男「ちょっとまって」後輩「どうしましたか?」 (113)
関連作
男「ちょっとまって」幼馴染み「え?」
男「ちょっとまって」委員長「何ですか?」
毎夜、投下していきます
またよろしくおねがいします
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――――天文部部室
男「ここに行こうか、ここで星見よう」
後輩「……岐阜の、高山ですか」
男「これから夏に入って暑くなるからさ。ここは避暑地だし、しかも空気がいいから綺麗に星が見えるんだ」
後輩「へー、いいところじゃないですか!いいですね!」
男「それに、観光地でも有名だからな。昼とかには街に出ればいいし」
後輩「分かりました!ここに決定しましょう!」
男「え、そんな簡単に決めていいのか?」
後輩「なんでですか?」
男「後輩にも、行きたいところの候補があったんじゃないか?」
後輩「あーと、まあありましたけど、この高山の方が好きになってしまいました」
男「良かったのか?」
後輩「先輩が選ぶところならどこでも!」
――――数日後
後輩「せんぱーい!こーんにーちは!」
後輩「って、部室いない」
後輩「?珍しい、先輩が遅れるとは」
後輩「いつも私より早いからなー先輩」
後輩「たまには遅いこともあるか」
後輩「さてと……ん、メール来てる」
後輩「先輩から『今日は部活なし』ってえええぇぇ!部活なしとは!」
後輩「先輩と会えるのを楽しみにしてる私にとってなんという仕打ち」
後輩「とりあえず電話を」プルルルガチャ
後輩「もしもーし。先輩ですか?」
男『後輩、悪いな。いきなり変更になって』
後輩「それは許さないですけど、なんで変更に?」
男『許さないですけどって……。幼馴染みが風邪でさ』
後輩「幼馴染みさんが風邪、ですか」
男『ああ、だからお見舞い行くから今日はなしな』
後輩「先輩は、気をつけてくださいね」
男『大丈夫大丈夫。心配すんな』
後輩「もし先輩が移ったら絶対お見舞い行きますから!」
男『なんか後輩がくると悪化しそう』
後輩「えー、ひどい」
男『大丈夫だって、そう簡単には移らないから』
後輩「明日は絶対きてくださいよー!私先輩がいないと退屈なんで」
男『お前は退屈しのぎに俺と話してるのか』
後輩「やだなぁ、そんなはずないじゃないですか」
男『くそっ、どっちか分かんねぇ!』
後輩「で、幼馴染みさんは大丈夫なんですか?」
男『お、幼馴染みの心配してんの』
後輩「いえ、早く治して先輩と会いたいなーと」
男『全然違った』
後輩「私が敵である幼馴染みさんの心配をするわけないじゃないですかー」
男『ひどいな!お前!つか敵って!』
後輩「私の退屈しのぎを奪ったんですから」
男『やっぱ退屈しのぎじゃねぇか!』
男『あ、悪いもう着くから切るな』
後輩「はい。移らないようにしてくださいね」
男『ああ、当然。じゃあな』ガチャ
後輩「…………」
後輩「敵というより、恋敵ですかね」
――――翌日
後輩「先輩はバカですか」
男『…………悪い』ゴホッ
後輩「私があんなにあんなに心配してあげたのに……」
男『…………ごめん。てそんなに心配したっけ?』ゴホッ
後輩「大体先輩はいつも唐突で考えてないです。だからこういうことになるんです」
男『…………返す言葉はないです』ゴホッ
後輩「さて、それではお見舞い行きますね!」
男『…………断れない』ゴホッ
――――家
男(あー…………)
男(クラクラする…………)
男(これは後輩のテンションについていけないぞ…………)ゴホッ
男「今日は静かだといいんだけど…………」
ピンポーン
「せんぱーい!来ましたよー!」
男「…………来てしまったか」ゴホッ
男「…………はぁ……」ゴホッ
ガチャ
後輩「どうも!先輩!」
男「…………」
後輩「まさかの無言」
男「…………じゃ、寝るから」ゴホッ
後輩「えー、何ですかそれつまんなーい」
男「……お前は……何しにきたんだよ」ゴホッ
後輩「もちろん、お見舞いですよ。ということで、何か作りましょうか?」
男「…………料理できるのか?」ゴホッ
後輩「まー、大体のことは」
男「……本当に大丈夫……なんだろうな」ゴホッ
後輩「先輩に対して不味いものなんて作りませんて」
男「…………じ、じゃあ頼む」
後輩「おっまかせください!」
後輩「はい、先輩。簡単ですけど、お粥と、リンゴを切りました」
男「……へぇ、本当に作れるんだな」ゴホッ
後輩「もちろん。私の家でよく作ってますから」
男「…………複雑な家庭……なのか?」ゴホッ
後輩「そんな複雑じゃないですよ。ただお金持ちってだけで。」
男「……は?」ゴホッ
後輩「見たことありますかね。あの大通りの突き当たりにある家です」
男「…………えええぇぇ!」ゴホッゴホッ
後輩「ちょ、先輩そんな驚きますか。って風邪もひどくなってますし……」
男「そりゃ驚くわ!え、あれお前んちだったの!?」ゴホッゴホッ
後輩「これでもお嬢様です」
男「…………なんであの高校に?」ゴホッ
後輩「私は頭悪かったので、あの高校がちょうど良かったのと、近いからですね」
男「…………世の中は分からん」ゴホッ
後輩「そんなことより、先輩のベッドの下とかなんかないんですか?」
男「それはだめだ!お前何考えてんだ!」ゴホッゴホッ
後輩「あ、成程。つまり本棚の中と」
男「何探そうとしてんだよ!てか勝手に漁るな!」ゴホッゴホッ
後輩「まーまー、先輩は寝ててくださいよ」
男「嫌だよ!お前は何する気だよ!」ゴホッ
後輩「ん?これはこれは……アルバム?」ペラ
男「ん?……おお、懐かしいな。って勝手に読むな」ゴホッ
後輩「ぶはっ!先輩ちっさ!かわいい!」ペラ
男「小さいのは当然だろ!あと、かわいいは止めろ!反応の仕方がわからん!」ゴホッゴホッ
後輩「へー……先輩、小学生くらいから一緒に写ってるこの子は?」ペラ
男「あー、それ幼馴染み」ゴホッ
後輩「……そんな前からの知り合いでしたか」ペラ
男「あん?もっと前だぞ?物心ついたときから一緒にいた」ゴホッ
後輩「…………」ペラ
男「……な、なんでそんな真剣に見るんだ後輩」ゴホッ
後輩「……先輩の過去が分かるなぁと思って」ペラ
男「はぁ?俺の過去とかなんもないぞ?ただ普通に人生送ってきただけだしな」ゴホッ
後輩「……そうなんですか」スッ
男「え?それは普通じゃおい待て勝手に写真を抜き取るな!」ゴホッゴホッ
後輩「ふふん、これ、持っときますね」ペラペラ
男「しかもなんでよりによってプールの時の写真なんだ!もうちょっといい写真があったろ!」ゴホッゴホッ
後輩「唯一先輩が裸になってる写真ですからねこれ」ジー
男「じっくり見るな!やっぱ返せ!」ゴホッゴホッ
――――夜
後輩「では、私はこの辺でお暇させていただきます!」
男「はぁ……はぁ……早く帰れ」ゴホッゴホッ
後輩「先輩冷たすぎです」
男「マジで悪化した……だろこれ」ゴホッゴホッ
後輩「あー……少しはしゃぎましたかねー」
男「少しどころじゃねぇ……」ゴホッゴホッ
後輩「あ、そうだ。先輩にお土産を」ガサゴソ
男「先に渡せよそれ」ゴホッゴホッ
後輩「どうぞ!」スッ
男「……のど飴……」ゴホッ
後輩「あんまり咳してると喉痛めますから。少しずつ食べてください」
男「……まさか後輩がまともなものをくれるとは」ゴホッゴホッ
後輩「何ですかその言い草は。とりあえず早く良くなってくださいね。私、一人だと寂しいので」
男「ああ。……ありがとう」ゴホッ
後輩「……はい!」
――――後輩の家
ガチャ
後輩「ただいま」
使用人「おかえりなさいませ。お嬢様」
後輩「……お父様とお母様は」
使用人「出張でございます。戻るのは明後日になると」
後輩「……部屋で待ってる」
使用人「夕食の準備ができ次第お呼び致します」
――――後輩の部屋
後輩「…………」ボスッ
後輩「……ベッド、ふかふかだぁ……」
後輩「…………」
後輩「……」
後輩「…………楽しみ、だなぁ」
後輩「…………」
後輩「…………」スー
続きは明日で
おつおつ
これって過去作と繋がってたりする?
15分から投下するよ
よろしくね
使用人「お嬢様」ガチャ
後輩「…………」スースー
使用人「……寝てますか?」
後輩「…………」スースー
使用人「すごい幸せそうな顔で寝てますね……」
使用人「お嬢様、夕食ができましたよ」ユサユサ
後輩「ん…………」スースー
使用人「ちぇすとっ!」ビシィッ
後輩「痛ぁいっ!え?え?何」ガバッ
使用人「やっと起きましたか、夕食のご用意が出来たので呼びにきました」
後輩「え、あ、そう。いやちょっとまって、今何やったの?」
使用人「ですから呼びにきたと」
後輩「そっちじゃない!何か首が痛いんですけど」
使用人「ああ、それはお嬢様を起こしただけですよ。それがなにか」
後輩「いやいや!今使用人さんがっ!…………はぁ、まあいいや」
使用人「ところで、今日は何かあったのですか?」
後輩「え?何で」
使用人「先程からニヤニヤされていまして少々奇妙かと」
後輩「あー、まあちょっといい事があって……え、奇妙?」
使用人「いい事?とは」
後輩「先輩の過去を少しだけ知れた、かな」
使用人「先輩というと、男さんですね」
後輩「うん。だけど、同時に残念なこともあったからなぁ」
使用人「残念、ですか」
後輩「恋愛において一番怖いのは、『年月』だから」
後輩「いただきます」
使用人「いただきます」
後輩「あ、来週に部活で遠出するんだけど」
使用人「聞いております。岐阜に行くと」
後輩「ああ、うん」
使用人「ご主人様に聞いたところ、そこに別荘があるから使っていいとのことで」
後輩「!え、本当に!?あとで先輩に電話しとこ!」
使用人「はい。こちらがその鍵でございます。先日預かりました」チャリン
後輩「ありがとうございます!……え、先日?」
使用人「先日です。お嬢様が電話で話されていたのを偶然耳にしまして」
後輩「あ、あー。聞こえてたのか……」
後輩「それじゃ、明日デパートに行ってくる」
使用人「デパートですか」
後輩「来週の準備もしないとだし」
使用人「大抵の家具などはあちらに揃っていますが」
後輩「んー、あんまり使わないと思う。二泊三日だし」
使用人「そうですか。では、明日は私も行きます」
後輩「あ、いや。使用人さんは大丈夫だよ。家にいてて」
使用人「……そうですか」フッ
男『へぇ、別荘があったんだな。運がいい』
後輩「そうなんですよ。ついさっき知らされました」
男『じゃ宿取る必要なかったか。もう取っちゃったんだけどな』
後輩「えっ、そうだったんですか。すいません、もっと早く伝えてられていれば」
男『ああ、いいよいいよ。大丈夫、キャンセルしとくから』
後輩「ほんとにすいません」
男『それよりも、その別荘ってどこにあるの?』
後輩「あー、当日のお楽しみってことで」
男『……はいはい。楽しみにしとくよ』
後輩「私もどんなものなのか楽しみなので」
――――夏休み、デパート
後輩「……使用人さん」
使用人「はい、何でしょうか?」
後輩「今日は一人で良かったのに……ただ来週の荷物を集めに来ただけなのに」
使用人「大丈夫です。私も手伝いますので」
後輩「そういう意味じゃないんだけど……」
使用人「さて、何が欲しいのですか?か?」
後輩「まず使用人さんはいらないんだけど……」
使用人「そういうひどいことを言わないでください。結構傷つくのですが」
後輩「はぁ……」
――――デパート三階、ファッションコーナー
使用人「服、ですか」
後輩「やっぱり新しい服で行きたいし」
使用人「まあ、確かに好きな人には勝負服で行きますよね」
後輩「そうそう。…………あれ、言ったっけ?好きな人って」
使用人「いえ、直接聞いてないですが、あんなに男さんの話を聞かされると流石に誰でも分かります」
後輩「うそ、そんなに話してたっけ」
使用人「毎日聞いてます」
後輩「そっか。私もそんなに好きなのか」
使用人「お嬢様自身も分からないのですか?」
後輩「私にとって先輩は好きな人以上だから」
使用人「好きな人以上、ですか」
後輩「あの人といるときだけ、寂しいのを忘れることができるの」
使用人「服はもういいのでは?」
後輩「あと寝間着が欲しい」
使用人「寝間着もですか?もしや襲うのですか」
後輩「多分」
使用人「……随分と積極的ですね」
後輩「そうじゃないと、勝てないから」
使用人「勝てない」
後輩「うん。意外とライバル多いんだよ?先輩」
使用人「……なんとなく想像はつきますね」
後輩「多分それ以上だと思う」
使用人「ならば、こちらの服は」
後輩「!それいいかも!」
――――夏休み、デパート一階、雑貨店
使用人「すいません。私も少し別行動をしたいのですが」
後輩「え、使用人さんも買いたいものがあるの?」
使用人「はい。では」スタスタ
後輩「……あの人にも、好きな人がいるんだよね……」
後輩「私は知らないけど、あの人も、恋愛をするんだなぁ」
後輩「さてと、私も」
後輩「……あ、先輩からメールが」
後輩「『来週、なんかいる?』って、ん?」
男「さて、なんか見るか」
後輩「あれ、先輩?」
男「え、後輩?」
後輩(やっぱり)
後輩「久しぶりですね、先輩」
後輩(私は運がいいな)
後輩「先輩、さようならー」
使用人「あの人が、男さんですか。いい人ですね」
後輩「ん?使用人さん、いつの間に」
使用人「ついさっき来ました」
後輩「そう。…………ふふ」
使用人「嬉しそうですね」
後輩「そりゃ嬉しいよ。だって、先輩に会えたから」
――――出発前日
後輩「さてと、後は寝るだけ」
使用人「お嬢様」ガチャ
後輩「……ノックくらいしてよ……」
使用人「申し訳ありません。ノックしても反応することが少ないので大丈夫かと」
後輩「反応する前に入ってくるんでしょ……。で、何?」
使用人「明日はどこの駅から行くのかと」
後輩「……ん?あれ?何で言う必要があるのかな?」
使用人「私もご同行しようかと」
後輩「いやいや!もう先輩に二人って言っちゃったから!」
使用人「成程、つまりお嬢様は留守番と」
後輩「いつから使用人さんは行くことになった?」
使用人「ほう、つまり私は行くことができないと」
後輩「いや元々そうだったんだけど。ていうか先輩知らないでしょ」
使用人「私はここに一人で居ろというのですか!」
後輩「……?良かったんじゃないの?」
使用人「寂しいです」
後輩「…………そんな真顔で言われても……我慢してほしい」
使用人「…………そうですよね。大丈夫です」
男「さーてと、じゃ、寝るかな」
妹「お兄ちゃん」ガチャ
男「ん?どーした妹」
妹「明日から出かけるんだよね」
男「そうだけど」
妹「バイトとかって、大丈夫なの?」
男「おう、それなら店長さんに既に連絡してあるから大丈夫」
妹「そ、そうなんだ」
男「……?それがどうかしたか?」
妹「い、いや別に……」
男「?まあいいけど」
男「あ、明日から一人にして悪いな。多分大変になると思うけど」
妹「だ、大丈夫。一通り出来るから……」
男「……何か変だぞ妹。いつもなら早く寝ろって怒るのに」
妹「う、うん。そうかな?」
男「あ、あれか。寂しいのか?」
妹「っ!そっそんな訳ない!」
男「ふふん、バレバレだ妹。それは嘘だと」
妹「っ!」
男「俺の前にツンデレは通用しねぇ!」
妹「…………う」
男「寂しいならそう言え。無駄に嘘ついても、兄妹だから分かるし、たまに俺の方が辛い時もあるし」
妹「…………」
男「……まあ、あれだ。寂しいなら幼馴染みでも呼べ。あいつならどうせ暇人、いや暇神だろうし」
妹「いや、それは幼馴染みさんに悪い気が。てか、言い方が酷い」
――――当日、駅
後輩「せんぱーい!お待たせしましたー!」
男「おう、後輩。荷物多いな」
後輩「女子にはなにかと用意が必要なんですよ」
男「そういうもんか」
後輩「ところで、電車はどれに乗るんですか?」
男「昨日メールしたろ。途中まで普通。そこから特急」
後輩「では、早く行きましょう、先輩!」
男「行けねぇよ。電車なんだから時間まで待て」
後輩「そうでした」
――――特急列車内
後輩「おー。すごい座席じゃないですか!」
男「そうか?大体こんなもんだと思うが。って、そうか。後輩の家は金持ちなんだよな……」
後輩「大抵は新幹線ですかねー」
男「金持ち羨ましい」
後輩「でも、それも最近はあまり乗ることがないんですけどね」
男「そういうもんか。お、ここらへんだ、席」
後輩「人があんまりいないですね。ラッキーです」
男「ほれ」スッ
後輩「え、どうしたんですか手なんか出して。手でも握りますか?」スッ
男「違う!荷物だ荷物。上に置いてやるから。それとも自分で置けるか?」
後輩「残念……ではお願いします。ちょっと重いですよ」
男「おう、だいじょってマジ重い」
後輩「……ん?」
男「ん?どうした?」
後輩「……いや、何でもないです。なんか懐かしい感じがして」
男「そうか」
後輩「……綺麗な景色ですね」
男「山の方だからな。もうすぐ着くぞ」
後輩「やっぱり、空気おいしそうですね。先輩はよく来るんですか?」
男「毎年夏にな。一人で星見に来てる。高山は久しぶりだけど、他のところならこの列車経由して色んなとこ行くから」
後輩「そうなんですか。先輩は昔から星好きなんですね」
男「まあな。伊達に天文部入ってない。そういえば、後輩は部活は何やってたんだ?」
後輩「私は、部活やってなかったんですよ」
男「なんで?」
後輩「私、まあお嬢様なんで、高校に入る前までずっと習い事とかやってたんです。おかげで家事とかできますし、楽器もいくつか演奏できますよ」
男「へぇ、それは凄いな。俺の周りは家事すらできない奴もいるしな」
後輩「幼馴染みさんですね」
男「よくすぐにその名前が出たな」
後輩「まあ、色々知ってるんですよ」
男「怖ぇ」
後輩(敵の調査ぐらいはしますよ)
――――駅
後輩「おお!空気がおいしい!」
男「久しぶりだなぁ。あの店失くなってるし」
後輩「周りが建物と山ですね。これは凄い!」
男「ここはまだ市街だから、ちょっと出ると周りが山に囲まれるぞ」
後輩「さて、ではまず昼を食べましょう!」
男「おお、そっか。もうそんな時間か」
後輩「ということで、何かおすすめは!」
男「おおう、いきなりがっつくな。まあ、有名なのは飛騨牛だろうけど高いからなぁ」
後輩「払えますよ!」
男「いや流石に女性に払わせるのは……」
後輩「では、他のですか?」
男「じゃ、ラーメン行くか」
後輩「高山ラーメン、ですね」
男「なんだ、知ってたの?」
後輩「あ、あるんですか?高山ラーメン」
男「当てずっぽうかよ」
――――別荘への道
男「……こっちで、合ってるのか?」
後輩「大丈夫です。多分」
男「多分かよ……。人通りも少なくなってきたし」
後輩「あ、ありました!」
男「え、どこ?見えないけど。もしや心が汚い人には見えない的な?」
後輩「それもいいですね」
男「え、なにそれ。ほんとに俺の心が汚れてるみたい」
後輩「嘘です。そんな家があるわけないじゃないですか。先輩は面白い人ですね」
男「くっそ微妙にむかつく……。……で、別荘は」
後輩「あったのは別荘じゃないですよ」
男「……え?」
後輩「この山です。別荘は、上ですよ。この山の」
男「……え?」
――――別荘
男「……つ……いた……」
後輩「なんか凄い森の中。結構広いですね」
男「……なんで……そんな……飄々と……」
後輩「これでも体力あるんですよ!お嬢様舐めないでください」
男「……俺体力ないんだなぁ……流石文化部」
後輩「鍵は……と、せんぱーい!入りますよー?」
男「おう……ちょっと待って……」
後輩「ひろーい!」
男「別荘というより普通の家だな」
後輩「普通の家よりは広いと思いますけど」
男「あー、まあ確かにそうかも。俺ん家より広いかな」
後輩「え、私の家の別荘より狭いんですか先輩の家は」
男「喧嘩売ってんのか。てか、来たことあるだろ」
後輩「行ったことありますね」ペラペラ
男「あっ、てめっその写真返せ」パシ
後輩「あー、取られちゃった……」
男「まったく……で、部屋どこ?荷物重い……」
後輩「あー、そうですね。えーと、どこでもいいですよ」
男「な、なんか適当だな。大丈夫なのか?」
後輩「私もここに来たのが初なので、多分大丈夫かと」
男「あ、部屋に番号がついてるな。うーん、じゃ二号室で」ガチャ
後輩「では私は一号室使いますね。夕食の時間になったら呼びに行きますね」
男「おう」バタン
後輩「さてと、」ガチャ
使用人「お帰りなさいませ。お嬢様」
後輩「…………え?」
今日はここまで
また明日
30分から投下
よろしく
後輩「な……なん……で……?」
使用人「申し訳ありません」
後輩「なんでここにいんのっ!?」
使用人「もう少しお静かに。お嬢様」
後輩「静かにできないよ!二人だけって言ったじゃん!」
使用人「ご主人様からお守りを頼まれ」
後輩「なんっで!あの父親め!」
使用人「お嬢様、口調が」
後輩「うるさい!」
男「だ、大丈夫か後輩。なんか凄い音が」コンコン
後輩「へ、あ、だ、大丈夫です!」
後輩「と、とりあえず使用人さん、ここに隠れて!」ガチャ
使用人「あら、私はいいのですか?」
後輩「殺すぞ!」バタン
男「え、今殺すって」
後輩「大丈夫ですから!」
ガチャ
男「うお、後輩大丈夫だったか?」
後輩「はぁ……はぁ……」
男「す、すげぇ息切れてるけど」
後輩「ちょ、ちょっと虫が出て」
男「あー、そういや虫嫌いだったな」
後輩「そうですそうです。だからもう大丈夫です!さっき殺したんで」
男「そ、そうか。まあなんかあったら呼べよ」
後輩「はい!」
バタン
後輩「…………はぁー」
使用人「もうよろしいので?」ガチャ
後輩「……特急の……懐かしい感じって……」
使用人「やはりお嬢様も乗ってらしたのですか」
後輩「…………命令」
使用人「はい?」
後輩「この部屋にいること!先輩に会わないこと!明日帰ること!いい?」
使用人「…………仕方ないですね。分かりました」
――――夜
男「もう八時か。そろそろ行こうかな」
後輩「お、行きますか?準備は出来てますよ」
男「そうなの?早いな」
後輩「さっきやっておきましたので」
男「へぇ、まあ、俺はまだ準備してないから、ちょっと待ってて」
後輩「はい!」
ガチャ
使用人「あら、お嬢様」
後輩「今から先輩と行ってくるから、待ってて」
使用人「行くとは、どこにでしょうか?」
後輩「天体観測。大体二時間くらいで戻ってくるから、その間なにかしてていいよ」
使用人「ならば、夕食を食べても?」
後輩「うーん、自分で作れるなら
……って、作れるか。じゃあ、ちゃんと片付けておいてね」
使用人「もちろんです。行ってらっしゃいませ。お嬢様」
後輩「うん」
――――夜、別荘前
後輩「うわー、星がキレイですね!」
男「ああ、やっぱここら辺は綺麗だな」
後輩「天の川見えますよ!」
男「ハハハ、はしゃぐな。後輩」
後輩「だって、こんな綺麗な星空を見たのは初めてです!」
男「そうなのか。俺はもう慣れたからかな」
後輩「あれは!夏の大三角では!」
男「違うよ。大三角はあっち。ベガと、デネブと、アルタイルだ」
後輩「おお、やっぱ先輩はよく知ってますね」
男「まあな。さて、それじゃちょっと行くぞ」
後輩「もしかして、この山の上ですか?」
男「おう。結構いい高さっぽいから。しかも近いし」
後輩「あれ、先輩。背中の大きな荷物は?」
男「ああ、これ?着いてからの秘密だ」
――――頂上
後輩「…………うわあ」
男「おお、今年はいいな」
後輩「…………ひろい、ですね」
男「そりゃ、空だし」
後輩「そういう意味じゃないですけど」
男「ん、ならどういう意味で」
後輩「教えません」
男「はぁ、まあいいけど」カチャ
後輩「あ、その荷物は」
男「おう、家から持ってきたんだよ」カチャカチャ
後輩「天体望遠鏡、ですね」
男「ああ、毎年これで見てるんだ。ちょっと待ってて」カチャカチャ
男「あとは、角度を……よし。できたぞ」
後輩「おお、立派ですね」
男「だろ?奮発して、高いのを昔買ったんだよ」
後輩「覗いてみて、いいですか?」
男「ああ、いいよ。もう設定してあるし」
後輩「設定?」
男「まいいから、とりあえず覗いてみな」
後輩「では、失礼して」ソッ
男「……どうだ?見えたか?」
後輩「これは…………」
後輩「土星、ですか?」
男「正解。夏のうちに見たかったからな」
後輩「……すごいです。土星を生で見るなんて、初めてで……」
男「そうか。よかった」
後輩「ちゃんと輪っかも見えますね」
男「土星といえば輪っかだしな。俺も初めて見えたとき、すげぇ興奮した」
後輩「……先輩」
男「ん?なんだ?」
後輩「……ありがとうございます!」
男「地面に寝そべって上を見るのも、やっぱ違う感動があるな」
後輩「そうですね。気を抜くと、寝ちゃいそうです」
男「あー、よくある」
後輩「…………先輩」
男「ん、なんだ?」
後輩「なんていうか、星が降ってくるみたいですね」
男「君の知らない物語か?」
後輩「なんですか?それ」
男「あーいや、知らないならいいんだが」
後輩「……先輩はなんでも知ってますね」
男「別になんでもじゃないよ。俺にだって知らないことはあるし後輩しか知らないこともある」
後輩(…………)
後輩「私、先輩のこ……」
男「……ん?どうした?」
後輩「……先輩の事見直しました」
男「ちょっとまて、お前見直したって……今まで何を思ってたんだ……」
後輩(今はまだ、言えないですね)
――――別荘
後輩「はぁー、いい気分でした」
男「そうだな。今年は結構いい星だったな」
後輩「そうなんですか!ラッキーですね!」
男「まあ、俺もここで見るのは初めてだったから、いいスポットなのかな?」
後輩「そういえば、先輩写真撮ってましたけど、星って写らないんじゃ」
男「ああ、だからこれはちゃんとした星空用のカメラ。これも家から持ってきたんだよ」
後輩「なんか、先輩って意外とセレブですよね」
男「後輩にだけは言われたくないな」
後輩「ごちそうさまでした!」
男「ごちそうさま」
後輩「先輩、料理上手いですね」
男「まぁ、家で一人で作ってたからな」
後輩「一人で……ですか」
男「家、両親が仕事で遅いからさ。妹も居たけど、部活でバテバテだったし」
後輩「…………そうなんですか」
男「そういや、後輩も上手かったよな、料理。やっぱお嬢様だな。料理上手いのもそのせいか」
後輩「いや、私は……先輩と同じ感じですかね」
男「?」
後輩「では、先にお風呂頂きますね」
男「え、いつの間に沸かしたの?」
後輩「さっき、夕食を食べる前ですよ」
男「気づかなかった」
後輩「先輩、料理してましたから」
男「あ、そういやそっか」
後輩「あれです。役割分担てやつですよ。明日は私が料理しますので」
男「あ、そういえば、後輩ってキッチン使った?」
後輩「?なんでですか?」
男「いや、なんか使った感じがあってさ。もしかして、最近まで誰か使ってたか?」
後輩「っ!……あ、あー。ちょっと天体観測行く前に洗ったんですよ。ホコリかぶってたので」
男「え!そうだったのか。すまん」
後輩「いやいや!大丈夫です」
後輩(使用人さんめぇ)
後輩「それより、もうこんな時間ですね」
男「ん、まあそうだな」
後輩「後で宿題見てくださいね」
男「え、今からかよ……もう疲れて眠いんだけど……」
後輩「お風呂に入ってからですよ」
男「あーはいはい。さっさと行ってこい」
後輩「はい!」
後輩「…………覗きますか?」
男「お前は何を言っているんだ」
後輩「お願いします、先生!」
男「先生とか……ちょっと照れるな」
後輩「じゃあ先輩」
男「すぐにランクが下がった!まあ、そっちの方がいいんだけど」
後輩「お願いします!」
男「えーと、英語だけだよね。まあそれならなんとか」
後輩「はい。ほんとは数学も教えて欲しいところですけど」
男「そんなには無理だ」
後輩「ですよねー」
後輩「ありがとうございました!結構進みました!」
男「そっか。まあ並行して俺も英語やってたからな。ほんとは最後までやりたかったが」
後輩「でも先輩のおかげで高二の英語も教えてもらって、ありがとうございます」
男「でも難しいだろ」
後輩「はい……」
男「来年は頑張れよ。俺も受験シーズンで忙しいし」
後輩「で、でも部活は来ますよね?」
男「部活……は分からんなー。まあ、入部希望を増やすしかないかな」
後輩「…………」
男「ん?どうした?」
後輩「……先輩は、人の心を察してくださいよ」
男「あれ、お前も言うのかそれ」
後輩「おやすみなさいです。先輩」
男「おう、おやすみ。また明日」ガチャ
後輩「はい、また明日。…………襲ってもいいですよ?」
男「早く寝ろっ!」
バタン!
男「ったく、冗談なのかほんとに言ってるのか分からんな」
男「明日は、どこに行こうかな」
男「お、メール」
男「『そちらはどうですか?』委員長からか。そうだった、しまった。バイトの事忘れてたな……」
男「『お陰様で楽しいよ。バイト、サンキューな』っと」
男「『こちらのことは心配しないで、楽しんできてください』相変わらず、委員長は優しいな」
男「『ありがとう。戻ったらすぐ頑張るから、待ってて』と」
男「『気をつけてください』か。委員長らしい」
男「俺は、委員長に助けられてばかりだな」
後輩「使用人さん」
使用人「はい?もう就寝ですか?」
後輩「うん。使用人さんは押し入れで寝てね」
使用人「それはひどいです」
後輩「でも、場所ないし……」
使用人「他の部屋に行きますよ」
後輩「いやそれはダメ。ここにいてよ。命令」
使用人「…………仕方ないですね。青いたぬきの如く、押し入れで寝ますよ」
後輩「どこでもドアでも出してさっさと帰ってよ」
後輩(あの星空を思い出す)
後輩(天の川、夏の大三角、そして、先輩の横)
後輩(何もかも初めてで、いつでもドキドキしていた)
後輩(私は先輩が好きだ)
後輩(先輩といると落ち着いて、優しくて、私に構ってくれる)
後輩(私の親と違って)
後輩(両親は私を一人にした)
後輩(私は、今まで)
後輩(寂しかったんだ)
後輩(先輩といる時が、何よりも楽しいんだ)
――――朝
男「ふわぁ」
男「んー眠い」ゴシゴシ
男「…………知らない天井だ」
男「そうだそうだ。後輩の別荘にきてんだった」
男「はー、って、結構早朝だな。ちょっと散歩でもしようかな?」
男「そうなるとあれだ。後輩も呼ぶか?」
男「先に着替えるか」
男「後輩?」コンコン
ガタッ
男「お、後輩、起きてんの?」ガチャ
男「…………え?」
使用人「…………見つかってしまいました」
男「…………えっと、どちら様で?」
使用人「ふむ、ここで話すとお嬢様を起こしてしまいますね」
男「ん、え?お嬢様?」
使用人「少し場所を変えましょう。散歩がてら、事情を話します」
男「え、あ、はい」
――――外
使用人「もう早朝は少し暖かいですね」
男「あ、はい、そうですね。って、いやいや!なんで知らない人と話してるんだ俺」
使用人「これは申し遅れました」
男「遅れすぎでしょ」
使用人「私はお嬢様、つまり彼女の家で働いています、使用人と申します」
男「使用人さん、ですか。俺は男です。えーと、後輩と同じ部活で」
使用人「はい。お嬢様から噂は聞いています。いつも、お嬢様がお世話になっています」
男「いや、そんな」
使用人「お嬢様はいつもお帰りになられてから男さんの話をしていまして」
男「あいつ何話してんだ」
使用人「悪い噂は聞いていませんよ」
男「それならいいんですけど」
使用人「男さんは、お嬢様とお付き合いをされているのですか?」
男「ぶはっ!そ、そんなわけ無いですよ!」
使用人「そうですか。お嬢様もまだまだですね」
男「ん?まだまだ?」
使用人「男さんにだけ言っておきますけど」
男「!…………」
使用人「お嬢様をあまり一人にさせないで下さいね?」
男「……え、それはどうして、ですか?」
使用人「やはり、まだ話されていなかったですか」
男「話されて?それはどういう」
使用人「お嬢様に代わって、私が話しましょう」
使用人「お嬢様の今までも含めて」
今日はここまで
続きは明日
ちょっと投下
使用人「お嬢様が産まれてから、彼女は親に代わって私が育ててまいりました」
使用人「御主人様、つまりお嬢様のお父様は仕事で忙しく、お嬢様に会うことはあまりありませんでした」
使用人「お嬢様は、御両親を既に他人として認識しています」
使用人「私が、お嬢様の親代わりになったのです」
使用人「お嬢様が小学校に入学してから、御主人様から習い事を始めさせるように言われました」
使用人「お嬢様は習い事のおかげで多くのことができるようになりました。が、お嬢様が家に友達を呼ぶことは一度もありませんでした」
使用人「また、御主人様の仕事の関係上、転校も多かったのです」
使用人「転校に次ぐ転校により、お嬢様は友達との別れを嫌がり、ついに一人で過ごすことを選びました」
使用人「お嬢様は、いつも一人でした」
使用人「中学生になってから、彼女は心を開くことが無くなりました」
使用人「お嬢様は御主人様に振り回され、この時期に他人と認識しました」
使用人「お嬢様は、私ともあまり話さなくなりました」
使用人「習い事は続けていましたが、程なくして辞めました」
使用人「既に、お嬢様は手に負えなかったのです」
使用人「しかし、高校生になる直前のことです」
使用人「お嬢様に、突然変化が見られました」
使用人「お嬢様はいつもと違って私と話してくれました」
使用人「その日、お嬢様は高校の見学に行っていました」
使用人「何があったのか、話を聞くと」
使用人「『高校で、面白い人に会った』とのことでした」
男(それ俺だ)
使用人「詳しい話は聞きませんでしたが、お嬢様が心を開いてくれて、とても嬉しかったのです」
使用人「高校に入り、新しい部活に入って、そして」
使用人「男さんに会ったのです」
男「…………」
使用人「私は、あなたに感謝しています」
使用人「お嬢様が変わったのは、ほとんどあなたのおかげだと思っています」
使用人「きっと、お嬢様も感謝しているでしょう」
男「後輩は、俺で良かったんですか?こんな俺で」
使用人「少なくとも、私はあなたで良かったと思います」
男「!」
使用人「優しくて、頼りになって、落ち着くと、お嬢様が言っていました」
男「う、え?」
使用人「私も実際に会って、なんとなく分かりました」
使用人「あなたは、とてもいい人ですね」
男「……ありがとうございます」
使用人「さて、もう話すことはないので、ここにいる理由もないですね」
男「ここにいる理由?」
使用人「御主人様に頼まれたのです」
男「え?」
使用人「お嬢様のことを見守れ、と、お嬢様の友人を見てこい、と」
男「え、でも後輩のお父さんは」
使用人「どんな親でも、一人娘のことはとても気になるものですよ」
男「は、はぁ」
使用人「しかし、あなたはとてもいい人なので、見守る必要も無いですね」
男「…………」
使用人「男さん、お嬢様をよろしく頼みます」
男「……はい」
使用人「それと、この話は他言無用、特にお嬢様には、お願いします」
後輩「ふわぁ」
後輩「あー、よく寝た」
後輩「使用人さん、服」ガチャ
後輩「って、そうだ。別荘にきてたんだ」
後輩「あれ、でも使用人さんいないし、もしかして帰った?よかった」
後輩「そうだ、先輩が」
後輩「せんぱーい!朝で……あれ?」ガチャ
後輩「いない?」
後輩「せんぱーい?」
男「お、後輩起きたか。もう朝食の準備はしてあるから、ゆっくり食べな」
後輩「先輩早いですね!」
男「ああ。やっぱ違うベッドだと早く起きちゃうな」
後輩「って、朝食もう食べたんですか」
男「ん、いや。まだ食べてないよ。後輩待ってたから」
後輩「そ、それはすいませんでした」
男「後輩は、朝弱いのか?」
後輩「違うベッドだと、遅く起きちゃいますね」
男「俺と正反対だな」
後輩「別に起こしてくれても良かったんですよ?」
男「いや、そうしようと思ったんだが、し…………」
後輩「し?」
男「あー、いや、なんでもない」
後輩「?」
後輩「今日はどこに行くんですか?」
男「まあ、せっかく来たから高山の街巡りを」
後輩「それは知ってますよ。どこに行くんですか?」
男「宮川朝市と、その周辺だな」
後輩「朝市、ですか?」
男「ああ。この朝市は全国的に有名で、多くのテレビに出てる。赤い橋は聞いたことあるか?」
後輩「んー、いやあんまり……」
男「聞いたことは無くても、見たことは多分あるな」
後輩「そうですか?」
男「東海だと、朝の天気予報で背景に映るんだよ。特に春とかだと、桜と赤い橋っていう光景が多いかな?」
後輩「へぇー、そんな所行くんですか」
男「朝市だから、出来るだけ朝から行かないとね」
後輩「でも、もう九時ですよ?」
男「大丈夫だ。まだやってるから」
――――宮川
後輩「うわー!人多いですね!」
男「まあ、有名だし、地元の人もくるし。大体このくらいだろ」
後輩「あ、あれが赤い橋ですね?」
男「おう。結構有名なものだ」
後輩「へぇー、綺麗ですね」
男「確かにな。さて、じゃあ、行こうか」
後輩「はーい」
後輩「いっぱい店がありますけど、何かおすすめとかはあるんですか?」
男「来て毎年食べるのが飛騨牛の串焼きかな。お、ちょうど見えた。ちょっと買ってくるよ。後輩もいるだろ?」
後輩「え、いいんですか?」
男「大丈夫」タッ
後輩「…………飛騨牛って、高いんじゃ」
男「ほい、お待たせ」スッ
後輩「うわ、すごい美味しそうで」
男「うん!美味いね。ほら、後輩も食べなよ」
後輩「は、はい」パク
男「どう?」
後輩「……美味しいです!」
男「よかった」
後輩「……先輩たくさん買いましたね」
男「まあね、安いからつい」
後輩「ん、あれは?」
男「お、おわら玉天だな。食べるか?」
後輩「はい。ちょっと食べてみたいですね」
男「俺は久しぶりだな。ほれ」
後輩「熱っ、いただきます。……美味しいです!甘くてふわふわして」パク
男「だろ?でも後で冷やしても美味いよ。ちょっと買ってくか」
後輩「えっ、何ですかこれ!飛騨牛の、寿司?」
男「ここでは有名だぞ。結構高いけど」
後輩「食べてきます!」タッ
男「お、おう。行ってこい」
男「……食欲旺盛だなあいつ」
後輩「おぉー!これは……美味い!」
男「ハハハ、大事に食えよ」
後輩「先輩も、どうぞ!」
男「え、いや俺はいいよ。それ後輩が買った物だろ?」
後輩「今日のお礼です!私は先輩に買ってもらったのに、先輩は嫌なんですか?」
男「う、あー、まあそうだな。ありがとう」
後輩「はいっ!」
後輩「いつの間にか昼ですね」
男「お、もうそんな時間かよ。早いな」
後輩「でも、あまりお腹へってないですね」
男「まあ、結構食べ歩きしたしなぁ、戻るか?」
後輩「戻って軽いものでも作って食べましょう」
男「了解」
――――別荘
男「何ていうか今日、いやここに来てからか?」
後輩「?」
男「後輩、静かだな」
後輩「どういう意味ですか?」
男「学校じゃ、いつもうるさかっただろ。それがここに来てから静かに…………なんか企んでるのか?」
後輩「企んでるとは失礼な……。ここでは退屈じゃないからですよ」
男「まだ俺を退屈しのぎと言っているのか?」
後輩「うるさい方がいいですか?」
男「スルーかよ……いや、うるさいのは嫌いじゃないんだ。俺も楽しいし」
後輩「ほう!」
男「…………なんか調子狂うな」
後輩「ではもう少しうるさくしますか?」
男「……んー。悩むところ」
後輩「わっかりました!」
男「俺の答えは無視か」
続きは夜
投下
後輩「私は、まあ何ていうか舞い上がってたんですかね」
男「舞い上がってた?ならもっとうるさいんじゃ」
後輩「舞い上がってたから抑えてたんですよ」
男「そうなのか」
後輩「まー、先輩もOK出したので今日はうるさく行きますけど」
男「……この話しなけりゃ良かったかなぁ……」
後輩「ふふん、今更遅いですよ」ダキッ
男「うおっ!い、いきなり抱きつくなよ!」//
後輩「あれ、先輩赤くなってますね。今までそんなことなかったのに…………なにかありました?」
男「な、何かって……」//
―――― 幼馴染み「だから、それまでよろしくね、男!」
男「……まあ、あったにはあったけど。てか、離れろ」
後輩「……誰ですか」
男「お前目怖ぇよ!その目やめろ!」
後輩「……仕方ないですね。まあ、それは私でなんとかしますけど」
男(この後輩怖ぇ)
後輩「結局、何かあったんですね」
男「……悪いが、そこからは俺の問題だ。後輩が関わることはない」
後輩「……先輩は、変わりましたよね」
男「変わった……かな」
後輩「高校見学の時は面白い人でしたけど」
男「ああ、うん。忘れて」
後輩「今の先輩は……」
男「な、なんだよ。気になるだろ」
後輩「……いえ、秘密です」
男「くっ、すげぇ気になる!」
後輩「そんなことより、何しますか?昼からは暇ですよ?」
男「勉強」
後輩「えぇー」
男「えぇーってお前まだ終わってないだろ」
後輩「でも、こんな所に来て勉強するっていうのはちょっと」
男「……まあ、そうだけど」
後輩「ということで寝ましょう!」ダキッ
男「ちょっ!またかよ!」
後輩「んふふ」ギュッ
男「……はぁ」
後輩「…………」スースーギュッ
男「こっの後輩は……離してや」
後輩「…………ふふ」ニヤ
男「……ほれ」スッ
後輩「……む」プニッ
男「ははは、柔けぇ」
男「まさかこんな短時間で寝るとは」
男「俺は抱き枕か……」
男「……いつも抱き枕みたいな扱いだけどな」
男「…………」
男「こんな時間も、楽しいな」
男「…………ん」パチッ
男「うわ、いつの間にか寝てた」
後輩「…………」スースーギュッ
男「……後輩も寝てるし……てか抱きついたままとか」
男「後輩、起きろー」トントン
後輩「…………ん」
後輩「むー、ん?しぇんぱい?」ゴシゴシ
男「ちゃんと喋れてないから。先輩だから」
後輩「……ん、ふわぁ」ノビー
後輩「……おはようございます、先輩」
男「おう、おはよう。って早くないけど」
後輩「いつの間にか、寝てしまいましたね」
男「俺も寝てたわ」
後輩「もっかい寝ましょーよ」ギュッ
男「もう寝ないから。夜だから。あと離れろ」
後輩「むー、さっきは赤くなったのに」
男「さっきはさっき、今は今だ。そろそろ行くぞ」
後輩「はい。あ、ちょっと準備してきますね」
男「俺も準備するから、十五分後な」
後輩「分かりましふぁ」
男「まだ眠いのか」
――――頂上
男「げ」
後輩「あ」
男「あちゃー。雲かかってやがる」
後輩「天の川、全然見えないですね」
男「んー、どうしよ。これじゃなんも見えないな」
後輩「戻りますか?」
男「まあ、なんもやることないしなあ」
後輩「少し、お腹へってきました」
男「お、そうか。そういえば俺も……」
後輩「今日は私が作りますので!」
男「昨日言ってたな。じゃあ、今日はよろしく頼むな」
後輩「おっまかせください!」
――――別荘
後輩「どうぞ!」ゴトッ
男「……すげぇ」
後輩「料理だけは自信ありますよ」
男「へぇ、やっぱお嬢様だなー。お前の親も嬉しいな。立派に育って」
後輩「……いや、それは……分からないですけどね」
男「あ……そ、そっか……」
後輩「!……な、何ですかその反応は……!」
男「!」
男(しまった!後輩は俺が使用人さんに会ったこと知らな……!)
後輩「……!も、もしかして!先輩、使用人さんに会ったんですか!」
男「うっ」
後輩「あの使用人さん!先輩に、は、話して!……っ!」ダッ
男「!ま、待って!」
後輩「来ないでくださいっ!」
男「っ!」
―――― 幼馴染み「来ないでっ!」
男「……また、俺は……!」
男(また、俺は失敗を繰り返した)
男(これじゃ、幼馴染みの時と同じだ)
男(あれから、全く変わってない)
男(でも、後輩は変わったと言っていた)
男(彼女の言葉に嘘はないはずだ)
男(きっと何かしら変わったことはある)
男(このままだと、彼女の言葉が嘘になってしまう)
男(だから、俺は)
男(変わらなければ、ならない)
男「……!待てっ!」ダッ
――――外
後輩「……はぁ……はぁ……!」タッタッ
男「……はぁ……はぁ……!待って!」タッタッタッ
後輩「い!……嫌です!来ないで……ください!」タッタッ
男「だ……ダメだ!……はぁ……!」タッタッタッ
男「……!捕まえた!」ガシッ
後輩「ひゃ!」グイッ
男「!危なっ!」ギュッ
ドサッ
後輩「……!」
男「……ふぅー、危なかった」ギュッ
後輩「せ、先輩。なんで!」
男「何でって、後輩が逃げたから」
後輩「こ、来ないでくださいって、言ったじゃないですか」
男「ああ、言ったな」
後輩「なら、なんで」
男「俺は、待てって言ったよな」
後輩「!そ、それは」
男「お互い様だろ?」
後輩「…………はい」
男「で、なんで逃げ出した」
後輩「…………先輩、使用人さんと会って、何を話したんですか?」
男「それは、お前の想像している内容だと思うけど」
後輩「……私のことですか」
男「ああ」
後輩「…………ひどい、ですよね。私」
男「そうか?」
後輩「自分から、人間関係を絶ってたんですよ?せっかく話しかけてくれた人も、近寄ろうとした人も、私から拒絶したんです」
後輩「全て親の都合のせいにして、私は、周りを否定したんです」
後輩「だけど、私は日に日に寂しさが増えました」
後輩「勝手に拒絶して、勝手に寂しくなって、勝手に自滅してったんです」
後輩「私の自業自得ですよ」
後輩「そして、先輩に気を遣わせちゃって、私はひどい人です」
男「……そうか?少なくとも俺は気を遣ったことは無いぞ?」
後輩「……え?」
男「後輩をひどいとか思ってないし、今の話を聞いて引いてもない」
男「それに、使用人さんと話したのは朝だったけど、今日、俺は変だったり、気を遣ってたか?」
後輩「……あ……ない、です」
男「鋭いところを見抜く後輩だって、変とは思ってないだろ?」
男「俺は後輩のイメージについて、何にも変わったところはない」
後輩「…………はい」
男「だから、心配すんな」
後輩(……これは、聞いたことがある)
後輩(ちょうど、半年前の)
後輩(高校見学の時だった)
――――半年前
後輩「…………」スタスタ
後輩(高校見学なんて、行かなければよかった)
後輩(中学の行事で、なんでこんな事を)
後輩(皆で列になって行くなんて、つまらない)
後輩「…………!」スタスタ
後輩(……屋上への階段……)
後輩「…………」タッ
――――屋上
ガチャ
後輩「…………うわぁ」バタン
後輩(綺麗な眺めだ)
後輩(私の家は、あそこに見える)
後輩「…………お父様、お母様」
後輩「…………使用人さん」
キーンコーンカーンコーン
後輩「!確か四限が終わりそうだったっけ」
後輩(私も、早く戻らないと)
ガチャ
男「……ふぅー、危ねぇ危ねぇ」バタン
後輩(!来ちゃった……高校生)
男「ったく、友のやつ、今日も……ん?」
後輩「あ……」
後輩(見つかっちゃった)
男「…………ん?あれ?えーと、中学生……かな?」
後輩「…………」タッ
男「あ!ちょっと!」
後輩(早く戻らないと!)
後輩「…………」ガチ
後輩「!……え?」ガチガチ
男「げ、友のやつ、閉じ込めやがった!」
後輩「…………嘘」
男「だ、大丈夫?中学生」
後輩「…………」
後輩(今は、不可抗力)
後輩「…………」コク
男「えーと、確か今日は高校見学だったっけな……そっか、はぐれたのか」
後輩「…………」コク
男「うーん、ちょっと電話して助けを求めるから、待ってて」
後輩「…………」コク
男「し、喋らないの?」
男「おっけ。もうすぐ来るって」ピッ
後輩「…………」
男「……なんか言わないのか?」
後輩「……え?」
男「せっかくこっちが話しかけてんのに、反応なしだったらすげぇ悲しくなる」
後輩「…………でも、知らない人とは話さないって」
男「い、いやまあそうだけど……」
後輩「…………ありがとう」
男「!……おう。もうすぐでくるから」
男「心配すんな」
後輩「…………うん」
男「お、ちゃんと反応してくれた」
後輩「……暇だから、遊んで」
男「え、あ、遊ぶ?ここで?何で」
後輩「知り合い、だから」
男「!」
後輩「遊んだら、友達に、なれるから」
男「…………もしや、友達いないのか?」
後輩「っ!」バシッ
男「いたっ!マジで蹴りやがった!」
――――現在
後輩「……先輩は、いつまで経っても優しいですね」
男「どうした?いきなり」
後輩「せ……先輩」
男「?なんだ?」
後輩「少し……胸を借りますね」
男「なんで」
後輩「……先輩に……顔が……見せれ……ないので」ジワッ
男「……ああ、いいよ。どんだけでも」ナデナデ
後輩「――――――――っ!!」
後輩「あの、ありがとうございます」
男「うん、なんか、すげぇ濡れてるね」
後輩「い、言わないでくださいよそんなこと……」//
男「ははっ、早く帰ろうか」
後輩「…………せ、先輩っ!」
男「ん?なに?」
後輩「……私にとって、先輩は、太陽みたいな人です」
男「…………」
後輩「私は、月みたいに自分では輝けないし、先輩がいないと暗いままです」
後輩「先輩」
後輩「私は、先輩が好きです」
後輩「先輩は、どうですか?」
男「ごめん、後輩。今は応えることができない」
後輩「……」
男「俺にとって、後輩は大事な後輩だ」
男「それは、これからも変わらない」
男「でも、それ以上になることは、多分無いと思う」
男「だから、それには応えられない」
後輩「……ですよね」
男「…………悪いな」
後輩「いえ、大丈夫です。まだ、可能性はありますよね」
男「本当に…………え?」
後輩「だって、先輩多分って言ってましたし」
男「えっ、そうだけど」
後輩「可能性があるなら、私は諦めないですよ!」
男「…………そうだった、後輩はそういう奴だったな……言う事間違えたかも」
後輩「あ!先輩先輩、あれ見て下さい!」
男「あれ?……へぇ、やっぱ、後輩に似てるな」
後輩「ですよね!さっきまで雲が空を覆いつくしていたのに」
後輩「綺麗な満月ですね」
――――別荘
男「じゃ、寝るか」
後輩「寝れますか?」
男「……そんなこというな。寝なければならないんだ」
後輩「もし寝れなかったら、こっち来ていいですよ」
男「何言ってる。寝れるよ。ちゃんと」
後輩「……寝れなかったらそっち言っていいですか?」
男「…………はぁ」
後輩「今呆れましたね。私はちゃんと本気ですよ」
男「…………何もしないならな」
後輩「分かりました!」
男「…………」
―――― 後輩「私は、先輩が好きです」
―――― 後輩「先輩は、どうですか?」
男「…………また」
―――― 幼馴染み「私はさ……男が……好きなんだ」
男「……俺は」
男「……ダメだ。考えるのは今度にしよ」
男「はー、」
男「マジで眠れねぇ…………」
男「…………」スースー
カチャ
後輩「せーんぱい」
後輩「見事に寝てますね」
後輩「……私、諦めないですよ」
後輩「どんな手でも使うので」
後輩「待ってて下さいね」
後輩「…………顔」
後輩「…………」チュッ
後輩「……――――――っ!!」////
後輩「……ぅぁ……」////
後輩「……これは、手強いですね……」////
後輩「せーんぱい、横失礼しますね」//
後輩「ふふ、せーんぱい」ダキッ
後輩「…………ありがとうございます」
――――朝
男「…………こいつはまた」
後輩「…………」スースー
男「…………」ソッ
男「……おやすみ」
――――駅
男「あー、疲れた」
後輩「先輩、寝れましたか?」
男「それは、お前が一番知ってるじゃないか?」
後輩「そーでした。すいません、私、寝れなくて」
男「変なことしてないだろうな」
後輩「してないですよ。して欲しかったんですか?」
男「そっ、そんなこと言ってな」
後輩「なんで動揺してるんですか?はっ、もしや本当にして欲しかったのでは……」
男「ちげぇ!誤解だ誤解!」
後輩「まあ、先輩に限ってそんなこと思わないですよね」
男「うっ」
後輩「さて、帰りましょうか」
男「……切り替え早いな」
後輩「切り替えないと、ずっと話しますからね」
男「ま、いいけど。次は冬かな」
後輩「あ、やっぱ冬にもあるんですか」
男「当然。冬と夏は星が違うからな」
後輩「じゃあ、また来ますか?」
男「違う場所でもいいぞ」
後輩「では、その時のお楽しみで」
――――特急車内
後輩「…………悲しいですね」
後輩「三日間が、あっという間に過ぎ去っていきましたよ」
後輩「私は、これでよかったんでしょうか」
後輩「ねぇ、先輩」
男「…………」スースー
後輩「全く、この先輩は」
後輩「…………」
後輩「…………ふふ」
後輩「帰ったら、反省ですね」
後輩「あと、使用人さんをやらなければ」
後輩「やることは、いっぱいありますね」
終
ありがとうございました
日常系ハーレムは流行らないすかねぇ
個人的に好きなんだが……
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません