キョン「月曜日の朝?」佐々木「月曜日の朝だね」 (8)

 この世の中の学生にとって、いや、世間一般人にとって最も憂鬱な瞬間とはなんであろう。

 言わずもがな、月曜日の朝である。

 土日という至福の休日の後にやってくるそいつは、誰にとっても平等に訪れる。
時間の流れはある意味残酷で、そんな残酷さをもって月曜日という憂鬱を加速させていく。

 とにかく、何が言いたいのかというと、憂鬱だってことだ。

 どこぞの団長様にとってみれば、退屈でなければそれで構わないのだろうが、生憎俺は平凡な一般人である。
日曜日の夕方6時頃になると、既に憂鬱である。
別に、そう感じるのは俺だけではなく、多くの人がそう感じているだろう。

 夏真っ盛りの今日この頃。朝からセミは働きもので、休むことなく鳴き続けている。少しはその元気さを分けてもらいたいものだ。
まぁ、どこぞの団長様には静かさを学んで欲しいとこではあるが。

「相変わらずそうだね、キョン」

 これから長い坂道を登らなければならないことに対して、さらに憂鬱を感じていたところに後ろから声をかけられた。
このくそ暑さを感じさせない清涼感さえも感じるけど声。

「そうそう変わらねぇよ」

「そうかい?それは重畳だ」

 くつくつと喉を鳴らす。

 そっちこそ相変わらずだな。

「しかし、珍しいね。月曜日の朝から、キョンに出会えるなんて」

「そのセリフをそのまま返すぞ、佐々木」

 振り返ると、中学生の頃からの親友、佐々木が微笑みを浮かべていた。

 こっちは月曜日ってだけで憂鬱で気が重いというのに、佐々木からは微塵もそういった雰囲気を感じられない。
どういう思考回路を持てばそうなれるのだろうか。是非ともご教授を願いたいところである。

「僕だって月曜日が憂鬱だと感じるよ」

「そうなのか?」

「そうだよ」

 佐々木が笑う。

「まぁ、今日は朝からちょっと良いことがあったからそう見えるだけだよ」

 月曜日の朝から良いことか。俺ならば台風でも来て学校が休みになってくれたりしたら最高なのだが
。残念ながら、空は雲ひとつない快晴である。

 思わず溜息が零れそうなくらい、な。

「で、その良いことってなんだ?」

 ふとした疑問。

「なに、キョンに会えたことだよ」

 佐々木の答えに目を丸くする。おそらく、俺は間抜けな表情になってるんだろうね。

「なかなか、キョンと会う機会が減ったからね。こうして月曜日の朝からキョンに会えるなんてラッキーだよ」

 今日は良いことがありそうだと、佐々木が再び喉を鳴らす。

 なんと言っていいか、恥ずかしくて思わず目をそらす。
親友と豪語しているが、そう正面切ってそんなことを言われると、どうしていいかわからない。

「やっぱりキョンはからかい甲斐があるね」

 そこでようやくからかわれていることに気づく。肩を竦めて遺憾の意を示す。

BL来るかッ?!

「冗談だよ、キョン。どうも今日の僕は少し舞い上がってるようだ」

 普段の佐々木と、あんまり変わらないような気がするのは俺だけであろうか。

「じゃあ、キョン。良い1週間を」

 そう言い残して佐々木はさっさと行ってしまった。その後ろ姿は、確かに楽しさを漂わせているようである。

 佐々木が振り返る。目と目が合う。そして、涼しげな笑みを浮かべ、小さく手を振った。

 軽く手を挙げ、学校への道程を考える。いつの間にやら憂鬱さは消え去っていた。

 なんとなく、今日は良い日になりそうだ。

終わり

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