オーク「オレの勝ちだな!」女騎士「くっ、殺せ!」(29)

山道を歩く二人組。

オーク「いやぁ~、ヒマだな。いつまで続くんだよ、この道は」

女騎士「まったくだな」

オーク「ジャンケンでもするか?」

女騎士「よかろう」

オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」

オーク「オレの勝ちだな!」

女騎士「くっ……!」

オーク「……」

女騎士「……」

オーク「やっぱり、ただジャンケンするだけじゃつまんねーな」

女騎士「ああ、早くどこか町なり村にたどり着きたいものだ」

20分後──

オーク「お、あんなところに屋台があるじゃねえか」

オーク「えぇ~と……クレープ屋みてえだな」

女騎士「ちょうどいい、寄っていこうではないか」

オーク「そうすっか!」

クレープの屋台に入る二人。

コソ泥「へい、らっしゃ──」

コソ泥(ゲ!?)

コソ泥「へ、へへへ……。ようこそいらっしゃいました、オークさん、女騎士さん」

オーク「お、コソ泥じゃねえか。たしか、昔どこかで会ったよな」

女騎士「今、一瞬イヤな顔をしなかったか?」

コソ泥「イヤだなぁ、そんなことありゃしませんよ。へへへ……」

クレープをほおばる二人。

女騎士「ふむ、なかなかの味だ」モグモグ…

オーク「やるじゃねえか」ガツガツ…

コソ泥「へ、へへへ……どうも……」

女騎士「味はよいが、キサマのような小物のことだ」

女騎士「どうせこの屋台も、まともな手段で始めたわけではないんだろう?」

コソ泥「ま、まったくその通りでさぁ……さすが女騎士さんは鋭いですねぇ!」

女騎士「相変わらずだな、まったく」

クレープをたらふく平らげた二人。

オーク「あ~、食った食った」

オーク「お代は? いくら払やいいんだ?」

コソ泥「なにをおっしゃる! お二人から代金を取るなんてしませんよ!」

コソ泥「魔物兵団で最強を誇っていたオークさんと」

コソ泥「騎士団のエースだった女騎士さんがフリーになってコンビを組んだってのは」

コソ泥「兵士や賞金稼ぎはもちろん、あっしらの世界でも有名ですからねぇ~」

女騎士「フリーになったといっても、正式に騎士の位を返上したわけではないから」

女騎士「今でも私は騎士で、オークも兵団の一員なのだがな」

コソ泥「こ、こいつぁとんだ失礼を!」ペシッ

オーク「じゃあ、またな」

女騎士「達者でな」

コソ泥「へへへ、毎度~!」

コソ泥「……」

コソ泥(ふぅ~、助かったぁ……)

女騎士「すっかり腹がふくれたな」

オーク「おう、満腹だ」ポンポン

女騎士「おかげで体力も回復したし、どこか村があればよいのだが……」

オーク「そうだな……久々に楽しみたいしな」

オーク「──と、ウワサをすりゃあ、あそこに小さな村があるぜ!」

オーク「あれなら、あと30分も歩けば着きそうだ!」

女騎士「よし……あそこに向かおう」

女騎士たちが向かおうとしている村では、事件が起こっていた。

強盗A「ボス、村人どもは全員ロープで縛り終わりました!」

ボス「よぉ~し、じゃあ金目のもんを根こそぎ奪うぞ!」

強盗A「へいっ!」

強盗B「ヒャッホー!」



村長「おのれ……強盗団め!」

村人「ちくしょう……! これじゃ手も足も出ない!」

少年「うぇぇ~ん!」

村娘「なんて人たちなの……!」

老婆「神よ……あやつらに天罰を……」

ボス「ま、そう睨むなって」

ボス「運がよけりゃあ、誰かが通りがかって、てめぇらを解放してくれんだろ」

ボス「もっとも、その頃にゃ俺たちはどこか遠くに行ってるだろうがな!」

強盗A「ギャハハハハハ!」

強盗B「ヒャハハハハハ!」



村長「くそう、なんということじゃ……!」

村長(こんな辺境を通りがかる兵士などおるわけないし……)

村長(もはや絶望的じゃ……! 全部奪われてしまう……!)

しばらくして、女騎士とオークが村にたどり着いた。

女騎士「なんだ……誰もいないのか?」

オーク「いや、そうでもないようだぜ」

オーク「向こうから、わずかに声が聞こえる」

女騎士「なにかあったのかもしれんな……行ってみるか」

村の隅っこに、縛られた村人たちと戦利品を品定めする強盗団の姿があった。

強盗A「こりゃ、なかなかいい宝石ですぜ! 売れば10万Gにはなる!」

強盗B「こっちもだ!」

強盗C「ド田舎の奴らは案外掘り出し物を持ってるって読みは、大当たりでしたね!」

ボス「おうよ!」



女騎士「……」

女騎士「どうやら、村人は全員強盗によって、ロープで縛られているようだ」

オーク「よ~し、ならオレたちでジャマな強盗を片付けちまうか!」

女騎士「ああ!」

ボス「よし、金目のものは全部積んだか?」

強盗A「へいっ!」

強盗B「バッチリです!」

村長「ううう……おのれ!」

ボス「水と食料だけは置いてってやるよ。へっへっへ、感謝するんだな」

ボス「よし、とっととずらかるぞ!」



オーク「おっと待ちな」ザッ…

女騎士「逃がすわけにはいかんな」ザッ…

強盗A「なんだァ!?」

強盗B「何者だ!?」

村長「おお……きゅ、救世主じゃ!」

村人「た、助けてくれえっ! こいつらを……やっつけてくれ!」

ボス「……なんだお前らは?」



オーク「こいつら、どうやらオレたちのことを何も知らないようだぜ」

女騎士「フッ、好都合ではないか」

ボス「かっこつけやがって……お前らなんか知るか! こいつらぶっ殺せぇっ!」

強盗A「へいっ!」

強盗B「こんな時に村に来るなんて、運が悪かったな!」

ウオォォォ……!



女騎士「さてと……やるか」チャキッ

オーク「おうよ!」ズウンッ

剣を構える女騎士、斧を構えるオーク。

女騎士「愚か者どもめ……我が剣を受けよ!」

シュパァッ! スパァッ! シュバッ!

「ぐわっ!」 「ひいっ!」 「ぎゃあっ!」

女騎士の剣で強盗が次々に斬り倒される。



オーク「さぁて、大暴れしてやるぜぇ!」

ズガァッ! ドゴォッ! バゴォッ!

「ぎゃっ!?」 「ぐはっ!」 「ぐげっ!」

オークの斧で強盗が次々になぎ倒される。



強盗団はあっという間にボス一人となった。

ボス「バッ、バカな……なんて強さだ!」

ボス「!」ハッ

ボス「まさかお前ら……。女騎士とオーク……!?」

女騎士「今頃気づいても遅い」ダッ

オーク「終わりだぜっ!」ダッ

ザンッ! ズガァンッ!

女騎士がボスの首をはね、オークが残る胴体を砕く。



あざやかな完全勝利であった。

村人「やったぁ!」

少年「女の騎士さん、オークさん、ありがとう!」

村娘「強盗団をみんな倒してくれるなんて……!」

老婆「おお、天罰が下されたのじゃ……!」



村長「お二人とも……本当にありがとうございました!」

村長「おかげで村は何も奪われずに済みました……!」

オーク「ん、なんだこいつら? 妙なこといいやがるな」

女騎士「おいおい、自分でいっていただろうが。彼らは我々のことを知らん、と」

オーク「おお、そういやそうだったな! こりゃラッキーだ!」

村長「ところで……ロープをほどいてくれるとありがたいのですが」

オーク「ロープをほどくだとォ?」

オーク「ガハハハッ、なんでそんなことしなきゃならねぇんだよ! なぁ?」

女騎士「ああ、動けないのならちょうどいい」

女騎士「最近は、近づくだけで逃げられることが多くなっていたからな」

村長「へ……?」

オーク「んじゃ、ジャンケンするか!」

女騎士「よかろう」

オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」

オーク「オレの勝ちだな!」

女騎士「くっ、殺せ!」

オーク「へっへっへ、ど、い、つ、に、し、よ、う、か、な」

オーク「決めた! よぉ~し、一匹目は素手でやるか!」

村長「え」

グシャンッ!

オークの拳が村長の頭を頭蓋骨ごと砕いた。

オーク「うひょ~! やっぱジジイのドタマはやわらかくていいぜェ!」グチャッ…

女騎士「くっ……私もあの老人を狙っていたのに! 先に取られたか!」

オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」

女騎士「フッ……今度は私の勝ちだな」

オーク「ちくしょう……! さぁ、好きな奴を斬れよ!」

女騎士「では私は……キサマだ!」

村人「あ、あの」

シュパァッ! ゴロン……

女騎士の一閃で、村人の生首がごろりと転がった。

女騎士「やはりたまらんな……頚骨を切断するこの感触!」

オーク「ちいっ、なかなかよさそうな奴を選びやがって!」

オーク「だけど、次は負けねえぞぉ!」

女騎士「ロープで縛られているから、逃げられる心配もなくじっくりと楽しめるな」



村娘「あ、あ、あ……」ガタガタ…

村娘「いやっ、いやぁぁぁっ! だれか助けてぇっ! だれかぁぁぁっ!」

少年「うえぇぇ~~~~~ん!」

老婆「お助けを……! どうかお慈悲を……!」

ようやく事態の異常さに気づいた村民が泣き叫ぶが、

二人のジャンケンを止める効果はなかった。



オーク「ジャーンケーン」

女騎士「ぽんっ!」

──
────

────────

どこかの田舎町の酒場で、コソ泥が新聞を眺めていた。

コソ泥「……」バサッ…

コソ泥「最悪の殺人鬼コンビ、強盗団と村人30人余りを全員殺害、か……」

コソ泥(ま、奴らが起こした事件にしちゃ、まだ犠牲者が少ない方だわな)

コソ泥(なにせ、殺戮の魅力にとりつかれて、騎士団と魔物兵団を抜けたような奴らだ)

コソ泥(抜ける時もかなりの数を殺したって聞いてるし……)

コソ泥(とはいえこれでまた、奴らにかかった賞金額が上がることになるんだろう)

コソ泥(もっとも、あいつらを狩れる奴なんざいやしねえんだがよ)

コソ泥(どんな兵士や賞金稼ぎも、あの二人にとっちゃオモチャに過ぎないんだからな)

コソ泥「あん時、あっしだって殺されておかしくなかった……ついてたぜ」バサッ…





おわり

終わっちゃうのか、残念

こえーよ乙

このオチは予想できなかったわ。

素晴らし

くっ殺せの台詞から他人を殺させるパターンは新しいな

この発想はなかったわ

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