【艦これ】提督「装甲艦娘?」【安価】 (1000)
・とあるゲームの世界観をパ…オマージュした安価スレ
・バトルもの…だと思います
・スローペース更新です
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406996348
バトルものかぁ、期待。
「…配給は?」
「これで全部、だとよ」
「…どう見ても一週間分の食料には見えない」
「お上が決めなすったんだ、戦時特別制度だとな…従う他無かろうよ」
「……戦時?戦争は終わったじゃないか」
「俺に言うなよ、…する気なんだろ、お上はよ」
「お上、ねぇ…」
両手で抱えられる程の食料を手に、男が溜息を付く。
それはこの都市では珍しい光景ではなかった。
大和、と呼ばれる国。
その実質的な首都、横須賀。
「……認めた覚えはねえんだがな」
「馬鹿、聞かれるぞ」
「知るか、どうせ皆言ってらぁ」
この国は、所謂『戦後』と呼ばれる時期にあった。
大戦―太平洋から大陸方面まで、超広範囲に及んだ戦争。
まさに苛烈を極めた戦争だった。
事の始まりは、世界の盟主、欧州連合による対露包囲網の強化。
その為に無くてはならぬ領土として、彼らは大和を求めた。
勝ちの見えぬ戦闘。
圧倒的な資源と物量を誇る欧州連合を相手取り、極東の島国は戦った。
結果は、勿論欧州連合の勝利に終わる。
けれど、それは欧州連合にとって決して楽な戦争で無かったのだ。
『艦娘』
艤装に、少女の御霊を込めた装備。
大和は、大戦の初期にそれを創り上げた。
大和の誇る類稀なる技術力。
緻密な機構、ミリ単位で設計されたパーツ。
当初それを鹵獲した連合国軍は、唸るしかなかったという。
そして何よりも、その強力な艤装に籠もった魂。
素晴らしいハードを、より円滑に扱う為のソフトとしての役割を果たした。
射撃の誤差の微調整や、剣筋の修正等、彼女たちの役割は挙げればキリがない。
だが何より特筆すべきは、その艤装に籠もった意思により、艦娘は仕手を要せずして戦闘を行うことが出来た、ということ。
それ故に彼女らは、半端な人間に使役されることを拒んだ。
彼女らが本当に認めた人間のみが、彼女らの仕手となった。
現に大戦を通しても、数えられる程しか彼女らの仕手は現れていない。
そんな兵器というには余りにも完成された彼女たち。
その初陣は、大陸の端、大英帝国の支配下にある中華民国との戦闘。
大和は、欧州連合の宣戦布告とほぼ同時にその国を攻撃し、沿岸部を陥れた。
通常考えれば無謀としか言えないような僅かな戦力で。
艦娘は、まさに一騎当千。
陸を、海を、空を自在に動き回り、ただ敵を屠る。
最新装備の歩兵も、初期型から大きく改良を施された重戦車も、艦娘の前では一介の塵芥に過ぎぬ、とまで言われた。
彼女らはそれらをいとも簡単に潰していった。
その中でも、仕手を持つ艦娘は別格だった。
彼女たちが認めた仕手は、肉体的にも精神的にも優秀な兵士。
人艦一体の業で艦娘を駆る彼等は、艦隊指揮官に擬えてこう呼ばれた。
「提督」と。
彼らは倒した。敵を倒し続けた。
いつしか、守勢に回っていたのは欧州連合側。
大陸、太平洋、どちらの方面にも、大和は勢力を広げていった。
が、前述の通り大和は敗れる。
連合もこれに対抗する武装を開発したのだ。
『深海棲艦』
鹵獲した艤装を研究し産まれた、艦娘に対抗しうる兵器。
艦娘の、模造品。
魂の籠もらぬ艤装。
一つ一つの性能は、艦娘に遠く及ばぬ。
だが、それは量産が可能だった。
そして彼らには、その艤装を幾千も生産する余裕があった。
艤装を纏う兵士を、いくらでも補充できる余裕があった。
一対一で敵わぬなら十を、駄目なら百を、千を。
この兵器の登場と共に、戦線はみるみる後退。
ジリジリと占領地を失い、戦線を引き下げられていく。
むせる?
そして、大和国軍は遂に本土まで追い詰められた。
だが大和軍は、大和国民は、本土決戦で決着を着けるつもりであった。
例え生命が散ろうとも、出来るだけ多くの敵を殺して。
どこまでも、敵に抵抗する覚悟を固めていた。
それを阻んだのは、横須賀に本拠を置く海軍省…いや、正確にはそこの権力を握っていた艦娘の一部。
現在の、大和の冠たる組織。
彼女らは、大和を代表して欧州連合へと無条件降伏の文書を発した。
国を守る為に艤装に御霊を包んだ彼女等が導き出した答えは、これ以上の抵抗は無駄、という物だったのだ。
勿論、許される事では無かった。
いくら現状で最大の権力を持つ軍事組織と言えど、通るはずのない横暴。
その横暴には、海軍の一部からも当然反対意見が飛び交うこととなった。
『降伏など在り得ぬ、本土決戦に備える』
『断固たる抵抗の意思を見せる』
そう言い放ち、大陸方面からの侵攻に備えるために、抗戦派は佐世保鎮守府で防備を固めた。
が―結果として、彼らの行動は、全くの無意味であった。
海軍は、佐世保鎮守府に立てこもった彼らを滅ぼした。
文字通り、滅ぼした。
横須賀に対して反抗する意思を見せた者、全てを屠った。
各方面鎮守府は、大本の横須賀以外で唯一艦娘を従える軍事組織。
しかも、大部分の抗戦派が集結していた状態の佐世保鎮守府。
そんな大組織が呆気無く滅ぼされる。
その事実は、大和国内に大きな波紋を広げた。
横須賀の意思に迎合する。大和はその選択肢に従う他無かった。
…その後、欧州連合による駐留軍が大和へ入り。
彼らは、戦後復興と称して大和の実質支配を目論み。
横須賀鎮守府を中心とする海軍省もまた、同じ目的を持っていた。
海軍省―いや、艦娘達の取った手は―あくまで屈辱や恥辱を無視するのならばだが―妙手であったと言える。
決して軽んじられぬ程の戦力を残し、降伏をする。
降伏によって欧州連合は本土決戦の大義名分を失い、中華民国まで出てきていた侵攻軍は分解。
また、国際的な非難を避けるため、無条件降伏をした大和へむやみに大軍を駐留させられない。
これにより、海軍省は戦後、大和のまとめ役としての地位に踊り出ることになった。
各地の鎮守府が権力を持ち、発言力を増した。
横須賀を筆頭に、西方を呉、中央を舞鶴、北方を大湊が統括。
勿論、国民はそれに満足するはずもなく、売国奴としか言えぬ海軍省へ不満を募らせた。
武装蜂起やテロが起こったのも、一度や二度ではない。
だが、その度に反抗する者は佐世保の例に倣わせた。
艦娘という圧倒的な武力で、彼らは大和を無理矢理統括したのだ。
今の大和を支配するのは海軍省。
総理も天皇も、飾りに成り下がってしまったのだ。
そして勿論、海軍省の戦力はまだまだ死んでいない。
欧州連合の駐留軍をゆくゆくは追い出すつもりで力を蓄えている。
これは欧州連合も同じ。
駐留軍もまた、海軍省の力を追い出した上での完全な大和支配を目論んでいる。
そんな膠着状態の最中、六年が過ぎ。
その諍いに最も被害を被ったのは、やはり国民、民衆であった。
彼らには海軍省も駐留軍も敵。
売国奴と侵略者。
海軍省に対しても、駐留軍に対しても、彼らの不満は爆発寸前にまで溜まっていた。
けれど、彼らに力は無い。
何度も何度も、海軍省の武力による抑圧をその目で見せられて、そう自覚するに至った。
ある時は、村が滅ぼされ。
ある時は、町が滅ぼされ。
どれだけ武装したところで、艦娘を中心とする部隊には敵わない。
ダミー
艦娘は―贋艦と呼ばれる量産機でも十分に高い代物である。
何より、海軍省によって艦娘の流通は厳しく監視されていて、一般の手にはまず渡らない。
なればこそ、不満を抱えたまま、虐げられて生きるしかなかった。
「……おい、見ろよ」
「あ?」
ダミー
「贋艦だ」
「……ふん、誇りある帝国海軍も堕ちたもんだな」
「…誇り、か」
ダミー
贋艦―九四式艦娘『吹雪』型。
生命の籠もらぬ艤装。
大和人は、これを忌み嫌った。
オリジナル
真艦―つまりは大和が開発した御霊の籠もった艤装の模倣品を。
しかし、戦争が集結するやいなや海軍省はこれの開発に着手。
海軍省は、艦娘達は、先の大戦で気付いたのだ。
もはや、戦況を動かすのは個の力ではないと。
欧州連合のやったように、御霊の籠もらぬ艤装を大量に作り、並べるのが最も優れた戦術であると。
そうして最初に完成したのが量産機―『吹雪』型だ。
現在、その位置を最新の九七式艦娘『陽炎』型に取って代わられつつあるが、傑作機と呼ばれた機体である。
その吹雪型艤装を纏った兵士達が、街を巡回していた。
「…目を付けられても面倒臭い、さっさと帰ろう」
「…そうだな」
配給所から、暗い目をした民衆たちがぞろぞろと歩いて行く。
彼らの目に、光は無い。
横須賀の街。
これが、日常だった。
プロローグ、というか世界観説明終わり
こんな感じの世界観で物語を進める安価スレだよ
バトルとか調子乗って言っちゃったけど多分恋愛要素もあるよ
とりあえず艦娘についての設定と性能
※艦娘ってどんな兵器さ
モビルファイターみたいな感じで艤装を装着すると思ってください
※艦娘・種類別の性能
戦艦…頑強な装甲を持って敵に近づき、長柄の対艦刀を振るって敵を殺す。至近距離戦闘に特化した艤装。
空母…戦艦すら射殺す長弓で遠距離から敵を射抜く。中~遠距離に特化した艤装。
軽母…連射型の機構を持つ弩を装備する艤装。威力・貫通力は空母より下で、射程も短いが、中距離戦闘では無類の強さを発揮する艤装。
軽巡…装甲は薄いが、当てることが出来れば戦艦の装甲すら突き破る無誘導ロケット弾(通称:魚雷)を中心に装備する対近距離艤装。ヒットアンドアウェイ戦法を得意とする艤装。
重巡…そこそこの装甲に、対艦刀、魚雷を装備したオールマイティー型の艤装。どんな戦い方もそれなりにこなすが、どちらかと言えば器用貧乏な艤装。
駆逐…装甲はとても薄いが、歩兵用火器程度なら意にも介さない。軽巡装甲くらいならば破る実弾砲と、魚雷を装備する。どちらかと言えば対艦娘よりも対人、対通常兵器を想定して設計された艤装。
航巡・航戦…重巡・戦艦をより遠距離戦闘寄りに変化させた艤装。対艦刀の代わりに弓を持つ。
潜水…至近距離戦闘という前提を完全に省いた艤装。姿の見えぬ深海から、特殊な高速・高威力の魚雷で敵を狙う。装甲は薄く、見つかればほぼ無抵抗となってしまう。遠~超遠特化型艤装。
次は提督、というか主人公の初期設定
貴方は――――
>>+3
A.英雄を夢見る学生。
B.海軍省の支配から国を解放するための義勇軍の一員。
C.海軍省に仕える、先の大戦における数少ない『提督』の1人。
B
C
b
―主人公は、海軍省の支配に甘んじるのをよしとせず、抵抗するのを選んだ青年だ。
―彼は、一体どんな目的を持っている?
>>+4
A.とにかく海軍省を倒したいという気持ちが逸っているだけ。
B.あわよくば自分が、この混沌を極める大和の支配者になりたいという野心を持っている。
C.ただ、この国を良くしたいという気持ちで行動している。
D.その他、無理のないもの、内容併記。
B
a
c
D
己の戦闘欲を満たす為
d 連合の影響を排しかつての大和を取り戻す
―彼は、狂人であった。
―ただ己の戦闘欲を満たすためだけに、海軍省に歯向かうという道を選んだ。
―それが、大和においては最も戦闘を味わえると思ったからだ。
―いっそ彼が何も武器を持たぬ民衆の1人であったのなら、物語はそこで終わっていただろう。
―だが、彼は艦娘を纏っていた。
―贋艦ではない、正真正銘の真艦を。
その名は――
パートナーとなる自分の艦娘
>>+4
制限は特になし
艦種別の性能については>>12を参照、あと潜水艦は「姿の見えぬ深海から」じゃなくて「姿の見えぬ場所から」で
武蔵
戦闘狂か、じゃあ神通
足柄
那珂
戦闘狂な那珂ちゃん…?
村正か。前口上期待
―那珂、という艤装であった。
―大戦期の標準的な軽巡型艤装である彼女。
―仕手との相性は…偏に、最悪と言うしか無いのだが。
―生命を削る距離に肉薄して、一発必中の魚雷を放つという戦闘スタイルは、彼に適合していた。
―そこに躊躇いが無いからだ。
―自らの命を失う事さえ恐れず、魚雷の必ず当たる距離まで接近する。
―これが出来る兵士は、果たして世界でも何人いるだろうか。
―軽巡とは、元々ピーキーな艤装である。
―1対1ならまだしも、多対多の戦闘となると、接近は難しくなる。
―その装甲の薄さも相まって、並の仕手は集団戦闘においては初撃の奇襲程度が関の山。
―だが、彼は違う。
―矢の雨を、対艦刀の軌道を掻い潜って殺す。
―矢が刺さろうが、腕が飛ぼうが前進する。
―そんな戦い方をする内。
―いつしか、海軍省の鎮圧部隊にすら恐れられる存在となっていた。
「良かったなぁ那珂、お前の名も売れてきたぜ?」
「違うから!那珂ちゃんはこんな感じで名前を売りたかったんじゃないから!」
「へー…ま、どーでもいいや、行くぞ」
「ま、また戦闘!?」
「あぁ…どうにも佐世保の生き残りの大物が見つかったってよ」
「まーそれ自体は知ったこっちゃねえが、海軍の奴らが確保に相当数割いてるって話だ」
「…くはっ…あー…楽しいなぁ?」
「全然楽しくないから!というかいい加減那珂ちゃんの忠告聞いてよ!」
「忠告ぅ…?」
「戦闘中に!危ないって言っても全然聞いてくれないじゃん!」
「だーいじょうぶ、何とかなるって、今回も」
「うわぁぁ……もーやだよー…那珂ちゃん田舎に帰りたい…」
「おう、帰れ帰れ、俺が死んだら好きにしろ」
「提督が死んだら那珂ちゃんも死ぬから!」
―そんな、相性最悪の二人組。
―彼らが、一体この国でどう生きていくのか。
以上前設定、今日はここまで、次からプロローグ
口上は…誰か代わりに考えてくれよと言いたいレベル
それではまた
乙
以前投稿スレに装甲悪鬼ネタ書いた人かな?
おっつ
期待
乙
これは良スレになる予感
乙
乙
おつ
期待せざるをえない
>>7
SLLくんは唸るって読めないかな
村正クロスいいゾ~これ
欧州連合がそれを考慮しなければならないレベルの国際世論があるってことは、
それなりの力持った第三国(勢力)があるってことか
元ネタは知らないけど
>>32 ですね
>>40 ロシアの大和侵攻の口実を作らない為、というのが一応の理由ですかね 後述するかもですが、この世界において欧州連合とタメ張れる大国はロシアとアメリカです
ではプロローグ書いていきます
その中でヒロイン候補安価を取ります
佐世保鎮守府の惨劇。
国民に海軍省の恐ろしさを良く示す、大虐殺。
海軍省は抗戦派に一切の慈悲を認めず、ただ殺した。
今でも、佐世保鎮守府の跡地はその面影を残したままだ。
立派な軍事施設だった場所は、廃墟として完全に見捨てられた場所となった。
それこそ、探れば白骨なんていくらでも出てくるだろう、と言われる程。
だが、この佐世保鎮守府の惨劇には、本当に僅かながら生き残りが居た。
前海軍大将―その人自身は、全く平凡な人間であったが、特筆すべきはその血筋。
元は代々大和に仕える武士の家系で、家族の殆どが軍人や政界の重要ポストだった。
それは、担ぎ上げるには丁度良い神輿。
抗戦派も、ひとまずはその人を旗印にして時間を稼ぐつもりだった。
何しろ、そんな人間が率いる軍を攻撃するのならば、入念な手回しが必要になる。
政治に及ぼす影響や国民の反感を考えるのならば、だ。
思えば、それが悪かったのかもしれない。
そういった理由で抗戦派は、急急な戦闘にはならない、と考えていた。
―だが、海軍省はまともではなかったのだ。
彼らにそんな理屈は通じなかった。
その結果が、あの惨劇だ。
しかし―その惨劇の中にあっても、前海軍大将は生き延びた。
そしてそれから6年経った今、行方が遂に判明したのだ。
「…つまり、その人を助けるってこと?」
「ああ、そうらしいぞ」
「人助けかぁ…」
少女らしく、そんな言葉に陶酔する彼女に釘を刺すように、彼は言った。
「ま、そいつを助けることでもっとこの戦闘が拡大するんだがな?」
「そういうこと言わないでくれないかな!?」
げんなりとした様子のパートナーとは対照的に、さも楽しげに彼は笑った。
彼が所属するのは、九州一帯を根城とする対大和義勇軍。
巷では――と呼ばれている。
>>+2(義勇軍の名前 別に重要ではない)
戒厳戦都
第一空挺師団
>>38
たぶん装甲って書いてるから装甲騎兵ボトムズとのクロスかと思ったんじゃない?
ボトムズといえばむせるが代名詞みたいなもんだし
ってかむせるがもう伝わらないのかw
第一空挺師団と呼ばれる義勇軍。
何で空挺師団なんだ、と。
彼はその名前に一度ツッコミを入れたことがあるが、現リーダーが頑なにこの呼称を言い張るので諦めた。
さて、九州は現在唯一海軍省による影響が殆ど届かぬ場所だ。
それは遡れば、佐世保の悲劇に起因する。
本来各地方を取り締まる筈の地方鎮守府、その九州における最大規模の物がなくなってしまっている。
更に、佐世保の件を良く知る九州では反海軍の風潮が色濃い。
そういった物が、この地で反乱軍とも言える軍がまだ海軍に討伐されずに存在している理由である。
そして、その第一空挺師団がやっとそれなり―少なくとも軍と名乗られる程―の体裁を整え始めた時。
山口においてその元海軍大将が発見されたとの知らせが届いたのだ。
「……でもさー、何で助けるの?」
「…もしかしてわかんねーのお前?」
「な、なによその明らかに馬鹿にした顔!?」
「はぁ…」
「露骨に溜息吐くのやめてー!」
第一空挺師団が彼を求めた理由は単純。
遂に反海軍省という理由を振りかざして挙兵するに十分な戦力が整ったのは良いのだが。
その挙兵の理由が弱い。
今のまま兵を挙げても、本土の国民にただの反乱軍という認識しか受けない可能性が高い。
勿論、それでも影響力はあるだろうが―彼らには決め手が欲しかったのだ。
「じゃあ、その人が決め手?」
「言ったろ?助ければ、もっとこの戦闘が拡がるってよ」
「…うぇー…」
「おいおい、喜べよ?」
「那珂ちゃんは提督みたいに頭おかしくないの!」
心外だな、と彼は笑う。
那珂はそれを見て、諦めたように溜息を吐いた。
「で…どんな人なの?その人って」
「ああ――」
そんな、神輿として担ぐ為に最適な人間。
その名前は――
>>+4(ヒロイン候補 併記して艦娘/人間の指定をお願いします、これによって多少ストーリーが変わります)
ヒロインとその艦娘をセットで書くのかな
といってもAA使うスレじゃあるまいしどうすればいいのか
ああ、そのヒロインが艦娘として登場するか、それとも普通の人間として登場するかって事を書いて欲しかったんです
わかりにくくてすいません
>>+2で
五十鈴
艦娘
人間
人間で できたら次からはキャラ名も書いてくださると助かります
キャラ名>>+2
すみません、名前忘れました。名前は川宮 厳戒(かわみや げんかい)で
オリジナルって事なら↑
艦これのキャラからなら赤城
艦これのキャラって事です
非常にわかりづらくて申し訳ありません、赤城で行きます
赤城―海軍大将まで昇りつめた、と言うよりは血筋で海軍大将にされたという人間。
それを、第一空挺師団の旗印に―という思惑があるらしい。
「赤城…さん?」
「ああ…ま、よー知らんけどさ、必要なんだと」
が、彼にとってはどうでもよいこと。
求めるのは、策謀ではなく、それに付随する闘争。
彼は戦闘を、ただ純粋に戦闘を求めていた。
「ふーん…で、でもあの、さっき海軍省の人も見つけてるって」
「おう、そうだ」
「…聞き間違いじゃなかったー…」
殊更楽しそうに口角を歪めて、彼はその言葉に答えた。
この報告、正確に言えば続きがある。
『その確保に、既に呉鎮守府より軍が出立している』というもの。
どうあっても彼女を消しておきたいのか、かなりの軍勢であるらしい。
その将、西方最大の機関、呉鎮守府を統べる艦娘は――
>>+4(ヒロイン候補 艦娘で固定)
ksk
人間ヒロインは艦娘が人間として出るのか……
艦娘も赤城でW赤城
雪風
ビスマルク、無理なら扶桑
>>57 単純に艦これのキャラを借りただけの人間という事で、説明と日本語が下手で申し訳ないです
ビスマルクの扱いどうすっかと思ったけど逃げ道があったので逃げます
呉鎮守府を統べるは、扶桑。
大戦初期に作られた艦娘。
刃渡り3尺6寸の対艦刀を持ち、重厚な装甲に身を包んだ、平均的な戦艦艦娘。
だが、深海棲艦が登場した辺りから武装を変えた。
その得物を対艦刀を長弓に換え、戦艦装甲を持ちながら遠距離攻撃を得意とする艦娘へと生まれ変わっていた。
「随分大物が出てきたなぁ…くくっ」
「嫌だぁー…那珂ちゃん戦闘ボイコットしたいー…」
「何、すぐ終わる」
「だって痛いもん!やだやだやだー!」
艦娘、その真艦は贋艦に比べて様々な面で優れている。
その一つに、真艦は、仕手の傷を癒せる、という能力が挙げられる。
これは『生きてさえいれば、どんな傷でも治せる』のだ。
腕が飛ぼうが、足が炭になろうが、時間をとりさえすれば完治する。
勿論流石にそういった傷は完治に時間がかかるが―これは驚異的な能力であろう。
何せ単純な骨折や裂傷であれば、寝るだけで完治する程の再生力だ。
艦娘の真艦、及びその仕手が恐れられる理由は、ここにあった。
…だが、治ると言っても当然痛い。
腕が無くなれば痛い。骨が折れれば痛い。肌を切り裂かれれば痛い。
が、彼はそれらの苦痛を全く恐れない。
故に、戦闘後の彼は、常に酷い状態だった。
その痛みはどうやら艦娘にもリンクしているらしく、那珂はこれから襲いかかるであろう受難にいやいやと首を振っている。
「苦痛ってのは生きてる証拠らしいぜ、那珂?」
「那珂ちゃんはもっと違った生きてる証拠を求めたいよっ!」
楽しそうな仕手の声と、艦娘の悲鳴が響く一室。
その部屋の扉が叩かれ、1人の女が入ってきた。
彼女こそ、この反乱軍のリーダー。
名を――
>>+2(ヒロイン候補 艦娘/人間の指定を併記してお願いします 例 那珂 艦娘)
ksk
長門 艦娘
ビッグ7か
「随分と楽しそうだな」
呆れた様子の低い声が部屋に響く。
「ああ、早く戦闘したくてな…なぁ?」
「んなこと言ってないー!」
扉の前に立つのは、長門。
元は大戦期、海軍省の下で戦っていた艦娘の1人。
戦中、最新型艤装として大きな活躍を挙げた。
だが大戦末期、彼女は海軍省へと反旗を翻す。
誇り高き彼女には、国を売った海軍省が許せなかったのだ。
徹底抗戦を唱えた彼女は、やはりあの佐世保で海軍を迎え撃ち。
そして生き残った、数少ない艦娘の1人だった。
…関係ないが、第一空挺師団という(自分で考えた)名前をひたすらに推している。
「…お前らは、本当に仕手と艦娘なのか?」
「あ?」
「いや、いつも出撃前にそんなやりとりをしてるじゃないか」
「何、ちょっと素直じゃないんだ、こいつは」
「那珂ちゃんはいつも素直だから!戦いたくないから!」
「…大丈夫なのか?」
「気にすんな、毎度のこった」
「…ならいいのだが、な」
こほん、と長門が一つ咳払いをして、改めて向き直る。
「そろそろ出立だ」
「いやだー……いやだぁー…」
「…赤城ってやつを引き入れる目処はあるのか?」
「珍しいな、そっちに興味を示すとは…問題ないよ、赤城殿とは佐世保以来だが、それなりに親しくした仲だ」
「…まあ、無事に接触できれば、だがな」
「……そうか、それじゃ、俺の役目はいつも通り敵を倒すだけ、だな」
「ああ、明快で良かろう」
「おう」
「いーやーだー…」
「……ああ、そうだ」
「うん?」
「…今回は、部隊を2つに分けるのだが…陽動部隊と突入隊、どちらがお好みだ?」
ちなみに私は突入隊の方だが―と、長門が続ける。
ふむ、と思案していると、隣から、危なくない陽動部隊にしようよー!と甲高い声が聞こえる。
さて――
>>+2
A.突入隊で。
B.陽動部隊で。
A.突入隊で
A
A.突入隊で――(長門好感度+1)
「突入隊で、そっちの方が楽しめそうだ」
「くくっ、貴様ならそう言うと思ったよ」
一切の迷い無く、彼はそう言い切った。
その答えに、長門が満足気に笑う。
「わー…那珂ちゃんまた腕取れちゃうんだー…わー…」
そして、虚空を見つめて那珂も笑う。
「ではな、集合時間に遅れるなよ」
「ああ、リーダー殿」
「那珂ちゃんがー…那珂ちゃんが死ぬー…」
「安心しろ、死ぬ時は一瞬だ」
「お、良いこと言うじゃねえか」
「長門さんも結構ナチュラルに頭おかしいこと言わないで!」
はは、と豪快に笑って、彼女は部屋を出て行った。
いよいよ始まる戦闘を前に、彼の心は滾っていた――――
好感度
那珂
赤城
扶桑
長門 ★
とりあえず一旦ここまで
説明と文章が下手で申し訳ありません
基本的に選択肢を選んで行くだけの安価スレです
たまに好感度が変化する選択肢があって、これが10を超えると専用ルートにシフトします
あと戦闘中に挟まれる選択肢ではミスが続くと死にます、死んでも3回までコンティニューが可能です
4回死んだら主人公作り直しから
多分流れとしてはこんな感じ、それでは
乙
那珂ちゃん不憫だなw
次機会があれば1回くらい配慮してあげよう
乙
なんでや、那珂ちゃんかわいいやろ
乙
普段はブーたれててもいざ戦場に立つと姉である神通にも負けないほどの武闘派になる、とかどうだろう?
凸凹コンビだけど戦場では息ピッタリってのもあるが。
なんだかんだいってこのコンビ活躍してるらしいし那珂ちゃんも強いんじゃないか?
…たぶん
ここで力をもっているのは大英帝国なのか、それともアメリカなのか、主導権はどっちなんだろう?
元ネタだと、劒冑持ってる大英帝国は衰退せず、造りだせないアメリカは属地だったけど
こんな時間に誰かいるとも思えんけど、一応投げてみる
敵、海軍省のお偉いさん方(艦娘で固定)
横須賀のトップ>>+1
舞鶴のトップ>>+2
大湊のトップ>>+3
霧島
翔鶴
利根
>>74 一応欧州連合が一番強いってことにしといて下さい…い、いつか理由書くんで
どもども
欧州連合・・・独英同盟ですか?
――さて、時は少し遡って。
海軍省中枢、横須賀鎮守府の会議室。
その中には、五人の少女達が円卓を囲んでいた。
「さて、会議を始めるとしようかの」
一見すると幼く見える、ツインテールの少女―利根が言う。
「え、ええ…それは構いませんけれど…あの…」
「何じゃ?」
その対面に座った白髪の少女―翔鶴が、控えめに口を挟んだ。
そして、円卓を見渡して。
「……この状況で、ですか?」
「……うむ…」
利根が唸る。
翔鶴の視線の先には、黒い長髪の姉妹、扶桑と山城。
「不幸だわ…何で私ばっかり面倒臭い事を…」
「だ、大丈夫ですよ姉様!手柄!手柄が挙げられますよ!」
「…手柄なんて…どーせ私なんて、こんな中途半端な装備だし…誰かに横取りされるに決まってるわ…」
「ね、ねーさまぁ…どうかそのようなことを言わずに…」
窓から青空を見上げ、ぶつぶつと独り言を漏らす扶桑に、山城が必死に声をかける。
「……はぁ、何とかならんものかのぅ」
「…あ、あはは…」
それは彼女らにとってウンザリさせられる程に見慣れた光景であった。
なぜよりによって呉鎮守府のある中国地方などに逃げたのだ―と、彼女らは内心で考えていた。
「…貴女達ねぇ」
そこに、見かねたと言った様子で、円卓の壁を背にした位置で黙っていた眼鏡の少女が口を開く。
霧島―この横須賀鎮守府、ひいては海軍省の実質的なトップである。
「いい加減に会議に入らないかしら?」
「…わかりました…」
流石に霧島の指摘には逆らえなかったのか、渋々と言った様子で扶桑が青空から円卓に視線を戻す。
それを確認して、霧島はさあ、と利根を促した。
「うむ…では、今回の赤城―元海軍大将の件について、だな」
重々しく、言葉が発せられた。
皆、一様に険しい表情をする。
「まさか生きてるとは思いませんでしたね…」
翔鶴が言う。
苦々しげに、霧島がそれに合わせた。
「…はぁ、六年も何してたのかしら」
「…隠れていたのでは?」
不思議そうに、山城が漏らした。
半ば反射的にそんな事を言った彼女に、扶桑が山城、と声を出す。
「違う違う…ウチの軍隊が、ってことよ」
しかし、その不躾な質問にも気を悪くした様子なく、霧島は優しく答えた。
「…あ…は、はい…申し訳ありません」
「いいのいいの…それで、利根」
続きを―と、利根を促す。
「うむ…それで、どう対応するか、じゃが…」
「…確保、でしょうか?」
一番に答えたのは翔鶴。
だが、霧島、そして利根がそれに首を振った。
「…ダメよ、前回、佐世保でその作戦が失敗したでしょう?」
「…では…」
「うむ、今回は初めからから殺すつもりで行く」
利根が、円卓の中央に持っていた地図を広げる。
「奴が見つかったのは山口の山奥―そこに根城を置くレジスタンスが保護しておるようじゃな」
と言っても、貧弱な奴らじゃがの、と利根が笑う。
「この地図は、そのレジスタンスのメンバーを捕まえて聞いた証言から作ったもの」
「奴らの拠点は山間の洞窟―切り立った山の中にある、自然の要塞じゃ」
「…相当、入り組んでいますね」
翔鶴が、その地図を見て眉をひそめた。
「ええ、でも、心配ないわ」
ね?と霧島が扶桑へと視線を移す。
「はい――」
ばさ、と扶桑が書類の束を円卓に置いた。
それは、軍の出撃確認書類。
ある程度大規模な軍を動かすには、この四大鎮守府統括の許可が必要なのである。
それを見て、翔鶴と利根が目を見開く。
「これは――ここまでの大軍を?」
「…じゃな、ちと過剰ではないか?」
視線を向けられて、扶桑が狼狽える。
「………え、ええ…そ、そうですよね…私もそう思っていたの…でも霧島さんが…」
「ね、姉様!?」
が、霧島は強い意思を込めた瞳で彼女等を見据えて答えた。
「いえ、このくらいで良いわ」
「この大和の国に、かつての繁栄と、栄光を取り戻すために」
「どんな小さな不安要素でも、確実に取り除くべきよ」
「…霧島…」
「霧島さん」
それが私達の目的でしょう?と続けた霧島に、翔鶴と利根は笑顔を浮かべた。
「……うむ、そうじゃったな」
「…はい、仰るとおりです」
「じゃあ、認めてくれるかしら?」
霧島が書類を差し出す。
利根が印を押し、翔鶴もそれに倣った。
「大湊鎮守府統括利根が、この作戦を認めよう」
「同じく、舞鶴鎮守府統括翔鶴も賛同致します」
「よろしい」
にっこりと霧島が笑う。
此処に、後に多くの人間の運命を変えることとなる作戦が認められた。
その軍を率いるのは――
「……はぁ…また会話から省かれたわ…不幸ね…」
「ね、姉様…!」
笑う三人とは対照的に、暗い表情で再び空を見上げる扶桑。
――本当に大丈夫かしら?
霧島は、心の片隅で溜息混じりにそんな事を考えていたのだった。
ここまで、登場人物はこんなもんかな
随分半端な時間に目が覚めた、お付き合いいただいた方、ありがとうございます
それではまた
乙
おつ
乙
トップが翔鶴ってことは舞鶴鎮守府には妹の瑞鶴がいるのかな?
乙
この利根捕虜とかには容赦無さそうだな
レジスタンスのメンバーを捕まえて聞いた(意味深)
冷静に読み返すと誤字だったり脱字だったりで文章の内容以外もクッソ恥ずかしいな
それが気にならないくらい面白いですよ
ただ、主人公の性格的に装甲悪鬼村正というより刃鳴散らすですけど
>>91 ありがとうございます、励みになります せ、世界観を参考にしただけだから…
関門海峡。
九州と本州を隔てる長い海を、第一空挺師団の面々が眺めていた。
陽動部隊は既にこの海を超え、残ったのは精鋭の突入隊。
皆、屈強そうな兵士であった。
「……やーだー…うー…」
…この期に及んで駄々をこねるただ1人を除いては。
「…さて、そろそろか」
時計に目をやった長門が、楽しげに漏らす。
そして、続けて小さく何事かを呟く。
身一つで海を眺めていた彼女の躰が、重厚な艤装で包まれた。
『…うむ、良好だな、問題ない』
先程よりもくぐもった声が辺りに響く。
それに続くように、後ろに並んだ兵士達もまた、何事かを呟いた。
次々と、艤装を纏った兵士が増えていく。
数瞬の後、一人を除く皆が、艤装を身に付けていた。
※補足
仕手がある決まった口上を述べることで、艦娘艤装を装備することが出来る。
人間形態の真艦は、口上を述べることで艦娘形態を取ることが出来る。
「おーい…那珂、ぐだぐだ言ってないで、俺達もさっさと準備するぞ」
「…那珂ちゃんは最後まで抵抗しますー…」
「……ったく、無駄だっつーに」
海に向かって石を投げながら変わらずいやいやと言い続けるパートナーに、彼は大きく嘆息する。
仕方ない、と視線を外して、彼は頭に刻まれた文言を口ずさみ始めた。
「此の世の名残、夜も名残、死にに行く身を譬ふれば――」
「あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く――」
言い終わると、那珂の躰が消える。
次の瞬間、彼の躰を艤装が包んでいた。
「…さて、覚悟は出来たか?」
『……うがー…できてなーい…』
直接頭の中に響いてくるような声に、これだけは慣れないな、と彼は顔をしかめた。
「いい加減に諦めろ、もう戦うしかねーんだっての」
『…うー…』
『どうだ、説得は終わったか?』
半笑いで毎度のやり取りを眺めていた面々を代表するように、長門が問う。
それに、彼は短く答えた。
「ああ、いつでも良いぞ」
『よくないよばかー!』
『はっは……』
そんなやり取りにまた、一同はひとしきり笑い。
その笑いが収まってくると同時に、長門が低い声で告げた。
『…では、行こうか』
長門の後方に控えた艤装が、一斉に頷き、躰を屈める。
そして、勢い良く空へと飛び出した長門に続いて、空へ駆けた。
「ははっ、楽しい戦いの始まりだなぁ、那珂!」
『…ぶー』
どうにも約一名、その空気に迎合出来ぬ者もいたらしいが。
――さて、ここで今回の作戦概要を説明しよう。
第一空挺師団の目的は、赤城の救出。
だが、相手取るは完全武装の海軍省正規軍。
しかも、呉の総括、大戦期から活躍する真艦・山城が率いる軍だ。
まともに正面からやり合っては当然勝ち目は薄い。
故に、多少の搦め手を取ることになった。
そもそも、この赤城に関する一連の情報は呉鎮守府に送り込んだ第一空挺師団の密偵によりもたらされたもの。
勿論、敵の動きも把握している。
それを利用して、赤城確保の為に動く敵軍団を道中で機動力のある編成の陽動部隊が奇襲。
そしてすぐに離脱することにより、敵を警戒させ足を止め、その隙に赤城を救出するという作戦だ。
分単位で敵の動きを把握した第一空挺師団の情報力により、完璧に立案された作戦。
何もそんな事をせずとも軍の情報を把握しているのだ。
呉が軍を動かすより先に救出してしまえばいい―と思うかもしれない。
だが、敵が大軍を動かす時にしかこの救出作戦は立てられなかった。
理由は単純、関門海峡を超えられないからだ。
普段この海域は、呉鎮守府の軍によって厳重に警護されている。
だが、赤城確保の為に、呉は関門海峡の警備軍まで動員していた。
故に、今しか山口に隠れ潜む赤城を救出するチャンスは無い、という訳だ。
――が。
その計画が、明らかに狂っていた。
『……どういう事だ?陽動部隊と連絡が取れん、とは』
『はっ…既に接敵の予定時刻より四半刻程経つのですが、何も報告がありません』
陽動部隊の奇襲が成功しており、戦闘継続が可能ならば合流、不可能ならば離脱の旨を伝え一足先に九州へ。
という手筈であったのだが…その陽動部隊と一向に連絡が取れない。
『…ふむ…一度誰かを送るべき、か…?』
山間を縫うようにして翔んでいた艤装の編隊が、その足を止める。
その時間は、一分程であっただろうか。
漸く長門がその口を開いた。
『不測の事態が起こったやもしれん…が、この機を逃しては――』
その時、長門の言葉を聞いていた彼の頭に、けたたましい警告音が響いた。
『こ、後方!辰巳の方角に敵機!』
「な――!?」
那珂の慌てた声が、彼の頭の中で鳴る。
『…っ!』
同じくして、長門を始めとする面々も、その異常に気付く。
「…どうなってる?」
『わからん!…ただ、…マズい事は確かなようだな、どうも』
「…那珂、もう一度詳しい情報を」
『…えっと…方角は辰巳、敵は全部艦娘艤装…八〇はいる』
『…先頭に、真艦が二…多分、これが扶桑と山城だと思う』
「……とのことだ、長門?」
『…はっ…これは嵌められたかな、どうも』
圧倒的な窮地。
だというのに、長門も、彼も、笑っている。
『……ま、致し方あるまいよ…このまま進むしか道は無かろう』
『…だが――』
電探の索敵範囲、どんどんと迫ってくる敵機の群れを見て、長門が言う。
『このまま赤城殿を救いに行ったとして…そこにも既に兵が配備されている、という可能性はどのくらいあると見る?』
「……ま、ここまで歓迎されてんだ、まさかそっちが空って事は無いだろうよ」
『…だな、このまま行けば挟み撃ちだ…つまり、兵を分けてでも、此処で敵を食い止める役割を担う者が必要な訳だ』
それだけで、彼は察した。
一大戦力である真艦。そのどちらかが分隊を率いるべきである、と長門が語っているのを。
「……ふむ――」
さて、彼はどちらの役目を請け負うのだろうか――
>>+2
A.赤城の救出。
B.敵の足止め。
b
a
A.赤城の救出――(赤城好感度+1)
「――救出に行く」
数瞬の思案の後、彼が出した答えは、進むという物。
ふむ、と長門が頷く。
『良かろう、諒解した…ならばこの戦場、この長門が承ろう』
『赤城殿を救出する際には、私の名前を出すと良い』
『…もし折良く救出出来たのならば、そのまま九州へ戻れ』
「…委細承知、そんじゃあ――」
彼の言葉を阻んだのは、風切音。
空母の長弓から放たれた矢が、装甲を掠める。
『うぎゃー!危ない!危なかったー!』
騒ぐ那珂に、うるせぇよ、と毒づいて。
「…幸運を、リーダー殿」
『…そちらもな、戦闘狂』
彼はただそれだけの短い言葉を発し、山肌を沿うように飛行を開始する。
それに、第一空挺師団の半数が続き、残りの半数が戦闘隊形を取る。
『くくっ――山城よ…佐世保の借り、今、少しは返させて貰おうか』
『全隊、この長門に続け!』
応、と威勢のいい声が、山間に響いた。
好感度
那珂
赤城 ★
扶桑
長門 ★
那珂ちゃんの好感度上げたいなーでもこの主人公そんなタイプじゃないだろーしなー
お風呂
何か意見があれば言ってください、可能な限り対処致します
口上のセンス?知らん
まだプロローグ的なものすら終わらぬというね
敵国に「民族浄化」された(海軍省としては「させた」)くせに大和を名乗るとは、売国奴の分際でちゃんちゃらおかしい
というネタはそのうち上がってくるのでしょうか?
まあ、小ネタ程度にね
>>101 無知なもんで元ネタがわからぬ、よければ教えて欲しいです
補足的な戦闘スペック、こういうの考える時が一番楽しい厨二病
主人公補正那珂ちゃん
那珂(真艦・軽巡洋艦)
近距離攻撃 ★★★★
中距離攻撃 ――(命中困難)
遠距離攻撃 ――(武装なし)
装甲防御力 ★★
陸上機動力 ★★★★★
空中機動力 ★★★★★
水上機動力 ★★★★★
兵装
六一cm四連装無誘導ロケット弾
対艦刀(短)・脇差
密装(真艦にのみ許される、言ってしまえば固有スキルのようなもの、メタ的な事を言えば陰義に相当)
???
解説
至近距離戦闘をコンセプトに設計された艤装。
基本的にその高い機動力を活かした一撃離脱戦法を得意とする。
兵装もその戦法に合致した近距離戦闘特化型の物となっている。
一応、ロケット弾の有効射程は中距離までであるが、中距離から動体物に命中させるのは困難であり、威嚇程度が関の山と言える。
機動力確保のため、装甲は薄い。
故に、戦艦艤装のように突撃してそのまま近距離にとどまり続けて戦闘を継続する、といった戦い方は普通はしない。普通はね。
なんだかんだ言って戦闘能力は高く、仕手を得た事により更に力を増している。
人間形態は、優しい性格の少女である。
【朗報】那珂ちゃん、強かった
魔界編の新撰組使用の劔胄みたいだな
質問、仮にOPがあるとすれば主題歌とかテーマソングはなんですか?
――視点・提督
『…正面、戌亥の方面に二〇、丑寅の方面に三〇』
「……さっすがリーダー殿、慧眼恐れいります、っと」
反大和を掲げたレジスタンス、その拠点の洞窟がある山。
そこは、既に蟻も入れぬ程厳重に包囲されていた。
『…提督殿、どう対処致しますか?』
その包囲の索敵範囲から離れた空中で、状況打開の為の策を練る。
…こういうのは得意分野じゃねえんだがな。
「ふむ…」
あの中に突入し、赤城とやらを救出する必要がある。
恐らく既に敵も捜索は行っているだろうし、あまり時間は無い。
…しかし、だ。
狭い洞窟内ならともかく、いくら山間とは言え拓けた空中で戦力差のある戦闘を行うのは好ましくない。
「……」
地図の通りであれば、あの洞窟内は数の利を活かせる程に道は広くない。
つまり、どんな手を使ってでもあそこに入ってしまえばとりあえずは何とかなる。
幸い、此方の分隊の艤装は近接系が多い。
『…ねー…どうするの?』
こいつの能力を信じるのなら、いつも通り正面から突破すればいい。
…だが、こいつはしっかり俺の操縦に応えてくれるだろうか?
信じられないのなら、…気が進まないが、搦め手を使う必要がある。
さて、どんな手で突破するか――
>>+2
A.当然、正面突破だ。
B.……搦め手だ。
B
A
a
A.当然、正面突破だ――(那珂好感度+1)
「那珂」
『あの……那珂ちゃん嫌な予感ビンビンなんですけど』
「信じてるぜ」
『…ほへ?』
正面突破だ。
それ以外ありえない。
それが俺の戦い方。これまでも、これからも。
だいたい、色々ごちゃごちゃ考えるのは好きじゃない。
分かり易い方が良いに決まっている。
「…準備をしろ」
『は…て、提督殿?』
「…俺が出て、敵の囲いを崩す」
「その隙に、洞窟になだれ込め…いいか、チャンスを逃すなよ」
『……はっ!』
『うわー!?やっぱりだー!やっぱりだいやだー!』
「うるせぇよ、那珂…言ったろ、俺は信じてるんだよ、お前を」
『…へ?』
「こんな数の敵じゃ、お前の装甲に掠らせる事も出来ねえ」
「お前はそんくらいのスペックはあんだろーがよ」
『……て、提督…』
「…つーわけだ…楽しもうぜ、那珂!」
姿を隠していた森から飛び上がる。
電探に俺の姿を捉えたらしい敵が此方を向き、警告音がけたたましく鳴った。
構わず、最高加速でその一群へと一気に突っ走る!
此方の電探に表示されるのは、真っ赤な警告。
長弓から放たれた矢が、先程から次々と躰の横を通り抜けていく。
だが、当たらない。当たりやしない。―いや、一本くらい当たった所で構わない。
この対艦刀の、そして魚雷の射程までただ近付いて殺すのみ。
『ぎゃー!掠った!掠ったじゃん提督!』
…うるせぇ。
だが、なんだかんだ言ってこいつにもそれなりに余裕はあるようだ。
飛びかかる矢の雨を躱しながら、肉薄する。
そして、遂に一人目を捉えた。
此方の速度が、まさかここまで速いとは思っていなかったのだろう。
弓に、次の矢を番えようとしたその機体の喉に、短めの対艦刀を滑らせる。
『あ―――!?』
間抜けな金打声。
大量の血とともに、眼下に拡がる森へと、機体が落ちていく。
「くくっ……ははっ!」
笑う。
そうだ、これが戦いだ。
生命を失う一歩手前で、相手の生命を奪う。
少しでもズレてしまえば、死ぬのは俺。
そう、これこそが戦いだ。
この周辺に固まっていたのは三機。
先に落とした一機を見やり、残りの二機が俺に殺到する。
どちらも戦艦艤装、『九四式』金剛型。
交互に繰り出される大得物、三尺六寸の対艦刀を躱す。
そして、無防備になった腹に、魚雷―六三cm無誘導ロケット弾を撃ちこむ。
それはいとも容易く戦艦装甲を突き破り、その内部で仕手の臓物をぶち撒けながら破裂した。
『うげ…すぷらったー…』
艤装にかかったその飛沫が気になったのか、那珂が本気で嫌そうな声を出す。
「良いから集中しとけっての」
まだだ、まだこんなもんじゃ包囲網は破れない。
「……ん?」
すると、三機一チームで固まっていたらしい海軍の部隊が、此方の戦力を恐れたのか、牽制に矢を放ちながら一箇所に集まり始めた。
このままでは接近して各個撃破されると踏んだのだろうか。
恐らく、俺を数で押し潰すつもりだろう。
「…くくっ――」
思わぬ好機の到来に、自然と口が歪む。
「那珂――アレ、行くぞ」
『…那珂ちゃん的にはあんまり…嫌なんだけどなぁ』
「はっ、使えるもんをどう使おうが勝手だろうが」
密装――真艦のみに許される、少女の御霊に篭められた力。
那珂に篭められた物は、使い所は限定されるが、その中でも特に強力な物。
「…密装解放――」
すっかり一塊になった敵の集団へと接近しながら、詠唱を開始する。
「ふと暁の、七つの時が六つなりて――」
「残る一つが今生の、鐘の響の聴き収め――」
「寂滅為楽と響くなり――」
「さあ、存分に安らいでくれ、各々方――!」
詠唱の終わりと同時に、一団に肉薄する。
俺を押し潰そうと、前衛の戦艦群が一気に対艦刀を振りかざす。
そして、その対艦刀が振り下ろされる前に――
那珂の歌声が、辺りに響いた。
お、そんな気はしてたが歌うのか
さすが那珂ちゃん
戦闘中は、皆一種のトリップ状態にある。
脳が分泌するホルモンによって、恐怖を忘れ、戦闘を継続させることが出来る。
そう、戦闘中の兵士とは、まともな状態では無いのだ。
何せいつ死ぬともしれない戦場、まともな状態でいられるはずなんて無い。
では、そんな時に急にその気分が鎮まり、全く安らいだ状態になってしまったらどうなるか――?
――那珂の歌声は、海軍の一団全員に響いた。
密装「寂滅為楽」。
苦悩を消し、安楽に導く鐘の音。
前衛の集団が、振りかざした対艦刀を持ったまま固まった。
その目が、仲間の血と臓物で汚れた俺の艤装を捉える。
『ひぃあっ――――!』
漏れた声に篭められたは、恐怖。
そのまま動きを止めた戦艦艤装の隙間に、脇差を突き立てる。
『ごふっ――』
くぐもった声の後、力なくふらふらと下へ艤装が落ちていく。
それに魚雷を撃ちこんでやると、先と同じ様に破裂し、空中に朱を撒き散らした。
『う、うぁ、あ、あぁぁ――!』
その様を見た戦艦艤装の一機が、めちゃくちゃな太刀筋で対艦刀を振り下ろす。
それを簡単に躱して、今度は此方の装備の短い対艦刀で喉を刺す。
力の抜けた重厚な戦艦艤装は、木々をへし折りながら、森へと墜落していった。
そこまでが、彼らの限界だった。
『い、いやだ!死にたくない!』
『あ、あぁ…!』
蜘蛛の子を散らすが如く、隊列も保てずに海軍の兵士が逃げていく。
今の彼らは、とても兵士と言える状態では無い。
寂滅為楽――那珂の歌声は、強引に心を安らかにさせる。例え、そこが戦場であっても。
与えてはならぬ安らぎを、無理矢理に押し付けてしまうのだ。
「さて―突入、だな」
『…那珂ちゃんの歌がまたこんなことに使われたー…』
「ははっ、便利だったぜ?」
『むー…』
「さて、御姫を探すとしましょうか、ってな」
開け放たれた洞窟の入り口にから、内部へと突入する。
戦況を察した第一空挺師団のメンバーが、次々と俺に続く。
『…提督殿、見事でした!』
「ま、あんま楽しい戦いじゃなかったけどな」
『…え?』
「戦いっつーのはよ…」
――もっと、緊迫してなきゃ面白くねえよ。
ただ一機で五〇近くの艦娘を退けた彼の言葉に、男は恐怖したのであった。
拙い戦闘描写
今日はここまでです、スローで申し訳ありません
お付き合いいただき、ありがとうございました
乙
那珂ちゃんのユルさが丁度いい感じの清涼剤になってるなあ
乙
こういう雰囲気好きだわ
乙
乙
乙
乙です
乙
那珂ちゃん無双いいゾ~これ
>>104 難しいですな…基本的に私はチャンテメドレー聞きながら書いてるから主題歌と言われても思いつかない
スローペースですが、またゆっくりやっていきます
こんなお話を見てくださる方、ありがとうございます、そして比較用に量産機の能力はこんな感じ、まぁ直接話しには関係ないんだけどね
『九四式量産型』金剛型(贋艦・戦艦)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ――(武装なし)
遠距離攻撃 ――(武装なし)
装甲防御力 ★★★
陸上機動力 ★
空中機動力 ★
水上機動力 ★
兵装
三尺六寸大対艦刀・脇差
解説
九四式量産型シリーズの戦艦タイプ。
装甲を厚くして、至近戦闘に備えるという基本を良く踏まえたオーソドックスな戦艦艤装。
癖もなく扱い易い戦艦艤装であるが、遠距離・中距離からの攻撃には全くの無力。
上手く他の艦と組み合わせ運用し、この艤装を最大限に活用出来る指揮官が求められる。
後継機は長門型。
『九四式量産型』天龍型(贋艦・軽巡洋艦)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ★
遠距離攻撃 ――(武装なし)
装甲防御力 ★
陸上機動力 ★★★
空中機動力 ★★
水上機動力 ★★
兵装
六一cm三連装ロケット弾
対艦刀(短刀)
解説
一撃離脱戦法を目指し、極限まで機動力の強化が行われた艤装。
至近距離の無誘導ロケット弾は戦艦艤装すら突き破る。
だがその機動力の反面、装甲は非常に薄い。
仕手の能力にもよるが、まず戦艦のように不用意に前に出ての戦闘は行わない。
戦闘中、奇襲的に一撃を仕掛けて離脱、というのがこの艤装を扱う上での主な戦法であり、最初から最後まで敵の真ん中で戦うような兵士は―馬鹿か、大馬鹿であろう。
後継機は球磨型。
あれだけ洞窟周辺の守りを固めていたのだ。
中にも大量の艤装を配備して赤城の捜索にあたっているだろう。
そんな予想は見事に外れた。敵の姿一つ、見当たらない。
「…どういうこったか」
『敵さん、いないねー』
嬉しいけど、とボソッと那珂が呟く。
…どうせ頭の中に響いてくるのだ、小声で言う意味など無いぞ。
だが、素直にそれに安堵出来る状況ではなかった。
「お……これで…何体目だ?」
『那珂ちゃんは数えるのをやめましたー』
『…21人目…です、提督殿』
脳天気な声の馬鹿の代わりに、後方に控えていたメンバーの一人が答える。
「21人目…ね」
そう、敵は見当たらない。
けれど、レジスタンスのメンバーと思しき人間の死体は、先程から所々に転がっている。
「……赤城はこの辺りに隠れているんじゃなかったか?」
そんな中を警戒しながら進んで、赤城の隠れているという地点まで辿り着く。
しかし、そこには何も無い。
部屋があるとこの地図には書いてあるが…。
『…は、確か…この辺りに…』
後ろで、メンバーの一人が、壁に手を当てた。
すると、大きな音を立てて、岩肌が動き始める。
『隠し…扉?』
はえー、なんかカッコいいなぁ、とか言ってる馬鹿は放っておく。
「…随分凝った作りだな」
『それだけの重要人物なのですよ』
「……なるほどねぇ」
開いた岩の隙間から、畳張りの部屋が現れる。
その中央に、長髪の女性が姿勢正しく座していた。
「………貴方がたは?」
凛とした、張りのある声が響く。
「アンタを助けに来た」
「……では、長門さんのお味方…でしょうか?」
「ああ、そんな所だ」
此処は気味が悪い、早く行くぞ、と手を差し出す。
だが、赤城は姿勢正しく座したまま動かない。
「…もし…嫌だ、と言えば、どう致しますか?」
「あ?」
「…私は…この場で、静かに死にたいと言えば」
「これ以上、誰かに利用されて生きるのは嫌だ、と言えば――貴方はどう致しますか?」
『…あ、赤城殿…!?』
後方、レジスタンスの一団がざわめく。
凛とした声、真っ直ぐに向けられた瞳、とても冗談を言っているようには思えない。
「…………」
視線は、俺に向けられている。
…ならば、答えるべきなのだろうな。
腰に挿した対艦刀を放つ。
その切っ先を、微動だにせず鎮座する赤城へと向けた。
「……そうか、なら殺してやるよ、望み通り」
「…………」
『て、提督殿、何を!』
『そ、そーだよ提督!何いってんの!?』
「生きるのが嫌なら、死ねばいい」
それだけだ―と、向けた刀を振り上げた。
「…それで良いか、赤城?」
「………」
「肯定は沈黙と看做す」
『ちょ、提督――』
『提督殿!』
止める声に構わず、そのまま刀を振り下ろす。
畳の下の岩盤が抉れ、辺りに礫を散らした。
「…………っ…え?」
俺の刀が削ったのは、彼女の隣。
岩にめり込んだ刀を抜き、再び腰に戻す。
「…震えてんぞ、体」
「……あ…」
「思ってもない事を言うな」
「……な、何故…?」
向けられた瞳に、初めて動揺の色が映る。
「目が、生きたいと語っていた」
「まだ死にたくないと、そう語っていた」
「……っ」
「だったら、諦めるな」
「利用されるのが嫌なら、てめぇの力で何とかしろ」
「…それすら出来ないというのなら…」
もう一度、刀の柄に手をやる。
「…本当に殺してやるが?」
「………」
静寂。
誰も言葉を発さずに、赤城を見ている。
『びっくりしたぁ…ホントに斬るつもりかと思ったよー…』
…一人以外は。
頼むから少し黙れ那珂。
ややあって、赤城がすくと立ち上がった。
「…いえ…」
「……付いていきます」
「それでいい」
…別に、本当に殺しても良かったが。
それじゃあ、こいつを巡っての戦いが消える。
まだ、俺は楽しみたいのだ。
『…ふふー、提督やっさしー…流石だねー!』
………。
…まあコイツはどうでも良いか。
『あれだ、えっと…ツンデレさんってやつだ!』
相手にするのが面倒だ。
放っておく。
『…提督殿、赤城殿を預かりましょう』
「おう」
メンバーの一人が、赤城を丁寧に背に抱える。
さて、後は脱出だ――と、道順を確認するため地図に目線を向けた時。
固まっていたメンバー、その後方が崩れた。
「……あ?」
振り返ると、通路の先に人影。
それは――――
>>+2
A.長髪。
B.ツインテール。
B
もうBで良いか
今日はここまで
瑞鶴かな?乙
おつおつ
深夜だとどうしてもこうなりがちだよね
おつ~
クッソ楽しみだゾ
乙
乙
誰だろう
>>123 基本的に誤字見つけても訂正はしないで脳内変換に任せることにしてるけど、流石にこれは酷い、沈黙と肯定が逆だ、アホちゃう
通路の先に居たのは、ツインテールの少女。
片腕だけに艤装を纏い、対艦刀で肩に提げていた。
「…なるほどのぉ、隠し部屋じゃったか」
「………」
「道理で見つからなんだ、ふむ、盲点じゃったの」
「ははっ、何じゃ、意外にあ奴も根性があった、ということか」
十数の艤装に真正面から捉えられて尚、少女は笑みを崩さない。
俺の本能が告げている。
こいつは強い、と。
『……提督、あれ、真艦だよ』
「…そうか」
それを裏付けるかのように、那珂が言う。
ならば、俺がすることは一つ。
「…おい、さっさとそいつを連れて離脱しろ」
『……提督殿?』
少女を捉える第一空挺師団の面々を押し分けて、前に出る。
「此処は俺が預からせてもらう」
幸い、この洞窟には逃げ道はいくらでもある。
赤城を手に入れた今、逃げるだけなら容易い事だ。
『はっ…ご武運を』
俺の口調で、奴がただならぬ相手だと察したか、意外にも素直に彼らは頷いた。
艤装の集団が、俺を残して疾駆する。
「……追わないのか?」
「なに、どうせこの洞窟は包囲されておる」
此処で逃したところで同じじゃろうて―と、少女が続ける。
「まあ…一先ずお主の自己犠牲精神を買ってやったのじゃよ、若造」
「立派なものじゃ、仲間を逃がすために自らを犠牲にするとはの」
その口調には、余裕が端々に見える。
…しかし若造て、そもそもこいつ何歳なんだろう。
見た目完全にロリ入ってるんだが。
……まあ、詮無きことか。
「…そういえば、だ」
「うん?」
「…何で俺達の行動がここまで筒抜けになっていたんだ?」
「簡単な事じゃな、騙しとると思うとる奴らに限って騙されやすいのよ」
「……既に鼠は死んでたってか?」
「うむ、まさかお主ら…本気で海軍省を騙せたと思うておったか?」
「……そんな事はどうでも良い、俺の領分じゃあない」
折角だし、話に付き合ってみようかと思ったのだが。
話がどうにも難しい。
「…何じゃ、お主の最後の会話になるかもしれんのじゃぞ、もう少し付きおうてはどうじゃ?」
「生憎、難しい話は苦手でな」
「……そうか、残念じゃ」
「…ならば望み通り、早う終わらせるとしようかの」
少女(?)がつまらなさそうに、肩に提げていた対艦刀を地面に刺した。
そして、静かに詠唱を始める。
「片品、吾妻、小貝、渡良瀬、烏、桐生、権現堂―」
「我が血を分けし捌佰の傍流、集いて我の力と成り給え―」
一瞬の後に顕れたのは、見るからに重武装の艤装。
背に長弓、腰に対艦刀、そして魚雷。
「重巡…?」
器用貧乏。決定力不足。オールレンジ詐欺。
巷で囁かれる重巡の噂である。
総合力を追い求めた結果、どの距離でも弱くなった。
そんな評判の重巡を好んで使う兵士は少ない。
目の前にいる敵が纏っているのは、まさにその艤装。
『…せめてもの礼儀、名乗りくらいはしておこうかの』
『吾輩は利根、重巡洋艦、利根型一番艦の利根』
『…お主は?』
「提督…艤装は軽巡洋艦、那珂」
『那珂ちゃんだよー!よっろしくぅー!』
…うるせぇ。
……あと通信モードにしてないからお前の声向こうに聞こえて無いぞ。
というか無駄に元気だなお前。
「…ああ、一つだけ訂正させてくれ、利根とやら」
『……む?』
対艦刀を身の前に突き出し、腰を屈める。
左右に避ける場所の無いこの狭い洞窟での戦闘は、間違いなく近接戦。
なれば、有利なのは俺。
敵がいくら未知数であろうと、俺はこの戦闘方法しか知らない。
殺すために、全力で突っ込むだけだ。
「俺は、別にあいつらの為にお前を止めようとか、そんな理由で残った訳じゃない」
「ただ――」
艤装のタービンが回り、突進力を蓄えていく。
この間合いなら、一瞬。
「――てめぇと戦いたかっただけだ!」
キィン、と甲高い金属音。
勢い良くぶつけられた対艦刀が、通路を火花で照らした。
そのままもう一合打ち合って、互いに距離を取る。
重巡が、その艤装の下で笑う。
『かかっ――なるほど、良い腕じゃ』
『霧島の懸念も、そうそう外れてはおらんかったようじゃのう――!』
来て良かった―そんな喜色がこめられた利根の声。
洞窟に、再び金属音が響いた。
戦闘視点(どちらを選んでもストーリーには関係ありません)
>>+2
A.長門 扶桑姉妹
B.提督 利根
B
b
一旦ここまで、続きは後で
了解です
乙
カッコイイ利根さんって何気に貴重な気がする
元ネタ的に好感度表がでたときにすっげービビってしまった
乙
那珂ちゃんとの凹凸コンビが実にいい味出してるなぁ
しつぼうしましたなかちゃんのふぁんをやめます
乙
提督が戦闘狂でも、那珂ちゃんのことは嫌いにならないでください!
クロス元見てきたけど中々面白そうなのな
ヒロインが死ななければいいが
好感度ちゃんとあげるんやで
『かかっ――どうした若造、動きが鈍っとるようじゃが』
対艦刀を打ち合う音が、絶え間なく通路に反響する。
止まらぬ利根の連撃。
いつの間にか、打ち合いは一方的な防御へと変わっていた。
散る火花の位置が、明らかに俺へ近づいている。
――押し切られる!
「がっ…くぁっ!」
脳がそう判断を下し、体がそれを防ごうと動く。
刀を思い切り相手にぶつけ、その反動を利用して距離を取る。
何とか対艦刀の射程から離れることには成功したものの、がくりと膝が地面に落ちる。
けれど、利根はそんな隙だらけのこちらを追撃する様子すら見せない。
『いやはや、まさかここまでやるとはの』
『良い腕をしとるな、お主』
「……はぁっ……ぁっ……」
それどころか、刀をまた肩に提げ、余裕の籠もった口調で楽しそうに話している。
『…て、提督…、大丈夫?』
「……心配すんな、まだやれる」
『…駄目だと思ったら、退かないと…』
「……何言ってんだ、那珂」
荒い息を整えながら、心配そうな声を制す。
「…こんなに楽しいのは久しぶりなんだ、邪魔するんじゃねぇ」
『……あっそ…ばーか』
知らないから―と那珂が押し黙る。
こういう時のコイツは物分かりが良い。
「なあ、利根」
『どうしたのじゃ、降参か?』
今なら吾輩の部下にしてやっても良いぞ―と、利根がからから笑う。
「…海軍省に、お前より強い奴はいるか?」
『ふむ?…そうじゃな、少なくとも二人はおるが…それがどうした?』
「……く、か、ははっ、そうかそうか――」
そうか。
こいつよりもまだ強い奴がいるのか。
そいつは何とも――
「そりゃあ、最高だなぁ!」
地面を蹴り、加速、疾駆して間合いを再び零に詰める。
『はっ、狂うたか!』
突き出された対艦刀を、利根が軽くいなした。
金属音と共に火花が飛ぶ。
返す刀で、利根が腕を畳んで対艦刀を振る。
体重の載った一撃が、手に掴んでいた刀を弾き飛ばす。
通路をカラカラと乾いた音を立てながら刀が転がってゆく。
『かかっ――ここまでじゃな、若造!』
そのまま手首を返し、刀を失い無防備になった俺に、利根の対艦刀が迫る。
朱い血が、通路へ落ちた。
態勢を崩したのは俺ではなく―利根。
『っ――!?な、にっ…!』
初めて聞く、利根の動揺の声。
脇腹の裂傷を手で押さえ、距離を取る。
「神州稲富流対艦刀術――幻日」
一度弾かせた右手の刀こそは幻。
刀を弾く程の勢いで振り切った腕の下、その死角より左手で抜かれた脇差が腹を抉る。
小回りの効く脇差は、長柄の対艦刀が迫ってくるよりも早く敵を捉える。
敵が斬るは、幻の太陽。
真の日は、その下で輝く――
『…よっし提督ナイス!流石だねっ!』
「…いや―浅い」
『えっ?』
だが、その必殺の技は完璧には決まらなかった。
想像以上に厚い装甲と、速い反応。
利根は、まだ戦意を失っていない。
それどころか――
『くはっ、ふ、ふふ、かかかっ!』
『良いのう!久々じゃ!躰に傷を付けられた事なぞ!』
更に高揚していた。
此方を見やり、笑いで躰を震わせている。
『……何あれ怖い!』
「…少し黙れ」
弾き飛ばされた刀を拾い、再び構える。
…おそらくは、今度は向こうから間合いを詰めてくる。
『…ふはっ、どうやら少し舐めておったようじゃ、すまなんだな、若造』
『じゃが……此処からは、本気で行かせてもらうとするかの!』
『密装解放――!』
密装――真艦のみに許された能力。
やっとそいつを引き出せた。
口角が自然と歪む。
さあ来いよ、俺にお前の力を見せてくれ。
戦おうじゃないか、心行くまで――!
『…お主、言霊という奴を知っておるか?』
と思ったら、いきなり変な話題を降られた。
身構えた躰が、思わず崩れる。
「……あ?」
『…言霊、その中でも、名前という物に宿る力は格別じゃ』
『吾輩の名―利根の由来は大和の中央、関東を流れる大河』
『利根川の従える傍流は、八〇〇余流もあるそうじゃぞ?』
「…なんだ、雑学披露でもしたいのか?」
苛立ちを隠さずに短く言い放つと、利根はそれにまた笑う。
『かか、そう急くな―若造はすぐに結論を急ぐが欠点よ』
『…つまりじゃな、吾輩はその八〇〇余流、全ての力を使えるのじゃて』
『そう、例えばこんな風にの――!』
『――傍流、主に交わりて一つと成せ』
『――傍流、その名を主に貸せ』
『――傍流水系、長門』
詠唱が終わる。
変化は、すぐに訪れた。
利根の腕、数打ちの対艦刀を持って居たはずのそこに握られていたのは――
『くは、久しぶりじゃのう、これを使うは』
四尺一寸、見慣れた大太刀、長門と呼ばれる彼女の武装。
「…な――!?」
『川には、名がある』
使い心地を確かめるようにそれをブンブンと振り回しながら、利根が続ける。
『名とは―物を物と認識するための記号じゃ』
『利根川水系の川、全ての名を、吾輩は自由に借りることが出来る』
『利根川傍流長門川―それ自体は別にあの艦とは何の関係も無いがの』
『…じゃが、名に、その言霊に宿る力という物があるのじゃ』
長門という記号―その象徴たる四尺一寸の大対艦刀。
ぐるりと最後にそれを大きく振り回して、正面に正眼で構えた。
『さあ、第二幕と行こうかの、若造!』
「――面白ぇ!」
利根が間合いを詰める。
俺もそれに正面からぶつかる形で突っ込む。
『ば、馬鹿ー!あんな刀受けたら那珂ちゃんの装備じゃ折れちゃうよー!』
「知るかボケ!そんときゃ素手で戦えばいいだろうが!」
だが、その間合いは零になることはなかった。
「利根さん」
『……む?』
いつからそこに立っていたのか。
急に顕れた一人の白い長髪の少女の声に、利根の動きが止まる。
「お楽しみの所申し訳ありませんが、救援要請です」
『救援?』
「……はい…長門さんにあの姉妹がかなーり押されてまして…」
『…何も吾輩でなくとも、お主が行けば良いであろうが、翔鶴』
「あはは、長門さんは少し苦手なもので…」
『……はぁ…諒解じゃ…全く、水を差しおって』
『すまなんだな、若造…勝負はお預けじゃ』
「あ、お、おい!待てこら利根!」
『はは―焦るでない、またいつか、の』
追い縋る俺へ牽制の矢を放ち、利根が通路の出口目指して去っていく。
…そして、一人残される俺。
「……納得いかん」
『…いやいや、本来の目的を達成した上で生き残ったんだから良いじゃん』
「……納得いかん!」
『那珂ちゃんに八つ当たりされても!』
「あーくそ腹立つ那珂ァ!なんか歌え!」
『那珂ちゃんの歌をそんな感じで使うのホントにやめて!』
この後、赤城を連れた第一空挺師団の面々と関門海峡で無事合流。
長門を始めとする足止め部隊とも合流できたが、相当被害を出したようで、数機しか残っていなかった。
だが、なにはともあれ。
こうして俺達は、赤城という旗印を手に入れる事に成功したのであった。
「やったな那珂、これでまた戦争が出来るぞ」
「やめてー!」
【序章 終】
やっとプロローグ終了
そしてやっぱりちょっとシステム変更
共通ルートが終わった時点で好感度が一番高かった子のルートに突入ってことで
こっちの方が多分話が考えやすいので…許してくだちい
おまけ、利根の能力
利根(真艦・重巡洋艦)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ★★★
遠距離攻撃 ★★★
装甲防御力 ★★★
陸上機動力 ★★★★
空中機動力 ★★★
水上機動力 ★★★
兵装
六一cm四連装無誘導ロケット弾
対艦長弓・晴嵐
対艦刀(中)
密装
傍流水系―自らの由来、利根川の傍流の名を借り、自らの力と成す能力。しかし顕現出来るのはそれぞれの象徴たる一部のみ。
解説
器用貧乏を極めたような艤装。
一つ一つの部門ではそれぞれ遅れを取るものの、総合力はどの艦にも勝ると言われるほど。
大戦期に戦地で活躍し、戦後大湊鎮守府統括に。
性格は結構容赦無く残虐。
余談だが、偉くなった記念に服装をスリットスカートに変えたら皆から痴女扱いされたので元に戻した。
原因は恐らくノーパンだったから。パンツは履こう。
【幕間 休日】
「ふー…」
戦が無い日、というのは暇なもの。
こんな日は何をすれば良いのだろうか。
鍛錬―は、やりすぎて長門に止められたし。
うーむ…。
…ああ。
自分という人間は、何と虚しいのであろうか。
何をしていても、あの殺し合いのスリルを凌駕するものはない。
叶うならば、ずっとあそこに身を置いていたい。
「…はぁ」
今更そんな事を確認した所で何になるというのだ。
溜息を吐いても、時間は進みやしない。
…ふむ――――
>>+2
A.そうだな、那珂に構ってやるか。
B.長門と話でもして時間を潰すか…。
C.…そういや、あの御姫様は何してるんだ?
D.…町にでも出るか。
A
c
D
幕間イベントは赤城に決定
今日はここまでです、お付き合いいただきありがとうございました
乙
しかし、前も言われてたけど刃鳴散らすだな、性格的に
乙
キャラ設定は安価で決まっちゃったからしゃーない
かげあきさんみたくエロになると容赦なくなるのかな?
おつおつ
素晴らしいな
すみません。言い方が悪かったです
元ネタに引っ張られず、かといって元ネタの作者の別作品のような真逆の作風だけどそれらしさがでて素晴らしいって言いたかっただけで、けなすつもりはないです
奈良原大好きだから、素晴らしい
乙です
乙
言霊か・・・伊勢とか出雲ま、飛鷹とか凄い事になりそうだな
利根さんは攻略出来るんだろうか
非常に気分が良い
始めます
戦闘描写、あんな感じで大丈夫っすかね
いいと思います
わかりやすいですし、能力の解説も十分だと思います。
…そういえば。
あの御姫様は何をしているのだろうか。
助けた時の姿を思い返す。
生きる気力の無さそうな奴だった。けれど、それでも彼女の目は生にしがみついていた。
見つかるかもしれない希望を求めて。
つまらない今が変わると信じて。
…まるで、少し前の俺のように。
「……少し出かけてくるわ」
「どこいくのー?」
「どこでもいいだろ」
「那珂ちゃんも付いていきたいなー!」
「嫌だ」
「…付いていきたいなー!!」
「嫌だ」
「…付いていきたいなー……」
那珂が部屋の扉を開けて出ていこうとした俺の服の裾を掴む。
「ふんっ」
「うぎゃっ」
それを振り払い、びたんと床に叩きつけられた那珂が、抗議の声をあげた。
「…提督、最近冷たい」
「元からだろ」
「……仕手なのに」
「ああ、そうだな」
「…那珂ちゃん寂しいなー…」
地面に這いずったまま、足首を掴んで俺の顔を見上げる那珂。
…離してくれそうにはない。
仕方ない、と溜息を吐く。
「…わかった、今度お前にもちゃんと付き合ってやるから」
「……ほんと?」
「ああ、だから今日は離せ」
「…約束だからね」
「……今度、な」
…いつやるかとはまだ名言してない。つまりその気になれば、十年、二十年先も可能と言うこと…!
「るんたったー♪」
そんな俺の心持ちも知らずに無邪気にはしゃぐ那珂。
何がそんなに嬉しいのか。
「…んじゃ、留守頼むわ」
「諒解!」
そう言って、びしっ、と綺麗な敬礼をした彼女は。
どこから見ても、年頃の小娘にしか見えなかった。
那珂ちゃんかわいすぎるだろ……
さらっと利根川先生混ざっとるwwwwww
「……ふぅ」
「相変わらず、つまらなそうに生きてんだな」
「……貴方、ですか」
ベッドに腰掛け、虚空を眺めていた女。
はっと顔を上げた赤城が俺を捉え、すぐに無表情に変わる。
赤城に与えられた部屋は、俺が使っているようなものと同じ普通の部屋。
本来ならもっと良い待遇を取るべきなのだろうが、いかんせんうちの組織には金が無い。
そんな待遇の為に金を使うのならば装備を整えるよ―とは、他ならぬリーダー様の言葉。
この赤城救出で失った戦力を鑑みれば極めて妥当な判断ではあろうが、本人にしてみればここまでつまらない事も無いだろう。
救出し、部屋を与えて後は時が来るまで軟禁。
貴方の血筋と過去の経歴以外に何の価値もありません、と言っているようなものだ。
まあ―それが事実であることも、本人は理解しているだろうが。
「…ノックくらいしては如何ですか?」
仮にも女性の部屋に入るのに、失礼でしょう―無表情を保ったまま、赤城が続ける。
「だったら、部屋に鍵でもかけとくんだな」
「……貴方は」
言いかけて、赤城が諦めたように呆れ顔をして止めた。
「…それで、何か用でしょうか?」
――私なんかに。
暗い顔の裏に、そんな言葉が見える。
「…暇潰し」
「……は?」
しかし、改めて言われてみると一体何の用があって来たのか思い付かない。
とりあえず、当初の目的をそのまま答えておくことにした。
「暇だったから来た、そんだけだ」
「……貴方は…」
煩わしさを隠さずに頭を抱える。
「…もう少し有意義な時間の使い方を模索してはいかがでしょうか」
言外に、はよ帰れ、と言っているらしい。
気付かない振りをして、彼女の横に腰掛けた。
「生憎、思いつかなくてな」
「……勝手に座らないで貰えませんでしょうか」
「はは、主人が座っているのに客人が立っている道理は無いだろう」
「…招いた覚えはありません」
「…ま、そう言うな…有意義な時間の使い方なんて知らんのでね、話くらい付き合ってくれよ」
「……」
それを了承したのか、はたまた単に諦めたのか。
何かを言おうと開きかけた赤城の口が、言葉ではなく溜息を吐いた。
「暇潰しに付き合ってくれる事、感謝するよ…さて、そうだな…」
「ああ、…お前、俺とあまり歳が変わらんだろう」
「……それがどうしました?」
「大戦の時には一八…いや、どうかすればそれより若かったんじゃないか?」
「……はあ、それが?」
意図を図りかねる、と言った様子で首を傾げる。
「いや、なぜ大将なんて地位に付いていたのかと…単純に疑問に思っただけだ」
「ああ……」
別に、面白い話ではありませんよ―その言の通り、つまらなそうに続ける。
「あの時、士官学校に在学しているような私が普通の手でそんな地位につけるはずがありません」
「と、言うと?」
「…抗戦派の人達が欲していた飾りに、私が丁度良かったと―それだけですよ」
「……ふむ」
軍事も知らぬ、政治も知らぬ、人の恐ろしさも知らぬ小娘。
それでいて、国に対してすら影響力を持つ血筋。
なるほど、担ぎ上げるには最適の人材だ。
「…にしても、よく通ったもんだ、そんな無茶」
「……私を利用する事を提案したのは、佐世保の統括であった祖父ですから」
元佐世保鎮守府統括―ともなれば、そのくらいのゴリ押しは可能なのかもしれない。
…現に、今だって軍の重要な人事は四大鎮守府統括の掌の上だ。
「……なるほどねぇ」
「…私は、貴方が羨ましい」
「……あん?」
「自由な貴方が、羨ましい」
「…私も、普通に生きていたかったのに」
後になるにつれ、声がどんどん小さくなっていく。
最後の言葉は、消え入るような声だった。
>>+2
A.「阿呆だな」
B.「傲慢だな」
a
a
A
b
B
短くてすまんが本日ここまで
明日は昼から更新したいと思います、多分
3タテでここまで気分がウキウキになるんだからまかり間違って優勝なんかしたら私は死ぬかもしれないな
道頓堀に飛び込む人の気持ちがわかった
乙
おめでとうw
乙
何のことかと思ったらDeNAかww
乙
三浦さんいいなあ
乙
マジ那珂ちゃんかわいい。かわいすぎ
乙
那珂ちゃんはあっちでも一番ちゃんとヒロインしてたからね
うわあ…みんなわかっててもあえて明言してなかったのに……
さすがに>>1でもないのに勝手に掛け持ちしてるスレを晒すのはちょっと引くわ…
>>185
人様のスレを勝手に晒すとか
もはや暗黙の了解というより普通の常識としてやっちゃいけないって分かるだろ
やっぱ夏休みだな…
いえいえ、大丈夫ですよー、お気になさらず
なんか自分で言うと宣伝っぽいなーと思って言及しなかっただけですので
イベントよりもスターナイト三連戦が気になる今日このごろ、仕方ないね
始めます
「阿呆だな」
「………何ですか、いきなり」
赤城が、むっと顔を顰める。
鋭い視線が、俺を捉えた。
「なーにが羨ましいだ、阿呆」
「…あの、阿呆阿呆と言わないでくれませんか」
「いーや、何回でも言ってやる、阿呆」
「……貴方」
視線に篭められた怒りが強くなる。
それを、真っ直ぐに見つめ返して続けた。
「…御姫様、あんた、飯が三日も食えなかったことはあるか?」
「……え?」
「答えろ、あるか?」
「…いえ、ありませんが…それが何か」
「住む場所を追い出されて、冬の軒下で藁を被って寝たことは?」
「……ありませんが」
だからなんだというのだ、という態度で、煩わしげに首を振る。
「…あんたが羨んだのはそんな自由だぞ?」
「………?」
まだよくわからないのだろう、赤城が首を傾げる。
…とことん御姫様だな、こいつは。
「……大戦が激化するに連れ、俺たちみたいな庶民はどんどん貧しくなってな」
「特に、うちなんかは酷いもんで…親父と兄が戦死して、稼ぎ手が居なくなってよ」
「母親と二人、ギリギリの所で生きてきたもんだ」
「………」
「どうだ御姫様、何不自由ない暮らしをしてきたあんたは、こんな暮らしが羨ましいか?」
「…あ…え」
何か言葉を出そうとして、結局何も言えなくなったのか、黙る。
少し苛めすぎたかと思い、溜息を吐いて笑顔を作った。
「…ま、そういうこった」
「別にあんたが自分の人生にどんだけ絶望しようが構わんけどよ」
「人類で一番不幸みたいな顔して、他人を羨むな」
「………私は…」
「…さて…そんじゃ、行くぞ、御姫様」
「…行く?」
「ああ―何、ちょっとそこまでだよ」
再び、赤城が首を傾げる。
膝に置かれたその手を取って引く。
「ちょ、ちょっと!?…勝手に出歩いては…!」
「まーまー、大人しくしてろって」
「…あんみつ、ですか?」
「おう」
無理矢理赤城を連れてやってきたのは、近所の甘味処。
そして彼女の目の前に置かれた人気メニューのあんみつ。
怪訝な顔でそれを見つめる赤城。
「……あの、意図が読めないのですが」
「…昔、お前みたいな目をした奴がいてな」
「…は?」
「そいつも、人類で一番自分が不幸なんて戯言を吐きながら生きてた」
「…ま、つまり阿呆だったんだな」
「……生きるためって言い訳してさ、犯罪やらなんやら…色々やってたよ」
「…んで、当然のように捕まって…このまま死ぬのか、って思ってた時に」
「こいつを食わせてくれた馬鹿がいた」
「…あんみつを?」
「ああ」
思い返す。
擦り傷だらけの躰、ボロボロの服。
そんな体で突き出された少年を見て、あの馬鹿は言った。
『…何だ、随分痩せているな』
『そんなことではいかん、甘い物を食え、甘い物を』
「それから、そいつの人生は色々変わっていってよ」
「……ま、何が言いたいかと言うとだな」
「人生なんてそんな馬鹿の気まぐれ一つで変わるもんなんだってこった」
「だから、変えようともしないで勝手に諦めてんな」
赤城はしばらくぽかんと口を開けて此方を見てから、言った。
「……もしかして、励ましているのですか?」
「……違う」
「…ただ単に、そんな目をした奴が嫌いなんだ…そんだけだよ」
「………そうですか」
わかったのかわかってないのか、赤城が頷いて、あんみつに手を伸ばす。
「…美味しい」
「……そりゃ良かった」
「…あの」
「あ?」
「……ありがとうございます」
赤城が笑って、深々と頭を下げる。
初めて見た彼女の笑顔は、とても綺麗なものだった。
A.阿呆だな――(赤城好感度+2)
【幕間 休日―了】
好感度
那珂
赤城 ★★★
扶桑
長門 ★
※第一章のヒロインを選択して下さい
>>+2
那珂、赤城、扶桑、長門から一人
※折角選んで頂いたので、共通ルートはそれぞれにスポットを当てた話を一章ずつ作ろうかと思います
※四章まで終了したら、その時点で好感度が一番高い子の個別ルートに移ります
※なので、あくまでこれは順番決定ということになりますが、選ぶ順番によって細かいストーリーは変わる…と思う、まだ考えてない部分ばっかだから何とも言えんけど
那珂
あと那珂ちゃんと赤城さんの好感度間違ってない?
那珂ちゃん
那珂ちゃん諒解、とりあえずここまでで
どっか間違ってる?
那珂ちゃん★1で赤城さんが★2じゃないかな
>>195
赤城のほうは多分あってる 行動選択で+1 幕間の会話で+2
順番決定ってことは1章で選んだ那珂ちゃんは以降の章では選べないってことか
ラストスパートの後半の章で追い抜かされそうやな
いや、元ネタ的に好感度は高過ぎない方がいい気が・・・
流石に那珂ちゃんは死なんでしょ
那珂ちゃん死んじゃったら戦闘出来ないしさ
艦娘って死ぬの?
仕手の死亡以外で、装甲悪鬼村正的に
>>198 大丈夫だ、そのシステムは導入しない
>>200 ダメージ蓄積しすぎたら死ぬって設定で 原作でも中の人だけ死んでたり劔冑だけ死んでたりしてたし
ログインサーバーにアタックをかけながらすげーゆっくり書いていくよ
断続的って何だよ
※魚雷について
携帯重火器。
なんなら取り回しの良くなったロケットランチャーみたいなものだと想像して欲しい。
連装数は装弾数。四連装なら四発まで装填できる。
まぁ流石に好感度高い順に死ぬのは斬新すぎたよね…
【第一章―那珂】
「…さて、次の目標なのだがな」
第一空挺師団の会議室。
そこには艤装持ちの中でも、特に重要な面々が集まっている。
先の戦闘で失った戦力の補充は多少不十分ではあるが終わり、皆の体調は概ね回復した。
あれ程の損害を出して尚、この団の戦闘員達の眼光は鋭く、そこに迷いはない。
―全て、元あった大和を取り戻すために。
きっと、そんな理由なのだろう、と思う。
…はっ。
戦闘がしたいという理由で戦う俺も大概かもしれないが…。
過去を戻す為に戦うというのも、また滑稽な理由だ。
…喩え海軍省を倒した所で、元に戻るはずなどないのだ。
欧州連合の軍が、関東―江戸を中心に展開している。
もし海軍省を倒したら今度はこいつらを相手取るつもりなのだろうか。
…いや、きっと考えていないのだ、こいつらは。
ただ、目の前にある巨悪だけを見て、それを倒すことを夢想していたいのだ。
それとて、俺に負けるとも劣らぬ一種の狂人であろうが。
断言してもいい、欧州連合も海軍省も、大和国民も引く意思を見せぬ、この闘争は終わらぬ。
どの陣営がいずれかを倒しても、新たな敵が出てくるだけだ。
それに、この反大和を掲げる者達は、ただ海軍省という巨悪に対しての憎悪によって団結しているだけ。
彼らの中にある大和は―きっと、各々違う図を描いているはずだ。
……まあ、それはそれでいい。
終わらぬ闘争―それは俺にとって甘美な言葉だ。
長門に拾われ、初めて戦いという道を知って―那珂に出会い。
そこから、ずっと戦ってきた。
殺して、奪って、傷ついて、嗤った。
「……おい、提督」
「…んあ?」
「…聞いているのか、人の話を」
「……すまん、聞いていなかった」
「はあ…」
長門が嘆息して、まあいい、と苦い顔をした。
「…今回の攻撃目標は、鹿屋基地」
「鹿屋…」
九州、海軍省の手の届きにくいこの場所で、まだ何とか海軍省直属の軍事機関としての体を保っている基地。
…ここを落とせば、九州南部は本格的に海軍省の支配から解放されることになる。
「何か意見は?」
「……楽しみだよ、それだけだ」
「…そうか」
いつも通りで安心したよ、とだけ言って、長門は俺から視線を外した。
これからこっちをやるのか(驚愕)
「鹿屋かぁ」
呑気な声。
呑気なのは、ベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせながら言うその姿もだったが。
「…鹿屋…岩川に近い?」
「そうだな、…あまり地理には詳しくないが、近いんじゃないか」
「ほほー…ねね、てーとくてーとく」
ぴょん、と床に降り、俺に近付く。
甘ったるい吐息が顔にかかった。
「岩川、寄ってこーよ!」
「…ああ?何の為にだよ?」
「んー…記念に?」
「何が記念だ、アホか」
「…うげ、冷たいなー…もう」
岩川基地。
終戦後も、欧州連合に存在を感知されなかったその場所には、手付かずのままで真艦の艦娘艤装が大量に眠っている――
そんな触れ込みを信じた俺達が岩川基地を襲撃したのが2年前。
『……あなた、誰?』
そして、こいつに出会ったのも、その時。
厳重に管理された地下の保管庫で、こいつが一人歌っていた。
『………上手いもんだな』
『…えへへ、ありがとー』
天龍型の贋艦艤装を纏った俺が近付いても、一切動じぬ姿。
それを見て、直感的に悟った―ああ、こいつは艦娘だ、と。
『…えーと……それで…名前は?』
『ああ…提督、だ…』
『そっか…てーとく…提督』
何度か、俺の顔を見ながら名前を呟いて。
しばらくそれを繰り返した後、彼女は俺を見て言ったのだ。
『ねぇ―貴方は、那珂ちゃんと一緒に死んでくれる?』
意味がわからなかった言葉。
けれど、何故だろうか。
『勿論』
あの時の俺は、それに頷いた。
「提督?」
「……ああ」
現実からの言葉で、意識が引き戻される。
大きな瞳を見開いて、不思議そうに那珂が俺を見ていた。
「どしたの?」
これはヒロインですわ
「…何でもない」
首を振って、那珂に答える。
「ぶー」
それが不満だったようで、頬をふくらませて不満を表した。
「…というか、また戦闘するのー?」
「ああ、そうだな」
「……嫌だなー…」
「いっつもそれだな、お前は」
だって痛いの嫌だし、とすぐさま反論する。
「那珂ちゃんは平和が好きなの、へーわが!」
「…何言ってんだ、俺達は平和の為に戦ってるんだぜ?」
勇猛果敢な第一空挺師団の面々の皆様の言葉を借りるならばな―と、笑ってみせる。
それに那珂は唇を突き出して、苦い顔をした。
「屁理屈じゃん、そんなのー」
「…通ってるさ、理屈自体は、な」
「…でも、自分にとっての敵が居なくなれば平和、なんて…」
「そういうもんだろ、人間なんてよ」
自分が周りより良い生活をしたい、周りが自分より良い生活をしているのが気に食わない。
戦争の原因なんて、元を辿れば全てこれで片付く。
故に極論、その原因を全て排除してしまえば平和は実現するのだ。
「……はー…なげくぁしー…」
嘆かわしい、と言いたいのか、これ見よがしに溜息を付く。
「…ま、付いてきてもらうけどな、嫌でも」
「……うー…鬼畜仕手ー」
那珂がぐでっ、と再びベッドに転がって、布団を被り丸まった。
…仕手、か。
艦娘が認めた者のみ、その艦娘との契約の文言を持って交わされる主従関係。
艦娘は全てを仕手に捧げる、絶対の絆。それが切れるのは、どちらかの死によってのみ。
「なあ、那珂」
『なにさー』
くぐもった声が答える。
「…お前、何で俺を仕手として認めたんだ?」
『………んー…』
珍しく、那珂が口ごもる。
布団に包まった彼女の表情は、見えない。
『……聞きたい?』
>>+2
A.ああ。
B.いや。
a
A
b
A.ああ。(―那珂好感度+1)
「ああ」
『……そっかー…それを聞いちゃうかー…』
「…勿体ぶるな」
布団から聞こえる声は、やけに間延びした鬱陶しい声。
苛つきを隠さずにぶつけた言葉にも、反応は薄い。
『どーしよっかなー…どっちかってゆーとー……うーん…』
『…うーん…えへー、やっぱだめー』
げしっ。
『痛っ!?』
散々引っ張ってそれか、と思わず布団に蹴りが飛ぶ。
「はよ言え、何か気になるだろうが」
先程まではどうでもよい事筆頭みたいなものだったのだが、こうまで引っ張られると気になる。
「なにすんのさー!」
布団から頭が出てきた。
「…言え」
鋭い視線でそれを睨む。
「……うっ…だ、だめー…」
げしっ。
「あうっ」
げしっ。
「ひうっ」
今度は2発。
「てーとく……酷いよー…」
「お前が引っ張るからだ」
「…わかった、わかったってば…もう」
それじゃあ、と前置きして、那珂は言った。
「この作戦が終わった時に、教えたげるから!」
「………何故引っ張る?」
「…えー…那珂ちゃんにもー…心の準備とかー…もじもじ」
げしっ。
「はうっ」
結局、こいつが口を開くことはなかった。
…仕方ない、この作戦が終わるまで待つか。
好感度
那珂 ★
赤城 ★★★
扶桑
長門 ★
あれ、那珂ちゃん★2つじゃなかったっけ?
>>109の那珂ちゃんの好感度足し忘れてない?
繋がんねーべさ
しゃーない、今日は大人しく寝るか
ここまでです、お付き合いいただきありがとうございました
指摘を受けたのに修正を忘れていた
申し訳ない…
好感度
那珂 ★★
赤城 ★★★
扶桑
長門 ★
気を付けます
乙
これは正ヒロインですわ
乙です
ヒロインだったら殺し合わなきゃ(ニトロ的な意味で)
乙です
>>218 そんな話が書けるようになりたい
更新じゃないけど、ちょっと安価
鹿屋基地のトップ>>+2(戦艦、空母は不可)
大井
若葉
攻撃目標は鹿屋基地。
その詳細が決まり、第一空挺師団の基地内は俄に慌ただしくなった。
「出撃、ですか?」
そんな時に掛けられた声。
振り向けば、行き交う人の中でも目立つ、すらっと見を伸ばして立つ女。
「―ん、…何だ、お前か」
「何だ、とは…」
酷い言い草ですね、と赤城が苦笑いする。
「うるさい、あの後お前を連れ出したからって俺が長門に怒られたんだ」
「…まさにその通り、無理矢理連れ出したじゃないですか、貴方」
「……まぁ、そうかもしれんが」
「…かもではなく、そうなのですよ」
嘆息して、呆れた視線を俺に向ける。
しかしその瞳の色は、すぐに真面目な物へと変わった。
「…今回もまた、戦うのですか?」
「そうだな、そうなるだろう」
「………そうですか」
「あの、一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「…あん?」
「……私は、変われるでしょうか?」
「……はあ?」
知った事か、と舌打ち一つ。
そんなもんを人に聞くな。
「知るか」
立ち去ろうと背を向ける。
だが、赤城は俺の背中へと続けた。
「……貴方に言われた事を考えて、せめて自分の中の意識くらいは変えようとしましたが…」
「…どうしても、良い方向には向かなくて」
「………俺はカウンセラーじゃない」
「……そうですよね、ごめんなさい」
「…やはり…私は貴方の言う通りの御姫様なのでしょうね」
すぐに、誰かに助けを求めてしまいます―
言って、自嘲するような赤城の笑い声が漏れた。
>>+2
A.「ああ、全くその通りだ、じゃあな」
B.「………恋、というのはどうだ?」
d
B
B.「………恋、というのはどうだ?」(―赤城好感度+1)
「………恋、というのはどうだ?」
「…え?」
すぐに、何ともらしくない言葉を言ってしまった、と顔を顰める。
だが、一度口にしてしまえば撤回は不可能。
頭を掻き、背を向けたままで続ける。
「…なんだ…その、あくまで一般論だが、変わるらしいぞ、女は」
「…恋…ですか」
「ああ…クソ、忘れてくれ」
「ふふっ」
さも可笑しそうな笑い声。
先の自嘲が含まれたものとは明らかに違う。
「参考にしてみましょう」
「…勝手にしろ」
「…ええ、ありがとうございます」
「……ちっ」
振り向かず、出撃に準備をする人の中へと入っていく。
背中に張り付いた視線は、消えなかった。
好感度
那珂 ★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★
お、今日試合やりそうな空気やね
中止なったら続き書こうと思っとったけど一旦ここまで
一旦乙です
向こうの更新も楽しみにしてますよ
乙です
乙
出撃の準備も整い、後は最後の打ち合わせ―という時。
唐突に那珂が言った。
「那珂ちゃんとしては、今回の作戦は辞退した方が良いと思うね」
「ほう…?その心は?」
「てーとくとゆっくり過ごした痛い痛い痛い痛い!」
巫山戯たことを抜かす口の横、頬を思いっきり引っ張る。
「にぎゃー……いひゃい」
「ふん」
「…相変わらずだなぁ、貴様らは」
割り込んできたのは、長門。
「何だ、別にこいつの扱いについて今更言われる筋合いは無いぞ」
「いやいや、言わんよ、言わん」
安心してくれ―と手を振る。
「ただな、…なんだかんだ貴様らは良い相棒同士なのではないか、と思うのさ」
「……ああ?」
「ほんとっ!?」
怪訝な表情を作った俺と対照的に、那珂が顔を輝かせる。
「さっすが長門さん、見る目あるよねー!」
「…アホか、俺はこいつの中身なんざさっさと入れ替えて欲しいと思っているぞ」
「がーん!?」
「ははっ、何もそう照れる事はあるまい」
「貴様だって気付いているだろう?その那珂は良い艦娘だぞ?」
「しっかり仕手に従うし、戦闘能力も高い」
「創られた時期の関係で大戦に参加出来なかったのが実に残念だと思うくらいだ」
「……ふふーん、そうでしょそうでしょ」
ドヤ顔で那珂が胸を張る。はっ倒すぞ。
しかし、こいつとの相性か。
今まで考えたこともなかったが―――
>>+2
A.良いのかもな、案外。
B.どっちかといえば、長門のような奴の方が。
A
a
a
A
a
那珂ちゃん人気すごいな
おぉうこんな時間から更新とは…
那珂ちゃんは皆のアイドルだからね
A.良いのかもな、案外。(―那珂好感度+1)
「…良いのかもな、案外」
「……ほへ?」
「……ほう?」
「……な、何だその目は…」
独り言のように呟いた言葉。
長門と那珂が、揃って驚いた表情で俺を見る。
「…ふふ、やはり貴様もそう思っているじゃないか」
「案外、と言っただろうが」
「…ふっ、照れるなよ」
「……ちっ、おい那珂…」
準備しに行くぞ―と視線を向ける。
「て、てーとく…」
「あ?」
「…那珂ちゃん頑張るよー!」
ぎゅー。
肉付きの良い躰を、思いっきり押し付けられる。
無駄に力が強い。
「…おい」
「えへへー、頑張りますっ!」
「…いいから離せ」
「えへー」
「はは、相性抜群だな」
「…見てないでこいつを剥がしてくれ、長門」
「さて…出撃準備は今から半刻位までにはしといてくれよ」
「おい、だからこいつを」
「那珂も、しっかり節度を守れ、良いか?」
「はーいっ!」
「違う、だからさっさとこいつを剥がせ」
聞こえないな、とでも言いたげに長門に背中を向けて。
そのまま立ち去っていく。
「おい!」
「ぎゅー…」
結局、出撃の準備が整ったのは、時間ギリギリだった。
好感度
那珂 ★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★
那珂ちゃんかわいい!
いつもなんだけどてにをはがめちゃくちゃだ、推敲、しよう!
鹿屋基地襲撃。
敵の根城を叩くという今回の作戦。
だが俺達の戦力は、どう見ても敵に勝っているとは言えない。
故に、ギリギリまで敵に存在を感知されぬように動く。
その為、鹿屋基地の付近までは海軍省から奪った軍事用トラックを使う、のだが。
「……非常にうざったい」
「何がー?」
「…お前の距離」
「ええっ!?」
わざとらしく、那珂が驚く。
幌の掛けられたトラックの荷台、狭いとはいえそこまで余裕が無いわけでもない。
だというのに、わざわざ那珂は俺の隣にピッタリとくっついている。
「良いじゃないですか、たまには」
「違ぇねえ、許してやれよ、坊主」
「…………ぐ」
「ほらほらー!」
同乗した第一空挺師団の面々からも、誂い混じりに野次が飛ぶ。
それに調子を良くした那珂が、更に躰を押し付ける。
…くそ。
あんな事言うんじゃなかった。
早く鹿屋に着け。
―と、そんな願いが通じたか。
トラックの動きが止まる。
荷台にいる面々の呑気な表情が、一気に険しくなった。
「……降りるぞ、那珂」
「…う、うんっ!」
その表情で固まって動かない面々の間を縫って、荷台の後方から地面へと降り立つ。
「……あれが、鹿屋」
夜の闇の中にあって、一際輝く施設。
大量の野砲、サーチライト、そしておそらく中には艦娘艤装。
鹿屋基地が、遠く道路の先に見えた。
「…この辺りが、ギリギリあの基地に備えられた電探の探索範囲外だ」
長門が皆に声を掛ける。
見れば、どのトラックからもぞろぞろと人が降り始めていた。
「つまり、此処で艤装を纏い…一歩踏み出せば、後戻りは出来ん」
「…良いか?」
並んだ面々が、一斉に頷く。
拒絶の意を見せる者は、誰もいない。
こうして正面から海軍省の要塞を目にしても。
「良かろう」
満足そうに長門が頷く。
「では―戦おうじゃないか、この大和の為に!」
宣言して、詠唱。
長門の躰が、重厚な戦艦艤装に包まれた。
「那珂」
「…ほいっ」
隣に立っていた那珂が頷く。
頭に刻まれ、消えることのない文言をなぞる。
「此の世の名残、夜も名残、死にに行く身を譬ふれば――」
契約の証。決して忘れぬその言。
「あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く――」
言い終えると、那珂の躰が霧散した。
一瞬の後、全身が艤装に包まれる。
『那珂ちゃん、珍しくやる気だよー!』
「…大声を出すな、うるさい」
頭にガンガンと響く声さえ塞げれりゃ、文句もないんだがな。
そんな事を思いながら辺りを見渡せば、皆、艤装を纏っていた。
『さあ―』
その様子を確認した長門が、対艦刀を抜き放つ。
それを鹿屋基地の方へと向け、愉しげに叫んだ。
『戦艦長門、いざ参るッ!』
艤装が、一斉に地面を蹴る。
闇に、艤装が輝いた。
――視点・若葉
ジリリリ――
うるさい警告音が、基地に響く。
ややあって、慌てた様子の兵士が扉を乱暴に開けた。
「……おい、何だ?」
「しゅ、襲撃です!…先頭は、長門!…だ、第一空挺師団かと思われます!」
「対応は?」
「野砲と機銃を掃射しておりますが…効果は薄く…このままではじきに正門まで辿り着かれます」
「…そうか――ならば艦娘部隊を出そう」
「指揮は私がする…しばし下がれ、それと、部隊を第一訓練棟に集めるように言っておけ」
「はっ!」
報告に来た兵士が出て行く。
それを確認してから、司令官室のやたらと高級な椅子に、乱暴に腰を下ろした。
目の前の窓には、慌ただしい鹿屋基地が映っている。
視界の向こうでは、野砲の発砲炎が光っていた。
「ついに来たか―」
第一空挺師団。
海軍省に、大和に仇なす、その九州―いや、大和でも最大かもしれないという組織。
その襲撃は、予想はしていた。
そもそも鹿屋基地など、呉や舞鶴などを始めとする海軍省の鎮守府と比べれば遥かに施設も防備も劣る。
関門海峡付近での戦闘の顛末は聞いた。
それによって齎された被害も。
呉からの援軍は期待できない、というか、敵はそのタイミングだからこそ狙ったのだろう。
福岡―築城基地からの援軍も同様に、だ。
あそこにうちを助けられる余裕があるとも思えない。
大体、この九州における海軍基地の司令官というのが元々外れくじなのだ。
戦力は少なく、反抗的な住民に頭を悩ませる日々…本州とは大違いだ。
「はぁ…」
…などと毒づいた所で、何かが変わるわけでもないが。
窓から、基地を見下ろす。
鹿屋基地―九州南部における最大戦力を持つこの基地。
単純な戦力量で言うのなら、当然敵よりも鹿屋基地に居る部隊の方が圧倒的に多い。
脆弱とはいえ防衛施設もある。
だが、それを覆す存在がいる。
「……真艦、か」
自分と同じ存在。
大和を護る為に、その魂を艤装に捧げた少女達。
「長門…」
大戦中、太平洋方面で幾度か肩を並べて戦闘をしたことがある。
尤も、向こうは覚えていないだろうが。
彼女は対人、対通常兵器を目的とした運用をされる自分とは違った。
正面から敵の軍勢に斬りかかり、何十何百と襲いかかる深海棲艦を撫で斬りにする姿には、尊敬を通り越して畏れすら覚えた。
「………」
彼女に、この基地の戦力で勝てるのか?
いくら贋艦を注ぎ込んだ所で――
「…いや」
弱音を吐くな。
戦え。
戦うのだ。
全ては大和のために。
捧げた魂に恥じぬために。
裏切り者などに鹿屋を渡すことは断じて罷りならぬ。
あの長門は、捧げた魂の誇りを忘れたのだ。
大和を護るという使命を、自ら放り出したのだ。
「初春型駆逐艦、三番艦、若葉――」
自らの名前を呼ぶ。
それは鼓舞か、はたまた懺悔か。
生き残った。
若葉という艦は、あの大戦を潜り抜けた。
ならば、あそこで散っていった同胞の、姉妹の為に。
誰にも恥じぬ生き方をしなければならぬ。
この誇りを失ってはならぬのだ――!
「―野に、原に、山に在り続け」
「―ただ散り、枯れ、繁る」
「―其の碧こそが我が名」
「我が名は―若葉!」
艤装が身を包む。
装備は、戦艦を相手取るには頼りない。
だが、逃げない。
私には、捧げた誇りが、魂がある。
だから、叫ぶ。
誇りと共に。
『若葉――出るッ!』
以上、眠い
お付き合いいただきありがとうございました
おつおつ
乙です
乙です
(あ、これ若葉死ぬな…)
捕虜としてとらえて反乱軍の性処理道具になる可能性もある
ちょいと事情でEモバ使ってて連投出来ないから元に戻るまで投稿控えるね
すまんね
りょーかいっすー
乙
自分のペースでいいのよ
まだか
まだeモバだからしゃーない
夜の闇に、発砲炎が光る。
一瞬遅れて、音と共に響く衝撃。
その全てを一身に受けるのは、艤装の集団の先頭に立つ少女。
『………わー』
「…どうした?」
そこから間隔を開けて散らばる突入隊。
迎撃の殆どが長門に向かっている為に、此方には殆ど弾が飛んでこない。
『長門さんすっごいなー、って』
それを良い事に、脳天気な声を出す相棒。
『あれだけ攻撃受けてたら、いくら戦艦艤装でも耐えられないよ』
「…ま、普通はな」
真艦、長門――
大戦期において、その名は大きく知れ渡った。
帝国における艦娘の聯合艦隊、旗艦までもを務めた艦。
近接戦闘で、彼女に適うものはいない―帝国海軍の顔とまで言われた艦娘。
彼女は今、別段速く駆けているわけではない。
戦艦の重厚な装甲の弊害の鈍足は、長門にも当然適用されている。
速度だけなら贋艦にすら劣る艤装。
それを攻撃するのは、鹿屋基地に取り付けられた九五式野砲―いくら戦艦装甲と言えども、十発も正面から喰らえば致命傷になる。
だが彼女は、それを全て正面から受け止める。
その速度を緩めることなく、前へと進みながら。
絶え間なく降り注ぐ砲弾は、彼女の歩みを一切妨害することはなかった。
流石にあれが、艦娘艤装―軽空母の連弩や、正規空母の長弓ならば長門も耐えられないだろう。
けれど、鹿屋にそんな防備はない。
揃っている艦娘艤装は、駆逐、軽巡中心で、いくらか重巡があるくらいだ。
そもそも、鹿屋のトップが若葉―駆逐艤装なのだ。
その辺りからいっても、海軍省が全く此方に力を注いでいない事が伺える。
『……ひゃー……門叩き斬ったー…』
などと意識を飛ばしている内、進展があったらしい。
那珂の言葉に正面を見れば、長門が鹿屋基地の正門を対艦刀で真っ二つにしていた。
……もうあいつ一人で良いんじゃないか?
『…って、敵艦!』
だが、その瞬間。
崩れた門の向こうから飛び出して来る数機の影。
短刀を携えた影が、素早く長門に纏わり付く。
遠目でも、よく訓練されていることは明らかな動きだった。
ある影は長門の腹に、またある影は手に、足に、短刀を突き立てる。
いかな戦艦艤装といえども、艤装の隙間に突き立てられる刀を防ぐことは出来ない。
鮮血が、サーチライトに照らされて光る。
『長門さんっ!』
那珂が叫ぶ。
その声には、悲痛さが明らかにみてとれた。
『提督!何やってんの!?急いで長門さんを助けないと――』
「…必要ないさ、那珂」
短刀を抜き、影が再び距離を取る。
今にも彼らは長門へもう一度攻撃を仕掛けるだろう。
俺も、第一空挺師団の面々も、この距離からでは間に合わない。
『必要ないって――!』
尤も、それは。
『……良い腕だ、久々に少し痛かったよ』
彼らが生きていればの話、だ。
『え――!?』
サーチライトの眩い光の中。
長門を襲った艤装の首が、一斉に転がった。
先程とは比べ物にならぬ量の血液が、飛沫となって舞い上がる。
「……敵に空母がいなけりゃ、もうお前一人でいいな、ほんと」
門を破られた時点でその役目を放棄したのか、砲弾はもう飛んでくることは無い。
そんな鹿屋基地の正面の道路を、悠々と歩き。
崩れた正門の前で、全身から血を流しながら佇む長門に声をかける。
『……む、遅かったな』
「…誰かさんが折角盾になってくれるんだ、活用しない手は無いだろ」
『おいおい、装甲を貫かんとはいっても、喰らうと結構痛いんだぞ?』
「普通は痛みを感じなくなるんだよ、あんだけ喰らえばな」
うん?と首を傾げるリーダーの脇を通り抜けて、もはやただの鉄塊と化した門を飛び越える。
『…何処へ行く?』
「大将首取りに」
『……何だと貴様良いとこ取りかっ!?』
「……いやいや」
だってそもそも俺まだ何もしてないしさ。
…それに、大将戦が一番楽しそうだし。
「敵にまだ艦娘艤装は残ってるだろうし、それの相手でもしといてくれよ」
『いーやーだ』
だが長門も食い下がる。
さて――
>>+2
A.…わかった、譲るよ。
B.無視してさっさと内部に突っ込む。
B
b
続きは後で
お帰り乙乙
乙です
まだかな?
こっちの方が雰囲気とか前回に近いから好きだな
またかわいい猫娘に会いたい
更新待ってる
まあこっちは息抜きみたいなもんなんだろう
気長に待とうず
「長門」
『…ふっ、提督、考えなおしてくれたか』
「傷、ゆっくり治せよ」
『あ――――!?』
振り返らず、基地内部へと疾走る。
後ろから罵声がめっちゃ聞こえるが、無視。
そもそも、どちらにせよあいつは暫く動けんだろうしな。
…しかし。
「……おかしい」
『…何がさ』
「…敵がいない」
『…その方が良いじゃん』
長門を置いて突入した基地内部。
迎撃を覚悟していたのだが、今のところ無人の野を行くが如しである。
電探に反応はなく。
周囲に張り巡らされた防衛兵器も、動きを見せる様子は無い。
一番目立つ、最も高い建物目掛けて疾駆する。
『……罠とかじゃないの?』
「…大丈夫だろ、たぶん」
『…ほんとかなぁ』
「罠なら罠で敵が出てくるんだ、悪いことじゃない」
『……那珂ちゃんだけでも逃げたいんだけど』
「許さん」
『おーぼーだぁ…』
「…まぁ…罠じゃなかったみたいだけどよ」
そんなやりとりをしている内。
いつの間にか目的の場所まで辿り着いていた。
「……逃げたとか?」
『いや――違うみたいだよ、提督』
そして建物の中に入った、その瞬間。
那珂の声が変わった。
『…長門、じゃないのか』
「……誰だ?」
同時に響く、低い声。
俺の正面、待ち構えるかの如く、正座で佇む影。
『……帝国海軍中佐―真艦、若葉』
その影が、静かに名を告げる。
ここまで基地が荒らされているというのに、動揺の一片すら見られない。
「若葉…なるほど、此処の大将か」
『…そうだな、そうなる』
「なぜお前以外は誰もいない?」
『逃したよ』
「…逃した?」
疑問符を浮かべた俺に、若葉は笑う。
『確信したんだ、どう考えても長門には勝てないとな』
「……それで逃しただと?」
『ああ』
軍人ならば―特に帝国軍人の価値観に則るならば、最も恥ずべき行動。
それを、悪びれもせずに言う。
『あれは無理だよ、無理』
『無駄な人死になど御免だ、これでも結構しっかりと部下に物を教えていたんでな』
奴らが死ぬのは惜しい―と、続けた。
「……じゃあなぜ、お前は残った?」
『…殿…それと―私の意地だ』
「意地?」
『…つまらん意地だ』
『…この艤装に捧げた魂に誓って、大和を守るのだという、それだけの』
『此処で逃げるのは、その誓いに反する』
『例え死んでも、それは譲れん』
「……大和を守る手段は、何も一つじゃない」
「長門みたいな奴もいる」
『はは、そうかもしれないな――』
俺の言に、やはり笑う。
『だが、私はこれしか…この守り方しか知らないんだ』
『それで逝くのなら、別に構わん』
『元より―既に一度破られた誓いだ』
『その上でも…私はこれにしがみつくしか無い』
一度目―大戦での敗北。
踏み躙られ、荒らされたこの大和にあって尚、彼女は誰よりも誇り高き帝国軍人であった。
立ち上がり、駆逐艤装に備えられた2本の短刀を抜き、構える。
とても、降伏も逃亡もするような気配には見えない。
「…なるほど、そういう事なら」
「遠慮無く、お相手仕ろう」
腰の太刀を抜き、正眼に構える。
その様子に、艤装の下で若葉が頷いた。
『…よかろう…だが、その前に名を聞きたい、若者…お前と…その真艦の、私と同じ誇り高き少女の名を』
「……名は提督、艤装は――」
『駄目だよっ!』
名乗りを打ち切ったのは、どこか悲痛な、甲高い声。
それが那珂の物だと気付くのには、一瞬を擁した。
『…何で…何で死のうとするの!?』
呼び掛けは、若葉に。
明らかに彼女は困惑していた。
『……何を言っている?』
『…誇りだとか…国を守るとか…国を取り戻すとか…わけわかんないよ!』
『何で、そんな物の為に死ねるの!?』
その言葉は、恐らく若葉だけに向けられていたのではない。
ただ、同じ艦娘の、ともすれば自殺のような行動が引き金となったのか。
第一空挺師団や、海軍省の兵士達。
そして、きっと俺にも―ずっと溜まっていた物を、爆発させるように叫んだ。
『……お前も艦娘ならばわかるはずだ』
『私達は――』
『わからないっ!知らないっ!』
『那珂ちゃんは、皆を笑顔にするために艦娘になったの!』
『…皆を守って、平和な世界にしたくて!皆に、笑っていて欲しくて!』
寂滅為楽―那珂の装備は、元々戦闘用の密装ではない。
那珂の魂が、想いが与えた能力。
皆に、せめて穏やかな心を――そんな彼女の願いが込められた密装。
以前、彼女はそう言っていた。
『誇りなんて知らない!そんな物、抱えた覚えなんて無いっ!』
『勝手だよ!皆…勝手だよ――!』
『……そうだな、そうかもしれん』
だが、対照的に若葉は平静で。
多少困惑していた様子も、いつの間にやら消えている。
『勝手さ、皆、勝手に自分の為に戦っている』
『…だが、それはお前だってそうだろう?』
『死なないでって理想を押し付けるのが、悪いことなの!?』
『…さぁな、それを決めるのは私じゃない』
『一つだけ言えるのは、私は私の勝手を貫き通すという事だけだ』
『………どうして…』
那珂の声が小さくなる。
……――――――
>>+2
A.那珂を否定する。
B.那珂を肯定する。
A
A
ここまで
続きは明日の昼
こんな時間までおつおつ
────────
乙です
昼って言ってたけど今日はなしかな?
楽しみに待ってまーす
この時間帯の書き込みだったから>>1かなと思ったけど違ったか
遅くなる分には一向に構わないけど前スレみたくこのスレもエタらせるのだけはやめてくれよな~たのむよ~
申し訳ありません、今日は必ず…
と思ってたら来てた(笑)
了解でーす
乙
向こうが大変だったから仕方ないね
趣味でやってることだし気楽に進めればええねん
ここの>>1は夜中の3時頃でも普通に投下あるからそろそろかな?
今日中には(大嘘)
まあ本人にも色々と都合があるのはわかるんだけどせめて一言報告くらいは欲しかったかな
待ってる
今日こそはあるから(震え声)
やるやる詐欺に引っかかった気分だwww
まあ実際そう急かすこともないだろう
全く反応が無い訳ではないし後数日でスレが落ちるって訳でもないんだから
で、今日はあるよね?(退路を断つ)
なんでそんなに追い詰める必要が…
まあ自分でやるって言っておいて2日とも更新がなかったからゴネる奴がいるのはわからないでもない
(A.那珂を否定する――那珂好感度+1)
「那珂」
『……なに』
「黙れ」
『……っ』
言葉に、那珂が息を呑む。
もし姿が顕現していたのならば、恐らく鋭い視線の一つでも飛ばされていたことだろう。
『……どうして』
「どうしても何もない、邪魔だ、うるさくてかなわん」
『………提督』
「…言いたいことがあるなら、戦闘の後にしろ」
『……え?』
「……殺さないようにしておいてやる」
『…それ…って』
「…無駄話はこれだけだ、さっさと準備しろ」
『…うん!』
『……話は終わりか?』
律儀に構えを解いて待っていたらしい若葉が、どこか呆れ声で言う。
「…ああ、終わった」
『そうか』
待ちくたびれたぞ、と言わんばかりに2本の短刀を手の中で回す。
『…それと――そうだな、私からも一つ、良いか?』
「…ん?」
『さっきから聞いていればお前もその艤装も、まるで私が負けるのが当然であるような言い方をしているが――』
『殺さないようにしておかれるのは君らかもしれない、という事を忘れないでくれよ?』
「――なるほど、違いない」
『まあ、密装を出し惜しむ程の余裕が無いのは確かだがな』
『…行かせてもらう、全力で――!』
「ははっ、面白え!」
若葉が、続けて何言かを呟いて。
――戦いの合図を告げるかの如く、火花が散った。
好感度
那珂 ★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★
今日は速いね
やっぱり那珂ちゃんは可愛い(真理
正面、二刀を逆手に構えた若葉。
完璧に捉えている筈の彼女。
「――――っ!」
それが、視界から消える。
「那珂っ!」
『…反応、左っ!』
「がっ……!」
繰り出される短刀を、躰スレスレの所で受け止める。
強い衝撃が、腕を襲った。
『…………ふっ!』
そのまま俺の腕を蹴り、再び距離を取って若葉が同じように二刀を構え直す。
…先程から、ずっとこれの繰り返し。
若葉の動きを全く捉えられない。
気付けば、彼女の射程に俺がいる。
電探の反応を頼りにして何とか受け続けているが、それにも限度がある。
証拠に、段々と刀を受ける位置が近付いてきている。
『………疾ッ――!』
「……っ!」
正面から、またもや若葉が消えた。
理解を求める前に、反応を。
「那珂、居場所は――」
『え、見当たら――……う、上っ!』
その声とほぼ同時、上からやってきた二刀。
「……ぐぅっ!」
それは咄嗟に突き出した左腕の装甲を抉り、骨まで達して漸く止まる。
『……ふっ!』
「がぁっ――!」
追撃してくれるなら、牽制程度には――と。
右腕の太刀をがむしゃらに振り回す。
だが、やはり若葉は距離を取る。
あくまでも、一撃離脱戦法を崩すつもりはないようだ。
二刀を逆手に持った構えのまま、躰を沈めた。
若葉さんつええ(小波間)
「………ちっ」
左腕はくっついてはいるが、肘の先が全く動く気配が無い。
痛みよりも何よりも、そちらの方が深刻だ。
「…那珂」
『………何…っ』
頭の中の声も、苦痛に耐えている。
…本当に今日は珍しい。いつもなら散々喚き散らすだろうに。
「……これ、動かせそうか?」
『…3日くらい安静にしてればね』
『…今動かしたいって話だったら、無理矢理やってもいいけど一回が限界、後、死ぬほど痛いよ』
「…そうか」
何にせよ、その気になれば動かせるだけマシだ。
…しかし――どちらにせよ、若葉を捉えられないことには話にならない。
『……提督』
「…どうした?」
『…ちょっと、躰貸して』
「……あ?」
『……あれは提督には絶対に止められないけど、那珂ちゃんになら止められるかもしれないから』
「…どういう意味だ?」
正体に見当がついてるなら話せ―と言おうとして。
『疾ッ――!』
再び、若葉が消える。
どうやら考えている時間は無い――!
>>+2
A.那珂に預ける。
B.自分で防ぐ。
A
とりあえず安価下でここまで
無ければもうAで
投下詐欺はすまんかった、モチベがね…
A
a
おつ
おつおつ
おつー
乙でした
そう言えば前もモチベがーとかうまく書けないーとかなってグダってたよな
なんかこのスレも以前エタらせたあのスレと同じ道を歩みそうで怖い
おお来てたか!おつ!おつ!
参加は出来なかったけど満場一致でAだし問題なし!
まあ気乗りしない時はしっかり休んでまた書いてくれ
因みに上の方のエタったスレってこれ?
【艦これ】提督「……え?俺が提督?」【安価】
>>1の作品凄く好きだから例えエタってたとしても読むわ
応援してる!頑張ってください!
勝手に酉調べて過去スレ晒す屑
乙です
乙
那珂ちゃんがかわいい、それ以上必要だろうか?
乙です
おつです~
こっちはもう一つのスレと違って比較的外野が落ち着いてるから好きだわ
A.那珂に預ける。(生存)
「…わかった、任せる」
…悔しいが。
自分では、どうにもならなそうだ。
未だに打開策どころか推測すら出来ていない状況だ。
…ならば、任せよう、那珂に。相棒に。
『…ありがと、提督』
躰の力を抜く。
艤装の動きに、身を任せる。
相変わらず、俺からは若葉の動きは見えない。
消えたまま、視界の外だ。
…本当にあいつに何とか出来るのだろうか。
艦娘には珍しく、武芸の心得など何も無い奴である。
…不安になってきた。
『ふっ――!』
「っ!?」
そして、やはり唐突に、若葉が短刀の射程に現れた。
今度こそ、二刀が腹を抉る、必殺の距離に。
だが――
『なっ!?』
響いたのは、金属音。
それも、若葉に近い側で。
那珂がめちゃくちゃな軌道で力任せに振った刀が、短刀を弾いていた。
『よしっ――提督っ!』
「…任された!」
艤装を纏った躰が、俺の支配に戻る。
その感覚の無くなった左腕に、気を込める。
「がっ――!」
襲ってきたのは痛み。
しかし…痛いということは、動くということだ!
『ぐぅっ…!?』
短刀を思いっきり太刀の腹で弾かれ、態勢を崩した若葉。
その首を、左手で掴み引き倒す。
そして、右腕に持った太刀を頸に当てた。
「……これで終わりだな、若葉」
『…………くっ』
腕から力が抜け、カラン、と床に短刀が落ちる。
その後を追うように、若葉の躰を纏っていた装甲も消えた。
「……何故見切れた?」
床に倒れたまま、若葉が不思議そうに俺を見る。
―全く反応できてなかったのに、と。
「…さあな…正直、俺にはわからなかった」
「…はぁ?」
「…やったのは、こいつ―那珂だ」
俺の艤装も、頸の太刀を残して霧と消える。
代わりに現れたのは、しきりに左腕を抑える那珂。
「ふふん…!…左腕痛い…ちょー痛い……ちぎれる…」
…俺の左腕は、既に感覚がない。痛くもなくなった。
…また治るのに時間がかかりそうな傷だ。
「…だが…那珂、俺も聞きたい、お前一体どうやってアレを破った?」
「というか…そもそも、あの技は何だ?」
「ふふん、んーとね…」
「…無拍子」
言葉を継いだのは、那珂でなく、若葉。
「無拍子―武の極地、その一端」
「…無拍子?」
「ああ…お前も武道をやっているのなら分かると思うが、武道には…拍子、リズムがある」
「…ふむ」
当たり前の話だ。
踏み出し、捌き――武道の全ての動きには、リズムがある。
剣舞まで正確には行かなくとも、実戦でもそれは当然存在する。
それは自分の動きのタイミングならず、相手の動きを見るのにも――
「…なるほどな、そういうことか」
「…俺はお前と相対する中で、無意識に拍子を計っていた」
二刀を構えた若葉の動きを、じっと見ていた。
その拍子が無になる―というのはつまり、動いているのに、動いていないように見えるのだ。
勿論動いている事には変わりないのだが。
武道に慣れきった俺の感覚は、拍子の無いその動きに対して「動いている」という認識をしない。
「…まるで、消えたように見える、と」
「……あくまで簡単に言えば、だがな…そんなに単純な話ではないよ」
「待てよ…じゃあ那珂、つまりお前が防げたのは」
「うん、那珂ちゃん剣道とかそういうの全然わかんないからねー」
「言ったじゃん、提督には無理だよーって!」
「……………」
「……………」
口を馬鹿みたいに開いて。
両者、絶句する。
…ちょっと凄いと思ってた俺を殺したい。
「……まあ…何はともあれ、私は負けたのだ」
「…好きにしろ」
つい、と頸を上げる。
丁度、太刀の下にくるように。
ふむ――――
>>+2
A.長門に引き渡す。
B.俺が身柄を預かる。
C.適当な奴に引き渡す。
来てたー
B
b
A
A
B.俺が身柄を預かる。(幕間 若葉サブイベント挿入フラグ)
「殺さんさ」
「…?」
太刀を引く。
感覚の無い左腕を離す。
「…何がしたい?」
「…いや、俺は殺す気だったんだがな」
溜息を吐く。
若葉の前で、左腕を庇いながらぎこちなく仁王立ちした少女に視線をやった。
「……コイツが言いたいことがあるらしい」
「だよっ!」
「……何だ?」
途端、煩わしそうな顔をした。
…まあ、無理もないか。
そんな若葉を指差して、那珂が言う。
「簡単に死ぬなんて言っちゃダメ!」
「国も、誇りも、…自分の命に比べたら、ずっと、ずっと軽いんだから!」
「だから、ダメ!」
「…………」
「…何だ、こいつは」
「…俺に聞くな、変な奴としか言えん」
…確かに変な奴だ―と、若葉が笑う。
「しかし…初めてだな、そんな事を言われたのは」
「…国も誇りも、軽い、か――」
「…私は、必要以上に重く感じていただけなのか?」
「知るかよ、俺に聞くな」
「…そうか…なら、那珂」
「うんっ!」
「…君にとって、命より重い物はあるか?」
「うん、それはね――」
「笑顔!」
那珂が明るく言ったその言葉を受け、固まる若葉。
しかし、すぐに躰を震えさせ、大声で笑い始めた。
「はは――!はははっ!笑顔か!」
「なるほど…国や誇りなんて物より、ずっと大切に思えるな、はははっ!」
「…言ったろ、変な奴だ」
「ああ、とびっきりな!」
鹿屋基地陥落。
そして、司令官であった若葉は敵方に寝返る――
そんな知らせが、九州中を駆け巡った。
ここまで
そろそろ1章終わり
多分2章で使う九州北部、築城基地の司令官>>+2(戦艦、空母以外)
神通
阿賀野
摩耶
乙
おつおつおつ
乙です
乙です
>>A.那珂に預ける。(生存)
(生存)
ミスってたら即終了だったのか・・・((((;゚Д゚))))
流石にそこまで鬼畜では…ないと思いたい
精々片腕欠損ぐらいなのでは
死んでも3回コンテニュー出来るから(震え声
結構シビアなんだな
まあ元ネタの方はもっとシビアだから仕方ないね
まだかなー
「なあ、那珂」
「…なにさー」
鹿屋基地での戦闘。
全員逃したという若葉の言は、どうやら真実だったようで。
本当に後はもぬけの殻だった。
まだ追い付けるのでは?という意見もあったが…それをしなかったのは、彼女の気概に影響されて、だろうか。
今、彼女はとりあえず捕虜という形で俺の管轄下に置いている。
さて、そんな戦闘も一段落した翌日の夜、自室にて。
人のベッドを堂々と占領する那珂へ、声をかけた。
「お前、いつもあんなこと考えてたのか?」
「…あんなこと?」
「死なないでやら、何やらさ…言ってたろ」
「……んー」
言われて、那珂が少し考えるような素振りを見せる。
「…そうだね、ずっと思ってた」
「…だって、那珂ちゃんが艦娘になった理由だもん」
「じゃあよ…今までも、ずっと思ってたってことか?」
「……うん」
那珂を艦娘として纏い、戦う間。
数多の戦闘を潜り抜けた。
殺した数など、数えられもしない程に。
…その間、こいつは確かに嫌そうな声を出してはいたが―あそこまで、嫌がっていたのか。
「…随分、溜め込んでたんだな」
「……別に、そーいうわけじゃないけど」
「…………」
…勝手だよ。
叫んだ言葉。
…その通りだろう、なんて思ってしまうのは。
いつしか、こいつを兵器としてではなく、一人の人間として見るようになってしまったからだろうか。
那珂は、俺に逆らえない。
例えこいつにとってどんなに嫌な事であっても、俺がやることをこいつは受け入れなければならない。
それが、艦娘であり、仕手であるということだ。
今日はこっちか
「……笑顔にする、か」
「…うん」
「…やっぱり、お前はアホだな」
「……知ってる」
「でも…良いのかもな、それも」
皆を笑顔にしたい。
アホらしくて、青臭くて。
誰も本気にしないだろうけれど。
反乱軍が、海軍省が、連合が目指すどんな国より―幸せそうな理想だった。
「…なあ、那珂」
「……どうしたのさ、何か今日変だよ、提督」
「……降りるか?」
「…降りる?」
「……契約の破棄」
…でも、俺はそんな世界をもう目指せない。
きっと、そんな世界じゃ渇いていくだけ。
俺を満たすのは、あの戦いだけ。
だから、これ以上俺の勝手にこいつを巻き込むのは――
自分でもらしくないことだとは、何となくわかっているが。
…やはり、移ったのだろうな、情が。
「……あのさ、てーとく」
ずっと目を閉じて、俺の言葉の意味を考えていた那珂が、むくりとベッドから起き上がる。
そして、俺の真正面に構えた。
「…ん?」
「…那珂ちゃんが、あの時怒ったのはさ」
「……若葉ちゃんに、ムカついたんだ」
「…ムカついた?」
「そう」
「…若葉ちゃんは、『守る』って言ってたよね」
「…ああ」
「でも…あの娘は、…その対象に、自分を入れてなかったから」
若葉。
誇りにかけて、大和を守ろうとした少女。
いや…大和を守ることを誇りとした少女。
たとえ、自らの命に替えても。
「…ダメだよ、あーいうのは」
「自分が死んじゃったら、意味なんて無いもの」
「……そうかもしれないな」
「かもじゃなくて、絶対!」
「わかったわかった……だが、いきなり何でそんな話を?」
「…うん」
立ち上がる。
息が届くほどの近距離に、那珂が近づいてくる。
「…那珂ちゃんは、皆を笑顔にしたいなんて言ったけどさ」
「結局、一番に考えてるのは自分の事なの」
「…一番笑顔になりたいのは、自分なんだ」
「そういう風に、那珂ちゃんは願ったから」
「………」
少しだけ、那珂の顔がいつもと違うような気がした。
どこか、脳天気さが抜けている、そんな。
「…だから、あの時だって…ただの、那珂ちゃんの勝手」
「人の為に自分を犠牲にするなんて、馬鹿みたいな事にムカついた」
「……可笑しいよね、綺麗事を並べてたのに、考えてたのは、根っこにあったのはそれだけなんて」
「…いや」
「……本当は、さ」
「…那珂ちゃん、あそこで満足だったんだ」
「あそこ?」
ステージ
「…岩国基地の、ちっさなちっさな倉庫」
岩国基地。
終戦間際に作られ、実戦投入されていなかった那珂が、そのままずっと仕舞われていた場所。
あの場所で、俺は初めてこいつの歌を聞いた。
「…配備された時にはもう、戦争は終わっちゃってて」
「やることないからって、押し込まれて…勿論、最初は不満だったけど」
「たまにやってくるネズミとか、蜘蛛…ゴキブリは…まぁ、そんな感じの観客に向かって」
「戦いとか色々、あっちの世界から隔絶されたみたいなあの場所で」
「一人で歌ってるだけで、那珂ちゃんは満足だったの」
「…誰かの事なんて、考えてもなかった」
「……那珂、じゃあ」
何故―と、言いかけて。
近付いた那珂との距離が零になる。
唇が触れたのだと気付いたのは、離れた那珂の笑顔を見てからだった。
「……そういえば約束したよね、戦いが終わったら理由を言うって」
笑顔から、陰が消えた。
いつもの脳天気な顔に戻っている。
「…那珂ちゃんは、何となく気付いてた」
「血塗れの天龍型艤装を纏った貴方が、きっととんでもない厄介者の観客だって事はさ」
「…それでも……」
ふふー、と那珂が照れ臭そうに笑う。
「…好きになっちゃった、一目で」
「なんか…びびーって来たの」
「……あのね、提督」
「…ああ」
「…那珂ちゃんが笑顔でいられるのは、貴方の側」
「貴方に使われてる今が、那珂ちゃんにとって最高の瞬間なの」
「誰かを殺すのも、誰かに殺されそうになるのも、痛いのも、みんなみんな嫌だけど」
「でも、それでも、貴方の側にいたいんだ」
「…あの時言ってた事なんて、全部後付け」
「だから、今まで通りでいいよ」
「気なんて遣わなくていい」
「どうぞどうぞ、那珂ちゃんをお好きにお使い下さい」
「…ふふ、てーとくだけなんだからね」
何故か誇らしげに、那珂がふふんと鼻を鳴らす。
>>+2
A.…ああそうか、じゃあ勝手に使わせてもらう。
B.知らず、そんな彼女へと手を伸ばしていた。
a
b
ここまで
更新速度も内容もアレですがお付き合い頂ければ幸いです
速度くらいは上げていけるよう努力します
乙乙
那珂ちゃんってネタにされがちだけど正ヒロイン枠よね
乙
おかしい…那珂ちゃんが可愛いぞ…?
乙です
乙です
一週間過ぎたしそろそろかな?
楽しみにしてます
まだかなー
B.知らず、そんな彼女へと手を伸ばしていた。(那珂好感度+1)
手を伸ばした。
側にいる、彼女へと。
指が、頬に沈む。
上等の絹織物のような、滑らかな肌。
「…てーとく?」
驚きで、彼女が俺を見る。
「……いや」
誤魔化すように、咄嗟に首を振った。
「…変な事言うな、調子が狂う」
「んー…ほんとは、言わなくても伝わってると思ってたんだけどな」
「……アホか」
人の寝床を占領していた那珂を蹴飛ばし、自分の眠れるスペースを確保する。
布団の端に追いやられた彼女は、不満そうにむくれた。
「……ひどー」
「さっさと寝ろ、疲れた」
「…はーい」
「……自分の布団でな」
返事とともに、那珂は俺の背中に貼り付いた。
柔らかい感触と、甘い匂い。
「おい、那珂」
「………くー…那珂ちゃん寝てるから起こさないでねー…すー」
「…蹴飛ばすぞ」
「………くー」
「…………」
動かない馬鹿に、舌打ち一つ。
本当に蹴飛ばしてやろうと足を上げて…やっぱり、やめた。
どうせ落としたってまた貼り付いてきそうだし、それも面倒だ。
「………」
「……ぐー…むにゃむにゃー」
「…那珂」
「…………zzz…」
「…俺も、信頼くらいはしてるよ、それなりに」
「…………ぐー」
ぴくっ、と貼り付いた那珂が動いて。
俺の身体を抱く力が、少しだけ強くなる。
「…寝ろよ、ちゃんと」
一言言って、目を閉じる。
その答えの代わりとでも言わんばかりに、彼女は俺の手を握った。
第一章こんな感じ
第二章のメインキャラ
>>+2(長門 赤城 扶桑)
こっちだったか
赤城
ながもん
【幕間 休日】
「………那珂」
「なーにー?」
「…どけ」
「…えー、いーじゃん!」
「ふんっ」
「あうっ」
膝の上に座ってニコニコしている馬鹿を床に放り投げる。
べちゃっと転がった彼女は、恨めしそうに俺を見た。
「やることないんだし!」
「…だからといって俺の膝の上で寛ぐ理由にはならんだろうに」
「那珂ちゃんが元気になります!」
「………」
「…な、なにさーその目は…」
溜息を吐く。
やはりこの前は振り払っておくべきだったか。
面倒な奴が更に面倒になったものだ。
…さて、しかし那珂の言う通り本当にやることが無いな。
ふむ――
>>+2
A.……仕方ない、この馬鹿に付き合うか。
B.…そういや、長門のやつは訓練場か?
C.…赤城…は、また暇してんのかね。
D.……街にでも出てみるか。
E.…ああ、若葉が呼んでたっけ。
d
C
E
C.…赤城…は、また暇してんのかね。(赤城)
…そういや。
お姫さま改め、あの赤城はまた暇してるのかね。
…暇人同士構って貰うか。
「那珂、出かけてくる」
「付いていくよー!」
「………」
「…な、なんでしょーか」
「………ふんっ!」
「うぎゃっ!?」
抱えて、そのままベッドに那珂を放り投げる。
…結構腰に来るな、これ。
「…何すんのさー!」
「留守を頼む」
「やだやだ!那珂ちゃんも出かけるー!」
「……駄々をこねるな鬱陶しい」
「…むー…まーいいや、行ってらっしゃい」
「……何だ、急に物分かりが良くなったな」
「別にー、どーせ連れてってくれないだろうし」
「ああ、その通りだ、連れて行かん」
「…この場面ふつーもうちょっと拗ねた那珂ちゃんのご機嫌を取ってみるものじゃないんでしょうか」
「……お前の普通と俺の普通はズレてんだろうな、致命的に」
「……そーですか、ふん、いーよいーよ、勝手にしなよー」
「…………」
めちゃくちゃ面倒臭えなこいつ。
扉を閉める直前までずっと此方を睨んでいる那珂を見て、心の底からそう思ったのであった。
好感度
那珂 ★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★
寝ます
こんな時間にお付き合いいただきありがとうございました
おつ
乙です
乙です
おつおつ
那珂ちゃんカワイイ
「赤城」
前のように、ノックもせずに粗末な扉を開く。
「暇だ――」
から遊ぼう、と続けようとした言葉は続かなかった。
「…へっ?」
「…………」
いや、なんだ、別に突然俺が言葉を忘れたとかそういうのじゃない。
扉の向こう、窓から差す日に照らされた、輝く肌。
屈んだ姿勢のお陰で、ぶら下がるように揺れる双丘。
つまり、えー。
上半身、何にも着てなかったのであった。
「……………」
「……………」
赤城は丁度下履きを履き終わった所らしく、腰のあたりに手をやったまま此方を見て固まっている。
ふむ、案外あるのだなぁ、胸。
そんな事を思った。
即ち、現実逃避というやつであろう。
「…………あ、の?」
掠れた、赤城の声。
それがすぐに俺を現実へと引き戻す。
「…………申し訳ないっ!」
ばたん!扉を叩き付けるが如く閉める。
そのまま勢い良く廊下に額を擦りつけた。
「………何をやっているんだ俺は…」
勿論扉の向こうの当人にはこの土下座は届かないのだが。
……くそ、あれだ、那珂が悪い。
そうだ、あいつが俺がいる場所で無警戒に着替えなんか始めるからそういう感覚が麻痺していたんだ。
ああ、全部那珂が悪い。
だから俺は女性の部屋に入る前にノックをするという当然の動作を怠ってしまうのだ。
あの野郎帰ったらとっちめてやる。
――――――――――――
「…くしゅんっ!」
「…ずず……んー…?寒くなったのかな、最近」
「……むー、てーとくいないと暇だー」
「…布団ごろごろー……」
「…布団…」
「提督の布団……」ジー
「…………ちょっと…汗臭いなー…」
「………くんくん…はっ!」
「……つまり…あー…その、何だ、俺はだな」
「………」
「……俺は……ごめんなさい、俺が悪かったです」
ベッドに姿勢よく正座する赤城は、どこからどう見ても完膚無きまでに怒っている。
もうこの世の怒りという物を体現したような存在になっていた。
何かもう純粋に怖い。敵の軍勢より怖い。
「………提督さん」
「…はっ!」
何故か敬礼、長門にもしたことないのに。
「……私、ノックくらいはして下さいと…前、釘を差しましたよね」
「…た、確か俺はその時に鍵を掛けろと」
「…………」
睨まれる。目を逸らす。
「……ええ、確かに私の過失があった、それは認めましょう」
「…しかし…元よりこの部屋への来訪者などおりませんし、周りに部屋もありません」
「これから出かけようとするのに、一々鍵を閉めるなど手間です」
言外に、何で来てんだよお前と言われているらしい。
とりあえず反論してみる。
「…いや、着替えの時は鍵くらい閉めたらいいじゃないか」
「…普通の来訪者はノックくらいするのではないでしょうか?」
………ふむ。平行線である。
このまま両者の主張を通したのでは間違いなく意見はまとまらないだろう。
よし、ここは妥協案だ。
「……うむ、ならばお互い過失1ということで…この件は水に流すと」
「………………」
「……しま…せんよね、俺が悪いですよね」
すっごい目で睨まれた。あれが人を殺す視線という物だろうか。
「…………」
育ちの良さがわかる、一糸乱れぬ姿勢。
その姿勢のまま赤城は俺を睨み続けている。
………・こういう時、どうするべきなのだろうか。
…神よ、普段は頼りなんかしないけど、意見を下さい。
>>+2(全て好感度+1、展開が変わるだけ)
A.身体を褒める。
B.もうむしろいっそ開き直る。
C.俺も脱ぐ。
D.なんかその他、余りに突拍子な物は安価下。
b
A
A
向こうやらないのか・・
A.身体を褒める。(赤城好感度+1)
…むっ。
降りてきた、神が降りてきた。
…多分。
「……あ、そ、そうだ」
「……はい?」
「…お前…じゃなくて、赤城、はい、赤城さん」
「案外、良い身体してるんだ…ですね」
「………へ?」
般若の顔が崩れる。
俺の言葉を理解しようと少し顎に手を当て、思考を巡らせてから。
「…………な、なな、なっ、何をっ!?」
両手で身体を護るように抱いた。
「…あ、いや、普段は胸強調してないけど、結構あるんだなーっと」
「~~~っ!?て、提督さん、貴方!」
これでもかというほどに顔を赤くして、赤城が悶える。
睨みつけた視線は先程よりも弱々しく、羞恥の色が濃く刻まれていた。
………こいつ、まさかとは思うんだが。
「……なあ、赤城」
「なんですかっ!」
怒っているには怒っているのだが、この怒り方だとどこか微笑ましいとすら思う。
「…お前、もしかして生娘だったりするのか?」
「………な、な、何言ってるんですか!?そ、そんな事、あるわけないでしょう!」
「………まー、な、まーそうだよな、お前この前俺と同い年くらいって言ってたもんな」
多分的中したのだろうが、何か強がっているのでその方面で揺さぶってみることにした。
普段めっちゃつんけんしてるから新鮮でとても楽しい。
「そ、そうですよ!ええ、そうですとも!」
「…だったら…こんくらいは平気だよな?」
「……え?…な、ひゃっ!?」
肩に両手を乗せ、息がかかるくらいの距離に近づいてみる。
「…ん?もしかして恥ずかしかったりするのか?」
「………へ、平気です、慣れてます」
「…ふむ…そうか、なら…」
その距離を、更に詰める。
「…経験豊富な赤城さんに、少し教えてもらおうかな、俺も」
「……ひ、な、何を」
「いいじゃないか、いや、俺はどうにも晩稲でね、そういうのがっ!?」
ぱちん。と気持ち良い音とともに伝わる衝撃。揺れる視界。
…なるほど。
どうにも少し調子に乗りすぎたようであった。
「…信じられません」
「何、ちょっとした出来心だ」
「……行動は選んで下さい、できたら常識と照らし合わせて」
貴方にそんな物があるのかは知りませんけれど―と、一つ俺を睨む。
「…申し訳ない」
食堂。
そこの染みで汚れた机に、頭を垂れた。
元々の彼女の目的は、此処だったらしい。
…まあ、赤城が出かけられる場所なんて此処くらいか。
「……お詫びといっちゃあ何だが、好きな物を食ってくれ」
「………当然です、足りない位です」
「…うむ」
乙女心を弄んだ罰としては足りないだろう、明らかに。
しかし…そも、俺と同年代、既に成人を迎えて数年という女性を乙女と評すのは――
「…………何か変な事を考えてませんか?」
「…とんでもない、ああ、注文をしてこよう」
何を食べる――と慣れない笑顔を作ってにこやかに聞く。
「…そうですね」
拠点近くにある食堂、そこはボリューム感のあるメニューで組織の人間に大人気である。
味はそこそこだが、訓練後に食べる食事としては最適だと。
赤城が、そのボリューミーな品が並ぶお品書きを縦断するように指でなぞった。
「……ん?迷っているのか?」
「いえ」
「ここから」
お品書きの一番上に、指を置く。
「ここまで」
それを、一気に下まで下ろす。
「………待て、嫌がらせをしたい気持ちはわかる、しかしな、食べ物を粗末に」
「…いえ?」
赤城が瞳をぱちくりとさせ、何言ってんだこいつという目で俺を見る。
「ちゃんと食べますよ、普段は中々お腹いっぱいに食べられる機会が無いもので…」
「……え、いや、でも」
「……奢ってくれるんですよね?」
「………・うむ」
それから。
俺は、初めて食卓が戦場になる光景を目にした。
…恐ろしいものだ。
これからは、怒らせないようにしておこう。
空になった財布を見て、一つ溜息を吐いた。
那珂、今日のお前の飯は抜きだ。
(赤城さん可愛い)
【第二章―長門】
『……ふむ、何故こんな事をした?』
縛り上げられ、体中ボロボロの俺の前で、尊大な態度の女が問う。
『…………』ペッ
地面に転がったまま、俺はそいつの足元に思いっきり唾を吐いた。
『…………ふむ』
『てめぇ!』
『ああ、やめろやめろ』
周りをぐるりと囲んだ男達が再び俺を殴ろうと詰め寄りかけて、その女に制され止まる。
『…しかし』
『良いさ、私に任せろ』
『……おい、お前』
『…………何だ』
声を出すだけでも痛む身体。
しかし、それでも弱みを見せぬように、女を睨んだまま精一杯の声を張る。
今にして思えば、それは滑稽な姿だっただろう。
『…名は?』
『…………』
『…む、聞こえなかったか?名は、なんというのだ?』
…答える必要など無い―とも思ったが、別に今更隠す意味も無いなと思い直し。
『……提督』
吐き捨てるように、自分の名を述べた。
『む、そうかそうか…ふむ、……よし、提督!』
その次に言った言葉を、俺はきっと一生忘れないだろうと思う。
『甘い物を食いに行くぞ!』
『……………は?』
変な格好の尊大な女は。
それが一番の解決策だとでも言うように、哀れな盗人に向かって笑ったのだった。
お付き合いいただきありがとうございました、ここまでです
向こうはすいません、空く時間が遅くなってしまったのと、少し書き直そうかとか考えてやっぱりやめたりしてたら滞ってしまいました
ちゃんと再開します
おつおつ
乙乙
(好きにしたら)ええんやで
どっちの更新も待ってます
(寧ろこっちがメインでも)いいんやで
おつでした
乙
演者とはいえヒロインやってる赤城さん可愛い
と思ってたらやっぱりいつもの赤城さんで安心した
乙
乙です
乙女の一面を見せる赤城さんかわいいな
乙です
「おい」
「…………んあ」
「……訓練場は昼寝をする場所ではない」
無遠慮な声で、意識が戻る。
薄く目を開いてみると、屋外の訓練場に降り注ぐ眩しい光が目に染みた。
声の主は、そんな俺を見て嘆息する。
「…何をやっているんだ、お前は」
「寝てた」
「…見ればわかる、締りがない、と言いたいんだ」
偶然か、はたまた何かの思し召しか。
俺を起こしたのは、先程まで夢に見ていた人間…じゃない、艦娘。
変な格好の尊大な女。
そいつは長い髪を風に靡かせながら、俺の側に立っていた。
短いスカートも一緒に靡いているので見たくもない物まで見せられている。なんとかして欲しい。
「……んしょ…っと」
とりあえず立ち上がってみる。いい天気だ、そろそろ夏も終わりだろうか。
そんな時、覚醒し始めた意識の隅で、ある事に気付く。
「…長門」
「うん?」
「……腹減った」
「………………」
腹を指して宣言してみると、長門は苦い顔を更に苦くした。
「……どれだけ自由なんだ、お前は」
「お前ほどじゃない」
「……はぁ…まあいい、丁度私も腹が減っていたからな」
「何だ、お前も来るのか?」
「…そうでなければ、お前は何を思ってさっきの話を私に振ったんだ」
「いや、ただの宣言だったんだが」
「………お前は……とりあえず、食堂にでも行くぞ」
「…いや」
「……ん?」
「……甘味処に行きたい」
「…甘味処?」
「ああ……」
夢で見たから、という訳ではないが。
何となく、そんな気分だった。
それに、長門は少し怪訝そうな顔を作り。
「…まあ、よかろう」
と、頷いたのであった。
こっちかー
「あみゃいもにょはにょいな、にゃなり」
「………食うか喋るかどちらかにしろ、聞き取れん」
少なくとも大和語では無いであろう言葉を喋りる長門。
その口内には、頬が膨れるほどの甘味。
こいつはハムスターでも目指しているのだろうか。
「……んぐ…あむ……うむ、甘い物は良いな、やはり」
「…ああ、そうだな」
「ふ…こうしていると、お前と初めて会った時の事を思い出すよ」
「……そうだな」
「あの時はこうして肩を並べて戦うことになるなど、思いもしなかった」
何処か懐かしそうに言う。
奇しくも、長門も俺と同じような事を考えていたようだ。
中々嫌な偶然だ。
「俺だって、こんな風に命かけて戦うなんて思ってもみなかったさ」
黒文字の先に刺さった羊羹を口に運ぶ。
程良い甘さが舌の上に広がる。美味い。
「……なあ、ずっと聞きたかったんだ」
「…むぐ……ひょっひょまっひぇふれ……ごくん、何だ?」
相変わらずハムスター魂溢れる長門の嚥下を待って、続ける。
「何故、お前は俺を殺さなかったんだ?」
「……む?」
―あの夢の、少し前の話。
俺は、反乱軍―と言っても、当時はまだ正直賊と変わりないような集団だったのだが―の食料庫から食料を盗んだ。
それが見つかり、あのようにして長門の前に引き出されたのだ。
…そもそも見つかったのは、欲をかいて大量に持って行こうとしたからなのだが。
大戦が終わって、佐世保の虐殺の直後の九州は荒れに荒れていて、食料を手に入れるのすら一苦労という有り様。
そんな中で、食料泥棒と言えば重罪。例え相手が賊であろうとも、いや、賊であるからこそ、その場で殺されたとて文句は言えないほどの罪だった。
「……だっつーのにさ、お前、飯まで―まあ、甘味だったけどよ、食わせてくれたろ?」
「…ふむ……そうだな…別に、お前という個人に特段何かの感情を抱いていたという訳ではない、というのはまず言わせて欲しい」
「それは何となく理解してるさ、お前の態度を見ればな」
「……そうか、ならいい」
本題に入る前の箸休め、とでも言わんばかりに。
先程注文したばかりの丸々一本の羊羹を黒文字で半分ばかりに切って、長門が一気に口に入れる。
…風情も何もあったもんじゃねえな、こりゃ。作った奴の気持ちも考えろよ。
それをゆっくり咀嚼し、飲み込んでから、彼女は口を開いた。
「……私はな、大和の為になると思って戦っていた」
甘そうな口を抹茶で流した長門が言う。
それは俺に向けての言葉というよりは、まるで懺悔のようだった。
「…ただ、この国を、人を、守りたくて」
「…………」
いつもとは明らかに違う重苦しい口調に、何も口を挟めない。
俺は黙って、彼女の独白を聞いていた。
「……太平洋で戦闘をしていた頃は、良かったんだ」
「…あの頃は…戦って敵を殺すだけだったからな」
「………わからなくなったのは、国に帰ってきてからだ」
「…各鎮守府の統括が挿げ替わって、利根や霧島が海軍省のトップになって」
「…あいつらは、大和を明け渡すと言い出した」
「…私は、勿論反対したさ、最後まで戦う以外に道は無い、とな」
「そして、それに賛同する者も大勢居て…」
「……考えなおしてくれると思っていたんだ」
「…まるであいつらは私達を反逆者のように扱うがな」
「佐世保に立て籠もった私達は、本気で海軍省に反目する気など無かったんだ」
「………なのに」
起こった事実は、一つだけ。
あの、大虐殺。
「…わからないよ、志を同じくして、この艤装に魂を捧げた筈の仲間だったのに」
「……そして…結局、大戦は終わり…私は、この大和を守れなかった」
「…大和は、誇り高き美しき国は、見る影も無い程に荒れ果ててしまった」
「……それでも、他の生き残り達に声を掛けて」
やっとこさ反乱軍を結成したんだ、と、そこまで言ってから、長門が茶を啜る。
「…………それがやっと形になり始めた時―お前に会ってな、思ったんだ」
「……これが、私が守れなかった者か、と」
「…守れなかった者?」
「……ああ、あの時のお前はまるで、荒れ果てた大和そのものに見えたんだ」
「…痩せこけて、貧しくて…それでも尚、必死で生きようとしている姿が…私が守るべきで、守れなかったそれに重なった」
「……だから…あの時お前を助けたのは、自己満足で、ただの独善だ」
「…………ただ、私の心を誤魔化しただけに過ぎない」
「………長門」
「…すまないな、長々と…それも、甘い物を食いながら話す様なものじゃない話を」
「……軽蔑したか?」
「……いや」
ふっ、と自嘲気味に笑う長門に、俺は――
>>+2
A.…どんな理由だったとしても、俺は助かったんだ。
B.…別に、最初から期待もしてなかったさ。
A
A
A.…どんな理由だったとしても、俺は助かったんだ。(―長門好感度+1)
「……例え、どんな理由だったとしても」
「…む?」
「…俺は助かって、こうして生きている」
「それだけで、俺にとっては十分だ」
茶を啜る。
長門は俺の言葉の意味を少し考えて、おお、と目を丸くした。
「……お前が人に気を遣うなど、似合わんな」
「…遣ってねーさ、本当に思ってるんだよ」
「お前に助けられなかったら…死んでただろうからな、あの場じゃなくても…いつか近いうちにさ」
「……ふむ…まあ、…そうかもな」
「というかな」
「…うん?」
「はっきり言って、お前の心の中なんてどうでも良い」
「…………おい」
「俺にとって重要なのは、助かったということだけだ」
「……」
「…だから…感謝してるよ、お前には」
「………くくっ」
やや間を置いて、長門が喉を鳴らして笑う。
「素直じゃないな、提督」
「……うるせぇよ」
そんな長門から視線を外して。
先程彼女が分断した羊羹の切れ端を、乱暴に口に運んだのだった。
好感度
那珂 ★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
「鹿屋が落ちたのう」
「…そうですね」
横須賀鎮守府の、その会議室の円卓に足を乗せた利根が、さもどうでも良い事のように言う。
普段は四大鎮守府統括+妹の五人が揃う会議室には、利根と、その言葉に頷く翔鶴しかいない。
「ま、そらそうじゃろうよ、長門にあの戦力で対抗できるはずもなし」
「……そうでしょうね」
「しかし…やはり奴ら、赤城を手に入れたらすぐに動き出したのう」
「…あの場で何としても止めておくべきでしたね」
「今それを言うても始まらんよ、翔鶴」
誤算だったのはあの若造と扶桑姉妹じゃな―と、苦笑する。
「…長門さんが想像以上に強かったのですから、仕方ないかと」
「にしても……ふぅ、自分で言った通り今更振り返っても詮無きことじゃな」
利根が円卓に乗せた足を組み替え、窓から広がる空へと視線を移す。
「……まあ、良い」
「あ奴らは呉から東へ反乱軍を進めさせさえしなければ、それだけで十分じゃ」
「…連合との戦い、そして――『アレ』の復活のために、の」
「……私は…未だ半信半疑なのですけれどね」
「はっは、吾輩もじゃ」
「…霧島さんを、信じて良いのでしょうか」
「信じるしかないじゃろ、どの道他に方法など無いわ」
「……各鎮守府の戦力も再び整い始めた今、何もそんな不確定な物に頼らずとも」
「…勝てんよ、絶対に」
「え?」
視線は外へやったまま、翔鶴へ声だけを向けて、利根が答える。
それは普段の呑気な声よりも、少し低い物だった。
「…確かに正面からぶつかれば、簡単にとは行かんが…駐留軍くらいなら追い出せるじゃろうの」
「……じゃが、連合は、この大和の地で戦うのならばそれこそ何だってするじゃろう、何でも―の」
「奴らが欲しておるのは民ではなく、土地じゃ…いっそ、今いる人間など居なくなってしまった方が都合が良いくらいじゃろうな」
戦いの後に残る物は、さぞかし凄惨な光景じゃろうよ、と。
外に向けた視線を翔鶴に戻して、言った。
「………そうですか」
「ああ、奴らは大和の国民の事など何とも思っておらんからの」
「…ま、だいたいどちらにせよ本国から来る大量の軍勢に押し潰されて終わりじゃて」
言い終わって、沈黙が流れる。
先にそれを破ったのは、翔鶴。
「…ねえ、利根さん…その…霧島さんが言う物はそんなに凄いのでしょうか?」
「うむ、話通りならの」
「……連合を一挙に打倒できる程に?」
「うむ、その為にわざわざ贋艦に細工まで施してあるのじゃ」
それに、と利根が前置きをして、呼吸を一つ挟む。
「…後戻りなど…今更出来んよ、翔鶴」
「あの時、佐世保で同胞を討った時からの」
「……そうですね…そう、ですよね」
その言葉に、翔鶴は真剣な表情をしたまま深く頷いた。
「大和――」
俯いたままで、翔鶴が漏らす。
自分達に残された希望の名前を。
「…くく、まさに国を護るに相応しい名の艦、じゃの」
可笑しそうに、利根が笑う。
『大和』。
彼女らが信じている、いや、信じるしか無い名前。
縋った希望。
「…さて、とりあえず…翔鶴よ」
「…はい」
「呉にお主の管轄下の空母部隊を派遣しておけ、扶桑は嫌がるかもしれんが…一応、の」
「…はい、諒解致しました」
「…全く、あの姉妹がもう少し信用できたら良いんじゃがなぁ」
もう一度窓を、そこから広がる横須賀の街並みを見て。
利根は大きく溜息を吐いたのであった。
ここまで、ありがとうございました
と、おまけというか設定
若葉(真艦・駆逐)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ★★
遠距離攻撃 ――
装甲防御力 ★
陸上機動力 ★★★★
空中機動力 ★★★★
水上機動力 ★★★★
兵装
対艦二刀(短)
一式重機関銃
六一cm三連装無誘導ロケット弾
密装
無拍子…文字通り、拍子の無い剣技。元々持っていた技術に本来の密装の効果である隠蔽効果を上乗せし、完璧な無の拍子を実現させた。しかしそもそも武術なんて物を欠片も知らない那珂ちゃんには無力だった。
解説
対人・対通常兵器を目標とされた艤装。
にも関わらず対艦娘相手にも高い戦闘力を誇るのは、偏に彼女の戦闘能力の高さ。
僻地に飛ばされていた理由は「扱いにくい」から。
大戦期、太平洋方面に配属されていた。
長門(真艦・戦艦)
近距離攻撃 ★★★★★★
中距離攻撃 ――
遠距離攻撃 ――
装甲防御力 ★★★★★
陸上機動力 ★★
空中機動力 ★★
水上機動力 ★★
兵装
四尺一寸大対艦刀・脇差
密装
???
解説
近付いて斬り殺す、ただそれだけのために設計された艤装。
威力十分の大太刀は、至近戦闘ではまさに圧倒的な攻撃力を誇る。
中遠戦闘では無力だが、多少の攻撃なら意に介さない程の装甲を持つため、目標に正面から堂々と接近することも比較的容易である。
一度接近を許せば、間違いなく殺される。
彼女と相対するのならば、そのくらいの認識を持って戦うべきであろう。
大戦に参加した艦娘で、佐世保鎮守府の虐殺にも抗戦派として参加、生き残る。
九州一帯で勢力を誇る義勇軍「第一空挺師団」のリーダー。
性格は温厚、そしてしょっちゅうドジを踏む。
どちらかと言えば変人に分類されるタイプ。
今度こそここまで
乙
長門さんの相棒ポジの安定感は流石といったところ
乙です
乙です
この長門さんギャグセンスといい、伊烏を思わせるな。密装とは別に魔剣を作り出すことにならないといいんだが。
名前忘れたけどイーッヒって笑う緑川ボイスのなんとかターンするくっそいいキャラしてたやつのポジションは誰になるのか気になる
築城基地。
佐世保無き今、九州の北部ほぼ全体を統べるべき場所。
その統括―阿賀野は、悩んでいた。
「……うー…どーしよどーしよ」
鹿屋の陥落という話は聞いた。
それに関わっているのが、あの「長門」だということも。
そしてその軍が、じきに此方へと牙を向けるだろうことも。
「…勝てないよねぇー」
常識的に考えて、だ。
あの戦艦にこの基地の戦力程度で勝てるはずもないということを、彼女は正確に把握していた。
しかし―
「……頭固いしー、ほんと嫌になっちゃうなぁ」
彼女が呉に送った使者は、援軍は出せないとただ一言だけ言い含められて帰ってきた。
加えて、反乱軍と交戦するような自体になった場合、全力で応戦せよ、とも。
「…………」
それを聞いた時、彼女の脳裏に浮かんだのは―
「…やっぱ、九州を捨てたのかなあ」
そう、この地を維持するメリットなど、殆ど海軍省にはない。
荒れ果てた土地、民衆―どれを取っても、むしろお荷物になるくらいだ。
しかし、流石にその土地を何もせずに引き渡したとなっては批判は免れない。
故に、鹿屋も築城も戦力を配備していないのは、海軍省も応戦しましたが敵いませんでした、というアピールをする為ではないか―
そんな思いが、彼女の心の隅にはあった。
「……捨て石、かぁ…変わんないなぁ、何も」
艦娘達がトップを乗っ取って、海軍省は変わってしまったと皆は言うが。
彼女に言わせれば、大戦の頃から何も変わっちゃいないのだ。
艦娘の戦力を過信してただ一騎を囮にし、深海棲艦の良い的になった同胞が居た。
深海棲艦の実力を頑として認めず、無茶な戦力差での戦闘を命じ続けた司令官も居た。
結局、昔から何も変わっちゃいない。
強いて言えば、その目標が、大陸への侵攻から大和の守備になったことくらいだ。
「…んー…さーって、どうしようかなー…ね、皆は―…」
下に向けていた顔を上げて、彼女が部屋を見回す。
酒匂、矢矧、能代――
共に戦った、かつて姉妹艦と呼ばれた戦友達。
「……はぁ」
当然、この築城基地の司令室には彼女、阿賀野以外の人間も艦娘もいない。
彼女は、少し寂しげに溜息を吐いた。
「………いない、んだよね、もう」
激戦の末、死んでいった彼女らの最期。
大戦末期に一人だけ大陸から太平洋への異動を命じられた阿賀野には、それすらも知ることは出来なかった。
阿賀野がそれを知ったのは、ただの紙切れ―戦死者、いや、損壊兵器名簿。
「……兵器」
それを見た時、彼女は空恐ろしい気持ちを覚えた。
自分は、自分達は兵器でしか無いのだと知った時に。
「元々、自分で選んだ道なのにね」
ふっ、と自嘲するように彼女は笑う。
そういう覚悟を持って艦娘になったくせに、やはり人間で有りたいと、生きたいと願う滑稽な自分に向けて。
「………皆なら、どう言うかな」
小さく言って、彼女は瞼を閉じ、耳を澄ませた。
その奥に浮かぶ声に耳を傾けるように。
『…阿賀野ねぇには、死んで欲しくないですから』
『…そうね、というか姉さんが居ても逆に邪魔ね、すぐ死んでしまいそうだわ』
『そうそう!むしろ酒匂達の邪魔だよねっ!』
彼女の瞳の奥に浮かんだ光景と、再生される声。
絶対に忘れないであろうその光景。
それは彼女が、姉妹艦達と最後に交わした言葉であった。
大陸から太平洋へと異動となる艦は、最初から決まっていたわけでなく。
あくまで、軽巡級1隻という条件だけだった。
日々連合の物量に押されて戦線を後退させていた大陸。
欧州連合の加盟国ではあるが、新興国家で英国の植民地のような扱いの米国を相手取る太平洋戦線。
どちらが楽であるかは、一目瞭然だった。
彼女らは―姉妹艦達は、姉を、阿賀野を無理矢理にその枠に入れて。
そのまま、大陸の防衛戦で死んだのだ。
「…………生かされたんだよね、阿賀野は」
ぽつりと、彼女はつぶやく。
「…なら、生きないとね、一生懸命」
「…滑稽でもさ、何でも良いから」
「よし、決めた」
彼女は、決意する。
醜くても良い、滑稽でも良い、それでも尚、生き続けることを。
「…長門さんに、降伏の文書を出さなきゃね」
彼女の行動は早い。
机の中から筆と紙を取り出し、手短に文を書いて、血印を押す。
後はこれを長門に届けるだけで、彼女の決意は実ることとなるだろう。
「……ふーん、そう、そうなのね」
―尤も、それは。
いつからそこに居たのかわからない、長髪の女と。
その横に立つ短髪の女に、もし聞かれてさえいなければ、だが。
「…え?」
「…ああ、見に来てよかったわ…というかよりによって部下の寝返りの場面に遭遇するなんて…不幸だわ…」
「ね、姉様!しっかりして下さい!」
「………ふ、扶桑様、山城様」
「……阿賀野…折角、戦力を持って援軍に来てあげたのに」
「…ち、違います、これは…!」
「…………その文章を持って、何よりの証拠と看做すわ、阿賀野」
「…あ」
「山城」
「はい、姉様」
「…この女を、地下に」
「……殺さないのですか?」
「…ええ、艤装まで失うのは惜しいもの、今の状況だと難しいけれど、反乱軍を押し返したらすぐに横須賀へ連れて行くわ」
「…なるほど」
委細諒解しました、と短髪の女が頷いて、阿賀野を拘束する。
その首に、しっかりと短刀を据えて。
「…………あーあ」
それに、阿賀野は諦めたように溜息を吐いた。
「……ごめんね、皆」
結局無駄にしちゃった―と。
そんな小さな呟きとともに。
さて、彼女の処遇は―――
>>+2
A.反乱軍の攻撃前に移送される。
B.反乱軍の攻撃後まで移送されずに地下に居る事となった。
b
B
阿賀野は人気投票1位になる系ヒロインだな
これはAだと阿賀野のあんな姿とかが見られたのだろうか
日シリ終わったら更新きますか?(小声)
魔剣の話をしよう
さて、何故この素晴らしいタイミングで不幸姉妹が築城基地に現れたか。
それを説明するには、時を少し遡る必要がある。
阿賀野が捕らえられるより数日前、呉鎮守府、司令官室。
姉妹は真剣な顔で向かい合っていた。
「……翔鶴さん―もとい舞鶴から空母部隊が?」
「…ええ、一個中隊程、しかも練度の高い人達を」
「………意図が…読めませんね、姉様」
「……ええ」
まずこの時点で姉妹の思考は間違っていた。
奇人変人策謀家謀略家だらけの海軍省にあって、翔鶴はかなりお人好し成分が強い。
故に利根の要請に従って部隊を送る際に折角だからと肝入りの高練度部隊を選び、機体の数まで結構に揃えたのであった。
勿論ここに他意は無い、呉の防衛に少しでも役立てば―そんな気持ちであった。
しかし。
その気持ちが届くことは無かったのであった。
「…監視のつもりかしら」
「…監視…って…何のためにですか!?」
「引き渡しの時、翔鶴さんが言っていたの」
―『九州の動きが活発ですから、万が一に備え部隊を駐留させておきます』
―『指揮権は預けますから、よろしくお願い致します』
―『……くれぐれも、ご用心なさるよう』
「……それは…」
「釘を刺された…のでしょうね、関門海峡以西の動きを放っていた事に」
またここでも誤解が発生していた。
本人としては全く正直な気持ちを述べているだけなのだが、完全に深読みされていた。
「だいたい…私の指揮能力を海軍省は前々から全く信頼していないのに、無償で部隊を預けるなんて真似するはずないわ」
「…では…姉様、やはり」
「ええ…私達の九州に対する対応を監視するため、でしょうね…おそらくは」
その言葉に神妙そうに頷く妹。
彼女らの間ではもうそういうことになってしまった。
マイナス思考の深読みとはげに恐ろしきものである。
…ただ、この思考に至らせたのには海軍省の取ってきた様々な行為が彼女らの脳裏に刻まれているからではあるのだが。
「……どう致しますか、姉様」
「北部…築城基地へ軍を出すわ、もう相手が攻める場所なんてあそこしか無いはずだから」
「…はっ」
こうして、海軍省にとって全く戦略的価値の無い築城基地へ、呉より少数の精鋭部隊が何故か出撃することとなる。
…以上が、事の次第であった。
余談ではあるが、この報告を聞いた利根は頭を抱えたという。
唐突に更新ハジマタ
ひゃあ!更新だぁ!待ってたぜ!
乙ー
「と、いうわけだ」
「………非常に理解が難しいのだが」
「うむ、私も今困惑している」
偵察から知らされた報。
曰く、築城基地を空母部隊が護衛している、と。
そして、それを束ねるのは。
四大鎮守府が総括の一人、扶桑と…その妹、山城。
「築城の司令官は与し易いとか言っていなかったか?」
「ああ、うん、そうだったんだが…そうだったんだよ、本当はな」
「…阿賀野―元々の司令官は保身的な人間、いや、艦娘だったからな、いくらでもやりようはあると思っていたのだ」
「だから犠牲も出ることはないだろうと思っていたのだが……うむ…」
偵察が見たのは、訓練された動きの空母部隊と、その先頭に立つ2隻の戦艦。
紛れも無く本物であった、らしい。
「…何の意味があるってんだ、あそこ守って?」
「知らん、むしろ私に教えてくれ」
「…そうだよなぁ、そうなるよな」
「…ああ、そうなるに決まっている」
はっきり言って、海軍省が九州を護る戦略的な意味―が見当たらない。
勿論、それは俺の狭小な視野による考えに基づいたものだから、海軍省様ともなればまた違った見方なのかもしれないが。
だが、本州の民衆の反抗にすら手を焼き、それを力で押さえつけ続けている海軍省。
そのとびきり反抗的な地域を護る意味など何処にある?
支配してもコストが増えるだけで、何ら利益を生み出すことは無い地域。
むしろ向こうにしてみれば喜んで切り捨ててしまいたいとすら思えるのだが。
…わからんものだ、お偉いさん方の考えは。
「…とにかく…じゃあ、落とせやしねーってことか?」
「無理だな、無理無理、あそこまで整った軍隊と事を構えれば、まず私達は死ぬ」
そもそもの話。
俺達第一空挺師団が生き残れてきたのは、この九州で旗揚げをしたからである。
確かに俺と長門は確かにかなりの戦力ではある。
だが、他の面子はまともに正面から訓練された正規軍と戦えなどしない。
一世代前―それも鹵獲品で、整備も不完全―の艤装、未熟な連携、正規の艦娘戦闘の経験の浅さ。
どれをとっても、海軍省に劣る。
それは、あの山口での奇襲が失敗した時の被害の大きさからしても明らかだ。
そんな俺達が生き残れてきたのは、九州―つまり、海軍省が半ば見捨てた地域だからである。
もしこれが本州ならば、海軍省の正規の鎮圧部隊によってすぐに壊滅させられていたことであろう。
鹿屋を攻めた時は楽勝だったが、アレに関してもまともに長門に傷を付けられる兵器が無かったというだけのことである。
敵がボロ軽巡と駆逐、そして―例外もおりはしたが―こんな場所に追いやられた士気の低い兵士達であったからこそのあの完勝だ。
つまり、何が言いたいかというと。
そんなまともな軍隊が出張ってきてしまえば、現存戦力で拠点を落とすことなど全く持って不可能であるということだ。
「……どうするんだよ」
半ば投げやりに問う。
正直詰んでいるとしか思えない。
いっそ大和国民として玉砕覚悟で突っ込むとか言い出さなけりゃいいんだが。
「…まあ、手がないわけではないが…うむ…ままならんものだ」
大きく長門が息を吐く。
これで九州を制圧して、赤城を旗印として正式に旗揚げをする―という計画は見事に失敗したわけである。
「……というかさぁ」
「む?」
「何で奴さん、防衛用の戦力持って築城に立て籠もってんだ?」
「…知らん」
「空母じゃなくて戦艦と軽重巡部隊でも連れてきて、俺達を殲滅すりゃいいんじゃねーか?」
「……知らん、私もそうは思うが奴らの考えなど知らん」
そう、おかしいのである。
呉から本気で部隊を動かすのならば、空母主体の防衛用の遠距離攻撃部隊ではなく、戦艦でも大量に連れてきてさっさと鹿屋まで攻め落としてしまえばいいのだ。
何も空母部隊を連れてきて、あまつさえ築城に籠もるなどとは愚策であるように思える。
あくまで前述のとおり俺の主観による考えではあるが。
…だが、とりあえずこれに関しては、向こうの頭に直接訊く以外に解消する方法がない。
今はこんな疑問は置いておいて話を進めるべきだろう。
「…で、手がないわけじゃねーっつーのは?」
「……急に軍隊が増えれば、それだけ色んな物の回りが増えるということだ」
「…あ?」
「食料だったり何だったり―まあ、今まで築城に搬入していた分だけではとても間に合わん」
「…まあ、そうだな」
軍隊は金食い虫だ。
それは戦闘していなくても―いや、むしろ戦闘していない時の彼らこそが最高に邪魔である。
彼らだって当然飯を食うし、兵器は必ず整備しなければならないし、実弾による訓練だって行う。
そこにいるだけで、莫大な金を食い尽くす。
具体的に言えば、今海軍省が軍に使っている金を民衆に回せば、大和国民が皆飢えをしのいで教育を受けて生きていけるくらいにはなるだろう。
何と無駄な金であろうか、軍事費。
「…それが一体どうしたってんだ?」
…が、それと今回の話と一体何の関係があるというのか。
全く繋がりが見えない。
「…うむ…正直、いい手とは言えんがな」
珍しくも語尾を濁しながら、長門が続ける。
「奴らが食料その他日用品などの搬入を依頼した商会の中に、私達がお世話になっている名前があってな」
「その商会のトラックのコンテナの中に入っておけば、勝手に築城の倉庫の中まで運んでくれるというのだ」
「…待て、おい、まさか」
「…食品コンテナの搬入、それもこんな急な仕事で、わざわざ電探使っての中身チェックなどは行うまいよ」
「中に入ってしまえば―後は頭を見つけて殺すだけ、うむ、簡単な仕事じゃないか」
はは、と乾いた笑みを浮かべる長門。
なるほど、言葉を濁すわけだ。
最高に向こう見ずで頭のおかしな作戦である。
今この場にはいないが、あの頭お花畑娘が聞いたら多分ブチ切れるくらいには。
……………。
………。
……。
>>+2
A.乗った。
B.……流石に…何か、別の考えは無いのか?
a
a
とりあえずこの辺まで
遅くてすまんな
おつおつ
乙です
乙です
この提督なら逡巡の余地なく突っ込んでくれるかなと思ってたけど那珂ちゃんとの交流で即事特攻しなくなったんか、それとも元々無茶はしても無理はしないタイプなんか
デスノボリじゃないといいな
乙です
俺が提督の奴とすげー似てるな
「…しかし」
「ん?」
「意外だったな、少し」
「何がだ?」
ゴトゴトと揺れるトラック、その幌で包まれた荷台の食料品と書かれたコンテナの中。
そこに、どう見たって食料には見えない俺達二人+那珂がいた。
「少し躊躇ったろ?」
「躊躇う?」
「ああ、この話を受ける時」
「…そりゃ…そうだろう、成功する確率は低い」
「……はて、お前はそんな事を気にするような奴だったか?」
「………はぁ」
何か含みを込めて、長門が俺に視線を向ける。
それに少しバツが悪くなり、視線を逸らして息を吐いた。
「…別に、考え方くらい変わるだろ」
「…ほう?」
「……言いたいことがあるならはっきりと言え」
「いやなに、そこのお嬢様を戦いに巻き込みたくない―なんて言い出さないだろうな、とな?」
「え!?那珂ちゃんっ!?」
「…んなわけあるか、ただ…」
「ただ?」
「ただっ!?」
聞き返したのは、二人。
ああくそ、無視すりゃ良かったこんな話。
「…どんな無謀な作戦でも、俺一人なら受ける、それは確かで、今も変わらん」
「むしろそっちの方がいい、とすら思うさ、だが」
那珂を見る。
彼女はキョトンとした様子で俺の視線を受けて、何が可笑しいのか笑顔を作った。
「なにっ?」
「…この馬鹿を巻き込んでしまうから、な」
「…ほう、死なせたくないと?」
「そういう―いや、そうだな、そうなる」
「俺が死んでも構わんが、それに巻き込まれてこいつが死ぬのは…何となく、嫌だ」
「…て、てーとく……」
…ああ恥ずかしい。
俺は何を言っているんだ、糞っ、そんな目でこっち見るなよ那珂。
「…ふはっ、変わった物だなぁ、随分と」
「うるさい、黙れ」
「はっはっは………だが、結局受けたんだな、お前は」
「…ああ、それは…この作戦について考えて…単純に、死ぬと思わなかっただけさ」
「…凄い自信だな、潜入するのは一応最新鋭の空母部隊が配備されている基地だぞ?」
「まあ…俺一人なら、そりゃ無謀ってもんだが」
「長門、お前がいるだろう?」
「…………は?」
視線を真っ直ぐに戻して、長門を見る。
こちらも俺の言葉を受けて、少し呆けた様子を見せた。
「…お前がいるんだ、死にやしねーさ」
「なんたって、俺はお前の戦いを、お前の凄さを、何年も前から見てる」
「だから、こいつがいりゃ多分大丈夫だって思ったんだよ」
「………不意打ちでそういうことを言うのはやめろ」
「…何だリーダー殿、照れたか?」
「…照れていない、仮にも元帝国海軍旗艦まで務めた身だ、賛辞などには慣れている」
「そう言う割には、耳が赤いが」
「っ!?」
バッと弾かれたように両手を耳に。
そんな長門を見て、思わず笑みが零れた。
「嘘だ、白いぞ」
「……貴様ぁ」
「…さて、元帝国海軍旗艦様は賛辞に慣れているのでは?」
「…ぬぐ…っ、…お、お前に褒められるのには慣れていない!」
「それが答えか、はて、こりゃ俺も案外捨てたものじゃないな」
「そ、そういう意味ではないっ!」
「…おいおい、今度は本当に顔が赤いぞ」
…長門に惚れられた―とか。
酷くぞっとしないのでやめて欲しい話である。
顔はともかく、性格と筋力と戦闘力が…どうにも、女というカテゴリに分類しにくい。
「…むーっ!」
「…って、お前もなにやってんだ」
「イチャイチャするなー!」
そんなやりとりを、さっきから頬を膨らまして眺めていた那珂。
目をやると、それを合図に不満を吐き出した。なんのこっちゃ。
「イチャイチャしてるように見えるか」
「…楽しそうだもん、提督」
「……それは…いや、否定せんが」
「…ほらほらほらー!那珂ちゃんといる時より楽しそうだもん!」
「…あのなあ」
一体どこに対抗意識を燃やしているんだこの頭ピンク色ボケナス艦娘は。
この前少し見直したのが悔やまれるぞ。
「提督は那珂ちゃんと長門さん、どっちが好きなのさ!」
「どうしてそんな話になる」
「どうしても!」
「…はぁ、おい長門、お前も何か」
「…ふむ、興味があるな」
「あぁ!?」
にんまり、まさにそんな笑顔で長門が答える。
…こ、このやろう。
一体何の意趣返しのつもりだ。
ちっ、さっきの事根に持ってやがるな。
「…ほら、言ってみろ、な?」
「…言えば満足するのか?」
「ああ、満足するさ、なぁ那珂?」
「うんうんっ」
こくこくと、此方は真剣な表情で頷く那珂。
…ああ、この場を一番早く収める方法は言ってしまう事、だろうな。
はぁ――――
>>+2
A.長門。
B.那珂。
A
b
B.那珂。(那珂好感度+1)
「……な」
「な!?」
「…那珂」
「…ほんとっ!?」
「……ほう」
ずいと身体を押し出す那珂。
なんか生温かい目でこっち見てる長門。
…何だこの針の筵は。
逃げ出したい、逃げ出したいがコンテナの中だし逃げ場がない。
……とりあえず顔を伏せてみた。
「えへへー、素直じゃないんだからー、てーとくっ」
「…あくまで比較してみたらだ、相対的にだぞ」
「…えへへー」
聞いてない。
この頭ピンク色の置物どうにかしてくれ。
「おい、流石にコンテナの中で盛るなよ」
「お前も何を言っているんだ」
「…ふっふ、誂ってくれた恨みだ」
「…………」
敵しかいねえ。
なんなら築城基地着く前に戦闘を開始してしまいそうだ。
そんな時、急にトラックの揺れが止まる。
そして、外が俄にガヤガヤと騒がしくなった。
「……ん、着いたか」
「…みたいだな、…ジッとしておくか…おい那珂、騒ぐなよ」
「はーいっ、えへへ」
「…ニヤけるな」
「むりー」
「………ちっ」
「別にそこまでして仲が良いのを隠さずともよかろうに」
「…隠してねえよ…と、…流石にそろそろ黙ったほうがいいな」
「……そうだな、…ふぅ」
作業員らしき人間の声が近くなり、やっと俺達は口を閉じた。
…なんとも。
命を掛けた作戦の前だというのに、締まらん物だ。
珍しくこっちのスレの更新か
那珂ちゃんカワイイヤッター
食品コンテナは無事に納入され、俺達はクレーンに吊り上げられて宙を漂うという貴重な体験をした。
物凄くぶらぶらするのね、あれ。
そしてそれからしばらく経ち、倉庫の人の気配も消えた。
それを見計らって、長門が声を掛ける。
「……そろそろ、か」
「…艤装は装備しておくか?」
「…いや、要らない」
「…要らない?」
「ああ、…この見取り図を見てくれ」
言って、広げたのは築城基地の見取り図。
…こんなもんまで手に入れてたのか。
「商会の人間らしく、手回しも良かったのさ」
「…そりゃ、いい味方を持ったもんだ―で?」
「うむ…この築城基地には、割と広めの通気口がある」
「…へえ?」
「その上物凄く排熱を意識しているようでな、非常に微細に張り巡らされているのだ」
「諒解、それを通っていきゃいいんだな」
「ああ、理解が早くて助かる―と言っても、流石に誰にでもわかるか」
「…どうだかね?」
「な、何で那珂ちゃん見るの!?わかったからね!?」
「ははっ…ああいや、すまないな、脱線してしまった…さて」
「この築城基地の居住空間は、基本的に地下だ」
長門が地図の一点を指す。
「居住区」と書かれた部分だ。
「私は此処の、上級士官用の部屋へ侵入しようと思う」
「…私『は』?」
「ああ、提督は―こっちだ、司令室を頼む」
と、今度は最上階の一点を指す。
「…ちょっと待て、別れると危険じゃないか?」
「大丈夫だ、これに関しては居場所を確かめるだけだ」
「もし扶桑山城、そのどちらかが居たら合図を飛ばしてくれ、襲うのは二人でだ」
「…少しでも時間を短くさせたい、その為にはできればすれ違いなどは避けたいからな」
「…諒解した…つっても、合図をどう飛ばす?無電なんて飛ばしたらこっちの基地の装置に引っかかるぞ?」
「ああ、引っかかっていいような内容にしろ」
「…そうだな、『本日モ周辺警備ニ異常ナシ 710』で」
「引っかかっても、それに異常を感じさせなければ逆探には至らんだろうからな、もうとことんオープンに飛ばしてやれ」
「……ああ、だが…710ってなんだ?」
ふ、と長門が笑う。
そして、俺に指を突きつけた。
「私の名前だ」
そのまま、ドヤ顔でそう言った。
凄くどうでも良かった。
「…何だ、反応が薄いな」
「…よし、わかった、それじゃあ行くぞ、那珂」
「ほいさっさ!」
「待て、7が10で長門だぞ!?わかっているのか!?」
「…長門、武運を祈るよ、死ぬんじゃねえぞ」
「………ぐぅ…ああ、わかったよ、お前もな」
「…そうだ、もし見つかったら―戦っていいぞ、その時は私もそっちへ行く」
「…あ?いや、その時は逃げろよ、何も死ぬ為に戦う必要なんざねえだろ」
合図を出す前に見つかるということは、すなわちほぼ死亡ということである。
だったらその時は、片方だけでも逃げるべきだろうに。
「逃げるなんて真似はしない、それは私の誇りだ」
「……まーた誇りか」
胸を張って言った長門。
それにあの時の若葉が重なって、少しだけ嫌になった。
…誇りなんて言葉は、どうにも好きになれない。
「…ふん、まあ逆の立場になったらお前は逃げろ」
「言われなくてもそうさせてもらうさ…じゃあな」
「ああ」
コンテナを出て、それを踏み台に倉庫の天井の通気口の網を外す。
埃臭い空気が、一気に漂ってきた。
軽く咳き込みながら頭を入れると、なるほど図面通り人が悠々通れるほどには広い。
この基地を設計した奴は、どれだけ換気が好きなのだろうか。
「…これ、通るの?」
「嫌なら廊下を通っていいぞ、その代わり死ぬがな」
「…うげー…」
那珂がしぶしぶといった様子で俺の手を取る。
しかし、通気口まで引き上げてやると、それをすぐ笑みへと変えた。
「…何だ」
「…んー…いやー、なんか、こういうのもいいなーって」
「どこかだよ、一歩間違えたら死ぬぞ」
「…わかんない、てーとくと一緒だから、いいの」
「………」
…知らんもう。無視無視。
あー待ってよーと後ろで言う那珂を置いて、俺は通気口を進み始めたのだった。
ホントここの那珂ちゃんかわいいかわいい
いくら広かろうが通気口は通気口、人が通る道ではない。
進み始めて僅かも経たぬ内に、それを思い知った。
食品倉庫は1F、まだまだ最上階は遠い。
「上、どうやって登るの?」
「エレベーターのロープ伝いにだ」
幸い、図面によれば通気口はエレベーターの昇降口にまで通じている。
エレベーターの昇降にだけ気をつけて、そのロープを伝って昇り降りすればいい、というわけだ。
なんとも俺達にとって親切設計であることか。
…というか、もしかしたらこの基地、脱出用かなんかに備えて通気口を作ってんじゃねえかって気がしてきた。
いくらなんでもあまりにも都合が良すぎる。
…ま、そりゃこっちにとっちゃいいことだけどね、奴さんが逃げ出す用事もなかろうし。
……しかし、だとすると間抜けな話だ。
脱出用の通路を使って侵入されるとは、まさに策士策に溺れる。
「…てーとく、すとっぷ」
なんてことを考えていると、那珂が俺の服を引っ張った。
ん、と動きを止めると、目の前の金網の下を通る影。
どうやら、さっきの作業員のようだ。
彼は急いで基地の廊下を駆けて行き、俺達には全く気づいた様子も無かった。
「………ありがとよ」
「どーいたしましてっ」
もし那珂の静止無くあのまま進んでいたら、ちょうど金網の上に身体を乗せることになっていた。
見つかる可能性はそれでも少なかっただろう、けれど。
と、那珂を見る。
「…?」
まさかこいつに助けられるとはなぁ。
…いや、見方を変えれば、いつも助けて貰っているとも言えるか。
案外恩知らずなのかねえ、俺も。
「……那珂」
「…なーに?」
「…帰ったら、なんか甘いもんでも食わせてやるよ」
「………ほへっ?」
非常に驚いた顔で固まった那珂を置いて、俺はエレベーター昇降口へと身を滑り込ませた。
少し遅れる形で、那珂がそれに倣う。
「ね、さっきのどゆこと?ねえねえ」
「…エレベーター動かない内に登るぞ、ほら」
「ねーってばぁ」
…いつからかはわからんが。
俺はこいつを、ただの武器だとみなせなくなっているのだろう。
錆臭いエレベーターのロープに手を掛けたまま、溜息を吐いた。
確かに俺は変わったのかもしれないな、と。
気が付いたら毎回那珂ちゃんとイチャイチャしてる
とりあえずここまで、気が向いたら後でもうちょっと更新するかもしれないです
遅くてすいません、雑談スレのタイミング良すぎてビビった
おつ
もっとイチャイチャしてもいいのよ
乙
いいね
乙です
乙
長門さんも好きだぞ俺は
最上階、通気口。
手元の見取り図の写しと照らし合わせながら、司令室を目指していく。
流石にこの階層にもなると、歩いているのは軍人ばかり。
金網の下に見える影も、皆武装していた。
「…あんまり数はいないんだね、あと、やる気なさそー」
と、那珂が指さした先の兵士。
そいつはだらしない顔で欠伸をしながら、さも面倒くさそうに歩いていた。
「…だな、…まあ、こんな場所に連れて来られちゃあな」
「…そっか、そだよね」
あいつらだって人間だ。
そりゃこんな場所に連れて来られて反乱軍と戦え、などと言われれば嫌に決まっているだろう。
…そもそも、海軍省の軍人の中にも、佐世保の件について疑念を持っている者も多いのだ。
―同胞殺しの無差別虐殺。誇りとやらを重んじる帝国軍人にとって、それは恥ずべきことなのだから。
だが、彼らにも家族があり、生活がある。まさか海軍省に対して反旗を翻す事などは出来ない。
そんな奴らからすれば、どうしてもその出来事が付き纏う九州は、足を踏み入れることすら苦痛なのかもしれない。
「……あくまで想像に過ぎんが、な」
「……?」
「…何でもない、…そろそろ司令室の私室―居住スペースの方だな」
築城基地の司令室は豪華なもので、ちゃんと居住スペースまで付いていた。
尤も、これは見取り図に手書きで訂正が書き加えられていて、どうにも増築されたものらしい。
元々そこにあったであろう部屋は黒く塗りつぶされている。
…司令室の隣に私室を作るなど、誰の趣味なのだろうか。
まあ…いいか、別に重要でもなし。
とりあえず、まず司令室より先にそっちを覗いてみようと思い、足を向ける。
……近付くにつれ、水音が聞こえてきた。水道を使っているのか?
…とにかく、ビンゴだ、どうやらここには人がいるらしい。
「……てーとく、合図出す?」
「…待て、誰が居るか確認してからだ」
「…諒解っ」
…前にもまして慎重な足運びで、そろりそろりと近づいて行く。
辿り着いた金網の下から、響く水音。
それは……シャワー?…おいおい、なんだってこんなもんまで。
なるべく近付かないようにしながら、その金網の下へ目を凝らす。
…小さく見えた、痩身の裸体、長い黒髪。
間違いない、写真で見た扶桑だ。
「…お風呂中、だね……あんま見ちゃダメだよ?」
「何アホなこと言ってんだ、…とりあえず、合図送れ」
「…諒解っ」
こんな時間からこっち再度更新なのか(戦慄)
合図を出して、はて…と考える。
…今の扶桑は無防備だ、これ以上無いという程に。
だが、長門が此方に来るのを待っていれば…ダメだ、風呂を出てしまう。
今なら、やれる。
艤装を纏わなくても、金網から飛び降りて頸を切るだけでいい。
装甲は無い。刃を止める物は―無い。
「那珂、刀だけ出せ」
そう判断を下してからは、早かった。
「え?ちょ、てーとく?」
金網へと近づいていく。
…大丈夫だ、やることは単純。今なら、全く問題無くやれる。
金網は取り外し式ではなくて開閉式、勢い良く開けても下に落ちて音を立てることはない。
殺害から逃走までを頭の中でシュミレートして、頷く。
「ちょ、刀って何?」
「良いから、寄越せ」
手を後ろにやって、金網に足を掛ける。
…この手に刀が握られたその瞬間、これを蹴破って―頸を刎ねる。
そう思って足を踏み出した。
――が。
不幸だったのは、その金網が風呂場の水気に長い間晒されていたこと。
不幸だったのは、その金網が無理な増築で少し歪んでいたこと。
不幸だったのは、俺がその金網に全く注意を払っていなかったこと。
その錆びて歪んだ金網は、成人男性の体重などとても支えきれなかった。
手に刀が握られる前に―思い切り金網を踏み抜いて、そのままそれごと下に落ちていく。
「がっ!?」
瞬間、大音量が風呂場に響く。
「…な、……っ、誰、貴方は!?」
すぐに、シャワーを浴びていた扶桑が振り返る。
「――ふ、扶桑姉様っ!?」
さらに、その異常を察したらしい付き人までもが風呂場の扉を乱暴に開いた。
『…て、てーとく!』
『……那珂、隠れてろ』
通風口の中に那珂を置いたままにして、とりあえず女二人に視線を向ける。
扶桑は流石に異性に裸体を見られるのは厭だったのだろう、申し訳程度に身体を手で覆った。
付き人っぽい方は、俺に刀を向けて威嚇している。
…どうみても、俺は詰みだ。
――――――――
>>+2
A.…得意分野ではないが…とにかく、今は口を使うしか無い。
B.………戦うしか、無いな。
踏み台
とってたら、Aで
A
A.…得意分野ではないが…とにかく、今は口を使うしか無い。(生存)
…喋るしか無い。…というか喋らないともう今すぐあの付き人が刀を振り下ろしそうだ。
「……あー…すまない、少し、無礼な登場になった」
「…無礼なんて物じゃないわ!名乗りなさい!」
付き人の怒気を孕んだ叫び声が、俺へぶつかる。
…よかった、とりあえず話くらいは聞いてくれるようだ。
「…俺は…そう、丁、だな、丁度の丁と書いて、てい、と呼ばれている」
「名前なんて聞いてないわ、何者かを聞いているのよ!」
威嚇するように、付き人が大太刀を振り回す。
…思い返す。何か使えそうな情報を。
…説得力の有りそうな誤魔化しは…何か無いか?
せめて、時間さえ稼げればそれでいい。少しでも長い話が出来るようにすれば、それで。
「……俺は………利根殿の意向により遣わされた者だ」
「…利根、ですって?」
その名前を聞いた瞬間、扶桑の目の色と、付き人の声の感触が変わった。
「…ああ、少し手荒な侵入になってしまったが―何分秘匿訪問なのでな、申し訳ない」
「……と、利根が、何を…?…いったい、何を私達に…」
気付けば、身体を隠すのも忘れて扶桑はぶつぶつと何やらを呟いている。
…どうやら、効果は覿面のようだ。
「…丁、とやら」
「…はっ」
「……それは諒解したわ、…それで、用件は?」
付き人の口調が、先よりもかなり柔らかい。
……信じた、のか。
…まあ、ここまで無傷で気付かれずに入ってきたという事も、彼女たちを騙し得る一つの材料となったのかもしれない。
こんな芸当、海軍省側の人間でもなければ、普通は不可能だ。
「……今回の築城出兵の意図に付いてお聞きしたく」
「…っ!?」
…そして…この質問は、どちらかと言えば単純な俺の疑問に近い。
そう、この築城出兵には意図が見えない。
ここを守る意味など無いのに、何故か出された精鋭。
それはもしかしたら、彼女らの独断では無いかと―そう思ったのだ。
判断材料は、利根と交わした会話だけだが…あいつが少しでも咬んでいるならばきっと、これはしない。何となく、そんな確信めいたものを感じていた。
「……丁…さん」
「…はっ」
「詳しいお話は、応接室で致します…ので、せめて、服を着させて頂ければ、と」
「…は、諒解致しました」
…まさか、偽名とはいえ四大鎮守府総括に敬称付きで呼ばれる日が来るとは。
人生、何があるかわからないものだ。
そして―どうやら、俺はまだ生き延びることが出来るらしい。
ここまで
80行規制が恨めしい
乙乙
80行って割と多い気がしなくもないけど…
乙です
乙です
赤城といい扶桑といいラッキースケベしやすいな
あくしろよ
向こうだけでなくこっちの更新も待ってますよ
あと5日かな?
ぼくはこっちの方が好きです(半ギレ)
応接間、だろうか。
綺羅びやかに飾り付けられたその場所は、とても俺のような人間に似つかわしくない。
目の前には湯気とともに何とも高級そうな香りのする紅茶。
お茶請けには見慣れぬ洋菓子。
…いやはや、なんとも。
有り体に言って全く落ち着かない。
というか、怖い。
利根という名前を出しただけだぞ俺は。
なんだ、あいつの名前はVIP待遇券か何かなのか?
扶桑はめっちゃびくびくしながらこっちの顔色を窺っているし。
付き人―と思っていた彼女は、どうやらその妹の山城その人であった―は相変わらず、殺気立った目を向けていた。
『お菓子ー……』
『……何だこの状況は…』
『…阿賀野も理解能力が追いつかないー』
頭の中でバカと長門と多分バカの声が聞こえる。
最後の聞きなれない声、通信に割り込んできているあたり艦娘の物であるとは理解できるのだが、なぜ増えている。
真艦ってその辺で拾えるのか。
下二つはどちらかと言えば俺の台詞だぞ。
こっちをやるのか
「…あー…」
「……っ」
どうせ考えても答えは出なかろうし、とりあえず一先ず上のは置いといてなんか言おう。
声と共に視線を向けたところで、扶桑が大きく視線を逸らした。
…打たれ弱いぞ、打たれ弱すぎるぞこの子。
「………とりあえず、先程の質問に答えて頂けると」
「え、ええ…質問、そう、質問よね」
―幸いなのですが、続けようとした言葉は、食い気味の返答によって遮られた。そこまで焦らんでも。
姉様、と足を踏み出しかけた妹を手で遮り、頭を抱えながらも扶桑は言葉を考えている。
しかし、ふむ…こうなるとやはり、この出兵は彼女達の個人的な都合で起こされたもの、なのだろうか。
少なくとも、上からの命令であるという線は無い。
そうだったら俺は風呂を覗いてその上金網から落ちたアホなのぞき魔として即処断されていたはずだ。
「……………」
「…え………と、そう、あの…ええ」
さて、いつまで経っても言葉が発されることは無い。
あーとかうーとか唸る声は聞こえるのだが、それだけだ。
これじゃどうにもキリがないな。
>>+2
A.これ見よがしに溜息を吐いてみる。
B.…責めにきた訳じゃない、ゆっくりでいい。
b
A
A.これ見よがしに溜息を吐いてみる。(変化なし)
「はぁ…」
「………っ、は、え、あの…その、えー」
めっちゃ大きく溜息を吐く。
それは思惑通りの効果を発揮した様子で、扶桑はもう一度頭を抱えた。
しかもさっきより怯えている。
「……………貴方…ッ」
妹は更に眼光鋭く睨みつける。
それに余裕の笑みなど流してやれば、腰の刀を今にも握らんばかりに形相を歪めた。
しかし当然俺に手を出すわけにもいかないので、彼女が出来るのは剛力を籠めて自らの拳を握るのみ。
…なんか、自分が偉くなったみたいで楽しいな。
さてさてそんなアホなことを考えていた、その時だった。
思うに、返答がないならないでとりあえず帰ってやればよかったのだろう。
元々、見つかった時点で逃げることが目的に変わったのだから。
いや、まさに後悔先に立たず。
少し言い争うような声が応接室の扉の前でしている、と顔を向けるのと。
「扶桑!山城!お主ら――」
元気の良さそうな影が扉を蹴り開けたのは、ほぼ同時だったのだ。
「……む?」
姉妹がその影を見て、次いで俺を見た。
影も、俺を見た。
ツインテールに際どい服、今しがた入って来た彼女を俺は知らない。
けれど、声は確かに聞き覚えがあった。
「……かっか、なんじゃ、面白いことになっておるの」
大湊鎮守府統括―利根。
殊更に楽しそうな声は、まさにあの時と同じものだった。
危うく落とされるところだった
長らく放置していて申し訳ありませんでした
途中投稿してしまった
とりあえずここまで、続きは早めに
乙
一旦乙です
ってか提督ピンチだな
大丈夫、幸運の女神、那珂ちゃんが提督にはついているから
乙
俺はこっちのスレの方が好きだな
乙です
おつー
「…利根」
「おう、久しいの、若造」
「…で、この面白そうな状況は何じゃ?」
部屋の中、俺と扶桑姉妹を交互に見つつ、笑う。
それは怒り半分で笑みを浮かべているとかではなく、思わぬ面白いものを見つけたと―そんな楽しげな物だった。
「…ちょっと来い」
「ふむ、内緒話か」
間違っても扶桑姉妹に聞かれてはならないと、部屋の隅へ利根の手を引く。
そんな間もやはり利根は楽しそうに笑っていて、俺にされるがままに身体を預けていた。
「……いや、あのな」
「うむ」
「…少し長い話になるんだが」
「うむうむ」
「……なあ」
「む?」
「……なんで襲ってこない?」
「…む?襲って欲しいのか?」
「や、そういうわけじゃないが」
「かっか、吾輩とお主はそういう仲では無かったろうに、エロいの、若造は、このこの」
ぐりぐり。
肘を腹に入れてくる。
そういう意味じゃない。
しかし……なんだろう、この距離で見ると…この化物、案外可愛いぞ?
内緒話をする必然として、身体は密着することになる。
その、俺の身体にすっぽりと収まるほどの体躯。
近くで見れば、非常に整った端正な顔。
今まで声しか聞いた事が無かったが――
『あーーーーーーーーっ!!!!!』
「………っ…!?」
『こらーー!なにやむぐっ!?』
『馬鹿!バレる!騒ぐな!馬鹿!』
そんな思考を遮ったというかぶち壊したのは、めちゃくちゃな大音声。
衝撃や痛みに慣れていると自負する俺でも流石に堪えて、思わず頭を抱えた。
今日はコッチか珍しい
「……なんじゃ、そんなに嫌じゃったか」
「……そういうことにしといてくれ」
「………ふん、まあよいわ」
つまらなそうに鼻を鳴らす利根。
…まあ、この状況であんな事を考える俺にも非はある、か、今回は。
勿論何を言ったところであいつが頭お花畑なのは譲れないラインだ。
「…それで、なんで襲わぬのか…じゃったか」
「ああ、お前、俺がやるような事なら大抵想像はつくだろう」
「暗殺しに来たら失敗した、くらいは何となく予想できるがの、そっからどうやったら仲良くお茶出来るのかは謎じゃ」
「…………色々あったんだよ」
お前の名前を借りました、ならともかく。
金網踏み外してお風呂場に丸腰で落ちました。
…というのは流石に言えない。
その言葉に込められた触れないでくれという含みを感じ取ったか、はたまた単にどうでもいいと思ったか。
利根は少し、表情の色を変えた。
楽しげな微笑を、鋭い物へと。
「……お主、真艦の仕手―提督という物の貴重さを知っておるか?」
「は?……いや、そんなにはいないんだろうけど」
「そうか、知らんか」
そうじゃろうの―と視線を外して、間を挟む。
そして、また笑った。
「お主だけじゃ」
「……は?」
言葉の内容に思わず目を丸くしたのも、無理なからぬことであろう。
意味はわかるのだが、それを理解することが敵わなかった。
「少なくとも、吾輩が知る限り、大戦でかの山本大将が戦死してからは、大和で仕手は生まれておらぬ」
「………待て、そんなに貴重だったのか?」
「そりゃそうじゃろ、真艦と仕手は、本当に相性が良い者同士で、その上仕手が一定以上の能力を携えてなければ務まらんのよ」
「逆に言えば、そうでない場合はただお互いに足を引っ張り合うだけなのじゃ」
「考えてもみよ、自立思考出来る兵器を人が動かすとは、これは頭が2つあるようなものじゃぞ?」
上手く動く筈もない―当然であるとばかり、利根が言う。
「…アイツは…俺の言う事を聞くが」
「うむ、それが艦を御す、という事じゃ」
「その人艦一体の動きが出来てこそ、初めて艦娘と仕手は、艦娘単体を凌ぐ力を発揮する」
「…大和が大戦に負けたのも…その部分が大きかろうの、艦娘が発展、進化していくに連れ、反比例して寄り添える仕手は貴重になっていった」
誰でも扱える深海棲艦―ないしは今の大和での主流である贋艦―に比べて、汎用性が低すぎたのじゃ、と。
何処か遠くを見つめるように、彼女は言った。
「……気付いていないようじゃが、お主はかなり特別じゃぞ?」
「…特別って、何だそりゃ」
「そのままの意味よ―恐ろしく艦娘と馴染みおる、そう、相手が誰であってもの」
誰であっても。
それが裏腹に那珂じゃなくても良い、と言われているような気がして、無意識に表情が険しくなった。
「怖い顔をするな、今のお主の相棒を貶める気は無いわ」
「………いや、別に、気のせいだろう」
「意地をはらんでもよかろうに、と―何の話じゃったか」
そこで一呼吸挟んで、ぽん、と手を叩く。
「おお、そうそう、お主を襲う襲わないという話じゃったのう」
「いやいや、随分脱線してしまったの…」
「…ああ、まあ、貴重な話を聞けてありがたくはあるが」
と言えば、何故か利根は可笑しそうに目を細める。
どうしたと目配せを送れば、案外律儀なんじゃの、などと緊張感の無い事を言い出した。
そこで、こほんと咳払い。
閑話休題、ということらしい。
「吾輩は、お主を評価しておるのじゃ」
「……評価?」
「うむ、仕手であるということも、その戦闘力も」
そして何より―と、際どい衣装の腹の部分を捲る。
また通信にえらくうるさい大音量のノイズが入った気がしたが、もう気にしない。
「お主には、借りがあるからの」
見方によってはまるで男を誘っているかのようなその仕草とは裏腹に、どこまでも鋭いのは視線。
見せた笑みは、猛々しく。
それは確かに、男を誘っているには違いないのだろう。
尤も、頭に戦場へ―という枕詞が必要だが。
「こんな場所で戦うなど、愚かしい」
「我輩達には、もっと良い死に場所がある、と……そう思うじゃろ?」
「……知らんな」
「ふむ、冷たいの、少し丸くなったのではないか、お主」
「………知らんな」
「かかっ、艦娘の娘御に御されでもしたかの?」
「…………」
「……図星か」
「…うるさい」
「かかかっ、まあ、その刃まで曇らせることなきようにな…でないと」
元々近かった顔、その距離を一層詰めた。
利根の顔が、触れ合うほどの眼前に。
「直ぐに殺してしまうから、の?」
手応えのある獲物を見つけて嬉しそうに微笑む、猛禽の笑み。
それに反応したか、身体の奥で何か揺さぶられるような感覚があった。
「…なるほど、気をつけよう」
那珂と近しくなる中で、いつの間にか薄れていた感情。
そいつが、胸でふつふつと湧く。
自然と漏れた笑みに、利根は満足気に頷いた。
「うむ、それでこそ若造じゃの」
「ま、どうしても怖かったら、吾輩の仕手になることでも考えておくのじゃな」
「なんだそりゃ」
「そのままの意味じゃよ、されば戦う意味も無くなる、共に強くなろうぞ?…とな」
獰猛は一転、悪戯っぽい笑み。
どうにも掴み所の無い奴だ――――
>>+2
A.おうおう、考えとくよ。
B.アホか。
A
B
どっちでも面白そうなのが困る
こっちもかなり好きだから更新きて嬉しい
B.アホか。(那珂好感度+1)
「……アホか」
「冷たいのう」
『……………ふっ…』
ああ、今なんか頭の中でお花畑のドヤ顔が見えた。
というかやったら勝ち誇った声が聞こえた。
だけどまあ…俺の相棒は、あいつだけだ。
そりゃ多少、どころか結構お花畑だけれど。
例え他の艦娘にも適合できる適性があると言われたところで、それを変えたいとは思わない。
「俺は、あいつの仕手だ」
「そうかそうか、うむ」
『…………えへへー…』
「……深い意味は無いぞ」
「…なんじゃ、深い意味って」
「…お前には言ってない、利根」
「………たまにわからん奴じゃの、お主」
那珂ちゃん可愛いなあ
「…ま、吾輩はお主との戦闘を楽しめれば十分、それ以上は望まんよ」
退屈な戦には飽きたと言わんばかりに、息を吐く。
そして同時に、だから退屈させてくれるなよという視線。
「…そういうわけで、この場は任せると良い」
「…いいのか?」
「良い良い、だいたい……多分、長門もおるじゃろ、今」
「……いるな」
バレているのなら、下手に隠す意味もなかろう―と。
物凄い正直に言ってみる。
どうせ慣れない腹芸なんてした所で効果は無い。
「…お主と長門、両方の相手をすれば、ここにいる翔鶴の虎の子の空母部隊が死ぬ」
「随分と高い評価を頂いているんだな」
「当然じゃ、吾輩に傷を付けるとはそういう事よ、心しておけ」
「…そうか」
「うむ…では、…次に会う時は、戦場で、な」
「精々死なんようにな、利根」
「……誰に向かって言っておるのじゃ、全く」
しょうがない奴じゃ、と言って笑った利根。
ふむ、やはりその顔は端正で。
なんてことを思ったら那珂のノイズがまたうるさくなった。
…本気で頭痛がしてきたのでそろそろ勘弁してくれ。
好感度
那珂 ★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
圧倒的ではないか!我らが那珂ちゃんは
―お暇な扶桑姉妹―
「……ね、姉様」
「…え、ええ、山城」
「…あの方、利根を引っ張って行きましたよ」
「…そ、そうね、…引っ張ったわね」
「……よ、呼び捨てでしたよ」
「…そ、そうね、…呼び捨てだったわね」
「……い、今…利根を抱き寄せましたよ」
「そ、そうね、…抱き寄せたわね」
「……も、もしかして…」
「「…凄く、大物なんじゃ…」」
この後も服を捲るのを見たりして顔色を変えまくったとか。
こいつら、実は結構ぽんこつ。
【第2章 長門? 終】
―読み飛ばしてくれていいよおまけ―
扶桑(真艦・航空戦艦)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ★★★
遠距離攻撃 ★★★★
装甲防御力 ★★★★
陸上機動力 ★★
空中機動力 ★
水上機動力 ★
兵装
対艦長弓・晴嵐
三尺一寸対艦刀・脇差
解説
海軍四大鎮守府の中で西方に位置する呉鎮守府のトップ。
元は長大な対艦刀を振るう戦艦艤装だったのだが、それを長弓に換装。
戦艦装甲を持ちながら遠距離攻撃を可能とする艤装へと生まれ変わった。
―と、カタログスペック的には好艤装なのだが、実情は少し違う。
厚い装甲により高速機動が不可能なため、一度接近されてしまうと再び弓の有効射程まで退く事が困難。
故に、長弓での攻撃は最初の数撃だけとなり、結局対艦刀での攻撃に切り替えられる事を強いられる場面が多い。
そして、その戦闘体型を取るのであれば、短くなった対艦刀では同じ戦艦には不利。
同じく、対空母戦闘でも向こうの方が機動力に優れるため、相手をうまく射程に捉えられず不利。
「何の為の換装だったのか」と囁かれる事も多く、本人はかなり気にしている。
と言っても当然そこらの艦に遅れを取るほどではないが、不幸にも海軍省上層部は基本的に化け物揃い。
適切にその艤装を扱う仕手が現れれば、彼女も輝ける時が来る―かもしれない。
人間形態でいつも空を見ては溜息を吐いているらしい。
また、その自信の無さからくる優柔不断さにより、指揮官としての能力は相当に低い。
ので、妹に指揮を押し付け―長門などは山城が姉だと未だに信じている。
山城(真艦・航空戦艦)
近距離攻撃 ★★★
中距離攻撃 ★★★
遠距離攻撃 ★★★★
装甲防御力 ★★★★
陸上機動力 ★
空中機動力 ★★
水上機動力 ★
兵装
対艦長弓・晴嵐
三尺一寸対艦刀・脇差
解説
海軍四大鎮守府、西方呉を統べる扶桑の妹。
やはり同じく航空戦艦艤装。
何よりも姉の力になることを目的として日々精進する。
四大鎮守府会議には、いつも姉の相談役として参加している。
もとい、そうじゃないと姉が発言できない。
こちらも溜息が多い。
基本的に軍の指揮権を姉に全て押し付けられている。
…大丈夫か呉鎮守府。
【幕間―休日】
「……おい」
「……俺は、あいつの仕手だ」
「…ふふっ、だってだってー!聞いちゃった聞いちゃったー!」
「……那珂」
「はーい!」
「…黙れ」
「…えー、照れたのー?」
「黙れ」
「…もー、提督ったら素直じゃないんだから、でもねでもね、那珂ちゃん的にはそんなところも」
「黙れ……」
「……あ、ちょっと本気で照れてる?」ケッテコナイネ
>>+1>>+2()内は小話サブタイトル、多くなってきたので2つ
A.那珂―(【ケッコンカッコカリ】伝説に迫る)
B.赤城―(お姫様、街歩き)
C.長門―(筋肉乙女)
D.扶桑―(……呉の街なんて行くんじゃなかった)
E.若葉―(手合わせ中に押し倒す格好になったとしてもそれはただの事故、らしい)
F.阿賀野―(わがまま生き残り)
>>+4(3章メイン)
赤城or扶桑(利根、山城)
A
F
扶桑
赤城
扶桑
好感度表とかいうもはや無意味と化した装置、相棒が神通さんだったらもっとイチャイチャ成分も少なかったのかもしれない(遠い目)
あと利根が扱い易すぎて困る
明日からお昼はこっち更新する 唐突に暇が訪れたもので
戦闘狂だしながもんやたけぞう、ぬいぬいも相棒としては良かったかもね
那珂ちゃんとの凸凹コンビも中々魅力的だけど
―【ケッコンカッコカリ】伝説
「【ケッコンカッコカリ】?」
「うんっ」
むふーと鼻息荒く頷く那珂の手元には、一冊の雑誌。
その雑誌の表紙には大きく「失われた技術!真艦と仕手を結ぶ絆―ケッコンカッコカリ―特集!」と書かれていた。
……ああ、お花畑のお話か。
「…………寝る」
「寝ないでよーっ!」
「………アホらしい」
「と、とにかく見てってば!」
―曰く。
ケッコンカッコカリとは、大戦中に帝国軍特殊科学部隊が生み出した技術。
それは、仕手と艦娘の絆を更に深める為の行為である。
だけでなく、具体的な効果として燃費の向上、性能の上昇等、艦娘にとっても良いことづくめ。
だが、ケッコンカッコカリを成すにはひたむきにお互いがお互いを想う心が必要とされる――
「寝る」
「まだ説明の途中だよ!?」
やっぱりお花畑の話だった。
耳を貸したことを後悔して、ベッドに転がり背を向ける。
「…だいたい、なんでそんな情報がその辺で売ってる雑誌に載ってるんだよ」
「ふふーん、【大和撫子月報】は情報通のたしなみだからねー」
「…………」
いやまあ、こんな場所にまで雑誌を卸しに来る帝国出版の努力は認める。
にしたって、流石にその記事を信じる馬鹿は――ああ、一人少なくとも此処にいたか。
情報操作能力というのはげに恐ろしき物である。
今度から俺達反乱軍もそういった路線で攻めることを考えて俺は目を閉じ――
「寝るなーっ!」
「………あー…、はいはい…」
わかったわかった、と一先ず那珂に向き直る。
那珂はケッコンカッコカリ特集のページを開いたまま唇を尖らせていた。
「……で、結婚が何だって」
「ケッコンカッコカリ!」
「……なんでカッコカリ」
「あのね――」
―再び曰く。
当初、仕手と艦娘の絆を表す言葉として、様々な候補が挙がったという。
その中でこれだと選ばれたのは、結婚という最も強い男女の結び付きを示す言葉。
しかし―軍部は考えた。
結婚と言っても、当時の仕手には妻子あるものも多く。
大和に残された彼女らの気持ち思えば、結婚、なんてものを安易に使うのは―と。
だけれど、だからと言ってそれを軽い物に変えた所で余計に邪推の要因となるし、まずもって艦娘との絆を示すには不適切であろう。
ならば、と鶴の一声を発したのは、大戦中期の海軍技術省局長、平賀譲氏。
「カッコカリを入れればよい!」と叫んだのはまさに晴天の霹靂、足下から鳥、窓から槍。
その素晴らしい提案には居合わせた皆、拍手で――――
「那珂、夕飯には起こせよ」
「だから寝るなー!」
「………だってさぁ」
もういかにも適当に考えた感出てるじゃん。
なんか一々突っ込むのもアホらしくなってきた。
もっかい身体を転がそうとして、那珂の真剣な目に気付く。
「……提督との、結び付き、言葉にしたいもん」
「あのな」
「…したいもん」
「…………わーったよ」
…どうせ、夕飯までやることもないのだ。
ならば少しくらい、お花畑に足を突っ込んでみるのだって…たまには、悪くない、と思う。
説明、続けろよ―と手で促してやると、那珂は簡単に顔を輝かせた
「う、うんっ!それでね――」
ケッコンカッコカリ。
それには、今では失われた旧大和帝国海軍の技術が不可欠、なのだそうだ。
一つ、「書類一式」と呼ばれる永劫の絆を誓う特殊用紙。
一つ、「ケッコン指輪」と呼ばれる艦娘の力を引き出す装飾品。
一つ、艦娘の非常に高い練度。
一つ、お互いを想う心。
この4つを揃え、初めてケッコンカッコカリは成立する。
「そうか、それじゃ無理だな」
失われた旧帝国の技術など、欧州連合が最も神経を使って管理している部分じゃないか。
やっぱり夕飯まで寝よう、そう思い、起こした身体をもっかい沈めかける。
が、これは得意顔の那珂に止められた。
「ふっふーん」
「なんだよ、…まさか、持ってるのか?」
もしやと思うが、こいつだって大戦末期の生き残り。
そういった軍機品を持っていても―いや、まさか。
そんな思考が堂々巡り。
それを打ち破ったのは、那珂がゴソゴソと取り出した指輪と書類。
「……お、お前…」
「…ふふんっ」
…先の話が本当ならば、永劫の絆云々はともかくとして、艦娘の性能上昇だとか燃費の向上だとか。
そういった効果がケッコンカッコカリにはあるらしい。
であれば、なぜこいつは今までそんな旧帝国の技術の粋を極めたような虎の子を隠していた――!?
「ちゃーんと、【大和撫子月報】は付録で付けてくれてたよー!」
「へぶっ」
思わずベッドから転げ落ちた。
間抜けな声が出たが、これも仕方なかろう。
期待させるだけさせといて、やはり情報操作に踊らされてるだけじゃねーか。
「…あ、あのな…那珂」
「準備万端だよ、てーとくっ」
もじもじと身体を揺らす。
今更恥ずかしがっているつもりらしい。
「…………」
こいつの頭、やはりどこまでいっても春色か。
それもせめて梅くらい控え目に咲けば良い物を、目立ちたがり屋の桜なもんだから質が悪い。
「……はぁ――」
「確かに、さ」
殊更に大きく吐きかけた溜息を遮ったのは、那珂の声。
先程とは打って変わって、何か真剣な調子だった。
「これは紛い物だって、那珂ちゃんにだってわかってるよ」
「……だったらどうして」
うん、と笑う。
「買う気も、無かったよ、最初」
「……これを読んでて、馬鹿みたいなお話だって思ってた」
「…でもね、素敵だとも思ったの」
「お互いを想う心が、更なる力を引き出す――って」
「だから、かな…つい、買っちゃった」
ごめんね、そう言って、舌を出す。
「後、てーとくとの結び付き、言葉にしたいってのも本当だよ」
「だって、また契約の破棄とか言われちゃかなわないもん」
「……那珂」
一気に早口でそうまくし立てて、またもじもじと。
今度は、本当に恥ずかしそうにしているようだった。
>>+2
A.…もっともらしい事を言ってもお前が騙された事実は消えないぞ。
B.…指輪、貸せ。
b
B
B
b
B.…指輪、貸せ。(那珂好感度+2)
「……指輪」
「…ほへ?」
「…指輪、貸せ」
「……あ、う、うん」
手に持った指輪を、恐る恐る俺に差し出す。
掌に落とされたそれは、なるほど付録らしい安っぽい作りの物だった。
「…安物だな」
「そだね」
「…でも、こんくらいの方が、俺達には丁度いいかもしれん」
「…提督?」
「こういう時は…左手の薬指、だっけか?」
「…え、…そ、そうだ、けど」
「手出せ、那珂」
「……え、えぇっ…!?」
おずおずと此方に向けられた手は、何故か小刻みに震えていた。
触れると、見た目相応に柔らかい感触がした。
「……永劫の絆、なんて誓う柄でもねーけどさ」
「あん時も言ったが、俺の艦娘はお前だけだ」
「お前の仕手も、俺だけだ」
「だから…一緒に生きよう」
「そんで、一緒に死のう」
「…まさに、死がふたりを分かつまで、ってな」
「………てーとく」
歯が浮くような、甘い台詞。
似合わない、と思った。
でもまあ、たまには良かろう。
そう、だって今、俺はお花畑の中なのだ。
普段は言えない台詞も、出てしまうというもの。
全部、こいつに影響されただけなのだから。
「…うん…うんっ!大切にする、大切にするねっ!」
「……ああ」
どん、強い衝撃が俺を襲う。
抱きしめられたと分かったのは、目の前の那珂の顔を見てからだった。
「……凄く、嬉しい」
「…ああ」
放り出された雑誌を見る。
ケッコンカッコカリ、か。
なんとも怪しげな記事だが―今は少しだけ、それに感謝した。
こんなことがなきゃ、絶対に言えなかったろうからな。
…しかし…。
「…真艦の仕手って俺だけなんだよな?」
「……らしいね?」
「じゃあ、この記事はどの層向けだ?」
「知らないの?艦娘と仕手っていう恋愛関係、皆憧れてるんだよ?」
「……………」
知らなかった。
好感度
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
※那珂ちゃんがなんかパワーアップしました
サツバツさんはどこに逝ったのか
ヒロインレースを10馬身くらいぶっちぎってる娘がいますね…
おやすみなさい
あまーい
乙
もっともっと那珂ちゃんを上げなきゃ(使命感)
それもこれも那珂ちゃんが可愛いのがアカンのや
乙
提督のヒロインは那珂ちゃん、はっきりわかんだね
乙乙
乙
那珂ちゃんかわいい
乙
これは那珂ちゃん以外選べませんわな
余談だが死が二人を分かつまでとか某スレの花言葉とかイッチの文というか言い回しが本当に好きだわ
乙
乙
イッチの那珂ちゃんほんとすき
乙
素晴らしいスレに出会ってしまった
確か好感度が10越えると専用ルートだっけ?
それとも共通ルート終わった段階で一番高かったらだっけ?
いったいあとどのくらいで共通ルートが終わるのだろうか
乙です
乙です
利根さん味方になってくれたらいいな
面白くなってきたのう・・・もう2パターンの主人公(海軍サイド・正義を望む学生)も時間ができたら見てみたい・・・ワシがつくればいいいのか
利根さん候補に入んないんですかね
魅力あるサブキャラが攻略出来ないのもある種のお約束やね
「剣を取れ」
「あ?」
それは唐突だった。
筋肉の鎧に纏われた―生物学上は一応―女が、訓練場で声を掛けてきたのは。
「那珂ならいねぇぞ」
「天龍型艤装と訓練用太刀で良かろう」
「…構わんが、何をそんなに怒ってる?」
女―長門は、やたらと目が鋭かった。
それとしっかりと目を合わせて、怒っている、というのは不適切だと理解する。
これは彼女が戦場にいる時の眼に近いだけだ。
「いや、ただ、お前は最近たるんでいる、と思ったのだ」
「……ふむ」
「考えてみれば思い当たることもあろう、しばらく訓練にも精を出してないんじゃないか?」
「……その通りだな、リーダー様」
何か反論することも出来たが。
以前と比べてたるんでいると言われれば、確かにそれは仰る通り。
那珂に構い過ぎた―というのは、言い訳か。
何にせよ、剣を久しく素振り以外で振るっていない気がする。
ふむ、これは長門の心遣いに感謝すべきであろう。
「お前と手合わせするのも久々だな、長門」
「…そう…だな、久々だ」
…ややあって。
全身を包む天龍型艤装に、刃を潰した訓練用太刀。
慣れない感覚に身を少しでも馴染ませるよう、対峙する前に身体を動かす。
「やっぱ、那珂の奴の使い心地は随分上等だな」
「言い方が厭らしい」
「そういう邪推をするな、素直な感想だよ」
「…まあ、私としては別に貴様らが何をしようが構わんがな…耽るなよ、とだけは」
「邪推をするなっつーに」
一際大きく、ぶん、と太刀を振り、正眼に構えた。
稲富流対艦刀術が基本の構え―雛芥子。
「……ふむ、準備は良いか?」
「見ての通り」
俺と長門の立ち合いということで、ぞろぞろと訓練場にいた兵士達も手を止めて周りに寄ってくる。
一瞬長門はそっちへ視線を移して、同じく訓練用大太刀を構えた。
「………ふ」
「……なっ」
エンジュ
その構え――稲富流対艦刀術が一つ、槐。
大太刀を魅せつけるように右手一本で大上段へ持っていく、流派の中でもかなり独特な構え。
そうしてすっかり頭の上まで大太刀を上げてから、長門は言った。
「さぁ、どこからでも」
「………そうかい」
―槐。
構えの意図自体は単純な物。
頭の上へ大上段に掲げた大太刀を、敵が間合いに入った瞬間に振り下ろすだけ。
一見隙だらけのように見える構え。
だが、長門が使うのならばその限りではない。
あれの剣速は、まさに常軌を逸していると言って過言ではない。
昔―それこそ俺が拾われてすぐに―長門と立ち合った時も、あいつはあの構えをしていた。
俺は『あいつ馬鹿だ、今こそ好機』とばかりにガラ空きの胴を打ちに行って――脳天に恐るべき衝撃を加えられた。
艤装の上からだというのに、しばらくは頭の腫れが引かなかったのは今でも鮮明に覚えている。
究極の後の先。
彼女が使う限り、槐はそれに近い物を実現させ得ると言って良い。
「…だがよぉ、長門」
「俺があの時と変わってないって、まさか思ってんじゃねえだろうな――」
彼我の間合いは、一足三歩。
ただ一歩動けば互いが間合いの内。
そして、長門はそれを待っている。
知っていて、俺は先に一歩を踏み出す。
理由は単純。
長門が振り下ろすよりも、俺の方が速いから、だ。
槐は、大上段から大太刀を振り下ろす構え。
そして、大太刀とはある一定まで接近を許せば極端に威力が下がる。
言い換えれば即ち、近付けば近づく程に弱くなるのだ。
それは大太刀という武器の性質を鑑みれば必然にして、最大の弱点。
つまり、俺は長門が最大威力で大太刀を振り下ろせるゾーンを、素早い移動で一瞬にして抜けられるという自信があった。
一度近付いてしまえば、もはや大太刀では俺の太刀を止められはしない。
「先手必殺、ってなぁ!」
「……ほう」
果たしてその目論見は成功して。
長門が大太刀を振り下ろす前に、一足三歩の間合いはほぼ零に。
驚きに目を見開いた長門を見て、勝った、と確信する。
だが――太刀を振り抜く寸前で気付く。
刀が、最初の構えから「全く」動いていない事に。
まさか、ぴくりとも反応出来なかった?いや―
「ならば私は…後手必殺、とでも言った方が良いのだろうか!」
「は――――ごっ!?」
それをおかしい、と思った時には。
俺は既に、訓練場の地面に吹っ飛ばされていた。
下からの衝撃。
即ち、厚い戦艦装甲に覆われた脚で放たれた一撃の烈脚によって。
「――稲富流対艦刀術、針槐」
―槐に似た木がある。
―しかし、それは刺を持つ。
―付いた名前が、針槐。
「………か、…ぐっ、はっ…」
「誰が刀を使うといったか、阿呆」
おお、と訓練場の至る所で拍手が湧く。
…なーるほど、そういう技ね、畜生。
「貴様、やはりたるんでおるな」
「……が、…知ら…ね、んだから…避けら…ね…よ」
「戦場でもそれを言えたのなら大したものだ」
ふぅ、と一つ溜息を吐いて、長門が訓練場を去っていく。
「牙を折るなよ、せめて、戦いが終わるまではな」
地面から動けない俺に、そんなありがたいアドバイスを残して。
「…ちーくしょう」
地面に転がり、空を見る。
真っ青だ、馬鹿にしてんのか。
「……あの、大丈夫ですかー?」
「あ…?」
声に顔だけ向ければ、俺を心配そうに覗き込む女。
こいつは――阿賀野、だったか。
確か、あの時築城で拾った真艦。
尤も、話すら殆どしたことは無い。
大戦で長門と一緒の場所で戦い生き残った、とだけは聞いたが。
「…大丈夫そうに見えるか?」
「んー…うん、結構ぴんぴんしてるねー」
「…いや、そうだけどよ」
いかな戦艦艤装の蹴りを食らったと言っても、流石に訓練。
向こうだって肋骨全部折るような力で蹴り飛ばしゃしない、くらいは考えているだろう。
………めっちゃ痛いけど折れてないよな?考えてるよな?
…考えているという事にしよう。
まあ、どちらにしたってどうせ真艦の力で治ってしまうのだが。
「ふふーん」
「何だ」
なんか…こいつを見ていると部屋でお留守番中の変なのを思い出す。
同系統なのだろうか、勘弁願いたい。
「いや、手当したげようかなー、って!」
「…嬉しいが、宣言する前に出来れば手を動かしてくれないか」
「おおー!わかったよー!阿賀野はねぇ、これでも提督さんに結構感謝してるから御恩を少しでも返したいって――」
「わかったから、するんだったら急いで手当してくれ」
「………あ」
「…今度は何だ」
「阿賀野特製救急箱が空!」
「…………」
訂正。
お留守番中の変なののパワーアップバージョンだった、こいつ。
「あーもー、お部屋で整理した時だー」
「……いや、もういいぞ、別に」
「ダメですよー!提督さんにはすっごく感謝してるんだし、阿賀野の気持ちをしっかり表したいもん!」
「………」
…うん。
そりゃ嬉しいだけど、なんだろう、こいつに任せているともっと悪くなりそうな未来が…な。
「あ、そーだ!」
「…何だ」
「提督さんをお部屋に連れて行けばいいんじゃない!」
「…………」
てっあてー、てっあてーと俺を担ぐ阿賀野。
…………。
>>+2
A.待てこらガキ。
B.……まぁいいか。
b
A
一旦休み
提督くんったら一途ねー
>>532 「先手必勝」です、はい
一旦乙
浮気しないいい男ですね!
乙
⑨番茶でいいわね?
乙
一旦乙です
そろそろかな
一気に読んだ
初期に比べて提督の那珂ちゃんに対するデレ度が物凄い上がってますね…
A.待てこらガキ。(サブイベント省略)
…。
……。
「待てこらガキ」
「むっ、ガキじゃないよ」
胸を張る。
…確かにガキには見えない。
「……精神年齢の話だ」
「…?…それで、待てって?」
「手当はいらん」
「…どうして?」
「ほっときゃ治る」
「確かにそうだけど」
…納得した様子は見えない。
どころか、そのまま担ごうとしていく気マンマンだ。
仕方ない。
身体を捻って、担がれた背から落ちる。
地面へ強かに身体を打ち付けた。
いてぇ。
「……自分で落ちるんだ…」
「離してくれそうになかったからな」
「…むー、恩返ししたかったのに」
「別にいい、助けたのは長門だろ」
「でも、提督さんがいなかったらダメだったよ?」
「…だとしてもだ、そういうのはいらん」
「ふーん…そう、そこまで嫌なら何もしないけど…」
「あっ、そうだ、さっきの凄かったね!ばびゅーんって長門さんの懐に潜り込んで――」
「…………」
「長門さんもさ、あの態勢で蹴れるなんて――」
「…………」
「阿賀野はあんまり戦闘が得意じゃないから――」
……しかし。
長門の言う事も尤も、だ。
確かに、俺は最近少し気が抜けていたのかもしれない。
あの時、刀だけしか見ていなかったし、あまつさえ、相手の思考を読んで勝った気ですらいた。
そこだけにしか目が行っていなかった。
長門が自分を侮っている、など――有り得ぬというに。
…甘い。
那珂がどうだとか言う前に、何よりも自分が甘い。
鍛えなおさなければ。
牙を抜くな―その通りだ。
俺は素晴らしい戦闘技能を持っているわけではない。
真艦、仕手というアドバンテージ、加えて、闘志と戦闘欲。
長所などそのくらいだ。
人より優れている部分を捨ててどうする。
細々と思考を巡らすなど、昔は絶対にしなかったろう。
いや、正確には…思考だけで行動の全てを決定するなど、か。
「それでねそれでね、…あ、そうだ!良かったら、もうちょっとお話しようよ!」
「阿賀野」
「はいっ」
「少し、訓練をしてくる」
「…え、ちょ、怪我」
「問題ない、むしろこのくらいの方が冴える」
立ち上がる。
さっき蹴り飛ばされた時に吹き飛んだ刀を拾う。
これだけでも身体が悲鳴をあげるくらいには痛い。
だが、それでいい。
牙を研げ。
折れる程の力を込めて、研げ。
それで本当に折れた時は、死ぬ時だ。
「お、おい…坊主、休んどけよ」
「問題ない、相手してくれ」
「……敵わねぇなぁ、…ただ、俺は嫌だぞ、坊主の相手なんて」
この後、結局手合わせ相手をたらい回しにされ。
「ひぅ、え、…なんで阿賀野!?」
「……よろしく」
戦闘が苦手だというその言葉の真偽を、身を持って確かめることになった。
結論から言えば――
よくあいつは大戦で生き残れたものだ、と思うしかなかった。
3章限定ヒロイン的な人>>+2
ここまで、まあこれがしっかり終われば2周目もする、この調子ならそこまで時間もかかるまい
ブラック要素は増やしたいよね
ksk
秋月
また秋月か…踏み台しなきゃよかった
これで今書いてる全スレに秋月が出た
いや、書くけどね
ゴリ押しもここまで来るとちょっと呆れる
本当にどこにでも湧くのな、単発秋月
そもそも今までは登場ヒロインから選んでたけど……書かれなかった瞬間に狙うのは目ざといというかあざといというか
2週目やるなら1週目でどんな形であれ出た艦は無しにして欲しいな
元ネタから考えると各章限定ヒロインってものすんごいアレな予感がするんですけど
安価取った人はちゃんとわかってるのかな(ニッコリ
2周目有るなら外国艦と日本統一を目指す提督も面白そう
元ネタを考えると個別ヒロイン以外はな…
個別ヒロインも十分アレだけど
原作にもお金のために身体を売ってた子がいたよね(ニッコリ
達磨になった後、汚いジークになるのはやめてくれよ
【第3章―赤城】
―秋月、という少女の生涯を語るのならば。
不幸、と二文字で表すのが手っ取り早いであろう。
生まれてから物心付くまでの間は、幸せだった。
家は裕福でなかったものの、母も父も優しく、聡明であった。
彼女自身も家族の絆を引き継いだのか、優秀で。
学校に通うようになれば、同年代の子よりも勉強ができた。
そんな小さなことに、家族は喜んだ。
友達も大勢いた。
皆、貧富なんて物に拘らず、彼女に優しくしてくれた。
誕生日ともなれば、皆が祝ってくれた。
家族は張り切って精一杯の豪勢な食事を用意して。
友達は彼女の為に色んな贈り物を用意してくれた。
平凡で変わらぬ、けれど暖かい毎日。
これが彼女の覚えている中で、最も幸せな時間であった。
急激に変化したのは、大戦の勃発。
大和の主兵器は艦娘であったとはいえ、それでも兵士がいらぬというわけではない。
秋月の父も、従軍することになった。
そして、二度と帰らぬ人となった。
報せが届いたのは大戦中期。
だんだんと悪化していく戦況は、既に大和国内の空気にも顕れていた。
食料が配給制になったり、男手と見れば兵士として駆り出されたり。
そんな中で届いた訃報は、秋月の母を蝕むに十分な物だった。
身体は弱っていくばかりで、元から裕福でなかった彼女の家には十分に打てる対策も無く。
友達は励ましてくれたけれど、彼女らにも支援できるほどの余裕は無く。
まるで必然のように、母は死んだ。
死に際に、一つの言葉を残して。
『欧州連合さえ、いなければ』と。
侵略者を恨んで死んだ。
その言葉が、一人残された秋月にとっての道標となった。
それから彼女は、侵略者への復讐心だけを抱いて生きた。
いや、それだけを考えることで、少しでも自分を紛らわせた。
強い、強い復讐心。
死ねと願った。
殺してやると猛った。
母と父の仇を取ると誓った。
幸いにして―彼女には才があった。
艦娘適正という、先天の才だった。
勿論、縋った。
これだと縋った。
これが、復讐を成す唯一の方法だと。
そして彼女は自分を捨て、今の名―『秋月』を与えられる。
けれど、彼女は復讐を成すことは出来なかった。
大和降伏。
彼女が大陸に配属される予定日、その僅か一週間前の出来事だった。
それを聞いた彼女は、比喩でなく倒れた。
倒れて、這いずり、のた打ち回った。
なぜ、と。
なぜ成せない、と。
なぜ成させてくれない、と。
虚無感と無力感に支配されて、彼女はしばらく食事すら摂れなかった。
ただ、与えられた士官室に引き篭もっていた。
だが、あるいはそれが良かったのかもしれない。
佐世保鎮守府の蜂起に加わる機会を、彼女は見送ることが出来たのだから。
恐らく、その結成を聞いてしまえば参加していたことだろう。
そこだけは、まさに彼女にとって不幸中の幸いだった。
それを知ったのは、討伐の段に入ってからだった。
その時も、まだ彼女は虚無だった。
心に穴を開けたままだった。
何も感じること無く、部隊に配属され。
艦娘という圧倒的な力を持ち、学んだ通りに敵を屠り――そこで、彼女は目覚めた。
戦場の真っ只中。
『初めて人を殺した』、その時に。
それも、殺した人間は。
憎き侵略者ではなく、大和の国民。
彼女の願いの外にいる人間。
彼女は何を思うこと無く、訓練通りに太刀を振った直後、初めて虚無感を抜け出した。
気付いた時、太刀で跳ね飛ばした贋艦艤装の上半身が、目の前に落ちていた。
当時は試作品で粗悪もいいところだった量産型艤装の兜は外れて、顔が露出していた。
転がっていたのは、どこか秋月の父に似た男だった。
いや、誰であったとしても、その時ならば彼女の眼にはそう映ったかもしれない。
その男は、末期に名前を呟いた。
娘の名だった。
同時に、彼は悔しそうに、心惜しそうに、恨めしそうに。
秋月を、睨んでいた。
彼女の中で、何かが弾けた。
死体を蹴り飛ばして、戦場をひた走った。
見回す限りの暴力と、血が吹き荒れる場所を。
途中、何度傷を受けたかはわからない。
どうやって戦場を抜けたのかも、同様に。
とにかく佐世保鎮守府から立ち上る黒煙が遠くに見える場所までやって来た時、彼女の身体はボロボロだった。
けれど、生きていた。
生きていて、自分自身に残酷な真実を叩きつけた。
彼女の太刀は、やはり、血に塗れていた。
叫んだ。
泣いた。
意味が無いことだった。
だけど、泣いた。
雨が降り出して、地面が泥と化しても、そこで泣いた。
何を言っていたのかは、彼女だって覚えていない。
ただ、叫んでいた。
戦場から上がる煙を見て、何かを叫んでいた。
それから、一ヶ月程が経って。
どうやって生きていたかはわからないが、彼女はまだ生きていた。
ボロボロの身体は、真艦の能力が治してくれた。
擦り切れ、血で汚れた服の代わりに、どこで拾ったのかもわからない布を巻いていた。
山の中、まさに脱走兵という格好で、まだ生き延びていた。
けれど、精神力は既に限界だった。
佐世保から逃げる時には既に摩耗して、折れる寸前だったのだから、それも無理は無い。
食料を求めて彷徨い歩いていた途中、遂に彼女は倒れ、意識を失った。
次に目覚めたのは、薄い煎餅布団の上だった。
心配そうに、恰幅の良い女性が彼女を覗き込んでいた。
勧めわれるままに食事を受け取り、話を聞けば―山で、彼女を拾ってくれた男性がいるらしかった。
そこは、山間の村だった。
お礼を言って出て行こうとした秋月だったが、それは女性によって遮られた。
「今は大変な時期、きっと事情があるんだろう、此処にいてもいい」と。
その時、彼女は再び泣いた。
女性は微笑んで、そんな彼女を見ていた。
それから秋月は、まるで女性の娘のように過ごした。
女性は子供を喪っていたらしく、代わりにするようですまない、と何度も謝っていた。
だが、秋月にはそんな事は一切関係無かった。
久々に触れた人の温もりが、とにかく暖かかった。
夜な夜な悪夢にうなされる秋月を、女性は気遣ってくれた。
身体を抱いて、大丈夫だと言ってくれた。
秋月はそうして過ごす内、一ヶ月もする頃にはすっかり村に溶け込んでいた。
しかし、時期は戦後。
しかも場所は、海軍省の影響無く動乱収まりやらぬ九州。
そして、何より佐世保のほど近く。
海軍省が最も暴虐を尽くした場所の、ほど近く。
秋月の今回の幸せの崩壊は、案外すぐにやって来た。
その日、突き抜けるような晴天の日。
村の広場に、突然一発の銃声が轟いた。
何事だと皆が集まれば、銃で武装した兵士の集団が広場を占拠していた。
所謂、帰還兵崩れの、山賊まがいとなった連中であった。
彼らは村人に、金銭と食料、そして土地を要求した。
兵士崩れの山賊達は、殆どが徴兵され、その後の生活が出来なくなった者達。
せめて、住む場所が欲しかったのだろう。
けれど―村人たちとて流石にその要求は呑めない。
普通ならここでこの決裂が起きだ場合、村人が何人か死ぬことになったであろう。
そう、普通なら。
だがこの村には、秋月がいた。
艤装を持って戦う、艦娘がいた。
大声で銃を持ち脅しを続ける山賊。
その首が、突然に跳んだ。
血飛沫が舞い上がり、どう、と身体は地面に倒れた。
そしてその惨劇は一人だけではなく。
広場にいた山賊全員に平等に与えられた。
一人の少女の手によって。
秋月は、どこか誇らしげな気持ちであった。
彼女にとって、初めて誰かの為に力を使えたと―少なくとも本人は―思っていたのだから。
山賊全員が倒れてから、艤装を解いた彼女は居並ぶ村人達へ振り返った。
暖かい言葉を期待していた。
ありがとうという言葉を期待していた。
けれど、彼女が思っていたような暖かい反応は、絶無だった。
あったのはひたすらに冷たい視線。
心の底から嫌な物を見るような視線。
『艦娘だ』と誰かが呟いた。
『海軍省の手先だ』と誰かが呟いた。
『あいつのせいだ』と誰かが呟いた。
『あいつのせいだ』と皆が呟いた。
彼らは一様に、恨みの籠もった―復讐心を籠めた眼で、秋月を見ていた。
あの女性も、例外でなく。
いや―むしろ、騙されていた、とばかりに、余計に鋭く。
その女性の息子は、兵士として佐世保で死んだということを、秋月は知らなかった。
知る由もなく、彼女は恨まれた。
恨まれた。
まるで戦争で起きた被害が全て彼女のせいであるかのように。
恨まれた。
まるで佐世保の虐殺が全て彼女のせいであるかのように。
恨まれた。
まるで全ての復讐の対象であるかのように。
艦娘というだけで、皆は彼女を恨んだ。
艦娘というだけで、彼女は皆に恨まれた。
過ごした時間も暖かみも、既に彼女からは消えていた。
太刀を見た。
太刀は、血に塗れていた。
また、彼女は叫んだ。
そして、走り出した。
宛もなく、意味もなく。
ひたすらに、何かを振り切るように。
どこまで走ったのかは、定かでない。
ただ、彼女は一人の女性にぶつかって止まった。
倒れる彼女の意識の端で、言葉が聞こえた。
『……カンムスじゃない』
『…それも…驚いた、オリジナル』
『へぇ……ねえ、貴女』
秋月が顔を上げた先に、輝く金髪が見えた。
風に靡く、混じり気のない神々しいまでの金色。
なぜか、彼女の心の奥底に復讐という言葉が浮かんだ。
『付いてきなさいよ』
『使えるかもしれないから』
だけど、そんな物はもう今の彼女にとって何もかも些事に過ぎなかった。
好きにすればいい、と彼女は頷いて、金髪に身を預けた。
―秋月、という少女の生涯は。
つまり、何も得られなかったのだ。
ビスマルク?
「……新人?」
「ああ、うん」
俺を蹴っ飛ばしたゴリラ、もとい長門が語った内容は、中々に興味深い物だった。
志願兵、それも真艦がいる、と。
「真艦って、どういう経緯でうちにくるんだ、そんなん」
最近敵の基地を攻める度に拾ってたりするので微妙に価値観がおかしくなっているが、一応真艦は本来ならば非常に貴重である。
少なくとも、反乱軍風情でいくつも抱えられるものではない。
「だから志願だよ、私達の名前が売れてきたんだろうさ」
どこか面倒くさそうに言う。
誤魔化している風にも見えたが…単純に見たまんま面倒なんだろう、こいつの場合。
志願があった。仲間が増えた。それも真艦だ。強いだろう。やったね。
そんな思考で生きてるような女だ。
だからこそ、反乱軍のリーダーなんざが出来るんだろうが。
「へぇ、で、艦種は」
「駆逐艦―秋月、と言ったか」
「秋月」
聞き覚えは無かった。
恐らく、大戦では使われていなかった艦種なのだろう。
「知り合いか?」
「いや、聞いたことはない」
一応、大戦経験者本人にも聞いてみる。
長門がこう言うのだから、先の推測に間違いは無いと見ていい。
「そんで、なんで先立って俺に話を?」
「うむ、それなのだが」
「貴様と赤城に、この新人の世話を暫く頼みたい」
「は――」
なんだそりゃ―と口が固まる。
よりによってお守り…いや、多分向こうのほうが年上なのだろうけども。
似たような物を押し付けられるなんて溜まったもんじゃない。
「なんでだよ」
勿論俺は反論する。
嫌だぞそんな物、と。
「暇そうだからだ」
「…………」
なるほどズバリ。
仰るとおりであった。
赤城は言わずもがな、俺も最近は部屋に引きこもることが多くなった。
…って、納得するなよ俺。
「…訓練が」
「新人も混ぜてやってくれ」
「…主計科の仕事…」
「出来ないだろう」
「……偵察に…」
「関門海峡を超えてか?それとも豊後水道か?」
「……………」
このゴリラめ。
なんでこんな時に限って理詰めで攻めてきやがる。
何かないかと頭の中を探ってみるも、妙案は浮かばない。
「ならば、頼んだぞ」
そうこうしている内に肩を叩かれ、正式に任命されてしまった。
畜生。
「…あー…わーったよ、教育してやるよ、教育だ教育」
「憂さ晴らしの相手ではないぞ」
「はいはい」
踵を返す。
面倒なことになったもんだ。
俺は思いっきり、長門に聞こえるように溜息を吐いてやった。
…鼻で笑われただけだったが。
「…秋月型一番艦、秋月です、どうぞ、よろしくお願い致します」
「ああ」
そうして紹介された少女、秋月。
整った顔をしている、というのが第一印象だった。
尤も、真艦は基本的に皆美人または美少女である気もするが。
何だろう、そういった基準でもあるのだろうか。
「川内型三番艦、那珂ちゃんだよー!よっろしくぅ!」
「……はい、よろしくお願い致します」
「あれー…」
そんなことを考えている内、隣で馬鹿が馬鹿な挨拶をして冷静に返されていた。
そういう事をすると俺の方の品性まで疑われるからやめろ。
「赤城と申します、この方―提督さんと共に、貴女の…そうですね、新人研修のような物を担当させていただきます」
「……そうですか、ありがとうございます」
それに比べて赤城は普通だ。
普通に礼儀正しい。
…しかし、秋月、だったか。
随分表情の変化が乏しいな。
仮面を貼り付けたように無表情だ。
仮にもこれから命預ける仲間だというのに、その態度は如何なものか。
……あ、だとするともしかして那珂のせいなのか。
あいつに背中を預けたくない…とか。
…その可能性を考慮に入れるのはやめるか、ちょっと現実的過ぎる。
さて…しかし、どう挨拶したものか。
>>+2
A.とりあえず、一応は笑顔で挨拶してやるか。
B.向こうが態度が悪いんだ、俺は知らん。
ksk
A
A
A.とりあえず、一応は笑顔で挨拶してやるか。(秋月好感度+1)
「…………」
こういう時、相手の警戒を解くには笑顔、と聞いたことがある。
……笑顔、笑顔か。
言っちゃあ何だが、苦手な部類だ。
「……お、俺は…提督、…という…よろしく頼む」
頑張ってみる。
「………は、はい…秋月の…ご、ご指導を…よろしくお願い致します…」
「…お、怯えないでくれ…な、仲良くしていきたいと思っている…」
「…は、はい…ありがとうございます…」
秋月が俺から一歩離れる。
鉄仮面が揺らいでいる。
主に多分恐怖とかそんな感情で。
「…………てーとく、笑わない方が良いって言ったじゃん」
「……」
後ろから那珂がひそりと一言。
失礼な奴だ。人がせっかく笑顔を浮かべているのに。
赤城も何か言って欲しい。
「……赤城?」
「…………………こ、個性的ですね…」
「………」
赤城は真剣に目を逸らしている。
今にも大爆笑してしまいそうな、笑いを堪えているといった顔だ。
………おい。
…おい。
「…とにかく…よろしく頼む…」
「…は、はい」
笑顔などいらぬ。
教育だ、教育。
好感度
秋月 ★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
ここまで
秋月の好感度が出るのは3章のみです
ヘッドの中身が露出するシーンは結構トラウマ
乙
阿賀野も2章限定だから消えちゃったね
しかしビスコって仲間にいたのか
おつ
よしとりあえず阿賀野は生き残ったなー(棒
ビスコが味方には見えない
乙です
乙です
「それではー、第一回、秋月ちゃんを笑顔にさせる会議を始めましょー!」
「……わ、わぁー…」
「…………………」
那珂が一人でぱちぱちと手を叩いている。
中々に寂しい絵だ。
「………訓練してくる」
「待ったぁ!」
「……………」
腕をがっしりと掴まれる。
面倒臭い。
「………くっ、この」
思いっ切り振ってみる。
……離れない。
「……………」
「にへー」
……畜生。
「……で、何だって」
「第一回秋月ちゃんを笑顔にさせてやるぜ会議!」
「…微妙に名前変えるなよ」
「でも、重要だよ!」
「何を言い出すかと思えば…別に、そんな事する意味もなかろうに」
「いえ」
と、意外にも口を挟んだのは赤城。
こほん、と咳払いを一つ。
「那珂さんの言う事にも、一理あります」
「……ほう?」
「だよねっ」
「秋月さんは…先程この施設の説明をしている時も、ずっと無表情でした」
「なんというか…それでは、あまりに事務的に過ぎる…と、そう思います」
「これから…仲間、そう、仲間として一緒に戦っていくのです」
「仲良くなることに、得はあっても損はありません」
「私達は、長門さんから秋月さんを任せられたのです」
「ならば、出来る事はやるべきでしょう」
迷い無く言い切る赤城。
那珂は「え、そんなまじめに考えてたの」みたいな顔をしている。
………まあ、いいか。
…とにかく。
「…驚いた」
「何がですか?」
「いや、お前がそんな事を気にするなんてな」
「…これでも、少しは考えています」
赤城が、恥ずかしそうに顔を逸らす。
照れているのだろう。
…今まで、そんな物を気に掛けられないような立場だったろうしな。
「……わかった、そうだな、考えよう」
「…てーとくっ」
これでは、俺がまるで悪者だ。
一人だけ秋月という新人を歓迎していないみたいだ。
「良かった、提督は新人教育とか言って秋月ちゃんに酷い事したいのかと思ってたよ」
「……那珂?」
「…ごめんなさいごめんなさい、冗談だから怒らないでねっ」
「………はぁ…それで…笑顔にすると言っても、具体的には?」
「それを今から考えるんだよっ、物分かりが悪――くないねぇ、もう、那珂ちゃんの説明不足だよ、うん」
…今日は那珂のテンションがやたら高いな。
凄くうざい。いつもに増してうざい。
「……那珂」
「…なーに?」
「…テンションが高い、少し落とせ」
「……んー、そんな事言われてもー」
「…………」
身をくねらせる那珂。
……。
………。
…苛々する。
こっちの更新来たか
「…あのね、那珂ちゃん嬉しいんだよ?」
「……嬉しい?」
「そ、だって、提督、今までだったら、こんな事考えようともしなかっただろうから」
「赤城さんに色々言ってるけどさ、那珂ちゃんに言わせれば、それこそ『お前がそんな事を気にするなんてな』だよっ」
「…………」
「そういうわけで、提督の成長が見えて那珂ちゃんは嬉しいのー」
「…………」
顔を背けてしまった。
…さっきの赤城の気持ちが分かったような気がする。
なるほど、これは恥ずかしい。
「ん、んんっ!……それで…具体的には何をするんだ?」
「…あー…話戻したー…ま、いっか」
「んーとね、那珂ちゃんとしては、ちゃんと案があるよ?」
「ほう、どんな」
「私も気になりますね」
同時に2つの目線を受けて、那珂が笑う。
「那珂ちゃんの、歌っ!」
「………歌、ですか?」
「……お前な」
赤城はなるほど、という顔を浮かべたが…ダメだろ。
那珂の歌とは即ち、密装、寂滅為楽。
聞いた者に安らぎを与える鐘の音。
…そりゃ笑顔にはなるかもしれんが、…それはどうなんだ。
「…ダメ?」
「…いや…構わんけど、…できれば、最後の手段にしたい」
「……そっか、提督、そういう事も気にするようになったんだね」
「………赤城、お前は何かないか?」
優しい笑顔の那珂。
また気恥ずかしくなって、咄嗟にもう一人に話題を振る。
「私…ですか」
「…あまり、…思いつくものもありませんが…」
「あ!」
暫く視線を宙に彷徨わせて、突然ぽん、と手を叩く。
「美味しい物を一緒に食べる、というのはどうでしょう!?」
「…ふむ」
「美味しい物かぁ」
これには、那珂も俺も頷いた。
なるほど、確かに妙案やもしれぬ。
赤城にも同じ手を使ったしな。
何より、古来から美味しい物は人を笑顔にすると決まっている。
俺達の反応を見て、赤城はふふんと得意気に鼻を鳴らした。
何か俗っぽくなってきたなぁ、こいつも。
「では、提督さんはどうですか?」
「あ、そうだね、提督は何か意見がある?」
「……俺、か」
まあ、3人いればこういう流れになるのは必然、か。
余りこういうことを考えるのは得意ではないが…。
そうだな――
>>+2
A.那珂の意見を――
B.赤城の意見を――
C.内容自由、秋月の為の提案。
2
a
C4人でどっかに遊びに行こう
ここまで
3章はほのぼのです
乙
乙乙
ほのぼの(物理)なんだろ!俺は詳しいんだ!
乙です
乙です
ほのぼのってつまりその後にアレが待ってるってことじゃ…いや何でもない
ほのぼのってそういう…
乙です
乙です
A.那珂の意見を――(秋月好感度+1)
「なら、…那珂の意見か」
「……む」
「…え?」
赤城が少し不満そうに眉を上げる。
そして、那珂は意外、と目を開いた。
「なんだよ」
「…い、いやー…那珂ちゃんの意見聞いてくれるなんて、思わなかった」
「別に、ただ、手っ取り早いだろう」
笑顔にするという条件だけを鑑みるならば。
秋月の心を揺さぶってしまうのが最も早い方法である。
つまりは密装という法外措置だ。
「……あのね、提督」
「何だ?」
だが、那珂は俺の言葉に微妙そうな表情をした。
「…那珂ちゃんの歌、あの効果入れなくても歌えるからね」
「……そうなのか?」
「そうだよ!ずっと力使ってるわけじゃないよ!だから今回だってちゃんと普通に歌うよ!」
…そうだったのか。
こいつが歌うと強制的に落ち着く効果を醸し出すもんだと思ってた。
そんな便利な物じゃなかったのか。
ふむ、艤装として装着してからでなければ発動しないのかもしれない。
「じゃあ却下だな」
「凄く素早い判断で那珂ちゃんショック!」
「……あ、あの…普通の歌では駄目なのですか?」
叫んで倒れた那珂を見て、流石に少し可哀想だと思ったのか。
赤城がおずおずと口を挟んでくる。
「だってなぁ」
「何かあるのですか?」
「…那珂が歌う歌って、よくわかんねぇんだよ」
「…わからない?」
「そう、大和の歌でも、大陸の歌でもないんだ、こいつの歌」
よくわからない―そう、よくわからないのだ。
那珂の技術自体は、上手いと思う。
けれど、肝心の歌がよくわからない。
大和に古来より伝わる落ち着いた曲調でも、かといって大陸風の曲調でもない。
やけにテンポの早い歌をいつも歌っている。
秋月の趣味は知らないが、正直そんな慣れない物を聞いて笑顔になるかと言われれば、微妙であろう。
「というわけで、赤城の案、採用」
「へ…?…は、はぁ…ど、どうも…」
「……ふーんだ、いいもん、那珂ちゃんの歌に時代が付いてきてないだけだもん」
「……よくもそこまで言えるもんだな」
あくまで自分は悪くないと頬を膨らませる。
こいつの謎の自信にはむしろ尊敬の念すら覚えるな、時々。
「…と、とにかく…食事、ということですね」
「ああ…ただ赤城、食う量は控えろよ」
纏まった案に満足したらしく息を吐く赤城に、とりあえずは注意事項だけを伝えておく。
「…と、言いますと?」
すると、言葉だけは変わらず丁寧だったが、目が急に鋭くなる。
こいつもこいつで色々と…。
「秋月が引くだろう」
「…なぜでしょう」
「わからんかな…」
「…おかしな点でもあるのでしょうか…?」
おかしいのはお前の食事量だとは、果たしてどうすれば伝わるのだろうか。
非常に前途多難である。
「にへへー」
「……何だ?」
頭を抱えていると、やたらと満足気に笑って此方を覗く那珂に気付く。
不愉快さを言葉に包んでぶつけても、その笑みは消えない。
「なんだかんだ、提督が一番秋月ちゃんの事考えてるね」
「……違う」
「違わないよー、違わない」
「…確かに、そうかもしれないですね」
首を振る俺に追撃を掛ける那珂に、便乗する赤城。
…何だこの針の筵状態は。
俺はただ新人の教育について長門に文句を言われるのが嫌なだけだ。
それ以外の感情など無い。
「……まあ、とにかく…秋月には声を掛けておく」
「はい、諒解しました」
「諒解、提督っ」
半ば強引に話題を切って、立ち上がる。
あの空気、歯痒いったらありはしない。
集合場所として使っていた赤城の部屋を出ると、廊下の寒さが身に染みた。
「………秋月、か」
『………よろしくお願い致します』
…長門の文句以外に気に掛ける部分があるのなら。
…………。
…いや、いい。
……別に、何もない。
あんな表情で戦闘されたら邪魔だと、それだけだ。
好感度
秋月 ★★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
ここまで
おつ
前回素敵なヒロインを演じたのに安定の扱いである
乙
乙です
「ふむ――」
一人、廊下の肌寒さを受けて思うは、この後どうしたものやら、という思案。
勿論あの場で秋月に声を掛けると言った以上は彼女の部屋に向かう、のだが。
「困った」
ほぼ初対面に等しい女性と淀みなく会話する術を俺は持たない。
ならば那珂に付いて来てもらえと当然思うところだが、ああして部屋を出てきた故にそれをするのもバツが悪い。
「…………」
結局、どう考えたとしても。
俺一人で向かう他、ここで取れる手段は無い、という事に気付くまで1分ほど。
そして秋月の部屋の前でこうして立ち尽くす事2分ほど。
移動時間と合わせて、既に部屋を出てから5分が経過しようとしていた。
行動に、何も難しいことはない。
ただこのドアを幾度か叩いてやればよい。
そうして顔を出すであろう秋月に、「やあ、親睦を深めよう、そうだね、お茶でもどうかな」なんて言ってやればそれで済む。
……自分で言うのもなんだが、この台詞は果てしなく似合わんな。
まあ―言い方はこの際なんでもいい、俺は今回においてはただの伝言役だ。
しかしそんな子供の使いのような役さえまともにこなせんとは――ああ、長門の野郎、本当に面倒臭い仕事を。
「………あの?」
「なんだ、今――」
と、掛けられた声に振り返って。
「忙し…く…」
それが、目指していた人本人の物であると認識する。
「…秋月に、何か御用でしょうか?」
「…………」
少し髪が濡れている、訓練、そしてその後に大浴場にでも寄ったのだろうか。
おそらくその訓練帰りの秋月からしてみれば。
部屋に帰ろうとした所、人相の非常に悪い男が入り口の前で難しい顔をして立っていた、という事になる。
そういう場合、女性は一体何を思うのであろう。いや、少なくとも喜ばないであろうことは想像に難くないのだが。
――那珂、こういう場合にはどうすればいいのだ。
頭の中で送った声には、当然返事はない。
艦娘と仕手の間には声に出さずとも意思を拾いあえる通信機能のようなものはあるが、その範囲の広さたるや最低でもはっきり目視できる圏内が関の山。
英国を中心として超遠隔通信などという技術が開発されている、そんな話も聞くが、まあこれはこの場には関係ないというもの、いうなれば完全に脇道の話。
結局、此処で俺に突きつけられる事実たるや実にシンプル極まりない。
―俺には今、誰の助けも無いということだ。
「………あの」
「…………」
秋月の怪訝さはさらに深みを増していく。
それも無理なからぬ、自分で言うのもなんだが初対面で好意を抱かれるような顔はしていないだろうからな。
――那珂、こういう場合には本当にどうすればいいんだ、おい、お前俺の艦娘だろう、答えろって。
無表情を仮面のように貼り付けたまま、物凄い頻度で那珂へ通信を送る。
果たして、返ってくる声はあろうはずもない。
畜生あの野郎あとで殴る、そんな理不尽な怒りを抱きつつ、俺はとにかく考えていた。
さあどうする、この場では一体何が俺にとって正道なのだ。
秋月はもはや怪訝を通り越して恐れまで行きそうな様子。
不味い、戦場でも滅多に流さぬ汗が一筋、脇の下をつたう。
俺にとって、眼前の秋月たるやまさに艤装の一群。
その敵機に相対する俺といえば、武装は脇差すらも無し。
言ってしまえば、艦娘艤装に生身で挑みかかるような図だ。
……ああ、不味い。
不味いぞこの状況は、非常に不味い。
…………。
………。
……。
…。
>>+2
A.…初対面の時も思ったが、非常に美しいな、貴女は。
B.じ、自分は怪しい者ではない、本当だ、ただ君に伝える用件があって、その、扉を叩いても返事が無くどうしようかと思案していたところで――
C.……ふっ、初日から訓練とは、良い兵士だな…。
D.内容自由(併記)
c?
A
B
綺麗に分かれたな
A.…初対面の時も思ったが、非常に美しいな、貴女は。(―秋月好感度+1)
「……しょ」
「…しょ?」
「初対面の時も思ったものだが…非常に美しいな、貴女は」
「…………は、はぁ…あ、ありがとう、ございます…?」
首を傾げ、更に怪訝さを深める秋月。
…………。
『女の子はね、褒めてあげなきゃダメなんだよー!』
……なあ。
那珂、確かお前はそう言っていたはずだが。
これは中々どうして面白くもない状況になってしまっているぞ。
褒めたのに。褒めたのに何がダメなんだ。
『…い、いや…あのね、時と場合とか…そういう、その』
うるさい黙れ俺の妄想の中の那珂。…言い辛いなこれ。
俺だってわかっている、完全に会話の大切なアレを外してしまったことくらい。
「……………」
「……………」
沈黙が続く。
完全な沈黙である。
無表情の下で妄想の那珂を殴る俺と、迷惑そうに立つ秋月。
悪いのは結構な感じで俺だ。間違いない。
そして、その沈黙を破ったのは意外な―人物、と果たして呼称して良いのかはわからないが。
『……やあ、なんだか尋常ならざる事態になっているね?』
「…長3寸刀ちゃん?」
「………な」
無表情も、遂に此処に来て崩れる。
『いやいや、口を挟むつもりも無かったんだけれど、このままじゃ終わりそうにも無かったから、ね』
それを物ともせずに、飄々とした声が廊下に響く。
喋ったのは――秋月が腰に提げた、刀だった。
シャァベッタァァァァァァァ
ファッ!?
その人物―面倒臭いので人物でいいか、は更に喋りを続ける。
『私は長3寸刀―いや、これはあくまで正式名称だから好きに呼称してくれて構わないがね、まあ、うん、そんな感じで、見ての通り、刀だ』
「…ちょ、長ちゃん、ちょっと」
『ほら、このように主様といえばなるほど面白いネーミングセンスで長ちゃんなどと呼んでいる、実にシンプルで分かり易い、ふむ、そうだ、君は寸ちゃんと呼んでみるのはどうだろうか』
「…………」
刀が喋った。しかも流暢に。
もう既に理解が追いついていない。
あれは―プログラムなんかじゃない、信じられないことに完全な自由意志で会話を続けている。
「長ちゃん、人前では喋らないって」
『いやいや、主様、私だってこんな若者同士の出来が悪いお見合いかごとき展開を見せつけられてはついつい老婆心が出てくるというものさ』
『それに、このままではいつまで経ったって部屋に戻れないじゃないか、なあ、そこの――んー…あー…―笑顔が怖い男』
「…その呼び方は遠慮したいところだが」
ふむ、と応えたのは硬い響きのメタルエコー。
しかし、そこには明らかに知性というものが感じられた。
『ならば、自己紹介をしよう、そうだ、私だけ名乗ったなんて中々面白くもないじゃないか』
「……提督、でいい」
『ほうほう、提くんだね、てーくん』
「…やめてくれ」
声の調子は、変わらず飄々と。
非常に調子が狂う。
なんだこいつは、どうかすれば那珂よりも面倒臭いぞ。
『はっは、私の正体に疑問を抱いているようだ、無理もないことだが』
「そりゃそうだ、普通抱くだろう」
「…秋月、これは一体」
半ば呆けていた秋月が、はっ、と俺の呼びかけに応える。
「え、ええと、これは…」
如何にも困惑したに聞こえる声。
秋月はしどろもどろに視線を彷徨わせて、最後に刀に目をやった。
『……ふぅ、しょうがあるまいよ、主様、こうなってしまっては全てを話す他なかろうて』
…こうなったもなにも。
自分で話掛けて来たんじゃなかったかこの刀。
だがそいつはご丁寧にわざとらしく溜息など吐いてみせる。器用な刀だ。
インテリジェンス・ウェポン
『私はね、欧州連合―の中でも特に英国が技術研究を進めていた、「知性ある武器」だ』
「いんて…ああ?」
『うむ、まあ鑑みれば馬鹿としか言い様のない技術なのだが、艦娘に知性を持たせたように、刀―武器にも知性を持たせてみよう、なんて試みから始まってね』
その言葉に刀を見やる。
言われてみれば、その刀―いや、相応しい呼称は剣か。
大和で良く見られる細身薄刃の物でなく、両刃の厚みがある刀剣。
ごてごてとした明らかに戦闘に必要のなさそうな部位は、おそらくそのインテリジェンス・ウェポンの中核を成す部分か。
『つまりは―要するに戦闘中に仕手の手助けをしてみろ、ということらしいのだが…』
そこで言葉を切って、私に言わせれば――などと尤もらしく一呼吸。
下手な人間より人間らしい仕草だった。
『彼らは一体剣に何を期待したのだろうか、と思うね』
『艦娘が知性を持てばそりゃあ仕手は助かるだろうさ、電探機能やらなんやら、様々な事を肩代わりしてくれるのだから』
『だが剣が知性を持った所でせいぜいあれだ、戦闘中に相手の気をそらすことくらいしか出来ぬではないか』
『…それに、ここまでの知性を身につける為に、この剣は既に戦闘能力を失っている』
『わかりやすく言えば、こんな装飾しまくった剣で打ち合いなどできん、ということだな、はっは、本末転倒も甚だしい!』
失敗作だ失敗作、私は可哀想な失敗作なのだ―と尚も笑う刀―いや、剣。
秋月は、何か言いたそうな顰めっ面でその話を聞いていた。
『まあ―つまりは、だ、そういうわけで、今は甘んじて主様の会話相手くらいにしか役立ってないのだよ』
『というわけで以後お見知り置きを、ああ、ただなるべく他人には黙っておいてくれると助かるね』
「……あ、ああ…わかった、いや、多分半分も理解しちゃいないが、とりあえずわかった」
「だが―秋月」
居心地の悪そうな秋月を見やる。
彼女は俺の視線を受けて、小さく肩を震わせた。
「…なぜ、そんな物をお前が持っている?」
声は知らず、険しくなる。
いくら失敗作とはいえ、その技術は完全に部外秘のはずだ。
転用しようと思えば、色んな分野で可能になるのだから。
「……それは」
『やあ、そんな剣呑な声を出さずとも』
しかし、またもやそれを遮る声。
『私は主様に拾われたのだよ』
「…拾われた?」
『ああ、私は完成したは良いが、正直な所使いドコロがなくてな』
『だがしかし、ここでこのチャーミングな声が幸いしてね、大和へ出向いた暇な高級将校の話し相手になってくれと頼まれたのだ』
『こう見えても私は高性能で、その気になれば英語、仏語、独語、伊語―と、まあ欧州連合の人間と話すのには不自由ないくらいの語学の嗜みはあるのでね』
だが―と声を暗くする。
一々もって人間らしい、という指摘もそろそろ飽きてきた。
『…運ばれる途中、貨物船から放り投げ出されてね、コンテナごと』
『…流れ着いたのはこの九州、ああ、あの海岸で打ち上げられた寂しさと言ったら!』
大仰な、もし身体があれば両手でも広げていただろうという声で慟哭する剣。
『しかし、だ―神も女王陛下も私を見捨てなかった、そう、主様が拾ってくれたのだ』
今度は目があれば涙を流して祈りを捧げるであろうが如き声。
こいつに芝居をやらせれば一財産築けるのではなかろうか、などと思った俺の思考はあながち間違いでも無い筈だ。
なんとも語り口が上手い。
「…そうなのか?」
「……え、ええ…概ね、そういう感じ…です」
秋月に視線を再び向ければ、曖昧に頷く。
不自然さは残るものの、これ以上話す気もないようだ。
「わかった……まあ、それはそれでいい」
どうせ、この剣が大した脅威でないのは真実の事。
…さて、随分脇道に逸れてしまった。
本題を忘れるところだった。
「秋月」
「…は、はいっ」
秋月が身を硬くする。
俺も身を硬くする。
…なんとも緊張する物だ。
「……明日――」
「はっ」
命令を告げる司令官の如き声でもって続ければ、秋月は大和海軍式の敬礼を見せる。
なるほど、素晴らしく訓練が行き届いているらしい、俺などよりはよっぽど。
「飯を一緒に食いに行こう」
「は――――え、はっ?」
「いや、飯をだな」
「…い、いえ…あの、出撃命令…とかじゃ」
「別に、これを言いに来ただけだ」
「……さ、先程は随分深刻な面持ちでしたが…本当に」
「ああ、そうそう、赤城も同席するらしいから、そこは頼む」
「…それは…構いませんが…」
『………なあ』
「なんだ、刀」
『…いや、主様を代弁しようと思ってね…君は人を食事に誘う時、いつもあんな剣呑な眼をするのかい、という、細やかな疑問だ』
「……うるさい、緊張するんだよ」
『…………そ、そうか…』
……………。
…まあ。
普通はもうちょい軽いノリで話しかけるもんなんだろうな。
……ああ、最初から那珂に頼めばよかった。
好感度
秋月 ★★★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
ここまで
この話も赤城の章といいつつ選択肢によっては出番をもぎ取られる可能性が…ふむぅ
乙
那珂ちゃんがメインヒロインだから仕方ないね
乙です
乙
イッチのSSで見たことある喋り方なんだよなぁこの剣
乙です
島風と天津風も喋る刀持ってそうだな
さて――秋月、那珂、赤城、そして俺が参加する食事会。
しかし、それは親睦を深める為の歓迎会というにはあまりに空気が重すぎた。
「秋月、どうだ、美味しいか?」
「…は、…はぁ…美味しい、です」
4人がけのテーブルに、秋月と俺が並び、その対面に那珂と赤城。
秋月にひたすら飯を運ぶ俺。
「………………」
無表情で大量の皿を積み重ねていく赤城。
「………………」
貼り付けたような不満顔で飯に手を伸ばすこともなく俺、いや、秋月を睨む那珂。
一体どうやってこの状況で親睦を深め得るというのだろうか、俺にはわからない。
深まっていくのは多分お互いの溝くらいのものだろう、現に今、この四者の間には北極クレバスくらいに急速に溝が広がり始めている気がする。
「…え、えと…」
「おかわりか、ああ、ここではモツ料理が絶品だ、モツは苦手か?」
「だ、大丈夫…ですけど…」
「ふむ、なら是非モツ煮は食って欲しい物だな、女将!いつものやつを!」
「……ど、どうも…ありがとうございます…」
それでも俺は秋月を全力で歓迎するために頑張らなければならないのだ。
諸々の謝罪も込めて。
その方法は全く持ってわかりかねるけれども、とにかくおもてなしの精神が重要だと第一空挺団のメンバーから聞いた。
あの年長の親爺が言うのだ、そんなに的外れでもないだろう。
大和人といえば古来よりおもてなしの心を忘れぬ民族。
魂レベルで染み込んだおもてなしに対する熱い想いは、欧州連合に多少国土を蹂躙されようが海軍省に多少生活を抑圧されようが途切れるものではない。
客が来ればぶぶ漬けを出すし、客が帰れば塩を撒くのが大和人だ。
太古の昔、おもてなしをもって尊しとす、とかの聖徳太子も言っていた。
俺にもその血脈は受け継がれているのだ、さあ、レッツ即ちおもてなし。
…ふむ、なんか色々違ったかな。まあいい。
とにかくおもてなしだ、おもてなしをするのだ。
「…………随分と仲がよろしいのですね…」
「…………那珂ちゃんにはあんなふうにしてくれたことないのに…」
「…?なんだ、なにか言ったか?」
「……いいえ、何も」
「……べっつにー」
秋月の為、取り皿へ料理を取り分けている途中、恨みがましい声が聞こえたような気がして対面の二人を見る。
しかし、すぐに視線を逸らされてしまう。
ええい、どうしてこんな場面でお前らが盛り上げ役にならんのだ。
おもてなしの心が足りないぞお前らは。
「…すまないな、いつもはもっと賑やかなんだが…」
「お、お気になさらずとも…」
「那珂、赤城、せっかくの親睦会なんだからよ、もうちょっと――」
「……もぐもぐ」
「……つーん」
「……すまん、いや、多分こいつら照れてるだけなんだ、歓迎会しようって言い出したのもこいつらだし…」
一体なぜ俺がフォロー役などに回らねばならんのだろうか。
果てしなくのしかかる理不尽を恨みつつ、ぎこちない笑顔を作って秋月に向ける。
それに多少慄いた後、彼女は曖昧に視線を彷徨わせた。
「…いえ…此方こそ、なんだか、申し訳ありません」
「……秋月」
「……その、…あまり、上手く馴染めずに…」
この空気を呼んだのがまるで自分である、とでも言いたげに。
彼女は目を伏せ、頭を下げる。
……とても歓迎会の主賓には見えない。
「…赤城、那珂」
「……申し訳ありません」
「…ちょーっと悪ノリしすぎた、かも」
二人を半ば呆れを込めた視線で睨む。
クソ真面目な秋月は、自分で責任を感じている。
これではわざわざ連れ出した挙句いじめているような物だ。
「かもじゃねぇよ那珂、責任取って一発芸しろ、3回回ってワン」
「那珂ちゃん的にはそれは一発芸じゃないと思いますっ!」
「いいからやれ、仕手として命じる、この太刀に懸けて」
「そんな軽い事を命じないでっ!」
「那珂さん、往生際が悪いですよ」
「え、何、なんで那珂ちゃん孤立してんの…?」
隣、さっきまで一緒に怒られていた御姫様を見やる那珂。
彼女は「頼むわ被害担当艦」なんて風に爽やかな微笑みを浮かべていた。
……こいつもすっかり馴染んだなぁ、悪い方向に。
「………あ、あの」
「…ん?ああ、重ね重ねすまない、秋月、何か食べたいものはあるか?」
「お腹は…沢山頂きましたから、一杯ですが…秋月は」
「そうか、だったら甘味でもどうだ?」
「甘味…ですか?」
「ああ」
そこで初めて。
今まで何を投げかけても糠に釘、暖簾に腕押しだった秋月が、反応らしい反応を見せた。
「甘味は好きか?」
「…あ、…い、いえ…その」
「遠慮はするな、女将!」
彼女も自分が無意識に大きな反応を見せてしまった事に気付いたらしく、すぐに表情を持ち直す。
だが、時既に時間切れ、俺はしっかりとそれを見ていたのだから。
蛇足だが、この時既に時間切れ、というのは大和語に堪能…とは言い難かった欧羅巴のクルセイダー、つまり騎士が使っていた表現らしい。
なんでも大戦の英雄なのだそうだ、贋艦―深海棲艦で真艦と互角に相手取ったとか、そんな眉唾な逸話も残っている。
…その話は今はどうでもいいか。
「…あ、ありがとうございます」
「気にするな」
一応那珂と赤城の分、合わせて10人前を注文してから、もう一度秋月に向き直る。
彼女は多少の羞恥というこれまでに無い表情を浮かべ、所在なさげに身体を揺らしていた。
「……あの、提督、さん」
「呼び捨てで…ああ、そういや一応先輩、みたいなもんになるのか七面倒な……すまん、それで?」
「…少し、失礼な物言いになるかもしれませんが」
「……いや、なら言うなよ」
「……あ」
「…悪い、つい那珂や赤城に接する時の態度が出る」
ちなみに、あいつらはこのくらいじゃ絶対に言うのをやめない。
それこそ口が開けなくなるまで教育的指導をくれてやるくらいしかない。
「失礼といえば、提督さんは婦女の着替えを覗くことが趣味なのですよ」
「は!?ちょ、な、なにそれ赤城さん那珂ちゃんにも詳しく聞かせて――」
「………あの」
「…ああ、後ろの愉快な雑音は放っておいて良い、続けてくれ」
「覗きがどうとか」
「聞き間違いだろうな」
「…は、はい」
何故だろう。
俺は赤城にあの件に関しては陳謝し、食事まで馳走したはずなのに。
乙女心と秋の空、という奴だろうか。
尤も今の状況に照らし合わせるならば乙女心と秋の月、だが。
…だからどうしたというのだ。
「…それで、提督さん」
「うむ」
「…貴方は、聞いていた印象と全く違いますね」
「と、言うと?」
続けてくれ、と促す。
勿論、その内容に予想がつかないわけでもなかったが。
「忌憚なく、歯に衣着せずに言うのであれば」
「…もう少し、狂れたお方だと聞いておりましたが」
「狂れた――はっ、なるほど」
予想以上に率直かつわかりやすい意見を述べられて、思わずこみ上げたのは笑い。
「……どうか、お気を悪くされずに頂ければ幸いです」
「や、や…むしろ気分が良くなった、変に遠回しな表現を述べられるよりは好みだな」
「まあ、込み入って否定はせんさ…狂っていると言われれば、おそらくそうなんだろう、俺は」
眼前に置かれた酒を喉に通しながら、話を継ぐ。
「だが、四六時中狂うのは…疲れるだろうよ」
「…それにしましても」
この際、全ての疑問を晴らしておきたいのだろう。
食い気味とも言えるタイミングで、彼女は口を開く。
「女性に話し掛ける事すら躊躇い、新入りの歓迎会で気を遣う、そんな細やかな方だとは思いもよりませんでした」
「…歯に衣着せんな、本当に」
「不快でしたでしょうか」
「いや、現実問題、俺も戸惑っている、新しい自分を見つけた気分だ」
というか、今までが軍事以外に全く無関心に過ぎたといえばそうなのだろう。
今でこそ九州は多少の落ち着きを見せ、海軍省の支配からもほぼ完全に逃れた。
故に出来た、俺が反乱軍に入ってからこれまでに無いほどの平穏。
長門に拾われてからずっと、出撃と休息、訓練だけをローテーションの様に繰り返して生きていた俺にとって、今現在こそ久方ぶりの「まともに過ごす時間」なのだ。
それこそ、父が出征する前くらいまで遡らなければ見当たらない程、久方の。
まあ、ちょいと気を抜きすぎたせいで長門に喝を入れ直されたりもした。
ただ本当に肋骨が折れているとは思わんかったが。
…あのゴリラ欧羅巴行って蹴球でも始めりゃいいのに。
閑話休題。
そんなどこか空虚な時間の中で与えられた―これまた慣れぬ仕事、新入りの面倒を見ろ、と。
しかも、そいつが艦娘とは言え見た目完全に美少女なもんだから俺の手には負えない。
…ああ、やはり俺はまともに生きるなど、さっぱり向いていないのだろう。
そして帰結するのは、結局一つの結論へ。
「…落ち着かんな、戦わんというのは」
それは秋月に言ったのか、それともただの独白か。
自分でもよくわからなかったが、自然とその言葉の後、酒へと手が伸びた。
「それは」
「…ん?」
「それは、人殺しをしなければ落ち着かないということでしょうか?」
「……ふむ」
投げかけられた問い。
なるほどそういう言い換えも出来るか―としばし逡巡して、首を振る。
「違うな、俺が好きなのは戦う事だ、それで人が死んでも、そいつはあくまで副産物だよ」
「しかし」
食い下がる。
秋月は、どこか必死な顔で俺に食い下がっている。
「例え貴方にとってそれが副産物にすぎないにしろ、戦うというのはつまり、人を殺すということではありませんか」
「……そう、言えるかもしれないな」
必死さは取れない。
先ほどまで見せていた遠慮など、完全に今の彼女からは取り払われている。
一体どうしたのだというのだろうか。
普通に考えて、俺のような人殺しの狂人は、彼女にとって好ましからざる人物、ということか。
いや、どんな奴がそんなもんを好むかは全く持って疑問だが。
けれどなぜだか、今の彼女を必死たらしめているものは、少なくともそういった俺への軽蔑や侮蔑では無い、そんな風に感じた。
「………怖くは、ないのですか」
間を開けて、彼女はそう漏らした。
那珂と赤城が騒ぐ声など、もはやただ耳を通り抜ける雑音以下の物と化していた。
「…怖い?ああ、怖いな、…戦いは怖い」
「違います」
首を振る。
そんなことを聞いているんじゃない、と。
「人を」
「…人を、殺すことが、怖くはないのですか」
思案する。
その問いをはぐらかすのはきっと簡単だったろうが、それは彼女の求めているものではない。
「…………怖くは無い、な」
故に、胸に浮かんだそのままの答えを述べた。
彼女はそう答えることを予測していたというように、言葉を継ぐ。
「…差し障り無ければ…その理由、お訊ねしてもよろしいでしょうか?」
「…それは――――」
>>+2
A.…俺が、弱いからだ。
B.…俺が、強いからだ。
C.…俺が、狂っているからだ。
b
Aかな
b
A.…俺が、弱いからだ。(―秋月好感度+3)
「強いて、言うのであれば」
「はい」
「…俺が、弱いからだろうな」
もう一度酒を掴みかけて、それを宙空で止める。
こんなものを飲みながらする話ではないと、なんとなく思った。
「逆だと、思いますが」
「…逆?」
「…貴方は強いから、そのような些事には囚われないのだと」
「些事…些事なんかであるもんか、人殺しが」
数多の命を、それも那珂の歌を聞いて平穏に浸かった命を奪ってきた。
あまつさえ、それを楽しみだと言い切った。
嘘ではない。
それは嘘ではない。
楽しい。愉しい。心が震える程に、愉しい。
那珂の歌は『聞くもの皆』を、平穏にさせる声。
仕手である俺も例外でない―どころか、最も強く影響される。
にも関わらず、俺は人を殺せる。平穏に浸かった心で、躊躇いも無く。
…ならばこそ。
俺は狂うているのだろう。俺は誤っているのだろう。
だが―それでも、人を殺すことが些事であるなどと考えたことは、一度として無い。
「人殺しは罪だ、それも、到底背負いきれぬ程の」
「なら!」
秋月が声を荒らげる。
此処に至って、那珂と赤城が初めて俺達の異変に気付いたらしく、目を向けた。
「それこそが、強さではありませんか!」
「……違う、絶対に違う」
睨み付ける、と言っていい程に目線に力を込めて、秋月を見る。
彼女はたじろいで、しかし視線は逸らさなかった。
「…初めて人を殺した時の事は、今でも覚えている」
「…………」
「この軍に入って最低限の訓練を終えて、本当にすぐの事だった」
「覚悟はしていたよ、覚悟くらいはな」
「反乱軍の一員として天龍型の艤装を纏った時から、…いや、その前、反乱軍に入る前から、生きるために他者を殺す、そのくらいの覚悟はしていたさ」
「だが――」
太刀が、肉を切り裂く感覚。
内蔵を震わせるような、敵の―人間の悲鳴。
飛び散った血。
「…俺は、泣いたのだと思う、多分な」
「惨めに、幼子のように、戦場で」
「初陣で艦娘を仕留めるという大功は、喜びなどでは無かった、決して」
「……なら」
それはおかしいじゃないか、と。
秋月は険しい表情で、口を挟んだ。
「…だから、…その時」
「……え?」
「俺が狂ったのは、その時だろう」
目の前で転がる人間は、昨日まで生きていて。
普通に笑って、普通に怒って、普通に泣いていた。
それを奪う事。
戦いというやり取りを通じて、それを奪ってしまう事。
受け入れられずに、俺は笑った。
涙を流しながら、笑った。
笑った。
なんと甘美なのだと、その所業を笑った。
戦場の真ん中で笑う薄装甲の軽巡艤装に、敵は群がる。
だから裂いた。
もう一人、突っ込んできた駆逐艤装を、真っ二つに裂いた。
そして、笑った。笑って。もう一人。
「その大罪を、俺には受け止める勇気など無かったんだよ」
「…ただ、目を逸らすことしか出来なかった」
「……だから、どうせなら思い切り逸らしたんだ、全く別の方向にな」
「愉しいと、愉快だと、甘美だと、陶酔することにした」
「……狂人を演じる者は、いつしか本当の狂人になる」
「…気付いたら、命を賭けて命を奪う事が俺の生きがいになっていた」
「その中でもな、自分を極限まで擦り減らして、相手の命を奪うことが、この上ない歓びになっていた」
「腕が飛ぼうが、足が飛ぼうが関係無い」
「…ああ、そうだ、そうだよ、秋月」
「俺がこの軍に参加しているのは―己が戦闘欲を満たす、ただそれだけなのだ」
「…さっきは一度否定したが、訂正しよう」
「俺はな、人殺しをせねば落ち着かんのだ」
「…提督、さん」
「……そういう人間に、なった」
「…………」
「…………」
「…………」
返す言葉どころか、相槌すら無く。
秋月も、赤城も、那珂も、誰も口を開かない。
全く、とんだ親睦会もあったものだ。
「…俺は弱かった、弱すぎて、狂ったのだ」
「これで満足か、秋月?」
半ば強引に結論づけて、酒を取る。
どことなく先よりも温くなっていた液体に、舌打ちを漏らした。
それを持つ手が震えているのはきっと、酒のせいではない。
「……それでも」
「…うん?」
「…だとしても、貴方は」
「強い、と?」
「……ええ、秋月は、目を逸らすことが出来ませんでした」
「違うな」
「お前の方が余程、俺より強いさ」
「…なぜ」
「…目を逸らさないでいられるからだ、己の所業に、向き合えるからだ」
「……笑ってしまえば楽だ、確かにな」
「…だが決して、それは、強さなんて物じゃない」
沈黙。
流れたのは、沈黙。
甘味が運ばれてきても、誰一人それに手を付けるものはいなかった。
「……那珂?」
「…………」
その沈黙の中。
震える手が、突然、何か柔らかいものに包まれる。
握る力は、強かった。
「…提督は」
「…おかしくなんか、ないよ」
「…那珂」
「……おかしくなんか、ない」
…いっそ。
こいつが、ただの道具であればよかった。
贋艦のように、喋らぬ武器であればよかった。
例え真艦であっても、嫌ってくれればよかった。
狂人が、と軽蔑してくれればよかった。
幾度も思ったことだ。
ハジメ
誓いから、ずっと思っていたことだ。
「………初めて話したか、お前にも」
「…うん、初めて聞いた」
「…なら、軽蔑しろ」
「出来ない」
「…どうして」
「…出来ない」
「…那珂」
「……出来ないもん」
手は、握ったまま。
強く、強く、握ったまま。
「提督さん」
「…ああ」
秋月が、口を開く。
その感情を読み取れる程、心は凪いでいなかった。
「…秋月も、訂正させて下さい」
「何を」
「狂れた方、などと言った事です」
「…良い、事実だ」
「いえ、訂正させて下さい」
「…それと、もう一つだけ、いいでしょうか」
「ああ、何でも聞け、今なら何だって答えられる気分だ」
「……復讐とは、何だと思いますか」
「決まってる、そんなもん」
「つまらんこと、だよ」
「……ありがとうございます」
大仰と言える程にまで、秋月が頭を下げた。
それを見て、ぱん、と大きく手を叩く。
「さて、折角頼んだことだし、甘味を食おうか」
「…提督」
「那珂、そろそろ鬱陶しいから手を離せ」
「でも」
「どうせ変わらん、今までそういう風に生きてきたんだ」
「そうだな、戦争が終わったらまた改めて生き方なんてもんを考えてやるよ」
那珂を遠くに押し退け、甘味に手を伸ばす。
酒が入った舌には、やはりどこかざらつく味だった。
結局、最後まで親睦会が盛り上がりを見せることは無かった。
好感度
秋月 ★★★★★★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
3章クリア条件―達成
>>+2
A.那珂
B.赤城
C.秋月
A
c
A
なんも書いてなくて不穏だな
死亡判定?
そんな那珂ちゃんをいきなりころころすることはなでしょーが
ないよね?
ここまで、さっきのは提督を慰めにくる人選安価だった
やったね秋月ちゃん好感度が増えるよ
おっつ
好感度増えてもなぁ…(原作を見返しつつ)
おつ
おかしいな、好感度が上がってるのは秋月のはずなのに那珂ちゃんの好感度がぐんぐん上がってるぞ
乙
好感度が増えるとどうなるんですかね…
乙
秋月の好感度上がっても三章終わったら離脱するから那珂ちゃんの独擅場よ
離脱(意味深)
乙
離脱ってあれでしょ、秋月が良い感じに立ち直って自分探しの旅に出るみたいな(白目)
乙
死ぬんやで(直球)
乙
ルートに入るには好感度上げなきゃ(使命感)・・・って思うじゃん?
乙です
乙です
秋月が赤城さんを越えたか
やはりナイト深海棲艦との戦いで最強だということが証明されてしまったな
ナイトはヘイト貯めながら回復もできるし敵をバラバラにするから必然的にLSでの発言権が強くなる
ちなみに至高の騎士はグラットンソードを使い手でこれは深海棲艦のダークパワーを持っているし
ナイトが持つと光と闇が備わって最強に見えるが逆に暗黒が持つと頭がおかしくなって死ぬ
そうですかグラットンすごいですね
それほどでもない
あっ、そうだ(唐突)
2周目の職業テーブル(予定)
次回は安価の段になって新職業を採用する気は無いので、何か追加したい設定があったら今のうちに言ってくれれば、というか学生の設定が微妙なものしか浮かばないから知恵を借りたいと言った方がいいか
(本当はパンツに禁断症状を持つとか入れたかったけどやめた)
取らぬ狸のとは言うけどね、備えあればとも言うからね
A.英雄を夢見る学生
A-1.海軍省の佐世保虐殺の折に父を殺された。
A-2.思春期にありがちな英雄願望。
A-3.資産家の息子、実家は海軍省のスポンサーの一。アホらしい願いだとはわかっているが、それを捨てることが出来ずに育った。
B.海軍省の軍人。
B-1.大戦でずっと前線従軍をした経験を持つ歴戦の「提督」。佐世保でも活躍した、かなりの権力を持つ古豪。
B-2.いいとこの家の出の坊っちゃん。はっきり言って手に余る装備でありながら、士官学校卒業と同時に家の権力を使って欧州連合預かりの真艦を無理矢理手に入れた。
B-3.それなりの戦闘経験(といっても大戦ではなく、反乱鎮圧)を積んだ少尉。正規戦闘における艦娘撃墜数は三十四と、方面軍では堂々のエース。愛機は「九四式戦艦」金剛型だったが…。
C.欧州連合に所属する軍人。
C-1.英国、バッキンガム宮殿にて幼い王女の側仕えをする正真正銘の英国近衛騎士。王女の大和統治の補佐に同行。白人、とくに英国人至上主義者。
C-2.反欧州連合思想を持つ米国人。急進的独立派。大和にやってきたのは様々な思惑を込めて。高級将校。
C-3.大和人。海軍省に見切りを付け、欧州連合に与するが、目指すのはあくまで大和の繁栄。
A-1が見たいです(迫真)
主人公の立ち位置として海軍省側、義勇軍側、欧州連合側の3つに分けられるから
Bで欧州連合や義勇軍のスパイとかCで海軍省のスパイみたいな隠密行動もやってみたいよね
スパイいいですね
A.英雄を夢見る学生
A-1.海軍省の佐世保虐殺の折に父を殺された。
A-2.思春期にありがちな英雄願望。
A-3.資産家の息子、実家は海軍省のスポンサーの一。アホらしい願いだとはわかっているが、それを捨てることが出来ずに育った。
B.海軍省の軍人。
B-1.大戦でずっと前線従軍をした経験を持つ歴戦の「提督」。佐世保でも活躍した、かなりの権力を持つ古豪。
B-2.いいとこの家の出の坊っちゃん。はっきり言って手に余る装備でありながら、士官学校卒業と同時に家の権力を使って欧州連合預かりの真艦を無理矢理手に入れた。
B-3.それなりの戦闘経験(といっても大戦ではなく、反乱鎮圧)を積んだ少尉。正規戦闘における艦娘撃墜数は三十四と、方面軍では堂々のエース。愛機は「九四式戦艦」金剛型だったが…。
B-4.海軍省少佐だが、利権を目指して欧州連合と内通。海軍省内部で多数の工作を行う。戦闘は不得手。
C.欧州連合に所属する軍人。
C-1.英国、バッキンガム宮殿にて幼い王女の側仕えをする正真正銘の英国近衛騎士。王女の大和統治の補佐に同行。白人、とくに英国人至上主義者。
C-2.反欧州連合思想を持つ米国人。急進的独立派。大和にやってきたのは様々な思惑を込めて。高級将校。
C-3.大和人。海軍省に見切りを付け、欧州連合に与するが、目指すのはあくまで大和の繁栄。
C-4.大和人。海外留学中に大戦が勃発し、終戦まで帰れなかった。終戦後、海外の伝手を便り駐留軍に参加。しかし裏では海軍省と繋がっている。
退役軍人や脱走兵ってのは軍人に入るのかな?
例えば欧州連合所属→戦闘にうんざりして脱走→巻き込まれて海軍省側としてとか、その逆とか
欧州の学生とかどうよ
後は学生で捨てられたところを海軍省or義勇軍or欧州連合に拾われて盲信してるとかさ
今回みたいな義勇軍はどれを選べばいいの?
それとも今回選んだから次回は無し?
利根の茶々丸感がすごい好きなのじゃ
裏切って利根の仕手になろう
原作でもあの展開好きなんだよなあ
「…………」
居室、一人息を吐く。
那珂はいない。側に居たがったが、追い出した。
「…くそっ」
悪態をつく。
対象は自分。
何を俺は不幸自慢のような物を語っているのだ。
語るにしても、語り方というものがある。
なぜ、俺はあんな素直に全てを吐露してしまったのだ。
秋月に、大して深い親交もない少女に。
あれではまるで、慰めて欲しいと、わかって欲しいと言わんばかりではないか。
自分の苦悩を、自分の弱さを。
「……………」
俺は弱い。
どうしようもなく弱い。
弱さ故に、全てを見ることをやめて。
弱さ故に、強くあろうとして。
弱さ故に、狂った。
だが、だからこそ、その弱さをひた隠しにしてきた。
誰にも見せることなく、狂人の仮面を纏ってきた。
戦場に出続けて、笑って殺した。
戦を愉しんだ。
自らがどれだけ傷つこうとも、お構いなしに。
いや―或いは、俺は死にたかっただけなのかもしれない。
狂ったままで、見ないままで。
戦場で、あの場所で死んでしまいたかったのかもしれない。
では、何故俺はその弱さを、わざわざ自分から見せたのか。
『………てーとく』
「……はっ」
その理由に、一つだけ思い当たって、笑う。
あの時、俺は秋月ではなく―同じく側にいたあいつに、話を聞いて欲しかったのだろうか。
…だったら、だとしたら。
馬鹿らしい。
馬鹿らしい人間だ。
本当に、どこまでも。
「…………」
そうして、自分への罵声の代わりに、溜息を吐いた時。
不意に、部屋の戸が静かに二度、叩かれた。
「………誰だ?」
那珂ではない。
そのくらいは感覚でわかる。
とすると、反乱軍関連の用件しかないだろう。
「悪いが、今は少し体調が優れん、後で」
『…秋月です、提督さん』
『少し、宜しいでしょうか?』
「………秋月?」
一体何の用だろうか。
追い返そうかとも一瞬考えたが、用件すら聞かずに帰すのも如何なものだろうか。
それに、先程はあんな話を聞かせたのだと思うと、無下に断る事も出来ない。
「……わかった、入っていいぞ」
「失礼します」
「あの愉快な剣はお留守番か?」
「はい、二人で話したかったので」
戸の向こうから覗いた秋月は、随分と簡素な格好をしていた。
そして、表情も普段より幾分柔らかい。
「話…か、今はあんまり愉快な返しは出来ないぞ」
「いえ、大丈夫です、殆ど一方的にお話をしたくて来たので」
「…そりゃいい、楽そうだ」
「はい、どうか、楽になさって下さい」
直立の慇懃な態度で、秋月がベッドに腰掛ける俺の前に立つ。
「……流石に立ったままで話せとは言わねーよ、そこの椅子、使ってくれ」
「ありがたく」
「それで…話か」
「はい、話です」
「つきまして、…ひとつ、もう一度訊ねたいのですが」
「…聞いてるだけで良かったんじゃないのか?」
「……返す言葉もございませんが、ひとつだけ」
「…ああ」
「……復讐とは、何だと思いますか」
「つまらんこと、だ」
「では、それを支えにして生きてきた人間は」
「………」
「……答えられませんか」
「…俺の主観でなら答えられる、だが、そんな物を聞いてどうする」
「主観で構いません、貴方の意見が聞きたいのです」
どうか。
秋月が小さく頭を下げた。
「…可哀想だと、俺は思う」
「可哀想、ですか」
「理由を挙げろと言われても困るがな、思ったことを率直に言うなら、そうなる」
「…ありがとうございます」
「前置きは終わりか?」
「はい」
覚悟を決めるように、息を大きく吸い込んで。
再び俺に向き直る。
「秋月は、復讐の為にこの身を兵器に窶しました」
「相手は」
「欧州連合」
「誰の仇だ」
「母と父」
「それは、成せたか?」
「……一片たりとも、成りませんでした」
「…そうか」
「この身、ただの一度も復讐の刃となることなく、大戦は終わりました」
「今もその無念を引き摺っている…という風には、見えんな」
「はい、仰る通りです」
「…今は、欧州連合の大和駐留軍に所属しております」
「……スパイか?」
「はい、此処に来た目的をそのまま挙げるのなら、そうなります」
衝撃の事実―であろう、おそらく。
それを平坦に、冷静に、彼女は告げる。
「………」
「怪訝な顔を、なされていますね」
「そりゃそうだ、どんな顔をすればいい」
「まあ…ある程度、予測はしておりましたけれど」
言って、秋月が笑う。
初めて、彼女の笑みを見た。
「……笑うんだな」
「………?」
「…今、笑っていた」
「…ああ…そうですか、秋月は笑っておりましたか」
「……いえ、貴方もそんな顔をするのだと、可笑しくなったのですよ、『死唄』殿」
「………なんだ、その呼び名」
「海軍省や駐留軍の間では専らこう呼ばれております、貴方と艦娘は」
「最後の安息を届ける歌、それを聞いた者は例外無く死ぬ―でしたでしょうか、おそらくそんな逸話から名付けられた筈です」
「…わりかし取り逃がしてんだがなぁ、敵」
那珂の歌を聞いた人間が考える思考は逃避か暴走、大凡この二つしかない。
故に、暴走してめちゃくちゃに打ち掛かってくる人間が時間を稼ぐ間に、結構な数の敵機は逃げていく。
少なくとも、例外なく殺して回った覚えはないが。
「噂―それも戦場の噂というのは、いつの時代も誇張されているものですよ」
「東北の辺りでは、反政府勢力が貴方という又聞きの存在をまるで英雄のように崇めているとか」
「『海軍省に正義の刃を振りかざす艦娘』―とでも?」
「ほぼ正解です、自己評価には優れておいでなのですね」
また、笑う。
存外に皮肉めいた事を言うものだと、目線を逸らした。
「……やめてくれむず痒い、…俺は…」
「…ええ、そうですね……ですから、秋月は、先の貴方の話を聞いて、意外だと思いました」
「弱い人間だとは思わなかったか?」
「いえ、人殺しの狂人ならば、弱く、心が耐え切れず狂ってしまった故と事はあるのではないか―とは、考えていました」
「……なんだ、なら何も意外ではなかろうが」
「…優しい人間であるとは、思いもよりませんでしたから」
「……は」
何か言葉を継ごうとした口が、その形で固まる。
冗談にしては、中々笑えない。
「貴方は優しい」
「……あー…なんだ、それは」
「弱さであると先程はおっしゃいましたが、…それは違うと、秋月は思います」
「………」
……何が言いたいのか。
よくわからない。
「弱い人間というのは、秋月のような者を指して言うのです」
「…復讐を果たせなかったからか?」
「いいえ」
「…では、仇である欧州連合に頭を垂れたからか?」
「いいえ」
「………じゃあ何だ」
「…秋月は、6年前の佐世保虐殺に、海軍正規部隊として参加しました」
「……」
思ってもいなかった返しに、再び眉をひそめてしまう。
秋月はそんな俺に構わず、続けた。
「戦果は軽巡1、本土戦に向けてやっと海軍省が開発したばかりの試作天龍型艤装でした」
「こんな事を言うと貴方は笑うかもしれませんが、あの時、秋月は何も考えていませんでした」
「大戦が終わったと、それを聞いて、何もする気力が起こらなかったんです」
「……笑いはせんが、よく生き残ったな」
「ええ、だって、軽巡を切った後、秋月は逃げましたから」
「逃げた?」
戦場からの脱走は、大和海軍において反逆に次いでの重罪である。
だが彼女は事も無げにそう言って、自嘲の色を浮かべる。
「…怖くなりました」
「人を殺すことが、か?」
「いいえ、そうであれば―そうであれば、どれほど良かったか」
唇を噛み締めながら、秋月は言う。
「…では、何が怖くなった?」
「恨みが」
「恨み?」
「……ええ…人を殺したことに、後悔はありませんでした」
「…そこが、貴方と違うのです」
「秋月は、ただ…」
「誰かに怨まれるのが、どうしようもなく怖かった」
吐き捨てるように、震える声で言う。
「秋月が切り捨てた男は、最後に名前を呟きました」
「……娘の、名前でした」
「…秋月は、怖くなりました」
「もし父親を秋月が奪ったと知れば、その子は秋月を怨むのではないかと」
―そう、それこそ自分のように。
目を伏せたままで、彼女は続ける。
「耐えられませんでした」
「考えるだけで、自らに悪意を向けられることを考えるだけで」
「……矮小なのです、浅ましいのです、勝手なのです」
「自ら復讐の為に兵器に身を捧げたその癖、秋月は自分が怨まれるのが怖くなった!」
「……秋月」
それは違うと、言いたかった。
何の慰めにならなくても、それでも。
…なぜ、だろうか。
「…その後―どうしてかは知りませんが、秋月は生きていました」
「佐世保から、海軍の監視からも逃げて」
「山を彷徨って――ある婦人に、拾われたのです」
「…幸運だったな」
「ええ、幸運でした、掛け値なしに」
「あの村は幸せで、暖かな場所でした」
「…秋月は、まるで普通に生きているような気がしました」
「……ずっとあの場所に居られれば、どれだけ幸せだったか」
「…ならば、どうして」
今、秋月が駐留軍に所属しているのならば、それはつまりその場所を離れたということ。
俺の質問へ答える前に、彼女は、乱れた心を落ち着けるように息を吐く。
思い出したく無いのだろう。
先程よりも、辛そうに見えた。
「……山賊でした」
「山賊…ああ」
珍しくもない話だ。
今ならともかく、6年前の九州、しかも佐世保動乱の後など、その手の輩はうようよしていた。
武器と戦闘の作法だけを構えて、あぶれた者達はいくらでもいたのだ。
「…そうか、村は」
「勘違いなさらないで下さい」
「…あの村を滅ぼしたのは、秋月です」
「…………」
奥歯を噛み締めて、無理矢理眦を真っ直ぐ、俺へと向ける。
神父へ懺悔する罪人でさえ、こうまでは自分に対しての嫌悪を浮かべぬだろう、という表情で。
「あの時の山賊は、6人でした」
「広場で銃を振り回し、食料や土地を求めました」
「……土地か、…そうだな、あの時期は何より、居着ける場所が重要だった」
「ええ、ですが…村人は譲りませんでした」
「…撃たれたのか?」
「いいえ…山賊は、皆、死にました」
「………」
「秋月が、殺しました」
当然である。
艦娘に、歩兵銃で武装した兵士崩れ如きが正面切って渡り合える道理はない。
しかしそれは、むしろ村を救うための行動だったのではないだろうか。
頭に浮かんだその疑問には、すぐに彼女が答えた。
「あの時―秋月は、英雄気取りでした」
「殺した事への後悔どころか、むしろ昂揚さえ覚えていました」
「秋月は義の為に悪人を殺したのだと、誇らしくさえ」
堪え切れぬといった風に笑って、吐き捨てる。
声には、かつての自分へ向けての嫌悪と侮蔑がありありと表れていた。
「……村人だって、お前をそういう風に扱ったんじゃないのか?」
「…ええ、そうですね、少なくともその時、秋月はそれを期待していました」
「ですが、…違った」
「彼らが、彼女らが秋月に向けたのは、怨みでした」
「……なぜ」
「海軍省を」
「佐世保の虐殺を行った海軍省を、彼らは怨んでいました」
「そして、それを主導した艦娘を」
「………」
佐世保から逃げたらしい秋月が、どれ程遠くまで行ったのかは定かでない。
だが、海軍の監視網に囚われずに居たということは、少なくとも飛行して逃亡したわけではないだろう。
ならば、その村は佐世保に近い位置にあったと推測できる。
今でさえ、九州の国民は海軍省を怨んでいる。
そう、6年前から、ずっと――
「……怖くなった」
「…怖くなったんです」
「その視線に、怨みに射竦められて」
「……だから、逃げました」
「…また、秋月は逃げました」
「誰でもいいから、自分を受け入れてくれと」
「ただ、それだけを願いながら」
「……それで出会ったのが、欧州連合だったのか?」
「はい、…大和に潜入していた工作員の方です」
「…秋月は、最初の誓いなど忘れて、彼女に身を寄せました」
「彼女がくれた居場所は、少なくとも怨まれる事はなかったから」
「……どこまでも勝手で、醜悪な人間です」
「…だが、秋月、お前は立派じゃないか」
「立派?」
何の冗談か、とでも言いたげに彼女は唇を噛む。
「皮肉なんかじゃない、お前は、拾ってくれた村を救っただろう」
もし秋月が山賊を殺さなければ、村の人間は少なくない被害を受けていた筈だ。
それを防いだのが彼女であることは、間違いないのだから。
だが、彼女は俺の言葉を受けて、表情を更に険しくしただけだった。
「言ったじゃないですか、村は、滅んだと」
「滅ぼしたのは、秋月だと」
「…どういう」
「後で知りましたが、最初の山賊の一団は、ただの斥候隊でした」
「村の要求に対する反応を知りたいがための」
「……な」
「ええ、それが皆殺されたのですから」
「村の辿った末路など、わざわざ言うまでもありませんでしょう」
「…………」
「自分に向けられる筈の怨みから、秋月は逃げて、それを他人に背負わせたんです」
「…確かに、これ以上無い程に立派、でしょうね」
「………秋月」
「拾われてから、秋月は様々な事をしてきました」
「駐留軍が大和でより良く動けるように、様々な事を」
「何を考えるのも嫌になって、操り人形のように」
「同じ大和人を手に掛けたことだって、一度や二度ではありません」
「今回だって、状況によってはそうするつもりでした」
「……では、何故話した」
告げた言葉に、秋月は笑う。
それは自嘲も嫌悪も込められていない、ただの笑みだった。
「…秋月は狂っているのでしょう、狂ってしまったのでしょう」
「狂人であれば、楽だから―貴方が仰られていた事です」
「秋月も、そこに逃げたかった」
「信念無く、言われるがままに刃を振るう、狂人でありたかった」
「ならば、俺とて変わらん」
「違います」
重い言葉。
背中にのしかかってくるような、質量のある言葉。
「…貴方は、優しい」
「何を――」
「貴方は、その優しさ故に、狂った」
「人を殺す罪に耐え切れずに、狂ったのです」
「秋月はただ、我が身可愛さの為に、自分に向けられる怨みの為に、狂ったのです」
「違う、自分の為に狂った秋月と、他人の為に狂った貴方は違う」
「そんな事があるか、俺は…」
「秋月は、貴方の言葉で―少しだけ、正気に戻ることが出来ました」
「…何も見えなかった闇に、ほんの少しだけ、光明が差しました」
「……俺は」
纏まらない言葉を、何とか口に出そうとしたが。
それ以上はいい、と彼女は俺の唇に手を当てた。
「……これまでは、全て前置きです」
「…前置き?」
「はい、秋月は、貴方にお願いがあって来たのです」
「………」
「殺して下さい」
「……秋月」
「秋月を、殺して下さい」
首を差し出すように、彼女は頭を垂れた。
もう、狂人であるのは疲れたと。
その姿勢が、それを雄弁に語っていた。
6年間―駐留軍の大和に対する工作がどんなものかは知らないが、その中で彼女は何をしてきたのだろうか。
その行動に、何を思っていたのだろうか。
狂人の仮面を被り続けて、彼女は。
こうして今、懺悔のように弱さを吐露する秋月。
仮面を外したいと、楽になりたいと言う彼女が、どこか自分に重なった。
もう疲れた、狂う事に疲れた。
それは―先程まで、俺が思っていたこと。
似ている。
この秋月は、自分に似ていた。
そんな彼女に、俺は――
>>+2
A.思わず、目を背けた。
B.奇妙な親しみを覚えた。
C.愛しさを覚えた。
B
c
B
a
那珂ちゃん「解せぬ」
1秒か…流石になぁ
那珂ちゃん…
どうせ死ぬからへーきへーき
C.愛しさを覚えた。(―秋月好感度+4)
愛しいと。
目の前の彼女が、とても愛しいと思った。
自分に似た、彼女が。
「…秋月」
「………?」
差し出された首を、刃ではなく、手で撫でる。
少しくすぐったかったのだろうか、彼女は小さく身体を震わせた。
「…何を」
「……俺とて、変わらん」
「……ですから」
上げた瞳には、疑問が詰まっていた。
どうしてこんな事をするのだ、と。
「狂人であることすら、嫌になって」
「何度も、死にたいと思った」
「……」
「…戦の度に一番前に出続けていたら、誰かが俺を殺してくれると思った」
「これ以上、狂い続けなくて良いのだと思った」
「……だが、死ねなかった」
「どれだけ戦っても、どれだけ殺しても、死ねなかった」
「積もっていくのは、新しい罪だけだったんだ」
「…ずっと、逃げたかった」
「全てから、逃げたかった」
お腹空いたから一旦ここまで
秋月はこのままヒロインレースを勝ち上がるのか!? ネタバレ:3章限定ヒロイン
赤城の章ってなんだよ(哲学)
乙
どう沈むか楽しみやね
乙です
おつ
離脱がめっちゃ楽しみ
旦乙
乙乙
世界観が世界観だからね、仕方ないね
しかし赤城さんェ…
乙です
なんかもうヒヤヒヤするな
阿賀野みたいに無事離脱してくれればいいが
死ぬでしょ(無慈悲)
ベッドを降りて秋月の前に膝をつき、首筋に顔を埋める。
冷たかった。
鉄の、無機質な温度。
その体温が、彼女が艦娘である、兵器であると語っていた。
「提督さん」
「…どうして、だろうな」
「………どうして?」
「どうして、この世界はこうも理不尽なんだろうな」
「…………」
「俺達は、…最初からこうだった訳じゃない」
「確かにあったんだ、平穏な生活が、穏やかな生活が」
「……そんな、こと」
「…言って、しまったら、………」
秋月の眼が、潤む。
思い出してはいけない安らぎを、その奥に映して。
「………弱いんだ」
「…俺は、何も出来ないくらいに弱いんだ」
「戦い続けてないと、すぐにこんな風になってしまうくらいに」
「………なぜ、それを、秋月に…」
まだ、出会って間もない、自分に。
彼女は、やっとのことでそう絞り出した。
「……似ていたんだ」
「…お前が、俺に、似ていた」
「…………」
その時、秋月の瞳に浮かんだ様々な色彩が何を表していたのかは、もう判別が付かなかった。
彼女は暫く俺を見つめていたが、不意に、俺と同じように首筋へと顔を埋めた。
「………秋月は」
「…ずっと、誰かに、わかって欲しかった」
正常と認めて欲しかった訳じゃない。
哀れだと言われたかった訳じゃない。
苦労に同情されたかった訳じゃない。
ただ――彼女は、俺は。
「自分の弱さを、わかって欲しかった」
「……ああ」
潤んだ瞳から、涙が零れた。
一度切れてしまった堰は、もう止まらない。
これまで見せていた鉄面皮は、溢れた水に流されて。
見た目通り、年頃の少女がそこにいた。
「任務が、決まった時」
「……貴方に、話を聞こうって」
「…ずっと、思っていました」
「…どうして」
「あの質問を、したかったんです」
「食事会の時の、か」
「…はい」
「………良かった」
「…貴方に会えて、貴方に話して、良かった」
「………ああ」
「……しばらく、こうしていて、いいですか」
「いくらでも、此方から頼みたいくらいだ」
「…………ありがとう、ございます」
腕に、彼女の涙が落ちた。
兵器であっても。
溢れる涙は暖かいのだと、そんな事を思った。
いや―或いは。
これは、俺の流した涙だったのだろうか。
身を寄せ合って泣くのは、傷だらけの狂人達。
それは、滑稽な光景なのかもしれない。
だけれど、当人達は―間違いなく、安らいでいたのだ。
――――――――――――――――
「……そっか」
「…わかってあげらんなかったなぁ、全然」
「…………」
「……てーとくは、弱音、吐いてくれないから」
「…強いんだって、思ってた」
「………なーんも、見てなかったのかな」
「…恋は、盲目―かぁ」
「貴方の強い所しか、那珂ちゃんは知らなかったんだ」
「………ごめんね、てーとく、勝手に聞いちゃったのも、合わせて」
呟いて。
彼女は、扉に背を向けた。
好感度
秋月 ★★★★★★★★★★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
逆転したか…フフフ、怖い
「長ちゃん」
『む、どうした主様、まるで一大決心をその身に固めたような声だな、新たなる世界を求めるかい?』
「…まあ、そんなところ」
『本当にそうだったのか、いやいや、この剣、自分の洞察力に感心するばかりだ』
「……此処に、ずっといようと思う」
『……連合を裏切るかい?』
「…うん」
『…ふむ、良ければ理由を聞かせてもらっても?』
「……見つけたから」
『見つけた?』
「うん、やっと、秋月の居場所を」
『……ほう、いや、それは素晴らしいね』
『主様はぼっちだったからね、この剣くらいしか話に付き合ってやれなんだ、それがお友達を通り越して居場所を作るとは!』
「…長ちゃんは」
『ふむ?』
「帰る?」
『…帰るとは…東京―駐留軍基地にかい?』
「うん、…貴女は、私に与えられた監視でしょう?」
『そうだね、まあ…帰らねばならん、のだろうな』
『…でも、いいさ』
「……いいの?」
『ああ、…主様の剣としては一つも役に立たないが、一緒にいよう』
「……長ちゃん」
『…良い事があったんだろう?私にもわかるよ、そのくらい』
『声に、少し張りが出た』
『や、本当は表情を見てやりたいのだが、この通り、私は目が無いのでなぁ、はっはっは!』
「……ありがとうね」
『礼を言われる筋合いなど無いよ、主様』
『剣とは、そういう物だ』
『………ふむ、さて、ではそろそろ私は休眠するかね』
『少し疲れた』
「…うん、おやすみ、長ちゃん」
『おやすみ、主様』
『――――良い、夢を』
「ビスマルク」
「……貴女か」
東京、連合総司令本部。
その一室で執務をしていた欧州連合統一軍の制服を着た金髪の女は、ノックもなしに入ってきた白衣の少女にうんざりとした目をやった。
「貴女ねぇ、ノックくらいはしたらどうなの?」
「や、や、何しろ大和人なのでね、欧羅巴の作法には疎い」
「……本当に無礼な民族ね」
「はっは、大和人は自分らの文化を武力とセットでの押し売りをしないくらいには慎み深いさ」
「………民族論争をする程、暇じゃないのよ」
これみよがしに、金髪が溜息を吐く。
「おっと、そいつは失礼、ま、私とて格段の親しみがこの国にあるわけではないのだが」
白衣の少女が礼をすると、どこからともなく猫が現れて、下げた頭にぴょこんと乗る。
滑稽とまで言える姿だったが、それに対してすら、金髪―ビスマルクは笑みの形すら作らなかった。
「…で、何か用かしら?」
「ああ、そうそう!ビスマルクとの友誼を深める事に夢中になって忘れてしまう所だった!」
わざとらしく白衣の少女が手を叩く。
猫も、合わせて前足を叩いた。
ビスマルクの眉が、無意識に吊り上がる。
それを見て取ってか、白衣は多少声音を変えた。
「A1号が裏切った」
「…そう」
「驚かないんだね?」
「…アレは…何を考えているかわからなかったから」
「裏切ってくれて清々すると?」
「…少なくとも、長々と話していたい相手じゃないもの」
ビスマルクは、A1号―秋月の得体の知れなさがどうにも苦手であった。
九州、佐世保の偵察に行った折に拾ってからずっと。
確かに潜入や暗殺で成果を上げてくれるものの、普段から一切の感情の昂ぶりを見せない彼女が不気味だったのだ。
「…話はそれだけ?」
「そんな筈が無いだろう、どうでもいい事から話すのが、報告の基本だ」
「…………」
苛つきが思わず表情に出そうになるのを抑えて、ビスマルクは早くしろを顎で示す。
彼女は、この白衣の猫を持った少女のことが、秋月以上に苦手だった。
「えー、では、まず一つ」
「あの剣に仕込んでいた小型遠隔通信機構の試作品だが、東京から日本の各所を経由してとはいえ、かなりの精度で通信が可能だった」
「……タイムラグは?」
「殆ど無いね、以前はノイズが入ったりしていたものだが、最近は完璧だ」
「調整はあんなものだろう、正規規格を作る事も視野に入れられるよ」
「…そう…」
成功の報告、しかしビスマルクはどこか不満気に頷く。
どうしたのかと白衣が疑問の表情を浮かべると、彼女は苦々しさを隠さずに言い放った。
「ドイツの優れた研究者達があれだけ苦戦した技術を、こんな極東の未開人に完成させられるとはね」
「はっはっは!まあまあ、得てして人生などそんなものさ」
だが、白衣はそんな事は気にも留めた様子なく、愉快げに笑う。
それが一層ビスマルクの機嫌を悪くした。
「それだけなら、帰ってくれるかしら?」
「おっとっと、まず、と言ったろう…焦るなよ」
「…なら急いで、時間は無限じゃないのよ」
「凡人にとっては時間など無限さ、そして無為だ…さて、中佐殿におかれては…如何だろうね?」
「急げと言っているの」
「…はぁ、全く…まあいい、本題はここからだね、A1号の実戦テストが、そろそろ出来るよ」
「…貴女が仕込んでいたアレ?」
「うむ、非常に興味深い技術だったからね、秋月型というのは…つい張り切ってしまったよ、柄にも無く」
「……張り切る、ねぇ」
疑いを引っ込める様子すらなく、ビスマルクが応える。
「おいおい、私は元々艦娘技術者だよ?そりゃあ張り切るさ、本業なのだから」
「…何の技術だったかしら」
「そうだね、秋月型の刀を改造させて貰って出力をかなり上げたが…ふーむ、結局あの機構は理解出来なんだ」
「貴女にもわからなかったの?」
「ああ、どうにもやはり艦娘という物はブラックボックスだな、わからない所が多すぎる」
「まあしかし、わからない所が多いというのは、それだけ色々な物を知ることが出来るということでもある、嬉しいね」
「…個人的な感情なんてどうでも良いのよ、それで、その刀の実戦テストに意味はあるの?」
「無い無い、あれはオンリーワンで作られた物だ、少女の御霊と引き換えにね」
「だから、そっちは趣味だよ、趣味」
「……ってことは、この前言っていたアレのテスト?」
「ああ」
ビスマルクが執務机から書類を取り出す。
そして、改めてその紙に書かれた内容に目を通し、悍ましさに身を震わせた。
「…正気とは思えないわね」
「科学の前にはどんな狂気も許される、ということさ」
「それに、こういう技術は如何にも君達好みだろう?」
「……どういうことかしら」
「うん?いやいや、選ばれしアングロ・サクソン以外の民族を捨て石にするのは常套手段じゃないかい?」
「……………」
「怖い顔をしないでくれよ、ビスマルク」
「……まあ、良いわ、それで」
「ああ、秋月の真艦艤装には、この6年かけてかなり入念に細工を施しておいた」
「奪うのは簡単だね、……いや待て、奪われた事に本人が気付かないのだから、この場合は盗むと形容した方が良いか?」
「どちらでも構わないわよ、……にしても、随分手際良く完成させたわね、こんな物を」
「…ああ…元々、旧大和海軍時代から考えられていた機構ではあるからだよ、その時関わっていた時のノウハウが役に立った」
尤も、完成を待たずに終戦してしまったがね―と白衣が独り言ちる。
ビスマルクは、つくづくこの大和民族という物がわからないと思った。
「……国家ぐるみでこれを?」
「うむうむ、戦争に勝つことこそ、国家の望みであったからねぇ」
「………狂ってるわ」
「ははは、そうだろうそうだろう、そういう国なのさ」
被っていた制帽を、思わず机に投げ出して。
ビスマルクは、理解出来ないと大仰に身体で表現した。
「大和の艦娘技術は進歩しすぎて、人の入る隙が無くなった」
「…とするとねぇ、はっきり言って、少女の意識なんてものは邪魔でしかなくなってくるのだよ」
「人が纏えなくなってしまい、少女の意識が操る自立武装となった艦娘――」
「それに必要な物は、命令を聞いて理解するだけの頭と、戦闘技術」
「その他一切の感情は―兵器が兵器たるには、少しばかり不必要な機構だと思わないか?」
「……そうね、…納得は出来ないけれど」
「…へぇ、君は博愛主義者だったのかい?」
「……人型を取れて、その上感情を持つものに対して、そこまで冷血になれないだけよ」
「驚いた、秋月は大和人なのに?」
「………それでも、よ」
「はっは!」
殊更愉快そうに、白衣が両手を叩く。
乾いた音が、執務室に虚しく響いた。
「いやぁ、今日は君の新たな一面を覗き見る事ができた、実に嬉しいね」
「……貴女も、秋月とずっと話していたじゃない」
「…ん?」
「何か思う所くらいないの?」
その質問に、白衣は非常に難しい問題に直面したような表情を浮かべた。
しかし、すぐに無表情に変え、息を吐いた。
「あのなぁ、ビスマルク」
「君は実験動物に対して、実験を遂行できるだけの体調管理以外の気を遣うのかい?」
「それともアレか、動物愛護主義者か何かか?」
「…………いいえ」
聞いた私が悪かった、と。
ビスマルクは目を逸らした。
そんなビスマルクに、白衣は背を向ける。
「いいかい、ビスマルク」
「科学に魅入られるということはね、即ち狂気に魅入られるということさ」
「そして、科学はあらゆる狂気を許容する」
「私に、君の常識を期待しない方がいい」
「……………」
ビスマルクは、今度こそ押し黙る。
言い様のない不快感に包まれて。
「…はっは!なんだか説教のようになったねぇ」
「そうだ、ビスマルク、性能テストはスポンサー同伴での観戦を提案するね」
「……九州に行くの?」
「ああ、砲艦―『フッド』を持て余していたろう、君の管轄で」
「流石に遠隔で映像を送り込むことは出来ないし、戦い振りは直接見てもらうのが一番早い」
クイーンズアーミー
「護衛に英国正規兵の中隊でも付けて、月見と洒落込もうじゃないか」
「うーん、良いねぇ、まさか英国紳士にエスコートされて月見をする機会があるとは思わなんだ」
「細工は流々、後は仕上げを御覧じろ―とな」
言いたいことだけ言って、返事も待たずに白衣は扉を閉じる。
一人残された部屋で、ビスマルクはひたすらに苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
黒幕は剣だったのだ
そして実は私はエラー娘が大好きなのだ
>>+1-3辺りで、なんか猫娘(エラー娘)の名前募集、良い名前付けたげて
無いと困るって主人公の提督くん書いてて思ったからね
影羅寧子とか
水城鈴
よし間を取って水城寧子で良いか、猫ちゃんだし
ここまでです
次回から3章終盤に突入です、別に修羅場はありません
あ、それと補足
ビスマルクは赤城と同じ人間で、普通の独逸人ビスマルク中佐です
乙乙
なん…だと…!?
エラーとエイラを掛けた中々の苗字だと思ったがな
おっつ
乙
ポロリはあるんですか?(白目)
ポロリ(首)
乙
初風かな(すっとぼけ
乙です
四肢ぶったぎられて犯されたあげく小便まみれになって狂って敵に利用される部品になるよ
乙です
あ、おい、待てい(江戸っ子) いつぞやのときに別の主人公の設定もある程度決めてたけど、艦娘もある程度決め定員じゃないですかね
上げんなカス
長3寸刀ちゃん…
自爆スイッチでも入ってるのだろうか
多分自爆なんて甘い物じゃないとは思う
会話内容からして感情や意識を無くして兵器にして提督と戦わせるんじゃないのかな?
「……………」
「……………」
………非常に。
…非常におかしい。
現在、俺は居室にいる。
隣にいるのは那珂。
それはいい。
よくあることだ。
かなりよくあることだ。
しかし、おかしいのだ。
那珂が喋らない。
うざいテンションで絡んでくることも、いきなり歌を歌い出すことも、トチ狂って抱きついてくることもない。
いや、それもいい。
面倒が減ってとても良い事だ。
……なのだが。
「…………落ち着かん」
居心地が悪い。
なんとも居心地が悪い。
那珂といるのに、那珂がいないみたいで。
「……おい、那珂」
「…………んー?」
ベッドに転がった那珂が、やや遅れて返事をする。
いつもなら超食い気味に返事をしてくるというのに、なんなのだ本当に。
「…お前、何かあったか?」
「……何か?」
首を傾げる。
心当たりは無い、と。
「とぼけるな、何だ…その、今日のお前は」
「……何か変?」
「変だ」
「……そうかなぁ…」
歯切れ悪く返事をする。
ええい本当に何なんだよだから。
「…だから…あー…今日のお前……いつもより、静かじゃないか」
「……ん、そうかも」
「そうかも、じゃなくて…一体どういうことだ」
「……あんまりうるさいと、てーとくに迷惑かなって、それと、ちょっと考え事」
「………………」
「…てーとく?」
……どういうことだ。
いつの間にこいつの中身は入れ替わった。
少ししおらしい振りをしているとかそんなレベルじゃあ断じて無い。
おかしい。
「……………な、那珂」
「うん」
「何を食べた」
「朝?…ふつーに食堂でご飯だよ?」
「…有り得ぬ」
「……って、てーとくも一緒だったじゃん」
「…かもしれない」
「………やー、なんか、那珂ちゃん的にはてーとくのがおかしい気がするんだけど」
「…でもいっか、てーとくも悩み、一杯あるよね」
ふふ、と柔らかい微笑。
何だこの控えめな感じの美少女は。
これは那珂じゃない。
これじゃあ那珂に似たただの美少女じゃないか。
「………訓練」
「え?」
「訓練をするぞ、那珂」
「…急だね?」
「急だろうがなんだろうが知ったことか、俺は刀を握りたい」
先程、既に今日は終わりだと訓練を上がったばかりだ。
汗も流したし、こうしてゆっくりとする態勢に入っている。
普段であればこんなことを言い出そうものならそれこそ駄々をこねまくるのが那珂だが――
「…ん、わかった」
「頑張ろ、てーとくっ!」
「……………」
転がっていたベッドからすっくと勢い良く立ち上がり。
準備万端だと手を振ってみせる。
……おかしい。
………おかしい!
何なんだ、これは。
「さー、いこーよ!」
本音を言えば俺だって今日の訓練はもう良い、と思う。
しかし、かと言って一度口にしてしまい、ここまで那珂がやる気を見せている以上、断る訳にもいかなくなった。
「……そ、そうだな…」
少しよろめきながらも立ち上がり、那珂の隣に並ぶ。
そのまま並んで、廊下へ。
「……ん?」
その時、彼女の指を見て、ある事に気付いた。
「…おい那珂、指輪は?」
「……あ、…えへへ、ちょっと封印中」
「封印?」
「うん、…まだ、那珂ちゃんはあれ、着けらんないかなーって」
雑誌の付録、安っぽいガラス球の指輪が、嵌められていた筈の薬指にない。
自惚れとかじゃなくて、大事にしてくれていた…と、思えたが。
「………そ、そうか」
「うん」
「…………」
封印だと。
なぜだ。
理由を聞きたい。
凄く聞きたい。
…あーもう聞いちゃおうかな。
……そうだ聞こう、めっちゃ聞こう。
「……那珂、あの」
「あ、おっちゃーん!」
「んあ、おお、嬢ちゃんか、今日も元気じゃのー、坊主も見習って欲しい……って、坊主はいつもにまして不機嫌だの」
俺の言葉は、前から歩いてくる老練兵士へ対する那珂の挨拶によって遮られた。
「…どーも、親爺」
「なんぞ景気の悪い、財布でも落としたか?」
「……いいえ、俺は元気です」
「……んん?」
「おっちゃん、皆の調子は?」
「はっは、心配するでない、皆元気よ」
老練の親爺は、元海軍省の大尉である。
艦娘に乗っての戦闘こそ大戦中は経験しなかったが、前線での作戦に従事していたらしい。
そういった経験を活かして、今は若い新米のまとめ役を買って出ている。
俺とて、この人に受けた世話は小さくない。
「そっかそっかー、良かった」
「嬢ちゃん、よければまた歌いに来てくれんか?」
「え?」
「あやつら、この前の嬢ちゃんの…らいぶ?というやつにえらく夢中になっていてのう…どうしてもまた聞きたいとせがむでな」
「ほ、ほんと!?…うん!行くよー!行く!」
「おお、おお…それは良かった…実は、この老骨めも嬢ちゃんの歌は好きじゃからのう」
「あー、皆をダシに使ったんだー」
「ほっほ!老いると悪知恵ばかり増えおる……なんじゃ坊主、また随分不機嫌な顔をして」
「……いや」
…那珂の奴、そんな事をしていたのか。
……全然知らなかった。
…………。
俺の知らない那珂の一面。
…考えてみれば、俺はこいつの事をどれだけ知っているのだろうか。
「……………」
……変な奴。うるさい。しつこい。面倒くさい。
…全然知らなかった。
こいつの過去だって知らない。
どういう経緯で艦娘になったのかも知らない。
今、何を考えているのかもわからない。
……考えれば考えるほど。
今まで俺はこいつを、命令すれば応えてくれる便利な存在としてしか考えていなかったのではなかろうか。
「……てーとく?」
「………ん?」
「どしたの、ボーっとして」
「……いや」
巻き込んで。
無理矢理、戦場に押し出して。
殺させて。傷つけて。
「…………」
…一度考え直してみると、我ながら酷い。
……こんな使い方だと、愛想を尽かされても――
………待て。
指輪を外す、よそよそしくなる、最近は若い兵士に慕われている。
この3つの要素を組み合わせると見えてくる真実があるのではないだろうか。
いや、もはや確定事項ではなかろうか。
…………。
…俺に愛想を尽かすのは当然なのかもしれない。
…そして、こんな性格の那珂の事だ、新しい恋ー!とか言って走りだす事もあるかもしれない。
…………だが。
……腹が立つ。
なんとなく腹が立つし、許せん。
…が、かと言ってそれは俺が口を挟んで良い問題なのか。
………答えが出ない。堂々巡り。
こんな事を考える機会はないから、当然と言えば当然ではあるけれど。
「おっと、これから長門の所に行かねばならん、それじゃあの、嬢ちゃん、坊主」
「うん!じゃーねー!おっちゃーん!」
「…ああ、またな、親爺」
「全く、この坊主は相変わらず……嬢ちゃん、何か困ったことがあればいつでも言うんじゃぞー」
……困ったことがあれば、言う?
…そうだ。
誰かを頼ってみれば良いのではないか。
幸い、頼れる人間は――まあ、居ないこともない。
相談などとは我ながら似合わぬことであるが…たまには、いいだろう。
…と、決まれば――
>>+2
A.長門。
B.赤城。
C.秋月。
D.もういっその事本人に聞いてみる。
A
c
d
1秒とかww
流石にバレバレ、もっとうまくやれや
一旦ここまで
(エラーと読める事に気付かなかったという顔)
乙
何時もの事だしスルーしなよ
乙
最近更新多くて嬉しい
乙
俺まで巻き込まないでくれよ
乙です
乙です
乙
「…………はあ」
「…と、いう訳なんだが」
「……あの」
「うん、思った事を言って欲しい」
相談相手に選んだのは、秋月。
先日あんな事を話してしまったのだし、特に何を話すにも抵抗がないと思えたからだ。
それに彼女も女性。そういったことには俺よりは精通しているだろうし。
なのでとりあえず、那珂との出会い、そして最近あったこと、それから先程の一件まで繋げて述べてみた。
恐らく彼女ならば、良い答えを導いてくれるだろうと。
しかし、俺の期待に反して言葉は歯切れ悪く、浮かべたのは、困惑というか苦笑というか、そんな顔だった。
「……えー」
「ああ」
「…では、ひとつ」
「うむ」
「それは惚気ですか」
「え」
のろけ。
惚気…?
何故そうなる。
「違う、ただの相談だ」
「どこが困ってるんですか!?」
「…な、那珂が…その、他の誰かと」
「……本当にそう感じたんですか貴方は…」
がっくりと肩を落とす秋月。
…ふむ?
『…………や、あのな、君、てーくん』
「…うおっ」
来ると思っていなかった方向から声が飛んできて、思わず仰け反る。
部屋の隅に置いてある剣からの物だった。
それも、殊更呆れ返ったような。
『…ふむ…いや、主様はこう…君に対しては強い言葉を言えないようだから』
『代弁しよう、うむ』
『本当は黙ってるつもりだったが…うむー』
「だ、代弁…?長ちゃん、どういう」
剣がこほん、と小さく咳払い。
…変な表現だが、実際その通りなのでそう表すしか無い。
そして、大きく息を吸い込んで――
『何考えてんだお前は馬鹿か馬鹿なのかこの朴念仁が一体お前の目は何を見ているというのだ阿呆馬に蹴られて豆腐の角で頭ぶつけて死んでしまえばーかばーか』
一気に言葉を告いで、はぁはぁと荒れる息を整え。
『……と、まあ…そんなところだ』
落ち着いた声で結論を出した。
「……いや、まるで意味がわからんぞ」
「…………」
『…主様、溜息を吐くでないよ』
二者一様の、呆れ声。
なんだか自分が酷く悪いことをしているような気分になってきた。
一体なんなのだ。
「……では、…そのー、少し、ヒントを」
「………というか、なんで秋月がこんな事をしているのでしょう」
『恋敵なのにね』
「な、て、提督さん、ちが、違いますから、そういう意味じゃないですからっ」
『でも大丈夫だ主様、主様には狂っているというアドバンテージがある!』
「アドバンテージなのそれ…いや、アドバンテージなのかもしれないけど…」
「………」
………。
剣と人間が漫才をしている。
実に愉快で滑稽で不可思議な光景だ。
まあ、そんなこともたまにはあるか。
とりあえず無理矢理自分を納得させた。
「……はー…えー…そのですね、提督さん」
「ああ」
「…那珂さんは、…昔から貴方と一緒に居たんですよね」
「ああ、そうだな、2年程になるか」
「その時に、貴方は既におかしくなっていた」
「…ああ、そうだ、そういう風にしか戦えなかった」
「…それを、那珂さんは最近まで知らなかった」
「……話しても無意味だと思っていたからな」
「そして、あの食事会で…彼女は初めて、貴方の弱さに触れた」
「…ああ…俺は…何故だろうな、あいつに話したかったんだ」
「それから、那珂さんはよそよそしくなった」
「………ああ、その通りだ」
「…それは、彼女がずっと、貴方の強さしか見ていなかったから」
「……指輪の件はきっと、好きな人の弱さに気付けなかった自分への反省なのではないでしょうか」
「……いやいや、そんな筈があるか、あいつはそういう奴じゃない」
「…やはり嫌われたんだろう、…待てよ、もしかして、前からかもしれない…」
「……ええー」
『……ええー』
冷たい目線に射抜かれる。
こいつら酷いな、さっきからずっと俺を責めてくる。
「なんでそうなるのでしょうか」
「それ以外に何があるというのだ」
「…………」
困惑と苦笑を混ぜて洗濯機で脱水掛けずにぶん回したような表情。
最近の大和家電の進化と言ったら驚くべきものがあるな。
「………では、わかりました、特別ヒントもあげます」
『わー主様太っ腹ー…私としてはこいつを斬りたくてたまらんがね、ていていっ』
再びの呆れ声で、仕方ない、と秋月が漏らす。
剣はぴくりとも動かないが、なんとなく殺気が飛んできたような気がする。
俺はそんなに悪い事をしたのだろうか。教えてくれ神様。
「…あの時、…私が、貴方のお部屋を訪ねた時です」
「ん、…ああ」
「……いつから聞いていたかはわかりませんが、彼女は居ました、ドアの前に」
「な…!?」
「…艦娘ですからね、近くに気配があれば、察せます」
「…き、気付かなかったぞ」
「ふふっ、それだけ、秋月に夢中だったのですね、嬉しいです」
悪戯っぽい微笑み。
どうしてだろうか、今の彼女に勝てる気がしないのは。
「……とにかく、ですよ、提督さん」
「あ、ああ…」
「こうなったら、直接本人の所へ行ってください」
いかにも面倒になった、という風に秋月が手で俺を払う。
扱いが酷い。酷すぎる。
「……那珂の?」
「…そうじゃないと、貴方納得しないじゃないですか」
「…う、うーむ、しかしだな」
「大丈夫です、絶対、貴方の考えてるような事態にはなっていませんから」
「……むむ」
「もう…わかりました、もしそんなことになっていたら、その時は――」
『秋月が…てーくんを優しく慰めてあげるねっ、身体で☆』
「………長ちゃん」
『む、違ったか?』
「……………」
顔を赤くして秋月が俯く。
………。
………や、なんだ、その…それは――
>>+2
A.恥ずかしながら、俺にはそういう経験が無いのでその辺りを了承して頂けると助かる。
B.………変な冗談を言うな。
B
A
エラー娘さんノリノリじゃないですか
いやーほのぼのだなー
A.恥ずかしながら、俺にはそういう経験が無いのでその辺りを了承して頂けると助かる。
「恥ずかしながら」
小さく頭を下げる。
視界の端に覗く秋月の顔は、まだ赤い。
「俺にはそういう経験が無いので、その辺りを了承して頂けると助かる」
「……え、へ、ええっ、ちょ、あの」
「…いや、割と本気で恥ずかしいのだが…まあ、そのな、機会に恵まれなかったというか、そんな余裕が無かったというか」
『大丈夫だてーくん!主様もこの歳で処女だ!ちなみに私も処女だ!』
「ちょ、長ちゃん何言ってるの!?え、えっと、いや、秋月は色々あったので、その、うああああああ…」
「……剣に突っ込む趣味は無いんだが…」
『新たな快感に目覚めるかもしれない!』
「…新しすぎるだろうが…」
緊張感の欠片もない。
なんだこの状況は。
…そりゃ、招いたのは俺だけれども。
「て、提督さんどうしましょう、脱ぎましょうか!?」
「何故そうなる!?」
そして状況は更なる混迷へ。
秋月がどうにも機関故障でも起こしたのかというレベルで赤い。
鋼鉄の肌が、朱を帯びている。
『脱ごうか?』
「何を脱ぐんだ!?」
『……色々、ね』
「その溜めはなんなんだ!?」
どういうことだろう。
秋月は半裸で下着に手を掛けて、俺は剣にツッコミを入れている。
……どういうことなのだろう。
結局この乱痴気騒ぎが収まるには、しばし時を待たねばならなかった。
…………。
…とりあえず、言われた通り那珂の所へ行ってみるか。
好感度
秋月 ★★★★★★★★★★★
那珂 ★★★★★★★★★
赤城 ★★★★
扶桑
長門 ★★
とりあえずここまで、まあ突発的に深夜投下するかもだけど
那珂ちゃんイベ→3章ラスト、の予定ですが間に幕間を挟むかどうか思案中
乙です
おつおつ
「那珂」
「…ん、おかえり、てーとく」
あれから。
勿論秋月にも剣にも手を出してはいない。
一通り落ち着いて、改めて、那珂の所へ行くようにと決心して。
現在、居室に至る。
「………」
「………」
静かだった。
那珂は、ずっと黙っている。
きっと、何かを思いながら。
「……那珂」
「…うん?」
「…少し、いいか」
「……うん、どしたの?」
覚悟を決めて、息を整える。
ただ人から話を聞くだけの事が、これほどの重労働であるとは思いもしなかった。
「…お前、俺の話を聞いて、何を思ったんだ?」
「……………」
ベッドに転がっていた彼女が、弾かれたように振り向く。
「……色々」
そのまま何度も何かを言いかけて、結局出てきた言葉はそれだけだった。
「色々、か」
「…うん」
「……良ければ、聞かせてくれ」
「……いいの?」
「ああ、聞きたい」
仕方ないなー、と那珂は身体を翻し、立ち。
大きく背伸びをして、俺の前に改めて座り直した。
「……那珂ちゃんは、ずっと」
「貴方が強いんだって、思ってた」
「…………」
驚くことに、秋月の推察とほぼ違わぬ言。
二つの意味で、俺は目を見開いた。
「…強くて、変な方向にだけど真っ直ぐで、誰の、勿論那珂ちゃんのことも顧みない勝手な人だって」
「だけど、そんな貴方に使われる事は、嬉しかった」
「…だって、一目惚れだったもん、本当に」
「貴方の武器になることが、那珂ちゃんの喜び」
「どんなに酷い扱いを受けたって、良かったよ」
「ぞっこんもぞっこん、惚れた弱みどころじゃないよねー、にゃははー」
「……じゃあ、なぜ」
「…それはね、あの話を聞いちゃったから」
「……その―ごめん、実はね、秋月ちゃんとの話も聞いてたの」
「…………そうか」
これも、秋月の言う通りだったか。
……なんとも、なぁ。
あんな想像しか出来なかった自分が、酷く俗な存在に見えた。
「それで―うん、その話を聞いても、提督のことをさ、軽蔑なんて出来なかった」
「貴方は苦しんでるんだって、辛いんだって知って、それを和らげたいと思った」
「だって、貴方が好きだから」
「それを知ることが出来なかった自分の見る目の無さに、我ながら落ち込んだ」
「ごめんね、って思った」
「………」
「…けどね」
不意に、表情の色彩が変わる。
優しげな双眸の奥に、違う色が覗いた。
「……それは、ダメだよ」
「…え?」
「うん、そうだ、言っちゃおう、全部」
「那珂ちゃん、今からすごーく勝手な事言います!」
片手を大きく上げて、宣誓のようなポーズ。
ふざけた動作に反して、瞳はどこまでも真剣で。
「弱さを認めて、曝け出す」
「…そうだね、それは良いことだよ」
「でも、ダメ」
「そんなの、那珂ちゃんは認めない」
「それは、那珂ちゃんの好きになった貴方じゃない」
「だから、ダメだよ」
「今まで散々、あんな事を言っておいて、調子が良いと思うかもしれないけどね」
「…それは、貴方が変わらないって信じてたから」
「…………」
彼女は笑顔だったけれど、声はいつもよりも冷たかった。
今まで、聞いたことのないくらいに。
「…恋人だったら、寄り添うべきなんだろうね」
「貴方の弱さをわかってあげるべきなんだと思う」
「貴方を理解してあげて、慰めてあげるべきなんだと思う」
「だけど、私は違う」
「…私は、貴方の艦娘だから、貴方の武器だから」
「私だって、本当だったらそうしてあげたい」
「…きっと、私が人間だったなら、そうしてた」
「貴方に寄り添って、大丈夫だって意味も無く笑った」
「でもダメ、それは出来ない、だって私は艦娘なの」
「私の存在する理由は、貴方の刀として、貴方の盾として」
「…ううん、ダメだなぁ、やっぱダメだ、こんなの理由じゃないよ、建前でしか無い」
「全部言うって、言ったもんね」
「…うん、ごめん、今のナシ」
「……一つだけだ、一つだけだよ、理由なんて」
「私が好きになったのは、強い、狂おしいまでに強い、貴方だから」
「認めない、弱い貴方なんて認めてあげない、絶対に」
「……那珂」
目の前の彼女は、言い切った。
弱い俺の事なんて、認めないと。
秋月のようには、してあげないと。
「指輪を外した理由はね」
「そんな貴方の事を認めたくなかったから」
「…………」
「仮面でいい、虚構でいい」
「貴方は、私が好きになった貴方でいて」
「それ以外は、認められない」
「…ちょっとだけ、それでも良いかなって…考えはしたけど」
「やっぱり、ダメだった」
「……本当に」
「うん」
「………勝手、だな」
「そうだね、自分でもそう思うよ、私だって」
「…ねぇ、提督」
「……ああ」
「知ってる?私の詠唱の事」
「……曽根崎心中、だろう」
「…うん、その通り」
此の世の名残、夜も名残、死にに行く身を譬ふれば。
あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く。
―この世の最後の夜、死にゆく二人を例えるのなら。
―墓地へ続く道に降りた霜のように、一歩ごとに消えていくようなものである。
詳しいストーリーまでは、知らなかったが。
ただ、この文が、いよいよ心中を行う二人の、死に場所への道行、その出だしだという事は知っていた。
「死にゆく二人、なんだよ」
「私が憧れた物」
「私の想いと、私の願い」
「…どういうことだ」
「皆を笑顔にしたいと思った、そして私も笑顔になりたいって思った」
「あの時の言葉、覚えてる?」
「ああ、鹿屋の―後だったか」
「…それは嘘偽りない本心だったけどね、一つだけ、隠し事をしてたの」
「私は、恋をしたかった」
「最高に素敵で、誰にだって誇れるような恋をして、笑いたかった」
「その為に、その笑顔の為に、私は艦娘になったの」
「……恋、か」
「そう、恋」
「…お初と徳兵衛みたいな、恋」
「…………」
「二人はね、お互いを殺すの、最後に」
「…心中、だしな」
「でも、あの時代ってさ、珍しかったんだよ、それが成るのは」
「片方だけ死んで、片方が生き残る―そんな事ばかりだった」
「だって、死ぬのが怖いんだよ、どれだけ恋だ愛だって言っても、結局は」
「だから、彼らの心中こそ、恋の手本」
「彼らは死んだ後、向こうでも結ばれるんだ」
「私は、そんな恋がしたかった」
「移ろいやすい、消えてしまう恋を、永遠にしたかった」
「…………」
口など、挟むことは出来なかった。
つらつらと語る彼女に、何一つ。
「戦いは、素敵な恋路、素敵な黄泉路」
「私はね、あの場所で、貴方と一緒に死にたいから」
「血塗れの貴方を好きになった」
「狂った貴方を好きになった」
「強い貴方を好きになった」
「この人は一緒に、死んでくれるんだ、ってさ」
「…提督は言ったね、死がふたりを分かつまで、って」
「ふふっ、ダメだよ、笑っちゃう、私と貴方は、一緒に死んで、初めて恋が成る」
「戦いは、その為の恋路でしかないの」
「死だけが、二人を結びつける唯一の手段」
狂気だ。
俺のように、仮面なんかじゃない。
彼女は―芯から、根から、狂っている。
ああ。
確かに俺は、那珂の事など何一つ知らなかったのだろう。
「だから、認めない」
「弱い貴方なんて、認めない」
「狂って」
「強くあって」
「最後の夜が、訪れるまで」
「いつか、私と一緒に死ぬ時まで」
那珂は、笑った。
笑って、俺に手を差し出した。
「大丈夫」
「苦しいのなら」
「狂ってあげる」
「笑ってあげる」
「私も一緒に、狂ってあげる」
「私も一緒に、笑ってあげる」
「だから―」
「貴方は、私と一緒に死んでくれる?」
心地よく、歌うように。
彼女はそのメロディを刻む。
誓いの言葉。
鹿屋の地下で、彼女が言った言葉。
その、本当の意味。
俺は――――
>>+2(割合重要)
A.手を取る。
B.首を振る。
b
b
妙にAが地雷臭いしBで正解だよねこれは
そう来るか、まあそれもありかもね
明日月曜だしここまで
一緒に地獄に落ちるつもりなのか、地獄に行くのはごめんと突っぱねるつもりなのか、はたまた地獄から引き上げるつもりなのか
提督くんはどうするんだろう
乙
嘘だろ心中とか絶対に地雷フラグだと思ったのに…
Bがハズレとか鬱展開勘弁してくれよ…
ここは突っぱねて一緒に生きようだろ
A選んだら一緒に戦いで死ぬ未来しか見えないよ…
>>805 鹿屋→岩川 書いてた事を忘れてた
戦闘狂が主人公だしまともな登場人物なんてあんまりいない!
本当にここまで
俺も選ぶとしたらBだからヘーキヘーキ
むしろこの状況でA選ぶ人の方が稀でしょアカン雰囲気プンプンやん
どっちも地雷に見える
程度の差だけで。
どっちかを選ぶとしたらAの方が話の展開的には面白そうではある
那珂に釣られて心身共に壊れていく提督君が見たいアビャー
那珂終わったか
乙です
>>812
相手の立場考えてない都合の良い発想し過ぎ
乙です
乙
某野球バラエティ並の難解選択肢である
流石に一回で終わりはしないでしょ…しないよね?
提督が更に壊れるか、二人で正常に戻る為に足掻くかの分岐じゃね。
そこまで悪手じゃないと思うのよ。
乙です
これ那珂って存在を認めて共に歩むかどうかでしょ
完全に悪手だよ
俺も悪手だと思う
別に安価に文句言ってるわけじゃないけど、単純に2が悪手がそうでないかといえば悪手に見えるな
そもそも那珂は元から狂ってると提示されたわけで仮にこのあと二人で正常に戻ろうと足掻くことになったとしても戻る元が狂ってるんだしそこのズレで余計に悪いことになりそう
向こうはやらないの?
向こうよりこっちの方が好きだからこっちが終わって一区切りついてからアッチで良いよ
B.首を振る(―那珂ルート)
「……………」
首を振った。
見えない圧力から逃げるように。
出来ないと、首を振った。
それを肯定など、出来ないと。
狂ってやるさ。笑ってやるさ。
お前が求めるなら、その仮面くらいは着けてやる。
そのくらいならば、いくらでもやってやる。
だけど―最後の願いだけは、絶対に、受け入れられない。
「…那珂――」
「なーんちゃって!」
違うんだ、俺が求めているのはそんな物じゃない。
口に出そうと、意を決して顔を上げれば、そこにいたのはいつもの那珂だった。
「えっへへー、那珂ちゃん実は結構女優の才能あるかもね?」
「迷うなぁ、アイドルと女優……銀幕スターってのも憧れるしー」
「……」
「そんな顔しないでよー、提督、本気にしたの?」
「……あ、ああ」
「あはは、じょーだんだってば、じょーうだん」
「那珂ちゃんは死にたくなんか無いし、戦いなんて大っ嫌いだから!」
「てゆーか提督、サラッと流しちゃったけど秋月ちゃんと浮気してたよね浮気!?」
「……え、あ」
いつも通りの、普段通りの、明るい少女。
これは那珂だ。俺の知っている、俺の艦娘だ。
なのに、どうして。
やっぱり正解やんけ
Aだったらどうなってたんやろ
「一大事だぁ…一大事だよ、許せないよ秋月ちゃん!…って、まーあれだね、那珂ちゃん、こんなこと言いつつもてーとくを信じてます、にひひー」
「…那珂」
「……あ!そう!でもね、提督が好きだーってのは冗談じゃないから…えへへ、言っちゃったー」
「………」
どうして、こんなにも今のこいつに違和感を感じるのだろう。
いつも通り、普段通り。
これが俺の知っている那珂。
じゃあ、さっきの彼女は?
本当の那珂は「どっち」だ?
今こうしてへらへらと脳天気に笑っている少女は、本当の那珂なのか?
団子に結った髪を揺らして、彼女は笑っている。
どこまでも、気楽に。
「……………」
わからなくなった、彼女が、那珂が。
ふと覗いた暗闇は、どこまでも深く。
差し入れた足は底へ付くこと無く、ずぶずぶと沈んでいく。
深淵の奥は、見えない。
「……ね、てーとく」
「…どうした」
「大好きだよっ」
「……………」
好き。
そうだ。
好きなのだ。
俺は、こいつを好きになってしまっていた。
こいつと一緒に生きたくなったんだ。
だから、彼女の言葉を受け入れることなんて、出来る筈が無かった。
「……なんだ、突然」
「…んー、いきなし言いたくなったの、じゃ、那珂ちゃんおやすみします!」
「……ああ、おやすみ」
こうして、俺達は。
互いの仮面の奥を、少しだけ覗いた。
それは、良い事だったのだろうか。
…わからない。
わからなかった、何もかも。
いやアウトだろコレ
フフフ、怖い…
どちらを選んでも那珂ちゃんルートの魔の手からは逃れられなかった、追いつく可能性の唯一あった赤城が沈んだので
強いて言うなら行き着く先がHAPPYかTRUEかの違い
どっちがHAPPYでどっちがTRUEかは…どうなんだろね
向こうを更新したいが時間が飛び飛びでしか取れないのです、まとまった時間があるのが深夜のみ、ぐぐぐ
理解する事を放棄しちゃったからね
乙
BがハッピーでAがトゥルーだと思う
うぎぎぎ…読めんよぉ!
乙です
ハッピー→二人で生きる
トゥルー→二人で死ぬ
だろうか、わからん
とりあえず乙
乙です
おつ
>赤城が沈んだ
沈んだはずなのに生きてる不思議、むしろ沈まなかった方が怖いよ!よ!
「提督さん」
「……秋月?」
「…少し、よろしいですか?」
「…ああ、構わないが」
一週間が経った。
那珂との会話は更に少なくなって、俺はずっとどこか上の空。
訓練中に幾度も長門や親爺に注意される事を繰り返し、ここ数日は腕立て伏せなどの単純なトレーニングしかしていない。
そんな時、秋月が何か神妙な面持ちで話し掛けてきた。
「…夜、秋月のお部屋に来て頂けませんか?」
「部屋?構わんが…」
「良かった、では…お願いします」
「ああ…」
頷くと、彼女は足早に来た方向へと去っていく。
…ふむ、少しお茶でもどうかと言いたかったのだが。
「秋月さんと、何かありましたか?」
「赤城か、いや、なに、大したことじゃない」
入れ替わるように隣に並んだのは、かなり興味深そうに俺を覗きこむ赤城。
半分軟禁状態だった以前とは打って変わり、今では彼女もこうして軍施設内をうろちょろして、様々な人間を困らせていたりする。
そんな風にしたのは誰なのか―と長門に恨みがましい眼で見られたが、はてさて、何のことやら。
「夜、部屋に来いと」
「………え、えぇっ!?」
「…どうした」
「そ、そそそそそれはあれでしょうか、ぞぞ、俗に言う、よ、夜這いでは」
「……まさか、そんな筈が――」
『秋月が…てーくんを優しく慰めてあげるねっ、身体で☆』
「………な…い…」
「……な、なんですかそのなんとも言えない表情は」
……那珂の件は。
結局秋月の想像通りの結果にはならなかった。
勿論、秋月に対して那珂との事を詳しく報告は流石にしなかったが…あの時は何と言ったっけ。
そう、確か――
『…溝が、もっと広がったような気がするよ』
…だった、な。
「……………」
「…どうしたのですか、顔面蒼白で冷や汗を垂らして」
「……ない、あるはずがない、違う」
「…そ、そうですよねー…」
「……時に、赤城」
「…はい?」
「………身体で優しく慰めるとは、わかりやすく言えばどういうことだろうか」
「……………な」
「……な?」
「………………」
悲鳴。轟音。激痛。紅葉。
―この後の顛末は、だいたいこんな感じであった。
「……なんで那珂ちゃんもなんだろ」
「知らん、連れてきて欲しいと」
秋月の部屋の前。
彼女の言葉通りの時間に、そこに立っている。
隣に、那珂を連れて。
正直を言えば、あまり今彼女と一緒に居たくは無かったのだが。
そう条件に付け加えられては、仕方ない。
「浮気現場を堂々と見せつけるつもり?」
「…一体どういう思考回路を通ったらその結論に至るのだ」
「普通に思ったんだけど!」
まあ那珂同伴というので一つだけ、今回の話がそういう類のお誘いである疑念が消えたのは嬉しかった。
いや、嬉しいと言うと語弊があるか。
勿論、俺とて秋月のような美少女とあれやこれやを致すに関しては非常に全く吝かではない。
だがどうにも緊張してしまうのだ。戦場に行くよりも怖い。
…なんか割りとダメなのかもしれないなぁ、俺。
「………秋月、俺だ」
並ぶ那珂から意識を逸らすついでに考えた馬鹿な事を押し出しつつ、部屋の戸を叩く。
扉はすぐに、音すら立てず静かに開かれた。
「…詳しい話は、中で」
「……ああ」
「……ついに決着を付ける時が来た…ってことだね…!」
「…な、何のでしょうか…」
那珂が、秋月を睨みつけている。
普段ならツッコミを入れたくなる場面、なのだが…どうしても、そういう気分にはなれない。
「……と、とにかくどうぞ…」
「ああ、失礼する」
「…ここがあの女のハウスね!」
「…………那珂」
「ダメだよてーとく、今口を挟んじゃダメ!」
「…………」
秋月の部屋は、簡素も簡素、殺風景も殺風景といった部屋だった。
最初に与えられたベッドと机以外の物が、ごてごてとした剣くらいしかない。
無造作に床に腰を下ろすと、その唯一のインテリアがいらっしゃい、と微笑んだ―ように聞こえた。
『やぁやぁ、すまないね、こんな時間に呼び出して』
「本当にな…お前の差金か?」
『ああ、がっかりしたかい、主様の身体を張った慰めではなくて』
「…………っ、な、お前」
『……やはりちょっとその可能性を考えたか、このエロめ』
「………け、剣が!?剣が喋ってるんだけど!?」
「そんなこともあるさ、那珂」
「…あるの!?あっていいの!?那珂ちゃんの常識は何処に!?」
「……それで、話って?」
うがーと頭を抱える那珂を尻目に、剣へ話し掛ける。
『うむ、ここから大分の佐伯まではどのくらいで着く?』
「…佐伯まで?」
頭の中の地図を呼び起こす。
今の九州の制空権は完全に第一空挺団の手にあり、直線距離を取っての飛行が可能である。
全力で翔べば、そう長くは無いはずだ。
築城から佐伯、那珂の速度なら…。
「2刻もあれば」
『そうか、なら…簡単に行って帰って来れるということだね』
「…そうだが…まさか、今から行けと?」
『ご明察だ』
「…秋月」
「あ、秋月に振らないで下さい!秋月だって今初めて聞いたんです!」
こんな話の為に呼んだのかと、秋月に抗議の目を向ける。
しかし、彼女も彼女で困惑しているようだった。
『…まぁまぁ、落ち着いてくれよ、勿論、理由はある』
「海が見たいなら玄界灘に沈めてやるが」
『真艦がある』
「……真艦?」
一転、声は至極真面目な調子。
純然たる事実であると、彼女はそれを告げた。
『欧州連合が掴んでいた情報だ、間違いない』
「………」
『…疑うなよ、…私は主様を思って言ってやっているのだ』
「……それが本当だとして」
『うむ』
「…どうして、それを連合が回収に来なかった?」
『単純だ、九州に戦力を割くほどの余裕が無いのだよ』
『どうせ真艦などを拾った所で、彼女らは連合の手駒にはなってくれん』
『倉庫の肥やしか、せいぜいは実験材料だ』
『豊後水道まで割って入るリスクと、得られるリターンが釣り合わない、ということでな』
「放置されていると?」
『ああ、…だが君らにならば真艦といえど与してくれるのではないかね?』
「…そう、だな」
その真艦の人柄にもよるが、欧州連合が拾うよりはずっと仲間になってくれる確率が高いだろう。
「……だが、何も今からでなくとも」
『どうしてだい?』
「長門やらに報告して、人数を集めていけばいい」
『…それは本気かい、てーくん』
「何を言っている、むしろこれから秋月と俺だけで行くほうがおかしいだろう」
『……では、この情報をどこで拾ったと長門に言うのだい?』
「…んなの、決まって――」
……る、と。
言葉は、最後まで続かなかった。
実は秋月は欧州連合のスパイで、そいつが持っていた監視役の剣から情報を仕入れました。
これを長門にそのまま伝えたら―どうなるか。
『…君は主様を殺すつもりか?』
「………そうか、なるほど」
「…………そういえば、秋月はスパイでした」
「…………スパイだったねぇ、そういえば」
3人同時に気付く。
それが不可能であることに。
『いや、せめて主様には気付いて欲しかったのだが』
「…ここの所色々あって…」
「色々って何!?まさかてーとくと!?」
「……そ、その…」
「むきー!」
『………話、進めていいかな』
「…どうぞ」
うんざりした様子で溜息を吐く剣。
視線や動作が無くても、感情は案外簡単に伝わるものだな。
『それで―だ、まあ、主様がスパイであったことを、いつまでも黙っておく訳にはいかないだろう』
「…そうだな、…バレんとは思うが」
『欧州連合の狙いは赤城だったからね、秋月が帰ってこないということで、更に工作員を送り込んでくるかもしれない』
「……赤城が狙いだったのか?」
『ああ、旗印を探していたのは君達だけでなかったということさ』
「………なるほど、な」
大和支配を完璧にするのならば、国民を納得させなければならない。
その為に、赤城を形だけの大和の君主として擁立する―という狙いだろう。
…それなりの力があるとはいえ、数ある反抗勢力の一つでしかない第一空挺団にわざわざスパイを送り込んできた理由がいまいち不明だったが、そういうことだったか。
『…で、此処からが本題だ』
「ああ」
『長門だけには、遅かれ早かれ主様の素性を話さねばなるまい』
「…だな」
必ずしも全員に伝える必要は無いだろうが、彼女だけには絶対に黙っておく訳にいかない。
逆に言えば、彼女にさえそれを許してもらえばなんとかなるということでもある。
『……そこで、手土産を』
「真艦か?」
『うむ、だいたい、口先だけで裏切って仲間になります、などと言った所で信用など買える筈もない』
『主様が二重スパイという可能性は消えない、絶対にな』
「…だろうな」
俺は秋月をほぼ無条件で信じているが、それにしたって特殊な事情あってのこと。
長門が受け入れるかと言われれば、正直分が悪い。
『だから、欧州連合を裏切ったのだと示す覚悟として、真艦を取ってこいというのだ』
「…………ふむ」
『何、よくある御伽話だよ、王子様が姫の為に宝を求めて冒険をするのだ』
「……その手の話って、姫様が一緒についてくるもんなのか?」
『いまならこんなに可愛い従者も付いてくるぞ?』
首を傾げて可愛いポーズ。
…でも取っていただろう、多分、剣に肉体があれば。
「…その話は本当なのか?」
『間違いなく、真実だよ』
「………わかった」
「…行くなら、早いほうがいいな」
『うむ、その通り』
立ち上がり、ボキボキと身体を鳴らす。
そういう話なら、さっさとケリを付けてしまった方がいい。
「提督さん、良いのですか?」
「ああ、…秋月のためだ」
「………あ」
ぽんと肩を軽く叩いてやる。
ややあって、その場所を秋月が両手で包むように触れた。
暖かそうな表情をしていた。
「……………」
「……那珂?」
「…………んーん、なんでも」
「…んじゃ、行こうか、提督」
「ああ、そうだな」
「しかし、どうやって外に?」
「……簡単だ、この窓から翔ぶだけでいい」
部屋に取り付けられた窓を開け放って、外を指す。
冷えた空気が、一気に入り込んで来た。
「幸い、うちの電探はボロでな、外から中に入ってくる艤装はともかく、中から外に出て行く艤装には反応できん」
「…わかりました」
『……ならば主様、私達が先導しよう』
「出来るのか?」
『今回の任務で、主様が上陸したのが佐伯だからね、場所は覚えているかい?』
「はい、問題有りません」
『…よし、ならば行こうか、これからの為に、ね』
「……ええ!」
秋月が、左手を窓の外、煌々と夜を照らす月へ向かって伸ばす。
白磁のような真白い指先が、輝いた。
「―こころにもあらで浮世にながらへど」
月光に浮かび上がる、艤装の影。
彼女が彼女たる、艦娘足りえる根源の力。
「…………え?」
「…那珂?」
「……何だろ、何か…変」
「…………ああ?」
「…んー?」
詠唱の途中、那珂が不思議そうに声を上げて―首を振った。
「……に見えたけど…なんともないみたい、なんだったんだろ?」
「…変な所で声を挟むな」
その間にも、彼女は着々と詠唱を進めていく。
「――二度と見えじ去りし日の月」
そして、一瞬の後。
月光に照らされ輝いていたのは、鋼鉄の艦娘艤装だった。
秋月型―大戦末期、技術の粋を集められて作られた駆逐艤装。
『…今日は、綺麗な月ね』
『……ああ、とてもね』
『またこんな月を見られるとは、思ってもいなかった』
『……あの方の、お陰でしょうか』
『…ふふ、今日は良い月見になるだろうね、主様』
『ええ、とっても』
そこに、違和感は無い。
力の象徴たる艦娘艤装が、堂々と立っているだけだ。
『さあ、置いてきますよ、提督さん』
「…あ、ああ」
…詠唱を躊躇う。
那珂のあんな話を聞いてしまったからか。
頭を何度か振って、気合を入れるように丹田に力を込める。
「此の世の名残、夜も名残、死にに行く身を譬ふれば」
「あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く――」
月夜に二つの鋼鉄が輝いて、天を翔ける。
目指すは―佐伯。
安価は無かった、読み直して思うのはシリアス難しいの、せめて誤字脱字その他ミスくらいは無くしたい
次から本当に久しぶりの戦闘回、バトル物とは一体…うごご
また明日です
乙でち
乙
そろそろポロリか
乙
何か今から胃がいてえ
乙
おつおつ
夜這いじゃないのかよう…(落胆)
乙です
新しい真艦は誰だろう?
おびき寄せる為の罠じゃね
乙です
これで秋月も受け入れられるな(白目)
無いわ(真顔)
綺麗な満月だった。
空に浮かぶ、眩いまでの天体は。
「―月か」
『何か?』
「…いや、お前の名前にも入っていた、と思ってさ」
『……ああ…当時は、皮肉なものだと思いましたが』
隣を翔ぶ秋月が、俺の呟きを拾って答える。
全力でないとはいえ今の那珂の飛行速度は相当高速である筈だが、彼女もそれに悠々と付いて来ている辺りから、艤装の能力の高さが窺える。
「皮肉?」
『ええ…秋月の詠唱も、月を詠った物ですから』
「三条院、か」
『…博識なのですね』
「昔、家族で百人一首をしていたことがあってな…まだ覚えてるもんだ、案外」
―こころにもあらで浮世にながらえば恋しかるべき夜半の月かな。
時の権力者であった藤原道長に、自らの地位を追われた三条院が詠んだ、悲しみを嘆く歌。
「だが、少し違ったろう、先程の詠唱」
『…はい』
―こころにもあらで浮世にながらへど二度と見えじ去りし日の月。
―心ならず、このつらい世を生きながらえていたとしても、去ってしまったあの日の月を、二度と見ることは無いだろう。
『………昔、本当に、昔』
『…丁度今日のような、月の綺麗な夜に』
『父様と母様と、3人で、お月見をしたんです』
「…………」
『…なけなしのお金で、お月見団子を買って…縁側で並んで、空を見て』
『……凄く、楽しかった』
艤装に覆われた表情は見えない。
けれど、それを想像するのは難しくなかった。
『秋月は、復讐の為に艦娘になったから』
『失った物を、取り戻すためじゃないから』
『だから、もうあの月は、見られないって思ってた』
よく言われているような言葉ではあるが、復讐は何も産まない。
それで満たされるのは、己の心のみである。
無くなってしまった物も、失ってしまった物も、返ってはこない。
父も、母も、昔の暮らしも。
秋月の手には、二度と戻ってはこないのだ。
『……けど』
不意に、声音が変わった。
その輝きを掴むように、秋月が宙空に浮かぶ月へと手を伸ばす。
『…今日の月は、こんなにも、綺麗』
『きっと…貴方が、隣にいるから』
「……秋月」
『…ふふ、…なんて――』
『すたーっぷ!』
笑い声を遮ったのは甲高い声。
勿論、そんな物を発する奴など一人しかいない。
『浮気は許しません!』
「……あのな」
『…ふふ、いいえ、ごめんなさい、私こそ、突然』
『ほんとだよ!』
笑い声が、苦笑に変わる。
『……提督さん』
『…あのお話、この件が終わったら…えっと』
「あのお話…?」
『……はい、…えっと、…慰める、とか、なんとか』
「………………」
『……も、勿論嫌でしたら!嫌でしたら、断って頂いても…構いません、けれど…』
「…受けたい」
『…………え?』
「…是非、…此方から頼みたいくらいだ」
『……………あ、ぅ』
…………。
何を言っているんだろうか、俺は。
どう考えてもこの言い方はおかしい気がするぞ。
『…………おい、てーとく、こらー、なんのはなしー、ねー、おーい、このー』
『…………く、くくくっ…た、頼みたいくらいだって…せ、積極的過ぎるだろう…』
笑う一隻と一本。
何だお前ら。
「……そろそろ着くな」
『…………で、です、ね…』
誤魔化した。
仕方ない。
これは、仕方ない事だろう。
重力に従い高度を下げていき、元は軍事施設であった跡地の中庭に降り立つ。
一時は太平洋方面への後詰基地としても使われていたというだけあって、その威容は立派なものだった。
「…寂れているな」
『終戦からこっち、ずっと放置されていたらしいですから』
「そうか…おい、剣」
『…ん……ああ、うん』
「真艦はどこだ、さっさと回収して帰りたい」
『……え、あの、か、帰りたいって、えっと、もしかして』
「………断じて違う、そういう意図ではない」
『…で、ですか…』
何やら非常にまずい誤解を受けた気がしたので訂正。
改めて、秋月の腰へと―勿論剣を見るために―視線を移す。
「地下、とか言ってたが…おい?」
『……………』
『……長ちゃん?』
剣がいきなり、うんともすんとも言わなくなった。
秋月が手にとって振り回してみたりもするが、反応はやはりない。
『…あれ?』
「……困った、こいつが起きてくれなけりゃ見つからんのに、おいこら、答えろって」
「や、すまないすまない、少しね」
その求めに応えてか、返事は返ってきた。
ただし、秋月の手にある剣からではなく―俺達の、背後から。
「……は?」
『……え?』
振り向く。
そこには、艤装が在った。
ずらりと並んだ鋼鉄が、月明かりに浮かんでいる。
大和の規格で作られたものではない、西洋風の刀剣を提げた鋼鉄が。
「中々どうして、気付かれないものだね」
その先頭―ヴァンガード級深海棲艦艤装に守られるようにして立つ、セーラー服の少女。
彼女の声こそ、確かに先程まで聞いていたものと違わなかった。
「無駄な熱量消費を避けるために完全に電探を切っていたのだし、無理もないか」
「……お前、誰だ?」
「ああ、うむ…こっちの姿では初めて出会うことになるか」
ぺこりと、少女が一礼する。
拍子に被っていた帽子が地面へ落ちて、その代わりのように猫が乗った。
「水城寧子―ネコ、と呼んでくれ、まあ、機会もあまりなかろうが」
「趣味は、剣の真似をして人と語り合うことだ」
『………長ちゃん?』
「……んー、主様、いや元主様よ、そのネーミングセンスはどうだろう、常々思っていたんだ」
「…どういうことだ……?」
「うん、簡潔に言えばインテリジェンスウェポンなんてアホな物は流石に作らないという話だね」
「実はあの声、遠隔通信の試験運用も兼ねて東京駐留軍基地からこの私がお届けしていたのだ」
「君達は騙されていたのだよ、この私のトリックにな!」
天に向け、はっはっはぁと高らかに笑う少女。
それを尻目に、那珂へと言葉を飛ばす。
(……敵の数は?)
(………32、ヴァンガード級が8、キング・ジョージV世級が24)
(艤装8小隊…九州までわざわざ1個中隊近く引っ張ってきたのかよ、しかもヴァンガードだと?ありゃ本国にもまだそこまで配備されてないような最新艤装だろ)
秋月は未だに多少呆けていたが、俺と那珂は彼女に比べて冷静であったらしい。
嵌められた―と、すぐに理解して、戦闘態勢を整えていた。
「……ちっ、胡散臭えとは思ってたんだよ」
「心外な、佐伯に艤装があったというのは本当のことだよ、尤も、今は回収し終わって『フッド』の中だが」
「君達が来るのがあと2刻程早ければ、間に合っていたんだけどねぇ」
くつくつと、愉快そうに笑い続ける。
それは聞き慣れたものではあったが、剣の状態で聞くよりも、ずっと不快な声だった。
「……なあ、ネコ、だったか」
「ふむ、どーした、てーくん」
「…こんな数で囲んだくらいで、俺達を殺せると思ったのか?」
腰の太刀を抜く。
いかに最新艤装を織り交ぜたとは言え、相手は戦艦艤装のみで構成された部隊。
対する此方は近接戦闘を得意とする真艦が二隻。
それなりに苦戦は強いられるだろうが…いざとなれば、那珂の歌だってある。
はっきり言って、負けるビジョンは見当たらない。
「……ふん、余裕ぶっこいてお話なんかせずに、奇襲でもすりゃよかったのにな」
「…や、や…何かを誤解しているようだな、てーくん」
「私達は、戦いに来たわけじゃない、観客だよ、ただの」
「…何言ってんだ?今更怖気づいたか?」
「はっは、確かに君と相対するのは怖いが、違うのだよ、君の相手は私じゃあない」
ネコが、視線を俺から秋月へと向ける。
「主様よ」
『………何かしら』
先までは呆けていた彼女も、既に戦闘態勢を整えていた。
駆逐艤装には不釣合いである程に長大な刀身の大得物を腰に構え、その柄へ手を掛けている。
状況を理解したのだろう、返す声もどこか冷たい物だった。
「…はは、嫌われたものだ」
『…………』
「ふふ、…ま、これ以上引っ張る意味もないか」
ネコが、指をパチンと鳴らした。
軽快な音が、夜に響いた。
「さよなら」
増援でも呼んだのかと周囲を思わず見渡したが、そんな様子は無い。
一体何を―浮かんだ疑問に答えたのは目の前の少女ではなく、背後から突然に聞こえた苦悶の声だった。
帰るのが遅すぎる
中途半端ですがここまで
乙
いいところで切るのな
乙
那珂ちゃん一筋でいて欲しかったから何かぐぬぬ…
乙
やっぱり操られた秋月と戦う事になるのか
おつおつ
次の投下が楽しみだな
乙です
ここでネコの登場か
乙
悲しいなあ
まあこれがサブヒロインとメインヒロインの差ですわな
乙です
今日は無しかな
『あ、が……っ!?』
声に振り向けば、秋月が地面に膝を付き、頭を抱えている。
その様子はまるで、何かに耐えているように見えた。
「秋月…?おい、どうした?」
『……い、え…何も…ぐうぁっ!』
「お、おい!?」
『近寄ら…ないで、下さい…!』
彼女へと一歩を踏みだそうとしたが、それも必死に差し出した震える手によって制される。
此方に来るな、と。
「な、何だってんだ……おいっ!」
「…む?」
そんな彼女から目の前のセーラー服へと視線を移す。
ネコは、いかにも嗜虐的に笑っていた。
「お前…何をした?」
「…ふむ、そうだねぇ」
「秋月を殺しているんだよ、簡潔に言えば」
「……なぁ!?」
「尤も、肉体的な影響なんて物は皆無だがね」
「故に…もっとらしく言うのなら、彼女の中の意識を殺しているのさ」
「………どういう、ことだ」
「人の脳というやつはね、治すのは非常に難しいんだ」
「脳に出来た障害を根治させることは、これだけ医療が発展した今になっても出来ない」
「だが、壊すのは酷く容易なのだよ、てーくん」
「…壊す……?」
鸚鵡返しで聞き返す。
ある程度の想像はついた。
彼女の話の中から、今の秋月に何が起こっているのか。
そして、この女が今から何をさせたいのか。
けれど、聞き返した。
想像と違う答えを期待して。
「今苦しんでいる彼女は、壊されている途中なのだ」
「自分という、秋月という存在を」
「……………そんな事、出来るわけ」
『…あるよ』
「…那珂?」
半ば無意識に呟いた言葉を否定したのは、頭の中に響く声。
先程までの脳天気なものとは違う、鋭利な声。
『わかったの、さっきの違和感』
『艤装に仕込まれてたんだ、頭の中を弄るような装置が』
『…艤装は、艦娘にとってのもうひとつの身体』
『……可能か不可能かだけで言うなら、出来るよ』
「…だからって」
『ア、ガ、ァァ……ッ!』
苦悶の声が、音を増す。
反射的にその方向を向くと、秋月が地面をのたうち回りながら苦しみに耐えていた。
「秋月!」
「ふぅ……しかしねぇ」
そんな秋月の様子を見て、ネコは溜息を漏らす。
まるで出来の悪い工作を眺めるように。
「ここまで抵抗されるとは思っていなかったよ、一瞬で乗っ取れる物だと考えていたのだが…」
「これは実用的でないねぇ、6年も掛けて艤装に細工したのに」
その言葉は、どこまでも本気だった。
この女は今の秋月を見て、本気でそれだけしか考えていないようだった。
「テメェ…!」
「あー困った、今攻撃されたら秋月は何も出来ずに死んでしまうな」
「てーくんがその太刀を振り下ろせば一発だ、あーあ」
そして、俺の方へと目をやる。
今度は笑って、さも楽しげに笑って。
「おおう、助言をしただけなのに睨まれてしまうとは」
「…黙れ、殺すぞ」
「はっは、怖いなぁ、死にたくはないのだが」
「――――!」
頭の中が真赤になって、足を踏み出す。
守るように、奴の前にヴァンガード級艤装が2隻歩み出た。
「ま、この通り…本日は英国紳士が守ってくれるのでね」
「…関係ねぇよ、斬る」
「ふふ、勇ましい勇ましい…だがね、残念、完成してしまったようだよ」
「……あ?」
背後を指差す。
そこには、覚束ない足取りで立ち上がる秋月。
「………まさか」
「さて、聞こえているかい?」
『ァ――――――』
・ ・ ・ ・ ・
「…………ふむ、壊しすぎたかな、次からは調整が必要かもしれないね」
呼びかけに、彼女は、秋月は応えた。
獣の咆哮のような、意味のない叫びにしか聞こえない、ただの雑音をあげて。
「…命令は、理解出来るかい?」
『――――』
耳に、もう一度ノイズが走った。
それが、彼女の肯定の返事らしかった。
「…参った、となると言語野かなぁ」
その雑音を聞いて、もう一度溜息を漏らす。
「……て、めぇ」
太刀を握る手に、有り得ない程の力が籠もる。
そこに力を籠めているのは俺だけではなく、先より黙って言葉を発しない那珂も怒っているのだと、はっきりと伝わってきた。
「ふふ、では―最初の命令だ、秋月」
「そこの艤装を殺せ」
事も無げに、なんでもない風に。
ネコはそう言った。
けれど。
「……ふむ」
『――――ィ―――』
その命令を受けて、秋月はよろめいた。
刀を握ろうとする手を、何度も引っ込めたり、伸ばしたり。
あたかも、下された命令に反抗しているかのように。
壊されたはずの、彼女が。
「――ッ、秋月!」
「……凄いねぇ、少し驚いたよ」
「だけど…無駄だ、無駄だよ、てーくん」
「…時間の問題だ、あれも」
「うるせぇ!」
彼女は、彼女はまだ―生きている。
きっと、このままにしていれば―きっと。
『…提督、太刀を構えて』
「那珂?待てよ、…まだ」
『ううん、…戻らない、戻らないよ、…那珂ちゃんにはわかるの、秋月ちゃんは…彼処に、いないって』
そんな希望を打ち破るように、悲痛を押し殺したような声が頭を揺らす。
「……何、言ってんだ」
『…だったら、せめて…まだ、秋月ちゃんが、少しでも…』
「那珂…違うだろ、お前、そういう奴じゃねーだろ」
「こういう時、絶対に助けたいって」
『……可能性が、あるのならね』
「…可能性、って」
『だから提督、太刀を構えて』
一段、声が低くなる。
有無を言わせぬ、そんな色を込めて。
『――ガ――ギ、ッ』
眼前の秋月の手が、やっと刀を掴んだ。
「……そうだ、那珂、…歌は、密装は」
密葬。寂滅為楽の鐘の音。
あれなら、秋月に安らぎを――
「やめておいた方が良い、届くはずはないからね」
「秋月という存在は、既に彼処には存在しないのだから」
「テメェには聞いてねぇ!」
「やれやれ、一応、善意の忠告なのだがなぁ」
「那珂!」
『……………』
頭に響く声はない。
その沈黙こそが、アイツの言葉に対する何よりの肯定だった。
届かない、と。
「…………ああ畜生わかったよ!」
刀を肩に担ぐような上段に構える。
神州稲富流基本の構、椿。
「……戦闘不能にする」
『………それ、本気で言ってるの?』
「…………」
信じられない、そんな声音が返す。
自分でも、彼女の言いたい事なんてわかっていた。
『……もう、いないんだよ!』
『あれは…あれは、ただの艤装で…』
『もう、あれは秋月ちゃんじゃないんだよ!?』
「……………」
悲痛な叫びだった。
優しい叫びだった。
楽にしてあげて、と。
これ以上、彼女を汚さないであげて、と。
だけど、それでも。
相手は、秋月だ。
目の前にいるのは、秋月なのだ。
俺の弱さをわかってくれる、唯一の人間なのだ。
治る可能性は、あるかもしれない。
生きていれば、そう、生きていれば。
殺すなど、あってはならない。
「…腕や足を取れば、動けない」
『………だけど、…っ、提督!』
秋月が刀に手を掛け、腰を落とす。
―抜くつもりか!
「文句なら、後でいくらでも聞いてやるよ――!」
『待――』
那珂の制止を振り切り、地を蹴る。
上段より振り下ろした刀が狙うは右上腕部、そこを一刀で両断する。
先の影響が残っているのか、未だ秋月は僅かにふらついていた。
今、彼女に突進の勢いを加えた太刀を止める術は無い――
「……なっ!?」
筈だった。
しかし、肉を裂く感触を期待した手に伝わってきたのは、肩まで痺れさせる衝撃と、金属のぶつかり合う甲高い音。
上段より垂直に降ろされた白刃は、暗闇の中、刃が霞む程の勢いで鞘から抜き放たれた大得物に弾き飛ばされる。
居合――大和海軍制式剣術、戸山流か!?
秋月が手首を返し、大得物が月光に煌めく。
その二撃目を太刀で受けられたのは、全くの偶然だった。
間髪入れず、三撃目を加えようとする動作。
「く、…そっ!」
地面を思い切り後ろに蹴る。
数瞬後、先程まで俺がいた空間が真二つに裂かれた。
「…………」
『…待って、って言ったでしょ』
『彼女は戦闘態勢を固めてた、いつもなら気付くのに、そのくらい』
『…落ち着いてよ、…酷な事だとは那珂ちゃんにだってわかるけど、落ち着いて』
「………ああ」
腕には、まだ微かに残る痺れ。
太刀は…保っている、奇跡的に、ヒビの一つすらなく。
先の勢いで弾かれたのならば、最悪折れていてもおかしくはなかった。
そのくらいの運は、残っているらしい。
それとも那珂の刀が頑丈なのか、どちらにしても、とにかく感謝するしかない。
「……抜刀術か」
『…抜刀術?』
「戸山流、大和海軍の制式採用剣術だ」
戸山流はおそらく、この国で一番使い手の多い流派だろう。
大和海軍がまだ中華一国を相手取っていた際に採用した剣術で、艦娘対艦娘を想定して作られた初めての剣術でもある。
以来、欠かさず研究と細かな見直しを行われてきた戸山流は、一言で表すのならば隙の少ない剣術。
状況を大きく覆す一手はないが、剣技に才ある者が使えば付け入る隙が全くなくなる。
その戸山流の中でも最も恐ろしいのは、納刀から神速で放たれる一の太刀。
後の先で以って機先を制す――とは、創始者の言。
俺が長門に習った奇剣だらけな稲富流とは大違いの、まさに正道剣術。
しかも、秋月の剣はかなり練達されている。
確かに那珂の言う通り、俺は冷静ではなかったようだ。
海軍出身の秋月の剣なら、戸山流であると予想するくらいは出来た筈だ。
そして、あの構えこそが見慣れた戦闘態勢であると見抜けた筈だ。
頭の中で、自分に向けて舌打ちを一つ。
落ち着け。
大丈夫、先程のやり取りで損害はない。
落ち着いて、次の行動を考えろ。
「……太刀打ちはやめだ、那珂」
『…どうして、確かに鋭い刀だけど、提督なら』
「……翔ぶぞ!」
機関を回す。
エネルギー
熱量をタービンに込めて、それを上昇力とする。
人気の無い佐伯基地跡の上空へ、秋月に先んじて駆け上がる。
『提督』
「…空中戦闘ならば、剣技は使えん」
諌める声音に、言い訳のように答える。
那珂の言う通り、まともに刀を合わせても、俺が勝つ可能性はそれなりに高いだろう。
確かに秋月の剣は洗練されているが、思考力を半ば奪われている今、どれ程それを使いこなせるかは怪しい。
その上、稲富流はまさにその正道の洗練された剣術にこそ強い奇剣。
だが、同時に稲富流の奇剣は人を「殺す」剣。
不意を突き、急所を狙い、命を断つ。
全てはその為に考案された殺人剣術であり、戦闘不能にするための剣技など一つとして存在しない。
なれば、その剣で彼女に相対するわけにはいかない。
『……確かにそうだけど、いいの?』
「…何がだ」
『空に上がっても、それはそれで手加減は難しいよ』
「…大丈夫だ、急所を外せばいい、脚部だ、脚部を狙う」
『……そう、わかった、あくまで提督がそのつもりなら、那珂ちゃんも応えなきゃね』
渋々といった様子だったが、那珂はそう言って、黙った。
どうやら、俺の判断に従ってくれるらしい。
「…悪いな」
『……ううん、…那珂ちゃんだって、出来れば殺したくはないから』
「……ありがとよ」
頷いて、空を翔ける。
艦娘同士が空を翔ける中での戦闘は、非常に特殊な形態を取る。
タービンを蒸かして飛翔している以上、当然、陸のように制止してまともな太刀打ちなど出来るはずはない。
一応空中戦でも剣術というものは存在するが、安定した足場が無い故、陸で有効な大半の剣術は使いものにならない。
踏み込むことの出来ない抜刀術など、何の意味があろうか。
空中では、艦娘同士がその速度を活かして攻撃力に変え、それを直接相手にぶつけるのが基本戦術。
剣術は受け流しや逸らしなど、あくまでぶつかる際の小手先の技術に過ぎない。
となると、有利なのは勿論のこと、上空から相手に打ち掛かる側である。
艦娘本来の速度に重力を上乗せして太刀をぶつければ、下より上昇しながら太刀を打ちかける相手の何倍もの力を込める事ができるからだ。
逆に下側は重力に逆らう形で上昇していくので、速度が低下し、一撃の威力が大幅に落ちる。
これは艦娘の空中戦闘における基本の原理で、一般には高度優勢と呼ばれている。
それを確保するために、大戦中期には空母同士による制空権の取り合いという概念が生まれた。
高高度を味方空母が遠距離攻撃で制圧することで、艦娘がそこから安全に急降下しての攻撃を行えるようになる。
大和の敗北の一因は、この概念に気付くのが遅れ、空母と軽空母の配備を怠った結果、高度優勢を一方的に確保された戦闘が多かったからであるとも言われている。
その優勢は今、俺にある。
ぐんぐんと翔び立った勢いのまま、機首を上げて上昇していく。
高度はそろそろ1000にも届こうかというところ。
『…昇り過ぎじゃない?』
「このくらいだな」
那珂の実用上昇限度は6000m程だった筈だが、あまり勢いをつけては秋月へぶつける太刀の威力が大きくなりすぎる。
機首を返し、一気に降下する態勢へ移行。
『敵機下方、推定高度300、方角、午から坤!』
「応!」
那珂の報告通りの場所に、上昇を続ける秋月がいた。
彼女の機関もかなり足は早いのだろうが、那珂には及ばない上、先に上昇し始めたのは此方というアドバンテージもある。
今の彼女は、ただの宙空に浮かぶ的だ。
狙いは、その下半身。
真艦の機能で回復するとはいえ、その行為には少なからず心苦しい物はあるが、脚部を喪えば戦闘続行はとりあえず不可能になる。
「…行くぞ」
『…うん!』
迷いを振り払うかの如く、太刀を下段に構える。
すれ違いざまに、このまま足を払うように刀を薙げば―それで、終わりだ。
重力を背に受けながら、一気に空を下っていく。
地面がぐんぐんと近くなって、秋月も大きくなる。
だが、秋月へ接近する速度がやけに遅い。
元ネタ的にも今までのお話的にもこの娘が助からないなんて分かりきってるんだがそれでもどうにか助けたい
自分でもルーザー思考とは思うが提督と那珂ちゃんと赤城と秋月がまた同じ席につける未来を探したいわ
一区切りついてからレスしような
『距離、500!』
「…500?…広いな、秋月は全力で上昇していないのか?」
『…みたい…350!』
秋月の上昇速度は、明らかに遅い。
彗星の如く降下する俺に対して、のろのろと、失速してしまう寸前の速度で空を昇っている。
「……故障か?」
秋月の思考を奪ったことが、何か悪影響を産んだのか。
なんにせよとにかく、好都合。
刀を持つ手に、力を込める。
『…わからない、100!』
だがこのままだと、激突地点は400mにも満たない低空となる。
正直、降下戦闘ではあまり経験の無い高度だ。
太刀打ちの後、再び上昇をするのに気を遣う必要があるかもしれない。
「那珂、打ち合った後の態勢を――」
と、那珂へ注意を促そうとした、その時だった。
メタルエコー
秋月の声が、装甲通信によって運ばれてきたのは。
『Friss,Vogel』
《自らを捕食者と信じ、疑わぬ鳥よ》
『oder,stirb』
《食われる覚悟を持たぬなら》
『Der Himmel in den Rucken――』
《無残にその羽根、散らして死ね》
『――fallt!』
サカオトシ
《―逆落!》
聞き慣れない言語。
耳穴の中で虫が蠢くような、思わず耳を塞ぎたくなる不快な声が響く。
その後、秋月が俺へと先端を向けるように、長い刀を前へ出す。
それは防御というにも、攻撃というにも難しい、ただ意味もなく刀を突き出したとしか言い様のない態勢だった。
彼女は、もはや眼前。
あの構えで攻撃は出来ないだろうし、受けるにしても刀に力が入らない。
いくら大得物と言えど、あれを弾くは易し!
瞬間、何故か映しだされる光景。
――戦場でもそれを言えたのなら大したものだ。
知らないから避けられぬ、訓練でそう言った俺に対して長門の言った言葉。
…待て、本当に、あれには意味はないのか?
そんな思考が脳裏によぎって――――
>>+2
A.構うものか、突っ込む。
B.………機首の方向を変える!
b
b
ここまで、めっちゃ眠い
秋月の好感度がここまで上がるなんて予想してなかったから展開も微妙に変わった
乙
好感度低かったら構わず斬り殺すだろうしな
乙
乙乙
だいたい秋月ニキのせい
>>894
こんなことやるしな
>>904
それは俺じゃないんすよ
秋月の好感度無理矢理上げてたの殆ど二刀流してた1人じゃん
正直面白く無いよ
これだから秋月ニキは
ageんなよカス
乙です
はいはい自演自演
まーた通報されたいのかよ秋月アンチは
すれば?
何でもかんでも自演自演言えばいいと思うなよ?
安価取れない奴の遠吠えきもてぃー
流石に二刀流してまでやられてるのに無茶を言いますわ
だからsageろと
マジでIPなり自動で提示するシステムにして欲しいわ
毎回俺の偽者が現れてヘイト溜めてるじゃん
>>910これ最近あっちこっちのスレで言っての見るけどさ
雑談スレとか以外のスレで1以外がこれ言って周りを威嚇黙らせようって行為は
明確に荒らし行為だって自覚じてるか?
馬鹿みたいな自演で何十レスも消費されるぐらいだったら
最初から脅して釘を刺しておいた方がレスが無駄にならなくて良いじゃない
んで今回みたいに自演でもなんでもなかったぽいのを脅しちゃった場合とかどうするの
言っちゃなんだけどそれこそ通報されても文句言えないぞ
それでも事前に釘刺してるんだから迂闊に自演出来ないでしょ
当たってるか間違ってるかよりもそういう自演野郎出現を防ぐ為の抑止力みたいなもんだし
そういう自治行為をしていいのは1だけだよ
あんた自分が自治厨っていう一番忌み嫌われる存在になってるのわかってるか?
というかなんで毎回ID変えてるの?
特大ブーメラン刺さってますよ(小声)
両者とも自治厨なんだよなあ…
そういう討論は他所でやってどうぞ
というかあちらこちらに同じような文章を投稿するのってマルチポストじゃん
なら自演であちらこちらで秋月ニキを連呼するのもマルチポストだね
うん
だから両方通報しちゃおう
なんだこの流れ
いい加減ID変えながら謎理論で通報通報鬱陶しいからねしょうがないね
おっそうだな
どっちもキモイでファイナルアンサー
『ねえ、寧子』
「どうした?」
『…アキヅキ、あのままじゃあ負けるわよ?』
ヴァンガード級のライフル照準器で宙空を覗いていたビスマルクが、隣に佇む寧子へと低い声を向けた。
『貴女ね、いくらなんでも戦闘判断力まで奪ってしまっては意味無いでしょうに』
呆れと失望が綯い交ぜになったような声。
わざわざこんな場所まで連れてこさせておいて、見せられるのはこんな物か―と。
「いやいや、あれが正しい彼女の戦闘だよ」
しかし、寧子はいかにも軽い調子で答える。
彼女は、一層顔を顰めた。
『……敵に高度優勢を明け渡して、のろのろ下方で迎え撃つのが大和の艦娘戦闘なのかしら?』
「秋月型の真髄はね、対空にあるんだ」
『対空?』
苛ついた声を宥めるよう、殊更穏やかに寧子は言い放った。
「ま、見ているといいさ――」
そして、照準器の先、空に浮かぶ秋月を指差す。
その上空から迫り来るは、太刀を振り被った那珂。
やっと脅威に気付いたのか、秋月が大太刀を空へ向けて突き出した。
『…何よ、あの構え…上空の敵を迎え撃つにも、方法ってものが』
「……ふふっ」
柔らかく笑う寧子と、苛立ちを隠せないビスマルク。
彼女らの視線の先、ぶつかり合う寸前の二つの艤装。
『え…?』
「…ほう」
二つの艤装の距離が、まさに零になる所で――
上空から飛来していた那珂が急に機首を傾け、秋月を回避するような動きを取った。
それに、両者ともが少なからぬ驚きを見せた。
片方は、なぜ有利を捨てるような真似を、と。
片方は、何かある事に気付いたか、と。
多少、回避には判断が遅すぎたものの、流石というべき運動性か。
那珂は秋月の横を躱すように通り抜けて行く。
急な方向転換にも関わらずあれだけ滑らかに動けるのか、と、彼女はその性能に苦い顔をする。
秋月は慌てて大太刀を動かしたが、僅か、那珂が降ろした太刀に触れることしか出来なかった。
そのまま二つの艤装はすれ違い。
彼女は今度こそ驚きに目を見開いた。
お、来てる
『……なっ!?』
那珂が、急激に「加速」した。
元々、重力の力を受けて高度から降下していたのだ、先程までの速度でも十分に速い物と言える。
だが、今の彼女は常識ではあり得ない速度で降下―いや、落下していた。
しかし、那珂は物凄い速度を保ちながら地面へと叩きつけられるその寸前、なんとか機首を翻し、上空へと再び飛び立つ。
それにしたってやはり常識外れの運動性だったが、何よりも疑問に思ったのは、あの速度。
『………な、何よ、あれ…』
「逆落し…といって、わかるかな」
『…サカオトシ?』
浮かんだ疑問には、すぐに隣の寧子が答えた。
彼女に聞き慣れない大和語で。
「ま…そんなに名前には拘らないでいいけれども、ね」
「あれは、元々秋月型に備わっていた密装を改良したものさ」
『…あの加速が?』
「ああ、本来の秋月型では―『浮葉』と呼ばれる密装なのだが」
「この天才である私にかかれば、あの通り、いや、まさに義経の鵯越もかくやといった詭道――」
『……どうでも良い御託を並べるのは後にして、さっさと本題を述べなさい」
「…全く、君は生き急いでいるねぇ、相変わらず」
「ごほん、元々秋月型はね、戦争末期、大和軍に制空権が全く無かった時代の駆逐艤装だ」
「軍部の悩みの種は勿論、上空から雪崩のように襲い掛かってくる連合軍の艤装への対処」
「重力を味方にした突撃は、いくら大和の真艦が優れているとて対応できはしなかった」
「だから、秋月型の大太刀には、ある機構が導入されてね」
『……それが、あれ?』
「いいや、違う、言ったろう、本来は『浮葉』と呼ばれるのだと」
「水に浮く木の葉のように―相手の攻撃を完全に受流すのだよ、あの刀は」
『…どうやったら、そんなことを』
「磁力塗装」
『磁力?』
ああ―と寧子が頷く。
秋月型の3尺6寸の大太刀は、攻撃の瞬間に磁力の膜を張ることができ。
それにより、どのように強力な一撃でさえ受流すことを可能にしたのだ、と。
「ま、受流すと言うよりは―衝撃を吸収して零にする、というだけなのだがね」
「どこまで本当かは知らないが、あの太刀と打ち合わせると、ゴムを殴ったような感触がするらしいから」
『……それが、フヨウ?』
「ああ、この機構の導入によって理論上、上空からの一撃は完全に無力化出来る」
「…勿論というか、付随する欠点は多大にあったがのだがね」
『…それでも、物凄いカラクリね』
「うむ、技術立国の面目躍如、といったところか」
「そして、逆落しに関してだ」
『…ええ』
「何の事はない、吸収していた磁力を、全て反発に回しただけなのだよ」
『…どういうこと?』
「加えられる一撃の威力を全く弱めること無く、本当に、ただ受け流すんだよ、磁力の反発で」
「あの刀身に触れると、恐らく油でも切ったような感触がするんじゃないだろうかね」
「降下してくる敵の刀を、そのまま下方向へ流しているんだ」
「流された力の行き場は――そのまま速度になる」
『…じゃあ、あの加速は』
「そう、彼ら自身の突進力を、そっくり受け流した結果――」
「地面に向かって、素晴らしいバンジージャンプが楽しめる、という訳さ」
『……………』
ビスマルクは押し黙る。
そのようなものがあるのなら、今までに確立されてきた戦法など、全て無に帰すではないか。
なにせ、有利な攻撃を仕掛けたと思ったら、次の瞬間には地面に叩きつけられているのだ。
極端に言えば、あの艤装はその密装を発動している限り、宙に浮いているだけで敵をいくらでも落とせる事になる。
ただ、刀を合わせるだけで敵を倒せる艤装。
そんな都合の良い物が――
「……しかしねぇ、欠点はやはり大きかったのだよ」
『…あるとは思えないけれど』
「…まあ、装備自体にはね」
「問題は…まあ、体力だな」
寧子が、再び宙空に視線を移した。
それに釣られるように、彼女も慌ててライフルの照準器を覗きこんだ。
ここまで、短くてごめん
秋月に関する選択肢全部クリーンヒットで一番良いもの取っていったからねぇ、びっくりした
もしかしたら深夜続き書くかもしれない
おつおつ
乙乙
別に普通に取るのはいいけど二刀流して取ってたからなぁ…未だに何だかなぁとは思ってる
乙です
「づ――、ぐ、あっ!」
急速に迫る地面に背を向けて、ぐるりと機体を翻す。
重力が身体を圧迫して、そこかしこから嫌な音が鳴った。
「…があっ!……はぁっ、ぁっ…」
視界に広がるのは広い夜空。
それを見て、やっと一息をつく。
『……機体高度、200!…なんとか安定、かも』
「…よく落ちなかったもんだ」
『…那珂ちゃんの性能と提督の腕、だねー』
那珂がにひひと飛ばす笑い声にも、どこか元気が無い。
当然だ、あんな無茶な飛行をしたのだから、全身にガタが来ている。
「…損害状況」
『肩部、脚部、腕部装甲、どれもボロボロ、滅茶苦茶な機動で飛んだからね』
「……道理で全身が痛いと思った」
『うん、すっごい痛いし逃げたい……で、提督、さっきの…何?』
「…知らん」
『……だよねー…何で秋月ちゃんを躱そうとしたのかはわからないけど、あれがなかったら…多分、そのまま落ちてたね』
「だな…まあ、そっちに関しては第六感ってところだ」
『…さっすがー』
茶化す声に罵声を返す余裕すら、今はない。
ただ、頭を抱えることしか出来なかった。
「……だが、何で落とされたのかは、皆目検討も付かん」
『…だよね』
信じられないことに。
大太刀の刀身に太刀が触れた瞬間、それは滑り。そのまま真っ逆さまに機体は墜落した。
ありえない、それこそ常識外れの速度でもって。
いかに那珂の機動性能が優れていようとも、あんな速度で飛んだことは未だかつて無い。
証拠に、急降下と急旋回の影響で身体、艤装共に相当損傷を負っている。
正直、空中分解しなかったのが不思議なくらいだった。
「あれに触れると、加速するのか?」
『……めるへんちっくな装備だねー』
「…密装ってのは何でもありだろうが、言ってみりゃ」
だいたいそれを言い出すと、那珂の密装についても同じことが言える事になる。
常識外を現実にするのが密装―なれば、あり得ない、という言葉は通じない。
『…確かにそうだけど…』
「……戦闘不能は…無理だな」
『……そうだね』
『…自分達の心配するほうが、先だ』
相手を戦闘不能に留めるためには、戦力差―それもそれなりに開いた物があってこそだ。
自分よりも格上だったり、手札が読めない相手にそれをしようとすれば、死ぬのは間違いなく自分。
『でも、どうするの?』
「…………」
けれど、そう決めた所で、この状況が好転するわけでも無い。
相手にはあの謎の密装がある。
先程と同じ様に戦えば、今度こそ地球に向かってダイブさせられることだろう。
ではまた地面に降りて戦えば―というのは不可能だ。
地上ではヴァンガードやキングジョージ級艤装が、対艤装ライフルを構えて待ち構えている。
秋月とは、あくまで空中戦をしろとのことらしい。
「…下から打ち掛けるしかない、な」
『……諒解』
となると、残る手は一つ。
低空から上昇しての打ち掛け。
或いは、この攻撃に対してもあれを使えるのであれば―もう打つ手は無いが。
秋月の運動性を見るに、あれに無誘導の魚雷が当たる筈も無く。
故に、取れる手は一つしかない。
「…那珂」
『…なんとかしますよー、わかってますよー』
「嫌々言ってんじゃねえよ、覚悟決めろっての」
不利だとわかっていても、下位を取って戦うのみ、だ。
「……来るぞ!」
宙空、満月と重なって滑走する秋月が降下の態勢に移行する。
今度は、彼女の方もまともな太刀打ちの構えを取った。
「……少なくとも、下から来る相手を落とせはせんらしいな」
『…凄くいい情報だね』
「ああ、尤も、勝つ確率が0から1になったってくらいだけどな!」
『あーもーやけくそだー!』
那珂と二人叫びながら、降下してくる秋月に向かって打ち掛かる。
秋月の構えは、肩に刀を載せた上段、破壊力を重視した基本的な打ち下ろし。
ならば此方が取る手は――――
>>+2
A.同じく上段に取り、真正面からの太刀打ち。
B.とにかく、相手の太刀を躱す事に集中する。
B
b
B
B.とにかく、相手の太刀を躱す事に集中する。(生存)
秋月の速度は、思った以上に速い。
加えて威力十分の大得物。
あれと打ち合えば、低空を無理やり取らされた俺達がどうなるかなど一目瞭然。
『――――――』
「……お、らっ!」
機体をそのまま右側に滑らせるようにして、秋月を躱す。
その機動は通常の艦ならばどうやったって追いつけないような物であった自身はあった。
が、遅れて左肩に衝撃。
「がっ――!」
『……い、たぁ…、あれで、当てられるなんて…』
「…損害!」
『肩部装甲、中破!気をつけて、もう一発同じ場所に当てられると、生身の方にダメージが行くよ!』
「……クソっ」
秋月の機動性が高かったのもあるが、一番の誤算はあの大得物。
避ける時に、どうしてもあれの射程を計算に入れることが難しい。
そもそも、3尺6寸なんて太刀を引っ提げた駆逐艦がいるなんざ、聞いたことがないのだ。
あんな長い太刀、戦艦艤装の腕力ですら扱えない者もいるのだ。
それを、あの大太刀を彼女は完璧に使っている。その限りにおいては、あれは威力と射程の両方を備えた最高の武器であろう。
「……ちっ、降りるぞ、那珂」
『……諒解』
肩を庇いたくなる手を抑えて、再び地面へと近付いていく。
普通の艦娘戦闘であれば、先程降下した秋月が上昇してくるタイミングを上空から叩くのが筋だ。
しかし、それをしてしまえば落ちるのは俺達であることは、先ほど証明されている。
だからこそ、不利だというのを理解して尚、低空を取るしかない。
「…あっちは…素直に上がるみたいだな」
『……このままだと、どうにもならないよ』
「…わかってるつーの」
上昇する秋月になるべく近寄らぬよう、高度を下げる。
那珂の言う事は尤もだ。
このままこうして太刀打ちを続けた所で、彼女に勝てる見込みなど零に等しい。
仮にこれが素人が適当に振り回している刀ならば、まだ隙を突いて攻撃することも叶おうが。
秋月の刀は、その付け入る隙が無い。
焦っていないし、驕ってもいない。
ただ、自らの有利を理解して、俺を殺す為に最も確実な方法を取っているだけだ。
言うなればそれは、作業に等しい。
俺をじわじわと削っていくだけの作業。
それとて実行しているのが人間であればミスもあろうが、対する相手は今や殺人機械と化した秋月だ、その期待は薄い。
『…来るよ、提督!』
そして、秋月の姿がまた、宵闇に冴え渡る満月と重なった。
「………?」
秋月は空を裂き、降下を続ける。
だが、一瞬、僅かにその機動がよろめいた。
『…提督、構えてってば!』
「……あ、ああ」
あの動きは、…何だ?
フェイントではない。あんな場所で仕掛ける意味がない。いや、そもそも相手がフェイントを使う意味が無い。
小細工に頼らなければならないのは、此方なのだから。
では何だ、あの不自然な動きは。
しかし、その思考をする時間すら秋月は与えてはくれない。
重力を背に、ぐんぐんと距離を詰める。今度は―中段。
対する此方も太刀を構え、そしてまた彼女の脇をすり抜けるような機動を取る。
『――――』
それを予測していたのだろう、秋月が中段に構えた刀を通り抜ける俺へ向かって薙ぐ。
『あ――――』
那珂が声を上げた。
切られる、と。
だが、聞こえたのは肉を裂く音でなく、金属音。
「……が、…痛っ……」
無造作に振られた大得物を、痛みの残る両腕で構えた太刀で流す。
傷に衝撃が響きはしたが、大した痛手でもない。
そのまま脇を抜けて、もう一度空を翔ける。
『……おおー…』
那珂の感嘆したような声。気が抜けるからやめて欲しい。
「…ああするだろうと読んでただけだ、次は…わからん」
あの太刀に合わせられた理由は単純。
行動を先読みし、それに合わせてくるだろう事は読めていたからである。
だからこそ、無策に一度目と同じ機動を取った。
…しかし、三撃目は読めない。
「……さて、…次はどうしよう」
『………えっと、秘策とかは』
「…無いな、全く」
もう一度低空へ下降しながら、考えを巡らせる。
まず秋月の密装に対向する方法、思い付かない。
降下してくる秋月を逆に斬る方法、無い。
また確実に横を通り抜けていく方法…、は、確実ではないが、躱すだけならなんとかなるかもしれない。
しかし、このままそれを続けた所でジリ貧になるだけなのは、先程言った通りである。
エネルギー
熱量をこれ以上消費する前に、一か八か、もう一度決死の太刀打ちを挑むべきだろうか…。
『…あー、で、でも…あれだね、向こうも…疲れてるのかも』
「……ああ?」
『…こ、怖い声出さないでよっ!…ほら、さっきの剣撃、弾けたじゃん!』
「………」
…そうか。
言われてみれば、先程俺は、那珂の艤装付属の太刀で、あの大得物を流したのだ。
しかも、腕には痛みが残っており、万全とは言い難い。
その理由として―相手の刀が弱まった、というものはあるかもしれない。
考えてみれば、こうして戦っている中で疲れていくのは俺だけではない。
秋月とて、あれだけの飛行や密装を行っているのだ、少なからぬ熱量消費はあるだろう。
もしかして、先程のよろめきは疲れ、なのか?
…と、なれば――――
>>+2
A.躱し続けての長期戦に持ち込めば、或いは――
B.今、弱った隙を力が残っている内に一気に叩く!
b
a
うーんA
aだとこれは秋月完全洗脳からの死亡ルートかな
どっち行っても死亡はほぼ確定事項なんだよなぁ
わかんね
bも地雷っぽいしな
疲れなのか洗脳に抗ってるのかわからんな
これが好機だったのか疲れだったら更なる好機がまた来るかにもよるが
A.躱し続けての長期戦に持ち込めば、或いは――(生存)
「ああ」
『…何よ、間抜けた声だして』
「ダメだな、あれは」
宙空を見つめる寧子の声に、明らかな失意が混じる。
そのまま彼女はやれやれ、と両手を上げた。
『……体力不足?』
「…うむ…上手く逃げ回られている、じきに秋月の体力も尽きるだろう」
『…操った子は、いつでも全力なんだっけ?』
「そう調整せざるを得なくてね、それに、あの秋月型艤装は…密装やらも含めて高性能な分、燃費が非常に悪い」
『それが欠点?』
「の、数ある一つだな…他にも装備の整備だったりなんたり…まあ、挙げればキリがないのだが」
ぴょんと、寧子がビスマルクの艤装の肩に乗る。
『…何よ』
「帰ろう、フッドに」
『……え?』
その言葉がよほど意外だったのだろう、ビスマルクは、彼女には珍しく呆けた声を上げた。
『…いいの、あれ』
「うむ、色々と足りない部分は分かったし…結果が見えている勝負なんてものを見続ける趣味はない」
『……相変わらず…で、どうするわけ』
「プランBで行くしか無いだろね、いや、そんな名前だったかは甚だ疑問だが…とにかく赤城を強奪するという作戦は失敗に終わったのだから」
『貴女が、失敗するように仕向けていたとしか思えないのだけれど』
「どうしても秋月のテストをしたかったんだよ、ごめんごめん」
『……利用価値が無くなったら、絶対に殺すわ、貴女』
「…前向きに逃げよう」
目を逸らした寧子に、ビスマルクは大きな溜息を吐いた。
そして、付き従う連合国正規兵に顔を向ける。
生存か
良かったよ俺が安価を取らなくて
あっぶねー…やっぱ怖いわ
やっぱ汚いジーグと同じ対処法だったか
『……帰還するわよ、いい物が見られたかどうかは知らないけれど』
またこの女に踊らされた、ビスマルクは端正な顔を歪めて吐き捨てた。
上層部の覚えめでたくなければ間違いなくこいつを更迭か処刑しているだろうに、と。
『…隊長、あちらの艤装、放置してもよろしいのでしょうか?』
しかし、一人のヴァンガード級艤装を付けた若い少佐が那珂を指さしてそれに反論した。
『ナカはかなり厄介な艤装と聞きます、今のうちに処理しておいた方が良いのでは』
『………』
なるほどそれも尤も、そうビスマルクが考えた時、寧子が肩から声を出した。
「やめておけ、ビスマルク」
『……また邪魔をするのかしら?』
返す声は、当然というか刺々しい。
そんな声を少しも気にした様子なく、寧子は継ぐ。
「私の勘だ、秋月を殺した後の那珂と戦うのはやめておけ」
『どうしてよ、弱っているじゃない』
「…やめておけ、君を友人と見込んでの助言だよ」
『…………』
表情は軽かったが、言葉は重かった。
それに気圧されるように、ビスマルクは渋々と言った様子で頷いた。
『……では隊長、我らにだけでも許可を』
『………ええ、わかったわ、フッドは火を入れておくから』
『はっ!必ずや戦果を上げてみせます!』
威勢の良い返事は、流石、若くして左官になった艤装乗りといったところであろうか。
従う隊員達も、闘志を燃やしている様子であった。
「…やるなら、今、狙撃してはいかがかね」
それを冷めた目で見ていた寧子が、声を出す。
『…ふん、貴様の様な人種にはわからんのだろうな、我らはどんな敵をもってしても、騎士道精神を忘れん』
「……あー、そうかい、ならば勝手にするといい」
殊更つまらなそうに溜息を吐いて、寧子がビスマルクを促した。
「帰るぞ、やはり私は英国人は嫌いだ」
『……ええ』
こうして、佐伯基地跡には、ヴァンガード級3隻、キングジョージ級12隻が残る。
宙空の戦闘が終わるのを、今か今かと待ちながら――
そんなわけで今日はここまでです
次回、多分3章終わると思う
乙
よく見たら>>935で体力について明言してたね危ない危ない
乙
生存自体は喜ぶべきなんだろうがなぁ…うん
乙
選択肢選んだ後に書かれてる生存って多分提督側の生存って事でしょう
この後どうなるかまだわからんよ
乙です
乙です
『…提督』
「………ああ」
空を、艤装が落ちてゆく。
手足をばたつかせながら、無残に、惨めに。
戦場の王者であるはずの艦娘は、今や既にその威容を失い。
ただ重力に従って、地面へ向かって落ちてゆく。
「…………」
目論見は当たった。
秋月の攻撃を回避することだけに集中していれば、彼女の動きは目に見えて鈍っていって。
最後には、あの状態。
熱量を切らして、もはや空を翔ける事すら出来なくなった。
この高度から落ちたとあっては、もはや彼女が助かることはあるまい。
…………。
そう、助かることはない。
『……………』
沈黙に、那珂の何かを言いたそうな吐息が混じる。
けれど、彼女は結局何を言うでもなく、黙っているだけだった。
遂に、艤装が地面に叩きつけられた。
何の事はない、大きな音がして、それっきり。
そのまま、彼女は再び空へと上がってくることはなかった。
『……見に行く?』
「…………ああ…」
半ば無意識に、那珂の声に頷く。
正直言って、この結末にはどこかほっとしていた。
秋月を切らなくてよかった、という事に。
結果は同じだ。
彼女が死んでしまったことは、変わらない、揺るぎのない事実だ。
だけれど、直接俺が手を下したのではない。
それは、怯懦な俺にとって、確かに一つの救いだった。
そう、俺は怯懦なのだ。臆病なのだ。小胆なのだ。
人を殺すということに対して、俺は、どこまでも。
狂わなければ人を殺せない人間など、それは間違いなく誰よりも臆病。
普通の者なら、その恐ろしさに震えるだろう。
冷酷な者なら、必要なことだと割り切るだろう。
勇敢な者なら、その罪を受け入れるだろう。
臆病な者は―狂うしかない。
罪を受け入れることも出来ず、背負うことも出来ず、割り切ることも出来ず。
卑怯にも、その全てに目を瞑り、狂う。
そうしなければ、自分を保つことが出来ないから。
『…………………』
「………あ……」
だから、地面に降りてすぐ、那珂の声にすらならない驚きに意識を戻された俺は。
目の前の光景を、受け入れることは出来なかった。
「……………ぁ……ぐ……」
生きていた。
墜落の衝撃で艤装はバラバラに飛び散り、無事なのは側に突き立った大得物のみ。
薄暗い月光に照らされた全身は、殆ど真っ赤に染まっていたけれど。
それでも、秋月は生きていた。
「秋月………!」
「…待って!」
艤装を解き、反射的にそこへ一歩を踏み出して、しかし那珂に制される。
「那珂、あいつは…」
「…………」
那珂は、何も言わず、ただ静かに首を振った。
その動作が何を示しているのかは、すぐに伝わった。
「……はい」
そして、彼女はゆっくりと太刀を差し出した。
暗闇にぽっかりと浮かぶ冷たい鋼の刀身は、思わず今の状況を忘れそうになるほど綺麗に見えた。
「……………那珂」
名前を呼んだ。
或いは、助けを求めるように。
或いは、嫌だと駄々をこねるように。
けれど、返って来たのは無言の否定。
頭を振って、刀を差し出す。
「…………」
受け取った太刀は、いつもよりずっと重かった。
一歩、二歩、血溜まりに倒れる秋月へ向かって足を踏み出す。
足元の草が、ざぁ、と鳴った。
「……………ぅ……ぁ…」
秋月は、弱い呼吸を繰り返していた。
このまま放っておいたとしても、間違いなく直に死ぬだろう。
地面に膝を降ろす。
震える手で、秋月の頭を抱えた。
僅か、唇からは掠れ声と、弱々しい吐息だけが漏れていた。
喉へ向けて、太刀を構える。
………………。
………。
…。
>>+2
A.秋月を殺す。
B.……殺せない。
b
b
A
a
うーん露骨ゥー
ここまで来たらここで断っても那珂がやるだけやろ
もう言うだけ無駄だし諦めなよ
二刀流いい加減にしろよ
B.……殺せない。
「……………」
それを振り下ろすことは、どうしても出来なかった。
ただ、ずっと秋月の顔を見ながら、太刀の刃先を震わせていた。
その優しさを、また、求めて。
戻らないとはわかっていても。
今、この太刀を振り下ろせば、全てが終わってしまうような気がしたから。
「…………秋月」
名前を呼ぶ。
そこに応える声を夢想して。
無邪気な声を、夢想して。
「………ぁ…」
その時、だった。
ゆっくりと、彼女の瞼が開く。
「…秋月っ!」
「……………」
呼びかけに、焦点が俺を捉えた。
確かに、彼女は俺を見た。
「……ぅ…」
そして、彼女は笑ったような気がした。
口元を弱々しく歪めて、掠れる声を精一杯に絞り出して。
お、もしかしてサブルートとか?
「……――――!」
秋月、と。
もう一度彼女の名前を呼んだ。
しかし、不思議と声にはならなかった。
あんまりにも予想外過ぎて、少し混乱しているのかもしれない。
「……………!」
…ああ?
ああ、ダメだ、上手く言葉が出せない。
肝心なときに、役に立たないもんだ。
まぁ、でも、それだけ嬉しかったということだろう。
何とも子供っぽいが、こういう部分に関しては戦時のドサクサで育ってないのだから、仕方ない。
「…………」
震える手を、なんとか秋月の頭に持っていく。
彼女の頭は、俺の顔のすぐ近くにあった。
感動の余り胸に飛び込んで来たのかもしれないが、急に動いたら傷に触るだろうに。
力の入らない手で、なんとか秋月の髪を撫でる。
かひゅ、と空気の漏れる嫌な音が聞こえた。
指で梳いた髪は、流れるようだった。
「――提督!ねえ、ねえったら!」
那珂が、後ろから何かを叫んでいる。
俺のすぐ側の秋月を指差して。
「……………」
慌てるな、大丈夫だ――ああ、やっぱり、言葉にならない。
…少し、疲れてしまったのだろうか。
………ああ、きっと、そうだ、そうに違いない…眠ろうか、そうした方がいい。
起きたら―また。
那珂と秋月と赤城と、あの4人で――
――――――――――――
その少女は。壊されてしまった少女は笑っていた。
命令を実行出来る喜びに。
殺せと言われた対象の喉元に、深く、深く、噛み付いて、笑っていた。
そして―すっかり力の抜けた「彼」に寄り掛かるように倒れ、眼を閉じた。
【死亡・1回目】
やっぱり
でっすよねー
ほんと秋月ニキってクソだわ
あーあ
そらそうよ
秋月ニキと言われても俺は>>976でa選んだんですがねえ…
末尾O規制してくれ
秋月は殺さなきゃダメなのに
2週目やるなら1週目で出た艦は無し?
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なんとなくそうなる気はしてた
その方がいいだろ
次スレ乙ー
そうしてくれんとまた秋月出てこんな流れとかノーサンキューだぞ
三回までコンティニュー有りだっけか確か
新スレ乙
コンテニューあったよね
どうせ推し艦娘出してからのまた二刀流されるから末尾O禁止してくれ
とりあえず那珂赤城長門扶桑あたりはなしで
秋月も…うん、出番一杯あったもんね(遠い目)
翔鶴霧島利根の扱いは考え中です、ビス子はありよ
被害出過ぎやろ…
とにかく梅
>>1000なら敵枠でインマンメルターン使いそうなやつ出てくる
乙
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