【艦これ】神通「優しすぎる提督」 (148)

※艦隊これくしょんのSSです

※ごくたまに安価あり

※荒らし、批判等はNGの方向で

※口調崩壊、キャラ崩壊はしていたりしていなかったり

※過去作の鎮守府とは別の話

※誤字脱字があったり、駄文だったり、改行が妙なところであったり
 それでもOKな人は↓どうぞ
 お手柔らかに見てもらえると嬉しいです

1作目:【艦これ】木曾「スキンシップをしてこない提督」
     【艦これ】木曾「スキンシップをしてこない提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419426357/)

2作目:【艦これ】青葉「仮面をつけた提督」
     【艦これ】青葉「仮面をつけた提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419743288/#footer)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420348867

まってた

立て乙です
ヲ級にも期待しちゃう

 この鎮守府の朝は少し遅い。

 朝の6時半過ぎ、太陽が昇り始めるころ。軽巡洋艦寮のとある部屋で、一人の女の子が目を覚ました。

??「ん…もう朝…?」

 その女の子は目を擦りながら体を起こした。

 彼女は神通。川内型軽巡洋艦の二番艦である。

神通「あまり眠れなかったな…」

 その原因は深夜。神通が眠り始めた1時頃、夜間演習から帰ってきた相部屋で姉の川内が、寝ていた神通を叩き起こし、

演習での自分の武勇伝を夜通しで聞かせたのだ。

川内「もうとにかくバーッって撃ってさ!それで相手がガシーンって防御したから私がバババーッてさらに追撃してね!

   それから―」

神通「へー…そうだったんですかぁ~…」

 ちなみに真面目な神通は姉の話を聞き流そうとはせず、寝ぼけ眼で聞いていた。そして語り終わったのは朝の3時頃。

川内が語り終わると同時に、2人とも眠ってしまったのだ。

川内「くかー…くかー…」

 そして当の川内は今もベッドの上で眠りこけている。

 神通は今、提督の秘書艦なので、朝の点呼より早く提督の部屋へ向かわなければならなかった。神通はそのことを思い

出し、手早く着替え始めた。着替え終わると(やはり女の子なのか)髪の毛を梳かして、部屋を出ようとし、今も寝ている

川内の方を見た。

 この鎮守府では、夜間演習組と夜間遠征組は朝の点呼が免除される。よって、川内は朝の点呼に参加しなくても良いので

神通は川内を起こさずに行くことにした。

神通(川内姉さん、昨夜はお疲れさま。今日はゆっくり休んでくださいね)

 神通は心の中でだけそう言うと、足早に部屋を出て執務室へ向かった。あの提督はもう執務室にいるだろう。

 神通は執務室に行く途中から走り出した。あまり遅れてはいけないと考えてのことだったが、執務室に着く頃には、息が

上がっていて、額から汗も出ていた。

神通(部屋から執務室まで遠すぎでした…)

 そう考えながら、神通はノックも忘れて、ドアを少し乱暴に開き執務室に駆け込んだ。

神通「すみません、遅れました!」

 神通がそう言うと、執務室にいた1人の男と6人の女の子たちが一斉に神通の方を見た。

神通「え…」

提督「あーっと、今夜間遠征組の報告を受けているところだから、少し待っててくれ」

 そう言ったのは、20代中盤に見える男、この鎮守府の提督だった。

神通「あ…はい、すみません…」

 神通はそう言うと、ドアの傍に立った。神通は自分が恥ずかしくなり、顔を少し紅くして俯いてしまった。それを見た

夜間遠征組の艦娘達がくすくすと笑った。そんな様子の艦娘達を見て、提督が言った。

提督「球磨、報告を続けてくれ」

球磨「あ、わかったクマ」

 球磨が報告を終えると、提督が優しい声で言った。

提督「皆、お疲れ様。よくやったよ。朝の点呼は休みでいいから、今日はゆっくり体を休めて明日に備えてくれ」

遠征組「はい!」

 遠征組は敬礼して返事を返した。そして、神通の方を見てくすくす笑いながら部屋を出ていった。そして、皆が執務室を

出てから神通は頭を下げてこう言った。

神通「すみません!先ほどは失礼しました!」

提督「いいっていいって。頭を上げてくれ。それにしても、神通が遅れるなんて珍しいね。ま、大方夜に川内の夜戦の話を

   聞かされて、寝坊したってところだろ?」

神通「はい、その通りです…」

 神通は、提督に全て見透かされていると思われると、また恥ずかしくなった。

提督「だから遅れると思って走ってきたのかな?汗が出ているよ」

 提督はそう言うと、神通に近づき、自分のハンカチで神通の汗を優しく拭いた。

神通「あ…すみません…///」

 神通はまた少し恥ずかしくなると、頬が紅くなり、息も少し荒くなった。

提督「神通、本当に大丈夫か?顔は紅いし、息も荒いし…もしかして熱でも―」

 提督がそう言って額を当てようとすると、神通は飛び退いた。

神通「いえっ、大丈夫です!ホントに!」

提督「そ、そうか…」

 提督は神通が凄い勢いで飛び退くのを見て若干凹むと、時計を見た。時刻は間もなく7時になる。朝の点呼の時間が

近かった。

提督「っと、そろそろ朝の点呼に向かおう。連絡事項とかがあるけど、それは朝食の後でね」

神通「は、はい」

 神通は息を整えて、提督と一緒に朝の点呼が行われる運動場へ向かった。

 朝の点呼が終わると、朝食の時間になった。皆は寝起きなので、ゆっくりとご飯を食べていたが、神通はさっさとご飯を

食べて、食器を片付けた。それを見て、まだ眠いのか川内が眠そうな声で言った。

川内「おー…神通はいつも食べるのが早いねー…」

神通「姉さんも早く食べてください。早く食べないと、朝食の時間が終わってしまいますよ?」

川内「あーい…」

神通「そう言えば、昨日の演習の報告書、もう書いたんですか?」

川内「…やべ」

神通「はぁ…後で私も手伝いますから、早く食べてください…」

川内「わーありがとー、さすが私の妹だー」

 神通はそんな川内の言葉を背中に受けながら、食堂を出た。そして、執務室へと向かう。

 執務室に着くと、提督は既に朝食を終えて書類仕事を始めていた。

神通「お待たせしました」

提督「いや、いつも早いね。早速だけど、連絡事項がいくつかあってね―」

 連絡事項を終えると、神通が少し控えめに言った。

神通「あの、提督、少しお願いがあるんですけど…」

提督「なんだい?言ってごらんよ」

神通「あの、午前中に用事がありまして、午前中だけ秘書艦の仕事を外させていただけませんか?」

提督「ああ、その程度か。いいよ、それくらいなら」

 提督は『優しく』そう言った。神通はそのことにまた違和感を感じた。

神通(また…。特に理由も聞かないで快諾してくれるなんて…)

神通「…ありがとうございます。では、9時からは失礼します」

提督「ああ。俺のことは気にしないでな」

 9時までは、神通は提督と一緒に書類仕事を片付けていく。そして、9時になると神通は最初の用事を済ますために

自分の部屋へと向かう。

神通(姉さん、ちゃんと報告書を書いているかしら…?)

 神通はそう思いながら部屋に入ると、川内は机の上で突っ伏して寝ていた。そして、腕の下には真っ白な報告書が。

神通「やっぱり…。姉さん起きて」

 神通がそう言いながら川内をゆすったが、川内は起きる様子がない。

川内「んー…」

神通「もう…」

 いくら姉のために頑張りたい神通でも、参加していない演習のことなど書けるはずがない。神通は、このことを後で提督

に報告することにして、次の用事を済ますために厨房へ向かった。

 神通が厨房に着くと、そこには食器を洗っている鳳翔の姿があった。鳳翔が、神通が来たことに気づくと、皿を洗う手を

止めて、話しかけた。

鳳翔「あら、神通さん。どうしたの?」

神通「えっと、その…また、お弁当を作ろうと…」

 神通がそう恥ずかしながら言った。鳳翔は神通が週に3、4回のペースで厨房に来ることを知っていた。そして、誰に

弁当を作ろうとしているのかも知っていた。

鳳翔「そうですか。頑張ってくださいね。使った調理器具は自分で洗ってくださいね」

神通「はい」

 神通は、前は料理が得意な方ではなかったが、鳳翔や間宮に教えてもらい、少しずつ料理の腕は上達していった。

しかし、少し時間がかかるのが問題だった。

神通(それでも、あの人に美味しいと言ってもらいたいから…)

 神通はゆっくりと弁当のおかずを作り、弁当箱に可愛く盛り付けた。

 そして、ようやく弁当ができると、気づけば時間は12時前になっていた。

神通「少し時間をかけ過ぎちゃった…」

 そう言うと、鳳祥さんに調理器具は後で洗いますと伝えると、厨房を出ていった。皆が昼食のために食堂を出ていくのに

対し、神通は執務室へと急いで向かっていった。

 神通は執務室の前に着くと、軽くノックをした。

提督「どうぞ」

 中から提督の優しい声が聞こえてくる。

神通「失礼します」

 神通が控えめに返して入室した。そして、頭を下げてこう言った。

神通「午前中は秘書艦の仕事を外してしまって本当にすみません」

提督「いや、大丈夫だったよ」

神通「それでですね…お弁当を作ってきたのですが、よかったら食べてください」

提督「おお、また作ってくれたのか。いつもありがとうね。じゃ、早速食べようかな」

神通「それで、私もご一緒してもいいですか?」

提督「もちろん」

 そう言うと、提督と神通は提督の私室に移り、そこで弁当を食べた。提督が弁当を一口食べて言った。

提督「うん、美味しいよ。また腕が上達したんじゃないのか?」

神通「あ、ありがとうございます///」

 神通は、提督から真正面にそう言われると少し恥ずかしくなった。

 神通は、この優しい提督のことが好きだった。しかし、最初はこの提督のことを小心者と思っていた。なぜそう思って

いたのに、今は好きになってしまったのか。そうなるまでの話は、神通がこの鎮守府に着任した数か月前から始まる。

ここでいったん切ります。そして、訂正です。

>>11
 「皆が食堂を出ていく」→「皆が食堂に入っていく」

脳内補完お願いします。

頑張って、皆さんの期待に応えていこうと思います。

乙、今回も楽しみにしてます

乙乙
句読点じゃなくて文字数で改行だとスマホとかで見たとき読み辛い

おつ

おつおつ

神通さん毎朝オレンジ疲労になってそう


どうでもいいけど1スレ目を見直したらスキンシップをみて悶絶しました(小並感)
>まるゆは布団からもそもそと出てきて、のんびりと寝間着から提督使用の白いスクール水着に着替えた。

こんばんは。投下します。

>>19
 今気づきました。ご指摘ありがとうございます

 提督使用→提督指定で脳内補完お願いします。(マジで何やってんだよ提督…)

 神通がこの鎮守府に着任したのは数か月前のことである。

 真面目な神通は、この鎮守府で上手くやっていけるかどうかが不安だった。

神通(みんなの足を引っ張らないようにしなきゃ)

 そう考えながら神通は執務室に入った。

神通「失礼します。本日より、私、軽巡洋艦神通は貴方の鎮守府に着任しました。どうか、よろしくお願いします」

提督「はい、ようこそ我が鎮守府へ。我々は君を快く歓迎するよ。君は川内型軽巡洋艦の二番艦だってね。君の姉の川内、

   妹の那珂は既に着任しているから、後で挨拶するといい」

 そして、提督から鎮守府に関する概要を説明されると、薄めの冊子が渡された。

提督「それと、これが我が鎮守府だけのノーマルルールだ。一通り目を通してくれ」

神通「はい」

 神通はその冊子を受け取ってパラパラと見ていくと。すると、あるページに目が留まった。それは、出撃に関する内容

だった。問題なのは、撤退に関する項目である。そこには、真面目な神通でも目を疑うようなルールが載せられていた。

それは―

『第三章:出撃

  第二項・撤退について

  1:撤退の基準は以下のものとする。

    ・艦隊の内1隻以上が小破、中破、大破した場合

    ・艦隊の内4隻以上がいかなる軽微なものでも損傷を負った場合

    ・海域中枢部に入る直前に、艦隊の内3隻以上がいかなる軽微なものでも損傷を負った場合』




神通「あの、提督…これは一体…?」

 神通がその項目を指さして提督に見せると、提督は特に悪びれもせずに答えた。

提督「ああ、それもルールだから。君がどんなに疑問を感じようと、これに反した場合は罰則があるからね。で、一通り

   読み終わった?」

神通「あ、はい」

 そう言って神通は冊子を提督に返した。

提督「じゃ、君の寮の部屋は川内と相部屋だから」

 そう言って流されるがままに神通は部屋へと向かった。

 神通が新しい自分の部屋に着くと、川内や那珂と再開の挨拶を交わした。そして川内に、先ほどの撤退に関するルールに

ついて聞いた。

神通「あの、姉さん。この鎮守府、撤退の基準がとても低い気がするのですけど…?」

 そう切り出すと、妹の那珂がビクッと肩を震わせたが、2人は気づかない。

川内「あーあのルール?なんかさ、私が来た時からあんな感じだったんだよね」

神通「あんなルールでは、難しい海域など攻略できるはずがありません」

川内「あー、でも提督も何か思うところがあるんじゃないの?那珂は何か知ってる?ここに着任したの、私よりも前だった

   でしょ?」

 川内に話を振られると、那珂はまたビクッと肩を震わせて、少し慌てながら答えた。

那珂「へ?い、いや、別に何も知らないよ~?い、いやー、でもあのルールもいい感じだよ?私はアイドル(自称)だから、

   出撃とかでも無理なケガとかしないで済むし…ね」

 那珂のなぜかぎこちない反応に対し、川内と神通は特に疑問を感じなかったようだ。

神通「そうですか…」

川内「ふーん、そっかー。ま、よかったじゃない神通。あの提督、出撃に関してはチキンだけど、結構優しい人だからね」

神通「優しい?」

川内「あの提督、艦娘からの頼み事は大抵断らないよ?まあ、度を過ぎたこととか出撃とかのことに関しては少し厳しい

   けど」

神通「そうなんですか…」

 神通は、あの奇妙な撤退のルールについて考えていたので、川内が言っていた『優しい提督』についてはあまり深く考え

なかった。

 神通が着任してから1週間、神通はここの提督がどういう人かがやっとわかった。提督は、ほとんどの艦娘からは尊敬

されていて、提督は艦娘達の要望を無下に断ったりはせず、むしろ快諾してくれる人だった。

暁「司令かーん、そろそろ新しい装備が欲しいんだけどー」

提督「えーと、今は資材に若干の余裕があるから…よし、少し開発してみようか」

鈴谷「提督ー。最近私働きっぱなしがするから少し休暇が欲しいんですけどー」

提督「そうだね。鈴谷は最近遠征でも演習でも頑張っているし、少し休暇をあげよう。しっかり体を休めてね」

陸奥「提督、長門姉がいなくて少し寂しいんだけど」

提督「よし、建造してみようか」

※この後一回で建造できました。

金剛「Heyテートクゥ、紅茶が飲みたいネー」

提督「後で発注しとくから、少し我慢してくれ」

 逆に否定する要望もあったが。

川内「提督ー!夜戦させてー!」

提督「あきらめるんだ」

 神通はこのやり取りを見て、微笑ましいと思う反面、たるんでいると思った。軍艦だったころの神通が厳しすぎる訓練を

行っていたせいか、神通は人一倍真面目で厳しかった。(ちなみに、この1週間で一部の駆逐艦の子たちからつけられた

あだ名は鬼教官だった)

 そして、神通が旗艦として出撃していた時。2度目の戦闘を終えると、神通以外の艦娘の内4隻が損傷していた。

しかし、皆の損傷の度合いはとても微々たるものだった。神通は、落ち着いて鎮守府に通信を入れた。珍しいことにこの

鎮守府では通信の際に、傍受されない特殊な無線を使用していた。

神通「こちら、神通率いる第一艦隊。2度目の戦闘が終了。被害は、扶桑、最上、鬼怒、敷波。いずれも、損傷の度合いは

   軽微なもので、今後の戦闘に支障の出るものではないかと」

 神通の当然と言えば当然の判断に対し、提督は一言、

提督『撤退してくれ』

 と返した。それを聞いて神通は、少し声を荒げて反論した。

神通「なぜですか!?あと少しで中枢部に奇襲をかけられるところなのに!ここは、多少の損傷を考えずに突っ込んだ方が

   燃費的にも効率的にも―」

提督『撤退しろと言っている』

 提督の、少し低めな声を聞いて、神通も少し落ち着き、怒りを抑えてこう返した。

神通「…わかりました。これより、神通率いる第一艦隊は鎮守府に帰投します」

提督『了解』

 そして神通が鎮守府に帰投し、提督に報告をすると、神通以外の艦娘達は執務室を出ていった。そして、神通だけが

執務室に残り、提督にこう言った。

神通「…なぜ、撤退させたんですか?」

提督「…ルールにあっただろう。4隻以上の艦娘が損傷した場合は、損傷の程度に構わず撤退をすると」

神通「たとえルールだったとしても、あの時進撃していれば、中枢部を撃滅することができたかもしれないんですよ?

   そのチャンスをみすみす逃すなんて…」

 提督は神通の言葉を黙って聞いていた。そのあまり関心がなさそうな提督の反応を見て、神通も徐々にイラついてきた。

そこで神通は、決定的な一言を言ってしまう。

神通「それに、私たちは例え轟沈したとしても、代わりがまた造れるんでしょう!艦娘ってそういうものなんでしょう!

   それなのに―」

 神通はそこで言葉を切った。切ってしまった。それは、提督から物凄い目つきで睨まれたからだ。

提督「…それは本気で言ってるのか?」

 その声は、普段の優しい提督とは思えないような低い声で、鋭い目つきだった。神通は、その形相に怯んでしまいその先

が言えなかった。

神通「……」

提督「俺は少なくとも、お前らのことをいくらでも代わりがあるような乱造品とは思っていないし、お前らを轟沈させよう

   とも思っていない。ただ俺は、お前らが沈むのが、傷つくのが見たくないだけだ。もし俺が、お前ら艦娘を沈めて

   でも深海棲艦を全滅しろと上層部から言われたら、俺はそんなクソッたれな上層部を本気で潰すつもりだよ」

神通「……」

 神通は、その提督の言葉に何も返せなかった。その言葉からは、提督の決意というものが感じられる。

提督「俺が撤退に関するルールを緩くしたのもそのためだ。敵を倒すことなんてどうでもいい。俺はただ、皆が沈まずに

   ここに戻ってきて、皆で笑い合って過ごしたいだけだよ。代わりの奴なんて、前の奴と姿形は一緒でも、前の奴以上

   に戦果を挙げても、中身は全く違うんだ。そんなの、俺は嫌だよ」

 その提督が涙目で語った、子供の言い訳のような言葉を聞くと、神通はさっき自分が言っていたことを思い出して、頭を

下げた。

神通「…すみませんでした。先ほどは無礼なことを言ってしまって…」

提督「いや、いいんだ。さっき俺が言ったことは、ほとんど俺のわがままみたいなものだから」

 そして、提督が神通を見て言った。

提督「神通、お前はそうやって何でもかんでも真面目に考えてしまう性格なんだろう。お前が着任した日にルールを見た時

   の反応からわかってた。だけど、その分物事を冷静に見ることができるし、さっきみたいに俺に堂々と意見を具申

   することもできる奴だ。俺はそんな奴を初めて見たよ。今までの奴は、俺が決めたルールに甘んじていたしな」

神通「そうですか…」

 そして提督が、神通にとって決定的なことを言った。



提督「俺は、神通のそう真面目に考えるところが好きだよ」



神通「……え?」

 もちろん、提督は『異性として』好きと言ったわけではなく、好悪で言ったのだ。だが、神通は提督が『異性として』

好きと言ったのだと勘違いした。

神通「…それって、もしかして…」

 神通は、自分の心臓がドキドキしていることに気付いた。そして、神通が何か言おうとすると、提督は自分が何を言った

のかに気付き、焦って言い直した。

提督「あ、違うからな!俺は異性としてお前が好きってわけじゃなくて、ただいい奴だなぁって思っただけで!」

神通「あ…そうでしたか…ですよね…」

 神通は少しがっかりしたような口調でそう言った。

神通(なんで私…がっかりしてるんだろう…)

 神通がそう考えているのを気にせず、提督は言った。

提督「さ、お前も早く補給をして休みなさい。戦闘の報告書の提出は明日でいいから」

神通「…わかりました」

 神通はそう言うと、執務室から出て自分の部屋へと戻って行こうとした。だがその前に、廊下の角に隠れて自分の胸に

手をやり、まだ自分の心臓がドキドキしていることを確かめた。

神通(ああ…そうか…)

 そして、神通は自分の中に芽生えたある感情に気付いた。それを、かすかな声に出した。



神通「…私、提督のことが…好き、なんだ…」



 それが、提督への『異性としての』好意に気付いた瞬間だった。

今日はここまでです。次の投下は明日の午前中を予定しています。

夜に投下した分は過去の話だってことを少しの間忘れてしまった自分がいる…(自分で書いたのに)

それではまた明日。


念願の比叡がようやく着任したのに、大型建造落ちだから素直に喜べない。


神通のおっぱいは柔らかそう

おはようございます。

投下します。

 時は戻って現在。

 神通は提督と昼食を食べた後、厨房で2人分の弁当箱を洗っていた。神通は弁当箱を洗いながら、自分が着任した当時の

ことを思い出していた。

神通(あの時から、提督の覚悟というものをやっと理解することができました。そして、あの人への恋心というものも自覚

   しました。今私は、提督のために尽くしたいです)

 神通は微笑みながらそう思いつつも、弁当箱を洗う手を止めない。だが、神通にはまだ気がかりなことがあった。

神通(ですが、提督はまだ何か心の中に抱えているものがあるようですが…)

 そう思うところはいくつかあった。提督が言った、「代わりの奴なんて、前の奴と中身は全然違う」という言葉、さらに

当時はあまり気にしていなかったが、川内型三姉妹の中で最古参の那珂の何か知っていそうな態度。

神通(今度、那珂にも聞いてみようかな…?)

 そう思いながら、神通は弁当箱を洗うのを続けた。

 弁当箱を洗い終わると、神通は執務室に戻り、再び提督と書類整理の仕事を再開した。そして、黙々と仕事を進めると、

時刻は16時になっていた。そして、提督が椅子から立ち上がった。

提督「そろそろ、今日の最終の出撃艦隊が出撃する時間だ。埠頭へ行こう」

神通「はい」

 そう神通が返すと、2人は執務室を出て埠頭へと向かう。

 埠頭に着くと、既に出撃艦隊は艤装を装備して整列していた。そしてこの艦隊の旗艦の那珂が提督に気づくと、

那珂「気を付け!」

 普段はおちゃらけている那珂だが、こういう時は真面目な態度をしている。神通はそんな那珂に対し、暖かい眼差しを

向けた。

那珂「敬礼!」

 すると、出撃艦隊全員が敬礼する。提督が答礼すると、全員が休めの体形になる。そして、那珂が一歩前に出た。

那珂「これより、軽巡洋艦那珂率いる満潮、霞、古鷹、加古、龍驤の6名は鎮守府海域・南西諸島防衛線へ、はぐれ部隊の

   討伐に出撃します」

提督「了解。くれぐれも、無茶はしないでくれ」

那珂「了解!」

 那珂が再び敬礼する。

 この艦隊には、最近この鎮守府に着任した霞が配属されている。着任した時から霞は口が悪いことがわかっていた。

今この時も、不機嫌そうな顔をしている。

提督(仕方ないんだ。この鎮守府に慣れてもらうためには…)

 提督はその様子を見て少し不安に思いながらも出撃艦隊を出撃させた。

 出撃艦隊が埠頭を出発すると、提督と神通は執務室に戻り、また書類仕事を始める。

 そして、艦隊が出撃してから数時間後、提督の無線に報告が入った。提督と神通に緊張が走る。提督は無線を取り、通信

を始めた。無線の向こう側からは、やはり真面目モードの那珂の声が聞こえてくる。

那珂『こちら、那珂率いる第一艦隊。1度目の戦闘が終了。被害は霞のみ。損傷度合いは小破です』

提督「了解。撤退してくれ」

 提督のその言葉が聞こえたのか、無線から霞の怒った声が聞こえてくる。

霞『この程度の傷、どうってことない!私はまだ戦えるわ!進撃させなさいよ!』

提督「ダメだ。こちらが決めたルール通り、小破者が1名出たことで撤退を命令する」

霞『小破程度のことで…ふざけるんじゃないわよ、このクソ提督!』

 提督は、ここ1週間で霞からクソ提督と言われることに慣れてしまった。だから、提督はその程度のことでは怯まない。

提督「撤退しろと言っているんだ!」

 珍しく提督の怒った声が効いたのか、霞は何も言わなくなった。

提督「…那珂、艦隊を連れて鎮守府に撤退するんだ。道中は気を付けるように」

那珂「了解」

 そう言うと、無線は切れた。そして、提督は無線を置くと、「はぁ」と小さく息を吐いた。それを見た神通が慎重に

話しかけた。

神通「大変でしたね」

提督「アイツと分かり合えるのは…まだ先だろうな…」

 提督はそう言うと、天井を仰いだ。

クソはぼののやろ

まだ屑じゃないだけ

 無線でのやり取りから数時間後、第一艦隊が帰ってきた。すると、予想通り不機嫌な霞が。

那珂「報告します。軽巡洋艦那珂率いる第一艦隊が帰投しました。被害は霞が小破。それ以外の損傷は無しです。なお、

   はぐれ部隊の討伐には失敗しました。申し訳ありません」

提督「いや、いいんだ。皆無事で何よりだよ」

 その言葉に、霞以外の第一艦隊は緊張が解けたようだ。しかし、さっきまで黙っていた霞が一歩前へ出た。

霞「クソ提督!さっきのあれはどういうつもりよ!」

提督「…俺が決めたルールに則って、命令を下しただけだ。そのルールは、お前も知っているはずだが?」

霞「こんな感じじゃ、いつまでたっても新海域なんて開けないわよ!」

 ちなみにこの鎮守府の戦果は、同じ地方の鎮守府の中でも下位に位置している。そして、この鎮守府は沖ノ島海域が

未だに攻略できていない。

提督「それでもいい。俺は、皆が無事に帰ってきてくれれば」

 今まで黙っていた古鷹、加古、満潮、龍驤は、この提督の優しさに救われたことがあるので、このルールには異を唱えた

事が一度もない。だから、この4人は提督のその言葉が純粋に嬉しかった。

 しかし、那珂は何か思いつめたような表情をしている。神通はそれが気になった。

 そして霞は、その提督の言葉にさらにムカついて、ある言葉を言ってしまう。

>>35
 すみません。こちらのミスです。

 ですが、このままでお楽しみいただけますか?

霞「あんた、まさか艦娘が轟沈するのが怖いんじゃないの?」

 神通は、霞のその言葉に提督の肩がピクッと震えたように見えた。そして、那珂が唇をかみしめている。

那珂「霞ちゃん、もうやめなよ…」

霞「あんたは黙ってなさいよ。いいじゃないの、別に轟沈させても?私たちは沈んでもいくらでも作れるんでしょ?

  だったら、別に私たちを沈めても問題ないじゃない。そんな存在に情を移すなんて、正直気味が悪いわよ」

 神通が提督を見ると、霞のその一言一言に提督は怯えているようだ。提督の体が震えて、座っている椅子がカタカタと

音を立てている。

霞「それともあんた、もしかして―」

 そして霞がその先を言おうとする前に、隣にいた那珂が叫んだ。



那珂「霞!いい加減にしなさい!」



 普段那珂が出さないような声に、霞を含め執務室が凍り付いた。それでもなお、那珂は声を上げる。

那珂「あなた、提督に向かってどういう口の利き方してるのよ!仮にもこの鎮守府の最高責任者でありトップの人に

   向かって無礼な口を利くなんて、恥を知りなさい!」

全員「……」

 那珂以外の全員が、提督でさえも、何も言えなかった。それほどまでに、那珂の激怒した声は怖かった。

那珂「…すみませんでした。声を荒げてしまい」

 那珂がそう言うと、提督はぎこちなく答えた。

提督「い、いや。いいんだ。俺のために怒ってくれてありがとう」

 提督は気を取り直すと、こう言った。

提督「では各自、休んで明日に備えてくれ。那珂は今日の報告書を作成してくれ。それから、霞はドックへ」

霞「…わかったわよ」

 そう霞が言うと、第一艦隊は部屋を出ていった。あれだけの暴言を言った霞に対して何のお咎めもないというのは、

やはりこの提督の優しさか、と塵津は考えた。そして神通は、さっきの提督の様子からある不安がよぎる。

神通「まさか提督、あなた…」

 神通のその質問に、提督は少し考えてこう言った。

提督「神通、お前は俺と似ている。物事を真面目に考えすぎ、気苦労が絶えない。そこが俺と似ている。ま、お前の気苦労

   の原因は少しおかしい姉妹のせいかもしれないがね」

 提督がそう冗談交じりに言うと、神通は少しだけ微笑んだ。

提督「だからこそ、お前に話せるのかもな。俺が、あの撤退のルールを決めた本当の理由を」

神通「本当の…理由…?」

 提督は神通の反応を見て頷いた。その反応を見て、神通は提督に詰め寄る。

神通「…よろしければ、話していただけませんか?」

提督「さっき那珂が激昂したこの雰囲気で話すのは少し嫌だ。今日の21時に秘書艦としての報告をしにここへ来るだろう?

   そこで話すよ」

神通「…わかりました」

 神通がそう答えると、2人は夕食の時間まで書類仕事を続けた。その間、提督と神通は一度も会話を交わさなかった。

ここでいったん切ります。

霞の口調に関してはすみません。今後、直していこうと思います。



クソ提督→クズ

脳内補完お願いします(もっとひどいじゃないか…)

投下します。

 時は流れて夕食の時間。

 提督は自室で夕食を食べ、神通は食堂で皆と夕食を食べていた。だが、神通はこの後の提督の話が気になりすぎて、

料理の味が全く分からなかった。

 ちなみに、那珂は、

那珂「あーあ、アイドルがあんな大声あげちゃったせいで喉がおかしいよー」

 といった感じで、いつもの様子に戻っていた。霞は、先ほどの那珂の怒鳴り声が怖かったのか、那珂の声を聞くたびに

肩を震わせている。

 そして夕食が終わると、神通には21時の約束まで自由時間が与えられている。

 神通は、川内の夜間演習報告書が今日中にできないと報告するのを忘れていた。そこで、一応川内に聞くことにした。

神通「姉さん、昨夜の演習の報告書は…」

 神通は、書いていないのだろうな、と予想していたがそれは大きく外れた。

川内「へ?書いちゃったよ?夕方ぐらいに」

神通「へえ!?」

 川内の意外過ぎる答えに神通はおかしな声を上げた。

川内「いやー、私が本気出すのは陽が沈み始める夕方からだからねー」

神通「そんな遅くに書いて、昨夜のことを覚えていたんですか…?」

川内「うん。ほら」

 そう言って見せられた報告書には、神通が目を見張るほど戦闘の経過が詳細に書かれていた。

神通「なんでいつもこうしないんですか…」

川内「いやー、なんだかねー。私の性?ってヤツ?」

 川内は神通の問いに対して曖昧に答えた。

 そして、約束の21時前になると、神通は執務室の前に来た。ドアをノックする。

提督「どうぞ」

神通「失礼します」

 提督の返事を聞くや否や、神通は足早に部屋に入った。それほどまで、神通は提督の話が気になってしょうがなかった。

提督「じゃあ、話をする前に今日の報告をしてくれ」

神通「はい」

 そして、手早く報告を済ませると、こう切り出した。

神通「では、提督…その、過去の話を聞かせていただけませんか?」

提督「…ああ。でも、場所を移そう」

 提督はそう言うと、執務室のドアに『重要会議中』という札をかけると、執務室に隣接している自分の私室に神通を

誘った。

 提督の私室は、神通たちの部屋と同じように、シングルのベッド、机と椅子、本棚が置いてあった。違いと言えば、

シングルのベッドが一つだけということだけだった。

提督「少し、長い話になる。茶を沸かすからベッドに座っていてくれ」

神通「あ、私も手伝いを―」

提督「大丈夫だから」

 神通の気遣いを優しく断ると、提督は電気ポッドでお湯を沸かし始める。その間に、棚から湯呑を2つ取り出した。

その間に、神通はベッドにちょこんと腰かけた。

 お湯が沸くと、提督は2つの湯呑に茶葉を入れてお湯を注いだ。そして、湯呑を1つ神通に差し出した。

提督「熱いから気をつけろよ」

神通「ありがとうございます」

 神通は湯呑を渡され、お茶を一口飲む。

神通「美味しい…です」

提督「ありがとう」

 そう言いながら、提督は部屋にあった椅子を引っ張ってきて神通の前に置き、そこに腰かけた。

提督「さて、どこから話そうか…」

 神通は、早く提督の話が聞きたかった。だから、そんな悩むような態度が少しもどかしかった。

 しばし提督はうーん、と唸ってやがて口を開いた。

提督「神通、俺が鎮守府に最初に着任した時、秘書艦にした奴を知っているか?」

 提督のその奇妙な質問に、神通は少し戸惑ったがすぐに答えた。

神通「確か、五月雨さん、でしたよね?」

 五月雨は、白露型駆逐艦の六番艦である。蒼く長い髪が特徴で、心優しい性格だ。その性格と優しい雰囲気に惹かれ、

提督は彼女を最初の秘書艦にしたのだ。

提督「その五月雨、今は錬度(レベル)はいくつだか知っているか?」

神通「はい、ええと…21だったと思います」

 神通は秘書艦として、一通りの艦娘達の錬度や性能を熟知している。そして、自分の錬度はもう上限の99であることも

知っていた。

神通「それが何か…?」

 神通は少し疑問に思った。今の質問が提督の過去とどうつながるのかが読めない。

提督「そうだな…じゃ、率直に言うとするか」

 そう言ったが、提督は少し俯いて、息を吐いた。そして、提督が湯呑を持つ手は震えていた。神通はそれを見て、

提督は、本当はその過去のことを話すのは辛いのだと予想した。

神通「あの、提督…そんなに辛いのなら…別に話さなくても…」

提督「大丈夫だ。今話した方がいい。ここでお茶を濁しても神通はもどかしいだろう」

 そう言って提督は深呼吸をし、もう一度顔を下げる。

 そして、意を決したように顔を上げて衝撃的な一言を放った。






提督「あの五月雨は、2人目なんだよ」





 神通は、提督が何を言っているのかわからなかった。

神通「え…それって、どういう…ことですか…?」

提督「言った通りだ。あの五月雨は2人目だ」

 神通は、ようやく提督がどういう意味で言ったのかを理解した。

 つまり、今の五月雨は最初の五月雨ではなく、最初の五月雨は消えたということだ。

神通「なんで…そんなことに…?」

提督「…それを話すには、俺が鎮守府に着任した頃まで話が遡る。それでもいいか?」

神通「…はい」

 神通がそう返すと、提督は椅子に深く座りなおした。そして、ゆっくりと語りだす。

提督「あれは、1年前の春―」

ここで一回切ります。

ここから若干鬱展開になりますので、ご注意ください。

乙です
続き待ってます

再開します

どんとこい!

 今より1年前の春、提督は鎮守府に着任した。

提督「ここが…鎮守府か…」

 この男、提督は海沿いの街の中に建っている、古めかしい建物を見上げて呟いた。提督は元々、海軍兵の提督なんかには

なりたくはなかった。しかし、深海棲艦という謎の敵の出現とそれに伴う海運業界の被害によって、この島国の資源が枯渇

し始めていることを憂いた海軍及び政府によって強制的に提督に任命された。しかし、提督は頼まれた仕事は断らない主義

なので、この仕事を受けたのだ。

 そんなことを考えていると、突然鎮守府の門がひとりでに開き、中から白系のセーラー服を着た蒼く長い髪の女の子が

出てきた。年齢は10代前半ぐらいだろう。その女の子は提督に歩み寄り、顔を確認するとこう言った。

??「あなたが新しく着任した提督ですね?」

提督「ああ。君は確か―」

 提督が女の子の名前を言おうとすると、その前に女の子は姿勢を正し、敬礼をしてこう言った。

五月雨「はい、五月雨って言います!よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」



提督「それが、アイツとの初めての出会いだった。アイツは本当にいい奴だった。海軍のことなんて全く知らなかった俺

   に、海のことを、戦うということを、深海棲艦のことを一から十まで教えてくれた。どんな仕事だって文句を言わず

   手伝ってくれて、本当に優しい奴だった」

神通「そうですか…」

 神通は、提督の自慢話のような話を聞かされて、こんな時に不謹慎とは思ったが少し妬ましかった。だから、神通は半ば

強めの口調で先を促した。

神通「それからは?」

提督「ああ…」

 五月雨は本当に優しい子だった。常に提督のことを気にかけていて、どんな些末な仕事でも進んで手伝おうとしていた。

 だが提督は、この子が健気だと思う反面、どこか脆く儚いと考えていた。そこで提督は、2人で昼食を食べている時に

聞いた。

提督「五月雨、少しいいか?」

五月雨「はい、何ですか?」

提督「お前は、深海棲艦と戦うということが怖くないのか?」

五月雨「………」

 提督の質問に対し、五月雨は黙ってしまった。

 この鎮守府には、未だに五月雨一人しか艦娘がいない。それは、資材が少ないのと、提督が五月雨の能力を確かめている

からだ。だから、今は五月雨一人が鎮守府周辺の海域の深海棲艦を倒している。

提督「今はこの鎮守府の貯蓄している資材はまだ少ない。だから、新しい艦娘を建造することはできない。だから、五月雨

   一人で出撃させてしまっている。これに関しては素直に謝ろう。だが、その出撃で深海棲艦と戦うことに不安や怯え

   は無いのか?」

 提督の言葉に、五月雨は箸をテーブルに置いて、こう言った。

五月雨「……正直、怖いです」

提督「………」

五月雨「私は駆逐艦ですから、それほど大きな火力はありませんし、装甲も厚くはありません。だから、簡単に轟沈して

    しまうかもしれないです。ですから、私は深海棲艦と戦うのは怖いです…」

提督「…そうか」

 提督はそう聞いて、やはりこの子は脆く儚いと思った。だが、五月雨は続けてこう話す。

五月雨「ですがその反面、私は安心しています」

提督「?」

五月雨「初めてあなたに会った時、私があなたに抱いた第一印象は、優しそうな人でした。そして、この人なら私の命を

    預けることができると、そうも思いました」

 つまり、と五月雨は前置きして体を提督の方に乗り出して、笑顔でこう言った。


五月雨「あなたのような優しい提督が、私を轟沈させるとは思いません。そして、そうなるような無理な出撃をさせるとも

    思いません。ですから、私は深海棲艦と戦うのを恐れないのですよ」


提督「…そうか…」

 五月雨のその言葉に、提督は少し涙腺が緩んだ。自分のことをこんな風に思ってくれているとは思わなかった。そして、

提督が言うことができたのはただ一言。

提督「…ありがとう」

五月雨「もう…///」

 五月雨はそう言うと、提督の額にほんのわずかな間だけ唇をつけた。提督はその行動の意味が分からず、思わず五月雨を

見た。

提督「え…何を…?」

五月雨「さ、早くご飯食べちゃってください!まだまだ仕事は残ってるんですから!///」

提督「ちょ、おい!」

 提督は呼び止めたが、五月雨は知らんぷりをして足早に部屋を出ていった。

神通「なんだか惚気話になっていませんか?」

 神通はそこまで話を聞くと、ジト目で訊ねた。

提督「いや、そんなつもりはない」

 そう提督は否定したが、神通はまだジト目だった。

神通「それで、五月雨さんとその後どうなったんですか?」

 神通は、自分の態度が大きいというのを自覚しながらも、一人目の五月雨に対して大きな嫉妬を抱いていたので、少し

強引に聞いた。

提督「あ、あー…」

 すると提督が少し困ったような表情をしたので、神通は慌てて訂正した。

神通「あ、すみません。その…少し強引過ぎました…」

提督「い、いや大丈夫だ。それからは―」

 五月雨と話した後、提督は五月雨の想いに応えるようにした。五月雨が仕事を手伝う際は負担を減らすようにし、五月雨

が出撃する際はできるだけ近くに居るようにして安心させ、五月雨に負担がかかるような日程は組まず、五月雨の要望

(新しい装備や休暇など。決してエロい意味ではない)にはなるべく応えるようにした。そして、五月雨は決してその提督

の行動に思いっきり甘んじたりはしなかった。五月雨も、提督に対して気を遣っていた。

 そして、そんな風に鎮守府を動かしていくこと一か月、ようやく資材が溜まってきた。そこで、提督が五月雨との夕食で

こう言った。

提督「大分資材も溜まってきたな。そろそろ、新しい艦娘を建造するか…」

五月雨「建造ですか?」

提督「ああ、お前もそろそろ仲間が欲しいと思っていたんじゃないのか?さすがにこの鎮守府に二人っきりって言うのも

   寂しいし…」

五月雨「そうですね!できれば、私の姉たちや、妹の涼風が欲しいです!」

提督「そうだな。できるだけその願いに応えられるようにするよ。けど、建造できる艦娘ってランダムだしな…」


 そしてその翌日、提督は工廠に来て、妖精たちに資材を渡した。資材の量は、艦娘を建造できる最低限の量だった。

提督「これで、建造できるかな?」

妖精「いいですよー」

 妖精は首を縦に振った。そして、艦娘を練成する機械に渡された素材を注ぎ込む。すると、メーターのところに時間が

表示された。表示された時間は―

[建造時間【残り00:59:58】]

 そして、建造時間がカウントダウンを始めた。

提督「1時間…?」

 提督が疑問の声を上げると、妖精がこう言った。

妖精「えっとー、1時間ていうのは確か軽巡洋艦を建造する際にかかる時間ですねー」

提督「軽巡洋艦…?それって、この五月雨よりも強い?」

妖精「まー、今建造されている軽巡洋艦はー、そこの駆逐艦の五月雨さんより火力も装甲も上ですけどねー」

提督「本当ですか!やったよ五月雨!」

五月雨「はい、よかったです!」

提督「じゃ、1時間後にまたここに戻りますんで、お願いします」

妖精「りょーかーい」

 妖精がそう返すと、提督と五月雨は工廠を後にした。それから1時間、提督と五月雨は書類作業をしながらどんな娘が

来るのかを予想していた。


 そして1時間後、提督と五月雨は工廠に戻ってきた。

提督「妖精さん!完成しましたか?」

妖精「あー、そこにいるよー」

 妖精が指差すと、その先には五月雨よりも年上らしき女の子がいた。その子は、提督と五月雨に気づくと、振り返って

こう言った。

那珂「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー。よっろしくぅ~!」

 お団子頭にオレンジのスカート、年齢は10代後半の高校生ぐらいだろうか。その元気そうな顔を見て、提督と五月雨は

安心した。

提督「よかった…元気そうな奴で」

五月雨「そうですね、暗そうな子は正直嫌でしたから…」

 そして、提督が那珂に歩み寄った。

提督「ようこそ、我が鎮守府へ。俺が提督だ」

 次に五月雨が一歩前に出た。

五月雨「私が五月雨、提督の秘書艦です!」

 そして、提督がこう言った。

提督「まだこの鎮守府は、五月雨と君しか艦娘がいない、とても小規模なものだ。だが、君を心から歓迎しよう」

 その提督の言葉に対し、那珂はきっちりと敬礼をしてこう返した。

那珂「はい、私頑張っちゃいますから!」

五月雨「も~、それ私のセリフですよ~!」

 五月雨が若干涙目で抵抗すると、3人は笑いあった。

 そこまで聞くと、神通は少し驚いたような口調で言った。

神通「那珂は、この鎮守府が創立した頃からいたんですね…」

提督「知らなかったのか?」

神通「私たち三姉妹の中では一番最古参だというのは知っていましたが、いつからいたかは聞いていなかったので…」

 ここまで提督の話を聞いてから時計を見ると、時刻は22時を指している。すでに消灯時間を過ぎていた。

提督「ここまで少し時間をかけ過ぎてしまったな…眠くないか?」

神通「いえ、大丈夫です」

提督「…ちなみに、あの後3人で歓迎会をして、那珂の歌を10曲ほど聞かされたよ」

神通「それは…妹がすみませんでした…」

提督「いや、気にするな。どれもいい曲だったよ…」

 そこで提督は言葉を切ると、こう言った。

提督「そしてここから先の話が、過去の話の中心になる」

 提督がそう言うと、神通は姿勢を正した。

 そして、提督が続きを話しだす。

 那珂が着任すると、出撃でも大分負担が減った。やはり妖精が言っていた通り、軽巡洋艦の那珂は駆逐艦の五月雨より

火力が幾分か高く、敵を殲滅することも簡単になった。

五月雨「すこいです那珂さん!敵を一瞬でやっつけるなんて!」

那珂「いやー、それほどでもないかなー?」

 だが、出撃で敵を撃滅する毎に、出撃する海域もどんどん遠くなっていく。そうなると、提督は鎮守府を長い間空ける

ことができないので、鎮守府にいる提督と五月雨たちは無線でのやり取りをするようになった。当初、五月雨はこの無線の

会話を傍受されたり、ジャミングされたりしないかと危惧していた。しかし、提督はこう言った。

提督「大丈夫だ。妖精のお墨付きの優れ物だぞ?」

五月雨「でも、慢心してはいけませんよ?そのせいで沈んだ軍艦だっているのに…」

提督「慢心しているわけではないさ。だが、五月雨の言う通り気をつけないとな。少し細工をしておくか…」

 そう言って無線に細工をしている傍ら、五月雨に聞いた。

提督「五月雨、疲れてはいないか?」

五月雨「へ?」

提督「いや、那珂が着任してから出撃の回数が少し増えてね。そこで、俺が着任した時からいた五月雨は疲れているんじゃ

   ないかと思ってな」

五月雨「…私なら大丈夫ですよ」

提督「そうか…?俺には疲れているように見えるんだが?」

五月雨「…そうですね。少し疲れているのかもしれません」

提督「やっぱりか」

 そう言うと、提督はしばしの休息を五月雨に与えることにした。すると、提督は五月雨を抱きかかえて執務室にある

ソファに寝かせた。そして、優しく話しかける。

提督「五月雨、疲れているならそう言えばいいんだぞ?俺は別に怒ったりもしないし、無理に出撃させたりもしないから」

五月雨「はい…提督には、すべてお見通しなんですね…?」

提督「ああ、お前とは鎮守府創立以来の付き合いだしな」

 提督がそう言うと、五月雨は安心したような表情で眠ってしまった。その寝顔を見て、提督は少し思った。

提督(五月雨の様子に気づかないなんて…俺はバカだな。もう少し、五月雨と那珂のことを考えないとな)

 提督はそう思うと、机に戻って書類仕事を再開した。

 いったん切ります。

再び投下します。

 そして、空が曇っているある日、五月雨と那珂は南西諸島沖に出撃していた。旗艦は五月雨である。

 提督は、今日こそ南西諸島沖を制圧すると意気込んでいた。そして、五月雨と那珂もその提督の期待に応えようとして

いた。

五月雨「私たちが頑張らないと、ですね!」

那珂「うん!そして、この戦いで仲間が増えるといいね!」

 そんなことを言い合いながら、2人は戦闘区域に進んで行く。そこで那珂が、最近開発してもらった零式水上偵察機を

飛ばした。

五月雨「いいなー。私もああいうのが積めたらいいのに…」

那珂「んー、駆逐艦にああいう水上偵察機は積めないかなー…?」

 そして、数分後に偵察の結果が返ってきた。

那珂「敵3!軽巡1、駆逐艦2!距離、11000!」

 那珂がそう言うと、五月雨にも緊張が走る。那珂も身構えた。

 そして、空から雨の雫がぽつり、ぽつりと落ちてくると、五月雨達と深海棲艦達との戦闘が始まった。

 戦闘が始まってから数十分後、敵は沈黙した。雨脚は徐々に強くなっていた。そして、旗艦の五月雨は提督へ無線で連絡

しようとする。

五月雨「こちら、五月雨率いる第一艦隊。1度目の戦闘が終了。被害は、五月雨が小破。那珂は損傷なし。指示を」

 五月雨はそう言ったが、無線の奥からはノイズが聞こえてくるだけ。

五月雨「提督、指示を!」

 提督が答えないのに気付いたのか、那珂がこう言った。

那珂「雨のせいで電波が通じにくいんじゃないのかな?」

五月雨「…そうかもしれませんね」

 五月雨も那珂の言っていることが正しいと思ったので、五月雨は無線をしまった。

那珂「で、これからどうするの?」

 那珂が五月雨に聞く。その質問は、このまま進軍するか、撤退するかについてだった。

那珂「小破を気にせず、海域を攻略するためにこのまま行くか、体勢を立て直して出撃するために一度出直すか。それを

   決めるのは旗艦の五月雨ちゃんだよ」

 那珂にそう言われて、五月雨は少し考えた。

五月雨(提督は、私達が海域を攻略できれば喜ぶだろうな…。でも、私は小破しているしここで戻った方が安全かも…)

 五月雨はさらに考えて、やがて結論付けた。

五月雨「このまま行きましょう。今戻っても弾薬と燃料が無駄になるだけですし、一刻も早くこの海域を制圧しないと、

    提督も喜ばないでしょう」

那珂「そっか、わかった」

 基本的に、随伴艦は旗艦の言うことに従わなければならない。だから、那珂は五月雨の言うことに賛成した。

五月雨は、さらに心の中でだけ考えていた。

五月雨(それに、私は提督から信頼されている。それに応えないと!)

 五月雨と那珂は気合を入れて再び進軍し始めた。

 そして、再び進軍し始めてから小一時間が経つと、那珂が飛ばしていた零式水上偵察機から報告が入った。

那珂「敵5!軽巡1、雷巡1、駆逐艦3!距離8000!」

五月雨「うそ…すごい強そう…それに、近い!」

 五月雨がそう言った瞬間、五月雨の近くに敵の砲弾が着弾した。そして、大きな水柱を立てる。

五月雨「うそ、もう見つかったの!?」

那珂「まずいよ!こっちからも見える距離にいる!」

 そして、今までよりも多く、そして強そうな深海棲艦が迫ってきた。さらに間髪入れずに砲撃を始めた。

 五月雨と那珂は、敵の存在に気づいたのが少し遅かったので、反応が遅れた。

 最悪なのは、その深海棲艦たちの攻撃が全て五月雨に集中していたということだ。敵はおそらく、若干火力が強い那珂を

相手にするよりも、損傷を負っていて火力も低い五月雨を狙ったのだろう。そうして数を減らす作戦だった。

 那珂がそのことに気づくと、当たればクリティカルヒットは間違いないような軌道を描いた砲撃が五月雨に殺到する。

しかし、五月雨もそう簡単には喰らわず、ほとんどの弾を避けていたが、数発は掠ってしまった。

五月雨「きゃあっ!」

 五月雨は悲鳴を上げると倒れこんだ。

那珂「五月雨ちゃん!」

五月雨「私は大丈夫!それより―」

 五月雨が何か言おうとすると、那珂の近くに砲弾が着弾し、水しぶきが上がった。どうやら、駆逐艦の一、二隻が那珂に

向けて砲撃したようだ。

那珂「ひゃっ!」

 那珂が悲鳴を上げると、敵の雷巡がそれに気づき、那珂に向かって魚雷を放った。海面に沈んだ魚雷は軌道を残して那珂

へ一直線に向かっていく。

 その時、倒れこんでいた五月雨は、敵の雷巡が那珂に向けて魚雷を撃ったのを見逃さなかった。そして、狙われた那珂は

自分に魚雷が向かってくることにまだ気づいていないようだった。

五月雨(あれをまともに喰らったら、那珂さんは沈んじゃう!)

 五月雨はそう考えると、飛び起きて那珂の方へ向かって跳んだ。そして、那珂の目の前に着地する。すると五月雨は那珂

の盾になるような形になった。

那珂「へ、五月雨ちゃん!?」

五月雨「那珂さん、今のうちに逃げて!」

 そして―




 五月雨に魚雷が命中し、大きな爆発が起こった。



 爆発の衝撃で、とてつもない大きさの水しぶきが発生した。

那珂「五月雨ちゃぁぁぁあああん!!」

 那珂は叫んだが、返事が来ない。敵も、大きな水しぶきが起きたせいで若干の霧が発生して目が利かないらしく、那珂に

向けて攻撃はしてこなかった。

 やがて、霧が晴れると、那珂のほかには、敵が5人いるだけで、五月雨の姿はどこにもなかった。

那珂「へ…ウソでしょ…?五月雨ちゃん、いるんなら出てきて…」

 那珂はそう呟くが、五月雨は姿を現さない。そこで那珂は、声を大きくして五月雨の名を呼んだ。

那珂「五月雨ちゃん!いるなら返事をして!そして私の前に出てきて!」

 敵陣のど真ん中で大声を上げるというのは、自分の居場所を敵に知らせるようなものだった。それでも、那珂は構わず

声を上げる。そして、最後には涙を流しながら叫んだ。

那珂「五月雨ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 そして、那珂はその場に泣き崩れた。そして、ただ声を上げて泣くことしかできなかった。

 その鳴き声を聞いたのか、深海棲艦の5人が近づいてくる。そして、大砲を那珂に向ける。それに気づいた那珂は、顔を

上げると、普段の彼女とは思えないような眼で敵を睨みつけた。 

深海棲艦「……!」

 そして、敵が那珂の目つきに怯んでいるうちに、那珂は煙幕を使って周囲に煙を発生させ、その場から逃げだした。

逃げている間、那珂の目からは涙があふれ続けていた。

那珂「うわぁぁぁあぁぁぁ…あああぁぁぁああぁぁああ…!」

 那珂は泣きながら鎮守府に全速力で走って行った。

 鎮守府の埠頭に着くと、那珂はようやく自分の涙を拭いた。そして深呼吸をし、執務室へ向かう。

 那珂が執務室に入ろうとすると、突然ドアが開き、見慣れない女が出てきた。

 背が高く、和服を着ていて、長い髪をポニーテールにしてまとめていた。手には弓を持っている。

那珂「…あなたは?」

鳳翔「あ、私は軽空母・鳳翔と申します。本日付でこの鎮守府に着任しました。不束者ですが、よろしくお願いします」

那珂「…私は軽巡洋艦・那珂です。よろしくお願いします」

 すると、鳳翔と名乗った女性は那珂の顔を覗き込んで言った。

鳳翔「目が赤くなっているけど、どうしたの?」

那珂「い、いえ、ちょっと悩み事があって…」

鳳翔「…新参者でふてぶてしいのですが、私でよろしければいつでも相談に乗りますよ?」

那珂「…ありがとうございます」

 そう言うと、鳳翔は去って行った。

 那珂が室内に入ると、提督は若干嬉しそうだった。

提督「お帰り那珂!聞いてくれ、この鎮守府に空母が着任したぞ!これでウチの戦力もまた大きくなるんだ!」

 那珂は、提督が何も知らずに喜んでいるのを見て、怒りが湧いてきた。だが、ここで提督を責めても状況は何も

変わらないということを思い出し、那珂は怒りを抑えた。

 だが、提督はそんなことに気づかずにこう言った。

提督「そう言えば、五月雨はどうした?トイレか?」

 那珂は、提督にそう言われると、真実を話すしかないと考えて、少し小さめな声で言った。

那珂「…五月雨ちゃんは…もう戻ってきません」

提督「どういうことだ?」

 提督の気楽な物言いに、那珂は我慢が利かなくなり、こう言った。



那珂「五月雨ちゃんは、敵の攻撃を受けて轟沈しました。もう、この鎮守府に戻ってくることはあり得ません…!」



 提督の顔から、全ての表情が消えた。

 提督は、那珂の言ったことが信じられず、まだとぼけるしかなかった。

提督「…は?ど、どういうことだよ…」

那珂「だから、その通りの意味です…」

提督「…冗談はよせ。そんな冗談は笑えないよ」

那珂「冗談でも…そんなことは言いませんよ…」

提督「………嘘だろ?」

那珂「…………………」

 ようやく、現実を受け入れたのか、提督が事情を聞くことにした。

提督「…何が起こったのか話してくれ」

 那珂が、戦闘で何が起こったのかを詳細に話してくれた。五月雨が言った一言一言も教えてくれた。そして、五月雨の

最期の瞬間のことも話してくれた。那珂は、話している途中で涙目になり、話し終える頃には泣きじゃくっていた。

那珂「そして…ひぐっ、五月雨ちゃんは…私の身代わりになってっ、沈んでしまったんです…」

提督「…そうか」

 提督は、あくまでドライに対処しているつもりだったが、提督の目は潤んでいて、握っていた拳は震えていた。

 そして、提督はこう言った。

提督「…これより、この鎮守府は3日間の間、全ての活動を停止する。出撃も、遠征も、演習も、開発も、全てだ。

   せめて、静かに五月雨を弔うとしよう。那珂、ご苦労だった。悪いがこのことを鳳翔にも伝えてくれ。彼女には

   食堂で待機するように命令してある」

那珂「…はい」

 那珂はそう言うと、執務室を出ようとした。そこで、提督は那珂を呼び止めた。

提督「那珂」

那珂「…?」

 那珂は涙目で振り返った。それを見て、提督は優しい表情でこう言った。

提督「五月雨が沈んだのは、自分のせいだなんて考えるなよ。この責任は、軽はずみに出撃させた俺に責任がある。

   お前が責任を感じる事なんてないんだ…」

那珂「でも、五月雨ちゃんは私をかばって…」

提督「それは、五月雨の意志で行ったことさ。お前は、五月雨が命を懸けてでも守りたかった存在だ。それを忘れるなよ」

那珂「…はい」

 そう言うと、那珂は執務室のドアを閉めた。

>>70
>そして、敵が那珂の目つきに怯んでいるうちに、那珂は煙幕を使って周囲に煙を発生させ、その場から逃げだした。
やはり川内型。ニンジャの資質を感じる

 誰もいなくなった執務室で、提督は執務机に座りながら呟いた。

提督「そうだ…俺のせいだ…」

 五月雨に過度な期待をしてしまい、焦らせる状況を作らせてしまった。

 鎮守府を長い間空けるのはリスクがあると考えて無線を使用するようにし、提督自身が見守ることができない状況を

作ってしまった。

 早く海域を攻略すれば多くの報酬が貰えると思い、五月雨達にに無理な出撃を強いてしまった。

提督「ああ…」

 提督の頭には、五月雨が言っていた言葉が蘇ってくる。自分を信頼してくれていた五月雨の言葉が蘇ってきてしまう。

五月雨『五月雨って言います!よろしくお願いします』

五月雨『私は深海棲艦と戦うのが怖いです…』

提督「あ…あああ…」

五月雨『この人なら私の命を預けることができると、そうも思いました』

五月雨『…提督には、すべてお見通しなんですね…?』

提督「うあ…あああああ……」

 そして、提督の脳裏にあの言葉が蘇る。蘇ってしまった。


五月雨『あなたのような優しい提督が、私を轟沈させるとは思いません。そして、そうなるような無理な出撃をさせると

    も思いません。ですから、私は深海棲艦と戦うのを恐れないのですよ』


提督「あああああああ!!うわああああああああああああああああああああああああ!!」

 空虚な鎮守府に、提督の悲痛な叫び声が響き渡った。

今は小破進軍で轟沈はしないけど昔は小破進軍で轟沈してたの?
それとも大破の間違い?

>>75
中破轟沈が信じられていた時期はあったけどこれはこのSSの独自設定だろ

>>75はアスペか

提督「それが、はぁ…最初の五月雨と別れた時の話だ…ハァ、ハァ…」

 提督はその話を思い出したのか、若干呼吸が荒くなっている。神通はそれを聞いて、さすがに気分が悪くなってきた。

神通「そんなことが…。提督、辛いのなら、本当に話さなくてもよかったんですよ…?なんでそこまで…」

提督「いや、お前には聞いてもらいたかったんだ。あることを確かめるためにな…ハァ…」

神通「…?」

 提督はふう、と息を吐き、お茶を1杯飲むと、湯呑をテーブルに置いた。そしてまた、話し出す。

提督「それから3日間、俺は泣き続けた。そんなことをしても五月雨は帰ってこないって言うのに。それでも、俺には

   泣くことしかできなかった。那珂や鳳翔の説得も聞かなかった」

神通「………」

提督「だが、4日目になって、いつまで泣いていても状況は何も変わらないと気付いた。だから、俺は泣くことをやめて

   提督の業務を再開した。このまま提督を辞めようともしたんだが、沈んだ五月雨が浮かばれないと思って、それは

   やめた」

神通「………」

提督「そしてそれからは、あの撤退のルールを作って仲間が沈まないようにして安全を図つつ出撃や建造を増やしていき、

   仲間を増やしていった。それは、五月雨が願っていた『にぎやかな鎮守府にしたい』という願いに応えるためでも

   あり、五月雨を沈めた罪に対する償いでもあったんだろうな…」

神通「………」

 神通は、どう言葉をかけていいのかもわからず、ただ黙って聞くしかなかった。

提督「だが、そうやって出撃や建造を繰り返しているうちに、あることが起こったんだ」

神通「それは…なんですか…?」

 神通がそう聞くと、提督は少し間を空けてから、こう言った。






提督「…2人目の五月雨が現れたんだ」




今夜はここまで。明日の午前中に再開する予定です。

シリアスなんて初めて書きましたがいかがだったでしょうか?


>>75
 これは、>>1のオリジナル設定です。状況的には↓

 小破で敵艦隊とぶつかる→集中攻撃を受けて一気に大破→那珂をかばって轟沈

 といった具合です。

それではまた明日。

俺も初期は小破とか中破で撤退したときもあったけど13年の秋イベ経験してからはとても大破未満で撤退しようとは思わなくなったよ……

甲標的も先制攻撃しない、中破轟沈教が圧倒的シェア、艦載機の積み方もデタラメ、という時代によく2-4突破できたと思うわ…

wikiを初めとして今ある情報は全て尊い犠牲の元にあることを忘れてはいけない(戒め)
比較的情報が固まってきた時に着任したから今まで轟沈なしでやってこれてるけど横鎮とかにいる先人のおかげさね

この神通さんももしかして二人目?

おはようございます。

再開します。

>>84
 そうなのかどうかはこの先の展開を楽しみにしていてください。

初風は何人目?

 五月雨がいなくなってから二か月が経とうとしていた。

 あの日から3日間泣き続けた提督は、ようやく五月雨を失ったショックから立ち直っていた。五月雨の『賑やかな鎮守府

にしたい』という想いと、『この広い海が平和になってほしい』という願いを無駄にしないためにも、この鎮守府を大きな

ものにし、一刻も早く広大な海に平和が訪れるように尽力するようになった。

 当然、提督は五月雨の轟沈から何も学ばないほど間抜けではなかった。出撃に関するルールを見直し、無理な出撃は

させず、艦娘達にはストレスや疲れなどを負わせないように出撃や遠征のスケジュールを編成した。

 そして、上層部から特別海域に出撃しろと命令された時は、それを否定した。

 これらの提督の功績は、多くの艦娘からは素晴らしいと言われる一方で、少数の艦娘(主に摩耶や加賀)からは甘すぎる

と指摘された。しかし、それに対し提督はこう返した。

提督「俺は、皆に傷ついてほしくないんだ。平和な世界を取り戻した時に、皆と過ごしたいんだ」

 提督がそう言うと、反対派はルールに対して指摘するのをやめた。しかし、提督には別のことも考えていた。

提督(この今の鎮守府があるのは、沈めてしまった五月雨のおかげでもあるんだ。でも、それをこいつらに言ったら、俺は

   間違いなくこいつらに殺されるだろう…)

 提督はそれを恐れて、真実を言わなかった。だから、那珂以外の艦娘達は五月雨が轟沈したことを知らなかった。

この時も、1年後も。

 ちなみに、提督が泣き叫んだ日に鳳翔も鎮守府に着任したが、鳳翔には那珂が『奥さんに逃げられた』とだけ説明した。

どうやらそれで誤魔化すことができたようだ(彼女いない歴=年齢の提督としてはものすごく複雑な気分だったが)。

 そうして、安全な出撃を繰り返す日々の中でのある日、出撃艦隊が帰ってきた。旗艦は川内、編成は飛鷹、利根、愛宕、

羽黒、加賀だった。

川内「報告します。軽巡洋艦川内率いる第一艦隊が帰投しました。被害は、利根が小破。それ以外は無傷です。なお、

   カムラン半島の攻略には成功しました」

提督「ご苦労様。そして、よくやったよ。君たちにはしばしの休暇を与える。ゆっくり休んでくれ。それと、利根はドック

   で傷を癒してくれ」

利根「すまぬ提督…。敵の卑劣な戦術に嵌ってしまってのう…。貴重な資材を消費させてしまってすまない…」

提督「いや、資材のことは気にするな」

利根「そう言えば、迷惑かもしれぬと思ったが、海域の中枢の奴らを倒した後で、仲間になりたそうな子が見つかったので

   連れてきたぞ?この鎮守府にはおらん奴じゃったし」

提督「おお、ありがとう。それで、その子はどこに?」

川内「外で待機させてます」

利根「入っていいぞー!」

 利根がそう呼ぶと、執務室のドアが静かに開いた。

 その時、提督はなぜか妙な気分になった。何か、大きな闇のようなものを感じた。

 そして、その新しい子が入ってくると、提督は目を見開いた。






五月雨「五月雨って言います!よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」




 白系のセーラー服、蒼く長い髪、10代前半に見える容姿。それは、数か月前に自分が沈めてしまった艦娘と全く同じ形を

した『なにか』だった。

提督「……………………な」

 提督は、開いた口が塞がらなかった。疑問に思った利根が提督に言った。

利根「なんだ、どうした提督。もしやお主、一目惚れでもしたか?お主も色男だのぉ~」

 提督は、利根の冷やかしを聞いていなかった。

提督(…なんで、どうして…こんなタイミングで…)

 今やこの鎮守府は70人を超える大所帯となり、五月雨が願っていた『賑やかな鎮守府』のイメージに近づいていた。

提督はようやく五月雨の一つ目の願いが叶うと思っていた。そのタイミングで、その五月雨が、提督を試すように着任

した。そう考えると、提督の額から汗が吹き出し、呼吸が荒くなり始めた。

 そんな様子の提督を不安に思ったのか、五月雨が話しかける。

五月雨「あの…大丈夫、ですか?」

 提督の肩がビクッと震える。その提督を案ずるような声は、過去の五月雨が出撃に対して不安になっていた提督を

心配する声と全く変わらなかった。

提督「…第一艦隊は部屋へ戻ってくれ。もう一度言うが、利根はドックへ」

利根「う、うむ」

 提督の様子が少しおかしいと思ったのか、利根は素直に引き下がった。

利根「さ、さあ!早く休むとしようぞ!」

 利根は半ば強引に第一艦隊の皆を執務室の外へと連れ出した。

 そして、利根がドアを閉めると、部屋には提督と五月雨しか残らなかった。

 提督は気を落ち着かせると、慎重に五月雨に話しかけた。

提督「…さっきはすまない…。気弱な態度を見せてしまったな…」

五月雨「いえ、お気になさらず」

 提督はそう聞くと、机の引き出しから冊子を取り出した。

提督「こ、これがこの鎮守府のルールだ…」

 提督が震える声と手で差し出すと、五月雨は心配そうな表情で聞いてきた。

五月雨「本当に、大丈夫ですか?お体が優れないのでしたら、別に今日説明しなくても…」

提督「だっ、大丈夫だ!!」

 提督がそう声を荒げると、五月雨はビクッと震えた。

提督「あ…すまない…。それに、一通り目を通してくれ…」

五月雨「…はい」

 五月雨は少し心配そうに提督を見たが、やがて渡された冊子に目を移した。

 五月雨が冊子に目を通している間、提督は考えていた。

提督(どうする…ここでこの子に『君は2人目なんだ』と話すべきか…いや、そんなことを言っても、この子は何を言って

   いるのか理解できないだろう…)

 すると五月雨が、こう言った。

五月雨「この鎮守府、随分と出撃に関するルールが甘いですね…」

 提督はその言葉を聞くと、さらに汗が流れ出てきた。ここで提督は『1人目の五月雨が沈んだことで見直したんだ』

なんて言っても意味は分からないだろう。だから、提督はこう言った。

提督「あ、ああ…少し前の人の経験から学んでな…ウチは無茶な出撃はさせないようにしてるんだ…」

 嘘は言っていない。

五月雨「…そうなんですか…あ、読み終わりました」

提督「あ、ああ。ありがとう」

 提督は冊子を受け取り再び引き出しにしまうと、席を立った。

提督「じゃあ、次はこの鎮守府を案内しようかな。ついてきてくれ」

五月雨「はい!」

 五月雨は、鎮守府を案内している間も、素直に提督についてきた。そして、提督の言うことを真剣に聞いてくれた。

 着任から1週間もしないうちに、五月雨はすぐに鎮守府に溶け込むことができた。周りにふりまく笑顔と、気遣いの

できる性格がすぐに皆に認められた。那珂も最初は戸惑っていたが、今では前と同じように接していた。

 そして、それらの行動は全て、提督が沈めてしまった1人目の五月雨と何ら変わらなかった。

 それを見て、提督はこう決心した。

提督(くよくよ悩んでいても仕方ない。彼女は2人目だが、1人目の五月雨と同じように大切しよう。そして、もう誰も

   沈めないようにしないと、もっとルールを見直したりする余地もある。もう、誰も沈めない!そして、皆で平和な

   世界を迎えるようにしよう)

 実を言うと、提督は1人目の五月雨のことが異性として好きだった。戦いが終わったら、彼女と共に暮らしたいとも

考えていた。それが、五月雨を失った時の悲しみをさらに増幅させた。

 今も、沈んでしまった五月雨のことを一途に想っていた。だから、提督は2人目の五月雨が着任した時は、怖いと思った

反面、心のどこかで嬉しいとも思っていた。

 そして、提督はこの2人目の五月雨を愛そうと考えていた―。

提督「だが、無理だった」

 提督はそこまで語ると、一言で切り捨てた。

神通「なぜですか…?」

 神通はこう言ったが、大方の予想はしていた。そして提督は、予想に近いの言葉を返す。

提督「姿形は同じでも、中身は全然違った。過去の俺との思い出なんてアイツには何も残っていない。何も知らない。

   ただ、俺の想いだけが残っている。今や俺にとって、1人目の五月雨と2人目の五月雨は同じ容姿でも赤の他人だ。

   だから、アイツに抱いていた恋心なんて空虚なものでしかなくなった。そして、いつしか俺が五月雨を好きだという

   感情も消えた」

神通「………」

 神通は、なんて空虚で悲しいのだろうと思っていた。そして、提督が過去に自分に言ったことを思い出した。

提督『代わりの奴なんて、前の奴と姿形は一緒でも、前の奴以上に戦果を挙げても、中身は全く違うんだ。そんなの、俺は

   嫌だよ』

 あれは、実際に体験しなければ言えないことなのだろうと思った。それに気づくと、提督に言った。

神通「あの時、あの言葉の真意に気づいていれば…すみません」

提督「神通が謝ることはなにもない。全ては俺が悪いんだ」

 さらに、提督はこう付け加えた。

提督「五月雨の錬度が20代で止まっているのもそのためだ。愛情を捧げるのが怖くなって、彼女を育てることに躊躇

   するようになった。だから、五月雨を育てるスピードは他の皆と比べて遅い」

 この鎮守府の艦娘達の錬度は平均で30前後。新造艦以外を除けば、五月雨の錬度は低い方だった。

提督「これで、俺の過去の話は終わりだ」

神通「…辛いのに話してくださって、ありがとうございます」

 神通は頭を下げる。そして、壁に掛けられた時計を見ると、既に0時を回っていた。

提督「遅くなってすまない。ゆっくり休んでくれ」

神通「はい、ありがとうございます」

 神通はまた頭を下げる。そして、気がかりなことがあった。

神通(川内姉さんが心配してるだろうな…)

 川内はああ見えても妹思いの性格だった。そして、神通は川内のそんなところが好きだった。

 ちなみに今川内は、同じ軽巡洋艦寮の天龍や木曾にロープでグルグル巻きにされてベッドに寝かされている。夜戦夜戦と

うるさかったとの理由だ。

 そんなことは露知らず、神通は自分の中に抱いた疑問を聞いてみることにした。

神通「あの…一つ聞いていいですか…?」

提督「…なんだ?」

 それは、今いる五月雨が2人目ということを知った瞬間から自分に芽生えた不安だった。当然と言えば当然だが、それを

消化せずにはいられなかった。これだけは、提督にどうしても聞いておきたかった。

 そして、意を決して提督に聞いた。






神通「もしかして、私も…2人目なんですか…?」




 提督はその言葉を聞いた時、その疑問は当然だろうと思った。

提督(俺が、今の五月雨は2人目なんてことを言えば、真面目な神通は自分も2人目なんじゃないのか…?という疑問を

   抱くのも無理はないだろうな)

 そこで提督は、机からタブレット端末を取ってきて神通に見せた。神通はその提督の意味不明な行動に疑問を抱きつつも

タブレット端末を覗き込んだ。

提督「これには、ウチの鎮守府の全てのデータが載っている。出撃、演習、遠征の回数とその成功率、最大貯蓄可能資材数

   まで載っている。そして…」

 提督が画面をスクロールさせると、そこには轟沈等に関する情報が載っていた。

提督「ここには、俺が今まで轟沈、解体させた艦娘の数が載っている。見てみるか?」

 提督の言葉に、神通は怯えながらもその画面を見た。

 すると、轟沈した艦娘の数は1となっていた。

提督「安心しろ、俺が轟沈させたのは五月雨1人だけだ」

神通「…よかった…です…」

 しかし、神通がふと目を横に向けると、驚きの項目があった。そこには―

【解体艦娘数:23人】

神通「あの…提督…これは…?」

 神通はこの数字を指さした。提督はそれを見て、こう言った。

提督「…今この鎮守府には艦娘が95人いる。そして、全ての鎮守府は艦娘を100人までしか受け入れられない。上層部に

   金を払って根回しをしない限りは。だが、俺はそんなことをする気は無い。他人の夢を無視して勝手に人を海軍に

   入れるようなクソッたれな上層部に屈してたまるか」

 提督はそこまで言うと、咳ばらいをした。

提督「すまない、話がそれた。さっき言った通り、この鎮守府に居られる艦娘は最大で100人だ。そうなると、新しい戦力

   が来ると、言い方が少し悪いが戦力にはならない艦娘は外すしかない。だから、戦力にならないか、すぐに見つける

   ことができる艦娘は解体したんだ」

神通「……そんな…」

 神通は、その解体された艦娘がどうなったのかが怖かった。そして、もしかして自分も昔解体されたんじゃないかと

思った。その神通の怯えたに気づいたのか、提督がこう言った。

提督「安心しろ。解体された艦娘は、普通の女の子として現実世界に生きている。艦娘の艤装と装備を全て捨てて、

   艦娘であったころの記憶を消してな」

 提督がそう言うと、神通は少し安心した。海に沈められたとかそんな悲しいことじゃなくてよかったと思った。

だが、神通にはもう一つの疑問が残っていた。

神通「て、提督…私も過去に解体されたのですか…?」

 神通がそう言うと、提督は手を高速で振って否定した。

提督「いや、無い無い無い!そんなことは絶対ない!そんなことをしてたまるか!だって俺は―」

神通「…?」

 提督が、俺は、と言うと顔を下げてしまった。そして、『うぬ…』と唸っている。そして、こう言った。

提督「…なぜ俺が、お前に俺の過去を話したかわかるか?」

神通「…どういうことでしょう…?」

提督「2つ理由がある。1つ目は、お前の反応を確かめたかった」

神通「……?」

提督「お前は真面目で、優しい子だ。俺の過去を知ったら、優しいお前は沈んだ五月雨のことを悲しみ、そしてその五月雨

   を沈めたクソッたれな俺のことを責めるだろうと、考えていた」

神通「そんな、確かに私は沈んでしまった五月雨さんのことを思うと悲しいと思いましたが、あなたのことをそんな…

   悪し様には思いませんよ…」

 神通がそう言うと、提督は素直に頭を下げた。

提督「そうか…ありがとう…」

 そして提督は、こう続けた。

提督「もう1つの理由は、俺が五月雨のことを諦められたかどうかを確かめるためだ」

神通「それは…どういう…?」

提督「俺はこの話をする前に、この話をしたら過去に好きだった五月雨のことを思い出し、また五月雨に恋心を抱くだろう

   と予想していた」

 神通はその言葉を聞くと、また別の不安が生まれた。もしまた提督が五月雨のことを好きになったら、この自分の中の

感情はどうしてしまえばいいのかわからなかった。しかし、提督はこう続けた。

提督「だが、そうはならなかったようだ。俺は、五月雨のことを諦められていた。もう、今の五月雨は別の人だと割り

   切ることができた」

 提督がそう言うと、神通はほっとした。だが、提督はさらに続ける。

提督「もしかすると、俺は自分で思っている以上に非情な男のようだ…」

神通「そんなことはありません!」

 神通は立ち上がって声を荒げて否定した。

提督「神通…?」

神通「提督は…過去に五月雨さんを沈めてから、誰も沈めないためにルールを見直したり、私達艦娘達に気を遣ってくれた

   じゃないですか…。もし、あなたが五月雨さんの轟沈から何も学んでいないようでしたら…あなたを殺していたかも

   しれません…」

提督「!」

 神通の言葉に、提督はびくりと震えた。だが、神通はさらに続ける。

神通「でも、あなたはちゃんと過去の失敗から目を背けず…今の私たちに同じ悲しみを背負わせないようにしてくれたじゃ

   ないですか…。それが私はとても嬉しかったです…」

提督「…お前…」

神通「そして、あなたの傍で秘書艦としての仕事をしている時は、あなたの艦娘に向ける優しさを実感することが

   できました。そして、今日この話を聞いて、あなたがなぜ私たちに過剰なまでに優しく接するのかがわかりました。

   それはやっぱり、二度と艦娘を轟沈させないようにするためだったのでしょう…?」

 そして、と神通は前置きをしてこう言った。




神通「私は…そんな優しいあなたのことが好きです」




 その言葉を聞いた時、提督は呆けた表情をしていた。

提督「何言ってるんだよ…?こんな俺のことを…?」

神通「はい…正確には、数か月前にここに着任し、出撃してあなたに抗議した後、でした」

提督「…そうか…」

 提督がそう呟くと、提督は顔を上げてこう言った。

提督「…今、ウチの鎮守府には錬度が最高の99になった艦娘が4、5人いる。その中には神通、お前も含まれている。

   そして、艦娘の錬度が99になった艦娘の錬度と性能を開放する『ケッコンカッコカリ』というシステムがあるんだ」

神通「ケッコン…カッコカリ…?」

 神通はなぜこのタイミングでそんなことを言われるのかがわからなかった。まさか、自分にはケッコンしたい他の艦娘が

いるから断る、とでも言うのかと思ったがそうではないようだ。

提督「さっき俺が、お前の反応を確かめるために過去の話をお前にした、と言ったよな?あれで、俺はお前に責められたら

   このことを言うのは止めようと思っていたんだ。けど、お前が俺に告白してくれたおかげで踏ん切りがついたよ」

 そう言うと、提督はポケットから小さい箱を取り出して、神通が予想だにしないことを言った。





提督「神通、俺もお前のことが好きだ。だから、ケッコンしよう」




神通「…へ?」

 神通は間抜けな声を上げた。

神通「なんで…私なんかを…?」

提督「そうだね…普通に可愛いと思ったのと、俺と性格が似て真面目で優しい。そして、人のために悲しみ、怒ることが

   できる。そこに惚れたんだ」

神通「か、可愛いなんて…そんな…///」

 神通は頬に顔を当てて顔を真っ赤にしてしまった。そして、いろんな感情が湧きでてきたからか、目に涙が滲み出て

きてしまった。その様子を見て、提督はこう聞いた。

提督「で…プロポーズ…受けてくれるかな…?」

 神通は涙を流しながら、こう答えた。


神通「受けるに…決まってるじゃないですか…!」


 神通がそう言うと、提督は神通の唇に自分の唇を重ねた。

提督「…ん」

神通「…んぅ…」

 その時でも、神通の目からは涙が溢れていた。そして、唇を離すと、2人は互いに優しく抱き合った。

提督「ありがとう…本当に、ありがとう…!」

神通「こちらこそ…ありがとうございます…!」

 提督が神通を離すと、神通はこう切り出した。

神通「それで、提督…ケッコンの初夜は…その…///」

 神通が顔を赤くしてそんなことを言ってきたので、提督は少し呆れたように言った。

提督「…お前がそんなことを言うとはな。なんか、真面目なお前のイメージが若干崩れたよ」

神通「私でも、そういうことはしたいって思います。…で、どうしますか…?」

 提督は涙目で上目遣いの神通に、普段神通が言わないようなことを聞かれた。そんな顔でそんな言葉に屈しない男など

いるのだろうか。いや、いないだろう。

提督「断ったら男じゃないよな」

 提督の言葉を聞くと、神通は提督に抱き付いた。

ここで一回切ります。再開は夜の21時過ぎの予定です。

ここで多数決を取ります。

提督と神通の夜戦、構わん続けろorキングクリムゾン!

↓3までで多数決

なに!?夜戦!?

構わん、続けたまえ

続けるしかないやろ

書いても、ええんやで?

こんばんは。>>1です。これより投下を再開します。

>>105は無効で1ずらし「川内、君は部屋で夜戦(物理)の練習でもしているんだ」

>>106>>107が構わん続けろということで、夜戦シーンが入ります。(>>108はキャンセルだか続行だかわかりませんが

どちらにしろ、前2人が続行を希望しているので投下します)

 つたない表現かもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです

※ここから先、読者の皆様の抱く神通の印象をことごとく壊す恐れがありますので、ご注意ください

>>109
わかりづらくて申し訳ないが
>>105は続けろって意味だったんよ

 神通は提督に抱き付くと、その勢いで提督にキスをした。今度は、口の中に舌を入れるディープ・キスというやつだ。

神通「ん…んちゅぅ…」

提督「んん…」

 そして神通は、そのまま提督をベッドに押し倒した。シングルベッドがギシッと音を立てる。神通は、提督の上に跨る形

になると、自分の服を脱ごうとする。

提督「おい…神通…」

 提督は神通に何かを言おうとしたが、神通は提督の話を聞こうとせず、荒く息を吐きながらワンピースのような自分の

上着を脱ぎ始めた。そして、脱いだ服を床に放り捨てる。そこには女の子らしいレースの入った白系の下着が。白系という

のが、神通らしかった。

神通「提督…私…もう…」

 そう呟きながら、神通は下着も外し始めた。背中に手を回すとブラのホックを外してベッドに落とし、続いて下のパンツ

も脱いだ。

 ワンピースの下に隠されていた神通の身体は、やはり綺麗だった。形の良く、大きすぎず小さすぎずな胸、引き締まった

くびれ、すらっと長い手足。股間のあたりには薄らと陰毛が生えている。

 提督はそれを見て興奮する一方で、神通に言った。

提督「神通…そんなに焦るな。俺はどこにもいかない、今だけはお前のものだよ」

 その提督の言葉に、神通はこう返した。

神通「でも…私、ずっと提督とこうするのが夢だったんです…。もう、自分を抑えられません…。それに、提督は一つ

   間違ったことを仰いました」

提督「…?」

 提督が疑問の表情を浮かべると、神通は自分の身体を提督に擦り付けながら、自らの顔を提督の顔に近づける。そして、

甘い声でこう言った。

神通「『今だけは』ではありません。『これからも』でしょう?」

 そう言うと、神通はもう一度提督にディープ・キスをした。

神通「あむ…っ、んん…っ」

提督「んむ…っ」

 神通は提督にキスをしながら、提督の服を脱がせにかかる。まず、上着のボタンを外し、次にズボンのベルトのバックル

を外す。神通は提督から唇を離すと、一気にズボンを下着と一緒に下ろした。そこには―

神通「……これは…」

 既に硬くなっていた提督の陰茎が、神通の前に突き出された。

神通「…私の裸で…ここまで硬くなってしまったんですか…?」

 そう聞くと提督が、神通が脱がしかかっていた上着を脱ぎながらこう返した。

提督「だって…お前の裸って…すごい綺麗だし…。普段見れないものだし…」

神通「…嬉しいです」

 神通はそう言うと、提督のソレを咥え込んだ。それと同時に、提督には電撃のような快感が走った。

提督「うあぁっ」

 神通は、提督の反応が可愛く愛おしかった。だから、陰茎を咥えると、自分の口を上下に激しく動かす。

神通「じゅぷっ…じゅるるっ、じゅおっ…」

 部屋の中にいやらしい水の音が響き渡る。

 そんな中で神通が提督の方を見ると、完全に顔が赤くなっていた。そこで神通は少し物足りなさを感じ、自分の股間が

ちょうど提督の顔に当たるように体の向きを変えた。シックスナインというものである。

提督「んう…っ!?」

神通「さ、提督…私のも舐めてください…。提督だけが気持ちよくなるなんて…ずるいです」

 それだけ言うと、神通は再び提督の陰茎を咥えてフェラチオを再開した。

 提督は、改めて神通の秘部を見上げてみた。それは鮮やかなピンク色をしていて、ひくひくと震えている。

神通「あ…提督のが…また硬くなりました…。私のを見て、興奮してくれたのですか…?」

 神通の言葉など聞かず、提督は我慢できなくなり神通の膣に舌を当てる。そして、神通は得も言われぬ快感を得た。

神通「ひゃん…!?」

 そして提督は、神通の膣内に舌を押し入れていく。

神通「あああああっ!!んんん…!」

 神通が色っぽい悲鳴を上げた。それを無視して、提督は舌で神通の膣内を舐め回していく。

提督「ジルルルゥッ、ジュオッ、グチュッ…ピチャッ…!」

 提督が嫌らしい音を立てながら膣内を舐めていくと、膣口から蜜が流れ出てきた。

神通「あぁん…!て、いと…くっ…、そんないやらしい音立てないで…っ…!」

提督「さっきまでいやらしい音を立てていたのは誰だよ…っ、それに、口が止まってるぞ…?」

 提督にそう言い返されると、神通は再びフェラチオを再開する。しかし、提督に舐められているせいか、さっきよりも興

奮して動きがさらにいやらしくなった。

神通「んぶっ…じゅぷっ…んぁっ…!じゅうううううっ…」

提督「う…っ、ジュッ…チュルルッ、ピチャッ、ピチャッ…」

 2人は、一心不乱にそれぞれ相手の性器を舐め合っていた。部屋の中には、2人が性器を舐め合うことで発せられる卑猥

な水の音が響き渡っている。今さらながら、提督は全ての部屋が防音性だということに安心した。

 そして、しばしお互いに互いの性器を貪るように舐めていると、神通の膣がぴくぴくと震え始めた。そして膣口からは

神通の愛液と提督の唾液が混ざった透明な液体があふれ出てきた。

提督「…神通…ッ、お前、そろそろ…く」

 提督がそう言う一方で、神通の口の中にある提督の陰茎も震え始めていた。亀頭からは提督の我慢汁が出てきた。

神通「んう…ふぇいふぉふほふぉ…」

提督「咥えながら喋るな…くあっ…」

 そして、互いに限界が近づいていた。提督は、できれば一緒に絶頂を迎えたいと思った。だから、神通に言った。

提督「神通…一緒に…っ!」

神通「…ふぁい…っ!」

 神通は提督に一言言われただけで何を狙っているのかを察した。そして―

神通「あ、あ…っ…ぁあああああああああああああっ!!」

提督「ぐ…おおぁっ!」

 初めて感じた快感を声に出し、神通は膣口から淫潮を噴き出した。

 それと同時に、提督の亀頭から濃い精液が噴き出した。

提督「はぁ…ハァ…くっ」

神通「ん…ん…」

 提督はベッドに倒れこんだ。そして神通は、提督が出した精液を一滴残らず飲み干した。提督に聞かせるように、わざと

音を立てながら。

 そして神通は、ようやく陰茎から口を離すと、提督の方を向いてこう言った。

神通「…提督の味がします…」

 提督はその言葉を聞くと、消えかかっていた性欲の火がまた燃え始めたのを感じた。それと同時に、提督の陰茎も硬さを

取り戻していく。

神通「あ、また…。なら、もっと先のことができそうですね…?」

提督「やっぱ…やるからには、やっておかないとな…?」

 提督はそう言うと、神通にもう一度キスをした。今度は舌を入れないキスだ。

 提督はまたベッドに仰向けに寝た。そして神通が、提督の陰茎の亀頭を撫で回すように自分の膣を当てる。その手慣れた

様子を見て、提督が素朴な疑問を口に出した。

提督「神通って…こんなのどこで知ったんだ…?もしかして、俺以外の誰かに…」

 神通はその言葉を聞くと、両手を高速で振って否定した。

神通「そ、そんなわけないじゃないですか!ただ、私もこういうことには少し興味があって、その…本などを読んで…」

 そしてそこで神通は言葉を切ると、こう続けた。

神通「それに私が好きなのは、提督だけです。私の心の中には、男は提督しかいません」

 神通のその言葉を聞いて、提督はこう言った。

提督「その格好と顔でそんなことを言われてもな…」

 神通は提督のその言葉に少しムカつき、少し強引に行くことにした。

神通「もう…挿れますよ!」

 そして、神通は提督の陰茎を自らの膣口に当てて、そのまま腰を下ろそうとする。

提督「まて、初めては相当―」

 提督の言葉を聞かず、神通は腰を完全におろした。すると、ブチブチッと何かが破れる音が聞こえた。そして、数瞬して

神通は強烈な痛みを感じた。

神通「ぎあ…っ!!」

 神通の膣口から数滴の血が出てきた。それは、神通の愛液と混じって少し透明感のある血だった。

神通「…提督…っ、少し待っていただけませんか…?」

 神通のその声は、いつも聞く声に比べて若干高く掠れていた。

提督「ああ、痛みが引いたら言うんだぞ?」

 そして数分後、神通がいつも通りの声に戻ってこう言った。

神通「もう…大丈夫です。動きます…」

提督「おい、あんまり無茶は―」

 提督が何か言う前に、神通は自分の尻を提督の身体に何度も当てる形で上下に動かした。

神通「あ…っ、んん…っ、あん、あっ…」

提督「うぁっ…すげ…っ、気持ちいい…っ!」

神通「提督…ぅ、私も気持ちいいです…っ!」

 すると神通は、提督の腰に尻を当てたままま今度は前後に動く。

神通「どうですか…?」

提督「ああ…すごく、いいっ!」

神通「それは…あんっ!嬉しいですぅ…っ…!」

 神通が本当に嬉しそうな、そして淫乱な表情を見せたことで、ついに提督は抑えが利かなくなった。

提督「もう…我慢できない…っ!」

 すると提督は、今度は自分の腰を上下に激しく動かし始めた。

神通「ひあああっ!?て、提督…っ!それぇ…だめぇ…!」

 提督の陰茎が神通の子宮口に当たるたびに、神通は嬌声を上げる。

神通「あんっ!うあんっ、あぅっ!ひぁっ、あぁっ!」

提督「神通の膣内…すごい温かくて…気持ちいいっ!」

 提督の言葉に、神通の膣がきゅうっ、と少し収縮した。

神通「は、はいっ…ありがとうぅっ、ございますぅっ!!」

 すると、提督の陰茎がまたぴくぴくと震え始めた。そして、神通の膣内も少しずつ締め付けがきつくなっていく。

提督「神通…っ、俺、そろそろっ…!」

神通「まだ…まだですっ…私がまだですからっ!勝手にイッたら許しませんよぉっ…!」

 すると、また神通が上下に激しく動き始める。

神通「ああ、あ、ん、あっ、うあ、ああ…っ!」

 神通の喘ぎ声も、短く高い音になっていく。そして、ついに絶頂感をとらえた。

提督「神通っ!俺ぇ…もうダメだ…出るっ!」

神通「はいっ…私ももう…イキますっ!よく我慢しましたねぇ…っ!でも、もう我慢しなくていいですよぉ…っ?私の子宮

   に…思いっきり…注ぎ込んでください…!」

 そして2人は―

神通「あ、はああああああああああああああああああっ!!!んんんんんんんんんんっ!!」

 神通は絶頂に至った。そして、派手に淫潮を噴き出した。

提督「ぐあ…っ…!」

 そして提督も、神通の子宮にありったけの精液を注ぎ込んだ。

神通「ああ…提督のが…私の中に注がれるのが…わかります…ぅ」

 そして、全ての精液を出し終えると、提督は陰茎を膣から引きずり出した。そして、濃い精液が子宮口に入りきらずに

膣口からこぽっ、と音を立てながら流れ出てきた。

神通「ああ…いっぱい、出しましたね?孕んじゃったかも…しれません…」

提督「…その時は、責任を取るさ。提督としてではなく、男として、な」

 提督がそう言うと、神通はふっと笑い、2人はもう一度熱く唇を交わした。

今日はここまでです。再開は、明日の午前中の予定です。

エロシーンはここまでです。みなさん、どうでした?

ちなみに、当面の間エロシーンはありません。本当にすみません。

おつおつ

>>97
>提督「すまない、話がそれた。さっき言った通り、この鎮守府に居られる艦娘は最大で100人だ。そうなると、新しい戦力が来ると、言い方が少し悪いが戦力にはならない艦娘は外すしかない。だから、戦力にならないか、すぐに見つけることができる艦娘は解体したんだ」

>提督「安心しろ。解体された艦娘は、普通の女の子として現実世界に生きている。艦娘の艤装と装備を全て捨てて、艦娘であったころの記憶を消してな」

すぐに見つけることができる艦が解体されるなら、同じ姿の記憶喪失のひとが量産されるってことですか?

いいねぇ、しびれるねぇ

妖精「解体(解体後も同じ容姿であるとは言ってない)」

おはようございます。再開します。

艦これのアニメが楽しみでしょうがない

 行為を終えた後、提督と神通はベッドに裸で寝転んでいた。そして、神通がおもむろに話し出す。

神通「提督、五月雨さんのことですが…」

提督「ん…?」

神通「本当のことを五月雨さんに話した方がいいんじゃないでしょうか?」

提督「……」

神通「提督はおそらく、今まで五月雨さんのことについて、ずっともやもやしたままなんじゃないかと思います。その

   もやもやは、提督が全てを話さなければ晴れないんじゃないかと思います」

 神通の言葉に、提督は天を仰いでこう言った。

提督「アイツに話したところで…俺は許されるのだろうか…?」

 提督の言葉を聞いて、神通は微笑みながら言った。

神通「やはり提督は、真面目に考えすぎです。五月雨さんは、そこまで非情ではありません…。それは、提督が一番

   わかっているはずなのに…」

 神通はそのことを、提督に話した。提督は、それでも安心しないようだった。そこで神通は、こう付け加えた。

神通「もし、それでも許されなかったら…私のところへ来てください。私が、慰めてあげます…。そして、あなたが五月雨

   さんと和解できる方法を一緒に考えます」

 神通のその言葉を聞くと、提督はようやく安心したようだ。

提督「…わかった。ありがとう」

 そう言うと、提督は神通を抱きしめた。

 あの後2人は、シャワーを浴びた後提督の部屋で一緒に並んで眠った(さすがに服は着ていたが)。

 そして朝の6時過ぎ、2人は同時に目が覚めた。深夜まで話をして、その上あんなことをしたのだから、早く目が覚めて

しまうのも当然だった。そのことを思い出すと、神通は顔を赤くしてしまった。それを見て、提督がこう提案した。

提督「少し、散歩でもしようか」

 神通はその意見に賛成し、一緒に外に出て、鎮守府の散歩道を並んで歩いた。

 朝の空気はまだ冷たく、風が吹くたびに肌を刺すような感覚に襲われた。神通が自分の身体を抱きながら歩いているのを

見ると、提督は神通の手を握った。そして、そのまま散歩道を歩く。

 そして、少しの間歩いていると、近くの茂みからガサッ、という音が聞こえた。その音を聞いて、提督と神通は身を構え

た。

神通「何奴!」

 神通がそう言うと、茂みから女が飛び出した。

 その女は、神通と同じ色のワンピースのような服を着ていた。髪は短めのツインテール。年齢は、神通と同じぐらいだ。

??「ふっ、消えゆく者に名乗る名前など―」

提督「何してんだ川内」

 川内のセリフを完全に無視して提督はその女の名前を呼んだ。やはり、夜戦(物理)が大好きな神通の姉、川内だった。

川内「ちょっと!登場の口上ぐらい言わせてよー!」

神通「何してるんですか、姉さん…?というか、その腕とかの縄の後は一体…?」

 川内の抗議を軽くスルーして神通は聞いた。神通の言う通り、川内の腕や足にはロープで縛られたような痕がある。

川内「いやー、部屋で夜戦したいなーって言っていたらなぜか天龍と木曾が飛び込んできてさ、私をロープで雁字搦めに

   した上に口には猿ぐつわまで噛ませてさ。そこから抜けようとしてちょっと動いたら肌にロープが食い込んで痕に

   なっちゃってねー」

 提督は、天龍と木曾に心の中でだけ敬意を払った。

提督「そのロープからどうやって抜け出したんだよ」

川内「ふふーん、縄抜けの術って言うのをやってみたんだよ。自分の関節を外して、縄を抜けやすくするってヤツ。で、

   抜けたはいいけど関節を嵌めなおすのが難しくてねー。ちょっと痛めちゃった」

 そう言うと、川内は自分の肩を回した。ゴキゴキと音が聞こえる。

提督「…で、なんであんな茂みにいたんだよ」

川内「あ、そうだ!言うことがあったんだ!」

 川内は思い出したようにそう言うと、口に手を当てて、こう続けた。



川内「昨夜はぁ、お楽しみでしたねぇ♡」


 その言葉を聞くと、提督と神通は顔をボフッ、と赤くした。そして提督が、慌てて聞く。

提督「な、なんで知ってるんだ!」

川内「いや、縄を抜けて関節を戻したら目がさえちゃってさ、しかたなく散歩道を歩いていたら、提督の部屋からなんか

   声が聞こえてね、ちょっと耳をそばだてて話を聞いていたら…夜戦を始めちゃったでしょ」

神通「あ…ああ~…」

 川内の言葉を聞くと、神通は提督に寄り掛かってしまった。だが、川内は真面目な顔でこう言った。

川内「…五月雨のことも聞いたよ」

 その言葉は、提督にとっては無視することができなかった。

提督「そうか…。で、お前はどう感じたんだ?俺を許せないと思ったか?」

 提督はそう聞いた。しかし、川内の答えは意外なものだった。

川内「いや、提督のことを許さないとはさすがに思わなかったよ。そして、提督が悪いともそこまでは思わなかったよ」

提督「…え?」

川内「五月雨が沈んじゃったのは、ただトラブルが重なっただけとしか私は考えてないし、提督が五月雨に期待していた

   のは、海域を攻略するためじゃなくて、好きな人に頑張ってほしいと思っていただけなんでしょ?」

提督「…ああ」

川内「なら、提督は何も悪くないと私は思うよ。…自分でも何言っているのかわからないけど、それだけは覚えておいた

   方がいいよ」

 川内はそう言うと、自分の部屋に戻ろうと足を進め始めた。

川内「じゃあ、私は部屋に戻るから。あ、神通」

神通「…ふぇ?」

 神通がまだ顔を赤くしながら、川内の呼びかけに頼りない返事を返した。それを見て、川内はこう言った。

川内「妹が本当の女になれて、私は嬉しいよ!」

神通「は、はうぅぅぅぅ~…」

 神通は顔をゆでだこのように赤くして提督によりそり完全に気を失ってしまった。そして、川内はまた提督に向き直る。

川内「提督、神通を泣かせたら…許さないから」

提督「…わかってるよ」

 そう返すと、川内は手を振りながら部屋へと戻って行った。後には、決意を決めた顔の提督と、顔を真っ赤にして提督に

寄りかかったまま気絶している神通が残った。

提督「…で、どうするんだよ、コイツ」

 仕方なく提督は、神通を背負って執務室へと戻って行った。

 提督は神通をまた自分のベッドに寝かせると、朝7時の朝礼に向けて準備を始める。そして、5分前になると、提督は

執務室を出た。さらに、3分前になってようやく神通が目を覚ましてベッドから飛び起き、急いで朝礼に向かった。

 神通が運動場に着くと、全ての艦娘が驚いた表情で神通を見た。その中で川内だけがニヤニヤとしている。神通は、一気

に恥ずかしくなった。

 そして、神通は終始顔を真っ赤にしながら朝礼は終わった。その後、神通を含む艦娘達は朝食のために食堂へ、提督は

執務室へと戻って行く。

 皆がワイワイとお喋りをしながら食事をしていると、ぴんぽんぱんぽーんという電子音の後に放送が入った。

提督『駆逐艦五月雨、朝食が終わったら執務室へ来るように』

 神通はその放送を聞いて、さっきまで顔を真っ赤にしながら下に向けていた顔をはっと上げた。そして、川内も目を上に

向ける。那珂は、ビクッと震えるだけだ。

神通(提督…頑張ってくださいね…)

 神通はそう願って五月雨に顔を向けると、本人は涼風にいろいろ聞かれた。

涼風「五月雨ー、何かしたのか?」

五月雨「さあ、身に覚えがないです…。でも、私が着任した時、提督何か私に言いたそうだったし…」

涼風「まさか、告白でもされるんじゃない?」

五月雨「そんなのわかんないよー!」

 涼風の『告白』という言葉を聞いて、神通は少しだけむっとした。それを見て、川内はニヤニヤしながら思った。

川内(あの神通が…乙女になったねぇ~)

 朝食が終わると、呼ばれた五月雨は執務室の前にやってきた。ノックして、返事を待つ。

提督『どうぞ』

五月雨「失礼します」

 五月雨は一礼すると、執務室に入る。すると、提督が真面目な顔で座っていた。五月雨は、自分が着任した時以外では

見たことがないほどの真面目顔だった。

提督「来てくれてありがとう」

五月雨「私に…何のご用ですか?」

 五月雨がそう言うと、提督は息を短く吐き、話し始める。

提督「実は―」

 神通は、提督が話しているのを執務室の外で聞いていた。神通にできることは、なにもない。ただ、結果がどうなるかを

考えることしかできない。

 そして、数十分経つと、五月雨が執務室から出てきた。

五月雨「失礼します」

 五月雨は一礼し、ドアを閉めると部屋へと戻って行った。その顔は、悲しみの表情ではなく、むしろ喜びの表情だった。

それを見ると、神通はドアをノックして部屋へと入る。

神通「失礼します」

提督「…ああ」

 提督の顔には、若干の疲労が見えた。

神通「で、どうでした?」

提督「…一応、許してもらえた…のか?」

 そう言って、提督は神通に何があったのかを話す。

 数十分前。

提督「―ということなんだ」

 提督は、かつての五月雨のことを全て話した。着任時のこと、どんな性格だったか、五月雨の本音、五月雨の願い、

沈んだ時のこと、全てを。

五月雨「そんなことが…」

提督「で、全て話したわけだが、君は俺のことをどう思った?」

五月雨「……」

 五月雨は少し黙って考えた。そして、こう結論付けた。

五月雨「…正直、前の私が沈んでしまったのは残念だと思います。そして、あなたのことも」

提督「俺のことも?なぜ?」

五月雨「提督は、1人目の五月雨を沈めてしまったのに悪気はなかったのでしょう?1人目の私が沈んでしまったのは、

    不運が重なっただけです。私はそう考えました」

提督「……」

五月雨「そして提督は、沈んでしまった1人目の五月雨の意志を無駄にせずに鎮守府を再度運営させ、前の私のような轟沈

    者を出さないためにルールを改め、過去の私が願った『にぎやかな鎮守府』にしたんでしょう?つまりは、沈んだ

    私の意志を忘れてくれなかったんでしょう?」

 提督は、五月雨の話を黙って聞いていた。五月雨は、そして、と付け加えてこう言った。



五月雨「沈んでしまった私も、今の私も、あなたを恨むなんてことはありません。そして、今の私が代表して言います。

    過去の私の意志を引き継いでくれてありがとうございます」


 提督は、五月雨の言葉を聞くと、涙が出てきそうになった。だが、それをこらえてこう言った。

提督「やっぱり、お前の優しい性格は、2人目になっても変わらんな…」

五月雨「えへへ…」

 五月雨が恥ずかしそうに笑うと、提督は右手を差し出した。

提督「俺のことを許してくれてありがとう。そして、これからもよろしく頼む」

 五月雨は、とびっきりの笑顔で、提督の右手に自分の右手を当て、握手をしながらこう言った。


五月雨「お任せください!」

 そして、今に戻る。

提督「―ということだったんだ」

神通「…よかったですね」

 そして、提督は椅子から立ちあがり、窓の外を見た。

 窓からは、広大な海が見える。平和そうに見えるが、そこには船の怨念と言われている深海棲艦が潜んでいる。それは、

常に人々の平和を脅かそうとしている。そして、海にはかつての五月雨も沈んでしまっているのだろう。

神通「それで提督、五月雨さんのもう一つの願い、忘れていませんよね…?」

 神通のその問いに、提督は神通をちらりと見て言った。

提督「…忘れるわけがないだろ。『この広い海が平和になってほしい』、だ」

神通「もちろん、その願いを叶えるつもりはありますよね?」

 神通のその問いに、提督はフッ、と笑い、再び窓の方を向いてこう言った。

提督「当たり前だろ」

 そして、と提督は付け加えて続けた。


提督「五月雨…。お前の意志は無駄にしない。だから、俺が海の平和を取り戻すのを、どこからでもいいから…

   見ていてくれ」

 提督が決意に満ちたその言葉を告げた時、波の流れに合わせて、鎮守府の波止場に何かが流れてきた。





 それは、長い間海水に浸っていて錆びついてしまった1人目の五月雨の艤装の破片だった。

まるで、提督に会いに来たように、戻ってきた。




というわけで、神通編はここで完結となります。ありがとうございました。

なんだか、五月雨編に見えなくもない。


さて、次回の作品は、間宮さんが主人公です。

そこで、また多数決を取りますが、作者の方で那智編とヲ級編を作ろうと思います。作ってほしいという要望があった場合

は作成します。

では多数決です。

↓3 那智編&ヲ級編、読みたい?読みたくない?

埋まり次第、間宮編のスレを立てます。

 では、また会いましょう。

読みたい

読みたい

読みたい!

地の文が控え目で読みやすい!
雰囲気も好きです!
読みたい!

こんばんは。>>1です。

全員読みたいということで、那智編、ヲ級編を作成することになりました。ありがとうございます。

ちなみに、それぞれのテーマは、

・那智…鉄道(そこまでディープではない)

・ヲ級…新たな敵

です。よろしくお願いします。

>>142
 本当にありがとうございます。

そして、新スレができました。

【艦これ】間宮「四季を愛する提督」
【艦これ】間宮「四季を愛する提督」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420623475/)

こちらもよろしくお願いします。


沖ノ島海域が攻略できない俺に重巡洋艦をどこで育てろと…

2-4-1で旗艦に据えて完勝し続けるか1-5-1で精魂尽きるまで戦う
なぁに、資源がグロくなるより先に攻略レベルに届くから

1-5-1に重巡連れて行ってもレベリングはかどらないぞ

潜水艦に攻撃できないからMVP取れないし単艦で行ったら敗北するし

2-4なら全員Lv20~30の改した面子にすればへーきへーき、あとは運
ぶっちゃけレベルより運

2-4突破できないのに大型やってるとかあたまおかしい

おかしくない、普通だ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月30日 (金) 02:46:04   ID: kjTQPQXy

ピクシブに投稿したら、人気でそうですたい!!!!

2 :  SS好きの憲兵   2015年03月29日 (日) 23:14:14   ID: 9YqvOSuQ

おもしろい‼

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