まどか「私の最愛の敵」 (6)

闇夜に染まる漆黒の空の下。高い鉄塔の頂に立ち、眼下に広がる世界を見下ろす少女がひとり。それは夜の闇に溶けて消え入りそうな儚さを秘め、同時に深海の奥底に住まう生物のように重く苦しい状況にも耐えうる強さを備えた少女だった。

彼女の名は暁美ほむらーーー人類の本質たる『深愛』と『進化』を体現したような存在である。

「インキュベーター、まだ終わらないの?」

まるで虚空に話しかけるように彼女は言葉を漏らす。別に電話をしているわけでもなく、ただポツリと何も無い空間に向けて話しかけていた。

その姿は事情を知らない者からすれば痛々しい電波少女にしか見えないだろう

が、事情を知ってる者にしてみれば何をしているのか、次に何が起こるのかも容易に分かる

『まだ捕捉できてないよ。君の方はどうだい?』

声が脳に染み渡るように響いた。この鉄塔の上、周りに誰もいないにも関わらず声だけが彼女に届いた。不可思議な現象。だけど彼女はそれを気にも留めずに答える。

「こっちは何回か接触に成功してるわ。あなたも少しは真面目に働きなさい」

『分かってるよ。僕も早めに君たち人類から手を引きたいからね。真剣だよ』

「そう、随分と嫌われたものね。まぁいいわ。早めに終わらせるわよ」

『そうだね。捕捉次第、君に報告するよ』

「ええ、よろしくね」

それを最後に頭に響いた声は消え、眼下を眺める彼女は不敵に微笑んだ

「ふふふ…待っててねーーーまどか」



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ーーーその日、彼女は夢を見ていた。

自身が弱々しい少女を背に異形の怪物に立ち向かうという夢。まるで自分が姫を守るナイトのように勇猛果敢に怪物を薙ぎ倒していた。

彼女は夢の中の自分に憧憬を抱いていた。

(いいな。私もあんな風に誰かの役に立てたら素敵だろうなぁ)

荒れ狂う天災にも負けず、あの子にあれほどまでに求められるようなひとに自分もなりたいな。彼女は心からそう思う

そして、夢は覚める

「…んっ…ふぁああ……もう朝…ママを起こさないと」

彼女ーーー鹿目まどかは起き、覚束無い足取りで母親の眠る寝室に向かう。


まどほむ期待

くっさ…

タイトルが気になる

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