―廊下―
ペリーヌ「はぁ……。掛けないわけにもいかないし……でも……デザインに優雅さが……」
ペリーヌ「いえ、これもわたくしの責任。デザインに多少の難があってもここは我慢して……」
ペリーヌ「はぁ……」
ルッキーニ「わぁーい。ごはんのじかんだー」テテテッ
リーネ「ルッキーニちゃーん。廊下で走ったら危ないよー」
ルッキーニ「ヘーキだってぇ。リーネもはやくおいでよー」テテテッ
ペリーヌ「さてと……」
ルッキーニ「あにゃ!?」ドカッ
ペリーヌ「きゃっ!?」
バキッ
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ルッキーニ「いたぁいぃ」
ペリーヌ「ちょっと!! 何をするんですの!! ルッキーニさん!! 廊下を走っていいのはスクランブルのときだけとミーナ中佐にも坂本少佐にも言われているでしょう!?」
ルッキーニ「……」
リーネ「ルッキーニちゃん! 大丈夫!?」
ルッキーニ「う、うん。あたしは平気だけど……」
ペリーヌ「いいですか!! 今までもずっと言おう言おうとしていましたが!! 貴女には落ち着きがなさすぎますわ!! ウィッチとして恥ずかしくないの!?」
リーネ「ペリーヌさん!?」
ペリーヌ「リーネさん? 丁度良かったですわ。貴女からもルッキーニさんに言ってあげてくださいな」
リーネ「あの……それ……私じゃなくて……壁のポスターなんですけど……」
ペリーヌ「あ、あら。申し訳ありませんわ」
ルッキーニ「ちなみにあたしだと思って怒ってたのはその隣に貼られてるポスターだよ」
ペリーヌ「……」
リーネ「眼鏡はどうしたんですか?」
ルッキーニ「それはぁ……あたしの足の下に……」
リーネ「え!?」
ペリーヌ「どういうことですの? 足元にあるのなら拾ってくださいな」
ルッキーニ「いいけどぉ、レンズは粉々だしぃ、フレームも折れちゃってるけど……」
ペリーヌ「……そうですか。困りましたわ。予備はそれだけでしたのに」
リーネ「あの、ペリーヌさん?」
ペリーヌ「なにかありまして?」
リーネ「こっちです。そっちは壁です」
ペリーヌ「そちらですか」
リーネ「これいつもの眼鏡じゃないですよね?」
ペリーヌ「ええ。先ほどの訓練中に破損してしまいまして、予備を出してきたのです」
リーネ「そうだったんですか」
ペリーヌ「予備といっても昔からわたくしがレンズを交換しては使用していたものですけど」
リーネ「古いものなんですね」
ペリーヌ「そうですわね。物心ついたときから持っていたものですわ」
ルッキーニ「そ、そうなの!?」
リーネ「これどうしますか?」
ペリーヌ「んー……」
リーネ「ペ、ペリーヌさん……顔が近いです……」
ペリーヌ「これはもう修理もできませんわね」
リーネ「はい。新しい眼鏡はどうしますか?」
ペリーヌ「心配いりませんわ。ミーナ中佐にも言っておきましたから、明日にでも街へ行き誂えます」
リーネ「そうですか」
ルッキーニ「あのぉ……ペリーヌ……?」
ペリーヌ「なんですの?」
ルッキーニ「あたしの指、何本かわかる?」
ペリーヌ「え?」
ルッキーニ「ひっ」
ペリーヌ「……」ジーッ
ルッキーニ「ご、ごめんなさーい!!!」ダダダッ
ペリーヌ「5本、いや、7本ですわ」キリッ
―食堂―
ペリーヌ「んー……これが飲み物かしら……?」
芳佳「ペリーヌさんが眼鏡外してるなんて珍しいね」
リーネ「さっき壊れちゃって」
芳佳「そうなんだ」
ペリーヌ「よし」
芳佳「ペリーヌさん!! ちょっとまって!!」
ペリーヌ「なんですの? 食事中はお静かに」
芳佳「それ水じゃないよ!! 納豆だから飲もうとしちゃダメ!!」
ペリーヌ「なんですって!? それはこれではありませんの!?」
芳佳「それはお味噌汁……」
ペリーヌ「むぅ……。不便ですわね。はむっ」パクッ
ペリーヌ「む……? 噛み切れませんわ……ぐぬぬぬ……!!」
リーネ「ペリーヌさん!! それは布巾です!!」
シャーリー「あっはっはっはっは」
ペリーヌ「シャーリーさん!! 何がおかしいんですの!?」
シャーリー「それカーテンだぞ」
ペリーヌ「こちらですか」
シャーリー「悪い悪い。行儀にうるさいペリーヌが食事中におかしな行動してるからついね」
ペリーヌ「他人の不幸を笑うなんて人間性を疑いますわね」
シャーリー「だから悪かったって」
バルクホルン「視力が更に低下しているのか?」
ペリーヌ「え、ええ……ほんの少し……。で、ですが、眼鏡さえあれば何も問題はありませんから」
バルクホルン「ならばお前にとって眼鏡は大切なもののはずだ。何故壊したんだ。管理が甘いのではないか?」
ペリーヌ「はい……反省しています……」
シャーリー「そういってやるなよ。誰にだって失敗はあるだろ?」
バルクホルン「軍人として支障が出るのであれば失敗など許されない」
エーリカ「大変だなぁ、ペリーヌ。温かいもの食べるときはいつも眼鏡が曇ってるもんね」
ペリーヌ「それは別に」
期待
芳佳「でも本当に大変だよね。布巾を食べ物と見間違えたり、シャーリーさんとカーテンの見分けられなかったりするんじゃ……」
リーネ「うん。ペリーヌさん、可哀相」
ペリーヌ「ふんっ。同情なんていりませんわ」
エイラ「……」
ペリーヌ「……誰ですの? わたくしの目の前にいるのは」
エイラ「これ、なんて書いてあるのか読めるか?」
ペリーヌ「エイラさんですわね。そんなことしないでくださいな。鬱陶しいだけですので」
エイラ「そういうなって。ほら」
ペリーヌ「んー……。んー……? これは……むずかしいですわね……」
サーニャ「エイラ。ペリーヌさんに悪戯なんてしないで」
ペリーヌ「悪戯?」
サーニャ「はい。そこには何も書いてないです」
ペリーヌ「エイラさぁん!!!! なんてことをしますの!!」
エイラ「なんてことないって」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
ペリーヌ「ごちそうさま!! 気分が悪いですわ!!」
芳佳「あ、ペリーヌさん」
ペリーヌ「まったく! わたくしのことを玩具のようにあつか――」ゴンッ
ペリーヌ「くぅぅ……いたい……」
リーネ「大丈夫ですか!?」
芳佳「治療しなきゃ!!」
エーリカ「あんな真正面から壁にぶつかる人、初めて見たよ」
バルクホルン「あれでは戦闘はおろか、飛行訓練もまともにできないな」
シャーリー「その飛行訓練はもう終わってるし、今日のところは何も心配ないだろ」
バルクホルン「あれでか?」
ペリーヌ「平気です。わたくしは1人でもなんとかなりますので」
芳佳「でもぉ」
ペリーヌ「いいって言っているでしょう。ふんっ。今までもこういうことは何度か経験して――」ゴンッ
ペリーヌ「うぅ……いたい……」
シャーリー「誰か傍にいてやらないと心配だな。うん」
ペリーヌ「おでこぉ……」
芳佳「よしよし」ナデナデ
リーネ「あの、ペリーヌさん。眼鏡を購入するまでの間は私と芳佳ちゃんが色々サポートをしますから」
ペリーヌ「サポートって?」
芳佳「晩御飯では食べさせてあげたり、お風呂で体を洗ってあげたり、歯も磨いてあげる」
ペリーヌ「はぁ!?」
エイラ「ペリーヌの介護ダナ」
芳佳「言い方が悪いですよ、エイラさん」
エイラ「でも、そうだろー?」
芳佳「そうかもしれませんけど」
ペリーヌ「宮藤さんやリーネさんに手厚く介護を受けるほど落ちぶれてはいませんわ!! サポートなんて不要です!!」
リーネ「で、でも……」
ペリーヌ「結構ですっ!!! それでは!!」
芳佳「そっち厨房のほうだけど」
ペリーヌ「……こちらですわね」テテテッ
―廊下―
ペリーヌ「はぁ……」
ペリーヌ(ああは言ったものの、この視界ではやはりできることも制限されてしまいますわね)
ペリーヌ「明日までどうしたら……」
ルッキーニ「ペリーヌ!!」
ペリーヌ「次はルッキーニさんですの?」
ルッキーニ「あたしがペリーヌの介護する!!」
ペリーヌ「……必要ないっていいましたでしょう?」
ルッキーニ「ほら、なんでもいってよ」
ペリーヌ「わたくしのことは放っておいてください」
ルッキーニ「でもでもぉ、眼鏡壊しちゃったの私だし」
ペリーヌ「……」ジーッ
ルッキーニ「ひぃ……」
ペリーヌ「珍しいこともありますわね。こんなことで貴女が責任を感じるなんて」
ルッキーニ「だ、だって、流石にごめんねってしてもダメみたいだもん」
ペリーヌ「別にもういいですわよ。壊れたものは戻ってきませんし」
ルッキーニ「どこいくの? あたしが道案内する」
ペリーヌ「いいです。それでは」
ルッキーニ「あぶないっ!」グイッ
ペリーヌ「ちょっと、なんですの!? 腕を急に引っ張るほうが危ないでしょう!?」
ルッキーニ「そっち壁だから」
ペリーヌ「むぅ……。そうでした。それはどうも。でも、わたくしは平気ですので」
ルッキーニ「このまま手を繋いでいればなんとかなるから。あたしがつれていってあげるー」
ペリーヌ「ですから」
ルッキーニ「いこいこ!」
ペリーヌ「……では、わたくしの自室までお願いしますわ」
ルッキーニ「りょうかいっ!!」ギュッ
ペリーヌ「もう……」
ルッキーニ「あにゃ? ペリーヌの部屋ってどっちだっけ?」
ペリーヌ「……」
年代を考えるとペリーヌ嬢の眼鏡はプラスチックレンズじゃなくガラスだな。超割れやすいけどキズには強い、そして重い
美緒「ペリーヌが? そうか……」
ミーナ「明日、街まで眼鏡を買いに行くといっていたけれど、誰か付き添いがいないとダメでしょうね」
美緒「街までいくならシャーリーかハルトマンか……」
ミーナ「私でも美緒でもいいと思うわ」
美緒「明日の朝までには考えておくか」
ミーナ「よろしくね」
ルッキーニ「とーちゃくぅ。ここだよー」
ペリーヌ「間違いありませんの?」
ルッキーニ「あってるってー」
ペリーヌ「なら、いいですけど」ガチャ
美緒「何をしている?」
ペリーヌ「その声は!! 坂本少佐!!」
ルッキーニ「道案内してたんだよー。ペリーヌ、眼鏡なくて大変だから」
ペリーヌ「そ、そうです!! それだけですから!! 少佐!!」
美緒「そうか。ところでペリーヌ。それは私ではなくルッキーニだ」
ペリーヌ「も、もうしわけありません!!!」
ミーナ「私に謝られても」
美緒「なるほど。同伴者でもいないと自分の部屋にも満足にたどり着けないのか」
ルッキーニ「そうみたい」
ペリーヌ「違います!! 誤解ですわ!! わたくしは1人でも問題はないと言ったのですが!! ルッキーニさんが無理やり!!!」
美緒「そこは壁だ」
ミーナ「ペリーヌさん。眼鏡の予備はどうしたの? 確か、予備があるって言っていなかったかしら?」
ルッキーニ「あ、それは……あの……」
ペリーヌ「それも破損してしまいまして。申し訳ありません。わたくしの責任ですわ」
美緒「気をつけろ。ネウロイの襲撃があればどうするつもりだ。お前も貴重な戦力なんだぞ」
ペリーヌ「はい。反省しています」
ミーナ「厳重注意です。今度、同じミスをしたら何らかの罰があると思ってくださいね」
ペリーヌ「は、はい! 本当に申し訳ありませんでした!!!」
ミーナ「よろしい」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
美緒「明日、誰か1人をお前に付ける。いいな?」
ペリーヌ「勿論ですわ。わたくしからもお願いします」
美緒「よし」
ペリーヌ「で、できれば……その……少佐がご一緒に……」
美緒「またあとでな」
ミーナ「行きましょうか」
美緒「ああ」
ペリーヌ「あぁ……少佐……」
ルッキーニ「ペリーヌ?」
ペリーヌ「なんですの?」
ルッキーニ「ごめんね」
ペリーヌ「もういいって言っているでしょう。別に気にしてません」
ルッキーニ「うん……」
ペリーヌ「道案内ご苦労様。もう本当に結構ですから。では」
ルッキーニ「あ……」
―格納庫―
シャーリー「あれぇ? ルッキーニのやつ、ここにもいないのか。どこいったんだ?」
エイラ「で、ツンツン眼鏡の壊れた眼鏡はどこにあるんだ?」
リーネ「それはペリーヌさんがもう捨てました」
エイラ「なんだ。修理もできないのか」
リーネ「もうレンズもどころかフレームも完璧に折れちゃってて」
エイラ「ふぅーん」
リーネ「物心ついたときから使っていた眼鏡だってペリーヌさんは言っていましたけど……」
芳佳「それって宝物ってこと?」
リーネ「そんな風に扱ってる感じじゃなかったよ」
エイラ「別になんとも思ってないけど使えるから使っていただけじゃないのか?」
芳佳「でも眼鏡ぐらいならいつでも買い換えることができたと思うんですけど」
エイラ「物心ついたときから使っているなら、捨てるに捨てれなかったとかあるんじゃないか? ま、どーでもいいけどなー」
芳佳「そういうものなの?」
リーネ「うーん……」
―廊下―
バルクホルン「新しい訓練メニューだ」
エーリカ「パス」
バルクホルン「できるわけないだろ」
ルッキーニ「……」
エーリカ「なにしてるの?」
ルッキーニ「んにゃ?」
バルクホルン「ルッキーニ少尉。ハンガーや木の上で寝るのはもはや注意するだけ無駄だと理解したが、ここで寝ることは流石に許可できないぞ」
ルッキーニ「ねないから。ただ、座ってるだけ」
エーリカ「誰か待ってるわけ?」
ルッキーニ「うん」
バルクホルン「ほどほどにな」
ルッキーニ「あいっ」
エーリカ「じゃね、ルッキーニ」
バルクホルン「次、通ったときに寝ていればそのまま外に放り出すからな」
ルッキーニ「……」
ガチャ
ペリーヌ「あら?」
ルッキーニ「ペリーヌ!!」
ペリーヌ「何をしていますの?」
ルッキーニ「どっか行くの?」
ペリーヌ「どこでもよろしいでしょう」
ルッキーニ「まってよぉ。案内してあげるって」
ペリーヌ「いらないっていって――」ゴンッ
ルッキーニ「あにゃぁ」
ペリーヌ「くっ……痛く……なんて……ないですわ……」
ルッキーニ「あぶないってぇ」
ペリーヌ「わたくしは平気で――」
ペリーヌ「はぷっ!?」バターン
ルッキーニ「にゃ!? こけちゃった……」
―格納庫―
シャーリー「ふんふふーん」
ルッキーニ「シャーリー!!」
シャーリー「よぉ。どこいってんだよぉ」
ルッキーニ「芳佳はぁ!?」
シャーリー「宮藤なら滑走路で走ってるぞ」
ルッキーニ「ありがと!! ほら、こっちだって!!」グイッ
ペリーヌ「ちょっと!! そんなに強く引っ張らないでください!!」
ルッキーニ「よっしかぁー!!! こっちにきてー!!! ペリーヌがたいへんだからぁー!!!」
ペリーヌ「大袈裟ですわよ」
シャーリー「怪我でもしたのか?」
ルッキーニ「ほら、ここ。赤くなってるの」
シャーリー「……転んだか?」
ペリーヌ「そ、そんなわけありませんでしょう!」
芳佳「どうしたのー!?」テテテッ
芳佳「――これで良し」
ペリーヌ「どうも」
芳佳「でも、ペリーヌさん。何もないところで転んじゃうなんて、やっぱり危ないよ。私とリーネちゃんにサポートさせて」
ペリーヌ「ひ、つ、よ、う、あ、り、ま、せ、ん」
芳佳「えぇー?」
ペリーヌ「こういうことは何度もありましたの。慣れていますから」
エイラ「格好つけるなよ、ペリーヌ。もうダサいんだし」
ペリーヌ「放っておいてください。ふんっ」
リーネ「それじゃあ、ルッキーニちゃんがここまでペリーヌさんを?」
ルッキーニ「うん。ペリーヌ1人じゃ大変だし」
リーネ「そうなんだ……」
ペリーヌ「……では、わたくしはこれで」
ルッキーニ「どこいくのー? 付いていってあげるぅ」
ペリーヌ「1人でなんとかなります!!」
ルッキーニ「ならないから言ってるんだよぉ?」
ペリーヌ「ちょっと! 抱きつかないでくださいな!!」
ルッキーニ「でも、こうしてないとまたペリーヌが転んじゃうし」ギュゥゥ
ペリーヌ「もー! お手洗いにもいけないでしょう!?」
ルッキーニ「にゃはっ! あたしが全部お世話してあげる! ここでしゅる?」
ペリーヌ「そんなわけありませんでしょう!?」
エイラ「たのしそーだなぁ」
芳佳「ルッキーニちゃんはいいんだ」
リーネ「みたいだね」
シャーリー「ルッキーニが眼鏡を壊したんだっけ?」
リーネ「は、はい。そうです」
シャーリー「なら、仕方ない。ペリーヌには我慢してもらうしかないな」
エイラ「私もサーニャのお世話したいなぁ」
シャーリー「それはどういう世話だよ」
エイラ「そんなの決まってるだろ」
発進しますでは棚ぼただったペリーヌだが……こちらではどうなるかな
―大浴場―
ペリーヌ「うーん……石鹸は……」
ルッキーニ「ここだよ」
ペリーヌ「どうも」
ルッキーニ「洗ってあげようか?」
ペリーヌ「結構です」
ルッキーニ「そんなこといわずにぃ」
ペリーヌ「なにを……」
ルッキーニ「ごっし、ごっしぃー」
ペリーヌ「きゃぁ!? ダメぇ! そんなところ……つよく……あっ……」
ルッキーニ「ペリーヌ、きもちいい?」
ペリーヌ「や、やめてぇ……すれるぅ……!!」
美緒「仲がいいな。あの二人は。はっはっはっは」
エーリカ「良過ぎない?」
ルッキーニかわいい
ペリーヌかわいい
―食堂―
ペリーヌ「ええと……フォークは……」
ルッキーニ「どれがいい? 魚? スープ?」
ペリーヌ「はい?」
ルッキーニ「どれがいいの?」
ペリーヌ「まずはスープからに決まっています」
ルッキーニ「あーい。……はい、あーんして」
ペリーヌ「1人で食べることはできますから!!」
ルッキーニ「アーンっ」
ペリーヌ「ルッキーニさん!!」
ルッキーニ「あーん!!」
ペリーヌ「……あ、あー……」
ルッキーニ「にゃは! はいっ! 次はどれぇ?」
ミーナ「うふふ。微笑ましいわね」
バルクホルン「くだらないな」
―洗面所―
ペリーヌ「はぁ……。今日は疲れましたわ……」
ルッキーニ「はい、歯ブラシ」
ペリーヌ「どうも」
ルッキーニ「あ、ちょっとまって。あーんして」
ペリーヌ「何故?」
ルッキーニ「いいからぁ」
ペリーヌ「あのですね。いい加減にして――」
ルッキーニ「口あけて」
ペリーヌ「ですからぁ……」
ルッキーニ「はいっ。ゴシゴシ」
ペリーヌ「うぐぐ……!! ふぉうふふぉふぃふぁふぁふぃふぅ!!」
エイラ「本当に介護されてるな、ペリーヌのやつ」
リーネ「そ、そうですね」
芳佳「いいなぁ。私もルッキーニちゃんに優しくされたい」
―廊下―
ペリーヌ「うぅ……」
ルッキーニ「はいっ。ついたよ!」
ペリーヌ「ど、どうも……。もう、正真正銘、結構ですので……」
ルッキーニ「いいの?」
ペリーヌ「いいもなにも最初からわたくしは1人でできますの。ルッキーニさんが余計な気をまわしすぎなだけですから」
ルッキーニ「でもぉ」
ペリーヌ「明日は何もしなくていいですから。わかりましたわね?」
ルッキーニ「……」
ペリーヌ「なんですの、その目は?」
ルッキーニ「あたしにできることなら、なんでも……」
ペリーヌ「もう満足でしょう!?」
ルッキーニ「ひぐっ!?」
ペリーヌ「おやすみなさい!!! また明日っ!!」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
ルッキーニ「……」
エーリカ「なーにしてるのかなぁ?」
ルッキーニ「あれ? どしたの?」
バルクホルン「もう消灯時間だ。今日の寝床をさっさと決めて寝ろ」
エーリカ「いつもは誰よりも先に寝るくせに。今日は夜更かしかぁ?」
ルッキーニ「もうちょっとだけ起きとく」
バルクホルン「あのな」
シャーリー「おーい、ルッキーニ」
ルッキーニ「シャーリー……」
シャーリー「明日、ペリーヌの付き添いに私が選ばれたんだけど、一緒に行くか?」
ルッキーニ「いくー!!!」
シャーリー「よし」
バルクホルン「待て、シャーリー。明日、ペリーヌに付くのは1人までではなかったか? ルッキーニを連れて行く理由もないだろう」
シャーリー「ダメなのか?」
バルクホルン「当たり前だ!! 無駄に戦力を削るやつがあるか!!」
ルッキーニ「えぇー?」
バルクホルン「万が一のことを考えろ」
シャーリー「万が一だろ?」
バルクホルン「ほう? どうやら体に直接叩き込まないと理解できないらしいな」
エーリカ「まぁまぁ、トゥルーデ。いいじゃん、行かせてあげなよ」
バルクホルン「何を言っている。そんなことが許されるわけないだろう」
エーリカ「なんか目的はあるんじゃないの?」
シャーリー「んー。あるかもなぁ」
バルクホルン「目的だと? なんだ?」
ルッキーニ「え? えっとー……」
バルクホルン「いや。言わなくてもいい。察しはつく」
ルッキーニ「ホントぉ?」
バルクホルン「だからと、安易に同行許可は出せない」
シャーリー「それを決めるのは少佐だろ?」
バルクホルン「私が意見してはいけないということもないんだぞ、シャーリー?」
シャーリー「口出しするなよなぁ」
バルクホルン「勝手なことをするな」
エーリカ「ルッキーニはいきたいんだろ?」
ルッキーニ「うん」
エーリカ「じゃ、あとはペリーヌにも聞いてみればいいんじゃない?」
バルクホルン「ペリーヌの意思は関係ない。これは隊の問題だ」
シャーリー「ペリーヌか。首を縦に振ってくれるかな」
エーリカ「断る理由はないだろうし、ヘーキじゃない?」
ルッキーニ「そうかなぁ?」
バルクホルン「話をきけぇ!!!」
ガチャ
ペリーヌ「騒々しいと思ったら……。んー……誰ですの?」
ルッキーニ「ペリーヌ!! 寝る前のトイレでしょ? また拭いてあげるっ」
ペリーヌ「やめて!!! どうして貴女にそこまでお世話されないとならないのっ!!!」
シャーリー「ちょっと待ってくれ。明日のこと伝えておくよ」
またと股をかけた高度なギャグ
ペリーヌ「シャーリーさんが運転を……?」
シャーリー「何か不満でもあるのか?」
ペリーヌ「いえ。くれぐれも安全運転でお願いしますわ」
シャーリー「まっかせろ」
ペリーヌ「……それで、ルッキーニさんも何かわたくしに言いたいことがありまして?」
ルッキーニ「うじゅ」
エーリカ「ペリーヌ。それゴミ箱だから」
ペリーヌ「あら。こっちですか、ルッキーニさん」
バルクホルン「私だ」
ペリーヌ「も、申し訳ありませんっ」
ルッキーニ「あたしも一緒に行っていいでしょ?」
ペリーヌ「ネウロイがいつ来るか分からないのに貴女まで基地を離れてもいいと思っていますの?」
ルッキーニ「そ、そうだけどぉ。あたしも一緒に行きたいの」
ペリーヌ「却下です」
バルクホルン「流石はガリア軍人だな」
ルッキーニ「えぇー!? おねがいぃ!! ペリーヌぅ! ちゃんと手とか繋いであげるし、危ないと思ったら支えてあげるからぁ!!」
ペリーヌ「ですから」
ルッキーニ「ペリーヌぅ! おねがい!」ギュゥゥ
ペリーヌ「……」
シャーリー「ペリーヌ。頼むって」
エーリカ「いーじゃん。もしネウロイがきたって、ルッキーニがいない分は私が頑張るから」
ペリーヌ「はぁ……仕方ないですわね……」
ルッキーニ「にゃは! ペリーヌ!!」
バルクホルン「おい、ペリーヌ」
ペリーヌ「……ルッキーニさん?」
ルッキーニ「なになに? あ、トイレ? 一緒にいこっか」
ペリーヌ「迷惑ですわ。貴女の行動の全てが」
ルッキーニ「え……?」
ペリーヌ「それではおやすみなさ――」ゴンッ
ペリーヌ「くぅぅ……いた……くない……ですわ……!」
シャーリー「おい。そんな言い方ないだろ」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
ペリーヌ「なんですの?」
ルッキーニ「あの、あたしね」
ペリーヌ「眼鏡を踏み壊してしまったことに対する自責の念を持つことはいいことですわ。でももういいの」
ルッキーニ「ちがうの……」
ペリーヌ「これ以上はただのありがた迷惑でしかありませんの。おわかり?」
ルッキーニ「……」
ペリーヌ「お手洗いにまでついてこられても困るだけよ。全く」
ルッキーニ「……わかった」
ペリーヌ「わかっていただけましたか。よかったですわ」
ルッキーニ「おやすみ……」
シャーリー「あ、おい。ルッキーニ」
ペリーヌ「ふんっ」
バルクホルン「……ペリーヌが正しい。自信を持て」
ペリーヌ「わたくしは常に正論しか言いません」
エーリカ「むかつく奴の筆頭だね」
ペリーヌ「なんですって?」
バルクホルン「何も心配はいらないようだな。行くぞ、ハルトマン」
エーリカ「はぁーい」
ペリーヌ「さて、お手洗いに……」
エーリカ「そっちは逆だよ。外でする気か?」
ペリーヌ「ああ、そうでしたか。ありがとうございます」
バルクホルン「ペリーヌ。一ついいか?」
ペリーヌ「なんでしょうか?」
バルクホルン「ルッキーニはずっとここでお前が出てくるのを待っていた。今だけでなく昼もな」
ペリーヌ「知っていますわ」
バルクホルン「眼鏡を壊しただけであのルッキーニがここまでするとは考えにくい。その壊した眼鏡には何かあったのか?」
ペリーヌ「何かと言われても……。あれはただ昔から使っていただけのものですし……特に思い入れがあるわけでも……」
エーリカ「そのことルッキーニは知ってる?」
―滑走路―
ルッキーニ「ぶぅー」
シャーリー「むくれるなって。ペリーヌだって本心じゃないだろうし」
ルッキーニ「もういい」
シャーリー「明日、一緒に行かないのか?」
ルッキーニ「もういいの!!」
シャーリー「いいのか?」
ルッキーニ「ペリーヌなんて嫌い」
シャーリー「あはは。そっか。まぁ、あそこまではっきり言われたらな」
ルッキーニ「もう寝る!!」
シャーリー「おやすみー」
ルッキーニ「もう知らない!」テテテッ
シャーリー「明日は0900時に出発するからー」
ルッキーニ「べーっだ!!」
シャーリー「少佐にも話は通しておくからさー。来たかったらこいよー」
―廊下―
美緒「ルッキーニをか。うーむ……」
バルクホルン「どうだろうか」
ミーナ「明日はエイラさんもいるし、人数に無理があるというわけではないけれど」
美緒「ハルトマン?」
エーリカ「なぁに?」
美緒「ルッキーニがいない分、頑張るというのは本気か?」
エーリカ「まかせてよ。もう3連戦ぐらいしちゃってもいいし」
ミーナ「はいはい。その情熱が明朝まであればいいわね」
エーリカ「あるよー。失敬だなぁ」
美緒「はっはっはっは。それでペリーヌは?」
バルクホルン「なんとも。口では厳しいことを言っていたが」
美緒「ふむ……」
シャーリー「いたいたー!! しょーさー!! あれ? バルクホルン、ハルトマン。何してるんだよ?」
バルクホルン「別に」
―翌朝 滑走路―
サーニャ「ふわぁ……」ブゥゥゥン
ルッキーニ「……」
サーニャ「ルッキーニちゃん?」
ルッキーニ「おかえり」
サーニャ「ただいま。……どうかしたの? こんな朝早くから滑走路にいるなんて」
ルッキーニ「なんでもない」
サーニャ「……あの」
ルッキーニ「なに?」
サーニャ「ペリーヌさんの眼鏡のことだけど」
ルッキーニ「それが?」
サーニャ「きっとペリーヌさんは許してくれていると思うわ」
ルッキーニ「ホントにそう思うの?」
サーニャ「ペ、ペリーヌさんは……その……優しいから……きっと……たぶん……」
ルッキーニ「でも昔から使ってた眼鏡だよぉ? 謝るだけじゃ許してくれないもん」
ツンツンメガネも困ったもんダナ
サーニャ「昔から……?」
ルッキーニ「物心ついたときから持ってたんだって。誰かのプレゼントなんじゃない?」
サーニャ「そうなんだ……」
ルッキーニ「はぁ……」
サーニャ「それはどうしたの?」
ルッキーニ「なにが?」
サーニャ「壊れた眼鏡はどこにあるの?」
ルッキーニ「しらない。ペリーヌが捨ててくるって言ってどっかにもっていったけど」
サーニャ「探しましょう」
ルッキーニ「え?」
サーニャ「それを直せばペリーヌさんもきっと……」
ルッキーニ「無理だって。レンズは粉々だし、フレームもバキバキに折れちゃってたし」
サーニャ「レンズは交換すればなんとかなるわ。フレームは……わからないけど、直せるかも……」
ルッキーニ「もういいよ。無理だもん」
サーニャ「……ま、待ってて」タタタッ
―格納庫―
美緒「ミーナ。宮藤とリーネを見ていないか?」
ミーナ「いえ。今朝のブリーフィング以降は見ていないけれど?」
美緒「ふむ……。訓練の時間なのだがな」
シャーリー「……そろそろ出発時間か」
ペリーヌ「早く行きましょう、シャーリーさん」
シャーリー「待ってくれ。あと3分だけ」
ペリーヌ「シャーリーさん」
シャーリー「絶対くるって」
ペリーヌ「……来ませんわよ。あれだけ言ったのですから」
エーリカ「どーしちゃったんだろ」
バルクホルン「ルッキーニ少尉の軍人としての結論だろう。喜ばしいことだ」
エーリカ「そーかな」
ペリーヌ「時間ですわ。シャーリーさん。お願いします」
シャーリー「仕方ないか……。それじゃ、行ってきます」
―車内―
シャーリー「ルッキーニの手厚い介護はお気に召さなかったか?」
ペリーヌ「別に」
シャーリー「眼鏡を壊されたこと、まだ怒ってるのか?」
ペリーヌ「別に」
シャーリー「ルッキーニはさぁ、真剣に――」
ペリーヌ「シャーリーさんは運転だけに集中してください」
シャーリー「はいはい」
ペリーヌ「ふぅ……」
シャーリー「本当に迷惑だと思ったか?」
ペリーヌ「……」
シャーリー「上官命令だ。答えろ」
ペリーヌ「……ルッキーニさんが責任を感じてああしていることは理解していましたわ」
シャーリー「それで?」
ペリーヌ「だから、ルッキーニさんが納得するまで好きにさせていました。迷惑だったかどうかはまた別の話ですわね」
―街―
シャーリー「この店でいいのか?」
ペリーヌ「ええ。それでは待っていてください」
シャーリー「りょうかーい」
シャーリー「私に似合う眼鏡でも探すか」
ペリーヌ「――シャーリーさん? 何をされていますの?」
シャーリー「どうだ? 似合うか?」
ペリーヌ「子どもじゃないんですから、大人しくしていてくださいな」
シャーリー「ペリーヌにはこの眼鏡はどうだ? この大きめの黒縁眼鏡」
ペリーヌ「それは……」
シャーリー「ルッキーニが壊したのこういう奴なんだろ?」
ペリーヌ「そうですわね。そっくりですわ」
シャーリー「これ、買って帰るか?」
ペリーヌ「冗談はやめてください」
シャーリー「喜ぶと思うんだけどなぁ。にしてもこんな眼鏡をなんで昔から持ってたんだ?」
ペリーヌ「さぁ。誰かからの貰い物か……よくわかりませんわね……」
シャーリー「特に大事なものってわけでもなかったんだよな?」
ペリーヌ「はい。あるから使っていただけですわ。予備として」
シャーリー「……ホントか?」
ペリーヌ「なにがですの?」
シャーリー「なんの思いいれもない予備眼鏡をずっと持ってたのか?」
ペリーヌ「そうですわ」
シャーリー「ルッキーニに知られたくないことがあったんじゃないか?」
ペリーヌ「ありませんわ」
シャーリー「そうか。ペリーヌがそこまでいうなら、もう何もいわない」
ペリーヌ「もう暫く時間がかかると思うので、シャーリーさんは待っていてください」
シャーリー「了解」
シャーリー「……」
シャーリー(誰かの形見っていうならもう少し取り乱してもいいだろうから、そういうのじゃなさそうだな)
シャーリー「考えられるとすれば……」
―501基地―
美緒「宮藤ぃー。リーネー」
美緒「いないか……。訓練の時間が迫っているというのに」
芳佳「さ、坂本さん!!」
美緒「宮藤。ようやく見つけたぞ。どうしたんだ。いつもなら余裕をもって行動する宮藤が――」
芳佳「あの!! 手伝ってください!!」
美緒「何?」
芳佳「私たちだけじゃどうしようもできなくて!!」
美緒「何をしようとしている?」
芳佳「とにかくこっちへ!!」
美緒「お、おい」
芳佳「坂本さんつれてきたよ!!」
エイラ「お。少佐ならいけそうだ」
美緒「その残骸はなんだ?」
サーニャ「眼鏡……です……」
美緒「眼鏡?」
ルッキーニ「うん。ペリーヌの」
美緒「お前が壊したというやつか」
ルッキーニ「ぁぃ」
リーネ「な、なんとかゴミ箱をひっくり返して見つけてきたんですけど」
エイラ「この折れたフレームとかどうやればくっつんだ?」
美緒「無理に決まっているだろう」
芳佳「でも!! 奇跡が起こるかもしれないですし!! ウィッチに不可能はないはず!!」
美緒「こればかりはウィッチでも不可能だ」
芳佳「そんなぁ。坂本さぁん」
ルッキーニ「だから無理だっていったのにぃ」
サーニャ「ごめんなさい……」
エイラ「サーニャが謝ることじゃないってー。大体、ペリーヌにとってこの眼鏡は宝物でも何でもないんだぞ?」
ルッキーニ「そんなのわかんないじゃん」
美緒「……この眼鏡に見覚えがあるぞ」
―車内―
シャーリー「それでよかったのか?」
ペリーヌ「はい。完璧ですわ」キリッ
シャーリー「そうか。よかったな」
ペリーヌ「予備のも購入しましたし」
シャーリー「……」
ペリーヌ「何か?」
シャーリー「いや。帰ったあとはどうするんだろうなぁって」
ペリーヌ「いつも通り任務をこなすだけですが」
シャーリー「ルッキーニのことはいいのか」
ペリーヌ「そうですわね……」
シャーリー「一応、ルッキーニに言うことあると思うけどな」
ペリーヌ「ありませんわ。全面的にルッキーニさんが悪いのですから」
シャーリー「……ま、そうだな」
ペリーヌ「はい」
―501基地―
シャーリー「はい。お疲れー」
ペリーヌ「ありがとうございました」
シャーリー「いや。いいよいいよ」
ペリーヌ「では――」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
ペリーヌ「ルッキーニさん……」
ルッキーニ「あの……」
ペリーヌ「もう気にしていませんから」
ルッキーニ「ウソだよね?」
ペリーヌ「……は?」
ルッキーニ「あたしが壊したやつ、少佐に褒められたやつなんでしょ?」
ペリーヌ「……」
シャーリー「だから捨てられなかったのか?」
ペリーヌ「そ、そうですけど、だからといって大切であったわけでもありませんから。ルッキーニさんが気にすることではありませんわ」
もっさん絡みだったか
シャーリー「少佐が褒めてくれたって、ペリーヌにとっては最高の宝物になるんじゃないか?」
ペリーヌ「まだガリアにいるころ偶々予備の眼鏡を掛けているときがありまして、そのとき坂本少佐が褒めてくださいましたけど、やっぱりあれはデザインに難がありましたし……」
ペリーヌ「掛けていると……その……優雅さもなくて……」
シャーリー「少佐が褒めてくれても掛けて生活する勇気はなかったのか」
ペリーヌ「そうですわ。それに……」
シャーリー「それに?」
ペリーヌ「いつも掛けていた眼鏡も少佐は絶賛してくださいましたから。きっと少佐はどんなものでも褒めてくれたに違いありません」
シャーリー「少佐らしいな」
ペリーヌ「ええ……」
ルッキーニ「でもでも、ペリーヌにとっては大事な眼鏡だったんでしょ……?」
ペリーヌ「ですから、それは――」
美緒「ペリーヌ」
ペリーヌ「しょ、少佐? なにか?」
美緒「どうやら全ては私に原因があったようだな。すまん。軽率なことを言ってしまった」
ペリーヌ「な、何を!! 少佐!! やめてください!!」
>>51
訂正
ペリーヌ「まだガリアにいるころ偶々予備の眼鏡を掛けているときがありまして、
↓
ペリーヌ「まだガリア空軍にいるころ偶々予備の眼鏡を掛けているときがありまして、
美緒「だが、私の一言でお前は捨てられない物を得てしまった。ペリーヌにとっては余計な一言だろう」
ペリーヌ「いえ……そういうわけでは……」
美緒「捨てられない物が多いと人は困るからな」
ペリーヌ「少佐……」
美緒「私に免じてルッキーニのことは許してやってくれないか?」
ペリーヌ「最初から怒ってもいませんし、気にしてもいませんから」
美緒「だそうだ」
ルッキーニ「無理だってわかってたけど、一応ね、芳佳たちと直してみようとしたんだ……」
ペリーヌ「……拾ってきましたの?」
ルッキーニ「うん。サーニャが直してみようっていうから」
ペリーヌ「そう」
ルッキーニ「あたしもね、無理だって分かってたし、ペリーヌをもっと怒らせるだけだからやめようって言ったんだけどぉ」
ペリーヌ「もういいです」
ルッキーニ「でも、何もしなかったら、もっともっとペリーヌを怒らせるかもしれないからっていわれて……」
ペリーヌ「もういいって言っているでしょう? 気にしすぎですわ。全くおバカさんなんだから」
ルッキーニ「ペリーヌ……」
ペリーヌ「わたくしのほうこそ、その……酷いことを言って……申し訳ありませんでしたわ……」
ルッキーニ「ぺりーにゅー!!」ギュッ
ペリーヌ「ちょっと」
ルッキーニ「ごめんなさぁぁい」
ペリーヌ「気にしてません。何回言わせる気なのかしら?」
美緒「ペリーヌはルッキーニに責任を感じて欲しくないからこそ、あえて何でもないように振舞っていたようだな」
シャーリー「でしょうね……。少佐に褒めてもらった眼鏡ですから、それなりにショックはあったと思いますけど」
美緒「人を褒めるのは難しいな。余分な物まで背負わせてしまうことにもなるとは。まだまだ修行が足らんな」
シャーリー「……でも腑に落ちないなぁ」
美緒「どうした?」
シャーリー「物心つくころから持っていた眼鏡なんですよね? で、少佐に会うまで持っていたってことはですよ」
美緒「ガリアから離れるときも持っていたことになるな」
シャーリー「大切なものじゃないって本当なんですかね?」
美緒「ペリーヌ……」
―食堂―
芳佳「よかったね、ルッキーニちゃん」
ルッキーニ「あいっ!」
ペリーヌ「エイラさん」
エイラ「なんだよ」
ペリーヌ「貴女、ルッキーニさんに対しておかしなことを吹き込みましたわね?」
エイラ「な、なにがだよ」
ペリーヌ「努力しているところを見せておけばツンツン眼鏡は許してくれる、と」
エイラ「さぁー、しらねー」
ペリーヌ「エイラさん!!! わたくしをなんだと思っていますの!!!」
エイラ「別になんとも思ってないけど」
ペリーヌ「きぃー!!」
リーネ「ケンカはやめてくださーい」
エーリカ「わーい。わたしもあそぼー」
バルクホルン「お前たち!!! 食堂で騒ぐな!!!」
ルッキーニ「ペリーヌ、ペリーヌ」
ペリーヌ「なんですの?」
ルッキーニ「あーんっ」
ペリーヌ「もういりませんっ」
ルッキーニ「えー? でもぉ」
ペリーヌ「貴女、わたくしの奴隷にでもなるつもり? それなら考えますけど」
ルッキーニ「んー。それはやだー」
ペリーヌ「そうでしょう?」
ルッキーニ「でも、ペリーヌには酷いことしちゃったし、いいよ」
ペリーヌ「は……」
ルッキーニ「ごめんね」
ペリーヌ「あなた……」
芳佳「どうしたの、ペリーヌさん?」
ペリーヌ「いえ。なんでも。はっきり言っておきますけど、お手洗いにまでついてくるような奴隷は邪魔なだけですから」
ルッキーニ「ああいうことするから奴隷じゃないの?」
―ブリーフィングルーム―
ミーナ「……なるほどね」
美緒「どうした?」
ミーナ「ここを見て。フレームは折れてしまったけれど、こうやって破片を集めて組み合わせたら、文字が刻んであったのが分かるわ」
美緒「これは……」
ミーナ「クロステルマンと読めるでしょう」
美緒「つまりこの眼鏡はペリーヌが家族からもらったものか」
ミーナ「そう考えるのが自然でしょうね。まぁ、物心つく前から持っていたならそれしか考えられないけれど」
美緒「ペリーヌのやつ……」
ミーナ「私たちはペリーヌさんの気持ちを汲まないといけないわね」
美緒「そうだな。この話はここだけのものだ」
ミーナ「この残骸がどうするの?」
美緒「ペリーヌは一度、それを捨てたんだ。ペリーヌの決断を尊重しよう」
ミーナ「そんな。確認はとったほうがいいわ」
美緒「答えはわかっているさ」
ペリーヌ「捨ててください」
ミーナ「後悔しない?」
ペリーヌ「それはもうゴミですから」
ミーナ「だけど、本当は貴女にとってとても大切な……」
ペリーヌ「デザインは古臭く、わたくしのために誂えたものでもありませんし。大切なものではありません」
ミーナ「それは……」
ペリーヌ「話は以上ですか」
ミーナ「え、ええ」
ペリーヌ「それでは失礼します」
ミーナ「はぁ……」
美緒「言っただろう。答えはわかっているとな」
ミーナ「……捨ててくるわ」
美緒「頼む」
ミーナ「家族よりもルッキーニさんを選んでくれたのかしら」
美緒「いや。家族だからこその選択だろう」
―廊下―
ペリーヌ「ふぅー……」
ペリーヌ(申し訳ありません……お父様……)
エーリカ「ペリーヌっ」
ペリーヌ「なんでしょうか」
エーリカ「いい眼鏡買ってきたんだねぇ」
ペリーヌ「ええ。わたくしが厳選したものですから」
エーリカ「そっか。じゃ、ちょっと貸してよ」
ペリーヌ「……何故?」
エーリカ「いーじゃん、いーじゃん。はい、もらいっ」ヒョイッ
ペリーヌ「あ、ちょっと!!」
エーリカ「わーい。トゥルーデに私の眼鏡姿見せてこよーっと」
ペリーヌ「ハルトマン中尉ー!!!」
ペリーヌ「あぁ……そんな……」オロオロ
ルッキーニ「ペリーヌ、なにしてるの?」
ペリーヌ「あぁ、ルッキーニさん……」
ルッキーニ「あにゃー。大尉からペリーヌが困ってるって聞いたけどホントだったんだ」
ペリーヌ「た、大尉が?」
ルッキーニ「眼鏡ないじゃん。どこいったの?」
ペリーヌ「それが……ハルトマン中尉に強奪されて……。とにかく予備の眼鏡をとりにいきませんと」
ルッキーニ「どこにあるの? つれていってあげる」ギュッ
ペリーヌ「ルッキーニさん……」
ルッキーニ「ペリーヌのためなら、なんでもするって決めたんだー」
ペリーヌ「……そうですか」
ルッキーニ「ペリーヌの介護はまかせなさーい」
ペリーヌ「迷惑だといいませんでしたか?」
ルッキーニ「にひぃ。迷惑だと思われたってやるから。それにペリーヌだって本当は嬉しいんでしょー? シャーリーも芳佳もそう言ってたしぃ」
ペリーヌ「嬉しいわけないでしょう。自惚れないでくださいな。それより、部屋までお願いしますわね」
ルッキーニ「あいっ」ギュッ
END
>>1乙
起きたら終わっていただと…
乙
乙
おつ
おつ
自分の弱いところを人に見せないペリーヌさんはかっこいいね
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