僕はタバコをやめられない (10)
僕は高校生の頃からタバコを吸っていた
別に悪ぶっていたわけでも世間に対する反抗心があったわけでもない
ただ、「吸ってみたい」と思っただけだった
父がヘビースモーカーで、家にはいつでもタバコがあり
おき場所も、子供に隠そうという気もなく靴箱の上に山積みになっていた
だから手に入れるのも簡単だった
僕が学生の頃は禁煙ブーム真っ盛りで真面目な未成年の僕には店で買うという行為はハードルが高かった
まあタバコを吸おうとしてる時点で真面目でもないけれど
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わかる
タバコを持っていくときもばれないようにとても気をつけ、1本ずつもっていった
怒られるのはいやだからね
最初のころはとにかくケチって、1本のタバコをばらし
葉っぱをコピー用紙でまいて、手巻きタバコもどきを作ったりしてた
最初の1本はまずかったけどしぐになれて、はまっていった
今思うと何でそんなお粗末なものでタバコにはまったかはわからない
たぶん初めてで味がわからなかったのと自分で巻いたのが楽しかったんだろうな
その頃も今も吸っているタバコは変わっていない
父とおなじ「マイルドセブン」だ
吸い始めてしばらくたったころ、同級生に話しかけられた
僕はどちらかというと浅く広く人と付き合うタイプだったからその人とも何度かは話したことがあったんだけれど
1対1で話すのはこれが初めてだったよ
けれどそれ以上にその一言が衝撃だったね
「お前タバコ吸ってんだろ」
驚いたね、僕は吸う場所も入手場所も全部自宅で済ましているし
臭いでバレないように風呂も歯磨きもとても丁寧にしているバレるわけないと思っていたから
でもこの質問?に「はい吸っています」なんて答えられない
僕は学校では真面目なキャラで通していたし変えるわけにもいかないからね
吸っていない、と答えると彼は一言
「そうか」とだけいって去っていった
この一言の後も僕は変わらずタバコを吸い続けた
タバコのにおい対策はもっと丁寧にしたけど
ふむ
匂い消しても歯みたらすぐわかる
タバコをすい始めてからも僕の生活に変わりはなかった
あの一言以来彼とも話していなかったし僕の高校生活は割りと順風満帆だったと思うよ
そして高校2年目の学園祭から、僕の生活に少しだけ変化が訪れた
彼女ができたのだ
彼女ができるまでの過程はおいておこう、面白くもなんともないからね
とにかく、彼女ができてから僕の生活は少しだけよくなったんだ
朝は彼女を迎えにいくため少し早く起きるようになり
昼飯もコンビにパンからお弁当に変わった
何より、タバコを吸わなくなった
この頃になるとわりと多めにタバコを吸っていた、もっていってもばれないのがわかっていたからね
それを「彼女ができたから」の理由だけで2日たらずでタバコを吸わなくなった
そんな理由でも高校生にとっては大事だったんだ
彼女がタバコ嫌いだったのもタバコをやめた原因のひとつだった
彼女もまた父親がヘビースモーカーだったが、副流煙の臭いがいやでタバコが嫌いになったらしい
確かにあれはくさいしね
とはいえ、彼女といるときは本当に楽しかったな
世界がバラ色なんて言葉がぴったりだった
そういえば初体験もこのころだったかな
彼女がいる間の1年間はあっというまで、気づけば3年生だった
僕も彼女も進学希望だった、そのころはもうほとんど将来を誓い合うような仲だったね
けどその頃、僕はまたタバコをはじめた
理由?受験のプレッシャーやら家業のことやらまあ色々だよ
僕がやめたからって父親がタバコをやめたわけじゃない、前と同じ場所にあったからすぐに手に入れられたよ
彼女に申し訳なかったけどね
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