千早「戦わなければ生き残れない」 (250)
アイマス×仮面ライダー龍騎のクロスです。
グロやキャラ死亡があるので、苦手な人はご注意下さい。
初SSなので稚拙な部分はご容赦いただけると幸いです(ご指摘いただけると泣いて喜びます)。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413304040
~研究室?~
真っ暗な実験室にうごめく人影は何かを漁っている。
?「あった…!あとはこれで……!」
?「あと少しだ……」
黒い板を握りしめたその顔には歪な笑みが浮かべた。
―――――
―――
―
―
―――
―――――
~ライブ会場~
P「よし、オッケー!そしたら千早を呼んできてくれないか、お前はそのまま楽屋で休憩しててくれ」
春香「わかりました!プロデューサーさん」
ソロパートの動きをざっくり確認したあと、プロデューサーは次の千早を呼ぶよう春香に頼んだ。
ライブが二週間後に迫ったこの日、会場の確認に三人は訪れていた。
コンコン
春香「ちーはーやーちゃん」
春香 (おかしいなー、楽屋にいたと思ったんだけど。)
春香「入るよ、千早ちゃん?」
ガチャ
春香 (どこに行ったんだろう千早ちゃん。もうすぐ出番なのに……)
楽屋を見回す春香。
ふと千早のカバンから見慣れない黒い板のようなものが頭を出しているのを見つけた。
春香「何だろうこれ……」
手に取り観察するが、それがどんなものなのか春香にはわからなかった。
春香「っ!」
呆然としていた春香を強烈な耳鳴りが襲う。
春香「なに……これ……?」
それは次第に弱まり、春香は独りごちる。
春香「何だったんだろう……」
次の瞬間、鏡から騎士のような格好をした人型が出てくる。
その騎士は楽屋を見渡すとポカーンと立ち尽くす春香を見つけた。
?「春香!なぜそれを持っているの!?」
春香「その声…千早ちゃん?」
春香 (えっ?千早ちゃんなの?何でこんな格好してるの?何で鏡から出てきたの?)
春香の脳内に様々な疑問がわき上がる。
春香「千早ちゃん、何をしてたの?」
千早「春香には関係のないことよ。いいからそのデッキケースを返して」
春香「ねぇ千早ちゃん、危ないことしてないよね……?」
千早「いいからそれを返して!!」
春香「千早ちゃん、これ何の道具?」
千早「春香には関係ない!」
春香「関係ないなんて言わないでよ!これはプロデューサーさんに渡すから」
そう言って春香が楽屋を出ようとした刹那、またも耳鳴りが襲う。
春香「…!」
千早「まだいたなんて……」
千早「春香、そのデッキケースを置いて出てって!早く!」
千早も耳鳴りがするのか、こめかみを押さえながら春香にそう言い残し、
千早「変身!」
先ほどの姿になって鏡に入っていった。
春香「何なのこれ……夢でも見てるのかな……?」
春香 (千早ちゃんが何をしてるかわからないけど、危ないことしてるなら助けなきゃ!)
この手のSSは一体何番目なのか
春香「えっと……変身……?」
見よう見まねで変身し、千早を追う春香。
ガキン
ザシュッ
春香「千早ちゃーん、助けにきたよ!」
千早「春香っ!?どうして!?」
バキッ
千早を見つけ声をかける春香。千早の気が一瞬そちらへ向く。
その隙を見逃さなかったディスパイダーは千早を脚で蹴り飛ばした。
春香「よくも千早ちゃんを!」
怪物「……」ブンッ
春香「きゃあっ」
千早が飛ばされ、激昂した春香はディスパイダーにパンチをお見舞いするも全く効いていない。
それどころか反撃を受け吹き飛ばされてしまう。
千早「春香!」
吹き飛ばされた春香の方に向かうディスパイダーを見て、千早はカードを引く。
『アドベント』
千早の契約モンスター・ダークウイングがディスパイダーを引きつけている間に
気を失った春香を抱えて千早はミラーワールドから脱出した。
>>5
うん番煎じで申し訳ないです。なんか思いっきり胸くそ悪いのが書きたくなって…。
千早「春香…!春香…!」
春香「うーん……私いったい……」
千早「春香!良かった……」
P「千早ー、いるかー?」コンコン
千早「はい」
P「千早どこにいたんだ、春香に呼びに行って……どうしたんだ二人とも?」
春香「ちょっと立ちくらみがして倒れちゃって」
P「大丈夫か春香!?出番まで休んでろよ。千早は俺とステージまで来てくれ。時間が押してる」
千早「わかりました…」ガチャ
―
――
――――
P「千早、春香に渡したのか……?」
千早「違います。春香が勝手に取って……。プロデューサー、私どうしたら…?」
P「バレたなら仕方ない。春香にも話すしかないな」
千早「わかりました……」
コンコン ガチャ
春香「お帰り千早ちゃん、早速で悪いんだけど……」
千早「えぇ、わかっているわ」
ステージから戻ってきた千早は春香に自分が知りうる全ての情報を明かした。
あの世界はミラーワールドということ、千早が戦っていた怪物は人を襲うということを。
そして千早は命がけでその怪物を倒しているということを。
春香「それなら私も協力するよ!」
千早「わかっているの春香!?死ぬかもしれないのよ!」
春香「大丈夫だよ千早ちゃん!二人で力を合わせればどんな怪物でもへっちゃらだって」
彼女たちは知らなかった。ミラーワールドの真実も、命をかけるということも。
千早「まずは契約をしないと話にならないわね」
春香「契約…?」
千早「そうよ。あの世界にいるモンスターと契約して力を借りるの」
千早「契約していない状態だと戦いようがないわ」
春香「千早ちゃんは契約してるの?」
千早「もちろんよ。契約せずに戦うなんて自殺行為だわ」ジトー
春香「も、もうしないよ!じゃあ早速契約するね」
千早「待って春香、今この近くにモンスターはいないわ」
春香「じゃあどうしたらいいの?」
千早「今は待つしかないわね。モンスターが近くにいるときは耳鳴りがするはずよ」
春香「あの耳鳴りってそれが原因だったんだね」
千早「さっき説明したじゃない…」
春香「えへへ、色々説明されたからちゃんと聞いてなかった…」
千早「春香!まったくもう…。それじゃあ帰ってからもう一回説明するわ」
皆死んでしまうん?
すげー文章力無いね
キチガイだものしかたない
>二人で力を合わせればどんな怪物でもへっちゃらだって
実に春香らしい頭の中お花畑な台詞。ホラー映画なら最初に死ぬキャラ。
期待
道に落ちてるのを拾うならともかく、
他人の楽屋に入る迄がギリギリセーフで、そこで他人のカバンから勝手に物を取るって、どう好意的に解釈しても楽屋泥棒だよね。
面白い。続き楽しみにしてます
頑張って下さい!
期待ー
>>14
なお実際の龍騎主人公
多々買いのはなしかと思ったら違った
>>19
なぜか主人公だけは最後迄死なないのが法則
ただし龍騎は…
コメントありがとうございます。
>>16
今さらながらもう少しマシな展開が浮かびましたが、黒歴史として残しておこうと思います。ご指摘ありがとうございますm(_ _)m
――――――――――――――――――
『ソードベント』
千早「はっ!」ガキィン
翌日、午前のレッスンが終わって事務所でくつろいでいるときに耳鳴りを感じた二人は
体が入るだけの鏡を探し、トイレからミラーワールドへ入った。
未だに契約できていない春香の姿は全身地味な色だった。
春香 (私も契約して千早ちゃんみたいに戦いたいなあ……)
千早「春香!そっちに逃げたわ!」
春香「任せて千早ちゃん!」
春香 (私だってやればできるんだから!)
千早のようにカードを抜き、剣を召喚する春香。
『ソードベント』
春香「これで私も!」ダッ
千早「春香ダメ!」
パキーン
春香「折れたぁ!?」
千早「春香っ!」
呆気にとられた春香をかばって吹き飛ばされる千早。
標的を変えたディスパイダーが千早に向かおうとしたそのとき。
グオオオォォ
咆吼と共に現れた真紅の竜がディスパイダーを攻撃する。
春香「あの竜なら!」
春香 (最初に見つけたモンスターと契約すればいっかって思ってたけど、千早ちゃんに変身後の格好に影響するって言われて思いとどまって良かった…。)
春香 (クモと竜なら竜の方が強いよね!変身したらクモ人間って格好悪いし……。)
春香「お願いっ!力を貸して!」
千早 (当たり所が悪かったのか、ダメージが大きいわね。春香は……?)
千早が春香の姿を探すと自分のピンチを救った竜と契約している。
千早 (あのモンスターなら大丈夫そうね)
契約が完了した春香の姿はドラグレッダーの真紅に包まれている。
春香「今度こそっ!」
『ソードベント』
春香「やあぁぁっ!」ザシュッ
春香 (これならいけるっ!)
契約の力で強化された刃は折れることなくディスパイダーにダメージを与える。
劣勢になるや壁を上り逃げるディスパイダー。
千早「春香!カードを引いて!」
『ファイナルベント』
春香「はあああぁぁぁっ!!」
召喚された真紅の竜・ドラグレッダー。
その火球と共に春香の強烈なキックを浴びたディスパイダーは爆発した。
ドラグレッダーはディスパイダーから出現した光球を飲み込み、姿を消す。
春香「大丈夫?千早ちゃん」
千早「ええ、やるじゃない春香」
春香「えへへ~それほどでも~」
褒められて満更でもない春香と、経緯はどうあれ無事に契約を果たした春香を見て安堵する千早。
彼女たちは自分たちの戦いを観察していた存在に気づかなかった。
『シュートベント』
?「悲しいけどこれ戦争なのよねー」ドガン
春香・千早「「きゃあぁぁっ」」
着弾の衝撃をもろに喰らう二人に追い打ちをかけるように砲弾が飛ぶ。
千早「一体何が!?」
春香「千早ちゃん見て!あそこ!」
春香が指差した先には背に大砲を背負う緑の戦士の姿があった。
千早 (あれは……人?なのに何故……。とにかく今は撤退しなくちゃ)
千早「春香!今は退くわよ」
勝利したとは言え初陣だった春香と先のダメージが残る自分では二人がかりでも分が悪いと判断し、千早はカードを抜く。
『ナスティベント』
ダークウイングの超音波に惑わされているのを確認した二人はミラーワールドから脱出した。
?「ちぇっ、逃げられちゃったか」
春香「千早ちゃん!さっきのって!」
千早「ええ、明らかに人間だったわ。どういうことなのかしら」
春香「千早ちゃん、今までこんなことは…?」
千早「なかったわ。だからわからないの」
千早「とにかく当分はミラーワールドに行くときは二人一緒にしましょう」
千早 (あの場にいたということは近くの鏡から入ったはず……。まさか765プロの誰か…?)
千早「春香、ミラーワールドのことは他言無用よ。あれが誰かわからない以上慎重に行動するべきだわ」
春香「……うん」
春香 (契約してモンスターから人を守ってるんだから、きっと話せばわかるはずだよね…)
ガチャ
美希「こんにちはなのー、千早さん!それと春香!」
春香「私はおまけ!?」
千早「こんにちは、美希」
千早「(このタイミングで事務所に…?まさかさっきのは…)」
美希「千早さんたちはレッスン?」
千早「もう終わったところよ」
美希「それじゃあ一緒におにぎり食べるの!千早さんたちの分もあるよ!」
春香「ありがとう美希ー!もうおなk「ごめんなさい、さっき二人で食べてきたばかりなの」
春香「(えっ?千早ちゃん?)」
千早「(あれが美希かもしれない以上警戒するに越したことはないわ)」
春香「(大丈夫だよ千早ちゃん!美希がそんなことするわけないって)」
春香「軽めだったからおにぎり貰っていいかな?」
美希「どーぞなの!千早さんは?」
千早「私は食べすぎになっちゃうから、ごめんなさい」
美希「大丈夫なの。じゃあ春香、一緒に食べよ?」
春香「うん!」
千早「私は先に上がるわね。お疲れ様」
美希「お疲れ様でしたなの!千早さん」
春香「(千早ちゃん、一人になったら…)」
千早「(戦えない以上ミラーワールドに入るつもりはないわ。お互い今日はもう休みましょう)」
春香「(わかった、気をつけてね千早ちゃん)」
千早「(ありがとう春香)」
千早の言うとおり、ダメージが残っている以上今日戦うのは限界だった。
春香も疲労が想像以上だったのか、おにぎりを食べると帰って行った。
美希「ハニー、本当に良かったの?今なら二人ともやっつけられたのに……」
P「ああ、今はいい。明日からが本番だ」
一人目脱落の時点で一万字弱……。先が思いやられるorz
これからバイトなので、今日はここまでにします。
乙です
春香 (今日は何もないといいんだけど……。そんなことよりこのクッキー、美味しいって言ってもらえるかな?)
翌日、事務所への道を歩きながら考え込む春香。
心配事は作ってきたクッキーに移っていた。
いつもと同じ事務所への出勤風景は、昨日の出来事が嘘であるかのように平和なものだった。
春香「っ」
そんな日常を壊すかのように昨日の耳鳴りがやってくる。
春香 (千早ちゃんを呼ばないと!)
千早にメールを送り、裏道の窓ガラスの前で変身した春香は意気込んで鏡の世界へ入っていった。
――――――
―――
ー
千早「春香っ!?そんな、もう……」
遅れること数分、道の片隅に置いてある春香のカバンを見て悟った千早は春香の後を追った。
春香「来てくれたんだ千早ちゃん!」
千早「大丈夫?春香」
春香「楽勝だったよ!これで私も一人前かな」フンス
千早「調子に乗らないの」コツン
春香「えへへ、冗談だよっ」
レイヨウ型モンスター・メガゼールを手早く倒して調子に乗る春香をたしなめる千早。
入ってきた窓ガラスに向かおうとしたそのとき、黄金の戦士が二人の目の前に立ちはだかった。
?「全てのライダーが揃った。これよりライダーバトルを開始する」
千早「誰っ!?」
春香「ライダーバトル!?」
突然の来襲に警戒し、戦闘態勢を取る二人。
それを見た新手はなおも告げる。
?「私は最後のライダー。勝ち残った者と戦おう」
春香「ライダーバトルって何のこと?」
?「その名の通り、ライダー同士の殺し合いだ。最後に勝った者はどんな願いも叶える力を手にするだろう」
千早「どんな願いも……?」
春香「殺し合い?ふざけないで!私はそんなのやらない!」
?「お前に戦う意志がなくとも他のライダーはお前を殺そうとするだろう。死にたくなければ、戦え!」
その言葉を最後に黄金のライダーは姿を消した。
春香「どういうことなの……殺し合いって……」
千早「…………!危ない春香!」
敵の急襲に気づき、春香を突き飛ばして回避行動に移る千早。
二人の前に現れたのは昨日の緑のライダーだった。
春香「やめて!どうして攻撃するの!?」
?「さっきの聞いてなかった~?ライダーバトルだよ?」
?「殺らなきゃ殺られちゃうんだって!」
『ガードベント』
春香は盾を召喚し守りながらも懸命に訴える。
春香「こんなのおかしいよ!どうして戦わなきゃいけないの!?」
?「何でも願いが叶うんだよ?戦うしかないっしょ」
春香「人を殺して願いを叶えるなんて間違ってるよ!」
?「もーうっさいなー、はるるんには願いがなくても真美にはあるの!」
『ファイナルベント』
千早・春香「「真美!?」」
敵の正体に驚く二人に引導を渡すかのごとく現れた真美の契約モンスター・マグナギガ。
その全砲門が開き、二人に照準が向けられる。
真美「サ・ヨ・ナ・ラ」カチッ
『アドベント』
真美のファイナルベント・エンドオブワールドが放たれようとしたその瞬間、
突如飛来したモンスターの体当たりでマグナギガの向きが変わった。
ズドドドドドドド!!!!!!!
立ちすくむ二人の横にマグナギガの全力全開が着弾し、辺りは煙に包まれた。
?「春香、千早、今のうちにこちらへ」
春香「えっ?」
千早「四条さん…?」
二人を戦場から誘導する貴音。
二人は戸惑うも、背後には真美がいることを考え貴音に続いた。
春香「四条さんがどうして…?」
貴音「わたくしがあの場に居たのは偶然です」
春香「そうじゃなくて!四条さんも契約してたんですか!?」
貴音「はい。七日ほど前でしょうか、わたくしが帰ると…」
春香「いえ、そこはいいです」
千早「四条さんはどうして私たちを…?」
貴音「それはわたくしに戦う意義がないためです」
貴音「さきほど春香が言ったとおり、他人を殺めて願いを叶えるのは間違っています」
千早「…………」
春香「千早ちゃん?」
貴音「如月千早…?あなたは、まさか……」
千早「……私は戦うわ」
春香「どうして!人を殺すんだよ!?」
千早「それでも……私にはこの方法しか……」
春香「そんなのおかしいよ!」
貴音「春香、そこまでにしておきましょう…」
貴音「どうやら如月千早には戦うだけの所以があるようです」
春香「そんな……千早ちゃん……」
千早「ごめんなさい、春香。次に遇ったら、そのときは正々堂々戦いましょう」
春香「嫌だよ…千早ちゃん……」
泣き崩れる春香と貴音を置いて千早はその場を去った。
貴音「春香、あなたはどうしますか?」
春香「私は戦いたくない…。みんなを殺すなんてできないよ…」
貴音「それを聞いて安心しました。わたくしは戦いを止めようと考えております」
貴音「もし春香がよろしければ同盟を組みませんか?」
春香「同盟?」
貴音「ええ、同盟です。わたくしたちでこの戦いを止めるのです!」
春香「少し…考えさせてもらってもいいですか?」
貴音「返事はこの場でなくても構いません。ただし身の振り方を決めるのは早いほうが良いかと思います」
春香「ありがとうございます、四条さん。今日はじっくり考えますね」
春香は先に裏道から出て事務所へ走って行った。
貴音「……出てきなさい、響」
響「ちぇっ、バレてたか。ハム蔵見つかったらダメじゃないか!」
貴音「響はどうするのですか?」
響「自分は戦うぞ!勝って完璧なトップアイドルになるんだ!」
貴音「それは己の研鑽によってなすべきことです!」
響「それにプロデューサーも知ってるんだから本当に死ぬわけないさー」
貴音「……だと良いのですが」
貴音 (プロデューサーの目的がわからない以上、相談するのは避けるべきですね…)
乙です
仕事しながら書きためできる人すごい。一週間空いたのに全然書きためられなかったorz
投下します。
春香 (一体どうすれば……。そうだ、プロデューサーさんに…!)
春香「プロデューサーさん!いますか?」ガチャ
千早「今は外回りに行ってるみたいよ」
春香「千早ちゃん……」
千早「…何も今ここで戦うつもりはないわ」
春香「うん……」
ガチャ
「「「「ただいま(戻りました)」」」」
春香・千早「!?」
亜美「も→くったくただよ→」
律子「まぁ今日はよくやったわ、亜美。先方の反応も良かったし」
伊織「この伊織ちゃんにダメ出し連発なんていい度胸よ!」
あずさ「まあまあ伊織ちゃん。おかげで気に入ってもらえたんだから」
春香「(千早ちゃん、あの四人は…?)」
千早「(わからないわ。初めは私以外にミラーワールドのことを知っている人がいるなんて知らなかったもの)」
亜美「ん→どしたの?はるるん」
春香「何でもないよ亜美」
亜美「つれないな→」
亜美「(はるるんたちもコレ、持ってるんでしょ?)」
二人に近寄りポケットからデッキケースの紋章をちらりと見せる亜美。
それが何を意味するかを理解した二人に動揺が走る。
春香「ど、どうして亜美が!」
亜美「(静かにしないと気づかれちゃうよ)」
亜美「(まあ、つまりそ→ゆ→こと?どうする、はるるん?)」
春香「(私は……)」
千早「(受けて立つわ、亜美)」
亜美「(千早お姉ちゃんは話が早いね→じゃあ場所変えよっか)」
春香「(待って亜美!どうして……?)」
亜美「(はるるんには関係ないよ)」
亜美「それじゃ→お疲れ様→」
千早「私もそろそろ帰るわね」
律子たちに気づかれないよう席を立つ二人。
春香はそれを黙って見ていることしかできなかった。
千早「覚悟はいい?亜美」
亜美「それはこっちのセリフだよ!」
『ストライクベント』
千早「くっ」ガキン
亜美はカードを引きハサミのような武器を右腕に装着した。
先に攻撃され、召喚機で応戦する千早。
亜美の猛攻にカードを引くことができない。
『ストライクベント』
突如響き渡る召喚の合図とともに、灼熱の火球が戦場を照らす。
二人は互いに距離を取り火球を回避した。
春香「はぁはぁ…二人とも、もうやめて」
ドラグクローファイヤーを放った春香の声は震えていた。
千早「戦う覚悟がないならここに来ることは避けるべきだわ、春香」
亜美「戦いに水を差すなんてブスいことしないでよ→」
春香「それイントネーション的に使い方間違ってるよ、亜美……」
千早「仕切り直してくれたことには感謝するわ」
『トリックベント』
亜美の攻撃が止まった隙にカードを引く千早。
一瞬で三体の分身が現れる。
『『『『ソードベント』』』』
四人の千早が槍を召喚し、亜美めがけて疾走する。
しかしカードを引く余裕は亜美にもあった。
『アドベント』
ダダダダダダダダ!!!
疾走する分身をかき消して亜美の前に立つボルキャンサー。
亜美「この勝負もらった→!!」
『ファイナルベント』
続けざまにカードを引き、勝負を決めにかかる亜美。
千早もすぐさまカードを引く。
『ファイナルベント』
春香「お願い!もうやめて!」
春香の叫びは二人の耳に届かない。
宙高く飛び立つ千早をダークウイングが包み、巨大な漆黒の槍になる。
ボルキャンサーは亜美を力強く跳ね上げる。
春香「ダメーっ!!」
春香の叫びと同時に二人は空中で衝突しはじき飛ばされた。
ダメージが大きいのか、すぐに立ち上がれない二人を心配そうに見つめる春香。
程なくして二人は立ち上がる。
千早「うっ…」
亜美「やるね→千早お姉ちゃん……」
相打ちに見えたが、亜美のデッキケースには亀裂が走っている。
次の瞬間変身が解除され、生身の肉体に戻る亜美。
亜美「ちぇ→負けちゃったか。今度は絶対勝つかんね!」
変身が解除されたことで、亜美は潔く敗北を認め笑顔で千早に語りかけた。
背後に自身の契約モンスターが迫っていることにも気づかずに。
亜美「えっ?」ガシッ
羽交い締めになり身動きが取れなくなった亜美を捕食するボルキャンサー。
亜美「やめてっ!痛いぃっ!!痛いよぉぉっ!!」
目の前で起きている事態に追いつけずに立ち尽くす千早。
春香は亜美の悲鳴を聞いて我に返った。
春香「亜美っ!!」
火球を放ちボルキャンサーから亜美を救出するも、腹部は無残に食いちぎられている。
亜美は力なく血だまりに倒れ込んだ。
亜美「嘘…だよね…?亜美死んじゃうの…?ねえ、これゲームなんでしょ?」
春香「うん、ゲームだよ……。だから大丈夫…ちょっと…休めば……元気になるって」
亜美にかけよった春香の声には嗚咽が混じっている。
手の施しようがないのは誰の目にも明らかだった。
亜美「そっ…か……。じゃあ……ちょっ…とお昼寝…するね」
春香の励ましに安心したのか、目を閉じた亜美の顔は安らかな、本当に寝ているかのような表情だった。
春香「千早ちゃん……千早ちゃんっ……亜美がっ!」
千早「…………」
無言で踵を返す千早。
春香「待って千早ちゃん!!亜美を…連れてってあげようよ」
千早「…無理よ。ミラーワールドに生身のままいると消滅する…亜美は、もう……」
亜美の体は光の粒に変わっていく。四肢はもう消えかかっていた。
春香「待って亜美!亜美!」
可愛らしい寝顔のまま、亜美の体は光となって消えてしまった。
春香「なんでっ!なんでよっ!!どうして亜美が……」
泣き崩れる春香。
悲痛な叫びがミラーワールドにこだました。
本日はここまでです。もうちょっと投下できるよう書き溜めておきます。
乙です
ほ
>>49
ありがとうございます!
投下しますね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
春香「ねえ千早ちゃん、もうやめようよ……こんなの間違ってるよ……」
千早「…春香、私の願いを叶えるにはこれしかないの……。ごめんなさい…」
千早 (もう後戻りは出来ないわね……)
その日、二人は互いに声をかけることなく帰路に就いた。
翌日、春香が事務所の扉を開けると一触即発の空気が満ちていた。
真美「…どういうこと!?千早お姉ちゃん!!」
千早「……あなたも戦うことを選んだのでしょう?」
春香「おはようございま…す…」
真美「ねえ!はるるん、亜美が死んじゃったってどういうこと!?」
春香「うっ……」
昨日の出来事がフラッシュバックする。
腹部がなくなり、血まみれのまま光となって消えた亜美。
春香「うっ!おえぇぇっっ」
あの場では感情の昂ぶりによって抑えられていたものの、
初めて目の当たりにする凄惨な光景を思い出し嘔吐する春香。
千早「春香っ!?」
真美「ちょっ!だいじょ→ぶ!?はるるん」
幸か不幸か、春香の嘔吐によって険悪な雰囲気は霧散した。
次第に落ち着きを取り戻し、亜美の死を伝える春香の表情は暗く、
真美は亜美の死を事実と知る。
真美「……なんで亜美を殺したの?千早お姉ちゃん」
千早「…最初にカードを引いたのは亜美よ。ああしなければ私が死んでいたわ」
真美「……なんで!なんでよ!!」
千早「……私だって!殺すつもりなんてなかったわ…」
真美「そんなの関係ないよ!!!」
ガチャ
やよい「うっうー!お疲れ様です!」
やよい「……真美どうしたの?それに千早さんも…」
やよい「みんな元気出しましょう!」
真美「ごめん、やよいっち。今はそんな気分になれないや…」
真美は俯いたまま事務所を後にした。
事情を知らないやよいも、漂う重苦しい雰囲気に口をつぐむ。
真美「なんで…なんで亜美が……」
あずさ「あらあら、真美ちゃん。どうしたの?」
真美「あずさお姉ちゃん…?」
あずさ「元気ないみたいね。何かあったの?」
真美「……亜美がね……死んじゃったの……」
あずさ「そう……」
あずさ「でも真美ちゃんもそれは覚悟の上でしょ?」スッ
あずさがデッキケースを懐から取り出し、真美に見せる。
それは宣戦布告を意味する。
真美「イヤだよ!もうイヤ!」
あずさ「あら~、不戦勝でいいのかしら~」
ショーウィンドウから紫の大蛇が自分を窺っているのに気づき、真美はその場から逃げ出した。
あずさ「あらあら~、逃げられちゃったわ~」
真美「もうイヤだよ…おかしいよこんなの…。ゲームじゃなかったの?」
真美「そうだ、兄ちゃんに聞けば…」
あずさ「それは無理じゃないかしら~」
真美「ひっ、あずさお姉ちゃんどうして……」
あずさ「おかしいわね~、事務所に向かってたはずなんだけど…」
あずさ「でも真美ちゃんにまた会えたから結果オーライね、うふふ」
あずさ「覚悟はいいかしら~?」
千早「こんな人目につくところでやり合うつもりですか、あずささん」
あずさ「あら~、千早ちゃん。あなたも私と戦うの?」
千早「真美を一方的に攻撃するのであれば」
あずさ「いいのかしら~。ここで真美ちゃんを助けても殺す順番が変わるだけじゃないかしら」
千早「そうですね。でもせめて正々堂々戦いたいと私は思います」
あずさ「甘いのね~。それなら二人がかりでかかってらっしゃい」
あずさは微笑んだまま表情を崩さない。
千早は真美に加勢することで分が悪くなったあずさは衝突を回避すると踏んでいたが、その目論見は崩れ去った。
デッキが強力なのか、戦闘に自身があるのか。あずさの余裕に満ちた表情からは読み取れない。
最悪の場合、その両方というおそれもある。
千早「真美、覚悟を決めなさい。私が加勢するから」
真美「どうして…亜美を殺したのに……」
千早「確かに私は亜美を殺す原因を作ったわ。でも今は生き残ることを考えて!」
千早「でないと死ぬわよ、あなたも私も」
あずさ「そうね~、私強いわよ~」
真美「イヤ!死にたくないよっ!」
千早「私もよ。だからここは共闘して生き延びましょう」
真美「うん…わかったよ!」
―――――
―――
―
『『ソードベント』』
槍を召喚する千早、サーベルを召喚するあずさ。
リーチに勝る千早だが、あずさの剣技は千早の予想以上だった。
あずさ「そろそろ終わりにしちゃいましょうか~」
剣を逆手に持ち替え猛攻をかけるあずさに、千早は防戦一方になる。
しかし千早に焦りは窺えない。
『シュートベント』
真美が大砲を召喚したのを知るや、千早は距離を取った。
あずさから離れた瞬間に砲弾が降り注ぐ。
すかさずカードに引き次に備える千早。
千早「やったかしら」
真美「フラグ立てないでよ!千早お姉ちゃん」
あずさ「残念でした~」
千早「くっ!」
『トリックベント』
千早「これなら砲撃のタイミングは読めないですよ」
先の攻撃では千早が離脱した瞬間に狙いを読まれ離脱されたが、
分身に紛れれば合図がわからなくなると千早は考えた。
あずさ「でもどれが本物の千早ちゃんか、真美ちゃんにわかるかしら~」
千早「ご心配なく。真美にはわかるようになっていますから」
『『『『『『『『ソードベント』』』』』』』』
分身も槍を召喚し、本物との差は一切なくなった。
九人の千早はあずさ目がけて疾走する。
真美「(どれが本物かなんてわかるわけないっしょ!!)」
一方で真美は千早がかましたハッタリにツッコミこそしなかったが、
内心かなり焦っていた。
真美「(でも…亜美の仇なんだし…)」
仇を取るという建前で自らを奮い立たせ、目の前の戦いに集中する。
九人がかりにも関わらず、戦況は互角だった。
千早「真美!ファイナルベントを!」
真美「えっ!?それじゃあ千早お姉ちゃんが……」
千早「いいから!」
真美「っ!」
『ファイナルベント』
突然の千早の指示に戸惑う真美。
この状況では確実に千早を巻き添えにすることはわかりきっている。
あずさ「ちょっとマズそうね~」
『アドベント』
真美が切り札を使ったと知るや、標的を変更したあずさは千早の攻撃をかわし真美に向かいつつカードを切る。
ベノスネークが現れた瞬間、マグナギガの砲門から全弾が発射された。
ドドドドドドドドドドド!!!!!
二人が剣をぶつけた場所を中心に巨大な火柱が上がり、爆煙が辺りを包み込む。
真美「千早お姉ちゃん……」
千早「私は無事よ、真美」
真美「えっ?どうやって…」
千早「常にあずささんの背後になるように立ち回ってたの」
千早「あの数で攻撃されたら途中で一人いなくなったくらい気づかないわ」
真美「そっか…良かったよ……」
千早「っ!真美!」
突然千早は真美を突き飛ばした。真美がいたその場所にベノスネークの毒液が着弾し、アスファルトを溶かす。
真美「い、今の……」
千早「ええ、どうやらまだ勝負はついていないようね」
あずさ「甘いわよ~。勝ちを確信するならこの手でしっかり殺さないと~」
真美「どうしよう、千早お姉ちゃん……」
千早「(真美、カードはあと何枚残ってるかしら?)」
真美「(ファイナルベント使っちゃったしあと2枚しかないよ…)」
千早(二人がかりでもこれは不利ね……)
千早「(この場は撤退するしかないわ。私が撹乱するからその隙に離脱するわよ)」
あずさ「相談は終わったかしら~?」
千早「ええ、もう大丈夫です」スッ
『ナスティベント』
あずさ「あら~?」フラフラ
千早「真美、今のうちに!」
真美「うんっ!」
―――――
―――
―
真美「あずさお姉ちゃん強すぎるよー……あんなのチートだって!」
千早「まさか二人がかりでもここまで苦戦するなんて……」
辛くも戦場から逃れた二人だったが、状況は最悪だった。
カードを惜しみなく使った挙げ句の戦線離脱。二人の手の内を晒すだけの結果となってしまった。
千早「とにかく事務所に戻りましょう。あそこならみんながいるし、安全なはずよ」
真美「そうだね…」
―
―――
―――――
今回はここまでです。パソコンからじゃないからかトリが変わってしまったので、これからはこのトリで進めます。
乙です
待ってます
おつおつ
雪歩のターンはよ
少し投下します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人があずさと戦っていたその頃……
やよい「大丈夫ですか?春香さん」
春香「ごめんね、やよい…」
ガチャ
貴音「お疲れ様です」
やよい「うっうー!お疲れ様です!」
貴音「お疲れ様です、やよい。……春香、顔色が優れていませんが…」
春香「ちょっと亜美のこと思い出しちゃって…でももう大丈夫です」
貴音「そうですか…。春香、自分を責めてはいけません」
春香「ありがとうございます、四条さん」
やよい「亜美が死んじゃったって本当なんですね……」
春香「うん…。ごめんね、やよい。私助けられなかった…」
貴音「あまり自分を責めてはなりません。聞くところでは突然だったようではないですか」
春香「それでも私がもっと速く助けてれば……」
貴音「悲しいことですが、過ぎてしまったことに”もしも”はありません」
貴音「亜美のような被害を出さぬようにすることが、私たちにできる贖罪ではありませんか?」
春香「…そうですね。うん、今度こそ大丈夫です!」
春香「決めました!同盟、入ります!」
やよい「どーめー?」
春香「あっ…」
貴音「同盟というのはゆにっとのようなものですよ」
やよい「お二人がユニットを組むんですかー?」
春香「うーん、何と言ったらいいか……」
貴音「そうですね、いずれは組むと思います」
やよい「私もゆにっと組みたいなぁ…」
貴音「精進すれば近いうちに誘いがかかることでしょう」
―――――
―――
―
―
ーーー
ーーーーー
ガチャ
千早「ただいま戻りました」
春香「千早ちゃん!真美は!?」
千早「ちょうど送ってきたところよ」
春香「?」
千早「あとで話すわ」
貴音「わたくしも聞いてよろしいですか?」
千早「…ええ。そうですね」
やよい「? どうしたんですか?」
千早「何でもないの、高槻さん」
やよい「…?」
千早「二人とも、少し時間をもらえるかしら?」
春香「そんな!あずささんまで…」
千早「真美と共闘しても追い込まれたわ。彼女は相当危険よ」
春香「あずささんがそんなこと言うとは思えないけど…」
千早「信じる信じないは任せるわ。でも絶対に一人では戦わないで」
貴音「わかりました。教えていただいたことには感謝します」
貴音「しかし何故私たちに…?いずれ私たちとも戦うことになるのではありませんか?」
千早「そうですね。そうなると思います」
千早「でも、私以外の人の手で脱落されるのはイヤなんです」
千早「そうでないと私が納得できないので…」
貴音「如月千早、あなたは一人で…」
千早「違います。あくまでも自分の願いのためです」
春香「ねえ千早ちゃん、どうしてそこまでして戦うの…?」
千早「……」
貴音「亡き弟君のため、ですね?」
千早「っ!」
春香「!?」
貴音「…後悔しますよ、それでもあなたは…?」
千早「もう…これしかないので…」
貴音「……そうですか。でしたら私はこれ以上何も言えません」
春香「……」
―――――
―――
―
ーーー
ーーーーー
春香「四条さん、私どうすれば…」
貴音「如月千早の覚悟は本物でした。最早刃を交えて語るしかないでしょう」
春香「そんな……」
貴音「春香、そのときまでに私たちが生き残ってなくてはいけないことを、よもや忘れたわけではないでしょう?」
春香「まずは自分たちの身の安全、ですね」
貴音「その通りです。先ほどの話が本当であればあずさには気をつけなくてはなりません」
春香「……どうしてこうなっちゃったんだろう。前はみんな仲良しで、笑いの絶えない事務所だったのに…」
貴音「……皆何かしらの願いを背負っているのでしょう。それでも殺人という方法を取るのは間違っていますが」
春香「何としても止めましょう、貴音さん」
貴音「ええ、必ずや」
本日はここまでです。戦闘シーンじゃなくて申し訳ないです…orz
乙です
おつおつ
雪歩まだ~?
やっと書き溜めが進んだ…。投下します。
――――――――――――――――――――
響「貴音ー、貴音はいるかー?」
春香「四条さん、響が」
貴音「ええ。また後ほど」
貴音「響、私はここにおりますよ」
響「そろそろ自分たちのレッスンの時間だぞー」
貴音「わかりました、参るとしましょう」
春香「行ってらっしゃい貴音さん、響も」
響「自分おまけなのかー!?」
貴音「ふふ、置いていきますよ響」
響「たかねー!待つさー」ガチャ
春香「私もそろそろ帰ろうかな…」
ガチャ
あずさ「あら~春香ちゃん、お疲れ様~」
春香「あ、あずささん……」
あずさ「うふふ~どうしたのかしら~?」
春香「何でもないですよ!お疲れ様ですっ」
あずさ「そんなに怖がらなくても大丈夫よ~、春香ちゃんは真美ちゃんたちの後って決めてるから~」
春香「えっ…?」ゾクッ
あずさ「そうそう、真美ちゃんと千早ちゃん見てないかしら~?」
春香「…知りません」
あずさ「あら~残念ね~」
春香(二人きり…どうすれば……。でも貴音さんはレッスンだし…)
あずさ「ねえねえ春香ちゃん?春香ちゃんはどうしてライダーになったのかしら?」
春香「ラ、ライダー?何ですかそれ?」
あずさ「嘘ついちゃダメよ~、知ってるんだから~」
春香(何で私がライダーだって……貴音さんはありえないし、千早ちゃんも真美も…)
春香「すいませんが何のことか本当にわからないんです。ライダーって何ですか?」
あずさ「嘘をついちゃダメって言ったじゃない~」
あずさが意味ありげに鏡に目を向ける。
つられてそちらを見た春香の目に映ったのは、今にも飛び出さんとするベノスネークだった。
春香「っ!……何で私がライダーだって知ってるんですか…?」
あずさ「何でかしらね~。『そう』だって知ってるからかしら~」
春香「……どういうことですか?」
あずさ「まあ細かいことはいいじゃない~。でも春香ちゃんは戦わないのよね?」
春香「私には戦う理由がありませんから」
あずさ「春香ちゃんになくても私にはあるって言ったら…?」
春香「…!」
あずさ「冗談よ~。さっき言ったじゃない。後で、って」
あずさ「最も私の邪魔をしなければよ~?」
春香「約束はできません。私は誰かが死ぬなんて許せないから」
あずさ「まあいいわ~。それじゃあまたね、春香ちゃん」
春香「はい…」
ひとまず危機を脱した春香は帰り支度を済ませ、事務所を後にした。
??「そっか、みんなライダーだったんだ……」
その姿を窓から眺める少女は一人呟く。
??「じゃあみんな殺さなくちゃ、ね」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
響「なあ貴音、どうして戦いを止めるんだ?」
貴音「命を賭すような戦いはあるかもしれません。ですがこの戦いではないと、私は思うのです」
響「…どんな願いも叶うんだぞ?」
貴音「それが私には信じられません。一体誰が願いを叶えるのはというのでしょうか」
響「うー、神様か何かじゃないか?」
貴音「神ですか。なるほど、確かにどのような願いをも叶える力を持った存在を私たちは神と呼びます」
貴音「しかし、おかしいではありませんか」
貴音「なぜ私たちが選ばれたのでしょう?もし神の企てであるならば、私たちを戦わせる理由は?」
響「うがー!そんなのわかるわけないさー!」
貴音「私たちは十二分に恵まれております。さらなる祈りのために他者を生贄とするなど神の所業とは思えません」
貴音「もし、もしそのような存在がいるのであれば、それをきっと悪魔と呼ぶのでしょう」
響「あーもうどっちでもいいさー、結局貴音は戦わないんだよね?」
貴音「ええ。ですが襲われれば話は別ですよ、響」
そう言うやいなや、貴音は身を翻し横に跳んだ。
次の瞬間、背後の鏡からサイ型モンスター・メタルゲラスが貴音の立っていた場所を猛スピードで通り去った。
響「さすがにそう簡単にはいかないか」
貴音「あなたとは戦いたくなかったのですが…致し方ありませんね」
響・貴音「「変身!!」」
ーーーーー
ーーー
ー
ーーー
ーーーーー
春香(何だろう、この嫌な感じ……)
咄嗟に振り向くも、夕暮れの住宅街に人影はない。
春香(いや、やっぱり尾けられてる!)
歩を速めるも、その感覚はなくならない。
春香は貴音に電話をかけながらどうやったら撒けるか考えた。
??「逃げても無駄なのに…」
??「出ておいで、ブランウイング」
特有の耳鳴りを感じた春香は走っていた。
春香(こっちの世界でモンスターを出すなんて何を考えてるの!?)
春香(とにかく人のいないところまで行かなくちゃ)
公園まで逃げた春香は息を切らしながら周囲に鏡がないことを確認した。
春香(ここなら手出しできないはず…!)
ヒュンッ
安堵している春香の横を巨大な白鳥が通り抜けた。
春香「なっ!?なんで?」
追っ手の執念深さに辟易しつつ公園を後にする。
春香(近くの河原なら…!)
ーーーーー
ーーー
ー
ーーー
ーーーーー
貴音「ふっ」スッ
響「うがー!なんで当たらないんだー!?」ビュン
響は右腕に装備したドリルを振り回すも、貴音は紙一重で回避する。
響「こうなったら!」
『ファイナルベント』
貴音「本気ですか、響?」
響「自分はいつでも本気さー!」
メタルゲラスに乗った響は、先程の奇襲とは比にならない速度で貴音には突進する。
貴音「仕方ありませんね」
『スイングベント』
貴音はメタルゲラスの足を引っ掛けるように召喚したムチを打つ。
貴音「うっ!」ドガッ
歩調が乱れたメタルゲラスの速度が落ちたことで、タックルを喰らう形にはなったが直撃は避けることができた。
貴音(当て身だけでこの威力…。直撃していたらとは考えたくありませんね)
貴音(ですがこれで響はファイナルベントが使えないはずです…!)
貴音「まだ戦うつもりですか?響」
響「ううー!何で当たんないんだー!」
貴音「これ以上は手加減できません。響、もう止めましょう」
響「自分はまだやれるさー!」
『コンファインベント』
響のセットしたカードが効力を発揮した瞬間、貴音の持つムチが消失した。
貴音「なっ!?」
貴音(まさかこのようなカードがあろうとは…!)
貴音「確かにムチはなくなりました。ですが私にはまだファイナルベントがありますよ」
響「うあー!」
響は貴音目掛けて殴りかかった。その手を難なく取り、捻り上げる貴音。
貴音「響のことですから肉弾戦には自信があるでしょう。しかし私も護身術程度は身につけております」
貴音「これ以上戦ってもあなたに勝ち目はありません。もう止めなさい、響!」
響「……貴音は強すぎるぞ」
殺気がなくなったのを察知した貴音は響を解放した。
貴音「でっきにはそれぞれ相性があるのでしょう。たまたま私のでっきが響に相性が良かっただけのことです」
響「今日のところは降参するさー」
貴音「それが良いでしょう。さあ帰りましょうか、響」
響「うん!」グサリ
響「えっ……?」ドサッ
今回はここまでです。お付き合い頂きありがとうございます。
乙です
書き溜めが進んだので投下します。
あずさ「油断しちゃダメよ~、響ちゃん」
貴音「なっ!響!しっかりするのです、響!」
背後から心臓を一突きされた響は既に虫の息だった。
響「たかね、じぶん死んじゃうのか…?」
貴音「今は喋ってはいけません!」
響「貴音…ごめんなさい…。でも、貴音と戦えて…自分…満足したさ…」
貴音「ここから出ましょう、響!外に出れば助かります!」
あずさ「外に行けるかしら~?」
貴音「あずさ…退いて下さい」
あずさ「どくわけにはいかないわ~」
貴音「退きなさい!あずさ!」
あずさ「それなら私を倒すしかないわね~、うふふ」
貴音「それでもあなたは人ですか!あずさ!!」
あずさ「ええ、人のつもりよ~?」
あずさ「自分の為に他人を蹴落とすなんて、すごく人間らしいと思わないかしら~?」
貴音「…それは人ではありません。ただの外道です。いい加減にしなさい、あずさ!あなたは心優しい方だったはずです!」
響「貴音…もういいさー……。たかねに…看取ってもらえるなら、じぶ…ん……」
貴音「響!響!!目を覚ましなさい!!響っ!!!」
あずさ「間に合わなかったみたいね~、残念だわ~」
貴音「どの口が…!!」
激昂していた貴音だったが、ミラーワールドにいては消滅してしまうことを思い出し、響の亡骸を抱き上げた。
貴音「どきなさい」
あずさ「さっきも言ったじゃない~、私を倒してからよ~?」
貴音「私に戦う意思はありません。それを知ってなお嬲るというのであれば好きにすれば良いでしょう」
あずさ「あら~?仕方ないわね~。一方的なのって好きじゃないし、今日のところは退いてあげるわ~」
貴音「………」
貴音は無言でミラーワールドを後にした。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香(もう少しで…!)
河原を目前にしたところで春香は足を止めた。
子供「ううっ…」ブルブル
ブランウイング「」バサッ
春香「っ!」
さっきの白鳥が子供を襲おうとしている。
それに気づいた春香は子供目掛けて駆けていた。
ブランウイング「」ヒュン
春香「危ないっ!!」
子供「えっ?」
間一髪のところで子供を突き飛ばした春香は、ブランウイングの体当たりを奇跡的に避けたものの勢い余って地面を転がった。
春香「いたた……大丈夫?」
子供「……」コクコク
春香「じゃあ走れる?」
子供「…う、うん」
春香「お姉ちゃんが合図したら逃げてね」
子供「…わかった」
ブランウイング「」バサバサッ
体勢を立て直したブランウイングは再び突進する構えを見せる。
春香(この子だけでも逃さなきゃ…!)
生身で相対する恐怖に震える春香だが、子供を助けることだけを考えて自らを奮い立たせる。
??「もういいよ、ブランウイング」
突進に備えて気を張る春香の前に、契約の主が姿を見せた。
雪歩「ここまで追い詰められたら戦うしかない、そうでしょ?春香ちゃん」
春香「雪…歩……」
雪歩「そうだよ、ずっと尾けてたのは私。意外だった?」
春香「…どうして……。雪歩は子供を人質になんてしない!」
雪歩「そうしないと逃げられちゃうからね」
春香「ねえ、本当に雪歩なの…?何か変だよ?」
名前の通り、純白のイメージだった雪歩の様子はどこかおかしく、目の焦点が合っていない。
雪歩「変…?私が…?」ブツブツ
春香「ねえ雪歩、どうしちゃったの…?」
雪歩「私は変じゃないっ!!好きな人を手に入れようとするのが変なわけないっ!!!私は今度こそプロデューサーをっ!!」
突然叫ぶ雪歩に圧倒される春香。
雪歩「だから邪魔な人にはいなくなってもらわなきゃいけないの」
雪歩「春香ちゃんもわかるよね?プロデューサーさんが好きなんだから…」
春香「わ、私はそんな……」
雪歩「嘘つかないでよっ!!」
雪歩「ねえ、どうして嘘つくの?わかってるんだよ私…」
雪歩「春香ちゃんがプロデューサーと話してるときの目、声かけられたときの表情、隠してるつもりだったの?」
春香「私はプロデューサーいいなーって思ったくらいで…。そ、そんなにプロデューサーのこと好きなら邪魔しないから……」
雪歩「ふーん、そっかぁ。春香ちゃんの想いってその程度なんだ……」
雪歩「そんな人はプロデューサーの周りにいらないよね…」
春香「うぇっ!?何でそうなるの!?」
雪歩「うるさいうるさいうるさい!!!」
春香「(今なら大丈夫だから逃げて!)」
子供「(わかった!)」ダッ
雪歩「あーあ、逃げられちゃった。でも春香ちゃんがいるからいっか」
春香(ヤバいヤバいヤバい!どうしたら…)
焦る春香をよそに、突進の構えを見せるブランウイング。
春香は一か八か背を向けて駆け出した。
春香(確かこの辺に………あった!)
雪歩「逃げても無駄だよ、春香ちゃん」
春香「変身っ!」
雪歩「…カーブミラーかぁ。私たちも行こっか、ブランウイング」
雪歩「変身」
ーーーーー
ーーー
ー
春香(少なくともここなら他の人は安全なはず…!)
ブワッ
春香「きゃーっ」
ミラーワールドに入り安堵していた春香目掛けて飛翔するブランウイング。
何とか回避した春香だが、対抗してカードを引く様子はない。
春香「ねぇ、雪歩。こんな戦いおかしいよ」
雪歩「何がおかしいの?命をかけて戦ってるだけだよ?」
雪歩「みんな何かをかけて戦ってる、それがたまたま命だっただけだよ」
春香「……確かにそうかもしれないけど…でも命と吊り合うものなんて「私がどんな思いで戦ってるかわかるの?」
雪歩「プロデューサーはダメダメな私に自信を与えてくれるの」
雪歩「プロデューサーがいなくなったら私は何も出来ないの」
雪歩「春香ちゃんにはわからないでしょ?」
雪歩「私からプロデューサーを取らないでよ……!」
再び春香目掛けて突進するブランウイングだが、直線的な軌道は戦闘に不慣れな春香にも見切ることができた。
春香「同じ手は何度も効かないよ!」
雪歩「…そうだよね……。それならっ!」
『ソードベント』
召喚された薙刀を手に春香へ近づく雪歩。
春香「ねえ雪歩、もう止めようよ。こんなのおかしいよ。亜美だって死んじゃって…」
雪歩「私のプロデューサーにちょっかい出してたからバチが当たったんだね」
雪歩「もっと潰しあってくれれば良かったのに」
春香「雪歩っ!」
雪歩「大声出さないでよ春香ちゃん。私の言ってることってそんなに変かな?」
雪歩「殺してでも願いを叶えるってそんなにいけないこと?」
春香「殺すなんておかしいよ…絶対間違ってる…」
春香「なんでそんな簡単に殺すなんて言えるの…?」
雪歩「それがプロデューサーの願いだからですよぉ」
雪歩「だから私は春香ちゃんを殺さないといけないの」
春香「…プロデューサーさんの…?どういうこと……?」
雪歩「プロデューサーに頼まれたんですぅ。みんなと戦って勝ってくれって」
春香「ウソ……プロデューサーさんがそんなこと……」
雪歩「そういうことで、死んでくれる?春香ちゃん」
薙刀を振りかざす雪歩。
雪歩の告げた真実に打ちのめされたままの春香は袈裟斬りにされる。
春香「痛い、痛いよ…助けてPさん……」
雪歩「私のPさんの名前を呼ばないでくれるかな?」
斬り伏せられた春香にトドメを刺そうと、雪歩は再度薙刀を構える。
グオォー
雪歩が薙刀を振り下ろそうとしたその時、黒龍が雪歩に体当たりをかました。
春香「…ドラグレッダー……?助けに来てくれたんだ……」
春香は混濁する意識の中、援護の姿を見て気を失ってしまった。
雪歩「…誰かいるんですかぁ……?」
??「……」
現れたのは春香と同じ姿をしたライダー。
だがそのボディカラーは闇夜のような漆黒に包まれている。
雪歩「…春香ちゃん…?」
『ファイナルベント』
事態が飲み込めない雪歩をよそに、謎のライダーはカードを切る。
黒龍のブレスに乗ってキックを放つライダー。
雪歩「きゃああぁぁっ!!」
デッキケースへの直撃は避けたものの、雪歩はもろにキックを受けてしまった。
雪歩「……これ以上は…」
『アドベント』
ブランウイングの起こす突風が謎の敵を足止めする間に雪歩はミラーワールドから脱出した。
??「……今日はやめといてあげるよ、雪歩」
ーーーーー
ーーー
ー
投下終了します。31日まで仕事になってしまったので、次回は来年になると思います……。
乙です
真の立ち位置はそうなるか
これはダブルドラゴンライダーキックを期待せざるをえない
捕手
少し投下します。
--------------------------------------------
ー
ーーー
ーーーーー
貴音「…響、申し訳ありません。私が…もっと早く……」
他のアイドルたちが帰宅したあとの事務所は閑散としており、
貴音の嗚咽が聞こえるばかりである。
P「響は残念だったな」
音もなく現れたプロデューサーは落ち込む貴音を見かねて声をかけた。
貴音「ぷろでゅーさー、どういうことか説明していただけますか」
P「どういうことも何もなぁ…。貴音が見て、聞いたことが全てだ」
貴音「あなたは何のために…このような無為な戦いを…」
P「そればっかりはなぁ。まあ好きに考えてくれ」
貴音「戯れも程々にしてください。双海亜美に続き響までもが亡くなりました」
貴音「二人ともあなたを信じておりました。なのに何故裏切るようなことを」
P「裏切る?そんなつもりはなかったさ。そう思ったのなら俺のことを何も知らなかったんだろう」
貴音「あなたは何故そこまで無慈悲なのですか……。あなたが育ててきたアイドルたちが亡くなっているのですよ?」
貴音「…何も思わないのですか?」
P「さすがにもう、な。初めは辛かったさ。それも初めだけだ」
P「…さて貴音、響の仇を取るつもりはないか?」
貴音「そのような口車に乗るとでも…?」
P「思ってはいないさ、聞いただけだ」
P「ただしこれから先は戦いを止めるだなんて甘っちょろい考えじゃ死ぬぞ?」
貴音「やすやすと殺されるつもりはありませんし、他者を殺めるつもりもありません」
P「そんな考えであずさに勝てると思っているのか?」
貴音「勝つつもりも負けるつもりもありません」
差し出されたのは黄金の片翼が描かれたカード。
P「どうせこの戦いは止まらない」
P「止めようとして犬死にするもよし、勝って生き抜くもよし」
P「好きにすればいい」ガチャ
逡巡した貴音だが、カードをデッキケースに収めた。
貴音(使いたくはないですが……あずさと対峙したときのことを考慮すると……)
今のところ直接的な戦闘は避けられているものの、次はどうなるかわからない。
貴音は消極的な気持ちを抱きながらも、保険として受け取ることに損はないと判断した。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
やよい「おはようございますー!」ガチャ
真「おはよう、やよい」
真美「おっはよ→やよいっち!」
やよい「あれ?今日は少ないですね…」
真「雪歩は具合が悪いんだって。最近ちょっと様子が変だったしね…」
真美「みんな現場にちょっこ→だってさ。はるるんは…連絡ないんだよね……」
やよい「春香さんが…珍しいですね」
やよい「あれ…?伊織ちゃんは?今日は事務所に来てからお仕事行くって言ってたんだけど…」
真美「いおりんは見てないなぁ…。どうしちゃったんだろ」
やよい「伊織ちゃんもちょっこーしちゃったのかな?」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
伊織「あんた!いい加減にしなさいよ!」
P「何のことだ?」
伊織「とぼけないで!!亜美の死と響の失踪、あんたのせいなんでしょ!」
P「何を言いだすかと思えば…。何の証拠があって言ってるんだ?」
伊織「このカードで何かしたんじゃない!」
P「それは違うな。俺は渡しただけだ、どう使うかまでは指示していない」
P「それよりいいのか?戦わなくて」
伊織「ふざけないで!こんな危険なことだれg「これでもか?」
P「この不正が明るみに出たらどうなるか…賢い伊織ならわかるだろう?」
伊織「っ!」
伊織「……脅迫しようっていうの?この私を…」
P「脅迫なんてつもりじゃないさ。伊織の好きにすればいい。俺も俺の好きなようにする」
伊織「…いいわよ。わかったわ!あんたの言いなりになってやろうじゃないの!!」
P「そうかそうか。じゃあまず手始めにやよいと戦ってくれ」
伊織「!?」
伊織「…あんた、やよいまで巻き混んだの…?」
P「巻き込んだなんて人聞きの悪い。相談されたから解決方法をアドバイスしただけさ」
P「行方不明のご両親に残された借金、ライダーバトルに勝てばどちらも解決できる」
伊織「そのために仲間を殺せって言うの!?」
P「そんなこと言ってないさ。ただ、勝てばいい、それだけだ」
伊織「…あんた…どこまで腐ってるのよ……」
P「やよいの心配もいいが、伊織。自分の立場も考えた方がいいぞ?」
伊織「ふざけんじゃないわよ!!!やよいと戦う!?できるわけないじゃない!!」
P「まあそれもいいだろう。俺も好きにさせてもらうってさっき言ったしな」
伊織「…っ!待ちなさい。わかった、やよいと戦うから…」
P「期待しないで待ってるよ」
P「美希、待ってろって言ったろ?」
美希「あんまり遅いから気になったの」
美希「ねぇねぇハニー、ミキに言ってくれれば二人とも…」
P「いいんだ美希。お前は最後に戦ってくれればそれでいい」
美希「ハニーがそう言うなら従うけど…。何だかめんどくさいの」
P「まぁ待て。お前も楽な方がいいだろ?」
美希「うーん、それもそうなの!」
P「だから今は待っててくれ」
美希「りょーかいなの!」
ーーーーー
ーーー
ー
戦闘パートなくて申し訳ないのですが、本日はここまでで勘弁して下さいorz
2月が終われば……
待機
乙!!
少し投下します
ー
ーーー
ーーーーー
春香「……うーん、ここは…」
目が覚めた春香は周囲を見渡す。どうやら廃病院の一室のようだ。
徐々に記憶が蘇ってくる。
春香「…雪歩と戦ってて……雪歩に斬られて…」ガチャガチャ
春香「えっ?」
起き上がろうとするも、手足が固定されていて動かせない。
身の危険を感じ汗が滲むも、身動きができない以上どうしようもなかった。
??「…目が覚めたみたいだね。おはよう」
春香「!?」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
貴音は珍しく気だるかった。
響という親友の死、疑念を持っていたとはいえプロデューサーとの完全な決別。
幸い今日はレッスンだけ、休んでも事務所にとんでもない迷惑がかかることはないだろう。
貴音(このかぁど…どうしたものでしょう……)
自然と貴音の意識は手渡されたカードに向いていた。
貴音(どうやら武器の類ではないようですね)
貴音(片翼ということは対になるカードがあると考えて間違いないでしょう)
貴音「…とにかく春香に会わなくては…」
響のこととプロデューサーのことを伝えるために貴音は家を後にした。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
伊織「おはよう……」
やよい「おはよーっ!伊織ちゃん!」
真「おはよう伊織」
真美「いおりんが遅刻なんて珍しいですなー」
伊織「……ごめん、やよい。ちょっと付き合ってもらっていいかしら?」
やよい「どうしたの?伊織ちゃん、元気なさそうだけど…」
伊織「ちょっとね……」
真美「(元気のないいおりんなんて遅刻以上に珍しいね…)」
真「(確かに。家の方で何かあったのかな…)」
伊織「来て早々で悪いけど、やよいをちょっと借りるわ」
やよい「伊織ちゃんどうしたの?何か今日の伊織ちゃん怖いよ…」
伊織「やよい、デッキケースを出して」
やよい「えっ!?何で伊織ちゃんが…」
伊織「いいから!」
やよい「うっ…」ビクッ
いつもと違う伊織の剣幕に圧されたやよいはデッキケースを伊織に渡す。
伊織「いい?やよい。これからは事務所に来ちゃダメよ」
やよい「えっ!?何で…」
伊織「…亜美が死んじゃったのは知ってるでしょ?」
やよい「う、うん…」
伊織「このデッキケースを持ってる人が狙われているの。亜美もこれを持っていたらしいわ」
やよい「でもそれじゃ伊織ちゃんが…」
伊織「私はSPをつけてもらえるし大丈夫よ」
伊織「…やよいが何を願ってこのデッキを持ったのかは知らない」
伊織「ごめんなさい、でもやよいには無事でいて欲しいの」
やよい「…うん、わかった。伊織ちゃんに任せるね。ありがとう伊織ちゃん!」
伊織「…ううん、いいの。気にしないでやよい」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香の目の前に立っていたのは春香自身だった。
春香(ありえない!ありえない!ありえない!!!何で!?)
現実とは思えない事態を理解できない春香は息を呑んだまま自分と瓜二つの存在を眺める。
春香?「…驚かせちゃったかな?」
春香?「まぁどうでもいいよね。あなたはここで消えるんだから」
春香「どういうこと!?」
春香?「……天海春香は二人もいらない。それだけだよ」
春香?「安心して。あなたが消えても私がちゃんとあなたとして生きてくから」
春香「な、何のために…」
春香?「本当にわかんないの?ちょっとガッカリだなぁ…」
春香?「ねぇ、この力を使えばプロデューサーさんを自分のものにできるんだよ?」
春香「…そんなやり方、間違ってる」
春香?「やれやれ…美希とくっついてるの知らないみたいだね」
春香「…えっ?」
春香?「だからー、プロデューサーさんと美希はデキてるの!」
春香「…嘘……プロデューサーさんは私たちにアイドルとして自覚を持てって……」
春香?「言ってる本人が付き合ってるんだから説得力ないよね」
春香?「で、黙ってみてるだけなの?”わたし”」
春香「…わ、私は…二人が好き合ってるなら…それで……」
春香?「なーに綺麗事言っちゃってるの?私はあなたなんだから何でもお見通しだよ」
春香?「遠回しに付き合えないって言ったプロデューサーさんが憎い、プロデューサーさんと付き合ってる美希が憎い」
春香?「そうでしょ?認めちゃったら?」
春香「違うっ!そんなこと!」
春香?「ふーん、認めないんだ。じゃあやっぱり消えてもらうしかないね」
春香「ふざけないでよっ!」
春香?「ふざけてなんかないよ。あなたは私は、私はあなた」
春香?「同じ人が二人もいたら周りが混乱するでしょ?」
春香?「だから私があなたになってプロデューサーさんを手に入れるの」
貴音「連絡が取れないと聞きましたが、まさかこのような事態になっていようとは」
春香「貴音さん!」
春香?「あーあ、邪魔が入っちゃった……」
貴音「春香、今助けます」
春香?「させると思います?」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
伊織「…ほら、やよいのデッキケースよ」
P「ほう、考えたな。まぁ殺せとは言ってないが」
伊織「さあ!ネガごと渡しなさい!」
P「何を言ってるんだ?俺は渡すなんて一言も言ってないぞ」
伊織「あんた…!」
激昂した伊織の背後のガラスにカメレオン型モンスターが映る。
P「俺を脅そうったってそうはいかないな。美希!」
美希「はいなの!」サッ
伊織「美希…あんたこいつが何をしてるか知ってるの?」
美希「もっちろんなの!ハニーはミキのために頑張ってくれてるの!」
伊織「バッカじゃないの!?そんなの嘘に決まってるでしょ!!」
美希「デコちゃん、嫉妬は見苦しいの」
伊織「…いいわよ、言ってわからないなら」スッ
伊織「ぶん殴ってその目を覚ましてやるわ!変身っ!」
美希「ミキに勝とうだなんて100年早いって思うな」
変身した二人を見てほくそ笑むプロデューサーは戦いに興味がないのか、ミラーワールドに入ったのを見届けるとその場を立ち去った。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
膠着状態の貴音と春香たち。
所々割れている窓ガラスには互いの契約モンスターが牽制している様子が窺える。
貴音(そろそろ来てくれると良いのですが……)
春香?「どうするつもりですか?お互い動けずにこのままってワケにもいかないですよねぇ?」
貴音「…そうですね。ならばそこの春香を解放して私たちはみらーわーるどで戦いましょう」
春香?「そんな提案に乗るわけないじゃないですか。そこの私に逃げられると困るんですよ」
貴音「そうでしょうね。なら二対一で戦いますか?」
春香?「それこそゴメンですよ。私、確実に勝てない勝負はしない主義なんで」
貴音(先に動いた方が不利ですね…。何とか時間を稼がなくては……)
千早「春香っ!?」
停滞していた状況を破った千早に全員の視線が向かった隙に春香のもとへ駆けつける貴音。
春香?「…千早ちゃん……どうしてここが…」
千早「四条さんが心当たりを書き置きしてくれていたのよ。残念だったわね」
千早「それにしても一体これは……?」
貴音「私も詳しくはわかりませんが、そこに立っている春香は恐らく精神体のようなものでしょう」
貴音「私がこの部屋に入る前の会話内容から考えるとそれが妥当な線かと」
春香「えっ?貴音さん聞いてたの!?」
貴音「事態が掴めなかったので…。申し訳ありません、春香。他言はしません」
春香「うぅ…恥ずかしい……」
千早「それにしてもよくここがわかりましたね、四条さん」
貴音「何となく、と申しますか…。私の第六感が告げたのです」
貴音「さて、いかが致しますか?」
春香?「…ほんとーにムカつく人たちですねぇ。……今日のところは退きますよ」
そう言うやいなや窓ガラスに飛び込むもう一人の春香。
三人が驚いて止めようとするも、ガラスは割れなかった。
千早「…彼女は一体……」
貴音「…恐らくこちらの人間ではないのでしょう。そう考えると辻褄が合います」
春香「私が邪魔だって…」
貴音「私たちは生身でミラーワールドに入ることはできませんが、彼女はその逆なのでしょう」
貴音「人質を取った状況をみすみす逃したのはそのためだと考えられます」
千早「確かにそうですね」
貴音「春香、これからは身辺に気をつけなくてはなりません」
貴音「具体的には鏡や自身を映すものは身の回りに置かない方が良いでしょう」
春香「この仕事だとかなり難しいですね……」
貴音「楽屋には長居しない方がいいですね。自室の窓は常にカーテンを閉めるしかありません」
千早「とりあえずここを出ませんか?ここの空気はちょっと…」
貴音「そうですね。私は春香を送って行きます」
春香「千早ちゃん、ありがとう。助けに来てくれて」
千早「……ええ」
ーーーーー
ーーー
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またしてもバトルがなくて申し訳ないです…。来週も投下します。
乙です
待ってます
お待たせしました、投下します。
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ーーー
ーーーーー
『スイングベント』
伊織「覚悟しなさいっ!!」
ヨーヨー型の武器を装備した伊織は美希に猛攻をかけるが、美希は手にした錫杖で難なく捌いてゆく。
美希「あーあ、こんなんじゃアクビが出ちゃうの」
伊織「…バカにするんじゃないわよ!!」
錫杖で捌かれることを逆手に取りヨーヨーを錫杖に巻きつける。
すぐさま次のカードを引く伊織。
『アドベント』
伊織は契約モンスター・バイオグリーザを召喚するも、一向に姿を現さない。
美希「デコちゃん、自分のモンスターにも逃げられちゃったんじゃないの?」
伊織「調子に乗ってられるのも今のうちよ」
美希「強がりなんてドガッ!!
突然の攻撃をもろに喰らい弾き飛ばされる美希。
今まで何もなかった空間にバイオグリーザが浮かび上がる。
美希「…へー、デコちゃんにしては上出来かな」
美希「でもちょっと調子に乗りすぎなの」
『ソードベント』
解放された錫杖で剣を召喚する美希。
格下と思っていた伊織の思わぬ一撃に静かな怒りを震わせる。
伊織「バイオグリーザ!もう一回よ!」
伊織の指示で再び姿を眩ませるバイオグリーザ。
美希の横から舌による攻撃が炸裂するかと思われたその瞬間、美希の姿は黄金の羽根で消え、伊織の背後に立っていた。
伊織「なっ!?」
美希「あはっ、もう手加減なしなの」ザシュッ
伊織「ぐっ…!」
背後からの斬撃で立つのがやっとの伊織。
美希の剣戟をヨーヨーでかろうじて捌くものの、限界が近づいていた。
美希「それじゃあデコちゃん、さよならなの」
「いやあああっ!!!来ないでっ!!!!」
突然響き渡る悲鳴に動きの止まる二人。
襲われていたのはやよいだった。
伊織「やよ…い…?なんで!?」
やよいのかつての契約モンスター・ギガゼールがやよいに手を下そうとしたその時、
バイオグリーザの舌がやよいを助け出した。
伊織「やよい!大丈夫!?やよい!!」
やよい「伊織…ちゃん?」
伊織「とにかくここから出るわよ!」
美希「ミキのことを忘れないで欲しいの」
伊織「勝負はお預けよ。そんなに戦いたいならいつでも手合わせするわ」
伊織「でも今は無理。やよいを外に出さないと」
美希「お断りなの」シュッ
やよい「えっ?」グサッ
美希の投擲した片方の剣がやよいの体を貫く。
やよい「痛い!!痛いよおおぉ!!!伊織ちゃああぁん!!助けて!!助けて!!!」
伊織「やよい!!しっかりして!!美希!あんた何で!!!」
美希「やよいは契約を破ったの。どうせモンスターに食べられちゃうならこの方が楽に死ねるって思うな」
伊織「ざけんじゃないわよ!!!やよい!すぐ外に出るからね!」
美希「やよいはデッキケースを捨てたの。契約を破ったライダーはただのエサになっちゃうの」
美希「わかるかな?デコちゃんのせいなんだよ」
伊織「…は?そんな…嘘よ!!違う!私はやよいを助けようと思ってグサッ
美希の言葉で混乱した伊織はいとも容易く貫かれた。
伊織「ごほっ…」
やよい「…伊織…ちゃん……?」
伊織「…だい…じょぶよ、やよい……早く…外に」
美希「もう二人とも助からないって思うな」
伊織「…これ…しきの……ことで…」スッ
瀕死の伊織は何とかデッキからカードを引いたものの、
召喚機にセットすることはできなかった。
やよい「い…おり…ちゃん…?」
やよい「お願い…です、美希さん…。伊織…ちゃんを…外に……」
伊織を気遣ったやよいの言葉は最後まで発せられなかった。
横わった二人をついばむ不死鳥を見た美希はミラーワールドを後にする。
―――――
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
貴音「春香、響が亡くなりました……」
春香「そんなっ…。貴音さんどうしてそれを…?」
貴音「響に勝負を挑まれたのですが、互いに大した怪我もなく帰ろうとしたところを三浦あずさに…」
貴音「私が傍におりながら…申し開きのしようもありません……」
春香「…貴音さんのせいじゃないです!気にするな、なんて言えないけど…それでも貴音さんは悪くありません」
貴音「…申し訳ありません、春香。慰めの言葉が欲しかったわけではないのですが…」
貴音「赦されたかったのでしょうね、私は…」
春香「私も報告があります。雪歩のことなんですが…帰りに尾行されて襲われたんです……」
貴音「なんと!まさか萩原雪歩がそのようなことを…」
春香「小さな子どもを人質に取ったり、プロデューサーさんに唆されたって言ったり…」
春香「とにかく様子が変でした」
貴音「…あの方のことですが……春香、あの方がこの件の糸を裏で引いています」
春香「そんなっ!?まさか…」
貴音「響の亡骸を事務所に運んだ際に話しました。この戦いの子細も知っている様子です」
貴音「信じたくはないと思いますが……これからは警戒した方が良いでしょう」
春香「…じゃあ……雪歩の言ってたことも本当なんですね…」
貴音「…その可能性は大いにあると思います」
春香「……私、プロデューサーさんに聞いてきます」
貴音「あの目は如月千早と同じでした。相当の覚悟を持っています。説得ではどうしようもないでしょう」
春香「じゃあ戦うしかないんですか!?」
貴音「あの方がこの件の黒幕ならばやむを得ないかもしれません」
春香「そんな……嫌ですよ…そんなの……」
貴音「向こうも無防備というわけではなさそうです。響の死で私を焚きつけ、かぁどまで渡す余裕があるのですから」
春香「何のカードですか…?」
貴音「はて…さばいぶ、と読めます…。使ってはいませんし、使いたくありませんが……」
貴音「絵柄からして少なくとももう一枚、対になるかぁどがあるはずです」
貴音「性質は恐らく強化の類と思われます」
春香「そんなカードが…でも何のために……?」
貴音「一向に戦う意志を見せない私をあずさと戦わせるためでしょう」
貴音「あずさも普段の様子と違い、殺人に何の躊躇いもないようでした…」
貴音「如月千早の言っていたとおり、彼女は脅威です…」
春香「……私もこの前事務所で一緒になったんですが…どこか様子が変でした…」
春香「…どうしてこんなことになっちゃったんでしょうね、貴音さん……」
貴音「今はそれを考えても仕方がありません。私たちにできることをやりましょう」
春香「そう…ですね」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
雪歩「うぅっ…痛い…痛い痛い痛い!!」
雪歩「春香ちゃんも仕留められないなんて…やっぱり私ダメダメだなぁ……」
大きなダメージを負った雪歩は苦しげに歩を進め、路地裏を後にする。
次に見た光景は雪歩にとって信じられないものだった。
あずさ「ねぇねぇPさん、今度はオフを一緒に取って温泉でも行きませんか~?」
P「それもいいな。でもスキャンダルが怖いし…」
あずさ「それじゃあPさんの家でデートにします~?私の家ばかりだと怪しまれますし~」
P「そうだな。もっと売れて、押しも押されもしないアイドルになったら温泉でもどこでも連れてくよ」
あずさ「うふふ、約束ですよ?Pさん♪」
P「わかったよ、あずさ」
雪歩「な…んで…?なんでプロデューサーさんが……あずささんと……」
雪歩「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だプロデューサーさんが私を裏切るはずない」
雪歩「あはは、そっか夢なんだ。夢だからPさんとあずささんが……」
雪歩「私の夢なのに…何であずささんと一緒なのかなぁ……」
雪歩「私のプロデューサーさんを誑かすあずささんには…お仕置きですぅ……」
美希「雪歩じゃ勝ち目はないって思うな」
雪歩「邪魔するの?美希ちゃん…」
美希「それは雪歩次第なの」
雪歩「私の邪魔をしないなら見逃してあげるよ」
美希「今はそれでもいいの」
雪歩「じゃあ私はあの女とお話してくるね」
美希「潰し合ってくれるならそれはそれでアリって思うな」ボソッ
―――――
―――
ー
ー
―――
―――――
あずさ「あら~?また獲物がかかったみたい。少し待っててくれますか?Pさん」
P「わかった、離れた方がいいか?」
あずさ「そうね~、Pさんを巻き込みたくないしその方がいいかしら~」
雪歩「……あずささん、私のPさんと何してるんですかぁ?」
あずさ「あらあら~?雪歩ちゃんのものだったんですか~?Pさん」
P「まさか。俺は雪歩のものになった覚えはないよ」
雪歩「かわいそうなPさん…。あの女に脅されてるんですね……」
P「脅されてる?それは違うな、雪歩」
P「俺は俺の意思であずさと一緒にいるんだ。それをお前にどうこう言われる筋合いはない」
雪歩「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!……Pさんは騙されてるんですよぉ」
雪歩「だから…私がそこの女を殺して助けてあげますねぇ」
P「やれやれ、話が通じなくなってるな。あずさ、殺しても構わん。全力でやれ」
あずさ「言われなくてもわかってますよ~、安心して下さい」
雪歩「ずいぶんと自信があるんですね…」クスッ
あずさ「そういう雪歩ちゃんも。余裕そうじゃない?」
雪歩「Pさんの隣にいるのは私って決まってますから」
あずさ「戦えばどちらが正しかったかわかるわよ~」スッ
ベノスネーク「シャアアアァッッ!!」
あずさの合図でベノスネークが雪歩を強襲する。しかし自身も使った搦め手にかかる雪歩ではない。
すぐさま変身し、ミラーワールドで待ち伏せする戦法に出た。
同一の鏡から入れば、出る場所も変わらない。であれば先にミラーワールドに入った者が優位である。
結果として後手に回ってしまったあずさだが、その表情は変わらず余裕の笑みを浮かべている。
ミラーワールドで待つ雪歩の手にはファイナルベントのカードが握られている。
雪歩のファイナルベントはブランウイングによる突風を使った斬撃。姿を現した瞬間に突風に襲われればひとたまりもない。
『『ファイナルベント』』
ミラーワールドに二つの召喚機の声がこだました。
あずさは後手に回った不利を、初手から切り札を使うことでひっくり返そうという魂胆だった。
奇しくも互いに同じカードを使った雪歩とあずさだが、雪歩は予想外の事態に狼狽える。
あずさ「はあぁぁぁっっ!!!」
雪歩「きゃあああぁぁっ」
二人の切り札は雪歩にとって相性が最悪と言えた。
あずさの背後からブランウイングが突風を見舞うが、その風に乗ったキックの威力を上げることになったのである。
そもそも雪歩のファイナルベントはその特性から一対一に有効ではない。斬撃を浴びせられるのはよくて二回、最悪は一回だけである。
さらに予想外の一手に狼狽えてしまったことが仇となり、キックの軌道を見切れなかったことも災いした。
『ソードベント』
幸か不幸か、またしてもデッキケースへの直撃は避けた雪歩だが、負ったダメージは黒いライダーの時よりも酷いものだった。
吹き飛ばされて立ち上がることができない雪歩を見下ろし、だが慢心することなくサーベルを召喚するあずさ。
『ガードベント』
倒れたまま盾を召喚する雪歩。ブランウイングの羽があずさの視界を遮るものの、動けない雪歩にはその隙を活かすことはできなかった。
あずさ「安い挑発に乗るのも癪だけど~」ザクッ
雪歩「がああぁぁっ」
あずさ「誰が誰を殺すですって~?」グサッ
雪歩「あああぁぁっっ」
盾で防ぐ余力もない雪歩を手足から切りつけていくあずさ。その瞳は嗜虐に満ちていた。
あずさ「丁度いいわね~。見せしめにしましょうか~」
仮面の内で残忍な笑みを浮かべたあずさは雪歩の体を徹底的に切り刻んでいく。
変身が解除された雪歩の体は真っ赤に染まっていた。かろうじてまだ息はある雪歩を担ぎ上げ、ミラーワールドを後にするあずさ。
P「あずさ!何でそいつを持ってきたんだ!」
鏡から出てきたあずさを見て動揺するプロデューサー。
どんなポーズを取っても様になるあずさだが、血まみれの人間を担いだ状態を見られるのはさすがにまずい。
あずさ「写真を取ったらミラーワールドに捨ててきますから~」
あずさ「それに見られてもベノスネークに食べさせちゃえば大丈夫ですよ~」
誰かわかるようご丁寧に仰向けにしてから写真を数枚撮るあずさ。
殺す価値のない敵は相手にせず、刃向かう者は容赦なく嬲り殺す。その姿はまさしく邪悪な王だった。
ーーーーー
ーーー
ー
本日はここまでです。来週も投下します。
遅筆で申し訳ないです…m( . _ . )m
乙!!
毎週楽しみです
>>138
ありがとうございます。投下しますね。
ー
ーーー
ーーーーー
モットターカメテハテナクコーコロノオークマーデ
真美「まこちん、ケータイ鳴ってるよー」
真「ありがとう真美」
事務所にいた真に届いたメール。それは先ほどあずさが撮った雪歩の死体の写真だった。
真「なっ!?雪歩っ」
真美「どーしたの!?まこちん」
真「お、大けがして雪歩がしばらく来れないってさ」
真美「そっか……」
真美はおそらくライダーバトル関係だろうと、根拠はなくとも察しはついていた。
しかしそれを今ここで聞くことは、真に正体を晒すことになる。
真「……いや、嘘はやめよう。雪歩があずささんに殺された」
真美「えっ?」
真「真美もライダーでしょ?ボクもライダーなんだ」
真美「何で…」
真「今さら隠してもしょうがないしね。真美と戦う気はないから安心して」
真美「そんなこと言われても信じられるわけないじゃん!」
真「さっきのメールは雪歩の写真だった。あずささんに斬り殺された雪歩の……」
真「ボクはあずささんと戦う。だから真美とは戦わない」
真美「まこちんのでっち上げかもしれないじゃん」
真「それなら写真を見るかい!?」
そう言って差し出された画面に写っていたのは鮮血に染まった雪歩だった。
その表情は恐怖で目を見開いており、凄惨な最期だったことを物語っている。
真美「うっ…」
真「……ここまでされて黙ってるなんてできない。ボクはあずささんを殺して雪歩の仇を取る」
真美「あずさお姉ちゃんはヤバいよ、まこちん」
あずさと対峙した真美は身を以てその恐ろしさを味わっている。
二人がかり、分身した千早を入れれば十人がかりで挑んだにも関わらず撤退を余儀なくされた。
真を引き留めるのも当然のことだった。
真「いくらあずささんが強いと言っても、身体能力ならボクの方が上だ。遅れを取ることはないよ」
真美「違うんだよ!あずさお姉ちゃんは化け物なんだって!」
真「心配してくれてありがとう、真美。それでもボクは戦わなくちゃいけない」
真「親友があんな目にあったのに黙って見てるなんてできない」
真美「…わかったよ」
真美「……まこちんがあずささんを殺したら、その後はどうするの?」
真「それは考えてなかったなぁ。……うーん」
真美「まこちん、お願い。仇討ちが済んだらもう誰とも戦わないで…」
真美「もうみんながいなくなるのイヤだよ……」グスッ
真「元からみんなと積極的に戦う気はないよ」
真「今までモンスターとしか戦ってなかったしね」
真美「ありがとう。ありがとう、まこちん」
真美「……まこちんはどうやって戦うの?」
真「格闘中心だよ。本当はフリフリの魔法少女みたいな服で華麗に戦いたかったんだけど…」
真美「なら真美も手伝うよ。一度戦ってるし、真美は銃で戦うから邪魔にならないでしょ?」
真「ありがとう真美!心強いよ!」
真のブレない姿勢に半ば呆れながらも、真美は共同戦線の展開を提案した。
それは平穏を望んでの考えからだった。自分から進んで戦う人がいなくなれば以前の日々が戻ってくる。
そのはずだった。
かくして対あずさ同盟が結ばれた。
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ーーーーー
貴音「とにかく今日は帰った方が良いでしょう。自室の守りも固めなければならないでしょうし」
春香「そうですね。助けてくれてありがとうございました、貴音さん」
貴音「私は友を捨て置くほど非情な人間ではありません。春香が危機とあれば必ず助けに参ります」
春香「……かっこいい!まるで王子様みたいですね!」
危機が去った春香はすぐにいつもの調子を取り戻していた。
貴音は春香の危機感のなさに一抹の不安を抱きながらも、その明るさに救われていると感じた。
響を亡くし、誰も信頼できない状況下で同盟相手がいることの何と心強いことか。
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ーーーーー
真と真美と入れ違いで事務所に来た千早はプロデューサーの机を物色していた。
先刻遭遇したもう一人の春香。ミラーワールドの全貌はまだ知らない、いや知っていることの方が少ないかもしれない。
デッキケースを渡してきたプロデューサーなら何か知っているかもしれない。そう考えての捜索だった。
しかし、めぼしいものを発見することはできなかった。
事務所に人がいないことを確認して、千早は社長室に入った。
千早「これは!」
窓ガラスは内側から目張りされ、棚はガラスの引き戸ではなく鉄製の開き戸のものばかり。
自らの身を映すものが何一つない異様な光景。
千早「(まさか……社長も一枚噛んでるの……?)」
ライダーバトルの裏側は自分の予想以上に深いものになりそうな予感を持ちつつ、引き出しを漁る。
見つけたのは765プロに所属する全員の履歴書だった。
千早「秋月……律子……?それに音無小鳥…?うっ」
それは見知らぬ名前だった。しかしどこか懐かしい響きを感じる。
声に出して名前を呼んだ途端、頭痛に襲われ机に手をつく千早。
千早「今は…それより……」
目当てはもちろんプロデューサーのものだ。
あの異常な世界を知っていたのだ、プロデューサーがどんな人物なのか改めて知れば何かわかるかもしれない。
しかしその経歴は至って普通のものだった。
地元であろう高校を卒業し、清明院大学を卒業。学部を見たところどうやら理系のようだ。
プロデューサーのことは結局わからず仕舞いだったが、社長もミラーワールドに関して何か知っている。それを掴んだだけでも収穫だと考え、千早は物色の跡を残さぬように事務所を後にした。
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対あずさ同盟の二人はたるき亭で作戦会議をしていた。
真美「あずさお姉ちゃんはとにかくヤバいよ。2対1でも倒せなかったんだから」
真「この前はどんな風に戦ったんだい?」
真美「千早お姉ちゃんが剣で戦って、真美が離れたところから撃ってたんだ。でも一発も当たらなかったよ…」
真「2人が戦い慣れていないとしても異常な強さだね。千早はどんな戦闘スタイルなのかな」
真美「剣を使うくらいかなぁ……。あ!分身するよ!分身して戦ってるところに真美がファイナルベント使ったんだけどそれも避けられた……」
真「分身で襲いかかっても、そこに銃撃を受けても無傷だなんて……異常を通りこしてるよ……」
真「でもボクのデッキはパワータイプだから短期決戦で望めば勝機はあるかもしれない」
真美「デッキごとにそんなのがあるんだ」
真「千早がしたような分身はできないんだ。たぶん契約したモンスターの影響だろうね」
真「ボクの契約モンスターはトラ型だから、千早のより馬力はあると思うよ」
真美「でもどうやって戦えばいいんだろう…」
真「正攻法でぶつかるしかないね。ボクの武器は接近戦用だから」
真美「それじゃあこの前と同じになっちゃうよ」
真「真美のデッキには接近戦用の武器はないのかな」
真美「うーん、あるにはあるんだけど……。リーチが短いし盾がないからあんまり使いたくないんだよね」
真「それは奥の手にしよう。あずささんは知らないはずだし」
勝率は未知数だが、勝算がないわけではない。
この時点では確かにそうだった。
ーーーーー
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ー
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ーーーーー
明くる朝の春香の部屋はこれまでと様変わりしていた。
内側から目張りされた窓、ひび割れて役割を果たさない鏡。
もう一人の自分がミラーワールドの十人である可能性が高いことを考えると、自身を映すものが周辺にあるのは危険だった。
春香母「突然どうしたのかしら……」
春香父「難しい年頃だしな。仕事で何かあったのかもしれない。事務所に聞いてみようか」
春香母「そうね…。でも変ね、前にもこんなことがあったような……」
春香「とりあえずはこれで大丈夫、かな…?」
春香「貴音さんに報告しとこっと」
ーーーーー
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ー
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ーーーーー
貴音「春香の方はこれで大丈夫ですね」
貴音「さて。何用ですか、あずさ」
事務所へ向かう道の途中で立ち止まり、静かに、しかしはっきりと告げる貴音。
背後には誰もいない。
ベノスネーク「シャアアアァッ」
貴音「ふっ」
返事の代わりに横の店の窓ガラスからベノスネークが奇襲をかけたが、貴音は難なく回避した。
あずさ「やっぱり貴音ちゃんにはダメね~」
ベノスネークが帰還した窓ガラスから姿を現したあずさ。
普段と変わらぬ笑みをたたえながら、その目は笑っていない。
貴音(今回は逃してもらえないようですね……)
貴音「戦う意思がないものを嬲るのはあなたの主義に反するのでは?」
あずさ「そうも言ってられなくなったのよ~。イレギュラーもあるみたいだしね~」
貴音「!」
貴音(まさか…もう一人の春香を知っている…?)
貴音「イレギュラー…?それは一体何のことですか?」
あずさ「さぁ~?何のことでしょうか~?」
あずさ「まぁここで死ぬ貴音ちゃんには関係ないわね~」
貴音(一対一は分が悪いですね……。まずはこの場を離れなくては)
あずさに背を向け走り出す貴音。あずさは追いかけてくる気配がない。
この場は凌げる、そう確信した貴音に向かって窓ガラスから再びモンスターが襲いかかった。
メタルゲラス「」ダダダダダダッ!!!
貴音「なっ!?」ズガッ
普段の貴音なら殺気を感じて回避するなど造作もない。事実先ほどの奇襲は難なく回避できた。
しかし今しがた目にした灰色の体躯、鋭い黄金の角は見間違えようがない。
貴音「……あなたが…何故響の…」
あずさ「デッキはライダーごとに違う。それくらい貴音ちゃんも知ってるでしょ~?」
貴音「2枚目の契約かーどですか…」
あずさ「その通り~。飲み込みの早い子は好きよ~」
貴音「あなたは…響を手にかけるだけで飽き足らず……あろうことかそのような真似を……」
あずさ「勘違いしてるようだけど、所詮は契約よ~?ギブアンドテイクが成り立ったからこの子は応じたの」
貴音(分が悪いどころではありませんね……。おそらくは響の使ったかーども自分のものにしているでしょう)
メタルゲラスの奇襲も直撃は避けた貴音だが、生身の体にはかすっただけでもダメージが大きい。
加えてこの状況、元々戦闘力の高いあずさのデッキに響のモンスターまで入っては勝ち目がない。
貴音(表まで出れば…あるいは!)
春香「大丈夫ですか!?貴音さん!」
貴音が走ろうとした方向から飛び出してきた春香。
貴音「春香!かろうじて、といった状況です。響のもんすたーまで三浦あずさに…」
春香「そっかぁ…。じゃあ諦めるしかないですね♪」ガスッ
貴音「なっ?」
冷静に考えれば”本物の”天海春香でないことはわかったはずだった。
受信したメールは春香が自宅から送ったもの。この場所も教えていない。
にも関わらず騙されたのはメタルゲラスの奇襲で動揺したからか、不利な状況から来る焦りか。
ボディブローを喰らった貴音はその場に膝をつく。
貴音「よもやこのような手にかかろうとは……」
春香?「この状況じゃ生きて帰れないことくらいわかりますよねー?」
貴音「…無事では済まないでしょう。されどただ死ぬのを待つつもりもありません!」
あずさ「二対一は趣味じゃないのよね~。春香ちゃん、私の獲物に手を出さないでくれるかしら~?」
春香?「手は出しませんよ。でもここで逃げられると厄介だなーって。殺るならしっかり殺っちゃってください」
貴音(せめて……春香にはこの状況を知らせなければ……)
二人が会話している隙に春香からのメールに返信する。
あずさが響のモンスターを手に入れたこと、偽物の春香はあずさに協力的であること、そしておそらく生還できないであろうことを。
貴音(申し訳ありません、春香……)
あずさ「どうする?貴音ちゃん、私はここで戦ってもいいけど~」
貴音「わたくしが無関係の人を巻き添えにする場で戦うと思いますか?」
あずさ「そうよね~。じゃあミラーワールドで待ってるわ~」
あずさはいなくなったものの、偽物の春香が残っている以上選択肢はなかった。
立ち上がった貴音は変身し、あずさの後を追う。
ーーーーー
ーーー
ー
すいません、本日はここまでです。
あともうちょい、なんですがなかなか進まず申し訳ないです…。
乙です!!
先週投下できず申し訳ありませんでした。少し投下します。
ー
ーーー
ーーーーー
春香「お、貴音さんがメール返してくれるなんて珍し……えっ?」
貴音からのメールを読み動揺する春香。
慌てて事務所付近へ向かうと共に、千早に助けを求める。
春香「お願い、出て千早ちゃん……」
千早「どうしたの?春香」
数コールの後、千早は電話に出た。
春香「お願い!貴音さんを助けて!」
千早「えっ?」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
『ストライクベント』
『スイングベント』
メタルゲラスの角を模した武器を装備したあずさを苦々しく見やる貴音。
貴音(響……)
貴音はエビルダイバーの鞭を召喚し身構える。
あずさ「かかってらっしゃい~」
貴音「お言葉に甘えるとしましょう。はっ!」
鞭を巧みに操り一方的に攻撃を続ける貴音。
あずさは右手に装備したメタルホーンで捌くが、反撃できる距離まで詰められない。
貴音「そこですっ!」
貴音の鞭はあずさの脚を捕らえた。
しかしあずさは動じず、貴音目がけて突進する。
元々あずさのデッキは近接特化である以上、距離を詰めることはあれど離れることはない。
メタルホーンの一突きは戦況を逆転させるに足る一撃である。
貴音「ふっ!」
しかしそれを予測していた貴音は鞭を振り上げあずさを宙に浮かせる。
そもそも貴音のデッキは戦闘力に長けているわけではない。
そのデッキで生き残れたのは貴音がその特性を理解し、使いこなしているためである。
貴音「はああぁっ!!」
あずさ「くっ」
振り上げた鞭を渾身の力で叩きつけるが、捕らえた脚を放すことはしない。
油断なく構える貴音はあずさにとって相性の悪い敵だった。
あずさのデッキは攻撃力が高い一方、近距離でしか戦えない。対する貴音は遠距離攻撃こそないものの、中距離からの攻撃を得意としている。
加えて貴音の的確な状況判断があずさに反撃の機会を与えない。
貴音「手打ちにしませんか、三浦あずさ」
あずさ「私がその提案に乗ると本気で思ってるのかしら~?」グッ
貴音「なっ!?」
近づくと手痛い一撃を喰らう。それならば相手に近づいてもらえば良い。
発想を変えたあずさは脚を捕らえる鞭を掴み、力任せに引っ張る。
バランスを崩しよろめいた貴音にメタルホーンの追撃が襲いかかる。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
千早「どういうことなの…」
春香から転送されたメールを読み思案する千早。
己の目的を考えれば他者の手で脱落者が出ることほどありがたいものはない。
しかし救援要請を無碍に断るほど非情になるのも、彼女にはまた難しかった。
千早「それでも…私は……」
ーーーーー
ーーー
ー
ーーー
ーーーーー
真「真美、今日の予定は?」
真美「午前中に雑誌の取材があるだけだよ」
真「じゃあ午後に連携の確認も兼ねてミラーワールドに行こう」
真美「えー……どうしても?」
真「実際に動きを確認しておいた方が本番で焦らないで済むよ。リハーサルと同じだね」
真美「そうだね…」
真「乗り気になれないのはわかるけどね…。二人で生きて帰るためだと思ってさ」
真美「うん。わかったよ」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
貴音「うぅ…」
メタルホーンの一撃は辛くも急所を逃れたものの、手負いの貴音にはダメージが大きい。
よろめきながら立ち上がり、牽制の鞭を振るうも先ほどまでのキレはなかった。
あずさ「あらあら~、もうお終いかしら~?」
貴音「痴れ言を…」スッ
『アドベント』
鞭を捌く背後から強襲をかけるエビルダイバー。
かろうじて避けたあずさだが、その隙をついて貴音は勝負を決めにかかる。
『ファイナルベント』
貴音(この状況を打破するにはこれしかありませんね)
貴音「はああぁぁっ!!」
『ファイナルベント』
あずさ「それならこれで終わりにしてあげるわ~」
エビルダイバーに乗り宙を駆る貴音。
遅れてあずさもファイナルベントをセットする。
貴音「くぅっ!」
あずさ「きゃあっ!!」
後手に回ったあずさは、メタルゲラスの突進が最高速に達しない状態で衝突した。
全く同じ条件での勝負であれば、これで貴音の勝利はほぼ確定していただろう。
『アドベント』
貴音(やはり…)
あずさ「…残念でした~」
初めてダメージと呼べるだけの傷を負ったあずさだが、立ち上がるとベノスネークを召喚した。
貴音は一か八かの賭けに出るほかない。
『コピーベント』
攻撃ではない効果を持つそのカードは、本来相手の武器を模倣するもの。
武器ではないカードに対して効力を発揮するかは未知数である。
『コンファインベント』
しかしコピーベントが発動されるかという間際にあずさは再びカードを切る。
貴音「そんな!」
メタルゲラスのデッキに備わる特殊カード、その効果は相手のカードの無効化。
万が一を考えたあずさはコピーベントが効力を発揮した場合のことを考え、アドベントが無駄になることを承知の上でカードを使った。
『ファイナルベント』
あずさ「残念ね、貴音ちゃん。さよなら」ズガガガガガ
あずさがアドベントを無駄打ちした理由は2枚目のファイナルベントだった。
アドベントで貴音を葬れればそれで良し、駄目だったときにもう1枚のファイナルベントを使えば勝ちは揺るがない。
貴音「ああぁぁぁっ」ドゴッ
吹き飛ばされビルの壁に埋まる貴音の体はピクリともしない。
『ソードベント』
キックを放ってもなおサーベルを召喚するあずさ。
ここで仕留めなければ貴音は必ず自分の前に立ちふさがるだろう。
貴音「……くっ…はぁ…はぁ……」
あずさ「しぶといわね~」
即死は免れた貴音だが、あずさの言葉に返答することさえままならない。
あずさは剣を構え、貴音のデッキケースを破壊しようと振りかぶる。
貴音(指一本すら動かせないとは……ここまでですか……)
『ナスティベント』
あずさの剣がデッキケースを粉々にする寸前、召喚機の声とともにダークウイングが乱入した。
貴音ほどでないとはいえダメージを負っているあずさは思わず片膝をつく。
千早「はああぁっっ!!」ザシュザシュザシュ
あずさ「がああぁっ」
ダークバイザーで動けないあずさを一方的に切りつける千早。
貴音との戦いでダメージを負っているあずさは、ナスティベントの効果もあり剣を構えることさえできない。
あずさ「うっ……」ドサッ
ついにあずさは地に伏し動かなくなった。
それを見た千早は剣を収め、貴音を担いだ。
千早「外に出ましょう、四条さん」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香「このあたりのはずだけど……」
春香?「遅かったね。もう貴音さんは死んじゃったんじゃないかな?」
千早より遅れて到着した春香の前にもう一人の自分が立ちはだかる。
春香「貴音さんが負けるわけない!そこどいてよ!」
春香?「本当にそう思ってる?ていうか私があなたの言うことを聞くわけないじゃん」
春香?「通りたければ力ずくで私をどかすんだね」
春香「…わかったよ。ドラグレッダー!」
春香の合図で奇襲をかけるドラグレッダー。
本音では戦いたくはないし、戦うなら正々堂々と真っ正面からぶつかりたいと春香は思っていた。
しかし一刻の猶予もなく、相手ももう一人の自分なら遠慮はいらない。
春香?「自分の考えていることくらいお見通しだよ」サッ
春香「それくらいこっちも計算してるんだからっ!」ドガッ
春香?「きゃあっ」
奇襲を予期していたかのように回避した偽物に体当たりした春香は、相手が倒れたのを見るや先を急いだ。
春香?「くっそー、一杯食わされたかぁ。まぁ間に合わなければそれでいっか」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
貴音「…もう…良いです。如月千早……」
千早「四条さん!意識が」
貴音「この怪我では…もう長くは……ないでしょう…」
千早「何のためにあなたを助けたと思っているんですか!」
貴音「良いのです……これで」
貴音「わたくしは…響を救えませんでした……」
貴音「せめて…わたくしたちの死が無駄にならぬよう……このかぁどを…」
デッキから抜いたカードはプロデューサーが貴音に渡したサバイブ・疾風。
千早「強化カード…?どうして使わなかったんですか!?」
貴音「あの方に…施しを受けては……響に…合わせる顔が……ありません…」
貴音「…春香を……頼みます……」
千早「四条さん?四条さん!?」
カードを手渡した貴音は満足したように息を引き取った。
千早は考える。そう、これで良かったのだ。一度に二人が脱落し、あとは春香と真美、美希。
おそらくライダーであろう真。春香と真美は手の内がわかっている。
一方でもっと早く向かっていれば助けられたのではないか。という内なる声を聞いて悩む。
本当にこれで良かったのだろうか。
殺し合いならばせめて決着は正々堂々とつけたかった。しかし先ほどの追い打ちは何だ。
あずさが動けなくなっても良しとせず、一方的に嬲って貴音と離脱したのに助けられなかったではないか。
千早「私は…何のために……」
ーーーーー
ーーー
ー
ちょびっとですいません。本日はここまでです。
遅くなったけど乙です
生存報告です。投下できず申し訳ない……
いつまでも待ってます
まってる
待ってます
お待たせしました。少しですが投下いたします。
ー
ーーー
ーーーーー
取材を終えた真美は疲弊しきっていた。
死者と行方不明者が出たアイドル事務所は否が応でも注目を集める。
話は真美のことではなく、彼女たちに変わった様子はなかったか、事務所の雰囲気が良くなかったのではないかという下世話なものだった。
真美「…ただいまー」
真「お疲れ、真美。どうしたの?」
真美「取材とか言って亜美やひびきんのことしか聞いてこなかったんだよ!?やんなっちゃうよ全く!」
真「そっか…。そうだよね、世間からしたら異常だもんな…」
真美「本当は裏でいじめとかあったんじゃないですか?って……」
真美「ムカついて、ありえないです!って言ったんだけどさ…ゆきぴょんの写真思い出して…」グスッ
真「……」
真美「何でこうなっちゃったんだろ……」
真「…何でかな。前はみんな仲良かったはずなのに…」
ガチャ
美希「お疲れ様なのー!……何か暗いの…」
真「やあ美希、ちょっと色々あってね…」
真「いや、美希もライダーだから知ってるよね」
美希「そうだよ?でも私が知ってるのはデコちゃんとやよいのことくらいなの」
真美「…ミキミキは何を知ってるの…?」
美希「二人とも死んじゃったの」
真美「っ!?」
真「なっ……」
美希「あれはデコちゃんが悪いって思うな。やよいのデッキを取っちゃうんだもん」
真「美希は…助けなかったの?」
美希「助ける?何で?」
美希「最後の一人にならないとダメなんだよ?助けるなんてワケわからないの」
真「美希は何でみんなを倒したいの…?」
美希「勝ち残ればどんな願いも叶うってハニーが言ってたの。だから勝ち残ってハニーをミキのものにするの」
真「そんなことのために!」
美希「そんなこと…?」
真の言葉に突然雰囲気が変わる美希。
真美はその気配を察して顔を上げ、真の顔には緊張が走った。
美希「ここで二人を殺しちゃってもいいんだよ?」
真・真美「っ!」
美希の一言で無言になる事務所。
永遠かと思えるほどの静寂は続く美希の言葉で破られた。
美希「でも今は殺さないであげるの。美希を殺したいなら最後まで勝ち残ればいいって思うな」
ガチャ
強者の余裕を見せて美希は事務所を去って行った。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香「貴音さん!千早ちゃん!」タッタッ
千早「…ここよ、春香」
春香「千早ちゃ…!貴音さん!」
横たわる貴音を見て駆け寄る春香。
取った手の冷たさに驚き、思わず手を離してしまう。
春香「…貴音さん?」
千早「……」
春香「起きてよ…起きてよ……」グスッ
千早「…私が着いたときはもう……」
春香「何で!?何でよ!!」
千早「……春香、これはそういうものよ」
春香「…千早ちゃん…?」
千早「ライダー同士の殺し合い、プロデューサーはそう言ったわよね」
千早「強い者が勝ち残って弱い者は死ぬ。それが全てよ」
春香「おかしいよ!何で!?」
千早「そうまでして叶えたい願いがあるからよ」
千早「春香、私はもう迷わない。もしあなたが中途半端な覚悟で戦いを止めるつもりなら…」
千早「今ここで、あなたを殺すわ」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
千早に嬲られたあずさはかろうじて息があった。
起き上がることさえままならない体に鞭を打ち、這って鏡を目指す。
あずさ「千早ちゃんには…お仕置きが必要ね……」
千早への恨み言を独りごちながら鏡まであと僅かだった。
エビルダイバー「」ヒュンッ
亡き主の仇を討たんと、エビルダイバーがあずさ目がけて疾走する。
あずさ「っ!」
『アドベント』
残されたカードでメタルゲラスを召喚し迎撃するあずさ。
メタルゲラスはあずさへの攻撃をことごとく防ぎ脱出までの時間を稼ぐ。
あずさ(今はダメね……)
鏡まで到達したあずさは何とかミラーワールドを脱出した。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
真美「…っはぁ……。本当に死ぬかと思ったよ……」
真「まさか美希があんな殺気を出すなんて…」
真美「ねぇ、まこちん。真美たち死んじゃうのかな…?」
真「…真美の叶えたい願いは何だい?」
真美「…真美にはないよ」
真「うん、ボクも同じだ。だから願いがない人が勝ち残ればそれで戦いは終わりになるんじゃないかな」
真美「そっか、そうだよね!」
真「ああ。だからこそライダーバトルで願いを叶えようとする人は倒さなくちゃいけない」
真美「じゃあミキミキとも…?」
真「…いずれはそうなるだろうね」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香「殺す…って…どうしちゃったの千早ちゃん…おかしいよ…」
千早「この先、春香のように覚悟もできていない人はまず真っ先に死ぬわ」
千早「他の人の手にかかるくらいなら私が引導を渡す、それだけよ」
春香「なん…で?私たち友だちでしょ、千早ちゃん…?」
千早「ええ、そのつもりよ。だからせめて私が殺すって言ってるの」
春香「わかんないよ!」
千早「私と戦いなさい、春香!」
春香「できないよ!千早ちゃんと戦うなんて!」
春香?「そうだよ、私のいないとこで私を殺すのはやめてよ」
緊迫した事態に突如として現れるもう一人の春香。
千早「あなたは関係ないわ。消えて」
春香?「そうも行かないんだよねー。春香を殺すのは私でないと、私の入る身体がなくなっちゃうじゃん」
千早「あなたの考えてるようにはさせないわ」
春香?「なんで?殺すなら誰が殺しても同じでしょ?それともさっきの殺すってただの友情ごっこ?」
千早「春香、あなたはどうしたいの?」
春香「私は…この戦いを止めたい」
春香?「まーだそんなこと言ってんだ。もう無駄なのにね」
千早「…死にたくないなら戦いなさい。そこの偽物を始末するなら手を貸すわ」
春香?「ちょっとちょっと、二対一とかずるいくない?そんなら退散させてもらうねー」
そう言いつつ鏡に身を投げる偽春香。
あとには春香、千早と貴音の亡骸が残された。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
九死に一生を得たあずさは、自分をかつてないほど追い詰められたにも関わらず冷静だった。
エビルダイバーが貴音のいない状況で奇襲を仕掛けてくるとは考えづらい。
つまり貴音との契約は切れた可能性が高い。
序盤こそ楽な戦いばかりだったが、終盤に差し掛かろうという段階で楽に勝てるとは思っていなかった。
重傷を負ったものの、貴音は死に自分は生きている。それは即ちあずさの勝利と言えるだろう。
あずさ「とはいえこの状態はあまり良くないわね~」
意識ははっきりしているものの、満身創痍の状態ではこれ以上戦いようもない。
数日は静養することも仕方ないと納得させ、あずさは眠りに就いた。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
真「真美、もっと速く!」
真美「鬼だよまこちん!もともと格闘向きじゃないんだってば」
真「だからこそ練習が必要なんだよ。あずささんは真美が接近戦を仕掛けてくるとは絶対に思わない」
真「そこを2人がかりで叩くんだ!」
真と真美は対あずさ戦を想定してミラーワールドで特訓に励んでいた。
真「狙うのは脚だよ。動きが鈍れば真美の砲撃は避けられないはずだ」
2人はギガゼール・メガゼールを相手に連打を浴びせる。
ギガホーンを装備した真美が上体を狙い怯ませたところに、デストクローを装備した真の鋭い斬撃がモンスターの脚を片っ端から切り裂いた。
真美「ふー、もういないっぽいね」
真「狩り尽くしちゃったかな?でもこれだけ練習すれば大丈夫だよ」
息の合った2人は50体を超えるモンスターの群れを10分程で殲滅した。
美希の宣戦布告に恐怖したが、今は怖いものなどない。
事実、今2人があずさと戦えば間違いなく勝利しただろう。
ーーーーー
ーーー
ー
待って頂いた挙げ句これだけで申し訳ないです。GWは時間がありそうなのでそこで一気に投下したいと思います。
乙!!
楽しみに待ってます
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
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/ 555 /.∠フ
/ /.∠フ ||
/ __ o/.∠フ ||
∠| ̄ ̄凵 ̄ ̄|∠フ ||
期待
お待たせしました、投下します。
ー
ーーー
ーーーーー
千早「春香、あなたは何の覚悟があって私の邪魔をするの?」
春香「人を殺すなんておかしいよ!そんな方法で本当に願いが叶うって誰が保証してくれたの!?」
千早「!……それはプロデューサーが…!」
千早「ごめんなさい、春香。ちょっと確かめなくちゃいけないことができたわ」
春香「待って千早ちゃん!貴音さんを…」
千早「そうね…」
今に至って千早は願いを叶えるその方法を全く知らないことに気づいた。
ましてや願いが叶うと言っているのが信用ならないプロデューサーである。
もし願いが叶うという話自体が嘘だったら、この戦いそのものが意味のない殺し合いでしかない。
千早としてはそうであって欲しくないと思うものの、プロデューサーの思惑が窺い知れない以上確信が持てない。
春香「…事務所、でいいのかな…?」
千早「そうね…。ただでさえ騒がれてるのだから救急車は避けた方がいいわ」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
事務所に戻った2人を待っていたのはプロデューサーだった。
春香「プロデューサーさん!?」
千早「……どうしてここに…」
P「おいおい、俺が自分の職場にいちゃいけないか?」
千早「何の用ですか?」
P「用があるのは春香だ」
春香「わ、私…?」
P「なんせ積極的に戦わない上に戦いそのものをなくそうって言うんだからな」
千早「私がいるところで春香に手出しさせるとでも…?」
P「千早、願いを叶えたいなら俺がここで春香を殺しても文句ないだろ」
千早「私の願いを叶えるために死んでもらうんですから、私がその罪を背負うべきです」
P「ほう、崇高と言うべきか傲慢と言うべきか…。ただ俺は一方的な虐殺はあまり好きじゃない」
P「だから春香に少しばかり贔屓させてもらおうと思ってね。受け取れ、春香」
プロデューサーが渡したカードは、かつて貴音が受け取ったものと対になるサバイブ烈火。
差し出されたカードを目の前に春香は戸惑うばかり。
千早「受け取っておきなさい、春香」
春香「千早ちゃん!?どうして…」
千早「大人しく殺されるというのであれば何も言わないわ。でもこれからの戦いはもっと熾烈になるのよ」
千早「無駄死にしたくないなら受け取っておいて損はないわ」
春香「…うん……。じゃあお言葉に甘えてもらいますね」
P「…一つ言っておくぞ、春香。ライダーは戦いの宿命から逃れられない。止めようとしても無駄なんだよ」
P「殺すか殺されるかの世界だ。自分がどうしたいのかよく考えておくんだな」
そう言うとプロデューサーは事務所から出て行った。
千早「春香、どうするの?」
春香「…私は……まだ決められない…」
千早「そう。早く決めた方がいいわよ」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
あずさ「やっとまともに動けるようになったわね~」
本調子とはいかないまでも、ライダーバトルに参戦できる程度にはあずさは回復していた。
あずさ「うふふ、まずは痛めつけてくれた千早ちゃんね~」
外に出たあずさを待っていたのはエビルダイバーの強襲だった。
あずさ「くっ」ズキッ
咄嗟に回避するものの、急な運動の負荷に身体がついていかない。
しかしモンスター2体を擁するあずさはどうとでもなると考え、すぐさま変身しミラーワールドに身を投じた。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
『『アドベント』』
召喚機が装填されたカードを告げると、ベノスネークとメタルゲラスがあずさを庇うように立ちふさがった。
エビルダイバーはあずさ目がけて突進するが、メタルゲラスに阻まれベノスネークに捕らわれる。
あずさ「うふふふ、力を貸してもらうわよ」
『コントラクト』
あずさが使ったのは3枚目の契約カード。
抵抗するエビルダイバーをベノスネークが容赦なく締め付ける。
エビルダイバーはこの契約を受け入れるしかなかった。
あずさ「これで3体目ね~。これだけいれば十分かしら~」
そもそもライダー1人につき契約モンスターは1体が普通であるところ、あずさは3体目まで手にした。
戦力としては十分どころかゲームバランスを崩していると言える。
あずさ「問題はエネルギーね~。どうしましょうか~」
契約モンスターが複数存在するのはメリットばかりではない。
”契約”はモンスターがライダーに力を与える見返りに、エサとなるエネルギーを供給することになっている。
エネルギー供給がなされなければ契約は破棄されたこととなり、ライダーはモンスターの力を使えなくなるばかりか
”エサ”と認識されてしまうことさえある。
あずさ「そうね~。これならみんな出てくるわよね~」
最悪な妙案を思いついたあずさは黒い笑みを浮かべた。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香は家に帰り、自室に閉じこもっていた。
千早から向けられた明確な敵意、渡されたカード、貴音の死。
貴音亡き今、この戦いを止めようとしているのは自分だけ。
しかし果たして止められるのだろうか。
真美はおそらく戦いに乗り気ではないだろう。だが訣別した千早は戦うだけの理由を持っている。
春香「…どうしたらいいのかな……」
コンコン
春香父「…春香、ちょっといいかい」
春香「…うん」
春香父「最近元気がないみたいだけど、どうしたんだ?」
春香「…ちょっと友だちと喧嘩しちゃって」
気にかけてくれる父の優しさは嬉しく思うものの、真相は話せない。
何より信じてもらえないだろう。
春香父「そうか…。どちらが悪いのかはわからないけど謝ったのか?」
春香「友だちのやってることは絶対に間違ってるんだけど…。目的は理解できるというか……」
春香父「方法がよくないから春香とぶつかったんだね」
春香「うん……。どうしたらいいのかな?気持ちはわかるんだけど…」
春香父「喧嘩はしないに越したことはないが、どうしてもぶつかることもあるだろう。それが友だちだよ」
春香父「お互い自分が間違っていないと思っているならぶつかるのは仕方ない」
春香父「春香は友だちと衝突しても自分が間違っていないと胸を張って言えるんだろう?」
春香「うん…」
春香父「それなら自分を信じなさい。相手をやり込めようなんて思わなくていい。ただその子が間違いだったと気づいたら優しく受け止めてあげればいいんだよ」
春香「うん…ありがとう」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
ザァーッ
土砂降りの雨の中、ミラーワールドでの特訓を終えた真美と真はしっかりした足取りで事務所へ向かう。
多少の疲労は感じるものの、今は手応えの方が強かった。
真美「ふー、つっかれたー」
真「お疲れ、真美」
真美「これだけ練習すれば大丈夫だよね?」
真「大丈夫だよ、何より2人なんだ。バランスもいいしまず負けはしないよ」
「きゃあぁっ!!!」
真美・真「!」
悲鳴を聞いた2人はすぐさまその声の出所へ急ぐ。
目にした光景はにわかには信じがたいものだった。
あずさ「うふふふ~、これで十分かしら?」
水たまりに吸い込まれそうになっている女性と、傍らで微笑むあずさ。
彼女の仕業であることは明白だった。
真「何をやってるんだ!!」
あずさ「あら~?真ちゃんと真美ちゃん。見て分からないかしら~?」
真美「…なん…で…?」
あずさ「私のモンスターがお腹空かせちゃったの~。最近は脱落したライダーも少ないから仕方ないわよね~」
真「ふざけるな!なんで関係ない人を!」
あずさ「だってこうしないと私が食べられちゃうもの~。真ちゃんだって死にたくないでしょ~?」
真「…真美、ここでやろう。ボクはこれ以上我慢できないよ」
真美「…うん。わかった」
あずさ「あら~?私と戦うつもり~?本当は千早ちゃんを先に殺したかったけど…仕方ないわね~」
真「…よくも雪歩を…」
あずさ「あら~、怒っちゃったかしら~?うふふ」
あずさ「いいわよ~。かかってらっしゃい」
3人は無言で変身すると、ミラーワールドへ飛び込んだ。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
千早「ここね…」
清明院大学・江島研究室。かつてプロデューサーが在籍していた研究室だ。
出身大学は履歴書で判明していたが、当時在籍していた研究室を知るのは困難かと思われた。
しかし聞き込みをしてみると、どうもプロデューサーは有名らしい。
成績優秀、文武両道と非の打ち所のない人物だったのに、よりにもよってあんな変な研究室に入るとは。
みな異口同音に語るのを聞き、千早は件の研究室の場所を聞いてみた。
どうも実験中に事故が発生し、現場保存の名の下に今まで放置されているようだ。
ガラッ
千早「これは!」
黒いカーテンで覆われた窓、散乱する鏡の破片。
社長室でも見た光景が眼前に広がっていた。
千早「少なくとも大学時代にはミラーワールドの存在を知っていたようね…」
机の引き出しを漁ってみるも、めぼしいものは残っていない。
千早「さすがに資料なんかはないわね」
事故で閉鎖されたとなると残っていないのは当然かもしれない。
願いを叶える方法が分かれば、と思って足を運んだはいいが無駄だったようだ。
カツッカツッ
千早「!」
こちらへ向かう足音を聞き、思考を中断する。
職員ですら今は来ないというこの場所に来る者はライダーバトルの関係者と見て間違いないだろう。
机の影に身を潜めて様子を窺う。
「ここにいるのはわかってるの、千早さん」
千早(美希…!)
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
『『ストライクベント』』
真「(真美、特訓の通りだ)」
真美「(オッケーまこちん!)」
真美「でやーっ!」ブンッ
あずさ「うふふふ~、当たらないわよ~」
あずさの上体目がけ真美が殴りかかる。苦もなく回避するあずさ。
真「そこっ!」ヒュッ
あずさ「おっと~」サッ
真のなぎ払いをバックステップで回避しつつ、召喚機を手にするあずさ。
『ソードベント』
あずさ「それじゃあ私も~!」ヒュッ
真「っ!」ガギン
真(重い!)
未だ全力ではないとはいえ、攻撃特化のあずさのパワーは同系統のデッキを持つ真を以てしても驚異だった。
真「(真美、長期戦は不利だ。次で決めよう)」
真美「(わかった)」
あずさ(次で決めないと面倒ね~)
自分はかろうじて回避できるかもしれないが、真美があずさの太刀筋を見切るのは不可能と判断した真は勝負を決めにかかる。
一方のあずさも、全力で回避すると身体が軋むのを感じていた。
『シュートベント』
先にカードをセットしたのは真美。
背負った二門の大砲で牽制しつつ距離を詰める。
真「はあぁぁっ!」
すかさず真が斬撃を浴びせカードを使わせる隙を与えない。
真美はギガホーンで殴りかかりながらギガキャノンで砲撃する。
相手に反撃の機会を与えない完璧な作戦だった。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
美希「ハニーのことコソコソかぎまわって…ストーカーなの」
千早(どうして美希がここに……いえ、プロデューサーの差し金と考えればおかしいところはないわね)
美希「ハニーも言ってたの。裏で何かされるのは気持ち悪いって」
美希「そろそろ出てきたらどうかな。待たされるのはあんまり好きじゃないの」サッ
鏡にかけられた布を取り払った美希。そこからゴルトフェニックスが研究室に飛び出てきた。
千早(モンスターを出されると分が悪いわね……)
美希「これでも出てこないの?千早さん」
千早「仕方ないわね…」
千早(来て、ダークウイング!)
ゴルトフェニックスが出てきた鏡は布が取り払われたままだった。
千早は手鏡でミラーワールドのナイトウイングを呼び寄せる。
バサッ
美希「きゃっ」
突如として鏡から出現した千早のモンスターに気を取られる美希。
千早「」ダッ
その一瞬の隙にドアへ駆ける千早。
しかしゴルトフェニックスが行く手に立ちふさがった。
千早「ダークウイング!」
ダークウイング「キイイィィィ」
呼びかけに応じ、超音波を出すダークウイング。
威力は劣るものの、ゴルトフェニックスを怯ませるには事足りた。
千早はその脇を通り抜け、研究室から脱出する。
美希「何なのなの!何なのなの!」
美希「……もう怒ったの」
思うように事が進まない苛立ちは美希の闘争心に火を付けた。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
あずさ「きゃあああぁっ」
真美のギガホーンを受け吹き飛ばされるあずさ。
真はあずさに違和感を感じながらも自分たちの優勢を信じて疑わなかった。
真美「これで終わりだよ!」
『ファイナルベント』
追撃をかけるべくファイナルベントのカードをセットする真美。
『アドベント』
メタルゲラス「」ドドドドドド
あずさは真美がファイナルベントを使ったのを見るや、すぐさまメタルゲラスを召喚する。
標的は真美、ではなくファイナルベントによって呼び出されたマグナギガだった。
メタルゲラス「ブオォォッ!!!」ドンッ
マグナギガは体勢を崩され、全弾発射のため後ろにいた真美もよろめく。
真「真美っ!」
『アドベント』
真美「ううぅぅ…」
間髪入れずにモンスターを召喚するあずさ。
ベノスネークが真美を捕獲し、締め上げたのは一瞬のことだった。
真は援護に入ろうとするも間に合わず、あずさをにらみつけることしかできない。
あずさ「これで1対1ね~。どうする真ちゃん?」
真「…真美を放せ」
あずさ「何のために人質にしたかわからないのかしら~?」
真「真美は元々戦う気はない。戦いたいならボクが戦う!」
あずさ「勘違いしてるわよ真ちゃん、戦いたいんじゃないの」
あずさ「私の邪魔をする人を殺したいだけよ~」
真「なっ…」
あずさ「真美ちゃんも私の邪魔をしたんだからお仕置きが必要よね~」
主の言葉に締め付けを強めるベノスネーク。
真美「ぐうぅぅっ…」ミシミシ
真「真美!やめろ!」
あずさ「やめて欲しいなら……そうね、この場で契約を解除しなさい」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香に叶えたい願いはなかった。
トップアイドル。それは自分の力で登り詰めるものだと思っていたし、プロデューサーに対する恋情も自分の力で形にするものだと思っていた。
もし超常的な力に頼ってまで叶えたい願いがあるとすれば……。
春香「…うん、決めた」
願いの定まった春香の表情に陰りはない。
ーーーーー
ーーー
ー
ーーー
ーーーーー
千早「はあっはあっ……」
一時撤退を余儀なくされた千早だが、清明院大学からは出ていない。
空き教室で息を潜めて美希が離れるのを待ち、もう一度研究室への侵入を試みるつもりだった。
千早「あと少しで調べ尽くせたのに…」
ガシャーン パリン
千早「!?」
遠くからガラスの割れる音が響いてくる。どうやら美希は手当たり次第に八つ当たりしているようだ。
冷静さを失ったまま研究棟を出てくれることを祈りながら、千早は机の下に身を隠した。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
真「契約の…解除……」
あずさ「ええ、そうよ~。そんなに真美ちゃんが大事なら自分の命だって差し出せるでしょ~?」
真「ぐっ…」
真美「ダメ…だよ……まこちん…」
あずさ「真美ちゃんは黙っててもらえるかしら~」
真美「ぐああぁぁぁっ」
真(くそっ、どうしたら……)
契約を解除したところであずさが真美を助ける保証はない。
真美を助けられなければ2人とも犬死にだ。どちらかが生き残れば……
真は一層強く拳を握りしめる。
『ファイナルベント』
真「うおおおおぉぉぉっ!!」ダッ
戦う覚悟を決めた真はカードをセットし、あずさ目がけて突進する。
それは真美を見殺しにする覚悟でもあった。
真(ごめん、真美)
あずさ「残念ね~」
真美「ああああぁぁぁっ」ガクッ
悲鳴を最後に頭を垂れる真美。
真は極力それを見ないようにしてあずさに接近する。
真(真美…。でもこれで!)
あずさは真に気を取られている。
この状況であれば確実に仕留められるという自信が真にはあった。
真のファイナルベント・クリスタルブレイクは、本来デストワイルダーが獲物を真の方に引きずり、待ち構えていた真がデストクローで粉砕する。
本来とは違う技の出にすることで、デストワイルダーによる奇襲を成功させる。それが真の戦術だった。
『コンファインベント』
しかしその戦術は脆くも崩れ去る。
あずさの切った特殊カードの効果で、デストワイルダーが出現していなかったのだ。
真「そんなっ!?」
あずさ「本当に残念ね~。自分から無駄死にする方を取るなんて…」
2人の距離はあと僅かになっていた。
必殺の一撃を叩き込むはずが、無策のまま突っ込む形となった真はさらにカードを引こうとするあずさを見てスピードを上げる。
あずさ「少しは楽しませてくれたお礼よ。とっておきで殺してあげるわ~」
真がたどり着く前にカードをセットしたあずさは、心の底から楽しそうに告げた。
『ユナイトベント』
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
P「美希、もういい。出直そう」
美希「むうう…それでもムカつくの!」
P「千早は俺が殺ろうと思ってたが、それなら美希に任せよう」
美希「ありがとなのハニー!」
千早「いなくなったかしら…」
ガラスが割れる音も聞こえなくなり、千早は空き教室から外に出る。
外はもう暗く、窓ガラスが疲れ切った顔を映している。
千早「窓にも気をつけなくちゃいけないわね…」
窓ガラスに姿を映さないよう注意しながら、千早は江島研究室へ進む。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
春香は千早を探していた。
やっとこの戦いに意味を見つけた。それをぶつけて、わかり合えるのは千早しかいない。
いや、わかり合える確信は持てていないが、わかり合いたい。
千早なら全力で、正々堂々戦ってくれるだろう。
春香「うーん、事務所には来てないか…」
ドアの先は暗い、無人の事務所だった。
ほんの数日前までは明るく活気のあった様子はもう感じられない。
春香「どうしてこうなっちゃったのかな……。ううん、私が元通りにするんだ」
気落ちしかけた春香だが、自分の願いを信じ自らを奮い立たせる。
黒春香「元通りねぇ…。本当にそんな願いでいいの?」
春香「そっか、あなたとも決着をつけないといけないね」
黒春香「ふーん、私のこと忘れてたんだ。随分と余裕だね」
春香「そんなに余裕はないはずなんだけどなぁ。早く千早ちゃんを見つけないといけないし」
黒春香「そう…。私は眼中にないってわけ…。いいわ、殺してあげる」
春香「あんまり時間使いたくなかったけど…仕方ないね」
黒春香「本当にいちいちムカつく言い方するね。吠え面かいてもしらないよ」
春香「はいはい、やるならとっととやっちゃお」
「「変身!!」」
ーーーーー
ーーー
ー
今日はここまでです。GW中に終えられるかどうか…という感じですorz
乙です
あ
GWは仕事で消失しました\(^o^)/
少しだけ投下します。
ー
ーーー
ーーーーー
真「な、何だよ、これ……」
あずさがユナイトベントにより召喚した獣帝ジェノサイダーの威圧感に呑まれる真。
ベノスネーク、エビルダイバー、メタルゲラスの3体が組み合わさったその姿は邪悪を具現化したような禍々しさに満ちていた。
あずさ「すごいでしょ~?ここまで揃えるのは本当に大変だったんだから~」
のんびりしたあずさの口調とは裏腹に、かつてないほどの殺気が漂う。
あずさ「本当は切り札なんだけど、真ちゃんには特別にこの子で殺してあげるわね~」
真「う、うあああぁぁっ!!!」
『ファイナルベント』
あずさのファイナルベント発動前に斬る。自分のファイナルベントが無効化された真に取れる選択肢はそれしかなかった。
あずさ「速いっ!?」
真「もらったあぁぁっ!!」
デストクローがあずさの体を貫くかという寸前で、真の視界からあずさが消える。
真「なっ!?」
軽やかにジャンプで回避したあずさは、真の背後に立っていた。
あずさ「楽しませてくれたけどこれで本当におしまいね~」タッ
真「うああぁっ」ドガッ
背後から蹴り飛ばされた真の先に待ち構えていたのはブラックホールを出現させたジェノサイダー。
キックにより宙に浮かされた真にはどうすることもできず、一瞬で飲み込まれてしまった。
あずさ「はぁ~、さすがにさっきのは無茶だったわね~」ガクッ
あずさ「でも2人も殺せたし十分かしら~」
病み上がりの身体で相当な無茶をしたものの、計画通り真を潰すことはできた。
あとは借りのある千早だけ。
あずさ「うふふ~、覚悟しなさい千早ちゃん…」
満身創痍に戻った身体を引きずるように鏡へ向かうあずさ。
P「その必要はないよ、あずさ」カツッ
突如として現れたプロデューサーがあずさのデッキケースに剣を突き立てる。
あずさ「そんな…どうして…Pさん……」パキッ
デッキケースの亀裂は次第に大きくなり、ついに粉々に砕けてしまった。
P「俺の計画のためには全員死んでもらう必要があるんだ」
あずさ「嘘だったのね…許さない…!絶対に許さない…」
あずさ「畳の上で死ねると思わないことね…そのときに後悔しながら、自分の愚かさを呪いながら死ねばいいわ…」
P「悪いがそんな恨み言は聞き飽きてるんだ」
あずさ「許さない…許さない…」
一矢報いる余力もなかったのか、あずさの身体は光となって消えていった。
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
江島研究室に戻った千早は取り払われた布を鏡にかけると、ペンライト片手に探索に戻った。
千早「これは研究室のメンバーかしら…?」
プロデューサーの名前も載っている名簿は当時の研究室のメンバーをまとめたもののようだ。
千早「でも…さすがに連絡先なんかはないわね」
江島均、神崎士郎、仲村創……それより下は煤けてしまっていて読めない。
大学に問い合わせれば教授である江島の動向くらいはつかめるだろう。
名簿を丁寧に折りたたむと千早は研究室を後にした。
P「持ってかれたのは名簿くらいか…。まぁいいだろう」
P「全く、美希ももう少し冷静になってくれれば良かったんだが…」
P「まぁいい。千早の始末はいつでも出来る。問題は……」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
『『ソードベント』』
黒春香「だから自分が何するかなんてお見通しなんだって!」キンッ
春香「じゃあ勝負つかないでしょっ!」ガキン
黒春香「残念でしたー。私の契約モンスターの方が格段に強いの♪」
『『ストライクベント』』
共に左手に剣、右手に手甲を装備した二人の春香は、共に火球を打ち出す。
春香「きゃああぁっ」
しかし春香の放った火球は飲み込まれ、黒春香の火球が直撃した。
春香「な、なんで…」
黒春香「言ったでしょ?私のモンスターの方が強いって」
黒春香「ライダーの強さは契約したモンスターに依存するの」
黒春香「つまりあなたに勝ち目はないってこと」
春香「ここで負けて死ぬなんて出来ない…千早ちゃんは私が止めないといけないから……」
黒春香「うるさいなー。さっさと死んでよ」
春香「誰があんたなんかに負けるか…!」
黒春香「いいねー、やっぱそうじゃないと。でもどうやって勝つつもり?」
『サバイブ』
プロデューサーから渡されたサバイブのカードを引く春香。
形を変えたドラグバイザーにサバイブをセットした春香は、陽炎の向こうで新たな姿になっていた。
黒春香「何よそれ…強化カード…?」
春香「私は負けない。こんな戦い認めない」
春香「だから!あんたを倒してミラーワールドなんかない世界を創る!!」
黒春香「上等っ!吠え面かくなよ!」
『『ファイナルベント』』
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
千早「行方不明…ですか」
職員「ええ。その…事故で研究室が解体されてから誰も江島教授を見ていないのよ」
千早「ありがとうございます」
職員「力になれなくてごめんなさいね」
先日入手した名簿の名前を使い、神崎士郎の妹と騙って江島教授の動向を調べようとした千早だったが空振りに終わった。
千早「はぁ…怪しまれないよう色々考えて来たのに」
P「残念だったな千早」
千早「プロデューサー!」
P「何も見つからないとわかっていても裏でコソコソされるのは不快なもんだな」
千早「あなたがそれを言いますか」
P「ははっ、もっともだ。でもなぁ、プレーヤーがゲームマスターにちょっかい出すのはダメだろう」
千早「ゲーム…ですって…?」
P「ああ。殺し合いの過程なんてゲームと同じだ。目的が達成されればそれでいいんだよ」
P「ただなぁ…俺の目的を邪魔するような奴はゲームから排除しなくちゃいけない」
P「残念だよ千早」
千早「それはこちらのセリフですよ、プロデューサー」
千早「音無さんだけでなく、秋月さんまで…」
P「…その名前を出すな」
千早「何でもいいますよ。音無さんも秋月さんもあなたのせいで「黙れっ!!」
P「美希っ!千早を殺せ」
美希「はいなの!」
千早「…美希、あなたはその男に騙されてるのよ」
美希「ハニーが美希を騙すわけないの」
千早「ここでやるしかないようね…」
「「変身!」」
P「せいぜい悪あがきをすればいいさ」
二人が変身したあと一枚だけ手元に残したカードを見ると、プロデューサーもミラーワールドへと入っていった。
ーーーーー
ーーー
ー
すみません、書き溜めが全然進んでいないのでここまでにさせて下さいorz
5月中には終えたいと思います…
乙です
楽しみに待ってます
5月中に終わらせると言ったな、あれは嘘だ。
ごめんなさい、もうフラグ立てません…orz
戦闘終了まで投下します。
ー
ーーー
ーーーーー
「「はああああぁっ!!」」
二人同時に発動したファイナルベント。
ドラグブラッカーの炎を纏った黒春香と、ドラグランザーの背に跨がった春香の距離はあと僅か。
春香「そこだあぁぁっ!!」
バイクモードへと変化したドラグランザーが首を上げ、黒春香目がけて炎を吐く。
黒春香「なっ…!」
爆煙で視界を奪われ、爆風で失速する。
次に黒春香が目にしたのはドラグランザーの機首だった。
黒春香「っ……」グシャッ
超重量のドラグランザーによるプレスが直撃した黒春香は必殺のキックを見舞うことさえ叶わず、倒れたまま動かなくなった。
春香「…ごめんね」
ーーーーー
ーーー
ー
ー
ーーー
ーーーーー
美希「ふーん、千早さんもなかなかやるの」
千早「そういう美希こそ。本気じゃないのでしょう?」
美希「本気になったら手加減できないの。これは罰なんだから瞬殺じゃダメなの」
千早「瞬殺できるか試してみなさい」
『トリックベント』
美希「へえ…」
分身による撹乱と同時攻撃。
美希のデッキが強力なことは召喚された二振りの片刃剣の切れ味で予想がついた。
しかし剣筋は戦い慣れしているそれではない。勝機があるとすれば実戦の差。
千早「行くわよ、美希!」ダッ キンッ
美希「はっ!」ガキン
片手に剣、もう片手に槍。
二つの得物を器用に振るう千早の剣戟は軽いものの、元々のスピードに加え分身による数の暴力で美希は次第に追い込まれる。
美希「くっ…」
背後の分身の攻撃を間一髪かわしたところに、すかさず横からの斬撃が浴びせられる。
両手の剣で何とかそれを捌く美希。
ザクッ
捌ききって無防備になった胴に突き刺さる千早の槍。
千早「勝負あり、ね」
美希「…ぐっ…はぁ…はぁ……ミキはまだ戦えるよ」
千早「そう。それなら戦えなくなるまで斬るしかないわね」
『ストレンジベント』
美希がカードをセットした瞬間、千早の分身が消え去った。
ランダムに効果を発揮するストレンジベントだったが、今回は戦況に即した結果になった。
千早「分身を消した程度じゃ私の有利は変わらないわ」サッ
美希「…はぁはぁ」シュン
振りかぶった千早を見て瞬間移動で回避した美希だったが、息は上がりこれ以上は動くことさえできそうにない。
P「美希、あのカードを使え」
美希「…ハニー…?いいの?」
P「やむを得ん」
戦場に突然現れたプロデューサーは美希に指示を出す。
千早「そんなことさせると思いますか?」
P「それまでのお相手は不肖ながら俺が務めよう」
そう告げたプロデューサーの両側に2体の不死鳥型モンスターが出現した。
P「相手にとって不足はないだろう?千早」
千早「申し訳ないですけど不足ですね」
カードを引こうとする千早を見てモンスターをけしかけるプロデューサー。
分身は消えたものの、千早は一本の槍だけで2体を牽制する。
P「美希!今だ!」
『ナスティベント』
P「はっ…?」
美希がカードを使おうとする瞬間を狙って千早は槍を捨て、先にカードをセットした。
2体の体当たりが直撃して吹き飛ぶ千早だが、追撃はない。
P「うおおおぉぉ…」
美希「いやああぁぁぁ頭が割れちゃう…」
二人は動けず、ガルドミラージュとガルドサンダーも狂ったように羽ばたいている。
捨て身で使ったナスティベントで戦況は再び千早に傾いた。
千早「……」スパッ
ダークバイザーで美希の手にしたカードを真っ二つにした千早は、そのまま美希のデッキケースに剣を突き立てる。
千早「美希、ごめんなさい」カツッ
美希「あっ…いや…いやああぁぁぁ!!」パリン
デッキケースを破壊された美希は変身が解けた。
P「千早!お前何てことを!!あのカードないともうやり直せないんだぞ!!」
千早「やり直す…?こんな戦いを繰り返すつもりだったんですか?」
P「おっと、美希の身体が消えちまうな」サッ
話を遮り美希の契約モンスター、ゴルドフェニックスを呼び出すプロデューサー。
千早「プロデューサー…?何を…」
尋ねる前に脳裏に浮かんだ最悪の結末。
亜美の死が頭をよぎった千早はアドベントでダークウイングを召喚する。
千早「何としても止めて!ダークウイング!」
P「やめろ千早!」
千早「こんな死に方はもう見たくありません!」
体当たりで捕食を妨害するダークウイングだったが、地力の差で競り負けじりじりと美希への接近を許してしまう。
『サバイブ』
ダークウイングはサバイブ疾風でダークレイダーへと強化され、再びゴルドフェニックスの前に立ちふさがる。
P「…なんでお前がそのカードを」
千早「四条さんから譲り受けました。私ならこのカードを使いこなせるって…」
P「今すぐダークウイングを止めさせろ」
千早「できません」
『ブラストベント』
千早のカードでダークレイダーの両翼から猛烈な突風がゴルドフェニックスを襲う。
モンスター同士の戦いは熾烈を極めていた。
千早「そしてあなたの願いも叶うことはありません」シュッ
P「ぐはっ…」
さらにスピードが上がった千早は瞬時に距離を詰め、プロデューサーに一太刀浴びせた。
千早「ごめんなさい…」
プロデューサーを倒した千早はダークレイダーの加勢に回った。
サバイブによる強化を受けてもなお互角以上に立ち回るゴルドフェニックス。
『ファイナルベント』
このモンスターを倒すには出し惜しみできないと悟った千早は躊躇なくファイナルベントを引いた。
発動直前に突風を浴びせ、ゴルドフェニックスを美希から離すとダークレイダーは千早を乗せて飛翔した。
バイクへと変化したダークレイダーはゴルドフェニックスにバインドをかける。
千早「これでおしまいよ!」
翼で車体を覆い、漆黒の弾丸となったダークレイダーは拘束を逃れようともがくゴルドフェニックスの胴に風穴を開けた。
墜ちたゴルドフェニックスの体から出現したエネルギーをダークレイダーが捕食するのを見ると、千早は美希のもとへ近づいた。
美希「…千早…さん?」
千早「美希、ごめんなさい。私にはこれくらしか出来なかったわ」
美希「ありがとなの…。食べられて…死んじゃうなんて、ミキ、イヤだったから…」
千早「恨んでくれて構わないわ」
美希「ううん…。きっと…千早さんも、叶えたい願いが…あるんだよね…?」
徐々に消え始める美希の身体。
デッキケースを砕いてからの時間を考えると消滅しきっていないことが奇跡だった。
千早「ええ。私は優を…」
美希「きっとね…、ライダーじゃなくても…人は…何かを賭けて、戦ってると思うの」
美希「それが…譲れないものならね、ミキ、仕方ないって…思うな…」
千早「優しいのね、美希は」
美希「千早…さん、ハニーのことも…許してあげて…?」ニコッ
千早「…私は……」
笑顔のまま美希は光になった。
答えに詰まった千早は悩んだまま倒れたプロデューサーのところへ向かった。
千早「プロデューサー、生きてますよね?」
P「…かろうじて、な」
千早「今助けます」
P「いいよ。美希は消えたんだろう?」
千早「ええ。先ほど。私が看取ってきました」
P「そうか…。くくっ…ははははっ」
千早「…何がおかしいんですか?」
P「計画は全部ボツだ。お前のおかげでな」
P「最後まで勝ち残っても願いが叶うことはない。残念だったな千早。はははは」
千早「どういうことですか…?」
P「さあな…ぐほっ」
血を吐くプロデューサー。もう長くはないようだった。
千早「…ごめんなさい、プロデューサー。助けるのは無理そうです…」
P「…これ以上…生きる意味なんて、ないさ…」
P「俺が望んだ…765プロは、もう…手に入らなくなった……」
P「…ごめん、律子…音無さん…」
千早「…プロデューサー…?」
P「 」
返事のなくなったプロデューサーをどうするか迷った千早だったが、
ミラーワールドから出たら担ぐことも難しいと考え事務所へと運んだ。
千早「プロデューサー…あなたは一体何のためにこんなことを…」
亡骸に上着をかけると千早はミラーワールドから出た。
ーーーーー
ーーー
ー
ペースが遅くて申し訳ないです。今さらですがこの後は今以上に独自解釈が盛り沢山です。
ひとまず投下はここまでにさせていただき、ラストまで書いてきます。
乙です
乙です
生存報告です。
前回の投下からもう一ヶ月とは……。まだ色々と立て込んでるので、投下できるまでもう少しお時間を頂くことになりそうです(´・ω・`)
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待ってます
生存報告だけでもいいから来てくれ
期限がヤバいぞ
すいません、生存報告です。
今の仕事を辞めることになったので、今しばらくお待ちいただければ幸いです…
なかなか波乱の副業だな…
ゆっくりでも良いから完結させてほしい
期待してる
会社をやめるって思った以上に大変ですね。全然書き溜めてなかったので、ラストまで書いちゃいます。
日曜に少しだけでも投下します。
お待たせしました、少しだけ投下します。
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本来であればライブ会場での最終確認を行う日だった。
しかし765プロのアイドルは2人だけで、プロデューサーもいない。
これではライブの開催は無理だろう。
幸か不幸か、アイドルの連続失踪が騒がれているので中止となっても納得はしてもらえるはずだ。
春香はせめてライブ会場をもう一度だけ見ておこうとその場所へ向かっていた。
「あの日からまだ2週間もたってないなんて……」
事務所を最後に顔を合わせていない千早の動向も気になる。
ライダーはあと何人なのか。自分の望みが叶っていないからまだ2人以上残っていることは確かだ。
会場内に入った春香は目を疑った。
鏡、鏡、鏡、鏡、鏡。ステージと客席を囲むように鏡が置かれている。
春香「なに…これ…」
スタッフ「あ、天海さん!プロデューサーさんに言われたとおり設営したんですけど、これでいいですかね」
春香「それが…その…。うちのアイドルが失踪しているってニュースはご存じですよね?」
スタッフ「ええ…。その、何と言ったらよいか…」
春香「それで…ライブどころじゃないので、今回は中止にせざるを得ないと思って」
スタッフ「そうですよね。わかりました。プロデューサーさんは何と?」
春香「それが、プロデューサーも……」
スタッフ「すみません…。以前プロデューサーさんから、何があってもアイドルが1人でもいたら必ずやってくれ、って言われてて」
春香「えっ!?」
スタッフ「おかしな話ですよね。まるでこうなることを予期してたような…すいません、縁起でもないことを」
春香「いえ、それよりプロデューサーが何と言ってたか教えてもらえませんか」
スタッフ「わかりました」
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結局、プロデューサーの思惑は何一つとしてわからなかった。
ただ。音無小鳥、秋月律子。この2人がプロデューサーの計画で相当重要だった気がする。
そして「やり直せない」という言葉。
あのとき斬ったカードは一体何だったのだろうか。
しかし全ては過去のこと。プロデューサーの死んだ今、真相を解明することは不可能だろう。
「願いが叶う様子はない…。ということはまだ誰か残ってるのね」
その中に春香がいることを願って千早は事務所へ向かった。
事務所には誰も居なかった。
そのことがこの戦いも大詰めになっていることを物語っている。
スケジュールボードを見ると、最終確認と書いてあった。
「すっかり忘れてたわ。もうすぐライブだったのね…」
春香はそこにいるだろうか。
事務所に留まっても春香が来る保証はないし、ライブの中止を連絡しなければいけない。
別段やることがあるわけでもない千早は事務所を出て、会場へと向かった。
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春香「プロデューサー…そんなことを…」
スタッフ「ええ。ソロライブでも構わないから、必ずここで開いてくれと仰ってましたよ」
春香「お話を聞かせていただいてありがとうございます」
スタッフ「それで…ライブはどうしましょうか」
春香「申し訳ないんですが、やはり中止にしたいと思います」
スタッフ「…そうですよね。大丈夫です!わざわざ来て頂いてありがとうございます」
春香「ここまでして頂いたのに申し訳ありません」
コンコン
スタッフ「失礼します。どうした?」
スタッフ2「765プロの如月さんがお見えになってますよ」
春香「千早ちゃんが!?」
スタッフにお願いしてそのまま一室を借りた2人は向かい合って座っていた。
千早「やはりここだったのね」
春香「うん。中止の連絡してなかったから…」
千早「律儀ね。765プロの状況からしたら開催できるわけないって誰もが思ってるわ」
春香「それがね、ソロでもいいから必ず開催してほしいって言ってたみたいだよ、プロデューサーさん」
春香「たとえ何が起こっても絶対にやってくれ、とも言ってたみたい」
千早「妙ね…。アニバーサリーでもないし、今回のライブにそこまでの意気込みがあったなんて」
春香「ステージの方はもう見た?」
千早「いいえ、まだよ」
春香「…どこもかしこも鏡だらけだったよ。正直ちょっと怖かった」
千早「鏡だらけ!?」
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千早「…なに…これ…」
ステージに上がった千早は絶句した。
事務所の社長室と江島研究室が巨大化したように、どこを見ても鏡が置かれている。
春香「千早ちゃん…私にも叶えたい願い、できたよ」
千早「待って春香、何か嫌な予感がするの…」
春香「待ってられないよ!もうこんな世界耐えられない!私は早く元の世界に戻したいの」
千早「そう…。春香の願いはライダーバトルのない世界なのね」
春香「そうだよ。ライダーバトルなんてならなければ事務所のみんなでずっと仲良くアイドルできたのに…」
千早「それは…どうかしらね」
春香「……どういうこと…?」
千早「あずささんも美希もプロデューサーに対して異常な執着を見せていたわ」
千早「ライダーバトルがなくても衝突は起きたかもしれない」
千早「そして…プロデューサーはきっと”今の”765プロでは満足しない、そんな気がするの」
春香「そんなの…どうなるかわかんないじゃん!」
千早「ええ、そうね。……春香、秋月律子と音無小鳥って名前に覚えはある?」
春香「秋月…律子……音…無…小鳥……」
春香「初めて聞いたはずなのに…ずっと知ってたような…」
千早「ここからは全て私の憶測よ。でも当たらずとも遠からず、って自信はあるわ」
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本当にちょっとだけで申し訳ない…。ラストまで書き溜めてきます。
乙
プロデューサーが脱落したから真相解明はどうなるかと思ったら、
千早が推理するのか
乙です
一ヶ月書き進め、気づきました。社長という存在を失念していたことに…orz
もう少し時間を下さい、なんでもしまむらm(_ _)m
すいません、生存報告です。
保守
まってる
あぶねえ
生存報告だけでもそろそろ頼む
ここまで来てエタるなんてどうかやめてくれ
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