【艦これ】提督「暁の水平線に勝利を刻めっ!」 (17)

艦これのSSになります。

※設定とか注意事項とか
・艦娘の言動や性格など、全てが正確に再現されてるわけではありません
・メインになる艦娘は金剛四姉妹。旗艦/秘書艦は榛名
・書き溜めてはないので不定期の投稿になります
・18禁展開はないのでパンツは履いてください

それでも読んでやるよ!って方はどうぞお進み下さい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403182432

「はぁ、ふぁ~…」

 大きく伸びをして、開きかけた口を咄嗟に伸ばしてた腕を引っ込め、手を口元に当ててチラッと横を見る。

「もう、提督!」
「す、すまん…」
「気が緩みすぎです! 榛名はそういうの許しませんよ!?」
「いや、そうは言ってもだ、榛名くん。外を見てみたまえよ、外を」
「外、ですか?」

 俺の言葉に窓辺に移りながら榛名は戸を開けて外を見る。
それと同時に初夏に入ったばかりの爽やかな風とほんのりと肌を焼く太陽の光がサッと司令室へと流れ込んでくる。

「な?」
「はい…?」
「いやだ~か~ら~。ほら、外!」
「はい、外です」
「爽やかな風!」
「はい、とても気持ちいいです」
「太陽!」
「暖かいですね」
「ふぁ~…」
「……」スチャ
「オ、オーケー、オーケー…その物騒な主砲の銃口をこっちに向けるのはやめようか」
「もう、金剛姉さんや比叡姉さん、霧島は今頑張ってるんですよ! 駆逐艦の子達だって、提督の為に日々を頑張ってるんです!」
「わ、悪かったよ、榛名。それはそうと、遠征に行った水雷戦隊の北上チームと近海警備に当たってる駆逐隊の面々はどうした? そろそろ帰還してもいいころだろ」
「あ、はい。島風率いる近海護衛チームはヒトフタイチマルには帰還予定であると、報告が着てます。遠征隊からの通信はまだ…」

 榛名がそこまで言いかけた所で「ピー、ピー、ピー」と司令室の通信機器が音を上げる。

「お、噂をすれば何とやら、だな。はいよぉ、こちら司令室。ていt……」
『司令官か! こちら木曽だ! 遠征任務の帰路で敵襲にあった! 現在も撤退しながら交戦中!』

 矢継ぎ早の報告と共に雑音と砲撃音、他の艦娘達の声が通信機から僅かに漏れて聞こえてくる。

「なっ…!?」
「提督!」
「被害状況を報告しろ! 榛名、北上達に今日向かわせたのは西方海域だったな!?」
「はい、そうです! ですが、あの海域周辺で敵影を捕捉したという情報は…」
『未確認の…海棲艦だ! 黄色い……と赤い目の……で、…………』
「おい、木曽! 木曽!! くそ、妨害電波か何かか!」
『母港の……まで、……なんとか!』
「提督、私出ます! 他にも今日は休艦日の子達も居ますから、招集を掛けて今すぐにでも援軍へ向かいます!」
「通信がこれではな…すまん榛名、至急向かってくれ!」
「はい、榛名! いざ、出撃します!」

「くっそ、通信切れちまった!」
「あぁ~、もう仕方ないね! 木曽っち~、他に敵影確認できるぅ~?」
「んな流暢に構えてる場合か!? ちよ、どーなんだよ!?」
「か、艦載機全部落とされちゃったよ、どうなってるの!?」
「皆落ち着いて! 敵の錬度は高いかもしれないけど、このままじゃ母港にまで侵攻を許しちゃうわ!」
「そうは言ってもな、衣笠…いきなりの襲撃でこっちだって弾薬や燃料に余裕ねぇんだぞ!?」
「そうですけど、反撃せずでは……え!?」ドォン!

 口論の最中、深海棲艦ル級の放ってきた主砲が衣笠を直撃する。

「き、衣笠!?」
「ちょっとちょっとぉ~、アタシすこぉしイラッときちゃったかなー? 砲雷撃戦、よーい!」
「っんの野郎! あったまきた…本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ!」
「ふ、二人とも、今は熱くなる時じゃ…せめて六艦隊編成だったら何とかなったかもしれないけど…これじゃ、どうしようも……提督……ッ!」
「キキ……」

 憤怒の表情でにらむ木曽と北上の目前に、ついに黄色い目を持った戦艦型深海棲艦ル級一隻と赤い目をした同じ戦艦ル級が二隻、更に重巡リ級が三隻、単縦陣の陣形を取り眼前に現れる。

「木曽っち、覚悟できてんね~?」
「はっ、俺は沈む気なんてサラサラないけどな!」
「(万事、休す)」

──勝手は!榛名が!許しません!!──

「「「!?」」」

 遠くからも凛と響くその声に木曽、北上、千代田の三人は後ろを振り返る。

「お、おぉ…」
「チッ…おせぇってんだよ…!」
「は、榛名さん!」

 榛名を旗艦とする艦隊は一斉に主砲を発射、木曽達と深海棲艦の間の海原に砲弾を打ち込み弾幕を張る。

「今です! 皆さん、機関最大で撤退行動を!」
「榛名さん、衣笠さんが大破してしまって…」
「えっ!? なら、夕立さん、時雨さん、木曽さんと北上さんと連携して衣笠さんと彼女を運んでる千代田さんの援護を!」
「了解だよ。僕に任せて!」
「了解っぽい!」
「戻って早々ごめんね、霧島。連戦だけど…」
「構わないわ! 司令から話は通信で聞いてる! さ、早く指示を頂戴、榛名!」
「うん! 残りの私榛名、霧島、利根、夕張は敵艦隊の牽制! 遠征隊の退路を切り開くわよ!」
「オッケー。さぁ、砲撃戦、開始するわよ~!」
「うむ、参ろうか!」
「りょーかい! さぁ、色々試してみても、いいかしら!?」

 榛名達はなんとか黄色い目の戦艦ル級率いる深海棲艦艦隊を退け、無事母港まで帰還した。
しかし被害は思いの他深刻で、まず衣笠が大破、未だに意識を取り戻していない状態。
衣笠を安全域まで運んだ後、木曽と北上も榛名の戦隊に合流し応戦に参加するが共に中破。
榛名達も小破とまではいかないが傷を負った。
 この鎮守府始まって以来、これは初となる戦術的敗北である。

「申し訳ありません、提督…私が付いていながら」
「気に病むな。情報が不足しすぎていた。それに深海へと引きずり込まれなかっただけでも良しとしなけりゃ、どんな顔していいのかもわからん」
「ハーイ、提督ぅー。話は榛名から聞いたネ。私たちも暫く出撃ないヨ。だから、衣笠の面倒はNo problem! なんだからネ!」
「金剛お姉さま、軽すぎます」
「What?」
「はぁ、全く…」
「いや、いいんだよ比叡。金剛もこれでちゃんと気を使ってくれてるさ。とにかく、うちはお前たち四姉妹が要だ。錬度云々抜きにして、お前たちがこの鎮守府の艦娘達の士気を左右するといっても過言じゃない。そのお前たちが堂々としてなくて誰が安心できる?」
「そうですね。流石司令、言うときは言ってくれますね!」
「霧島くん、それはどういう意味かな…こほん、とにかくだ。今回の件は異常事態だ。黄色い目や赤い目の深海棲艦など今まで報告には上がっていなかった。それもこんな直近くの海域で、だ。勿論上層部でも初耳だと慌てていたよ。明日、上官が直にうちへ聴取も兼ねて来られるだろう。榛名、悪いがその戦艦ル級と交戦をしたメンバーを食後集めて司令室まで来てくれ」
「了解しました!」
「(黄色い目と赤い目の深海棲艦……まさか、な)」


 この鎮守府に着任してから一年が経過したと思う。
中佐から大佐へ昇進しての祝いの門出、それがこの鎮守府への異動任命だった。

──高速戦艦、榛名、着任しました。あなたが新しい提督なのね? よろしくお願い致します。──

 この時は、もう艦娘とは深く関わろうなんて思わなかった。
俺は一つの艦隊を丸々壊滅させたダメな司令官だからだ。
感情を殺し、任務だけを忠実にこなし、必要最低限の会話以外で彼女たちとの接点を悉く断ち切った。
 それでも本音は不意に零れ落ちる。

「大したものだ。聞いていた規模からして相手の補給船団の捕捉は出来ても殲滅までは無理と踏んでいたが…いや、これも君たちの実力か。正当な、特別な評価がこれは必要だな」
「そんな…当然のことをしたまでです。特別な評価なんて…榛名には、もったいないです」
「謙遜することはない。お前に限らず、お前を旗艦とした第一艦隊は実力以上のものを見せてくれた。これを評価せずに何を評価する?」
「そ、それなら…」
「構わん、近代改修でも新たな兵装でも望むものを用意する」
「はい、では…私達ともっと会話をして下さい」
「…は?」
「提督が以前の鎮守府でどのようにしていたのか、榛名は知っています」
「……」
「ご安心下さい、提督。榛名達は簡単には沈みませんし、沈むつもりもありません」
「Hey! 提督ぅー、私たちのコトいつも心配してくれてるネー? そんな提督が私たちLoveヨ!」
「知ってました、提督? 私達四姉妹って結構凄いんですよ?」
「備えあれば憂いなし、です。もっと信用して下さいね、提督!」


 一度は全てを失って、失意のどん底にまで叩き落された俺には、彼女たちの笑顔はまさに女神の微笑だった。
そこから彼女たちとの日常の会話も段々と増えていった。
心の傷は未だに癒えていない。それでも、彼女たちと共に過ごす日々はそれだけで俺を優しくしてくれた。
今では第四艦隊まで編成できるほどに、この鎮守府は大きく強く成長した。
 そこにきて今回の事件…。
黄色い目と赤い目の深海棲艦。黄色い目は戦艦ル級、赤い目も同じく戦艦ル級。間違いなく、当時の俺の第一艦隊を壊滅させた連中だ。
失意の中であの時は上に報告することすら忘れてそれっきり、夢幻の如く噂すらもきかなかったってのに…。
 また、俺に悪夢を見せるためにきたってのか。一年前のあの地獄をもう一度、俺に味合わせるために幻夢の世界からやってきた死神。
だがな、俺はこの鎮守府で立ち直ってみせる。栄光なんてそんなもの要らない。
そんなものよりも大事なこと、大事なものが目の前にあるんだから、そんなものを求める必要もない。

今日はこれで落ちます

暁ちゃんの水平線に勝利を刻むのかと

暁ちゃんの胸は水平線を描いてる

ニイイチサンマル
提督の皆様、こんばんは
今日も宜しくお願いします。

>6
暁ちゃんに手を出してはいけません

>7
否定はいたしません

「お待ちしておりました、長官殿」
「ん、君の噂は此方まで轟いているよ。獅子奮迅の働きだとね。故に、今回の事件は我々も捨て置く訳にはいか
ん。他の鎮守府にも警鐘を鳴らさねばならんからな。今回は、君の所の艦娘が一名大破し、重症だと聞いて私自
ら足を運んだという運びだ」
「お心遣いに恐縮です」
「容態の心配も然る所だが、まずは昨日の出来事から伺いたい、構わんかな?」
「はっ! 秘書艦、彼女たちを此処へ」
「はい!」

 榛名を含め、昨日交戦をした艦娘は一同にして同じ供述を並べた。

「黄色い目と赤い目の深海棲艦…長官、西方海域にそのような深海棲艦は今まで確認されていません」
「うーむ…提督、君はどう睨む?」
「はっ、自分は彼女たちの言葉に偽りなしと見ております」
「ほう…真偽を確かめもせず、かね?」
「はっ…前例が、ありますゆえ…」
「何…?」

 提督は今まで内に秘めていた経緯を掻い摘んでだが長官に全て吐露した。
隠匿の罪に問われかねない情報でもあるため、一大決心でもあった。しかし、提督の思惑とは到底逆の声がその
後返ってくる。

「全く、君という者は、どこまでも頑なでいかんな。私がいくつの鎮守府を一手に纏めてると思う。黄色い目と
赤い目の深海棲艦の報告は既に受けているよ」
「え…? し、しかし今し方長官度のの秘書艦も…」
「申し訳ありません。司令官から口止めをされて白を切れと…司令官は既に提督殿の言われた情報、今回の一件
についても既に熟知してらっしゃいます。無論、提督殿が指揮する艦娘達の情報も全て事実であると認識してお
いでです」
「さて、それらも踏まえた上で聞かせてくれ。報告に上がっているこの黄色い目の艦隊の錬度はこの海域に点在
するどの鎮守府の主力艦隊でも脅かされかねない脅威である。無論、君の所の艦隊も含めてだ。実際、こうして
立てられた爪の痕は深い。それでも、この脅威を取り除く掃討戦に参加できるかね?」
「……」
「…提督!」
「榛名…」
「提督、榛名なら、大丈夫です!」
「俺らだって、今度は無様な戦闘みせねぇぜ!」
「やっちゃうよぉ~、大井っちもビックリな勢いでやっちゃうよぉ~!」
「提督さん、やっちゃうっぽい?」
「うん、僕もやる、頑張るよ!」
「司令、ご命令を!」
「皆、着いてきてくれるか。俺に、力を貸してくれるか?」
「ええ、榛名でいいなら、幾らでも力をお貸ししましょう!」

 榛名のグッと握ったガッツポーズと共に今度は司令室の扉が「バンッ」と開く。

「あ、こらお前たち……!」
「ハーイ! 金剛デース!」
「ちょ、ちょっとお姉さま!」
「とっても楽しいティータイム、するネー! Oh! 提督の上官さんネー? 一緒にティータイムするネー?」
「はっはっは、君の艦隊はユニークでいいな」
「も、申し訳ありません。あとできっちりと言い聞かせておきますので…」
「いや、構わんよ。はっはっは! ま、君の所は問題なさそうだ。私はこの足でそのまま次の鎮守府へ打診をし
に行くよ」

 長官は一頻り笑ってそのまま席を立つと同行した秘書艦を伴って司令室を後にする。
司令室を出た先にはなんと提督が束ねる艦娘が心配顔で勢揃いしていた。

「おぉ? なんだ、提督君が心配で駆けつけでもしたのか。学園ドラマじゃあるまいし、困ったもんだな」
「か、重ね重ね申し訳ありません…」
「あぁ、良い良い。慕われるのも提督の仕事よな。昨今、この子らを道具所か愛玩用に用いる屑も居る。鎮守府
を守る者として、風上にも置けん連中だ。君は、違うなよ」

 長官はそれだけ言い残すと今度こそ鎮守府を後にした。
長官が去った後、提督は全ての艦娘を食堂に集めて今後の方針を話し合うことにした。

「衣笠は未だ重症。間宮と救護班が懸命に処置を施してくれている。木曽と北上も怪我を負った。正直今でもお
前たちの誰かが沈んでしまったら、と怖くなることもある。これから臨む作戦は今までにないほど大掛かりで、
苛烈を極める事になる。微塵も恐怖がないと言えば嘘だが、それでも俺は敢えて言おう。君たちの力は既に俺が
知っている。実績もある。信頼も置いている。だから、全艦必ず生きて投錨を果たせ! では編成を発表する」


第一艦隊
旗艦:榛名
霧島 木曽 北上 赤城 千代田

第二艦隊
旗艦:金剛
比叡 夕立 時雨 飛龍 蒼龍

第三艦隊
旗艦:島風
五十鈴 球磨 夕張 天龍 龍田

第四艦隊
旗艦:川内
神通 那珂 利根 伊16 伊58


「このチームで明日は深海棲艦を討滅する。それぞれ第一第二、第三第四で連合艦隊を編成した上で進行するよ
うにな。第一第二艦隊は黄色と赤い目が目撃された西方海域、第三第四艦隊は以前に目撃された事がある北方海
域を担当してもらう。細かい指示は追って通達する。以上、解散!」

 提督はそのままきびすを返してその場を後にし、その足で海を眺めに外へ出る。
あとを追うようにして誰かが来るのを背中越しに感じ、提督は振り返った。

「なんだ、榛名か。どうした?」
「榛名は提督の秘書艦です。お傍に付くのは当然かと思いまして」
「うん、間違ってない。が、チームでの打ち合わせは良いのか?」
「霧島が居ますから、多分大丈夫ですよ」
「多分ってお前ね…」
「榛名も時としてサボるのです」
「減俸に処すぞ…」
「それじゃ、提督は既に借金レベルで減俸ですね!」
「ぐっ…はぁ、全くお前と言い争っても勝てる気がしない」
「ふふっ、榛名は口も強いんですよ!」
「口の強さはアイツに負けず劣らず、だな」
「……?」
「…以前に、俺の秘書艦をしていた艦娘だ。名を白露型六番艦駆逐艦、五月雨。怒ると直に膨れっ面になって、
そりゃもう宥めるのに苦労を強いられた。凄まじくドジで何もない所でコケるのは朝飯前、書類は撒き散らす、
提督の俺を海に突き落とす、入渠ドックでふやけたワカメみたいになりかけてた事もあった」
「そ、壮絶ですね…」
「五月雨、皐月、磯波、叢雲、摩耶、筑摩……当時の、俺の自慢の第一艦隊だった艦娘たちだ」
「…最期の時まで、立派に戦ったんですよね?」
「あぁ、勇猛果敢にな…その結果、誰一人帰ってこなかった」
「榛名達は提督を一人にはしません。お約束します」
「期待してる。明日は頼んだぞ」

 ニコッと榛名は笑い、提督と並んで沈む夕日を共に地平線の向こうに見送った。

今日は落ちまする

>9
訂正:×伊16 → 伊19

ヒトナナマルマル
提督の皆様、こんばんは!
今日もよろしくお願いします。



「HEY! 皆ぁー、余り考えすぎても頭Shortするネー! ここは一つ、ティータイムにするヨー!」
「お姉さまも考えて下さいよ!」
「What? 私、頭使うの苦手ネ」
「第一次の攻撃隊はお任せ下さい。あ、金剛さん、ティータイムにその…お菓子なんかは…?」
「OH! 赤城ぃ、クッキーあるヨー?」
「頂きます!」
「大丈夫なのかよ、おい…」
「話し合いっていうか、会議苦手ぇ~」
「各個人のデータはここに」
「うわっ、すご…霧島さんってこういうデータとか揃えるの趣味なの?」
「え? いえ、別にそういう訳じゃ…」
「赤城さんの攻撃を合図に、艦載機は私と蒼龍も一斉に発艦させましょう」
「そーだね。うちらがいれば制空権の確保は貰ったも同然!」
「け、軽空母の出番もあるといいなぁ…」
「少しだけ話し合い、っぽい?」
「僕にはなんとも…」
「お姉さまったら、もう…」


「もー! 皆、おっそーい!」
「何々、夜戦でもすんの!?」
「違うってば!」
「眠いクマー」
「あ、明日の陣形など、話し合っておいた方が宜しいかと…」
「那珂ちゃんは神通さんにさーんせー!」
「敵みつけてぶっぱなしゃいーんだろ?」
「あらあら、天龍ちゃんったら乱暴ねぇ?」
「そう簡単にコトは運ばんじゃろ」
「海のスナイパー、イクにお任せなの」
「ゴーヤの活躍に期待するのでち」
ワーワーギャーギャー
「纏まり皆無って感じね…」
「うーん、明日はどの兵装で行こうかしら。五十鈴さん、どれか装備して感想聞かせてちょうだい!」
「はぁ? 五十鈴に見合うだけのものなんでしょうね?」
「この三式爆雷投射機なんてどうかしら?」
「それ持ってるわよ…」
「もー! これ話し合いとか無理じゃん!」
「そうねー、そんじゃ私と夜戦しよっか?」リョウテワキワキ
「手が怪しいんですけど!?」

─翌朝─
「ん、全員揃ってるな。よし、榛名」
「はい! 現時刻ヒトマルマルマルより十分後、ヒトマルヒトマルから作戦行動を開始! 第一艦隊第二艦隊は
西方海域、第三艦隊第四艦隊は北方海域にそれぞれ進行。偵察機による索敵を敢行し、捕捉し次第敵を撃滅する
こと! 標的は未知数の戦力、黄色い目と赤い目の深海棲艦、戦艦ル級とリ級です!」
「皆の働きに期待する。俺は母港から動けんが、随時作戦概要に変動があれば通達する。君たちの力を思う存分
発揮し、暁の水平線に勝利を刻めッ!」
「勝利を、提督に! 第一第二連合艦隊、西方海域へ向けて抜錨!」
「「「おおーっ!!」」」
「よーし、私達も行こうか! 夜戦なら任せてね! 第三第四連合艦隊、北方海域へ向けて抜錨!」
「「「おおーっ!!」」」
「(頼んだぞ、皆…)」


─北方海域─
「敵の影、未だ無しじゃ」
「イクちゃん、ゴーヤちゃん、下のほうはー?」
「ぷはぁ、海の中はお魚さんで一杯なの」ザパァ
「むあぁ、とっても平和でち」ザパァ
「何も起こらないのが一番ですよね」
「えー、夜戦なしはヤダなー」
「緊張感がゼロなんだクマー」
「あんたが言っても説得力ないわよ…」
「クマー?」
「こ、こっち見ないでよ!」
「まぁ、何が出てこようがこの天龍様の敵じゃねぇよ」
「うふふ、強がっちゃう天龍ちゃん可愛いわぁ♪」
「つ、強がってねぇよ! あと天龍ちゃんって言うな!」
「メロンちゃーん、なんか新しい兵装持ってきたのー?」
「メロン言うな! 島風にはこの間最新のもの上げたでしょ!」
「うん! 五連装酸素魚雷! あれチョー強いよ!」
「ふっふっふ、私もこの間妖精さんに作ってもらった秘密兵器があってね。試したくてウズウズしてたのよ」
「そう言えばー、いつもはおいてけぼり食うのに、今日はちゃんと一緒だね、メロンちゃん」
「どぅあからメロン言うな! お、置いてかれるのは皆が勝手に先走るからでしょ!」
「寸劇はそれくらいにせんか。お客のお出ましじゃ」
「寸劇って何よ! って、敵!?」
「川内、目測じゃが規模はざっとみて……ひぃ、ふぅ、みぃ…ふむ、二十はくだらんの」
「さんきゅー、利根さん! いくよ、島風!」
「オゥッ!? 敵? よーし、皆! 砲雷撃戦準備開始っ!」
「よっしゃあ! 龍田ぁ、水雷戦隊の実力みせてやろうぜ!」
「そうね~、死にたい船はどこかしら?」
「クマー! クマもやってやるクマ!」
「それじゃ、早速新兵器を試してみてもいいかしら!」
「この五十鈴に任せなさい!」
「我が艦載機から逃げられるとでも思うたか! 利根、出撃するぞ!」
「イクとゴーヤは水中から援護宜しくね!」
「任せてなの!」
「おっけーなのでち!」
「さぁ、神通、那珂、私達も出るよ!」
「はい! 神通、いきます!」
「はーい! 那珂ちゃんにまかされてー♪」

─西方海域─
「これは…」
「こ、これはちょっと数多いネー…」
「物量戦ってハラかよ!?」
「訳隔てなくぶっとばぁ~す!」
「やるしかないね。時雨、行くよ!」
「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」
「金剛お姉さま、号令を!」
「OK! 私たちの出番ネ! Follow me! 皆さん、ついて来て下さいネー!」
「一航戦の誇り、お見せします! 第一次攻撃隊、発艦して下さい!」
「続くよ、蒼龍! 同じく第一次攻撃隊、発艦!!」
「続きます! 攻撃隊、発艦はじめっ!」
「いっくよ~! 攻撃隊、発艦開始よ!」
「赤城さん、飛龍さん、蒼龍さん、千代田さんの空爆を合図に攻撃開始! 金剛姉さん、比叡姉さん、合わせま
す! 準備は良いわね、霧島!?」
「ええ、いつでもどうぞ!」
「OKネー! いつでもFire、いけるヨー!」
「見せてあげるわ、高速戦艦の実力!」
「木曽さん、北上さん、夕立さん、時雨さんはそれぞれ左右に展開、それに合わせて各艦隊、単縦陣に陣を敷い
て! 先手必勝で攻めます!」
「第二次攻撃隊、発艦準備急いで!」
「いきマース! 撃ちます! Fire~!」ドォン!
「撃ちます! 当たってぇ!」ドォン!
「榛名、全力で参ります! 主砲、砲撃開始!!」ドォン!
「さぁ、砲撃戦、開始するわよー!」ドォン!

 西方海域に出現した深海棲艦は駆逐艦型が十隻弱、軽巡洋艦型が十数隻、重巡洋艦型が十数隻、重雷装巡洋艦
型が四隻、正規空母型二隻、潜水艦型が三隻、そしてその遥か後方に冷たい笑みを携え一隻の黄色い目をした深
海棲艦と二隻の赤い目をした深海棲艦、共に戦艦型ル級とリ級。

「制空権はこちらに利があります! 榛名さん!」
「ありがとう、赤城さん! 高速戦艦の力、特と見なさい!」ドォン! ドォン!
「前回は補充も万全じゃなかったけど、今度はそうはいかないわよ~!」ドォン! ドォン!
「全砲門! Fire~!」ドォン! ドォン!
「お姉さまの邪魔をするのは、許さない!」ドォン! ドォン!
「ははっ、戦艦四姉妹の主砲斉射はやっぱスカッとするぜ!」
「すごいねー、しびれるねぇ~」
「さて、何から撃とうかしら?」
「僕たちの分も取っておいて欲しいところだね」
「いいか、駆逐艦共! 俺らの実力もきっちり刻み込んで深海にお帰りしてもらおうじゃねぇか!」
「その通りさ」
「夕立も本気でやるっぽい!」
「ふふん、ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

 四姉妹の主砲斉射で前面に広がる深海棲艦の駆逐艦型、軽巡洋艦型、重巡洋艦型の大半が海の底へと沈んでい
く中、最奥に留まる黄色い目と赤い目は不敵に笑みを浮かべるだけで動きを見せない。

「HEY! 榛名! ここの前線は私たちにまかせるネー!」
「金剛姉さん!?」
「私と比叡、二人居れば、こんな連中即Hold upするネー!」
「行きなさい、榛名! だいじょーぶ、お姉さまの邪魔するヤツは私が許さない!」
「一点突破よ、榛名!」
「うん! 第一艦隊全速前進! 目標は深海棲艦、戦艦ル級とリ級!」
「おっしゃぁ!」
「いっくよ~!」
「お願いね、金剛姉さん、比叡姉さん!」
「霧島も、榛名のフォロー、しっかりするのよ!」
「はい!」
「It's a show time~! 第二艦隊! Follow me! ここが私達の戦場デース!!」
「援護は任せて!」
「周りの掃除完了っぽい! 追随するわよ!」

─鎮守府─
「……北方は数の割に攻撃意欲が余りない?」
『攻撃は仕掛けてくんだけどさー、なんか誘い込まれてる感じ?』
「島風の第三艦隊はどうしてる?」
『島風にも深追いはするなって言ってあるよ。幸い、利根さんとイク、ゴーヤコンビで索敵と海底からの偵察が
できてる。やっぱ動きが挙動不審だってさ』
「…恐らく陽動だな。陣は防御を固めて様子を伺えるように単横陣で進め。さっき霧島からの報告で主力の本隊
はやはり西方海域に存在していることが報告された。が、北方海域に同勢力の部隊が存在してない、という保障
には繋がらん。第三と第四には戦艦クラスの艦娘は居ない。一点突破の火力を有してる重巡や軽巡クラスでは、
万が一の場合の保障には信じないわけじゃないが心許ないのも事実だ」
『解ってるって。深海棲艦が陽動で動いて私たちを誘い込んで袋叩きにしようってんなら、逆手に取るくらいの
戦術は心得てるよ。それに、夜戦ならこっちにも分があるしねー』
「無理はするなよ。こっちも今、その陽動に備えて第三第四連合艦隊用に秘策を弄してるところだ」
『お、なになに? 夜戦!?』
「夜戦バカめ…妖精さんに頼んで新しい艦娘を建造中なだけだ。昨日の夜中に急遽無理言ってお願いしたんだ」
『へぇ、ブラック企業だねぇ。まぁ、私は夜戦好きだから夜働きたいけどねー』
『川内、通信なっがーい! 砲撃戦参加しなさいよね!』
『うわっ、やば…島風がこっちに魚雷砲口向けてる。一旦通信切るね!』
「全く…」

ペチペチペチペチ
 ため息をついて椅子に腰掛けた直後、窓ガラスを何かが叩く音に視線を向けると妖精さんが窓をペチペチと叩
いているのが解り、提督は直感で建造が完成したと察した。

「おぉ、少しは期待してたが、本当に出来上がるとは…」
「────よろしく頼むぞ、提督」
「はは、それはこっちの台詞だ。まさかお前が着てくれるとは、正直驚いてるよ。進水したばかりで申し訳ない
んだがな、実は今敵主力部隊と陽動部隊を平行して撃滅する任務中でな」
「ふむ、では私は主力部隊を叩きに行けばいいのか?」
「いや、陽動部隊がどうにもきな臭い。嫌な、予感がするんだ」
「心得た。ふっ、そう心労を患った顔をするな。提督の信念、この私も共に担わせてもらう」
「俺の信念、わかるのか?」
「矢尽き刀折れよと、不退転の決意を持って尽力す。が、必ず全艦揃っての投錨を果たすこと、と言った所か」
「はぁ~あ、ったくエスパーかっての…」
「エスパーか…別にそれで構わん。時間も惜しい、出撃する!」
「あぁ、頼んだぞ!」

今日はここまでで寝ます

と て も み づ ら い

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