魔男「絶望しているようだな」女「あ、あなたは!」(128)

vipで落ちちゃったから再挑戦


女「あの、大事な話って何かな? もしかして~」

イケメン「僕たち気が合わないみたいだし別れましょう」

女「バカな!? まだ付き合って1週間も経っていないわよ! 3日よ、3日!」

女「私のどこが気に入らなかったのよ……。まだやり直せるよね……」

イケメン「僕、これからバイトがあるので失礼します。二度と連絡とかしないように」

女「ちょ、ちょっと待ってー! 別れ話にしても軽すぎだよコレ!」

女「ぐわあああぁぁぁ、畜生おおおぉぉぉーーーーーーッ!!!」

女「あんまりだわ…私の人生初の超彼氏だったのに…」

女「ううっ! 悔しい!」

?「待ちな、早まるんじゃねぇ」

女「え? あ、あなたは…」

魔男「死ぬんじゃねぇ。強く生きろ」ガシッ

女「私が今の話でいつ死ぬ決心固めたのよ……」

女「それよりおじさん誰なのよ。今傷心中だから話しかけて欲しくないの」

魔男「あ゛ぁ? 何があったか俺に話してみな。勝手にナーバスってねェでよォ」

魔男「俺は魔法使いの男。通称″魔男″というナイスガイだぜ。胸筋触るかい?」

女「どこからツッコむか迷うけれど、魔法使い?」

女「ていうか魔男って何よ。胡散臭いしあんたガチムチしてて怖いんだけど」

魔男「魔男とはいわゆる魔女の対比となる者の呼び名だ。俺たち魔男は魔女を滅ぼし新たな魔法文化を築いてんだな」

女「うへぇ、魔女滅ぼされちゃったんだ……」

女「とにかくおじさんが怪しいメルヘンお化けという事だけは理解したわ。これ以上近寄ったら警察呼びますから!」

魔男「オメェ、これから助けてやろうとしてる男に対して最低な対応すんなよブス死ね」

女「さらっと語尾に怖い言葉付け足さないでよ…こっちは本当に殺されそうで怖がってるのよ!」

魔男「ズベコベ言わず早く相談しろっつってんだろ! 配達途中で暇してる時間ねェんだよ」

女「いや、仕事の途中で気掛けてくれてたのは嬉しいけど配達って」

魔男「魔男の宅急便だオラ。これからニシンのパイをくそ生意気な娘へ届けなければいかん。俺嫌いなんだよな、このパイ!」

女「生物運ぶんなら尚更急ぎなよ! ていうかおじさんの好みなんて知らないわよっ」

女「ていうか、魔法使いも普通な仕事とかするんだ…」

魔男「実際問題魔法使いの社会も甘くねェんだよ。夢も欠片もないぜ」

女「欠片って何の欠片を指したのよ」

魔男「そういう事だから早くテメェ話せよ。俺の魔法でちゃちゃっと片すから」

女「魔法なんてあんたみたいなおじさんに使えるわけないじゃない」

女「それに簡単な問題じゃないもの。とてもデリケートな…」

魔男「あ゛ぁああ~ぁ!! これだから女は好かねェーッ!!」バキィッ

女「ぐ、ぐふぅうっ!? し、知らないおじさんにお腹殴られた…っ!」

魔男「何? 初めての彼氏にさっき振られただと」

女「はい…そうです…。本当だから殴らないでください…」

魔男「随分くだらねぇ理由で絶望顔決めやがって。簡単に死のうとしてんじゃねぇよカス」

女「だから私がいつ死のうとしてたのよ」

女「本当に素敵な彼氏だったの。今までであんなにふわふわした気持ちになれた人いなかったわ」

女「なのに、たった3日で! 私をヤリ捨てたのよぉー!」

魔男「3日内で簡単に股かっ開いたオメェも馬鹿野郎だし、脳無しだろうが」

魔男「まぁ、ようはそのふわふわ彼氏とまたズコバコしてェと俺に頼んでいるわけだな」

女「頼んでないし、そんな卑猥な理由を前に出して欲しくないんですけど」

魔男「面倒臭ェ女だな。とりあえず着いて来いや」

女「ど、どこ行く気よ…! 私はまだ何も頼んじゃ」

魔男「俺がお前の希望になってやるっつってんだよ。だから絶望してんじゃねェぜ」

女「こんな変態暴力オヤジが私の希望なんて嫌よ! 死んだ方がマシだわ!」

魔男「おう? お願い変更かぃ? しゃーねェな、ちょっと首叩き折るから向けてみな」

女「死ぬなと言った件はどうした!?」

魔男「ズベコベ言わず早く相談しろっつってんだろ! 配達途中で暇してる時間ねぇんだよ」

女「いや、仕事の途中で気掛けてくれてたのは嬉しいけど配達って」

魔男「魔男の宅急便だオラ。これからニシンのパイをくそ生意気な娘へ届けなければいかん。俺嫌いなんだよな、このパイ!」

女「生物運ぶんなら尚更急ぎなよ! ていうかおじさんの好みなんて知らないわよっ」

女「ていうか、魔法使いも普通な仕事とかするんだ…」

魔男「実際問題魔法使いの社会も甘くねェんだよ。夢も欠片もないぜ」

女「欠片って何の欠片を指したのよ」

魔男「そういう事だから早くテメェ話せよ。俺の魔法でちゃちゃっと片すから」

女「魔法なんてあんたみたいなおじさんに使えるわけないじゃない」

女「それに簡単な問題じゃないもの。とてもデリケートな…」

魔男「あ゛ぁああ~ぁ!! これだから女は好かねェーッ!!」バキィッ

女「ぐ、ぐふぅうっ!? し、知らないおじさんにお腹殴られた…っ!」

イケメン・美女「いちゃらぶちゅっちゅ」ラブラブ

女「……ど、どうして。バイトに行くって話してたのに」

魔男「どっちがお前の彼氏なんだ?」

女「彼氏なんだから男の方に決まってるでしょ。ああぅー…」

女「こんなところを見せられるぐらいなら、おじさんに着いて来るんじゃなかった!」

魔男「あ゛ぁああッ!? 文句あんなら俺に縋りついてくるんじゃねェよクソがッ」

女「縋りついた覚え一切ないんですけど!? う、うわぁーん! もう嫌だぁー!」

魔男「フン、一々泣きわめくな鬱陶しい。ここは俺に任せてお前は待ってな」

魔男「俺の魔法は奇跡を起こす最高の魔法だ。黙って見ていやがれ」ズカズカ

女「えっ、ちょ、ちょっとー! どこ行くの! ダメよ、まだ気持ちが…」

イケメン「! ~~~」
魔男「~~~……」

女「あ、もう帰って来た。絶対下手やらかすと思ってたのに」

魔男「待たせたな」

魔男「へへ、試しに俺がアイツに告ったら丁寧に断られたぜ…」

女「どうして告った!? 何を目的とした試しだったのよっ 意味わかんない!?」

わあー同じ内容投下しちゃった >>5はスルーで

魔男「お前はもうアイツ諦めた方がいいんじゃねェのか」

女「希望どうした!? 私の希望の方が随分諦めいいなっ…!」

女「……でも、そうよね。あんな場面見せられてもう一度付き合ってなんか言えないわ」

女「そうよ! 男なんて星の数ほど存在するんだもん! 私は新しい恋に生きます、おじさん」

魔男「そういう清々しいの見てて面白くないから訂正しろ。私は男になりますぐらいに」

女「一度の失恋のショックで性転換思う奴がどこにいるのよ」

女「所詮、恋愛なんて夢も希望もない世界なのよね…。うぅ…」

魔男「あ? テメェ後悔ありまくりじゃねェかよ」

女「そりゃあるわよ。3日で振られるし、影で二股かけられてたし」

魔男「ははははははははは、あははははははははっっ」ワッ

魔男「人の不幸サイコー! 蜜の味だぜ」

女「笑うなら笑うがいいわ。少しでも期待していた私がバカだったのね」

女「やっぱりっ、奇跡を起こしてくれる魔法なんてないじゃない……嘘吐きっ!!」

女「畜生ぉおおおーーーーーーーっ!!!」タタタ…

魔男「ふむ……あの女……」

女「もういや。しばらく外に出たくない」

母「女ちゃーん。お友達が来てくれたわよー。玄関で待ってるって」

女「友達? もしかして別れたところ見られちゃって心配されてるのかしら」

女「はーい……?」

魔男「よォ、ブス」

女「お母さぁーん!! こいつ、友達じゃないんだけどぉー!?」

魔男「俺だってお前みたいな根性無しの変態と交友関係持ちたかねェよ」

女「私がおじさんの前でいつ変態っぽいことしたのよ!?」

女「……まったく、家まで着いてくるとかストーカー? 本当に警察呼ぶよ」

魔男「サツが怖くて魔法使いやってられるかよ。ちょいと邪魔するぜ」ノシノシ

女「うわぁー! 家の中まで入ってくるな! 何のつもりよ!」

魔男「お前の頼みを俺はまだ解決できていねェ。言ったろ? 俺はお前の希望だ」

女「余計なお世話なのよっ…」

魔男「ここがお前の部屋か? 臭っせェな。ナプキン部屋のゴミ箱に入れてんなよ」

女「入れてないわよ!! おじさんの体臭が密室で充満してるだけでしょ!!」

女「……それで? まだ何かするつもり? 散々私をバカにしておいて」

魔男「まぁそう焦るなよ。足の踏み場もないきたねェ部屋だが、座っとけ」

女「言わなくてもわかると思うけどここ私の部屋だからね! 自分の部屋みたいな扱いで通さないで欲しいんですけどっ」

女「本当にバカにしに来ただけなら帰って。少し手伝ってもらったお礼にお茶は出すから、それ飲み終わったら」

魔男「いや、その必要はねェ。用はすぐ済むからな」ドサッ

魔男は背負った大きめのリュックを床へ降ろし、中から何か取り出した。

イケメン「ん~~~、んん~~~!!」ジタバタ

魔男「イッツァ マジック」

女「いやぁあああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!?」

女「どうして彼がこの中に入ってたのよ!?」

魔男「あ? 俺の魔法で拉致って無理矢理詰め込んだんだよ。エスパー伊藤みてェだったろ」

イケメン「この男の人が急に僕へ殴りかかってきたんだ!」

女「物理的手段取ってんじゃねーか! 真面目に警察呼ぶわよ!」

魔男「ははは、一足お先にサンタクロースからのプレゼントだ。メリークリスマス! 仲良く爆発しな」

女「笑い事じゃ……あっ」

イケメン「キミがこの人を使って僕をこんな目に合わせたのか。酷いよ!」

女「ち、違うの! 私は何も! このおじさんが勝手にしたことで!」

イケメン「言い訳は聞きたくない! ふざけるなよ……」

女「うう……」

魔男「いいやァ、ふざけたクソ野郎はテメェだろうが」

イケメン「何だと?」

イケメン「こんなふざけた事した貴方が言えた台詞か!?」

魔男「成敗ッ!!」バキィッ

イケメン「ぐ、ぐふぅーっ!? 知らない男の人から喉をやられたぁー!」ブシュウゥゥ

女「きゃああぁぁーー!? いきなり何すんのよぉ! …だ、大丈夫?」

イケメン「げほ、げほぉっ!! あんまりだ…僕が何したっていうんだよ…」

魔男「したね。お前はそこの脳無し女を裏切り、その心を深く傷つけたちまったのさ」

女「えっ」

魔男「何をした? ふざけるな? テメェがこの女の前で、そんな台詞飛ばす資格は既にないんだぜッ!」

魔男「男なら態度と度胸を見せてみな。ノータリンなその頭でも今からすべき事は理解できるだろう」

魔男「それが分からないのなら、拒否するのならば。俺はこれからテメェのその綺麗な顔を汚くぶっ飛ばすまでだ」

イケメン「ひぃ…」

女「お、おじさん……!」

男「さぁ、その女は望んでいるんだぜ。早くズコバコしろ」

イケメン・女「えっ」

女「おじさん。途中までは良かった…カッコよかったし、見直したわ…でも」

女「その先が最低すぎる……」

魔男「何言ってんだこのクソビッチは。お前はこの坊やともう一度合体したかったんだろうが」

女「大きく間違っているわよ。もう一度やり直せたらなとは思ったけど!」

女「そもそも頼むところから違うし! 私何にも頼んでなかったし!」

イケメン「変態だ……」

女「お前は縛くぞオラァー!? ボソっと何言ってんだぁー!?」

魔男「オメェこそ縛くぞオラァ……俺に無駄骨折らせやがって……」

女「あんたが無理矢理話折り曲げて勘違いしてたんでしょ!?」

魔男「お前のせいで俺の仕事がダメになったじゃあねェか、どうすんだよ、ニシンのパイは!」

女「もういやぁあーーーっ!!」

イケメン「……」

イケメン「なぁ、僕たちもう一度やり直せないだろうか?」

女「はぁはぁ……え?」

イケメン「キミがこんなに愉快な女の子とは思わなかったよ。よく考えたら気も合いそうだ」

イケメン「お願いします。僕ともう一度付き合って下さい! 二股はもうやめます! すみませんでした!」

女「ちょ、ちょっと…そんな急に言われても…」

イケメン「どうかお願いします!!」グッ

女「頭を上げてよ…! わ、わかったわ」

女「……でも、今度はしっかりした真面目なお付き合いをしてもらうからね」

イケメン「うおおぉぉぉーーー!! 真にありがとうございました! どうか今後ともご指導のほど宜しくお願いします!」カクカク

女「そんな会社の取締役並に丁寧にならなくても。えへへ」

女「おじさん、よくわからない流れでこうなったけど、きっとコレおじさんのおかげ―――」

女「あれ、おじさん? どこ行ったのよ?」

イケメン「あーもしもし。僕イケメン。急だけど別れてほしい」prpr

魔男「言っただろうが。俺の魔法は奇跡を起こす最高の魔法だってよ。しっかり叶えてやったぜ、お前の願いを」

魔男「後のことは自分たちで何とかするんだな。新たな希望もテメェで見つけな」

魔男「もう絶望する必要がないぐらい、最高の希望を~~~……」

上司「魔男さん何一人でブツブツ言ってるんだよ。気味悪い」

上司「それよりお客へしっかり届けなきゃダメじゃない。勝手に捨てるのはまずいよ」

魔男「はい。すみませんでした。いや魔法がちょっと誤作動を起こしてしまったらしくてね…」

上司「魔法って何だよ。うちでは生憎魔法は取り扱ってませんから! ちょっと魔男さん問題あるねぇ~……酷いですよ」

魔男「破ァァァーーーッ!!!」ばきぃっ

上司「ぐふぅーっ!? 新入りからいきなり頬骨殴られたぁー!」

魔男「問題があるのは恐らく私ではありませんよ。あるとすればこの社会がいけないのです」

上司「うおぉ、綺麗な開き直りを見せてもらったよ……!!」

その後、魔男は仕事をクビにされた。しかし魔男の物語はまだ始まったばかりである。


第一話 終

男「や、やめろよ。財布なんて今日は持ってきてないんだ!」

dqn「男ちゃんは嘘が下手だなぁー。連れが見たんだよ、今日自販機でジュース買ってたところを」

下っ端「げへへ、違いないぜ。コイツは間違いなくカルピス買ってた!」

男「証拠はないでしょう。とにかく今日はもう帰らないといけないんだ、通して」

下っ端「通せ? 通してくださいだ このダボがぁーッ!!」どかっ

男「うげぇっ…」

dqn「あらら、なってないねぇ…よくないな、そういうのは~~~もっと腰を入れて! 容赦なくやらなきゃーッ!!」どぎゃん

男「  」ピクピク

下っ端「さ、流石はdqnだ! 伊達に昔スラム街を渡り歩いた男じゃあねぇ~ぜ」

dqn「ま、まぁな……。何だよ男くーん! やっぱり懐に財布を隠し持っていたじゃないか」

dqn「隠すなんてよくないなぁ。勝手に通行料と罰金抜いておくから…9000円…」

男「や、やめろー……その金は今日発売されるゲームソフトを買う為に、バイトで溜めた」

dqn「おかわりが欲しいのか? 喜んでくれてやる。行け!」

下っ端「おけけェーーーッ!!!」バッ

男「ひぃああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~~!!?」

男「あううっ、くそぅ……痛い……」ボロボロ

男「僕が何悪いことしたんだよ。僕は大人しく隅っこで生きているだけじゃないか」

男「こんなの不公平すぎる! あんな奴らが美味い汁啜えるこんな世の中はあんまりだ!」

男「でも、食物連鎖の一番下の僕じゃあ、何も変えられないよな……畜生。自分が情けなくて悔しい」

男「ゲームは諦めて家に帰ろう。あれ、財布は? どこだ? 確かこの辺りに」

魔男「200円しか入ってねェ、自己主張が激しい財布のわりに中身は湿気てんなこれ」ス

男「えっ!? あ、あの、それ僕のなんですけれど…」

魔男「あ゛ぁー? テメェいつからそこ居たんだよ?」

男「だいぶ最初の方から寝転がってました」

魔男「フン、お前はこの財布以下の存在感の無さだぜ。落し物じゃねぇのかよクソ」

魔男「ん」ス

男「えっ」

魔男「えって何だよ? あ? テメェの物だろうが。早く受け取れよ」

男「僕のだけど。お金取らないんですか? 何もしないで返すんですか?」

魔男「お前の財布はみんなの財布かァー? この200円は俺にくれンのか?」

男「いえ、あげたくないですけど…」

魔男「るるるらあぁぁーーーッッッ!!!」ばきぃっ

男「げふぅーっ!? パン一の怖い人に肩殴られたぁー…」

男「痛いじゃないですか! 僕が何をしたって」

魔男「うるせェよ。俺はお前みたいなハッキリしない金玉ついてない男が嫌いなんだよボケ」

男「ついてますよ!!」

男「もういい。僕はこれで。それからそんな恰好だと通報されちゃいますからね」

魔男「サツが怖くて魔法使いやってられるかよ」

男「……プッ、魔法使いだって? あなたいい歳して面白いこと言うな」

男「僕が教えますよ。あなたは外でパンツ一丁になって興奮してる、ただの変質者です!」

魔男「うるせェガキ、俺は服も買えないぐらい貧乏なんだ。仕方がないだろ」

男「だからってパン一で外出なくてもいいでしょ!?」

男(これ以上この人に関わってたら僕まで変態と思われてしまう。無視しなきゃ)

男「本当にこれで帰ります。財布拾ってくれてありがとう」

魔男「待ちな、オメェさっき絶望していただろう」

男「はい?」

魔男「このままお前が絶望に押し潰されちまったら、いずれ幼女を襲うゲスへ進化しちまう」

男「勝手を言うなよ!? だいたい僕小さい子に興味ないので」

魔男「ん? だいたい眼鏡かけてヒョロいもさ野郎はロリコンの化身だろうが」

男「見掛けで判断するのやめてくれない!? だいぶ酷い押しつけだよそれは!」

魔男「チビガキは容姿を気にしねェからな。純粋に優しいかどうかを気にするもんな」

男「あんたの方が異常性癖者に見えるよ! このロリコン!」

魔男「あ゛ぁああぁーッ!? てめェ、俺は幼女とか少女とか嫌いなんだよ。あいつら時々魔法少女に変身するから…」

男「夢見過ぎじゃないのか!?」

魔男「紹介が遅れたが、俺は″魔男″ってんだ。魔法使いよ。趣味は魔法少女潰し」

男「お前魔法少女に親殺されたのかよ。何の恨みがあってさっきから……」

男「ていうか、魔男って初めて聞きましたよ。それに魔法使いとかいきなり怪しい」

魔男「どいつもこいつも夢ってもんがねェな。まぁ、テメェも黙ってればいずれ魔法使いなれっから安心しな。はははは」

男「どういう意味ですか!? ていうかお前みたいな魔法使い見たらその夢も直後粉々に砕けちるわ!」

男「話し相手なら誰か他の人を当たってくださいよ。これ以上僕に近づくなー!」

魔男「うるせェ、何でみんな俺見るとそんな怒るんだよ。結構凹むじゃねェか」

男「警戒されてんだよ!! まずは服を着るところから始めろ!!」

男「もういいだろ……。魔法だか絶望だか知らないけれど、僕には関係ないですよ」

魔男「俺には関係あるから仕方がねェだろうが。こいつは俺の仕事だ」

魔男「テメェを絶望の淵から引っ張り上げて喝入れるのがよ」

男「知るかよ…」

男「大体魔法使いの仕事って何だよ。魔法使いなら魔法使って好き放題したらいい」

魔男「最近の魔法使いルールは厳しいんだぜ。自分自身の為に使用すれば粉みじんになっちまう」

男「魔法使い怖いよ……」

魔男「だが、他人を救う為のリスクは万に一つもねェ。そしてこの仕事は俺個人の行いさ」

魔男「しっかり見返りは頂くけどな」

男「結局慈善事業ではないんですね。やっぱりお金取るんですか?」

魔男「金取るのは掟に反しちまうだろうが。血ィ抜くんだよ、血」

魔男「″きらきらまじかる☆ボトル″に人間の生き血2ℓ溜めて役所に出すと換金して貰えんだ」ス

男「真面目に怖いんだよ!! とんでもねぇな魔法使いの社会はよ!!」

魔男「…お前一々の突っ込みがつまんねェな。張り合いなくしてくるわ」

男「あんたは僕に何求めてんだぁー!? こっちは何度も帰るって言ってんだろうがっ」

魔男「まぁそう言うな。話してみな、俺がテメェの希望になってやるよ」

男「助けられたら2ℓも血抜かれるんだろ!? 死にますよ!」

魔男「一気にそんな吸うわけじゃねェよ。二週間に一度訪問して定期的に強引にでも貰ってる」

男「献血みたいだけど、最後の強引ってのが引っ掛かるんですが」

男「予め見返りに何奪われるか聞いておいて良かった。断る理由がまたできましたからね!」

男「別に僕は絶望なんかしてませんよ。分かったら消えてくれ。他の人を助けてください」

魔男「いいや、お前は絶望していたね。例えそれが本の一瞬だとしても、そいつは後を引く」

魔男「ネガティブ思考はどこまで行ってもポジティブに変化する事はねェ」

男「うるさい……!」

男「人の弱みにつけ込みやがって、いい迷惑なんですよ本当に!」

男「さよならっ! 変態暴力魔法使い! 二度と会わないでくれ!」タタタ…

魔男「……お、片玉ぐらいはありそうな根性に見えてきたぜ」

数日後

dqn「男くぅ~ん。俺たちと一緒に遊びましょ」

男「うっ! また来やがったぞ…」

下っ端「ちょいとよー、今週末にパーティあるからお前来い。オラァ入場券とドリンク券5枚売ってやるぜ」

男「行かないし売ってくれなくていいよ。やり口古過ぎだ…」

男「遊びに誘うなら僕なんかじゃなく他を当たって。今お金も少ないんだ」

dqn「つれない事言わないでよ。男くんってば俺たち以外にお友達いないじゃないの」

男「い、いないから問題でも? 僕は一人が好きなだけだよ」

dqn「またまた強がっちゃってさ。いいじゃねーか、早く財布出せ」

下っ端「今週のお友達料金の徴収だぜ! 殴られる前によこしとけよ」

男「……やっぱりじゃないか」

男「はぁー……」トボトボ

魔男「よぉ、もさ男。トレードマークの眼鏡のフレームが歪んでるぜ」

男「うわっ!? って、何だこの前の変質者さんじゃないですか」

男「僕、前に言いましたよね。二度と会わないでほしいって。警察呼びますよ!」

魔男「今日の分とこの前の分、合計で何円貸した」

男「は?」

魔男「テメェがあの猿どもに貸した金だよ。察しろボケ」

男「dqnくんたちのことを言ってるのか? ならアレは貸した金じゃないよ」

男「無理矢理奪われたんだ。あいつら、いつもああして僕がコツコツ溜めた金を!」

魔男「ガキはいいな。働かなくてもババアから小遣いせびればいいんだしよ」

男「違うよ! あれは僕がバイトで稼いだ物だ!」

魔男「あ゛ぁああー? その歳でオメェバイトとかしてんのかよ。青春捨ててんな」

男「そんなもの最初からいらないんだよ、勝手ばかり言うな!」

魔男「まぁ、稼いだ金は別にいいとしてだよ。何円貸した?」

男「どうして頑なに貸した事にしたいんですか、僕は」

男「……合わせて16000円ですっ」

魔男「フン、ガキにとっては大金というところか。いや俺も是非それぐらいタダで貰いたいところだがよォ」

男「実際その程度じゃないですよ。ずっと前から取られてたんだ、結構な額に届いてる」

男「あいつらのせいで僕はー!!」

魔男「相当な貸しがあるって事だな、テメェは。ならそろそろ返してもらえば?」

男「だから貸したわけじゃ」

魔男「貸しだ。そうだろ…? あ?」

男「何で無理矢理そういう方向へ持って行きたいんですか!?」

魔男「返して貰えばいいんじゃねェの、今までに貸した金を。テメェには猿どもから金を巻き上げる権利があると思うけど」

男「返して貰えるわけないでしょ。カツアゲですよ、毟り取られたんですよ!」

魔男「お前のその弱気で後ろ向きな態度が俺は気に食わねェんだよォーッ!!」ばきぃっ

男「が、がぶぅーっ!? 理不尽なこと言われて殴られた…!」

男「なんだか読めてきたぞ…あんた、このまま僕にdqnたちから力尽くで金取り戻させてくるつもりなんだろ…!」

魔男「そこまでの無茶を俺がお前如きもさ男に期待すると思ってんのか? アホめ」

魔男「大体俺は『返してもらえばいい』つっただけで、やれよとは言ってねェだろうが」

魔男「普通に考えて弱者のお前が金の取り立て行っても、返り討ちにあってまた絶望するだけだ。さっきのは俺の持論だボケ死ね」

男「今の流れなら誰でも勘違いするだろーが! 滅茶苦茶なんだよお前!」

男「それにあんた前に話してただろ、絶望の淵から引っ張り上げるとか…」

魔男「おう、そりゃ手伝うぜ。頼まれればな」

魔男「だがお前は俺が救いの手を伸ばしてやったら、馬鹿だよなー。拒否したんだぜ」

魔男「つまり、お前は俺という素晴らしい希望をドブに投げたわけだ。そしたらもう助ける義理もねェわな」

男「それはそうだけど……」

男(だって、助けてもらったら2週に1度強引に血抜かれるらしいし)

魔男「お? 今頃になって俺様の助けが欲しくなっちまったのか? ん? ん?」

男「うわあああぁぁぁぁっ、果てしなくうぜえええぇぇぇぇーーー!!」

魔男「俺がここに居てオメェを待っていた理由はただ一つ。シンプルな理由だ」

魔男「テメェの不幸で俺が笑いたかった」

男「くっそ、こいつ予想以上にクズ人間じゃねーか!! 畜生!!」

魔男「はははははははは。コイツはいい肴になるぜ、今夜の晩酌が楽しみだな」

男「服買うほど金がないんじゃなかったのか てめぇーはよぉっ!!?」

魔男「あ゛? なんだか調子乗って来たんじゃねェのか、オメェ……ッ?」

男「すみません。調子乗ってましたっ……」

魔男「まぁそこに座れ、もさ男。ただし俺とこれ以上関わりたくなければそのまま失せろ」

魔男「5秒で決めな。いち、に、さん、し!」

男「待てまて! そんな急かす必要ないだろう! 待てよっ」

男(関わり合いには絶対なりたくない! でも、ここで帰ったら……!)

男「」チョコン

魔男「そうだ。それでいいんだよ、分かってるじゃねェか」

男(この屑に負けたみたいで嫌なんだ。僕はこんな屑なんかに負けたくない)ギギギ…

魔男「お前は自分自身の意思で決めたんだぜ、俺から離れたくねェってよォ」

魔男「……チャンスをやろう。魔法使いとして最後にテメェに聞いてやるぜ!」

男「えっ」

魔男「何だ。またせっかく手にした希望を逃がしちまうのかぃ? 俺はそれでも構わないが」

魔男「後でもったいないとか思わねェーかなぁ。後悔するかもなぁー……」

男「待ってください!」

魔男「決まりか。助けて欲しい! そういう事でいいんだな」

男「いや、助ける助けないとかより。……その妙な自信は何処から来てるんですか」

男「あんた自称魔法使いでしょうが、まずは信頼に値する力ってやつを見せてくださいよ」

男「それ次第だよ。僕があんたに助けてもらうって話は……!」キリッ

魔男「お前、俺を馬鹿にしてんのかオラ?」

男「魔法使いだって証拠見せてみろよー! 歳食ったおやじが童貞の言い訳に使ってるだけじゃねーのかぁ!?」

男「おらおらー! 何とか上手く言い返して見せろやー!!」

男「はぁはぁ、はぁはぁ……うぅ」

魔男「……」

男(血走った目で凄い睨んでる。次に口開いたら僕は確実に殺されるだろう…滅茶苦茶怖い)

男(けど、僕は今こいつに気持ちだけは″負け″ちゃいない。負けていないんだ!)

魔男「」がしぃっ!

男「っ~~~!!」

魔男「金玉が……お前にもようやく着いたみてェだぜ……」グググ

男「うぐわあ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!?」

魔男「ちょぴっとだけ男の顔になってるじゃねェか。もさ男よォー」

魔男「昨日までのお前なら俺様にここまで啖呵切れなかったんじゃないか? あ?」パッ

男「ひーひぃー、ひーひぃー……い、いきなりどこ掴むんですか! あやうく潰れるところでしたよ!?」

魔男「フン、今しっかり証拠見せたぜ。俺が魔法使いだという事のな」

男「人の金玉力いっぱい握って悶絶させる事が魔法かよ! たまげたわ!」

魔男「はははははは。オメェのそのセンスだけは俺にも救えねェレベルだぜ、たまげたわ」

男「やかましい……。それより何でしたっけ? 助けてくれるんだっけ?」

男「もう必要ありませんよ、魔男さん。僕、dqnたちから自分でお金を取り返します」

魔男「お前、今の流れだけで自信ついたってのなら単純すぎだろ」

男「いいんですよ。僕は今日初めて勇気の出し方を知れたんですからね」

数日後

男「……」ポチポチ、ピッピッ

dqn「毎度どうも男くぅ~ん! いつものやつ、お願いしまーす!」

下っ端「ゲヘヘ、お金貸せって事だァー!」

男「貸せ? 今キミたちは僕にお金を貸して欲しいと言ってるのかい」

dqn「そうだよ。でも、男くんの事だから素直に貸してくれないよね? いつもみたいに殴らねぇとわかんねーよな?」

下っ端「金寄越せって言ってんだよ この、ダボがぁー!!」

男「だそうです、先生方……。今の会話しっかり電話口から聞こえましたよね」

男「彼らは僕の金をいつものように奪おうとし、いつものように暴力を振るおうとした!!」

dqn「お前一人で何言ってんだ?」

男「僕はdqnと下っ端からいじめを受けている! 証拠は今彼らが自ら話した!」

男「そして聞こえていたのなら、あなたたちも放っておくわけにもいかないでしょ?」

先生軍団「……」ガチャリ

下っ端「おい、ふざけんなオラぁー!!」

dqn「この男が言った事は全部嘘ですよ! こっちも今のはジョークで!」

男「先生、いじめとして真剣に対処していただけますよね。僕、念の為にボイスレコーダーも着けてたんです」

男「有耶無耶にしてこの件を流す気があるなら、しかるべき所へ持って行き、今の会話を聞かせます」

男「ネットへ流す覚悟もあります。学校も、個人名も全て書いてやってもいいんだぞ!」

先生「わかったから少し落ち着け…先生たちも急な事で驚いているんだ…」

男「よし、わかったんですね。絶対ですよ。今の言葉もしっかり記録させて貰っていますんで」

先生「うそでしょ……」

dqn「お、俺は、俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇよ!」

男「…なぁ、dqnくん。キミたちは今まで僕へどれだけ貸しを作ったかな」

男「全部そっくりそのまま耳揃えて返して貰うよ。どんな方法使ってでも、お前たちへ貸した金全てをかならず返させる」

男「例え何年も掛かろうがだ……」

dqn「俺は悪くねぇ! 俺は悪くぬぇーッ! 俺は、俺は…お、お、お……?」プシュー

魔男「よぉ、もさ男じゃねェか。相変わらず見た目きめェな」

男「だからパン一のオヤジに言われたくねーんだよっ」

男「……あの、魔男さん。僕は正直言ってあなたの事すごく嫌いです」

男「でもそれとこれとは別だと思って。キッカケをくれてありがとうございました!」

魔男「何言ってんだテメェ。また勝手に一人で勘違いしてんじゃねェーの」

男「それなら今のは聞かなかった事にしてください。勘違いならそうであってくれた方が嬉しい」

男「だけど、あんたは確かに僕にとっての、き――――――」

男「あれ? 魔男さん? どこ行ったんです? さっきまでこの辺に寝転がってたのに……」

・・・

魔男「その言葉を最後まで聞いちまったら、俺はテメェの希望へ勝手になっちまった事になる」

魔男「今回俺は何もしてねェ。もさ男、お前が全部一人で考えてやったんだぜ」

魔男「俺はただお前とその周りの不幸を笑っていただけだからな。フン、ぜってー汚ねェからもさ男の血なんか貰ってやんね」


第2話 終

なんだこれwww

まおとこさんカッケーな

子どもたち「キャッキャワーワー……」

主婦たち「旦那が……。美味しいフレンチが……」

幼女「……」ポツン

子ども「お母さーん! お腹減ったよー!」

主婦「あら、光宙ちゃん。うちの子ってば早くも育ち盛り気味でして」

主婦「そーなの。きっと大きな子へ育つのでしょうねぇ」

子ども「おかーさんっ!」

主婦「はいはい。それじゃあおウチに帰ってオヤツの時間にしようね」

子ども「わーい!」

主婦「私たちもそろそろ戻りましょうか。泡姫~!」

子ども「はーい! うちにお母さんと一緒帰るー! 手つなごっ」

主婦「甘えんぼな子で困るわ~。いつまでこうして手を繋いで帰るなんてできるのかしら」

し~~~ん

幼女「静かになっちゃった。みんなお菓子をおウチに帰ってママと食べるのかな」

幼女「……今からこの公園は私だけの公園! ぜーんぶっ! ここからあっちまで私の!」

幼女「泥んこ遊びー! えいえいっ」ビチャビチャ

幼女「飽きたからシーソーに変更! がっこんがっこん! でも一人でシーソーできない!」

幼女「次は、次は~~~……そう、ジャングルジムで探検ごっこだ!」

幼女「えへへっ、お山みたい。高いとこまで昇ってやっほーしよう~」

幼女「よいしょ……。はぁ、上まで昇れたよ! 高いたかぁーい!」キャッキャ

幼女「なんか一人ぼっちじゃつまんない」

幼女「ジャングルジムはまた今度にして、次はブランコぉ――――あっ」ズルッ

幼女「っ~!?」

がしっ

幼女「……あ、あれれー」

魔男「俺に手を使わせるとはいい度胸してるじゃねェか、チビ」

幼女「」じー

魔男「あ゛ぁ? テメェ今度は俺にガン飛ばしてんのかよ。このまま絞めんぞ」

幼女「おじちゃん。お外でそんな恰好してて寒くないの?」

魔男「さらっと話題反らしてんじゃないよ。喧嘩売ってんのかって聞いてんだお前どこ中だゴラァ」

幼女「難しい言葉言われても私わかんなーい」

幼女「それよりおじちゃん早く降ろして! 次はブランコなの! ブランコ!」ジタバタ

魔男「ブランコより楽しい遊具を紹介してやるぜ、地獄のメリーゴーランドだッ。目回して全部ゲロって果てに死ね!」

ぶん、ぶん、ぶん・・・ブォン! ブォン! ブォン!

幼女「きゃあああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!?」グルグル

幼女「楽しい! おじちゃんコレ楽しい! もっと強く回してー!」

魔男「テメェ喜ばせる為にやったんじゃねェよ。あーあ、興が冷めたぜ」

幼女「終わっちゃうの!? 今度は何してくれるー?」

魔男「帰るんだよッ!! 俺は昼間からガキと遊んでる暇はないんだ」

魔男「お前、親切で言っておいてやるけどよォ。ある日淫獣が現れても助けるとか下手な真似すんなよ。次は喜んで俺が息の根止めに来るからな」

幼女「おじちゃん帰らないでもっと私と遊ぼーよぉ、おじちゃん面白いんだよー」

魔男「ふざけんなガキぃ、俺はお前が嫌いなんだぜ。遊ぶなら家に帰ってテメェのパパの玩具をママの前で振り回してろ」

魔男「あばよ」

幼女「そんなのやだぁー……。おウチになんて帰りたくないもん……」

幼女「おじちゃーん……」

数日後

幼女「……」ポツン

主婦「それでうちの旦那ってば……あら、やだ! 雨降ってきたわ!」

主婦「あ~、曇ってたから怪しいとは思ってたのよね。虎舞竜帰るわよー!」

子ども「え~! もっと遊びたいー!」

主婦「雨降ってきたんだってば! ほら、行くよ! じゃあまた明日保育園でね」

主婦「はーい。さて、あたしたちもそろそろ帰るよ。姫星ちゃん」

子ども「うーん!」

ぽつ、ぽつぽつ、ざぁー・・・!

幼女「あーめあーめふーれふーれ~♪」

幼女「かーあさんがぁー……今から雨粒数える! 10まで数えるんだ!」

幼女「ひとつ、ふたつ、みっつ。あはは、すぐ落ちちゃうから数えらんなーい!」キャッキャ

幼女「大変だー! いっぱいの雨で公園が海になっちゃうー! あはははっ!」ざぶざぶ

幼女「私、今海の上に立ってるみたいだよ。わーい! 泳いじゃえ~……」

がしっ

幼女「ありゃ?」

魔男「お前バカじゃねェの。何泥水に全身ダイブかまそうとしてんだよ、汚いだろうが」

幼女「あぁーーー! 前に会った面白くて変なおじちゃんきたぁーーー!」

幼女「おじちゃん、おじちゃん! 一緒に遊んでよ!」

魔男「帰れ」

魔男「この様子だと今から本降りになるぜ。さっさと帰って風呂入れ」

幼女「やー。お風呂嫌いだもん、帰らないもん」

幼女「それに今日は雨だからここに人来ないし、いっぱい遊べるから」

魔男「何故人が来ないか考えて言ってんのかテメェ? 今ここで遊べば風邪引いて、明日から遊べなくなるからだボケ」

幼女「ぶ~……」

魔男「分かったなら家へ帰りな、最後警告だぜ。俺も帰る。だから帰れ」

幼女「どうしておじちゃんそんなに冷たいの。私、おじちゃん大好きよ?」

魔男「俺は大がつくほどテメェが嫌いだ。一方的な思いを押しつけてくんな自己中が」

幼女「やだよ。一緒に遊んでくれなくてもいいから、一緒に私とここにいてー」

幼女「お話するだけでも楽しいよ。それがダメならお歌歌おう~♪」

魔男「じゃあな、肺炎患ってお陀仏になってたら笑いに行ってやるぜ」スタスタ

幼女「やだよぉぉぉー……おじちゃん帰っちゃやだぁぁぁー……!!」

幼女「あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁ。あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁ~……!」グスン

魔男「オメェまで大雨降らすこたねェだろうが」ひょい

幼女「!」

幼女「肩車! 肩車だー! すっごくたかぁーい!」

魔男「帰りたくねェなら俺がお前を家まで強制送還してやる。これは嫌がらせだからな」

魔男「さっさとテメェの家の場所教えろや! 3分で連れてってやるッ!」

幼女「かたぐるまー! きゃはははっ」

魔男「おい!」

幼女「ねぇ、おじちゃん! このまま走って! あっちの方まで! そしたら~」

魔男「おい」

幼女「おじちゃん号でずっと遠くまでドライブだ! 世界一周だよ!」

魔男「お前、何でそこまで家に帰りたくねェんだよ。言ってみろ」

幼女「世界一周したらお空まで飛んで、そのまま宇宙旅行に行くの! それでそれで!」

魔男「どうして、お前、家に、帰りたがらないんだ?」

幼女「え、え、え……や、やだ……。教えないもん……」

魔男「お前まさかずっと家に帰ってないわけじゃあねェよな? 公園暮らししてたわけじゃねェよな」

魔男「よく見れば前会った時と服が変わってないな、オメェ」

幼女「……」

魔男「親父とお袋が気に食わないのか。その歳でよ」

幼女「え?」

魔男「パパとママが嫌いなのかっつってんだよハゲ」

幼女「嫌いなはずないよ。だって私のパパとママだもん、好き」

幼女「でも帰りたくない!」

魔男「これだからガキは嫌いだぜ。話に筋が全く通ってねェー」

魔男「ガキは親元にいなきゃアカンだろう。そろそろ懲りて一度帰れ」

幼女「うぅ…」

幼女「そこ。そこをお箸持つ手の方に曲がって、電柱のすぐそばんとこ」

魔男「最初から素直に場所教えてりゃいいんだよタコ。ここまで来たら一人で帰れるだろ」

魔男「あばよ、くそ生意気なガキ。二度と顔も見たくねェぜ」

幼女「おじちゃん! 待って!」がしっ

魔男「あ゛ぁああぁーッ!? 気安く触ってんじゃないよ! もう話しかけんなッ」

幼女「待ってよー…おウチまで一緒に着いてきてー…」

幼女「寂しいから……」

魔男「何で俺がそこまでサービスしなきゃいけねェ。下手したら通報されちまうだろうが」

魔男「お前一人だと家のドアも開けられないのかー? チビだもんな」

幼女「チビじゃないよっ。私お姉さんだもん……!」

魔男「フン、ほざいてな。オラさっさと着いて来いや。家の前まで行ったら今度こそ俺は帰るからな」

幼女「あ、うう」

魔男「どうした門は開いてんだろうが。さっさと中に入れ」

魔男「全く、無償で俺をここまでコキ使いやがって。ツケとくから覚えとけ」

幼女「まだ行っちゃダメ!」

魔男「いい加減にして欲しいんですがねぇーッ!! 首折んぞテメェー!!」

幼女「一緒に、おウチの中まで来て。まだ帰っちゃやだ」

魔男「おいおい、何処のマトモな親が俺を家の中へ喜んで通すってんだよ。これ以上は無理な頼みだ」

魔男「自分の家だろうが、勝手に入ればいいじゃねェか。まずい事でもあんのか? あ?」

幼女「お願いだよ…少しだけだから…」

魔男「クソがッッッ!!」がしっ

ずかずかずか・・・

魔男「あ? 随分静まってんな、テレビの音すらしねェー。人いんのかよ?」

幼女「……」ギュッ

ピンポーン

魔男「呼び鈴ならして出てこないじゃねェか。留守にしてんのか」

幼女「ううん、ママがおウチの中にいる」

魔男「ならさっさと出て来いっつってやれよ。鍵まで掛けやがって、ぶっ壊すぞオラ」

魔男「ガキ一人を外へ放り出して何考えてやがんだ。オメェ生んだ母ちゃんはよ」

幼女「私が勝手に外へ遊びに行ったから、ママ悪くない。おじちゃんこっち来てー」

魔男「玄関からがダメなら窓からか。この分ならガキは将来非行へ走るに決定だぜ」

幼女「ほら、ここから覗いてみて。やっぱりママはおウチの中にいるよ」

魔男「あ~~~……ん?」チラ

母「    」

幼女「ね、ママいるよ?」

魔男「ああ、いたぜ。だが何だありゃあ? まるで人形みたいに固まってんぜ、ママはダッチワイフとかじゃねェよな?」

幼女「前はあんなママじゃなかったの。でも、最近はずっとあんな感じ」

幼女「パパがお仕事から帰ってきてもだよ? それにパパも何も喋んない」

幼女「私が話しかけても、遊んでって言ってもいつもみたいにニコニコしてくれない。何か私のこと無視してるの!」

幼女「だからおウチにいてもつまんないし、寂しいんだよー……」

幼女「パパたちは私のことが嫌いになっちゃったのかなぁ…ううっ」

魔男「いや」

幼女「え?」

魔男「テメェのパパとママはそんな心変わり起こしてねェな。むしろ今まで通りテメェを大好きなままだぜ」

魔男「大好きすぎるから、この有り様ってワケだな」

幼女「おじちゃんが言ってるお話全然わかんないー。難しいよー!」

魔男「ま、理解できねェだろうな。ちょっと来い」がしっ

幼女「わぁ~!?」

黒いラブレターかと思った。

やっぱこっちで立ってたか
楽しみにしているぞ

魔男「邪魔するぜ」ノシノシ

母「……は、えっ!? へんた、強盗ーーー!!」

幼女「ああっ、ママが元気になった! ママー!」

母「これ以上家の中へ入って来ないでください! 警察呼びますよ!」

魔男「あ? サツが怖くて不法侵入できるかよ。喚くな中古女」

魔男「旦那は仕事か。比べてテメェは良い御身分だな、普通ならこの時間は晩飯用意する時間だぜ。家事もしないでプー垂れてやがる」

母「あなた何なんですか。お金なら渡します、ですから帰ってください」

魔男「この俺様が無償で金を受け取ると思ってやがんのか。これだから女はバカだ、すぐに結論へ急ぎたがる」

魔男「俺はテメェの金欲しさに上がってきたんじゃねェ。お前ら夫婦に話があんだよ」

母「帰って!!」

魔男「旦那はいつ帰って来る? その状態のお前じゃ話にならんからな」

母「聞こえなかったの……帰ってと言っているのよ! ああ、ダメ。警察を…」ガタガタ

魔男「よせ、俺はまだ御用になりたくない」ガシッ

母「いやあぁぁぁーーーーーーっ!!」

魔男「うッ、いい加減その耳触りな声を上げるのを止せ! 俺はテメェの希望へなりに来たんだよ」

母「いやぁ、許してください……」

幼女「おじちゃん! ママは悪いこと一つもしてない!」

幼女「ママを怒らないで。怖い顔しないで」

魔男「おら、泣いてねェで立てよ。それから茶を出すなりして俺を持て成せ」

母「私は殺されてしまうの? こんな唐突に」

母「…でも、悪くないかもしれない。死ぬ勇気も持てない私へチャンスが訪れたのよ!」

母「好きにしてください。私は、もう脅えもしませんし、逃げもしませんから……殺して」

魔男「命を粗末にするんじゃねェーーーッ!!!」ばきぃっ

母「げ、げぶぅーっ!? 知らない男の人から張手が飛んできたぁ…!」

幼女「ママ!? どうしてママを苛めたの! おじちゃん酷い!」

魔男「今のはテメェの腐り掛けた根性を叩き直す一発だ、よく味わいな」

幼女「怖いおじちゃんなんて大嫌い……。ママは悪くないのに」

母「こ、ころ」

魔男「まだふざけた事言うのなら、次は容赦しねェ~~~……」

魔男「理解したら黙ってさっさと茶を出せオラ。お客様は誠意をもって持て成せよ」

母「あう……」トボトボ

幼女「おじちゃん帰って。私、おじちゃんがママを苛める悪い人だなんて思わなかった」

幼女「だからとっても悲しいよ……」

魔男「ガキ、俺は今からお前のパパママと大切なビジネスの話をすんだ」

魔男「邪魔だから、その隅っこに静かに座ってろ。この場に置いてやるだけ感謝しやがれ」

幼女「おじちゃん出てって……うぐぅっ」ポツン

父「……」ガチャリ

魔男「おう、今帰ったか。お勤めご苦労だぜ」

父「ぬわー! 誰だ貴様は! お、おい…お前が入れたのか!? こいつは」

母「お帰りなさい……。今日はお夕飯久しぶりに作ったのよ、食べましょう」

魔男「俺に感謝しな。リクエスト通って餃子作ってくれたんだよ、テメェのワイフ」

父「そういう問題じゃないだろ!? この染みパン一丁の男は誰なんだ!」

母「魔法使いの″魔男″さんという方らしいわ……」

父「お前の知り合いにも、俺の知り合いにも魔法使いとかいなかっただろうが! 通り越して不審者だこの男は!」

魔男「何だよ、騒ぐ元気はあるんじゃねェか。良かったな。暖かい家庭を取り戻せるぜ」

父「うるさい! 出て行け! 警察を呼ぶぞ!」

魔男「用も聞かねェでいきなり追い出すとはとんだ親父だなオイ。泣けるぜ」

魔男「改めて、俺は魔法使い。魔男さんとでも呼べや」

父「いいっ 貴様に紹介を求めた覚えはない!」

魔男「あ゛? テメェの会社乗り込んで、テメェのデスクの中に糞すっぞ」

魔男「人の話最後まで聞けや社会人。…俺の仕事はお前ら夫婦のような絶望した人間を救う希望となることだ」

父「希望? 絶望? なら、随分個人の領域まで踏み込んでくるんだな……」

父「そんな助けを呼んだ覚えは我々にはありません。どうぞお帰り下さい」

魔男「テメェで全部決めてんじゃねェよ。夫婦の問題でもあんだ」

魔男「そこの女の意見もしっかり聞き入れて、それからよく考えな」

父「お、お前」

母「……あなた」

母「こうして貴方と話をするのは何年も前のことのように感じるわ」

母「私、この人から死ぬなと言われました。ずっと死のう死のうと考えてたの」

父「バカな考えを……!」

母「ある日、あの子が突然奪われて、私たちまるで死んだように毎日を過ごしていたでしょう?」

母「それならいっその事、本当に死んで楽になった方がいいかなって。もしかしたら向こうであの子も待ってるかもしれないから」

父「お前……。俺だって向こうであの子が待っていてくれるのなら、死んでしまいたい」

父「だけど、勝手な事言わせてもらうよ。お前は今一人の体じゃないんだ。そうだろう?」

父「こんなにお腹も膨らませて、生まれたがってる」

母「……」

父「俺だって毎日が辛かったさ。だけどお前がこの子を産んでくれれば、また元の家庭へ戻れるかもしれないってずっと思っていて」

父「だから毎日仕事しているんだ。俺はいつだってお前の、家族の為に働くんだよ」

魔男「お? 割と旦那の方はまともな考えして生きてんじゃねェかよ」

父「黙っていてくれないか!」

父「今までこうしてお前にきちんと話をしなかったのが一番の原因なんだな。ごめんよ」

父「俺はこれからも家族の為に汗水垂らす。だから、お願いだ。その子の為にもお前自身の為にも俺の為にも死なないでほしい」

母「……あなたは、この子があの子の代わりになるとずっと思っていたの?」

父「え」

母「子どもに代わりなんていないわ。あの子はあの子よ…」

母「替えみたいな扱いでこの子を産ませようとしていたの!? 私にはこの子が生まれようと、元の私たちへ戻る自信がありませんっ!!」

父「お、おい……」

母「あなたの話は正しいとは思う! けれど、綺麗事で誤魔化そうとしているようにも聞こえる!」

母「私は何も信じられないの! やり直せる自信もない!」

母「生まれたこの子もいなくなったらと考えると、喜んで産めません!」

父「うう……」

魔男「ならオメェら離婚した方がいいんじゃねェのか。不安定な夫婦関係が続くのなら、それは一生掛っても幸せへ辿りつけん」

魔男「道を分けな。あったけェ家庭を求めんなら旦那は違う女を見つけろ」

魔男「そこのアマは実家でしばらく隠居暮らししな。最も、テメェは気持ちの切り替えができねェままなら完全に人生詰むが」

母「ぐぅぅ……っ!」

魔男「メンタル弱い奴は周りに甘えてんだよな。いずれ親も、テメェを残して死ぬ。誰だって何かで最後に死ぬんだよ」

魔男「オメェのガキもどう足掻いたって死ぬ。早かれ遅かれなーッ!!」

魔男「オメェ、さっき死ぬ勇気が持てないとかほざいたな? そこまで娘溺愛しといて後追いする覚悟すらねェ。何が″考えてた″だ」

魔男「甘えてんだよお前は。ガキより甘えん坊の母親じゃあ世話ねェなー」

父「よせ! 彼女を死なせたいのか、死なせたくないのかどっちなんだお前は!」

魔男「死ぬなとは言ってやんぜ。だが、そいつは個人の問題だ。本当に覚悟があるのなら俺は何も言わん」

魔男「俺が手伝ってやるのは絶望の淵から這いあがれる可能性を持つ奴だけだってんだよ」

魔男「つまり、アマ! オメェは甘ちゃんのアホだが、這いあがる力がまだ残っている」

魔男「環境に助けられたな。テメェを取り巻く全てへ感謝しな」

母「何を言ってるのかわからないわよ……」

魔男「諦めより、諦めたくない気持ちが内心強かったって事だよ、言わせんなボケ。さっさとそれ引き出して別の方向へ向けるんだな」

母「そんな事言われても簡単にはいかないわ。難しいわよ」

母「所詮、あなたが話した内容だって綺麗事……!」

魔男「当たり前だアホが。俺は希望なりに来たんだぜ、綺麗事しか語らねェに決まってんだろ」

魔男「現実見てみろ。テメェが何もしない中、旦那は何をしてたんだオーイ?」

魔男「テメェと赤ん坊の為に働いてんだろうが。それをお前、そいつに向かって綺麗事で済ますのはどんな脳構造してんだと聞きたい」

父「責めないでくれ…ずっと黙っていた俺も悪い…」

魔男「そうだな。お前″も″だ。だが、コイツは悲劇のヒロイン気取って何も信じない、逃げる事しか思ってねェー」

魔男「汚ねェ考えしか持てなくなった野郎にとって、綺麗な言葉はさぞかし効果抜群だろうな」

母「うぐっ……!」

魔男「俺はお前をいじめる為に話してんじゃねェぜ。真実を突きつけてやってんのさ」

魔男「ガキが死んだ理由は知らんがよォ、テメェがそれを悔いてるならそいつを後の教訓へ昇華させとけや」

魔男「ガキは親の玩具じゃねェ。だが、ガキからお前らが学べる事も大量にあるってもんだ」

魔男「そこから得た知識をお前らが次へ託せってんだよ。人の死も人生の勉強の一つなんだぜッ」

父「……う、産もう。この子たちは俺たちの子どもだ。俺たちは責任を持たなければいけない」

父「俺たちはもう子どもじゃないんだ。親なんだよ!」

母「でも、私はこの子が生まれる事で、あの子をいつの日か忘れてしまいそうで怖いのよ……」

母「もう寂しい思いさせたくないのよ!」

魔男「本当に真症のドアホだな。お前のガキは今既に寂しがってんだよ」

母「え?」

魔男「あの世で寂しがってるとかじゃあねェ、お前らがいつまでも海底並に暗い雰囲気漂わせてっからだ」

魔男「ガキは親の感情に敏感だ。親がどん底気分じゃガキまで沈む」

魔男「オメェらのガキはそんなオメェ二人を見たくないあまり、家を飛び出してんだぜオイ」

父「な、何言ってんだ……。まるでそれじゃあ、あの子が生きているみたいに」

魔男「死んだんだろ? 何バカ言ってんだタコ。だが、ガキはお前ら二人のすぐ傍で引っ付いてんぜ」

父・母「!?」バッ

幼女『パパ、ママ~』

魔男「よく俺らの話だけで気づけたなァ。チビのくせに大したもんだぜ、くそガキ……」

魔男「オメェらの希望は俺だけじゃねェんだ。むしろ、そこのガキが俺へ出会わなければお前らはずっと変われなかったはずだぜ」

魔男「しっかりそこのガキを感じておきな。そいつはオメェら二人の希望そのものだわ」

母「い、いるの? 本当にここにいるの……!?」

幼女『いるよママー!』

父「怖いパパたちを見せてしまって、ごめんな。ごめんなぁ」

幼女『今のパパたちは怖くないもん。大好きな私のパパとママだよー』

父「ああ、あの子の声が聞こえる様な気がする。疲れてるのかな、俺は…」

魔男「テメェがそう思うんなら、そうなんだろな。テメェん中ではな」

幼女『パパお仕事で疲れたの? じゃあ私が肩叩きするから!』

すかっ

幼女『あれれ……。困ったなぁ、これじゃあパパの肩叩けない~……』

幼女『でも、私の代わりに肩叩いてくれる妹ができるから心配ないんだよね』

魔男「そうだ」

幼女『おじちゃん。私チビだけどやっぱりお姉さんでしょ! もうお姉さんなんだよ!』

幼女『嫌いなんて言ってごめんなさい、おじちゃん。おじちゃんのお陰でパパとママが仲直りしてくれたんだもんねぇ』

幼女『だから、パパママの次次次ぐらいに大好きー!』

魔男「テメェ、ぶっ殺すぜ……!」

母「ううっ、うううっっー……!」

父「あの子は俺たちを見守ってくれていたんだな。いい子に育って良かった」

父「生まれてくる子も、あの子ように優しい子どもへ育ってくれるよう頑張ろうな」

母「うん……」

父「なぁ、あんた。あんたがいなければ今の俺たちにはなれなかった」

魔男「フン、今回俺はただテメェらへ口出ししただけだぜ。何にもしてないと同等だ」

魔男「感謝するなら形残るもので寄越せや。気持ちはいくら貰っても金になんねェんだよ」

母「それならお金にはなりませんが、この子に名前を付けていただけないでしょうか?」

母「恩人から名前を授けてもらえたらこの子もきっと喜ぶでしょう」

魔男「俺は金になんねェもんには絡みたくねェ。何だ、ガキ俺にくれんのか? 売り捌くぞ」

父「な、なら……俺が考えていた候補の一つがあるんだが。″りあむ″ってどうだろう!?」

魔男「あ゛? バカ早まるな。その名前はテメェのガキを将来絶望させる。絶対にやめろ」

魔男「希望転じて絶望で、そこからまた希望か。面倒へ頭突っ込んじまったわ」

魔男「だから幼女とか嫌いなんだよくそが。アイツらいつも余計なことしか運んでこねェな」

幼女『おじちゃん!』

魔男「あぁぁー……?」

幼女『――――――』スゥゥ

魔男「心配も消えて完全に昇天しやがった。にしても幽霊見えてここまで口出せんなら、霊媒とかいけそうだな俺様」

魔男「バカじゃねェの、幽霊とかオカルトにもほどあるわ。糞喰らえ」

魔男「雨が止んだら急に冷えてきやがった。コンビニ行っておでんと熱燗買って帰ろ~」


すたすた、すたすた・・・


?「ふっふっふっ……見つけましたわ。 魔男ッ!!」


第3話 終

ちなみに全5話予定なの。黒いラブレターの東谷文仁リスペクトしてこれ書いたの
パクリってわけではないから、細かいところ気にせんで見てくれると嬉しいな

いい話だし読み易いしテンポもいい、がんばって!

親父「お客さん、ちょっと飲み過ぎじゃないの。家まで帰れる?」

男「今日だけは心行くまで飲ませておいてよ。本当に今日だけだからー」

男「おでん、大根と昆布追加で。それから黒霧ロックで」

親父「あいよ~」

男「……うー。ふぅ」カチッ、ボッ

親父「何か今日ありましたか。さっきから溜息多いね」

男「聞いてくれる? 俺、自分で有限会社立ち上げてたんよ」

親父「へぇ、起業起こしてたの? 度胸あるね。思い切りがいいんだ」

男「でしょ~? 学生時代の悪友たち誘ってさ。あいつらも良い奴らだったんだよ」

男「″だった″だけどー……」

男「やっぱり人間、仲良くても心までは共有できねぇんだわ」

男「色々あっていざこざ起きちゃってさ、その後に会社分割したりしたのよ」

親父「そう」

男「そこからだよね。俺たちの転落が始まったのも」

男「相方が金誤魔化してトンズラ扱いて、翌年赤字出して銀行が融資してくれず、仕方がなしに高利貸から借りちゃった」

親父「……黒霧と大根に昆布、お待たせ」

男「もう先が目に見えてくるだろ。大打撃受けてさ、まぁ他にも色々ありまして」

男「今日俺の人生が死にました」

男「親父、先にお勘定頼むよ」

親父「はいな」

男「かーっぺ! ……あぁ、冷える」カチッ、ボッ

男「ふー……。これからどうなんのかな、先のこと全く考えられないや」

男「この歳まで女との付き合いもなし。家に帰っても俺一人の寂しい部屋」

男「何だか家帰っても心休まらなくなってきたなぁ。あーあ、人生一度はカミさん作って娘なんかと一緒に遊んでみたりしたかったね」

男「もうそういうの期待できねーよなぁ。髪も年々薄くなってきて波平さんバカにできなくなったもん」

波平の象『』

男「くそが! お前を先に俺より酷くハゲさせてやる」グイグイ…スポッ

男「うおおおぉぉぉ~~~!! 磯野家の大黒柱を仕留めたぞぉ~~~!! はははっ」

男「はぁ……」

 「そこの叔父様、少し宜しくて?」

男「はぁー!? い、今の見られた……怒られる」

?「あなたは運が良いですわ。このワタクシに出会う事ができたんだもの」

男「俺の運が良いって? バカ言うんじゃないよ、運なんてとうに尽きちまってる」

男(女の子? この時間帯に…俺に話しかけて何のつもりだろう)

魔女「ふふーん。私は魔法使いの女、通称″魔女″ですわ。以後よろしくね」

男「お嬢さん。こんな親父捕まえても良い事ないよ。貢ぐ金も丁度切らしてる」

男「大体キミね、もう夜遅い時間だぞ」

男「見たところだとまだ中学生かそこらでしょ? 危ないから家に帰りなさい」

魔女「あら、随分とお喋りな叔父様。ところであなた今……絶望していますわね」

男「えっ」

魔女「原因は何かまだわからないけど、叔父様は絶望の淵に立っている」

魔女「私、魔女はあなたのように絶望した人間を救うお仕事をしてますの。名刺をどぞ」

男「これは……ご丁寧に」

男(魔女だか魔法使いだか、俺も昔はそういう夢見たもんだ。可愛気がある子だな)

男「それでその魔女さんが俺を助けてくれるって? 助けられるものならそうしてくれよ」

魔女「勿論助けますわ。だから私はこうして今叔父様へ話を持ちかけてるの」

魔女「どんな絶望でも奇跡を起こす魔法でちょちょいのチョイよ~♪」ニコニコ

男「頼もしい魔法だこと。さ、大人をからかうのもその辺にして、おウチへ帰りなさいよ」

魔女「ダメよ。私に帰る家なんてないもの。だから、助ける代わりに3日程叔父様のところへお邪魔させてちょうだいな?」

男「お、おい」

男「結局無理矢理着いて来られてしまったが……どうすんだ、この子」

魔女「ここが叔父様のお住まい? ボロですわね、叔父様からハゲ様へランクダウン」

男「どういう基準でそうなるんだ、様付けてんのが逆に腹立つ」

魔女「どこぞで崇められてる神様みたいでしょう?」

男「忌み嫌われた神の部類だろ! ハゲ神とか誰が拝みたがるか!」

魔女「……ああ、そこまで頭を気にしていたのね。わかりました」

魔女「ズバリ! あなたが絶望した原因は、そのハゲ散らかった油気味の頭!」

男「ちげーよ! お前のその心ない言葉で余計に気分落とされたけどなっ」

男「お嬢ちゃん、悪い事言わないから帰れ。俺は一人身で家に女はいないんだ」

魔女「別に何だろうと構いませんわ。むしろそれなら我が家のように寛げるものね!」

男「謹みを持ってー! ここは俺の家で、キミは泊められる側だよー!」

魔女「ただいまですわ。うひょー、久しぶりの屋根がある寝床よ~!」

男「おかえり……。できるなら、俺がそう言われたかったけど」

魔女「あら、おかえりなさいませ。ハゲ様。私はお風呂に入るからご飯の用意を」

男「後半も持て成す内容が嬉しかったなっ!! というか許可の一つ取ってくれ」

『うげー……ここのシャワー勢いなさすぎですわよー……』チョロチョロ

男「その遠慮のなさが俺には眩しすぎる。まったく、タオルここに置いておくからね」

男「それと、泊めるのは今日一晩だけだよ。どんな事情があるか知らないけど、俺にはキミを養う余裕ないんだから」

 『お金がない? それなら借りればいいじゃない。それがダメなら盗みなさい』

男「くそガキ……」

 『良心が邪魔するのは当たり前ですわ。でもハゲ様はそんな余裕も残されてない』

 『いいじゃないの、下手やって豚箱入っても。あそこならしょぼいけど一日三食の食事が約束されてますわ』

男「俺に犯罪へ手を染めろと言ってるのか? ばか、後に響くし周りへ迷惑がかかるだろ」

男「自分だけが助かろうとする奴はいつかバカを見るんだ。絶対に俺はしないからな」

がちゃり

魔女「ふぃー、あったまりましたわ」スッポンポン

男「おぅふっ…!?」

魔女「ねぇ、ハゲ様。そう考えるのは勝手だけれど、今はあなた自身がバカ見てるじゃないの」

魔女「ハゲ様が話したことは別に間違いではありませんわ。でも臨機応変に考えなきゃね」

男「知った気でいるなよっこのガキ! お前は子どもだからそんな事言えて……」

魔女「いやぁー!? 冷蔵庫の中ビールと氷しか入ってない! ていうかご飯の用意はよ」

男「するかボケ!!」

男「俺はもう寝る。お前みたいのにはもう付き合いきれないからな」

魔女「寝るって……私のご飯は……?」

男「寝床貸してやっただけありがたく思え! そこまで面倒見きれるか!」

魔女「私、3日前から何も食べてませんの。ひもじくて死にそうですわ」

男「知るもんか」

魔女「……翌日、男の部屋から少女の餓死死体が発見され」

男「それなら出て行ってもらおうか。妙な事件がここで起こられても困る!」

魔女「あう…。私はハゲ様の希望になるから、ギブ&テイクで、ね?」

男「なら早く解決しやがれ。何もしてないじゃないか、一方的にキミが得してばかりだ」

男「ワケの分からん娘をこっちは泊めてやったんだ。不満あるならすぐに出て行きなさい」

魔女「うえぇぇぇんっ、この人でなしー!! 油ハゲぇー!!」

男「勝手にランクダウンさせやがったな……」

魔女「ぐすんっ。いいじゃない、いいじゃない。お鍋の一つご馳走してくれても…!」

男「何で見知らぬ娘に鍋つつかせなきゃいけない。食いたい物さらっと伝えてくれるのがまた図々しい奴だな」

男「そんだけ元気なんだから餓え死にしないって。水でも飲んでお腹膨らませてなさいよ」

魔女「じゃあ、ミネラルウォーターを……」

男「水道水だよ!! 誰がお前の為にわざわざ市販の水買ってくるかっ」

魔女「やーだぁー! お金掛った美味いご飯がいーいーっ!」

男「もう寝るからね。大体、キミ魔法使いなんでしょ? なら魔法で何でも出せばいいだろうが。金でも食い物でも、家でも」

魔女「全然わかってませんわね。魔法は使用者本人へ益となる使い方をするのを禁じられてるの」

魔女「もしその間違いを起こせば一度ごとに自分の声のキーが高くなるという呪いが」

男「うわ、凄まじく微妙な呪いだ……」

男「別にその程度のリスクなら使えばいいじゃない。死活問題に追い込まれてんだろ」

魔女「い、いやですわよ。常にヘリウムガス吸った状態の声で生きるなんて死ぬしかないじゃない」

魔女「それに私は魔女一族最後の生き残りにして希望なの。偉大な魔女の歴史を汚すなんて以ての外よ!」

男「最後の魔女なんだ。ふぅん、難儀するなぁ」

魔女「だから私は絶望した人間を救うのですわ」

男「え? 人間を救う事で何に繋がるってんだよ。一人救うたびに魔女が復活するとか?」

魔女「あながち間違いじゃないですわね。救った人間を魔女へ変身させられるの」

男「じゃあお前俺を魔女へ変えようと企んで近づいてきたのか!? 寝床まで貸して俺の損の方がでかいじゃねぇか!」

魔女「はい? 油ハゲは男性じゃないの。魔女は女よ、まぁ、本来は男性の魔法使いでも″魔女″なのだけれどね」

魔女「それは置いといて、男は代わりの物へ変身していただきますのよ」

男「結局変身させるんじゃないか。魔女だからカエルとか、ネズミとか…?」

魔女「じゃじゃーん、注目! これは魔女秘密道具の一つ″綺羅亜苦淫″!」

魔女「これで絶望から救った男たちを人間爆弾へ変えちゃいますのよ」

男「うおおおおぉぉ、カエル以上の悲惨な変身じゃねぇか!! 救った人間を兵器に変えるとか下種にも程あるわ!」

魔女「これも我が魔女一族の復活のためですわ。敵対している″魔男一族″を潰すのに一番有効な武器がその爆弾だし」

魔女「ね? ギブ&テイクでしょう!?」

男「どの角度から見ても救われる方の代償のが大きいと思います!!」

男「魔女かどうかは知らないが、キミがまともな考えの持ち主じゃない事は理解した! やっぱり出て行ってくれ!」

魔女「そんなつれないこと言わないで~~~……」

?「フン、やはり魔女どもにまともな奴は一人もいねェな」

魔男「よぉ、勝手に邪魔してるぜ」ゴクゴク…

男「ぬわぁー!! 染みパン一丁の男がいつの間に! しかも人のビール勝手に空けてる…」

魔男「少々出遅れたようだが、まぁ間に合えた方かね。おらハゲ、その女を大人しく引き渡しな」

魔女「お前は魔男ッ!! なぜ私がこの場に隠れている事が……!」

魔男「爪が甘めェんだよ、小娘。俺がテメェ如き雑魚を簡単に逃すわけがねェ」

魔男「覚悟しな。オメェ、今この状況を言うなら…″詰み″だぜ」

魔女「くっ…」

男「待って、家主の俺一人置いて勝手にワケの分からないやり取り始めるなよ…」

男「あんたは見た目からしてどう考えても変態だな! おかしな真似したら通報するぞ!」

魔男「あ゛? サツにすぐ頼りたがるのは漢じゃねェなぁ。だからテメェはハゲ散らかってんだよ」

魔女「……お、叔父様ぁ~! 私、このおっきな人こわぁーい!」ひしっ

男「俺だって怖ぇえよ!! こいつお前に用があんだろ!? 俺に頼るなっ」

魔男「テメェその女に気を許すなよ。見た目はくっそかわええ魔法少女だが、中身は悪魔もチンポ縮こますド畜生だ」

男「どういう表現だそれは!?」

魔男「つまりィ……悪党だっつってんだよォーーーッッ!!」ぶんっ

魔女「きゃあー!?」

男「や、やめろぉぉぉーーー!!」

魔男「むぅ!」ばきぃっ

男「うぎぃ、ぐふ、げぼぉっ~……!?」メキメキ

魔男「糞油ハゲ野郎が! 何故そいつを庇った! 邪魔だから退いてな!」

男「お、お前たちがどういう関係してるか俺は知らない……だけど」

男「女の子が男へ殴られるところを、黙って見ていられる奴なんているわけねぇよ!」

魔女「きゅ、きゅうーん! 叔父様超カッコいいですわ!」

魔女「やーい! 変態染みマッチョ! 悔しかったら魔法使ってはどうかしら!?」

男「ばかっ これ以上あの男を挑発するんじゃない! 大人しくしているんだ!」

男「……帰ってくれ。でなければ、俺はお前を通報する。危害を加えてくる男がいると」

魔男「ハゲもここまで来ると脳味噌の中まで禿げてんな。俺を信じてそいつを引き渡しやがれ」

魔男「でなければ、テメェはかならず後悔するぜ」

魔女「おーほほほっ! 残念だけどあなたの負けよ。形勢逆転ですわ!」

魔女「叔父様はあなたを完璧に敵視した! つまり、あなたは叔父様にとっての障害!」ゴゴゴ

男(この子の体から謎のオーラが……)

魔男「ちっ!」

魔女「遅い。そして受けよ! 対象の装備を剥ぎ取り上野駅13線ホーム脇トイレへ強制転送させる魔法ぉぉぉーーー!!」カッ

魔男「まっ――――――」パッ

し~~~ん

男「あ、あれ。あの男、急にパッと消えてしまったぞ?」

魔女「ふふっ、魔法で奴を地獄送りにしてやりましたの。これで私が魔女だと信じてくれるでしょ?」

男「ひえー…なんてこった……」

ワロタw
なんかライバルがwwwwww

魔女「あの男が喋ったことは全て出鱈目だから信じない方が身のためですわ」

魔女「ではあらためて! 私に、あなたを絶望の淵から救わせてもらえるかしら」

男「絶望も吹っ飛ぶ超速展開で……なんにも言えない……」

魔女「あら、まぁいいわ。うるさい羽根虫も消え失せたし、今日はもう寝ましょ」

ぐぅ~~~

男「ん?」

魔女「……違いますわよ。今のは! 久々に魔法を使ったから、そのぅ…」

男「台所の下の戸棚を開けてごらん。少しだけど缶詰が入ってるんだ」

男「鍋じゃないけど、飢えを凌げるだけありがたいと思いなさいね」

魔女「まぁ、油ハゲヘッド……! 良いとこあるじゃない……!」

男「叔父様にしな、叔父様に。じゃあ先におやすみなさい」

魔女「サンマ、サバ、サンマ、サバ…またサバですって? くああああぁぁー!?」

魔女「こればっかりは白いお米と合わせて食べたいですわよ……」モグモグ

次の日

魔女「起きろハゲー!!」

男「既に起きとるわ……。何だ、まだ帰ってなかったのかい?」

魔女「どうして帰らなきゃいけませんの。言ってるじゃない、私はあなたを絶望から」

男「よく考えなくても後が怖いからノーセンキューだってば」

男「もう叔父さんのことは放っておいてくれていいよ。子どもがどうにかできる問題じゃあない」

魔女「分からない親父め。それは私の魔法で何とかなりますのよ!」

魔女「初めから諦めちゃってどうしますの。……そうだ、気分展開に一緒に外行きましょ」

魔女「その腐った根性を叩き直してあげますわ!」がしっ

男「お、おい!」

魔女「叔父様ぁー! 私、次はあれで遊びたいわ!」

男(都合良いときばっかり叔父様に戻すんだな)

男「昨日俺に金残ってないって言ったばかりだよな!? お前へ無駄遣い叩く事で俺は絶望から救われるってか!」

魔女「あら、世の中の男性はこういうピチピチの女の子へお金を出すことで気持ち救われてるのもいるんでしょう?」

男「悪いが俺はその部類じゃねぇんだな」

男「ほら、平日の昼間からゲーセンうろついてないで帰るよ」

魔女「え~……叔父様のケチ。ここで私へ100円投資すれば倍になってきますわよ?」

男「そうだな! 上手くいけば数枚のメダルで返ってくるね! ばかたれ!」

男「俺はゲーセンで使えるメダルが欲しいんじゃないの。円の金が欲しいんだよ」

魔女「ふふっ、金の亡者め……」

魔女「あ、あーっ! 叔父様、叔父様! 置いて行かないでー!? 迷子になりますわ、迷子にっ!!」タタタ…

男「知るかっ」

魔女「ひゃあ~ 叔父様これ見てどう思います? 超素敵だと思わない?」

男「キミ趣味悪いもの好きだな…。言っておくけど絶対買わないからね」

男「ていうか、これ以上遊びに付き合わせないでほしいが。暇じゃないんだ」

魔女「ん? 暇でしょ? 職無しだし?」

男「職無しだからこそ暇じゃねぇんだよ!! 察しろこのバカ野郎!!」

魔女「あははははっ、キレたキレたぁ~」

男「てめぇ、この……」

ぐぅ~~~

男「……おい」

魔女「おーほほほ~っ!! 私の胃袋が缶詰如きで満たされると思っていて!? お年頃だから燃費悪いんですのよ!」

男「いやいや、そんなの俺には知ったこっちゃねぇよ……」

男「……着いて来なさい。早いけどお昼ご飯にしよう」

魔女「まぁ! 叔父様とってもいい人ですわ~……ふふ♪」

男「そうかい、そうかい。良かったなぁ……」ホロリ

魔女「美味しい! マックのハンバーガー美味しい! 初めて食べましたわ!」モグモグ

魔女「叔父様もポテト摘まんでいいのよ? 長いのは私が食べるから、底のカスみたいのを」

男「お前は本当に遠慮って言葉を知らないんだな」

男「いいか、それ食ったらもう俺に付きまとうな。これ以上一緒にいると俺と財布が持たないんだ!」

魔女「ん~……おいひぃへふふぁ~……♪」

男「聞いてんのかよコイツ…」

男(…娘がいたらこんな感じなのだろうか。いや、こんな娘なら窓から放り投げたくなるけど)

男(それにしても、缶詰でもファーストフードでも美味そうに食う奴だな。ふふふっ)

魔女「はぁー、美味い美味い。人の金で食うタダ飯ほど美味い物はありませんわね」

男「もう帰るわ!!」

魔女「ちょっと! まだ全部食べ終わってないのに!」

男「一人で食べてればいいだろ! 俺はもうお前なんて疫病神知らないからな!」

男「何が気分転換だ! ここまでお前の欲求満たすことしかしてないんだが!?」

男「アイツが言った事はやっぱり正しかったな……! 俺はお前と一緒にいて後悔しまくりだよ!」

魔女「そ、そんな」

男「いくらお前が絶望から救ってくれる魔法使いだろうが、俺がお前を抱えるメリットはないみたいだな」

男「とっとと何処かへ失せろバカ野郎! 二度と顔も見たくないんだよ!」

魔女「でも私はあなたを絶望から救わなきゃ」

男「だから救われたら爆弾に変えられるんだろうがよぉっ!? 誰がそんなのへ喜んで身を差し出すか!」

男「じゃあね、金食い虫の魔女め!!」

魔女「ああ……すこぉーし調子に乗りすぎちゃいましたわね……。やれやれだ」ポツン

魔女「うーん、本当に叔父様帰ってしまったのかしら。この私を置きざりにして」

魔女「いいえ、あのハゲだいぶ人が良いからきっと心配して戻ってきますわよねぇ…」

魔女「おーほほほっ! そして私に頼むはずよ! 助けてくださいと、ねっ!」

魔女「絶望した人間は自分一人の力では這い上がれないもの。だから絶対に便利な魔法を頼って来るはず……」

魔女「さぁ、油マシマシハゲヘッドよ! 私へ助けを請いに戻ってきなさーい!」

?「その便利な魔法を過信しすぎてたのがテメェの敗因だな」

魔女「!」

魔男「地獄の底から戻ってきたぜ。テメェを本当の地獄へ引き摺り落とす為になぁ……」がしっ

魔女「うあっ―――」

男「やはりあの子を家に泊めるんじゃなかった。碌でもない事しか起きなかった」

男「最初から怪しい奴だとは思ってたけど、まさかあそこまで酷いガキとは……」

男「俺はあんなのに構っている暇はないんだ。自分だけへ意識を向けないと」

男「アイツの言う通りだったよ、俺に余裕は一切ない! ないからもう気にしちゃダメなんだ!」

男「…………うう」

男「……く、くそっ。どうしてあのガキが頭から離れないんだ、くそぉー!!」タタタ…

・・・

魔女「離せですわ! ぐぬぅ、こうやって私の仲間は消されてしまったのね!?」ジタバタ

魔男「フン、これからそのお仲間の元へテメェは行くんだ。万歳して喜びな」

魔男「お前で最後だぜ。今日で完全に魔女一族を終わらせてやる」ヌガシヌガシ

魔女「うぎゃああぁぁぁ~~~!!? パンツ降ろさないで、パンツ降ろさないでぇーっ!!」

魔男「テメェ、尻だけは綺麗で無垢でいやがる。これから酷い目に会うのを知らぬ驚きの白さ…染めてやるぜッ」

男「はぁはぁ、確かこの辺で別れたんだが…もう何処かへ行ってしまったのか?」

男「あの子は帰る家もないんだ。何とかしてあげないと、この寒空の下で可哀想なことになる」

男「魔女やぁーーーーどこにいるんだぁーーーー! 俺だよ、ハゲの叔父様だよ! 返事をしてくれぇーーーー!」

男「……なんて、俺は何やってるんだろう。どうしてあの子を」

ギャアアーーーーーー・・・・・・

男「はっ!?」

魔女「痛い痛い痛いぃ~~~っ!!? も、もう許して! ごめんなさいごめんなさいっ」

魔男「ははははははっ、テメェのケツへ俺の熱いビートを刻むぜ」パンパンスパパァーン!

男「う、うわあああぁぁぁーーー!!き、昨日の変態に…尻を引っ叩かれていやがる……!!」

男「その子を離すんだ! 可愛いお尻が真っ赤に腫れ上がってるじゃないか!」

魔男「あ゛? テメェ近づくんじゃねェぞ。今からこの悪魔を抹殺するからな」

魔男「コイツはその為の下準備だぜ。いいか、もう下手に邪魔立てしてくるんじゃねェ…」

男「うっ」

魔女「お、おじさま!? 助けて…私を助けてぇー! お願いします助けてくださいっ」

魔男「助ける側が助けを求めるとは皮肉だな、魔女。だがテメェには救いを求める隙すら与えんぜ」パパパパンッ

魔女「おやめくださいませ! 小刻みに引っ叩かないでっ! …うわあぁぁぁ~んっ!!」

男「本気で泣いてるじゃないか……。こんなのあんまりだ」

男「う、う、うおおおおぉぉぉーーー!! その子を離せぇーーー!!」がしっ

魔男「死ねッ」ぐしゃあっ

男「ぐばあああぁぁぁー!? ひ、膝が俺の顔面にぃ…!?」ポタ、ポタ

魔女「おじさま!」

男「大丈夫だよ…これぐらい。すぐに助けるから安心して…」

魔男「懲りないポマードハゲだな。テメェ、こいつに魅了されちまったのか」

魔男「諦めな。所詮この魔女は害を生むだけの悪なんだよ」

男「それでも……目の前で傷つけられているその子を助けなければ、俺が納得しない!」

男「憎たらしいし、クズだけど! 娘がいたみたいで内心嬉しかったよ……!」

男「その子は俺の娘なんだ! これ以上傷つけるのは俺が許さない!」

魔女「おじさま……。なんてバカな変態ロリコンハゲ親父なの……!?」

魔女「私はあなたを利用しようとしてたのに」

魔男「さぁ、全ての準備は整った。フィナーレだオラァ!」グリグリ…ズブゥッ

魔女「ひぎぃっ!」

男「う、うわあああぁぁぁーーーーーー!!?」

魔男「さっきまでのスパンキングはテメェの尻を解し、俺の″しゃいにんぐ☆おーがはんど″を尻穴へ突っ込む為の前戯だ」ぐい

魔女「あううぅ……っあ!?」

魔男「尻の中で何かが蠢く感触を感じるだろう。これからこの魔具を使ってテメェの命を抜き取るぜ」

魔男「魔女を唯一倒せる方法とは、ケツの穴からテメェの命である″尻子玉″を直接引っこ抜くっつーことだ!」グリグリ

魔女「ひぃ…ダメ、これ以上奥まで入れたら……あ、あ、あぁ!」

男「う、うあぁ」

魔男「むゥ、ようやく発見したぜ。ウオォオオオオオオオオオオオォォォ~~~ッ!!!」ずるずるずるずるぅっ!

魔女「   」

魔男「見ろ、尻子玉だ……」ヌチャア

男「いやだ…こんなのあんまりだぁ…ひどすぎる……」

魔男「ようやく全ての魔女を滅ぼし終えたぜ。これで俺たちにも人間どもにも真の平和が訪れるだろう」

魔男「おら、そこの情けのないハゲ。テメェには悪かったがこれもコイツを仕留める為だ、まぁ許せや」

男「……」

魔女「   」ガクッ

男「ああああああぁぁぁー……!」

魔男「もうコイツはただの脱け殻だぜ。俺の方で処分しておく。10秒やるから別れの挨拶でもしとけ」

男「……この子は、俺に迷惑ばかりかけてさ、偉そうに助けてやるとか言ってたけど全然頼りなくて」

男「でも何だか昨日この子へ出会ってから、俺の荒んだ気持ちがほぐれていった感じがしたんだ」

男「何もしなくても、もしかしたら一緒にいてくれるだけで、この子は俺の希望へなっていたのかもしれない」

魔男「コイツがテメェの希望にだと? 阿呆が、一歩間違えばテメェは神風特攻爆弾人間になるところだったんだよ。それは俺にも迷惑が掛るもんだ」

魔男「魔女ってのはとことん魔女なんだよ。魔法使いの中ではダークサイド側よ」

魔男「善人は一人も存在しねェ。人の弱みへ付け込み、利用することしか考えねェ奴らだぜ」

魔男「同情も別れも今ので気が済んだな? 俺はそろそろ行くとする」

男「待ってくれ。俺がその子の遺体を処分します。いや、させてください」

魔男「あ゛?」

男「俺の娘だ……」

魔男「ハッ!」

魔男「とことん禿げた考えしかできねェバカ野郎だ。まぁいいだろう、俺も死体抱えて歩きたくないしなー」ぽい

魔女「   」

男「ありがとう…!」

魔男「礼を言われる筋合いは一つも見当たらねェが。良かったな、テメェはかならず絶望から這い上がれるぜ」スタスタ

魔女「   」

男「さっきは痛かっただろう、怖かっただろう。もう大丈夫だからな」

男「お前が悪人だったとしても、俺にとっては良い子であったよ……」

男「俺、キミのような元気な子を授かる為にこれからも頑張ってみるよ。可愛い奥さん作ってさ」

男「そのためにも今から色々大変だよな。はははははっ」

男「……はぁ、きちんと謝りたかったな。ちくしょー」

魔女「   」ピク

男「えっ」

魔女「……うぅ」

魔女「ぎゃあああぁぁぁ~~~!! 私の貞操があああぁぁぁ~~~!!」

男「何で生きてるんだ!?」

魔女「はぁはぁ、はぁはぁ……はえ?」

男「何で生きてると聞いてるんだよ! お前、アイツから尻子玉抜かれたんじゃ」

魔女「んなの知りませんわよ!! 私だってどうして今生きてるのか……まさか」

魔女「あの魔男、私に情けをかけたの? この私に、バカな!?」

男「いやぁ、生きてるなら万々歳じゃねーか! よかったよかった!!」ぎゅっ

魔女「ひっ!?」

男「本当に心配したんだぞ……。なぁ、お前住むとこないなら俺の養子にならないか、金もないし貧乏で大変だけど」

魔女「ゴラァッてめぇ!! くっそ汚ねェ脂ぎった頭を近づけるなですわ! この、バーコードヘッドがッ!」

男「え?」

魔女「これ以上近づいたら問答無用でこの″死亜破痕唖竜駆″をぶち込みますわよ!」

 『コッチヲ見ロ コッチヲ見ロッテイッテルンダゼ』ギュラギュラギュラ

男「おいおい…そんな怒らなくてもいいじゃないか。悪かったってば…」

魔女「やかましい! くそ、いつのまにかお前の絶望なくなってますわね……」

男「あ、ああ。それもこれもキミの!」

魔女「口を開くな! そのドブ以下の口息は生きる公害レベルですのよ!」

魔女「お前のせいで危うく殺されるところだったわ! とんだ疫病神めが!」

男「おいおい…どうしたぁ~…!?」

魔女「フン、職無しニート。お前のツラは二度と見たくありませんわね!」

魔女「……それじゃあね、お前なんて勝手に幸せ掴んで長生きの末畳の上でくたばってしまえばいいんだわ」タタタ…

男「……」ポカーン



魔男「後味悪ィのは苦手なんでね。今回ばかりはあのハゲを救った功績に免じて生かしといてやるよ、悪ガキ」

魔男「ま、次はねェが」

第4話 終

男カワイソスwwwwww

魔女の殺し方ひでぇ…www

男の子「今日はそっちの村へ遊びに行かせてよ」ピコピコ

女の子「うん、いいよー。今改札開けたからおいで~」ピコピコ

男の子「わかった。うちの村で取れたフルーツお土産に持ってくから」

女の子「本当? ありがとう! ……お、来たね。いらっしゃーい」

男の子「え、まだ列車に乗り込んでないんだけど」

女の子「あえ? いやあああぁぁぁーーー!! この人誰ぇ!変な人が私の村に侵入してきたよ!!」

男の子「うわ! なんてエグい真似を……! こいつ木を狩り、花を散らし周ってやがるぜ!」

女の子「びえええぇ~~~んっ!! この人本当に誰よー!? チャットで卑猥気味な言葉飛ばしてくるよぉ!」

ヒイイィィィーーーーーー・・・・・・

魔男「ははははははは、あはははははははっ すげぇ楽しい、これ」ピコピコ

魔男「そうだ、飽きたから誰かに高値で売り付けてやるか。その金で焼肉いくぜ」

魔男「買え。本体とソフト付きのお得なセットだオラァ」ガシッ

男「ぼ、僕受験生ですからゲームしてる場合じゃないんですよ……ぐ、ぐるじ」

魔男「勉強しながらゲームすりゃいいだろうが。テメェの足は何の為についてやがる。あ゛?」

男「歩く為です……!」

魔男「ゲームする為だろうがダボ。今なら魔男のサイン書いてやっから、買うだろ?」

魔男「なぁ、俺は焼肉行きてェんだよ……。今日はもう焼肉しか胃袋が受け付けねェんだぞ、お前がこれを買わなければ俺は餓死する。そしたら怨み殺すぜ」

男「横暴だぁー! 誰か助けてくれー!」

魔男「俺の言う通りにしてりゃ何もしねェんだよ、早く金だせや」

男「うう…酷いですよ…」

?「待ちな、そいつへ渡す金なんぞ子ども銀行の紙幣で十分だぜ」

男「えっ!?」

魔男「あ゛ぁー……?」

ばきぃぃっ!

魔男「ぐ、ぐばぁー!!」ビチャチャ

男「ひいいぃぃぃ~~~~~~!? か、返り血を浴びてしまったが…コイツの血は緑色じゃないか!」

魔男「テメェェェー…俺を誰様だと知って喧嘩売ってやがんだゴラ。つーか誰だテメェはよォ」

魔男「俺は俺だ。俺は人へ呼ばせているぜ、″魔男″ってよ」

男「えええぇぇぇ~~~!? お、同じ顔した親父が二人いるよぅ!!」

男「でも、ハッキリしている違いが一つある! 片方は服を着ていて、もう片方はブリーフ一丁だ……」

魔男「あ゛ぁぁ? 俺の方が息子でけェだろうが、よく見ろや」

男「パン一のあんたのしか大きさわかんねぇよ! やめろ! 見せてくれなくていいんですっ」

魔男『テメェは俺のオリジナルか。タイミング悪い場面で現れやがって』

魔男「やれやれだぜ。俺が少し居眠りしてる間に機関が再び動き出していたとはな」

魔男『フン、俺はお前のデータを元に生み出された″魔男(株)″。人間どもを絶望へ叩き落とすこそが俺に与えられた使命よ』

男(きっと名前にはツッコんではいけないんだろう……)

男「それじゃあお前は僕から無理矢理お金を巻き上げて絶望へ落とすつもりだったんだな!」

魔男『焼肉喰いたかったっつっただろーがタコ。まぁ偶然絶望の切っ掛けへなれば一石二鳥だったがなぁ』

魔男「フン、せこい野郎だな。コイツが俺のコピーとは情けないぜ、どこも似ちゃいねェー」

魔男「最近絶望に落ちた人間がどうもよく見当たると思った。テメぇを逃がす道理はねェ」

魔男『へへ、俺こそオメェを逃がさねェ…。俺はオリジナルを越えるぜ』ゴゴ ゴ ゴゴ ゴ

男「あ、あの構えは武道を嗜む者なら誰もが畏怖の念を抱くとされる″天地魔羅の構え″……! 初めて見たが、まるでそこに巨大な塔がそそり立っている恐怖を感じて仕方がないっ!」

魔男『この必殺奥義はオリジナル、テメェが持つ技の一つよ。我が左右の腕が示すは天地。天へ勃ち、地へ勃つ……即ちこの構えは″男″の何たるかを示す至高の構え』

魔男『完璧にして頂点! 破れまい!』

魔男「バカ野郎がーッ!!」ばきぃっ

魔男『げぼぉー!? 我が最強必殺の奥義が単なる右ストレートに敗れたぁー!』メキメキ

男「う、うまい! 初っ端からの必殺技は負けフラグ! 破れないわけがなかったんだぁー!」

魔男「その奥義は元々俺んもんだぜ。俺にしか使えない。テメェ如きバチモンが使いこなすにゃ、ちと過ぎた玩具だったんだよ」

魔男『おおおぉぉぉーーー……』シュゥゥゥ

魔男「テメぇの敗北は生まれた時から決まっていた。そして、テメェは俺の安眠を妨げた」

魔男「こうも理由が重なっちゃあ勝てるわけがねぇ」

男「服を着た方の親父が泡になり溶けて消えた……。一体あなた誰なんですか?」

魔男「あ゛? 通りすがりの魔男さ」

魔男「おい、アレに何されようとしてたんだよ」

男「え、いや携帯ゲーム機とゲームソフトをセットで一万ポッキリで売りつけられそうに」

魔男「オメェは絶対受験に失敗する。容量悪い奴は蝿だな、そこに犬の糞がある。どうだテメぇん中の食糞魂に火が着いただろ、showタイムだぜ」

男「一方的にそんなレッテル貼り付けてふざけた事言わないでください」

男「そ、それより機関とか一体何ですか? 僕大好きなんです、そういう胡散臭いのが」

魔男「はは、やっぱり糞が好きなんじゃねぇか」

男「臭いとは言ったけどそこへ結び付けるのは強引すぎない? 何でそこまでウンコ好きな設定刷り込ませようとしてんだっ」

魔男「中坊は下ネタ大好きだろうが。ちんことうんこを繰り返せば幸せになってやがる」

男「ああぁ!? 中学生舐めないでいただきたい。pspでエロサイトの広告閲覧して満悦できるレベルなんですよ」

魔男「は?」

男「つまり、うんこは…好きじゃありません…」

魔男「オメェ面接なら面接官が勢いつけて殴りかかってくるレベルのバカなんだろうな」

魔男「部屋のフィギュア相手に会話の練習しときな。そのうちフィギュアが語りかけてくれる妄想力も身に付いて良い事尽くめだぜ」

男「フィギュアとか持ってないんですけど……」

男「それよりおじさん。僕をあなたの弟子にしてください! さっきのパンチは見ていて痺れましたよ!」

魔男「テメェ、受験がどうこうはどこ行った? 言う事コロコロ変わる奴だな」

男「僕は強い男になりたいんです。強くなれば精神が高まって、集中力もつくはず」

男「勉強もできて喧嘩も強いのカッコいいじゃないですかー!」

魔男「……? 何で都合良く勉強もできるようになってんだよ。オメェ本当に頭大丈夫か、俺でも心配する状態だぜ…」

魔男「ていうか、俺はお前に用はねぇー。どっかに失せろ。ガキは家帰ってモンハンかgtaやってな」スタスタ

男「待ってくださいよ! いいじゃないですか、これぐらいの頼み聞いてもくれてもさ!」

魔男「おー、怖い奴に引っ掛かっちまったぜ。いい加減にしろよ、俺は忙し―――むゥ?」

魔男「テメェ、制服のボタンが取れかかっているぜ。そのままだとみっともねェな」

男「パン一の人にだけは言われたくないよ……。さっきの人から乱暴に掴まれてこうなっちゃったんだろうなぁ」

魔男「どれ、貸してみな。その件だけは俺にも責任がある。魔法でちょちょっと直してやんよ」

男「魔法!? おじさんは強くて魔法まで使えるの!? ゲェーッ!卑怯だよっ」

魔男「お、おう、そうか……もう喋るな。極力お前と会話したくねぇや…」

すっ

魔男「―――さぁ、取れ掛けたボタンを今俺の魔法で直したぜ。あばよ」

男「え? おじさん待ってください。ボタン直っていませんが」

魔男「……あ゛ぁ?」

男「ほら、よく見てよ。魔法で直すんじゃなかったんですか?」

魔男「……どういうことだ、おい」

魔男(俺の魔法は完璧な筈だ。今までに失敗の一つした経験もねェ。なのに、これは)

魔男「もう一度制服貸せや、今のは少し手を抜いちまってたみたいだ!」

男「みたいって」

魔男「いいからさっさと寄越せっつってんだよッ」がしっ

魔男(意識を……。俺の体内から右手へ徐々に移し、力を手の先にあるボタンへ……)

すっ

魔男「うおおおおおおぉぉぉーーーっ、何いぃーッ!!?」

男「魔法使いのおじさん、どうしたんですか? ボタン…」

魔男「ま、ま、ま!」

魔男「魔法が使えねェだと……!」

魔男「そんなバカな話があるか! 俺は最強の魔男なんだぜ!」

魔男「実は俺はまだ夢の中にいるんじゃ…そうだ、そうに違いねェ」

魔男「テメぇガキッ、俺の頬を思いっきり抓りやがれ!」

男「えっ! で、でも……!」

魔男「やれってんだよ」

男「それじゃあ遠慮なく。失礼します!」グイッ

魔男「ふざけてんのかこうやれっつってんだよォーーーッ!!」ばきぃっ

男「おぐぅぇー!? 抓り方が甘くて逆に僕の頬っぺたを殴ってきたぁー!」

男「ひぃひぃ、一体どうしちゃったんだよおじさん! 様子がおかしいですよ!」

魔男「黙りやがれ! 俺に今話しかけるんじゃねぇー!!」バッ

男「お、おじさん!?」

魔男「うぐあああぁぁぁぁ~~~~~~ッ!!!」ドドドドド

魔男「まさかさっきの俺のコピー! アイツが原因か!」

魔男「触れるだけで魔法を使えなくさせる″キャンセラー″。完成していたとはな」

男「いいですねそれカッコいいネーミングだ。聞いただけでウズウズしてきます~!」

魔男「……茶化すなボケ、キャンセラーを食らえば魔法使いは二度と魔法を使えん」

魔男「魔法とは俺が俺である為に必要なもんだぜ。魔法が使えない俺はただの露出狂」

男「そういう自覚はあったんだね…」

男「でも、おじさんは魔法がなくても強かったじゃないか! 最強ですよ!」

魔男「お世辞もいらねぇ! いくら腕っぷしが強かろうが、それは魔法使いとは関係がない」

魔男「俺は、もう″魔男″の名を語る資格をなくしたっつーことだッ……!」

魔男「畜生め…」ガクッ

魔男「……おい、テメェ着いてくんじゃねぇ。殺すぞ」

男「ひっ。お、おじさんは何があっても僕の憧れの強い男だよ!」

男「弟子にしてくれるまで諦めないからね! だから……今はおじさん、元気出してくださいよ」

魔男「個人の問題に土足でズカズカ踏み入られる事ほどムカつくのはねぇ」がしっ

男「うっ…!?」

魔男「俺は今、絶望の最中にあるッ!! ただのバカ中坊にこの苦しみが分かるわけもなし」

魔男「救ってくれるわけもねェぜ! テメぇは俺の希望へなってくれるってのか?」

魔男「なれるワケがないだろうよ。たかが中坊如きにな、オメェは魔法使いじゃねぇ」

男「でも僕でも何か助けになれるかもしれないでしょう?」

魔男「ありえんッ!!」

男「僕、バカだからおじさんの苦しみとか全然理解できないけど」

男「おじさんは僕の師匠に、ヒーローへなってくれるかもしれない人なんだ! 放っておけないよ!」

魔男「バカはツケ上がると大バカへ進化しやがる。何がヒーローだ」

魔男「魔法も使えねェ今の俺にはヒーローどころか小悪党へなるのが精一杯だぜ」

男「そんなに自信喪失しないでくださいよ。……そうだ、おじさん。僕と一緒に秘密の特訓しましょ!」

魔男「あ゛?」

男「漫画の展開でも挫折した後に修業で鍛えて、さらに強い力を得るってのがあるでしょ!?」

男「おじさんは今そんな状況に置かれているんです。むしろ、これはチャンスなんですよ!」

魔男「……」

公園

魔男「中坊、そこを離れていな」

男「おじさん。そのアルミ缶で何をするの?」

魔男「オメェが言ってた″秘密の特訓″って奴よ。このまま何もしないってのも俺の癪に障る」

男「お、おじさん! さすがヒーローだよ~!」

魔男「気が散るからテメぇは引っ込んでな。集中してんだよ」グググ

魔男(手の中のアルミ缶へ意識を全て持ってゆく、けして手へ力を込めずに……)

魔男「ぐぐぐ……。ぬああァああァァァんーーーーーーッッ!!!」ぐしゃあ!

男「う、うおおぉー!! アルミ缶を片手で捻り潰したぁー!!」

魔男「はぁはぁ、ダメだ……! 集中していく分、どうしても手へ余計な力が入っちまう!」

魔男「こんな簡単なことも、俺は……」

男「諦めちゃダメなんだ!!」

魔男「あ゛ぁ!?」

男「ヒーローはいつだってピンチから逃げたりしない、それがヒーローの条件だよ!」

男「おじさん、僕は応援します! あなたが元通りになるように!」

魔男「食糞中坊……。テメェ、良い奴だな」

男「当然です。おじさんは僕を助けてくれた僕だけのヒーローなんだ、いつだって応援するよ」

男「だから治ったら僕をしっかり鍛えてくださいね! 約束だよ!」

魔男「フン、阿呆が。まぁ考えておくぐらいは言っておくぜ」

魔男「今日はもう遅い。ガキはそろそろ家へ帰りな、俺も続きは明日にしておく」

男「それなら僕も明日またここへ来ます! 待ってますからね!」

魔男「おう」

魔男「ヒーローはいつだってピンチ逃げねぇか。全くだぜ」

魔男「元魔男の俺様が簡単に絶望するわけにはいかねぇわな、魔法はかならず戻る!」

魔男「そして俺はヒーローとして再び人間どもを救う魔男へ戻るぜ」

お婆「……」よろよろ

魔男「ちっ、ババアは歩くのがとろくて仕方がねぇ、ありゃ亀か? さっさと歩道渡りやがれや」

お婆「ひー、ひー……」よろよろ

ブウゥゥゥーーーーン・・・

トラックの運ちゃん「zzz~……」

お婆「は、はああぁぁあぁーーーーーーーっっっ!!?」

魔男「むぅ! いかん! あのままではババアへトラックが突っ込んじまう!」

魔男「この距離では既に止めに間に合わねぇ!」

魔男「……俺は、俺は魔男だ! 魔法使いじゃねぇか! 魔法で!」

魔男「ふぬうぅぅぅ~~~、今だけでも、今だけでいい。俺に魔法を使わせてくれー!!」

ブウゥゥゥーーーーン

お婆「」ぷるぷる

魔男「ち、畜生ぉーーー! こんな時でも俺は魔法を使えねぇ! な、何もできずに見ているだけだ!」

魔男「やはり俺はただの無能へ……。いや、最初から持ってなかったのかもしれねぇ。奇跡を起こす魔法なんて。奇跡を起こす力も」

魔男「絶望だぁ…絶望が俺を包みこんでいやがる……」ガクッ


?「あ゛? 奇跡も魔法もあるんだよ。この俺には」ばきぃっ


どかあぁぁぁ~~~んっ!!

トラックの運ちゃん「ぬわぁーーーーーっ!!?」

しゅ~・・・

お婆「ひぃ、助かりましたぁ…なんとお礼を言えばいいか…!」

?「失せな老害ババア。家から飛び出すんじゃねェぜ、年金抱えてコタツで丸まってな」

魔男「お、オメぇは……!」

魔男「俺の顔そっくりじゃねぇか!? まさか、また機関が生み出したコピーかよ!」

魔男?「フン、おめでてェ野郎だ。ずっと探していたぜ テメェをな」

魔男?「俺の記憶まで引き継いでいて、見た目も俺そのもの。厄介なコピーロボだわ」

魔男「何ぃ…?」ウィーン

魔男「なりきりごっこは十分楽しめたかよ、バチモン。テメェは俺が流出させちまった情報から生み出された偽もんだ」

魔男『あ、あ、あ゛ぁ~~~……!?』ウィーン、ガシャン

魔男「全くやれやれだぜ。俺が居眠りこいてる合間に面倒起こしやがって」

魔男「コピーっつっても完璧ではなかったみてェだがな……」

魔男「オメェ、何俺と同じ顔して絶望してやがる? ムカっ腹が立ってくるぜオイ」

魔男『違う。俺が魔男だ……俺が魔男なんだオラァ……』

魔男「テメェはただのポンコツ野郎さ。その証拠にオメェは魔法の一つ使えていねェ」

魔男『!!』

魔男「探せばもっと荒が出てくるぜ。認めるまで突きつけてやろうか? あ?」

魔男『……そうか、俺は魔男じゃなくなったわけではなく』

魔男『最初から……魔男じゃなかったんだな……』

魔男「おう、そういうことだな、コピーは所詮ただのコピーだ。モノホンには絶対に敵わねェよ」

魔男「下手に感情と記憶を持ったロボットは哀れだ。オメェのような末路を辿るのかもしれんな」

魔男『ううっ……!』

魔男「すっかり絶望していやがるな。まるで人間だぜ、今のテメェはよォ」

魔男「仕方がねェ、人間が絶望しているのなら俺はテメェの希望にならなきゃな」

魔男『き、きぼうだと』

魔男「ああ、俺がテメェを絶望のどん底から救ってやるぜ。それが魔男の仕事だからな」

魔男『ならよぉ、頼むぜ……俺を破壊してくれぇ……!』

魔男『俺は、ここから持ち直せる気がしないのだ。一生魔男としてやっていけないのは、ただの生き地獄』

魔男『魔男よぉ、あんたが俺の希望になってくれるのなら、俺を地獄から解放してくれないか』

魔男「それがテメェの望みならば、俺は責任持ってそいつを叶えてやるぜッ!」

魔男「そのまま動くなよ。即効でテメェの頭部に組み込まれたpcをショートさせて破壊するッ」

魔男『ああ』

魔男『……なぁ、俺は誰かの希望になれなかったがヒーローにはなれたらしいぜ』

魔男『たった一人の頭の悪ぃガキのヒーローにだけどよ』

魔男「そりゃオメェ。ヒーローと認められたのなら、そいつは希望と同じだ」

魔男「オメェは魔法も使えないポンコツガラクタロボだが、魔男じゃなくてもお前はそいつの希望になれたんだよ。胸張って誇りな」

魔男『そうか……俺はアイツの希望になれたんだな、よかっ―――――――』

魔男『  』プシュ~

魔男「スクラップ送りするぜ、ポンコツ! 南無三だオラァーッ!!」めきょぉっ

男「はぁはぁ、はぁはぁ……///」

男「う、ううー冷えるぅー……おじさんまだ来ないのかなぁー……」

男「あと何時間待てば特訓に来てくれるだろうか……」ブルブル

魔男「わっ、何だあの変態厨房。真冬の野外にブリーフ一丁でいやがる。ありゃ相当頭イッてやがんな」

魔男「しかし、流石の俺もこの時期に全裸は堪えるわ。あとで拾ったプラスチック燃やして暖取るか……むっ」

女「もう私はダメなのよ、ギャンブル三昧な毎日から抜け出せない……し、死ぬしかないんだわ。こんな自分が悔しい! くぅっ」

魔男「おい、お前どうやら絶望しているようだな」

女「……あなたは?」

魔男「俺は魔法使いの″魔男″。テメェの絶望を救う希望だぜ」



第5話(最終話) 完

今度こそ本当の本当におわり


なんとも言えない雰囲気のssだった


結構面白かったよ。気が向いたら続き書いてくれ

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