喜多見柚「いつもの道をゆく」 (18)


長い長い廊下を歩く。事務所の廊下はなんでか知らないけどめちゃくちゃ長い。十分歩いても部屋に着かない。

だから夏樹サンや拓海サンはバイクで向こうまで行ってるんだ。でもこの前車で廊下を移動してた美世サンがPサンに注意されてた。バイクはいいのに車はダメなんだってさ。変なの。

歩いていると話し声が聞こえてきた。ヘレンサンと李衣菜サンだ。

「ねえねえヘレンさん、隣の家に囲いができたんだって」

「ヘーイ!?」

……ちょっとワールドワイドなロック過ぎてアタシにはわかんないカナ。

ちなみに李衣菜サンは少し前に「言ってるだけじゃロックには到達できないんだ、行動に移さないと!」って言ってから、事務所にいる間はずっと漬物石を背負ってるんだ。努力家だよね。


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開始1レスで既に色々おかしい
期待

世界レベルの事務所


晶葉チャンの研究スペースを覗いてみると、また晶葉チャンの腕が増えてた。

「ん、柚か。作業効率を上げるためにマニピュレータを追加してみたんだ」

でも左腕が一本なのに右腕が四本もあるのはバランス悪いんじゃないカナ?

「……む、そうか?」

晶葉チャンは二、三ヶ月前に自分を改造してサイボーグになったんだ。ウサちゃんロボと合体して巨大ロボになるのを見て、奈緒サンがめちゃくちゃ興奮してたよ。

見た目はどこから見ても普通の人間だから、アイドルの活動には影響がないんだ。そのときは腕もちゃんと一本ずつに戻してるし。

「公私混同をしていては科学者足り得ないからな」だって。プロ精神だよね。


歩いているとシャンデリアが見えてきた。……あれ、この廊下にシャンデリアなんてあったっけ。

あ、違う。あれ仁奈チャンだ。帰ってきてたんだ。

仁奈チャンは半月前に地球の気持ちになって「そういうことでやがりましたか……アイドルとは、生命とは……」って事務所を出ていってから行方不明になってたんだ。心配してたけど、これで安心。

「柚おねーさん、ひさしぶりでやがりますね!」

うん、久しぶりっ。天井にぶら下がってるから……こうもりカナ?

「さすが柚おねーさんでごぜーます!」

ちょっとお話ししたら仁奈チャンは翼を広げて、アタシが歩いてきた方に飛んで行っちゃった。他のみんなにも挨拶してくるんだって。偉いよね。


前から猫が走ってきた。アタシはそれを抱き上げる。おーよしよし、可愛いやつめ。

猫をを追い掛けるように二匹の猫がやってきた。あ、もしかして。

三匹の猫は合体して、ちっちゃいみくニャンになった。だいたい仁奈チャンくらいの大きさカナ。抱き上げたままだからさすがにちょっと重い。

みくニャンは七匹の猫が合体して人間になってるんだって。半年くらい前にカミングアウトしたんだ。

「ねえ、のあにゃんとあーにゃん見なかった!? みくを二匹ずつ連れて行っちゃったのにゃ!」

あー、だから三匹だけなんだ。今日はまだ見てないよ。それにしてもちっちゃいみくニャンは、なんだか新鮮で可愛いよね。ぎゅー。

「あーもー、放すにゃ!」

いつもとはいったい…


「おはようございます、柚ちゃんっ!」

そんな声を残して、足の生えた戦闘機がアタシを追い抜いて飛んでいく。ユッコサンだ。

エスパーになるためのトレーニングをしてたら、いつの間にかああなっちゃったんだって。それが一週間前。

比奈サンが「サイキックじゃなくてナイキックじゃないスかそれ」ってツッコんでた。よくわかんなかったけど、多分アニメの話だと思う。

ユッコサン、人型にもちゃんとした戦闘機にも変形できるんだ。ちょっとコツがいるんだって。

「こう……グルンと回ってガスッと変形する感じです!」って言ってたけど、アタシは変形しないからピンとこなかったなぁ。他のみんなもピンと来てなかった感じで、晶葉チャンだけが頷いてた。

あ、仁奈チャンとはぶつからなかったかな。二人とも飛び始めたばっかりだからちょっと心配だけど、多分大丈夫だよね。

シュールだな


こずえチャンが回ってる。菜々サンが持ってたベーゴマってコマにはまって、最近はずっと回ってるんだ。

回るこずえチャンが廊下の両側の壁にぶつかる度に、壁がちょっと削れていく。それだけ回転力があるんだよ。

「ゆずー……?」

柚だよー。通れないからちょっと上がってくれるカナ?

「いいよぉー」

アタシの頭くらいの場所に浮かんでたこずえチャンが天井スレスレの高さまで上がっていく。よし、これで通れるや。

こずえチャン、ありがとっ。

「えへへー、どういたしましてー……」


そろそろ廊下も終わりかな、と思ったところで見慣れた顔が見えた。卯月サンだ。

「パカー」

あっ違ううづパカだこれ。しかも機嫌がいいのか首がめちゃくちゃ伸びてる、これじゃあうづキリンだよ。それかうづ首だけアナコンダ。

またいで通ろうにも首が床を埋め尽くしてて踏んじゃいそう。そんな時は……これ、ぴにゃこら太帽子!

首の伸びたうづパカにぴにゃこら太帽子を被せると見る見るうちに首が元の長さに戻ってくんだ。そこまで嫌がらなくてもいいのにね。

「パカァ……」

変な顔になってるうづパカからぴにゃこら太帽子を回収して歩く。やっと扉が見えてきた。


扉の近くにある窓から外を見る。大きなキノコがビルより高く伸びていってるのが見えた。

あ、そうか。今日は輝子チャンのライブだっけ。張り切ってるなぁ。アタシも頑張らないと。

いつもの事務所、いつもの廊下、いつものみんな。

アタシはいつも通り、廊下の先の扉を開くんだ。

うん……うん?

これにて終了です。柚の口調は難しいなぁ

なるほど……なるほど(強がり)

乙。アイドルの人間離れ

ファッ!?
地の文有りがシリアス限定ではないとこのSSは教えてくれた

いいssだった、かけ値なしに

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