伊401「今日も鎮守府で待ちぼうけ」 (19)

401「七月の……えーっと今日は何日だったかな」

401「……日と。天気は晴れ。活動内容……平和な一日でした、と」

401「もう提督が巻雲を連れていなくなって一週間も過ぎちゃったんだ……」

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コンコン

401「どうぞー」

ガチャ

天龍「よー、401提督代行殿。元気してっか?」

401「提督代行じゃないもん。ただのお留守番だもん」

天龍「ははは、そうスネるなって。ほら、間宮さんのとこのアイスだ」ガサッ

401「やったー! 天龍ありがとー!」

天龍「現金な奴だな。まぁ確かにうまいけど」

401「んー! おいしー!」モグモグ

天龍「しかしあいつは本当にどこ行ったんだろうな」

401「さぁねー。ま、そのうち帰ってくるんじゃない?」

天龍「そうだな。提督が突然失踪するのはたまにあるみたいだしな」

401「そうなの?」

天龍「俺もあっちの艦隊に編入されてから聞いたんだけどな。
   前日まで普通に演習とか遠征の指示出してたのにある日ぷっつりといなくなるんだってさ」

401「……こわー」

天龍「神隠しとか、あるいは深海棲艦が誘拐してるとか色々噂は立ってるみたいだけど
   何よりも提督がいなくなった場合、鎮守府の機能が停止するのがまずい」

401「それでここみたいなのが出来るんだ」

天龍「ああ。錬度の高い艦娘は別の提督の艦隊に編入。低いのは解体、あるいは近代化改修。
   ま、戦争中だしな。そのへんは仕方ないな」

401「天龍はどうなの? あっちでは活躍してる?」

天龍「それがよー、龍田と一緒に編入されたところがまだ新人でな。苦労するぜー」

401「その割には顔が嬉しそうだね」

天龍「うるせー!」

401「……雨」

401「……じめじめ」

401「……やだなー。早く夏にならないかなー」

401「湿っぽくて嫌になっちゃう」

ガチャ

401「ん? 誰?」

58「シー」

401「あれ、どうしたの? 誰かから逃げてるの?」

58「新しいてーとくから逃げてるの。あれは人の皮を被った悪魔でち」

401「どうせいつものオリョールで資材回収でしょ?」

58「うちのてーとくはダメージ受けたり疲れたらちゃんと入渠させてくれたもん。
  あの悪魔は本当にボロボロのボロ雑巾まで使い回した後、バケツかぶせて即出撃
  させるでち」

401「高速修復材を惜しまない提督なんだね」

58「きっと悪魔に魂を売ってバケツを錬成しているでち。悪魔の取引でち」

ガチャ

58「」ササッ

「ソナーが反応しているわ。この部屋に逃げ出した潜水艦が……」ピコーン

401「お、おはようございます」

「あら、おはようございます。確か伊401さん、でしたね」

401「はい、あなたは夕張さんですね」

夕張「ええ、兵装実験軽巡、夕張よ。今はこのソナーの実験をしているの」ピコーン

401「それは?」

夕張「これは三式ソナーを改造して作った地上でも潜水艦を見つけられるソナーよ」ピコーン

401「地上で潜水艦を発見する意味って……」

夕張「自分の仕事を放棄して逃げた潜水艦を発見するために作ったんだけど……。
   うーん、潜水艦反応は401さんのかなー」

401「そ、それは残念だったねー」

夕張「ところでさ、今回逃げた潜水艦ってあなたと同じ提督の艦隊にいた子の一人なんだよね」

401「へー、そうなんですかー」

夕張「みんなオリョクルはもう嫌だーって言ってるけど元からなの? 特に逃げた子はひどいけど」

401「ゴーヤは飽きっぽいからねー」

夕張「ん?」

401「え?」

夕張「私は一度もゴーヤとは言ってないんだけど」

401「……あっ」

夕張「ちょっと部屋から出てくれるかな? そうすればソナーでわかるから」

401「……わかった」

ガチャ バタン

401「……」

ココカァ! ギャー! ミツカッタデチー! サァ、カエルワヨ イヤダー! フン!

ガチャ

夕張「それじゃあお世話様でした」

58「」チーン

401「はぁ……お疲れ様でした」

夕張「早く提督のところに帰らないと」トテトテ

401「……元気でね、ゴーヤ」

401「梅雨が明けたら途端に暑くなるなんてやだなー」

401「もうすぐ八月かー……」

401「提督、生きてるかな」

コンコン

401「どうぞー」

ガチャ

8「Guten Morgen。シオイ」

401「はっちゃん。大丈夫なの? こんなところに来てて」

8「ちゃんと許可は貰ってるわ。この前は58が来てひどかったらしいわね」

401「うん。夕張さんが来て、ソナーで発見して連れて帰った」

8「あれももう少し改造すれば十分使えるレーダーになりそうね」

401「もうそういう領域だったと思うけど」

8「……あなたの顔を見てよくわかったわ。さすがに少し堪えているみたいね」

401「え?」

8「提督がいなくなってもうすぐ一ヶ月。あなたはこの部屋でずっと待ち続けた」

401「……」

8「ねぇ、もう諦めましょう?」

401「ヤダ」

8「それじゃあ、いつまで待ち続けるの? あなたみたいにいなくなった提督を
 待ち続けて心を磨り減らしてしまった艦娘が何人もいるの」

401「……諦めない。絶対に」

8「そう……。決意は固いのね」

401「……ごめんなさい」

8「いいのよ。でも無理はしないでね」

401「うん。ありがとう」

8「……私がここで連れて帰らなくても多分あなたは選択を迫られるわ」

401「えっ?」

8「まだこの鎮守府が機能してたときに聞いたでしょ? 例の作戦。
 あれ、決行するそうよ」

401「……」

8「作戦自体には参加しないかもしれないけど私達の役割は別にあるからね。
 その時は覚悟して」

401「……わかった」

『今回のAL/MI作戦は二方面を同時攻略するものだ』

『AL攻略部隊が先行してAL方面に攻撃を仕掛ける。
 これにより、敵の戦力をALに集中させる。そしてその隙にMI方面を叩く』

『敵の戦力が集中するであろうALは当然として敵の基地が存在するMI島攻略にも
 別途の多大な戦力が必要とする』

『今このとき。我々が一丸となって戦うときだ』

『我が国の興廃はこの一戦にある。皆、一層気を引き締めて欲しい』

401「……」

401「……提督。始まっちゃったよ。AL/MI作戦」

401「このときのために資材とか貯めてたのに」

401「どこ行っちゃったの?」

401「みんな他の提督のところに行っちゃったけど、きっと心配してるよ?」

401「行っちゃったのは仕方ないんだよ。提督の席を残しておく条件だったから」

401「一隻のみを残し、他の錬度の高い艦娘は別の艦隊に編入すること」

401「私が希望したこともあるけどみんなが素直に私をここに残らせてくれたのは
  きっとこの指輪のおかげなんだろうね」コロコロ

401「はっちゃんがああ言ったのは私を本当に心配してくれたんだろうね」

401「はっちゃん自身もきっと諦めたくなんてなかったんだ」

401「……ねぇ、提督」

401「早く帰ってこないとこの席も、私もいなくなっちゃうよ……?」

「君の知っている通り、事態は最悪の局面を迎えている」

「我々のAL/MI作戦は一応の成功は収めた。AL方面とMI島の制圧は完了した」

「おそらくは無線を傍受されたか、鎮守府内にスパイがいたか。作戦は漏洩していた」

「結果、その隙をつかれて敵の別働隊の本土への接近を許してしまった」

「残存戦力でこれの撃退、あるいはAL/MI方面に出撃している艦隊の帰還までの時間稼ぎ
 をしなければならない」

「それが数ヶ月動かなかった艦娘でもあってもだ」

「伊401。君に出撃命令が下された」

401「……ここはどうなるの」

「君の提督は除籍とされ、全ての資材や装備などはこちらで徴収することになる。
 幸いにも多量の資材を貯蓄していたようだしな」

401「ヤダ。私は私の提督以外の指示を聞きたくない」

「……忘れてはいないな。君は兵器だ。我々の指示を拒否する権利はない」

401「……」

「とは言うがな。私も君の提督とは友人だったんだ。その友人の艦娘を無理強い
 したくないってのが本音」

401「え?」

「んん。失礼。しかしながら君の士気は低く、艦隊どころか鎮守府全体の士気の低下
 を招きかねない。特に君の提督が残した艦娘は主力として使われたのも多く、残存
 戦力の中にもまだ数多くいる。だから君に一つ提案をしたい」

401「提案?」

「一つはこちらの指示どおり、別の提督の艦隊に加わり、本土防衛に努める。
 もう一つは……君を解体し、艦娘を解除。普通の人間に戻るというものだ」

401「解体……」

「残念ながら奇跡でも起きない限りは君の提督の席を残すのは不可能だ。
 状況が悪すぎる。それは諦めてくれ。しかし君自身はどうするかだ。
 どうしても他の提督に従いたくないのであれば先ほどのを建前にして
 解体することは出来る。ただしそうなれば君の伊401としての記憶はなくなる」

401「……」

「他の艦隊に編入した場合は特殊な事情がない限りはその提督の下でずっと働く
 ことになるだろう。例え君の提督が戻ってきても、だ。それと指輪もこちらで
 回収する」

401「解体した場合はいいの?」

「所詮はただの指輪だ。問題はない。他の艦隊に行く場合は他人の所有物という証
 を持って行ったらまずいというだけだ」

401「そっか……」

「先ほど言った通り解体されたら記憶がなくなる。指輪についても同様だ。
 おそらく除籍の際に記念に貰った指輪程度の認識になる。
 今すぐ決める事は無い。明日の正午、再び来る。その時までに決めてくれ」

401「……了解、しました」

「では失礼する」

バタン

401「……」

401「伊401として生きればもしかしたらいつか提督と再会出来るかもしれない」

401「でもその時の私はもう違う誰かの提督になっている」

401「解体されれば、私は誰かの物にならない。この指輪も持っていける」

401「でも記憶がなくなるから例え提督と再開してもわからない」

401「……」

401「……どうすればいいんだろうね、提督」

401「……」

401「……」

401「……あと十分で正午、か」

401「結局決められなかったなぁ」

401「……」

401「ヤダ」

401「ヤダヤダヤダ!! 編入もしたくないけど解体もされたくない!!」

401「残してくれたみんなには悪いけど! どうしてもヤダ!!」

401「なにかきっと別の方法があるはず……。考えて……考えてしおい……」

401「………………」

401「……なーんにも思いつかない」

コンコン

401「!?」

ガチャ

天龍「よっ」

401「天龍? どうしたの? 作戦に参加してたんじゃ……」

天龍「ほら、言っただろ。俺と龍田のいるところが新人のところだって。
   そんなもんだから作戦ももしものときの防衛戦力……という名の
   資材集めだったってわけさ。まさかこうなるなんてねぇ……」

401「じゃあこれからは本土防衛に?」

天龍「おう。だがその前に仲間の顔でも見とこうと思ってな」

401「そっか」

天龍「ヒデー面してるな、おい。まあ、無理もないか。編入か解体だもんな」

401「……」

天龍「……なんであいつが巻雲を連れてどこかに行ったのかわかるか?」

401「ううん」

天龍「多分二番目に信頼出来る奴を道連れにしたかったからだ」

401「二番目……」

天龍「なんで俺達がお前が残りたいって言った時反対しなかったのかわかるか?」

401「……」

天龍「おまえがあいつに一番信頼されていたからだ」

401「信頼……」

天龍「でもそんなに信頼している奴をこんな長い時間放置しとくなんて許させねぇな」

401「うん」

天龍「だから帰ってきたら顔面ぶん殴って指輪を叩き返してやれ。
   それでさらにバカヤローぐらい言ってもいいかもな」

401「でも……」

天龍「編入したら指輪回収。解体したら記憶喪失だろ?
   なら第三の選択肢だ。解体されて記憶を取り戻すんだ」

401「取り戻す?」

天龍「おう、俺が協力してやる。いや、龍田だってしてくれるさ。
   潜水艦どもや他の奴らも協力してくれる。写真だってあったろ。
   お前が解体されて記憶をなくしたらみんなでその記憶を埋めてやる」

401「……」

天龍「全部は難しいかもしれないし、気持ちの問題ってのもあるかもしれないけどな。
   でも……それで戻ったらまた一緒にいられるだろ?」

401「……天龍って結構ロマンチンスト?」

天龍「なっ! 人が協力してやろうって言ってるのに」

401「でもありがとう。決心ついたよ」

天龍「……そうか」

コンコン

401「……明日の私によろしくね」

天龍「ああ」

ガチャ

提督「うーっす。おつかれー」

401「」

天龍「」

提督「何固まってんだ? っていうか今何日? 作戦始まってない?」

巻雲「司令官様大変です! もう八月の下旬ぐらいですよ!」

提督「まじかよ! くっそ、移動で時間軸がまたずれたか」

401「」

天龍「おい、クソ提督」

提督「なんだ、クソ提督とは。クソ天龍」

天龍「まずはその後ろの女三人は誰だ」

提督「連れてきた」

「前川みくにゃ!」

「アタシは神谷奈緒」

「櫻井桃華ですわ」

天龍「ほう……。俺達が心配しているのをよそにどこかで女をナンパしてくるたぁ
   いい度胸だなぁ。おい」

提督「照れるね」

天龍「よし、401。やってやれ」

401「……提督」

提督「しおい。遅くなって悪かったな。許してくれ」

401「……ヤダ」

提督「えっ」

401「提督の……バカヤロー!」

以上

関連性が微妙にあるけど別に読む必要もない作品
奈緒「今日も事務所で待ちぼうけ」

モバPだ!回天に載せろ!

クソ提督でクソPとはたまげたなぁ・・・
軍法会議不可避

モバPだ!おりこうさん魚雷に載せろ!

失望しました
那珂ちゃん、いやみくにゃんのファン辞めます

同じことやらかして資材備蓄怠った付けが夏イベントにまわってきた俺提督は何も言えない……

ちょっと文明の創世civしてた糞提督でサーセン

何か見たことあるなと思ったら案の定だった乙です

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