エーリカ「ミーナとトゥルーデがいなーい」ペリーヌ「少佐もです!」 (108)

欧州 第501統合戦闘航空団基地 食堂

芳佳「バルクホルンさん、今日でしたっけ。クリスさんのお見舞いに行くの」

バルクホルン「あ、ああ。そうだ」

芳佳「折角ですからゆっくりしてきてくださいね」

バルクホルン「そうさせてもらうつもりだ」

ミーナ「ふふっ。宮藤さんのおかげで、トゥルーデも定期的に顔を見に行くようになったのよ? 少し前までは全然行こうとしなかったのに」

芳佳「どうして私のおかげなんですか?」

バルクホルン「こ、こら、ミーナ。余計なことはいうな。それよりも、車を出してくれ」

ミーナ「はいはい。それじゃ、宮藤さん。ごちそうさま」

芳佳「はいっ。気をつけてくださいね」

美緒「――ミーナ、ここにいたのか。たった今、上層部から緊急招集がかかった。すぐに出発する準備をしろ」

ミーナ「え?」

バルクホルン「……」

美緒「どうせ下らないことを聞かされるだけだろうが……って、どうした?」

ミーナ「あ……えーと……」

バルクホルン「行ってきてくれ、ミーナ」

ミーナ「でも、トゥルーデ……」

バルクホルン「気にするな。ハルトマンに運転を頼むことにする」

芳佳「あ、あの。ハルトマンさんは昨日あった夜間戦闘でまだ寝てるんじゃ……」

バルクホルン「叩き起こすから問題はない」

ミーナ「トゥルーデ。流石に可哀相よ」

バルクホルン「だが!!」

美緒「ああ。そうか。見舞いに行く日だったか。すまない、バルクホルン」

バルクホルン「少佐の所為ではない」

芳佳「そうだ。シャーリーさんに頼んでみましょうよ。シャーリーさん、運転上手いんですよね。確か」

バルクホルン「シャ、シャーリーか……うーん……。奴に頼むぐらいなら、ストライカーを使って……」

ミーナ「流石にストライカーユニットの使用は許可できないわよ。素直に頼んでみたら?」

シャーリー「運転?」

バルクホルン「頼めるか?」

シャーリー「まぁ、喜んで。たまにはドライブもいいしね」

バルクホルン「安全運転で頼むぞ」

シャーリー「まっかせろぉ。フルスロットルで行くから、すぐに会えるって」

バルクホルン「事故でも起こして私がクリスに会えなくなったら、一生恨むぞリベリアン!!!」

シャーリー「はいはい」

芳佳「よかったですね、バルクホルンさん」

バルクホルン「道中、不安にたまらないがな」

シャーリー「文句をいうなら、荷台に載せるぞ」

美緒「はっはっはっは。よし。これで憂いはなくなったな」

ミーナ「……美緒。私は少し心配だけど」

美緒「何故だ?」

ミーナ「私と美緒、シャーリーさんとトゥルーデがいなくなるのよ? それって……」

シャーリー「え? 少佐と中佐もでかけるんですか?」

美緒「呼び出されてな」

シャーリー「あぁー。大丈夫か?」

バルクホルン「……やはり、私とシャーリーは残ろう」

芳佳「そんな!! ダメですよ!! あんなに楽しみにしていたじゃないですか」

バルクホルン「だが、大尉以上の士官が不在になるというのは問題だ」

美緒「何も問題はあるまい。まだ中尉が3人もいる」

ミーナ「美緒」

バルクホルン「1人は夜間哨戒明けで眠っているし、もう1人も昼過ぎまでは起きては来ないぞ?」

美緒「最後の1人がきちんと指揮をとってくれるだろう」

ペリーヌ「訓練始めないと……」テテテッ

ペリーヌ「あぁ……メガネ、メガネ……」テテテッ

シャーリー「……いいんですか?」

美緒「ハルトマンが起床してくれば、なんとでもなる。はっはっはっは。仲間を信じろ」

ミーナ「そうね。ネウロイも昨日出現したばかりだし、しばらくは大丈夫よね」

シャーリー「エンジン始動!!」

バルクホルン「静かに運転しろ。全く」

芳佳「気をつけてくださいね」

バルクホルン「宮藤。昼を過ぎてもハルトマンが起きてこないようなら、叩き起こせ。私が許可する」

芳佳「で、できませんよぉ」

バルクホルン「あいつにはそれぐらいしても――」

シャーリー「よっしゃぁ!! いくぞぉ!!!」

バルクホルン「ぉわ!! いきなり飛ばすな!! 速度を落とせ!!! シャーリー!!!」

芳佳「いってらっしゃーい!!」

美緒「宮藤」

芳佳「あ、はい」

美緒「私たちもすぐに出る。ハルトマンとサーニャが起床次第、お前から伝えておいてくれ」

芳佳「わかりました!」

ミーナ「何かあったらすぐに連絡してね?」

芳佳「大丈夫ですよ。なんとかなりますから、きっと」

食堂

芳佳「――というわけです」

リーネ「じゃあ、今日一日は指揮官が不在なの?」

ペリーヌ「そ、そんな……わたくしが訓練をしている最中に……少佐が言ってしまわれたなんて……」

エイラ「てことは、今日は実質休日ダナ」

芳佳「そ、それは違いますよぉ」

エイラ「なんで? うるさい大尉たちや怖い少佐と中佐がいないんだ。羽を伸ばしてもいいじゃないか」

芳佳「で、でも」

ペリーヌ「そうですわよ。エイラさん。決められた訓練、決められた任務はきちんとありますでしょう? そもそもここは前線基地ですのよ?」

エイラ「だから?」

ペリーヌ「だからって……!! わたくしたちは常に戦闘待機中であることをお忘れですか!!」

エイラ「ネウロイは昨日でたばっかりなんだし、大丈夫だろ」

ペリーヌ「そんなことわかりません!! 最近は出現する頻度が高くなっていますでしょう!?」

芳佳「あ、あの、ケンカはしないでください」

リーネ「な、仲良くしましょうよ」

ペリーヌ「いいですか、宮藤さん、リーネさん、エイラさん」

芳佳「は、はい」

ペリーヌ「本日、隊長以下大尉以上の上官が不在です。ということは、中尉であるわたくしが指揮を執る。当然のことですわね」

芳佳「坂本さんもペリーヌさんがいれば大丈夫だろうって言ってました」

ペリーヌ「さ、坂本少佐が……?」

芳佳「はい」

ペリーヌ「ま、まぁ、サーニャさんやハルトマン中尉はまだ起きてらっしゃらないようですから、さ、坂本少佐がわたくしを信頼するのは、至極真っ当なことですわ」

エイラ「はぁ? ただの消去法だろ?」

ペリーヌ「な、なんですってぇ!?」

リーネ「エイラさん!!」

エイラ「ツンツン眼鏡が指揮官はちょっと危険じゃないか? それならサーニャのほうがよっぽど」

ペリーヌ「このぉ……!!」

芳佳「あの、ペリーヌさんもサーニャちゃんも私たち頼りにしてますから」

リーネ「そ、そうですよ。ペリーヌさんがいないと、困ります」

ペリーヌ「ふんっ。とにかく、坂本少佐たちが戻ってくるまでは、わたくしに従ってもらいますから。よろしいですわね」

芳佳「はい。よろしくお願いします」

リーネ「できるだけ迷惑をかけないように頑張ります」

ペリーヌ「よろしい。お二人とも、午後には訓練がありますからね」

芳佳「はい」

ペリーヌ「それでは、後ほど」

エイラ「なんだよー、あれ。調子にのってんなぁ」

芳佳「エイラさん。今日はいいじゃないですか。ペリーヌさんが私たちの中では一番の上官であることは間違いないですし」

リーネ「そうですよ」

エイラ「まぁ、いいけどー。勝手にしてくれ」

芳佳「エイラさん……」

リーネ「だ、大丈夫かな?」

芳佳「ちょっと不安だね」

ルッキーニ「シャーリー!! あれ? ここにもいなーい」

芳佳「あ、ルッキーニちゃん。おはよう。シャーリーさんなら今朝でかけたよ」

ルッキーニ「えぇぇ!? そうなのー!? ならぁ、今日はリーネでいいや!」

リーネ「え? なんの――」

ルッキーニ「うにゃぁー!!!」ギュッ

リーネ「ひゃぁ!! ちょ、ちょっと!! ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「あたしの1日はぁ、ここから始まるのぉ」モミモミ

リーネ「や、やめてぇー!!」

芳佳「……」

ルッキーニ「シャーリーには劣るけどぉ、リーネでも満足ぅ」スリスリ

リーネ「いやぁー!!」

芳佳「おぉぉ……」

リーネ「よしかちゃーん!! たすけてぇー!!」

芳佳「あ……えっと……」

ルッキーニ「にひひ。芳佳もどう?」

芳佳「え? い、いいの……?」

リーネ「だ、だめぇぇ!!!」

エイラ「……やっぱり、今日の501はダメダナ。ま、私も参加するけど」ワキワキ



リーネ「……」

芳佳「あの、ごめんね。リーネちゃん」

リーネ「もう、ひどいよぉ……」

芳佳「ほ、ほら!! 洗濯物干しちゃおう!! ね!?」

リーネ「うん……」

芳佳「あ」

リーネ「どうかしたの?」

芳佳「向こうの空。なんだが、暗くない?」

リーネ「ホント……。雨が降りそう……」

芳佳「洗濯物は室内で干したほうがいいかな?」

リーネ「うーん……そうしよっか?」

芳佳「よし! リーネちゃん、そっち持って」

リーネ「うん!」

芳佳(坂本さんたち、大丈夫かな……?)

正午 食堂

芳佳「はーい。お待たせしましたぁ」

ペリーヌ「いただきます」

エイラ「まぁす」

ルッキーニ「ごっはん! ごっはん!!」

リーネ「……なんだが、寂しいですね。やっぱり」

ペリーヌ「そうですか? ルッキーニさんがいるだけで随分と賑やかですけど」

ルッキーニ「えへへー。ありがとう、ペリーヌっ」

ペリーヌ「褒めてません」

エイラ「……サーニャはまだ起きてこないしなぁ。水も喉に通らない」モグモグ

リーネ「そういえば、ハルトマン中尉もまだだね」

芳佳「あ、いけない。バルクホルンさんに起こすようにって言われたんだ。ちょっと行って来るね」

リーネ「私もいくよ」

芳佳「大丈夫。リーネちゃんはごはん食べてて」

リーネ「う、うん」

ハルトマンの部屋

芳佳「ハルトマンさーん!! 起きてますかー!!」コンコン

『あと、95ふーん』

芳佳「開けますよー?」ガチャ

芳佳「失礼しまーす……」

エーリカ「すぅ……すぅ……」

芳佳「ハルトマンさーん。お昼ですよ」

エーリカ「あと……180分……」

芳佳「あの、ハルトマンさん。もうおきてください。私たち、ハルトマンさんがいないと困るんです」

エーリカ「うぅん……ペリーヌがいるじゃぁん……」

芳佳「ペリーヌさんだけじゃ大変なんですってばぁ」

エーリカ「……だいじょうぶ……だいじょうぶ……」

芳佳「あと180分ですよ?」

エーリカ「うん……おやつは……たべるぅ……からぁ……」

芳佳「わかりました。またあとで来ますね」

食堂

ペリーヌ「ハルトマン中尉はまだ寝ていますの?」

芳佳「はい。起きそうになかったです」

リーネ「そんな……。お昼ごはん、余っちゃうよぉ」

ルッキーニ「あたしがたべりゅー!!」

リーネ「だ、大丈夫?」

ルッキーニ「へーき、へーき」

ペリーヌ「宮藤さん? この状況を中尉にきちんとお伝えしましたの?」

芳佳「え? あ! 言ってませんでした……」

ペリーヌ「何してますの。全く」

芳佳「すいません」

エイラ「ペリーヌ一人でなんとでもなるんだろぉ? なら、いいじゃんか」

ペリーヌ「ま、まぁ、そうですけど。何かあったとき、指揮権がわたくしやハルトマン中尉自身にあることを自覚していてもらわないといけませんでしょう」

芳佳「……」

芳佳(あれ……さっきハルトマンさん、ペリーヌさんに任せようとしてたってことは……うーん……。だけど、ハルトマンさん今まで寝てたし……)

空中

ペリーヌ「ほら宮藤さん!! 遅れていますわよ!!」

芳佳「は、はい!!」ブゥゥゥン

ペリーヌ「リーネさん!! ルート通りに飛ぶことを意識しすぎて、速度が出ていませんわよ!! もっと速く、丁寧に!!」

リーネ「は、はいぃ!!!」ブゥゥゥン

ペリーヌ「宮藤さん!! そんなめちゃくちゃな軌道でネウロイに追いつけますの!?」

芳佳「す、すいません!!」

ペリーヌ「リーネさん!! 今度は雑になってますわよ!!」

リーネ「ごめんなさーい!!」

ペリーヌ「もう!! ぜんっぜん、ダメですわ!!」


ルッキーニ「うわぁ……なんかやだぁ……」

エイラ「張り切りすぎだよなぁ。あんなの私だったら我慢できずに逃げ出してる」

ルッキーニ「あたしもー」

エイラ「少佐のは愛があるけど、ペリーヌのはただ怒鳴ってるだけだな。あーあ。みてられない。サーニャの寝顔でも見に行こうっと」ブゥゥゥン

ルッキーニ「シャーリーはもっと優しいのにぃ」

エイラの部屋

サーニャ「……」ピクッ

サーニャ「ん……?」

サーニャ「……すぅ……すぅ……」

エイラ「――サーニャ?」ガチャ

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「なんだ、まだ寝てるのか。ふわぁぁ。私も寝ようかな」

サーニャ「んぅ……」

エイラ「サーニャはかわいいなぁ」

サーニャ「……エイラ?」

エイラ「あ、起こしちゃったか? まだ寝てていいぞ?」

サーニャ「そう、なの?」

エイラ「今日はな大尉たちに加えて、少佐も中佐もいないんだ。今、この501ではサーニャが一番偉いんだから、もっとゆっくり寝ていてもいいぞ?」

サーニャ「そう……な……ん……すぅ……すぅ……」

エイラ「おやすみ。私も寝るぞ。サーニャっ♪」

射撃訓練場

リーネ「ふっ!」バァン

ペリーヌ「命中ですわね。とはいえ、百発百中には程遠いですけど」

リーネ「ぁぅ……ごめんなさい」

芳佳「……っ」バァン

ペリーヌ「宮藤さん?」

芳佳「や、やる気だけは誰にも負けません!!」

ペリーヌ「いつまでそうやって撃つ事にためらい続けますの!!」

芳佳「できます!! 守るためなら!!」

ペリーヌ「なら、いまやりなさい!!! 貴方の銃弾は殆ど的に当たっていませんわ!!!」

芳佳「だ、だって、リーネちゃんみたいには……」

ペリーヌ「だから訓練を――」

エーリカ「おぉーい……みーやーふーじー……おやつはぁー?」

芳佳「あ、ハルトマンさん!! もうそんな時間ですか!?」

ペリーヌ「中尉。今は訓練中ですから、あとにしてください」

エーリカ「えぇぇ? いま、お菓子がたべたいんだよぉ」

ペリーヌ「まだ、訓練中です。我慢してください」

エーリカ「やだぁー。おやつぅ、おやつぅ!! 私はお昼だって食べてないんだからぁ!! おやつぅ!! おやつぅ!!」ジタバタ

芳佳「ハ、ハルトマンさん、落ち着いてください」

リーネ「そ、そうですよ。訓練が終われば、すぐに作りますから」

エーリカ「いつ終わるんだよぉ?」

芳佳「えーと……」

ペリーヌ「このあともう一度基礎飛行訓練をして、最後にはランニングをしますから、スムーズにいっても2時間後ぐらいですわね」

芳佳「だ、だそうです」

エーリカ「そんなの夕食になるじゃーん!! いま、おかしがたべたい!! たべたいぃ!!」

リーネ「そ、そんなこと言われても……」オロオロ

ルッキーニ「あたしもおやつたべたいぃ、たべたいぃ」ジタバタ

芳佳「あぁ!! ハルトマンさん!! ルッキーニちゃんまで真似をし始めましたから!! やめてください!!」

エーリカ「なら、お菓子つくれー!! おかし、おかしぃ!!」

ペリーヌ「ああ!! もう!! 分かりました!! ティータイムとしましょう!! 宮藤さん、リーネさん!! すぐに準備を!!」

食堂

芳佳「お待たせしました」

エーリカ「わぁ。おいしそー。いただきまーす」

ルッキーニ「はむっ。にゃぁ! おいしぃー!!」

リーネ「よかった」

芳佳「急いで作ったから、味のほうが不安だったんですけど」

エーリカ「ぜーんぜん。うまいっ!」

ルッキーニ「うまいっ!」

芳佳「ありがとうございます」

エーリカ「ほら、宮藤もリーネも座って座って。おやつたべろー」

リーネ「芳佳ちゃん、たべよ」

芳佳「うん、そうだね」

エーリカ「うんうん」

ペリーヌ「全く。予定にない休憩ですわ。いいですか? ティータイムが終わったら厳しくいきますわよ。そのつもりで」

芳佳「は、はい。よろしくおねがいします」

ペリーヌ「――もういいですわね。では、ハンガーのほうへ急ぎなさい」

芳佳・リーネ「「了解!!」」

ペリーヌ「少佐がいないからって、サボれると思ったら大間違いですわ」

エーリカ「ねぇ、ペリーヌ?」

ペリーヌ「なんですか?」

エーリカ「さっき、ミーナから連絡があったんだけどさぁ。天気が大荒れになってるみたいで、帰るのが1日ぐらい遅れるってさ」

ペリーヌ「え……!?」

ルッキーニ「えぇー? それじゃあシャーリーはぁ?」

エーリカ「トゥルーデたちも同じじゃない? そろそろこっちもかなりの嵐になるかも」

ペリーヌ「そんな……。少佐たちが不在なのに……」

エーリカ「まぁ、ペリーヌが頑張ってるし、心配ないと思うけどね」

ルッキーニ「がんばれ、ペリーヌぅ」

ペリーヌ「え、ええ!! わたくしが完璧に少佐や中佐の代わりを務めてみせますわ!!」

ルッキーニ「おぉ!! ペリーヌ隊長だぁ」

ペリーヌ「た、隊長!? わ、悪くない、響きですわね……ふふっ……」

滑走路

芳佳「リーネちゃん、空が……」

リーネ「うん……。嵐になりそう……」

ペリーヌ「ほらはら。雨が降る前に訓練を終わらせますわよ!!」

芳佳「はい」

リーネ「わかりました」

ペリーヌ「では、開始!!」

芳佳「でやぁ!!」ブゥゥゥン

リーネ「まってー!!」ブゥゥゥン

ペリーヌ(こうして少佐の立場になってみると、大変ですわね)

ペリーヌ(粗が目立ちすぎていて、小さなことを褒めるよりも先に怒鳴ってしまいますし……)

ペリーヌ(少佐の心中、お察ししますわ……)

芳佳「うわ……わわわ!! よけてー!!」

リーネ「あ、あぶない!! 芳佳ちゃ――!! きゃぁー!!!」

ペリーヌ「味方に衝突してどうしますの!! やり直し!!」

>>39
ペリーヌ「ほらはら。雨が降る前に訓練を終わらせますわよ!!」

ペリーヌ「ほらほら。雨が降る前に訓練を終わらせますわよ!!」

夕刻 格納庫

サーニャ「……あ。降って来た」

エイラ「ホントだな」

芳佳「はぁ……はぁ……はぁ……」

リーネ「はぁ……ぁ……ん……はぁ……」

エイラ「なんだ、随分といやらしい声を出してるな」

芳佳「か、からかわないで……くだ……さい……」

エイラ「ほら、水だ」

リーネ「あ、ありがとうございます」

ペリーヌ「全く。この程度のことでダウンしてもらってはこちらが困りますわ」

エイラ「ペリーヌ。もういいだろ。新人なんだし」

ペリーヌ「即戦力を求められる501にそのような言い訳は通用しません」

エイラ「だってさ。宮藤、そろそろ殴ってもいいぞ、あのツンツン眼鏡のこと」

芳佳「そ、そんなことしませんよぉ!! ペリーヌさんの言うってることは正しいですし……」

サーニャ「……雨、強くなってきた」

食堂

ペリーヌ「サーニャさん。そろそろ夜間哨戒の時間ではありませんか?」

サーニャ「うん」

エイラ「おい。こんな嵐の中をいかせるつもりか?」

サーニャ「大丈夫よ。雲の上に出れば」

エイラ「だけど、少佐も中佐もいないんだぞ? 万が一のことがあったらどうするんだ?」

サーニャ「でも、少し気になることもあるし」

エーリカ「……なにが気になるの?」

サーニャ「ネウロイの気配がします……」

芳佳「え……!?」

ルッキーニ「きのう、やっつけたのにぃ?」

サーニャ「でも、かなり遠いから。今日明日に接触するようなことはないと思うけど」

エーリカ「なら、いいよ。今日は夜間哨戒なしで」

ペリーヌ「ハルトマン中尉!! サーニャさんがこう言っている以上!! 夜間哨戒はしていただくべきでは!?」

エーリカ「えー? 昼間だって私は嵐の中を飛びたくないけど? 濡れちゃうしさぁ。ズボンはぴったりくっつくし。あれ、気持ち悪いんだよね」

ペリーヌ「そういう問題ではありませんでしょ!!」

エイラ「おい、ペリーヌ。おまえなぁ」

サーニャ「いいのよ、エイラ。私は行くつもりだから」

エイラ「お、おい、サーニャ」

サーニャ「いいですか?」

エーリカ「なんで、私に訊くんだよ」

サーニャ「決めてください」

エーリカ「えー? サーニャは行きたいんだろ? なら、もう行ってきたら?」

芳佳「ハ、ハルトマンさん!! それは少し無責任じゃ……!!」

エーリカ「宮藤はどう思う?」

芳佳「わ、私は……その、行ってほしくはないですけど……」

サーニャ「心配しないで。経験がないわけじゃないし」

芳佳「でも……」

リーネ「あの。少佐か中佐に連絡をとれないんですか? それで判断を仰げば……いいかなって……思うんですけど……」

エーリカ「あの二人は飛ばなくていいっていうよ。それでもサーニャが飛びたいっていってるから、困ってるんだって」

ペリーヌ「ここはナイトウィッチの自己判断にお任せしましょう。まぁ、ネウロイの気配がある以上、放置なんてできませんが」

ルッキーニ「誰かが一緒に飛べば?」

エーリカ「エイラ、寝た?」

エイラ「え? あぁ、うん、まぁ……割と」

ペリーヌ「エイラさん!! 午後から姿が見えないと思ったら!!」

エイラ「うるさいなぁ。別にいいだろ。寝るぐらい」

ペリーヌ「よくありません!!!」

エーリカ「いいじゃん。寝てたなら好都合だし。エイラ、サーニャのサポートよろしく」

エイラ「了解」

サーニャ「いいの? エイラ?」

エイラ「いいっていいって。行くぞ」

サーニャ「ありがとう……」

芳佳「だ、大丈夫なんですか?」

エーリカ「まぁ、大丈夫じゃない?」

リーネ「はぁ……」

廊下

芳佳「今頃、雲の上かな、サーニャちゃん……」

リーネ「やっぱり、少し不安だね」

芳佳「うん。何もなければいいけど」

ルッキーニ「よっしか!! リーネ!!」

芳佳「どうしたの?」

ルッキーニ「お風呂いこ、お風呂ぉ」

リーネ「そうだね。行こうよ」

芳佳「うん。いつまでも心配してても仕方ないし、サーニャちゃんとエイラさんを信じなきゃね」

リーネ「そうだよ」

ルッキーニ「よしよし……にしし……」

リーネ「な、なに? ルッキーニちゃん……?」

ルッキーニ「あたしの1日はこれをしないと終わらにゃーい!!!」モミモミ

リーネ「いやぁぁ!! またぁぁ!?!」

芳佳「おぉぉ……」

通信室

ペリーヌ「……聞こえまして、サーニャさん?」

『はい。感度良好』

ペリーヌ「何か異常は?」

『以前としてネウロイの気配はありますが、遠方にいます。警戒するほどでもありません』

ペリーヌ「そうですか。ですが油断だけはしないように」

『べーっ。言われなくてもしないって』

ペリーヌ「エイラさん!!! なんですかその口の利き方は!!!」

ペリーヌ「エイラさん!! ちょっと!! 聞こえていますの!! エイラさん!!!」

ペリーヌ「……全く。人の気も知らないで」

ペリーヌ「はぁ……。もう寝てしまおうかしら……」

ペリーヌ「い、いえ!! ダメですわ!!」

ペリーヌ(坂本少佐は勿論、バルクホルン大尉もこうして夜通し通信室に詰めているときもあるのに……)

ペリーヌ「がんばりませんと……!!」

ペリーヌ「よし!!」

ペリーヌ「――はっ!!」ガバッ

ペリーヌ「い、いけない……。少し、意識が……」

ペリーヌ「……サーニャさん?」

『はい?』

ペリーヌ「異常はありませんか?」

『しつこいなぁ。ないって言ってるだろ』

ペリーヌ「そ、それならいいんですが……」

『心配してくれて、ありがとうございます。でも、夜間飛行は慣れていますから……』

ペリーヌ「も、申し訳ありません」

『通信終わり』

ペリーヌ「あ、エイラさん!! もう……」

エーリカ「――お疲れだねぇ、ペリーヌ」

ペリーヌ「きゃぁ!? ハルトマン中尉! い、いつからそこに……!!」

エーリカ「はっ!!!ってペリーヌが体を起こすときから」

ペリーヌ「な……ちょっと、油断してしまって……」

エーリカ「昼間もずっと宮藤たちの訓練に付き合ってたもんね。そりゃ寝ちゃうよ」

ペリーヌ「いえ。でも、坂本少佐も同じようなことを……いつも……」

エーリカ「まぁ、あれを真似するのはちょっと無理じゃない?」

ペリーヌ「そんなことはありませんわ。坂本少佐も同じ人間でありウィッチなのですから、少佐のような気概さえ持っていればできるはずです」

エーリカ「じゃ、居眠りしちゃうペリーヌにはまだまだってことだ」

ペリーヌ「そ、それは……そうですわね。わたくしには研鑽が必要ですから」

エーリカ「コーヒーでも飲む?」

ペリーヌ「自分でできますわ」

エーリカ「ふわぁぁ……。そう。んじゃ、ペリーヌ隊長、あとは任せました。私は寝るでありますっ」

ペリーヌ「はい。おやすみなさい」

エーリカ「がんばってー」

ペリーヌ「……何をしにきたのやら」

ペリーヌ「さて、眠気覚ましのコーヒーでも……あら……?」

ペリーヌ「な!? あれから3時間ほど経過していますわ……!!」

ペリーヌ「わ、わたくし……そんなにも仮眠を……!! 不覚……」ガクッ

空中

サーニャ「エイラ、今のは失礼よ。折角心配してくれているのに」

エイラ「でも、つい一分前に定時報告すませたばかりだったじゃないか」

サーニャ「そうだけど」

エイラ「ハルトマン中尉にきちんと言ったのに、あのツンツン眼鏡はまた同じこと訊いてきたんだぞ」

サーニャ「それだけ不安なのよ。少佐も中佐も、大尉たちも居ないって初めてのことだし」

エイラ「うっ……」

サーニャ「あとで謝っておいてね」

エイラ「わかったよ……」

サーニャ「うん」

エイラ「サーニャに言われた仕方ないなぁ……」

サーニャ「私に言われなくても――あっ」ピクッ

エイラ「どうした?」

サーニャ「こちらに近づいてくる……。速度からいって、人工の機体じゃない……」

エイラ「ネウロイか!! よし、戦闘準備だ!!」

通信室

ペリーヌ「うぇ……苦い……ブラックで飲むものではありませんわね……」

『こちら、エイラ。ツンツン中尉、どうぞ』

ペリーヌ「どうかされまして?」

『ネウロイが高速接近中、10分後に接触します』

ペリーヌ「な……!!」

『このままの予測進路だろ、基地のほうへ向かうため、ここで迎撃します』

ペリーヌ「だ、大丈夫ですの!?」

『心配するな。なんとかなる』

ペリーヌ「む、無理だけはしないように!!」

『了解』

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「お、お二人を信じれば……きっと、大丈夫ですわ……」

ペリーヌ「そうですわ。今までだって、サーニャさんはお一人で戦闘をこなしてきたのですから……」

ペリーヌ「で、でも……なにか、準備はしていたほうがいいですわよね……」オロオロ

>>56
『このままの予測進路だろ、基地のほうへ向かうため、ここで迎撃します』

『このままの予測進路だと、基地のほうへ向かうため、ここで迎撃します』

宮藤の部屋

芳佳「すぅ……すぅ……」

『宮藤ー』

芳佳「ん……え……?」

『おきろー』

芳佳「あ……は……ぃ……? なんですかぁ……?」ガチャ

エーリカ「ハンガーで待機」

芳佳「……え? サーニャちゃんになにかあったんですか?」

エーリカ「一応だよ。一応」

芳佳「わ、わかりました!!」

エーリカ「えーと、ルッキーニはどこかなー」テテテッ

芳佳「サーニャちゃん……無事だよね……」

リーネ「芳佳ちゃん!!」

芳佳「リーネちゃんも起こされたの?」

リーネ「うん。とにかく、ハンガーにいこうよ」

通信室

ペリーヌ「サーニャさん。状況は?」

『――ぃ……た――し……』

ペリーヌ「聞こえませんわ!! サーニャさん!!」

ペリーヌ「応答を!! ご無事ですの!? サーニャさん!! エイラさん!!!」

エーリカ「ペリーヌ。落ち着いて」

ペリーヌ「ハルトマン中尉……!!」

エーリカ「交戦中だし、交信は難しいかもしれない」

ペリーヌ「で、でしたら、どうしたら……どうしたら……」

エーリカ「ほらインカムつけて、ハンガーにゴー!」

ペリーヌ「で、ですが、このままここを離れては……!!」

エーリカ「大丈夫だから。ほら、隊長がそんな不安そうな顔してたら、みんな緊張しちゃうだろ?」

ペリーヌ「も、申し訳ありません……!!」

エーリカ「もう全員ハンガーにいるはずだから、ペリーヌもそこで待機」

ペリーヌ「りょ、了解!!」

エーリカ「サーニャ、エイラ。聞こえる?」

『き――ぁ……え……る――』

エーリカ「うーん……」

『ハルトマン!! 状況を説明しろ!!』

エーリカ「待ってたよぉ。すぐに帰ってこれる?」

『まだ無理だ。この嵐じゃどうしたってあと15分はかかる』

エーリカ「えー? つかえないなぁー。この嵐でサーニャたちとは無線つながんないし」

『なんだとぉ!?』

エーリカ「早く戻ってこないと、嵐の空に宮藤を投入するぞー」

『それだけはやめろぉぉ!!! シャーリー!!! 私を基地に向けて投げろ!!!』

『バカ!! 無理に決まってるだろ!!!』

『やれぇ!! 私はどうなっても構わん!!!』

『落ち着けって!!」

『――ちゅ……い……。ハルトマン中尉。応答を……』

エーリカ「サーニャ、無事? 焦らなくていいから、状況を説明してくれない?」

格納庫

ルッキーニ「ふわぁぁ……ねむいよぉ……」

芳佳「我慢して、ルッキーニちゃん」

リーネ「あの、状況はどうなっているんですか?」

ペリーヌ「嵐の所為で上手く連絡がとれませんの……」

芳佳「そ、そんな!!」

ルッキーニ「やばいじゃん。早く行ったほうがよくない?」

ペリーヌ「しかし、この嵐ですわ。無策のまま飛んでも危険が増えるだけです」

リーネ「でも、こうしている間にも二人が大変な目にあっていたら……!!」

ペリーヌ「わかっています。今はただ情報を待つべきです」

芳佳「じっとなってしてられません!! すぐに助けにいかなきゃ!!」

ペリーヌ「新人の貴方が夜の空に飛び込んでもなにもできませんわ」

芳佳「そんなのやってみないとわかりません!!」

ペリーヌ「それで死なれたら、大迷惑です!!!」

リーネ「ペリーヌさん……」

芳佳「行かせてください!!」

ペリーヌ「上官はわたくしですわよ」

芳佳「……」

ペリーヌ「命令に背くのなら、それなりの処分は覚悟してください」

芳佳「……好きにしてください」

リーネ「芳佳ちゃん!!」

ルッキーニ「あ、芳佳ぁ!!」

ペリーヌ「ハルトマン中尉」

エーリカ『はいはい?』

ペリーヌ「新人が一人、飛びたいっていって聞かないのですが」

エーリカ『ペリーヌの考えは?』

ペリーヌ「できる先輩がお一人つくのなら、問題はありませんけど」

エーリカ『そう。なら、ペリーヌ。ゴー』

ペリーヌ「な!? いえ!? そこは貴方が……!!」

エーリカ『通信室から動けるわけないだろー。常識でかんがえろよ』

リーネ「芳佳ちゃん!! 危ないよ!!」

ルッキーニ「夜の空はこわいぞー」

芳佳「でも、行かなきゃ!! サーニャちゃんとエイラさんはきっと困ってる!!」

ペリーヌ「お待ちなさい」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「宮藤さんは、わたくしの二番機です。先行なんて絶対に許しませんわよ」

芳佳「あ、ありがとうございます!!」

リーネ「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「この状況では、さすがのわたくしもただ指をくわえているなんてできませんわ……」

ルッキーニ「あたしはどうすればいい?」

ペリーヌ「リーネちゃんとルッキーニさんは待機。何かあればすぐに飛んでもらいます」

リーネ「了解」

ルッキーニ「りょっかい!!」

芳佳「早く出ましょう!! ペリーヌさん!!!」

ペリーヌ「わかっています!! 上官に命令しないでくださいな!!」

>>69
ペリーヌ「リーネちゃんとルッキーニさんは待機。何かあればすぐに飛んでもらいます」

ペリーヌ「リーネさんとルッキーニさんは待機。何かあればすぐに飛んでもらいます」

芳佳「宮藤芳佳!! いきますっ!!!」ブゥゥゥン!!!!

ペリーヌ「お待ちなさいってばぁ!!!」ブゥゥゥン!!!

リーネ「気をつけてねー!!!」

ルッキーニ「がんばれー!!!」

リーネ「無事に戻ってきてね……芳佳ちゃん……」

ルッキーニ「あー。行っちゃったぁ」

エーリカ「――よっと。もう、二人は行った?」

リーネ「ハルトマン中尉!? 通信室に居なくてもいいんですか!?」

エーリカ「え? いる必要なんてないし」

ルッキーニ「うにゃ? どういうこと?」

エーリカ「だって、もうサーニャが――」

バルクホルン「――急げ!!! シャーリー!!!」

シャーリー「待てって!!」

バルクホルン「待てるかぁ!! 今、宮藤が飛んだのをみていないのかぁ!!!」

エーリカ「あ、戻ってきた。案外早かったな」

空中

芳佳「サーニャちゃん……エイラさん……!!」ブゥゥゥン!!!

ペリーヌ「宮藤さん!! 急ぎすぎですわよ!!」

芳佳「でも……!!」

ペリーヌ「冷静になりなさい。救える命も救えなくなりますわよ。貴方の治癒魔法も同じですわ」

芳佳「え……?」

ペリーヌ「強大な魔法力ではありますが、それを使いこなせなければ簡単な傷すらも癒すことが難しい。そうでしょう?」

芳佳「は、はい」

ペリーヌ「でも、落ち着いて魔力を制御できれば、どんなに大きな傷も貴方なら癒せる。人を救えるのですわ」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「戦闘でも同じです。味方を助けることばかりに目がいき、状況も冷静に判断できないようであれば、その味方と共に貴方も命を落とす」

ペリーヌ「そうなれば、残された側の悲しみが無駄に大きくなるだけ。それが貴方の望むことであるというなら、別ですが」

芳佳「そんなことありません!! みんなで生きて戻ります!!!」

ペリーヌ「なら、まずは落ち着きなさい。今のままでは何もできません」

芳佳「はい……すいません……」

ペリーヌ「まぁ、だから悠長に飛んでいては駄目。訓練のときにも言いましたが、丁寧に速く飛ばなければ。特にこんな嵐の中では」

芳佳「はい!!」

ペリーヌ「しっかりついてきなさい」ブゥゥゥン

芳佳「了解!!!」ブゥゥゥン

ペリーヌ(今、行きますわ……エイラさん……サーニャさん……!!)

芳佳(待ってて……!! すぐに助けるから……!!!)

『そろそろ見えてくるんじゃない?』

ペリーヌ「ハルトマン中尉!? 本当ですか!?」

『しっかり前方を見て』

芳佳「ん……?」

ペリーヌ「あ!!」

エイラ「あれ? なんだ? 誰かこっちにくるな」

サーニャ「あ、芳佳ちゃん」

芳佳「サーニャちゃーん!!!!」

ペリーヌ「エイラさん!! お怪我はありませんの!?」

サーニャ「芳佳ちゃ――」

芳佳「サーニャちゃん!! 大丈夫だった!? 何とも無い!?」ギュゥゥ

サーニャ「うんっ。平気だよ」

エイラ「あ!! こら!! 宮藤、サーニャにだきつくなぁー!!!」

ペリーヌ「エイラさん!!」

エイラ「な、なんだよぉ?」

ペリーヌ「……なんとも、ありませんわね?」

エイラ「別になんてことないって」

ペリーヌ「なら、どうして……無線のひとつぐらい……」

エイラ「いや……」

ペリーヌ「どれだけ心配したのか、わかりまして!?」

エイラ「お、おこるなよぉ。無線の調子だってよくなかったし」

ペリーヌ「そんなの関係あ、り、ま、せ、ん、わっ!!」

エイラ「なんだとぉ?」

サーニャ「待ってください。ハルトマン中尉にはきちんと報告しました。ネウロイを撃墜。サーニャ、エイラ、共に無傷だと」

芳佳「えぇぇ!? そうなの!?」

ペリーヌ「それは、いつのことです?」

エイラ「もう10分ぐらい前じゃないか?」

芳佳「それって……」

ペリーヌ「わたくしたちが出撃する前……ですわね……。おのれぇ、ハルトマン中尉ぃぃ……!!!」

芳佳「はぁぁ……でも、よかったぁ。怪我一つなくて」

サーニャ「ごめんね。心配かけて」

芳佳「ううん!! サーニャちゃんが無事ならそれでいいよ!!」ギュッ

サーニャ「ありがとう」ギュッ

エイラ「こらぁー!!宮藤ぃー!! なにやってんだぁー!!! はなれろぉー!!!」

ペリーヌ「もう……疲れましたわ……」

バルクホルン「――宮藤ぃぃ!!!!!」ゴォォォォ

芳佳「え!? バルクホルンさん!?」

バルクホルン「無事かぁ!!!」ギュゥゥゥ

芳佳「く、くるしぃ……ですぅ……!!」

格納庫

ペリーヌ「ハルトマン中尉!!! どういうことですの!!! 撃墜報告を受けていたなら!!! 教えてくれればいいじゃないりませんの!!!」

エーリカ「うるさいなぁ。ちょっとした連絡ミスだろ」

ペリーヌ「ちょ、ちょっとしたって……!!!」

バルクホルン「ハルトマン。仲間の生存報告はとても大事なものだ。それぐらいわかっているだろ。何故、それを怠った?」

シャーリー「そうだなぁ。宮藤じゃなくても、飛び出したくなる」

エーリカ「いや……今日、ペリーヌが張り切りすぎてたから、みんなが嫌な気分になってるんじゃないかって……」

ペリーヌ「はぁ……?」

バルクホルン「どういうことだ?」

エーリカ「あー。もういいだろー。にるなりやくなり、すきにしろー」

バルクホルン「こんなところで寝そべるな!!」

芳佳「バルクホルンさん!! いいじゃないですか!!」

バルクホルン「いいわけあるか」

サーニャ「あの、私たちも無事でしたし……」

エイラ「ペリーヌが私のことをどう思っているのか、ちょっとわかったしなぁ。許してやってもいいんじゃないか?」

>>85
ペリーヌ「ハルトマン中尉!!! どういうことですの!!! 撃墜報告を受けていたなら!!! 教えてくれればいいじゃないりませんの!!!」

ペリーヌ「ハルトマン中尉!!! どういうことですの!!! 撃墜報告を受けていたなら!!! 教えてくれればいいじゃありませんの!!!」

ペリーヌ「な、なんですって……?」

エイラ「わるかったなぁ、ペリーヌ。こんなに心配してくれるとは、思ってなかった」

ペリーヌ「そ、それは!! 貴方がお亡くなりになったら、戦力の低下が否めないからで……!!!」

エイラ「へぇー。あんなに泣きそうな顔になってたのにかぁ?」

ペリーヌ「泣きそうになんてなってません!!!」

エイラ「ペリーヌ、サーニャと私で一緒に風呂でもいくか?」

ペリーヌ「いきません!!!」

芳佳「サーニャちゃん、一緒にお風呂いこうよ」

サーニャ「ええ」

芳佳「リーネちゃんもルッキーニちゃんもいこ!」

リーネ「うんっ」

ルッキーニ「おっふろ!! おっふろぉ!!」

エイラ「あぁー!! こらぁ!! サーニャを勝手にさそうなぁー!!! 私も一緒だかんなぁー!!!」

ペリーヌ「ちょっと!! エイラさん!! わたくしを誘っているのか、宮藤さんを誘っているのかはっきりしてください!!!」

バルクホルン「何をやっているんだ、こいつらは。緊張感がないというか……」

シャーリー「まぁ、いいんじゃない? これぐらいで」

バルクホルン「あのなぁ」

エーリカ「わたしもおっふろー」

バルクホルン「お前はこっちだ」グイッ

エーリカ「なんでだよぉー。頼まれたことはやっただろぉー?」

バルクホルン「頼まれていたこと?」

ミーナ「――みんな!!」

シャーリー「お。中佐、おかえりなさい」

美緒「ネウロイの襲撃にあったと聞いて、強引に戻ってきたが……。全員、無事か?」

バルクホルン「心配はいらない。サーニャとエイラが殲滅した」

ミーナ「そう……。よかったわ。それにしても二日続けてなんて……。これからはもっと警戒しないとダメね」

エーリカ「それより少佐ぁ。トゥルーデが怒るんだけどぉ」

美緒「どうした?」

エーリカ「少佐に言われた通り、ペリーヌのアシストしたんだけどぉ。トゥルーデが銃殺だぁーって」

バルクホルン「そんなことは言っていない!!!」

シャーリー「なんだ。少佐、ハルトマンに初めからペリーヌに面倒をみろって言ってたんですか」

美緒「ペリーヌはあの性格だからな。他の者と摩擦が生まれる可能性もある。なので、ハルトマンにはそうならないように気にかけて欲しいとは言っておいただけだ」

バルクホルン「そうだったのか」

エーリカ「そうだよー」

ミーナ「それで、ペリーヌさんはどうだった?」

エーリカ「いいんじゃない? 将来はいい隊長になれるよ、きっと」

美緒「はっはっはっは。そうかぁ。よかったな、ミーナ。後釜の心配が消えたぞ」

ミーナ「そうだといいのだけれど」

バルクホルン「だが、報告義務を怠った事実は消せないぞ」

エーリカ「えぇ……。もうゆるしてよー」

バルクホルン「煮るなり焼くなりと言っていたではないか」

エーリカ「あれは、うそっ。てへっ」ペロッ

シャーリー「……どうする?」

バルクホルン「もういい。怒るのも疲れた」

美緒「では、全員で風呂にいくか」

大浴場

エイラ「ほーら!! 洗ってやるぞぉ!!」

ペリーヌ「やめてぇぇ!! どこを触っていますのぉぉ!!!」

エイラ「でも、やっぱり、この胸はつまんねーなぁ」

ペリーヌ「触っておいて何を勝手なことばっかりぃ!!!」

サーニャ「エイラがかっこよく、私を庇ってくれたの」

芳佳「へぇー。そうなんだー」

サーニャ「エイラがいなきゃ、何もできなかったわ」

リーネ「エイラさんはやっぱりすごいんですね」

ルッキーニ「リーネだって……こっちがすごーい!!」ギュッ

リーネ「きゃぁぁぁ!!!」

芳佳「ほぉぉ……」

リーネ「やめてぇぇ!!!」

エイラ「やっぱり、触るならリーネダナ。ふっふっふっふ」

リーネ「いやぁぁ!!」

バルクホルン「朝から騒がしい連中だ」

シャーリー「ろくに寝てないからおかしなテンションになってるんだろ?」

美緒「そうか。寝ていないのか。正午を過ぎてから宮藤とリーネが倒れなければいいが」

ミーナ「今日は私たちが頑張らないといけないかもね」

エーリカ「えぇ……なんで、私まで……。わたしも……ねて……ない……の……」ブクブクブク

バルクホルン「エーリカ!!! 風呂で寝るな!!! 死ぬぞ!!!」

ペリーヌ「ハルトマン中尉」

エーリカ「んえ?」

ペリーヌ「……あの、今日は色々とありがとうございました」

エーリカ「別になにもしてないけど」

ペリーヌ「そんなことは……」

エーリカ「ま、少佐みたいになるにはまだまだ勉強しないとねー」

ペリーヌ「はい。がんばりますわ」

美緒「なんだ、ペリーヌ。私のようになりたいのか? はっはっはっは。いい心がけだな」

ペリーヌ「は、はぁい!! わたくしの夢は坂本少佐になることですからぁ!!!」

食堂

ペリーヌ「ふぅ……。やはり眠気が……」

芳佳「あの。ペリーヌさん」

ペリーヌ「なんです?」

芳佳「今日はごめんなさい」

ペリーヌ「……違います。本当に貴方は物の道理というものが分かっていませんのね」

芳佳「え? でも、今日は……ペリーヌさんの命令を……」

ペリーヌ「わたくしは貴方に戦場での大切なことを教えて差し上げましたでしょう?」

芳佳「冷静になること、ですね。あと、素早く、丁寧に飛ぶ」

ペリーヌ「そうです。教えてもらったのなら、謝罪はおかしいでしょう? 貴方の教えなんていらないってことになりますわよ?」

芳佳「あ……」

ペリーヌ「お礼を言うのが筋ではなくて?」

芳佳「……ありがとうございます!! でも、命令違反の件は……?」

ペリーヌ「よく覚えてませんわ。寝てなかったので。ですので、もういいですわ」

芳佳「ペリーヌさん……」

ハルトマンの部屋

エーリカ「すぅ……すぅ……」

バルクホルン「起きろ!!! ハルトマン!!! 仮眠時間はとっくに超過しているぞ!!!」

エーリカ「あと……240分……」

バルクホルン「何時間眠る気だぁぁ!!! きさまぁぁ!!!!」

エーリカ「うぃー……」

ペリーヌ「大尉。あの……」

バルクホルン「どうした?」

ペリーヌ「もう少しだけ、寝かせておいてあげるわけには……」

バルクホルン「……」

ペリーヌ「あ、あの!! 本当に中尉もお疲れになっているでしょうし」

バルクホルン「そうだな」

ペリーヌ「大尉、ありがとうございます」

バルクホルン「だが、60分だけだぞ、ハルトマン」

エーリカ「ぃえーぃ……すぅ……すぅ……」

ペリーヌ「ゆっくりお休みになってください」

バルクホルン「本当に今日だけの特別措置だぞ」

芳佳「ハルトマンさーん!!」テテテッ

ペリーヌ「あら、宮藤さん。どうしましたの?」

芳佳「あ、ハルトマンさんが疲れているだろうから、甘いお菓子を作ったんです」

バルクホルン「すまない、宮藤。ハルトマンは昨夜からの疲れで――」

エーリカ「お菓子!?」ガバッ!!!

ペリーヌ「な……!?」

芳佳「どうぞ、ハルトマンさん」

エーリカ「いいのぉー!? ありがとー、宮藤は気が利くねー。いい隊長になれるぞー」ナデナデ

芳佳「あ、いえ、そんな……私なんて……」

エーリカ「おいひぃ。しあわせぇ」

バルクホルン「わかったか、ペリーヌ。エーリカ・ハルトマンとはこういう人間だ。少し助けてもらったからって甘やかす必要はない」

ペリーヌ「そう……ですわね……。よくわかりましたわ……」

エーリカ「あぁー。お菓子、おいしぃー」
                          おわり

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