P「だー! くそっ杏の奴!」
智香「どうしたんですか、プロデューサーさん?」
P「あいつまたドタキャンしたんだよ! しかも単独イベントで! 周りに頭下げっぱなしだ」
智香「前の時も、休んでましたよね。杏ちゃん、何かあったんですか?」
P「何かと言うか、あいつの言うことには…」
~~~~
P『杏、これから忙しくなるぞ!』
杏『忙しくなるって、世間は夏休みだよ? うちの事務所も夏休みにしようよ』
~~~~
P「世間が夏休みだから忙しいんだよ!」ダンッ
智香「わわっ」
P「この稼ぎ時にニートでいられるのは困るんだよ!」
P「昨日なんてなぁ…」
~~~~
杏『ねーねープロデューサー、杏プロフェッショナルだから体調が万全じゃないと仕事に支障が出るよ。今日は休みにして…』
P『ほー、そんなこと言っていいのか。今日の報酬はこいつだってのに』ゴソゴソ
杏『いつまでも杏を飴で釣れるとは思わないでよね』
P『そう言ってられるのも今のうちだ、これを見ろ!』バーン
杏『おおぅ、何!? その高級っぽいチューベットアイスみたいなのは!?』
P『ふふふ、これはキャンディフラッペというやつだ! うまそうだろ?』
杏『す、すっごい美味しそうだ!』
P『今日の仕事をちゃんとこなしたら、これをやろう!』
杏『でもここ、冷凍庫ないじゃん。溶けちゃうよ。先に食べていい?』
P『確かに…そうだな。いいぞ、その代わりちゃんと…』
杏『ぺろり。いやぁ、美味しかった。帰って寝よ』スタスタ
~~~~
P「正直予想してたよ!!」バンッ
智香「わわわ」
P「この件に関してはあいつに先払いで報酬与えた俺が馬鹿だったよ!!」
P「でも1本あたり400円以上するし確かに溶けると勿体ないからってやっちまったんだよ!!」
智香「なんだか、とっても美味しそうですね! アタシもちょっと食べてみたいかも」
P「事務所の冷凍庫に入ってるから食うか?」
智香「いいんですか?」
P「いいよいいよ、まだたくさんあるし」
智香「うわぁ、ありがとうございますっ!」
智香「んー、冷たくておいしいですっ」ペロペロ
P「そうか、それはよかった。まぁ、それより今は杏のことだ」
智香「杏ちゃんが休んでるなら、その分アタシ達が頑張っちゃいますっ!」
P「なぁ、智香…この前のイベントを覚えているか」
智香「この前ですか?」
P「杏以外のみんなで参加したあのイベントだ」
~~~~
友紀『いちば~んショートひめかわ~(ウグイス嬢の真似)』
智香『みんなーっ! ファイト全開で行こーっ!』
茜『よっしゃ杏ちゃんの分まで行くぞーっ、きらりん!!』
きらり『にゃはーっ、がしがしがんばっちゃおーっ☆』
~~~~
智香「いつも通りでしたよね?」
P「ああ、ここまではいつも通り…いや、いつも以上にやる気に溢れていた。でもな…」
~~~~
6時間後…
智香『フレーッ☆フレーッ☆』
きらり『にゃはははははは☆みんなハピハピしてりゅー!? ひゃはー☆』
友紀『延長戦だよ! まだまだこれからっしょ!』
茜『行ける行けるまだまだ行けるもっともっと熱くなろうよ熱く!!』
~~~~
P「やりすぎなんだよ!!」ズガンッ!
智香「わっ」
P「なんで通常の3倍近くやってるんだよ!!」
智香「みんな、すっごく頑張ってましたよね!」
P「お前らストッパー役がいないと暴走するんだよ!!」
智香「うーっ、元気な方がみんなも熱くなっていいかなーって…」
P「元気ありすぎ熱くなりすぎなんだよ! 熱中症で倒れる人が続出してたぞ!」
P「ともかく」
智香「はい? アタシですか?」
P「いや、智香とは言ってない。前のような悲劇を繰り返すわけにはいかない」
P「うちには今から新しいアイドルを引き込んだり育てている暇も予算もない…なんとしても杏を働かせてやる」
智香「頑張ってください! 応援してますねっ☆」
P「あ、いや。そのことなんだが、智香」
智香「え? 応援、必要ないですか?」
P「そうじゃなくて。智香、杏をどうにか引っ張り出して来てくれないか?」
智香「アタシがですか?」
P「ああ。いつもみんなを応援してくれる智香がうってつけだと思ってな」
P「あのクソニートをなんとかやる気にさせてくれないか?」
智香「えっと…やる気がないのにムリヤリ頑張らせるのって、あんまり好きじゃないかも」
P「え、そうか? 応援にもポリシーがあるんだな」
智香「頑張ってる人の背中を押してあげるのが好きなんですっ☆」
P「でも、応援してくれる人がいれば…手を引っ張ってくれる人がいれば、やる気出してくれるかもしれないぞ」
智香「うーん…そうですかね?」
P「そうそう、頑張る人の背中を押すだけが応援じゃないぞ」
智香「わかりましたっ! それなら、やってみますね!」
P「よし、任せたぞ智香!」
~杏宅~
ピンポーン
杏「ん…?」
ピンポーン
杏「誰だ杏の休息を乱そうとする奴は」
杏「今、杏一人だし居留守使ってやれ」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
杏「うあーうるさっ! プロデューサーだなっ!?」
タッタッタッタ
ガチャン
杏「プロデューサー! 近所迷惑だからやめなよ!」
智香「アタシだよ、杏ちゃんっ☆」
杏「へ、智香?」
智香「はい、カル○ス」コトッ
杏「んー。で、どうしたのさ突然?」グビッ
智香「杏ちゃん、最近お仕事休んでるよね?」
杏「夏休みだからね。杏も夏休みなのさ」
智香「杏ちゃん、お仕事頑張ろうよ、気持ちいいよ!」
杏「はぁ、なるほどね。プロデューサーの奴、今度は智香を使って来たか…」
杏「ま、私としては智香でよかったよ」
智香「そうなの?」
杏「きらりと茜は会話が成立しないからな…疲れるんだ…」
智香「友紀さんは?」
杏「ユッキはなんでもかんでも野球に結びつけようとしてくるから意味わかんないんだ」
智香「杏ちゃんがいないと駄目なんだよっ!」
杏「アイドルは他にもいるだろー、杏が行く必要はない」
智香「アタシ、頑張る杏ちゃんも見てみたいな!」
杏「前のライブの時の映像でも見れば」
智香「ちょっとでいいから! やってみれば、きっと楽しいよっ☆」
杏「断固拒否する!」
智香「みんなで力を合わせて、トップアイドル目指そうよ!」
杏「杏はそんな青春ドラマみたいな感じに興味はない!」
智香「でも」
杏「何を言ってもムダだ! 杏は働かないぞ!」
智香「………」
智香「そっか…」
杏「ふ、これに懲りたら私に関わらないことだ、今日のところは帰って休むんだな」
杏「あとプロデューサーに長期休暇の申請を…」
智香「わかった!」
杏「?」
智香「杏ちゃんは『頑張らないこと』を頑張ってるんだねっ!」
杏「は?」
智香「プロデューサーさんが持ってきた仕事に、あえて挑まない! 杏ちゃんはそうやって自分を貫いてるんだねっ!」
杏「え、いや…まぁ」
智香「よーし、そういうことなら思いっきり応援しちゃうよ! 頑張って休暇を勝ち取ろうっ☆」
杏「お、おう…」
智香「声が小さいよーっ! もっともっとー! おーっ!!」
杏「智香はまともだと思ってたのに!」
そして…
智香「アタシ、杏ちゃんが頑張らないのを応援する事にしましたっ☆」
P「……………………」
P「な~ん~で~」
P「だよっ!!」ドンッ
杏「」ビクッ
P「なんで智香がそっち行っちゃうんだよ!! 頑張る人を応援したいんじゃなかったのか!?」
智香「はいっ! だから、こうして休暇を取るために頑張る杏ちゃんを応援しますっ☆」
杏「まぁ、杏にもよくわからんけど…そういうことだから、きっちり休みを貰いに来たよ!」
P「くっ…上等だ、なんとしても働かせてやる…!」
智香「プロデューサーさんもがんばれっ☆」
P「CDの売り上げが落ちて印税も減ってるぞ! いいのか!?」
杏「よくないけど、今の時期暑いし外に出たくない!」
智香「ふぁいとっ☆」
P「なら屋内の仕事を多くとってやる! それならいいだろ!?」
杏「証明が熱い!」
智香「えい、えい、おーっ!」
P「暖房ついてる冬よりマシだろ!」
杏「ぐぬぬ」
P「それにな、ストッパー役のお前がいないとチームがまとまらないんだ」
杏「まとまらない?」
P「そうだ! お前がいないとみんな暴走して止まらないぞ! 地球の気温も上がって余計暑くなる!」
杏「あいつらが止まらないのって、杏がいないのよりプロデューサーの腕が問題なんじゃないの?」
P「ぐはっ…!」
杏「だいたいだな…」
智香「プロデューサーさん怯んでる! そこだーっ☆」
杏「………」
智香「いけいけ杏ちゃんっ!」
杏「………」
智香「FIGHT! FIGHT!」
杏「いや…ごめんプロデューサー、ちょっと言い過ぎたよ…」
P「え?」
杏「仕事も受けるよ。確かに収入も減って来たし一回くらいなら…」
智香「えっ!? 杏ちゃん!?」
P「いいのか?」
杏「なんかもうめんどくなってきた…」
その後…
P「よし、今日は絶好のライブ日和だな!」
杏「ちょっと、話が違うじゃん! 屋内の仕事じゃないの!?」
P「多く取るって言っただけで外での仕事がないとは言ってないぞ」
杏「はーもう、仕方ないな…さっさと終わらせて帰ろう」
智香「うーっ…杏ちゃん、せっかく頑張らないの、頑張ってたのに…アタシのせいなのかな…?」
杏「そうだよ」
きらり「杏ちゃん、そんなこといっちゃめーっ! だよっ!」
茜「私は智香さんの応援すっごく嬉しいですよ!! メラメラって来ちゃいます!!」
友紀「うんうん、智香ちゃんに応援してもらうと自分が甲子園球児になったような気分になるよね!」
杏「お前らと一緒にするな~!」
ザワザワザワ…
P「さぁみんな、ファンのみんなが待ってるぞ! 行ってこい!」
友紀「先頭打者姫川、ここは塁に出て先制のチャンスを作って行きたいところ」
茜「よっしゃー!! 今日も全力全開っ!!」
きらり「杏ちゃんもばしっとぱわー注入してだだだーんでいこー☆」
杏「へいへい、頑張ってくるよ」
智香「頑張る!?」ピクッ
杏「うげ!」
智香「うん、一緒に頑張ろうねっ! フレーフレー杏ちゃんっ☆」
杏「ぎゃーうるさーい!!」
おわりっ☆
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