キョン「吸血鬼?」ハルヒ「吸血鬼!」 (18)

 鬱陶しい梅雨が明け、うだるような暑さとともに夏がやってきた。

 夏になると暑さのせいか奇行に走る輩が出てくることもしばしばあるのだが、よくよく考えればそれは夏だけでなく春先にも変質者は現われたりしている。
つまりだ、季節の変わり目に体調を壊しやすいのと同じように、少々普段と違った行動に出やすいということではなかろうか。

 無論、年がら年中迷惑を振りまき、数えきれない程の奇行をやらかすといった強者も存在するわけだが、それはマイノリティであるので特に問題無い。
いや、問題は有りまくるのだが、季節の変わり目によって突然おかしくなるといったことはないので少しは心構えができているということだろう。

 さてさて、そんな年中真夏日、毎日最高気温計測中なハルヒなわけなのだが、ここのところは何故か静かに本なんぞを読んでいる。
まるで嵐の前の静けさ、または熱帯夜の暑苦しさと同じようにじわりじわりと俺の心配が加速していっている。

 何事もなくこのまま静かさを保ち続けていただきたいものだが、そんな小学生のような能天気かつ馬鹿げた希望的観測は完膚無き迄に叩き潰されるのがオチである。
そうなったら誰にもハルヒは止められない。

 ∧_∧  
(´・ω・)
O┬O )    キキーッ!
◎┴し'-◎ ≡

    

長い・・・

 台風が通過するかの如くの被害は避けられない上に、台風一過やフェーン現象によって過ぎ去った後にも爪痕を残していくことになるだろう。
で、その後片付けをやらされるのは主に俺であったり、古泉の所属する機関であったり、長門であったりと、迷惑なことこの上ない。
そうならないためにも古泉なんぞがいろいろと画策するのだが、あまり効果を為さない。

 結局、ハルヒの手綱は俺が握るように古泉に頼まれて肩を竦める羽目になるのだが……。
まったく、どうしたもんだろうな。

 そんな俺の心配を余所に、長門が読んでいた本をぱたんと閉じて本日の活動は終了。

 夏至を過ぎてから徐々に日は短くなっているはずなのだが、窓から射し込む西日をまるでそれを感じさせない。
日中に比べていくらかは気温も下がり涼しくはなっているのだが、まだまだ暑い。

めんどくさ

「みんな、お疲れ。あ、キョンはちょっと残ってなさい」

 などとうだうだ考えていると突然ハルヒからそのような命令を賜った。ハルヒの顔を思わずマジマジと見つめてしまう。
真夏の太陽もかくやといった向日葵のような笑みを浮かべていた。いやな予感しかしないのはどうしてだろうね。

 では、頑張って下さいと古泉がやけに爽やかかつニヤニヤした笑みを残して長門と朝比奈さんと連れ立って部室から退散。
両手に花とはまさにあのことか。後ろから刺されてしまえと呪咀を見送りの言葉に古泉たちは帰ってしまった。

 これからの拷問を思うと羨ましいこと果てが無い。

「で、何の用なんだ?」

 どうせくだらんことだろうと続けてハルヒの様子を伺う。

 相も変わらず素晴らしい笑顔である。

「みんな、お疲れ。あ、キョンはちょっと残ってなさい」

 などとうだうだ考えていると突然ハルヒからそのような命令を賜った。ハルヒの顔を思わずマジマジと見つめてしまう。
真夏の太陽もかくやといった向日葵のような笑みを浮かべていた。いやな予感しかしないのはどうしてだろうね。

 では、頑張って下さいと古泉がやけに爽やかかつニヤニヤした笑みを残して長門と朝比奈さんと連れ立って部室から退散。
両手に花とはまさにあのことか。後ろから刺されてしまえと呪咀を見送りの言葉に古泉たちは帰ってしまった。

 これからの拷問を思うと羨ましいこと果てが無い。

「で、何の用なんだ?」

 どうせくだらんことだろうと続けてハルヒの様子を伺う。

 相も変わらず素晴らしい笑顔である。

「夏といえば肝試しよね」

「は?」

「だから、肝試しよ肝試し。日本人なら夏には100%の確率でやる行事よ!」

 引きこもりは絶対しないだろうなんてツッコミにはローキック辺りで返されそうなので口は慎んでおく。

「でさ、あたし考えたの。日本のお化けだけが肝試しに出てくるとは限らないわけじゃない」

 言われてみれば確かにそうかもしれない。最近のお化け屋敷で登場するのはゾンビといった海外からの輸入お化けである。
そう考えると、肝試しに日本らしい要素が少なくなってきているのではないだろうか。

作者意識しすぎ

「それに、今は国際的な付き合いが必要なわけでしょ」

「で、結局何が言いたいんだ」

 聞きたくないが聞いておいてやろう。

「つまり、あたしたちもグローバルに活動するってことよ!」

 SOS団の名を世界に知らしめるいいチャンスよ、とハルヒは拳を握りしめて熱弁する。

「だから、ちょっと吸血鬼の真似をするわ」

「まてまて、話が前後で繋がってるようでまったく繋がってないだろう」

「そんなことないわよ。ただ探すだけじゃ出てきてくれないかもしれないけど、こっちが仲間の振りをすれば向こうだって勘違いしてノコノコと出てくるわよ。
それで出てきたところを捕まえればいいのよ」

 何とも無茶苦茶な理論を振りかざしてくれる。どこにそんな間抜けな吸血鬼がいるだろうか。
そもそも、俺たちに吸血鬼かどうかなんて判断がつくかどうかあやしいところだ。いや、それ以前に吸血鬼なんていないだろう……いないよな?

「で、具体的にどうするんだ?」

「あたしがキョンの血を吸うわ」

 誰が、誰に何をするって?

「だから、あたしがキョンの血を吸うの」
  
 勘弁してくれよと椅子から立ち上がり足早に立ち去ろうとしたところで、ハルヒに首根っこを捕まれて強制的に椅子に引き戻される。
その細腕のどこにそんな力があるのか甚だ疑問である。

「逃げるな、馬鹿キョン!」

 そして正面に回り込んだハルヒが俺の太ももの上に座って――まてまてまて、お前はいったい何をするつもりだ。

「だから、血を吸うのよ。何回言わせるのよ、まったく」

 さも当たり前にとんでもないことを言ってくれる。どうやって血を吸うとかではなく、そもそもそんな発想を思い付くハルヒの頭の中はいったいぜんたいどうなっているんだろうね。
機会があれば覗いてみたい気がする。きっとカオスな宇宙空間が広がっているんだろうな。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。血を吸う真似だから」

「そうなのか?」

「当たり前じゃない。あたし、血なんて飲めないわよ」

 ハルヒならばやりかねないと思っていたぶん、体の力がどっと抜ける。

 bとりあえずは痛い思いをしなくて良さそうだ。

「ほら、こうやって正面から抱き締めて首筋に顔をうずめていたらキョンの匂いがする――じゃなくて、血を吸ってるみたいに見えるでしょ!」

「そうか?」

「そうよ!ほら、キョンは黙ってじっとしてる!」

 背中に回されたハルヒの腕に力が込められる。きっとハルヒが満足するまでこのままなんだろうね。
そもそも、学校の片隅にある部室で吸血鬼の真似事をしていたところで、誰が気付くというのだろうか
。吸血鬼はおろか、生徒や教師にだって気付かれないだろう。

 それともう一つ。

 もし吸血鬼が今の俺たちを見つけたとしたら、どこからどう見ても吸血という行為ではなく、抱き締め合っているといった風にしか見えないんだろうね。

 まったく、やれやれだ。

地の文が滑ってる

終わり

谷川仕事しろ

キョンはだろうねとか使わない


ハルヒ以外の作品も読んでみたいな

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