【艦これ】井之頭五郎「横須賀鎮守府の特製カレーライス」【孤独のグルメ】 (60)

        神奈川県 横須賀市


五郎(横須賀、海軍の町)

五郎(そして、カレーの町)

五郎(この店も、あそこの店もカレー、カレー、カレーか)

五郎(海軍カレー……うん、決まりだな)

五郎(今日の夕飯、決定)

五郎(さ、そうと決まればさっさと仕事を片付けるとしますか)

五郎「横須賀鎮守府……ここだな」

五郎(良い雰囲気の建物じゃないか)

五郎(しかし、軍には縁がないと思っていたんだがなぁ)

五郎(ま、そのおかげでカレーにありつけるんだ)

五郎(おっと、いかんいかん。まずは仕事だ。集中集中……)

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時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき

つかの間 彼は自分勝手になり、自由になる――

誰にも邪魔されず気を使わずものを食べるという孤高の行為。

この行為こそが現代人に平等に与えられた

最高の癒しといえるのである。



     孤独のグルメ in 艦隊コレクション



     横須賀鎮守府の特製カレーライス


執務室

提督「わざわざお呼び立てしてしまって申し訳ありません」

五郎「さっそくですが、こちら――」

提督「あぁ、すみません。実は今日用事があるのは私ではないんですよ」

五郎「はぁ」

提督「すぐに来るかと思いますので――おっと内線か。ちょっと失礼」

五郎(執務室っていうから、もっと事務的な部屋を想像したが)

五郎(落ち着いたアンティーク調の家具がなかなか良い雰囲気じゃないか)

提督「そうか……ちょっと待ってくれ。井之頭さん、申し訳ない」

五郎(おいおい、まさか)

提督「急用ができてしまいまして。1時間はかからないと思うのですが、お待ちいただけますか」

五郎「えぇ、大丈夫です」

提督「良かった。申し訳ありません、呼び出しておいて待たせるだなんて」

五郎「いやいや、お気になさらず。この後も予定はありませんから」

提督「ではすみませんが……。もしもし、もう少ししたらそちらに行く。――あぁ、――あぁ――分かった」

五郎(店の下見も兼ねて、鎮守府の周りでも散歩してみるか)

提督「井之頭さん、お待ちいただいている間、よかったらうちの間宮で甘いものでもいかがですか?」

五郎「はぁ。間宮……ですか」

提督「うちの艦娘達にも好評なんですよ。それとも、甘いものはお嫌いでしたか?」

五郎「いえ、大好物です」

提督「よかった。ではご案内します」

甘味処 間宮

五郎(甘味処、間宮。店の名前だったのか)

五郎(軍隊って言っても、こういう所、ちゃぁんとあるんだ)

提督「井之頭さん、紹介します。給糧艦の間宮です」

間宮「間宮と申します。よろしくお願いします」

五郎「あ、私井之頭と申します」

提督「こちらのメニューにあるものでしたら何を頼んで頂いても結構です。もちろんお代は結構です」

五郎「そんな、お客様に出していただく訳には行きません」

提督「まぁそうおっしゃらずに。待たせてしまうのはこちらですし、軍という組織上こういう所での金銭のやり取りはちょっと」

五郎「そういう事でしたらごちそうになります」

提督「よかった。申し訳ありませんが私は一旦ここで。終わりましたら間宮に連絡しますのでこちらでお待ちください」

五郎「分かりました」

提督「では、失礼します。間宮さん、後はよろしくお願いします」

間宮「はい。井之頭さん、お決まりになりましたらお呼び下さい」

五郎「分かりました」

五郎(しかし、給糧艦と来たか)

五郎(艦娘、って言ったっけ。彼女もそうなのか)

五郎(背中に何か背負ってたもんな)

五郎(さて、メニューは――)

期待
細かいけど艦隊これくしょんな

五郎(大福、焼饅頭、最中、羊羹。お汁粉もいいなぁ)

五郎(漬け物と緑茶か。なるほど、そういう手もあるな)

五郎(……ん? アイスクリームの所、色々落書きがしてあるぞ)

五郎(『おいしいでち!』 『さすがに気分が高揚します』『間宮アイスの美味さ、侮るなよ』)

五郎(ここの艦娘達が書いたのか、これは)

五郎(ここまで言われて逃げる訳にはいかないよなぁ)

五郎(よし、受けて立とうじゃないか)

五郎(味はバニラとココアか。ここは正攻法で行こう)

五郎「あの、すみません」

間宮「はーい! お決まりですか?」

五郎「アイスクリームのバニラ味を下さい」

間宮「アイスクリームのバニラ味ですね。他にもいかがですか?」

五郎「あ、いえ。とりあえずこれで」

間宮「ふふっ。遠慮しないで下さいね。ではアイス、すぐにお持ちします」

五郎「お願いします」

漫画とドラマどっちのゴローちゃんで想像すればいいのやら

五郎(席数も結構あるなぁ。それだけ人がいるって事か)

五郎(今は俺一人。みんな仕事中かな)

五郎(若い女性に囲まれてアイスっていうのも落ち着かないしな)

五郎(と、思っているとさっそくお客様ご来店)

五郎(おっと、入場証を見えるようにしておかないと)


隼鷹「さぁ~て、何食おっかな~」

飛鷹「昼食までそんなに時間ないんだから程々にしておきなさいよ」

隼鷹「だぁ~って、朝から今までずぅ~っと艦載機整備だぜ? ちょっとは甘いモン食いたくなるっての」

飛鷹「まぁ、さすがにちょっと疲れたわね。私も少し甘い物が欲しいかなぁ」

隼鷹「なんだ、飛鷹だって結局食うんじゃん」

飛鷹「わ、私は程々にしておけって言っただけで……あれ? あの人……」

隼鷹「おっと不審者……じゃないか。入場証がある」

飛鷹「もしかして提督が言ってたお客さん?」

隼鷹「話しかけて見りゃ分かるって。お~い、そこのおじさ~ん」

五郎(おじさん……ま、いいけどね)

飛鷹「ちょ! あんたねぇ! すみません、私軽空母の飛鷹です」

隼鷹「同じく軽空母の隼鷹で~す! おじさん、提督のお客さん?」

五郎「あ、はい。私井之頭と申します。なんでも急用ができたからここで待っていて欲しいとの事で」

隼鷹「そういう事か。まったくあの提督もしょうがないねぇ」

飛鷹「しょうがないのはあんたもよ……すみません、失礼な軽空母で」

五郎「いえ、こちらこそ、お邪魔してしまってすみません」

飛鷹「いえいえ、悪いのは待たせてる提督ですから。ここのアイス、美味しいんですよ」

五郎「そのようですね。メニューに色々書いてありました」

隼鷹「メニューに? 普段見ないで注文すっからなぁ ……あ、ほんとだ。落書きの内容で誰が誰か特定できるねぇ」

飛鷹「長門さんまで……あ、でも美味しいのは本当ですよ」

隼鷹「おっちゃんならアイスより酒でしょ?」

五郎(おじさんからおっちゃんにレベルアップ)

飛鷹「確かに、飲みそうな顔してるけど」

五郎「それが、私全くの下戸でして」

隼鷹「うっそだぁ! 男が飲めないアピールなんかしても可愛くないぞ~?」

五郎「いえいえ、本当に、一滴も飲めないんです」

飛鷹「あ~、でもいるわよね、そういう人ってたまに」

隼鷹「いやぁ~、もったいないなぁ~」

間宮「こら。二人とも、その辺にしておきなさいね。邪魔をしたら失礼よ」

隼鷹「あ、そっか。おっちゃん、ごめんね! ごゆっくり~」

飛鷹「すみません。ごゆっくりどうぞ」

五郎「はい、ありがとうございます」

間宮「遅くなってすみません。アイスクリームです」

五郎「ありがとうございます」

間宮「では、何かありましたら遠慮なくお呼び下さい」



【間宮アイス】

一口食べれば戦意高揚!
上品な甘さが疲れた艦娘たちを癒します

五郎(さて、お手並み拝見といきますか)

五郎「いただきます」

五郎(うわっ……なんだこれ)

五郎(濃くて、甘くて……美味い)

五郎(口の中、一気にバニラアイス)

五郎(うん、いいじゃないか。バニラアイス)

五郎(でも、しつこくないんだよなぁ)

五郎(アイスの艦砲射撃、全弾直撃。俺、轟沈)

五郎(間宮アイス、確かに侮りがたし)

隼鷹「いやぁ、美味そうに食うな~あのおっちゃん」

飛鷹「そうやってあんたはまた失礼な事を……」

隼鷹「飛鷹も見てみ。ほら、すっげぇ笑顔で食ってるから」

飛鷹「……本当だ。確かに美味しいけど、あそこまで美味しそうに食べる人初めて見た」

隼鷹「あそこまで美味しそうに食ってくれると、作った甲斐もあるってもんだよなぁ」

飛鷹「そうね。作ったものをおいしそうに食べてくれる人って、いいわね」

隼鷹「んー? 誰の事思い浮かべたのかなぁ? あのおっちゃんじゃなさそうだけど?」

飛鷹「余計な事勘繰ってないでさっさと食べてしまいなさい。整備報告書書かないといけないんだから!」

隼鷹「へいへい。仕事熱心だねぇ、飛鷹ってば」

五郎(あぁ、終わってしまった)

五郎(この余韻に、しばらく浸っていたい)

五郎「ごちそうさまでした」

間宮「いかがでしたか?」

五郎「本当に美味しかったです。こんなに美味しいバニラアイスを食べたのは初めてです」

間宮「よかった、喜んでいただけて。本当なら他のメニューもお召し上がりいただきたいんですけど」

五郎「いえいえ、ごちそうになる身ですし。でも、自分でお金を払うなら他のも頼みたい位です」

間宮「まぁ、お世辞もお上手なんですね」

隼鷹「いやぁ、本当に美味かったみたいだぜ、このおっちゃん」

飛鷹「ごめんなさい。のぞき見するつもりはなかったんですけど、本当においしそうに食べていたもので、つい」

間宮「あなたたち、井之頭さんはお客様なんですからね」

隼鷹「ごめんごめん。でも、また食べに来るといいよ。次はカステラだね、うん」

飛鷹「お汁粉も美味しいんですよ」

五郎「カステラにお汁粉か……」

五郎(どっちも美味いんだろうなぁ……あぁ、仕事じゃなかったらなぁ……)

間宮「ふふっ。本当にお気に召していただけたようですね。ぜひまたいらしてください」

隼鷹「それじゃ、あたしらはまたお仕事に戻るとしますか」

飛鷹「間宮さん、ごちそうさま。美味しかったです」

間宮「ありがとう。午後から出撃なんでしょう? 頑張ってね」

隼鷹「さんきゅー。んじゃ、行きますか。ゴローちゃんも頑張ってよ」

五郎(ついにゴローちゃんにレベルアップ。馴染むの、早いなぁ)

飛鷹「あ・ん・た・ねぇ! お客様だって言ってんのに……ごめんなさい、本当に。では失礼します」

五郎(あっという間に行ってしまった)

五郎(短時間で済ませてまた軍務に戻る)

五郎(こんなに若いのに、大変なんだなぁ)

間宮「ごめんなさい。悪気がある子じゃないんですけど」

五郎「あぁ、いえ。気にしていませんから、大丈夫です」

間宮「そうですか? って、いけない、伝言があるのに私ったら! あの、井之頭さん。提督の用事が終わったようです」

五郎「そうですか。では私は先ほどの執務室に」

間宮「執務室までは私がご案内します。あ、食器はそのままで結構ですよ」

五郎「すみません。ではよろしくお願いします」

五郎(アイスで元気出たし、さぁ、いよいよ仕事だ)

執務室

提督「すみません井之頭さん、お待たせしてしまって」

五郎「いえ。こちらこそ美味しいアイスクリームを頂きました。ありがとうございました」

提督「やはりそれを頼まれましたか。美味しかったでしょう? 実は私も――」

金剛「Hey,提督ぅー。お話はじめる前にサー、まずはGuestに私を紹介しなヨー」

提督「おっと、すまん。井之頭さん、ご紹介します。こちら、巡洋戦艦の金剛です」

金剛「金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」

提督「金剛。こちらは輸入雑貨を扱っていらっしゃる井之頭さんだ」

井之頭「どうも、井之頭です」

金剛「Oh! それじゃ、彼が私のTea setを? エート、イノガシラ……サン」

井之頭「言いにくいようであれば五郎でも結構ですよ。海外のお客様からはそう呼ばれることも多いです」

金剛「Thank you,ゴロー! ヨロシクネー!」

提督「という訳で、今回の依頼は私ではなく、金剛からのものなんです」

井之頭「なるほど。アフタヌーンティー用のティーセット一式とお聞きしましたので、何種類かピックアップしてきました」

金剛「Thasnk you. Hmm……」

井之頭「今回はタイプの違うものを何種類かピックアップしましたので、ご希望に近いタイプをお選びいただけますか」

ほう

金剛「チョット数が少ないネー」

提督「そ、そうか? それだけあれば十分だと思うんだが」

井之頭「はい。次回は今回お選びいただいたタイプのものを中心にピックアップしてまいりますので」

提督「なるほど、そういう事ですか」

井之頭「実際に使用する方にお会いした方が、こちらとしても選びやすいですから」

金剛「Oh! それなら納得ネー!」

井之頭「1枚目はウェッジウッド、ミントン、エインズレイと言ったイギリスの有名メーカーを中心にピックアップいたしました」

金剛「Brilliant! でも、なぜ私の好みを知っているの?」

提督「あぁ。出来れば英国製中心に、とお願いしてあったからな」

金剛「さっすが提督、そういう気遣いしてくれるところが大好きネー!」

提督「こ、こら! お客様の前だぞ! 時間と場所をわきまえろと言ったのはお前だろうが!」

金剛「好きなものにはYes、嫌いなものにははっきりNo!と言わなきゃダメね」

提督「そういう話じゃないだろう……まったく。すみませんね、井之頭さん」

五郎「ははは……」

五郎(そういうのは俺が居ないところでやりなヨー……いかん、口調がうつった)

金剛「2枚目はちょっと変わってるネー」

五郎「えぇ。2枚目は日本ではあまりなじみがないものや変わったものを中心に、国を問わずピックアップしてあります」

金剛「Hmm……こっちのもなかなか……」

金剛「これが一番イメージにピッタリネー!」

五郎「こちらですね」

金剛「あ、でもケーキスタンドとプレートはこっちの方が素敵ネー」

五郎「なるほど」

金剛「ティーカップはこっちのタイプのも見てみたいネー」

五郎「分かりました。では、そういうイメージで詳細なリストをお作りします」

提督「よろしくお願いします」

五郎「いったんメールでリストを送りますので、その中からお選び下さい。次回はリストとサンプルをお持ちします」

金剛「Okay! ヨロシクネー!」

五郎(終わった……終わってほっとしたら腹が)

五郎(減ってきた……)

金剛「ん? ゴロー?」

五郎「リストは来週月曜日には送りますので。では、私はこれで失礼します」

五郎(店を、店を探そう)

提督「あぁ、井之頭さん。良かったらここで昼食でもどうですか?」

五郎「は、はぁ……しかし」

提督「今日は金曜日ですよ、井之頭さん」

金剛「金曜日と言えば、『アレ』ネー」

五郎(金曜日、海軍、アレ……そうか、あれか)

提督「もちろんお代は結構です」

五郎「そんな、アイスクリームまでご馳走になったのに昼食まで」

提督「まぁまぁ。先ほども説明した通り、金銭のやり取りが生じるとちょっと」

五郎「はぁ」

提督「今回の依頼も、金剛の個人的な買い物、という扱いですので」

五郎「――分かりました。では、図々しいようですが、お言葉に甘えます」

提督「よかった。では食堂にご案内しましょう」

金剛「鳳翔が食事当番の時に当たるなんて、ゴローはluckyネー」

食堂

鳳翔「軽空母の鳳翔と申します。よろしくお願いします」

五郎「井之頭と申します」

鳳翔「お口に合えばいいのですが。出来ましたらお席までお持ちしますね」

五郎「すみません。よろしくお願いします」

提督「さて、空いている席は……う~ん」

金剛「ちょうど混んでいる時間だから3人座れる席が空いてないネー」

提督「しょうがない。何人かに詰めてもらおう」

五郎「あぁ、それでは皆さんご迷惑でしょう。そういう事なら私はこれで失礼――」

金剛「No! 遠慮しちゃダメネ。ほら、まるゆの前が空いてるネー」

提督「すみません井之頭さん。相席でもよろしいですか?」

五郎「えぇ。相手の方さえよければ私は」

五郎(お客さんだし、ま、しょうがないか)

提督「よかった。ではご案内しましょう」

提督「まるゆ。この席に誰か来る予定は?」

まるゆ「隊長! あの、ない、です……」

提督「そうか。ではこちらの方と相席を頼む。井之頭さん、すみませんがここで」

五郎「分かりました。あの、私井之頭と申します」

まるゆ「私、まるゆ、です……」

五郎「すみません、急に相席なんて」

まるゆ「いえ、気にしないで下さい」

提督「食事が終わりましたらまるゆにお伝え下さい。まるゆ。井之頭さんを私の所までご案内してくれ」

まるゆ「わ、分かりました」

金剛「まるゆ、ヨロシクネー」

まるゆ「は、はいっ!」

提督「では、私たちは一旦ここで」

そうそう…こういうのでいいんだよ…
支援

五郎(『提督』って呼ばれたり『隊長』って呼ばれたり)

五郎(何者なんだ、あの人は……)

五郎(それよりなにより……)

五郎(なんでこの子、水着着てるんだ……)

五郎(白い水着でカレー……危険じゃないか?)

五郎(潜水艦、なんだろうか)

五郎(相席でも良いとは言ったけど、これは想定外だ)

五郎(いかんいかん、じろじろ見て詮索しては失礼だ)

まるゆ「はぁ……」

五郎(なんだかスプーンが進んでいないみたいだ)

五郎(そりゃそうだよな。こんなおじさんがいきなり相席じゃ)

五郎(他の人の食事の邪魔をしてしまった……すごい、申し訳ない)

五郎「あの、すみません。お食事の邪魔をしてしまいました」

まるゆ「えっ?」

五郎「その、あまりスプーンが進んでいらっしゃらないようでしたので」

まるゆ「あ……これは……」

五郎「すぐに食べていなくなりますので。本当に申し訳ありません」

まるゆ「ち、違うんです! これは、その、午前中の出撃で失敗しちゃって……」

五郎「失敗、ですか」

まるゆ「はい。他の潜水艦の皆さんと一緒の出撃だったんですけど、私だけ敵に見つかっちゃって」

五郎「大丈夫だったんですか?」

まるゆ「他の人達は大丈夫だったんですけど、私、大破しちゃって……それで撤退しなきゃいけなくて」

五郎「大破……」

五郎(おいおい……大事じゃないか)

まるゆ「はい。そのせいで任務が達成できなくて……」

五郎「なるほど……」

まるゆ「ごめんなさい。こんなお話してもつまらないですよね」

五郎「いえ、そんなことは」

まるゆ「私、どうしてこうなんだろう……はぁ……」

五郎「……あの」

まるゆ「はい」

五郎「その……私にはまるゆさんの仕事がどういうものか、詳しくは分かりません」

まるゆ「はい、そうですよね……」

五郎「でも、とても危険で、難しくて、誰にでも出来るような事じゃない、っていうのは分かります」

まるゆ「そうなんでしょうか……」

五郎「はい。ですから、その……すみません、上手く言葉にできなくて」

まるゆ「いえ、こっちこそ、ごはんの時に変なお話しちゃって、ごめんなさい」

五郎「……カレー、おいしそうですよ」

まるゆ「え?」

五郎「私は、落ち込んだ時でも、食事の時には忘れるようにしているんです」

まるゆ「忘れる……」

五郎「そういうのにとらわれずに、自由に空腹を満たす。そうすることで、また次頑張ろうって思うんです」

まるゆ「とらわれず、自由に……」

五郎「せっかくのおいしそうなカレー、冷めちゃいますよ」

まるゆ「はい……」

五郎(いかん。余計な事を言ってしまったか)

鳳翔「井之頭さん、お待たせしました。カレーライスです」

五郎「サラダと牛乳も付くんですか?」

鳳翔「はい。必ず一緒にお出しすることになっているんですよ」

五郎「へぇ、そうなんですか。ありがとうございます」

鳳翔「それじゃ、ごゆっくり。まるゆちゃんもね」

まるゆ「はい……」

五郎「なんだか偉そうに語ってしまって、すみません」

まるゆ「いえ、そんなことないです……。あの、カレー、冷めないうちに……」

五郎「はい、ありがとうございます」

五郎(余計な心配はよそう。今はカレーに集中だ)



【鳳翔カレー】

みんな大好き金曜カレー!
しっかり辛くて具沢山。サラダと牛乳も一緒にどうぞ。


五郎「いただきます」

五郎(おぉ……カレーだ)

五郎(辛さもちょうどいい。日本のカレーだ)

五郎(美味い。なんだか、懐かしい美味さだ)

まるゆ「……」

五郎(具がちゃんと一口サイズなのは、女性が多いからだろうか)

五郎(にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、どれもちょうどいい柔らかさ)

五郎(でも、型崩れしていない。小さいけど、ゴロゴロ)

五郎(牛肉も……うん、美味い。柔らかい)

まるゆ「美味しそう……」

五郎(カレーが美味いって、幸せな事だよなぁ……)

まるゆ「……いただきます」

五郎(美味しいよ、このカレー。ゆっくり、召し上がれ)

まるゆ「美味しい……美味しいですね……」

五郎(うん、美味い。美味いよ、カレー)

まるゆ「また、食べられる……よかった。私、また戻って来れたんだ……」

五郎(そうか……そういう覚悟で、出撃するんだもんな……)

五郎(俺なんかより、何倍も美味しく感じているんだ)

まるゆ「なんだか、食べてるのにお腹が空いて来ちゃいました」

五郎(分かる。分かるよ、その感じ)

五郎(さて、ここでサラダ……うん、こっちも良い)

五郎(野菜も新鮮で。和風のドレッシングは、手作りか)

五郎(サラダで口の中がリセットされて、また新鮮な気分でカレーが楽しめる)

五郎(水じゃなくて牛乳というのも心憎い)

五郎(さて、再びカレーと勝負といくか)



赤城「今日は随分混んでいるのね」

加賀「あら。あそこにいるのは……」

龍驤「ん? あぁ、まるゆの前に座ってるおっちゃん?」

加賀「えぇ。提督が言っていたお客様のようね」

龍驤「そうみたいやね。しっかし、美味そうに食べてはるなぁ……」

赤城「本当。なんだかいつも以上にお腹が空いて来ました」

加賀「えぇ。負けていられません」

龍驤「いや、君らは程々にしときや。他の子の分なくなるで」

五郎(カレー、美味い。ただひたすら、美味い)

五郎(皿から飛び立ったスプーンが、俺の舌にカレーの爆弾を投下していく)

五郎(どれも直撃。勝ち目、なし)

五郎(俺、再び轟沈)

五郎(美味かったなぁ……まいりました)

五郎「はぁ……ごちそうさまでした」

まるゆ「ごちそうさまでした」

五郎「あ」

まるゆ「あ」

五郎「はは……」

まるゆ「あ……はは……ははは……」

鳳翔「いかがでしたか?」

五郎「美味しかったです。ごちそうさまでした」

鳳翔「それはよかったです。まるゆちゃんも。元気になってくれてよかった」

まるゆ「井之頭さんがおいしそうに食べてるのをみて、つられちゃいました」

鳳翔「そう。井之頭さん、ありがとうございます」

五郎「いえ、私はただカレーを食べただけですから……」

58「もしかしてもうお昼食べちゃってるかもしれないでち」

168「そうかもしれないわ。あ! いた! あそこよ!」

401「ほんとうだ。おーい、まるゆー!」

19「イクたちを置いていくなんてひどいの!」

8「ご一緒しても、いいでしょうか?」

まるゆ「あ……」

五郎(もしかして、一緒に出撃してたって言う……)

五郎(やっぱり、みんな水着か。陸に上がったら普通に服着てもいいんじゃないか?)

まるゆ「ご、ごめんなさい。私、皆さんの足を引っ張って……」

401「そんな事気にしてないよ!」

168「むしろ、攻撃全部引き受けさせちゃってごめんね」

58「おかげでゴーヤ達、無傷で帰還できたでち」

19「まるゆのおかげなの!」

8「怪我とか、大丈夫?」

まるゆ「あの……もう直してもらえましたから、大丈夫、です」

58「そっか、それなら安心でち」

五郎(なぁんだ。一緒に出撃した仲間、みんないい子じゃないか)

19「あれ、もうごちそうさまなの?」

まるゆ「はい、ごめんなさい。皆さんもう済ませちゃったかと思って……」

401「そっかー。でも私たちも言ってなかったからしょうがないか」

168「あれ、珍しい。まるゆ、普段よりたくさん食べてるじゃない」

まるゆ「あの、井之頭さんにつられて……」

五郎「どうも、井之頭です」

168「もしかして飛鷹と隼鷹が言ってたおいしそうにアイス食べてたゴローちゃん?!」

五郎「……多分、その五郎です」

19「そっか。二人ともごちそうさまなら仕方ないの」

8「私たちだけでお昼ごはんですね」

401「そうだね。それじゃまるゆ、またね」

19「ゴローちゃんも、バイバイなの」

58「バイバイでち!」

168「ゴローちゃん、まるゆと一緒に食べてくれて、ありがとね」

8「失礼、しますね」

五郎(ゴローちゃん、定着してしまった……)

五郎(にしても、誰が誰だったんだろう……ゴーヤって、あの野菜の?)

玄関前

五郎「では、私はこれで。アイスとカレー、ごちそうさまでした」

提督「いえ、こちらこそ、色々とありがとうございました」

金剛「ゴロー!See you! またヨロシクネー!」

提督「カレー以外も美味しいですから、次いらした際はぜひ」

金剛「肉じゃがもお勧めデース!」

五郎「では、その分のオマケも付けさせていただきます」

金剛「Oh! それは楽しみネー」

提督「気を付けてお帰り下さい」

五郎「ありがとうございます。では、失礼します」



五郎(アイスもカレーも、美味かったなぁ……)

五郎(横須賀鎮守府。もっと軍隊然とした雰囲気かと思ったが)

五郎(良い雰囲気の所じゃないか)

五郎(提督と艦娘のみなさん)

五郎(これからも、美味しいカレーとアイスクリームを食べて)

五郎(海の平和を、よろしくお願いします)

五郎(まるゆ。頑張れよ)


                                   おわり

以上で艦これ×孤独のグルメのクロスSSを終わります
見てくれた方、ありがとうございました

>>6
ご指摘ありがとうございます

ゴローちゃんSSは良いものだ乙


面白かった。やはり孤独のグルメは良いな

いい作品

乙!ドラマCDの小山力也氏の脳内ボイス再生余裕でしたw
「それ来月からなんですよ」とかアームロックのネタが来なくてちょっと安心したw

乙です
これは良いものだ

ああー俺も書きたかったのにー
でも面白かったから乙

このゴローちゃんはドラマ版かな?
いいねぇ痺れるねぇ
乙ですね

乙乙ー
短編だけどすごい面白かったわww
俺は台詞回し的に松重さんっぽいイメージだったな

次回作期待してるで

すみません、以下の2か所修正です

>>1
×五郎(今日の夕飯、決定)
○五郎(今日の昼食、決定)

>>10
×五郎「あ、はい。私井之頭と申します。なんでも急用ができたからここで待っていて欲しいとの事で」
○五郎「あ、はい。私井之頭五郎と申します。なんでも急用ができたからここで待っていて欲しいとの事で」

修正前だとその後のやり取りが変な事になってしまいますので……


うんこれは良いものだ

すげぇ面白かった。次も期待してますぜ旦那!

毒気が少なくて落ち着いてるからドラマ版っぽいな
マンガ版はたまに文句垂れるし

良い!実に良い!
あー、カレーとアイス食べたくなってきたな…

潜水艦たちと話しているとき、

56「……」

にならないかとちょっと期待した



続編も可能なら是非

うん、このSSはとてもいいものだ
この雰囲気、原作まんま
機会があったらまた書いてください

>>50
ワロタ

良い雰囲気だった

井56か

素晴らしかった。次回があるなら是非とも

乙です



食事前の甘味と下戸問答とで完全に松重ゴローさんで脳内再生しとったわwwwwww
ラスト、埠頭を歩く後ろ姿にテーマ曲の「ゴロー、ゴロー、イ、ノ、ガ、シ、ラ♪」が自然に流れる流れる

再訪、ワンチャンあるかなぁ

これは面白かった。乙

続きが出来るなら見たいけどカレー以外にバリエーションなさそうなのがネックか

海自の護衛艦カレーみたいなのなら行けそう?

今度は納品で居酒屋鳳翔とかも面白そう

乙です
とても面白かったです! 次回があれば是非読みたいです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 20:49:49   ID: 2FBgrSRH

ほー いいじゃないか
こういうのでいいんだよ。こういうので

2 :  SS好きの774さん   2015年06月28日 (日) 11:36:49   ID: -LXG_OIo

読んでたら…腹が、減った…。

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