男「釣りをしよう」女「ばっちこい」(21)

女「おーとーこー。早く起きないと朝になっちゃいますよー。太陽が顔を出しちゃいますよー」

男「あと15分」

女「おお、起きてた。だーめ。太陽は早起きさんなんだからそんなに待ってられません」

男「あと15分で出るぞ」

女「そうだよ。冬はもう昔なんだから……え?」

男「あと15分だけ時間やる。仕度をしろ」

女「男の服装が完全にパジャマじゃない何かになってる……」

男「喋ってると時間過ぎちゃうよ。まさかその服装で出るつもり?」

女「ど、どこに行くのでございましょうか?」

男「海だよ海。サンダルじゃなくて長靴がいいかも」

女「まだ海開きしてないのに海行くの?」

男「暇潰しをしに来たんでしょ」

女「暇潰しで海……、浜辺で追いかけっこ?」

男「釣りをしよう」

女「ばっちこい」




男「ハサミは無いから良く育ってる長いジャリメは指でぷちんっと千切ってね」

女「お、おとこー」

男「手伝わないよ」

女「うねうねくねくねぷにぷに……うえへー……」

男「切った?」

女「うえ……ビクンビクンって脈打ってるうぅ……」

男「早くしないと太陽昇っちゃうよ! ほら!」

女「ジャリメさんごめんね。痛かったら痛いって言っていいからね。えいっ」

男「痛っ」

女「うええぇぇっ! ごめんねジャリメさーん!!」

男「千切ったら針に刺して」

女「刺したよ……」

男「糸は絡まってない? 重りも装着済み? 竿を振る前に確認して」

女「針良し。糸良し。重り良し。リール良し。ジャリメさんごめんなさい。完璧」

男「はい。じゃあ、竿を海に向かって振ってください。遠くに飛ばす感じでね」

女「これ、首や頭に針刺さらない?」

男「勢いがあれば刺さることなんてまずないけど、怖い場合は頭の横を通すように振りかぶるといいよ」

女「そええい!」

男「そええいって……」

女「かなり奥まで飛んだ」

男「もう少し沖側を狙えた気もするけど」

女「あれだけ飛ばせれば満足です」

男「そうですか」

女「この後はどうすればいいの?」

男「竿を定期的に揺すりながらリールを回して」

女「こう?」

男「竿を寝かしすぎると半身にされたジャリメが海底で引きずられちゃうよ」

女「ジャリメさーん!」

男「食い付かれたときの感覚は分かり易いからそれまでは辛抱の時間」

女「男は見てるだけ?」

男「もちろん俺も釣るよ。獲れた鮎は朝食のおかずだからね」

女「男どこに行くの?」

男「近すぎると糸が絡まってお祭り騒ぎになるからね。複数人で釣りをするときは間隔が大事だよ」

女「おとこー、全然釣れない」

男「針を海に沈めてから5分と経ってないんだけど」

女「千切られて刺されて引き摺られて水責めにされたジャリメさんになんて謝ればいいかなあ……」

男「まだジャリメトーク続けるの?」

女「だって可哀相だったから……あ」

男「ん?」

女「男。私、まけない」

男「いきなり宣戦布告?」

女「ううん。重くてリールが回せない」

男「引かれてる感触はある?」

女「分かんないけどリールが重いよ」

男「リールを固定したまま竿だけを引っ張ってみて」

女「うん」

男「どう?」

女「どうって言われても……」

男「引っ張られてる?」

女「それは無いけど動かない」

男「なるほどね」

女「これってどうなの? 大物? カレイ? 伊勢海老?」

男「針が岩に引っかかりました。女が餌に選んだジャリメは酷い仕打ちを受けたまま海底に捨てられて忘れ去られます」

女「ジャーリーメーさーん!」

男「俺が処理するから謝罪と反省と黙祷をしておきなさい」

女「ごめんねジャリメさん……」

男「はい、取れたよ」

女「またジャリメさん虐めないとダメ?」

男「釣るなら千切ろう。ぶちっと盛大に」

女「ごめんねジャリメさん。ていっ」

男「躊躇なく切ったね。もう抵抗感が無くなったんだ」

女「案外クセになる感触でした」

男「よく分かんないけど女にはよく分かんない素質があると思う」

女「よく分かんない」

男「うん。分かんない」

女「じゃ、私は向こうで釣ってくるね」

男「テトラの近くは引っかかりやすいから場所をよく選らんでね」

女「ん」

男「ジャリメ半分持っていく?」

女「欲しくなったらまたくる」

男「分かった」

女「行ってくるね」

男「存分に釣っておいで」

女「ばいばい。また会おうね」

男「そこまで別れを演出しなくていいでしょ。普通に行ってきなさい」

女「はーい」

男「さて、こっちは針を替えて少し大物を狙ってみようかな」

女「おとこー」

男「戻ってくるの早くない?」

女「ゴミ」

男「目を合わせるや否や罵倒された」

女「いらないビニール袋ある?」

男「どうするの?」

女「捨てる」

男「もうちょっと理解しやすい説明をお願いしていいよね?」

女「向こう側にゴミが沢山あったのを見つけたから拾って捨てたいからビニール袋をください」

男「なるほど。海浜清掃をしたいと」

女「飽きたから気分転換にいいかなって」

男「飽きたって何に?」

鮎って川じゃなかった?

>>8
キスとあゆを完全に間違えてたorz
鮎を鱚に脳内変換しながら読んでくれ

女「……トングある?」

男「スルーされたってことはやっぱりそうですよね。トングまでは持ってきてないよ」

女「手で拾ってもいいよね?」

男「汚れたら海水で軽く手を流してからタオルで拭いてね」

女「分かった」

男「はい。ビニール袋」

女「ありがと。行ってきまーす」

男「いってらっしゃい。……釣りつまんないのかぁ」

男「俺は好きなんだけどなぁ……、つまんないのかあ……」

女「どしたの? 落ち込んでる?」

男「だから戻ってくるのが早いって。俺は元気だけどゴミは拾いきったの?」

女「花火しよ」

男「なんで1つのことに集中できないの? 海での定番かもしれないけど花火は荷物に入れてないです」

女「さっき拾った」

男「ゴミでしょ?」

女「袋はちょっと濡れてるけど開けてないみたいだよ。ほとんど新品」

男「たぶんそれは袋が水に浸かったから捨てたんだと思うよ。火薬が湿気たら使い物にならないからね」

女「……釣りする」

男「何1つまともにやらないうちに釣りに原点回帰しちゃったよ」

女「新しいジャリメ使っていい?」

男「いいけどさっき使ったのは海に捨てて魚のご飯にしといて」

女「……私の為に誰かが傷付くのなんてもう見たくない」

男「いきなり今度は何?」

女「流れていい血なんてどこにもないんだ!」

男「竿を置いてどこ行くの?」

女「魚捕まえてくる」

男「あえて訊くね。どうやって?」

女「素手で。とうっ! いひゃっ?! 冷たい!」

男「……」

女「ジャリメの弔い合戦じゃ! そこか?! ここか?!」

男「女ー」

女「ええい! 鱚め! ちょこまかと逃げ追って! あ、フジツボさんおはよございます」

男「おーんーなー」

女「なに? 男も一緒に捕まえる?」

男「着替えは?」

女「無いよー。お、蟹ちゃん。あー、テトラの奥に逃げられちゃった」

男「下着透かしたまま歩いて帰るの?」

女「そもそも海だから着けてないよ。服の下から磯の香りが漂ってくるなんて嫌だし。おー、ヒトデいたよ! ほらほら!」

男「……」

女「ねえ、太陽昇ってきたけど何時くらいに帰ろっか」

男「すぐに帰ろう」

女「えー、まだ1匹も釣れてないのに? 諦めるにはまだ」

男「お姫様おんぶ」

女「ちょうど私もそろそろ頃合いかなって思ってたんだ。未練と辛抱は区別しないとね、うん!」

男「うわっ、靴脱いで水に浸かったのか」

女「だってお気にの靴だもん。濡らすわけにはいきませんて」

男「おんぶしてあげるから持てそうな荷物をお願いね」

女「パックされてる群れたジャリメーズはタオルに包んで鞄に入れておくね」

男「ん。よし。だいたいこんなもんか」

女「プリンセスおんぶ」

男「どうぞお姫様」

女「うむ」

男「明日から天気崩れるらしいから、しばらくは海とお別れだよ」

女「ねえ、今度来たときは何する?」

男「泳ぐ? バーベキューもしてみる?」

女「バーベキュー美味しそう」

男「道具は一式全部家にあったと思う。梅雨が明けたら肉と野菜買ってまた来るか」

女「肉と野菜だけ?」

男「鉄板はそんなもんじゃない? もろこしとかピーマンとか玉ねぎその他諸々」

女「せっかくの海なんだし魚介類も焼こうよ」

男「いいね。奮発してホタテまでなら許そう」

女「貧乏人め」

男「ならさ、食べる量を増やしたいならいい案があるよ」

女「なに?」

男「釣りをしよう」

女「ばっちこい」

おわり
相変わらず書き溜めの息抜きで書いてるからボリューム皆無だけど許して

途中で指摘が入ったけど
×鮎○鱚
すまんかった

乙、レポートの合間に読んで休憩してる

乙!

>>1のこのシリーズ好きなんだけど
まだ散歩と釣りとあれだけなん?

ありがとう
まだ散歩と釣りとあれだけだよ

いいね

めごちの天ぷらが食いたいなー
あとアオイソ可愛いよアオイソ

>>18
ありがとう
期待して待ってる

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