妖精「やっと見つけました!勇者さま!」男「それって僕のこと?」 (39)

~早朝・教室~

女「おはよー、男くん。今日も早いね」

男「あ、女さん」

女「もしかして読書の邪魔しちゃった?」

男「あ、ううん、大丈夫!ちょうどきりがいいところだったから!」パタン!

女「そっか、よかった」ニコッ

男「うん」

男(僕が朝早く登校する本当の理由。それは女さんと二人きりになるためだ。女さんは朝早く登校するから、僕もその時間に合わせて登校する。読書はただの口実にすぎない。もちろん口に出しては言えないけど……)

女「どうしたの?なにか考え事?」キョトン

男「あ、なんでもないんだ!なんでも!」ガタッ!

女「そんなに慌てなくてもいいのに。男くんって面白いね」クスクス

男「ご、ごめん!」カァーッ!

女「別に謝らなくてもいいのに」クスクス

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女「あ、そういえば。聞いてよ男くん。わたし、昨日変な夢見たんだ」

男「夢?」

女「うん、夢。昨日というか最近ずっとなんだけどね。男くんが騎士のかっこうしてて、それでわたしがお姫様で……」

男「…………」

女「魔王に連れ去られたわたしを男くんが助けに行くの。……ってごめん。わたしなんかヘンなこと言ってる。気にしないで」

男「……も」

女「男くん?」

男「僕も……同じ夢を見たんだ」

女「え?」

男「僕も、女さんと同じ夢を見たんだ。最近」

女「それって……ほんと?」

男「うん」


女「…………」

男「…………」


女「すごい……」

男「え?」

女「すごいすごいすごーい!!」ブンブン!!

男「ええええええええ!?」ガクガク!!

女「すごいよ!男くん!こんなことが現実にありえるなんて!信じられないよ!」ブンブン!!

男「う、うん!」ガクガク!!

男「し、信じてくれるんだ?」

女「どうして?」

男「だって……」

女「少しぐらい疑ってもいいのに……って?」

男「うん」

女「失礼だなー。わたしだってなんでもかんでも信じるほどお人よしじゃないよ」クスクス

男「あ、ごめ……」

女「でも、男くんがすごく真面目な顔してたから……」

男「え……」

女「だから、信じてもいいかなーって。男くんはあんまり冗談とか言いそうなタイプじゃないし」

男「女さん……」

女「ね。だとしたらすごいと思わない?これって、もしかして運命なんじゃないかな」

男「運命?」

女「そ。わたしたちって運命の糸でつながってるのかも」

男「え?」ドキッ

男(ということは、女さんもしかして……もしかしてひそかに僕のことを?)ドキドキ


女友「おはよ」ガラッ

女「女友おはよー。というわけで男くんまたねー」スタスタ

男「あ、うん」


クラス男「はよっす!」

クラス女「おはよう、女さん。女友さん」

女「みんなおはよー!」


男「…………」

男(まさか、な。女さんにとって僕はただのクラスメイトの一人にすぎないんだ。それに女さんは誰に対しても優しいから)


ガヤガヤザワザワ


男(二人っきりの時間なんてあっという間だなぁ)フーーーッ…

~昼休み・教室~


キーンコーンカーンコーン…


数学教師「今日はここまで。復習は言うまでもないが予習も怠らないように」


ガヤガヤワーワー


リア充「今日は食堂で食うか?」

キョロ充「うぇーい!!」


男(西館三階の便所で食べようかな。あそこは人少ないし)ガタ


<おい、男ーーー


男「えっ?」クルッ

金髪「購買行くんだったらさぁ、ちょい頼みごとあるんだけど」

男「あ、僕は……」

モブ女「あー実はわたしもー。男くん、いいよね?」ニコニコ

男「弁当が……」

金髪「あー!なに?男のくせにあたしらの頼み断るワケ?性格わっる!マジないわー」

モブ女「ひどーーーい!」ブーブー

男「だから、僕は……」

金髪「ああん!?」ギロッ!

男「ひっ」ビク

金髪「そんじゃ、今日も金立て替えといてくれよ。あたし、うぐいすパンといちごミルクなー」

モブ女「わたしはサラダとストレートティーね!」

男「うん……」

金髪「そんな顔すんなって!来月にはまとめて返すから。なっ?」ドンッ!


ガラッ


男(そう言われてから一体何か月たっただろう……)

男「バイト、探さないとなぁ……」トボトボ

~放課後・教室~


キーンコーンカーンコーン…


担任「来週からテスト期間だからなー!おまえら、わかってんだろうなー!気合入れろよー!気合をー!以上解散ッ!!」


ワーワーザワザワ


女「みんなバイバーイ!帰ろ?女友」

女友「わかってる」ガラッ


男「…………」ガタ

男(帰ろう)トボトボ


ガラッ

~夕方・自宅の玄関~


男「ただいまー……」ガチャッ

妹「あ」ピタ

男「あ」ピタ

男「おかえり、早かったね」

妹「は、はい……」


妹「…………」

男「…………」


男(あー、気まずい。なにか話題は……話題はと)ウズウズ

男「あ、今日の学校どうだった?」

妹「どうだった……って?」キョトン

男「ほら、楽しかったとか。つまらなかったとか。ようするに感想」

妹「えっと……普通?」

男「そっか……うん。普通はいいことだよ。普通が一番だよ」

妹「はい」


妹「…………」

男「…………」

男「そ、それじゃ着替えてくるから」スタスタ

妹「あのっ」

男「?」クルッ

妹「晩ごはんの時間になったら……おりてきてください」

男「うん、わかったよ」ニコッ

妹「それだけですっ!」タッタッタッ


男「…………」

男(父さんの再婚相手の連れ子の妹ちゃん。一緒に暮らし始めて三年たったけどいまだにギクシャクしてる。お互いに歩み寄る努力はしてるはずなのにどうしてうまくいかないんだろう?)

男(親が両方とも仕事の帰りが深夜だから、二人だけで過ごす時間が自然と多くなる)

男(女さんと二人っきりの時は時間が経つのが早かったのに、妹ちゃんと二人っきりの時は時間が経つのが遅い。一体なにが違うんだろう?)

男「なにもわからない……」

~就寝前・自室~


パチッ


男「よいしょ」ゴロリ

男「そういえば今日の朝、女さんが……」


女『ね。だとしたらすごいと思わない?これって、もしかして運命なんじゃないかな』

女『そ。わたしたちって運命の糸でつながってるのかも』


男「運命……か」

男(ありえない。だって、女さんと僕は住んでいる世界が違うのだから。身の程知らずもいいところだ)

男「だけど、僕も夢の中なら……」

男(僕は自由になれるんだ。自由になる権利があるんだ。僕たちは夢の中では一緒になれるんだ)

男(あの楽園があるからこそ僕は今日まで辛い現実にも堪えてきた。頑張ってきたんだ)

男(そう、夢の中の世界こそが僕にとっての真実。現実の世界は虚構にすぎない)


男「…………」

男「寝よう」バサッ

期待

まだかい?

――――――――
――――
――


~夢・宿屋の一室~


<ランスロット様!ランスロット様!


ガチャッ!


兵士「敵襲でございます!お逃げください!ランスロット様!」

男「え?」パチクリ

兵士「魔王軍の雑兵めらが卑怯にも我々に奇襲をしかけてきました!まともに戦っては勝ち目はないでしょう」

兵士「ですからあなただけでもお逃げください!あなたが生きてさえいれば我々はあと百年は戦えます!さあ、早く!」

男(あ、そうだった)

男(今の僕は聖騎士ランスロットだった。夢の中の僕は勇敢で正義感の強い聖騎士ランスロット。だから……)

男「私の剣と鎧を用意しろ。今すぐに」

兵士「なにをなさるおつもりです?」

男「尻尾を巻いて逃げるつもりはない。もちろん戦うのさ」

兵士「おやめください!無駄に命を失うおつもりですか!」

男「侮ってもらっては困るな。私とて犬死するつもりはない。それよりも早く剣と鎧を」

兵士「はっ!」

元ネタというか参考になったものはある?

~夢・宿屋入り口前~

魔王軍将軍「どうだ首尾は?」

魔王軍兵「はっ!裏口を除くすべての出入り口を封鎖しました」

魔王将軍「よし、それでいい。裏口付近には伏兵をしいておけ。いいか、やつがそこからノコノコ抜け出してくるところを一斉に襲いかかるんだ」

魔王軍兵「はっ!」


<その必要はないさ。


魔王軍将軍「なに?」クルッ


ズゴオオオオオオオオオ!!パラパラ…


男「私に下手な小細工は通用しないっ!」

魔王軍兵「な、なんてやつだ。壁を突き破って出てくるなんて……」

魔王軍将軍「なにをしている!ものどもかかれっ!」


男「うなれ!我が聖剣エクスカリバー!エクスカリバースト!」スチャッ!


ズッギャアアアアアアアン!!


魔王軍「ぎゃああああああああッ!!」

男「もうなにも心配はない。我が親愛なる民よ。見てのとおり魔王軍を殲滅した」

村人「ありがとうございます!この村にも平和が戻りました!」

ライバル「さすがは俺のライバルだな。やってくれるぜ。相変わらずよ」

兵士「当然だ!我らがランスロット様は、英雄の名に恥じぬ高潔で勇敢なお方なのだからな!」

村男「ランスロット様!万歳!」


ランスロット!!ランスロット!!ランスロット!!ランスロット!!


男「残虐非道な魔王め。待っているがいい。私が必ずこの大陸に平和を取り戻し、そして姫様を救い出して見せる!」

男「この聖剣エクスカリバーに誓って!」スチャッ!


ウオーーーーー!!キャーーーーー!!


村女「素敵ー!抱いて―!」

老人「この大陸に真の平和が訪れるのも、そう遠くないかもしれんのぉ」

妖精「やっと見つけました!勇者さま!」

男「……ん?勇者さま?」チラッ

男(それって僕のこと?というか……)

男(背中に羽のついてる手の平サイズの女の子?こんな配役用意したっけ?ピーターパンじゃないんだ。あくまでリアリティを追及する正統派RPGの世界観のはずなのに……)

男(それに僕は勇者なんて名前じゃない!聖騎士ランスロットだ!ここは一言きつく言っておこう)スタスタ


男「困るなー。勝手にセリフを変えられちゃ。興ざめもいいところだよ。ちゃんと僕の考えた筋書きどおりにやってくれないと」

妖精「お願いです!助けてください!夢の世界の秩序が大変なことになってて!」

男「へ?」

妖精「とりあえずわたしについてきてください!」ピューーー

男「あ、ねえ、ちょっと!」

男(行ってしまった。どうしよう。追いかけようか追いかけまいか……)

なんか俺たちに翼はないを思い出した

ライバル「どうしたランスロット?考え事なんておまえらしくないぜ」

兵士「見ろ、ランスロット様のあの悲しげな瞳を!きっと魔王軍の所業に胸を痛めておいでなのだ!」

男「ああ、もうっ!」ブンブン!

兵士「ランスロット様がご乱心だ!きっとなにか危険を察知されたにちがいない!ランスロット様は予知能力をお持ちだからな!」

男「みんなごめん!すぐに戻るから!」タッ!

男(何者なんだ、あの女の子は?ひょっとしてこの物語の登場人物じゃないのか?)タッタッタッ!

>>19
特定はやいwwwwww
そうです、それが元ネタです
というかまんまです

とりあえずここまで

~夢・平原~

男「どこに行ったんだろう?」キョロキョロ

男(追いかけてきたものの、まさか見失うなんてなぁ……といってもこれ以上探す手がかりもないし)

男「しかたない。戻ろうか」


ギュオオオオオオオ…!


男「え?」クルッ

男(な、なんだ。このブラックホールみたいな渦は?嫌な予感しかしないんだけど……)


ギュオオオオオオオ…!!


男「ち、近づいてくる……!」

男「うっ!」ガクッ…

男(なんてツイてないんだ!こんなときに腰がぬけるなんて!)


ギュオオオオオオオオオオ…!!


男「た、たすけ……」


ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


男「う、うわあああああああああああッ!!」

――――――――
――――
――



男「う、うわああああああああああああッ!!」ガバッ!!

妹「きゃっ!」ビクッ!

男「はあはあはあはあ……!!」ゼーハーゼーハー

妹「あの……男さん?」キョトン…

男「ここは……」キョロキョロ

男(僕の部屋だ……)

妹「だいじょうぶ、ですか?」チラリ

男「ああ、うん。悪い夢を見ただけだから」

妹「そうなんですか」ホッ

男「うん。起こしてくれてありがとね。すぐおりるから」

妹「いえ」カチャ


バタン


男「7時50分」チラリ

男(遅刻ギリギリ……どうりで妹ちゃんが起こしに来てくれたわけだ)

男(僕が寝坊なんて。結局女さんにも会えずじまいか。しかもパジャマが汗でベトベトだ)

男「それにしても、変な夢だったなぁ」ポリポリ

~朝・教室~


キーンコーンカーンコーン


男(なんとか間に合った)ガタッ

担任「本鈴鳴ってるぞー!おまえらーさっさと席につけー!つかんと問答無用で欠席にするぞー!」ガラララッ!


ガヤガヤザワザワ


担任「よし全員着いたな!それでは改めて出欠を確認する。えー、有田ー!」

有田「はい!」


男「あれ?」チラ

男(女さんの席が空席になってる。珍しく遅刻かな?)

<……こー


担任「おとこーッ!!」クワッ!!

男「は、はいっ!」ビクッ!

担任「呼ばれたらさっさと返事せんか!まったく……!」ブツブツ…

男「す、すみません」


クスクス……ダッセー


担任「もういい。次は女!……はたしか欠席だったな」カキカキ

男「…………」ジーッ

男(休みなのか、女さん。体調不良なのかな?)

~昼休み・教室~

男「…………」ボーッ


<……い!……てんのか!


金髪「てめ、シカトしてんじゃねー!男のクセにナマイキなんだよ!」グイッ!

男「ああ、金髪さん。おはよう」ニコ

金髪「うっ、軽く鳥肌たった……なにキメー笑み浮かべてんだよ。マジキメーし!」

男「そうだね」

金髪「……ま、どーでもいいけど。そんじゃ、いつもの頼むな」

男「うん」ガタッ

金髪「…………」ジーッ

男「え、なに?」

金髪「あんた、どしたの?」

男「なにが?」

金髪「なんでもねーよっ」ドンッ


ガラッ


男(金髪さんに気を遣われるぐらい、今日の僕は様子が変だったのかな?)

男「いや、まさかね」スタスタ

~夢・魔王城玉座の間~

男(女さんが学校に来なくなって、あれから一週間がたった……どうしたんだろう本当に)

魔王「ぐわはっはっはっは!!よくぞここまでやって来たな、聖騎士ランスロット!まずは褒めておこう。だが――」

男「ソードエクステンション!」ズバッ!

魔王「ぐふっ」ドサ…

男「安心しろ。峰打ちだ。命まで奪おうとは思わない。さあ、姫様の居場所を教えろ」

魔王「し、知らない……」ゼーハー

男「なんだと?」スチャ

魔王「た、頼む!殺さないでくれ!本当に知らないんだ!」

男「どういうことだッ!」ギリギリ!

魔王「い、いつのまにかいなくなっていた。消えていた。それ以外は本当になにも知らん!」

男「なに?」

男(どういうことだ。ますますわからない……)

<教えてあげようか?


男「え?」クルッ

女(?)「わたしが教えてあげようか?男くんの知りたいことを全部」ニコッ

男「お、女さんっ、いつのまにっ!?」ドキッ!

女(?)「あ、ダメダメ。今のわたしはお姫様なんだから、格下のキミはちゃんと敬語使わないと」ビシッ!

男「ひ、姫様?」

女(?)「あははっ、冗談だよ!いつもどおりでいいよ」ニコ!

男「…………」ポカーン

男(普段の女さんだ。間違いない。だけど――)チラッ

魔王「…………」ガクガク

男(目の前の女さんの存在を認めるとすれば、さっきの魔王の発言は矛盾しているということになる。いや、事実それが正解なんだ)

女(?)「男くん?」キョトン

男(だけどなんなんだ?この妙な違和感は。言葉で説明することのできないこの変な感じは)

女(?)「あのね、難しいことは考えなくていいの。今はわたしの言葉だけに集中して?はい、深呼吸!」

男「すーーーーーーーっ」

女(?)「吐いてー」

男「はーーーーーーーっ」

女(?)「どう落ち着いた?」

男「ちょっとは」

女(?)「よかった。じゃ、これから説明を始めるからちゃんと聞いててね。まず男くんはこれを見たことあるかな?」パッ


ギュオオオオオオオオ…


男「なっ!?」ビクッ!!

女(?)「あるよね?」

男(女さんの手の平から前に見たブラックホールのような渦が出てきた。だけど、あの時よりはサイズがはるかに小さい)

男「ど、どうして……?」

女(?)「それもちゃんと説明するから。質問はあとでね」ニコ

男「…………」

中途半端ですけど今日の投下は終わりです

女(?)「この渦はね。こことは別の世界に通じる入り口なの。別の世界といっても同じ夢の中だけどね」

男「別の世界?」

女(?)「そう。男くんは知らないかもしれないけど、夢っていうのは一個人の頭の中だけに独立して存在しているわけじゃないの。百人いれば百通りの世界が同時に並行して存在する。今わたしたちがいるここだって、そのたくさんある世界のうちの一つにすぎないの」

男「え、えっと……」

男(なんとなくわかったようなわからないような……あ、頭の中がパンクしそうだ)

女(?)「でも、それってなんかつまらないと思わない?」

女(?)「自分の殻に閉じこもって自己満足の自慰行為。目が覚めるとそれが夢だったと知る。そして、夢と現実との落差を感じて嫌になる。男くんにもあるでしょ、そんな経験?」

男「ど、どうかな?」アセッ

男(しょちゅうあるなんて言えるわけがない。仮にも女さんに向かってなんて)

女(?)「それである時ふと思いついたの。同じ自慰行為でもみんなで共有できるなら。しかもそれが永続的に続くなら、って」

男「……え?」

女(?)「お願い、男くん!そのためにはあなたの力がどうしても必要なの!」ギュッ!

男「うわっ!」ドキッ!

男(女さんが……ぼ、僕の手、手をっ!!)バクバク!!

女(?)「あなたはあなたが思っている以上に特別な人間なのよ!お願い!わたしたちが一緒になるにはこの方法しかないの!」ギューーーッ!

男(女さんと一緒に。しかも永久に。こんなうまい話があっていいのか?)バクバク!!

<だまされちゃダメです!


男「この声は……」

女(?)「まさか!」クルッ!

妖精「その女さんは偽物ですっ!本当の女さんはこの世界にはいないんだから!」ピューーー!

男(あのときのちっちゃな女の子!?それがどうしてここに!?)

男「お、女さん、これってどういう……?」

女(?)「チッ……」パチンッ!

男「女さん?」ジーッ


メキャゴキャミシメシ…!


男(な、なんだこの耳障りな音は……)バッ!

魔王「ぐるおおおおぉぉぉぉぉおおお……」

男「ま、魔王の体が……ド、ドラゴンにッ!?」ビクゥ!

男(な、なんだ、一体なにが起こってるんだ?ここは僕の作った世界のはずなのに!どうしてこんなに予想外のことが次から次へと!?)

妖精「この世界はもうダメです!勇者さま!わたしについてきてください!」

男「ついてきてって……?」

妖精「逃げましょう!急いで!」

女(?)「させないわよ。こうなったら力づくでも」バッ!

魔王「ぎゃおおおおおおすッ!!」

男(逃げるだって?そんなわけにはいかない。僕……いや、私は聖騎士ランスロットだ。常に勇敢でなければいけない!)スチャッ!

男「うおおおおおおっ!ドラゴンスレイヤーッ!!」ブンッ!


ガキィィィィィィンッ


男「え?」

魔王「ぐるおおおおおおおお!!」ビュンッ!!


バコォ…!ガラガラ…!


男「はあはあはあはあ……」ゼーハーゼーハー

男(城壁が一発で粉々に……いや、それよりもどうしてなんだ!ここまで歯が立たないなんて!)

男「ならばこれでどうだ!最終奥義・ヘキサフランジッ!!」ズババババッ!!


ピシュッ…


男「なぜだ!なぜ通用しないんだッ!!」ズバズバズバ!

女(?)「無駄よ」

魔王「ぎゃおおおおおおおおおッ!!」ブオッ!


ドスッ!!


男「う……か、ああ……!」メキメキメキメキ…!

女(?)「ここは今までのようにあなたの思い通りにはならないの。なぜなら――」シューーーー

赤騎士「わたしが干渉したのですもの」

男「あ、ぐあああ……!」メキメキメキメキ…!

赤騎士「悪いことは言わないわ。投降しなさい。そうすれば、すぐに解放してあげるから」ニコッ

男「……だ」

赤騎士「なんですって?」ピク

男「……や、だ」

赤騎士「口の聞き方を知らないようね」パチン!


ゴキャッ!!


男「ぐ、おおおおおおぁぁぁぁあああああ……ッ!!」メキャメキャメキャ…!!

赤騎士「いいわ。我慢比べをしましょう。この夢が終わる方が先か、あなたの命が尽きるのが先か」

男(苦しい……辛い……はやく楽になりたい……)

赤騎士「でも、結果は見るまでもないわね」クスッ

男「う、がおおおおおおおおお……ッ!!」メコメコメコメコ…!!

男(駄目だ……もうおしまいだ)


妖精「勇者さまっ!!」ピューーー!

赤騎士「あら、あなたまだいたの?せっかくうまいこと抜け出してきたのに逃げ出さないなんて、お人よしか馬鹿のどっちかね」チラ

妖精「勇者さまを……」ピューーー!

赤騎士「!!」

赤騎士「伏せなさい!」

魔王「……ガル?」

妖精「はなせええええぇぇぇぇぇぇぇぇええええええッ!!」ピカアアアアアアアアッ!!

魔王「!!」ビクウウウッ!!


シュル…ドサ


妖精「勇者さま!今のうちに!」

男「はあ、ぁはあ……」ヨロヨロ…

妖精「急いで!」


タッタッタッ!!


赤騎士「目くらましとは小賢しい。さすがは妖精といったところか」

魔王「ぐるうおおお……」ピクピク

赤騎士「あんたもいつまでものびてるんじゃないわよ!さっさと追いかけなさい!」ゲシッ!


ズシンズシン…!


赤騎士「ったく、使えないわね」ハァーーー

~夢・魔王城廊下~


ズシンズシン…!


妖精「この地響きは……」

男「や、やつだ。やつが追いかけてきた……」ガクガク

妖精「勇者さま?」

男「やつだ!やつが来るんだっ!!やつがッ!!」ガクガク

妖精「勇者さま、走って!」

男「ちがう!僕は勇者じゃない!聖騎士ランスロットでもない!僕はただの弱虫だ!!」

男「自分が助かるためだったら!他人なんて!世界なんて!平和なんて本当はどうだっていいんだ!!」

男「これ以上巻き込まないでくれ。出ていってくれ……頼むからみんな僕の夢から出て行ってくれよ」ポロポロ

男「う、くぁあああ……」ヒクヒク

妖精「…………」


パシンッ!!

男「いたい……」ヒクヒク

妖精「女さんがどうなってもいいんですか!今ごろ知らない世界で一人っきりで寂しい思いをしてるかもしれないのに」

男「え?女さんが?」ヒク

妖精「わたしたち妖精だって、好きな人のためだったら一生懸命頑張るのに……」ジワ…

妖精「なのに、勇者さまは好きな人を見捨てて逃げるんですね」グスッ

男「僕はそんなつもりじゃ……」

妖精「うぁ……うわあああぁぁぁああああん!!」ヒック

男「…………」

男「……ごめん」ギリッ

男(そっか。この子もまだ子どもなんだ。小さい体で一生懸命頑張っている。それなのに僕は……いや、でも)


ギュオン


白騎士「こんなところにいたのか妖精。随分と探したぞ」スタスタ

妖精「白騎士、さま?」グスン

男「え?」クルッ

男(ホワイトホールみたいな渦といっしょに現れた長身の騎士。まさかさっきの女の仲間?)サッ!

白騎士「安心しろ。私は味方だ。それよりもはやく戻るぞ」

男「戻る……?」

白騎士「そうだ。とにかくついてきてもらおう。我らの主がお前に会いたがっている」

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