男「どこ~にい~るの?」
女「窓の側にい~るよ」
授業の合間、がやがやとした喧騒の中、窓際でぼんやりと外を見てる君はなんだか一枚の絵みたいに綺麗だった。
正に、絵になるって奴だと思う。
男「なにをし~てるの~?」
女「なんにもしてな~いよ♪」
ある日の放課後。
校舎の影から差し込む真っ赤な夕日が教室を赤く染めていた。
彼女はいつもの場所に座っている。
夕日に照らされて、ぼんやり窓を眺めてる彼女はなんだか今にも消えてしまいそうだ。
男「なにをしてるの?」
特に深い理由はない。
なんとなく気になって声をかける。
女「何にもしてないよ?」
振り返り答える彼女。
優しくて、少し寂しそうな笑顔だった。
男「そば~にお~いでよ~」
女「今行くか~ら待ぁって~」
初めて話をしてから、結構な月日が経った。
季節が一つ変わり、上着が一枚増えるくらい。
その頃になると彼女と放課後にお喋りするのが日課のようになっていた。
僕が教室に訪ねる。
彼女が窓際の指定席から、僕の側に微笑みながら歩いてくる。
男「話を~しよう」
男「いいよまず、君から」
教室の入り口の柱に体をよりかける僕。
入り口に一番近い机に浅く腰掛けている彼女。
お決まりの台詞。
「話をしよう」
「いいよまず、君から」
優しくはにかんだ彼女の声を聞くとなんだかくすぐったいような気持ちになるんです。
それから、いつものように他愛もない同じような話を。
男「どこに~いるの~」
女「君の側に~いるよ~」
彼女と過ごす初めての冬。
僕の隣には彼女。
彼女の隣には僕。
どこへ行くのも、なにをするのも一緒。
男「なにを~してるの~?」
女「君のこと~見て~るよ」
背の低い彼女が僕を見上げて微笑む。
儚げで、いまにも消えてしまいそうな彼女。
彼女が愛おしいと強く感じた。
男「どこ~にい~くの~」
女「どこにも行か~な~いよ~」
女「ずうっと側に居るよ」
春、別れの季節。
大学進学を機に彼女と離れる事になるかと思うと悲しくて。
彼女はどうやら進学しないらしい。
男「どこに行くの?」
女「どこにも行かないよ?」
彼女は笑うとぎゅっと僕を抱き締めてくれた。
女「ずうっと側にいるよ」
男
「それから」
女
結論から言うと、僕は彼女と離れることは無かった。
彼女は僕の部屋に住み、大学の近くで働いている。
所謂、同棲という奴だ。
男「僕も君を見つめ」
大学卒業も近づいて、彼女に大切な話をする。
それまで、何度か冗談で結婚後の話なんかしたりしてたけど。
その一つ前の段階。
すっごく大切な話。
不安そうな彼女をしっかりと見つめて。
男
「それから」
女
彼女は、戸惑ったような、困ったような顔で僕の顔を見たり、辺りを見渡したりを交互に繰り返してる。
男「駄目、かな?」
女「……」
彼女は答えない。
次の瞬間――。
女「うえぇえぇぇん」
彼女は、大きな眼に、それに見合うような大粒の涙を流しながら泣いてしまった。
女「い~つも同じ話」
大学卒業。
彼女と、正式に夫婦になった。
彼女は、今も楽しそうに今後の将来について話す。
だいたいいつも同じ話だ。
男「どこ~にい~るの?」
広く感じる部屋に、一人居る。
ぼんやりと彼女の名前を呟く。
女「隣の部屋に居るよ」
本当に悲しいとき、涙はでないんだ、て初めて知った。
隣の部屋には、まだ彼女が居るみたいで。
男「側においでよ」
>>28訂正
正しくは
男「なにをしてるの?」
今も彼女が、近くにいるみたいで。
女「手紙を書いてるよ」
いつもみたいに話をしたい。
彼女の写真が飾られた部屋に、まだ彼女が居るみたいだ。
男「側においでよ」
彼女の優しい笑顔が飾られた部屋で一人、彼女の思い出にふける。
女「でももう行かなくちゃ」
男「話をしよう……」
女「」
ちょいと放置。
さて!元ネタは何でしょう?
男
「それから」
女
『私はもう彼の隣には居れない』
『ごめんなさい』
男「君は僕を見つめ」
額に飾られた変わらない彼女が僕に笑いかけてくれる。
視界が歪む。
仏間の畳には流れ出た涙が染みがいくつもできる。
男
「それから」
女
彼女は僕のお世辞にも綺麗とは言えない不格好な笑顔を好きと言ってくれた。
男「君は僕に笑っていてといったよね」
笑おう。 最愛の彼女の為に。
女「泣きながら笑った」
男
「さよなら」
女
男「昨夜夢を見たよ」
男
「さよなら」
女
女「いつも同じ話」
女「いつも同じ話」
おわり
ちなみに元ネタは
ハンバードハンバードという男女デュオの「同じ話」という曲です。
よい曲なのでもしよければ是非一度どうぞ。
スレタイで分かったぞ
お疲れ
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