「俺、勇者やめるよ」「ひもになんの?」(194)

「この扉の向こうに、魔王が…………」

彼は深呼吸で息を整え、扉に手をかけた。

「…よし、いくぞ!」

勢いよく扉を開け、突入する。

「覚悟しろ魔王!!勇者、ゼロが相手…」

「うるせえ!!!!3週間ぶりの一家団欒なんだ!!後にしろ!!!!!!!」

勇者「」

「おじいちゃんうるさい!お耳痛いよ!」

「ごめんね、大丈夫?」

「うん。それより、続き、しようよ」

「いやいや、一応来客みたいだし俺の誕生会後回しでも…」

「いいの!お前こういうきっかけでもないと孫連れてこないし、向こうは明日でも応対できるからさ」

「じゃあもう一回!せーの!」

「「ハッピバースデーディアお父さん、ハッピバースデートゥユー、おめでとう!」」

「お、おう…ありがとう…と、勇者さんでしたっけ?すんませんね歓迎できず」

勇者「いえ…こちらこそお騒がせしました……また後日伺います…」

翌日

勇者「気を取り直して、覚悟しろ魔王!!」

「お前さ、来るならアポとってから来いよ社会人の常識だぞ?」

勇者「魔王が常識を語るな!!」

「そもそも俺は魔王って名乗ったこともないし、そういう役職でもない」

勇者「なら、何者なんだ!?」

「この国の初代国王、デルタ」

国王「お前と同様、隣国の生まれの人間だ」

勇者「お前が…人間…?……俺と同じ国の…?」

国王「そうだ」

勇者「そんな馬鹿な!!人間を襲う魔物の国の王が、人間であってたまるか!!」

国王「事実なんだけどな」

勇者「仮にそうだとしても、今まで魔物に殺された人たちの仇には変わりない!!!」

剣に手をかけ、抜刀しつつ斬りかかる。

勇者「みんなの恨み、その身でつぐ…うあっ!」

国王「お前弱いね」

勇者「そんな………王様にもらった剣が…聖剣エクスカリバーが……」

国王「還暦近い爺にあっさり剣折られるとか、だっせえな!」

勇者「…くそっ……ちくしょう…」

国王「啖呵きっといて瞬殺されて、今どんな気分?ねえどんな気分!?」

勇者「うるせえこのくそじじい!!!!!!」

勇者「…俺の負けだ……殺せ…」

国王「くそじじいの無駄知識!それ、”聖剣”エクスカリバーじゃありません!」

勇者「嘘だ!伝説の刀匠が鍛えた業物だって、王様も言ってたんだぞ!?」

国王「そこは嘘じゃない。正確には、聖剣”だった”ものだ」

勇者「だった?どういう意味だ」

国王「あのおっさんな、本来こうして武器を破壊して、戦意を折るための剣をそう呼んでたんだ」

国王「誰も傷つけず、一滴の血も吸わない、しかし争いを終わらせる」

国王「逆に血を吸った剣はすべて魔剣だと言ってたよ」

国王「笑っちまうような理想論だが、本気でそう思ってんだから笑えない」

国王「実際は送り出した”聖剣”がことごとく”魔剣”になってったんだがな」

勇者「……………………………」

国王「…そんな状況に絶望してうちに亡命してきたおっさんが、最後に作った”聖剣”がこれ」

太陽に照らされ”聖剣”は輝いていた。

”魔剣”は床でくすんでいた。

国王「こいつは”魔剣”にできねえからさ、死ぬのは諦めな」

国王「……色々あって疲れたろ。今日は帰って休め」

勇者「…ここまで1カ月近くかかったから…すぐには…」

国王「馬鹿たれ、城下の宿屋だよ、と、おい!ニヤニヤドラゴン!いるか?」

「はい!ただ今!」

勇者「なっ!ドラゴンだと!?」

国王「うちの軍の元帥な」

龍元帥「賊の処分ですか?それならば親衛隊長を連れてきましょう!」

国王「違う違う!つか連れて来んな、こいつを近場の宿まで送ってほしいんだ」

龍元帥「承りました!確かに、それならあいつは連れて来ない方がいいですねww見境ないからwwww」

勇者「えっ?」

国王「はよいけ」

龍元帥「はっ!それでは失礼します!客人、それでは参ろうか」

勇者「え?え?」

城下町

龍元帥「で?お前誰?」

勇者「え?そっちが素なのか?」

龍元帥「とっとと答えろよ青二才」

勇者「あおっ!?見てたのか!?」

龍元帥「折れた剣が転がってりゃ察しはつくさ、で?」

勇者「あ、ああ、俺はゼロ。魔王討伐の命を受けた、神聖>>国の勇者だ」

龍元帥「ああね、また馬鹿兄貴の国の刺客ね」

勇者「しか…いや、お前うちの国に兄弟いるのか?」

龍元帥「俺のじゃねえよ。陛下の」

勇者「は?陛下って…え?」

龍元帥「うちの国王だよ、国王デルタ。本名デルタ・>>」

勇者「うそぉ!!?うちの王様兄弟いないって習ったぞ!!!?」

龍元帥「そっちに都合がわりいから、いなかったことにされてんだよ」

勇者「都合悪い!?一体どういう…!」

龍元帥「着いた」

勇者「え?ずいぶん豪華な…じゃなくて!!」

龍元帥「じゃあな、二度と来んなよ」

勇者「ちょっ!!」

元帥は飛び去った。

翌日

国王「アポ取れっつったんだが」

勇者「取ったらこうなった」

国王「何が悲しくて野郎二人で昼飯食わなきゃいけないんだよ」

勇者「こっちが聞きたい、と、他に聞きたいことがあったんだ」

国王「手短に」

勇者「あんた、うちの王様の弟って本当か?」

国王「本当だ」

勇者「じゃあなんで兄弟で争ってるんだ?」

国王「押しつけられた荒れ地を豊かにしたら妬まれた」

勇者「うちの王様が原因だと?」

国王「さあ、どっちもどっちなんだろ、多分」

勇者「煮え切らないな」

国王「あと、政策の、いや、考え方の違いかな」

国王「兄貴は魔物を粛清対象にした。俺は国民として受け入れた」

勇者「その国民から人間が殺されてるんだが」

国王「全員が賛成したわけじゃないからな、人も、魔物も」

国王「人間嫌いの魔物も、魔物嫌いの人間も、それぞれ自治区で暮らしてる」

国王「当然過激派もいるから衝突はあるさ」

勇者「ふざけるな」

勇者「そのせいでどれだけの人が死んだと思って…!」

国王「過激派の犠牲者はわずかだ」

勇者「でたらめなことを…!!」

国王「大半は国境を侵した奴らだ」

勇者「何!?」

国王「戦争の時もあれば平時もある」

国王「ここは我が国の領土だの、魔物から大地を奪い返すだの、勝手なこと言って入ってくるんだ」

国王「狂信的な集団だと、血を見るまで略奪を働くからな」

勇者「それでも、殺すなんて…!」

国王「魔物に攻め込まれたとき、お前、どう思った?何をした?」

勇者「………………」

国王「冷静でいられない時もあるんだよ、お互いにな……」

勇者「……」

国王「…ごちそうさま」

国王「これからどうする?」

勇者「…俺は…」

国王「…時間があるならこの辺散策するのもいいんじゃないか?」

国王「首都だからな、ちょっとした観光はできるぜ?おい、ニヤニヤドラゴン!」

龍元帥「はっ!御用でしょうか!」

国王「お前、今日は午後非番だろ?勇者が食べ終わったら城下町案内してやってくれ」

勇者「なっ!」

龍元帥「御冗談をwwwwwww」

国王「マジ。本気と書いてマジ」

勇者「…何を考えている?」

龍元帥「客人、口が過ぎるぞ」

国王「目的はどうあれ、せっかく外国に来たんだ。文化交流くらいしてもばちは当らんだろ」

龍元帥「私の休暇は……いや、仮にも刺客ですぞ!!?」

国王「お前は明日丸一日有給、プラス特別手当つき」

国王「刺客だろうと来訪者は来訪者」

龍元帥「しかし私ははんた…!!」

国王「そして俺雇用主、お前部下」

龍元帥「」

国王「俺は会議行ってくるからよろしく」

龍元帥「…行ってらっしゃいませ…」

勇者「……ごちそうさま…」

龍元帥「来んなっつったんだがな」

勇者「誰かさんが気になる情報残していなくなったからな」

龍元帥「生意気な…で?何が見たい?」

勇者「結局散策するのか」

龍元帥「あの世への片道ツアーでもいいんだぜ?」

勇者「やれるもんならやってみろ…これでも国では屈指の実力者だ!!」

龍元帥「威勢だけはいいなあ、ほれ、かかってこい」

勇者「奴には負けたが、それ以外には…くらえ!」

勇者「何だ?よけてばかりか?」

勇者(くそ、当らない!)

龍元帥「遅い遅い、ハエが止まるぜ…」

勇者「言ってろ!」

龍元帥「パンチってのはな、こうやるんだよ」

勇者「がっ!?」

龍元帥「俺は陛下より遥かに強いんだぜ?伊達に元帥やってねえんだよ!」

龍元帥「おい、聞いてんのか?おい!青二才!勇者!おい!」

勇者「」

龍元帥「これやばくね?」

城下町の一施設

龍元帥「ここが我が国一の病院だ!瀕死の重傷から疫病まで、何でも治ると評判だぜ!?」

「反省せよニヤニヤドラゴン」

龍元帥「院長…いきなりそれはきついです…」

勇者「俺の存在意義って…」

院長「軽い脳震盪ですからもう少し寝ていてください」

勇者「ありがとうございます…お気遣いなく…」

院長「あなたは加減というものを覚えてください」

龍元帥「面目ない」

勇者「お前、院長には頭が上がらないんだな」

龍元帥「うるせえな」

院長「立場上そうならざるをえないんですよ」

勇者「立場?」

龍元帥「院長、内密に…」

院長「軍医の多くはこの院から調達されるんです」

院長「また、彼が…」

龍元帥「あー!あー!何も聞こえな…!」

院長「病室ではお静かに!」

龍元帥「」

院長「彼が加減を誤り怪我させた者は概ね、私が看病しています」

勇者「なるほど…」

院長「元帥として、軍医の供給を断たれないため」

院長「失態の火消し役を失わないため」

院長「彼は私の機嫌を伺わざるを得ないんです」

院長「利用するつもりはありませんが」

龍元帥「…内密にって言ったのに……」

院長「あなたのおかげで軍部の医療費がかさんでいますからね」

院長「そろそろまじめに反省していただかないと」

院長「さすがにごまかしきれませんよ」

龍元帥「分かってはいるんですけどね、なかなか難しいものです」

龍元帥「それでは失礼します。勇者、俺は下で待ってるからな」

勇者「…回復したら行くよ」

院長「勇者?あなた来訪者まで怪我させたんですか?」

龍元帥「いやいや、刺客ですよ刺客」

院長「処刑も強制労働もない以上、陛下が来訪者と認定したということでしょう、今回も」

勇者「も?今まで何度かあったことなんですか?」

龍元帥「ああそうだ。その関連のもこれから見せてやるからよ、ゆっくり休め」

龍元帥「じゃあな」

勇者「あ、おいま…もう行ったか」

院長「陛下と直接会った勇者だけでも15人はいたと思います」

勇者「そんなに?」

院長「あなたはその中でもずいぶん若いようですが、おいくつですか」

勇者「17です。今年で18」

院長「青春まっただ中の時期に戦場に駆り出されているわけですか」

勇者「魔王を倒すという目的があったのでそんなことは考えてませんでした」

院長「普通なら彼女の一人や二人作って脱童貞していたでしょうに」

勇者「どうっ!?いや、というか女性がそんな言葉を使うべきでは…」

院長「冗談ですよ」

勇者「え?」

院長「むち打ちなどの後遺症は見られないので、あとは少し休めば大丈夫でしょう」

勇者「そうですか…」

院長「はい。それではお休みなさい」

城下町 病院前

勇者「本当に待っててくれたんだな」

龍元帥「まあ、陛下からの依頼はお前を案内することだからな」

勇者「そういえば、今までの勇者関連の名所でもあるような口ぶりだったな」

勇者「どんな所なんだ?」

龍元帥「この町では勇者絡みは1か所だけだがな」

龍元帥「討論会場、といったところか。さ、ついてこい」

勇者「ああ」

裁判所前

勇者「外まで声が聞こえてくるな」

龍元帥「また激しくやってんな、よし、入るぞ」

裁判所

「この医療費額は異常だ!過去の訓練をさかのぼっても…!」

「訓練は苛烈さを増している以上仕方がない!」

「それだけでは説明がつかない額だからこそ…!」

勇者「これはいったい…」

龍元帥「財務担当者と外部監査団体との討論」

龍元帥「毎年政府の支出額が確定するたび、その内容の是非を巡って討論するんだ」

勇者「なるほど。ところでさっきの議題はお前のかわいがりの件じゃないか?」

龍元帥「すーすすー」

勇者「口笛吹けてないぞ」

勇者「しかしいいのか?部外者の俺が傍聴して」

龍元帥「ああ。元々見せるための討論だからな」

龍元帥「一応政府支出の内訳は一般にも公開されてるんだが」

龍元帥「素人が見てもそれが妥当なものかわからないからな」

勇者「それを、監査機関が調べる、か」

龍元帥「そう。そしてそれを元に無駄遣いの有無を討論しながら、一般に伝えるってわけだ」

勇者「うちの国とはずいぶん違うな」

勇者「内訳自体がまず一般には公開されないし」

勇者「監査機関も内部だった気がするし」

勇者「討論とか考えもしなかったな」

龍元帥「討論は割と最近始めたんだがな」

勇者「え?」

龍元帥「お前の2代前の勇者がやろうっつって始めたんだ」

龍元帥「10年くらい前にな」

勇者「俺の前の勇者!?魔王に倒され殉職したはず…!!」

「君!!討論中は静かにしたまえ!!!」

龍元帥「大声出すと退場くらうぞ?」

勇者「すいません」

龍元帥「それと、勝手に殺すな」

龍元帥「さっきお前に注意したのが2代前の勇者だよ」

勇者「うそだろ…いや、何となくわかった」

龍元帥「まあ、勇者が魔物の国で暮らしてるとか、公表できんわな」

「この接待費並びに会議費用の内訳は…!」

「外部へ赴いての会議が31回、接待が…」

「その多くの開催地が件の料亭だが、他にも安価な店はあるはずだ!」

「機密性を考えればそこ以外は不適当と言わざるを得ない!」

勇者「疑問は尽きないけど、今は討論を見ておく」

龍元帥「おう」

裁判所前

龍元帥「今年も白熱してたな」

勇者「なあ、さっきの人に会えないかな?」

龍元帥「元勇者?今日は無理だろ、反省会とか打ち上げとかあるだろうし」

勇者「そうか…残念だな……」

龍元帥「…もう夕方だし飯食いに行くか」

龍元帥「ついてこい」

勇者「おい、待てよ」

レストラン前

勇者「また豪華な…」

龍元帥「討論で話題にしてた料亭だから、そりゃ豪華だろうな」

勇者「ここが!?」

龍元帥「おおよ!まあ俺らが座るのは一般席だがな」

勇者「!?」

レストラン

龍元帥「さあて何食おうかな」

勇者「なあ」

龍元帥「ん?もう注文決まったのか?」

勇者「いやまだ…それより、あの物々しい扉は何だ?」

龍元帥「vipルームがどうかしたか?」

勇者「あれが!?いやおかしいだろ、でかいし警備いるしそれに…」

龍元帥「ごちゃごちゃうるせえな、さっさと注文決めろよ」

勇者「それどころじゃ…」

龍元帥「あ、店員さん、俺はこれとこれとこれで」

「かしこましました。お連れさまは何になさいますか?」

勇者「え?あ、ああ、じゃあ……」

龍元帥「で、なんだっけ?」

勇者「vipルームが物々しいって話」

勇者「あり得ないレベルだろあれは」

龍元帥「機密事項のやり取りにも使われるくらいだからな、色々対策してんだ」

龍元帥「ためしにそこの壁に耳くっつけてみろよ」

勇者「……物音一つしないが…」

龍元帥「実際はあの討論ばりに大音量で会議してんだぜ?」

龍元帥「大した防音技術だろ」

勇者「ああ、納得した」

勇者「これは確かにすごい」

勇者「監査団体から追及されても店を変えないわけだ」

龍元帥「だろ?立地もいいしな」

龍元帥「まあその分値が張るんだがな、自腹じゃ年に3回来れるかどうかってくらい」

勇者「…元帥の給料って安いのか?」

龍元帥「言うな……普通に生活する分にはもて余すぜ…豪遊できねえだけでな」

「お待たせしました、豚の丸焼です」

龍元帥「はいそれ頼んだの俺っす」

「こちらは鶏の丸焼です」

勇者「…本当にあるんですね…」

「残りのお料理もでき次第お持ちします」

勇者「はい、どうも…」

龍元帥「頂きます」

勇者「頂きます…値段確認せずに頼んだが大丈夫かな」

龍元帥「大丈夫だろ、vipルーム以外は庶民的な居酒屋なんだからさ」

勇者「どこの居酒屋にこんな豪快なメニューがあるんだか…」

龍元帥「ここだろ、と、また来たぜ」

「お待たせしました、季節の野菜サラダ、100貫盛りと、生ビール1樽です」

龍元帥「両方とも俺っす」

勇者「」

「こちらはミネラルウォーターと、炊き込みご飯です」

龍元帥「それはそいつに」

龍元帥「そういやお前未成年だったな、でも別にいいんだぜ?」

龍元帥「ここでちょっとくらい飲んだって…」

勇者「ここ絶対庶民的な居酒屋じゃないだろ!!!」

城下町

龍元帥「食いすぎた…」

勇者「そうだろうな…」

龍元帥「訓練ある時はもっと食っても平気なのに…」

勇者「とんでもないな…」

勇者「もう夜だな、今日はもう解散か?」

龍元帥「そうだな……ん?いや、まだだ」

龍元帥「次で最後だ。ついてこい」

勇者「え?ええ?」

とある施設

勇者「おい、なんだこの怪しい建物は」

龍元帥「風俗店だが?」

勇者「」

龍元帥「来いよ、受付行くから」

勇者「おいふざけるな!何考えて…!」

龍元帥「男は度胸だ!なんでも一度は経験しとくもんだぜ?」

龍元帥「俺の奢りだしな」

勇者「それは安心…いやそういう問題じゃ…」

「いらっしゃ…あ、元帥じゃないですか」

龍元帥「おう、早速で悪いが指名いいか?」

「本来一見の方の指名はだめなんですが、特別ですよ」

龍元帥「それじゃ、今日入ってる例のやつで」

「まさか自分から会いにいくとは…構いませんけどどんな心境の変化ですか?」

龍元帥「いや、俺じゃなく、後ろのこいつと会わせようかと」

勇者「え?俺!?」

「失礼ですが、どんな人ですか?元帥の知り合いと言えども、素性の知れない方は…」

勇者「…神聖>>35国の勇者、ゼロです」

龍元帥「そういうこと、当代勇者だ」

「あ、そうですか。でしたら大丈夫です、それではお通ししますね」

勇者「!!?」

龍元帥「じゃあな、楽しんでこいよ」

「こちらのお部屋でお待ちください」

勇者「待ってくれ!色々待ってくれ…!」

龍元帥「何だ?ああ、そうか」

勇者「あのさ…」

龍元帥「今日はここで解散だ。お疲れ!」

勇者「」

部屋番号103

勇者(なんで勇者って名乗って通されるんだよ!国王への刺客って扱いのはずだろ!?)

勇者「ん?誰か入って……え…?」

「ご指名ありがとうございます…あら?」

勇者「院長?何やってんですかこんなところで!」

院長「ナニのお手伝いですが、何か?」

勇者「」

院長「では時間も無いので早速始めますか」

勇者「始めませんよ!」

勇者「どんだけ時間すくな…いや、医療関係者が働いてていいと思ってるんですかここで!」

院長「30分ですから」

勇者「予想以上に少ない!?」

院長「こちらでの勤務の前後に性病検査を行ってますから問題もありません」

院長「無論、すべて陰性です」

勇者「だとしても患者の気分とか心象としては・・・」

院長「この国の風俗店利用者の過半数は既に知っていますよ」

勇者「超絶オープン!?」

院長「元々、親しい者には性癖まで隠さないお国柄ですし」

勇者「くっ、だとしてもあなた自身はそれでいいんですか!?」

勇者「恥ずかしくないんですか!?」

院長「いえ、まったく」

院長「私、淫魔ですから」

勇者「!?」

院長「信じられませんか?」

院長「ああ、まだ人間体でしたね」

院長「では…よっと……これでどうですか?」

勇者「は…羽…角…し、尻尾…」

淫魔院長「正真正銘、淫魔です。もしや、人間だと思ってましたか?」

勇者「」

魔院長「さて、淫魔だと分かったところで始めますか」

勇者「始めませんよ…」

淫魔院長「もう5分経ってるんですよ?あなた何しにここに来たんですか、もったいない」

勇者「あいつに無理やり連れ込まれたんですよ!!」

淫魔院長「あいつ?ああ、元帥ですか」

勇者「帰ります、知人と風俗店で遭遇するとは思いませんでしたし」

淫魔院長「それは困ります」

勇者「そこどいてください」

淫魔院長「指名されたのに途中で帰られたら、私の名に傷がつきます」

勇者「俺には関係…」

淫魔院長「ありますよ」

淫魔院長「風俗ネットワークで、指名しながら途中退席したならず者として、あなたの名が知れ渡ることになります」

勇者「そんな無茶な…」

淫魔院長「行為が嫌ならせめて…お話しませんか?残り20分少々」

勇者「ま、まあそれなら…」

淫魔院長「よかった、それでは…」

勇者「その前に…人間体に戻ってくれませんか?」

淫魔院長「ん?ああ、童貞には刺激が強すぎますかね」

勇者「」

院長「では改めて、お話しましょうか」

院長「さて、何から話しましょうか」

勇者「あの、院長は淫魔なんですよね?」

院長「見ての通り」

勇者「ならなんで院長を、医者をやってるんですか?」

院長「自身の知識を生かせるから、ですかね」

院長「淫魔ですから、方向性は偏るものの、人体に精通しているわけです」

院長「人体構造を理解していて役立つのは、医療か武道と考えました」

勇者「医者か軍人かで、医者を取った、と…」

院長「壊すより治す方が感謝されますからね」

院長「始めは軍医から、その後独立し開業して、ここまできました」

院長「あなたこそなぜ勇者に?」

勇者「偶然です」

勇者「俺の親父が兵士で、俺も兵士目指して小さい頃から剣を振っていて」

勇者「そんなある日、王様に呼び出されて、『お前は勇者の素質がある』とか言われて」

勇者「招かれるまま、王宮で3年ほど訓練を受けて、今に至る、ってところです」

院長「…あなたは本当に勇者になりたかったんですか?」

勇者「……正直迷ってます」

勇者「勇者といえば人類の希望…そんな大役俺に果たせるようなものかなって」

勇者「兵士を目指してたのも、みんなを助けたいからじゃない、親父と一緒に働きたかっただけだから…」

勇者「院長はどうなんですか?医者でよかったと思いますか?」

院長「私も迷ってます」

院長「救った命以上に、目の前で散った命が多いので…軍医時代ですけど」

院長「でも、私がいなければ散る命をひとつでも救えるのなら、意味はあるから」

院長「やめる気はありませんね」

勇者「…………」

院長「…喉が渇きましたね、オレンジジュースで良いですか?」

勇者「え?ああ、はい…」

院長「それでは持ってきます」

勇者(俺は何をやってるんだ…何がしたいんだ…俺は…)

城下町

勇者(今日一日で色々あったな…)

勇者「あの宿は今朝引き払ったから他を探さないとな」

翌日

城内

勇者「え?いない?」

「昨日から、定例の地方視察が始まりましたから」

勇者「そうですか…」

「今回は2ヶ所のみなので、明日の夜には戻ってくると思います」

勇者「ご丁寧にありがとうございます」

「いえ、何かありましたら、またお申し付けください」

城下町

勇者(なんだかんだ言っても国王だからな、そりゃ忙しいはずだ)

勇者(あいつも今日は有給でいないし、暇だな)

勇者「ん?あの人は確か…」

勇者「すみません、ちょっといいですか?」

「はい?」

勇者「あの、確か以前勇者だった方ですよね?」

「え?ああ、そうだけど、君は…」

勇者「俺は、神聖>>46国から来ました、勇者ゼロです」

その安価みたいなのなんだ?
安価で名前決めたいならそう言え
わからんぞ

元勇者「そうか。あ、そういえば昨日は討論見に来てくれてありがとう」

勇者「こちらこそ、勉強になりました、と、もしお時間宜しければお話したいことが…」

元勇者「わりいな、これから仕事だから、まあ、手伝ってくれるんなら合間に話せるが…」

勇者「是非、お手伝いさせて下さい!」

財政監査機関

元勇者「いやあ、悪いね、いきなり仕事頼んで」

勇者「いえ、こちらからお願いしたわけですから」

「おはようございます、部長、資料整理、頼みましたよ」

元勇者「おうよ、お前も実地調査がんばれよ」

「はい、失礼します」

勇者「あの、部長って?」

元勇者「俺、討論やる部署のトップなんだわ」

部長「監査室、財政弾劾部部長、モーガン」

部長「改めて宜しくな、後輩」

資料室

勇者「あの、この散乱した紙はいったい…」

部長「会議や討論の議事録、予備資料や反省会での改善案、調査報告書も入ってるかな?」

部長「この山を項目ごとに時系列で並べるんだが…」

部長「項目を瞬時に判断できるのが俺くらいだからな」

勇者「それであなたに任された、と…」

部長「まあな、じゃ、俺が項目言って渡すから、お前はそれぞれ時系列順に並べてくれ」

勇者「その前に、足場確保しましょうか…」

部長「お、おお、わりいな…」

勇者「やはりあなたも国王に会ったんですね」

部長「まあな、で、剣を折られるとこまでお前と同じでな、ほい改善案」

勇者「はい、ここの一番上に、と…それが何で監査団体に?」

部長「聞いて驚け、俺はまだやつを倒すつもりだぜ?これ調査報告書」

勇者「はい、この列に、と…監査とどんな関係が?」

部長「奴の財政の真っ黒な部分を公表すれば、国民から信頼を失い王を追われる、はいよ議事録」

勇者「はい、あの、会議か討論かどっちのですか?」

部長「会議、ほらここにな…そうすりゃ倒したも同然だろ、予備資料」

勇者「なるほど、と、直接倒すのは諦めたんですね」

部長「本人以上に取り巻きがやべえからな、調査報告書」

勇者「はい、まあ元帥には驚きましたね」

部長「お前はもっと大変だぜ?議事録」

勇者「はい、と、なんでですか?」

部長「去年すごいのが親衛隊長になったって話だからな、改善案」

勇者「はい、で、どんなやつですか?」

部長「なんでもタイマンじゃあのニヤニヤドラゴンがやられるって話だ、議事録」

勇者「はい、あ、昨日の、と…何それ怖い」

部長「しかし調査のやつの話ではそんなごつい新顔はいないらしい、予備資料」

勇者「はい、しかし何者なんでしょうね」

翌日

部長「いや、本当申し訳ない、まさか徹夜になるとは」

勇者?「ははは…その分いろんなお話しを聞けたのでマンゾクデス…」

部長「人件費ケチらないで資料室担当部署作らんと身がもたんな…」

勇者らしき物体「ソウデスネ…」

部長「これ、この二日分の給料な」

勇者「え?いいんですか?」

部長「むしろ受け取ってくれないと困る」

部長「無償奉仕させたりしたら法令違反で潰されちまう」

勇者「ではありがたく…」

部長「またな、資料室担当のいすは空けておくぜ」

勇者を名乗る何か「埋メトイテクダサイ、ソノイス…サyoナラ」

安価は半角の>←これ
できなきゃ >> ←コレをコピーして使いな

正直、国名なんて深夜vip王国とかでいいと思うけど好きにしたらいい
俺はもうromる
支援

レストラン

勇者「これとこれとこれ下さい」

「かしこまりました」

勇者(早めの夕飯食ったら速攻寝よう、死にそうだ…)

翌日

城内

国王「また来たのか、童貞」

龍元帥「3日ぶりですな、童貞」

勇者「院長か?院長がばらしたんだな?」

龍元帥「全く…人の金で風俗行ったのに、やらないなんてもったいない」

勇者「お前という奴は…そういや地方視察行ったって話だがどうだった?」

国王「西の方の開拓村が予想以上に…」

「失礼します」

国王「リ、リサ?いきなりどうした?」

「陛下に急な来客があったと伺ったので」

国王「あ、ああ、そういうこと…」

勇者「な、なあ、何あの可愛い娘?」ヒソヒソ

龍元帥「今回の地方視察で護衛やったやつだよ」ヒソヒソ

護衛「ニヤドラ、そこのイケメンがその来客?」

龍元帥「おう、そうだ、お前も挨拶しとけ、な?」

護衛「何焦ってんの?まあいいけど」

護衛「王室親衛隊所属、リサです。よろしくね」

勇者「こちらこそよろしく!お、俺は…」

国王「あ、馬鹿待て…!」

勇者「神聖深夜vip国の勇者、ゼロです!」

護衛「勇者?」

国王「あばばば…」

護衛「勇者…陛下の平穏を乱す外敵…粛清対象…」

勇者「ど、どうしたの…?」

龍元帥「前に話した、見境ない親衛隊長ってのはこいつなんだよ」ヒソヒソ

親衛隊長「ミンチ決定ネ!」

勇者「!?いっ!?」

勇者の右二の腕に小さな切り傷がついていた。

勇者の悲鳴に続いて獲物が落ちる音が響いた。

勇者「く、鎖鎌!?」

親衛隊長「邪魔するな!ニヤドラ!」

龍元帥「ミンチはだめだ!まずは話を聞け!」

親衛隊長「分かった、訂正する」

龍元帥「よし、あのな…」

親衛隊長「塵も残らないカモ知レnai」

龍元帥「分かってねえだろ!!」

親衛隊長「ドケ!ニヤドラァァァア!!」

国王「勇者、こっち来い、逃げるぞ」ヒソヒソ

勇者「」パクパク

国王「まあ、おっかねえわな、見慣れた俺でもそうだ」

国王「普段はこうじゃないんだが、俺に危険が及んだと見るとこれだ」

国王「この城ではリサが最強だから、止めるのも一苦労でな」

勇者「女の子怖い…」

国王「…ほとぼりが冷めるまで、お前は来ない方がいいかもな」


龍元帥「ぐあ!陛下!!そっち行きました!気をつけて!!」

勇者「うわああぁぁ!!」

親衛隊長「陛下どいて!そいつ殺セnai」

国王「いやだめだから殺しちゃ。ね?いい子だから言うこと聞い…」

親衛隊長は横に飛び勇者めがけ鎖鎌を投じた。

国王は咄嗟に間に入り剣で受けた。

国王「ぐあっ!」

衝撃を受け尻餅をつく。

龍元帥「陛下!てめえ……頭冷やせメンヘラが!!!」

親衛隊長「キャアアア!」

国王「ああ怖かった…生きた心地しねえよまったく」

勇者「どうなったんですか?あの娘」

龍元帥「軽度の凍傷だとよ!本当に人間かよあいつ」

勇者「人間なんだ、あれで…というかお前、冷気を吐くんだな」

龍元帥「炎も吐くぜ」

龍元帥「炎と氷を操る天空の覇者、エイトウィングドラゴン様だぜ」

国王「ニヤニヤドラゴンじゃなかったっけ?」

龍元帥「それあだ名!陛下の補佐がつけたあだ名ですよ!?」

勇者「ところで、リサさん?がこの国で最強なのか?」

龍元帥「いや、王室配下、ってか、この城ではな」

国王「正確には、1対1で正面からやりあった場合の話だがな」

勇者「どういうことだ?」

龍元帥「そりゃ道中話すさ」

勇者「道中?」

国王「俺らも医者行かねえといけないだろ」

病院

院長「またあなたですか」

龍元帥「今回はあの女が悪い」

院長「しかしずいぶんやられたものですね」

龍元帥「俺より陛下を先に診て下さい」

院長「軽い打ち身のようなのであなたが先です」

勇者「医者ってやっぱりここか」

国王「我が国最高の医療機関だからな」

院長「お褒めに与り光栄です」

国王「元帥は?」

院長「部下に命じて手術室に運ばせました、副院長が執刀しているところでしょう」

勇者「そんな重傷なんですか?」

院長「ただの縫合です。陛下を先に診ろとうるさいので希望に添ったらこんなことに」

国王「軽い打ち身なんだよな?」

院長「そのようです、ので、患部に薬を塗って終わりです」

院長「勇者さん、あなたもただの切り傷のようなので、同様です」

勇者「はい」


国王「治療も済んだし、本題と行くか」

勇者「本題?」

国王「誤解を解きに行くんだよ」

病室

国王「大丈夫か?」

親衛隊長「陛下!先ほどは大変申し訳ありませんでした!いかなる処罰も受ける所存…!!」

国王「声でかい、怒られるだろ」

親衛隊長「失礼しました」

国王「まあ、俺を守ろうとしてやったことだし、処罰はしない」

国王「ただ、謝罪はしてもらう」

親衛隊長「この度は大変…」

国王「俺じゃなく、あの勇者に」

親衛隊長「あの男はあなたを…」

国王「まずは聞け」

国王「確かに最初は命を狙ってきた」

国王「だがその後、文化交流として城下を見せたらこの国に興味を持ったみたいでな」

国王「今は観光客として扱ってるんだ」

親衛隊長「私がいない間にそんなことが…」

国王「今では俺や元帥とも親しく話すようになった」

国王「お前ともそんな関係になってほしい」

親衛隊長「そういうことでしたら、私も…」

国王「勇者!入っていいぞ」

親衛隊長「あ、今日は本当にごめんなさい!思い込みで決め付けて怪我まで…」

勇者「いや、別にそれは…」

勇者「親衛隊として正しい判断だよ」

勇者「勇者としても中途半端な俺と違って、仕事熱心ですごいと思う」

親衛隊長「あたしはただやりすぎてるだけ、それより弱いのに魔王討伐の旅に出たあなたの方が…」

勇者「よわ!?いや、まあ、こんな俺でもよければこれからもよろしく」

親衛隊長「あ、握手?はい、こちらこそよろしく…あ」

国王「凍傷じゃ仕方ない、握手はまた今度な」

翌日

城内

龍元帥「おはようございます」

国王「おはよう」

勇者「お前大丈夫なのか?昨日血まみれだったろ」

龍元帥「漁村のリリスにやられたくらいじゃ仕事には響かねえよ」

勇者「漁村のリリス?」

龍元帥「リサのあだ名。あの狂気からリリスってつけられたんだ」

国王「ついでに漁村出身なんで、漁村のリリスってわけだ」

国王「本人には言うなよ、すごい嫌がるから」

龍元帥「俺は平気で言うけどな」

勇者「お前は自重しろ」

国王「その調子で勇者の相手頼む」

龍元帥「用事ですか?」

国王「鍛冶屋に」

勇者「なあ、俺もついて行っていいか?」

国王「やめといた方がいいぜ」

龍元帥「あいつ変態だしな」

勇者「男は度胸、何でも経験、誰かにそう教わったが」

龍元帥「俺は止めたからな」

馬車

勇者「鍛冶屋までは遠いのか?」

「徒歩で2日ですからそれなりに」

勇者「あ、どうも、しかしなぜ受付のあなたが?」

国王「今回の護衛」

受付「親衛隊長、元帥ともに負傷していますし、今回は急な訪問で日程調整が大変ですから」

国王「毎度悪いね、秘書みたいな事させて」

秘書「お気になさらず、お互い合意の上でのこの関係でしょう?」

勇者「だから国王の予定詳しく知ってたのか」

国王「だからって食事や団欒のときに放り込むのはやめてくれ」

秘書「それは単なるご愛嬌です、と、そろそろですね」

鍛冶屋

秘書「手短に済ませましょう、予定を前倒しにしてこちらの視察も行うのですから」

国王「分かってる、でも気が重いな」

勇者「気難しい職人なのか?」

国王「いや、第一声を聞けば分かる」

国王「ごめんください!」

「やらないか?」

勇者「!?」

国王「いい男」

戸が開いた。

「お久しぶりです陛下、ところで本当にやりませんか?」

国王「やりませんよ、ったく、還暦近い爺まで守備範囲か」

秘書「彼は、あのエクスカリバーの刀匠の弟子です」

国王「見ての通り男色、合言葉まで徹底してな」

勇者「ああ、はじめまして、勇者ゼロです…」

弟子「はじめまして、鍛冶屋の田中直輝です」

弟子「突然だが、君のエクスカリバーで俺を…掘ってくれないか?」

秘書「冗談はそのくらいにして、仕事の依頼です」

国王「昨日鎖鎌ぶつけて欠けちまったんだ、直せるか?」

弟子「おやすい御用です」

秘書「ありがとうございます」

国王「俺らはその間にこの町の視察に行くから、そいつに見学させてやってくれ」

弟子「かしこまりました」

勇者「ちょっ!?」

秘書「夕方にはまた来ます」

国王「心配すんな、そいつ、俺より腕は立つから」

勇者「それは余計に心配だ!」

国王・秘書「「行ってきます」」

弟子「お気をつけて」

勇者「そんな!!」

弟子「さて、始めるか」

勇者「今すぐ逃げ…」

弟子「そこのいすを持ってきてくれ」

勇者「え?あ、はい…」

弟子「立ち見じゃ疲れるだろうから」

勇者「あ、ああ、どうもありがとうございます…」

弟子「ただし、5m以上離れて見てくれ」

弟子「師匠の遺作を扱うときは余裕がないからな」

弟子「師を超えたと噂される今でも、手に汗握る程さ」

勇者「はい、分かりま…」

弟子「無論、私語厳禁な」

勇者「」コクコク

男は作業を開始した。

表情は真剣そのもの、作業も素人目に分かるほど丁寧だった。

勇者(真剣そのものだけど、どこか楽しそうにも見える)

勇者(剣を通して師匠と語り合ってるってことか…)

陽が傾き始めた頃、彼は笑みを浮かべながら鞘に収めた。

師の遺作を。

弟子「お待たせ、退屈だったろ」

勇者「いえ、こういうの見たの初めてなので、新鮮でした」

勇者「剣を通して語り合ってるんだなあ、とか」

弟子「ファンタジーなこと考えるね」

弟子「まあ、語り合ってはないけど、思い出しはしてたかな?」

弟子「いい人だったよ、師匠は」

弟子「いきなりこの世界に飛ばされて右も左も分からない俺を、何も言わずに受け入れてくれて」

勇者「飛ばされた?」

弟子「職までくれてさ」

弟子「アル中で死んでなきゃ、今頃陛下と馬鹿騒ぎしてたろうな…」

勇者「待って下さい、飛ばされたってどういうことですか!?」

弟子「ああ、それは、と、また今度話すとしよう、お互い掘りながらさ」

勇者「え?今度?」

弟子「お迎えが来たみたいだ」

弟子「陛下、この仕上がりでいかがでしょうか」

勇者「え?」

国王「相変わらず鋭いね、勘も仕上がりも」

弟子「光栄です、お支払いは体ですか?」

秘書「現金です、これで足りますか?」

弟子「おつりが出ますよ、体で返しますね」

国王「腕で返せ、今後も精進してくれ、と、帰るぞ勇者」

勇者「あ、ああ」

弟子「またのお越しをお待ちしております」

馬車

勇者「あの人、この世界に飛ばされたって言ってたが、どういうことなんだ?」

国王「俺も詳しくは知らないが、ここと違う国からある日突然この国に来たらしい」

勇者「さっぱり意味が分からない」

国王「俺もだ、まあ、本人の口から聞いてくれ」

秘書「あさって、彼が城に来ますから、そのときにでも」

勇者「そうですか、でもそれなら今日予定詰めてまで直さなくても良かったんじゃ…」

国王「あのおっさんの形見だ、傷物のまま放置できねえよ」

秘書「君主としては割り切るべきですが、あなたのそういうところは好きですよ」

国王「よせよ、照れるぜ」

勇者「…夫婦なのか?」

秘書「いえ、妻でも妾でもありません」

国王「セフレでもないぞ」

勇者「にしても仲いいな、秘書と主って以上に」

秘書「建国以来の付き合いですからね」

国王「竹馬の友ってやつだ」

秘書「ところで、勇者さんは今どちらに泊まっていますか?」

国王「送ってやるよ、言ってみな」

勇者「ありがとう、ええっと…」

翌日

城内

勇者「こんにちは」

秘書「いらっしゃい」

親衛隊長「勇者君だ、おっはー」

勇者「ああ、元気そうで良かった」

国王「揃ったな、それじゃ席に着け」

龍元帥「昼食に召集を受け何事かと思いましたが、彼の知り合いを集めただけでしたか」

国王「今日はお前らも飯時くらいしか時間ないからな」

秘書「来訪者との食事会、という形式を取りました」

勇者「ありがとうございます」

国王「じゃ、時間もったいないしとりあえず…」

勇者・国王・龍元帥・秘書・親衛隊長「「いただきます」」

龍元帥「して、客人、昨日は鍛冶屋へ行ったとのことだが、尻は無事か?」

勇者「食事中に何言ってんだ!まあ幸い、昨日は口先だけだったよあの人」

秘書「彼も男色を前面に出しさえしなければ、より繁盛するのですが」

親衛隊長「そうですね、いきなりあれは辛いものがありますよね」

龍元帥「とはいえ仕方ないだろう、この国では…」

国王「趣味も性癖も隠さず生きるべし、って憲法に書いてあるからな」

勇者「誰だよそんな条文考えたの」

国王「俺だよ」

勇者「」

秘書「元々あなたのクセが受け入れられる国にしたくて入れたものですよね」

龍元帥「相手の得意分野で勝ったときなどに、嘲笑しないと気が済まない悪癖、でしたっけ?」

親衛隊長「ああ、『今どんな気持ち?』ってやつ?」

勇者「俺以外にもやってたのか」

国王「ああ、兄貴にはそれでぶち切れられた」

秘書「それから兄弟で対立が続いている、ですよね?」

国王「面目ない」

勇者「どっちもどっちってそういうことだったのか」

国王「とはいえ、40年ちょっと前だぜ?しつこいってレベルじゃねえよ」

勇者「…王様…大人気ない…」

勇者「そういや、明日、例の鍛冶屋が来るって聞いたが」

親衛隊長「田中さん?あの人はただの付き添いだよ?」

勇者「付き添い?誰の?」

秘書「彼女よりも強い剣士です」

龍元帥「練習生として、月に1度の間隔で、我々の訓練に招いているのだ」

勇者「リサさんより強いなんて…」

親衛隊長「あたしなんてまだまだだって」

龍元帥「そうだな、色々と、まだまだだな」

国王「どこ見て言ってんだよ…」

貧乳隊長「貧乳なのは自覚してる」

龍元帥「貧乳というより無乳だろう」

無乳隊長「3枚おろしになりたい?」

勇者「セクハラ発言やめろ」

秘書「話を戻すと、彼との対峙に備えて、勤務後に調整するため、今日は時間が取れないというわけです」

勇者「どんな使い手なんだろうな」

国王「会えば分かるさ、明日、見に来いよ」

親衛隊長「見るだけでも勉強になるよ」

勇者「是非、あ、時間は…」

秘書「朝、武官の始業後であればいつでも」

勇者「では、その時間に伺います」

翌日

城内

勇者「おは…」

弟子「おはよう、やらないか?」

「おっさんがっつきすぎだろ、テラ野獣」

勇者「この人が例の?」

龍元帥「そう、練習生な」

「練習生にして、最強の剣士、佐藤和也だ、よろしくな」

勇者「神聖深夜vip国の勇者、ゼロです。こちらこそよろしく」

剣士「へえ、現役の勇者は初めて見たぜ、意外に弱そうだな」

勇者「否定はしない、この国では負けっぱなしだ」

親衛隊長「今日の彼は見学、だから勝手に挑まないでね」

剣士「了解、んで、また合同訓練からか?」

弟子「で、俺は武具の手入れ?」

龍元帥「ああ、それぞれいつも通りで頼む」

親衛隊長「じゃ、いつも通り城の周りのランニングから、10周ね」

勇者「10?巨大な城じゃないが、外周はものすごいあるぞ?」

剣士「いつも通り一般兵泣かせ、マジキチ」

龍元帥「勇者、これから始まるのが、この訓練の目玉の一つ、100本試合だ」

剣士「一人100勝のノルマが課せられるんだぜ?マジアリエンティー」

親衛隊長「あたしたちのノルマはその倍だけどね」

勇者「200!?まあ桁外れに強いのは知ってるけど、無茶苦茶じゃあ…」

親衛隊長「あ、始まるからまた後でね」

「それでは、軍と、親衛隊による合同訓練を始めます!」

「まずは、100本試合です!それでは、用意!始め!!」

「「「うりゃああ!!」」」

勇者「おいおい…試合どころか乱闘にしか見えないぞ…」

勇者「というか、やたらリサさんと元帥のとこに集中している気が…」

「そりゃ、彼らから1本取れば100勝分カウントされますからね」

勇者「そうか、道理で…って、誰?」

「本日の集計役、ゴーレムのゴレムスキーです」

勇者「あ、ああ、よろしく…」

ゴーレム「はは、今日もすごい勢いです、親衛隊長、もう30本取りましたよ」

勇者「すごいな、あの乱闘の中一人の戦績を正確につけられるなんて…」

ゴーレム「全員分つけてますよ?」

勇者「え!?どうやって…いや、もう驚かないぞ、この国では何があっても不思議じゃない」

勇者「ところで、練習生の彼の周りだけやたら人が少ないな」

ゴーレム「一応彼も親衛隊長や元帥と同じ得点の扱いです、が」

ゴーレム「あの人容赦ないし、新技の実験台にするしで」

ゴーレム「無知な奴か、向上心のある奴か、どちらにしろ余程じゃない限り誰も挑まないんですよ」

勇者「そうなのか…ん?なあ、練習生の武器、変じゃないか?」

ゴーレム「ああ、あれ?竹刀ですよ、竹刀」

勇者「何で一人だけ?」

ゴーレム「それは…お、ちょうどいい、見てれば分かりますよ」

「お願いします!」

剣士「しゃーす!へへっ、新技を試してやるよ」

「がはっ!ぐ…あ、ありがとう…ござい…ました…」


勇者「」

ゴーレム「見ての通り、通常訓練で使われる木刀では、死人が出かねないんですよ」

勇者「嘘だろ…脆くはなさそうな鎧にひびが入って…」

ゴーレム「それもあって、あの鍛冶屋も来ている訳で…と、元帥は半分終わりましたね」

勇者「早過ぎだろ!まだ開始から10分も経って…!」

ゴーレム「あ、親衛隊長も半分行きました」

勇者「」

ゴーレム「一般兵も終了者が出始めましたね、と、ジョック、ウルフアイ!終了だ!」

「「はい!」」

勇者「もう100本取ったのか」

ゴーレム「このあたりから続々終了者が出て、こちらも忙しく…ゼグス、ディバイド!終了!」


勇者「残り10人くらいか」

ゴーレム「このあたりから地獄ですよ、苦手な相手が残ると負け残り確定ですから、ジョデュス!終了!」

勇者「最後まで残るとどうなるんだ?」

ゴーレム「斉藤、終了!ふふ、練習生、親衛隊長、元帥の相手を続けるんですよ」

勇者「同時に?交代で?」

ゴーレム「もちろん交代で、ただしこの訓練同様、試合結果が決まれば休みなく次の相手ですが」

勇者「鬼だな…いつまで?」

ゴーレム「足りない分勝つか、その5倍負けるまで…ファイアゴン!終了!」

ゴーレム「今日の生贄はファリットか、ご愁傷様」

勇者「あいつは残りどのくらいあるんだ?」

ゴーレム「ええ、と、87本取ってるんで、残り13ですね」

勇者「だがあいつら相手に勝てるとは思えないから…」

ゴーレム「実質65本ですね、アーメン」

勇者「安らかに眠ってくれ」

「勝手に殺すな!」

「休憩終了!次は、軍と親衛隊による、親善試合を行う!」

剣士「ktkrwww本日のメインイベント始また!」

勇者「親善試合?」

剣士「そうそ、お互い精鋭5名選んで公開試合ってわけ」

ゴーレム「前回は、3対2で軍が勝ってます」

龍元帥「今回も勝って、優秀な人材引き込むぜ!」

親衛隊長「あんた、前回あたしに負けたくせに何得意げにしてんの?」

勇者「負け2のうち、片方はお前だったのな」

龍元帥「黙れ無乳、今回は俺も勝って5対0で下すぜ」

親衛隊長「逆にあたしたちが完勝して軍を空っぽにしてあげる」

「それでは、整列!」

勇者「引き込むとかって何の話?」

ゴーレム「我が国の武官は親衛隊か、軍のどちらかです」

剣士「で、新人は軍からスタートで、その後推薦や本人希望でどっちかへ、って制度なんだぜ」

勇者「その異動をこの試合の結果で決められるってことか?」

ゴーレム「いえ、異動はあくまで本人の希望に添う形で行われます」

剣士「要は、試合勝って俺らtueeeってアピって、自分とこに来るやつ増やそうってこった」

ゴーレム「まあ、それぞれ自分の部署の魅力を誇示する、パフォーマンスにしたがっているんですよ」

「1本!それまで!」

勇者「また軍が勝ったな」

ゴーレム「ここまでは前回と同じですね」

剣士「面子代えても2連敗とかだっせえww」

ゴーレム「お互い中堅は前回と同じですね」

「はじめ!」

勇者「互角か」

剣士「いや、ラウスは、親衛隊の方な、まだ手の内隠してんぜ」

勇者「そうなのか?」

剣士「あいつ、よく俺の技盗んでくんだわ…今回もしごきの間熱視線くれてたしな」

「1本!それまで!」

剣士「ほら、やっぱな」

ゴーレム「前回と違う展開になりましたね」

勇者「それ、重役二人が老害ってことか?」

「はじめ!」

剣士「消化試合の副将戦ww」

勇者「マッチョ対マッチ棒のおっさん対決って…」

ゴーレム「どちらも人間ではありませんけどね」

剣士「妖狐の親衛隊副長と、吸血鬼の参謀な」

勇者「狐!?ギガンテスの間違いじゃないのか!?」

「1本!それまで!」

副長「よっしゃ!大勝利!ウーハー!」

参謀「申し訳ありません、元帥」

龍元帥「お前、朝弱いし仕方ねえよ、気にすんな」

勇者「それなら負けるのも仕方ないな」

剣士「しっかし、熱い展開ktkrww大将戦で決着とかスポ根かよww」

勇者「でもリサさんの方が強いんだろ?」

剣士「っても実戦じゃ大体互角だぜ?まあ、倒れるまでやるわけじゃないから不利なんだが」

ゴーレム「でも、大将戦での元帥の勝率は2割強…結果が決まっているとはいえませんよ」

勇者「そうなのか…お、そろそろ…」

「はじめ!」

勇者「すごいな…俺は、こんなのに喧嘩売ったのか…」

「そこだそこ!ああ惜しい!」

勇者「あんな娘に殺されかけたのか…」

「今だ!ああ遅い!」

勇者「それに比べて俺は…」

「よしカウンター!普通に流すなや!」

勇者「王宮で何をやってきたんだろうな…」

「おい審判!今の場外指導だろ!」

「はあ!?掛け逃げ指導のが先だろ!」

勇者「足元にも及ばないなんてな…」

ゴーレム「彼、随分落ち込んでるようです、佐藤さん慰めて下さいよ」

剣士「うっせ、今話しかけんな」

勇者「どうすればいいんだ…」

剣士「ぶつぶつうっせえよ試合見とけカス」

勇者「す、すみません」

「相手へばってる!ここ一気に!」

「突っ込んできてる!ここ慎重に!」


「1本!それまで」

龍元帥「ちくしょう!!!」

「それでは最後に、4分10本の乱取りを行います!」

龍元帥「俺情けねえ…」

親衛隊長「ああ、疲れた、今日は乱取り無理!」

勇者「あのさ、乱取り、俺も出ていい?」

親衛隊長「え?危ないよ」

龍元帥「怪我すんぞ」

剣士「本人がやりたいんならよくね?」

勇者「頼む!自分の未熟さを正確に知りたいんだ!」

ゴーレム「そこ出て左の倉庫から装備一式借りて体温めといて下さい」

親衛隊長「何勝手に言ってんの!?」

勇者「ありがとう」

龍元帥「待てこら青二才!」

剣士「どうどう」

龍元帥「どけよ佐藤」

剣士「ディーフェンス!ディーフェンス!」

親衛隊長「ふざけてんの!?」

剣士「まあまあ、試合メンバーは抜けてるから、怪我するような実力差のやつは残ってねえって」

龍元帥「下手に伯仲してる方が危ねえだろ!」

剣士「まあ大丈夫だろ、やばかったら俺が止めに入るからさ、無問題」

勇者「飛び入り参加したはいいものの、もう4本しか残ってないな」

勇者「相手見つけて、と、お願いします!」

「はいはい…て、お前は!」

勇者「お、俺が何か…?」

「お前、俺のこと勝手に死人扱いしてたろ!」

勇者「え?あ、もしかして…」

「はじめ!」

「そうだよ!100本試合で負け残った、狼男のファリットだ!」

狼男「馬鹿にされた分もまとめて返してやる!死に晒せ!!」

勇者「ちょっ!待っ…!」


「やめ!交代!」

狼男「くっそ!この次は負けねえからな!」

勇者「ありがとうございました」

勇者(この城に来て初めて勝った・・・)

勇者「これで最後か」

参謀「その最後は、私でどうかな?」

勇者「はい、お願いします」

「はじめ!」


参謀「違う!受け流すときはもっと鋭角に反らして!こう!」

勇者「こうですか?」

参謀「そうそう、その調子で次!」


「やめ!」

勇者「ありがとうございました・・・」

勇者(丁寧に指導してもらったけど、一番疲れた・・・)

「以上で、今回の合同訓練を終了します!互いに、礼!」

「「「ありがとうございました」」」

勇者「もう終わりなのか?まだ昼だが」

参謀「合同訓練はね、この後は各自反省と自主トレさ、昼食後に」

副長「振り返りと反省は大事ということだ、飯の次にな!」

龍元帥「ってことだ、食いに行こうぜ」

親衛隊長「兵舎のご飯もおいしいよ」

剣士「遠慮すんなし」

龍元帥「お前の所属部署じゃねえだろ」

ゴーレム「早く行かないとなくなりますよ」

勇者「ああ」

勇者「あっさりしたものが多かったな」

龍元帥「このあとに響くと悪いからな」

参謀「合同訓練の反省と自主トレだよ、普段より激しいからね」

副長「まあ、隊長と元帥よりは楽だがな!」

勇者「一体何を…」

剣士「俺とのガチバトルだぜ」

親衛隊長「あたしたちの今日のメインイベント」

龍元帥「今度こそお前は見学な」

城の裏手

勇者「兵舎は使わないのか」

龍元帥「屋内だと全力出せないからな」

勇者「じゃああの試合も茶番だったのか」

親衛隊長「お互いセーブしてた感じかな?」

剣士「鎖鎌使えねえ、ブレス使えねえ、んなとこじゃね?」

勇者「それがここなら心置きなく使えると」

親衛隊長「そういうこと」

剣士「じゃ、体温まったらとっとと始めようず」

勇者「何だこの戦い…」

親衛隊長「お互い様子見の攻防だけど?」

勇者「家一軒分の大きさの炎を撃ったり弾いたりのこの状況が!?」

龍元帥「腕は鈍ってないらしいな、安心したぜ」

剣士「週6.5日修行してて鈍るわけねえだろjk」

勇者「本当に様子見なんだ…でも6.5日って…」

親衛隊長「働いてないの」

剣士「田中さんとこでヒモやってますしおすし」

龍元帥「ここで俺に負けたらこの場でヒモ卒業な」

勇者「右手に炎の剣、左手に氷の剣…なんだあれ」

剣士「レーヴァテインにアイシクルソードww本気すぎワロえないwww」

勇者「笑ってるじゃないか」

龍元帥「で?受けるのか逃げるのか、どっちだ?」

剣士「おk!怪我しても恨むなよ」

親衛隊長「じゃあ、あたしの番ね」

剣士「連戦とかテラ鬼畜」

勇者「なあ、大丈夫か?医者行った方がいいんじゃないか?」

龍元帥「傷口は凍らせたし見学くらいは問題ねえよ」

剣士「またさっきのルールでやるのか?」

親衛隊長「あたしに負けた場合は親衛隊に配属だけどね」

剣士「毎回思うんだけどそれ、俺だけリスク負いすぎじゃね?」

親衛隊長「じゃあ何賭ければいいの?」

剣士「お前の処女」

勇者「ふざけ…!!」

親衛隊長「いいよ」

勇者・龍元帥「「え?」」

親衛隊長「ただし、いつも通り3本先取で、そっちのストレート勝ちの場合だけね」

親衛隊長「あたしが1本取ればお互い無効」

親衛隊長「2本でヒモ卒業」

親衛隊長「あたしが勝ったら親衛隊入隊で」

剣士「把握!俺ばっか厳しいけど把握!」

龍元帥「じゃあ俺審判で」

勇者「おい!」

龍元帥「1本!それまで!3-0で佐藤の勝ち!」

剣士「最後のは焦ったぜ、でも勝っちゃったぜ」

勇者「リサさん、大丈夫?」

親衛隊長「うん。全部峰打ちだったし、手加減されてたから」

剣士「俺明日帰りだから今晩でいいか?」

勇者「待て!」

剣士「ん?」

勇者「俺と、勝負しろ!俺が勝ったら、さっきの賭けを取り消せ!」

親衛隊長「勇者君!?」

剣士「俺にメリット…」

勇者「財政監査室で稼いだ、この金を賭ける」

剣士「…今晩風俗行っても余るな、質草としては妥当か」

龍元帥「だがお前らじゃ結果は見えてるしな」

剣士「閃いたぜ」

親衛隊長「半径1m少々の円書いてどうするの?」

剣士「俺はこの円から出ない、攻撃もしない、勇者は俺に攻撃をかすりでもさせれば勝ち」

剣士「制限時間10分、審判お前ら、で、どう?」

勇者「分かった、審判頼む…行くぞ!」

龍元帥「残り5秒!4!3!2!1!終了!」

勇者「くそ…賭け…金だ……持ってけ…」

親衛隊長「勇者君、大丈夫?」

龍元帥「疲れてるだけだし大丈夫だろ、しかし序盤から飛ばしてよく最後まで動けたな」

剣士「しかも動きの無駄どんどんなくなってったしな」

剣士「終盤の動きで体力満タンだったら流石にやばかったぜ」

勇者「リサさん……ごめん…俺、結局…」

親衛隊長「気にしないで、あたしが安請合いしたせいだから」

剣士「そのことなんだが」

龍元帥「佐藤?」

剣士「お前ら全員負けたわけだけど」

剣士「勇者、お前の資質、見てて面白かったしさ、それに免じて今回は…」

勇者「え?」

親衛隊長「まさか、今回の賭けは…」

剣士「アナルで手打っとくわ」

勇者・親衛隊長「」

城内

親衛隊長「勇者君?どうしたの?」

勇者「リサさん、やっぱり佐藤さんの所に行くのやめないか?」

親衛隊長「そうはいかないよ、約束だから」

勇者「俺、嫌なんだよ、好きな子が犯されに行くなんて」

親衛隊長「勇者君?それって…」

勇者「好きだ、つきあって下さい」

勇者「君を守れなかった俺にそんな資格はないのは分かってるけど、気持ちは伝えておきたかったから…」

親衛隊長「……ごめん…つきあえない…」

勇者「だよね…こんな情けない俺じゃ…」

親衛隊長「そんなことない」

親衛隊長「嫌いなわけじゃない、むしろ勇者君の事は好きだよ」

勇者「え?」

勇者「じゃあ、なんで…」

親衛隊長「あたしと勇者君の実力差が開きすぎているから」

勇者「俺が、弱いから…?」

親衛隊長「…恋愛でも結婚でもさ、つきあうってことは、一緒にいる時間増えるよね」

勇者「…うん…」

親衛隊長「そうすると相手の色んな面と向き合うことになる、当然考えが合わないことも出てくると思う」

親衛隊長「それで喧嘩になることもあると思うし、時にはうっかり手が出るくらいは誰だってあるよね」

勇者「うん。国王さんや元帥ともそんなことあったから予想はつく」

親衛隊長「ただ、ね…実力差がありすぎると、そのうっかりで悲しい別れになりかねないから…」

勇者(否定できないな、あの鎖鎌と槍捌きだと、冗談でなく死ぬかも)

親衛隊長「かといって、そうならないようにするにはお互い相当な我慢を強いられる…」

親衛隊長「でも、それじゃ一緒にいても意味が無いと思う、楽しくないし」

親衛隊長「だから、実力差が大きい人とはつきあえません」

勇者「…ちゃんと、色々考えてるんだね…」

親衛隊長「ごめんね、そろそろ隊舎に戻らないと」

勇者「ああ、うん…じゃあね…」

勇者「俺、今日にも帰国するよ」

国王「唐突だな、何かあったか?リサに振られでもしたか?」

勇者「どこでそれを!?」

国王「え?まじか、藪蛇だったな」

勇者「…色々世話になった、それじゃ」

秘書「まあまあ、今日はゆっくり疲れをとって、明日出発でも問題ないでしょう」

勇者「でも、ちょっと気まずくて居辛いし…」

秘書「明日以降であれば、国境近くまで送ることが可能ですよ」

国王「懐も寒くなってきてるだろうし、丁度いいだろ」

勇者「それはまあ…」

国王「決まりだな、まあ帰るならどっちにしろ話しておくことあるし、泊まってけよ」

勇者「話しておくこと?」

秘書「あなたが帰ってから向こうで話して差し支えないこと、問題になることの範囲です」

勇者「確かに、あの王様にとって都合悪いこと言ったら、大変なことになりそうですね」

国王「さて、どっから話したもんか…」

秘書「時間もあるので、建国秘話全編でも構わないでしょう」

国王「秘話でもねえだろ、ま、昔々優秀な兄と不出来な弟がいてな…」

翌日

剣士「昨晩はお楽しみでしたぜ」

親衛隊長「そっちだけね…」

勇者「本当にごめん…」

国王「じゃあ、気をつけてな、帰路も帰国後も」

勇者「ああ、迂闊なことは言わないようにする」

秘書「ワイバーン航空部隊を手配しました」

勇者「ありがとうございます、と、リサさん」

親衛隊長「何?」

勇者「俺、強くなるよ」

勇者「リサさんより強く、なるにはまだまだ時間かかりそうだけど」

勇者「でも!必ず実力差を詰めて、もう一度会いに行くよ!」

勇者「だから、そのときは……本気で戦って、見極めてくれないかな…」

親衛隊長「うん…うん!分かった、約束だよ」

龍元帥「客人、部隊が到着したぞ」

勇者「ああ、分かった…皆、それじゃ、またな」

「「「また…」」」

前半戦終了

後半は明後日の夜以降に投下する予定
需要の有無にかかわらず本編はすべて投下するのであしからず

後半の予告をして落ちます

お休みなさい

open your eyes four the next delta.

「有事じゃないが、お前に用事がある」

「この者達は、お前の今回の冒険の仲間だ」

「今まで世話んなったぜ!隊長!」

「エクスカリバーまた折れた!!」

「トラップマスターは私一人で充分です!」

「アアッ―――――――――!!!!!」

「ちょっ!おま、しつけえぞ!テラ迷惑ふざくんな」

「…お任せします……」

「俺、勇者やめるよ」

乙、楽しみにしています

剣士「逃がす楽しみ」

弟子「一人じゃ 多い」

勇者「<歩く 速さ 合わせて>」

国王「<しゃべる 速さ 合わせて>」

龍元帥「だから エンジョイ いつも」

秘書「そばにいる仲間のために」

院長「出来ることから」

親衛隊長「はじめよう」

2ヶ月後

神聖深夜vip国 王宮

「励んでいるようだな、勇者よ」

勇者「陛下!御自ら訓練所までいらっしゃるとは、もしや緊急事態ですか?」

王「いや、明日はお前の出発だからな」

王「訓練の成果を見に来たのだ」

勇者「まだ未熟なもので、お恥ずかしい限りです…」

王「…近衛部隊の精鋭10数名を同時に相手にして、まだ未熟とはな」

「謙遜も度が過ぎると嫌味だぞ」

勇者「兵士長まで!本当に何も起こってないのですか?」

兵士長「有事じゃないが、お前に用事がある」

王「お前に会わせたい者達がいる」

勇者「はあ…どなたでしょうか」

兵士長「既に部屋の外に控えている」

王「では、実際に会った方が早いだろう、諸君、入り給え」

「うーす!」

「初めまして」

「………」

勇者「あの、陛下、兵士長。彼らは一体…」

兵士長「そうだな、お前ら、自己紹介しろ」

「しゃっす!俺は新米兵士!剣士のジャックだ!宜しくな!」

「罠士のレイチェルと申します。今後とも宜しくお願いします」

「…………闘士のカイです…」

勇者「こ、こちらこそ宜しく……兵士長、まだ話が見えないのですが…」

王「この者達は、お前の今回の冒険の仲間だ」

勇者「え?」

兵士長「魔王討伐をお前一人に全て任せるのは、負担が大き過ぎた」

兵士長「そう考えて、今回は彼らを同行させることにしたんだ」

新兵「ってな訳だ!」

罠士「これから、宜しくお願いします」

勇者(国王と秘書さんの話が本当なら、彼らの誰か、もしくは全員が俺の監視だ)

勇者「お気遣い感謝します」

勇者(かまをかけてみるか)

勇者「ですが、彼らを連れて行く訳にはいきません」

兵士長「貴様!陛下のご厚意を無碍にする気か!!」

王「そう熱くなるな。して勇者よ、どういうつもりだ?」

勇者「死ぬ覚悟は既にできています、が、それは僕一人の場合です」

王「仲間がいては覚悟が鈍り、無茶がし辛い、と言う事だな?」

勇者「その通りです。人の命を預かるなど、僕には荷が重すぎます」

勇者「まして、女性を前線に立たせることなどできません」

罠士「お気遣いはありがたく受け取りますが、私も覚悟はできているので、ご心配なく」

新兵「こいつの言う通りだぜ、勇者さんよ!それとも何か、実力に不満でもあんのか?」

兵士長「お前は言葉づかいを正せ!陛下の御前だぞ」

兵士長「しかし、この者らの言う通り、全員覚悟はできている」

兵士長「実力に疑問があるなら今この場で試せばいい」

勇者「分かりました。それでは失礼して…」

兵士長「まさか、素手で全員組み伏せるとは…」

勇者「やはり、彼らの同行には反対です、危険すぎる」

勇者(ジャックは前回の頃の俺と同じくらいだけど)

王「確かにそうだが、果たしてお前一人で使命を果たせる算段でもあるのか?」

勇者「それは…」

王「盾にしても捨て石にしても構わん。それすら無理なら雑用でも良い」

王「彼らの思いを汲んで、連れて行って欲しい」

勇者(結局強引に押し付けられた…俺の監視に間違いないな)

新兵「さっきはさーせんっした!これから宜しくおねしゃす!」

罠士「噂以上の強さですね!私、感激しました!」

勇者「ジャック君、そんな気にしなくていいよ、多分同年代だし敬語もいらないって」

勇者「レイチェルさんも、気を遣わないで、俺の噂はあんまり良くないの知ってるから」

新兵「そっすか?いやあ、実は敬語とか堅っ苦しくて苦手でさ」

勇者(ジャックは多分違うな、レイチェルはまだ何とも言えないが、やっぱり…)

罠士「でも今はこの国で一番強いじゃないですか、噂なんてその妬みですよ」

闘士「………………」

勇者(怪しいのはカイだな)

翌日

国境付近

兵士長「この先は魔物の国だ、お前たち、気をつけて進め」

勇者「はい!ここまで送って頂きありがとうございました!」

罠士「ありがとうございました!」

新兵「今まで世話んなったぜ!隊長!」

兵士長「全く、最後までお前は…まあいい、達者でな」

勇者「さて、もう少しで向こうの国境警備施設につく」

新兵「そっからは戦いの連続だな!?」

罠士「私のブービートラップの出番ですか!?」

勇者「いや、戦いは極力避けたい」

罠士「確かに、よく考えたら、敵の本拠地で最初から暴れたら、警戒されて進めなくなりますね」

勇者「それに、この国に住んでいるのは魔物だけじゃない」

勇者「人間も多く住んでるんだ、そしてその多くは魔物と共存してる」

新兵「まじかよ!」

罠士「魔物と共存だなんて!」

勇者「実際に見たんだ、そしてそんなところで俺たちが暴れたら大変なことになる」

新兵「俺らめっちゃ嫌われんな」

罠士「そこにいる人たちの立場が悪くなりますね」

勇者「レイチェルさんの言う通り。それに、俺たちの使命は魔物の討伐じゃない」

勇者「人類を救うこと、そのために魔王を倒せと言われただけだ」

勇者「だから、基本的には戦わないで進む。当面はその方針でいく、いいか、みんな?」

新兵・罠士「…了解」

国境に隣接する町

罠士「本当に人間と魔物が共存してるんですね」

新兵「虐げられてるわけでもなさそうだしな、酒場で軽口叩きあってたぜ」

勇者「対等な立場で共存してるんだ、って君、未成年だろ?」

新兵「確かに先月16になったばっかだけどさ、ちょっと位いいだろ」

罠士「なんか顔が赤いと思ったら…いつの間に飲んだの?」

新兵「さっき、お前らが夕飯食い終わるの待ってる間にちょっとな」

勇者「未成年飲酒は陛下に報告するとして」

新兵「ちょっ!?まじ勘弁!」

勇者「明日から強行軍だからな、今日は早めに休もうか」

罠士「はい、分かりました!」

新兵「賛成!」

勇者「カイ君、君は?」

闘士「…あ、はい…そうします…」

勇者「この先に宿があるんだが、なんか騒がしいな」

新兵「おい、何かあったのか?」

「脱走兵が無銭飲食して揉めてるらしい」

罠士「大変ですね、って、心なしかこっちに向かってきてるような…」

「てめえら!寄ってたかって馬鹿にしやがって!ぶっ殺すぞ!そこの女!てめえからだ!」

新兵「させるか…」

「邪魔だ!」

新兵「うお!」

「てめえもだ!どきやがれ!!」

勇者(このくらいの相手なら峰打ち、いやここは…)

「ごふ!」

「すげえ!左手で剣止めて右の裏拳で悶絶させたぞ」

勇者「彼、どこに引き渡せばいいですか?」

参謀「私に任せてくれ、軍に連行する」

勇者「じゃあ、あとお願いします」

参謀「お手柄だよ、ありがとう。私は謝罪して回るから、申し訳ないが今は護衛と話してくれ」

勇者「はい、お疲れ様です」

罠士「ありがとうございました!やっぱり勇者様はかっこいいです!」

勇者「ありがとう。ジャック君は大丈夫か?」

新兵「ジャックでいいっす…外傷はないけど、プライドが重傷っす」

罠士「じゃあ、私はレイで」

勇者「ジャックもレイも元気そうだな」

「勇者君もね」

勇者「リサさん!久しぶり」

親衛隊長「うん、こんばんは。2か月ぶりだね」

罠士「ゼロさんゼロさん、この女誰ですか?」

勇者「リサさん。前回来た時に知り合ったんだ」

親衛隊長「王室親衛隊所属、リサです。宜しくね」

罠士「罠士のレイチェルです。ゼロさんは渡しませんよ!」

勇者「君の物になった覚えはないんだけど」

新兵「俺、ジャック!魔王討伐の旅に同行してんだ!宜しくな!」

親衛隊長「魔王討伐…?」

勇者「何だこれ、デジャヴュ?」

親衛隊長「陛下の敵、生かしてオケnai」

新兵「鎖鎌!?槍!?この女やべえ!!」

勇者「リサさん落ち着いて!」

親衛隊長「勇者君どいて!そいつ殺セnai」

勇者「殺さないで!それはまず…」

親衛隊長は斜め後方へ飛び、新兵目がけ鎖鎌を投じた。

勇者は咄嗟に間に入り剣で受けた。

勇者「くっ!」

勇者(嫌な音した!絶対ひび入った…って鎖鎌捨てて槍構えてる!)

参謀「今度は何の騒ぎ…」

親衛隊長は新兵に突っ込んでいった。

勇者は間に入り受け流す。

親衛隊長は勢いを殺せず二人の横を駆け抜けた。

勇者(受け流す時は鋭角に、教わってなかったら死んでたな…でも…)

勇者「エクスカリバーまた折れた!!」

参謀「念のためにこれを持って!」

勇者「ありがとうございます…」

参謀「リサ!やめろ!今回の君の仕事は私の護衛だろう!無用な殺生は…!」

親衛隊長「邪魔da」

参謀「がっ!」

参謀は薙ぎ払われ民家に激突、失神した。

勇者「参謀さん!」

剣士「まじ伸びてる、テラヤバスww」

勇者「佐藤さん!?何でここに…」

剣士「あいつ止めてから話すわ」


新兵「何だあの男…あの女を軽々いなして倒しちまった…」

剣士「俺か?ただの通りすがりの…ヒモニートだ……なんちゃって!」

勇者「そういうことか、見事に爺さんの読み通りだったな」

剣士「んだな、お前の成長ぶりなら少し放置しても死なねえってとこまで」

勇者「意図的に遅れたのか!」


親衛隊長「本当にごめん!」

新兵「怖い怖い俺が悪かったっすからあんま近づかないで!!」

罠士「この女呼ばわりしてすみませんでした!」

勇者「まあ、無理もないけど、いきなりあれはビビるよな」


参謀「私は軍部所属の、ノスフェラトゥ。君は?」

闘士「…カイです…」

参謀「カイ君、君は怪我はないかい?」

翌日

参謀「では、私たちは脱走兵を本部へ連行する」

勇者「俺たちは鍛冶屋の所へ行くよ」

剣士「俺ら全員別方向か」

親衛隊長「じゃあここで一旦お別れだね」

罠士「ですね、ところで佐藤さんはどこへ?」

剣士「龍王の別荘、稽古つけてもらいにな」

「「それじゃ、さよなら」」


新兵「これから行く鍛冶屋ってどんなとこなんだ?」

勇者「鉱山の町にある工房だよ、そこにエクスカリバーの刀匠の弟子がいるんだ」

罠士「あの伝説の人の弟子!?どんな人ですか!?」

勇者「…何と言うか、色々変わった人かな?会えば分かるよ…」

3日後

罠士「まだ着かないんですか?」

勇者「距離的には残り5分の1ってとこかな、そこの村で大体」

新兵「お前にはきつかったか!?」

盆地の村

罠士「閑散としたところですね」

新兵「そうだなあ、で、ここってどんなとこなんだ?」

勇者「いや、俺も初めて来たから分からない」

新兵「だったら探険だ!よっしゃ、張り切ってい…おわあああ!!」

勇者「な、何事!?大丈夫か!?」

罠士「落とし穴…?」

「おっ!引っかかったな!」

勇者「何者だ!」

「トラップマスター山田!半狸の山田航一だ!」

勇者「半狸?確かに耳と尻尾は狸のようだが、半狸って一体…」

罠士「トラップマスター!?聞き捨てなりません!」

半狸「ん?お前誰?どちらさん?」

罠士「私こそ真のトラップマスターです!」

罠士「罠士のレイチェル…またの名を、トラップマスターレイ!!」

勇者「あの、レイ…?」

半狸「俺以外にトラップマスター名乗る奴なんざ初めて見たぜ!」

罠士「トラップマスターは私一人で充分です!」

勇者「完全に二人だけの世界だ…放っといてジャックを助けるか、カイ君?」

闘士「…はい、じゃあ右手引っ張り上げます…」


罠士「言い合っていても埒が明きませんね、こうなったら…」

罠士・半狸「「ここで決着をつける!!」」

半狸「勝った方がトラップマスターだ!ルールはこれでどう?」

罠士「ふむふむ…いいでしょう!受けて立ちます!」


勇者「今日はもうこの村に泊まるって事でいい?」

新兵・闘士「「…了解…」」

翌日

罠士「皆さん!大変申し訳ありません!ここでお別れします!」

新兵「ああ!?どういうつもりだ!」

罠士「私、世界一の罠士になるのが夢だったんです」

罠士「生まれて初めて同じ夢を持った相手と会って、本気で勝負して…」

罠士「その勝負を打ち切って逃げるなんて、できません!」

新兵「まだ決着つかねえのかよ!どんな勝負してんだ!?」

罠士「互いを罠にかけ続け、先に音をあげた方の負け、即死トラップなしなので実質無期限」

新兵「あほか!魔王討伐はどうすんだよ!」

罠士「確かに重要です!けど、ここで逃げたら私、一生後悔します!」

罠士「人生の目標を見失います!私にとってそれは、死んだも同然なんです!だから…」

勇者「分かった」

新兵「おい!!何言って…!」

勇者「ただし、決着がついたら必ず追いついてくること。いい?」

罠士「はい!絶対に追い着きます!ありがとうございますゼロさん!!」

新兵「何考えてんだよ全く!」

勇者「討伐はいつでも行けるけど、人生の目標は逃したらそれっきりだし」

勇者「一人欠けたくらいで失敗するようなら、初めから不可能だろ」

新兵「何か頭がこんがらがってくんなあ…俺が間違ってんのか…?」

鍛冶屋

勇者「夕方か、レイがいないと気を遣わず飛ばせる分、早く着いたな」

新兵「ここに伝説の刀匠の弟子が……っしゃあ!たのもう!」

弟子「やってます、入らないで下さ…アッ…おうふ…う…っく…」

勇者「嫌な時に来てしまった…二人とも、ここには明日…」

弟子「アアッ―――――――――!!!!!」

勇者・新兵・闘士「」



翌日

勇者「ごめんください!」

弟子「やらないか?」

勇者「いい男」

新兵「何言ってんだ!?」

戸が開いた。

弟子「おはよう、掘ってくれ」

勇者「合言葉なのに本気にしないで下さい」

新兵「合言葉があれって…本当にこいつ大丈夫か?」

剣士「腕は確かだぜw頭は大丈夫じゃないぜww」

新兵「佐藤さん!何でここに!?」

弟子「彼はここの居候さ」

剣士「ヒモニートだぜ!兼、性欲処理担当だぜ!」

新兵「何すかそれ!?え?まさか昨日の相手って…」

剣士「俺なんだぜ!月一で掘ってやること条件に置いてもらってんだわ」

新兵「はあああ!!?何考えてんすかああああ!!!」

勇者「もう誰も信じられない…」

弟子「そうか、それで君の新しい剣を買いに来たのか」

勇者「はい。あと、こいつらの武器も見ておこうかと」

弟子「彼らの武器は今あるので良さそうだが、君のはそうはいかないな」

弟子「今あるのは量産品だからね、君に見合う物はないよ」

勇者「未熟な俺には量産品でももったいないくらいですって」

弟子「未熟?とんでもない。今の君は俺と同等か、それ以上の実力がある」

弟子「量産品なんて持たせられないさ、君専用の剣を打つよ」

勇者「え?いいんですか?」

弟子「ああ。ただ、時間がかかるからね、先に王城で待っててくれ」

勇者「はい、宜しくお願いします!」

新兵「おねしゃす!ぜひ!ぜひ俺を…!」

剣士「ちょっ!おま、しつけえぞ!テラ迷惑ふざくんな」

弟子「どうかしたのか?」

剣士「こいつうぜえんだぜ、断ってんのにさっきからずっと…」

新兵「俺を弟子にして下さい!佐藤さん!!」

弟子「じゃ、彼は責任持って預かるよ」

新兵「おねしゃす!勇者!カイ!後は宜しく!!」

勇者「ああ、元気でな、ジャック。こいつのことお願いします、田中さん」

剣士「勇者てめえ、厄介な奴置いてきやがって、ぬっ殺すぞ」

勇者「本当にごめん、佐藤さん」

剣士「合同訓練でフルボッコにしてやるから覚悟しとけ、まあそれは別として」

新兵・弟子・剣士「「またな」」


勇者「結局二人になっちゃったな」

勇者(結局あの二人は監視じゃなかったみたいだな)

勇者「まあ、これからも宜しく、カイ君」

闘士「……宜しく…お願いします…」

勇者(一番怪しいのが残ったが、こいつも監視っぽくないな…何者なんだろう)

2日後

城下町

勇者「出発から8日、案外あっさり着いたね、カイ君」

闘士「…はい…」

勇者(結局ずっとこんな調子だったな…監視かどうか聞きだすどころか会話が続かないとは)

勇者「一応、目的地はそこの城なんだけど、どうする?先に昼ごはんにする?」

闘士「…お任せします……」

勇者「……」

レストラン

勇者(メニュー見ても大して驚かなかったな…豚の丸焼とか100貫盛りのサラダとかあったんだが)

闘士「…………」

勇者(会話のない食事にも慣れてはきたが、周りが賑やかだとさすがに気まずいな)

城内

秘書「陛…魔王は今この城にはいませんよ」

勇者「地方視察ですか?」

秘書「有力部族との個別会談です。護衛にリサを連れているので、彼女もいません」

秘書「今日を含めあと2ヶ所なので、3日程で帰るかと」

勇者「そうですか、では後日また改めて伺います」

勇者「ありがとうございました」

秘書「いえ、また何かありましたら、ご自由にお申し付け下さい」

城下町

勇者「って話だから、観光しながら待とうか」

闘士「…はい……」

勇者(とはいえ、俺もあんまり詳しくはないけど)

2日後

城下町

新兵「よう!4日ぶりだな!」

罠士「こんにちは、私は5日ぶりですね!」

勇者「二人とも久しぶり。今日は何かな」

新兵「明日、軍と親衛隊の合同訓練があるからさ、はしゃいでたら早く着いちまったんだ」

罠士「とある施設の建設許可申請に来ました!」

勇者「何の施設?」

罠士「罠道場です!トラップ研究所にして罠士養成所みたいな予定です」

新兵「おもろくなってきたな、つかスケールでけえ!」

罠士「ふふ、明日、国王が戻ってくると聞いたので、建設許可をと」

罠士「あと、あわよくば資金援助も得られたらなあ、と思ってきました!」

新兵「ちゃっかりしてんな!しっかし大分夢に近づいてんじゃねえか!すげえぜ!!」

がんばれ

勇者「ガンバ」

国王「ガンバ」

遅筆「ガンバと仲間たち」

新兵「もうこんな時間か」

罠士「じゃあ解散ですね」

勇者「二人とも、今日泊まる場所は決まってる?」

新兵「佐藤さん田中さんと一緒にそこの安宿だ」

罠士「私は…」

「おい、遅いぞレイ!」

新兵「お前は!俺を罠にかけた狸の…!」

罠士「ごめんごめん、もう少し待ってて。彼とあっちのホテルに泊まります」

新兵「お前ら、付き合ってんのかよ!」

半狸「ああ、ビジネスパートナー兼、ライフパートナーって奴だ」

新兵「リア充死ねや!」

翌日

城内

親衛隊長「あ、勇者君!おはよう!」

勇者「おはよう、と、リサさんが帰ってきてるってことは…」

龍元帥「陛下なら今日は会えねえぞ」

勇者「城にはいるはずだろ…って元帥!久しぶりだな」

龍元帥「おう、久しぶり。まあ、城にいるのは確かだが…」

副長「今日は朝から晩まで、会議三昧だからな!」

参謀「有力者との個別会談に行っていたろう?その内容を議会とすり合わせているんだ」

剣士「んなこといいから、アップはじめようず」

「それでは、軍と、親衛隊による合同訓練を始めます!」

「まずは、100本試合です!それでは、用意!始め!!」

「「「うりゃああ!!」」」

勇者「ジャック、カイ、君たちは見学しててくれ」

新兵「何でだよ!」

勇者「負け残ると悲惨だからさ、じゃあ、ファリット、話し相手頼んだ」


龍元帥「やるじゃねえか、まだ半分近く残ってんのにノルマ達成か」

勇者「佐藤さんの集中攻撃がなければ、もっと早く終われたけどな」

剣士「フルボッコにするっつったろ、有限実行する俺かっけえ」

剣士「フルボッコにするっつったろ、有限実行する俺かっけえ」



訂正

剣士「フルボッコにするっつったろ、有言実行する俺かっけえ」

新兵「あんなぼろ雑巾にされんなら出なくて正解だわ」

勇者「あの3人を相手の連戦だからな、実質死刑かもな」

「1本!それまで!」

剣士「今回は軍の3連勝で決着かよ、つまんね」

「はじめ!」

勇者「大将戦までもつれ込んだ2ヶ月前と比べたらそうだろうな」

新兵「そりゃ熱い試合じゃねえか!俺も見たかったぜ」

「1本!それまで!」

参謀「君もまだまだ甘いな」

勇者(いつの間にか参謀が勝ってた、見過ごしてたのばれたら怒られるな)

勇者「この試合終わったら、乱取りがあるんだ」

勇者「だから、見ながら体温めといてくれ」

新兵「おおよ!」


龍元帥「5-0で下してやる」

親衛隊長「絶対に土をつける!」

剣士「消化試合っぽくねえ意気込みっすなww」

「はじめ!」

「それでは最後に、4分10本の乱取りを行います!」

勇者「それじゃあ、君たちは気が向いたら参加してくれ」

新兵「っしゃあ!全勝すんぜ!!」


「やめ!交代!」

剣士「3連勝か、意外と健闘してるんでないの」

新兵「当然!このまま全勝しますって!次はお前だ!!」

副長「いいだろう!受けて立つ!」

「はじめ!」

新兵「全力で来いやぁ!!」

副長「おお!では遠慮なく!俺のこの手が光ってうなる!お前を倒せと輝き叫ぶ!」

副長「フォックス、フレイムジャブ!!」

新兵「ごふ!がっ!おご!うぐ!おう!おぐら!」

医務室

勇者「お久しぶりです」

院長「ええ、久しぶりですね、勇者さん。ところで彼はどうしたんですか」

勇者「親衛隊副長との乱取りで倒れました」

院長「元帥が関わっていないとは珍しい、と、気がついたようですね」

新兵「くっ…そ…全勝はなくなったか」

勇者「いきなり親衛隊副長に挑んだら仕方ないって」

新兵「まあいい!次の相手はお前だな!?」

院長「違います、私は国営第8病院の…」

新兵「これでもくら…うっ!!」

勇者「あの、院長?今何を…」

院長「経穴を数箇所ついて硬直させ、ベッドに押し戻しただけです」

勇者「何故そんな技を…もしかして、風俗店で強行突破したら俺もこうなってました?」

院長「そうですね、引き止めて止まらなければこうしていました」

勇者「やっぱり」

院長「それと、以前あなたにも言ったでしょう。淫魔なので、人体には精通している、そして」

院長「進路について、医者か武官か迷っていたと」

城の裏手

龍元帥「医者としても淫魔としてもあいつは特殊だからな」

勇者「良かった、病院も風俗店も猛者の集会所じゃないんだな」

剣士「当然だろjk、あの人は元々戦闘訓練受けてますしおすし」

親衛隊長「っく!…軍医時代に…護身用に…ううっ…練度上げたんだ…っけ?」

龍元帥「ああ、淫魔の中でも顔がいい方だからな、欲情する連中もいた訳だ」

勇者「その対応策が…うあっち!…あの経穴突きなのか」

剣士「ざまあww気が散ってっと黒焦げになんぞ、弱小勇者」

勇者「そうだな、ちゃんと集中して捌くよ」

親衛隊長「それにしても…強くなった…よね…勇者く…うわっ!」

龍元帥「そうだな、前はびびってたこの炎を、今は普通に切り裂いてるしな」

剣士「100本試合のときに何回か防がれたのは冗談かと思ったわ」

勇者「でもまだこれが精一杯だからな…全力のお前らとは、まだやり合えそうもないよ」


半狸「あいつすげえな…手加減してもらってるとは言え、元帥たちと戦えるなんて」

罠士「ゼロさんが謙遜してた理由がやっと分かった。この人たちと比べたらね…」

闘士「……」

城内

罠士「結局国王には会えませんでした…」

勇者「会議で忙しいって話だから仕方ないよ、と、いつなら会えますか?」

秘書「明日の昼頃なら」

勇者「では、そのときまた伺います」

新兵「国王ってどんな奴なんだ!?」

秘書「神聖深夜vip国現国王の弟です。詳しくは実際に会ってお確かめ下さい」

新兵「そうか!楽しみだなあ、なあ!皆!」

勇者「そうだね」

勇者(魔王に会えずに撃退されたことにしたから対応が面倒だな)

罠士「はい!新しい取り組みに前向きな人だと良いなあ」

闘士「……そうですね…」

翌日

城内

秘書「陛下はこの先の執務室にいます。リサ、案内を頼みます」

親衛隊長「はい!それでは皆さん、こちらです」

勇者(懐かしいな、前回は乗り込んで早々追い出されたっけ)

罠士「私、なんか緊張してきました…」

新兵「落ち着けよレイ、大したことじゃねえだろ国王に会うくらい」

勇者「手と足が同時に出ているのは気のせいかな?」

新兵「こ、これはその、あれだ、美しく見える歩き方をだな…」

勇者「着いたな」

親衛隊長「うん、じゃ、入ろう。失礼します」

国王「久しぶりだな、童貞」

新兵・罠士「「え!?」」

勇者「もうそのネタでいじるのやめてくれ」

新兵「何だよ、知り合いだったのかよ!」

勇者「まあね」

罠士「何で教えてくれなかったんですか!?」

勇者「まあ、それはちょっと事情があってさ…」

国王「俺から話そうか?」

勇者「大筋は自分で話すよ、修正とか補足あれば頼む」

新兵「そりゃ警戒するわな」

罠士「でも、信用されてなかったのはショックです!」

国王「そう責めるな、勇者だって神経すり減らしてたんだから」

勇者「四六時中言葉を選んで話さなきゃいけないのが、あんなに疲れるとは思わなかった」

親衛隊長「お疲れ様。で、監視かも知れないのは、この人ってこと?」

闘士「……」

勇者「それも微妙なんだ」

新兵「確かに、連絡しに行ってる様子もなかったな」

罠士「情報を聞き出そうとしたこともないですし」

勇者「それどころかほとんど話そうとしない、行動はほぼ誰かに合わせるだけ」

国王「スパイ以前に人としてまずいレベルじゃねえか、ところでお前、名前は?」

闘士「…カイです……」

国王「え?」

国王「断定はできないが、可能性はあるな、おい!ニヤニヤドラゴン!」

龍元帥「は!御用でしょうか!」

国王「大至急、あいつを呼んできてくれ!副王を連れて来るんだ!」

龍元帥「承知しました!では、失礼しました!」

罠士「副王?」

勇者「入り口で応対してたあの人だよ」

新兵「副王が受け付け担当かよ!」

勇者「で、カイって名前になんでそこまで慌てるんだ?」

親衛隊長「あたしもさっぱり…」

国王「ああ、カイ君…確認したいんだが、君」

国王「神聖深夜vip王家の人間だよな?」

闘士「…はい…」

勇者・親衛隊長・新兵・罠士「「え!?」」

国王「やっぱりそうか…」

闘士「…第9皇子の、カイ・深夜vipです…」

秘書「なるほど、これは確かに面倒なことになりますね」

新兵「受付さん…いや、副王さんか、いつの間に」

国王「ああ、思えば今回の勇者の顔が良かった時点で気づくべきだったかもな」

勇者「顔で選ばれたつもりは…!そんなことはいい、面倒なことって一体…」

副王「戦争ですよ」

勇者・親衛隊長・新兵・罠士「「戦争!?」」

国王「ああ、西深夜vip国と神聖深夜vip国、この国とお前らの国とのな」

新兵「待てよ!何で戦争になんだよ!カイがどうそんなことに絡むってんだ!」

龍元帥「他国に非難されることなく開戦できるからだ」

罠士「カイ君を理由にしてどうそうなるんですか!?」

勇者「要人の誘拐容疑のこじ付け…」

親衛隊長「あたしたち誘拐なんて…!」

国王「そういうことだ」

親衛隊長・新兵・罠士「「何でそんな屁理屈が…!」」

勇者「経緯は別として、皇子は今この国にいる」

龍元帥「その奪還のための戦争であれば、兵の士気も高まるし、他国への大義名分も通る」

国王「補足するなら、皇子の出国の経緯なんぞいくらでも誤魔化せるからな」

副王「他国にそこを調べる術はなく、国際的に発言力が強いのも大国である神聖深夜vip国」

国王「結果、神聖深夜vip国の主張通り、皇子誘拐は真実として認められ、開戦の理由になる」

勇者「ごめん…俺が陛下の狙いを見抜けなかったばっかりに…」

国王「しょうがねえよ、俺にとっても予想の斜め上、斜め45度くらい上だったしな」

龍元帥「同行を頑なに拒めば、お前もどうなってたかわからねえし」

国王「しっかしクソ兄貴め、今回は徹底してきやがったな」

罠士「どういうことですか?」

副王「前回勇者を送り込んだ時点で、開戦準備は済んでいたということでしょう」

龍元帥「恐らく、顔も良く、剣の才能もある若者を勇者に選び、人望を集め」

国王「それをこっちで殺させることで、宣戦布告って絵面だったんだろうな」

勇者「俺が生還したことでそれは失敗」

親衛隊長「今度は生死を問わず、宣戦布告に使える皇子を送り込んだ」

国王「概ねそんなとこだろ、細かい意図や細工はあるだろうけど」

国王「ああもう頭痛えなあ、6族長との個別会談が終わったばっかでまた会議地獄かよ」

副王「頑張って下さい、いずれこうなることは分かっていたでしょう」

勇者「…なあ…兵の士気を低下させれば、戦争は止められるか…?」

国王「ん?」

勇者「他国への大義名分をなくせば、戦争を止められるか?」

副王「可能性は高いでしょう、それができればの話ですが」

親衛隊長「勇者…君?」

勇者「だったら、それで戦争を止められるなら…!!」

勇者「俺、勇者やめるよ」

新兵「ひもになんの?」

罠士「この流れでそれはないでしょ」

親衛隊長「でも、実際どうするの?勇者やめて」

勇者「外交官になる」

外交官「色んな国へ事実を伝えて、戦争に反対してもらう」

外交官「その上で、神聖深夜vip国の皆にも全部、陛下とデルタの関係も含めて伝えて」

外交官「それで、士気を下げる」

外交官「陛下も馬鹿じゃない、国内外で非戦派が多い中で、戦争をしかけることはない」

外交官「…こんなとこだけど…」

龍元帥「果てしなく不安なんだが」

国王「外交官以外にも、特命大使とか停戦調停委員とか、色々混ざってる気もするな」

副王「お二人とも、未成年に求めすぎですよ」

外交官「…一生懸命考えたのに…」

国王「まあでも、実態の周知は俺らよりもお前の方が適任かもな」

龍元帥「この国の出身者が述べても、言い訳としか取られませんからね」

闘士「俺も…俺も一緒に行きます…!」

副王「まあ、本人が同行すれば信憑性は増しますが、道中何かあればそれこそお終いですよ?」

新兵「だったら俺も行くぜ!護衛は任せろ!!」

罠士「私も!」

弟子「大変なことになっているみたいだね」

親衛隊長「田中さん!?いつの間に」

弟子「今しがた、と、陛下、掘って頂けないでしょうか?」

外交官・国王・新兵「「そんな場合じゃねえんだよ!!」」

副王「実際は何の御用ですか?」

弟子「彼の剣が完成したので渡しに来ました、どうぞ」

外交官「ありがとうございます…今までの剣より手に馴染む…名前とかありますか?」

弟子「無銘剣ゼロ」

外交官「確かに装飾は少ないみたいですね」

弟子「聖剣でも魔剣でもない、それを決めるのは君自身」

弟子「君の生き様がそのまま全てその剣の価値になる」

弟子「平和の象徴となるか、はたまた破壊剣となるか」

外交官「聞いてたんですか?」

弟子「何にでもなるが今は何でもないゼロ、君と同名の、君の分身さ」

新兵「かっこいいな!羨ましいぜ!!」

罠士「…ゼロさん?」

外交官「…この剣は破壊剣になんてしない、平和の象徴にしてみせる!!」

龍元帥「意気込みだけじゃ…」

外交官「ああ、何もできないと思う」

外交官「俺たちだけでできることだとは思わない」

外交官「だから、デルタ!あんたの、この国の力も貸してくれ!」

国王「…おし!ニヤニヤドラゴン、リサ!!」

龍元帥・親衛隊長「「はい!」」

国王「お前らも付いてってやれ!!」

龍元帥・親衛隊長「「はい!行って参ります!!」」

外交官「…ありがとう!」

国王・副王・弟子「「いってらっしゃい」」

城下町

親衛隊長「これからどこに行くの?」

外交官「まずは神聖深夜vip国から離れた国かな」

龍元帥「具体的にどこだよ」

外交官「それは、ええっと…」

新兵「無計画じゃねえか!」

罠士「しっかりしてくださいよ」

闘士「…この国より西の方、海の向こうの島国あたりは…」

龍元帥「そこならうちとも友好的だしいいかもな、ってお前よりよっぽど考えてるじゃねえか」

外交官「本当に、無計画でごめんなさい…」

翌日

港町

龍元帥「この船に乗れば例の島国に着く。後戻りできなくなるぜ?」

闘士「…戻る必要なんてありません」

新兵「っしゃあ!行くぜ!!」

罠士「覚悟は決まっています!」

親衛隊長「勇者君、いや、ゼロ君は?」

外交官「もちろん!行くよ!!」

「戦争を止めて、平和を手に入れるために!!」

fin.

最後まで読んでくださった方、もしいましたら、お付き合い頂きありがとうございました

疑問、質問、>>1死ね、などありましたらご自由にどうぞ

可能な限り答えます



>>ygkwpxwaさん、ご愛読ありがとうございます

乙!

ゼロとリサの関係とか…どうなったの?気になります

乙、罠師尻軽じゃね?

>>188

すみません、この冒険メンバーのその後は…

時計の針が進むとハッピーエンドで終われないので勘弁してください

戦争が止まればその後交際

交渉失敗で虚ぶ…いえ、忘れてください

>>189

まあそう映りますよね

一応補足すると、勇者の仲間は全員厄介払いで同行させられた設定です

罠士レイチェルに関しては味方ごと罠にかけることが多く、王宮では嫌われていました

そんな彼女にとって、敗走した勇者という汚名を受けながらも強くなっていくゼロの存在は憧れでした

トラップマスター山田はそれとはまた好きの方向性が異なります

世界一の罠士、そのための罠の探求を続ける、いわば生まれて初めて会ったライバルであり、同行の士でもある訳です

憧れの相手から同じ道を生きる同士に恋愛対照が移って行った感じです

一応はゼロとリサの気持ちを察して身を引いた側面もありますが基本的には上記の理由です

長くなって申し訳ない

もう質問もなさそうなので、今晩から次回策の構想練る作業に入ります

安価の仕方などを親切に教えてくださったid:oc7b8vycさん

支援してくださったid:ipmqf5uqさん、id:zy/h8n8oさん、id:73gdru4yさん

終了後にコメントしてくださったid:ygkwpxwaさん、id:/fq3pngeさん、id:mmlxqbkwさん

本当にありがとうございました

妄想段階の予告をして暫くしたら落ちます

open your eyes for the next thread.

「はじめまして! ポケット モンスターの せかいへ」

「っしゃあ!バッジを集めるぞ!!」

「そういえば となりの オーキドはかせが あなたを よんでたわよ」

「この図鑑を完成させればいいんですね?」

「おーす! みらいの チャンピオン!」

「順調だな、やはり俺に抜かりはない」

「わての パソコン みてみぃ」

「あの姉ちゃんおあっぱいでけえ!!」

thanks for reading.



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