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勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」
勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」 - SSまとめ速報
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城下町 教会
神父「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け……」
神父「その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
医者「誓います」
村娘「誓います」
神父「では、誓いの口付けを」
姫「おぉー! きたぁ! キスだ! キス!」
村娘「……」
医者「……」
シスター「し、静かにしてください」
姫「おっと。すまん」
兵士長「違うだろ?」
姫「あぅ……。すみません」
兵士長「そうそう。あいつの教育はなっちゃいねえなぁ。ま、本業じゃねえし仕方ねえけどよ」
姫「これが結婚式かぁー。いいなっ。私もしたいぞ!」
農夫「幸せになるんだぞー!!」
医者「ありがとうございます」
「末永くお幸せにー!!」
村娘「はぁーい」
村長「うぅ……孫の結婚を生きているうちに見られるとは……うぅぅ……」
村娘「お、おじいちゃん、泣かないで。村を出て行くわけじゃないんだし」
シスター「やっぱり憧れますね……」
兵士長「嬢ちゃんなら引く手数多だろ。すぐにできるさ」
シスター「だといいんですけど……。職業柄、中々男性とお付き合いする機会がなくて……」
兵士長「ハハッ。その初心さ、たまらんねぇ。俺があと20歳若ければ、口説いてるところだ」
シスター「や、やめてください」
医者「それにしてもこんな立派な教会で式を挙げられるとは思いませんでした。本当に感謝しています」
兵士長「気にすることぁない。あんただってこの国の英雄みたいなもんだしよ」
医者「そんな。私なんて勇者様に比べれば……。そういえば、勇者様はご出席されていないようですが……」
姫「あいつならデートだ。今日はこれないって言ってた」
村娘「デート? ついに特定の女性が?」
兵士長「いや相手は男だ」
医者「え!?」
シスター「勘違いしないでください!! ほら、あの傭兵のかたですよ。任務らしくて」
医者「あ、あぁ。なるほど。驚きました」
姫「でも、あいつデートって言ってたぞ? 違うのか?」
兵士長「違うんじゃねぇの?」
姫「そっか」
医者「そうですか。この挙式も勇者様のご提案ということだったので、是非とも来て頂きたかったのですが」
兵士長「ま、あのバカにとっては幸運だったかもなぁ」
村娘「どういうことですか?」
兵士長「なんでもない。それよりも花嫁さん。そのブーケはどうすんだ? いつまでも持ってるつもりか?」
村娘「あ、そうだ。投げないと」
姫「ガルルルル……」
村娘「え? な、なに? ほ、欲しいの?」
姫「あいっ!」
村娘「うーん。でも、勇者様の妹さんに渡したほうが年齢的にもあっているような……」
姫「くーれっ! くーれっ!」
村娘「うーん……」
シスター「あ、遠慮なく投げてください。きっと誰もひめ……いえ、この子には敵いませんから」
村娘「それなら……。――そーれっ」
姫「ガァァウ!!!」パシッ
村娘「す、すごい……」
姫「とったー! とったー! やったー!」
兵士長「おーぅ。すげえなぁ」
姫「ん? これ、本物の花じゃないんだな」
村娘「造花なの。しばらくは飾っておけるからいいかなって」
姫「そっか! なるほどな! 私の結婚するときはこれ投げるぞ。で、お前に渡してやるからな」
シスター「あ、ありがとう……。私のほうが後なんだ……」
姫「これで結婚できるぞ! わーいっ」
医者「……彼女、元気そうで良かったです」
兵士長「初潮はまだみたいだけどな。でも、身長は少し伸びた」
医者「なら、心配はありませんね。それにしても……」
姫「ブーケは冠にするとすごい効果出たりするんだろ?」
シスター「そういう使い方はないですよ」
姫「恋愛マニュアルにはそう書いてたぞ」
シスター「いい加減、それは信じないほうが……」
医者「見違えましたね。身嗜みを整えるだけであんなにも可憐になるとは」
兵士長「だろぉ? すんげー美人になるはずだ」
医者「あの、彼女は今どこで生活をしているのですか?」
兵士長「ん? あ、あぁ。孤児院みたいなところで元気に生活してるよ。で、俺や馬鹿野郎がたまに面倒見てる」
医者「なるほど。大変ですね。まだ王座も空席のままですし国自体が不安定な状態でしょう?」
兵士長「国王代理は大臣らが必死にやってるから問題ねえよ」
医者「ですが、噂は耳にしていますよ。なんでも前国王陛下には隠し子がいたとか。その子が次の陛下になられるのでは?」
兵士長「ノーコメントだ」
医者「すみません。このようなことを一平民が聞いてはいけませんよね」
兵士長「それより魔法の馬車が待ってるぞ。はやくいってやれよ」
医者「そうします」
村娘「あなたー。はやくー」
医者「今行く! みなさん、本当にありがとうございました!!」
村娘「このご恩は決して忘れません!!」
兵士長「忘れていいぞ。毎度結婚記念日に恩返しされたら号泣する奴もいるからな」
シスター「お幸せにー」
姫「ブーケありがとうございます! 後生大事にしますわ!!」
村娘「うん!!」
医者「このお礼は後日必ず!」
兵士長「おーぅ」
村娘「勇者様にもよろしくお伝えください!!」
シスター「わかりましたー!」
兵士長「伝えた日は自棄酒だな。また付き合ってやるかぁ」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
きたあああああああああああああああああああああああああああ
>>1超絶期待
姫「わーいっ。わーいっ。結婚だっ、結婚だー」
兵士長「姫様。帰りますよ」
姫「あい!」
兵士長「違うでしょう」
姫「あい! あぅ、はいっ!」
兵士長「そうそう、それそれ。んじゃ、またな」
シスター「はい。兄さんが帰ってきたらまた顔を出すように言ってください。最近、お墓参りにもあまり来ていないみたいで」
兵士長「色々忙しいからな。任務もあれば姫様のお世話もあるし」
姫「ブーケ、ブーケ」
シスター「……そうですか。元気ならいいんですけど」
兵士長「ナンパにいけねーって嘆いている間は大丈夫だ。心配しなくても死にはしねーよ」
シスター「はい。私もそう思います」
兵士長「ま、こっちも考えがないわけじゃないけどな」
シスター「考えですか?」
姫「おーい。帰らないのかー?」
広場
兵士長「城に戻ったあとは、いつものように自習でもしておいてくださいよ」
姫「わかってるぅ……。お?」
「わーい!!」
「まてまてー」
姫「……」
兵士長「きいてんのか?」
姫「あ、すまん。なんだって?」
兵士長「……悪いが、姫にはもう少し窮屈な生活をしてもらうぞ?」
姫「分かってる。魔女が母親じゃ、女王になれないもんな」
兵士長「裁判の片がつくまでは待っていてくれ」
姫「別にいいって言ってるだろ。私にはゆーしゃがいるしな!」
兵士長「大事なパパだもんな」
姫「そうだ! パパだ! でも、あいつ最近パパって呼ぶなってうるさいんだ。嫌なのか?」
兵士長「嫌なんじゃねえの? よくわかんねえけど」
城内 姫の自室
姫「ねむいなぁ……」
姫「でも、サボったら怒られるしなぁ……」
兵士『姫様! 勇者殿が戻られました!』
姫「なに!? よし!! 呼べぃ!!」
勇者「もう来てるよ。バァーカ」ガチャ
姫「わぁぁー」テテテッ
勇者「よぉ。姫様」
姫「おかえりっ!」ギュッ
兵士「では、勇者殿。後ほど」
勇者「任務の報告は相棒に任せてるんで、よろしくっす」
兵士「はっ!」
姫「今日も勉強おしえてくれるんだろ?」
勇者「おいおい。その口の利き方はなんだぁ?」
姫「えーと……。本日もお勉強いたしますでしょう? おしえてくださいな!」
勇者「今日は歴史だったか……」
姫「なぁーなぁー。任務はどんなだったんだ? 姫にも報告義務があるんだろ? おしえろ」
勇者「誰から聞いたんだよ。まぁ、いいけど。北にある村が盗賊だかなんだかの被害にあってるから助けてくれっていわれて行ったんだ」
姫「大変だったか?」
勇者「相手の人数も結構いたからなぁ。骨は折れたけど、ボッコボコにしてやった」
姫「さすがだな!」
勇者「だろ?」
姫「かっこいいぞ!」
勇者「もっと言って」
姫「サイコーだぞ、ゆうしゃ! お前は世界一かっこいいぞ!!」
勇者「アーッハッハッハッハッハ!!! そうだろう! そうだろう!! なんせ俺はこの国、いや、世界を一度救った勇者だからなぁー!!! フフハハハハ!!!!」
姫「そんなお前がすきー」ギュゥゥ
勇者「……虚しい」
姫「えへへー」スリスリ
勇者「死ぬ思いをしてもこんなガキにしか褒めて貰えないなんて……!! おらぁ! さっさとこの空欄うめろやぁ、姫さまぁ!!」
謁見の間
戦士「――報告は以上よぉん」
兵士長「こんなに被害が出てたのか。村人の陳情がなけれりゃあ、村も終わってたな」
戦士「さっきも言ったけど、死者はかなり出ちゃってもの。あの村はこれからが大変かもねぇ」
兵士長「それはこの国もだけどな」
戦士「治安の悪化は避けられないわよぉ。気にしちゃ、ダーメっ」
兵士長「そうも言ってられねえよ。盗賊による被害はこの村だけじゃねえんだ」
戦士「えぇー。まだあるのぉ? あたし、こまっちゃうぅ。もっとお給料だしてぇん」
兵士長「傭兵なんだから、働けば出してやるよ。んなことより、そろそろ正規の兵になってくれねえか? 給料とか面倒なんだぜ?」
戦士「いいの。あたしは自由を愛する女だから」
兵士長「立派な男にしかみえねえがな」
戦士「プンプン! 心は乙女なの!」
兵士長「はいはい。おつかれさん。今回の報酬はあとで出してやるから」
戦士「うふふ。ありがと。さーて、勇者様にあいにいこーっと」
兵士長「あいつはまだ姫様とお勉強中だ。邪魔はしてやんなよ」
姫の自室
勇者「で、この計算はぁー」
姫「あぅ……あぅ……おぅ……」ウトウト
勇者「おい」グイッ
姫「おぅう!? なんですの!?」
勇者「寝るな」
姫「あい」
勇者「てめーの為なんだぞ。わかってんのかぁ?」
姫「分かってますぅ」
勇者「この時間がなけりゃあ、俺はもっと休めるし、ナンパにだっていけるんだ。その貴重な時間を割いて、お前の勉強に付き合ってんだ! わかる!?」
姫「わかるっ!」
勇者「よし、この問題の答えは!?」
姫「わからんっ!!」
勇者「だぁー!! もう寝る!! こっちは連日の任務で疲れてんだ!!」
姫「わかった! 一緒に寝ましょう!!」
通路
兵士長「すっ……ぱぁー……」
兵士「巡回終了しました。異常はありません」
兵士長「ごくろうさん。勇者様はどうした?」
兵士「さぁ、まだ姫様の部屋からは出てきていませんが」
兵士長「そうかい。あんがとよ」
兵士長(いつまで勉強会やってんだか。こっちだって話たいこともあるのによぉ)
兵士長「いってみっか……」
兵士長(まさかとは思うが……。流石にあの姫に手を出すことはないと思うが……)
兵士長「おーい。いるかぁー?」コンコン
兵士長「……反応ねえなぁ」
兵士長「はいるぞー」ガチャ
勇者「すかー……すかー……」
姫「すぅ……すぅ……」ギュッ
兵士長(……明日にするか。おつかれさん)
翌日 中庭
姫「このブーケさえあれば結婚できるんだ。すごいだろ?」
勇者「へぇー。すごいなぁー」
姫「な?」
勇者「そうだな」
兵士長「よーぅ。勇者様、デート中すまねえなぁ」
勇者「やめてくださいよ。デートじゃなくてお守りです」
姫「デートだろ」
兵士長「照れるなよ。昨日は一晩一緒のベッドで寝てたくせに」
姫「えへへ……。やってしまいましたわ」
勇者「冗談はいいっすよ。なんすか?」
姫「冗談か?」
兵士長「ああ。また被害報告があった。最近、この国は荒れてるみたいだな」
勇者「魔女と王が国を支配しようとしていたってことは衝撃すぎるっすからね。国民が不安になるのも無理ないっす」
姫「むぅ……」
兵士長「それと盗賊の増加が関係しているかはわかんねえけどな」
勇者「それしかないっすよぉ。それ以外に何があるんすかぁー」
兵士長「姫の前でそういうことは言うなよ。あと、城の外ではな」
勇者「はいはい。わかってまぁーす」
兵士長「ああ、あと裁判の件だが」
勇者「そろそろ終わってもいいんじゃないっすか?」
兵士長「そう簡単にいくかよ。だが、まぁ、結果は分かりきってるがな」
勇者「……なぁ?」
姫「いい」
勇者「気持ちは分かるけど、一応親なんだから、顔ぐらいは見ておいたほうがよくないか?」
姫「いいって言ってるだろ。しつこい男は嫌われるぞ。恋愛マニュアルにかいてた」
勇者「ま、お前がそういうならいいけど」
兵士長「ところで、また出張頼めるか?」
勇者「盗賊退治っすかぁ? もう勘弁してくださいよぉ。一個小隊動かせばいいじゃないっすか」
兵士長「動かしても間に合わねえから勇者のお前にいってんだろ。頼むよ、勇者様」
嫁と言うか兄妹だろうな、どっちかというと
勇者「ちぃーっす」
兵士長「わりぃな」
勇者「こんだけがんばってんだから、可愛い女の子の1人や2人、寄って来てもいいと思うんすけどぉ?」
姫「……」グイッグイッ
勇者「なんだよ?」
姫「ここ。ここ」
勇者「あー、はいはい。そうだな。可愛いなー、お前は」
姫「もっと言って」
勇者「やなこった」
姫「ガァァウ!!!」ガブッ
勇者「鬱陶しいなぁ」
兵士長「わぁーったよ。今日一日は休みにしてやる」
勇者「マジっすか!? 先輩だけは俺を裏切らないっすぅー」
兵士長「当たり前よ。いつだって俺はお前の味方だからなぁ」
勇者「せんぱぁい。俺、一生先輩についていくっすからぁ!! やっほー!! 久々のナンパだぁー!!! イッヤフゥゥゥ!!!」
城下町
姫「どこいく!?」
勇者「早速、騙された……。先輩め……。結局、俺にガキのお守りを押し付けやがってぇぇぇ……!!!」
姫「なぁーなぁー」
勇者「なぁーにが、姫にも町を見せてやれーだ。んなもん、窓から見てればいいだろーがよぉ」
姫「なぁー。どこに行くんだぁー?」
勇者「俺はナンパに行きたい」
姫「どうぞ」
勇者「ぶっころすぞぉ?」
女性「ランララーン」
勇者「あぁ。ちょー美人がいるぅ……」
姫「ナンパしないのか?」
勇者「お前はしな――」
女性「チョット、いいデスか?」
勇者「え? 逆ナン!? ――はい。勿論っ」キリリッ
姫「むぅー」
女性「アノ城へ、行きタイのですが、この道デあってますカ?」
勇者「よければご案内しますよ」
女性「ワオ。ホントデスか? それは――」
姫「ガルルル……」
女性「どうやら、私はオジャマみたいデスね」
勇者「あ、いや……」
女性「バーイ」
勇者「あぁぁ……!! まってぇぇぇ……!!」
姫「ベーッ」
勇者「この!! 折角の美人がいっちまっただろぉ!?」
姫「なんだぁ? 私はナンパしないのに、あんな美人をナンパするとか恥ずかしくないのか!?」
勇者「恥ずかしくないね!」
姫「ほら、早くどっかつれてけ!」
勇者「はぁ……。ほら、こっちこい。迷子になっても探してやらねーからな。しっかりついてこいよ」
広場
勇者「あーあ。この町も捨てたもんじゃないのになぁ。あんな美人がいるぐらいなんだからよぉ」
姫「……」
「今日は何してあそぶ?」
「うーんとね……」
姫「……」
勇者「それもこれもお前みたいなのが腰巾着みたいにくっついてるから……。って、おい」
姫「あ、すまん。なんだ?」
勇者「なんだよ。あのガキを見てたのか。初恋ですかぁ?」
姫「違う。それに初恋はもうとっくに始まってる」
勇者「へぇー。そうかそうか」
姫「なにしてるんだ。女の子を退屈にさせるとダメだって書いてたぞ」
勇者「お前は恋愛マニュアルからの受け売りばっかりだな」
姫「お前もだろ」
勇者「……そうだけどよ。あぁーあ。久しぶりに墓参りにでもいくかぁ」
墓地
勇者「親父。久しぶりだな。今頃はとっくにあの世でハーレム作ってんだろ? 作るコツ教えてから死んでくれよ」
姫「どうも。お義父様。不束者ですががんばりますわ」
勇者「なに言ってんだ」ペシッ
姫「いてっ」
シスター「兄さん!」
勇者「お。元気だったか?」
シスター「うん。最近、会えなかったから心配してたんだよ?」
勇者「忙しくてナンパにもいけないんだよ。どう思う?」
シスター「ナンパはしなくてもいいと思うけど……」
姫「こんにちはっ」
シスター「どうも、姫様。あっ……」
勇者「いいよ。誰もいないし」
シスター「う、うん。それより兄さん、今姫様を叩いたでしょ? ダメじゃない」
勇者「いいんだよ。俺がこいつになにしよーが。噛み付かれるだけだし」
姫「ガァァァウ」ガブッ
勇者「こうしてる限り、誰も姫様だなんて気づかないだろうしな」
シスター「そ、そうかもしれないけど……」
勇者「あ、ちょっと。頼みたいことがあるんだけどさ」
シスター「なに? 何でも言ってね」
勇者「新人のシスターとか入ってこないの? きたら一報くれ」
シスター「兄さん!」
勇者「いいだろぉ。たのむってぇ。また今度、遠征なんだぜぇ? なぁ?」
シスター「また? 兄さん、体のほうは大丈夫なの?」
勇者「いやぁ、もうボロボロさぁ。このままだとヤバいな。死ぬかもしれない。筋肉痛で」
シスター「マッサージならしてあげられるけど」
姫「私がする」
シスター「あ、そうですね。そのほうがいいですよ」
勇者「おらぁ! でしゃばんなぁ!!」
姫「ここか? ここがいいのか?」モミモミ
勇者「もういい。くすぐったいだけだ」
姫「あぅ」
シスター「相変わらず仲が良いみたいで安心した」
勇者「こんなガキと仲良くなっても仕方ないけどなぁ」
姫「私は仲良くできて嬉しいぞ」
シスター「よかったね、兄さん」
勇者「お前が……妹じゃなければ……よかったのに……」
シスター「ご、ごめんなさい」
姫「私は妹じゃないぞ」
勇者「おう。そうだな」
シスター「あはは……」
勇者「あぁ、そうだ。もう一つ頼みたいことがあるんだけどさ」
シスター「なに? 私、友達は少ないから紹介とかはできないよ?」
勇者「違う。って、友達少ないのか? そうか……元気だせよ?」
シスター「同情しないで。それで、頼みたいことって?」
教会
神父「なるほど……。そのようなことを……」
勇者「まぁ、できなきゃできないでいいんですけど」
神父「しかし、勇者様。いいのですか? 姫様はまだ国民には知られてはいけないはず。そんなことをされては……」
勇者「機嫌取りも俺の仕事なんすよ」
神父「そうですか。勇者様がそこまで仰るのでしたら私も協力いたします」
勇者「どうも。すんません」
姫「なんの話してるんだ?」
シスター「えっと。姫様のこと、兄さんはとても気にしているみたいですよ」
姫「そんなの当然だ。相思相愛だからな」
シスター「そうですね。羨ましいです」
姫「ブーケはちゃんとお前に渡してやるから、安心しろ」
シスター「そのときが楽しみです」
勇者「おーい、かえるぞ」
姫「あいっ」
城内 通路
姫「割と楽しかったぞ。また誘ってくださいな」
勇者「はいはい。さっさと部屋に行け」
姫「あいっ」テテテッ
勇者「……」
戦士「ゆ、う、しゃ、さ、まぁぁん」
勇者「おぉぅ!? なんすか!?」
戦士「次、あたしとデートしてくれるのぉん?」
勇者「誰がそんな話をしたんすか!?」
戦士「いけずぅ。貴方のために命がけで働いてるんだからぁ、ご褒美があってもいいでしょ?」
勇者「それなりの金は渡してるはずっす!!」
戦士「肉体のケアもほしーのぉーん!!」
勇者「こっちは今から色々とあるんすよ!! さよなら!!」
戦士「まってぇーん!! 今日こそはあたしの初めてうけとってぇん!!」
勇者「気持ち悪いこというなぁー!!」
夜 中庭
姫「おーい」
狼「ガウっ」タタタッ
姫「ほら、ごはんだぞ。食べろ」
狼「ガウッ!」
姫「みんな、元気にしてるかな?」
狼「クゥーン……」
姫「してるよな。あいつら、私なんかより強いもんな」
狼「ガウッ」
兵士長「……姫様」
姫「なんだ?」
兵士長「何度も言ってますが夜は出歩かないようにお願いします。そいつにも俺が責任もってエサやってるんで」
姫「すまん。でも……その……」
兵士長「なんですか?」
姫「なんでもない。部屋に戻る。おやすみなさいませ!」
狼「グルルルル……!!!」
兵士長「怒るなよ。これも仕事なんだから」
狼「……」タタタッ
兵士長「すっ……ぱぁー……。全然、俺には懐いてくれねえなぁ」
勇者「先輩。準備できたっす。明朝には出発するんで」
兵士長「そうか。悪いな」
勇者「いえ。それが勇者っすから。もう結婚とか諦めましたし」
兵士長「諦めんなよ。……お前が出してくれた計画書。こっちでやっとくから」
勇者「多分、バレることはないとおもうんすけどね」
兵士長「やっぱり、姫の町見学はお前に任せてよかったぜ」
勇者「どーせ、先輩も似たようなこと考えてたくせに」
兵士長「そういうなって。お前が考えたってのが大事なんだ。これから姫様の機嫌は斜めになっちまうからな」
勇者「俺が任務のためにここを離れるからっすか? もうそろそろ我侭は言わないようにシメたほうがいいっすね」
兵士長「ちげーよ。姫様の教育係が決まったんだ。いつまでもお前に全てを任せられないからな」
勇者「マジっすかぁ!? やったぁぁぁ!!! これで俺も自由だぁぁぁぁ!!!!」
兵士長「だからな……」
勇者「ナンパ! ナンパ!! これで可愛い嫁さんもゲットできる!! ウッホホーイ!!」
兵士長「話を聞け」
勇者「先輩!! 俺のためにそこまで気を遣ってもらっちゃって!! あざーすっ!」
兵士長「腹立つな……。まぁ、そういうわけだから。お前は何も心配するな」
勇者「いやぁー。そうすっよね。俺、働きすぎっすもんね。まぁ、当然かぁー。あははは」
兵士長「それじゃ」
勇者「先輩」
兵士長「な、なんだよ?」
勇者「姫様の教育係ってどんな人なんですか?」
兵士長「……おめーには関係ねえだろ?」
勇者「はぁ? 俺の後釜っすよ? どこの馬の骨とも分からない奴にまかせられないっすけどぉ?」
兵士長「やっぱり、気になるか?」
勇者「なるっす」
兵士長「……これが顔写真だ」ペラッ
勇者「こ、これはぁ……!!!」
兵士長「とんでもない美人だろ? 若いのに色んな国で先生をしているらしくてな。隣国では王子の教育係でもあったそうなんだよ」
勇者「今日町で見かけた……超絶美人さん……!!!」
兵士長「言葉は拙いがまぁ通じないほどじゃないし、教養もどこぞの馬鹿とは比べ物にならねえ」
勇者「年上かぁ。うんうん。でも、そんなの関係ない!」
兵士長「俺の話きいてるかぁ?」
勇者「先輩。俺、分かっちゃったっす。この人と結ばれる運命にあるんするよ」
兵士長「まーった始まった……」
勇者「明日の出発は少し遅れますんで」
兵士長「おいおい。何言ってんだよ。困ってる人がお前の到着を待ってんだぞ?」
勇者「この先生に挨拶してからでもいいじゃないっすかぁ!! どうせ朝にくるんでしょう!?」
兵士長「ま、まぁ……そうだけどよぉ……」
勇者「よっしゃぁぁ!!! 共通の生徒を持ち、芽生える愛。異国の彼女も俺の魅力にうっとりっすね」
勇者「明日は何きよーかなぁー」
兵士長「ああいうところは糞親父によく似てやがるなぁ……」
姫の自室
姫「……」ペラッ
姫「年上にはパパよりもチューのほうがいいみたいだけど……」
姫「……流石にそれは恥ずかしいな」
勇者『おーい。起きてるかぁ』
姫「あい」
勇者「何してんだ、早く寝ろよ」
姫「これ、読んでた」
勇者「いい加減、返してくれないか? それがないと俺が困るんだけど」
姫「やだっ。まだ読んでる」
勇者「まぁ、いいけど。それより、お前には話しておきたいことがあるんだけどよ」
姫「なんだ? 結婚の日取りか?」
勇者「明日から俺が任務で出かけるのは知ってるな?」
姫「私も連れて行ってくれるのか?」
勇者「こういうことは度々あるから、俺はお前の勉強を満足に見てやれないだろ? だから、お前には専属の教育係がつくことになった。よかったな」
姫「そうか。わかった」
勇者「……あれ? いいのか?」
姫「なんだ? よくないのか?」
勇者「いや、ごねるかなって思ったんだけどな」
姫「私はそんなに子どもじゃないぞ。何せ、姫だからな」
勇者「おう。良いじゃないか。ようやく姫様らしくなってきたんだな」
姫「当然だ」
勇者「んじゃ、また明日な」
姫「あ、おい」
勇者「どうした?」
姫「ちゃんと帰ってこいよ」
勇者「帰ってくるに……きまってんだろぉ……にゅふふふふ……」
姫「どうした? キモいぞ」
勇者「うるせぇ。ガキにこの崇高なデスティニーは理解できねえよ。おやすみ」
姫「あい。おやすみ」
中庭
姫「……」キョロキョロ
姫「おーい」
狼「ガウッ」タタタッ
姫「しーっ。静かに」
狼「クゥーン」
姫「聞いてくれ。今日はな――」
兵士長「またか……」
勇者「先輩。なにしてんすか?」
兵士長「仕事だよ。お前こそさっさと寝ろよ。起きれなくなっちまうぞ?」
勇者「子どもじゃないんすから」
兵士長「何か用か?」
勇者「いやぁ、星がきれいっすよね」
兵士長「……野郎と見たって感動はしねえなぁ」
勇者「まぁまぁ、そう言わなくでくださいよ。偶にはいいじゃないっすかぁ」
前スレ好きだったから超期待してる
翌日 城門
門兵「……む?」
教師「ハーイ。通してモラいマスね」
門兵「話は伺っています。どうぞ」
教師「ドモドモ」
門兵(美人だな……)
教師「ウフフ、ナニか?」
門兵「い、いえ!! 申し訳ありません!!」
教師「ソウですか?」
勇者「オー!! オマーチシテオリマシタデース!!!」
教師「あら、アナタは……」
勇者「さぁさぁ、こちらへどうぞ、マドモアゼル」
教師「アリガトウ。優しいンデスね」
勇者「貴方のような美しい人には優しくしろと父親から厳しく言われているんですよ」
教師「素敵なパパさんデスね。だから、アナタのような紳士が生まれタノデスね、きっと」
城内 通路
勇者「なるほど。あの国でも教育係をしていたのですか」
教師「ハイ。色々アリマシテ、辞めたのデスが」
勇者「王子に求婚されたとか?」
教師「そういうスキャンダルに関わるような話はダメデスよっ」
勇者「これは失礼」
勇者(うは!! かわいい!! 年上とはおもえん!!)
教師「ところでプリンセスは?」
勇者「あんな奴、どうでもいいじゃないですか。それよりも今度俺と食事とかどうですか?」
教師「アラ、どんなところへ連れてイッテくれるノデスか?」
勇者(乗ってきた!? よーし……ここはマニュアル通りに……)
勇者「夜け――」
教師「夜景が素敵なスウィートルームデスか?」
勇者「え?」
教師「それではダメデスね。ゴメンなさいっ」
姫(あいつ、もう行ったのか……。一言ぐらいあってもいいのに……)
勇者「待ってくださよぉ!!」
姫「お! わぁぁぁー」テテテッ
勇者「だったら、ほら、美味しい――」
教師「美味しいコーヒーが飲めるお店でお喋りデスか? それもイヤです」
勇者「な……」
姫「おい!」
勇者「おう。おはよう」
姫「おはよう。誰だ、こいつ」
勇者「誰って、お前の教育係だよ」
姫「こいつが?」
教師「ハーイ。プリンセス。ヨロシクお願いシマス」
姫「……」
教師「アノぉ。ワタシの顔に何かツイテますカ?」
姫「よろしくな。あぅ……。よろしくお願いしますわ」
>>38
勇者「待ってくださよぉ!!」
↓
勇者「待ってくださいよぉ!!」
謁見の間
兵士長「挨拶は済んでるみたいですが、改めて……」
教師「本日からプリンセスの教育係を務める者デス。ヨロシクオネガイします」
勇者「ヨロシクー!!」
兵士長「てめぇはさっさと出発しろっつーの」
勇者「するっすよ!! でも、ちょっとぐらいいいじゃないっすかぁ!!」
兵士長「おまえなぁ」
勇者「あの、俺が任務から戻ってきたら雰囲気の――」
教師「雰囲気のいいBARで一杯デスか。イヤ、です」
勇者「ほぉぉぉ……!!」
兵士長「なにやってんだよ、てめえは」
姫「……」
教師「プリンセス。コレから暫くノ間デスが、仲良くシテくださいネ」
姫「いいですけど、勇者様のことをあまりイジメないように。怒りますわよっ」
教師「オーケー。気をツケマスっ。ウフフ」
勇者「よ、よし!! お姉様、だったら、その星――」
教師「星を見ながらお話したって、ワタシは落とせマセンよっ」
勇者「がっ……」
教師「ワタシ、チェリー坊やはオコトワリしてマスので。ゴメンねっ」
勇者「……」
兵士長(トドメだな)
勇者「うわぁぁぁぁ!!!!」
姫「おぉ! 久々っ」
勇者「隊長!! わたくし、任務で殉じてきます!!」
兵士長「いい心がけだな。よろしく頼むぞ」
勇者「うわぁぁぁぁ!!!!」ダダダダッ
教師「アラ。ちょっと強く言い過ぎたデスか?」
兵士長「いやぁ。アイツにはあれぐらいでいいですよ、先生」
『ふざけんなぁー!! 異国の女なんてクソばっかりだー!!! 体臭がくせーんだよぉ!!!!』
兵士長「おー。負け犬が吠えてらぁ」
>>41
勇者「隊長!! わたくし、任務で殉じてきます!!」
↓
勇者「隊長!! わたくし、任務に殉じてきます!!」
教師「それはそうと光栄デス。ワタシにこんな仕事をアタエテくれるなんて」
兵士長「先生の噂は予てから聞いてたんでね。来てくれて嬉しい限りだ」
教師「一応、引退していたツモリなんですケドね。事情が事情ダケにお受けするコトにシマシタ。姫様を1日でも早く立派なクイーンにしなければ大変デスし」
兵士長「ありがてぇ話だ。それでは、先生。姫様のことは何卒内密に」
教師「気になっていたコトデスが。何故、存在を隠すのデスか?」
兵士長「まぁ、色々あるんだよ。政治ってやつだ」
教師「ソウデスカ。分かりました。詮索はシマせん」
兵士長「助かる。姫様、先生の言うことはよく聞くようにな」
姫「あい」
兵士長「こーら」
姫「はい!」
兵士長「先生、言葉遣いのほうもお願いしてもいいかい?」
教師「ハイ。勿論デス」
姫「……」
教師「デハ、行きましょうカ。プリンセス?」
姫の自室
教師「ココがプリンセスのお部屋デスかー。素晴らしいデスねー。可愛いデハありませんカ」
姫「どうも、ありがとうございますわ」
教師「プリンセス? ええと……ありがとうございます、でイイデスよ」
姫「あ、ありがとうございます」
教師「ハイ。ヨクデキマシター」ナデナデ
姫「やめろ!」バッ
教師「アラ? 撫でられるのはお嫌いデシたか?」
姫「馴れ馴れしいぞ、お前。私は姫だぞ。失敬だ」
教師「色々と教育のし甲斐がありそうデスね」
姫「ガルルルル……」
教師「そんなに警戒シナイでクダサイ」
姫「お前、変な奴だ」
教師「言葉がちょっと変なのは許してクダサイね」
姫「お前、大丈夫か? 先生できるのか?」
教師「できますヨ。これでも実績はアリマスから」
姫「ホントか……?」
教師「アラ……。これは」ペラッ
姫「あー!? 触るな!! それは私の教科書なんだー!!」
教師「プリンセス、これはオススメできまセン。即、ポイしてください」
姫「なんだと!?」
教師「これ、テキトーなことしか書いてないデスから」
姫「嘘なのか!?」
教師「ウソというか、ソウデスねー……。これを実践シテモ、成功する確率はトッテモ低いデスね」
姫「そうなのか!?」
教師「……よければ、ワタシが教えてあげても、イイデスよ?」
姫「な、なにをだ……?」
教師「女の武器ってヤツデスよ……」
姫「おぉぉ……」
教師「ウフフフ……。プリンセス、手取り足取り、オトコの落とし方ヲ、教えてアゲマスよ……コッチにオイデ……」
中庭
兵士長「エサだぞー。……ここに置いとくからなぁ」
兵士長「ちぃーっとも近づいてきやしねえ」
兵士長「狼のエサやりなんて、俺の仕事じゃねえよなぁ」
兵士長「すっ……ぱぁー……。今頃、アイツはどうしてるかな……」
戦士「んもぉ。勇者様、どこぉー?」
兵士長「アイツならもう行っちまったぞ」
戦士「えー!? なんでぇー!? あたしに一言もないのぉ」
兵士長「この前の任務で何かしたんじゃねえのか?」
戦士「何もしてないわよ。ちょっと寝込みを襲おうとしただけよぉん」
兵士長「可哀相に」
戦士「お姫様はどうしてるの?」
兵士長「今はお勉強中だ。それより暇ならちょっと付き合ってくれ」
戦士「……いいけど。体を許すつもりないから」
兵士長「こっちから願い下げだ」
夕方 通路
兵士「見たか、姫様の教育係」
門兵「見たよ。すげー美人だった」
兵士「魔女もかなりなもんだったけど、あの先生もかなりなもんだよな」
門兵「ああ。早速勇者殿がアタックしてたけど、玉砕したみたいだぜ。今朝、叫んでるのみたって」
兵士「勇者殿はもう少し落ち着かないとなぁ」
門兵「そうだよなぁ」
姫「わぁぁぁー!!!」テテテッ
兵士「な、なんだ!?」
門兵「姫様!? どうしたのですか!?」
姫「あぅ……あぅ……」
教師「プリンセス。ダメですヨ。逃げたら、オシエラレません」
姫「どっかいけー!! お前、嫌いだー!!!」
兵士「あ、あの、姫様になにをされたのですか?」
教師「ナニって言われても……。プリンセスがオトコの落とし方ヲ知りたがってイタノデ……色々と、ネ?」
姫「ひっ」ビクッ
兵士「な……!?」
門兵「お、お前!! 姫様になんてことを教えている!!」
教師「キスの方法トカなんですケドも」
姫「そんなの誰も頼んでないだろ!!」
兵士長「なーんの騒ぎだ」
兵士「隊長!! そ、それが……」
姫「お前からもなんとかいってくれ!! こいつ、おかしい!! 嫌い!!」
兵士長「先生。頼んどいてなんだけど、あまり変なことされるとこっちも考えなきゃいけないんだぜ?」
教師「それはゴメンなさい。ちょっとからかったダケですヨ」
兵士長「そうか?」
姫「あれがちょっとなのか? ふざけるな」
兵士長「姫様が完全に怯えちゃってるなぁ。頼むよ、先生。折角、アンタを探してきたんだから」
教師「ハーイ。ガンバリマース」
兵士長(本当に大丈夫か……?)
夜 中庭
姫「酷いだろ? 危うく初めてを奪われるところだったんだ」
狼「クゥーン」
姫「何かあったら、助けてくれ」ナデナデ
狼「ガウッ!!」
教師「……」
兵士長「よう。先生。夜の散歩は控えてください」
教師「……ゴメンなさい。星が綺麗ダッタので」
兵士長「拘束されても文句はいえねえぞ」
教師「分かってマス。前の仕事場もそんな感じデシたのデ」
兵士長「なら、いいけどよ」
教師「おやすみナサイ。オジサマ」
兵士長「おーぅ。お疲れ様、先生」
兵士長「……さてと」
兵士長「姫様ー。早く寝てくださいよぉー」
教師…全力顔パンしてぇ
姫「もうちょっとだけいいだろ?」
狼「グルルル……」
兵士長「はい、どうどう。姫、ここ最近毎晩のようにこうしてるな。そろそろ噂の一つも流れるぜ?」
姫「噂って?」
兵士長「姫様は狼と話せるんじゃないかとかよ」
姫「それぐらいなら構わん!」
兵士長「……魔女なんじゃないか、とかもな」
姫「……」
兵士長「城の連中全員が姫様だと認めてるわけじゃねえ。それは分かるよな? あれだけのことをした女の娘だ。信用されてなくて当たり前なんだ」
姫「分かってる。でも、平気だぞ」
兵士長「ほう?」
姫「私には勇者様がついてるからなっ」
兵士長「ハハッ。それもそうだな。でも、その勇者様は今はいねえ。大人しくしているべきだ」
姫「そうだな。そうする。おやすみっ」
兵士長「おやすみなさい、姫様。――早く戻ってきてやれよ、勇者様。姫様が待ってるぞ」
辺境の村
勇者「――賊は倒しました。安心してください」
「おぉ……勇者さまぁ……」
「ありがとうございます……」
「勇者さまがこの村を救ってくださったぞ」
「神様じゃ、勇者様はこの村の神様じゃ……」
勇者「では、俺はこれで――」
「お待ちになってください、勇者さまぁ」
「そうです。もう少しゆっくりしていってください」
勇者「いや、こんなご年配の熟女しかない村に用は……」
「お礼をたーっぷりさせてくださいなぁ」
勇者「で、ですから……」
「そうじゃ、それがええ。勇者様にはもっとお礼をしなければ」
「ささ、こっちにきてくだせぇ」
勇者(はやくかえりてぇぇぇぇ!!!! 誰かたすけてくれぇぇぇぇ!!!! こんな潤いのない場所、いやだぁぁぁぁ!!!!)
続編きた!
おつ!
なんでや!熟女美人おるかもしれんやろ!
この勇者最高だ乙
続編あったのか、期待
>>13
戦士「さっきも言ったけど、死者はかなり出ちゃってもの。あの村はこれからが大変かもねぇ」
↓
戦士「さっきも言ったけど、死者はかなり出ちゃってたもの。あの村はこれからが大変かもねぇ」
>>15
兵士長(いつまで勉強会やってんだか。こっちだって話たいこともあるのによぉ)
↓
兵士長(いつまで勉強会やってんだか。こっちだって話したいこともあるのによぉ)
>>47
兵士「魔女もかなりなもんだったけど、あの先生もかなりなもんだよな」
↓
兵士「魔女もかなりなもんだったけど、あの先生も負けちゃいねえな」
城内 姫の自室
姫「ガルルル……!!」
教師「もういつにナッタらワタシのことを信じてクレるんデスカ? あの日ノことはミズに流してクダサイ」
姫「流すかどうか判断するのは私だ」
教師「そんな意地悪ナことイワナイで、プリンセスっ」
姫「いいからお前は少し離れた位置から勉強を教えろ」
教師「ハイハイ。ワカリマシタ」
姫「勇者様が戻ってきたら怒ってもらいますわよ!」
教師「……」
兵士『姫様!! ご勉学のところ申し訳ありません!! 隊長が至急来て欲しいと言っています!!』
姫「望むところだ。今すぐ行くっ」
教師「プリンセス。勉強はどうするノデスか?」
姫「中止だ。中止」
教師「仕方アリマセンね。でも、ワタシも同伴サセテくださいね」
姫「なんでだ?」
謁見の間
兵士長「すっぱぁー……。お、来ましたか」
姫「ここは禁煙だぞ。用件はなんだ?」
教師「ノンノン。プリンセス?」
姫「……用件はなんでございましょう?」
兵士長「姫様。実はこういう催しを勇者殿が考えてくれまして」
姫「んー? 教会でお遊戯会?」
兵士長「庶民の子どもと触れ合うのも、次期女王陛下としては有益なことではないと」
姫「あいつがこんなことを考えてくれてたのか? ホントに?」
兵士長「どうして疑うんですか? 勇者殿は姫様のことを第一に考えておられるのですよ」
姫「……まぁ、そうだろうな。私はあいつの嫁だし」
教師「プリンセスの存在はシークレットのハズでは?」
兵士長「勿論、姫様であることは秘密にした上だ。町の子どもはただ教会で遊ぶだけ。そこに見知らぬ女の子が混ざるだけの話さ。問題あるかい、先生?」
教師「アリマセンね。寧ろ、それはプリンセスにとってもプラスになるハズです」
姫「そうかぁ……。やっぱりあいつはいい奴だな」
兵士長「てことは、姫様も賛成ってことでよろしいですね?」
姫「大賛成だ。というか、あいつが考えてくれたんだろ? やらないわけには行かない。男からのプレゼントは素直に喜べ、だからな」
兵士長「そらぁ、よかった。それじゃ第一回目は3日後にあるんで、そのつもりで」
姫「わかりましたわ」
教師「第一回? ということは二回目も三回目も考えているワケデスね?」
兵士長「一応な」
姫「それは凄いな!」
兵士長「ただ、続けるかどうかは第一回目次第だな。姫様が楽しくなければ意味がないですし」
姫「安心しろ。責任をもってたのしんでやる」
兵士長「心強いお言葉、感謝しますよ」
姫「この日のための服とかいるな」
教師「ウフフフ。それはワタシのオシゴト、デスネー?」
姫「な……!?」
教師「プリティーでキュートでエロティックなプリンセスにしてアゲますね? ウフフフフ……」
兵士長「エロティックは余計だぜ、先生?」
夜 中庭
姫(よーし。今日も報告を……)
「隊長。私は反対です」
「そういうなって。我らが勇者様のご提案なんだぜ?」
姫(なんだ……?)
兵士「もう少し様子を見るべきです。本当にあの魔女の娘が安全なのかどうかを見極めてからでも遅くはないはず」
兵士長「俺ぁ、何も問題ねえと思ってるけど?」
兵士「これは私個人だけではなく、複数名が感じていることです」
兵士長「わぁーってるよ」
兵士「それに万が一、あの魔女の娘だと分かれば本当に国が終わってしまう。ただでさえ、最近は治安が悪化の一途を辿っているというのに」
兵士長「だから俺たちや勇者自らが一つ一つ解決していってんだろ」
兵士「わかっていますが……」
兵士長「ほら、巡回の時間だろ。行け」
兵士「はっ」
姫「……」
翌日 城内 中庭
兵士「お! 勇者殿!!」
勇者「うぃーっす……」
兵士「予定よりも1日ほど戻られるのが遅かったですね」
勇者「色々あったんすよぉ。若さを吸われた気がするっすぅ」
兵士「はぁ……。今回も大変苦労されたのですね」
教師「アラ、勇者サマ。今、戻ってキタのデスか?」
勇者「おっ!! いや、貴方はもう俺の中では過去の女……。さよなら、マダム」
教師「今日の夜、一緒に食事でもどうデスカ?」
勇者「喜んで」キリッ
教師「嬉しいデス。ウフフフ」
勇者「では、いい店を予約しておきましょう」
教師「ええ、エスコートをお願いシマスね」
勇者「了解」
勇者(キター!! やっぱり俺の魅力は初日じゃ伝わらないんだな!!! 会えない期間こそ本物の愛を育むというものだ!!! フハーハハハハ!!!!)
通路
勇者「さーて、どの店にするか。知ってはいるけど行ったことのない店が多いんだよな」
姫「わぁぁー」テテテッ
勇者「よう。元気だったか?」
姫「あい。お前は?」
勇者「疲れたね。あー。とっても疲れた。賊に襲われているからって行ったものの、やっぱ田舎の村だ。若い女がいやしねえ」
姫「私ぐらい若い女はそうはいないからな」
勇者「お前は若すぎ。もう生気を奪われそうなご老体ばっかりでさぁ、気が滅入った滅入った」
姫「私が元気を分けてやってもいいぞ」ギュッ
勇者「でも、世の中はそこまで腐っていなかった。神は遂に俺に祝福の鐘を鳴らしてくれたようだ」
姫「結婚か?」
勇者「それはまだ早い。でも、そうなるかもな」
姫「おぉぉ!! だな! あのブーケ、使おうな!」
勇者「いいのか? なら遠慮なく使わせてもらうぜ。ナハハハハハ」
姫「もちろんですわー」
勇者「お前にしては景気のいい答えだな」ナデナデ
姫「えへへ」
兵士長「おーおー。戻って早々あっまい香り漂わしやがって。見てるこっちが恥ずかしくなる」
勇者「先輩。うーっす」
姫「うーっす」
兵士長「姫様。これから教会に行くんですから、そういう言葉遣いは控えてくださいよ」
姫「ふふーん。大丈夫ですわ。外面ぐらいはなんとかなりますわ」
兵士長「不安でしかたねえよ」
勇者「今日なんすか?」
兵士長「おう。お前も来るか?」
勇者「そうだなぁ……」
姫「お前は来なくていいぞ」
勇者「あぁん? なんだとぉ?」
姫「行きたくないって顔してる。そんな顔で来て欲しくないな」
勇者「言うじゃねえか。けーっ。頼まれたっていってやるかよぉ。誰がガキのお遊びに付き合うかってんだ」
姫「私はこれから着替えなきゃいけないんだ。またなっ」
勇者「さっさと行ってこい、腐れビッチが」
姫「ふんふふーん」
勇者「なんだよ。ちょっと見ない間に傲慢女みてーになってないっすか?」
兵士長「女は傲慢ぐらいが丁度いいんだよ。男を振舞わせない女になんの魅力があるんだ?」
勇者「先輩も嫁さんに振り回されてるっすか?」
兵士長「俺は結婚したときから尻に敷かれっぱなしだよ」
勇者「情けないっすねぇ」
兵士長「てめぇも気をつけねえといつかはそうなる。油断すんなよ」
勇者「まぁ、でも、あのお尻に敷かれるのは悪くないっすけどねぇ……ドゥフフフフ……」
兵士長「俺の嫁でおかしな想像はするなっつの」
勇者「ざーんねん。先輩の嫁さんじゃないっす。先生っすよ。先生」
兵士長「……なに? なんか約束でも取り付けたのか?」
勇者「今晩、デートに誘われちゃって。いやぁー。やっぱり、顔がよくて勇者っすからね、俺。いい女は黙ってないっすわ」
兵士長「ふぅーん……。あの先生がね……」
勇者「それじゃ、俺はこれから店とホテルの予約しなきゃいけないんで!!」
兵士長「ちょいまち」
勇者「んもー!? なんすかぁー!?」
兵士長「これに目を通しておけ」
勇者「……いやっす!」
兵士長「仕方ねえだろ。似たような陳情が大量に届いてるんだ。お前にも働いてもらわなきゃ手がまわりきらねえんだよ」
勇者「でもぉ……俺、今帰ってきたばっかりっすよ? しかも地獄だったんすから……」
兵士長「もう暫くは我慢してくれよ」
勇者「次はどこっすか……?」
兵士長「国境付近の町だな」
勇者「はぁー!? どこまで行かせる気っすかぁ!?」
兵士長「国境付近はいいぞー? いい女も出入りしてるからな」
勇者「……先生みたいな?」
兵士長「行くか?」
勇者「行くっ」
中庭
勇者(また同じだな。これも要するに盗賊だが夜盗に襲われているから助けてくださいってことだし……)
勇者(魔女の一件で治安が不安定になってるからってもいっても流石に多すぎる。俺のナンパの邪魔すんじゃねえよ、畜生共め)
狼「ガウッ」
勇者「うぃーっす。どうした、狼畜生。腹でも減ったかぁ?」
狼「ガウッ!!」
勇者「ほら。腐ったパンでも食ってろ」ポイッ
狼「ガウッ!!」パクッ
勇者「随分、犬っぽくなってきたな。野生の欠片もねえじゃん」
狼「……」タタタッ
勇者「腹壊して、死ね」
姫「おい。変なものを食べさせるなよ」
勇者「んー? あれ食って死ぬようなら俺がパン屋に文句言ってくる。――姫様はもう行かれるのですか?」
姫「はい。行ってきますわ」
勇者「お気をつけて。お土産よろしくおねがいしまぁーっす」
教会
兵士「では、姫様。私は外で待っていますので」
姫「う、うむ。くるしゅうないぞ」
兵士「はっ」
姫(少し、キンチョーするな)
姫「――えーい、ままよ!」バンッ!!
シスター「あ、姫様」
神父「どうも。姫様」
姫「……お前たちだけですか?」
シスター「はい。まだ誰も来ていないので」
神父「さ、こちらに座ってお待ちください」
姫「分かった」
シスター「まだ時間までは少しありますから」
姫「そうですわね。では、またせてもらいますわ」
シスター「何か飲み物でも如何ですか?」
神父「これはこちらに置いておきましょうか」
シスター「ええ。そうですね」
姫「……」
神父「あとは……」
シスター「手を拭くものも必要ですね。持ってきます」
姫「なぁ?」
神父「どうされましたか?」
姫「……いや、なんでもない」
神父「よくありませんよ?」
姫「え?」
神父「吐き出そうとする言葉は自分にとっては毒と同じ。それを飲み込もうとすることは体によくありません」
姫「そうなのか……」
神父「言ってみてください。私で力になれることがあればなんでもいたします」
姫「うー……。ホントに来るのか? このまま私一人ってことはないか?」
神父「心配はいりません。必ず来られますよ」
シスター「神父様、来ましたよ」
神父「ほら、噂をすればですね」
姫「おぉぉ……?」
少年「こんちわー!!」
母親「ほら、ご挨拶して」
少女「こんにちは」
シスター「はい。こんにちは。今日は来てくれてありがとうございます」
母親「いえ。神父様にはいつもお世話になっていますから」
姫「き、きたか……!!」
神父「みなさん。ようこそ。ご足労いただき感謝していますよ」
姫「……」
少年「あれ、見たことない子がいる」
姫「おっ」ビクッ
少女「だぁれ?」
姫「わ、私は……その……村はずれにすんでいる、ものですわ……」
少年「へー。こんなところまでわざわざ来たのか?」
姫「文句でもございまして?」
少年「そんなこと言ってないけど」
少女「よろしくね」
姫「よ、よろしく……ですわ……」
少女「あはは。変な喋り方ー」
姫「変か? 先生が変だから仕方ないんですわ。すまんですわ」
少女「あははは。おもしろいね」
母親「神父様、あの女の子は?」
神父「実は孤児の子で……」
母親「なるほど」
シスター「では、まずはお菓子でもどーぞ。あとから来る人もいるはずだから全部取らないようにしてください」
少年「やっりぃ。これが目当てだったんだよ」
少女「はい、どうぞ」
姫「あ、ありがとうございますわ」
>>71
神父「実は孤児の子で……」
↓
神父「実は孤児なんです……」
夕方 城門
勇者「まっててねーん。せんせいさぁ~ん!!」
兵士長「……よぉ」
勇者「あ、先輩。うぃーっす」
兵士長「今からデェトか?」
勇者「うっす。ちょっと、キマりすぎてません、このタキシード」キリッ
兵士長「蝶ネクタイが曲がってんぞ」
勇者「うっそ!? マジっすかぁ!? どれどれ?」
兵士長「そろそろ姫様が帰ってくる頃だが、待っててやんねえのか?」
勇者「今日は先輩に任せるっすよ。それじゃ」
兵士長「ふぅー……。あんなに女を見る目がねえ男も珍しいなぁ」
兵士「隊長!! ただいま戻りました!!」
兵士長「おう。ご苦労さん」
姫「……」
兵士長「姫様もおかえりなさい。どうでしたか?」
通路
兵士長「姫様? 何かあったんですか?」
姫「……」
兵士長「(おい、どうしたんだよ?)」
兵士「(分かりません。教会から出てきたらあの調子で)」
兵士長「姫様、何かお気に触るようなことでもあったんですか?」
兵士「それはないはず――
姫「……あった」
兵士「え!?」
兵士長「そらぁ、大変だぁ。どこのクソガキですか? 処刑してきますよ」
兵士「た、隊長!! 冗談でもそのような発言はしないでください!!」
兵士長「ハッハッハッハ」
姫「――遊ぶ時間、短いぞ!!!」
兵士長「へぇ?」
姫「もっと増やせ!!! やっとかくれんぼのコツを掴んだところで終わりなんて嫌だ!! 次はもっと長くしろ!! できればでいいけどな!!」
兵士「姫様……」
姫「ダメか!?」
兵士長「ハッハッハッハ。一考しときます」
姫「頼むぞ!」
兵士長「仰せのままに」
兵士「ふぅ……。びっくりした」
姫「で、あいつはどうした? 部屋で寝てるのか?」
兵士長「いやぁ、遊びにいってますよ」
姫「そうか。なら、私は部屋に戻るか」
兵士長「ゆっくり休んでください」
姫「あいっ」
兵士「楽しそうでしたね」
兵士長「やっぱり同年代と話してるほうが楽しいだろ」
兵士「言えていますね。では、自分は通常任務に戻ります」
兵士長「助かったぜ。また頼むかもしれねえけど、そのときはよろしくな」
レストラン
勇者『ふっ。君の美しさに完敗。乾杯じゃなくて負けるほうの完敗ですよ?』
教師『ウフフフ。面白い人デスね』
勇者『貴方を楽しませるために、俺は生まれてきたのですから』
教師『ヤダ……』
勇者『……好きだ。結婚してくれ』ギュッ
教師『ダイテっ!!』
勇者「――完璧だな。これで落ちない女はいないと恋愛マニュアルにも書いていた。いけるぞ……」
教師「ハーイ。オマタセしましたか?」
勇者「いえ。今来たところですから。それに貴方のことなら何時間でも、いえ何日でも待ちますよ」
教師「教科書通りに喋ってたのしいデスか?」
勇者「え?」
教師「乾杯するときに、君の美しさに完敗。乾杯じゃなくて負けるほうの完敗ですよ?なんて言いまセンヨね?」
勇者「ま、まさかぁ!! そんなセンスのないこと言うわけないじゃないですかぁ!! やだなぁー」
教師「それはヨカッタです。では、乾杯シマショウか。勇者サマ」
勇者「あぁ……。か、乾杯」
教師「ハイ。乾杯デス」
勇者「……」
教師「ふぅー。美味しいデスねー?」
勇者「そ、そうですね……」
勇者(何故だ……!! 何故、こっちの手札が全て筒抜けなんだ!? まさか、心が読める人なのか……!?)
教師「お肉だーい好きデース! はむっ! デリシャスぅ!」
勇者(ま、めちゃくちゃ美人だし、可愛いし、どうでもいいけどなぁ。このあとが大事なんだ。ホテルの部屋にいって……)
教師「勇者サマ?」
勇者「は、はい。なんでしょう?」
教師「……教え子のことで訊きたいことがあるのデスけど」
勇者「はぁ……?」
教師「あの子、何者なんデス?」
勇者「何者って、もう何日も一緒にいるんですからわかるでしょう?」
教師「城の中庭で狼と話しているのは知っていますケド、それ以外のことがさっぱりなんデス。教えてクダサイ。ね?」
勇者「……教えてもいいですけど、その代わり条件があります」
教師「ナンデスカ?」
勇者「このあとホテルに行きませんか?」
教師「それだけでイイのデスか?」
勇者「それだけって!? 分かっているんですか!? うら若き男と女がダブルベッドのある一室に入る!! そしてやることと言えば……!!!」
教師「ワタシも大人デス。わかって、い、ま、すデス」
勇者「ま、マジっすかぁ?」
教師「ハイ。モチロン」
勇者「――で、どんなことを知りたいんですか?」キリッ
教師「出生から話してくれると嬉しいデス」
勇者「そりゃ、愛し合った男女が生命の誕生に関わる作業を行ったからでしょう」
教師「ソウデスね。では、その男女トハ?」
勇者「それは……」
教師「ここで言いにくいのなら、ホテルでお話しても、イイデスよ?」
勇者「――わかりました。行きましょうか」キリリッ
ホテル スウィートルーム
教師「素敵な部屋デスねー」
勇者「夜景が綺麗でしょう?」
教師「ウフフフ。そうですね」
勇者「でも――」
教師「ワタシのほうが何倍も綺麗デスか? それはどうも」
勇者「うぐ……」
教師「では、聞かせてクダサイ。プリンセスのことを」
勇者「いや、その前に……」
教師「お風呂は話をきいてから――」
勇者「いや。そんなのどうでもいいですよ」
教師「ハイ?」
勇者「……」ガバッ
教師「な、なにを……!? お、犯すつもり!?」
勇者「姫のこと調べてなにするつもりだ、アンタ?」
教師「な……」
勇者「俺は一度魔女に騙された男だ。もう同じ轍は踏まないって心に誓ってる。童貞の経験値なめんなよ?」
教師「フフフ。素直に教えてくれた、幾らでも抱かせてあげるのに」
勇者「先に抱かせろ」
教師「モテない男はすぐにがっつくから嫌いなのよ」
勇者「んだとぉ? やっぱり俺のことを利用しようとしてたのか?」
教師「そうよ」
勇者「はっきり言うんだな……。1%だけ期待してた俺がバカみたい……」
教師「プリンセスのことを聞きたかったの」
勇者「だから、それはなんでだ」
教師「秘密を知りたくなる性分なの。その秘密が大きければ大きいほど、私は好き」
勇者「国を揺るがすような秘密とか?」
教師「そうそう。大好物」
勇者「教育係クビになりたいのか?」
教師「あら、私をクビにするの? もしかしたら、ワタシと結婚できるカモしれないのにデスか?」スリスリ
>>80
教師「フフフ。素直に教えてくれた、幾らでも抱かせてあげるのに」
↓
教師「フフフ。素直に教えてくれたら、幾らでも抱かせてあげるのに」
こいつは色々ダメだからなぁ……やる時と通常の差がひどすぎるからなぁ……
勇者「騙されないっていってんだろ!! 俺はそれで痛い目にあってんだ!!」
教師「酷い女も居たのね。ワタシは違いますヨ」
勇者「今、言っただろう。俺を利用しようとしたってなぁ!!」
教師「勇者サマ。もう少し考えて見てクダサイ。何故、ワタシがこんな秘密を簡単に喋ったノカ」
勇者「え? なんで?」
教師「貴方と本気デ結婚したい、カ、ラ、デスっ」
勇者「……真面目に?」
教師「真面目に」
勇者「でも、チェリー坊やはお断りとか言ってたじゃないか」
教師「勇者サマは別デス。出会ったときはこんなにステキな人だとは思わなかっただけデス。ごめんなさい」
勇者「ま、まぁ、他人の良さは一見するだけじゃ分からないですからね」
教師「ソウデショウ? ワタシのこと、信じてくれマスか?」ギュッ
勇者「んほぉ。胸が……あたって……ますけどぉ……?」
教師「わざと、デスっ」ギュゥゥ
勇者「そ、そんな、はしたない……でも……しかし……あなたの好意を無碍にするわけにもいかないというか……その……ええ……いいですね」
教師「では、プリンセスの秘密をコッソリ教えてクダサイ」
勇者「待ってくれ」
教師「まだナニカ?」
勇者「約束してほしいことがあります」
教師「約束、デスか? 結婚だけじゃ満足できないんデスか?」
勇者「結婚したらぁ……そのぉ……あのぉ……ごはんとか作ってほしいんですけどぉ……」モジモジ
教師「イイですよ。毎朝、毎晩つくりマスっ」
勇者「そ、それとぉ……えっとぉ……毎朝、行ってきますのキスもいいっすかぁ……?」
教師「ハイ。ヨロこんデ」
勇者「あとぉ……そのぉ……あのぉ、夜の営み的なのも……毎日……とかぁ……ダメっすか?」
教師「ハイハイ。ワカリマシタ」
勇者「おぉ! そ、それとですねぇ……えっとぉ……」
教師「チッ」
勇者「あ、何か聞こえたような」
教師「いえ、何でもないデスよ。イイカラさっさと話してくだサイ」
城内 中庭
姫「今日、友達ができたんだ。初めての友達だ。お菓子とか分け合ったんだ。あとな、かくれんぼもしたんだ!」
狼「ガウッ」
姫「たのしかったぞー。お前も今度一緒に――」
狼「ガルルル……!!!」
姫「どうした? 嫌か?」
兵士長「姫様。こいつを教会に連れていくことはできませんよ」
姫「お前、いつの間に!?」
兵士長「流石に犬っていうには無理がありますからね」
姫「そんなのは……わかってる……。言ってみただけだろ」
兵士長「なら、いいんですけどね」
姫「部屋に戻ればいいんだろ。おやすみ」
兵士長「おやすみなさい。姫様」
狼「グルルルル……!!!」
兵士長「わりぃな。上手くいきかけてんだ。失敗したくはねえんだよ。姫様のためにもな」
ホテル スウィートルーム
勇者「それから子どもは4人欲しいな。女男男女、みたいな感じで」
教師「……」ウトウト
勇者「庭付きの家に犬とか飼うのもいいですよね」
教師(この男……どうしてモテないのか……わかった……)
勇者「庭を駆ける大型犬を眺めならば寄りそう夫婦なんてのもいいですよねぇ」
教師「うっ……うぅ……」
勇者「猫も欲しいですよね」
教師(メ……モ……を……)
勇者「俺、貴方と結婚したら勇者はやめて警備兵に志願します。それなら泊り込みの警備が週に何回かあるぐらいですし、一緒にいる時間も得られますからね」
教師「……」
勇者「あ、あとコーヒーはブラックしか飲まないんで、よろしくお願いします」
教師「すぅ……すぅ……」
勇者「寝てる……。グェッヘッヘッヘ……。男の前で寝るなんてなんて無防備な。これはもう俺に体を許しているってことでいいですね? いいっすよねぇ?」
教師「うぅーん……すぅ……すぅ……」
酒場
兵士長「おかわり」
バニー「はぁーい。マスター、生追加でーす」
兵士長「ふぃー……」
バニー「今日はお1人なんですね」
兵士長「いや、まぁ、待ち合わせみたいなもんだ」
バニー「どういうことですか?」
兵士長「時間的にそろそろ来ると思うんだけどなぁ」
バニー「あ、来ましたよ」
兵士長「ん? おぉ。きたかぁ」
勇者「……なんでいるんすか?」
兵士長「いや、お前も来るかなって思ってよ。何飲む?」
勇者「……」
兵士長「奢りだ。飲め」
勇者「ビールだぁ!! ビールもってこーい!!」
兵士長「すっ……ぱぁー……。そうか。先生が先に寝ちまったのか」
勇者「でも、今回はフラれてないっすからね。ただ先生が先に寝ちゃっただけっすから。問題なしっす」
兵士長「だったら、なんで今日ここに来たんだよ? 成功ならそのまま先生と寝とけばよかっただろ」
勇者「いいじゃないっすか」
兵士長「ハハッ。あれか? 寝ている女性の傍では眠れないってか? そうだなぁ、気になって寝てられないよなぁ」
勇者「……紳士的な自分が憎い」
兵士長「お前らしいな。それはそうと二日後、行ってくれるか?」
勇者「早くないっすか?」
兵士長「被害が広がる一方なんだよ。できる限り迅速に対応しておきたいしな」
勇者「国民のためっすか? へんっ。クソ食らえってんだ。何が嬉しくて幸せな家庭をもってるやつや恋人のいるやつを守らなきゃいけないんすかねぇ」
兵士長「いいのか? 先生の命も危うくなるし、国境近くの美人だって悪い奴に攫われて売られちまうかもしれねえ」
勇者「それは困るっすね。尽力するっす」
兵士長「あと、姫様のことだけど、大成功だ。とても嬉しそうにしてたぜ」
勇者「ふぅーん。それは良かったっすね」
兵士長「まったくだ」
城下町
兵士長「今日と明日はゆっくり休めよ」
勇者「うぃーっす。ゴチでーす」
兵士長「おーぅ」
勇者「……先輩!!」
兵士長「どしたぁ?」
勇者「あの先生には、気をつけてください」
兵士長「なんかあるのか?」
勇者「姫のこと調べてるみたいっすから」
兵士長「……それ喋っていいのか? お前、先生にフラれるんじゃねえのか?」
勇者「先輩に言わないわけにはいかないっすから」
兵士長「分かった。一応、俺たちだけの秘密にしとく」
勇者「穏便に!! 穏便にお願いします!! あの人、俺にぞっこんなんすよ!! マジで!!!」
兵士長「了解、了解」
勇者「おねがいしまっす!!! ホント!! あんな美人、もう出会えないかもしれないんで!!! 優しくしてあげて!!!」
翌日 城内 通路
教師(昨日は不覚だったわ……。まさか、先に寝てしまうなんて……。それもこれもあの男が無駄話を数時間もするから……)
教師(朝起きればいなかったし、もし私のことを誰かに喋られていたら、次の作戦を実行するしかないわね。まぁ、あの様子なら誰に伝えるようなことはなさそうだけど)
兵士長「先生。おはようございます」
教師「ハイ。オハヨウございます、オジサマ」
兵士長「今日も姫様のことよろしくお願いしますね」
教師「任せてクダサイ」
兵士長「それじゃ」
教師「ハーイ」
教師「……」
勇者「せんせぇーい!!」
教師「アラ、勇者サマ。昨晩はどうしたのデスか?」
勇者「先に寝てしまった――」
教師「女性には手を出してはいけない。まぁ、当たり前のことデスけどね。それでは、急ぎマスから」
勇者「あ、はい。いや、ちょっと待ってください!!」
姫「あいつ、いないな。今日は暇のはずだけど……」
勇者「結婚の話ですよ!!」
姫「お!? 結婚!? ――わぁぁー」テテテッ
勇者「してくれるんすよね!?」
教師「しますヨ。モチロン、デス」
勇者「よかったぁ」
教師「デスから、あの話は……いずれ……」
勇者「モチロン」
姫「……」
勇者「おぉ。姫様、元気か?」
姫「結婚、そいつとするのか?」
勇者「そうなんだよ。祝ってくれ」
教師「もう勇者サマったら気が早いんデスからぁ」
姫「そうか……。嬉しそうだな」
勇者「まぁね」
姫「……」
勇者「それじゃ、俺は色々忙しいんで」
教師「そうデスか。では、また」
勇者「はい。またデートしましょうねー」
教師「行きましょうカ、プリンセス?」
姫「……」
教師「プリンセス?」
勇者「なんだよ? 俺の顔になんかついてる?」
姫「私、好きな人がいる」
勇者「え? マジ?」
教師「ホントデスかー?」
姫「この前、教会で一緒に遊んだ男だ。どうだ。焦るだろ?」
勇者「ふぅーん。おめでとう」
姫「ふんっ!!!」ドガッ!!!!
勇者「いてぇー!!! なにすんだぁ!!! いつもみたいに噛みつけよなぁ!!!」
姫の自室
教師「えーと、500年代にはぁ……」
姫「はぁ……」
教師「プリンセス、聞いてマスか?」
姫「お前、いつまでここにいるつもりだ。早く出て行け」
教師「どうしてそんなに怒ってらっしゃるのデスかぁ?」
姫「うるさい!! さっさと続けろ!!!」
教師「オーケー。オーケー」
姫「ガルルルル……!!!」
教師(本格的に嫌われちゃったわね……。別に好かれようとも思ってないけど)
姫「くそっ……。ああいえば、惚れている男は嫉妬するんじゃないのか……」
教師「……プリンセスぅ? もしかして、さっきのは勇者サマの気を引こうとしたのデスか?」
姫「文句あるのか?」
教師「ナルホドー。プリンセスは勇者サマのこと、一人の男性としてみていたわけですか。だから、あんな使えない恋愛マニュアルを熟読されていたと」
姫「なんだ!? 私があいつのこと好きなのが気に入らないのか!? おーし、こい!! 全面対決だ!! 嫁と姑のバトルだぁー!!」
教師「誰が姑ですか?」グニーッ
姫「おふぁえふぁー!!」
教師(あんなバカな男を利用するよりは、こっちのガキを使ったほうがいいかもしれないわね)
姫「やるかぁ!! 私だって強いんだぞ!! がおー」
教師「プリンセス、ではこうしませんか?」
姫「あぁん?」
教師「勇者サマを落とす魔法を教えてあげます」
姫「いや! あいつは私に惚れてるぞ!! 間違いなくな!! でも、今以上に私に惚れるのか?」
教師「はい。勿論です。でも、教えるかわりに……」
姫「かわりに……?」
教師「貴方のパパとママを教えてください」
姫「なんでだ?」
教師「ウフフフ。別に悪いことをしようなんて一つも考えてませんから、安心してください。それに私が知りたがっていることは勇者サマも知っていることですから。ね?」
姫「でも、言いたくない……」
教師「まぁまぁ。それを言ってくれるだけで勇者サマは姫様から離れたくなーいってことになりますよ?」
中庭
勇者「おーい。でてこーい」
狼「ガウッ!!」
勇者「ほらよ」
狼「ガウッ」パクッ
勇者(先生かぁ……。どうにも見てると魔女のこと思い出すなぁ……。やっぱり俺、騙されてるよなぁ……)
勇者「でも、結婚できる可能性があるなら……騙されていてもいいや……」
戦士「みーつけた」
勇者「げっ……!?」
戦士「んもう、全然あたしとデートしてくれないじゃない。ひどいわぁ」
勇者「俺はまた遠征があるんす。準備に追われてるんで、また今度!!」
戦士「また今度ばっかりじゃない!! もうしんぼうたまらん!!!」
勇者「やめてくれー!!」
戦士「おうじょうせいやぁ!!」
勇者「きゃぁぁ!! 誰か助けてぇぇぇ!!!」
乙!
戦士「おうじょうせいやぁ!!」
完全に惚れた相手に言うセリフじゃねえなwwwwww
命の危機を感じるわ
おうじょうせいやぁ!は絶対ドスの効いた低い男声なんだろうなww
資料室
兵士長「これか」
兵士「はい。しかし、隊長。あの教育係のことは既に調べ上げていますが?」
兵士長「んなことぁ、俺が1番わかってる。おかしな奴を姫様につけるわけにはいかないからな」
兵士「では、何故今更……」
兵士長「まぁまぁ、いいから。お前は立哨でもしてろ」
兵士「は、はい。申し訳ありませんでした」
兵士長「……」ゴソゴソ
兵士「隊長。資料室は禁煙です」
兵士長「すまんな。……さてと」
兵士長(先生のことはよぉーく調べたはずだった。生まれ、家族、経歴、人柄……。全てをクリアにしたからこそ、雇ったわけだしな)
兵士長(だが、考えてみれば一つだけ調べてなかったことがあった。調べる必要がなかったといってもいいが)
兵士長(どうして隣国で王族の教育係をしていながら、辞めちまったのか)
兵士長(資料には任期満了のためとあるが、優秀なら普通は再契約の交渉をするだろうし、名誉ある職から降りる理由なんて中々ないはずだ。わけぇしな)
兵士長(何か問題があったのか、それとも隣国で教育係をやる意味がなくなったか。いずれにしても訊いておくべきか、元の雇い主に勤務態度のほどを……)
夜 中庭
姫「どうしたらいいと思う?」
狼「クゥーン……」
姫「どうしたらいいんだろうな。あいつは私に惚れてるのは間違いないけど、ナンパとか行くからなぁ。もっと私に惚れさせたほうがいいのは分かるけど……」
勇者「なんの話だ?」
姫「……お前には関係ない」
狼「ガウッ!」ペロペロ
勇者「くっせぇ舌で舐めるんじゃねえよ。しっしっ」
狼「ガウー」
姫「何か用か?」
勇者「また遠征だ。今度はかなり遠い場所まで行ってくるから、戻ってくるのはいつになるかわからない」
姫「ふぅーん。そうか。大変だな」
勇者「そうなんだよ。大変なんだよ。お前がしっかりした女王になればもう少しマシになるはずなんだけどなぁ」
姫「鞭で叩いてやろうか?」
勇者「お前じゃ似合わねえよ。……って、それ恋愛マニュアルの後ろに書いてあるやつだろ。姫様がやるには10年、いや15年は早いな」
姫「でも、あれ嘘ばっかりらしいな」
勇者「どこ情報だよ?」
姫「あの変人が言ってたぞ。あれに書いてあることを実践しても成功はしないって」
勇者「そうかぁ。あの先生はあの秘伝の書を読んだことがあったのか。だから俺の戦略、戦術もお見通しだったんだな。失敗したぜ」
勇者「本なんだし他に見ている人がいてもおかしくないよなぁ。こりゃ、新しいのを買うか。まぁ、あれも3年前に買ったやつだけど」
姫「なんだ古い方法なのか。だったら上手くいかなくて当然だな。おい、新しいの買ってこい」
勇者「なんだとぉ? なんでてめぇが必要なんだよ。ああ、そうか。この前のお遊戯会でステキな王子様を見つけたとか言ってたな。そのためか?」
姫「まぁ、そんなところだ」
勇者「わかった、わかった。お前の分も買ってきてやるよ。任せろ」
姫「頼むぞ。よし、そろそろ寝るか」
勇者「そうか。もっと話していかないのか?」
姫「うん。もういい。おやすみなさい、勇者様」
勇者「おう、姫様も夜更かしはしないように。ナイスバディな女王になれませんよ」
姫「……がんばれよ」
勇者「当然よ。今回の俺は一味違うぜ? 何せ婚約者がいるからなっ。フフフハハハハハ」
姫「……」
勇者「なんだよ? はやくいけ」
姫「その婚約者って……」
勇者「先生のことに決まってるだろ? 他に誰がいるよ」
姫「むぅ……!! バーカッ!! アホーっ!! まーぬーけー!!」
勇者「な!?」
姫「お前なんて途中でこけて頭打って苦しめ!!」
勇者「てめぇ!? なんだそのいいぐさぁ!!!」
姫「わぁぁー」テテテッ
勇者「あんにゃろぉ……」
狼「グルルル……!!」
勇者「あ? なに唸ってんだ、狼畜生め」
狼「ガァァァァウ!!!!!」
勇者「あ!? おまえが噛み付いたらマズい!!」
狼「ガァァウ!!!」ガブッ!!!!
翌朝 城門
門兵「勇者殿。その傷は……?」
勇者「名誉の負傷です」
門兵「そ、そうですか。道中、お気をつけて」
勇者「うぃーっす」
兵士長「待ってくれ!!」
勇者「先輩。どうしたっすか?」
兵士長「これ、持っていってくれねえか?」
勇者「ラブレターっすか?」
兵士長「似たようなもんだ。国境になら隣国の兵士も立ってるだろうしな」
勇者「まさか、国境まで行けっていうんすか!?」
兵士長「頼む。大事なことだからよ」
勇者「……」
兵士長「怖い顔すんな。また奢ってやっから」
勇者「約束っすよ!! では、行ってきます!!!」
姫「あいつ、行ったのか?」
兵士長「ええ。今し方」
姫「そうか……」
兵士長「そうだ、姫様。例のお遊戯会ですけど、第二回、第三回は決定しましたから」
姫「ホントかぁ!?」
兵士長「第二回の予定は四日後。第三回はまだ未定ですけど、まぁ近いうちにはやるでしょう」
姫「そうか! ありがとな!」
兵士長「ハハッ、もったないお言葉です」
姫「たのしみだ!」
兵士長「ま、お勉強のほうはしっかりやってもらいますけどね」
姫「分かってる!!」
教師「プリンセス、ここにいたのデスか。探しましたよ」
姫「……別に私は逃げない。今から行く」
教師「オーケー。ハジメましょうネ」
兵士長「……」
通路
戦士「あーん。また勇者様、一人で任務に行っちゃうなんて……。あたし、どうして避けられてるのかしらぁ? こんなに愛してるのに」
兵士長「愛し方が間違ってるからじゃねえか?」
戦士「なによ! この方法しか知らないんだから、仕方ないでしょ!」
兵士長「お前はもう少し女がどんな生き物なのか学んだほうがいいかもな」
戦士「十分、女なんですけどぉー?」
兵士長「ほらよ。丁度いい仕事がある」
戦士「なにこれ?」
兵士長「声を出さずに読め」
戦士「……なんであたしに?」
兵士長「傭兵は自由に動ける。何時どこに居ても怪しまれない。だからだ」
戦士「まぁ、いいけど。何かあるわけ?」
兵士長「それを調べるのが、お前さんの仕事だ」
戦士「りょーかい。仕事ならやるわ。しっかりとね」
兵士長「報酬は弾んでやるから安心しな」
姫の自室
姫「とけたー」
教師「採点シマスねー」
姫「ど、どうだ?」
教師「んー。ザンネン」
姫「なに!? どこを間違えた!?」
教師「パーフェクト、100点デス」
姫「紛らわしいことするな!!」
教師「ウフフフ。テストの点数はいいデスけど、もう一つの答えはどうでしょうか?」
姫「親のことは言わないぞ」
教師「どうしてですかぁ? ここに勇者サマを落とす100の方法がアリますよー。欲しくないんデスかー?」
姫「うっ……。だ、だって、あいつは私のことが好きなんだ。そんなものに頼らなくてもいい!!」
教師「プリンセス、それは違いマスね。勇者サマは私との結婚を望んでいる状態デスよ?」
姫「ぐっ……。そ、それは、気の迷いとかいうやつで……」
教師「勇者サマがプリンセスを好きなんじゃなくて、プリンセスが勇者サマのことを好きなだけ、デス」
姫「違うっていってるだろー!!」
教師「プリンセスだって気が付いているのでしょう?」
姫「何がだ!?」
教師「ただの片思いであることは」
姫「そ、れは……」
教師「だって、恋愛マニュアルを熟読されているのですから、それぐらいはワカリマスよね?」
姫「あいつは私のことを好きっていってくれたことがある!!!」
教師「ウフフフフ。愛情と好意は似て非なるもの。それも恋愛マニュアルには書いていたハズデスけどね」
姫「これは嘘しか書いてないんだろ!?」
教師「相手を落とすテクニックはそうですね。まず成功はしない。けれど、その他に関しては信じてもいいデスよ」
姫「なにぃ……」
教師「さぁ、プリンセス。貴方は自分の体でワタシのテクがどんなものか既に経験したのデスから、どれだけ使えるかも分かるでしょう?」
姫「……」
教師「この機を逃せば、勇者サマは貴方の傍から去ってしまいますよ?」
姫「あいつが……いなくなるのは……いやだ……」
国境付近 町
勇者「あぁー……やっと、ついたぁ……」
勇者(今回の任務が終わったら、一週間ぐらいは休みもらうぞ!! で、先生とイチャイチャでウフフなことをしてやるんだ!! 体と心がふやけるまでなぁ!!!)
勇者「にょほほほ。想像しただけで、元気になってきた。さぁー!! 行くぞぉ、おらぁ!!」
勇者「……あ、すみません」
衛兵「はい? なんでしょうか?」
勇者「俺、こういう者なんですけど」
衛兵「勇者様!? まさかこの町を救いにきてくれたのですか?」
勇者「助けてほしいって手紙送ってきたでしょう」
衛兵「は、はぁ……。確かにどこからか来た賊が暴れ、略奪や誘拐、果ては殺人まで繰り返していまして……」
勇者(ここも他の村と同じだな。どこの賊だよ。広域で活動でもしてんのか)
衛兵「数も多く、厄介なために我々だけではどうすることもできず、助けを求めた次第です」
勇者「わかりました。詳しい話はどこかでゆっくりと聞きます」
衛兵「あ、いえ、その賊はもう居ません。隣国の騎士団が討伐してくれまして」
勇者「隣国の騎士団?」
駐在所
兵長「勇者殿! このような僻地にまで足を運んでいただき申し訳ありません!!」
勇者「で?」ホジホジ
兵長「は、はっ! 三日前になります。いつものように賊が町を荒らしに来たのですが――」
勇者「そんなことはどうでもいいんで。騎士団のことだけ教えてもらえません?」
兵長「はっ!!」
「(勇者様、態度悪くないか? 鼻ほじってるぞ……)」
「(ここまで三日かけて着てくれたのに、もう解決してるなんて知ったからじゃないか? きっと我々を救おうと駆けつけてくれたんだよ)」
勇者(この町で活躍できねーと美女にカッコイイアピールできねえじゃねえか。マジ糞だな、その騎士団。ぶっつぶしてやろうか)ホジホジ
兵長「偶々、騎士団一行は国境付近まで遠征中だったらしく、賊の噂はそのときに耳にしたと聞きました」
勇者「それで、お世話焼きにこっちまできたんすか? 侵略行為じゃないっすかねぇー?」
兵長「いや、しかし、勇者殿。騎士団は賊を討伐してすぐに戻っていきましたから」
勇者「どこに?」
兵長「無論、自国へです。無断で騎士隊が国境を越えるのは問題もありましょうが、あの人たちは善意で助けてくれたのですから、ここは大目に……」
勇者「マジゆるせんな。ちょっと行って注意してきますよ。丁度、用事もあったし」
国境の砦
勇者「ここかぁ……」
警備兵「何者だ!!」
勇者「こういう者だ」ペラッ
警備兵「こ、これは失礼しました!! 勇者殿!!!」
勇者「隣国の騎士団を通したって本当の話ですか?」
警備兵「はい。近くの町でのこともありまして……」
勇者「そんなこと簡単に許してどうするんですか? 武装した一団ですよ? 戦争の引き金にもなる、外交問題っすよ?」
警備兵「わかってはいましたが……。しかし、あの一件があってからは本国のことを信用はできないという民の声も無視はできず……」
勇者「……」
警備兵「実際、勇者殿がここへ来るまでにも多くの人命が失われています」
勇者「だからって……」
警備兵「結果論ではありますが、隣国の騎士団の活躍により町は救われました。今回の責任は砦の者たちで取ります」
警備兵「ですので、騎士団の方たちを不問にはできないでしょうか?」
勇者「そうだな……。できない! 通してもらうぞ!! そいつらに文句いってやるんだ!!!」
警備兵「な!? 勇者殿!! おやめください!! ここはいくら勇者殿でも通せません!!!」グイッ
勇者「押し通る!! どけぇ!!!」
警備兵「おい!! 勇者殿をとめろー!!!」
「おやめください!! 勇者どのー!!」
勇者「ええい!! 俺の出鼻を挫いた奴らに思い知らせてやるんだ!!! 俺の活躍の場を奪いやがってぇぇぇ!!!!」
警備兵「おさえろー!!」
「わぁぁぁ!!!」
勇者「どけこらぁ!!! 勇者様に楯突くんじゃねええ!! 俺に触っていいのは俺の嫁だけだぁぁ!!!」
警備兵「落ち着いてください!!」
勇者「騎士団はまだ近くにいるんだろ!? いないのか!?」
警備兵「二日ほど前にこの砦は超えられましたから、もう今頃は城へ戻っている途中ではないかと」
勇者「……んじゃ、向こう側にいる兵とは会えますか?」
警備兵「な、何をされるおつもりで?」
勇者「この手紙を渡すだけです。検閲してもらってもいいですから」
警備兵「わかりました。少し待っていてください」
砦内
憲兵「……なるほど」
勇者「届けてくれますか?」
憲兵「はい。責任をもって届けます」
勇者「ありがとうございます。ところで騎士団はもう戻ったんですか?」
憲兵「いえ。まだ遠征中ですので、近くにはいると思いますけど」
勇者「そうなんですか? それは都合がいい」
憲兵「はい?」
勇者「是非、会いたいんですよ。その騎士団にお礼をしたいですし」
憲兵「それは団長も喜ばれると思います。ですが、今からこちらへ戻ってくるように伝えるとして、恐らくは1日か2日程度は待ってもらうことに……」
勇者「何日でも待ちますよ」
憲兵「ほ、本当ですか?」
勇者「これでも勇者なんて。気が長いです」
憲兵「了解。それではお待ちください。必ず勇者様のことを伝えます」
勇者「お願いしますよ? 本当に」
城下町 教会
姫「……」
少女「どうしたの?」
姫「え? な、なにがだ?」
少年「今日、元気ないじゃん。なんかあったのか?」
姫「あ、うん。えっと……なんていうか……会いたいやつがいるんだけど、中々会えなくてな……」
少女「もしかして好きな人?」
姫「あ、う、うん……」
少女「どんな人なのー?」
姫「うーん……。いつもはかっこ悪いんだ。でも、すごくかっこいいんだ、あいつ。いつも大変なのに私のことは見ててくれるし……」
少女「すごーい。大人みたーい」
姫「そ、そうか? えへへ……」
少年「この町にいないのか、そいつ?」
姫「今はな。仕事してるから」
少女「えぇ!? 好きな人って大人の人なの!? すごいすごーい!」
少年「でも、年上との恋はすぐに終わるって聞いたことあるぞ?」
姫「え?」
少女「そんなことないよ。愛し合っていればどんなことでも乗り越えられるって」
姫「そうだよな」
少年「そんなの幻想だって。お母さんも似たような経験があるって言ってたし」
姫「そ、そうなのか……」
少女「そんなことないってー!! 私のパパとママは子どものときから好き同士だったんだからー!!」
姫「おぉ!! そうか!!」
少年「そんなの珍しいんだぞー? 知らないのかよ」
姫「えぇ……そうなのか……」
少女「そんなことないー!!」
少年「あるんだって!!」
姫「そんなことよりかくれんぼしませんこと!?」
シスター「最近の子どもって、すごいですね……。私、あんな会話したことないです……」
神父(姫様も実に楽しんでいるご様子。過去は変えられませんがこのまま真っ直ぐに成長してほしいものです」
夜 城内 通路
姫「……」キョロキョロ
教師「ハーイ。プリンセス?」
姫「うわぁ!? な、なんだ、お前か……」
教師「今日もウルフとお話デスか?」
姫「うるさい。これは私の日課なんだ。邪魔しないでくれ」
教師「実はワタシなりに推理してみました。……プリンセスのママとパパは、まだ生きていますよね?」
姫「それがなんだ?」
教師「貴方がプリンセスということは、親のどちらかは王族のはず」
姫「……」
教師「前国王陛下と妃の間には子どもは出来なかったとされているから、貴方は妃の子どもではない」
姫「うるさい」
教師「では、誰が貴方を生んだのか。考えられるのは一つだけ。――魔女ですね?」
姫「違う!!! あいつは私の母親じゃない!!!」
教師(ウフフフ。どうやら間違いないわね。あとは証拠さえあれば……)
姫「お前、なんのつもりだ!!」
教師「ゴメンナサイ。ちょっとした好奇心デスよ。違うなら違うでイイデスから」
姫「……違うぞ」
教師「ワカリマシタ。それでは、オヤスミナサイ」
姫「くっ……!!」タタタッ
教師「ウフフフ。さてと――」
戦士「何か嬉しいことでもあったのぉん?」
教師「……いえ、別に。何もありませんけど?」
戦士「あたし、これでも女が何を考えているかぐらいはわかるわよ?」
教師「どういうことでしょうか?」
戦士「しらばっくれちゃって。知ってるのよ。ずっと姫様のことを調べているのはね」
教師「教え子のことを知ろうとするのがいけないことデスか?」
戦士「あんまり調子に乗ってると、火傷するわよ」
教師「何故ですか?」
戦士「それがあたしの仕事だからよ。クソアマ」
教師「なら、クビにするように進言しなさい」
戦士「この状況でそんなことしたら、あんたの推理が正しいって認めちゃうことになるでしょ。そんなの嫌よ」
教師「へぇ。だったらこのまま私が探りを入れてもいいわけですね?」
戦士「あたしに監視されてるのがわかってもやるの? おもしろいじゃない」
教師「それぐらいの秘密がプリンセスにはあるのでしょう。調べ甲斐があるわ」
戦士「あんた何者? ただの先生じゃないんでしょ?」
教師「知りたいなら監視を続けなさい。いずれ分かるときが来るでしょうけど」
戦士「それはいつよ?」
教師「さぁ……。明日か明後日か……。もしかすると一生分からないかもしれないわね」
戦士「一つだけ言っとくわよ?」
教師「はい」
戦士「勇者様が命がけで守った姫様に指一本でも触れてみなさい。あたし、本気であんたのこと殺しにかかるから」
教師「アハハハ。そんなことしたらここで働けなくなりますよ?」
戦士「あんたが死ぬなら本望よ」
教師「……気をつけます。では、さようなら」
最期のセリフだけドスきいてそう...
中庭
狼「クゥーン」
姫「うぅっ……くっ……」
兵士長「姫様」
姫「うっ……。な、なんだ? 今、部屋に戻るつもりだったんだ」
兵士長「そうしてください」
姫「いつもすまん。おやすみ」
兵士長「姫」
姫「なんだ?」
兵士長「何も心配はいらねえよ。お前のことは俺たちが守ってやるから」
姫「……ありがとう」
兵士長「それが仕事だからな」
姫「助かる」
兵士長「なーに、いいってことよ。早く寝な」
姫「あいっ」
戦士の「それがあたしの…」と「あんたが死ぬなら…」はマジで格好良いと思った
狼「……」
兵士長「んだよ? やるかぁ?」
狼「……」タタタッ
兵士長「いい加減、愛想よくしてくれねえかなぁ、あいつ。俺ぁエサだってやってんだぜぇ?」
戦士「おっつー」
兵士長「おう。どうだった?」
戦士「あの女、結構気が強いわね。あたしの言葉も冷めた顔で受け流してたもの」
兵士長「やっぱり只者じゃねえか」
戦士「いいの? 追い出したほうが早いわよ。それに貴方が殺せっていうなら、あたしが殺してもいいし」
兵士長「馬鹿野郎が穏便にって言ってるからな。それはできねえよ」
戦士「んもう! 勇者様ってば、あんな女狐のどこがいいのかしら!! ぷんぷん!!」
兵士長「それにだ、お前さんに言われてもやるってことは先生も命かけてるってことだろ?」
戦士「まぁ、そうなるわね」
兵士長「命をかけるにはそれなりの理由がある。殺すならその理由を吐かせてからだ」
戦士「あらあら。男ってホントバカばっかりね。嫌になっちゃうわ。勇者様は別だけどぉ。うふっ」
姫の自室
姫「……」
姫(あいつ、今も誰かと戦ってるんだよな……)
姫(いつも文句ばっかり言ってるけど、戦ってるんだよな)
姫(私も戦わないとな)
姫「よし!!」
姫「私は強い!! 並の兵士ぐらいだったらボッコボコにできる!!」
姫「友達だってできた!! 守ってくれるやつもちゃんと傍にいる!!」
姫「そして勇者様だっているんだ!! 私は弱くないぞ!! めちゃくちゃ強いぞ!!」
姫「どんな奴にだって負けない!!」
姫「たとえ相手が……相手が……」
姫「……」
姫「寝るか」
姫「負けないんだ……」
姫「私には……あいつが……いるから……」
国境の砦
勇者「ぶぁっくしゅん!!! うぅー。なんか寒いなぁ」
警備兵「勇者殿。あのお訊ねしたいことが」
勇者「なんすかぁ? 俺の武勇伝なら昨日いっぱい話したでしょう?」
警備兵「え、ええ。女性との接し方についてはとても参考になりました」
勇者「まぁ、恋愛マスターの俺に落とせない女はいないっすけど。ハーッハッハッハッハ」
警備兵「噂程度なのですが、その姫様がいるとか……」
勇者「あん?」
警備兵「あぁ、あの、一般市民の間で以前から話題になっているのですが、知りませんでしたか?」
勇者「まぁ、知ってるっすよ。どっかの田舎でも話してる人いましたし」
警備兵「実のところはどうなのですか?」
勇者「息がくせーんだよ。顔近づけてくるな」
警備兵「えぇ……。歯は毎日3回磨いてます」
勇者「じゃあ、存在が臭い」
憲兵「勇者様!! 騎士団の団長が到着しました!!」
勇者「結構早かったですね」
憲兵「団長も貴方に会ってみたかったと言っています」
勇者「なんで?」
憲兵「魔女の一件での活躍、隣国にまで届いていますから」
勇者「え? そうなのですか?」
憲兵「はい。無論、民が話す程度のことしか知りませんが」
勇者「もしかして、俺って世界的な有名人だったりする?」
憲兵「或いはそうかもしれませんね」
勇者「参ったなぁ。俺の子猫ちゃんは世界中にいるのかよ。ハーレムじゃん」
憲兵「お! 団長殿!! こちらです!!」
勇者(来たかぁ。さぁて、俺の出番を奪った団長様に一言文句を言ってや――)
騎士「貴方が勇者様ですか?」
勇者「お……おま……、いえ、あの、貴方が……騎士団の団長さん?」
騎士「はい。その通りです。私、勇者様にお会いできてとても感激しています」
勇者(こんな美人が騎士団の団長!? マジぃ!? うっひょー!!! 実際にいるのかよぉ!!! 女の騎士ってぇー!!!)
騎士「あの、なにか私の顔についていますか?」
勇者「あ、ああ。失礼しました。貴方の美貌に時を奪われてしまったようです」
騎士「は、はぁ。どうも」
勇者「こんなにお美しい人が騎士団を束ねているなんて、驚きましたよ」
騎士「いえ、私なんてまだまだです。団長を任されたのも運がよかったからですし」
勇者「何を謙遜することがありますか。明眸皓歯な貴方は万人を虜にすること間違いなしです」
騎士「え、えーと」
勇者「その証拠に、ほら、俺は君の虜さ」ギュッ
騎士「か、顔が近いです……」
勇者「素敵だ。今度、一緒に食事でもどうです?」
騎士「え、でも、私は……あの……」
勇者「異国交流もこのご時世必要でしょう。あぁ、そうだ、これから俺は城へ戻るのですが、よければご招待しますよ」
騎士「あ、その……」
勇者(押しが弱い子と見た!! 恋愛マニュアル70ページに書いていたことを実行するまで!! 押しが弱い子には遠慮するな!!!)
騎士「ゆ、勇者様……息が……かかってます……」
憲兵「勇者様!! 団長殿が困惑されています!! 離れてください!!」
勇者「これは失礼。貴方の魅力に体ごと惹かれてしまったようです。申し訳ない」
騎士「いえ、こちらこそすみません」
勇者「こんなところで立ち話もあれですし、近くの町でゆっくりディナーでもどうでしょうか」
騎士「い、いえ、そこまですることは……」
勇者「うん、そうだ! そうしよう! さぁ、行きましょう!!」グイッ
騎士「ちょ……」
憲兵「勇者様!! やめてください!!」
勇者「うるせぇ!! 人の恋路を邪魔する奴は剣の錆にするぞ!!」
勇者「っと、大丈夫ですから。俺は貴方と一夜をともにしたいだけですので」
騎士「えぇぇ?」
勇者「絶対に損はさせませんよ」
勇者(よっしゃー!! 俺のファンだし、絶対にいける!! 先生はキープにしておいて、俺の本命はこの娘だぁー!!!)
騎士「は……離してください!!!」ブンッ!!!
勇者「え――」
医務室
勇者「……は!?」
騎士「あ、勇者様。あの、ご気分は……?」
勇者「ここは……? それに俺は確か……」
騎士「医務室です。私が勇者様を剣の鞘で殴りつけてしまって……」
勇者「いやぁ。なるほど。俺もそう思っていたところなんですよ。気が合いますね」
騎士「そ、そうですか?」
勇者「そうですよ。ああ、看病してくれたお礼に食事でもどうですか? 奢りますよ」
騎士「あの、大変ありがたいお話なんですけど、それには応じられません」
勇者「何故!? 何故!? 何故ですかぁ!? こんなにも俺は君に惹かれているのに!?」
騎士「他国の兵が理由もなく国境を越えることはできません」
勇者「貴方は我が国を助けるために越境してきた。問題はない」
騎士「それは仕方なくです。やむを得ない事情があったからで……」
勇者「俺と食事をするのはやむを得ない事情ではないというのですか!?」
騎士「あ、当たり前です!!」
勇者「よし。こうしましょう。貴方は亡命した。これで解決だ」
騎士「意味がわかりません!! 私は自国の騎士であることに誇りを持っています!! 国を、陛下を裏切るようなことはできません!!」
勇者「あぁ!! なんて悲しいことだぁ!!! 二人はこんなにも愛し合っているのに!!」
騎士「な、なんであの、そんな話に……」オロオロ
勇者「いいじゃないか!! 一緒に暮らそう!! 子どもは4人産んでね!!」
騎士「一緒にも暮らせませんし、産めもしませんからぁ!!」
勇者「大丈夫。仕事も夜も俺に任せて。ね?」
騎士「いえ……あの……その……だから……あの……」
勇者「不安に思うこともあるでしょう。俺に全てを委ねてくれたらそれで――」
騎士「うぅ……ぐすっ……」
勇者(やべ……泣く……?)
騎士「わたし……のいう……ことをきいてくだぁぁい……」
勇者「あ、すみません。全部、冗談。冗談ですから。はい」
騎士「うぅ……ぅぅ……」
勇者「あの、ホント、すみません。真面目に生きます。すみません。本当にすみません」
騎士「ぐすっ……うぅ……」
勇者「もう君を食事やベッドに誘ったりしませんからー。ほらー。俺は紳士ですからー」
騎士「……」
勇者「アハハハハ。ほーら、段々楽しくなってきたー」
騎士「……はい」
勇者「よかった。ええと。で、何の話ですか?」
騎士「あの……。勇者様が我が国へ送った手紙……というよりは依頼状ですが……」
勇者「見たのですか?」
騎士「はい。申し訳ありません」
勇者「いえいえ、構わないですよ」
騎士「教育係のことですが……。あの女は危険です。即刻、国外退去を命じたほうが賢明かと」
勇者「何故ですか?」
騎士「あの女は、魔女ですから」
勇者「魔女……」
騎士「はい。我々の国を潰そうとしたのです。内部から」
勇者「……本当ですか?」
騎士「嘘をつく理由がありません」
勇者「……」
騎士「我が騎士団はあの女の行方を追っていました。身柄を引き渡してくれるとありがたいのですが」
勇者「うーん……それはちょっと……」
騎士「何故ですか。国を滅ぼそうとした魔女ですよ。その恐ろしさは勇者様も分かっているはずです」
勇者「あぁ、まぁ、戦いましたけども」
騎士「お願いします」
勇者「でも、その、俺、先生……貴方たちのいう魔女と……その……色々ありまして……」
騎士「勇者様!! しっかりしてください!! 貴方は騙されているだけです!!!」
勇者「……」
騎士「奴は魔女なのです!!」
勇者「なら、君が俺の花嫁になってくれるかい?」
騎士「な、何故そんなことになるのですか!?」
勇者「こっちは必死なんだよぉ!!! いくら命かけても全然モテないんだ!!! あぁー!!」
騎士「そ、そんなことを私に言われても……」
勇者「いーやぁ!! 俺の婚約者を奪うっていうなら、君が代わりに俺の婚約者になってください!!」
騎士「無理です!!」
勇者「無理じゃない!!」
騎士「ひぃ……」
勇者「それはそうと先生……魔女はどうやって貴方たちの国を潰そうとしたのですか? 俺のところみたく幻覚剤とか使って?」
騎士「いえ。国王陛下の嫡男、つまり王子の教育係であったことは知っていますか?」
勇者「それは聞いてますけど。まさか、王子を篭絡させて将来国を裏から操ろうって企みですか」
騎士「違います。あの女は王子の秘密を探り、世界中に公開しようとしたのです」
勇者「な……」
勇者(まさか、姫のことを探っていたのも……)
勇者「それは何が目的なんですか?」
騎士「分かりません。ですが恐らくは金でしょう」
勇者「強請りですか」
騎士「王子のことを知られることはなかったのですが、逃げられてしまいました。あの女はきっと世界中で同じことをしていたはず。だから、危険な魔女なのです」
勇者「しかし、その秘密は国が終わってしまうぐらいのものなのですか?」
騎士「勇者様。それは訊かないでください。貴方の国にも知られてはいけないことはあるでしょう」
勇者「まぁ、そうですけど」
騎士「勇者様。魔女の身柄を引き渡してください」
勇者「……わかりました」
騎士「おぉ!」
勇者「その代わり、条件がある」
騎士「え? しかし、勇者様の国にもメリットしかないはず」
勇者「俺の国はね。でも、俺にはデメリットしかない」
騎士「は、はぁ!? どういうことですか!?」
勇者「だって、俺の嫁候補が消えるんですよ?」
騎士「国のためならそれぐらいの犠牲は……!!」
勇者「貴方が嫁候補になってくれるなら、引き渡します」
騎士「そんなぁ……」
勇者「これが外交交渉。政治ってやつですよ」キリッ
騎士「……」
勇者「でも、何も絶対に嫁になれとはいいません。まずは候補ですから」
騎士「候補、ですか?」
勇者「俺の理想はイチャイチャラブラブウフフフな毎日を可愛い嫁と過ごすことですからね」
騎士「つまり、お友達からでいいのですか?」
勇者「はぁい。当然じゃないですか。俺たちは出会ったばかり、お互いのことを知ってからでないと結婚なんてできないでしょう」
騎士「でも……」
勇者「付き合ってみれば互いを好きになることもあるはず。わかりますね?」
騎士「……」
勇者「付き合ってみて俺のことを好きになれないというなら、それでいいです。別れましょう。でも、俺のことを好きになったなら」
騎士「結婚……ですか」
勇者「はい」
騎士「しかし……私は……」
勇者「お願いします。たったそれだけのことで貴方の国に真の平和が訪れるんですよ?」
騎士「……わかりました。その条件を呑みます」
この騎士は本当に女なのか...
勇者「ありがとうございます」
勇者(うらぁよっしゃぁぁぁい!!!!!)
騎士「では、このことを陛下に伝えて――」
勇者「お待ちになってください。貴方の目で今いる教育係が魔女なのか確かめることも必要でしょう?」
騎士「確かに……。人違いの可能性もありますね」
勇者「ですから、ぶひひひ、城へ案内しますよ」
騎士「よろしいのですか? 武装した兵を簡単に自国に招き入れるなんて」
勇者「貴方なら問題ありませんよ。ウェルカムです」
騎士「寛大なお心遣いに感謝します。では、一度騎士団の者にこのことを伝えてきます」
勇者「はい。俺は馬車の準備をしておきますね」
騎士「それはありがたい。よろしくお願いします」
勇者「貴方のためならダイヤモンドもかき集めてきますよ」
騎士「嬉しい限りです。では、後ほど」
勇者「はい!!」
勇者(来たな……。俺のファンなんだし、デートを重ねればそのままハネムーン確定じゃん。俺にも遅すぎた春がやってきたぜい。アヒョヒョヒョヒョ)
国境の砦 門前
騎士『勇者様。お待たせしました』
勇者『待ってませんよ。さ、馬車の中へ』
騎士『はい。割と広いですね』
勇者『この広さなら、いろんなことができますよ?』
騎士『え? あ、あの……あんっ……やめて……』
勇者『その蕩けた顔は続けてと言っているようにしか見えませんね』
騎士『あぁ……ゆ、しゃ……さ、まぁ……』
勇者『祭りじゃぁぁぁ!!!! げひゃひゃひゃひゃ!!!!』
勇者「……シミュレート完了」
騎士「勇者様。お待たせしました」
勇者「祭りじゃぁぁ!!!」
騎士「ひっ」ビクッ
勇者「あ、いえ。なんでもありません。どうぞ中へ」
騎士「は、はい。よ、よろしくお願いします……」
まだ4ぐらいまでしか見てないけどあんた来てくれたのか!! 前作はめっちゃ楽しんで読めたから期待大なんだ!!
おうじょうせいやぁ!!から戦士がボビーで脳内再生される…
乙
前回もかっこよかったけど戦士がかっこいい
>>125
勇者(押しが弱い子と見た!! 恋愛マニュアル70ページに書いていたことを実行するまで!! 押しが弱い子には遠慮するな!!!)
↓
勇者(押しに弱い子と見た!! 恋愛マニュアル70ページに書いていたことを実行するまで!! 押しに弱い子は遠慮するな!!!)
城内
姫「では、教会に行ってきますわ」
兵士長「今日も楽しんできてください。姫様のこと頼むぞ」
兵士「はっ!」
姫「ところで……あいつ……勇者様はまだ戻ってこないのか?」
兵士長「結構な遠出ですからね。もう少しかかるじゃないかと」
姫「そうか。分かった」
兵士長「今度はそれなりに長い休みを与えるつもりですから」
姫「そうだな。そうしてやってくれ」
兵士長「お友達、待っているんじゃないですか?」
姫「そうですわ! 急ぎましょう!!」
兵士「はい!」
兵士長「ふぃー……。たまらんねぇ。で、そっちはどうよ?」
戦士「あれから目立ったことはしてないわね」
兵士長「先生がビビってくれたなら言うことはないんだがな」
通路
教師「……」
教師(資料室……。入りたいけど鍵は掛かっているものね……)
兵士「また遠征だって。賊による略奪や誘拐や殺人ばっかりだ。これじゃキリがないよな」
門兵「確かにな。隊長も大臣らも頭抱えてるよ。勇者殿だって相当無理してるみたいだしな」
兵士「まぁ、勇者殿の場合は遠方での出会いを期待しているような節もあるけど」
門兵「確かに。まぁ、俺たちの国のことだし、俺たちがどうにかしないとな」
教師「あのぉ、ちょっとよろしいですかぁ?」
兵士「どうされましたか!?」
教師「資料室、入ってはイケマンか?」
門兵「申し訳ありませんが教育係の貴方といえども簡単に入室はできません」
教師「見られては困るものでもあるのデスか?」
門兵「お答えできません。そういう規則ですから」
教師「そんなこといわずに……ネ?」ギュッ
門兵「おぉ!? い、いや、だ、だめ、ですからぁ!!」
兵士「いいんじゃないか? 姫様の先生だぜ?」
門兵「無理に決まっているだろう」
教師「1分だけでもいいんデス。サービス、してあげますからぁ」
門兵「で、ですが……」
教師「モチロン、そちらのステキなアナタも一緒にネ」
兵士「通してやれって!!」
門兵「簡単にいうなよぉ」
教師「ウフフフ」
戦士「――あらあら。サービスならあたしがしてあげるわよぉ?」
兵士「でた!?」
戦士「あぁん? 文句でもあるの? 女なんかよりも上手いわよぉ。うふふふ」
教師「……」
戦士「先生、勝手なことはしないようにね?」
教師「そうデスね。ゴメンナサイ」
戦士「謝るときは気持ちも込めろってママから教わらなかった?」
教会
少女「ねえねえ」
姫「なんだ?」
少女「気になってたんだけど、いつも外で待ってくれてる人って誰?」
姫「あ、ああ……。あいつは、お兄様みたいなものだ」
少女「そうなんだ。なんだか大人の知り合いが多いんだねー」
姫「まぁな」
少女「かっこいいなぁー」
少年「そうかぁ? 別に普通だろう。俺だって大人に囲まれて生活してるぜ?」
少女「あんたは違うの!」
姫「でも、今は違うぞ」
少女「え?」
姫「私には友達のお前たちがいるからなっ」
少年「ふ、ふんっ。何いってんだよ」
少女「あ、照れた」
少年「て、照れてねーよぉ!!」
少女「ねえねえ。聞いて、実はね、こいつ貴方のことが……」
姫「なに?」
少年「おい!! な、なにいってんだよ!! やめろよ!!!」
少女「いいじゃない。どーせ叶わないんだし」
少年「俺は別にこんなやつのことなんて――」
姫「ごめんなさい」
少年「な……?」
姫「私には好きな奴がいるから、お前の気持ちには応えられない」
少年「違うっていってんだろー!!」
姫「で、でも!! 友達ではいてほしい!!」ギュッ
少年「がっ……!?」
姫「これからも友達でいてくれ」
少年「……ああ」
少女「わーい、フラれたー」
神父「――そろそろ。時間ですよ。みなさん、帰る用意をしてください」
「「はーい」」
シスター「忘れ物がないようにしてくださいね」
少年「……」
姫「なぁ、私は振ったわけじゃないからな。友達で居てほしいだけなんだ。わかってくれ」
少年「わかってるよ!! 今日は帰る!!」タタタッ
姫「あぁ……」
少女「大丈夫。あいつのことは私に任せて」
姫「頼むな」
少女「うんっ。またね!」
姫「バイバイ」
少女「あ、そうだそうだ! ねえねえ。今度、あなたのお家に行ってもいい?」
姫「え? き、機会があればな」
少女「ホント!? やったぁ! 約束だよ」
姫「ああ、約束する」
城下町 広場
兵士「今日も楽しかったですか?」
姫「うーん。でも、ちょっと問題もあったな」
兵士「帰り際に全力疾走で帰路についた男の子のことですか?」
姫「そうなんだ。私のことが好きらしくてな」
兵士「そ、それで姫様はなんと!?」
姫「勿論、好意は嬉しいけど受け取れないって言っておいた。恋愛マニュアルにも好きにもなれないつまらない男は切り捨てようって書いてたしな」
兵士「姫様!? なんてことを!? いくらなんでもあんまりでしょう!?」
姫「好きになれなかったんだから仕方ない。友達としては勿論好きだけどな」
兵士「いえ、そういうことでは……」
勇者「お?」
姫「あ!?」
兵士「ゆ、勇者殿!!」
姫「わぁぁぁー!!!」テテテテッ
勇者「久しぶりだな。元気してたか?」
姫「あいっ!」ギュッ
勇者「そうか。それは良かった」
姫「おかえり! ……隣の奴は誰だ?」
勇者「紹介しておく。隣国の騎士団を束ねる団長さんだ」
騎士「どうも」
姫「……はじめまして」
勇者「さぁ、行きましょうか」
騎士「あの、こちらの女の子は?」
勇者「知り合いです」
姫「深い付き合いのな」
騎士「はぁ……」
兵士「勇者殿!! どういうことですか!?」
勇者「まぁまぁ。嫉妬する気持ちもよく分かりますけど、詳しい話は城でしますよ」
兵士「隊長が怒りますよ?」
勇者「(それより、姫様とはもう少し外で時間を潰してから城に戻ってきてくださいよ)」
城内 謁見の間
兵士長「――あの先生が魔女だと?」
勇者「そうっす。隣の国でも色々と悪さをしていたようっす」
兵士長「ええと、団長殿。間違いないのか?」
騎士「貴方たちが我が国で教育係を勤めていた者を採用したというのなら間違いはありません」
勇者「ただ人違いだったらアレなんで確認のために来てもらったんです」
兵士長「そういうことは勝手にやるなよ」
勇者「いーじゃないっすかぁ。俺は勇者っすよ。これぐらいの越権行為は許されて然るべきっす」
兵士長「越権すんなっつーの」
騎士「あの……」
兵士長「おう、わりぃな。とりあえず、会ってみるか?」
騎士「いえ、直接会うと逃げられてしまうので……できれば、遠くから……」
兵士長「そうだな。わかった。あんたの好きにするといい」
騎士「ありがとうございます」
勇者「終わったら食事に行きましょうね」
騎士「勇者様。魔女の顔を確認したら私はすぐにでも国に帰らなければなりませんので」
勇者「まぁまぁ。でも、今日は流石に泊まっていくでしょう?」
騎士「それは、そうですが……」
勇者「では、俺がいいホテルを――」
兵士長「ちょっといいか?」
勇者「なんすか!? ちょっと黙っていてくださいよ!!」
兵士長「なんでお前、そいつのこと口説いてるんだ?」
勇者「は? 見ての通り可愛いからですけど。あと性格もいいし」
騎士「そ、そんなことは……」
勇者「その照れた姿、僕の心を鷲づかみにしているのですが」
兵士長「そいつ隣国の騎士団なんだろ?」
勇者「それがなんすか? 愛に国境はないんすよ。ボーダーフリーっす」
兵士長「いやそうじゃなくてよ。騎士団に女は……」
騎士「それでは失礼します」
勇者「ちょっと!! あ、俺が先生のところまで案内しまーす!! 下心とか一切ないんで安心してくださーい!!! グエッヘッヘッヘ!!」
通路
勇者「ここで待っていれば、そのうち出てくるはずです」
騎士「ありがとうございます」
勇者「いえいえ」
騎士「魔女ならいいのですが……」
勇者(あーすげーいい香り。男の汗臭さとは全然違うね)
騎士「勇者様? あの、何か……?」
勇者「え?」
騎士「私の体臭が気になりますか?」
勇者「ええ!! いい意味で!!」
騎士「いい意味……?」
勇者「お。出てきましたよ」
騎士「え!?」
教師「ふわぁぁ……」
騎士「(ま、間違いない……!! 魔女だ……!!)」
勇者「(大当たりですか)」
騎士「(今からでもひっ捕らえところですが、ここは他国ですからね。それなりの手続きは必要になってきます)」
勇者「(この場で引き渡してもいいですよ? 無論、条件はありますが)」
騎士「(勇者様、冗談はそれぐらいに……)」
勇者「(俺はずっと真剣です)」
騎士「(それは……分かっていますが……でも、今は……)」
勇者「(俺と共に人生を歩みませんか?)」
騎士「(どうして……そこまで……)」
勇者「(貴方に恋をしたからです)」
騎士「(そんなこと男性に言われたのは初めてです……)」
勇者「(世の中には節穴野郎ばかりですから。でも、俺は違う。貴方の内面に惚れました)」
騎士「(は、はい。う、うれしいです……)」
勇者(今、確かな手応えがあった……!! 遂に……遂に……!! 念願の彼女もとい嫁が俺にもやってきたんだぁぁぁ!!!!)
戦士「(なんの話?)」
勇者「(俺の幸せを――)」
>>153
騎士「(今からでもひっ捕らえところですが、ここは他国ですからね。それなりの手続きは必要になってきます)」
↓
騎士「(今からでも捕らえたいところですが、ここは他国ですからね。それなりの手続きは必要になってきます)」
勇者「おぉぉう!? なんでこんなところに!?」
戦士「なんでもくそも勇者様こそ、戻ってきたんならあたしにおかえりなさいのチューでしょう!?」
勇者「そんな約束はした覚えがないっす!!」
騎士「あの、この方は?」
勇者「昔、ちょっとばかりお世話になって雇ってる傭兵です」
騎士「お世話……」
戦士「色々してあげたのよねー?」
勇者「ま、まぁ……ね」
戦士「でも、こんなに愛してるんだから、もっと優しくしてくれてもいいでしょう?」
勇者「いや……十分、優しくしてると……」
戦士「そんなことないわぁん!!! だったらキスしてよぉ!!!」
勇者「なんでだ!?」
戦士「はよぉ!!! そのプリップリの唇、よこさんかいわりゃぁぁ!!!」
勇者「いやぁぁぁ!!!!」
騎士(なるほど。勇者様はだから私のことを……)
アカン(主に戦士がガンガン責める口実が出来た的な意味で)
教師「……」
教師(なんだか向こうが騒がしいわね。監視するなら静かにしてほしいわ)
教師(ま、資料室に何かがあるのはあのオカマ野郎のおかげで分かったし、多少の騒がしさは気にしないけどね)
教師(あとは忍び込む方法よね。あの馬鹿勇者を懐柔したら、いけそうだけど……)
姫「おい」
教師「アーラ、プリンセス。遅かったデスね」
姫「なんか客人が来ているらしいから、裏門からこっそり入ってきた」
教師「そうデスか。教会でのお遊戯会は楽しかったデスか?」
姫「……まぁな」
教師「そーデスか。よかったデスねー」
姫「触るな!! お前の仕事はもう終わっているだろう!! 部屋に戻れ!!」
教師「アーン、そんなに怒らないでクダサーイ。この前のは謝ったじゃないデスかー」
姫「それ以上近づいたら、姫パンチ食らわすからな! シュッ! シュッ!」
教師「ハイハイ。プリンセスは怖いですねー」
騎士(あれは……)
戦士「いけない。いけない。あたしったら、仕事があるのに。でも、仕事より姫様、姫様より勇者様だから仕方ないけどぉ」
勇者「はぁ……はぁ……あぶなかった……」
騎士「……」
戦士「ちょっと、あんたぁ?」
騎士「は、はい」
戦士「先生はどっちに行ったの?」
騎士「向こうへ歩いていきましたが」
戦士「ありがとっ。うふ。――勇者様は渡さないわよ」
騎士「は、はぁ……」
戦士「よろしい。それじゃあね。らんららーん」
騎士「……」
勇者「あ、勘違いしないでくださいね。彼とは何もありませんから」
騎士「いえ。あの勇者様、私はやはりこのまま国へ戻ろうと思います」
勇者「なんで!? ホテル、いい部屋取りますから!!!」
騎士「そ、それは次の機会にしましょう。あの、すぐに戻ってきますし」
城門前
騎士「手厚いもてなしに感謝します」
兵士長「飲み物も出してねえのに、そういうなよ。嫌味にしかきこえねえぞ」
騎士「す、すみません。ところで魔女の引渡しのほうですが……」
兵士長「分かってる。国際条例に従って手続きをするからよ。必要書類なんかも作っておく」
騎士「大恩痛み入ります。貴方がわが国へ送った書簡も間もなく返事があるでしょう。そこに詳しいことも書かれているはずです」
兵士長「了解。団長さん」
勇者「あの。早く戻ってきてくださいよ、ホテル予約しておきますから」
騎士「は、はい……。わかりました……そのときは、私も覚悟を決めます……」モジモジ
勇者(かわいいー!!! こんな可愛い子と俺は結ばれるのかぁー!!!! 神様ー!!! ありがとー!!!!)
兵士長「お前、とうとうそっちの道にいっちまったのか……」
勇者「なにいってんすか。俺は常にこの道を歩き続けていたんすよ」
兵士長「だから女ができなかったのか。納得だ」
騎士「それは失礼します!! ありがとうございました!!」
勇者「さよーならー!!! まってますからねー!!! にょほほほほほ!!!」
兵士長「すっ……ぱぁー……。それにしても先生が魔女だったとはな……」
勇者「とりあえず、拘束して牢屋にぶちこんじゃいましょうか」
兵士長「おめぇ、穏便にって言ってたじゃねえか」
勇者「もういいっすよ、あんな女。こっちから願い下げっす。俺の嫁さんは、あの可憐で清楚な騎士団団長しかいない!!!」
兵士長「……魔女なら姫様の傍に置いておくこともできねえしな」
勇者「それもあるっすね」
兵士長「自由にさせる理由はなくなったな」
勇者「さっさとやっちまえばいいんすよ」
兵士長「だがよぉ、きにならねえか?」
勇者「何がっすか?」
兵士長「国家転覆を目論んだ魔女。しかも世界中で暗躍していた可能性まであるときてる。この国を支配しようとしたあいつとは違うわけだ」
勇者「魔女っていう点では同じっすよ」
兵士長「全然違うだろうが。先生は一国を完全に敵に回してる。なら、どうして手配書の一枚も出回ってないんだ。それに先生が前の職場を離れたのは任期満了のためだ」
兵士長「凶悪犯の正体をどうして国全体で隠すようなことをしているのか。気にならねえか?」
勇者「先生が調べていた王子の秘密ってやつに関係してんじゃないっすか? 先生が万が一秘密を握っていたなら、大変ですからね」
兵士長「団長さんは知られていないって言ってたんだろ?」
勇者「証拠は掴まれていないだけとか?」
兵士長「推論は可能なぐらいの材料はあったなら、それを報じないのは不自然だろ」
勇者「そんなこと言われても……。ともかく悪い魔女なんすから、捕まえましょうよ。で、縄とか無駄にムフフな縛り方とかしてぇ」
兵士長「お前、明日から遠征な」
勇者「先輩の言うとおり、少しおかしいっすね」
兵士長「そうだろう。こっちだって姫のことを調べていた女を簡単に引き渡したくはねえよ」
勇者「引き渡してください。でないと、俺あの子と付き合えなくなりますから」
兵士長「勝手にしろ。ま、今夜あたりにでも話は聞いてみるがな」
勇者「で、せんぱぁい……」
兵士長「へいへい。一週間ほど休暇をやるよ」
勇者「マジっすかぁ!? いいんすかぁ!? イヤッホォォォイ!!!!」
兵士長「ただし、何かあったら動いてもらうからな」
勇者「よぉし!! この間にしっかり復習しておくぜ!! 初めてでも戸惑わないようにな!!!」
兵士長「やれやれ……」
姫の自室
姫「はぁ……」
勇者『おーい。いるかー?』
姫「あい。いるぞー」
勇者「よう」
姫「随分長かったな。忙しかったのか?」
勇者「まぁな。それより、聞いてくれ」
姫「どうした? いいことでもあったのか?」
勇者「一週間も休暇をもらえた」
姫「おぉ!! いいな!!」
勇者「だろう? でだ、この休暇を利用して色々としなきゃいけないこともあるんだ。だから、恋愛マニュアル返せ」
姫「いいぞ。はい」
勇者「お、素直だな。感心だ」
姫「私はいつでも素直だぞ。それより聞いてくれ、私のことを好きになってしまった男がいるんだ」
勇者「マジかよ。物好きにもほどがあるな。どんな奴よ?」
追い付いた。まさか続編が来てたとは!!
期待
あれか、団長はアレで、あれが、アレで…。
戦士はあれだから…。
詰んだ?
会議室
教師「なんでしょうか?」
兵士長「率直に問う。先生は魔女か?」
教師「……」
兵士長「隣国の騎士団を指揮している団長がこっちに来てくれてな。あんたが向こうで何をしていたのか語ってくれた」
教師「なるほど。それを貴方は信じたと?」
兵士長「嘘なのか?」
教師「私がここで本当のことを話す保証はないですけどね」
兵士長「それもそうだな」
教師「まぁ、疑うなら営倉なり牢屋なりに入れてくれても構わないですけど?」
兵士長「いや、隣国からは身柄の引渡しをお願いされちゃってよ」
教師「お好きにどうぞ。それぐらいの覚悟は常に持ってますから」
兵士長「そうかい。なら、そうさせてもらうか」
教師「話は終わりですか? それでは」
兵士長「……先生。正直言うと今現在、あんたを他国に引き渡したくはねえんだよ」
教師「プリンセスのことを探っているから、ですか」
兵士長「姫様のことはまだ隠す必要がある。先生が間諜として潜入してきているなら、尚更だ」
教師「間諜だなんて。虫唾が走ります」
兵士長「だが、国の現状を考えれば隣国には恩を売っておきたいのも事実。俺は頭を悩ましているわけよ」
教師「何がいいたいのですか?」
兵士長「取引しねえか?」
教師「ウフフフ。魔女と呼ばれた私とですか?」
兵士長「先生にとって引き渡されたほうが得だってんなら、今日中にでもあんたを殺す。でも、そうじゃねえなら取引に応じてくれよ」
教師「脅しじゃないですか」
兵士長「そう聞こえたか? わりぃな。育ちはいいほうじゃなくてよ」
教師「おじさまの望みはなんですか? 私を引き渡さなければ、国家間の関係も悪くなると思いますけど?」
兵士長「俺の望みは姫様の安寧。それだけだ」
教師「そのためなら隣国を敵に回す覚悟もがあるということですか」
兵士長「この城に、この国に仕えてうん十年。それだけが俺の誇りだ」
教師「なるほど……。流石は過去に『勇者』も務めた人ですね。分かりやすくて助かります」
兵士長「俺のことも調べたのか?」
教師「はい。勿論です。あの傭兵のお姉さんのこともバッチリですよ」
兵士長「ふぅん。で、どうする?」
教師「私に何をしろと?」
兵士長「なーに。簡単なことだ。――隣国で得たことを渡してくれ」
教師「な……」
兵士長「あんたを引き渡して姫様の秘密が国外へ出て行ったときの保険だ。隣の国が先生を指名手配しないぐらいの秘密はもってんだろ?」
教師「ウフフフフ。おじさま、本当に『勇者』だったのですか? 悪い顔になっていますよ?」
兵士長「言っただろう。育ちは良くねえんだよ」
教師「……と言っても決定的な証拠はありません。まぁ、私に対して強く出ていないところを見るに9割は黒なんでしょうけど」
兵士長「だろうな。だからこそ、知っておきたい。敵国になった場合、一発で地盤を崩せるぐらいの情報をな」
教師「うーん……。では、私からもお願いをしていいですか?」
兵士長「この期に及んでか。いい根性してんな」
教師「簡単なことですし、私の身柄は自由にしていいですから。おじさま」
兵士長「言ってみろよ」
中庭
勇者「それで俺は華麗に警備の兵士をなぎ倒し、門をくぐったわけよ」
姫「おぉー、かっこいいな」
勇者「だろ? あのときの勇姿は全世界の美女に見てほしかったな」
姫「私が聞いてやったから安心だな」ギュッ
勇者「お前に聞かれてもなぁ」
姫「……なぁ?」
勇者「どうした?」
姫「結婚のことなんだけど……」
勇者「あぁ、先生とは別れることにした」
姫「そうなのか? なんだ、お前はやっぱり私のことが好きなんだな」
勇者「新しい婚約者が現れたからな」
姫「え!? だ、誰のことだ!?」
勇者「お前も見ただろ? あの騎士団の団長さんの美しさを」
姫「あ、あいつが……!? ゆ、油断した……」
勇者「いやぁ、彼女はいいぞぉ。清楚で可憐でおしとやかだからな。どっかのガサツな野生児とはわけが違う」
姫「これでも色々と勉強しているんだぞ」
勇者「そうなのか? 全然そうは見えないぞ?」
姫「ごほんっ。勇者様、わたくしも言葉遣いは上手くなっておりますわよ」
勇者「だったら常にその喋り方でいろよな」
姫「それは疲れるのですわ」
勇者「ダメじゃねーか」
姫「あぅ……」
狼「クゥーン」
姫「ありがとな、慰めてくれ。勇者様は厳しいな」
狼「ガルルル……」
勇者「やめろよ。謝るから。ほら、今日は特別に肉をだな……」
狼「ガァァァウ!!!」
勇者「ぎゃぁー!! きたぁー!!!」
姫「あはははは。まぬけー」
兵士長「相変わらず楽しそうだな、お二人さん。お似合いだぜ」
狼「グルルル……!!」
勇者「ふおぉぉ……!! 牙をだすなぁ……!!」ググッ
姫「そろそろ寝る時間だな」
兵士長「ゆっくりお休みになってください」
姫「そうする。……おい」
勇者「んだよ?」
姫「また、明日な!」
勇者「おう。歯みがけよ」
姫「あいっ」
兵士長「……先生とは話がついたぜ」
勇者「この……!! あっちいけ!!」
狼「ガウッ」タタタッ
勇者「何を話したんすか?」
兵士長「先生は魔女と話がしたいんだってよ」
勇者「それ許可したんすか?」
兵士長「まぁ、な」
勇者「先輩が決めたなら、いいっすけど」
兵士長「危険だと思うか?」
勇者「さぁ、どうなんすかね。俺にはよくわかんねーっす」
兵士長「先生が何故、ここまでして国の内部に入り込もうとするのかまでは分からんが、はっきりしたこともある」
勇者「なんすか?」
兵士長「隣国の王子は相当のクズってことだ」
勇者「なにしてたんすか?」
兵士長「知りたいか?」
勇者「勿論じゃないっすかぁ。他人の弱味ほど握りたくなるものはないっす」
兵士長「女を誘拐しては暴行を繰り返していたらしい。その事実は勿論もみ消されているがな。無実の男が犯人にされたこともあったてよ」
勇者「そ、それって……権力を使って無理やりってことっすか……!! とんだ屑っすね!!」
兵士長「てめぇだって勇者っていう身分を利用してナンパしてんじゃねえかよ」
勇者「俺は無理やりとかはしないっすから!! 無理やりお茶に誘うことはあっても、ホテルに連れ込んだりとかはできないっすから!! マジで!!」
とても続編を楽しんで読ませてもらってる。期待。
兵士長「ハハッ、お前には襲うだけの度胸がねえもんな」
勇者「うすっ」
兵士長「とはいえ、魔女と呼ばれた女の口から出てきた話だ。妄言である可能性も十分にある。証拠もねえしな」
勇者「でも、流言しちゃえば問題なくないっすか?」
兵士長「他国の王族を貶めるようなことを俺らが言っちゃダメだろうよ。庶民の井戸端会議とはわけが違うぜ」
勇者「まぁ、その辺りの事実確認は俺に任せてくださいっす」
兵士長「なんかアテでもあるのか?」
勇者「団長さんっすよぉ。ぬふふふ」
兵士長「……どうする気だ?」
勇者「どうするってホテルでゆっくり話をきくんすよ。俺の腕を枕にして滔々と語ってくれるはず」
兵士長「想像したくねえな」
勇者「嫉妬っすかぁ? 嫉妬っすかぁ?」
兵士長「なんで嫉妬しなきゃいけねえんだよ、きもちわりぃ」
勇者「先輩の奥さんは美人っすけど、俺の妻には敵わないっすからね。妬くのもわかるっす」
兵士長「お前って美形なら誰でもよかったんだな……」
隣国 王城
王子「――あの女が?」
騎士「はい。間違いありません、この目で確認しました」
王子「そうか。ご苦労だったな」
騎士「いえ。それともう一つお耳に入れておきたいことが」
王子「なんだ?」
騎士「あの城には噂通り、姫君なる存在がいるようです」
王子「ほう……?」
騎士「まだ幼い為、女王としての教育を受けているようです」
王子「そうか。やはりあの国王が悪魔の女に産ませたという話は本当のことだったのか」
騎士「まだはっきりとは……」
王子「面白いな。すぐに出発するのか?」
騎士「はっ。陛下の許可も出ています。我が国に仇名す魔女の身柄を引き渡してもらうつもりです。そのための書状も既に用意しています」
王子「……私も共に行くことも伝えておいてくれ。魔女の顔を見てみたいからな」
騎士「仰せのままに」
城内 通路
姫「ふんふふーん」
教師「最近、ご機嫌デスね、プリンセス?」
姫「……」
教師「ワタシに話しかけられただけでそんなに嫌そうな顔をしないでクダサイ。ショックデス。やはりここ数日勇者サマがいるのが嬉しいのデスか?」
姫「……まぁ、そうかもな」
教師「本当に好きなんデスね。でも、それは本当の恋愛感情なのかどうか……」
姫「なに?」
教師「プリンセスは恋に恋をしているだけのお姫様ではないかということデス」
姫「よくわからん」
教師「ウフフフ。プリンセスにはまだ分からないかもしれないデスね」
姫「お前、私を馬鹿にしてるな?」
教師「してませんデスよ。プリンセスが抱いている恋心が本物かどうかはまだ分からないと言っているだけデスから」
姫「本物に決まってるだろ。何いってんだ。それより、勉強だろ。いくぞ」
教師「ハーイ、イキマショー」
墓地
シスター「え!? 兄さんに恋人!?」
勇者「そうなんだ。すげえだろ?」
シスター「よかったね。兄さん、ずっと欲しいって言ってたのに出来なかったから」
勇者「ホントにな。これでようやく俺も一人前の男になれるってもんだぜ」
シスター「あの……。結婚しても私には会いにきてくれるよね?」
勇者「当然だろ? 何いってんだ」
シスター「嬉しい。兄さんと会えなくなるのは嫌だから」
勇者「俺の嫁もお前には紹介してやるって。きっと気に入ってくれるはずだ」
シスター「うん。楽しみにしてる。あ、そうだ、姫様のことなんだけど」
勇者「なんだよ。どーでもいいよ」
シスター「とっても楽しそうにしてるよ。兄さんの考えは大成功だと思う」
勇者「そうか。どうでもいいけど、これからも頼むな」
シスター「うんっ!」
勇者「じゃ、また来る」
広場
勇者(さぁーて。今からホテルの予約でもしておくか……。クヒヒヒ)
勇者「オホホホホ。そうだ。色々と買い揃えていたほうがいいものもあるよなぁ。妊娠したあとに結婚なんて妹も良しとしないだろうし」
「聞いたか? あの噂」
「ああ、姫様のことだろ?」
勇者(かなり広まってきてるなぁ。そろそろ隠すのも限界か。ま、その辺は先輩が考えてくれてるだろうし、俺はゆっくり今後の人生設計を……)
「魔女の娘なんだって?」
「噂だけどなぁ。でもありえるよなぁ。魔女と一時とはいえ一緒にいたんだしさ」
勇者「……ちょっといいですか?」
「あ、勇者様。これはどうも」
勇者「その噂はどこで?」
「え?」
勇者「姫様がいるだとか、魔女の娘だとか。どこで聞いたんですか?」
「さ、酒場で……。もしかして本当のことですか?」
勇者「なわけないでしょう。全く」
城内 謁見の間
兵士「隊長。書状にはなんと書かれていたのですか?
兵士長「王子様まで来るってよ。まぁ、当然といえば当然だな」
兵士「当然、ですか? 身柄を引き渡すだけのことに王族が動くとは……」
兵士長「色々あるんだって。とりあえず入国はさせてやれ」
兵士「はっ。では、その旨を国境の兵に伝達します」
兵士長「できるだけ急いでくれよ。まだまだ各地で暴れている悪者もいるんだからよ」
兵士「わかっています。それでは」
兵士長「おーぅ」
兵士長(王子まで来るのかよ。招待の準備をする身にもなってほしいもんだな)
戦士「――ちょっとぉ」
兵士長「先生になんかあったか?」
戦士「それどころじゃないわよ」
兵士長「あん?」
戦士「魔女の娘が姫様だって噂が流れ始めてるって。今、勇者様があたしに伝えてくれたんだけどぉ」
姫の自室
教師「本日の授業はオシマイデス。しっかりと復習をしておいてクダサイね」
姫「わかった」
教師「ヨロシイ。では、また明日デスね」
姫「早く出て行け」
教師「ウフフフフ。ホントに嫌われていますネ。ワタシ」
姫「……」
教師「以前のことなら謝罪したはずデスよ。貴方は前国王と側室の間に生まれた――」
姫「出て行けって言ってるだろ!!」
教師「……ハイハイ。バーイ」
姫「ふぅ……」
姫「やっぱり、あいつのことは好きになれない」
姫(どことなく、お母さんに似てる……)
姫(大嫌いなお母さんに)
姫「……復習するか」
通路
教師「アラ? なにか御用でも?」
戦士「貴方が流行の発信源なの?」
教師「なんのこ――」
戦士「惚けるの? いいけど、命を捨てなさいよ」
教師「……」
兵士長「待て待て。まだ先生が流したと決まったわけじゃねえだろ」
戦士「でも、この女以外に魔女と姫様を結び付けられるやつなんていないでしょう?」
兵士長「そりゃあ……」
教師「ウフフフ……。アハハハハハ!!」
戦士「何がおかしいの?」
教師「姫様の存在自体はずっと以前から噂されていたことですよ? そこ、わかっていますか?」
戦士「それがなに?」
教師「少し穿てばそれぐらいの見方はできます。姫様がいる。誰の子どもなの。王と魔女の間に子どもがいたんじゃないか?とね」
戦士「あんた……。あまりあたしを怒らせないほうがいいわよ? 化粧しても誤魔化せないぐらいに顔を変えるなんて簡単なんだから」
兵士長「やめとけ。冗談に聞こえねえよ」
戦士「冗談じゃないもの」
教師「ともかく、私を疑うのは結構ですよ。それだけのことをしてきたわけですもの」
兵士長「先生のことは監視を続けてきたはずだ。どうなんだ?」
戦士「……あたしが監視を始める前に流していた可能性もあるわ」
兵士長「監視中は特に変なことはしてなかったんだな?」
戦士「城内の男を誑かそうとしていたけどね」
教師「女が男を誘惑してはいけないんデスかー?」
兵士長「職務中の男を誘惑するのはいい女の条件からは外れるな」
教師「そうデスか。勉強になります」
戦士「引き渡すまでどこかに入れておいたほうがいいんじゃない?」
兵士長「それだと姫の教育係がいなくなっちまうだろ?」
戦士「そんなのどうでもいいじゃないの」
兵士長「お前さんが四六時中監視してるんだ。こんな女に何かできるわけねえだろ?」
戦士「ふんっ。どうなっても知らないから! ぷんぷん!!」
教師「……プリンセスの黒い噂がついに流れ始めましたか」
兵士長「まぁ、いつかはこうなるとは思っていたがな」
教師「いいんですよ。私を恨んでくれても」
兵士長「先生は姫様のことを調べてはいるが、こんな陰口を叩くようなタイプにはみえねえからな」
教師「あら。オジサマ、ワタシに惚れちゃいましたか?」
兵士長「それはねえよ。具体的な噂が流れていねえから、そう判断しただけだ」
教師「具体的……」
兵士長「とりあえず、目立ったことはしてくれるな。こっちはいつでも先生を斬る準備してんだからよ」
教師「ハーイ、キヲツケマース」
兵士長「それから……」
教師「プリンセスにはシークレットですね」
兵士長「気休めだがな。勘の良い姫のことだ。遅かれ早かれ気が付くはずだ」
教師「大変デスね」
兵士長「他人事みたいにいいやがって」
教師「他人事ですもの」
姫の自室
姫「よしっ! 復習終わり!」
姫「……やることないな」
姫「中庭にでも行くか」
勇者『ひめさまぁー』
姫「あいてるぞー」
勇者「よう。元気してるか?」
姫「あいっ。お前は?」
勇者「良い休暇が出来てる」
姫「そうか。良かったな。これから中庭にいくんだけど、一緒にどうだ?」
勇者「暇だし、いいぞ」
姫「おぉ! よし、いくぞ」グイッ
勇者「引っ張るなよ」
姫「うるさい。姫様の命令だぞ」
勇者「我侭なやつだな……」
中庭
姫「わーい」テテテッ
狼「ガウッ!!」
勇者「あまりはしゃぐなよ。服が汚れるぞ」
姫「お前もこいよー!!」
勇者「誰が行くかよ。馬鹿馬鹿しい」
姫「ガァァァウ!!」ガブッ
勇者「見ててやるから遊んどけ」
姫「お前と一緒に遊ぶんだ」
勇者「嫌だっていってんだろ。何が悲しくてガキと遊ばなきゃいけないんだ」
姫「なら、話をするか?」
勇者「どんな?」
姫「そうだな……。結婚式のこととか!!」
勇者「誰と誰のだよ」
姫「そ、そんなの決まっているだろ。言わせるな」
勇者「そうか。俺と団長さんの結婚のことか」
姫「……もういい」
勇者「そうだ。お前に話しておきたいことがあるんだけどよ」
姫「なんだ、なんだ?」
勇者「今度の遊戯会は行くな」
姫「なんでだ? 今、サイコーに盛り上がっているところなんだが」
勇者「俺の言うことが聞けないんですか、姫様?」グニーッ
姫「ふぁふぁっふぁ! ふぃふぁふぁい!」
勇者「それでいい」
姫「その代わり、お前が遊んでくれるんだろ?」
勇者「はぁー?」
姫「いいだろ、それぐらいは!」
勇者「しかたねえなぁ……」
姫「にひぃ! なにする!? なぁーなぁー?」
勇者「姫様がどうぞ決めてくださいよ」
兵士長「お?」
姫「たかーい!! おぉぉ!! いいぞー!!」
勇者「……」
姫「右にいけ! 右に!」ペシペシ
勇者「頭を叩くな!! 振り落とすぞ!!」
兵士長「一国の姫君を肩車とは、いいご身分だなぁ」
勇者「先輩、助けてくださいよぉ。こいつ、頭が高すぎますってぇ」
姫「お疲れ様でございますわ!!」
兵士長「はいよぉ。姫様、ちょっとそいつ借りていいですか?」
姫「いいですわよ! 私は向こうで遊んでいますわ!!」
兵士長「すぐに返しますから」
姫「あいっ」
勇者「……返さなくていいですけど」
兵士長「返さないとダメだろ。勇者様は姫様のものなんだからな。……で、伝えたか?」
勇者「一応。本人も納得してくれましたし、問題ないっす」
勇者と一緒にいる時の姫様はかわいいなぁ
兵士長「ま、城の連中に緘口令を敷いていてもどこからか情報は漏れる。それに度重なる任務で精神的にも疲弊しているし、悪い風は流れちまう」
勇者「俺もストレスたまりまくりっすよぉ」
兵士長「全然、そうは見えないけどな」
勇者「ひっでぇ。また今度野盗狩りしなきゃいけないみたいですし。俺の全身を全身でマッサージしてくれる嫁が欲しいっすぅぅ……。もうすぐできるけど」
兵士長「……こんなときだからこそ、お前には姫様の傍に居てほしいんだがな」
勇者「ヘッ。こっちはいたくもないっすね」
兵士長「ハハッ。まぁ、そういうことにしておいてやる」
姫「おわったかー?」
兵士長「終わりましたよー」
姫「わぁぁぁー」
勇者「俺の真似すんのいい加減やめろ」
姫「やだっ」ギュッ
勇者「お前、俺のことバカにしてるだろ!?」
姫「だって、お前バカだし」
勇者「この……!!! 姫様だからって言っていいことと悪いことがあるんだよぉ!!!」
牢獄
戦士「――いい? 面会は10分だけ。会話の内容もぜーんぶ聞かせてもらうからね」
教師「わかっています。しつこいです」
戦士「あんたにはしつこいぐらいが丁度いいのよ」
教師「ふっ……」
兵士「おい。お前に面会だ」
魔女「――どちらさま?」
教師「はぁい。貴方がこの国を支配しようとした魔女ですか?」
魔女「なにかよう……?」
教師「貴方のお話を是非とも聞きたくて」
魔女「話……?」
戦士(こいつ何を訊く気かしら……?)
教師「まずは前国王との馴れ初めから話してくれますか? ああ、時間は限られているのでできるだけ手短にお願いします」
魔女「……」
教師「ウフフフフ。どうせ死ぬんですから、いいじゃないですか、見知らぬ他人に身の上話をするぐらいね」
城内 謁見の間
兵士長「で、魔女対魔女の会談はどうたったんだ?」
戦士「なんてことない世間話だったわ。ちょっと拍子抜けしちゃった」
兵士長「会話記録を見る限り、なんつーか人物調査してるだけみたいだな」
戦士「魔女と意気投合して何かやるーって感じにも見えなかったしぃ。あの女はホント、何考えているんだか」
兵士長「すっ……ぱぁー……。引き渡すまでの辛抱だ。あとは隣国がケツを拭いてくれる」
戦士「あたしもお尻拭いてほしいわ」
兵士長「意味が違うだろ」
兵士「隊長!!」
兵士長「来たか」
兵士「はい!! こちらに向かってくる一団を確認しました!!」
兵士長「ついに来たか。出迎えの準備は出来てるな? いくぞ」
戦士「化粧してきていいかしら? 王子様がくるんでしょう?」
兵士長「してこい。できるだけ厚化粧にしておいてもいいぜ?」
戦士「りょーかぁーい」
>>190
兵士長「ついに来たか。出迎えの準備は出来てるな? いくぞ」
↓
兵士長「出迎えの準備は出来てるな? いくぞ」
中庭
姫「ふーん……!!」ググッ
勇者「姫様ぁ、本気出してます? これでは腕相撲にならないんですが?」
姫「お前! わざと負けるということを覚えろ!!」
勇者「わざと負けたらどーせ怒るだろ?」
姫「うおぉぉ!!」
勇者「えいっ」パタッ
姫「わぁぁ……。なんでだ……勝てない……!! お遊戯会では無敗だったのに……!!」
勇者「そんなこともしてたのか。随分、楽しんでたんだな」
教師「勇者サマっ」ギュッ
姫「な!? なんだお前、いきなりぃ!!!」
勇者「先生。やめてください。あなたもう過去の女性。俺はもう新しい愛を見つけたんです」
教師「アラ、なかなか会いに来てくれないと思ったら……。寂しいデスね……」スリスリ
勇者「すみません。でも、惚れた貴方が悪いんだ」
教師(何いってるのかしら、童貞のくせに。……もうこいつの利用価値はないし、どうでもいいけど)
姫「はなれろー!!!」ドガッ!!
教師「アンッ。痛いデス、プリンセス」
姫「ガルルルル……!!!」
教師「まぁ、怖いデスー」
勇者「なにより貴方を信用することがもうできなくなったんで」
教師「へぇ、そうですか」
勇者「そうですよ」
姫「あぅ?」
兵士長「こんなところで油売ってたか。早くこいよ」
勇者「どうしたっすか?」
兵士長「ついに来たぜ。隣国の騎士団ご一行がな」
勇者「キター!!!! やっとキター!!!! 今、いくっすぅぅぅぅ!!!!」ダダダダッ
姫「あー!! 置いてくなぁー!!!」
兵士長「こらこら姫様はダメだ。先生は一緒に来てもらうけどな」
教師「ハイハイ。ワカッテまぁーす」
城門
勇者「でひゃひゃひゃひゃ!!」
騎士「勇者様!! お招き頂き感謝します!!」
勇者「愛した相手との約束は絶対に守るんです。俺、勇者ですから」
騎士「流石ですね」
王子「――君が噂に名高い勇者殿か。お会いできて光栄の極みですよ」
勇者「誰ですか、こいつ?」
騎士「わ、我が国の王子です!! こいつとか言わないでください!!」
勇者「おっと……。大変失礼いたしました、王子。ようこそお越しくださいました」
王子「よろしくお願いします」
勇者「こちらこそ」
騎士「はぁ……。ところで早速ではありますが魔女の身柄を……」
兵士長「魔女はここに」
教師「ハーイ。プリンス、オヒサシブリー」
王子「本当にな。魔女め」
兵士長「これは書類だ。確認してくれ」
騎士「……確かに。これで身柄の引渡しは完了です」
王子「貴様のことはたっぷりと可愛がってやるからな」
魔女「楽しみです」
勇者「いいなぁー」
兵士長「おい、何言ってんだよ」
勇者「そうだったぁ!! あの、今日は、今日こそは一泊、いや、二泊はしていきますよね?」
騎士「え、ええ……。ここまで長旅でしたので……王子にも休んでいただかなくてはなりませんし……」
王子「ご迷惑でなければ、この街に二、三日ほど滞在してもよろしいですか?」
兵士長「何をなさるおつもりで?」
団員「おい。王子に向かってその口の利き方はなんだ。無礼だぞ」
王子「やめろ。神経質になるのも仕方が無い。ちょっとした諍いも大きな戦争になる」
団員「は、はい。申し訳ありません」
王子「失礼。少しばかり街の見学をさせてください。それだけで十分ですから。私は他国へ出向くことがないものでして、求知心や好奇心を煽られてしまうんです」
兵士長「まぁ、そういうことでしたら、どうぞ。食事の用意もさせますよ」
>>195
魔女「楽しみです」
↓
教師「楽しみです」
通路
王子「ほう……。素晴らしい造形ですね。歴史ある城であることは知っていましたが、まさかここまでとは」
兵士長「そんなに褒めないでください」
王子「しかし、こんなにも美しい城であるにも関わらず、国自体は様々な問題を抱えているようですね」
兵士長「恥ずかしい限りですよ。あんなことがあったからなんて言い訳にしかなりませんが」
王子「治安維持にはかなり苦労されているのですね。騎士隊から話は伺っています」
兵士長「各地に駐在している兵だけでは手が回らなくて、大変なご迷惑をおかけしたこと改めて謝罪するとともにお礼を……」
王子「やめてください。私たちは人間として当たり前のことをしただけですから」
兵士長「ありがとうございます」
王子「それ故に、この国を危機を見過ごせはしないと、父上も言っているのです」
王子「王の不在では国民も不安に思うことでしょう。民は象徴が無ければ途方にくれる。いや、路頭に迷い、犯罪に手を染めてしまうかもしれない」
兵士長「そんな大袈裟な……」
王子「大袈裟ではありませんよ。それだけ国の象徴たる王は大事なもの。助けをもとめ、すがる人物がいるだけで大きな悩みは解消する。……そこで話があります」
兵士長「なんでしょうか?」
王子「我が国と同盟を結びませんか?」
中庭
勇者「今度、俺の妹と会ってくれませんか? 貴方のことを紹介したいんです」
騎士「でも、いきなりでは妹さんも驚くのでは?」
勇者「そんなことはありませんよ。俺の妹は心が広いですから」
騎士「……あのぉ」
勇者「はい?」
騎士「私のことを本気で……その……」
勇者「今更ですね」ギュッ
騎士「あ……」
勇者「今の俺には君しか見えません。先生、いや、あの魔女との関係もスパっと切りました」
騎士「……」
勇者「今日、ホテルの予約しています。この部屋に来てください」
騎士「そ、そんな……私、まだ心の整理が……それにお友達からって……」
勇者「俺と貴方の間に友情はない。あるのは愛情です」
騎士「勇者様……」
勇者「それでは」
騎士「あ……」
勇者「ふっ……」
勇者(俺、ちょーかっこいい……!! 彼女のハートに俺の愛が響きまくったはず。今までありがとう、恋愛マニュアル。お前のおかげで俺は強くなれた)
騎士「はぁ……」
戦士「――ちょっとぉ?」
騎士「うわぁ!? な、なんですか!?」
戦士「あんた、勇者様をどうしようとっていうわけぇ?」
騎士「ゆ、勇者様が……その……」
戦士「なんでよぉ。あたしには見向きもしてくれないのにぃ!! おかしいわ!!!」
騎士「それは性格の問題……とか……」
戦士「なによ!!! あんたよりもあたしのほうがよっぽど乙女よぉ!!!! ふざけたことぬかすんじゃねえやぁい!!!」
騎士「ひぃ……」
戦士「まだ時間はある。さっさと勇者様に処女捧げるかぁ」
騎士(大変……!! 勇者様は私が守らないと……!!)
会議室
兵士長「――つまり、同盟関係になればそちらからも兵を派遣してくれると」
王子「当然ではないですか。同盟国とは家族も同然。困窮しているなら助けます」
王子「何より、この国の民の安全も約束されます」
兵士長「……そちらの要求は?」
王子「いえ。特にありません。まぁ、本来なら政略結婚でもするのでしょうか、貴方たちの国には王族はいないとのことですし」
兵士長「まぁ……」
王子「どうですか? 話だけでもしてもらえませんか?」
兵士長「……二つ、聞かせてもらっていいですか?」
王子「どうぞ」
兵士長「王子様の秘密は真実なんですか? 婦女を誘拐しては暴行していたという……」
王子「魔女から聞いたのですか? ハハハ。そんな事実はありませんよ。と私はいうしかない。どちらの言葉を信じるかは任せますが」
兵士長「そうですね。では、教育係から外したあと、その魔女であったという事実を隠していたのは?」
王子「指名手配をしてしまえば魔女は警戒を強めどこかに身を隠してしまうか、精神的に追い詰められ自殺を図る可能性もあります。どちらにしても困りますからね」
兵士長「そうかい……」
夜 通路
勇者「――今、大臣共は話合いをしてるんすか?」
兵士長「うちらにしてみれば願ってもねえ申し出だから、答えは分かりきってるが一応は会議しとかないとな」
勇者「先輩はどう思ってるんすか?」
兵士長「先生の話は信じてねえが、あの王子のことも信用できねえ」
勇者「疑り深いっすねぇ」
兵士長「姫のこともあるんだ。簡単に納得はしねえよ」
勇者「同盟国になったら、姫様はどうなるんすか?」
兵士長「存在は知られることになるだろ。そのとき形ばかりの婚約はあるかもしれねえな」
勇者「姫も遂に結婚かぁ……。いい男に巡り合えたな」
姫「――呼んだか?」
勇者「呼んでねえよ」
姫「そうか」
兵士長「ひーめー。どこに行く気で?」
姫「いつものところだ。いいだろ」
兵士長「勘弁してくださいよ。まだ隣国の兵士もいるんだ」
姫「よく見ろ。教会に行くときの地味なやつだ。これなら誰が私のことを姫だと思うんだ?」
兵士長「しかし……」
勇者「いいじゃないっすか、先輩。行かせてやりましょうよ」
兵士長「お前が傍にいるなら構わねえが」
姫「一緒に来るか?」
勇者「わりぃな。今日は先約があるんだ」
兵士長「団長殿のご一泊か……」
勇者「それは分かりません。まだ迷っているようですから」
兵士長「だろうなぁ」
勇者「でも、待っておかないと。もし俺の愛に応えてくれるかもしれないんすから」
兵士長「今回は応援しねえぞ」
勇者「いつもしてないじゃないっすか!! それじゃ!! 行ってきます!!!」
兵士長「……俺でよければエスコートしますよ、姫様」
姫「うむ。頼むぞ」
>>199
戦士「あんた、勇者様をどうしようとっていうわけぇ?」
↓
戦士「あんた、勇者様をどうしようっていうわけぇ?」
>>202
兵士長「団長殿のご一泊か……」
↓
兵士長「団長殿とご一泊か……」
中庭
姫「おーい!!」
狼「ガウッ!!」タタタッ
姫「偉いな! ずっと隠れてたのか?」
狼「クゥーン……」
姫「よしよし。今日はいいものをやるぞ。肉だー」
狼「ワオォォォォン!!!」
兵士長「静かにしろよ。バレるだろ」
狼「グルルルル……」
兵士長「唸るなよ」
姫「いつも悪いな」
兵士長「もう慣れちまったからな」
姫「こいつのことは嫌いにならないでくれ。いつかきっとお前のことも好きになってくれるはずだ」
兵士長「だと、いいんですがね」
姫「私を信じろ! 絶対に好きになってくれる!!」
兵士長「ハハッ。姫様にそう言われたら俺もがんばるしかねえな」
姫「そうだ! がんばれよ!」
兵士長「獣は嫌いなんだがなぁ」
姫「なぁ。あの女、今はどこにいるんだ? 昼間、連れて行かれたけど」
兵士長「地下牢。悪い奴だったんでね。見に行きますか?」
姫「いやいい。それよりもこれからはまた勇者様が私の勉強に付き合ってくれますの?」
兵士長「まぁ、そうなるでしょうね」
姫「そうか。なるべく、早く次の教育係を用意してくださいましね」
兵士長「……なんで?」
姫「なんでって、あいつも色々と仕事があるだろ。だからだ」
兵士長「気なんて回す必要はないですよ。あのバカ野郎は頑丈ですから」
姫「それでもだ!! いいな!!」
兵士長「仰せのままに」
姫「よし! では寝る!! お休み!!」
兵士長「あいよぉ。姫様もゆっくり休んでください」
地下牢
王子「面を上げろ」
教師「……」
王子「私のことをは公にしなかったようだな。根も葉もない嘘だから公表はできなかったか?」
教師「違いますデスよ。決定的な証拠がなかったからデス。状況証拠でよければたくさんあったんデスけどね」
王子「余裕だな。どちらにせよ、お前は極刑だ」
教師「……プリンス。この国にはプリンセスがいるという噂をご存知ですか?」
王子「それがなんだ?」
教師「この国を掌握しようとした魔女の娘であることも?」
王子「風聞程度にはな」
教師「もうお会いになった?」
王子「何がいいたい?」
教師「私の死刑を取り下げてくれるのなら、いいことを教えて差し上げますよ」
王子「貴様……」
教師「一国のプリンセスを落とす方法をね。ウフフフフ」
騎士「……」ソワソワ
門兵「あの、お手洗いはあちらです」
騎士「そうではありません。約束の時間があって……」
門兵「あぁ。しかし、まだ時間はかかりそうですね」
騎士「今日は行けないかもしれませんね……。怒るでしょうか、勇者様は……」
門兵「勇者殿と?」
王子「――戻ったぞ」
騎士「王子!! どうでしたか?」
王子「死刑を取り下げろと言ってきた。哀れで愚昧な女よ」
騎士「魔女はなんと?」
王子「この国の姫君と話がしたいが、できるか?」
騎士「王子!! それはまだ無理です!! 同盟関係が結ばれるまで待ったほうがいいかと……!!!」
王子「姫君のことはいずれ向こうから教えてくる。今、話そうが関係はない。それに友好関係を築く上でも会うことに損はない。そうであろう?」
門兵「自分からは何も言えません」
王子「では、こちらの隊長殿に話をしてみるか」
会議室
兵士長「姫様と……」
王子「聞きました。姫君のことは。なんともお気の毒です」
兵士長「……」
戦士(あーあ。いわんこっちゃないんだから。あんな女狐さっさと殺しちゃえばよかったのに)
王子「国を恐怖に陥れた魔女の娘。その者が女王になれば、民は不満を爆発させることでしょう。それはどうお考えですか?」
兵士長「今現在、しっかりと色んなことを学ばせている最中です。女王になっても堂々と前に出られるように」
王子「それでも疑念の種は取り除けません」
兵士長「あんたの国と同盟を結べば心配はいらねえだろ」
王子「それだけでは無理です。魔女の子どもですよ? その事実を素直に受け止め、女王になることを祝福するものがどれぐらいいるのか」
兵士長「王子様には妙案でもあると?」
王子「ええ。簡単なことです。存在を消してしまえばいい」
戦士「……」
兵士長「小さな諍いが戦争になる。王子様はそう言いましたよね?」
王子「勘違いしないでください。姫君には未来永劫幸せに暮らしてもらいますよ。存在を消すというのは最初からそんな人物など存在していなかったことにすればいいということです」
兵士長「どこかで匿うってことか」
王子「聞いたところによれば、この城の兵士も不満を持っているとか。このままでは危険ですよ」
王子「その点、我が国ならば姫君の顔は知られていませんし、陰口を言われることもない」
兵士長「そうだろうな」
王子「姫君は我が国が預かります。その代わりと言ってはなんですか、手厚い支援もさせてもらいます」
兵士長「支援? 物資の補給とかか」
王子「経済面も一緒に」
兵士長「至れり尽くせりですなぁ、王子様。姫様を預かってもらうんだから、それを申し出るのは普通俺たちのほうじゃないか?」
王子「子ども1人の未来を受け取るわけですから、それなりの対価は必要になります」
兵士長「……大臣らにも話してみるが、1番大事なのは本人の意思だ」
王子「承知していますよ。姫君が拒否するのであれば、それでいい。私とて望まぬ愛まで受け取れとは言えません」
兵士長「理解ある人でよかったぜ」
戦士「……」
騎士(うぅ……勇者様、絶対に待ってる……)ソワソワ
戦士「トイレはあっちよぉん」
通路
王子「では、夜分遅くまで申し訳ありませんでした。おやすみなさい」
騎士「失礼します」
王子「明日のことを話そう。騎士団を集めろ」
騎士「はっ!!」
騎士(今日は行けそうにない……。勇者様……申し訳ありません……)
兵士長「――どう思う?」
戦士「裏はありそうね」
兵士長「子ども1人を受け取るから、金を払いますだってよ。人身売買じゃあるまいし」
戦士「でも、姫様がイヤって言えばいいんでしょ? ヨユーじゃない」
兵士長「まぁな。姫がここを離れるなんてことはちょっと考えられねえし」
戦士「でっしょー。あたしだって姫様と離れ離れになっちゃうのはイヤだもーん」
兵士長「とりあえず話すだけ話してはみるか」
戦士「ところで、勇者様はぁ?」
兵士長「さぁ、今頃いい宿の一室でむせび泣いてんじゃねえの?」
翌朝 中庭
勇者「うぉぉぉおおおおお!!!! わぁぁぁぁぁ!!!!!」
兵士「どうしたんだ?」
門兵「どーせフラれたんだろ?」
兵士「アハハハ。そうだな」
勇者「誰だぁ!!! 俺を笑ったやつはぁ!!!!」
兵士「いえ!! 笑っていません!!!」
勇者「なんだぁ、空耳かぁ……。くそぉ……幻聴まできこえてきたのか……!! 終わりじゃねえか……おれぇ……!!!」
狼「クゥーン」ペロペロ
勇者「狼畜生の同情なんざぁ糞くらえだぁぁ!!!」
騎士「勇者様!!」
勇者「……!!」
騎士「き、昨日はも、申し訳ありません!! 仕事のほうが終わらなくて……。あの、今晩!! 今晩なら!! 絶対に時間を作れますから!!」
勇者「……わかりました。予定を空けておきます」
騎士「あぁ……よかったぁ……」
姫の自室
兵士長「――以上だ。どうする?」
姫「私は姫になれないのか?」
兵士長「まぁ、王子様の言うことを承諾したらな」
姫「そうか」
兵士長「姫様が決めてくれ」
姫「難しい話だな」
兵士長「確かにな。だか、自分の気持ちに正直になってくれ。俺たちは姫様の答えを受け入れるつもりだ」
姫「……よし!」
姫「あいつに、勇者様に相談したいですわ」
兵士長「すぐに呼んで来ます」
姫「頼む」
兵士長「了解」
姫「……」
姫「なんていうかな……」
>>212
姫「私は姫になれないのか?」
↓
姫「私は女王になれないのか?」
中庭
兵士長「部屋にいねえし、どこに……。お?」
勇者「子どもは4人は欲しいんです」
騎士「養子じゃダメなんですか?」
勇者「心配しないで。俺が孕ましてあげます」
騎士「えぇ!? そんなこと……できるんですか……?」
勇者「はい」
騎士「す、すごい……。って!! どうしてそんな結婚後の話になっているんですかぁ!?」
勇者「だって、一度関係をもったら結婚するでしょう、フツー」
騎士「へぇぇ?」
兵士長「なに気持ちわりぃ会話してんだよ」
勇者「なんすかぁ!! 邪魔しないでくださいよぉ!!!」
兵士長「姫様が呼んでる。こい」
勇者「なんだよ、邪魔ばっかりしやがって。――それでは今晩、同じ部屋をとって待っていますから」
騎士「は、はい! 必ず行きます!!」
姫の自室
姫「お前はどう思う!?」
勇者「そーだなぁ。王子様はいい人そうだし、いいんじゃないか?」
姫「そ、そうか」
勇者「お前もこんな窮屈な暮らししなくてよくなるしなぁ」
姫「……」
勇者「でも、まぁ、あれだ。別に嫌ならいいんじゃないか?」
姫「いいのか? それ我侭だろう?」
勇者「はぁー? 俺に散々我侭言っておいて、なにいってんだよ、今更すぎ」
姫「おぉ……!」
勇者「お前が居たいっていうなら面倒は見る。それだけ」
姫「そうかぁ」
勇者「じゃあな。俺は忙しいんだ」
姫「いつもありがとな」
勇者「ふんっ」
通路
兵士長「なんて言ったんだ?」
勇者「好きにしろって言っておきましたけど?」
兵士長「最高の言葉だな」
勇者「ま、どっちでもいいんすけどねぇ」
兵士長「姫はお前にそう言って欲しかったはずだぜ」
勇者「ふぅーん」
兵士長「んじゃ、また任務もあるが元気だしていけよ」
勇者「うっす!!! 今晩、嫁とイチャイチャして英気を養ってくるっす!!!」
兵士長「また約束したのか?」
勇者「はぁい。昨日は仕事でこれなかったと言っていたので」
戦士「勇者さまぁーん!!!」
勇者「きたぁー!!!」
戦士「あたしも抱いてよぉー!!!」
勇者「なんでそうなるんだ!!! いやっす!!! 絶対に嫌だぁー!!!」
夜 中庭
姫「聞いてくれ。私、別のところに行くことになるかもしれないんだ」
狼「クゥーン」
姫「でもな。あいつは好きにしていいって、言ってくれた。だから、好きにするんだ」
狼「グルルル……!!」
姫「なんだ、もう少しぐらい話させてくれて――」
王子「今宵は生憎の空ですね。星が見えない」
姫「だ、誰ですの?」
王子「話は聞いているでしょう、姫君」
姫「隣の国の王子様、ですの?」
王子「その通り。夜はここにいると聞きまして」
姫「……なにか?」
王子「少し話しませんか?」
姫「何を話すんだ?」
王子「これからのをこと、色々」
夜 ホテル スウィートルーム
勇者「ふぅー……ふぅー……」
勇者「今夜こそ……今夜こそ……グフフフフ……ギヒヒヒヒヒ……」
騎士『ゆ、ゆ、ゆうしゃ……さまぁ……』
勇者「あいてますよぉー!!!」
騎士「……」
勇者「ささ、こちらへ」
騎士「お邪魔します……。わぁ、ステキな部屋ですねー」
勇者「でしょう。見てください、この夜景」
騎士「凄い……。綺麗ですね」
勇者「そうですか?」
騎士「綺麗ですよ」
勇者「でも、君の美しさを前にすれば、こんな夜景も霞む」
騎士「や、やめてください……恥ずかしい……」
勇者(妹のときに出来なかったことができたぞ! 今日の俺は完璧だなぁ!!!)
騎士「あの……」
勇者「お酒でも飲みましょうか」
騎士「いえ。まだ職務中ですから」
勇者「そんなこと仰らず。一杯だけでも」
騎士「……では、一杯だけ」
勇者「はい」
騎士「んっ……。ふぅ……。つよい、ですね」
勇者「でも、気分は良くなってきます」
騎士「そうですね……」
勇者(ふふふふ……。恋愛マニュアル通りだ……!! いける……!! 今夜はもう20割の確率でいけるぅぅ!!!)
騎士「はぁ……からだが熱くなってきましたぁ……」
勇者「そうですか。脱ぎますか?」
騎士「しかし……」
勇者「いいじゃないですか。俺と貴方しかいないんですから」
騎士「……そうですね。脱ぎます」スルッ
勇者「ほぉぉ……」
騎士「あまり見ないでください……照れます……」
勇者「流石は騎士団の団長。たくましい体つきだ」
騎士「あ、ありがとうございます」
勇者(胸がないけど、まぁ筋肉つけたらそっちはダメになるっていうしなぁ。仕方ないかぁ)
騎士「あの、なにか?」
勇者「いえ。なんでもありません」
騎士「……勇者様、私、覚悟を決めてきました」
勇者「え? なんの覚悟ですかー?」
騎士「勇者様! 私を本当に愛しているのですね!?」
勇者「勿論!!」
騎士「私、そういう気とか全然なかったんですけど、勇者様の熱烈な気持ちを受けて、少しだけ考えを改めました」
勇者「いいことです」
騎士「勇者様……優しくしてください……。はじめて、で……その……どうしたらいいのかわからなくて……」モジモジ
勇者「任せてください!!! めちゃくちゃ勉強してきましたから!!!!」ガバッ
城内 中庭
王子「あなたの母親はこの狼を使い、先代勇者を殺めたそうですね」
姫「知らない。記憶にない」
王子「そしてこの国を……」
姫「言うな!!!」
狼「グルルルル……!!!」
王子「姫よ。気が付いているのではありませんか?」
姫「な、なんのことだ?」
王子「貴方は世界に望まれていないことを」
姫「え……」
王子「魔女の血を引く貴方のために多くの人間が苦労している。ここの兵士は勿論、大臣も、そして……」
姫「あ……ぅ……」
王子「勇者様も」
姫「……」
王子「貴方が国の象徴にさえなっていれば起こり得なかったことも多いはずです。たとえば多発している野盗の悪事などはいい例でしょう」
姫「それは関係ないって……」
王子「国王不在の国は荒れる。それは歴史が証明している。500年代に起こったことは勉強しましたか?」
姫「……し、したけど」
王子「何がありましたか?」
姫「多くの内乱があって、人がたくさん死んだ……」
王子「近いうち、その歴史は繰り返されることになる。戦争が起これば甚大な被害は出ましょう」
姫「うっ……でも……」
王子「ですが、貴方が私の国へ来て、静かに暮らすだけでそんなことは起こりません。約束します」
姫「わた、私は……」
王子「いいのですか? 傷だらけになる勇者様を見たいのですか? これ以上の迷惑をあなたはかけることになる」
姫「でも、あいつはぁ……」
王子「教会で知り合えた友人も死ぬことになる。それでもいいというのですか?」
姫「ぐっ……うぅ……!!」
王子「そうなれば今度はあなたが魔女と呼ばれることにもなるでしょう」
姫「そ、それは嫌だぁ!!! 私は!! 私は魔女じゃない!!! 魔女じゃ……」
王子「ならば、貴方自身でそれを証明するしかない。姫よ。私と共に行きましょう」
姫「そ、相談させて……」
王子「彼らに相談している間にもまた命が消えている。早急な決断が必要なのです」
姫「うぁあぁ……」
王子「この国の平和を望むなら、今すぐにでも行きましょう。既成事実さえ作ってしまえば誰も文句は言いませんよ」
姫「だけど……」
王子「魔女になりたいのですか?」
姫「なり、たくない……!!」
王子「貴方のことは庶民の間でも噂されている。魔女の娘ではないかと。その噂を払拭するためにも、私について来るべきです」
姫「ぐっ……」
王子「さぁ」
狼「グルルルル!!!!」
王子「唸るな。獣ごときに姫君の命運は決められないぞ」シャキン
姫「や、やめろぉ!! そいつにだけは手をだすなぁ!!!」
王子「私も一国の王子ですから、ここで私が傷を負えば貴方の責任問題にもなるでしょう。姫君が決心しない限り事態は悪化していくだけです」
姫「あぁぁ……!!」
狼「ガルルルル……!!!」
王子「姫よ。さぁ……」
兵士長「――待ちな。それが王子様のやることか?」
王子「何か?」
戦士「何かじゃないわよ。姫様を泣かせてんじゃないわよ」
王子「私は本当のことを言っているだけです。この国に平和をもたらすなら、そうするしかない。違いますか?」
兵士長「だろうな。国も安泰だし、誰もが幸せになる」
王子「でしょう?」
兵士長「ふぃー……。だがなぁ、姫が嫌がってるなら話は別だ」
王子「なんだと?」
兵士長「悪いけど、国民には不幸せのままでいてもらう」
王子「ハハハハ。おかしなことを。貴様は全ての国民よりも少女の想いをとるというのか?」
兵士長「ああ、そうだよ。糞野郎」
戦士「なんか文句でもあるわけ?」
王子「……この国に未来はないな。愚民が権力を握ると腐敗する。これも歴史が証明している」
狼「グルルル……!!!」
兵士長「余計なお世話だ。姫様、そろそろ寝る時間ですよ。部屋に戻ってください」
姫「でも……」
戦士「安心して。こんな奴、ぶっころすから」
王子「戦争になるぞ?」
兵士長「気にすんな。もう戦争は始まってる。てめぇが姫様を泣かせた瞬間からなぁ」
王子「そうか。では、致し方ない」
狼「ガゥ……!?」
団員「王子を守護しろ!!」
「「おぉ!!」」
戦士「騎士団……!?」
王子「護衛をつけずにこんなことをすると思うか? 他の兵を呼んでもいいぞ。何人くるかは知らんがな」
兵士長「……ハハッ。悪いな。でけえ仕事になっちまって」
戦士「今度のお給料はちゃんと色つけよぉ」
教会
シスター「姫様、今日もお遊戯会には来ませんでしたね」
神父「恐らく、あの噂の影響かもしれませんね」
シスター「でも、どこからあんな噂が……」
神父「憶測を結びつけるのは国民の性でしょう。ただでさえ今の情勢は不安定ですからね」
シスター(兄さん……。少しぐらい説明にきてくれてもいいのに)
『だれかぁぁぁ……あけてくれぇぇぇ……』
神父「こんな夜更けに誰しょうか」
シスター「私が見てきます」
神父「気をつけてください」
シスター「はい」
『あけてぇぇぇ……あけてぇぇぇぇぇ……!!!』
シスター「い、今あけます」ギィィ
勇者「ぐすっ……えぐっ……おぉぉ……」
シスター「に、兄さん!? どうしたの!?」
勇者「神よぉぉ!!! 何故、俺にこんな仕打ちをぉぉぉ!!! 俺が何をしたっていうんですかぁぁぁ!!!!」
勇者「真面目に生きてきたつもりです!! 母さんが死んでから家事は全部自分でやってきたし!!! 仕事だって真面目にやってきましたぁ!!!」
勇者「勇者になればモテるといわれ、他人の10倍は訓練したんです!!! 吐くほど苦しい訓練を2年もしたんです!!! しかも2年間、一度もナンパしなかった!!!」
勇者「なのに……なのに……うえぇぇぇぇん!!!!! あんまりだぁぁぁ!!!!!」
神父「勇者様……あのぉ……」
シスター「神父様。今はそっとしてあげてください」
神父「何があったのですか?」
シスター「将来を誓った相手が……男性だったそうで……。その……あの……ホテルで……あの……色々しようとしたときに初めて気が付いたって……」
神父「おぉ……アーメン……」
シスター「その人、隣国の騎士団団長らしいんですが、神父様はご存知ですか?」
神父「ああ。実際に見た事はありませんが書物の写真では見たことがあります。確かに美形でした。一見しただけでは女性と見紛うほどに」
勇者「うわぁぁぁぁぁ!!!! ああああぁぁぁぁ!!!!! おぇぇぇ……あぁぁぁぁぁ……!!!!」
シスター「兄さん……痛々しい……」
神父「しかし、隣国の騎士団は厳しい入団テスト故に女性では入団できないことで有名でしたが……」
勇者「そんなのしらねーっす!!! 先にいってくださいよぉぉぉ!!!! わぁぁぁぁぁ!!!!!」
勇者「……さてと」
シスター「兄さん?」
勇者「神父様。俺を雇ってください」
神父「はい?」
勇者「もうこの世に未練はありません。俺、神の道に生きます。全ての煩悩を捨てるです」
神父「そんな爽やかに言われても哀愁しか漂ってきません」
勇者「お願いします。このままじゃ俺、どうにかなりそう」
シスター「兄さん、落ち着いて」
勇者「うるせぇ!!! じゃあ、もう、お前が俺の嫁になればいいじゃない!!!! 結婚してよぉぉ!!!!」ギュゥゥゥ!!!
シスター「きゃっ!? 兄さん!! 兄妹だからできないの!!」
勇者「うるせぇ!! こんなに可愛い妹と結婚できないだぁ!? 世の中は間違ってる!!!!」
シスター「兄さん……くるしい……」
神父「勇者様、ここは一度ご両親の墓前に立ってゆっくりと考えてみるのはどうでしょうか? ご両親も心配しているはずです」
勇者「……そうっすね。ちょっと行ってくるっす」
神父「はい。ごゆっくり」
城内 中庭
団員「ぐっ……あぁ……!!」
兵士長「はぁ……はぁ……。青二才が……」
「おぉぉぉ!!!!」
兵士長「ちぃ……」
戦士「はぁぁぁ!!!!」ザンッ!!!!
「ギィ……!?」
兵士長「助かった。今月の給料は期待しててくれ」
戦士「ありがと。欲しい口紅があったのよね」
姫「おぉ……!!」
王子「……」
兵士長「さてと、このまま引き下がるなら追いはしねえ。消えな」
王子「それはできないな。ここで退けば我が国が敗北したことになる」シャキン
姫「ひっ……」
戦士「切っ先を向けている相手をよーく見て。それはあんたを殺す相手じゃないでしょう?」
王子「まさか騎士団相手にここまでやる者がいるとはな。面白い」
兵士長「早く離せ。どっちにしろてめえは死ぬんだから、今わの際ぐらい善行したらどうだ?」
王子「私はこの国を憂いている。そしてこれは悠久の平和に必要なこと」
戦士「いいから姫様を離せっていってんでしょ」
王子「安心してくれ。私もこんなに美しい姫君を殺すつもりはない」
狼「グルルル……」
王子「ただし、醜い顔にすることはできる」
姫「あぅ……」
兵士長「……」
王子「姫よ。ここで誓いますか?」
姫「え……?」
王子「我が国に来ることを」
姫「……」
戦士「ダメよ……姫様……勇者様のことがあるでしょう……?」
姫「――分かった。ついていく。だから、みんなを助けてください」
兵士長「姫、本気かぁ? 俺たちはまだ戦えるんだぜ?」
姫「いいんだ。ありがとう。今まで優しくしてくれて、感謝しています」
戦士「勇者様のことを裏切るわけ……?」
姫「……」
王子「姫は国を救った。これで誰も魔女とは口が裂けても言えない筈だ。何が不満なんだ?」
兵士長「姫様、あいつは確かに馬鹿野郎で目に付く女全てに声をかけるようなクズだ。でも、姫様のことは真剣に考えて……」
姫「悪い。もう決めたことだ。私がこうすることで、お前たちに恩返しができるだろ」
戦士「ざけんじゃないわよぉ!!!」
姫「……」
戦士「行くなら……あたしが殺して……やるから……」
姫「ごめんなさい」
王子「では行きましょうか」
姫「はい」
兵士長「まて……!!」
王子「――誰に向かって口をきいている? 俺は未来の王だぞ?」
王子「ハーッハッハッハ!!! 姫様は俺の傍を選んだんだ!! 諦めろ!!!」ドガッ!!
兵士長「がっ……!?」
戦士「この……!!」
王子「フラフラだなぁ? オカマ野郎?」ドゴッ!!
戦士「づっ……!?」
王子「流石に騎士団を相手にしたあとではそうなるか。まだやるなら外にいる俺の兵隊を呼んでもいいんだが」
姫「手荒なことはやめてくれ!!! 私は従うと言った!!!」
王子「わかりました。姫君、何か持っていきたいものはありますか?」
姫「……一つだけいいか? ブーケを渡す約束してるんだ」
王子「ブーケ? それぐらいならいいですよ」
姫「助かる。取って来る」
王子「私も行きますよ」
兵士長「……姫に助けられたな。外に待機してる兵を呼ばれたら、俺たちは死んでた。あぁー、俺の部下たちは無事なのかぁ……?」
戦士「ふん……どうでもいいわよぉ……。初めて仕事失敗しちゃったじゃない……だれが責任とってくれるのぉ……これぇ……」
狼「グルル……」
城門
騎士(勇者様……。私の体に驚いていた……。筋肉がつきすぎていたから……?)
騎士「あ……。王子……」
王子「おぉ。戻ってきたか。今から迎えにいこうとしていたのだぞ」
騎士「そ、そうですか。でも、何故? まだ帰国するには……」
王子「姫君が承諾してくれた。我が国に来ることをな」
騎士「な……!?」
姫「……よろしくな」
騎士「王子。皆さんは納得されたのですか?」
王子「問題ない。気にするな。用事を済ませたらすぐに出立する。お前は馬車の準備をしろ」
騎士「はっ!!」
王子「姫、教会へ向かいましょう。誰か護衛を頼む」
憲兵「了解!!」
姫「……」
騎士「他の団員の姿がないな……」
教会
神父「勇者様のご様子は?」
シスター「お墓にしがみ付いて泣き崩れています」
神父「なんという悲劇……」
『開けてください』
神父「この声は……」
シスター「姫様ですか?」
『はい』
シスター「こんな夜更けにどうしたのですか?」ギィィ
姫「これ。渡しておく」
シスター「ブーケ? 何故ですか、これは姫様が結婚するときに……」
姫「勇者様のことよろしくな」
シスター「え……!? 姫様!!」
憲兵「行きましょう」
姫「はい」
何で騎士は姫の情報をリークしてしまったんだろうな
城内 通路
団員「つっ……」
騎士「お前たち!! 何があったんだ!?」
団員「団長。いえ、ここの兵士が王子に切りかかってきたんで応戦したまでです」
騎士「何故そんなことに?」
団員「分かりません。ああ、魔女の護送は自分たちでやりますから、団長は先に行ってください」
騎士「しかし……」
団員「これは命令です」
騎士「……わかった。頼む」
団員「了解!」
騎士「……」
「早く歩け」グイッ
教師「分かっていますからそんなに引っ張らないでください。くいこんじゃうぅ。エッチ」
「な、何をいっている!?」
騎士(私は……騎士……。国を疑ってはいけない……。王子が何をしていようとも……私は……)
>>236
団員「これは命令です」
↓
団員「これは王子の命令です」
城下町
王子「戻ったぞ。出発の準備は終わったか」
「はい!!」
王子「乗ってください。姫様」
姫「はい」
騎士「あの、王子」
王子「どうした?」
騎士「……いえ。行きましょう」
王子「ああ。頼むぞ」
騎士「姫様?」
姫「なんですか?」
騎士「勇者様にご挨拶は……?」
姫「大丈夫。必要ありませんから」
騎士「え……?」
姫「勇者様に挨拶する必要なんて……ありませんから……」
墓地
勇者「おやじぃぃ……!!! 俺、男に手をだそうとしちゃったよぉぉぉ!!!! キスしようとしちゃったよぉぉ……!!! でも、あいつ、めちゃくちゃかわいかったんだよぉぉ……!!!」
勇者「――あ、今何かに目覚めた気がする」
シスター「にいさーん!!!」
勇者「よう。どうした?」
シスター「あ、あれ? もう元気になったの?」
勇者「ああ。もう一つ、新しい道を見つけたんだ」
シスター「よかった。いつもの兄さんに戻ってくれて」
勇者「心配かけたな。ん? お前、何持ってるんだ?」
シスター「あ、こ、これ!! さっき、姫様がきて、これを私にくれて……!!」
勇者「ブーケ……」
シスター「なんだか、いつもと様子が違っていたし……あの……私……」
勇者「それ、大事に持っていてくれ」
シスター「兄さん!?」
勇者「それ、あいつが大切にしてたやつだから壊したら、怒るぞ?」
城内 中庭
勇者「先輩!!!」
兵士長「おせーよ……。ばぁーか」
勇者「姫様は?」
兵士長「王子様が連れて行ったよ」
勇者「そうすっか」
戦士「勇者様。待って……」
勇者「先、行くっす」
兵士長「魔女のときはワケじゃ違う。もう少し待て」
勇者「待てるわけないでしょう」
戦士「でもぉ。私たち暫く動けないし」
勇者「こっちは今、怒りに燃えてる。止めたって無駄っす」
兵士長「ほぅ……?」
勇者「あのやろう、俺を騙しやがって……。騎士団ごと、ぶっ潰す」
兵士長「無茶だけはするなよ。俺たちもすぐにあとを追うからよ」
馬車内
王子「ハハハハ。見れば見るほど美しい」
姫「近づくな」
王子「そんなこと言わないでください。これからは仲良くしましょう」
姫「……っ」
騎士「王子!」
王子「なんだ? お前は騎手に専念しろ」
騎士「魔女の娘は争いの種になるため、噂通り存在するのなら隣国の者たちを説得して保護をする。そういう話だったはずです」
王子「だから、保護してやってた。同盟も結ぶ。様々な支援もする。何がいけない?」
騎士「……」
王子「俺はこれまでにもそうした活動を行ってきた。身寄りのない子どもに手を差し伸べ、城で飼ってきた」
王子「今回も同じことだ。魔女の娘が女王になれば、必ず混乱が起こる。戦渦は隣国にも影響を及ぼす。故に先手を打った。それだけのこと」
騎士「しかし……」
王子「こちらのことは気にするな。黙っていろ。ただの兵隊が俺に意見するな」
騎士「……申し訳ありません」
国境の砦
勇者「おらぁぁ!!! どけどけぇ!!!」
警備兵「な!? 勇者殿!!! 止まってください!!!」
勇者「なんすかぁ?」
警備兵「ここは隣国の許可がなければ通れません」
勇者「知るか。俺は勇者だぞ。通せ」
警備兵「なりません!! 外交問題に――」
勇者「わかった。わかりました。ここはそういう面倒なところですもんね」
警備兵「そうです。先ほど通った隣国の騎士団も同じこと。一度は通れても二度目は通れませんから」
勇者「そうっすね。お仕事がんばってください」
警備兵「ありがとうございます。勇者殿も――」
勇者「じゃ、俺は今から隣国を侵略しまーす」
警備兵「はぁ!?」
勇者「止めたきゃ、命がけで止めろよ? 生半可な覚悟じゃ最強の侵略者は倒せないぞ? あぁん?」
警備兵「何があったのですか!? 勇者殿ぉぉぉ!!!!」
憲兵「向こう側が騒がしいな」
「何かあったのか……。見てこよう」
憲兵「気をつけろよ」
「おう。そうだ、あとで一杯やろうぜ」
憲兵「いいな。やろうやろう」
「ごぼっ!?」
憲兵「どうした?」
勇者「どうも」
憲兵「ゆ、勇者様!? な!?」
「ぐ……あぁ……」
勇者「お疲れさまでしたぁ」
憲兵「止まれ!!! これは立派な侵略行為なるぞ!!!」
勇者「分かってるよ。で、お前、恋人とかいるの?」
憲兵「い、いる。それがどうし――」
勇者「死ね!!」
隣国の城
騎士「着きました」
王子「ご苦労だったな。姫君、足元に気をつけてください」
姫「ありがとうございます」
王子「早速、姫君の部屋を用意しないと。でも、今すぐには用意できないので、私の部屋に行きましょうか」
姫「くっ……」
騎士「王子。何をされるおつもり――」
王子「また意見か。あの城を出て以来、お前はどうもおかしいぞ。もっと従順だったはずだ」
騎士「いえ……」
王子「それでいい。尻尾を振っていれば好きなだけエサを与えてやる」
騎士「……」
「歩け!!」
教師「もー、いたーい」
騎士「魔女……」
教師「なんデスかー?」
王子の部屋
王子「ここが私の部屋です。少々手狭ですけど」
姫「……」
王子「元気がありませんね。最初は不自由を感じることもあるでしょうが、直に慣れます。さぁ、こちらへ」
姫「嫌だ」
王子「……はい?」
姫「嫌だと言った」
王子「ここまで来て何を仰っているのやら……」
姫「私はお前の玩具じゃない」
王子「ハハハハ。どうしました、姫君? 何を突然言い出すのですか?」
姫「近寄るな。それ以上、近づけば殺す」
王子「殺す? その小さな手と細い腕で何ができるんですか?」
姫「あそこで私がお前を殴ったら、きっとみんな死んでた。だから、私はお前についてきたんだ」
王子「なるほど……。そんなことを考えて私の寝屋に飛び込んできたと? バカだなぁ」
姫「何を……!!」
王子「俺を怒らせれば、あの不安定な国など一発で終わるぞ? いいのか?」
姫「……」
王子「最も、今のままなら勝手に終わるがな。各地で問題も起こっているし、数年もしたら向こうから隷属にしてほしいと懇願してくるはずだ」
姫「そんなことにはならない。あいつら、みんな強いからな。お前を殺せば……それで……」
王子「……」
姫「ガァァァウ!!!!」
王子「駄目ですね」ドガッ!!!
姫「ぎゃぁ……!?」
王子「ほーら、唇を切った。美しい顔が台無しですよ。まぁ、俺は首から下があればいいんだけど」グイッ
姫「ぐっ……あぁ……」
王子「か弱い姫君ではこれが関の山――」
姫「ガウッ!!!」ガブッ!!!
王子「痛っ!? このぉ!!!!」バキッ!!!
姫「がっ!?」
王子「思い切り噛み付きやがって……。手から血が出ただろうがよ……クソガキ……」
姫「戦うんだ……!! 私も……あいつらみたいに……!!」
王子「ふんっ!!!」ゲシッ!!
姫「ごっ……!?」
王子「その歯、全部抜いてやろうか?」
姫「ぎ……ぃ……」
王子「ほら、こっちこい」グイッ
姫「いた……!!?」
王子「いいか? 姫様は俺にお礼しなきゃいけない立場なんだぜ? 国を平和にした救世主になぁ」ギュゥゥ
姫「ぐっ……!?」
王子「魔女の娘が女王になれば国は終わる。そんなこと猿にだって分かることだ。なぁ、姫様?」
姫「ぐぅぅ……」
王子「ハハハハ。魔女と呼ばれた女共は皆美しい。そしてお前の母親も例外ではなかった」
姫「あ……ぃ……!!」
王子「首を絞められるのは苦しいか? でも、慣れないと大変だぞ? 俺、こうしないと興奮しないんだ。ハハハハハ」
姫(たた、かう……!! たたか、う……!!)
王子「ご丁寧に手配書を配ってくれていたからな。お前の母親の顔はよぉーく知ってる。本当に美人だったぁ」
姫「ぐぁ……ぅ……!!」
王子「だから思った。もし魔女に娘なんていたら、さぞや可愛いだろうなぁって。ずっと探してたんだよ」
姫「さが……」
王子「そうだ。魔女の子どもを捜していた。そして隣国で起こったあの事件。そのすぐあとに隠し子がいるという噂まで流れてきた。まさに運命だろ?」
王子「その隠し子が女か男かを調べる必要はあったがな」
姫「ぃ……あ……」
王子「おっと。これ以上は死ぬか」
姫「ごっほ……!! えぼっ……!! おぇ……!!」
王子「大変だったんぜ。お前の存在を炙り出すために色々としてきた」
姫「ごほっ……!!」
王子「各地で計ったように問題が発生しただろ? いやぁ、治安の悪化は怖いよなぁ。お前のところの兵隊もいつも辛そうにしてたらしいぞ?」
姫「おま……ぇ……」
王子「そしてその問題を苦労して解決した兵士どもは陰口を叩くわけだ。姫様がしっかりしてくれたら、早く女王になってくれたら、魔女の娘さえいなければ……ってな」
姫「ぐっ……うぅぅ……!!! おま……えぇ……!!!」
王子「捜し求めていた魔女の娘はいた。そして騎士団に指示を出した」
王子「隣国に魔女の娘がいるとの噂がある。見つければ説得し保護をしろとな。無論、お前の俺の教育係であった女も捜していたが、俺にとってみればついでだ」
姫「うぅ……おぉ……!!」
王子「俺の目的は最初から姫君だったんだよ」
姫「お……まえが……ぜんぶ……!!!」
王子「そう俺だ。どうだ? 悔しいかぁ? 悔しいだろう? ハハハハハ」
姫「がぁぁああ!!!」
王子「いいぞぉ。吠えろ、吠えろ。お前を育てた狼みたいになぁ」ギュゥゥ
姫「ごっ……ぁ……!!」
王子「もっと悔しそうに泣け。俺を恨め。苦痛に歪むその顔が1番興奮できる」
姫「ぐあぁぁぁ……!!!」
王子「お前が姫君の道を歩まなければこんな苦しい想いをすることもなかったのになぁ」
姫「ふ……ざ……けるなぁ……!!!」ググッ
王子「おぉ。やるじゃん。ここまでされると義憤にかられるか?」
姫「よく聞け……腐れ外道……!! 私はお前を殺す……絶対に殺す……!! それで戦争になろうが……どうでもいい……!!」
>>249
王子「隣国に魔女の娘がいるとの噂がある。見つければ説得し保護をしろとな。無論、お前の俺の教育係であった女も捜していたが、俺にとってみればついでだ」
↓
王子「隣国に魔女の娘がいるとの噂がある。見つければ説得し保護をしろとな。無論、お前の教育係でもあった女も捜していたが、俺にとってみればついでだ」
王子「へぇ? 一国の主になろうとする人の台詞じゃないなぁ」
姫「貴様が私の国で略奪をしようが誘拐をしようが殺人をしようがどうでもいい……!! 勝手にやればいい……!!」
姫「城の兵士たちを傷つけたのも……この際、水にながしてやる……!!!」ググッ
王子「何を言ってるんだ?」
姫「友達を遊べなくしたことも……ゆるしてやっていい……!!!」
王子「いい加減黙れ……!!」グッ
姫「さわるなぁ!!!」バシッ
王子「どうせお前はこれから俺の玩具になるんだ。抵抗なんてするな」
姫「お前……お前の所為で……アイツがどれだけ働いたと思っているんだ……」
王子「アイツ?」
姫「文句を言いつつも遠くまで行って知らない奴を助けて……城に帰ってきたら休むことなく私の世話だ……!!!」
姫「なのに……いつもいつもいつも……私に元気かって……聞いてくる……。アイツのほうが……辛いはずなのに……!!」
王子「あの冴えない勇者のことか。勇者といえどただの兵士。所詮は国に飼われている奴隷だろ? お前はその1人の奴隷のために国を捨てるというのか?」
王子「王族として、姫君として、未来に女王陛下として欠陥品だな。俺に飼われたほうがよっぽど国のためになる」
姫「そんなの当たり前だ……。私が姫になった理由は勇者のことが好きだからだ! 文句あるのか!?」
王子「は……?」
姫「アイツが姫様になってほしいって言ったから姫になった!!! アイツが大人しくしていろっていうから大人しくしてた!!!」
姫「アイツが勉強しろっていうから勉強もしたぁ!!! アイツが元気かってきくから……きくから……!!」
王子「もういい。煩いなぁ」
姫「ずっと元気でいたんだぁぁぁ!!!!」
王子「落ち着けよ」グイッ
姫「がぁあぁ……いぃぃ……!!!」
王子「いいねぇ。その表情、俺好みだ」
姫「ガァァァァァウ!!!!」
王子「こりゃ、楽しめそうだぁ。ハハハハハハハ」ギュゥゥ
姫「ご……ぉ……!?」
姫(こいつだけは殺す……!! 殺してやる……!! じゃないとアイツが……いつまでたっても……!!!)
王子「さぁ、楽しみましょうかぁ。姫ぇ?」
姫「い……ぁぁぁぁぁ……!!!!」
『王子!!! おられますか!!! 王子!!! 大変です!!!』
王子「なんだ? あとにしろ!」
『いえ!! それがぁ……!?!』
姫「うぁ……?」
王子「どうした? おい」
勇者「姫様ぁー。帰りますよー」
姫「あ……ぇ……?」
王子「お、お前……どこから……!?」
勇者「玄関から」
王子「衛兵は何をしている!!! 賊だぞ!!!」
勇者「……」
衛兵「王子を守れ!!!」
勇者「邪魔だ、おらぁ!!!!」ドゴォッ!!!!
衛兵「ぐごぉ!?」
姫「あ……ぁぁ……」
勇者「よぉ、姫様。元気か?」
姫「あ……ぁ……あいっ……」
勇者「そうか。そいつは良かった」
王子「貴様、こんなことをしてどうなるか分かっているのか?」
勇者「さぁ、俺は後先考えないタイプなんで」
王子「お前の国なんぞ、すぐに支配してくれる」
勇者「んで? 俺の国から可愛い少女とか幼女を誘拐してハーレム作ろうってか!? ふざけんなぁぁ!!!!」
王子「な……!?」
勇者「いいか?よく聞けよ、ド変態野郎。子どもは確かに可愛い。俺だってなぁ、童貞こじらせてるからよぉ、正直な話女の子と仲良くなれるなら年齢なんて気にしない」
勇者「下は7歳、上は50歳ぐらいまでヨユーでいけるね。美人なら」
勇者「だが、ただの憧れなのか異性として好きなのかもわからねえようなガキンチョと恋愛したって虚しいだけだろ?」
王子「ふん。恋愛だと? ガキなんて慰めものになればいいだけだ」
勇者「……なんだ。お前、ただ女としたいだけなんだ。へぇー。あ、そう」
王子「それの何がいけない?」
勇者「処女奪うなら、最後まで面倒みてやれやぁ!!! あぁぁ!? てめぇは本当に屑だなぁ!!! あぁ!!! 屑だ!!! 殺してやる!!」
王子「貴様も同類だろうが。説教をするなよ。腹が立つだろ?」シャキン
遅いんだよ勇者
勇者「奪ったあとの幸せを考えられねえで女を抱くんじゃねえよ!!!」
王子「だまれぇ!!!!」ブンッ!!!
勇者「……」ギィィン
王子「くっ……!?」
勇者「初めての相手っていうのはよぉ……。一生心に残り続けるんだって……」
勇者「そう。そのあとの男はみーんな二番手。そんな悲しいことあるか? ねえよ……前の男はどうなったのかなぁ、とか俺、考えちゃうもの……」
勇者「女の子も……前の男がよかったぁ……なんて考えるんだろうな……。そんな二人が幸せになれるの?」
王子(剣が動かない……!?)
勇者「なれねえよ……なれるわけねえよ……。だから……だから……!!!」
勇者「――お前みたいな屑はこの世から消えろぉぉぉ!!!!」ドゴォ!!!!
王子「ごっ……ぉ……!?」
勇者「女は奪うものじゃない。愛でるものなんだよ」
姫「にひぃ……それ……れんあい、まにゅあ、るに……書いてたな……」
勇者「大丈夫か? ほら、行くぞ。先輩も心配してる」
姫「だっこ……してくれ……」ギュッ
勇者「仕方ないな」ギュッ
姫「きてくれたか……」
勇者「結婚もしてねえのにブーケ渡すな。バカ」
姫「ごめんな……。わたし……たたかおうって……」
勇者「なんだよ、元気ねえじゃん。俺に嘘ついたのか?」
姫「ちが……わないけど……」
勇者「帰るぞ。いいな?」
姫「あいっ」ギュッ
王子「ま、てぇ……!!」
勇者「なんだよ? 追ってくる気か? やめておいたほうがいいぞぉ」
王子「黙れ……!! ようやく見つけたんだ……最高の玩具を……!! 諦められるかぁ……!!」
勇者「こんなクソガキに欲情するやつの気が知れねえよ。なぁ?」
姫「お前はしても、いいぞ?」
勇者「するか」
王子「誰か!! 誰かいないかぁ!!! 賊だぞ!!! とらえろぉぉぉ!!!」
勇者「逃げるか」タタタタッ
姫「ふふっ」
勇者「何笑ってんだ?」
姫「似たようなこと、あったな」
勇者「狼の群れに襲われているときか。あのときはホント死ぬかと思ったぜ」
「逃がさん!!!」
勇者「うるせぇ!」ドガッ!!!
「ぐほっ!?」
姫「あのときのお前、かっこよかったぞ」
勇者「過去形かよ。ふざけんな」
姫「今のお前は、チョーかっこいいぞ」
勇者「まぁ、当然なのことだけどな」
姫「えへへ……」
勇者「……歯とか折れてないか?」
姫「多分、大丈夫だ。ありがと」
>>251
姫「友達を遊べなくしたことも……ゆるしてやっていい……!!!」
↓
姫「友達と遊べなくしたことも……ゆるしてやっていい……!!!」
>>258
勇者「まぁ、当然なのことだけどな」
↓
勇者「まぁ、当然のことだけどな」
城門
衛兵「門を閉じろー!!!」
勇者「させるかぁぁ!!!」
姫「いけー!」
「賊を取り押さえろ!! いや、その場で処刑しても構わない!!」
勇者「やれるもんなら――」
騎士「……」
衛兵「団長殿!!」
勇者「なんのようですか?」
姫「うぅ……」ギュッ
騎士「私はこの国に仕える騎士。国を、陛下を裏切れない」
勇者「それは聞きました」
騎士「でも、勇者様。私は……貴方のことを愛してしまいました……」
勇者「……え?」
姫「なにぃ!?」
騎士「貴方のことは斬りたくないんです!! どうか、どうか……このまま……姫様を置いて……」
勇者「い、や、だ」
騎士「え……」
勇者「どけ」
騎士「ま、まって!!」
勇者「なんだよぉ!?」
騎士「どうしてあの夜、急に逃げ出したのですか?」
勇者「……」
騎士「私、あのあとどうしていいか分からなくて……その……」
勇者「お前が男だからだ」
騎士「……!」
勇者「どけ」
姫「バイバイ」
騎士「お、男だから……? 貴方は私の内面が好きになったっていったじゃないですかぁ!!! 私の気持ちを弄んだのですかぁ!!!!」
勇者「お前が女みたいな顔しているから勘違いしただけだ!!! 俺にはそっちの趣味ないから!!! お前を抱くぐらいなら、姫様抱いたほうがまだ興奮できるぁ!!!」
これは勇者が悪い
全面的に悪い
九割九部どころか十割悪い
姫「今、大興奮か!?」
勇者「黙ってろ。鼻血拭け」
姫「あいっ」ゴシゴシ
騎士「あんなにも情熱的な告白は初めてだったのに……!! 同性同士でも愛し合えるんだって……気がつかせてくれたのに……!!!」
勇者「とにかく俺は行く。どけ」
騎士「……抜け」
勇者「なにぃ?」
騎士「騎士として、貴様に決闘を申し込む!!!」
勇者「ちぃ……」
姫「怖いなぁ、あいつ」
騎士「そしてこの未練を断ち切ってみせる!!!!」
姫「ああいうやつしつこいんじゃないか? どうする?」
勇者「……」
騎士「……」
勇者「――逃げるに決まってるだろ!! まずは姫様の治療が先だぁ!!!」ダダダッ
戦士二人目なりそうだな…
騎士「逃がすかぁ!!!」
勇者「お!! 外に馬があるぞ!! 乗れるな!?」
姫「あい!」
騎士「捕らえろぉ!!!」
「「おぉぉぉ!!!」」
勇者「よっと。しっかり、捕まっとけ」
姫「わかってるぅ」ギュッ
勇者「いけっ!!」パシンッ
馬「ヒヒーン!!!」ドドドドッ
衛兵「し、しまった……!!」
騎士「……すぐに後を追う!! 馬の準備をしろ!!」
王子「俺も行くぞ……」
騎士「王子。やめておいたほうが」
王子「黙れ!! 奴を殺し……玩具を取り返す……!! あと陛下に伝えろ!! 隣国との戦争が始まったとなぁ!!!」
騎士「了解」
姫「ついてきてるぞ!?」
勇者「いいんだよ。これで」
姫「どういうことだ?」
勇者「いくら俺でも城を簡単に突破できるわけないだろ?」
姫「え……?」
勇者「それにお前の居場所だって分かるわけねえし」
姫「それじゃあ……」
勇者「もうすぐ全部決着がつく。俺を利用しようとした先生も俺の活躍の場を奪った騎士団も……全部ぶっつぶしてやるよ……ヒッヒッヒッヒ」
姫「お前……恐ろしいな……」
勇者「ああ、それと……。お前の顔を傷つけたあの下種は時間をかけてぶっ壊してやるよ」
姫「……うんっ。たのむ」ギュッ
勇者「お前、顔だけは可愛いからなぁ。それを傷つけるなんてもってのほかだ。唯一の長所が無くなったらお前生きてる価値ないもんな」
姫「……パーンチ!!!」ドガッ!!!
勇者「いってぇなぁ!? なにすんだよ!!」
姫「私だってもっと可愛いところあるだろ!!」
国境の砦
兵士「みえたぞー!!!」
勇者「おぉぉぉ!!!」
馬「ヒヒーン!!!」ドドドドッ
警備兵「門をかためろー!!!」
憲兵「閉じ込めるんだー!!!」
姫「閉まる!! 閉まるぅ!!」
勇者「早くはしれ!! この駄馬がぁ!!!」パシンッ!!!
馬「ヒヒーン!!!」
騎士「門が閉じる……!!」
王子「追え!!! 絶対に逃がすな!!!!」
騎士「わかっています!! 王子は私にぴったりとついてきてください!!」
王子「言われずとも!!!」
騎士「……そうしっかりと後ろを」
王子「にがすかぁ!!!」
勇者「――よしっ!! ぬけたぁ!!!」
姫「わぁぁー」
騎士「待てぇ!!!」
勇者「あんたは抜けなくてもいいのに」
警備兵「閉めろー!!!」
「おぉぉぉー!!!」
王子「ま、まて!!! 俺がまだだ!!!」
ズゥゥゥン!!!
王子『何をしている!! 開けろ!!!』
勇者「聞こえますかぁ? 王子様ぁ?」
王子『おい!! 早くその男を捕らえろ!!!」
騎士「聞こえません」
王子『ど、どういうことだ!? 俺に背くということは、国への反逆だぞ!!! 分かっているのか!?』
騎士「私は……国よりも、愛を選びました。王子」
王子『なに……? ま、まさか……おまえ……』
勇者「悪いな。王子様。こいつは俺の言うことなら何でも聞いてくれるっていうんで、芝居をうってもらった」
王子『お、おまえ……!!』
騎士「王子。この度の蛮行は看過できません。騎士団をも私物化し、幼い姫様に暴行など……」
王子『今までも黙認してきただろうが……』
騎士「兵士を使い、罪もない子どもがいる民を殺し、そして女児を意図的に孤児にした。魔女から教えてもらいました」
王子『は、ははは。バカな何を証拠にそんなことを……』
兵士長「――証拠も糞もねえ。我が国の姫様を暴行したって事実がありゃあ十分だ。ここにいる全員が証人だ。クソガキ」
王子『くっ……覚えていろ!!! お前の国など、半年足らずに落としてみせる!!』
勇者「反対からでようとしてもむだですよー。どっちも閉まってますから」
王子『なにぃ!? 何故だぁ!!!』
兵士長「事情を説明したら快く引き受けてくれたぜ。そっちの憲兵さんたち。ハハッ」
王子『おのれぇぇ……!! 俺をこんな目にあわせてどうなるかわかっていないようだな!! 全員死刑だ!!! 父上が必ず貴様らを死刑にしてくれる!!』
姫「親を頼るな。かっこわるいぞ」
王子『ぐっ……!?』
姫「お前は多分、いや、確実に世界で一番ダサい男だ」
勇者「アーッハッハッハッハッハッハ!!!!! こんなガキに言われてやんのー!!! ダセー!!!」
王子『この俺をコケにしやがってぇぇ……!!! うわぁぁぁぁ!!!! あけろぉ!!! あけろぉ!!!!』ドンッ!!!!ドンッ!!!!
勇者「まぁ、安心してください。王子様はこれから男ではなくなりますから」
王子『あけろぉ!!! あけろといっているぅ!!!』
勇者「お願いします」
王子『あけろぉ!!! あけろぉぉぉ!!! だせぇぇぇ!!!』
『はぁい。今日のお客さんは活きがいいわねぇ』
王子『な、なんだ……!? はっ……お、おまえは……!?』
『ほら、じっとして。すぐに気持ちよくしてあげるからぁ』
王子『やめろぉ!! くるな!!! それ以上、来たらこれで叩き切るぞ!!!』
『やれるものならやってみなさい』
王子『お……おぉぉぉぉ!!!』
『ふんっ』
王子『が……!? 剣が折れ……』
『次はあたしの剣をあんたの鞘に納め番ね。安心してね。あたし、こっちは初めてじゃないから。――おうじょうせいやぁ!!!!』
おぅふ
『うあぁぁあああぁ!!!! あぁぁあっぁぁぁぁ!!!!!』
『ふんっ!! ふんっ!!! ふんっ!!! ふんっ!!!』
警備兵「中で何が……」
「想像したくもねえ……」
兵士長「中々壮絶なお仕置きだな」
勇者「まぁ、死にはしないからいいじゃないっすか」
姫「なぁー。中で何やってるんだ?」
騎士「い、いえません」
勇者「ああ、そうだ。とりあえず姫様の治療を……」
姫「頼む!」
勇者「はいはい。ほら、じっとしろよ」
姫「あいっ」
勇者「大した怪我はなくてよかった。あと痛いところはないか?」
姫「お腹が痛いな。蹴られたし」
勇者「痣になってるかもな。ちょっとお腹をみせ……って……お、おい……お前……!!」
姫「どうした?」
勇者「お前……どこから血を流してるんだ……!?」
姫「おぉ? 気が付かなかった」
勇者「完璧に出血してるじゃねえか!! おい!!」
姫「どこだろうな?」
騎士「この血は……」
兵士長「姫様。ちょっと自分でパンツの中確認してみろ」
姫「なんでだ?」
兵士長「いいから」
姫「わかった」チラッ
姫「おぉ……」
勇者「なんだ? どこを怪我してんだ!? 早く言えよ!!」
姫「股から血が出てる」
勇者「な……!!! 助けるのがおそかったのかぁ……!!!」
兵士長(こいつ……。まぁ、いいか。このままでも面白そうだし)
姫「なんてこったい」
勇者「くっ……」
姫「どうした?」
勇者「……」ギュッ
姫「おぉ……な、なんだ? お前から抱きしめられると、すごく恥ずかしいんだが……」
勇者「……泣くな。すげー辛いのは分かる。分かってる」
姫「うむ。お前もいるし泣かないぞ」
勇者「こうなったのも俺の所為だ……。姫様……」
姫「だから、なんだ?」
勇者「あと5年……いや、この際3年でもいいか、俺がお前を嫁にもらってやる」
姫「いいのか!?」
勇者「もうしかたねえだろう……。責任は取る」
姫「わーい。結婚だー」
勇者「くそぉ!! 姫様になんてことしやがるんだぁ!!! アネさん!!! もっとガンガンついてやってくれぇぇぇ!!!」
騎士「え……。私は……どうなるんですか……」
兵士長「ハハッ。いい感じで片がついていくな。あとは……」
勇者「……先生」
教師「ウフフフフ。とてもいい取材ができました。ありがとうございます」
騎士「やはり貴方は……」
教師「真実を世界に届ける。それが私の仕事であり生きがい。今回は収穫が多かったですよ」
兵士長「各国を練り歩いては国の秘密を暴露してるのか?」
教師「本にしてね。こういう本は売れるんですよ」
勇者「姫のことも書くつもりなんすね」
教師「姫様のことだけじゃない。勇者様のこともオジサマのこともね」
兵士長「まぁ、あの王子のことを記事にしてくれるっていうなら、悪い話でもねえか。姫様も近いうちに存在を知らせるつもりだったしな」
教師「あの王子だけは困りましたよ。決定的な証拠がなかったの、中々本にできなくて」
姫「証拠がないと、書かないのか?」
教師「真実だけを書きたいんですよ。一割も自分の妄想や推測があってはいけない」
騎士「それであの王子のことも公にすることはなかったと……」
教師「そうでーす。いやぁー、でも姫様がいなかったらまだ証拠は掴めなかったでしょうね。本当に役に立ってくれましたよ」
騎士「役に……?」
教師「あの王子が幼い女の子にしか興味がないというところまでは知っていたので、姫様を使えば化けの皮がはがれ――」
勇者「ふっ!!!」ドゴッ!!!!
教師「がっ……!? な、なにを……!?」
勇者「……」
姫「お、おい……」
勇者「自分のために姫様を利用したのか」
教師「ウ、ウフフフ。利用しない手はないでしょう。巨悪を潰すのなら、多少の犠牲は付きものじゃない」
兵士長「悪いな。こいつを生かしておいたのは俺の判断ミスだ」
勇者「いいっすよ、先輩。結果だけ見れば、先生がいなきゃマジで戦争になっていたでしょうし」
教師「そうですよ。私がいなければこの国はどうなっていたか」
教師「私の取材が、記事が、本が、この国を平和にするんですから!! ウフフフフ!!!」
勇者「魔女。次、この地に足をつけてみろ。真っ先に四肢を両断してやる」
教師「勇者様なのだから、そんな私怨での殺人なんて――」
勇者「お前は人間じゃないから、殺してもいいんだよ」
教師「救世主に向かって酷いことを言うんですね」
兵士長「……つれていけ」
兵士「はっ」
教師「何をするつもりですか!?」
兵士長「好きなだけ書かせてやるよ。牢屋の中でな。書き終わったら慰安旅行として海で泳がせてやる」
教師「この!! はなせぇ!! 私は魔女じゃない!!! 救世主ですよ!!!」
勇者「美人は変人しかいないのかよぉ」
姫「ここ、ここ」
勇者「お前は確かに変人じゃないな」
姫「ダーリンっ」
勇者「やめろ」
騎士「あの……私、無職になっちゃったんですけどぉ……」
兵士長「心配すんな。こっちで雇ってやるよ。いいよな、姫様?」
姫「うーん……。まぁ、いいぞ。許可する」
騎士「いいんですかぁ!? ありがとうございます!! 私!! この国のため、愛する人のために、戦います!!」
イイハナシダナー
戦士「――ちょっとぉ!! あたしは反対よぉ!!! 乙女な男はあたしだけで十分でしょー!?」
騎士「私も勇者様のことを愛してしまった身です。たとえ叶わない恋でもいい。ただ、勇者様の傍にいたい」
戦士「あんた……。やるじゃない」
騎士「でも、隙があれば……」
戦士「そんなの勿論よ……」
勇者「さ、帰るか」
兵士長「お前、モテすぎだろ。妬いちゃうぜ」
勇者「嫌味っすかぁ!?」
兵士長「ハッハッハッハッハ。あの坊ちゃんはどうしたぁ?」
戦士「泡吹いて気絶しちゃったわぁ。優男はこれだから嫌なのよねぇ」
姫「何やってたんだ?」
戦士「うふっ。人間ってねぇ、意外と拡がるのよぉ。この腕がずっぽり入っちゃうぐらいに」
姫「そんな太い腕がどこに入るんだ……!?」
戦士「それはぁ」
兵士長「言わなくていい。気色悪い」
姫「なぁーなぁー」
勇者「なんだよ?」
姫「間違いないよな? 結婚、してくれるんだよな?」
勇者「3年後にな」
姫「私、待ってるからな!! お前とあの教会で結婚式するのずっと、ずーっと、待ってるからな!!」
勇者「はいはい。あんなことがあったんだ。助けられなかった俺が男として……」
騎士「勇者様。姫様の出血は生理ですよ」
勇者「……は?」
兵士長「あちゃぁ……」
騎士「ですから、勇者様が責任をとることはないんです」
勇者「生理……だと……。お前、あの王子にやられたんじゃないのか……?」
姫「やられた? 顔と腹は殴られたぞ。あと首も締められた」
勇者「結婚の話はキャンセルな」
姫「なんでだぁぁぁ!!!! うわぁぁぁぁ!!!!」
兵士長「ひでぇ男だ。そりゃモテねえよ」
城門
兵士「あぁ!! 隊長!! お帰りなさい!!」
「隊長だー!!」
兵士長「わりぃな。全員、この通り無事だ」
勇者「うーっす」
門兵「勇者殿、ご無事でしたか」
勇者「まぁ、なんでもないっすよ」
戦士「あたしもいるわよぉーん!!」
「ひぃぃ!!」
騎士「本日からお世話になります!!」
「お、お前は……騎士団の団長……!?」
兵士長「新しい仲間の挨拶はあとだ。今は姫様の無事を喜んだからどうだ?」
姫「おぉぉ……」
勇者「俺の後ろに隠れるなって」
姫「だ、だって……」
兵士「姫様……。良くぞご無事で」
門兵「皆、心配していました」
姫「え……?」
兵士長「姫様の勇気ある行動はちゃーんと話しておいたぜ?」
姫「わ、私は……別に……」
戦士「照れないのぉー」
姫「うぅ……」
勇者「魔女の娘」
姫「うぁ!? それ、いうなぁ」
勇者「今は違うだろ? この国の姫で、次期女王だ」
姫「おぉ……!」
勇者「怖がらなくていい。何かあっても今回みたいに守ってやるよ。全員でな」
姫「ホントか!? また、かっこよく助けてくるのか!?」
勇者「いい子にしてればな」
姫「あいっ! 私、いい子にするっ!!」
騎士「とはいえ、魔女のイメージは悪いですから……」
兵士長「ま、問題があればその都度なんとかしていくしかねえな」
勇者「その都度っすか。面倒っすねぇ」
姫「お前は私のために働けばいいんだー!!」ギュッ
勇者「はぁ!? お前の奴隷じゃねえぞ!!」
姫「勇者様っ」
勇者「なんだよ?」
姫「大好きっ」
勇者「お……」
兵士長「おーい。勇者殿が照れてらっしゃるぞ」
兵士「まぁ、こんな可愛い子に言われたらなぁ」
戦士「きぃぃぃ!!! なによぉ!!! あたしのほうがもっと上手くいえるわぁ!!! 勇者さまぁーん!!! だーいちゅきー!!!」
騎士「あ……あの……わ、わたしも……す、す、すきです!! 愛しています!!!」
姫「な……!? 私のほうがお前らよりも何倍も勇者様のこと愛してるんだぁ!!! なめんなぁー!!」
勇者「なにこれ……全然嬉しくないんだけど……」
兵士長「ハッハッハッハッハ」
酒場
兵士長「とりあえず、姫様のご成長を祝して、乾杯!!」
戦士「かんぱぁーい!!!」
勇者「なんすかぁ。どうして俺の周りには男とガキしかいないんすかねー?」
騎士「勇者様。何食べますか? 私が食べさせてあげます」
勇者「ごめんこうむる!!」
騎士「そんなぁ……」
姫「あーん!」
勇者「自分で食えるっつーの!!!」
戦士「あたしをたべるぅ?」
勇者「助けて……先輩……」
兵士長「仲良くしろよ。これから長い付き合いになるんだからな」
勇者「えぇぇ……やだぁ……」
姫「……なぁなぁ、頼みたいことがあるんだけど」
勇者「あぁ? なんでも言ってくださいな、姫様?」
数日後 牢獄
勇者「本当に会うのか?」
姫「ああ」
勇者「そうか」
姫「お前が傍にいるから、平気だ。ちょっと怖いけどな」
勇者「無理はするなよ」
姫「あいっ」
兵士「おい。面会だ」
魔女「……」
姫「……」
魔女「あら、久しぶりね……。随分と小奇麗になって……」
姫「もうすぐ処刑されると聞いて会いにきました」
魔女「……喜べばいいのかしら?」
姫「貴方に一言言いたくて、来ました」
魔女「なにかしら?」
姫「私は貴方の娘です。でも魔女じゃない」
魔女「……」
姫「私は大嫌いな貴方とは違う。私は幸せに生きる。誰も恨まない。愛する人と一緒になる」
魔女「ふ……ふふふ……」
姫「だから、安心して死んでください」
魔女「ふふふふ……あはははははは……」
姫「それだけです。さようなら」
魔女「あはははははははははは!!!!!!!! あはははははははははははは!!!!!!!」
姫「……」
魔女「私とは違うですって!!! 当たり前よぉぉ!!!! お前はあの悪魔の血が流れているもの!!!! 魔女じゃない!!! お前は悪魔よぉぉぉ!!!!」
勇者「行くぞ」
姫「はい」
魔女「お前なんかが幸せになれるものか!!! お前も私と同じように堕ちていくのよぉ!!!! そのときを楽しみにまっているわぁぁ!!!!」
魔女「あはははははははは!!!!!!! あはははははは!!!!! 裏切られ、血をながし、そして朽ちればいい!!! 絶望の中でお前は死ぬ!!! 死ぬのよ!!!!」
姫(バイバイ、おかあさん……)
地下牢
戦士「ほらぁ、原稿のほうはまだなわけぇ?」
教師「うるさいです……」
騎士「貴方の監視も楽じゃありませんね」
教師「集中できないです」
兵士長「どうだ?」
戦士「少しは書いてくれたけど、まだまだ完成には程遠いわね」
兵士長「早くしてくれよ。でないと隣国が攻めてくるかもしれねえからな」
騎士「暫くは問題ないでしょう。王子のことを知っている私がこちらに寝返ったのですから」
兵士長「それもそうか」
教師「……はぁ」
戦士「ほら、休まないの」
兵士長「そういや先生の著書ってどんなのがあるんだ? あんたの名前はみたことねえけどよ」
教師「姫様が一冊。持っていたわ。勇者様のものらしいけど。あれが始めて書いた本。徹底取材したけど、全部がデタラメであることをあとで知ったのよ」
兵士長「それって……恋愛マニュアルか?」
教師「そうです。先代勇者にモテるコツをきいたの。でも、嘘だった。それから私は取材するときは取材させてとは絶対に言わないって決めたの。嘘は書きたくないから」
戦士「先代って……!?」
兵士長「先生!! あのマニュアル書は先代の勇者が言ったことを書いてんのか!?」
教師「そうですよ? 全く、体まで使ったのにあの人はサイテーでしたね」
兵士長「あの糞野郎……」
教師「その息子も中々のものでしたけどね」
戦士「勇者様をバカにいたわね!!! ゆるさないわよ!!!」
騎士「そうです!! 撤回してください!!」
教師「檻の柵でそうされると、まるで珍獣を見せられているかのようですね」
戦士「なんですってぇ!!!!」
騎士「無礼な!!!」
兵士長(あいつ、いつになったら親父の呪縛から解放されるんだろうなぁ……)
教師「あ、これ。姫様に渡してください」
兵士長「なんだこれ?」
教師「流石にそれは記事にしても意味がないですから。姫様にあげます」
教会
シスター「無事でよかったぁ」
姫「心配かけたな」
シスター「いえ。でも、どうしてすぐに会いにきてくれなかったんですか?」
姫「まぁ……その……」
勇者「母親に会いたいって自分で言い出したのに、途中で怖くなったみたいで部屋から出てこなくなったんだよな?」
姫「まぁ、そういうことだ」
シスター「母親って……」
姫「あいつを倒さないと、私は強くなれないからな。いつまでも魔女に怯えなきゃならないだろ」
シスター「姫様……」
神父「ご立派ですな。もう女王様としての貫禄も出てきているかもしれませんな」
姫「まぁ、な」
勇者「まぁなじゃない。ほら、行くぞ」
姫「あいっ」
少女「あー!! いたぁー!!!」
勇者「誰?」
シスター「ここでよく遊んでいたお友達」
勇者「ほぉーん」
姫「お前……」
少女「心配してたんだよ!! 全然、こなくなっちゃったから……」
少年「どこ、いたんだ?」
姫「色々あったんだ。悪い」
少年「別に、いいけどさ……」
勇者「あぁーん? なんだ、クソガキぃ?」
少年「お、お前……勇者……だよな?」
少女「ホントだ。新聞でみたことあるー!!」
勇者「お嬢さん。あと5年したら迎えにいきますよ」
少女「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」
勇者「……」
姫「お前、フラれるのはやいなー」
勇者「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
シスター「兄さん、教会では静かに!」
少女「もしかして、好きな人って……」
姫「う、うん」
少女「すごーい!! 勇者様とどこで知り合ったの!?」
少年「そうだ。普通、知り合えないだろ」
姫「私、普通じゃないんだ」
少年「え?」
シスター「ちょっと……!!」
勇者「まぁまぁ」
シスター「で、でも……」
少女「どういうこと?」
姫「私、この国の姫なんだ。次期女王なんだぞ」
少女「そ、それじゃあ……あの……魔女の……?」
姫「うん。私、魔女の娘だ」
少女「え……!!」
少年「お前が……」
姫「ごめんな。隠していて」
少女「ずっと黙ってたんだ……」
姫「ごめん」
少女「知ってるよ。魔女の所為でいっぱい人が死んだこと」
姫「……」
少年「おい」
少女「バイバイ!!」
少年「待てよ!!」
姫「今度!! 約束通り家に招待してやるからぁ!!! 私の一番の友達も見せてやる!! おっきな狼だ!!! すごいぞ!!! かっこいいぞ!!!」
少年「……」
姫「来てくれー!!! 絶対にきてくれー!!!! 私、まってるからなぁー!!!! だから、今は追いかけてやってくれー!!!」
少年「……ありがとう!! またな!!! 俺はお前のこと応援してる!! きっとあいつも応援してくれるはずだ!! がんばれよ!!」
姫「あいっ!!! がんばる!! がんばるぞー!!! バイバーイ!!!」
勇者「向こうから来てくれるとは手間が省けたな」
姫「そうだな」
シスター「もしかして家を訪ねるつもりだったの?」
勇者「どうしてもこいつが話したいっていってさ」
シスター「そう……」
姫「よし! 秘密にしてたこと謝ったし、もういいな! 帰るぞ!!」
勇者「はいよ」
シスター「あ、姫様! ブーケ、ブーケ!!」
姫「おぉ!! 忘れてたぁ!!」
シスター「はい、どうぞ」
姫「よしよし! これでまた結婚に一歩近づいたぞ!!」
勇者「どーだかなぁ」
姫「近づいたんだ!!」
シスター「姫様……。私も応援してます。がんばってください」
姫「ありがとう。また来る」
中庭
狼「ガウッ」
姫「お前のこといつか紹介してやるからな。楽しみにしとけよ」
狼「クゥーン」
勇者「ふわぁぁ……」
姫「とぉー!!」ギュッ
勇者「なんだよ?」
姫「なんでもない」
勇者「そうか……」
姫「……」ギュゥ
勇者「俺が守ってやるって言ったろ」
姫「うぅぅ……!!」
勇者「お前を魔女だのなんだのいうやつは俺がぶっとばしてやるよ」
姫「うわぁぁぁぁん……」
勇者「そんなこというやつは俺の敵だからな」
兵士長「……寝てるのか?」
勇者「さっきまでワンワン泣いてたんすよ」
姫「すぅ……すぅ……」
兵士長「そうか。溜まってたんだろうな。色々と」
勇者「本のほうはどうなんすか?」
兵士長「ちょっと見てみるか?」
勇者「どれどれ?」
兵士長「この国を支配しようとした魔女の過去だ」
勇者「これは直接話を聞いたっていう」
兵士長「両親に捨てられた魔女は先々代の国王に拾われ、城の中で小さなときから女中をしていた。これは俺も知っていた」
勇者「ふぅーん。俺は知らなかったっす」
兵士長「だが、この頃から先代国王とデキてたのは知らなかったな」
勇者「マジっすか?」
兵士長「幼馴染みたいなもんだし、まぁ、互いに惹かれるものがあったんだろう」
勇者「結構、純愛っすねぇ」
兵士長「だが、先代国王は名家の女を嫁にしたわけだ。それでも関係はずっと続いていた」
勇者「で、子どもをよこせーって言われてキレたと」
兵士長「途中からは側室になっていたし、その覚悟はあったはずだがな」
勇者「子どもが出来れば結婚できるなんて考えたんじゃないっすか?」
兵士長「こわいねぇ。お前も気をつけろよ」
勇者「うぃーっす」
兵士長「おう、そうだ。これは姫様に渡してくれ」
勇者「なんすか、これ?」
兵士長「本にはできないことが書いてるんだよ」
勇者「見てもいいっすか?」
兵士長「ダメだ。姫様だけに見せろ」
勇者「えー? なんでっすかぁ?」
兵士長「見たら、お前は後悔するぞ」
勇者「どれぐらいの後悔っすか?」
兵士長「再起不能になるぐらいだよ」
姫「うぅ……ねちゃってたか……」
勇者「よく眠れたか?」
姫「あいっ。ずっと傍にいてくれたのか? ありがとう」
勇者「気にするな。はいこれ」
姫「なんだ? 見てもいいのか?」
勇者「おう。俺も見たいんだが、後悔するって言われて結局みれなかったんだよな。なんか触りだけでも教えてくれないか?」
姫「……」
勇者「おーい」
姫「ふん……ふん……」
勇者「おい、なんだよ。何が書いてあるんだ?」
姫「……おい」
勇者「なんだよ。誰に向かって言ってんだぁ?」
姫「私に近づくな」
勇者「え……?」
姫「お前なんか、大嫌いだ。じゃあな」
勇者「な、なんだよ!? おい!! 待て!!」
姫「うるさい。黙れ」
勇者「急にどうしたんだ!? まさか、それに何か変なことでも……!?」
姫「ふんっ」
勇者「まてよぉ!! きっと嘘だ!!! 絶対に嘘だって!!! なぁー!!」
姫「しらん」
勇者「ふざけんなぁ!! 内容を教えろぉ!!!」
姫「ふーんだっ」
勇者「おいって!!!」
狼「クゥーン……」
兵士長「――ハハッ。効果覿面だな」
狼「ガウッ!!」
兵士長「おう、エサの時間か。ほらよ」
狼「ガウッ」
兵士長「あれ、お前、何時の間に懐いてくれたんだよ?」
通路
勇者「こらっ!! 見せろ!!」
姫「ベーっ」
勇者「てめぇ!!」
姫「やぁー!!」ギュッ
勇者「なっ……」
姫「嘘だぞ。私はお前のこと、だーいすきっ、だからなっ」
勇者「は、はぁぁ? なんだよ、もう面倒な奴だなぁ」
姫「ふふふ。ビビってなぁ、お前?」
勇者「ビビるかよ」
姫「これからも守られてやるから、心配すんな!」
勇者「うっぜぇ……」
姫「えへへー」スリスリ
勇者「……隙アリ!!」バッ
姫「あ!? やめろー!!」
勇者「なんだぁ? 姫様専用恋愛マニュアル……勇者サマを落とす100の方法……?」
姫「あぁー!!! よまれたぁー!!!」
勇者「ふぅん……」
姫「おぉぉ……!!」
勇者「お前、俺のことそんなに好きなのかぁ?」
姫「あ、う、べ、べつに好きじゃないんだからな!! 勘違いするな!!」
勇者「それ、ここに書いてるなぁ。勇者サマは童貞だからギャップによわいってやかましい!!!」
姫「かえせー!! 私のマニュアルー!!」
勇者「なんだよこれ!! 誰が書いたんだ!!! 俺はこんなに単純じゃねえ!!! 先輩に著者を聞きだして文句いってやるんだ!!」
姫「わぁぁぁー!! まてぇぇー!!」
戦士「みたい……みたいわぁ……!!」
騎士「はい、みたいです」
兵士長「お前ら、アレを奪っても無駄だよ。魔女の書いた本にはもっとすげーこと書いてたからな」
戦士「何よ、もっとすごいことって!!」
兵士長「ほれ、このページだ」
姫「それがないと大変なんだー!!」
『この国の姫様はとても可愛く健気である。魔女の娘とは信じられないほどに』
『ただ国のためというよりは勇者様のためにお姫様をしているため、万が一国民か勇者かを選ぶことがあれば――』
『確実に勇者を選ぶ。これは断言してもいい』
勇者「なら自力で取り戻してみろ!!」
『この国の勇者様は剣術に秀でており、剣の技術で勝てる者は国内にはいない』
『ただ国のためというよりも女性にモテたいから勇者をやっている。そのため男性諸君は万が一のとき覚悟を決めたほうがいい』
『だからといって絶対に女性を守ってくれるわけでもない。何故なら勇者様は――』
姫「わぁぁー」ギュッ
勇者「そんなに大事かよ、これぇ? お前、俺をからかいたいだけだろ!?」
姫「いいから返せー!! ガァァウ!!」ガブッ
『既に姫様の旦那であるからだ。何よりも優先して姫様を救うので女性も万が一のときは覚悟されたし』
END
>>299
姫「ふふふ。ビビってなぁ、お前?」
↓
姫「ふふふ。ビビってたなぁ、お前?」
実に良かった、最後の最後まで楽しんで読めた
これで終わりかぁ…乙です。とても面白かった…
いやぁシリアスと勇者のギャップに笑わせて貰った
まじ乙
面白かった!
乙
乙! 今回もよかった
乙
いい終わり方だったわ
凄い良かった。
まさか続編あるとは思わなかったからうれしい
乙乙
王子のその後を
前作に続き今作も素晴らしい
乙乙!
素晴らしかった!
乙
姫→勇者←戦士
↑
騎士
ってことか…一応モテモテになれたのか?
乙乙
面白かったし
乙
騎士は俺が貰うわ
乙
スカッと爽やか後読感乙
乙乙!!
また前作から見直すわ
乙!盛大に乙!!!
乙
騎士「私が祖国を裏切ったのは勇者のことが好きだからだ!文句ありますか!?」に続くんですか?
これは騎士カワイソウ
>>314
勇者いつの間にか乙姫にも好かれたのか…
>>321 自分としては騎士は↓のイメージかな...
騎士「私が祖国を裏切ったのは勇者様のことを愛してるからです!文句ありますか!?」
騎士も戦士も人気だな
ホモとオカマなのに
いやぁ今回も素晴らしい
乙です
乙です
まさか続編あるとは思わなかったから不意打ちで嬉しかったわ
できたらまた新しいSS書いてほしい
前スレ貼ったら絶対駆けつけるから
このSSまとめへのコメント
乙!盛大に乙!!!