさせたという訳であった。
そう結論づくとにわかにレェスの生活は活気を取り戻す。
まずは職場において、そんな運命の相手がいないかどうかを検討した。
レェスの通うレンガ工場は街でも一番の規模を持つ老舗で、工場内には常に50人以上の人足がいた。
しかしながらそこの働き手達は全てが男であり、しかもそのどれもが中高年の世代という有り様。唯一の若衆はレェスただ一人だけである。
ならば事務職には? ――と考え、経理を始めとする事務所や営業もしらみつぶしに探してはみたが、どれも似たり寄ったり。そこにおける数少ない女達もまた、「とうの立った」おばちゃん達ばかりと、ロマンスの予感は微塵も感じられなかった。
そうして危機感を募らせるうちに、最初は単なる『寂しがり(ホームシック)』であったはずの心の隙間は、次第に『強迫観念』へと変わっていった。
「このままでは自己が崩壊する」――若者特有の陳腐で無根拠な思い込みではあるのだがしかし、等の本人であるところのレェスにとっては重大な問題である。
それを苦悶する生活に重いストレスを感じ始めた彼は、日に日に疲弊していった。
毛並みは艶を無くし、耳と尾は常に垂れ、鼻は乾き視線も俯きがちとなった。そんな傍目からからも見て取れるレェスの疲弊ぶりを見かねて、彼の雇い主でもあるところの工場長がついにレェスへと声を掛ける。
そこにて、初めてレェスは己の悩みを他人へと打ち明けたのであった。
レェスの話を終始無言で聞いていた工場長ではあったが、その時々で笑いを堪えかねては何度も咳払いをした。他人のそんな青臭さがなんともこそばゆいのだ。
そして全ての話を聞き終えるや、
『 レェス。お前さんは童貞かい? 』
そんなことをレェスに問いただした。
その質問に慌てふためき、はたまたどうにか無頼な自分を取り繕おうとしたもののそこは経験の差――緩急織り交ぜた工場長の話術に翻弄され、たちどころにレェスは『一八歳(こども)の自分』へと丸裸にされてしまった。
そうなると素直なもので、レェスは率直に今の不安と問題解決の糸口を工場長に求めた。
そんな折、彼から返された返事(こたえ)こそが―――
『 一度でいいから女でも抱いてみろ。もしかしたら考え方が変わるかもしれない 』
そんな中身の有るような無いような、なんとも無責任な答えであった。
正直その時のレェスも、そんな工場長の言葉に何一つ琴線を震わせられる事が無かったものだから、ただ「はぁ」と空返事を返しただけであったが――事件はそれから4日後に起きた。
いつものように仕事を終えたレェスは件の工場長から呼び止められる。
そして一枚のカードを手渡されたと思うと、
『 明日の休みにこの店へ行け。役所前に迎えの馬車が来ている筈だから、それの御者に声を掛ければあとは万事、向こうがよろしくやってくれる 』
工場長はそう言って武骨な笑みを見せた。それこそは、とある娼館への招待状であった。
代金は自分で工面するようにと言われた。金貨一枚分であるそうな。言うまでもなく大金である。
しかしながら初めての風俗というシチュエーションに発奮してしまったレェスには、そんな金額の高低など気にはならなくなっていた。その時はただただ緊張し、そして胸ときめかせた。
自室に帰ってからも、食事すら忘れて貰った名刺を眺めて過ごす。
普段の生活において目にしたことすら無いほど奇麗に精製された紙面に繊維の屑などは一本として見当たらない。麦の穂のよう、かすかに金色を含んだ色合いのカードには、達筆の書体で『Nine・Tail(九尾娘)』と店名が印刷されており、さらにはその隣にレェスの名前が「様」を付けて書かれていた。
なんどもそれを見つめ、さらには匂いなど嗅いだりしてはレェスは妄想を膨らませる。
いったいこの場所で何をするものなのだろう?
それこそ己の持つありとあらゆる知識を動員して淫靡な妄想にふけろうと考えるも――結局それらは何一つ実体を持たず、ただ行き場のない情動となって胸を焦がすばかりであった。
そこにおいてようやくレェスは、自分が何も知らない「子供」であったことを自覚する。
思えば女の子と接触を持ったことなどは、田舎に居た時からなかった。
もし故郷において齢相応の相手に巡り合えていたのならば、自分はこんな都会に出ることもなかったのではないか、などと妄想する。
平凡ではあるものの、つましく楽しい毎日を生涯の伴侶と送り、家業の酪農に精を出すのだ。……そんな妄想の中の自分に、レェスは思わぬ寂しさを感じて大きく鼻をすすった。
傍から見れば「何を言うか」とツッコミたくもなる。況やまだ19の子供が、だ。
そう思うのならばすぐにでも故郷に戻って家業でも婚活でも、好きにすれば良いのだろうがとかくこの年代の若者は、何かというと破滅的な方向にばかり未来を考えては悲観して、その主役であるところの自分に陶酔して過ごすものなのであろう。
閑話休題。
そうまで考えながら明日の日を待ち望む傍ら、とはいえ今回の初風俗を素直に受け入れられぬ想いもあった。
それこそは今日のトラブルにいたる元凶ともなったその、ちっぽけな『プライド』に他ならない。
「これは……男のするべきことなんだろうか?」
寂しいだ破滅だと散々のたまっておきながら、この期に及んでレェスは考え込んでしまった。
風俗――すなわちは『女を金で買う』という行為を思い悩んでしまった訳である。
些細な疑念であったはずのそれも、そう思い込むと途端に心の中を占める割合を大きくしていった。
とはいえしかし、風俗にも行きたい――良心と本能、プライドとスケベ心との狭間でその夜、レェスは眠れぬまま煩悶し続けるのであった。
そして翌日の夕刻、彼は約束の場所である役所前に―――居た。
結局はスケベ心が勝った。とはいえしかし、それに心が傾いたのは本当に僅かな差異に他ならない。事実いまも、胸の内では葛藤が続いている。そんな今の状況はむしろ、寂しさに打ちひしがれていた時よりも激しく心を乱していた。
斯様にして情緒不安定なレェスへと、
『 レェス様、でいらっしゃいますか? 』
何者か声が掛けられた。高く透き通った、一聴だにしたならば少女のものかと思わん声音である。
それに驚いて振り返ればそこには、テールコートの正装に身を包んだ赤毛猿と思しき獣人の少年が一人。年の頃は10代――否、レェスの腰元にようやく頭が届くといった様子の容姿からは、その年齢も一桁台と思わんばかりである。
しかしながら僅かに胸を張り背筋を正したその立ち居は、自然な振る舞いでありながらも慇懃で折り目正しく、年端もいかない少年ながらも彼の「芯の強さ」をレェスへと憶えさせた。
とはいえその「強さ」もけっして腕力や、権力を背景にした脅しじみたものではない。
いうなればそれは、この少年が持つ自己への誇りと自信に他ならないのだろう。
口にはせずとも彼が、己の仕事に気高いプライドと固い意志とを以て挑んでいることがはっきりと見て取れた。まだ、この少年が何者か聞いてもいないにも拘わらずである。
そんな歳不相応に落ち着いた雰囲気に包まれて、混乱の極みにあったレェスも沈静化する。
『 レェス様でいらっしゃいますか? 』
そして再度の少年からの問いに、ようやく我に返ったレェスは大きく頷くのであった。
『 お待たせいたしました。私は、「Nine・Tail」からの使いの者で、クウと申します。本日はレェス様をお迎えにあがりました。どうぞこちらへ 』
渡されたレェスの名刺を確認して一礼をすると、少年クウは泰然自若とした振る舞いで半身を開きレェスへと道をあける。そうして誘うよう右手を泳がせたその先には、黒塗りの馬車が一台停められているのだった。
そんな馬車の壮観にレェスは思わず息を飲む。
自分の身の丈ほどの車輪を四環搭載し、さらには楕円の円蓋を被せた粋な造りのそれは見るからに優雅で美しい。
さらにはその中に誘われて、今度は息を止めた。
赤を基調に向かい合うように設置されたソファは質素な造りながらも造作が実に細やかで、背もたれに施された刺繍ひとつをとっても細部まで実に手が込んでいた。さらにはその手触り、そしてはたまた硬すぎず柔らかすぎない座り心地からは相当にこれが高価なものだということを貧民のレェスにすら実感させる。
それら自分の日常からは完全にかけ離れた、別世界の物に触れるということにレェスは躊躇いすら覚えずにはいられない。
それらに比べて今日の自分はといえば、一張羅のジャケットにハンチング帽。シャツとパンツにはそれなりの物を身にまとっては来たが、それでも目の前の馬車やそれの御者たるクウのそれに比べれば、月とすっぽんほどに今の自分は滑稽に思えた。
そうしてそれらに圧倒されるまま馬車の中に閉じ込められると、クウは外套(マント)を羽織り馬車を発進させる。
かくして運命の車輪は動きだしてしまった。
後悔が無いという訳ではない――否、レェスはこの後に及んでもなお悩んでいる。
なぜなら自分は今、街の遊郭へと向かおうとしているのだから。
【 2 】
目的地である娼館『Nine・Tail』は、遊郭街の外れにあった。
入口に近い通りには原色を散りばめた派手な看板の、一目でそれと判る店が多かったのに比べ、件のNine・Tailがある一角は一見したならば高級住宅街かと見紛わんばかりに閑静で趣のある建物が並ぶ通りである。
そしてその中の一つである、一際大きい洋館が今居る店であった。
入店し待合室に通されたレェスは、緊張から味の判らぬ紅茶に舌を焼いていた。
室内の壁面に備え付けられたソファーはコの字を描くようにして設置されており、その前には小型のテーブルが個別に何基も備え付けられていた。その上にはそれぞれ重厚なガラスの灰皿とライターとが置かれ、そんな自分の机そこにはさらに紅茶とおしぼりがある。
とりあえずここで待つように指示されたレェスは、緊張から何度も部屋の中を見渡しては、ここに至るまでの経緯を思い出すのであった。
娼館には到底見えない荘厳な屋敷に案内されるや、入店と同時に玄関ホールのロビーカウンターにて『入館料』と称した金銭の提示を要求された。それに対してレェスも虎の子の金貨一枚を支払うが、クウはそれを受け取ったかと思うと銀貨二枚をレェスへと返してくるのであった。
料金は金貨一枚分と聞かされていたレェスだけに、これには大いに困惑した。そんなレェスの混乱を察しクウは、『その残りはお相手を務める給仕にお渡しください』と笑顔で諭してくれたのであった。
どうやらこの手の店はまず店側に『入館料』を支払い、さらには相手となる娼婦に残りの金額を支払うという仕組みらしい。なんとも困惑する。
「早まったかなぁ……金貨一枚分は高いよなぁ」
呟き、手の中で握りっぱなしであった銀貨二枚を見下ろす。この金とて、工場に勤め始めてから今日に至るまでに貯めたレェスの血肉のような銭である。それを手元に形の残らぬこのような遊行に使ってしまうことへレェスはなんとも強い抵抗を感じていた。
――これだけあったらコートが買えた……ブーツだって買えるし、飯だって好きなものが食える。
そう考えだすとどんどん思考は所帯じみて、いつもの妄想も現実味を帯びてくる。
――チョコだって食える。肉だって食える。パンだって好きなだけ。フルーツだってそりゃあもう。大判コロッケもいい。いくらどぶ漬けか。さんま焼きだっていいぞ、そこに生ゆば刺しなどつけるか。岩のり250円も渋いな……。
そうしてすっかり現実逃避をして自分の妄想(せかい)に入るレェスへと、
『お待たせいしました、レェス様。ご案内いたします』
「ッ!? こ、こっちもうな丼ください!」
『――はい?』
案内係の存在に気付けずにいたレェスは、その突如の声に思わず両肩を跳ね上がらせた。
『いかがなさいましたか、レェス様?』
「え? あ……い、いや何でも。ははは」
怪訝な案内役の表情に我へと返ったレェスは、つい自分の奇行を笑ってごまかす。同時に、その瞬間が訪れたことを瞬時に理解する。それゆえにさらに混乱する。
――ついに……ついに女の子と……!
心臓は鼓楽器よろしくに、その音が喉から漏れているのではないかと心配するほど強く胸を叩いている。
目の前を歩く案内役の背に、レェスはこれから会うであろう嬢を妄想した。
――猫型の華奢な子が来るんだろうか? それとも白兎の純情そうな子とか? いやいや、もしかしたらオイラと同じ犬の娘なんてことも……!
様々な美少女達が案内役(エンコート)の背に浮かび上がっては消える。
やがて目の前を行くその背が止まった。
『こちらからは御一人でどうか。――どうぞお楽しみくださいませ』
体を開いてレェスの前へ道をあけると、案内役は深々と頭を垂れた。
そんな目の前には巨大なカーテンが壁のように通路を塞いでいる。
いったいこれからどう行動したらいいものだろうと困惑するレェスではあったが、目の前のカーテンそこにスリットが通っていることを発見した。
どうやら二枚を重ね合わせてある造りらしい。それを前に一歩踏み出すと、レェスはその隙間へと体を進入させた。
シルクのカーテンの質感それを鼻先に感じながらそこを潜り切ったその先には―――
.
「はじめまして。お待ちしておりました」
柔らかく、そして落ち着いた声。
その瞬間、レェスは金色(こんじき)の風を見た。斜陽に輝く夕暮れの稲穂畑ような紅(あか)と黄金の煌めきが目の前を走ったように思えたのだ。
しかしそれが目の前にいた彼女の毛並みから連想した錯覚であることをすぐに理解して我に返る。
目の前には、
「今宵、あなたのお相手を務めさせていただきます『チトノ』と申します。本日はありがとうございます」
狐型の女性が一人、レェスへと微笑んでいるのであった。
光を受けると深い赤の色合いを反射(かえ)すその金色の毛並みは、どこまでも強く深い黄金の色合いをレェスに印象付けた。
高く通って上を向いた鼻頭と切れ長の瞳。しかしながら、黒く潤んでは静夜の湖面のよう光彩を満たした大きな瞳そこからは、細目の持つ冷たい印象は無い。
ウェーブ掛った金の髪を額から後ろへ流した髪型も、そこから一筋垂れた前髪がそんな瞳の顔(おもて)にかかり、それが彼女の気怠さとそして得も言えぬ妖艶さを演出しているようである。
「…………」
そんな彼女を前にしばしレェスは言葉を失う。
しかしながらそれは、けっして目の前のチトノに見惚れているからではない。むしろそれは――『困惑』あった。
――え……? なんでこんな人がいるの?
その放心の理由をつけるならばそれは、チトノが自分の想像していた『嬢』とは大きくかけ離れた容姿であったからだ。
今のこの瞬間に至るまでレェスが思い描いていた風俗嬢とは、どれも若く華奢な、あくまで『同年代』の少女たちであった。しかしながら今目の前に居るチトノは、明らかに自分よりも年配のように思える。
体つきも然りだ。大胆に露わとされたドレスの胸元そこには、襟元の淵から零れてしまうのではないかと思わんばかりの乳房が谷間もみっちりとその肉を凝縮している。
妖艶にくびれた腰元のラインも臀部とのメリハリがきいており、ふくよかな彼女のヒップラインがより大きくそして艶めかしくその存在感をアピールしているようである。
斯様にして男好きしそうな体つきの彼女ではあるがしかし……それでも、期待していた風俗嬢象からかけ離れたチトノの存在は、ただただ今のレェスを戸惑わせるばかりであった。
そんなレェスの心情を鋭敏に察知すると、
「もー、なぁに? こんなおばさんでがっかりした?」
チトノは微笑みつつもしかし、チクリとレェスの図星を突く。
その声に再び我に返されるレェス。
「あ、いえ、そ、そんなッ」
思わぬチトノからのそれに、さらに慌てふためいて言葉を重ねようとするもそれが泥沼。可哀相なほどに慌てふためいたレェスの反応はしかし、如実にチトノの言葉を肯定してしまうのであった。
「ふふ。いいのよ、気にしないで。たしかに若くはないもの」
そんなレェスにコロコロと笑って見せるチトノ。そんな彼女の仕草に、思わずレェスはどきりとする。
純粋に今のチトノを可愛いと思ったのだ。
そう思うと同時に、いま自分が娼館へと来ていることもまた思い出す。そして目の前に居る彼女こそが、今宵自分の相手を務めるパートナーなのだと実感した瞬間、
「ん? あら、嬉し♪」
「――え? あ……うわぁー!」
レェスの体が反応した。
股間は傍目からも判るほどに怒張して、大きくパンツの前面を突き上げて張らすのであった。
「い、いやコレはッ……その!」
途端に股間を抑えて腰を引くレェスではあったが、そんな彼にあきれることなく微笑んでチトノはその腕を取る。
「遠慮しなくていいのよ? ここは『そういうこと』をする場所なんだから。むしろ私なんかに反応してくれて嬉しいわ」
言いながらレェスの頬へと愛情たっぷりに唇を押し付ける。そんな異性(チトノ)からのファーストキスに、完全にレェスは熱しあがって――そして脱力した。
「さぁ、はやくお部屋に行きましょ♪」
あとは為されるがまま、レェスはチトノに腕を引かれすぐ傍らのドアを開く。
自分の身長の倍はあろうかと思われる重厚な装飾のドアをくぐると――目の前に広がった室内の様子にレェスは息を飲んだ。
体を反らせて見上げるほどに高い天井と、足音を完全に消してしまうほどの柔らかな絨毯の足もと。猫足の椅子やテーブルといった調度も、そのどれもが高価そうに見える。
そんな部屋の中で一際レェスの目を引いたのが、その中央に設置されたキングサイズのベッドであった。
シルクのカーテンを弛ませた天蓋付きのそれは、まるで絵本の中に出てくる姫や王族が使用するかのようなそれだ。そしてそんなベッドの淵にレェスとチトノは腰掛ける。
「そういえばまだ名前聞いてなかったね? 君のお名前は?」
「あ、あの……レェス、です」
「『栗毛(レェス)』君、か。ふふ、君にぴったりな名前だね♪」
まるで恋人同士の会話のよう微笑むチトノではあるがしかし、その行動は徐々に妖艶さを増していく。
さりげなくレェスの腿の上に這わされた掌が――そっと股間まで伸びた。
「ッ! う、うわ……!」
パンツ越しに、勃起していた陰茎の先端を包み込まれる感触にレェスは上ずった声を上げる。
そしてその反応を楽しむよう、チトノは手首を返し、そしてさらに回しては手の平の中央(なか)にある先端をこねる。
「あ、あぁ……もうッ」
今日までの禁欲生活ゆえかそれだけで達してしまいそうになるレェス。そんな彼の反応を前に、チトノは動きを止めてそこから手を離した。
「えぇ……?」
そんな突然の『おあずけ』に不安げな視線を向けてくるレェスにチトノも苦笑いに微笑む。
「このまま続けちゃったら召し物を汚しちゃうよ? ちゃんと準備しよ。そのあとは……たっぷりね」
顔を寄せレェスの耳元でそう囁くと、チトノは愛おしげにその耳介を甘噛みするのであった。
そこからは職業故か、実に手際良く準備をこなすチトノ。いつの間にかレェスのジャケットを剥ぎ取ると、瞬く間にその下のシャツやパンツもまた脱がし、たちどころに彼を丸裸にしてしまうのであった。
「わぁ♪ 可愛い顔してるのに、こっちはすごい『男の子』なんだから……」
そうして露わになったレェスの陰茎を改めて前にし、細めた瞳に期待を輝かせるチトノ。
興奮からくる緊張に刺激され続けた茎の先端からは夥しい量の線液が溢れ、濡れて赤剥けた先細りの陰茎それを夏の果実のようにぬめらせ輝かせている。
それ自身が放つ、潮の香りにも似たほのかに塩気を含む茎の臭気に、チトノもまた眠たげに瞼を細める。斯様なレェスの雄の香に、彼女も発情を促されているようであった。
「じゃ、私も準備するから……ちょっと待っててね」
言いながらレェスの茎から視線を振りきると、チトノは背筋を伸ばしドレスの背後にあるジッパーへと左腕をひねるようにして手を伸ばす。
ゆっくりとそれを降ろすと、胸部で形を作っていたドレスの胸元が崩れ、重力に引かれた乳房が水風船のような質感で下に降りる。
そんな乳房両方を、残った右腕で抱えるようにしてドレスを脱ぐチトノ。肩口が無く、胸部で引き締めることにより形を維持する構造のドレスは、背のジッパーを解くことでいとも容易く、さながら輪でもくぐるかのよう足元までストンと落ちて脱げた。
そうして目の前には裸体に近いチトノがあらわれる。
豊満な胸元を両腕で抱えるように隠し、股間にはレースを施したシルクのショーツと、同じく白を基調としたストッキングとガーターベルト。ドレス姿であった頃には黄金一色に思えた彼女の毛並みが、胸元から股間に掛けては雪原のような眩い白に変わっている様子にレェスは目眩を覚える。
美しいと思った。全てが想像を越えていた。ゆえに目の前のチトノにどう対処すべきか悩んだ脳は激しく混乱し、さらには発奮してはそれらが目眩となってレェスを惑わせた。
美しいと思った。全てが想像を越えていた。ゆえに目の前のチトノにどう対処すべきか悩んだ脳は激しく混乱し、さらには発奮してはそれらが目眩となってレェスを惑わせた。
そうして見つめる中、チトノは流し目でレェスを捉えたままこちらへと背を向ける。大きく、そしてふくよかに毛並みの整った木の葉型の尻尾が、優雅に左右へ揺れる様に目を奪われる。
やがて上体を前へ倒しレェスの前へ尻を突き出すと――チトノは両腰に手を添え、ゆっくりショーツを脱ぎすのであった。
「ん……ん、ッ……」
固唾を飲み、その光景にもはや呼吸すら忘れてレェスは見入る。
性の知識など何も知らないレェスであっても、異性の股間そこに対する執着は本能で備わっている。――むしろそういった知識が無いからこそ、なおさらに妄想をかき立てられ興奮を覚えたのかもしれない。
半ばまで脱ぎ下ろすと、レェスの前にチトノの臀部が露わとなった。
乳房同様に豊満な臀部の両房は、裏腿の上に乗り重なってくっきりとその形良い丸みのラインを浮き上がらせている。その眺めはまさに『尻』、そしてまさに『女』だ。華奢な若い世代には無い、匂い立つような艶気(いろけ)と体温とを感じさせずにはいられない体をチトノはしていた。
そんな豊満な臀部の両房に挟みこまれたクロッチ(股間部)が、もうショーツが大半まで下着が降ろされているにもかかわらずそこに貼りついて、肝心の部分を隠している。
やがては腿までショーツのサイドを降ろすとついにはそれもぺろりと剥がれ始める。
その様にレェスの興奮は最高潮にまで熱し上げられた。
そして完全にそれが剥がれ、ついに目の前にチトノの全てがさらけ出されたと思われたその瞬間――
「ん? ん、んん?」
そこが露わになるのと間髪入れず、彼女の尻尾の尖端がそこをよぎる。
完全にショーツそれは剥ぎ取られたというのに、掃くように目の前を左右する尻尾のせいで未だにチトノの秘所そこをレェスは確認することが出来ない。
――もうちょっと……あともうちょっとなのに!
それを凝視するがあまり、ついには体が前に出る。
鼻先を立てて瞼を細め、ちらつく尻尾のさらに奥底を覗き込もうとしたその瞬間であった。
「ん~……、んッ?」
そんなレェスの後ろ頭を、突如として何者かの腕(かいな)が絡め取った。
さらにはそれに引き寄せられて――
「んむ? んんッ? んん~ッ!」
レェスはチトノの肉付き深い臀部の谷間へと、深々と鼻先を突き立てるのであった。
「捕まえたー♪ この覗き屋さんめ♪」
そうして掛けられるチトノの声。埋もれる尻の谷間から見上げるそこには、こんな自分へと振り返っているチトノの妖艶な視線があった。そして同時に、いま自分の首根を絡み取っている物が彼女の尻尾であることも理解する。
「たっぷり見ていいからね。匂いもたくさん嗅いじゃって♪」
今まで焦らしてきた行動とは一変して今度は己からレェスの鼻先に尻根を押し付けるチトノ。さらには首にまわした尻尾にも力を込めて、よりいっそうにレェスの頭を抱き寄せる。
一方のレェスはたまったものではない。
「見ろ」とは言われたものの、鼻頭(マズル)がすっぽりと尻の中に埋まってしまったそこからはチトノの背の峰しか望めない。
しかし一番の問題は、チトノの秘所そこにて呼吸器を塞がれていることと――さらにはそこから感じられる、彼女の芳しいまでの雌臭それであった。
唇の先にはおそらくは膣部と思わしき粘液の感触が僅かにある。おそらくはチトノ自身も相当に興奮しているであろう故か、そこから溢れてくる彼女の愛液が鼻下を伝って、レェスの口中に直接流れ込んできている。
粘性のその味は塩気を含みつつも、ほのかに酸味と苦みも織り交ぜたような複雑な味であった。とはいえ尿などといった不快な臭気や舌触りは感じられない。
しかしながら一番の問題と思われることは、鼻先に当たる器官のこと。
膣のある口先よりも僅かに上に位置するそこは、何物でもない『肛門』それであろう感触とそして匂いとがあった。言うまでもなく排泄に使われるその器官は、性知識においてまったく無知であるレェスであっても一嗅ぎでそれと判る存在感を醸している。
そんな器官に鼻先を押し付けられているのだ。本来ならば嫌悪を抱くであろうはずがしかし――
「ん、んん………んむんむ」
「きゃあッ? なぁに、そこー?」
押し付けられるチトノの臀部を両手でワシ掴むとレェスはよりいっそう鼻先を押し付け、さらには伸ばした舌先にて肛門そこへの愛撫を始めたのであった。
正体の判らぬ膣よりも、なまじ馴染みのある肛門の方がよりリアルに性的なイメージをレェスに働かせたのだ。
鼻孔には苦みばしった独特の匂いが充満している。言うまでもなくそれは胆汁のそれであり、悪く言うのならば糞汁でもある匂いではあるのだが、
「ん、ん、んむ……」
この状況とそしてその相手が誰でもないチトノとあってはむしろ、そんな器官に禁忌感(タブー)すら強く孕んだ興奮を憶えてしまうのである。
「もー。初めてのエッチでお尻の穴を舐めまくっちゃうなんてヘンタイすぎるよー? いけない子なんだから」
そう言ってレェスを諭すチトノであはるが、上気して熱しあがった表情からはその言葉通りの嫌悪感は微塵として見られない。
むしろそれをさらに望むかのよう、
「そんな悪い子にはお仕置きしちゃうんだから♡」
よりいっそうにチトノは自分のアナルそれをレェスに押し付けて、その顔を臀部の谷間へと埋めさせるのであった。
それにより完全にレェスの呼吸器がふさがれる。その段に至ってさすがに我へ返り慌て始めるレェスではあるが、いかんせん発音器である口元も塞がれている状況とあっては、それを声にして伝えることも叶わない。
――く、苦しい……チトノさんッ、窒息しちゃうよ!
臀部をワシ掴み、必死にマズルを抜き取ろうと抗うものの、
「あん、すごいよぉレェス君ッ。もっとしてぇ!」
それを愛撫に感じてしまっているチトノは、そんなレェスの緊急事態に気付くことなく一人ヒートアップしていく。
そして、
「すごいぃ! 初めてなのにレェス君にイカされちゃう。レェス君、レェス君ッ! ――ん、んんぅ……!」
よりいっそうに首根へまわした尻尾に力を込めて、尻全体でレェスを抱きしめた瞬間――チトノの絶頂と共にレェスからも力が抜ける。
「はぁはぁ……ふぅ。上手じゃない……すごく良かったよ、レェス君♡」
「………」
「――ん? レェス君?」
いざ我に返り、相手であるはずのレェスから何の反応も無いことにいぶかしむチトノ。
そうして恐る恐る振り返るそこに、すでに顔のほとんどを臀部の中に飲み挟まれて白目をむいているレェスを発見し、
「きゃー、またやっちゃった! レェス君ッ、レェスくーん!」
チトノは慌て尻尾に込めていた力を解くと、抱き上げたレェスの頬を叩いて彼を解放するのであった。
.
.
【 3 】
気怠さを憶えて覚醒すると――レェスは天井と思しきそこをぼやけた視線で見上げ、そしてため息をついた。
「……夢?」
思わず呟いてしまう。
貴族の住むような屋敷で絶世の美女の尻に挟みこまれて窒息した――記憶にある今までを振り返るのならば、夢と思えても不思議ではない。むしろそんな現実の方が、よっぽども夢物語じみているように思えた。
故にそれらはすべて夢だったのではないかと考える。そう考えた方がつじつまも合うというものだ。
そもそもこんな体験が現実であるという『証拠』はどこにも――
「あ。目、さめた?」
「ッ! ち、チトノさんッ?」
その『証拠』が突如として視線に入ってきた事にレェスは両肩を跳ね上がらせる。
そうして起き上り、見渡すそこはベッドの上――そして傍らには全裸のチトノ。全ては紛う方なき『現実』であったことが証明された。
途端に自分が意識を失う瞬間のあの、生々しいやり取りもまた思い出して、
「わぁ、元気だね♡ 安心したー」
レェスのペニスは再び高く堅く屹立して、天を向くのであった。
しかしながら一方の本体(レェス)はというと、そんな自身の体の反応とは裏腹に未だ混乱から脱しきれていない。
「あ、あのさ……これからどうしたらいいの?」
つい尋ねてしまう。とはいえしかし、レェスにとっては重要な問題だ。現状を把握したからと言って、童貞のレェスには今後自分がどのような行動を取ったらよいものか見当もつかないのだから。
そしてそんなレェスの不安もまた知るからこそ、
「大丈夫だいじょーぶ。お姉さんに任せて寝てればいいのよ」
片や百戦錬磨のチトノはそんなレェスを愛おしげに抱きしめるのであった。
「私がリードしてあげるから、レェス君は気楽にしてて。そのつど、やりたいことを思いついたら言ってよ。何でも応えてあげるから♡」
言いながら見つめ、そしてレェスの体の上に乗り上げてくるチトノの瞳が妖しい光を宿す。言うまでもなく発情しているであろう彼女の様子を察した次の瞬間には、チトノの唇がレェスの口唇を塞いだ。
口先を噛みあうようにし、侵入させた舌根を幾重にも絡ませ合いながら施されるチトノのキスに、次第にレェスの頭にも靄がかかってくる。
ひとしきり互いの唾液を味わい、レェスも脱力して再びベッドの上に横たわると、いよいよ本格的なチトノの奉仕が始まった。
唇を離れた口唇は舌先でレェスの体をなぞりながら下降していく。快感を伴いつつ覚えるこそばゆさにレェスは低く声を殺しては身をよじらせる。そんな反応を楽しむようチトノも舌先で穿つ力を強めると、レェスが苦手であろう腹部の周辺をより丹念に愛撫するのであった。
一頻りそうして愛撫をすると、ついにチトノの唇は下半身そこに辿りつく。
「あ、あぁ………」
チトノを見守るレェスの視線は、次に彼女が起こすであろう行動を予想して、奉仕する彼女へとくぎ付けになる。
そして期待通りにチトノの舌先は――赤剥けて反り返った陰茎の腹を舐め上げるのであった。
「んッ、うわわ……ッ!」
剥きだされた粘膜をさらに別の粘膜が触れる感触と熱にレェスは上ずった声を上げる。
今はまだ快感よりもくすぐったさの方が勝った。その感覚に耐えかねる体は何度も痙攣しては、会陰と肛門との縮小を小刻みに激しくさせる。
そんなレェスの反応にチトノも心得たもので、舐め上げていた舌先は先端まで昇り上がるとさらにそこから折り返して、今度はペニスの背へと降り始める。そしてその流れのまま自然に、チトノはレェスの茎全てを口中に収めた。
「あッ、っくうぅ……ッ」
その瞬間、さらなる痛痒感がレェスの体を奔る。
舌先で一部箇所だけを責め立てられていた時とは違い、今度はペニス全体があのこそばゆさに包まれていた。
ゆっくりとチトノの口唇がそれを飲みこんでいく。茎の背に当たる前歯の感触に震え、さらにはその深部へ辿りつき咽喉の奥底にペニスの尖端が触れると、今度は唇とはまた違った粘液の締め付けに絡め取られて、レェスはその感触に体をのけぞらせるのであった。
臍の奥底がキュッと締まるような感触にレェスは射精が近いことを意識する。
そしてこのまま果てたいと思ったその矢先――
「ん、ん……ん~、っぷは」
チトノは強く引きずり出すかのよう吸いつけた口唇を引き上げると、口中からレェスのペニスそれを解放してしまうのであった。
「あッ……そんなぁ」
そんなチトノの行動に対し、露骨に悄(しょ)げた表情を見せるレェス。その様はまさに、おあずけ受けた仔犬そのものだ。
しかしながらそこはプロ。チトノとてそんな相手の機微は知り尽くしている。レェスが絶頂に達せようとしているのを察知し、あえて愛撫(フェラチオ)を止めたのであった。
泣きそうな表情のレェスに微笑んでみると、
「このぐらいでイッちゃうなんてもったいないよ。もっともっと楽しんで」
そう言ってチトノは、M字に膝を立てさせたレェスの両足を肩に担ぐようにして、その下へうつぶせに上半身をもぐりこませる。
そうして目の前に露わとなった会陰へと、
「う、うわわッ?」
再びチトノは舌先を這わせるのであった。
舌先で強く押し付けるような刺激は、今までの口中で包みこむかのようだった柔らかい愛撫とは対極のものである。それでもしかし、そこへの箇所の責めは体内の奥底にあるレェスの前立腺を強く刺激してなんとも直接的な快感を与えるのであった。
しばしそこらをこそぐよう上下に愛撫していた舌先は、やがてぬるぬると下降していく。そしてチトノの舌は、
「ッ? ひゃあ!」
レェスの肛門の淵をなぞる。思わぬ箇所への愛撫にレェスもまた声を上げる。
「ち、チトノさんッ。そこ、お尻だよ?」
「知ってるわよー、なぁに今さら♪ さっきはレェス君だって、私のお尻をたくさん舐めてくれたじゃない」
そう言われてレェスは何も返せなくなる。浅はかにも過去の自分の行動が今、自分を責めていた。
「もうさ、今夜は私達の間じゃ『汚い・恥ずかしい』は無しだよ。だから安心して♪」
さらにはそう微笑まれてしまうともはや、レェスは一切の抵抗を封じられてしまうのだった。
やがて呟くよう「お願いします」と伝えると、レェスは観念してベッドに倒れ込む。
そんな彼をなんとも思惑のこもった笑顔で見届けると、
「たくさん気持ち良くしてあげるね」
チトノもまた愛撫を開始するのであった。
肛門の淵をなぞるように舌先は這っていく。時おり奥窄まったアナルの中心へと舌先が伸びると、そこに感じる暖かな感触にレェスは身を震わせる。やがてはそんな舌先も、次第に肛門そこを掘り穿つような強い愛撫へと移行していった。
「あ、はあぁ………」
途端に熱がそこに感じられた。
舌先の粘膜がぬるぬると肛門の中に侵入してくると、そこを中心にしてヌルリと、濡れたような暖かい感触が広がってレェスは強い快感を感じるのであった。
しばしそうしてレェスのアナルそこを愛撫していたチトノが不意に口を離す。
「そろそろチンチンの方も気持ち良くしてあげるね」
そう言ってレェスの両足の上に胸元を乗り上げたかと思うと、屹立する彼の陰茎それを豊満な両乳房で挟みこむのであった。
見下ろす股間そこに乗り上げたチトノ――そんな自分の性器それが彼女の豊満な乳房二つによって埋もれている。
ツンと上を向いた形の良い乳房が、今はレェスの体の上に押しつけられることで楕円にその形を歪ませていた。そんな彼女の巨乳ぶりを改めて再認するその眺めは圧巻するばかりである。
「ふふ、すごいでしょー♪ じゃ、始めてあげるね」
見下ろすレェスの凝視に気付いて、上目づかいにウィンクを返してくるチトノにレェスは大きく胸が高鳴る。純粋に今の彼女を可愛いと思った。
しかしそんな想いに心和んだのも束の間――次の瞬間、脳天に突き抜ける刺激にすぐにレェスの淡い想いは吹き飛んだ。
「あ、うわぁッ?」
「んふふー♡」
胸の谷間に置いたレェスの陰茎を左右から乳房で押し挟んで圧迫した瞬間、茎全体を包み込んだ肉圧とそして体温の感触にレェスは情けない声を上げる。
乳房にて包まれ凝縮されるその感触は、先に受けたチトノの口取りによる圧迫感とはまた違った感触をレェスに与えていた。
しかし刺激はそれだけではない。
「動くよー?」
「……え?」
包み込んだレェスの陰茎が零れてしまわぬようしっかりと乳房を左右両脇から手の平で持ち抑えると、
「わぁ、わあああぁ!」
チトノは己の乳房で扱くようにしてレェスの茎を愛撫し出すのであった。
これまでの愛撫とは打って違い『動き』のあるそれにレェスは戸惑わずにはいられない。多少の騒々しさはあるものの、今まで貞淑に接してきてくれたチトノがこんなにも激しく奉仕をしてくれる姿はそれだけでレェスには衝撃的であったりする。
それでもしかし一番の衝撃は、いま現在ペニスに対して与えられている未知の快感それだ。
先にも述べたようフェラチオの時とは全く違った、『肉圧で扱く』という刺激――しかしながら今レェスが感じている快感は、そんな豊満な乳房の肉圧だけによるものではなかった。
それこそは――
――うわぁ……さらさらのむね毛が気持ちいい……
首元から胸元に掛けて生い茂る、チトノの白い毛並みに包みこまれる感触それであった。
柔らかく細やかな内の毛並みはシルクさながらの肌触りを感じさせるようである。それが乳房の体温で温められ、さらには潤滑の為にそこへ流されたチトノの唾液と混じってぬめりを帯びるや、その快感は口中でされていた粘膜のそれに勝るとも劣らない快感をレェスに覚えさせるのであった。
そんな乳房の合間から、時おり頭を出すペニスの尖端へとチトノは丁寧に、そして愛情たっぷりに唇や舌先を這わせて愛撫する。
「どう? オッパイ気持ちいいでしょー? 自慢なんだから♡」
「う、うん、気持ちいい。でも……」
「うん? 『でも』?」
「でも、チトノさんの毛並みが気持ちいい。サラサラでふかふかで、すごく気持ちいいッ」
そんなレェスの告白にその刹那、チトノは動きを止めて目を丸くする。
しかしそれも一瞬のことすぐにその表情へ笑みを取り戻すと
「……お目が高いんだから。レェス君は」
否、前以上に妖艶でたくらみに満ちた笑顔(ひょうじょう)で呟くように言うと――チトノは挟みこんでいた乳房の拘束からレェスを解放してしまうのであった。
「えッ? もう終りなの?」
そんな中途半端な幕切れに不安の声を上げるレェスではあるがしかし、
「もっと良いことしてあげるよ」
そんな彼の上によじ登って顔を近づけると、その耳元でそんなことを囁いてからチトノは強く唇をレェスの頬へ吸いつけるのであった。
やがて再び乳淫の時と同じポジションに戻ると、チトノは依然として屹立したレェスの茎へと口づけしながら、己の尻尾をその前に持ってくる。
改めて見る彼女の尻尾に生唾を飲み込むレェス。
透明感のある毛質に見惚れた。
遠目でもはっきりと毛並みの色艶が判るそれではあるが、こうして間近で見ると尻尾それ自体が光を放っているかのように眩い。その形も竿の中程でふくよかに膨らみを持ち、稲穂さながらの色合いと相成っては、なんとも豊穣で大らかなチトノの魅力を体現せしめているかのようである。
そんな尻尾を手に握り、弄ぶよう左右へさらさらと揺り動かせていた彼女であったが、やがてはそれを見つめるレェスに妖しく微笑んだかと思うと、
「これは特別な人にしかしない技なんだからね♡」
そう言ってチトノは――その尻尾をレェスのペニスへと巻きつけるのであった。
「ッ!? うわぁぁ!」
その感触にレェスは針にでも刺されたかのような声を上げる。
チトノの尻尾――その毛並みで包み込まれるという感触は、粘液にまみれていた口中とも、はたまた肉圧に挟まれていた乳房ともまた違う衝撃をレェスに与えた。細やかで柔らかな毛並みの一本一本が余すところなくレェスの陰茎を包み込む密着感は、先の二つの愛撫には無かったまったく新しい感覚である。
「ふふふ。これくらいで驚いてちゃ困るわよ♡」
そんなレェスの反応を楽しみながら、チトノは包み込んでいた尻尾を上下に揺する動きを始める。
それによってレェスの茎がチトノの尻尾によってしごかれ始めた。
レェスの線液とチトノの唾液とを絡ませた彼女の尻尾が、その粘液を取り込んでより緻密にレェスのペニスに絡まりつく。その感触たるや、もはや『毛並みで包み込む』などという表現では言い表せられないほどに複雑で、それでいて純粋な快感を与えてくれるのであった。
ついには、
「あ、あうぅ……チトノさぁん、もう……」
絶頂を迎えようと喘ぐレェス。ここまで何度も焦らされてきたせいか、もはや射精の限界を堪えることなど出来ない。
「うん。いいよ、レェス君。私の尻尾の中にたくさん出して」
そんなレェスの反応を確認し、チトノもまたよりいっそうに尻尾で扱く行為を激しくさせる。
「あ、あぁぁ……チトノさんッ」
そして毛並みに包まれていたレェスのペニスが、一際深く尻尾の中へと打ちこまれたその瞬間、
「んッ、んんぅ……ッ!」
ついにレェスはチトノの尻尾の中へと射精して達するのであった。
「あはぁ、出たぁ♪」
一人でする時のいつも以上に茎は跳ね上がり、会陰は激しく痙攣して精液を送り出す。まるで尿道がいつもの倍にも膨らみあがったかのような錯覚を覚えるほどに強くそして大量に、レェスはチトノの尻尾へと射精するのだった。
そうして最後の一滴まで出しつくすと―――レェスは深くため息をついてベッドに沈む。
「すっごい出たねー♪ 尻尾の中がヌルヌル」
言いながらレェスの茎を解放すると、チトノは根元から握りしめた自分の尻尾を上に向かって絞りあげていく。
見守る中、尻尾の尖端に白い水球がいくつも浮き上がったかと思うと、チトノの握り拳が昇るのに合わせて大量の精液それが尻尾の先から溢れ出る。その色合いとさらには絞り器(ホイップ)を彷彿とさせる彼女の尻尾の形と相成ってはさらながら、生クリームを絞り出しているかのようだ。
「ほぉら、こんなに」
そうして絞りあげ、そんな手の平いっぱいの精液を自慢げにチトノは見せたかと思うと――次の瞬間にはその掌の杯を煽り、チトノはレェスの精液を飲みほしてしまうのだった。
「あ……飲んじゃった、の?」
その様子を信じられないといった様子で眺めるレェスと、一方で手の平に残った精液の残りを愛おしげに舐めて拭うチトノ。
「うん。飲んじゃったよ♪ 濃くて匂いがきつくて、すごく美味しかった」
そう言ってほほ笑む彼女にレェスの胸は大きく高鳴る。もはや頭の中はチトノでいっぱいだ。体だって今しがた射精したばかりだというのに再び、痛いくらいに勃起して反応している。
「チトノさん……今度は、オレがやっちゃダメかな?」
「ん?」
気付いた時にはそんなことをチトノに聞いていた。
もちろんその言葉の意味は、彼女への愛撫を自分も施したいという意味ではあるのだが――奥手の自分がそんな積極的になれていることに、レェスは自身に対して驚きを隠し得ない。
そしてならば開き直ってしまおうとも思い、
「オレも、チトノさんの体に触りたいんだ。その……いじったり舐めたりとか、さ」
レェスはそんなことを懇願する。――それでもやはりその告白は恥ずかしくて、言葉の語尾はしぼむように小さくなって消えた。
しかしそんなレェスの申し出を一番喜んだのは、
「いいよッ。ううん、むしろいっぱい触って。私も、レェス君に触れてほしいよ」
誰でもないチトノであった。
少女のように表情を輝かせ、レェスの上に乗り上げると愛情いっぱいのキスをチトノはその頬へとする。その仕草は若い世代の男女がするような初々しい恋愛のようでもあった。
やがて起き上るレェスと入れ替わりにチトノはベッドへと横たわり、今度は彼に対して体を開く。
「お願い、レェス君。私も気持ち良くして」
そしてそうお願いをして微笑むチトノ。
そんな彼女の肌に、
「い、いきますッ」
レェスは今、そっと手を触れるのであった。
.
.
【 4 】
手の平が被さるようにチトノの乳房の上に置かれた。
――さ、触った……! オッパイに、初めて!
しばしそのまま正面から押すだけの遠慮した愛撫を続けるレェスではあったが、次第に気持ちが落ち着いてくると徐々にその掌をすぼめては、今度は触れていただけの乳房をしっとりと握り包む。
「あ……ん」
ジワリと手の平に彼女の体温が広がると、得も言えぬ弾力もまた指先に伝わった。
チトノの乳房そこはレェスが想像していたものよりもずっとしっかりしていてそして弾力がある。柔らかではあるが、そこにはけっして見た目の大きさにかまけただらしない弛みなどはない。
この大きさでありながら崩れることのない張りと弾力とが、美しく彼女の乳房を形成しているのだ。それゆえに手の中に感じるその揉み応えはただ触れているというだけで再び、滾らんばかりの情欲をその胸の内へ沸きあがらせる。
このまま優しく触れていたいと思うのと同時に、力のままに握りしめて壊してしまいたくもなる―――斯様にして表情豊かなチトノの乳房は、実に様々な妄想を彷彿とさせてくれるのだ。
そんな魅惑の乳房に対してレェスがとった次の行動は、
「あ……んふふ♡ いけない子」
両手それぞれに乳房を納め、その先端の片方にレェスはしゃぶりつく。
唇を立てて乳房それを強く吸いつける。口中に含むとかの乳房はまた、手にしていた時とは違った姿をレェスに感じさせた。
大らかな房の壮観にまぎれて見逃しがちではあるが、いざ口に含むと彼女の乳首もまた大きく形のしっかりしたものであることが判る。
その大きさがまた心地良いのだ。
舌の上に感じられるその存在感はなんとも心の安らぎを憶えさせてくれる。そんな乳首を口中で愛撫していると、ほのかにミルクの甘みが舌の上に広がった。
実際は彼女のそこから母乳が滲むなどということはない。それこそは赤ん坊のころの記憶の再生ではあるのだがしかし、それでもレェスはさらにそれを欲して吸いつける口の動きを激しくしていく。
強く吸いつけて鼻先を乳房の中に埋め、しまいには大きく開いた口中全体でチトノの乳房ごと口の中に含むのであった。
そんな愛撫に夢中になっているレェスへと、
「こーら、レェス君。牙が当たってるよ」
チトノは微笑みながらに言い諭して、抱き込んだレェスの後ろ頭を撫ぜる。
「――む? あ、ご、ごめんなさいッ」
その声に我に返りチトノの乳房を解放するレェス。見れば均整だったチトノの乳房の上には自分の歯型がくっきりと残ってしまっていた。
「ごめん、つい夢中になっちゃって。……痛かった?」
「ううん、大丈夫。レェス君すごく可愛かったよ♪ 何の気なしに声掛けただけだったんだけど、正気に戻しちゃったね」
謝るレェスに対し、どこか残念そうに微笑むチトノの表情はどこまでも和やかでそして暖かである。おそらくはチトノもまた、自分の乳房を吸うレェスに母性を刺激されていたのであろう。
ともあれそこから仕切り直す。
ベッドに横たわり、そこから後ろ肘をついて体を起こすと、チトノはレェスを前に両膝を立てて腰を上げた。
そしてM字に形作った両足が、目の前であられもなく広げるられると、
「うわぁ………」
そんなチトノの股間の前に、四足(ケモノ)のよう身を伏せてはレェスも鼻先を近づける。
尻尾やむね毛以上に柔らかく細やかな毛並みで包み込まれた彼女の膣部――閉じ合わさったスリットから僅かにその頭をのぞかせている大陰唇のひだそんな一枚を、レェスは右の指先で摘みあげる。
「ん……くふ……」
さらには左のそれもまた同じように摘みあげると、レェスはそれをゆっくりと開いていった。そしてそれは完全にその包みを解かれたその瞬間、そこで堰止められていた愛液が吹き出すように溢れては零れだす。
ぬめりを帯びて艶やかに肉圧の身を凝縮させた膣内は、部屋のほのかなランプ光に当てられて妖艶な輝きをレェスの目に反射(かえ)している。
そこから醸される芳香もまた蟲惑的だ。
潮を思わせる塩気と果実のような酸味を思わせるほのかな香の中に、肉の持つ血の匂いが生々しく混じり合ってレェスの頭を痺れさせる。
それこそはまさにフェロモンだ。けっして人工では作り出すことの出来ない、獣としての本能を刺激するそれに中てられて、レェスは誘われるようチトノのそこへと口づけをした。
膣口に舌先を這わせるとその一瞬、それが触れる感触に反応して内壁の肉は僅かに収縮してその身を縮こませる。そんな動きにレェスは、
――この肉でベロを包まれたらどんな気分がするんだろ?
この膣内の中に舌全体を埋めたい衝動に駆られた。
一度考えだすともう、その衝動は止められない。
立てられたチトノの裏腿をワシ掴んでより深く体を前に出すと、レェスは彼女の膣口そこを口先で覆い、その内部へと深く舌を侵入させるのであった。
「あ、ふぅん……あったかい。レェス君のベロが入ってくる」
その動きに湿った声を漏らしては反応するチトノ。彼女もまた股座にあるレェスの後ろ頭に手を添えると、より深く彼の愛撫を受けようとその頭をかいぐる。
そんなチトノの助けも受けてレェスの舌はどんどん深く彼女の中へと入っていった。
舌上にはほのかな塩気と苦みが広がってレェスの頭を痺れさせる。さらにその味わいを求めようと首をかしげ、膣内での舌を反転させた瞬間、
「んんぅッ。ひねっちゃダメぇ!」
奥底で跳ね上がった舌の尖端が、チトノの快感部位を刺激した。それを受けて一気に熱せ上げられた体は、放尿のよう愛液を吹き上げさせレェスの口中を、そして鼻孔にそれを満たす。
「ん……んん……」
舌を挿入している口中はもとより、鼻の中にまで満ちる彼女の体液にレェスは目眩をおぼえる。
呼吸器を塞がれることによる酸欠ではない。それこそは彼女の発情に自身もまた同調しているからだ。止めどなく溢れ続ける愛液に鼻孔と口中とを満たされて、今やレェスの呼吸器そのものがチトノの膣と一体化しているかのような錯覚を憶えていた。斯様な同調(シンクロ)を得て今や、彼女の興奮や快感がまるで自分のことのように感じられるのだ。
二人は今、心と体とを完全に共有しあった存在となっていた。
「レェス君……もう欲しいよ。レェス君のおチンチン欲しいよぉ」
「うん。オレも……オレも、チトノさんに入れたい」
どちらが言い出すでもなく二人は言葉を紡ぎ合うと、示し合わせたかのよう見つめ合い、そして自然と口づけをかわす。
ついばむよう小さな音を鳴らしては互いの唇を存分に味わうと、チトノは体を起こし四つん這いにレェスへと尻を突きだした。
それを前にレェスも目の前に晒された臀部を両手で握りしめ、乗り上げるようにチトノの背に覆いかぶさる。
性知識に関しては全くの無知であるはずのレェスではあったが、チトノの背に乗りあげるその動作には一切の迷いは無い。この体位こそは、人以前の『獣』であった頃からの本能でレェスは知り得ているのであった。
チトノもまたそんなレェスの重みを背で感じながら伸ばした右掌を彼のペニスに添え、それを己の膣へと導く。
そして開ききったチトノの膣口にペニスの尖端を宛がいついには――
「くッ……あううぅんッ」
「あッ……は、入ったぁ……!」
ついには、レェスはチトノの膣(なか)へと挿入を果たしのであった。
.
.
【 5 】
かくして念願の童貞卒業を果たしたレェス。――ではあったが、その心境に喜びや達成感は微塵として無かった。その時のレェスはとても、そんな感傷にふける余裕など持てるような状況どころではなかったのだ。
――ち、チンコが無くなった……!
陰茎全体を包み込む未知の感触それに戸惑うレェスには、今の挿入にただただ震えるばかりだ。
ぬめりを帯びた膣の内壁にむき出しの粘膜(ペニス)を包み込まれているのだ。激しいこそばゆさが茎一点に集中するかのようなその未知の感覚に、とてもではないがレェスは何か考えることなど出来なくなっていた。
「ふふ、どうレェス君? ドーテー卒業できた感想は」
「は、はわわぁッ。う、動かないでぇ、チトノさん!」
膣(はら)の中にレェスを感じながら腰をくねらせるチトノに、対照的にレェスは悲鳴に近い声を上げる。
もはや今、この陰茎を包み込んでいる感触が快感かどうかすらも判らない。ただ今は、少しでも気を緩めたら達してしまいそうになる痛痒感それにレェスは堪えるばかりであった。
「もー、レェス君ったらー。動かないと気持ち良くなれないよー?」
「わ、わわわッ、あうあう……。で、でもさぁ、こんなので動いたらすぐにイッちゃう……ううう」
チトノからの叱責にレェスも己の甲斐性無しを呪わずにはいられない。とはいえしかし、それを責め立てるチトノもまた、充分にレェスの現状を知りつつそんな言葉を投げかけている訳であったり。要は今の状況を楽しんでいる訳だ。
やがては、
「すぐにイッちゃってもいいのにー? ……だったら、私だけ楽しんじゃうんだから♪」
鹿爪らしく言って微笑んだかと思うと、チトノは尻尾を振るような要領で尻根をこねて、自らレェスの腰元へと臀部を打ち付けるのであった。
「はわわわ! だ、ダメ! くすぐったい! オシッコ出るー!」
「出しちゃえ出しちゃえ♪ それそれー♪」
その動きに耐えかねて腰を引くレェスを追いかけるよう、チトノもさらに尻を押し付けてその跡を追う。
そうして逃げるレェスを追うを繰り返すうち、ついにレェスは腰砕けて仰向けに倒れる。そんなレェスの上へ、
「んふふー、登頂ー♪」
チトノは騎乗位に乗り上げて、背中越しにレェスを見下ろすのであった。
「さぁ、これでもう逃げられないよぉー。たくさん動いちゃうからね♡ ――よいしょっと」
「あ、あわわわッ、捻じれるぅ!」
乗り上げたレェスの腰の上、依然として繋がったままのチトノは正面から彼を見下ろせるよう尻を回し、反転しては体位を変える。そうして改めて見下ろすそこに泣き出しそうな表情のレェスを見つけ、
「……可愛い。本当に可愛いんだから」
チトノは上体をたおらせてレェスと胸元を合わせると、今まで以上に深く口づけを交わすのであった。
そうして何度も舐り尽くしてレェスの唇を味わいながら、チトノは挿入されている腰元を上下させていく。
「ん、んんッ! んー!」
その動きに刺激されて判りやすいほどに腰元を跳ね上がらせて陰茎の痙攣を激しくさせるレェス。今度は先の後背位のよう腰を引いて逃げることは叶わない。そしてそれを知るからこそチトノもまた、
「ほらほぉら。気持ちいいでしょー? 気持ちいいよねー、レェスくぅん♡」
母犬が我が子を愛撫するよう何度もレェスの頬や鼻頭に舌を這わせて腰の動きを激しくさせる。
一方のレェスはすでに限界が近い。否、もう自分自身では今の限界を見失っている。
陰茎に力を込め過ぎるがあまり肛門はその内へ窄むほどに締まり上がり、ペニス全体は鼓楽器さながらに小刻みな痙攣を以てチトノの膣内で何度も跳ね上がり続けた。
「も、もうダメ……漏れるぅ……ッ」
そしてついにその時は来る。
「イクの? レェス君、イッちゃう?」
息も絶え絶えに漏らされるそんなレェスの反応に、チトノも打ち付ける尻根をより激しくしてその時を迎えようとする。
「イッて。イッていいよッ。たくさん出して。私を妊娠させるくらい出して♪」
「あうぅ………ッ」
そして一際深く腰を打ちおろし、チトノの奥底にある子宮口が吸いつくよう尖端を啄ばんだその瞬間――レェスはありたけの精をその膣(なか)に放出してしまうのだった。
「あん、熱ぅい……ッ♡」
「あ、あ、んあッ……」
チトノの膣の奥深くにペニスを咥えこまれて射精をするレェス。しかしながら突き当りとなる子宮口の収縮に合わせて射精しているに至っては、それはレェスが自律的に行っているというよりはむしろ、チトノによって絞り取られているといった方が正しいともいえた。
事実レェスは今、
――あぁ……バカになる……バカになっちゃう………。
一跳ねごとに尿道を通る精液の奔流を感じながら、今までに体験したこともないほどの量の射精と快感を実感しているのだから。
そんな依然として射精の続くレェスのペニスを咥えこんだまま、ようやくチトノもその動きを止める。やがて射精の切れを確認し、完全にレェスのペニスがその動きを止めるのを確認すると、チトノはゆっくりと上体を置きあがらせ大きく息をつくのであった。
「いっぱい出たねぇ。気持ち良かった?」
依然として上気した表情で見下ろすも、大きく呼吸を弾ませたレェスはただ泣き出しそうな視線を向けるばかりである。
「いっぱい出たねぇ。気持ち良かった?」
依然として上気した表情で見下ろすも、大きく呼吸を弾ませたレェスはただ泣き出しそうな視線を向けるばかりである。
「何も答えられない? んふふ、すごかった? ふふふ♡」
そんな視線を受けて一方のチトノは満足そうだ。立ち膝になってようやく自分の膣からレェスのペニスを引き抜くと、水の沸くような粘性の水音と共に放出された精液がそこから漏れて内腿を伝った。
「うわ、すごーい。こんなに出して貰えたのって久しぶりー♪ やっぱ若いっていーねー」
その眺めに喜びの声を上げると、チトノはそこに伝う精液それを指先でぬぐいさらには咥えて己の愛液と混ざり合ったそれを味わい堪能する。
「んふふ、エッチな味ー♡ ……ねぇ、まだイケる?」
そうして本日二回戦目となるおねだりを、色気たっぷりの流し目に乗せて伝えるも、
「はぁふぅ、はぁふぅ……ッ」
肝心要のレェスは、依然として仰向けに寝そべったまま返事すら出来ない有様であった。
――お口でも一回抜いちゃったしもう無理かなぁ……
そんなレェスの様子にチトノもまた諦めかけたその時であった。ふと立ちあがる内腿に何か当たる感触を感じて視線を落とす。見下ろすそこにあったものは――何物でもない、堅く屹立したレェスのペニスであった。
「わぁ、すごいッ。素敵ー♡ まだイケるじゃない」
その様子に声を明るくして喜ぶチトノではあったが、一方のレェスはというと未だに大きく胸元を上下させて呼吸を弾ませるばかり。チトノの言葉に反応している様子は見られない。
おそらくは極度の緊張状態にあるが故の怒張であり、けっして性的な興奮を憶えているからではない。
しかしながらそんなこと発情してしまった雌(チトノ)には関係ないもの。勃っている物は親でも使うが信条だ。
「それじゃ勝手に私が楽しんじゃおうかな♡」
言いながら再びレェスの上に跨り直し、屹立した茎の尖端を秘所へと誘うチトノ。
「ふふふ、今度はもっとすごい所に入れてあげるね」
そしてイタズラっぽく微笑んだかと思うと、チトノは一気に腰を落として再度の挿入を果たした。
「はぁはぁ……、んッ!? うわわッ?」
再び茎を包み込んだその感触にようやくレェスもまた覚醒して声を上げる。
しかし驚きの声を上げたのは、急な挿入に驚いたからではない。いま陰茎全体を包み込んでいる感触が、今までの膣の物とは明らかに違ったものであったからだ。
先程までペニスを包み込んでいた感触は、どこまでも柔らかくて暖かなものであった。故に挿入を果たした瞬間には、そのあまりにもソフトな感触に茎の境界を見失ったほどである。
しかしながら今、この身を包み込む感触は明らかに違った。
ペニスを包みこんでいる今のそれは、堅く弾力に富んでいて、それでいて焼けるように熱い。感触としてはチトノの口唇にて口取り(フェラチオ)されていた時と似ているが、それ以上にきつく締めつけて、なおかつ粘液のネバつくような感触もまた憶えていた。
「な、なに? ……なんなのぉ?」
そんな感触に驚いて首を持ち上げるレェス。しかしながらそこから見つめる眺めは、つい先ほどまでの騎乗位に挿入されていた時と変わらないように思えた。
「ふふふ、これじゃ判りづらいかな? それじゃあさ、これならどう?」
レェスの困惑した表情をこれ以上になく楽しそうに見つめながらイタズラっぽく微笑んだかと思うと、チトノは再び腰を上げて密着して居た腰元を離していく。
ペニスの中程が見えるまで腰を上げると、チトノは関取の四股さながらに両足をガニに開いた露わな格好となる。そんなチトノの、下品ともとれる姿勢になぜかときめきを憶えてしまうレェス。
「ほっほっ、と♡」
曲げた両膝がしらの上に左右それぞれの掌を突いたまま、チトノは体を回しレェスの体をまたぎ直す。
そうして同じ騎乗位ながらも、その背を完全にレェスへと向けた姿勢になるチトノ。
なだらかな背のラインと、そしてその尻根にて依然、陰茎を咥えこんだ壮観がレェスの前に広がる。
その瞬間になって、レェスは自分のペニスがどこに埋まっているのかを理解した。チトノの思惑を理解する。
膣とはまったく違った感触のそこ――自分のペニスは今、
「お、お尻ッ? お尻の穴の中に入っちゃってるの?」
「そうだよー? 今度はアナルで食べちゃった♪」
互いの言葉にて確認する通り、レェスのペニスは今、チトノの肛門(アナル)の中に深々と挿入されてしまっているのであった。
その挿入感たるや、膣に包まれていた時とは180度変わるほどの印象だ。
本来は性交に使用される個所ではない肛門と直腸そこは、排糞をひり出す為に独特の収縮筋が発達した部位である。故に粘膜であった膣とは違い、剥きだしの排出器官の内壁で締め付け、そして扱く行為は暴力的とすら言えた。
それでもしかし、
「お、お尻……お尻の穴………」
それでもしかし、レェスは今の状況それに興奮せずにはいられない。
かねてより肛門そこへ強い執着があったレェスである。それが性交に使われたと理解するや、彼の中の性的衝動はむしろ、膣部にてそれを行っていた時よりも激しくその胸の中で駆り立てられるのであった。
そして、
「お尻!」
「え? ――きゃうんッ!」
目の前に突き出された臀部の両房をワシ掴んだかと思うと次の瞬間、レェスは強くそれを引き寄せて、さらには激しく突き上げた腰をそこへ打ち付けた。
突然のそれに驚いて目を剥くチトノではあったが、それこそが始まりであった。
「お尻ッ! お尻ッ!! チトノさんッ!」
そこから間髪入れずしてレェスは二撃目となるピストンを打ちこむ。
ベッドのスプリングも利用して腰を弾ませるレェスの激しいストロークは無遠慮にチトノのアナルを突きえぐっていく。ここに至るまですでに二回の射精を経ているせいか、今レェスにはみこすり半で果ててしまうような敏感さは残ってはいない。レェス本来の持つ逞しさを存分にぶつけてくるその腰の動きとそして情動は、まさに原始の雄が持つ猛々しさそのものであった。
そして突然のそんなレェスの発火に中てられたチトノはたまったものではない。
「あ、おッ……ま、まって! まってぇ、レェス、君……は、激しいッ、い、痛い……!」
どうにかその暴力から逃れようと身をよじるも、そんなレェスの上に騎乗位で腰抜けてしまっている状況では満足にそこから動くことすらチトノには難しかった。ましてや臀部の肉をその形が歪むまでにワシ掴みされて拘束されているのだ。今のチトノはただ、為されるがままにされるしかない。
しかし――そこは百戦錬磨のプロである。この手の理性切れした客の相手はチトノとて心得ている。
――あちゃ~、悪乗りしすぎたなぁ。もう、言葉なんか届かない状態になっちゃってる……。
とりあえずは今の状況分析に勤めるチトノ。依然としてレェスに犯され、その体の自由を拘束されながらもしかし、そんな中でも自分でコントロールできる体の箇所と部位とを確認する。
――このまま立ち上がることは無理。終わるまで動けないって言うのなら……イカせるのみ!
そしてチトノも覚悟する。
彼女がとった行動は、
「んッ……んぅ、んぅ、んぅ!」
責め立てるレェスへとさらに、己からその身を呈することであった。
ぶつけてくる腰に合わせて自分からも強くそこへ尻根を打ち付ける。さらには腹部に力を込めると、
「んッ? う、うわわぁ!!」
そんなチトノの行動にレェスは声を上げた。
その『行動』の正体それとは――
「んふふー……ぐねぐね動くでしょ?」
チトノがアナルにて、レェスのペニスを包み込む直腸の締め付けをコントロールしているに他ならなかった。
吸い込むよう腹部をへこませて次は吐き出すように、それこそ排泄さながらに直腸へ力を加えると、チトノのアナルそれは波打つような収縮を繰り返してレェスの陰茎を扱きあげた。
口唇や掌による愛撫、ましてや膣内ですら経験できなかった未知の動きである。その精妙な括約筋の動きにたちどころにレェスの射精感は熱せ上げられ、そして昂ぶらさせる。
「あ、あうぅ……ち、チトノさん……もうダメぇ」
その段に至りようやく理性を取り戻しつつあったレェスではあったが……
「ダメぇ! まだイッちゃダメ! 私も、イキそうなの! レェス君のチンチンでイキそうなの! ウンチの穴をごしごしされてイクのぉ!!」
その頃には立場は逆転し、今度は姦淫の虜となったチトノが理性をかなぐり捨てた声を上げているのであった。
「んうーッ、んぅーッ! お尻! ウンチ、イクッ!!」
「あ、うああああああ……ッ!」
もはや腰を打ち付けるチトノの動きの方がレェスの突き上げるそれを凌駕して激しさを増す。
射精を間近に控えて限界にまで充血して肥大したペニスを咥えこんだアナルは、その淵のしわが伸び切ってしまい真円にその形を変えている。打ち付けるごとに内部にて互いの体液と空気とを撹拌した直腸は、激しく放屁を繰り返して滲んだ水音を響かせるのだった。
そしてついにその時は来た。
「い、イク……イッちゃう……お尻でイッちゃうよぉ、レェスくぅん!」
「あ、んうぅぅぅ……もうダメぇ……」
チトノのオルガスムスとレェスの射精感とがその数瞬、重なった。斯様にしてシンクロし始めた体は、互いの絶頂の波を同調させようと何度も激しい痙攣を器官に引き起こさせる。
「んぅーッ、いくぅー! おぉッ……イクのぉー!!」
「あ、あぁ………もうダメぇ」
そして一際強いレェスの打ちこみがチトノの深部を突きえぐいた瞬間―――
「おッおッおッおッ、ッ~~~~~~あおぉぉぉ―――――んんッッ!!」
「あッ……うわああぁ……ッ!!」
二人のオルガスムスが完全に重なった。
絶頂の衝撃からコントロールを失ったチトノの直腸は激しいまでの収縮と締め付けを繰り返し、そして射精に至ったレェスのペニスはそんな直腸の動きに誘われて止めどない精液の奔流を彼女の中へと吐きだし続けるのであった。
ノドを反らせ、弓なりに体を反らせて天を仰ぐチトノ。口唇(マズル)を細めて長い咆哮を吼え猛るその姿は、原始の野獣そのものだ。
「お、おぉ………ん、ふぅんッ」
やがてはそんな絶頂に硬直していた体からも力が抜けると、チトノは両腕をベッドにつき大きく肩で呼吸を弾ませるのであった。
そんなチトノを依然として腰の上に乗せながらレェスも大きく呼吸をして酸欠に熱せ上がった体に冷気を取り込もうと胸元を上下させる。
「ぜはー、ぜはー……はぁー……」
徐々に呼吸が整って、熱に焼かれた頭にも酸素が行き渡るとレェスも普段の自分を取り戻す。
僅かに首を持ち上げて自分の体を望めば、そこにはまだ豊満な肉尻を自分の腰元に潰し乗せたチトノの背の峰が見えた。
そんなレェスの視線に、僅かに横顔を向けたチトノの流し目とが合う。その一瞬の邂逅で彼女は微笑んだかと思うと、レェスの上に座り込んでいた体をゆっくりと体を持ち上げて、自分の肛門そこからレェスの陰茎を引き抜いていくのだった。
その途中の、互いの粘膜が擦れ合う感触に二人はくぐもった声を上げて快感の余韻に震える。かくして完全にレェスのペニスが解放されると、いまだ硬さを保ったそれは大きく反動してレェスの内腹にその背を打ち付けるのであった。
赤剥けて屹立したペニスと、その上にある広がり切ったチトノのアナルの光景――レェスの怒張した茎を納めていたことはもとより、数度に渡る激しいピストンに掘り穿たれた肛門は、その淵がすっかり体内に押し込められてぽっかりと洞のような穴をそこに開いていた。
しかしやがてはそこも、肉体の回復と共に押し込まれていた外肛門の括約筋が降りて穴を塞ぐと、肛門はドーナツ状に円環の肉を盛り上げて完全に直腸を閉じるのであった。
そんな一連の動きにレェスも全ての行為が終ったことを察する。これにて、自分の『初体験』の全てが終了したのだと実感した。
しかし――そんな最後の瞬間こそに、その体験は待っていたのだ。
「ふふ……よぉく見ててね」
自分のアナルに釘付けとなっているレェスを背中越しに確認すると、チトノは突き出すよう尻を持ち上げて、先のアナルをさらにレェスの前へと明らかにする。
「んッ………ふッ、んんッ!」
そして呼吸を止めて腹部を締め、再びアナルへと力を入れた瞬間――仔猫の鼻のよう濡れそぼった肛門は、再びその身を盛り上がらせて閉じた出口を開き始めるのであった。
「え? えッ?」
そんな目の前の光景にただレェスは戸惑うばかりだ。彼女が自分に対して何をしようとしているのかが理解できない。……否、ある種『理解できていた』からこそ困惑したのかも知れない。
なぜならば性交以外で肛門を力ませる行為が意味することはただひとつ、『排泄』に他ならないからだ。
――な、何するつもりなの? まさか、本当に……!
そんな状況と予想に焦りつつも、チトノのアナル一点に視線を注いだままのレェスはそこから身動きを取ることが出来ない。理性ではその『最悪の状況』を嫌悪しつつもしかし、本能ではそれを目撃することを望んでいたりもする。
やがて見守り続ける中、再びぽっかりと口を開いた肛門の中に今度は奥から押し出されてきた直腸の内壁が浮き出して、ぴっちりとその空洞を埋める。
先に拝見した膣部の奥底に見えた子宮口を連想させるよう、直腸の真部には小さな穴が窺える。
「ん、んぅ~……ッ。い、いくよレェス君。よく、見ててッ」
そして力み続けていたチトノがそうレェスへと言葉を掛けると同時、直腸の肉穴は水音を多く含んだ放屁を奏でる。
か細く長くそれは続き、そして腸内の空気が全て絞り出されると次の瞬間には――先に飲みこんでいたレェスの精液がそこからひり出されるのであった。
「え? え? あ、あぁ……!」
真っ赤に充血した直腸から絞り出されて来る純白の精液――己のペニスの上へとひり出されるそれの眺めに、ただレェスは混乱するばかりだ。
一方のチトノとて遠慮などしない。
一度その逆流が始まると、直腸は排泄さながらにその内部をうごめかして、出だしの時以上に勢いも強く、大量の精液を送り出してくるのであった。
そんなひり出す精液の中に、
「んうッ、んう~……くぅんッ」
「あ、あぁ……血が、混じってるの?」
僅かに血の赤と、そして茶褐色の筋が混じる。
それこそはレェスのペニスがどれだけ乱暴にチトノの奥深くまでを犯していたかを雄弁に物語るかのようである。その様にレェスは嫌悪を憶えるよりもむしろ、いかに自分が無慈悲に彼女を責め立てていのかを、そしてチトノがいかに献身的に自分へと接していてくれていたのかを悟るのだった。
そうして再び開ききった肛門が元に戻る頃には――屹立する己のペニスは、同じく自分のものとなる精液で真っ白に盛り付けられているのであった。
それを前にチトノはようやくレェスの上から移動すると、先の愛撫(フェラチオ)の時と同じように、彼の股座へ上体を納めてそのペニスと対面する。
「ふふふ、こんなにいっぱい出したんだねぇ♡ すっごいいっぱい♡」
目の前に立つ精液まみれのペニスにチトノは恍惚と微笑んでみせる。
粘膜の光る赤身の剥きだされたペニスに純白の精液がデコレーションされたその様は、さながら生クリームを用いた洋菓子のような眺めですらある。
そしてそんなレェスのペニスへと、同じくデザートでも食するかのようチトノは舌を這わせるのだった。
「あ、あぁ? ち、チトノさんッ?」
そんなチトノの行為にレェスは戸惑わずにはいられない。なぜならば今チトノが口に含んでいるそれは、つい先ほどまで彼女の直腸の中に収められていたものであるのだから。
しかしそれは彼女とて知るところ――
「すっごいエッチなデザートだね♡ 臭くてべとべとで……すごく美味しいよ、レェス君♡」
それに嫌悪を抱くどころか、チトノはそれを口に出来ることへ強い興奮と、そして喜びを見出しているのであった。
口先を細め、下品に音を立ててそれを啜ると、あとは丁寧に茎や根元の茂みに沁み込んだレェスの精液それをチトノは残らず飲みほしていく。
ついには歯を立てて食するかのよう自分のペニスを甘噛みし貪るチトノを目の間に、再びレェスは興奮から強い目眩を感じて意識を朦朧とさせた。
彼女の口の中で陰茎がされるようにレェスの意識も舐め溶かされて………いつしか現世(うつしよ)と己の境界を見失うのであった。
.
再度のことであった故か、二度目の覚醒においてレェスが取り乱すことは無かった。
むしろ目覚める自分に「大丈夫?」と声を掛けてくれるチトノを確認して、レェスはひどく恐縮したほどである。
――そっかー……エッチしちゃったんだよなぁ。こんな綺麗な人と。
改めてチトノを観察してレェスはそんな思いに耽る。
行為前には何とも妖艶に見えていた彼女ではあるが、今こうして気分落ち着けて対峙するチトノには、どこか少女のような華やかさもまた感じられた。種族柄、細めがちの瞼にもしかし、その奥底に宿る瞳には黒の光彩が大きく煌めいて、まるで無垢な子供のそれを覗き込んでいるかのようだ。
それを感じてしまうが故に、
「オレは……最低だ」
冷静さを取り戻したレェスは、ただ己に嫌悪してしまうのであった。
「ん? どうしたの、レェス君? エッチのこと? 初めての割には良かったと思うよ」
「違うよ。違うんだ……オレが言ってるのは、女の子にあんな酷いことをしちゃったってこと。それと――」
「……それと?」
「それと……お金で、女の子を買っちゃったってこと」
それを告白してきつく瞳を閉じるレェス。
ここに来る前より思い悩んでいたことではあったが、いざ事が済んで冷静になるとそのことは、射精後の罪悪感もあって尚更に重くレェスの心に圧し掛かるのであった。
そしてそんな告白を聞いて、鼻を鳴らすようため息をつくチトノ。
「ねぇ、レェス君」
不意にその名を呼び、レェスの顔を上げさせると――
「でこぴんッ!」
「ッ!? うわたぁッ!!」
親指で引き絞った人差し指の一撃を、チトノはそんなレェスへとお見舞いするのであった。
「レェス君。『お金で買う』ってこと以上にね、今の君の考え方の方が女の子を傷つけてるんだよ?」
「あつつつ……え?」
涙目で見上げるそこには、思いもよらぬ真剣な面持ちのチトノ。
「レェス君は『お金の力で女の子を言いなりにさせてる』、ってことを悩んでるんでしょ? ――そうね。確かにその一面もあるわ。だけどね……」
「だ、だけど?」
「だけど、買ってもらう以上は私達だってこの仕事にプライドを持ってるんだよ?」
言いながらチトノは、ずいとレェスに顔を寄せる。
「確かに抜き差しならない事情でこういう仕事をしちゃってる女の子だっているけど、でもだからこそプライドを持っているの。けっして自分は『奴隷』なんかじゃないっていう思いがあるからこそ強くいられるの」
命を扱う医者が己の技術を信頼するかのよう、そして世に感動を造り出す芸術家が己を誇るように、チトノ達『娼婦』もまた己達がこの生業を担うことにプライドを持っている。
確かに望まれずにこの仕事に就く者はいる。しかしだからこそプライドを持たねばならない。自身が世に必要な存在であると鼓舞し、強くならねばならない。これこそは自分達にしか為し得ないことであり、そしてこの仕事こそは世の男達の救済であるのだ。
「私たち娼婦が本当に堕落して、『人』の尊厳を失っちゃう瞬間っていうのはね―――」
それこそは『金の為に身を売る』こと――そう思った瞬間に娼婦は堕落し、そして惨めな人生の放浪者になるのだとチトノは言った。
「こんなのは強がりかもしれない……どんなに私達がそう思おうと、現実はやっぱり『最低の仕事』をやらされているのかもしれない。でもね、たとえ強がりだったとしたって、そんなプライドがあるからこそ私達は綺麗で気高いの」
だからこそレェスの言葉、そして要らぬ思いやりは娼婦の心を傷つけるのだ。
労われるほど哀れまれむほどに娼婦たちは対等さを失い、そして人以下の存在とされていってしまう。
「だからこそ女の子を買う時、そして買った時には笑顔でいて♪ 『気持ち良かったよ』ってお世辞でもいいから言って、そして感謝して欲しい。――そうすればきっと、レェス君だってもっと気持ち良くなれるよ」
そう結ぶと、チトノは少女のように微笑んで触れるばかりのキスをした。
そんなキス、そんな言葉、そしてその想いを受けて――レェスは今日まで自分を苦しめ続けてきた頭の霧が晴れるような想いがした。
「オレが………勝手に差別して、傷つけ傷つけられしてたんだね」
呟くように言って瞳を閉じると、レェスは堪えるように深くため息をつく。
自分もまた同じであったことに気付く。
『つまらない』と見限りをつけた故郷も家業も、全ては自分の身勝手な思い込みが生み出した差別であったのだ。
それゆえに居場所を見失い、傷ついた。
自虐的に自分と、そしてそれを取り巻く環境を蔑むがあまり、いつしかレェスは自分を見失って惨めに悩む結果となった。
それこそは娼婦に対して抱いていた、差別的ともいえる思いやりと一緒だ。
哀れめば哀れむほどに、レェスは世界と対等さを失って落ち込んでいった。そしていつしか堕落して、自分自身を見失ったのだ。
娼婦とて自分自身とて、何ら変わりなど無い。
皆が同じように生きることを悩み、そして強くあろうとしているのだ。
そのことに気付いた瞬間、そしてようやく等身大の自分自身と向き合うことが出来た今――『身勝手な子供』であったレェスはようやく、名実ともに『大人』入りを果たしたのであった。
それを理解すると途端に心が軽くなった。
そして目の前のチトノを改めて確認すると、
「ありがとう、チトノさん。初めての人がチトノさんで、本当に良かった」
レェスは心からの感謝と共に、ここに来て初めての笑顔をチトノへと贈ったのであった。
そんなレェスに、
「ん………ッ~~~~、レェス君!」
チトノは強くその名を呼んで、飛び込むように彼を抱きしめる。
「なに、その笑顔? 可愛すぎ♡ もっと……もっと笑って♡」
素直なレェスの笑顔にこれ以上なく母性をくすぐられたチトノは、胸の中に抱き込んだ彼の額へと何度もキスをする。
「もう一回しよ? ねッ、もう一回♡♡♡」
「も、もう一回? 出来るかなぁ……」
戸惑うレェスをよそに有無を言わさずに押し倒すと、再びチトノはレェスへと愛撫を施す。そしてそんなチトノをレェスもまた抱き返すのであった。
お金でも仕事でもない、刹那の恋ただそれだけに燃える二人の姿がそこにはあった。
★ ★ ★
.
「もう少し……! もう少しですよ、レェス様! しっかりなさってください!」
「ま、待って……腰に力が入らない……!」
クウの小さな肩に担がれてはそこにすがるレェス。ナインテイルを出て馬車に乗り込むまでのレェスは、さながら生まれたての仔馬であった。
そうして最後もクウに尻を押されて何とか馬車に乗り込むと、
「はぁー…………またね、チトノさん」
レェスの初体験は幕を閉じたのである。
馬の嘶きと共に娼館を跡にするレェスの馬車――そんな彼を今しがたまで愛し合っていた寝室の窓から見送ると、
「……また来てね、レェス君。約束だよ」
未練に胸を焦がしながらチトノは熱くため息を漏らすのであった。
結局はあの後、さらに7発を加えて計10発を抜かれたレェスはすっかり足腰を立たなくされてしまった。
そうまでして愛し合ったからこそチトノだからこそその別れが惜しくて仕方がない。
先にレェスへと述べた、『プライドを持つ』ということは同時に、この行為を『仕事』ではなくしているということでもある。すなわちレェスと肌を合わせるということはチトノにとって、恋人との逢瀬となんら変わりは無いのである。
故にそんな想いを寄せた客(レェス)がここを去ってしまうことに、チトノは仕事としては割り切れない想いに後ろ髪を引かれていつまでもレェスの乗る馬車を見送るのであった。
と、そんな感傷にふけるチトノの寝室へと――
「あー! 店長ー! また、やったでしょー!」
突如としてそこのドアが開かれたかと思うと、けたたましいまでのその声が響き渡る。
それに引かれて背後を振り返れば、そこには兎の少女が一人。
綿毛のように細く透き通った純白の毛並みの彼女は、チトノに比べるとずっと若いように思えた。
そんな少女が、本来は端整であろう表情を怒りにしかめてこちらへと向かってくるのである。
その接近に、
「あ……あはは、ルゥエ。こんばんわー♪」
チトノも苦笑い気に取り繕って彼女・ルウエを迎え入れる。
しかしそんな会釈で以て迎えられても、依然としてルウエの憤然とした表情は変わらない。
その理由こそは………
「店長! またルゥエのお客さん取ったでしょー!!」
その理由に他ならなかった。
「ご、ごめんね。『童貞君』が来るって聞いたら居ても立ってもいられなくなっちゃってさ」
「もー、何回目ーッ!? ルゥエ、先週から発情期入るってるだよ! もー! せっかくのチンコだったのにーッ!!」
謝るチトノに憤慨やまない様子で叫ぶと、ルゥエは今しがたまで二人が愛し合っていたベッドに飛び込み、そこに残る愛の残滓を嗅ぎ取っては転がるように身悶える。
「まーまー。明日にはお得意さん来るんだから、その時に今日の分まで一緒に可愛がってもらいなさいな」
「だからって今日は今日で収まらないんだってばぁ! ……責任、とってもらいますよ?」
ベッド上から見上げてくるルゥエの視線にチトノは寒気を感じて背を震わせる。
「えっとぉ……ふぁ~、今日はもう疲れて眠いなぁ。じゃ、おやすみー」
そうしてベッドの脇を通り過ぎようとするチトノの尻尾を、
「そうはいくか! 今夜は店長にお相手してもらいますからねー♡」
「いッ――、きゃあ!」
ルウエは両手でワシ掴むと、漁網のよう引きよせてチトノをベッドへと引きずりこむ。
「もー、勘弁してよー。今夜は本当におなかいっぱいなんだってばぁ」
「こっちはペコペコなんだから! じゃあ……最初はそのおなかに溜まったミルクから♡」
「ちょっとぉ――、あんッ♡♡♡」
かくして同業の客を横取りしてしまった償いを身を以てさせられるチトノ……。彼女の夜はまだまだ長くなりそうなのであった。
【 おしまい 】
.
『金と銅貨のワルツ(http://wktk.vip2ch.com/vipper2857.jpg)』は終了となります。
これより#2となります『白き穢れは白銀の中に(http://wktk.vip2ch.com/vipper2858.jpg)』をお届けします。
本作には、女の子に対して過剰な暴力を振るうシーンが登場しますゆえ、苦手な方などはご注意ください。
.
読んで思った事書く
・文頭や台詞の前後のスペースいるの?意図があるなら、なぜそうしているのか教えて欲しい
・地の文と台詞の文の間を1行あけると読みやすくなる
・ダッシュ(―)の数が一定しない。また、句読点でも代用できる箇所が多いのではないか
・ルビ必要?
>>4 光(いろ)、>>6 寂しがり(ホームシック) >>11 外套(マント) など
・>>13の孤独のグルメネタを無理して挟む必要はあったのか?世界観が台無し
遊郭の高級さと普段の生活のみじめさを演出するなら
-----
そう考えだすとどんどん思考は所帯じみて、いつもの妄想も現実味を帯びてくる。
いつも窓からこっそり覗き込むことしか出来ない中央通のレストラン。
ふかふかのパン、肉汁のしたたる熱々のステーキ、野菜とベーコンのスープに黄金色のエール、これだけ頼んだって銀貨1枚。
-----
のような表記でもいいのではないか?
・>>63など、文の途中の ……。 ――。
このような三点リーダーやダッシュの後ろに句点をもってくるのは──私個人の考えではあるが──やめたほうがいい。
・URL自動リンクの後ろに半角カッコが入っていて、エラー出る
>>77
ご指摘ありがとうございます。
まずはスペースの使い方やルビ・三転ダッシュやリーダーの使い方についてですが、それらは私の文章的な癖となります。
指摘された個所については今後修正していけるように努力していきますが、すぐには治せないと思います。
心苦しくは思いますが、こちらに関しましては読み手様で慣れていただけるよう申し上げる他ありません。
読みづらいとは存じますが、どうかそう云うものだと思い見守っていただければ幸いです。
また少し話が脱線してしまいますが、今回の小説は書き上げることを念頭に執筆させていただいております。
ゆえに思い悩んで筆が止まらぬよう自由に、自分の描きたい事・物を念頭に書いていますので、今後も読み手様には
不快に思われるような描写やネタ的なシーンが随所に散見されることと思います。
作家性とまで大層なことは言えませんが、そういった表現や先の文章の手法に関しましては「私」という書き手の
癖や性格と受け取っていただき、どうか読み流していただければと存じます。
いずれの問題もすぐには治せように無い問題ゆえ、どうか今後の努力をご期待頂ければ幸いです。
なお、貼られているURLに関しましてはお手数ですが手元でアドレスをコピーして直接アドレスバーに貼ることで
リンクすることが可能です。
手間であれば飛ばしていただいても何ら読書には差し支えは無いと思います。
また今回のお返事で不遜な印象を持たれたようでしたら、先にお詫び申し上げます。
#2・『白き穢れは白銀の中に』をお届けします。
登場ケモノは姫がウサギの少女。
内容に女性を殴る暴力や、リョナ・拷問といったグロテスクな描写を含みます。
苦手な方はご注意ください。
.
【 1 】
掌を天に向け、手首から下を望む。
そうして右腕を掲げ腋の下までを確認するとそれを反転させ、今度はそこからひじを折り腕の外を確認しながら手首を下ろす。
一望する己の腕には新雪のごとき柔らかな白銀の毛並みが短く生え揃っている。それが光を反射(かえ)して波打つ眺めはさながら、夜明けの雪原を走る一陣の風の光景を連想させた。
斯様な美しきその毛並み――しかしながら染み一つないそれを確認して、
「あーあ……元に、戻っちゃったぁ」
白兎の少女であるルゥエは深く大きくため息をついた。
これより二ヶ月と少し前、彼女が確認したそこには刃物による大きな傷跡があった。
深く切り裂かれた皮膚と脂肪の断面その下からは筋肉の赤き鮮望が覗けるほどで、このルゥエの幼き容貌と相成ってはひどく痛々しいものであった。
しかしながらそれは、ルゥエにとってこの上ない『幸せの形』であったのだ。
当年をとって17歳となる彼女ではあるが、痩せた胸と更には隆起なく腹部と一体化したヒップラインの容姿(スタイル)は、一桁台の年齢の子供と変わらぬ未成熟な肉体を思わせた。
斯様なまでに生育の遅れている原因の一つは、ルゥエが幼少期に受けた虐待に起因している。
自身の出生についてなどはルゥエ本人ですら知らない。
しかしながら思い出せる最も古い記憶の中で彼女は――自分の掌以上の大きさを持つペニスを握らされていた。
思うにそれは自分の父親であったのだろう。
その記憶が証明する通り、ルゥエは幼き頃より性的虐待を受けて育てられた。
そしてその虐待は性的な玩弄に留まらず、拳や道具を使った肉体的な虐待にまで及んでいたのだ。
幾度となく殴られては蹴られ、幼く弱い子供ゆえに死に掛けたことだって一度や二度ではない。しかも彼女の都合を考えぬそれはほぼ毎日のようルゥエに対して施されたのであった。
幼さゆえに守るも戦うも叶わない肉体である。やがてそんな体は、彼女に出来うる唯一の防御反応を示していくようになった。
それこそは、その苦痛の生活を快楽に変換してしまうというもの――逃げることの叶わない彼女の肉体は、むしろその環境を肯定的にとらえることで心と肉体の平穏を得ようと作用したのであった。
すなわちそれは『発狂した』ということになるのであろう。
しかしながら皮肉にもそれが、今日に至るまでのルゥエの正気を保たせてきた。その狂気ゆえにルゥエは社会性を維持し、そしてこれ以上に無い幸せの中で生きられるようになったのだ。
以来その虐待から解放され、長じてからもなお彼女はそんな精神的障害を引きずることとなった。
とはいえ、社会生活の中でのコミュニケーションは問題なく取れている。
此処『ナイン・テイル(九尾娘)』へと移り、仲間の嬢達と生活を共にする日々にルゥエは人並みの幸せや充実感も十分に感じていた。
しかしながらもっと根源的なこと――真に自分という存在を実感できる瞬間こそは、何者かの手によって虐待を受けているその瞬間なのだ。
痛みに叫ぶ時、ルゥエは自分というものを実感していた。痛みに苦しむ時、ルゥエはこの上ない多幸感に満たされた。
もはや、そのような生き物になってしまった自分を憐れみつつもしかし、それでもルゥエは幸福であったのだ。
また種族ゆえか、はたまたこれもまた肉体の神秘による奇跡なのか、ルゥエは人一倍傷の回復も早かった。
先に確認していた刃物による切り傷も一ヶ月あれば綺麗にふさがってしまうし、歯だって何度折られようともそのつど新しく生えてきては、ルゥエの端正な容貌(おもて)を歪ませることは無かった。
それゆえか次第に、ルゥエの求めるそれは常軌を逸していった。
最初は面白半分に彼女を痛めつけては楽しむ客も数名いたが、回を重ねるごとにエスカレートしていくルゥエからの要望にやがては恐怖し、はたまたある者はそこに己の異常性の深淵を見つめてしまっては気が狂(ふ)れてしまったりと――彼女が在籍して数年が経つ頃には、そんなルゥエの相手をしようとする客など居なくなっていた。
しかしながらそれでもルゥエは幸せであった。
ただ一人、例外の客が残ったからだ。
その客はルゥエの求める虐待を与えてくれる人物だった。
自分の求めるがままに痛みと与え、苦しみを施してくれるその客にやがてルゥエは強い愛すらをも感じるようになる。
そして今日、その客が再びルゥエを指名した。
それを受け、彼女は朝から己の手入れに余念がないのである。
短毛の毛並みに何度もブラッシングを掛けては純白のそれをさらに白くそして艶やかに輝かせる。この毛並みが逆立ち荒れくれては血に染まる様を確認することが、ルゥエは何よりも好きだった。
二か月前に彼が来た時には、頭からつま先の方向に沿い、体のあちこちをナイフによって切り刻まれた。
肩から手首へ、腿からつま先へ、そして胸元からヘソへと腹も背も無く幾筋もナイフを走らされては、その純白の毛並みを鮮血とのストライプに変えられた。しかしながらその最中、己が斯様にして変えられていく様にルゥエは、これ以上に無い痛みと快感、そして何よりも美しさとを覚え興奮したものであった。
大量の失血に伴って昏倒し、次に目覚めたのはそれから一週間後のことである。
傷から来る燃えるような痛みの中にあっても、それを感じ続けられるルゥエの治療生活それは幸せなものであった。
その強い痛みこそは、誰でもない彼からの強い愛と同義――それを一身に感じることのできる治療中の状態こそ、彼女が人生の中でもっとも幸福を抱きしめることのできる瞬間なのだから。
それでもしかし柔弱な見た目に反したルゥエの強靭な生命力は、そんな傷など二ヶ月をかからずに回復させてしまう。
一ヶ月後には自立で生活できるようになって、彼女は蜜月の終わりに深く絶望するのであった。
しかし今日、また再びあの客が訪れようとしている。
今より一週間前、彼からの予約が入ったことを知らされた時には不覚にも失禁したほどである。
彼はもはやルゥエに残された世界でただ一人の男であった。今となっては、その存在なくしては今日の正気すら保てなくなるほどに、彼はルゥエの心の中の大部分を占めている。
こんな自分に容赦なく痛みを与えてくれる存在、こんな自分と真剣に向き合ってくれる存在――それこそはこんな自分を世界で唯一、愛し理解してくれる存在であるのだ。
だからルゥエは嬉しくなる。
「今日は、どんなことしてくれるのかな~? 痛いかな? 苦しいかな? それとも熱いかなぁ? んふふふふッ♪」
彼と過ごすその瞬間を夢想することが、今の彼女の全てであった。
両肘を抱き、自分自身を抱きしめるよう体を縮めるとルゥエは自室のベッドに転がっては今夜の妄想を独りして身悶える。
「オナニーも、体キズつけちゃうのも我慢するぞー♡ た~っぷりご主人様に可愛がってもらっちゃうんだから♡」
独りごちて瞳を細めるルゥエの表情は、何処までも無垢で純真な少女のものであった。
.
読んでどう感じるかなんて人それぞれなのに酷評はお控えくださいってアホなのかな?
【 2 】
午後7時40分――自室の時計にてそれを確認し、ルゥエは興奮からくる強い動悸を喉に感じて何度も水を飲んだ。
件の客はいつも8時ちょうどにお呼びを掛ける。先に部屋に待機をしてルゥエを待つそのスタイルは出会った頃から変わってはいない。
すなわちそれは、もうこの時間には彼自身この娼館に到着しているということなのだ。
そんな彼の存在を同じ屋内に意識する体は、ルゥエの子宮を刺激しては潤わせ如実にその興奮を表面と表せる。
「まだかなぁ~? 体ムズムズするよぉ~。パンツ汚れちゃうぅぅ~」
今日の為、己の毛並みと合わせた純白のランジェリー上下に身を包んだ幼きルゥエ。
座り込んだ両腿をきつく閉じては膝を躍らせて何度も立ち上がるを繰り返し、自室のドアがノックされるのを今かと待ち受ける。
そして――厳かにドアを打ち鳴らすその音に、
「キタッ♪ ご主人さまぁーッ!!」
放たれた征矢のごとく立ち上がるルゥエは、体当たりをするようドアを押し開いた。
「き、きゃあ~!? ああ~んッ!」
一方でドアの向こうに立つ者はたまったものではない。急のそれに弾かれては大きく尻もちをついた。
そんな目の前の人物にルゥエも正気を取り戻す。
そこには琥珀の毛並みを持った妙齢の女性が一人――腰元まで伸びた透き通るような煌めきの髪と、天に向くようすっと通った鼻頭の端正な顔つきの容貌は『美女』と称しても差し支えが無い。
またメリハリに富んだ体(ライン)もチトノに負けず劣らずの豊満さではあるがしかし、そんな胸元から足元までをすっぽりと覆ったアオザイの衣装と相成っては、妖艶のチトノとは対照的に家庭的で母性あふれる印象を見る者へ覚えさせるかのようであった。
「わぁ、お母さんッ? ごめんなさいッ、ごめんなさい!」
「もう~、あわてん坊さんねぇ~」
そう呼ばれその手を引かれて立ち上がる彼女・ティーは、苦笑い気に柔らかな微笑みをルゥエに向けるのであった。
『母』と呼ばれてはいるがしかし、兎のルゥエに対して犬狼型のティーとでは、言うまでもなく種族が違う。その呼び方が意味するのは、彼女・ティーの存在がルゥエに対して母親的な役割を果たしているからに他ならない。
「でも、あれれ? お迎えってクウ君じゃなかったっけ?」
「あの子は別のお客さんのお迎えに出てしまっていて来られなかったの~。だから今日は私が案内役(エスコート)なのよぉ」
「ふーん。……ってことはご主人様、もう来てるのッ!?」
どこか間延びしたティーの言葉のひとつひとつに表情をコロコロ変えるその仕草は益々以てルゥエの幼さを強調するようである。そんな表情が愛らしくてつい目元を綻ばせるがしかし、ティーはすぐさまその表情を曇らせてもしまうのであった。
貧血を思わせるかのようふらふらと頼り無い足つきで歩いては彼女をエスコートするティー。その道すがら、
「ねぇ~、ルゥエは辛くないの?」
ついティーはそんなことを尋ねた。
「辛いってなぁ~に? ルゥエはこのお仕事好きよ?」
「そうかもしれないけど~、やっぱり痛いでしょ~? 体に傷がつくと~……」
あっけらかんと答えるルゥエとは対照的にその表情を重たくさせるティー。彼女はそのことを気に掛けていたのだ。
忘れもしない2ヶ月前――医務室に運ばれたルゥエの付き添いをしたティーは、そのあまりの変わり果てた姿に慄然とした。
もちろんルゥエの精神的失陥については理解しているものの、それでもやはり、血まみれで息一つしない彼女の青ざめた表情を見るにティーは不安になってしまうのである。
そして不安はそれだけではない。
「このままじゃ……いつか取り返しがつかないくらい傷つくことになっちゃうかもしれないわよ?」
ティーは鹿爪ぶった言い回しでルゥエを言い諭す。
「傷のこと? 大丈夫だよー♪ ルゥエは痛いの好きだし、動けなくなっちゃったらその時だもん」
「それだけじゃないの~。心がね……あなたの心が深く傷ついちゃう時が来るのが私は怖いの」
「心? 幸せだよ、ルゥエ」
掛けられる言葉がどこまでも理解できない様子のルゥエを背中に感じ、ティーは突如その歩みを止める。
そしてそれにつられて立ち止まるルゥエに振り返ると――ティーは彼女を覆うよう強く抱きしめた。
行間ないとまず気楽に読む気にならんよな
似たようなエロSSと比べてもなんかな…
キャラに魅力を感じないというか感情移入しづらいというか
「な、なに? なぁに、お母さぁん?」
「……ルゥエ、ひどい言葉や行動が人を傷つけることがあるように、時には強い愛情が自分を強く傷つけてしまうこともあるわ。それは、悪意で受ける傷以上に苦しかったり痛かったりするの」
ルゥエの首筋へ強く自分の首根も押しつけて抱擁するティーの表情は今のルゥエからは確認しようがない。しかしながら、どこか嗚咽を抑えるよう絞り出されるその言葉は、ひどくルゥエを不安にさせる響きがあった。
「え……わかんないよ。わかんないよぉ、お母さぁん」
「……うん。ごめんなさい、お仕事前だっていうのにね~」
抱きしめていた力を解くと改めて彼女を前に笑顔を見せるティー。
「貴方の生き方に不満や疑問がある訳じゃないの。でも、本当に苦しい時や悲しい時はお母さんに打ち明けてちょうだいね」
その笑顔と心からの思いやりの言葉を受けてルゥエの胸にも改めて喜びが込み上がる。
「うん、大丈夫だよ! ルゥエ、すごく幸せだよ! みんな大好き」
再び抱きついてはその愛情を確認するようハグすると、ルゥエはティーから離れ立ち上がる。
「あとは部屋までまっすぐだから大丈夫だよ。行ってくるね、お母さぁん♪」
そういって跳ぶように走っては廊下の突き当たりを曲がり見えなくなってしまうルゥエ。
その後ろ姿を見送り、
「がんばってね、ルゥエ」
ティーはいつまでも、彼女の去り過ぎた廊下を見守るのであった。
.
【 3 】
三階の東、突き当たりの部屋が二人の遊び場であった。
平素この娼館が逢瀬の場として提供している部屋は二階の八部屋であり、一階がルゥエ達の寝室、そして三階がチトノの私室兼支配人室という構造になっている。
それにも拘らずわざわざ三階の部屋にルゥエの仕事場を置いているのには理由があった。
それこそは彼女の声に他ならない。
いかに苦痛を快楽に変換しているとはいえ、客からの責め苦にあえぐ時、それは苦しそうな声を彼女は上げた。
この小さくて愛くるしい体からは想像も出来ない苦しみに滲んだ声はさながら、この世の痛みと苦しみを一身に受けるかの如き響きを以て聞く者の耳へと伝わるのだ。
それを聞きとって遊びへの意欲を失ってしまう客も少なくは無く、者によってはそれがちょっとしたトラウマとして残ってしまった者までいる。
それを考慮してチトノは、彼女ルゥエが客を取る時にはここ三階の角部屋を宛がい、さらにはその階下の部屋の使用は差し控えるよう配慮したのであった。
他の部屋とは違いこの一室だけ、カリン材で組まれたドアが一際に赤く重たい色の姿でそこに佇んでいる。それこそは防音と汚れとを配慮して取り替えられたものではあるのだが、その重厚な眺めはなんとも独特の威圧感をそこへかもし出していた。
これを目の前にする時、いつもルゥエはそれに気押されしてしまうのだがしかし、そんなプレッシャーに『これから』を期待しては興奮もしていた。
――あぁ……今日はどんな痛いことされるんだろう? どんな酷いことになっちゃうんだろう?
もはやそれに焦らされて理性の乖離し始めた肉体は、しとどにルゥエの下着を濡らせては如実に彼女の興奮を表に現わせる。
そして荒い呼吸を納めることなくルゥエは右手を掲げると、柔らかく握りしめた拳骨で二度のノックをするのであった。
硬い材質のドアと静寂の三階ゆえに、非力なルゥエのノックでも実に軽快な音色が打ち鳴らされる。そして中からの返事を待つことなく、
「失礼しまぁす……」
ルゥエはドアを開き、その中へと入っていくのであった。
ドアを引くと内側から吸われるような空気がまとわりついてドアそれを重くさせた。次いで来る息苦しいばかりの熱気に胸をつまらせる。
入口そこから望む室内には、照明の類など何一つ灯されてはいなかった。
ただ正面突き当たりの壁面に設けられた暖炉にくべられた炎だけが薄暗くその周囲だけを照らす眺めは、この世の果てのような重く寂しい印象をルゥエに覚えさせる。
それを見つめたまま後ろ手でドアを閉める。完全に室内が閉じられると――そこは初めに覗きこんだ時以上の闇に包まれた。
しばし目が慣れないルゥエはそこから暖炉の明かりだけを頼りに室内を見回し、そこに今日の相手の姿を探す。
室内には先に述べた大業な装飾を施した造りの暖炉とそのすぐ前にベッド――そしてそこの上に、猫背に屈みながら暖炉と向き合う何者かの背中を見つけてルゥエは息をのんだ。
「あぁ……居たぁ。ご主人様ぁ……」
『主人』とその人物を呼びルゥエは歩み寄っていく。
待ち焦がれた瞬間ではあるものの、それでも一歩一歩と彼に近づいていく今は興奮よりも恐怖が僅かに勝った。
彼の手によって壊されたいと願う半面、ここから逃げ出してしまいたくなるような気持もまた胸の中で渦巻いて、なんともルゥエを不安定にさせるのだ。
そしてついにベッドを回り込み、彼女の言う主人のすぐ側へとつけるルゥエ。
「ッこ……こ、このたびは、ご指名い、いただき、ありがとうございま―――」
そして強い口の渇きに舌をもつらせながら挨拶をしようとしたその時であった。
突如として伸びた右掌が口上も途中であったルゥエの口元を覆ったかと思うと次の瞬間――荒々しくもその顔面をワシ掴み、上着でもはたくかのよう彼女を宙へ吊り上げた。
「んッ……ぐッ……んんッ!」
斯様に吊り下げられてルゥエは主人の右掌を両手でつかむ。
痛みは申し分ない。しかしながら、いかに小柄で軽量とはいえ首の関節部位ひとつで自分の体を吊り下げるには、あまりにも無理があった。このままでは体の重みに負けて頸骨が脱臼あるいは骨折しかねない。
ゆえに少しでも別な支えを得ようと、主人の掌に両手を掛けたルゥエではあるがしかし――その体勢は同時に、己の下腹を無防備に前面へ晒してしまう形にもなった。
それを前に主人は残る左手に拳を作り、肘を折り振りあげては二の腕に力を込める。
そしてその動きにルゥエが気付いた次の瞬間には――繰り出された拳は深々と、彼女のみぞおちへと突き刺さった。
その一瞬、呼吸が止まる。衝撃が走りぬけるそこにまだ痛みは発生しない。
しかしながらせり上がった横隔膜が呼吸を吐き出す以外の機能を止め、胃袋がその重圧で潰れひしゃげた次の瞬間、焼けるような痛みが腹の中心で爆発した。
「げッ、えぇッ……えぐぅうッッ……ッ!」
その衝撃に叫びを上げようにも、呼吸すらままならなくなっている今の状態では呻きすら満足には上げられない。鋭角の先端で強く胃袋を突き潰されているかのような痛みの中、込み上がる胃の内容物を吐き出すも、それすら顔面をワシ掴む主人の掌に遮られてままならないのだ。
俺は面白いと思うよ。耽美な世界だ。
しえん。
>>98
ありがとう
その一言がすごく励みになる
完結させられるように頑張るよ
「げよッ……けろけろ……かはッ」
口角と、塞ぐ指々のわずかな隙間からあふれた胃液がルゥエの首筋を伝い純白であったその毛並みを淡く黄ばませる。
そうして放される右掌。
絨毯の足元に糸の切れた人形のよう倒れ込むと、
「ぐッ、ぐぇろッ! え゛ッ……え゛ぅぉ………お゛、おぉ……ッ!」
地に額をこすりつけたその姿勢のまま、ルゥエは激しく背を痙攣させては嘔吐を繰り返す。
そんな彼女の右手首を主人は再び掴んだ。
そこからはロープでも引き上げるかのようさながらに、人を扱うといった配慮など微塵も感じさせることのない様子で主人は再びルゥエを吊り上げる。
両腕を掲げられるようにして再度吊り下げられ、
「んんぅ~……んぶ~ッ……げぇッ、えッ……ッ」
依然として込み上がる吐き気と酸欠に疲弊しながらルゥエは、かろうじて項垂れた首そこから上目遣いに主人を望んだ。
暖炉を背後に置いたこの位置からは、そこの炎の逆光となって強く影を落としてしまい微塵としてその表情を窺うことは出来ない。
もはや目の前にいるそれは同じ人であろうものなのか……その恐怖にルゥエは強く震える。
そうして見守り続ける中、主人の影は再び肘を折った右腕を掲げた。
軋むほどに握りしめた拳骨は殺気を帯びて、これより岩の如きそれを力の限りにルゥエに撃ち込んでくるであろうことを伝える。
「あ、あぁ……ら、め……らめぇ……おなか、破れう……ッ」
それを察し弱々しく首を振るも次の瞬間には再び――無慈悲にも主人の右拳はルゥエの腹部へと突き刺さるのであった。
「んう゛ぃッ………ッッ!」
下から掬い上げるよう弧を描き打ち放たれた拳は、先の左掌以上の衝撃を以てルゥエを打ちすえる。
「んぅおッ……んぅぉぉぉぉ……ッ……ッ、ッ!」
半身を踏み込んで体重を乗せたそれを腹部に埋め込みながらもなお、さらには杭打ち機のごとく密着させたそこから幾度も衝撃を打ちこんでは彼女の内臓をえぐり上げる。
そしてそれを引きぬくと同時、
「げぅッ……げがぁぁぁああぁぁぁぁッッ!」
ルゥエはこの日一番の叫びと共に胃の底に残っていた内容物を吐き散らかした。
「ぅおげぇぇぇ! んえぇぇ! ぇお゛ぉぉぉぉぉ……ッ!!」
口を鼻孔を問わずして吐き出される吐瀉物の中にやがて鮮血が混じりだす。
最初は細い筋となって吐瀉物の中に線を描いていたそれも、嘔気のたびに血の比率が増え、ついに胃の中を吐きつくす頃には血の割合が内容物の多くを占めていた。
先程からの衝撃に胃の一部が破れたのだ。
胃液がその傷口を洗う痛みを前に、ルゥエは失心寸前の体(てい)で身悶える。鼻の下を伸ばし、大きく舌を吐き出しては上目を剥くその表情に、事前までの愛くるしい容貌は微塵として見当たらない。
そんなルゥエを吊るしていた主人は、一切の慈悲を掛ける様子もなくベッドの上へと彼女を叩きつけた。
「ぐげうッ!? が、がはぁ……ッ!」
いかに柔らかなスプリングの上とはいえ、背中から叩きつけられてはその衝撃も生半可ではない。
強くせき込み、そして痛みの鳴り響く腹部を抱くように身を縮こまらせるもしかし、
「あ、あぁ……? ご、しゅじ、んさまぁ……」
主人はそれを許さない。
跨ぐようにルゥエの体の上へ乗り上げると、何遠慮することなくその華奢な体の上に座り込んだ。
「ぐぎゃああああああああぁぁぁー!!」
先の打撃を受けて重症の腹部に体重の全てを預けられ、ルゥエは痛みと息苦しさに目を剥いては絶叫する。そして吊り上げていた時同様にルゥエの両手首をワシ掴んで掲げさせると、
「がッ―――!」
今度は晒されたその横顔へと、主人は右掌の張り手を見舞った。
存分に手首のしなりを利かせた掌に打ち抜かれて、ルゥエは強く首を捻る。今しがた顔面をワシ掴まれていたことかも知れるよう、体格差のある主人の掌ではルゥエの小柄な顔面などすっかり覆えてしまう。
そんな肉厚の掌で力の限りに打ち据えられてその一瞬、ルゥエは虚脱して意識を朦朧とさせた。
しかしながらそれを目覚めさせるかのよう、
「んぐぅッッ!?」
今度は右から――帰る右手の甲が深々とルゥエの左頬に打ち払う。
その一撃にカリカリと小石でも含んだかのような感触が歯根を通じ脳に響き渡った。今の張り手で奥歯の一部が折れたのだ。
やがてはそれを皮切りに始まる顔面への殴打――。
呻く暇すら与えずに一定のリズムを以て往復する主人の掌に、砕けた歯々は口中において存分にルゥエの内頬や舌根を傷める。
しばしそうして殴り続けると、やがてルゥエからの反応は一切なくなった。
そしてその段に至り手を止めればそこには瞼の形が変わるほどに頬を腫らし、そして白樺の木の幹のよう唇をズタズタにしたルゥエが虚ろな視線を宙に投げだしているばかり。
内臓から響く痛みと顔面の殴打によって引き起こされた脳震盪に虚脱して、今のルゥエの意識は薄氷のよう脆く朧ろ気なものとなっていた。
僕ちゃんナイーブだからあまりひどく言わないでねage
それを確認し、主人は立ち膝になって尻を浮かせては、一時ルゥエに預けていた体を浮上がらせる。
そして股間を覆っていた自身の下着を荒々しくも千切っては抜き取ると、彼女の眼前に己の一物を露わとさせた。
半ばまで勃起をし、その先端で亀頭をもたらせたペニスの様は、不明瞭な暗がりと相成って一匹の蛇が鎌首をしならせているかのようですらある。
そしてその亀頭先端を、躊躇することなく主人はルゥエへと咥えさせる。
――お、お口……柔らかいの、きたぁ……ぐにぐに……やわらかいのぉ………
依然として朦朧とする意識の中、突如として唇に発生した亀頭の感触にルゥエも無意識で奉仕(フェラチオ)を開始する。
とはいえ赤ん坊のよう弱々しく、先端ばかりをついばむだけの動きしか出来ない今のルゥエ。
しかしながらそんなことは主人の都合ではない。
望む奉仕をルゥエが出来ないのだと判断するや、主人は彼女の後ろ頭に両手を添え、さらにベッドへ着く両膝の位置を確認しては体を固定する。そして次の瞬間――主人はルゥエの喉奥深くまで、己のペニスをねじ込んだ。
捻じりこまれたそんな亀頭が喉頭を押し分けては喉を圧迫してくる衝撃に、
「ッ――んむぅッ!? んむぅもぅぅぅぅーッ!!」
ルゥエの意識も一気に覚醒へと引きずり上げられる。
それを確認し、さらには開始されるピストン――唾液と鮮血にまみれた茎がルゥエの唇から引き抜かれるごとに、主人のペニスもまた硬度と膨張とを増していった。
「ん゛も゛ッ、ん゛も゛ッ、ッッッん゛も゛ぉぉぉおおおおおッんッ……んぐぶぅぅッッ!」
口中に満ちる唾液と血と線液、そして容赦ない往復の速度と勢いを以て喉を突きえぐる口虐にルゥエの呼吸は再び止められる。一突きごとに衝撃は痛みとなって脳髄を締めあげ、砕けた歯の欠片は頬や喉を問わずにルゥエの中を傷つけては鋭い痛みを与えた。
「んぼ、んぼ、んぶぅぅッ? ん゛ぶぅおおおおおおおおおぉぉぉぉぉッッ!!」
それら苦痛と酸欠の中にあって、ついには限界から激しく体を痙攣させるルゥエ。
しかしながらそれを前にしても主人の責めの手が休まることは無い。むしろその苦しみに反応するよう、彼の中にも快感の昂ぶりが波打ち始めていた。
今日の更新まだか?
すげー好みの展開なんだけど
添えていた手の平を握りしめてはルゥエの髪をワシ掴み、さらに激しく主人は彼女の顔へと腰を打ちつけていく。
前後する腰の像がぶれるほどに速度を上げて打ち付けられるその腰元に鼻先を殴打され、ルゥエの鼻孔からは見る間に鮮血があふれだした。
そしてついには、
『むッ、くぅ…………』
「んむぅぉもぉぉおおおおおおお……ッッ!!」
快楽の頂点に達し、主人は欲情の限りをルゥエの喉の奥にて炸裂させた。
口いっぱいに咥えるペニスからは、灼熱の精液がその尿道を大きく膨らませては大量に打ち出される。斯様な射精は尿道で切るごとにペニスそれを大きく跳ね上がらせ、その鼓動がもたらす痛みと衝撃は、割れ鐘を叩くかのごとくルゥエの脳髄へと響き渡るのであった。
「んぶッ……んぉ……ん、ぐぷぐぽぉぅぷ………ッ」
ペニスによって塞がれた咽喉と、鮮血によって満たされた鼻孔、そしてそこへ新たに流し込まれる精液の奔流――それによって僅かに口中に残っていた空気は行き場を無くし彼女の喉の中で逆流する。
やがては圧に押されたそれが咽頭に迫り上がると、鼻孔からは湯の沸くよう鮮血が溢れ出ては泡立ち、そしてその後には一変して白く黄ばんだ主人の精液が彼女の鼻から圧し出されてくるのであった。
「ん゛もぉ……ん゛も゛ぉぉおおおおおおおおお……!」
斯様にして呼吸器を塞がれて、脳内に直接広がる鮮血と精液の香りにルゥエも震える。
そしてそんな酸欠から完全に思考が遮断されるその間際、彼女もまた強い絶頂を感じて意識を失うのであった。
.
>>107
読んでくださってありがとうございます。
この先もっとひどい展開になります。どうかご注意のほどを。
とはいえ嬉しいお言葉でした。
これからも頑張ります!
更新って2日おき?不定期?
更新って2日おき?不定期?
更新って2日おき?不定期?
すまん
上げミスした…二つとも俺だ
【 4 】
宙に浮くかのごとく夢遊するルゥエの意識は、ただ安らぎと幸福の中にあった。
――あ~……きもちいー……この感覚、ひさしぶりー………
肉体の内外を問わずして全身を満たす温かな感触はまるで、母体の胎(なか)において羊水に浸っているかのようですらある。
斯様にしてルゥエは緩やかに目覚め、肉体の境界すらもが溶け込み漂う感覚を実感しては満喫していた。
そしてその最中、
――あれれ? そういやなんでルゥエ、ここにいるんだろ?
そのことに気付く。
さらにそれを意識した途端、僅かに体が寒くなった。
――どうやってここに来たんだっけ? ルゥエ、何してたんだろう?
思い出すごとに意識は輪郭を持ち、体には四肢の感覚と重力とが戻ってくる。
そして、
――そうだ……ルゥエ、ご主人様のお相手をさせてもらってたんだ。
そのことを思い出した瞬間――突如として激しい痛みが体を走り抜けた。
「―――んぅッ……ぎゃああああああッ!」
そんな痛みを声にして叫ぶと同時、ルゥエは完全に覚醒する。
瞼を見開き視線を巡らせば、そこは闇と炎だけの世界――あの部屋の中にルゥエは戻って来ていた。
そして同時に、今自分の体に流れている様々な痛みを実感する。
ふと上唇を舐めた瞬間、電流のように鋭い痛みが走った。それだけではない。口中はくまなくひりついて燃えるかのようである。唇も含めてズタズタに裂けているのだ。
気付けば左目の視界も消えていた。先程殴られことで瞼が腫れてしまい自力では開けなくなっているのだろう。もしそうならば、この瞼に限らず今の自分の顔は相当ひどい状態になっているに違いない。
そう考えてルゥエはゾクゾクと背を震わせた。
――見たい……ルゥエ、どんな顔になってるんだろう? どんな酷いことになってるの?
過去の虐待に照らし合わせて、今の自分の顔を想像する。それを想いながら更にはわざと唇を噛むと口中の痛みもまた再発させた。虐待の合間にあるこの僅かばかりの間隙においてこんな想像を膨らませるのも、今のプレイの楽しみである。
――じゃあ、お腹はどうなってるんだろう?
同時に腹部にも激しく打撃を受けていたことをもい出す。
そうして仰向けに寝ている今の状態から自分の体を見降ろそうとしたその時であった。
>>111-113
はい。更新は2日おきにしております。
今後ともよろしくお願いします。
「……ん? え? え……?」
ふと動かした右手が思うように動かないことに気付きルゥエはそこへ視線を巡らせる。見れば自分の右手首は、その色が鬱血して浮腫むほどにきつく縛られてベッドの足もとへと緊縛されていた。
そしてそれは右手だけに留まらない。気がつけば残りの左手や両足に至るまで、己の四肢は同じようベッドの四隅にくくりつけられていたのだ。
――う、動けない……全然ダメ。
二度三度と体を伸縮させるなどして動ける範囲を図ろうとするも、袈裟に四肢を広げられた体は、微塵として今の体位以外の姿勢を取ることは叶わなかった。
そしてそんなルゥエの動きを察し――まるで影が伸びてくるかのよう静かに、主人がルゥエの枕元に立ちあがった。
「ッ……ご、主人、さぁ………」
覗きこむよう猫背を前かがみにして見下ろしてくる主人の表情は、やはりこの暗がりにおいては微塵として窺い知ることは出来ない。
それを前にしてルゥエは想像するのだ。
いま彼は、どのような顔で自分を見つめているものか……。
そこには在るのは加虐者としての優越か、こんな生き物(じぶん)を憐れむ見下げた蔑みか? それともあるいは――
そんなことを考えて見上げる主人の顔がその一瞬、
「ひッ? ッ………?」
雷のよう発生した青い閃光に照らされて浮かび上がる。
その驚きにルゥエの中の疑問など一瞬にして消し飛んでしまう。それほどに今の閃光(ひかり)は不可思議で衝撃的であった。
そんなルゥエの疑問に気付いたのかあるいは見せしめか、もう二度三度と主人はその光を手元で発生させる。
どうやら主人の両手には棒状の何かが握られているらしかった。それを触れ合わせることであの光が発生するらしい。
「な、に……? なぁに? なんですか……それ?」
今までに見たこともない道具だった。
あの光そのものはひどく美しくはあるが、同時に強く不安もまた感じてさせた。
そしてそんなルゥエの問いに
『………電極』
聞き取れぬほどに小声で応えると主人は、右手に携えて一本の先端をルゥエの脇に押しつけた。
その瞬間、
「ッ――んみぅびぃぃぃぃいいいいいいいいぃぃッッ!!」
右脇からそこから発生し体を走り抜ける衝撃にルゥエは鳥獣の如き甲高い声を発して絶叫した。
時間にしては一秒ほど押し当てられた程度ではあるが、それでも体中を走り抜けた衝撃それは、永遠とも思えるほどのショックをルゥエに与えていた。
「え゛ッ……え゛、え゛ぅぅ……ッ……!」
電極それはもう押し付けられていないというのに、体にはまだ痺れが残ってルゥエを痙攣させる。その感覚は、長く足を畳んで座っていた時に生じる末端の痺れに良く似ていた。
そしてそんな感覚と、さらにはこれが始まる前に主人の見せた閃光の映像に、ルゥエはおぼろげながらこの衝撃の正体を察するのであった。
それこそは――
――でん、き……電気、だ…………
察する通り、一〇〇Vの電圧を発生させる電極こそがそれの正体であった。そしてそれはルゥエにとっても未知の体験である。
その威力は今、身を以て知った通りだ。それゆえにひどくルゥエは恐ろしくなる。
――ちょっと当てただけであんなにすごいなんて……こんなの長くやられたら、本当に死しんじゃうよぉ……!
そう考えると同時、無意識に体はその身をよじらせて今の緊縛から逃れようとする。本能がこの道具の危険性を察していた。
しかしながらそれら行動は全て主人の目の前に晒されているもの――。
その動きを見るにつけ、主人は再び電極の先端をルゥエの右脇下へと当てた。
再び―――
「ッッ、ッんぃぃいいいいいいいいいいッ!! むゅいぃッ、みぃぃぃいいいいいいいいッッ!!」
そこから発生して体全体を走り抜ける電流にルゥエはその身を痙攣させる。
そして今度は数秒と触れさせる程度のものではない。依然として腋に当てたままの電極を動かすと、主人はその先端でルゥエの体の上をなぞっていった。
腋から登ると右胸の上で文字を描くように押し付けた電極を躍らせ、さらにはそこから首へと上がっていく。
「むぅめぇぇぇぇぇええぇえ!! ええええええええッ! んむぉッうぉッおおおぅぅんッッ!!」
そして電極の先端が顔面の右頬に置かれると、如実にルゥエはその反応を激しくさせた。
瞳孔が見切れるほどに白目を向いては、何度も頭を振って激しく後頭部を枕に打ち付ける。口角からは海洋生物のよう胃液の撹拌された泡が噴き出され、欠けて残されていた歯々が砕けるほどに口元を食いしばった。
「ッ、ッッ……んい゛ッ……じ、ずぃじッ……、……ッッ~~~~~~~!!」
そうして電流のショックから委縮した顔面が硬直して、もはや悲鳴すらあげられなくなった頃――主人はそれをルゥエから離す。
途端、一気に脱力してはベッドに沈み込むルゥエ。それからは微動だもせず、時おり思い出したかのよう体を痙攣させるその極端な静と動の様子は、まさに電気仕掛けで動くカラクリ人形のよう――。そこに人としての尊厳などは、微塵として残されてはいなかった。
そんなルゥエの意識を確かめるよう主人は軽く、立て揃えた指々でその横顔を叩く。それに対してまったく反応を見せようとしないルゥエに、今度は強く掌全体を使って張り手を見舞う。
「ッ……んぉッ……おぉ………ッ!」
それを受けて呻きを漏らすルゥエに主人は鼻を鳴らし覗きこんでいた顔を上げる。それでもしかし依然として体の自由が戻らぬルゥエへと、主人は前以て用意していたであろうバケツの液体を浴びせかけるのであった。
――んッ……んん? つ、冷たい……なぁに?
突如として浴びせられた液体の冷たさにルゥエも曖昧であった意識を取り戻す。
朦朧としていた意識の気付けに掛けられたのかと思いきや、それがただの水ではないことをルゥエも瞬時に悟る。
なぜならそれは、
――し、しょっぱい……? ……これって、塩水?
舌先に塩気を感じさせると同時に、切れた唇にそれが強く染みたからだ。
無知なルゥエは何故に今、そんなものが自分へと浴びせかけられたのか知る由も無い。
しかしながらこれこそが、本当の地獄の始まりであった。
件の塩水を浴びせると、主人は次なる準備に移る。
依然として緊縛されたルゥエの足もとまで移動すると、そこから手を伸ばし彼女のショーツをワシ掴み、一気にそれを剥ぎ取った。
短毛の毛並みが肌のラインに沿って茂る恥丘と、そしてそれを巻き込んで形成された膣口のクレバス――ぴっちりと閉じ合わさってはその淵を盛り上がらせる様は幼子のものよう無垢で儚い。
そんな膣に人差し指と親指の二本を添えると、主人は荒々しくそこを押し開いた。
襞の突出もなく、広げられてもなお奥の閉じ合わさった膣口の眺めは生娘のそれのよう使用感は全く無い。艶やかに湿らせた薄紅の柔肉と、その先端に鎮座する陰角が手荒い主人の扱いに仔犬のよう震えていた。
そんな無垢の場所へと、
「んぁぁああああああ!!」
主人はいつの間にか右手にしていた張型(ディルド)を無遠慮に捻じりこむ。
突如として挿入される感覚と、さらには前戯も無しに乾ききった異物をそこへ入れられる痛みにルゥエは声を上げた。
しかしながら一番に彼女が感じたのはその異質感――それこそは、
――なにこれ……すっごく冷たいよぉ……。
今までに感じたことの無い金属感であった。
更新まだ?
顎を引き、かろうじて顔を上げては体を見下ろし己の膣に何が挿入されたのかを確認しようとする。
そしてそこにあったものは、周囲の情景を反射させるほどに磨かれた銀色の金属塊。ゴムや樹脂などを使って造られている従来のディルドとは程遠いその見た目にルゥエは目を見張る。
そんなルゥエをよそにさらにはもう一本、
「ぐぅッ!? ぅんんんんぅ~ッッ!!」
膣に挿入されたものとまったく同じディルドが、今度は肛門にも押し当てられた。
力任せにねじ込んでこようとするその力に思わずルゥエも呼吸を止める。
いかに狭き入口とはいえ表に対して間口の広がっている膣とは違い、肛門は臀部のさらに奥底に窄まっているものなのだ。そこでの経験が無いわけではないが、それでも前戯の解しも無しに乾いたディルドを挿入するには無理があった。
「ごッ、ご主人さまぁ! 待ってください! いきなりは、無理ですよぉ! もっとお尻を広げさせてください!!」
ディルドの先端に肛門は押しつぶされ、臀部のクレバスすら巻き込んでもなお挿入の果たせない状況と痛みにルゥエも仕切り直しを懇願するが――そんな彼女の言葉にむしろ、主人はディルドを押し込む右手へ力を込める。
筒身を握りしめていた持ち方からディルドの柄尻に掌を押し当てる形に押し込め方を変え、
「んぎぃぃ!? い、痛い! 無理です!! ぜったい無理だよぉ! お尻が破けちゃうよぉー!!」
そして一際膂力を込めて、折り曲げていた肘を一思いに伸ばした次の瞬間――
「――ッぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
文字通りディルドの先端は肛門を突き破り、一気にその根元までルゥエの直腸に収まってしまうのであった。
「おッ……おぉお……い、いたいぃ……いたいよぉ………ッ」
尻の下のシーツに赤が滲み、やがてはそれも放射状に広がってはそこを染め上げていく。今の無体な挿入に肛門の淵と、そして直腸内壁の一部が裂けたようであった。
神経の集中するそこの裂傷は、体のどこの部位よりも痛みと熱を帯びる。その痛みに怖じけるあまり息を震わせては嗚咽を漏らすルゥエを一瞥すると、主人はそこから離れ次はルゥエの胸元へと着けるのであった。
依然として泣きじゃくるルゥエの胸元に手を這わせると、そこにて乳房を包み込んでいたシルクの胸当てをワシ掴みショーツの時同様に剥ぎ取る。
露わになるルゥエの胸元は、両腕を掲げている姿勢も相成ってか乳房が重力に潰されてなんとも平坦な姿をそこに晒していた。
幼児体型ゆえに皮下脂肪を蓄えた体はそこそこに肉付きも良いのだが、こと未発達の乳房に至ってはそれも例外である。少年のものと変わらぬであろうアバラの浮いたそこには、桃の蕾を思わせうかのような乳首がツンと天を向いては外気に震えるばかりであった。
それを前に屈みこむと、主人はその脇から目線を揃えては斯様なルゥエの幼い胸元の丘陵を眺めて回す。
そうして立ちあがっては改めて、今のルゥエの眺望を見渡した。
>>124
更新が不定期になってしまい申し訳ありませんでした。
楽しんでいただければ幸いです
やっぱりエタったね
しょせんこんなもん
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