絵里「膝に猫」 (17)

のぞえり
ほのぼの
短い
むっちゃ亀更新





紅葉の盛りを過ぎたイチョウ並木が、
寂しげに震えていた。

「はあ……すごい」

絵里は思わず感嘆の声を上げる。

風に散らされようとも、
瓶の底にへばりつくように、
あたり一面に黄金の茵を敷く、
濡れ石のような落ち葉。

足元で、しゃくしゃくと音が鳴った。
11月も半ばに差し掛かり、
神田明神にささくれ立つような冬が訪れようとしていた。

「希、まだ境内の掃除中かしら?」

リスのように首を左右に振る。

「いないわね……」

彼女は日当たりの良い場所はないかと、
歩を進める。

「あそこのベンチで待ってよ……」

手作りだろうか。
簡易的な作りだった。

枯葉を手でさっと払い、
スカートが汚れぬようにハンカチを広げた。
トレンチコートにシワができぬよう、
多少伸ばしてから腰を据えた。



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首元を覆うマフラーの隙間から風が入らないように、
彼女はコートの襟を立てていたのだが、
どうやら、その場所は風の通りがほとんどないようだった。

静謐を絵に描いたようだ。
森閑と佇む境内。
幼い頃にロシアの国立美術館で鑑賞した美術作品が、
ふっと脳裏をかすめた。

誰の作品だっただろうか。
覚えてはいないが。
吸い込まれるような青空の、
高い高い場所で、
一糸乱れぬ飛行機雲が伸びていたのを覚えている。

そして、その真下には、
鏡のように凪いだ海が広がっていた。

金の額縁に収まり、
当時の自分には、
その価値は分からなかったが。

えりりんかと思った
こういう騙し討ちするからこのカプを好む腐女子達は嫌われる

しかし、写生されたワンカットに宿るアニマには、
幼いながらに心を震わせた。
今よりも、純粋だった。
絵の中に入ることに抵抗がない。
風や気温、湿度、匂いを感じ、
夢中になれた。

「……」

何もかも、自分の思い通りにできる。
自信があった。
絵里は瞼を閉じる。
その裏に、涙を拭うアヒルの子。
白鳥にはなれなかった。

「ニャア」

「え?」

気が付くと、膝の上に猫が飛び乗っていた。

尻尾をふさふさと振って、
こぶし二つ分程の子猫は喉を鳴らした。

「可愛い……」

頭を撫でると、首を傾けて腕に擦り寄った。

「ニャアア……」

後ろの茂みから声がした。
椅子の下から、黒い子猫が顔を出した。
厚手のブーツに身体をこすり当てる。

「あら……兄弟?」

心地よい膝の重み。

「これじゃあ、動けないわね」

思わず笑みがこぼれた。

「一緒に日向ぼっこしよっか……」

と、言いかけて背後の茂みから、
再度物音。
振り返ると、3匹の子猫。
とてとて、と危なっかしい。
ベンチへ跳躍し膝の上にいた三毛を、
押しのけるように転がり込んだ。

「ちょ、ちょっと……喧嘩は止めなさい」

彼らの頭上からそう諭すが、
聞いてはいない。
いつの間にか、膝の上には子猫が4匹。
あれよあれよと、足元に2匹。
膝の上の猫は、眠りの体制に入っていた。

「……」

陽光が眩しい。

猫は嫌いではない。
可愛いものは好きだ。
でも、誰か助けて。

「の、のぞみ……」

周囲に視線を転じるも、
それらしき影は見当たらない。

「……しょ、しょうがない」

彼らが飽きるまで付き合ってみよう。
小さな命が、夢中になって惰眠を貪る姿は、
どこか奇妙で非現実的だ。
毛むくじゃらな身体が、
呼吸に合わせて縮んだり膨らんだりしている。

確かに、この暖かさは卑怯だ。

そうやって、30分程そうしていただろうか。
目が覚めて、自分が眠ってしまっていたことに気がついた。
じっとしていたためか、身体が冷えてしまっていた。

「えりち……風邪引くで」

猫は一匹たりともいなくなっていた。
代わりに、希が心配そうにこちらを覗き込んでいる。

「あれ……」

「さっきまで、猫にようけ囲まれとったね」

「見てたの?」

「こっそりな」

「助けてよ、もお」

「猫に弄ばれるえりちもええなあって」

「なによそれ」

希が小さく微笑む。

「寒いやろ? お茶用意するな」

「掃除中じゃないの?」

希は手を振る。

「こんなん掃き寄ったら、夜になってしまうやん。一日1時間で十分」

竹箒とは逆の手で、私の手を掴む。

すっかり冷え切った絵里の手には、
じんわりと染み入る暖かさだった。

「猫も、えりちの膝の上できっと心穏やかになったと思うで」

「猫もそんな心境になるのかしら」

「えりちの膝の上やからな、当たり前やん」

それはどうか分からないけれど。
この瞬間を長く長く引き伸ばして、
ゆったりと湯船に浮かべて、
彼女といつまでも、
こんな風に味わっていたい。

そう思った。






おわり

お粗末さま。
おやすみ


過去作教えろください

>>11
読んでくれてありがと

1、ラブライブ系
①ギャグ
②エロ
③シリアス

2、オリジナル百合

どれがええやろか?

>>11
3、その他

エロとゆり以外がいいな

>>15
生粋の百合とエロ書きだから、あんまりないけど、


ラブライブ

ss形式。しんみり。穂乃果、雪穂、父
穂乃果「お父さんがちょっとボケたみたい」

ss形式。シュール。穂乃果、μ’s
穂乃果「話しかけないで! 今、石の気持ちを考えてるから!」

ss形式。高一の希、絵里
希「昨日、絢瀬さんの誕生日だったん?」絵里「そうだけど、何か?」


SAO

ss形式。友情。しんみり。アスナ、ユウキ
アスナ「結婚すればいいのよ」ユウキ「相手いないから、いいよ」


良ければ

ありがとう

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