男「……どこだ……ここ」(132)
ホムンクルス「おや、お目覚めか」
男「あんたはいったい誰だ!そしてここはどこだ!?」
ホムンクルス「ふむ、一度に言われても困る父よ」
男「……は?」
ホムンクルス「どうかしたのかね?」
男「俺はお前みたいな奴を子供に持った記憶なんてない!」
ホムンクルス「それはそうだろうな」
男「なっ!」
ホムンクルス「だがしかし、あなたが私の父であるという事実には変わりがないのだよ」
男「どういうことだ……?」
ホムンクルス「私はホムンクルスだ。父よ」
男「ホムン……クルス?」
ホムンクルス「そうだ。フラスコの中の子人とでも言った方がわかりやすいかな?」
男「いったいなにを言ってるんだ!?」
ホムンクルス「私は母と父の血を使い、母によって創られた」
男「……そんな」
ホムンクルス「事実だ、父よ」
男「そ、その母っていうのは誰なんだ」
ホムンクルス「おや、それは私よりも父の方が知っていると思うが」
男「なに……?」
ホムンクルス「森に住む魔女」
男「……!?」
ホムンクルス「幼少の頃あなたと共に育った魔女だよ」
男「…………」
ホムンクルス「私の母は魔の力を持っていることを村の者に知られ、命からがら逃げ出したのだよ。それは知っているのだろう?仲のよかった父よ」
男「……覚えているさ」
ホムンクルス「ふふふ……私の母は孤独になった。ああ、なんという悲劇であろうか。まだ幼き少女が一人で生きていけるはずがない!」
男「なら……」
ホムンクルス「……それはその少女がなんの力もない普通の少女であったらの話だがな。そうではないことはよく知っているのだろう?父よ」
男「……ああ」
ホムンクルス「森へと逃げた少女は魔の力を使い、疲弊していながらも生き延びていた。ああ!だがなんということだろうか!」
男「……その芝居がかったしゃべり方をやめろ」
ホムンクルス「おや、不快にさせてしまったかね?」
男「…………」
ホムンクルス「ふふふ、父を怒らせるつもりはなかったのだ。どうか許して欲しい」
男「……白々しい」
ホムンクルス「ふふふ……。父と初めての対面だからな。少し舞い上がっているのだよ」
男「……そうか」
ホムンクルス「……それで続きだがな。少女は……母は普通の子供だった。魔の力を持つだけで平凡な幸せをごく普通に享受していただけのな」
男「…………」
ホムンクルス「そんな子供がいきなり降ってわいた孤独に耐えられるだろうか?」
男「…………」
ホムンクルス「黙っていないであなたの意見を聞かせて欲しいな、父よ」
男「……無理、だろうな」
ホムンクルス「正解だ、父よ。母は孤独という絶望に負けそうになり、生という光から手を離そうとした。しかし母は死ななかった」
男「…………」
ホムンクルス「……執着だ。父よ」
男「執着……」
ホムンクルス「そう、今の母にあるのは執着だけ。そしてその執着は二つある」
男「二つ……俺か?」
ホムンクルス「そうだ、父よ。母は幸せの象徴であったあなたにどうしようもなく執着している。狂気的に、盲目的に、純粋に」
男「……もう一つは」
ホムンクルス「復讐だよ」
ホムンクルス「自分を孤独にしたものに、この森へと追いやったものへの……復讐を母は望んでいる」
男「…………」
ホムンクルス「……父よ」
男「……なんだよ」
ホムンクルス「父は……母を裏切ったな?」
男「なっ……!」
ホムンクルス「母が力を使いこなし始め村へあなたの様子を見に戻った時、隣には自分以外の女が居た……。そのとき父のことを一途に思い続けていた母の胸中の思いは容易に想像できるよ」
男「もう、戻ってこないと思ったんだ!このままもう二度と会うことはないって!だから……」
ホムンクルス「…………」
男「……なんだよ」
ホムンクルス「…………」
男「なんなんだよっ……!?」
ホムンクルス「父よ」
男「……なんだよ」
ホムンクルス「母は怒り狂った」
男「…………」
ホムンクルス「嫉妬、怒り、悲しみ、復讐心。その全てが母の中で渦巻いた」
男「…………」
ホムンクルス「父よ、なぜ私はここに居ると思う?」
男「……どういう意味だ。お前は魔女に創られたからここにいるんだろう」
ホムンクルス「ふむ、言い方を変えようか。なぜ母が居なくて私がここに居ると思う?」
男「…………えっ?」
ホムンクルス「母が育ち、父が育った村。しかし自分を追いやった憎い村人達がいる村でもある」
男「あ……」
ホムンクルス「さて、父が居なくなった村を母はいったいどうするのであろうな?」
男「ここから出せっ!」
ホムンクルス「それはならぬよ、父よ。母から厳命されているのでな」
男「どけっ!どけよっ!」
ホムンクルス「それは許可できない。それにもう終わった頃だろう」
男「……どいてくれぇ……」
ホムンクルス「私がここに居るのは母が復讐を果たしている時にあなたの相手をするためだよ」
男「力づくでもっ……!」
ホムンクルス「父よ、もう無駄だ。終わったのだよ」
男「……嘘だ」
ホムンクルス「…………」
男「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!俺は信じないっ!この眼で見るまでそんなこと信じるか!」
ホムンクルス「父よ、信じないのはあなたの勝手だが、希望は持たない方がいいぞ」
男「…………」
ホムンクルス「……これから父は母と暮らすのだよ」
男「ははは……」
ホムンクルス「…………」
男「あはははははははは!」
ホムンクルス「父よ……」
男「……なあ」
ホムンクルス「……なんだ?」
男「本当なのか?俺の村はもう……」
ホムンクルス「……母はもう既に人あらざる者だ。母が気まぐれでも起こさない限り……」
男「……そうか」
ホムンクルス「……すまない」
男「……なんで謝るんだよ」
ホムンクルス「それは……いや、ただの自己満足にすぎないな……」
男「……そうか」
ホムンクルス「……ああ」
男「……今更だけどいつの間に俺の血なんて手に入れたんだ?」
ホムンクルス「……よく猫や鴉なんかを見かけなかったか?それは母の使い魔だ」
男「なるほど……ね」
寝る。続くかも
鬱展開?(´・ω・`)
ホムンクルス「……もう少しで母は帰ってくるだろう」
男「……そうか」
ホムンクルス「父よ。私からの忠告だ」
男「なんだ?」
ホムンクルス「母を刺激しないでほしい」
男「…………」
ホムンクルス「母はあなたのことを愛しているだろう」
男「もうずっと会ってないけどな」
ホムンクルス「……だが母が何を考えているのかは私にもわからないのだ。母はこれからはあなたと私で暮らすと言っていたが考えを変えないとも限らない」
男「…………」
ホムンクルス「死にたくないのなら……村や恋人のことは忘れるべきだ」
男「……簡単に言ってくれるな」
ホムンクルス「ああ、血のつながりがあるとは言えまだあなたと私は他人にすぎないからな。父よ」
男「…………」
ホムンクルス「……もうすぐ母が帰ってくる。私としてはあなたとこれからを過ごせるように願う」
男「……そうか」
ホムンクルス「……父よ」
男「なんだよ」
ホムンクルス「……私は……」
バタン!
魔女「やっほー!ただいまー!」
男「……っ!」
ホムンクルス「お帰りなさい、だ。母よ」
魔女「もー、母じゃなくてママやお母さんって呼んでよねー」
ホムンクルス「それはすまない。だがもうこの呼び方に慣れてしまったのでな」
魔女「むー、まだ子供なんだから子供らしいしゃべり方をすればいいのに」
ホムンクルス「私はホムンクルスなのだから人と同じ物差しで測るのは無意味だ、母よ」
魔女「生まれて二年くらいのくせに生意気だぞー?」
ホムンクルス「すまないな」
魔女「もー!……さて……と」
男「…………」
魔女「久しぶり……かな?」
男「……そうだな」
魔女「そうだよね!子供の頃からずっと会ってないんだもんね!」
男「だけど俺のことは見てたんだろ?」
魔女「あれ?そこまで話しちゃったのー?」
ホムンクルス「余計なことをしたかな?」
魔女「んー、別にいいけどねっ!……どこまで話したの?」
ホムンクルス「…………」
魔女「あれれー?黙ってちゃわかんないよ?ねえ。ねえ。ねえ?」
ホムンクルス「……母から聞いたことはほとんど話した。父が思いの他早く目覚めたのでな」
魔女「…………」
ホムンクルス「…………」
魔女「そっか」
ホムンクルス「……ああ」
魔女「ま、それじゃあ仕方ないか。私の口から直接伝えたかったんだけど……。それじゃあ改めて、久しぶりだね!元気?」
男「……普通」
魔女「あれれー?どうしちゃったのかなー?あなたらしくないよ?……なんで?」
ホムンクルス「母よ。父は母と久しぶりに再会して戸惑っているのだろう。感動の再会なのだろうし」
魔女「あぁそっかー!そうだよね!今までは私が一方的に見てただけだったもんね。感動の再会だもん、言葉が詰まっても仕方ないよね!」
男「……まあな」
魔女「そっかー、いつものあなたがいいけどそれじゃ仕方ないよね!これからはずっと一緒だからいつか元に戻るだろうしー……」
男「……なあちょっといいか?」
魔女「なになにー?なんでも聞いてねっ!愛するあなたのためならなんでも答えちゃう!エッチなことでも少しならいいよー……?」
男「……村は」
魔女「えっなーに?」
男「村はどうなったんだ……?」
魔女「…………」
ホムンクルス「母よ。父にとっては今まで暮らしていた場所なのだ。気になって当然だろう」
魔女「…………」
ホムンクルス「母よっ……!」
魔女「……別に怒ってないからそんなに怯えなくていいよ?」
ホムンクルス「……………」
魔女「村なんていらないよ」
男「は……?」
魔女「あなたにはもう必要ないものだよ。だから気にしないで」
男「なんだよそれ……!村は!?村はいったい……!」
魔女「もー、気にするだけ無駄なのにー。村なんてもう無いのに」
男「あ……?」
魔女「もう必要ないから。私の存在を否定した場所なんていらないもん」
男「あああああ!!」
魔女「大丈夫。これからは私とずっと一緒に……」
男「何をしたっ!」
魔女「……」
男「村にっ!みんなに何をしたぁっ!」
魔女「…………」
男「答えろよっ!答えっ……もがが!」
ホムンクルス「……母よ。どうやら父は急な環境の変化に戸惑っているらしい。一旦時間を置いて……」
魔女「うるさい」
ホムンクルス「…………っ!」
魔女「私に命令してるのかなー?ママそんな子に育てた覚えはありまちぇんよー?」
ホムンクルス「……そんなつもりではない。ただ父が……」
魔女「大丈夫だよ」
ホムンクルス「…………」
魔女「こんな風になるってわかってたから」
魔女「離してあげて」
ホムンクルス「……」スッ
男「はあっ……はあっ……」
魔女「かわいそうだね」
男「はあ!?」
魔女「あいつらに毒されちゃったんだねー、かわいそうに。ちゃんときれいにしてあげるから安心してね」
男「なにを……」
魔女「本当のあなたはそんなこと言わないもの」
男「……なにを言っているんだ?」
魔女「あなたはあいつらに騙されてたの。あいつらは何の罪もない子供をこんな森へ追いやるような血も涙もない奴等なんだよ?」
魔女「私が救ってあげるから安心して。私の時は誰も救ってくれなかったんだもん。だからこそ私が救わないと、ね?」
男(狂ってる……)
ホムンクルス「……母よ。一旦着替えてきたらどうだ?汗もかいているだろう」
魔女「あー、そうだね。一仕事したから汗もかいたし、なにより臭いがついちゃったもん」
ホムンクルス「ああ。それに父の前だし気を使うべきだろう」
魔女「そうだねー!嫌われちゃったら大変だもん!着替えてくるね!」
ホムンクルス「ああ。その間父の相手は私がしておこう」
魔女「うん。よろしくねー」
バタン
男「……」
ホムンクルス「……母と久しぶりに会った感想はどうかね?」
男「……狂ってる」
ホムンクルス「ふむ。父はそう感じるのか」
男「お前はそうじゃないとでも言うのか?」
ホムンクルス「私は父と母以外の人を知らないのでな。基準は母だ」
男「はっ、それはかわいそうにな」
ホムンクルス「別に私は自分のことを哀れだと思ったことはないが……」
男「……なんだよ」
ホムンクルス「母が憎いか?」
男「当たり前だろ……!村での出来事が俺の全てだったんだぞ!?それが……」
寝る。純愛って難しい
ホムンクルス「…………」
男「ちくしょうっ……!」
ホムンクルス「……母がああなったのは少なからずともその村のせいでもあるのだがね」
男「それでも……!」
ホムンクルス「なにが悪かったのだろうか。魔の力に目覚めた母か?それとも母を受け入れずに追いやった村人か?」
男「……なにが言いたいんだ」
ホムンクルス「さてな。だがもう既に賽は投げられた。父はもう元の生活には戻れない」
男「…………」
ホムンクルス「どうするのかね?」
男「どうするって……」
ホムンクルス「復讐をするのかね?」
男「……当たり前だろ」
ホムンクルス「母と同じように?」
男「…………」
ホムンクルス「なるほど。母は少しおかしいのではないかと父と会話して思っていたが……どうやらそうではないようだな」
男「どういう意味だ!」
ホムンクルス「復讐をするのだろう?母と同じではないか」
男「あいつと一緒にするなっ……!」
ホムンクルス「ふむ、なにが違うのかな?」
男「それは……」
ホムンクルス「父よ。差し支えさえなければ私に教えてほしい。母と父のなにが違うのかな?」
ホムンクルス「憎ければ復讐と称し相手を害する。母は復讐を果たした。それを知ったあなたは母に復讐をしようとしている。いったいなにが違うというのかな?」
男「っ……」
ホムンクルス「ふむ、父よ。私は相手の顔色から言いたいことが察せられるほど人の精神に詳しくはない。口で伝えてもらえると助かるのだが」
男「……」
ホムンクルス「……」
男「……お前さ」
ホムンクルス「質問していたのはこちらなのだが……。なんだね?」
男「……あいつが死んだら悲しいか?」
ホムンクルス「当然だ」
男「……そうか」
ホムンクルス「生まれてからの生全てを共にこの家で過ごしているからな。少々怖いときもあるが……こういうのを情が移るとでも言うのかな?父よ」
男「どうだろうな」
少し更新。需要ないみたいだね
あるよ!主に俺にありますので続けていただけるとすごい嬉しい
需要なんてもんを気にするくらいなら最初から書くなやハゲ
需要を気にするのは続編を作る時だけ
支援も批判も気にせずまずは無心で完結させるところから始めてはいかがか
あるから続きはよ
ホムンクルス「父よ、改めて問おう。あなたはこれからどうするのだ?」
男「……さあな」
ホムンクルス「おや、先ほどまでは復讐をすると息巻いていたではないか」
男「わかってて言ってるんだろ?」
ホムンクルス「ふふふ、さてな」
男「……俺はあいつが憎い。どうしようもないくらいに憎い」
ホムンクルス「…………」
男「だけど……あいつが一人でいた時は誰も手を差し伸べなかったんだよな」
ホムンクルス「そうだ」
男「……事情を知っているだけにあいつが哀れでもある」
ホムンクルス「憎いだけではなく不憫でもある……か」
男「それに」
ホムンクルス「それに?」
男「……俺は復讐するだけの強さを持っていない」
ホムンクルス「ふむ、興味深いな。どういうことか説明を頼む父よ」
男「……俺は全部なくしちまった」
ホムンクルス「……そうだな」
男「復讐をしたとして、俺はどうすればいいんだ?俺には何が残る?」
ホムンクルス「そんなことを考えずに復讐すれば良いのではないか?実際に母はそうであったぞ?」
男「……言っただろ。俺はそんなに強くはない。知ってるか?人ってのは流されて生きてるんだ」
ホムンクルス「む?人は自分の意思を持ち生きているのだろう?なぜ流されるのだ?」
男「人はな、そんな確固たる信念を持って生きていないんだよ。ある程度流れに乗って生きてるんだ」
ホムンクルス「なぜ」
男「その方が楽だからだよ。そんなもんさ。いちいち理由なんかありはしない」
ホムンクルス「ふむ……」
男「はっ!それにしてもとんだ冷血漢だな俺は。村のみんなを殺されて早くも復讐を諦めようとしている……あいつが追いやられた時も助けてやれなかった奴なんてこんなもんか」
ホムンクルス「…………」
男「なんだ、失望でもしたか?」
ホムンクルス「いや、実に興味深い」
男「……皮肉か?」
ホムンクルス「そういうわけではない。母は自分の内面をあまり晒さないのでな。父の話は私としても興味深いよ」
男「……そうなのか」
ホムンクルス「ああ。母はいつもあのような振る舞いで私に感情を吐露したことはほとんどない」
男「……仲があんまりよくないのか?」
ホムンクルス「さて、どうだろうな。……私は所詮ただのホムンクルスだ。人の複雑な心の内までは理解しかねるよ」
男「……十分お前は人間くさいよ」
ホムンクルス「そういってくれると嬉しいよ」
男「……なあ」
バタン
魔女「たっだいまー!」
ホムンクルス「ああ」
魔女「二人ともいい子にしてたかなー?」
ホムンクルス「もちろんだとも。二人で歓談をしていたところだ、母よ」
魔女「そっかー、二人の仲がいいようでなによりだよ」
ホムンクルス「そうか」
魔女「でもなんだか仲間はずれにされてるみたいで寂しいかも」
ホムンクルス「私は母を仲間はずれになんかにしたりはしないさ」
魔女「……うんっ。それでこの服どうかな?昔着ていた服に近いでしょ?」
ホムンクルス「そうなのか?」
男「……ああ、懐かしいな」
魔女「似合ってるかな?」
男「……うん」
魔女「似合ってるだってー!」
ホムンクルス「良かったな、母よ」
魔女「うん!」
ホムンクルス「父よ、もっと褒めてあげたらどうだ?」
男「あ、え……かわいいんじゃないか?」
魔女「…………」
ホムンクルス「母よ……?」
魔女「……えへへ、嬉しいな……すごく、嬉しい」
男「…………」
ホムンクルス「……母よ。父に話があるのではなかったのか?」
魔女「あ、そうだった!えっとねー、お土産があるんだー」
男「……お土産?」
魔女「うん、これだよ」
ドサッ
女「う……うう……」
男「!?」
ホムンクルス「これは……」
魔女「うん。あなたの恋人だとか勘違いしてたゴミ虫を持ってきたんだー」
男「お、おい!大丈夫か!?」
魔女「大丈夫大丈夫ー!殺してないよ!」
男「そういう問題じゃないだろうが!おいっ!おいっ!?」
女「うう……ここは……どこ……?」
魔女「じゃんじゃじゃーん!私のおうちでーす!」
女「ひいっ!」
男「やめろ!その子に手を出すな!」
女「っ!ここにいたの!?どうして……」
男「……俺は先にここへさらわれてきたんだ」
女「あ、あなたが居ない時に村はっ……村のみんなはっ……」
男「……おい。いったいなんのつもりだ!?」
ホムンクルス「……母よ、私からも尋ねたい。いったい何をするつもりなのだ?」
魔女「やだなー。ひどいことなんてしないよ?ただ生き延びるチャンスをあげようかなって思っただけ」
ホムンクルス「……チャンス?」
魔女「うん。ゴミ虫の分際で彼の恋人の振りなんかしてごめんなさい。どうか助けてくださいって惨めったらしく命乞いをすれば殺さないであげる」
男「おい!なんでそんなことを……!」
魔女「殺していいの?」
男「ぐっ……!」
魔女「私はとおぉっても優しいからゴミ虫に生き延びるチャンスを与えてあげたのに余計なお世話だった?なら殺しちゃおうっかな」
男「……っ!なんでも……ないっ」
魔女「……ほら、早くさっき言った通りに命乞いをしなよ。私の気は長くないんだからね。彼に変な未練を残したくないから早く」
女「ひっ……!」
男「……言ってくれ。そいつは本気だ」
女「で、でも……」
ガッ
女「あがっ……」
男「なっ……!」
魔女「ゴミ虫の分際でなにを勝手に彼としゃべってるの?ねえ。ねえ。ねえねえねえっ!」ガッガッガッ
ホムンクルス「……母よ」
魔女「……なに?」
ホムンクルス「……そう蹴られてはその者もしゃべれないだろう」
魔女「……そうだね。それじゃあなるべく早くしてくれる?あんな風に死にたくないのなら」
男「……あんな風?」
魔女「説明しなくてもあなたにはわかるもんねー」
女「っ!」ガタガタガタ
魔女「……震えてないでさっさとしなよ」
女「……」チラッ
男「……」コクッ
女「わ、わ私は……」
ホムンクルス「…………」
女「ゴミ虫の分際で彼と付き合ってしまい……」
ガッ
魔女「誰と誰が付き合ったって?よく聞こえなかったからもう一度言って欲しいなー私」
女「ごめんなさい!ごめんなさい!」
魔女「そんなのどうでもいいから。最初からやり直し」
女「……わ、私はぁっゴミ虫の分際で彼の恋人の振りをしてしまいました……」
男「…………」ギリッ
女「許されることではありませんが、どうか……殺さないでください……」
シーン……
魔女「……っく、あは、あはははははははは!ねえねえ聞いた!?今の惨めな懇願!おかしいったらないよね!」
女「…………っ!」
男「…………」ギリリッ
ホムンクルス「…………」
魔女「ねえ、あなたもそう思うよね?」
男「…………」
魔女「ねえ?」
男「……あ……あ、そうだな……っ!」
魔女「本当に惨めったらありゃしないよねー!そこまでして生きたいんだー!一緒に住んでた村の人達は死んじゃったのにねー!」
女「……あなたが殺したんじゃない!この人殺し!」
魔女「……そうだよ?それで?」
ホムンクルス「……母よ」
魔女「なにー?ってあれ、あなた笑ってないけど面白くなかった?」
ホムンクルス「……少々私には難解だったよ」
魔女「そう?それでなーに?」
寝ます。おやすみなさい
乙~お休みです
魔女がクズすぎる。
だがそれがいい
支援
乙
読んでてヘドが出る
だがそれがいい
魔女は別にクズではないと思うが・・・・狂気は入ってるけど。
やっぱり面白いっすね、乙です
これはヤンデレでいいんだよな?
それがいい
ホムンクルス「そこの者を見逃すのだろう、どうするのだ?」
魔女「そんなの森に放り出せばいいじゃない」
ホムンクルス「……それだと獣に襲われて命を落とすと思うのだが」
魔女「うん、そうだねー。それでそれがどうかしたの?」
男「や、約束が違うぞ!?」
魔女「ちゃんと約束通り私は殺さないよー?」
男「なっ……!」
女「この嘘つき!助けてくれるって言ったじゃない!この魔女!あんたなんかあの時村のみんなに殺されちゃえばよかったんだ!」
魔女「……ゴミ虫が喚いててうるさいなあ。ほら、早くこのゴミ捨ててきてよ」
ホムンクルス「だが……」
魔女「あれれー?聞こえなかったの?……はやく捨ててきなさいよ」
ホムンクルス「……承知し……」
男「待ってくれ!」
魔女「……あれれー、どうかしたの?」
男「お願いだ!なんでも言うことを聞く!だからこいつを近くの村までちゃんと届けてやってくれ!」
女「え……」
ホムンクルス「……と、父は頼んでいるがどうする、母よ?」
魔女「…………」
男「お願いだ!頼む!」
魔女「……そんなにあれが大事なんだ?」
男「…………」
魔女「ふーーーん……」
男「なんでも言うことを聞く!だから……」
魔女「くす……」
男「……?」
魔女「うふふ、あははははははははははははははははははは!!へぇぇぇ!?そんなにあれが大事なんだ!?憎いなあ!妬ましいなあ!羨ましいなあ!」
男「っ!」
魔女「アハァッ……!どうしよう?どうする?どうしようね?どうしようかな?」
男「た、頼む!」ガバッ
魔女「……わかったから頭を上げてよ」
男「じゃあ……!」
魔女「……準備するからついて来て」
ホムンクルス「承知した。母よ」
魔女「……私達がいないからって変な真似したら殺すから」
バタン
男「……ふぅ」
女「……ありがとうね」
男「……いや、こんなことくらいしか出来なくてごめん」
女「そんなことないよ。とても嬉しかったから。私のためにあんなに必死なってくれて……」
男「……よしてくれ。お前をこれから一人にさせちまうことには変わりないんだから」
女「……」
男「……」
女「へ、平気よ……!領主様に頼んで魔女の討伐隊を出してもらえるように頼むから!」
男「……頼む」
女「うん……!」
男「……俺さ、待ってるから。お前が帰ってくるのを」
女「うん。帰ってきたらみんなのお墓作ろうね」
男「……ああ。……魔女は狂ってるけどあのホムンクルスはまだまともだ。きっとお前をちゃんと送ってくれると思う」
女「……それでも気をつけないと」
男「……そうだな」
女「というかあの人、あなたのことを父って呼んでたけど……」
男「……俺の血とあいつの血使って創られたらしい。だから父なんだとよ」
女「……それ本当?」
男「知らん。けど本人がそう言ってるんだ。多分そうなんだろう」
女「……多分あなたの血が混じってるからまともなのかしらね」
男「はは、そうかもな」
女「あははは……」
男「ははは……」
女「…………なくなっちゃった」
男「…………」
女「……なくなっちゃったよう……ぐす、ひっく、うわぁぁぁぁんっ!」
男「…………」
女「みんなっ!いつもと変わらない一日を過ごしてただけなのにっ!こんな……こんな……!」
男「みんなは本当に……」
女「死んじゃったよっ!お母さんも!お父さんも!友達も!みんな!みんなぁっ……」
男「……そう、か……」
女「ごめんね……。私が泣いてたらあなたは泣けないよね」
男「……気にするな」
女「……意地っ張りなんだから。……絶対にすぐ戻るよ。仇は取らないといけない」
男「ああ……!」
寝ます。おやすみなさい
乙~
しかし魔女の受けたこと考えるとやっぱり嫌な奴には見れんな・・・
バタン!
男「!」
魔女「…………ちっ」
ホムンクルス「父よ、準備が出来たぞ。そこの女よ、ついてくるがいい」
女「……わかったわ」
男「……おい」
ホムンクルス「どうしたのかな。父よ」
男「……頼んだぞ」
ホムンクルス「……ああ、承知した。その女は私が責任を持って町の近くまで送ろう」
女「……お願いします」
魔女「早く連れて行ってよ」
ホムンクルス「わかった」
魔女「ああーもう!気まぐれで連れて来るんじゃなかった!」
ホムンクルス「母よ、父と仲良くな。少しの間だが二人きりなのだからな」
魔女「あ……わかってるよー!そうだよね!これから二人っきりだもんね!」
ホムンクルス「父よ。母と仲良くな」
男「……ああ」
ホムンクルス「ふむ。それじゃあ行こうか」
魔女「行ってらっしゃーい!獣が出たらそいつ盾にしていいからねー!」
ホムンクルス「母よ。それはしない約束だ。ちゃんと約束通り町の近くまで送らねばな」
魔女「ぶーぶー」
ホムンクルス「それでは行ってくるよ」
バタン
男「…………」
魔女「えへへ、二人っきりだね!」
男「そう、だな」
魔女「あれがいなくなってもあの子がいるからなかなか二人っきりにはなれないからねー。たっぷり楽しんじゃおうよ!」
男「……ああ」
魔女「えーと何したい?まあ家にあるのは薬草とかそんなのばかりだけどね!」
男「…………」
魔女「会うのは久々だもんね!何を話したらいいか戸惑っちゃうなー!」
男「…………」
魔女「あ!私ばかり話しててもダメだよね!あなたからも話して?」
男「…………」
魔女「…………」
男「…………」
魔女「……ねえ」
男「…………」
魔女「なんで無視するの?」
男「…………」
魔女「ねえ!」
男「…………」
魔女「ねえってば!」
男「…………」
魔女「なんで無視するの?ねえ!ねえ!ねえ!ねえ!」
男「…………」
魔女「……そう。そんなことするんだぁ?」
男「…………」
魔女「いいの?縛られたままで。無視し続けるんだったらほどいてあげないよー?」
男「…………」
魔女「…………」
男「…………」
魔女「……なんでよっ!?なんでなんでなんでなんでなんでっ!あのゴミ虫とはしゃべれて私とはしゃべれないっていうの!?」
男「…………」
魔女「なんでぇ……」
男「…………」
魔女「ぐすっ……」
男「…………」
魔女「ひっく……ぐす……」
男「…………」
魔女「……ひどい……ひどいよ」
男「…………」
魔女「こんなのあんまりだよ……せっかく何年ぶりで再会したのに」
男「…………」
魔女「……また明日ね。……諦めないから!」
バタン!
男「………………どっちがひどいんだよ!くそっ!」
男だろ、といいたいが男にとっては魔女との思い出よりも村での思い出のほうが重いんだよなあ
見捨てた方にも原因はあるだろうな
でも男の心も分かる
難しいなぁ…
~ ~ ~
ホーホーホー
女「ねえ……」
ホムンクルス「……なんだ?」
女「あんたって本当に人間じゃないの?」
ホムンクルス「……ああ。私は母と父の血液から母よって創りだされたホムンクルスだ」
女「……人間にしか見えないんだけど」
ホムンクルス「母は寂しかったのだろうな。この体は限りなく人に近く創られている。子も産めるらしい」
女「……子を産むって、あんた男だよね?」
ホムンクルス「……一応これでも女なのだがね」
女「えっ、嘘」
ホムンクルス「こんなことで嘘などつかぬよ。さて、そろそろ休憩としようか」
女「……えぇー?」
ホムンクルス「それにしてもなぜ私に話しかけてくる?私は憎い魔女の手下みたいなものだろうに」
女「……あいつの血が混じってるんでしょ?」
ホムンクルス「……まあな」
女「だからよ。それにあいつもあんたのこと少しは信用してたみたいだしね」
ホムンクルス「…………」
女「それにしても本当に女なの?」
ホムンクルス「……ああ」
女「証拠は?」
ホムンクルス「そこまで私が女だということに納得がいかないのかね?」
女「まあ……」
ホムンクルス「……母も本当は男、息子が欲しかったようだが……人間の雄に母は詳しくなかったのでな」
女「……ああー、なるほど」
ホムンクルス「人間を模して創られた私だが、その模すべき元がないと母にもどうしようもなかったのだろう。そう私に語ってくれたよ」
女「へぇー……男かと思って少し憂鬱だったんだけどよかった」
ホムンクルス「……私からもいいか?」
女「なに?」
ホムンクルス「村で父はどんな風だったか聞いてもいいか?」
女「っ……!」
ホムンクルス「……無遠慮だったな。すまない」
女「……別に。あんたが謝らなくてもいいよ。悪いのは……魔女だから」
ホムンクルス「……父と仲がよいのだろう?」
女「……そうだよ」
ホムンクルス「それは恋人といった関係か?」
女「……うん」
ホムンクルス「……母はあなたに嫉妬していたよ」
女「…………」
ホムンクルス「幸せそうなあなたと父を見て、羨ましそうにしていた」
女「そう……」
ホムンクルス「……また明日は歩き詰めになるだろうな。そろそろ寝ることにしよう。おやすみ」
女「……おやすみ」
休憩
俺「......おやすみ」
~ ~ ~
男「……」パチッ
男「……朝か。いたたた、縄が……」
魔女「おっはよー!」
男「なっ!?」
魔女「あ、やっと反応してくれたね!」
男「…………」
魔女「もー!寝顔もとっても素敵だったよ!あ、ちょっと前から見てたんだ」
男「…………」
魔女「それじゃあ朝ご飯にしよっか!出来てるから持ってくるねー」
男「…………」
魔女「……持ってくるから食べてね」
とたとたとた……
男「……あー、眠い」
……とたとたとた
魔女「はい、持ってきたよー」
男「…………」
魔女「こんな森の中じゃ食べられるのは限られてくるんだよねー!山菜やきのこ。たまーに熊なんかかな?」
男「…………」
魔女「あ、毒なんか入ってないよ?安心して食べてね!」
男「…………」
魔女「はい、あーん」
男「…………」
魔女「だって口もきいてくれないんだもん。縄なんかほどけるはずがないよねー」
男「…………」
魔女「意地張っちゃってー!かーわいいっ!」
男「…………」
魔女「でも食べないと体に悪いよー?」
男「…………」
魔女「……無理矢理食べさせてもいいんだよ?それともそんなこと出来ないって思ってる?」
男「…………」モグ
魔女「うんうん。それでよし」
男「…………」モグモグ
魔女「おいしいー?」
男「まずい」
魔女「…………ごめんね。今度は上手く作るから」
男「…………」
魔女「……はい、あーん」
男「…………」モグモグ
寝ます。おやすみなさい
乙乙おやすみ
乙
~ ~ ~
女「……それじゃあ、朝食も食べたし行きましょうか」
ホムンクルス「ああ、そうしようか」
女「……このまま歩いていけば日暮れくらいには着くと思う」
ホムンクルス「ふむ。私はあまり道には詳しくないのでわからんがそうなのか?」
女「ええ、私は何回も来たことがあるからね。休みをとらなければ着くはずよ」
ホムンクルス「……休まなくて大丈夫なのか?」
女「大丈夫大丈夫。なるべく早く到着したいし」
ホムンクルス「そうか。なら行くとしよう」
女「……本当に男みたいなしゃべり方だね。きっとあいつも勘違いしてるよ?」
ホムンクルス「そうだろうな。家に帰ったら誤解を解くとしよう」
女「……うん。そうしなよ」
信じるor信じない
下1
馬鹿にして最初は信じないだろうけど、ホムンクルスの性格を考えて、嘘を言ってないと判断する
>>81
あ、ホムンクルスの性別とは全く関係ない安価です。ややこしくてすみません。取り直しますか?
あ、こっちこそ読解力足りなくてすみません・・・・何を信じるor信じないなのでしょうか?
>>83
難しいことはなんにもないです。あるキャラがそのうちの二つを選択するシーンで安価の通りそれを選ぶだけです
適当にとっちゃってください
じゃ、信じるで。その結果が良いか悪いかは分かりませんが
>>85
「信じる」ですね。わかりました
ホムンクルス「……父は驚いてくれるだろうかな?」
女「絶対驚くよ。息子だと思ってたら娘だったなんて」
ホムンクルス「そうだろうか……」
女「例えばさ、お父さんが実は女でお母さんだったら?」
ホムンクルス「……驚くな」
女「でしょ?」
ホムンクルス「ああ。なるほどそういうことか……」
女「勘違いしやすいのは見た目もそうだけどしゃべり方だよね」
ホムンクルス「……むぅ」
女「なんでそんなしゃべり方してるの?」
ホムンクルス「……初めて読んで書物」
女「本のこと?」
ホムンクルス「ああ。初めて読んだ書物の登場人物にそういうしゃべり方をしていたのがいて、それを真似しているうちに定着してしまったのだよ」
女「ふーん、本ねぇ」
ホムンクルス「どうかしたかな?」
女「いや、あの家に本なんてあったんだ?」
ホムンクルス「……その書物は薄汚れていて擦り切れた絵本だった」
女「…………」
ホムンクルス「たぶん、母の子供の頃の物なのだろうな。そこで出て来る魔法使いの翁に憧れたのだろう。母を笑顔にしたいと」
女「…………」
ホムンクルス「……そちらにとっては母の笑顔など思い出したくもないだろうがな」
女「……そうだね。あいつの笑い声はもう忘れられないから」
ホムンクルス「……私としてはお前たち村の者は自業自得であると思うが嫌いではない」
女「……なにが言いたいわけ?」
ホムンクルス「変わったもの。周りと違うものは迫害される。自然なことだ」
ホムンクルス「しかし、迫害したものがされたものに復讐されるのも自然なことだろう」
女「あいつはっ!関係ない人達まで殺したっ!」
ホムンクルス「母にとってはそうでなかったのだろうよ。父以外の者は皆等しく憎む対象だっただけのことだ」
女「そんなこと知らない!あいつは……あいつは絶対に許さない!」
ホムンクルス「……ふむ。やはりな」
女「なに?馬鹿にしてるわけ!?」
ホムンクルス「お前も同じなのか」
女「だからっ……」
ホムンクルス「やられたら、やり返す」
女「…………」
ホムンクルス「存外に母も人から外れてはいないのだな」
女「……一緒にしないで!」
ホムンクルス「父もそう言っていたが何が違うのだ?私にはわからない」
女「……あんな化け物と一緒にしないで」
ホムンクルス「……ふむ。すまなかった」
女「…………」
ホムンクルス「さて、急ぐとしようか」
~ ~ ~
魔女「やっほー!お昼ご飯もってきたよ!今度は自信作なんだー」
男「…………」
魔女「今度こそ美味しいって言わせてあげるから!」
男「…………」
魔女「はい、あーん!」
男「…………」モグ
魔女「どうかな?」
男「…………」モグモグ
魔女「わくわく!」
男「…………」ピタ
魔女「ど、どうかな?」
男「まずい」
魔女「……そっか、ごめんね。頑張ったんだけど……」
男「……」モグモグ
魔女「……あはは、ごめんね。料理下手くそで」
男「……」モグモグ
魔女「で、でも!頑張るから!」
男「…………」
魔女「…………」
男「…………」
魔女「ねえ?これから何したい?」
男「…………」
魔女「私ね、たくさんしたいことがあるんだ」
魔女「あなたとあの子と一緒にハイキングに行きたいな」
魔女「私がワンピースを着て、あなたがそれを褒めてくれて。そうしたら私は慌てちゃって転んじゃうの」
魔女「そうしたら……そうしたら昔みたいにあなたに手をとって貰ったりしちゃって。えへへ……」
男「…………」
魔女「そうしたらますます私は慌てちゃって。あなたとあの子はそれを見て肩をすくめたり笑ったりするの」
魔女「……今は料理が上手じゃないけど、みんなで食卓を囲みたいな。あなたとあの子に美味しいって言わせてあげるの」
魔女「……あの子は好き嫌いがないから少し張り合いがないけどね」
男「…………」
魔女「みんなと一緒にお昼寝してみたいな。大きな木の下で、手をつなぎながら寝るの」
魔女「私が真ん中がいいな。あなたと手をつなぎたいから。あ、でもそれならあなたが真ん中でもいいかも」
魔女「あとは……」
男「…………」
魔女「……あなたとの子供が欲しいな」
男「…………」
魔女「あの子もいるけど、お腹を痛めて産んだ子供も欲しいの」
魔女「あの子は全然手がかからなかったし。だから赤ちゃんが出来たらうーんと構ってあげるの」
男「…………」
魔女「名前は二人で考えて……」
男「もうやめろよっ!」
魔女「っ…………!」
男「俺は……俺は……」
魔女「……なに?」
男「お前のことがもうわかんねえよ!さっきみたいなことを頬を染めながら話せるのにっ!なんでっ!なんでっ!村のみんなを殺したり!あいつをなじったり出来るんだよ!?」
魔女「…………」
男「お前がただ悪い奴なだけなら!こんな風にならなかったのによぉっ!……どっちだ?どっちが本当のお前なんだ?」
魔女「……どっちも、かな?」
男「…………」
魔女「あいつらを憎んだ気持ちも、あなたを愛する気持ちも、本当の私の気持ち」
男「……なんっ……でっ!」
魔女「なんでだろうね?どうしてだろうね?」
男「……俺にわかるわけ、ないだろ」
魔女「……それもそっか」
男「…………」
魔女「ねえ……私はね、あなたが大好き」
男「……ああ」
魔女「あなたは私のこと、どう思ってるの?」
男「……憎いし、怖い」
魔女「…………」
男「だけどお前がこうなったのは……だから負い目もある。哀れでもある」
魔女「…………」
男「……俺の中でもぐちゃぐちゃで、なんて言ったらいいのかわかんないんだよ!」
魔女「……そっかぁ」
男「…………」
魔女「悩んでるんでしょ?」
男「…………」
魔女「もう何もかも忘れて私たちと一緒に暮らした方が楽なんじゃないかって、少しは考えてるんだよね?」
男「…………」
魔女「……あなたが迷ってる理由知ってるよ?あの女でしょ?」
男「……っ」
魔女「誰だってわかるよー。……ならその迷いの種がなくなったら……どう?」
男「!?」
魔女「くすくす……あの子がもうそろそろやってくれているはずだよ?」
男「……騙したのか?」
魔女「ううん。送ってからなら騙したことにはならないでしょ?」
男「……くうっ!」
~ ~ ~
ホムンクルス「……ようやく見えてきたな」
女「そうね。もう疲れたわよ……」
ホムンクルス「私の役目はここまでだな」
女「そうね。護衛ありがとう」
ホムンクルス「礼を言われるようなことはしていない。……特にこれからすることを考えればな」
女「……やっぱり何かあると思ってたわ」
ホムンクルス「……すまないな」
女「……で、どうするわけ?」ジリッ
ホムンクルス「お前を殺す。それが母からの頼みだからな」
女「……殺さないんじゃなかったっけ?」
ホムンクルス「母曰く、「送ったあとなら問題ないよー!」だそうだ」
女「へぇー……」ジリッ
ホムンクルス「……逃げようなどとは思わないことだ。私の身体能力は人を凌駕している」
女「……諦める理由にはならないでしょ?」
ホムンクルス「……それもそうか」
女「…………」
ホムンクルス「……提案がある」
女「……なに?」
ホムンクルス「もう私達に関わるな」
女「……どういう意味?」
ホムンクルス「なんらかの形でも私達に一切関わるな。そう誓うのなら見逃してやろう」
女「…………」
ホムンクルス「大方領主あたりにでも泣きつこうとしているのだろうが……そんなことをしても失ったものはもう戻ってはこないのだ。するだけ無駄だろう」
女「…………」
ホムンクルス「お前はまだ若い。新しい幸せを掴むこともできるはずだ。だから私達に関わるな。そうすれば見逃してやる」
女「……ふざけんじゃないわよ?」
ホムンクルス「…………」
女「失ったものが戻らない?そんなのとっくにわかってんのよ!奪った側のくせにぃっ……!復讐は諦めない!奪われた側の気持ちを甘く見るんじゃないわよ!」
ホムンクルス「……母もまた、奪われた側であったのだがな」
女「うるさいっ!」
ホムンクルス「……諦めてくれないか?私も人を殺すのは心が痛む。それにこれ以上母に罪を重ねてほしくない」
女「……あれだけっ!」
ホムンクルス「…………」
女「あれだけ殺しておいて罪を重ねてほしくないですって?ふざけるな……ふざけるな!ふざけるな!!」
ホムンクルス「……口で頼んでも無理なら、体に頼もう」
女「っ!」
ホムンクルス「……ふっ」ガシッ
女「は、離れ……」
ギリギリギリィッ……!
女「あああああああああああああああ!!?」
ホムンクルス「……頼む、諦めてくれ。出ないと腕が折れるぞ?」
女「だっ、だぁれがあああああ……!」
ホムンクルス「…………」ギュウッ
女「あああああああかあがああ!?」
ホムンクルス「……諦めてくれ」
女「……い………やぁ……」
ホムンクルス「…………」
ぼきん
女「いぎゃああああああああ!!?」
ホムンクルス「……次は左腕だ」
女「ふーっ……!ふーっ……!」
ホムンクルス「……もう一度言う。諦めてくれ」
女「い、や」
ホムンクルス「……」ガシッ
ミシミシミシィッ
女「うぎゃああああああああ!?」
ホムンクルス「……頼むっ!」
女「あ……あ……」
ホムンクルス「……」ギシッ
女「諦め……ます……だからっ!だからっ!」
ホムンクルス「………そうか」パッ
女「……腕が……腕がぁ……」
ホムンクルス「……本当に諦めるのだな?」
女「……」コクリ
ホムンクルス「…………」
女「…………」
>>85
「信じる」
ホムンクルス「……その言葉信じよう」
女「…………ありがとうございます」
ホムンクルス「……すまなかったな。これからは会うこともないだろう。お互い幸せであることを祈る。……ではな」
女「…………」
女「…………」
女「…………」
女「…………あはっ」
女「あはははははっ!」
女「……復讐、してやるっ……!」
休憩します
うわあああああ、ここでかあああああああああ!!
原因自分な訳ですが、物凄い憂鬱になってきた・・・・信じないならここで止めさしてたんだなあ
《近くの村》
ザッ……ザッ……ザッ……
女「はあっ……!はあっ……!」
村人「ん?見慣れない人だな。どうしたんだ?」
女「はあっ……!はあっ……!」
村人「つらそうだけどいったい……う、腕が……」
女「……ま……じょ……」
村人「んん?」
女「私の村がっ!魔女に襲われたのおっ!」
村人「な、なんだって!?」
女「本当よ!だから早く……」
ドサッ
村人「お、おいあんた!しっかりしろ!おいっ!?」
《魔女の家》
ホムンクルス「……ただいま戻ったぞ、二人とも」
魔女「えへへっ!お帰りなさーい!」
男「…………」
ホムンクルス「母よ、機嫌がいいな」
魔女「私はいつだって機嫌がいいよー?……やってきてくれたんでしょ?」
ホムンクルス「…………ああ」
魔女「えへへー、いい子いい子!」
ホムンクルス「な、撫でないでくれ」
魔女「もー、恥ずかしがり屋さんなんだからー!……全部忘れてこれからは三人で暮らそ?」
男「…………」
魔女「……じゃあご飯作ってくるね!三人で食べるんだから張り切っちゃうぞー!」
とたとたとた……
ホムンクルス「……父よ、ただいま帰った」
男「……お帰り」
ホムンクルス「…………」
男「…………」
ホムンクルス「父よ、もうあの女はいないのだ。……殺した私が言うのもなんだがな」
男「…………」
ホムンクルス「もう全て忘れて私達と暮らそう。……頼む。母を幸せにしてやってほしい」
男「……だけど」
ホムンクルス「……虫がいい話だというはわかっている。だが私は創造物として、子供として母の幸せを願いたい」
男「…………」
「ねー!ちょっと手伝ってー!」
ホムンクルス「承知した!…………父よ、頼んだぞ」
スタスタスタ……
男「……………」
~
魔女「それじゃあいっただっきまーす!」
ホムンクルス「いただきます」
男「…………」
カチャカチャ……
男「……」モグモグ
ホムンクルス「父よ」
男「……なんだ?」
ホムンクルス「味はどうかな?私も手伝ったのだが……」
男「…………」
魔女「…………」
ホムンクルス「お気に召さなかったかな?」
男「……まあまあ」
魔女「……!どんどん食べてね!おかわりもあるから!」
男「……ああ」
《数週間後……》
カチャカチャ……
魔女「えへへー、美味しい?」
男「ああ」
魔女「……えへへへぇ」
ホムンクルス「母よ。いい加減慣れたらどうだ?」
魔女「だって嬉しいんだもん……」
男「……くすっ」
魔女「あー!笑ったでしょう!?」
男「笑ってない」
魔女「嘘だ!絶対に笑ったよ!」
男「笑ってないから」
魔女「うー!嘘だ嘘だぁ!」
ホムンクルス「ふふふ」
魔女「ああ!あなたまで!?」
ホムンクルス「ふふふふ。笑ってしまってすまないな、母……っ!?」
魔女「あれ?どうしたの?」
ホムンクルス「……森が騒がしい」
男「……森が?」
ホムンクルス「(……まさか)……ああ。少し様子を見てこよう」
魔女「気をつけてねー?」
ホムンクルス「ああ。では行ってくる」
バタン
魔女「……いったいなんだろうね?」
男「さあな、俺にはなにもわからないが……」
魔女「あの子耳がいいんだよねー。すごいでしょ?」
男「……それよりもあれが女の子だということの方が驚いた」
魔女「あの時のあなたったらすごい驚いた顔してたもんねー」
男「……少年だとばかり思ってたのに」
魔女「あはははは。服も可愛いの着たがらないしね。もっと可愛い服も着てほしいんだけどなー」
男「……案外似合うかもな」
魔女「……なにを想像したの?」
男「いや、別に」
ゴメンなさいゴメンなさい!
お願いだから魔女とホムンクルスは幸せになってください・・・・というかしてやってください!
魔女「……手を出しちゃ、ダメだからね?」
男「そんなことしない!」
魔女「…………」
男「うぅ……」
魔女「どうだか……」
バタン!
ホムンクルス「父と母よ!今すぐ逃げろ!」
魔女「な、なになに!?どうしたの?」
ホムンクルス「兵達がこの家を取り囲もうとしている!」
魔女「な、なんで……」
ホムンクルス「……私のせいだ!あの時迷わず殺していれば……!」
魔女「……事情はだいたいわかったよ」
男「ということはこれは……」
ホムンクルス「……母を討とうとする部隊だろう」
男「…………」
魔女「……二人とも逃げて」
ホムンクルス「なにを……!?」
魔女「狙わてるのは私だけだから。そうじゃなくても囮になる」
ホムンクルス「そんなことはさせられない!皆で逃げよう!あの数は母でもとても無理だ!」
魔女「逃げなさい!」
男「…………」
ホムンクルス「…………」
魔女「……じゃあね」
バタン
「いたぞー!魔女だ!」「殺せえ!」「魔女は怪しげな術を使うらしい!気をつけろ!」
魔女「……はぁ」
魔女「あーあ。……楽しかった生活もこれでおしまいかぁ。これからだったのに」
魔女「……でも、これも悪くないかな?」
「弓矢で牽制しろ!」
魔女「私は、魔女はここにいる!呪われてもいい奴からかかってきなよ!」
「くっ……」「ひるむな!いけっ!」
魔女「……だからあの人達は追わないでね」
「突撃ー!」
魔女「いくよっ!」
~
ホムンクルス「父よ、私はいったい……」
男「…………」
ホムンクルス「……父よっ!」
男「…………」
ホムンクルス「くっ、私は母の元へ……」
男「逃げろ」
ホムンクルス「……なんと?」
男「お前は、逃げろ。あいつもそう言っていただろ?」
ホムンクルス「それで父はいったいどこへ行くのかな?」
男「あいつんところに決まってんだろ」
ホムンクルス「それは危険だ!」
男「わかってるさ。でも……カッコ悪いだろ?妻を置いて逃げるなんてさ」
ホムンクルス「……っ!」
男「ただの家族ごっこだったかもしれない。それにあいつは仇だ」
男「……でもよ。あいつを二度も一人ぼっちにはさせたくない」
ホムンクルス「…………」
男「いけ。親は子供を守るもんだ」
ホムンクルス「……」ツウッ
男「……泣くなよ。女の涙は安売りしちゃいけないんだぞ?」
ホムンクルス「……だがっ!」
男「いけよ。……この数週間、悪くはなかった」
ホムンクルス「……私もだ。父よ」
男「……じゃあな」
バタン
~
魔女「あはははは……きっついなー」
「とうとう追い詰めたぞ魔女め!」「弓をひけい!」「村の人々の仇、とってやる!」
魔女「……また、一人ぼっちか」
「うてぇー!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
魔女「っ!」
「……待たせたなっ」
魔女「えっ……」
ザクザクザクザク!ドサッ……
「なんだあの男は!?」「魔女に操られているのだと思われます!」「魔女の身代わりに!?」
魔女「嘘……なん……で……?」
男「……お前たちと……ごふっ……暮らして……」
魔女「しゃ、しゃべらないで!」
男「…悪く…なかっ……」
魔女「しゃべっちゃダメッ!」
男「お前……は……」
魔女「いや……いや……」
男「…………一人じゃない」
魔女「……ねえ」
魔女「返事してよ。いじわるしないでよ」
男「…………」
魔女「居なくならないでよっ!」
「今だ!」「今こそが好機!」「そこの青年の仇をとる!」
魔女「……ろしてやる」
魔女「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!」
「ひっ」
魔女「お前たちみんな!殺してやるっ!」
「ひるむなっ、いけー!」「うおおおおお!」
魔女「あははははははははははははははははははは!!」
~ ~ ~
ホムンクルス「母よ!」
魔女「……ごほっ、ごほごほ!」
ホムンクルス「母よ……!」
魔女「……私もうダメみたい。あの人は私の身代わりになって死んじゃった」
魔女「でも……仇はとったから」
ホムンクルス「…………」
魔女「……ねえ?泣いてるの?」
ホムンクルス「…………っう!」
魔女「……そういえばあなたが泣いているところ、見たことなかったね」
ホムンクルス「……お……母さん」
魔女「……なあに?」
ホムンクルス「……死なないで!」
魔女「……ごめんね」
ホムンクルス「お母さん……?お母さん!お母さん!?」
男死亡、だと・・・?魔女とホムンクルスの幸せな日々は・・・?
魔女「ダメな……お母さんで……ごめんね」
ホムンクルス「あああ……。あああああああ!?」
ホムンクルス「お母さん……」
魔女「…………」
ホムンクルス「お父さん……」
男「…………」
ホムンクルス「……私のせいだ。私があの時っ!」
ホムンクルス「……お父さん、お母さん。……人がなぜ復讐をするのか。その気持ちがようやく、ようやくわかったぞ……!」
ホムンクルス「……復讐してやるっ!」
おしまい
復讐の連鎖は終わらない・・・・って、え!?終わり・・・・?
ってことは「信じない」ルートもやるんだよね?ね?
>>125
やりませんごめんなさい。
なん……だと……
そこをなんとか
いや、ホントお願いします。これじゃあ、あまりにbadendすぎる・・・
この空気だと女の方は別の男のところにとついで幸せに暮らすてそうだしさあ
粘着うぜえ
綺麗な終わり方したし文句言うなクズ
小気味いい終わり方だった
醜くて醜くて、すごく好き
乙乙
この終わりだと>>24で言ってたような純愛とは違うような気がするんだが・・・・
純愛は純愛だったと思うよ、歪かもしれないけど
この分だとどっちを選んでもみんな幸せって風にはならなかったろうし
乙でした
乙
すごく面白かった。
信じるで良かったような気はするな。
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