響「故郷」 (31)
数日前、プロデューサーから仕事の話が来た。
自分のイメージビデオを撮る、そういう仕事。
別に嫌な訳じゃない。
完璧にこなす自信はあるし、プロデューサーだってクライアントだって満足させられる。
だけど、自分は迷っていた。
何故なら。
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「――――沖縄!?」
事務所で告げられたのは、自分の故郷での仕事だった。
「あぁ、響の出身である沖縄で響のイメージビデオを撮りたいって先方から話が来てな」
手帳に視線を落としながらプロデューサーが話している。
「海に山、色んな自然の中で響の画を撮りたいそうだ」
弾んだ声で告げるプロデューサーに目をやる。
活き活きとした表情で、とても嬉しそう。
対照的に自分は今、すごく複雑な気分だった。
「どうした、響?仕事、嬉しくないのか?」
それが顔に出てしまっていたのか、怪訝そうにプロデューサーが問いかけてくる。
「べ、別に嫌な訳ないぞ!」
そう、嫌な訳ではない。
場所が沖縄じゃなければ、自分は大喜びでこの仕事を受けていた。
「そうか、じゃあ先方には受けると連絡しておくな」
そう言ってプロデューサーはデスクに戻り、電話をかけ始めた。
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「沖縄……か……」
自分は、トップアイドルになるまで戻らないと決めて島を飛び出してきた。
考えてみれば仕事で沖縄に行くことなんていくらでも可能性があったのに。
それでも、そのくらい自分を追い込まないとダメなんだって思っていた、だからこそそう決めて単身東京まで出てきたんだ。
幸い撮影は本島でやるらしく、離島出身の自分の家族は住んでいない。
それでも、やはり気は重いままだった。
月明かりだけが差し込む部屋で、ベッドから勢いよく体を起こす。
「……よしっ!自分はプロなんだ!こんな状態で仕事に臨んじゃダメだよね!」
そうやって自分に発破をかける。
突然大きな声を出したせいか、眠っていたハム蔵を起こしてしまった。
いぬ美も心配そうに自分を見ている。
……そうだ、沖縄に行っている間、家族の世話をどうしよう?
そんな事を考えながらベッドに寝転ぶと、すぐに眠ってしまった。
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「着いた~!!!!沖縄だぁぁぁぁ!!!!暑い!!!」
初めて来るらしいプロデューサーがはしゃぎまわっている。
自分からしたら見慣れた景色、何をそんなにはしゃぐ必要があるのだろうか。
「プロデューサー、ちょっと落ち着いてよ。こっちが恥ずかしくなってくるぞ……」
子供みたいにはしゃぐプロデューサーに苦言を呈した。
「おっと、すまんすまん。沖縄なんて初めてだからテンション上がっちゃってさ」
仕事をしている時とは違った活き活きした表情と笑顔。
自分の気も知らないで。
と、溢しそうになったのを喉元で抑えた。
やると決めた以上しっかりとやる。
それがプロというものだ。
けれど、この風の匂いと肌を刺すような日差しが、いやが上にもずっしりとした重い気分を呼び起こしてくる。
「さて、ホテルにチェックイン済ませちまうか」
空港からゆいレールに乗り牧志駅で降りるとすぐ目の前が国際通りだ。
その国際通りに入る角を曲がってすぐの所のホテルにチェックインをする。
撮影は明日から。
今日は長旅の疲れを取るためにゆっくり休もう。
翌日、スタッフの運転する車で那覇から1時間揺られてビーチへとやってきた。
水着に着替えてスタイリングをしてもらって撮影が始まる。
海に入ったり、砂浜で駆け回ったり。
監督の要望に応えつつ、自分の魅力を精一杯アピールしたつもりだ。
「はいっ!OK!」
一際大きな声でOKを貰い、この日の撮影は終了した。
「お疲れ様、響」
タオルを持ってプロデューサーが自分の所に寄って来た。
「ありがと、プロデューサー」
お礼を言ってからタオルを受け取る。
正直に言えば早く現場を離れたかった。
離島に住んでいた自分にとって、海は日常的にそこにあるものだったし、潮の香りがどうしたって家族を思い起こさせる。
子供の頃、にーにと一緒に釣りをしたり泳いだり、そういう思い出が沢山海には詰まっている。
忘れたくても忘れられない、大切な思い出が。
次の日は長い時間をかけて移動して山での撮影。
昨日の水着とは違って用意された服を着て山の中を歩く。
色んな動物と友達になって、一緒に遊んだのが昨日の事みたいに思い出せる。
勿論、それはこの場所ではないけど、思い起こさせるのには十分だった、
皆、今頃どうしてるかな?
ぼんやりと、あの頃の友達の事を思い返す。
アリサ、コケ麿、他にも沢山の友達がいた。
期待しちゃっていいんだね?
「はいOK!良いよ響ちゃん!元気な顔だけじゃなくてちょっぴり憂いのある感じ
うんうん!サイコーだよ!」
喜んでいる監督に対して、プロデューサーの表情は少しだけ険しかった。
……やっぱり、自分のプロデューサーは騙せないみたいだ。
「響、ちょっとこっちに来い」
休憩中にプロデューサーから呼び出された。
「何か悩みでもあるのか?」
心配してくれているのがすぐにわかった。
けど、これは自分自身の問題だから話してもどうにかなる問題ではない。
「……そんなんじゃないぞ」
これで引き下がるプロデューサーじゃないのは分かってるけど、そう答えるしかなかった。
「思えばこの仕事の話をした時からどことなく様子がおかしかった
なぁ、もしかして、この仕事嫌だったか?」
プロデューサーは本気で自分の事を心配してくれている。
普通だったら仕事に集中していなかったらまず怒られるはずなのに。
「…………自分さ」
気がついたら、全部話していた。
島を飛び出したこと、島には帰らないこと。
他にも、こんな思い出があるとか関係ないことまで。
その間、プロデューサーはただ黙って聞いていてくれた。
「……そうか」
話終えるとプロデューサーは一言そう呟いて、自分の頭を撫で始めた。
「うぎゃ!な、なんで撫でるんだ?」
自分が問いかけるとプロデューサーはただ微笑んで、そのままどこかへ行ってしまった。
「な、なんだったんだ……?」
プロデューサーが何を思ってそうしたのかは最後まで分からなかったけど、全部話したお陰でほんの少しだけ気分が晴れた気がする。
結局、撮影が全て終わるまであの重たい気分になる事はなかった。
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東京と沖縄はかなり違う。
海の色、空の色、人、挙げていけばキリがない。
でも、違うからこそ雨が降っても風が吹いても自分のいた島を思い出してしまう。
その度に、家族の事が気になってしまう。
夢を抱いて島を飛び出したあの日。
島には戻らないって決めて、一人東京にやってきた。
綺麗な海と、自然溢れる懐かしい故郷に。
いつか、きちんと胸を張って帰る事のできるその日まで――――――。
終わりです。
何となく思いついたものを何も考えずに書きました。
少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。
乙
乙です
いや、短かったけどとっても良かったよ
乙
乙!
響なでなでしたい
沖縄の人?
P&響は良いもんだな
乙
艦これじゃねーのかよ氏ね
出たー艦これ厨www sageることも出来ない低脳は精神病院行きましょうねぇ
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