戦士「…俺はどうすればいい?」(164)

武闘家「へ?どうしたの、急に」

戦士「あ、いや、何でもない」

武闘家「あ、勇者達が来たよ!」

武闘家「お姫様綺麗だねー!」

戦士「魔王との戦いから2ヶ月しか経ってないのに、結婚パレードかー」

武闘家「戦後で皆の心が落ち込んでる今だからこそ、やるんでしょ!」

戦士「それもそうか」

戦士「しかし…魔王退治して、お姫様と結婚して、時期国王…か」

戦士「やっぱ勇者の奴はすげーな」

武闘家「私たちはそのすげー勇者の仲間なんだよ?」

武闘家「堂々と胸を張って!」
バシッ

戦士「お、おう、そうだな」

武闘家「さ、お祝いに行こうっ!」



勇者「よう!2人とも、来てくれてありがとよ!」

武闘家「あったりまえでしょ!」

戦士「俺たちは一緒に魔王と戦った戦友だろ?」

勇者「そうだな。後は魔法使いの奴が居れば」

勇者「世界を救った勇者パーティ勢揃いだったのにな」

戦士「あいつも来られれば良かったんだが」

勇者「まだ行方知れずか?」

戦士「あぁ…連絡も無い…」

勇者「そうか…」

武闘家「あー!暗い話しは無し無し!」

武闘家「今日はせっかくの結婚披露宴だってのに!」

勇者「そうだな!2人とも、楽しんでってくれよ!」

戦士「おう!1ヶ月分位、食い貯めさせてもらうぜ!」

勇者「ははっ!それじゃまた後でな!」

武闘家「…勇者ってば、時期国王の自覚有るのかしらね」

戦士「自覚があろうとなかろうと、あいつは人を惹き付ける」

戦士「この国はきっと良くなる」

戦士「魔王が死んだ今、世界はきっと良くなる」

武闘家「どうしたの?戦士、顔が怖いよ?」

戦士「いや、何でも無い」

戦士「さぁ!宮廷料理なんて、この先食う機会ねーんだ」

戦士「腹一杯食おうぜ!」

武闘家「ふふっ、あまり食べ過ぎないでよ?」

戦士「いいや、ここで無理しないでいつするんだよ!」

戦士「さぁ、食うぞ食うぞー」

侍女「あのっ!戦士様!冒険のお話しをお聞かせ下さい!」

貴族女a「わたくしにも是非お聞かせ下さいませ」

貴族女b「わたくしも興味ありますわ」

戦士「あ、あぁ…えっと…その…はは…まいったな」

貴族女a「あら、戦士様はこういうのは苦手なのかしら?」

貴族女b「ウブなのですね、うふふ」

戦士「ええっと…おーい、武闘家!ちょっと…」

武闘家「ふん!鼻の下が伸びてますよ!戦士様?」

戦士「お、おい…」

武闘家「知らないっ!」

貴族女a「あらあら、武闘家様の機嫌を損ねてしまいましたわ」

戦士「あ、あはは…あいつ短気なんで」

貴族女b「戦士様と武闘家様は幼馴染なのですよね?」

戦士「そうです。あと、俺の弟もなんですけどね」

戦士「小さい頃から3人一緒で…」

侍女「魔法使い様ですよね!私、以前この王城でお会いした事があります!」

侍女「侍女の私にも優しく声をかけて下さいました!」

戦士「へぇ?」

戦士(あいつが他人に優しく声を…?珍しい事もあるもんだな)

貴族女a「で?魔法使い様はどちらに?」

貴族女b「わたくしも是非お会いしたいですわ!」

貴族女a「今や世界一の魔道士ですものね」

戦士「あ、あぁ…その、あいつは今、ちょっと旅に出ててさ」

貴族女a「あらそうですの…少し残念ですわ」

貴族女b「魔王を倒した勇者様のお仲間、どのような方なのか大変興味がありましたのに」

貴族女a「いらっしゃらないのでは仕方ありませんわね」

貴族女a「そうですわね。それでは戦士様、旅中のお話しをお聞かせ下さい!」

戦士「あぁー、じゃあ、えーっと…」


武闘家「…」
ジーーーーーーーッ

戦士(そんな、熊をも射殺す様な眼差しで俺を睨むなよ…)



戦士「それじゃあな、勇者」

勇者「本当に故郷の村に帰るのか?」

戦士「あぁ」

勇者「お前程の剣の腕があれば、宮廷騎士にもなれるのに」

戦士「はっはっは、俺にゃ騎士道精神が欠けてるだろが」

勇者「騎士じゃなくても、剣術指南役でも…」

戦士「俺の剣術は我流。人に教える様な物じゃねぇよ」

勇者「そうか…まぁ、たまには遊びに来いよ!」

戦士「あぁ、次来た時は極上の葡萄酒で飲み比べだな!」

勇者「望む所だ!」

戦士「…それじゃあ、な」

勇者「あぁ、元気でな!」

武闘家「ちょっと!私の事、無視して良い感じの雰囲気作んないでよ!」

勇者「してないよ、武闘家」
ナデナデ

武闘家「頭を撫でるな!無神経バカ!」
ゲシッ!

勇者「痛てぇ!スネを蹴るな!」

武闘家「あんたが子供扱いするからでしょ!」

勇者「お前は子供だろ?」

武闘家「何度も言うけど、同い年だからね?」

勇者「はははっ、もうこんな掛け合いもしばらくは無いんだし」

勇者「最後ぐらい頭なでなでさせろー」
ナデナデ

武闘家「このアホッ!」
ゲシッ!

勇者「んがっ!マジ痛ぇ!」

武闘家「…戦後復興、色々大変だと思うけど、頑張りなさいよ!」

武闘家「期待してるわよ、時期国王様!」

勇者「はは、ま、俺がやれる事を一生懸命頑張るさ」

武闘家「あんたが変な事したら、私たちが懲らしめに来るからね!」

勇者「是非そうしてくれよ」

武闘家「なにかあったら、すぐ駆けつけるからね?」

勇者「あぁ、アテにしてる」

戦士「…武闘家、そろそろ行こう」

武闘家「そうだね。それじゃね、勇者!」

勇者「あぁ、2人とも、元気でな!」

ちょっと短いけど今日はここまで
誰か読んでくれるといいんですが
続きはまた明日

しるかよ
とっとと書け
エタるな

再開します



辺境の村

戦士「帰って来たな」

武闘家「久しぶりだねー。2年ぶり位?」

戦士「そうだな」

武闘家「みんな元気かなー」

戦士「師匠に挨拶してきたらどうだ?」

武闘家「そうだね、ちょっと行って来る」

武闘家「後で戦士の家に行くね!」
タタタッ

戦士「家…か」



戦士「…やっぱりあいつは居ないか」

戦士「帰って来た形跡も無いな」

戦士「魔法使い…」



魔王「グガァァァァァァ!!」

勇者「ど、どうだ!」

魔王「グ、グググ…さすが光の精霊の加護を受けし者よ…」

魔王「我はここまで…だが!」

魔王「人の心に闇がある限り、『魔王』は何度でも蘇る!」

魔王「その時、貴様は再び『魔王』を斬れるかな?」

魔王「クックック…地獄の底から貴様の事を見ているぞ!」

魔王「さらばだ、宿敵……」
ボロボロボロ…
グシャッ…

勇者「や…った」

勇者「勝った!魔王を…魔王を倒したぞ!」

戦士「やったな、勇者!」

武闘家「よ、良かったぁ…もう駄目かと思ったよ」
ヘタッ

勇者「俺もだぜ…今のが渾身の一撃だったんだ」
ガクッ

勇者「また変身されたら、もう駄目だったな…」

戦士「だが俺たちは勝ったんだぜ!」

勇者「おう!これで世界は平和にっ!ひゃっほーい!」

魔法使い「…」

戦士「どうした、魔法使い?」

魔法使い「何でも無いよ、兄さん」

勇者「ちょ、ちょっと休憩な…全力出し切って、ヘトヘトだ…」

武闘家「そだね…私もちょー疲れたよ…はぁ…」

魔法使い「…」
ポワッ

武闘家「あ!ありがと、魔法使いっ」

魔法使い「…」
ポワッ

勇者「おっと、すまないな、魔法使い」

魔法使い「体力が回復したなら警告する。今すぐここを離れるべき」

勇者「は?なんで?」

魔法使い「魔王が死んだ事で、魔王城を支えていた魔力が尽きつつある」

魔法使い「魔力の供給が無ければ、城は崩壊する」

勇者「ま、マジで?ここまで来るのに2時間はかかったんだぜ?」

魔法使い「城に潜んでいた魔族はすでに撤退を開始している様子」

勇者「やべぇ!皆、逃げるぞ!」

戦士「おう!」

武闘家「敵が居ないなら、出口まで走って行ける!」

魔法使い「僕の予測では、後30分程で魔王城は完全に崩壊する」

勇者「い、急げー!」
ダダダッ



戦士「はぁっ、はぁっ」

武闘家「戦士!しっかり!ちょっと遅れてるよ!魔法使いも!」

戦士「あぁっ!わかってるっつーの!」

戦士「こっちは回復してもらってねーんだっ!」

魔法使い「ごめんね、兄さん。僕の魔力はもう空っぽなんだ…」

戦士「お前が気にする事じゃねぇ!」

戦士「最悪お前を担いで走ってやるからな!」

魔法使い「…」

勇者「おっ!?あれが出口だっけ?」

武闘家「そ、そうだよ。あの入り口の彫像に見覚えがあるし!」

ガラガラガラ…

戦士「もうかなり崩れて来てる!注意して…」

ドズゥゥゥン

戦士「なっ!?」

勇者「おい、冗談だろ!」

武闘家「石橋が割れて、道が分断された…」

戦士「あと数メートルって所でっ!」

魔法使い「…三人とも、先に行ってくれ」

戦士「何を言う!お前を置いて行けるか!」

勇者「そうだ!すぐ助けるぞ!」

魔法使い「僕の事は良い。皆は平和な世界へ」

戦士「馬鹿な事を言うな!弟を捨てて行けるか!」

魔法使い「僕がそちらに渡る手段はない。皆が僕と一緒に死ぬ事はない」

魔法使い「さぁ、出口はすぐそこだ…行ってくれ」
クルッ
スタスタ

戦士「待て!魔法使い!」

魔法使い「…じゃあね、兄さん」

ガラガラ
ゴシャァ!

戦士「そんな…そんなっ!」

勇者「…戦士!行くぞ!」

戦士「でも、弟が!魔法使いがまだ!」

武闘家「…戦士、ごめん」
ドスッ

戦士「てめ…なにしやが…」
ガクッ

勇者「俺が担ぐ!行くぞ武闘家!」

武闘家「うんっ!」

勇者「後で俺を憎んでくれていいから…今は…」

武闘家「…」
タタタッ

ズズゥゥゥゥゥン……



戦士「…はっ!?」

武闘家「あっ!戦士!目、覚めた?」

戦士「…ここは?」

武闘家「船室だよ」

戦士「魔法使いは…?」

武闘家「…」
フルフル

戦士「そうか…俺はアイツを守れなかったのか…」

武闘家「戦士は悪くないよ!」

武闘家「私が戦士を気絶させたんだから、私が…」

戦士「違うだろ?あの時、お前が動かなかったら」

戦士「パーティ全員瓦礫の下敷きで全滅」

戦士「魔王と勇者は相打ちって事になってただろ?」

武闘家「…」

戦士「だから、お前がした事は正しいんだ…」

武闘家「ひっく…ご、ごめんねぇ、戦士…あたし…」

戦士「いいんだ、武闘家。これで…よかったんだ」

戦士「でも…俺は…ぐっ…」
ガクッ

武闘家「戦士?ねぇ戦士!大丈夫?」
ユサユサ

勇者「…寝かせといてやれ」

武闘家「…でも!」

勇者「戦士は、怪我はしてないが、疲労している」

勇者「それに一晩寝れば俺も回復法術が使える様になる」

勇者「だから今は…」

武闘家「うん…」



?『…いさん』

戦士「…ん?」

魔法使い『兄さん』

戦士「ま、魔法使い!?生きて…生きてたんだな!」
ガバッ

魔法使い『あぁ、僕は無事だよ…』

戦士「本当に無事で良かった…」
スカッ

戦士「な、なんだ!?魔法使いの身体をすり抜けた??」

魔法使い『僕は今、魔力を使って、離れた所から話しかけているんだよ』

魔法使い『兄さんが今見ているのは幻影なんだ』

戦士「お前、今、どこにいるんだ?」

魔法使い『言えない』

戦士「言えない?どう言う事なんだよ!」

魔法使い『僕は今、魔力の根源を解明している』

戦士「魔力?根源?意味がわからん!」

魔法使い『凡人に言っても解らないよ』

魔法使い『可哀想な兄さん』

魔法使い『これからの事を思うと、兄さんを救ってあげたくなってしまう』

魔法使い『でもそれは出来ない』

魔法使い『僕はすでに魔の一部になりつつあるからね』

戦士「な、何を言ってるんだ?お前」

戦士「ひょっとして魔族の残党に捕まってるのか?ならすぐに…」

魔法使い『優しい兄さん』

魔法使い『だから僕はあの時、兄さんにだけ、回復魔法を使わなかったんだよ』

戦士「どういう事だ?」

魔法使い『兄さんの体力が全快していたら』

魔法使い『あの壊れた石橋を跳んで渡って来ただろう?』

戦士「あ、当たり前だろ!」

魔法使い『おせっかいな兄さん』

魔法使い『それが嫌だから回復させなかったんだよ』

戦士「なんで…なんでだ?」

魔法使い『無知な兄さん』

魔法使い『だから、そんな兄さんに』

魔法使い『一つだけ、魔法を教えてあげる』

戦士「俺に魔力は無い…それは解ってるだろ?」

魔法使い『大丈夫。魔法が使えない人間なんて、この世に居ないんだよ』

魔法使い『器の大きさに個人差はあるけどね』

魔法使い『今から教える魔法はね』

魔法使い『ごくわずかな魔力で使えるんだ』

魔法使い『それでいて、絶大な効力を発揮する』

魔法使い『代わりに自分自身の生命を削るからね』

戦士「それって…」

魔法使い『伝説の禁呪、自爆魔法だよ』

戦士「なんでそんな魔法を…俺に?」

魔法使い『兄さんはきっとこの魔法を使いたくなるよ』

魔法使い『だから教えるのさ』

戦士「だからなんで…」

魔法使い『その時になれば解るさ』
ポウッ

戦士「い、今、何を?」

魔法使い『今、兄さんの頭に直接呪文を送り込んだよ』

魔法使い『使いたい時、強く念じれば、ちゃんと発動するからね』

魔法使い『強く強く念じないと発動しないからね』

魔法使い『それじゃあ兄さん、そろそろお別れだ』

戦士「ま、待ってくれ!お前は…帰って来ないのか?」

魔法使い『おそらく無理だと思うよ』

魔法使い『あの2人にもよろしく言っておいて』

戦士「…あ」

魔法使い『それじゃあね、兄さん』

魔法使い『一応、僕が本当に生きている証に…』
コトッ

魔法使い『僕の指輪を転移させておくよ』

戦士「ま、待て!」

魔法使い『兄さんに光の精霊の加護がありませんように…』
フッ

戦士「魔法使い…お前は…」



武闘家「そっか…魔法使い、生きてるんだね!」

戦士「あぁ、この指輪は確かに魔法使いの物だ」

戦士「俺の夢なんかじゃなく、確かにあいつは生きている」

勇者「あんの野郎、どこにいやがるんだ!」

勇者「絶対探し出してやる!」

勇者「さぁ行くぞ!2人とも!」

武闘家「おー!」

戦士「…」

勇者「戦士?どうした?」

戦士「俺たちはこのまま王城に戻るべきだ」

武闘家「なんで?魔法使いの事が心配じゃないの?」

戦士「あいつは…きっと見つからない」

武闘家「なんで?」

戦士「兄弟だから解る」

戦士「もし見つかるような所に居るなら」

戦士「あんな魔法を使ってまで、生きてる事を連絡してこない」

戦士「あいつは俺たち3人に見つからない所で」

戦士「魔法について、研究をしてるんだ」

戦士「研究が終われば帰ってくるかもしれない」

戦士「でも今は…多分俺たちの事を邪魔だと思っている」

勇者・武闘家「…」

戦士「それに、魔王を倒した報告は必要だろ?」

戦士「世界は救われました!って、俺たちが報告しないとな!」

武闘家「それで良いの?」

戦士「あぁ、それで良い」

勇者「よし。じゃあまずは王城に向かうか!」

戦士「おう!」



戦士「あれから2ヶ月か…」

戦士「あっと言う間だったな…」

戦士「この家、こんなに広かったかな」

戦士「…」

戦士「勇者は時期国王」

戦士「あいつは良い王様になるだろうな」

戦士「ははっ、王冠は似合わないだろうけどな」

戦士「いつの間に姫様を口説いたんだか…」

戦士「でもまぁ、幸せそうだったしな」

戦士「武闘家は…やっぱり拳法道場の後継者になるだろうな」

戦士「何せ魔王を倒したパーティの1人だもんな」

戦士「道場、繁盛するだろうな」

戦士「優しくて、強くて、可愛くて」

戦士「非の打ち所がないな」

戦士「あー、幼児体型なのが唯一の弱点かな」

戦士「まぁ、幸せに暮らして行けるんだろうな」

戦士「魔法使いは…魔法の研究、か」

戦士「あいつは昔からそういう奴だったしな」

戦士「魔法の研究に生涯を費やすんだろうな」

戦士「未来に語り継がれる大魔道士になるかもしれんな」

戦士「いや、魔王を倒した英雄の一人なんだ」

戦士「もう充分、大魔道士だな」

戦士「じゃあ俺は?」

戦士「…俺はどうすればいい?」

戦士「腕っぷしには自信があるが、ただそれだけだ」

戦士「他に何も無い…」

戦士「魔物の数が激減した今、用心棒の仕事も無い」

戦士「頭も悪いしな…」

戦士「どうすっかな…」



今日はここまで
また明日

ふむ('-ω-) 期待して待っていよう


「次期」国王じゃないか?

再開します

>>52
次期でした。
ご指摘ありがとう




3ヶ月後

バタン
武闘家「おーい、戦士ー、居るー?」

戦士「…あぁ、居るさ」

武闘家「む!またお酒飲んでるね?」

戦士「今は飲んでない…夜飲んでたんだ…」

武闘家「もう!しっかりしてよ!」

戦士「しっかり?俺がしっかりすると、誰がどうなるんだ?」

武闘家「世界を救った英雄が、二日酔いでフラフラしてんなって言ってんの!」

戦士「世界は救われたけど、俺は救われていない…」

武闘家「は?どういう意味?」

戦士「なぁ、武闘家…」

武闘家「何?」

戦士「俺はどうしたらいい?」

武闘家「…戦士はさ」

戦士「…」

武闘家「やりたい事とか、無いの?」

戦士「…無い」

武闘家「剣の腕を更に磨く!とか」

戦士「平和な世の中になったんだ、剣技を磨いてなんになるんだ?」

武闘家「じゃあ、弟子を取って、戦士の剣技を伝えて行くとか?」

戦士「魔王は滅んだ…魔物も大人しくなった」

戦士「俺の剣技は必要無い」

武闘家「じゃあ私の武術も必要無いって言うの?」

戦士「お前の武道は人の生きる道だ」

戦士「暗い心を照らす光だ…」

戦士「力無き正義は無力、正義無き力は暴力」

戦士「って、師匠が言ってたろ…」

武闘家「それなら、戦士も…」

戦士「俺の剣技は只の暴力」

戦士「力任せに斬りつける、破壊の技だ…」

戦士「…なぁ、武道家」

武道家「何?」

戦士「俺は…魔王との戦いで、死ぬべきだったんじゃないか?」

武道家「!?」

戦士「魔王城に近づくにつれ、こうなる予感がしてたんだ」

戦士「戦いが終わった後、俺は落ちぶれるんじゃないかってな…」

戦士「見事に当たっちまったな、はは…」
ゴクッゴクッ
プハッ

戦士「帰ってきてしばらくは旅の話を聞きたがっていた連中も」

戦士「今じゃ俺の事を木偶の棒呼ばわりだ」

戦士「仕事を手伝いたいと申し出ても…」

戦士「『世界を救った英雄様に木こりなんてさせられません』ときたもんだ」

戦士「お前や勇者と違って、俺には何もない」

戦士「あの時…魔法使いを助けて俺が死ねば…」

武闘家「何で…何でそんな事言うのっ!」

武闘家「私が知ってる戦士は…勇敢で、頼り甲斐があって…」

武闘家「仲間思いで…格好良くて!」

武闘家「私が好きだった戦士はどこに行っちゃったのっ!」

戦士「…お前が知ってる戦士は多分もう死んだんだよ」

武闘家「ばかっ!!」
ドスッ!

戦士「うぐぅ…お、お前…」
ドサッ

武闘家「魔法使いの事は?探しに行かないの?」

武闘家「勇者ともう一度酒を酌み交わす約束は?」

武闘家「私とした、昔の約束は守ってくれないの?」

戦士「…」

武闘家「もう知らないっ!」
ダダダッ
バタン

戦士「はは…久しぶりに思い切り蹴られたな…」

戦士「約束…か」

戦士「…」

戦士「勇者は次期国王として、魔物に荒らされた町や村を」

戦士「次々と復興させて行ってる」

戦士「王の代理で、他国との交渉の席につくこともあるらしい」

戦士「本当にあいつは凄い奴だ…」

戦士「魔法使い…お前は今、どこに居るんだ…」

戦士「まだ魔法の研究は終わらないのか?」

戦士「俺が会いに行っても拒否するのか?」

戦士「するんだろうな…」

戦士「武闘家との約束…あいつが俺から一本取ったら、結婚するって約束…」

戦士「今じゃ実力的に武闘家の方が数倍上だろ…」

戦士「それに…こんな落ちぶれた俺には釣り合わない」

戦士「結局、何も出来ずに、酒を飲む毎日…か」
ゴクッゴクッ
プハッ

戦士「ふぅ……」

戦士「自爆魔法…か」

戦士「はぁ…魔王が復活とかしねーかな…」

戦士「そしたら、俺は…魔王相手に格好良く自爆魔法を炸裂させて…」

戦士「死んで…英雄になれるのか?」

戦士「俺はアホか…そんな事…」

戦士「そんな事…」

戦士「……」





王城

勇者「何?魔王城跡に異変?」

兵士長「はっ!各地に分散した魔物が集結しつつあります!」

勇者「…まさか魔王が復活したのか?」

兵士長「それはわかりません。が、城跡に塔の様な物が出来つつあります」

勇者「出来つつある?魔物が塔を築いているのか?」

兵士長「いえ…何と申しますか…その…」

兵士長「じわじわと何かが天に向かって伸びていくような…」

兵士長「説明し辛いのですが、その…あれは魔法ではないかと思います」

勇者「魔法…」

兵士長「しかもその中心に人影らしきものが見えました」

勇者「人影…やはり魔王が!?」

兵士長「いえ、魔族独特の羽根や角は見当たらず…」

兵士長「深緑色のローブを纏って居たので」

兵士長「あれは人間の魔道士だったのではないかと思うのですが…」

勇者「まさか…」

兵士長「魔物どもはその塔らしき物と人影を守るように動いていました」

勇者「…兵士長、偵察ご苦労だった」

兵士長「勇者様、如何いたしましょう」

勇者「辺境の村に急ぎ伝令を!」

兵士長「はっ!」

勇者「…」



武闘家「戦士っ!」
バンッ

戦士「…ん?武闘家か?せめてノックくらいしろよ」

武闘家「ごめん」
コンコン

戦士「開けてからノックしても意味ねーよ」

戦士「で?なんだ?なにか用でもあるのか?」

武闘家「勇者から使いが来たよ!」

戦士「勇者から?城に来いって?」

武闘家「うん!大至急だって!」

戦士「ははは、上等の葡萄酒を飲み放題か!そりゃあ良い…」

武闘家「違うよ!ばか!」

戦士「あぁ?なんだ、違うのか…じゃあ俺行かねー」
ゴロン
モゾモゾ

武闘家「…」

戦士「おい武闘家…寒いから扉閉めてくれ…」

武闘家「ねぇ、ちょっと…」

戦士「酒が飲めねーなら城には行かないからなー」

武闘家「こ…」

戦士「こ?」

武闘家「このやろーっ!いい加減、目ぇ覚ませーっ!」
ドスッ!

戦士「げはっ!がはっ…いってぇ!」

武闘家「さっさと起きなさい!迎えの馬車待たせてるんだから!」

戦士「げふっ…俺は行かねぇって言ってんだろが!」

武闘家「両手両足縛ってでも連れて行くからね!」

戦士「やれるもんなら…」

武闘家「マジでやるよ?今の戦士がわたしに勝てると思ってるの?」

武闘家「殴って、蹴って、気絶させて、縛って、連れて行く」

武闘家「出来れば自分の足で歩いて欲しいけど」

武闘家「言う事聞かなければ、本気で実行するからね?」
パキポキ

戦士「…」

武闘家「抵抗してみる?私、手加減しないよ?」

戦士「上等だ…やってみろ!」
スッ

戦士「俺だって12歳までは拳法やってたんだぜ?」

戦士「それに腕力なら俺の方が遥かに上だぜ?」

戦士「一発当たればお前のちびっこい身体なんて吹き飛ぶぜ」

武闘家「言ったね…それじゃ、ちょっと寝て貰うよ!」
ビュンッ

ガスッ!



戦士「もがーー!もがもが!」

武闘家「戦士!五月蝿い!」

戦士「もがもがもがー!もが!」

武闘家「もー!それじゃ、猿ぐつわだけ外すから、五月蝿くしないでよ?」
ガサゴソ

戦士「ぶはっ!ばーかばーか!お前ばっかじゃねえの!?」

戦士「こんな飲んだくれ相手に秘奥義使うとか、ばっかじゃねーの?」

武闘家「五月蝿くしないでって言ったでしょ!また猿ぐつわ…」

戦士「待て!それは嫌だ!マジで止めろ!」

武闘家「じゃあ大人しくしてて。そろそろ王都なんだから」

戦士「くそっ!当たりさえすれば…」

武闘家「当たればね?でもかすりもしなかったじゃん?」

戦士「うぐ…」

武闘家「久々に全力で暴れて、どうだった?」

戦士「…」

武闘家「ちょっとはスッとしたんじゃない?」

戦士「まぁ…ちょっとはな」

武闘家「ま、あんたの家は半分以上壊れちゃったけどね」

戦士「いいさ。もうあの家には戻らないからな」

武闘家「へ?」

戦士「勇者が俺達を呼んだって事は、何かあったって事だろ?」

戦士「それに全力を尽くす」

戦士「それが終わったら…魔法使いを探す旅にでも出るさ」

武闘家「そっか」

戦士「あぁ」

武闘家「やっと戦士らしい事言えるようになったね!」

戦士「そうか?俺は元々こうだろ?」

武闘家「はぁ?ここんとこ酒浸りだったのにぃ?」

武闘家「どの口がそんな事言うの?」

戦士「違いねぇや…すまなかったな、武闘家」

武闘家「いえいえ、私とあんたの仲じゃない」

武闘家「それにね、戦士」

戦士「ん?」

武闘家「実は私、知ってるんだー」

武闘家「私が怒鳴りつけた日から、戦士が毎日素振りを続けていたのを」

戦士「うっ…見てたのか?」

武闘家「それにその剣も、毎日研いでたでしょ?」

戦士「…他にやる事もなかったしな」

武闘家「さっきの大暴れだって、わたしに当たらない様にわざと外してたでしょ?」

戦士「それは気のせいだろ…」

武闘家「ふふん!これでも師範ですからね!それくらいわかるって!」

戦士「なんか、なんでもお見通しなのな、お前は」

戦士「一生勝てる気がしねぇよ」

武闘家「ふふっ、私の好きな戦士が帰ってきてくれて嬉しいよ!」

戦士「…ありがとよ」



勇者「おう!よく来てくれたな、2人とも!」

勇者「まずは落ち着いて、食事でも…」

武闘家「勇者!一体何があったの?」

戦士「俺達はお前の仲間だ。社交辞令は必要ねぇ」

戦士「俺は何をすればいい?何でもするぞ?」

勇者「ん…これはお前らにしか頼めない事でな…」

勇者「力を貸してくれ!」



戦士「深緑のローブ…」

勇者「な?な?」

武闘家「それってひょっとして…魔法使いの奴じゃない?」

勇者「俺自身が見た訳じゃないから何とも言えないけどな」

勇者「2人に頼みたいのは、魔王城跡の調査だ」

勇者「俺も一緒に行きたいんだが、立場上、城を抜け出せねーんだ」

勇者「王にも姫にも行くなって言われちまってな…」

勇者「それにもし、魔王城跡に居るのが魔法使いの奴なら…」

勇者「他の奴には見られたくねぇ」

戦士「…わかった、行こう」

武闘家「だね!」

勇者「すまんな、2人とも…」

戦士「気にするなよ、勇者」

武闘家「そうだよ、仲間でしょ?」

勇者「頼む。信頼出来るのはお前たちだけだ」

勇者「くれぐれも言っておくが、今回はあくまでも調査だ」

勇者「もし魔法使いが原因なら、引きずってでも連れて来い」

勇者「だが…もし万が一、魔王が復活している様なら」

勇者「俺じゃなきゃ倒せない」

勇者「だから調査に徹してくれ」

勇者「無茶だけはしないでくれよ?」

戦士・武闘家「了解!」

今日はここまで
続きは明日

乙乙

再開します



戦士「けどよー…よかったのか?武闘家」

武闘家「は?何が?」

戦士「俺一人でもよかったんだが」

武闘家「無理でしょ」

戦士「…はっきり言いやがる」

武闘家「相手が魔法使いなら、あんたは絶対負けないけど勝てない」

武闘家「相手がもし魔王なら…あんたはきっと死ぬ」

戦士「そうか…そうかもな」

武闘家「だからね、戦士」

武闘家「ちゃんと背中は守るから」

武闘家「前を向いてね?」

戦士「あぁ」

武闘家「絶対、約束守って貰うんだから!」

戦士「…」



魔王城跡

戦士「…あれか」

武闘家「んー、確かに塔にも見えるけど…あれ、何か透けてない?」

戦士「そうだな…」

戦士(あの時、魔法使いが使ってた幻影の魔法と似てるな…)

戦士「勇者から聞いてたよりもデカいな…中心部分が見えない」

戦士「もうちょっと近付いてみるか…」

武闘家「見つかっちゃうよ、多分」

戦士「そしたら蹴散らせばいいだけだろ?」

武闘家「よっしゃ!久々に本気でやっちゃおうか!」

戦士「おう!」



ザシュッ

戦士「ふぅっ」
キンッ

武闘家「今ので最後?」

戦士「この辺りのはな」

戦士「向こう側にも居るみたいだけど、バレてないみたいだな」

武闘家「さすが戦士、鮮やかなお手並み!」

戦士「お前もだろ」

武闘家「じゃ、中を覗いてみましょうかね?」

戦士「そうだな…」

武闘家「…これって触っても何とも無いかな?」

戦士「俺から行く…」
スッ

戦士(やっぱり、幻影…)

武闘家「ちょっ!大丈夫なの?」

戦士「大丈夫だ、問題ない」

武闘家「じゃ、こそーっと、お顔を拝見しましょうかね?」

戦士「おう」

魔王城跡中心部

?「…」

?「やあ、兄さん、来たんだね…」

戦士「!?」

?「武闘家も、久しぶり。相変わらず元気だね…」

武闘家「魔法使い!あんたここで何やってんのっ!」

?「魔法使い?…あぁ、僕はそんな名前だったね」

?「でも今はちょっと違うんだよね」
スッ

戦士「武闘家っ!下がれっ!」

武闘家「!?」

ボワッ!

武闘家「ちょっと!なにすんのよ!」

?「君たちが知っている魔法使いはもう居ない…」

?「今の僕は…」

?「『魔王』だ!」

戦士「どういう事だ、魔法使い!」

魔王「僕はね…ついに魔力の根源を識ることが出来たんだよ」

戦士「アホの俺にもわかるように言え!」

魔王「ふふ…可哀想な兄さん」

魔王「それじゃ、一応教えてあげるね」

魔王「その前に…」
ピッ

武闘家「あっ…」
ピキーン

戦士「!」

魔王「邪魔者には黙っててもらおうかな」

戦士「お前っ!武闘家に何をした!?」

魔王「時間停止の禁呪を使ったんだよ」

魔王「大丈夫、動けない代わりに、何があっても傷つかないから」

魔王「それじゃあ、無知な兄さんに一から説明してあげるね」

魔王「あ、話しの前に…兄さん、自爆魔法を使わなかったんだね」

戦士「…」

魔王「兄さんは心が弱いから、自殺するために使うかと思ったんだけど」

戦士「それも少しは考えた」

戦士「でも、命の捨て所はちゃんと考えるさ」

戦士「さすがに森の熊相手に自爆魔法なんて、もったいなくてな」

魔王「ふふふ、そうなんだ。ちょっと残念」

戦士「!」

魔王「それじゃ話すからね。質問あったらどうぞ。何でも答えるからね」

魔王「前に少し話したけども、覚えているかな?」

魔王「魔力はね、実は誰にでもあるものなんだ」

戦士「…」

魔王「魔法はね…言葉の通り、魔の下法なんだ」

魔王「人は誰でも邪な心を持っているだろう?」

魔王「魔力は邪な心から創られる」

魔王「だから誰でも魔法を使えるんだよ」

魔王「真に清らかな心を持つ者なんて」

魔王「世界中探しても1人しか居ない」

魔王「それが光の精霊の加護をその身に受けた、勇気の象徴、勇者」

魔王「勇者だけは魔力を持てないんだ」

魔王「光の加護で、負の力は打ち消されてしまうからね」

魔王「でも光の精霊は全知全能じゃない」

魔王「精霊の加護は世界中で只1人しか受けられないんだよ」

魔王「だから、精霊法術を使えるのは勇者だけ」

魔王「普通の人間と魔族が使えるのは魔法」

魔王「勇者が使うのは法術と言うんだよ」

戦士「…それで?何でお前が魔王になるんだよ!」

魔王「ふふふっ…僕はね」

魔王「元々、『前魔王』を倒す事に別段興味は無かったんだよ」

魔王「君たちと旅を続けていたのも、世界各地に伝わる禁呪を収集する為だったんだ」

戦士「禁呪?」

魔王「歴代の魔王や、大魔道士が創り出した、呪文でね」

魔王「威力が強すぎて、精霊達に封印されてしまったんだよ」

戦士「お前、そんな物を…」

魔王「ふふふ…僕らは色んな所を旅してまわったよね」

魔王「あの古龍の塔では、実は禁呪を3つも習得してたんだよ」

魔王「そうして禁呪を習得する度にね」

魔王「僕の心は魔の深淵に近付いていったんだ」

魔王「僕の魔力の源は『知識欲』」

魔王「どんどん満たされて行く反面」

魔王「さらに知りたくなったんだ」

魔王「世界の理すべてをね」

魔王「ここまで、理解出来てるかな?」

戦士「…魔王らしい、長ゼリフご苦労なこった」

戦士「話しはまだ続くのか?」

魔王「もう少しだけね」

戦士「…」

魔王「伝説の剣を探しに入った地下迷宮を覚えてるかな?」

戦士「あぁ…覚えてるさ」

戦士「あの時、お前は道に迷って、敵に襲われ…死にかけたよな」

魔王「ふふ…あれはね、敵に襲われたんじゃなくて」

魔王「覚えた禁呪を使ってみたんだよ」

魔王「その禁呪は唱えただけで、無限の魔力を得られる呪文だったのさ」

魔王「その見返りに、全身の血液が毛穴から吹き出して、魔の血液に変わってしまうんだけどね」

戦士「魔の血液?」

魔王「魔族になったって事さ」

戦士「!?」

魔王「驚いたかい?歴代の魔王の中でも相当珍しいらしいよ」

魔王「元人間の魔王なんてね」

戦士「それじゃお前は…」

魔王「おっと、話しはまだ終わってないよ」

魔王「僕がここで何をしていたのか、調べに来たんでしょ?」

魔王「それを勇者に報告しなきゃね?」

魔王「魔王を倒せるのは、勇者の一太刀だもんね」

戦士「で?お前はここで何をしてたんだ?」

魔王「実はね、魔力の源である魔結晶は魔王城の地下深くにあったんだよ」

魔王「魔結晶っていうのは、全世界の負の感情を集めて、魔力に変換する結晶でね」

魔王「魔法はその魔結晶の力をほんの少しわけてもらって、使うのさ」

魔王「普段は詠唱を使って、引き出すんだけど」

魔王「魔族になると、高レベルの魔法すら、詠唱無しで使えるんだよ」

魔王「伝説の禁呪でさえ、ね」

魔王「その魔結晶の力を借りて、僕は血液だけじゃなく、肉体も魔族化していたんだ」

魔王「この幻影の塔は、見る人間の恐怖心を引き出させる為の物さ」

魔王「今はまだ僕の肉体改変の為に膨大な魔力を使っているので」

魔王「塔は小さいけどね。これからどんどん大きくなるよ」

魔王「いずれは幻影ではなく、実体化させるよ」

魔王「だから今度の最後の迷宮は魔王城ではなく、魔王の塔って事になるかな」

魔王「100階くらいの塔にしようと思ってるんだよ」

魔王「そこで魔王らしく、勇者が来るのを待ったりしてね。ふふふ……」

戦士「そんな…お前、何でそんな事を…」

魔王「弟である僕を殺すの?」

戦士「いいや、殺さねぇよ」
ガシャンガチャガチャガシャン

魔王「武器も防具も捨てて、死ぬつもりなの?」

戦士「違う」

戦士「殴って、蹴って、気絶させて、ふん縛って、王城に連れて帰る!」

魔王「兄さんにそれが出来るかな?」

戦士「出来ないと思ってんのか?」

魔王「僕の身体はもうほぼ魔族だよ?」

魔王「無尽蔵の魔力を持ち、多少の傷なら自然に治癒する」

魔王「兄さんの後ろについて歩いてた頃とは全然違うよ?」

戦士「それでも!俺はお前を…止めなきゃならねぇ!」

戦士「家族だからな!」

魔王「ふふっ…やっぱりこうなるんだね」

魔王「じゃあ、ちょっと相手をしてあげる」

魔王「死なない程度にね!」
ボッボッボッ!

魔王「でもこれ、当たったら即死する禁呪だよ!三つ、かわせるかな?」
ヒュッ!

戦士「当たるか、アホ!」
サッ

ボン!ボン!ボン!

戦士「へっ!余裕だっつーの」

魔王「それじゃ、これはどうかな?」
ボボボボボボボボボボッ

戦士「なっ!?んなに沢山出せるのかよ!?反則だろ!」

魔王「詠唱無しで禁呪使い放題なんだよ?」

魔王「体力馬鹿の兄さんにどうにか出来る訳ないでしょ?」
ヒュヒュヒュヒュッ

戦士「だぁぁぁぁぁ!」
ダッ!
ガシッ

魔王「なっ!は、離せ!」

戦士「なあ、あの魔法、お前に当たったらどうなるんだ?」

魔王「…」
バチバチバチバチッ!

戦士「へっ…どこが即死魔法なんだよっ!傷一つ無いじゃねーか!」

魔王「ふふふ、魔の根源たる僕に魔法が効く訳ないでしょ?」

魔王「それよりも…兄さんの素早さをちょっと甘く見てたよ」
パチン

フッ
武闘家「あれっ?私、今何をして…」

戦士「なっ!」

魔王「ほらほら、僕を抑えてる場合じゃないんじゃない?」

魔王「僕は念じただけで、禁呪を使えるんだよ?」

戦士「あのままじゃ、武闘家は訳もわからないまま死ぬんじゃない?」

魔王「ま、殺すには一つで充分だよね」
ボッ
ヒュッ

戦士「武闘家!危ねぇ!」
ダダッ!

武闘家「えっ?」

バチバチッ!

戦士「がっ!かはっ!」

武闘家「せ、戦士?何して…」

戦士「お、おう…無事で良かった…」

魔王「あれ?即死する禁呪のはずなんだけど違ったのかな?」

魔王「ちょっと魔力が足りなかったのかな?」

魔王「ま、どっちでもいいか」

武闘家「せ、戦士!血が!」

戦士「ぶ、武闘家、勇者に報告してくれ…」

武闘家「な、何を?て言うか、取り敢えず逃げようよ!」

魔王「今、勇者に報告されたら厄介な事になるかな…」

魔王「やっぱり二人とも、ここで死んでくれる?」

武闘家「…あいつ、ヤバいよ!逃げようよ、戦士!」

戦士「多分、無理だ…」

武闘家「え?」

魔王「わかってるね、兄さん。魔王からは逃げられないよ」

魔王「もう既にこの辺り一帯に、結界を張ってあるからね」

戦士「…俺が……お前を、止めてやるからな、魔法使い」
グググッ

武闘家「な、何するつもり?その怪我じゃ…」

武闘家「でも、戦士が戦うつもりなら私も…一緒に!」

戦士「…悪いな、お前との約束、守れそうにねーわ」

武闘家「な、何?」
ガシッ
ブンッ!

ドサッ
武闘家「痛っ!何すんの!」

戦士「離れてろ!」

武闘家「えっ?」

魔王「まだ立ち上がる意味あるの?楽になっちゃいなよ」

戦士「お前、まだ完全に魔王じゃ無いんだろ?」

魔王「肉体の方はね、ま、あと少しで終わるけど」

戦士「精神は?」

魔王「僕の精神はすでに魔そのものと完全に繋がっている」

魔王「それこそ人間とは次元が違うんだよ」

戦士「そうか…一応聞くが、元の魔法使いに戻る事は…?」

魔王「無いね」

戦士「解った…今、終わらせてやるかなら…」
ビュッ!

魔王「!?」
ガシッ

戦士「さっきより速くてビビったか?」
グググッ

魔王「な、何を…」

戦士「なぁ、魔法使い…」

魔王「ぐっ!離せっ!」
グイッグイッ

戦士「世界の理とか、どうでもいいじゃねえか」

魔王「五月蝿い!無知で無能な兄さんに解る訳がない!」

魔王「全てを知りたいという、この僕の欲求を、否定するなっ!」

戦士「そんなもん知らなくたって、人は生きていけるだろ?」

戦士「人間辞めてまで、何を知る必要があるんだよ…」

魔王「五月蝿い五月蝿い!」

魔王「小さい頃から体が弱くて、ろくに運動も出来なかった僕にとっては!」

魔王「識る事が全てだったんだ!」

魔王「それを極限まで追求して何が悪い!」

魔王「兄さんみたいな筋肉馬鹿には絶対に理解出来ない!出来るはずがない!」

戦士「あぁ、理解出来ないな…」

戦士「ただな…弟のお前がこのまま魔王になっちまうってんなら」

戦士「俺はそれをほうってはおけない!」

戦士「俺がお前を止めてやるからな」

魔王「ぐぎぎぎぎ!」
ググググッ

魔王「クックック…我は『魔王』だぞ?」

戦士(喋り方が…変わった?)

魔王「精霊の加護を受けた勇者ならいざ知らず」

魔王「貴様如きが我を止めるだと?どうやってだ?」

戦士「哀れな俺に、お前が教えてくれたんじゃねぇか」

魔王「フハハハハ。あの自爆魔法の事か?」

魔王「さっきまでの我なら倒せていたかもなぁ」

魔王「だがすでに肉体の改変も終わった」

魔王「我は真の魔王となったのだ!」

魔王「貴様の自爆魔法など、効かぬわ!」

戦士「それでも、試す価値はあるだろ?」

戦士「こんな近距離で自爆魔法とやらを使ったら」

戦士「さすがのお前も、魔法を使い続けられないんじゃないか?」

魔王「…」

戦士「武闘家が逃げ出す隙くらいは作れるんじゃねぇか?」

魔王「くっ!馬鹿が!無駄死にするつもりか!」

戦士「武闘家が逃げ切れれば、勇者の奴がお前を倒してくれるだろ?」

戦士「だから無駄死にじゃねぇよ!」

戦士「……すまねえな、武闘家」

武闘家「ちょ…」

戦士「『自爆魔法』」

カッ!

ドォォォォォン!

武闘家「せ、戦士っ!戦士ーーーーーっ!」



今日はここまでです
明日完結です

戦士ーーーー!!

再開します



ユサユサ
戦士「…ん?」

?「そろそろ起きて下さい」

戦士「はっ!?ここは…天国?」

?「正確には天界です」

戦士「あんたは?」

?「私は光の精霊です」

戦士「おぉ…精霊様ってホントに居たんだなぁ」

戦士「てか、やっぱり俺、死んだんだなぁ…」

精霊「…」

戦士「……武闘家はちゃんと逃げ切れたのかな?」

戦士「魔王は倒せたかな…ってやっぱ無理でしたよね?」

精霊「いいえ。魔王は貴方の自爆魔法で、確かに倒れました」

戦士「へ?魔王を倒せるのは、精霊様の加護を受けた勇者の…」

精霊「ですから、貴方の自爆魔法で、魔王を倒せたのです」

戦士「どういう事ですか?」

精霊「勇者が前魔王を倒した瞬間、私の加護は勇者の身体から離れました」

戦士「はぁ?マジですか?」

精霊「ふふ、マジですよ」

精霊「精霊は、魔王がこの世に現れた時のみ」

精霊「人間の身体に加護を授ける事が出来るのです」

精霊「魔王が滅びれば、授けた加護は精霊に戻ります」

戦士「そんな事が…」

精霊「私は貴方たちの事をずっと見ていました」

精霊「貴方が自爆魔法を使う直前、魔法使いさんは魔王へと変化しました」

精霊「本来ならば、無垢な子供に加護を授けるのですが」

精霊「今回だけは特別。貴方に加護を授けたのです」

精霊「だからあの自爆魔法は精霊の加護がついた、勇者の一太刀だったのです」

精霊「太刀じゃなくて、法術でしたけどね」

戦士「そうですか…俺はあいつを止められたんですね…」

戦士「魔法使いはどうなったんですか?」

精霊「魔法使いさんは、この世界が始まってから、恐らく一番多くの禁呪を習得した魔王です」

精霊「彼は複数の禁呪を組み合わせて」

精霊「自分の肉体が滅んでも、精神を残す呪文を編み出しました」

精霊「あの若さで、あの域まで達するのは並大抵の事ではありません」

精霊「まさに大魔道士でした」

戦士「それじゃあいつは…」

精霊「魔結晶の話しは聞いてましたよね?」

戦士「はい。魔王城の地下深くにある、魔力の元だって…」

精霊「彼の精神は魔結晶と完全に一体化しました」

戦士「…」

精霊「この先、地獄に行く事も、転生する事も無く」

精霊「永遠に魔結晶の中で生き続けます」

戦士「そうですか…」

精霊「彼はそうありたいと思って、そうなったのです」

精霊「世界の先を識る為に」

精霊「だから貴方が抱え込む事はありません」

精霊「弟に会えなくなって寂しいとは思いますけども、ね?」

戦士「そうですね…あいつはそんなやつです」

精霊「はい」
ニコッ

戦士「あー、それでこの後、俺はどうなるんですか?」

戦士「沢山の魔物を斬ってきたから、やっぱ地獄行きですかね?」

精霊「…」
ニコニコ

戦士「それにしても…天界って案外何も無いんですね」

戦士「小さな扉と一面雲だらけ」

戦士「随分と殺風景ですね」

精霊「ここは天界の中でも最下層の入口ですからね」

精霊「ここからでは、審判の門すら見えませんよ」

戦士「あ!俺、ひょっとして天界の住人になれるとか?」

精霊「いいえ、駄目です」

戦士「で、ですよねー。自分の手で弟殺しちゃう様な奴が、天界なんて…」

精霊「勘違いしないでくださいね」

精霊「貴方は天界にも地獄にも行けません」

精霊「だって貴方はまだ死んでいないんですから」

戦士「え?でも…実際ここに居る訳だし」

戦士「あの自爆魔法は、自分の生命を削るって…」

精霊「精霊の加護を受けた人間は、魔力を持てません」

戦士「!?」

精霊「貴方が使ったのは正確には自爆法術」

精霊「勇者だけが使える法術です」

精霊「生命を削ったりはしません」

戦士「そ、そうだったんですか」

精霊「そして、勇者の身体は何度でも蘇るんですよ」

精霊「私たち精霊の力でね」

精霊「だから貴方はまだ生きているんです」

戦士「じゃあ何で俺はここに?」

精霊「貴方と少しお話しがしてみたくって、ね?」

戦士「話し…ですか?」

精霊「あの時、あなたは自爆魔法を使う事を躊躇わなかった」

精霊「それは何故?」

戦士「それは…その…武闘家を逃がすのと、弟を止めるため…」

精霊「本当に?」

戦士「…ずっと見てたならわかってるんでしょ?」

戦士「俺は…死にたかったんですよ」

戦士「俺は戦う事しか出来ないバカだから…」

戦士「死ぬなら戦いの中で死にたかったんです」

戦士「それでついでに世界も救えるならって思って」

精霊「後悔は無かったの?」

戦士「そりゃまぁ、少しくらいはありますよ」

戦士「泣いてくれる人も…居るし」

精霊「正直なのですね」

戦士「全部見てたんですよね?そんな精霊様に嘘ついてどうすんですか」

精霊「フフフッ。確かにそうですね」

精霊「その人をもう悲しませないでくださいね?」

精霊「人が悲しむと、私たちも悲しくなります」

精霊「だから私たち精霊は人に力を貸すのです」

精霊「でも、人の心は弱いです」

精霊「またしばらくすれば、新たな魔王が生まれるでしょう」

精霊「その時がいつになるかはわかりません」

精霊「今回の様に、半年足らずで新たな魔王が生まれるかもしれない」

精霊「10年後、100年後かもしれない」

精霊「貴方はその時、どうしますか?」

戦士「俺は…」

精霊「生きる道を見つけて下さいね?」

戦士「…はい」

精霊「そろそろ貴方の身体の修復が終わります」

精霊「地上に戻ったら、真っ先に愛する人を抱きしめてあげて下さいね?」

戦士「…そうしますよ」

精霊「あと、私の加護はもう受けられませんからね?」

精霊「くれぐれも自爆魔法を使わないように!ね?」

戦士「わかってます」

精霊「それでは戦士様、これから貴方の歩む道が光に包まれていますように」
スーッ

戦士「…ありがとうございました」



戦士「ん、重い…」

武闘家「…」
スースー

戦士「看病してくれてたんだな、武闘家」
ナデナデ

戦士「ありがとな」
ナデナデ

武闘家「!!!!」

戦士「悪い、起こしちまったな」

武闘家「な、な、な…」

戦士「なんだよ、幽霊でも見たような顔して」

武闘家「だ、だってあんた…心臓止まってたんだよ?」

戦士「へ?」

武闘家「今日、埋葬の予定だったんだから!」

武闘家「起き上がって、自分の居る場所確認しなよ!」

戦士「は?」
ムクリ

戦士「おい…冗談だろ…これ、カンオケじゃねーか!」

戦士「俺、生きてるっつーの!」

武闘家「一発殴っていい?」

戦士「良い訳ねーだろ!アホか!」

武闘家「アホはどっちだよ!」
ドスッ

ガタタン

戦士「うげっ…な、殴るなって言ったのに…」

武闘家「ばかっ!ばかっ!私がどんな思いで…」

戦士「ごめんな、武闘家…」
ギュッ

武闘家「うぅ…このアホたれっ!」

武闘家「こ、こんなんで誤魔化されないんだから…」
ぎゅうっ

武闘家「今度またこんな事したら…」

武闘家「絶対、一生許さないんだから!」

戦士「精霊様と約束したから大丈夫だ」

武闘家「精霊様?約束?」

戦士「もう二度と、自爆魔法なんて使わないってな」

戦士(あと、戻ったら、愛する人を抱きしめるって約束もな)



勇者「マジかよ!俺、もう精霊の加護ねーのかよっ」

戦士「そう言ってたぞ?」

勇者「あっぶねー。そういう仕組みならよー」

勇者「当事者である俺にも一言あってもよくね?」

戦士「そりゃそうだ、違いねぇ」

勇者「…何にせよ、お前らが無事で良かったぜ」

戦士「あぁ…そうだな」

武闘家「こらー!二人でコソコソ何やってんの!」

勇者「男同士でしか出来ない秘密の話しだよ!」

戦士「武闘家にはまだ早えーよ、な?」

勇者「だな!はっはっはっ!」

武闘家「二人まとめてぶっ飛ばしてやろうかしらね?」

戦士「元・勇者二人相手に、勝てると思ってんのか?」

武闘家「うっさい!ほら、王様達が呼んでるよ!」

勇者「おうよ」



王様「皆の者!再び、世界は救われた!」

王様「勇者一行によって、新たな魔王は倒された!」

王様「この英雄達に惜しみない賞賛を!」
パチパチパチ
ワーワーワー

戦士「…なぁ、勇者」

勇者「なんだ?今は愛想笑いの時間だぞ?」

勇者「英雄様なんだから、愛想良く、手を振れ」

戦士「一つだけ、恩賞が欲しい」

勇者「このパレードが終わったら聞いてやる」

戦士「頼むぜ」



勇者「で?何だ?欲しい恩賞って」

戦士「俺をここの剣術指南役として雇ってくれ」

戦士「若い兵士に剣技を教えさせてくれ!」

勇者「どういう心境の変化だ?こっちとしては大歓迎だけど…」

戦士「魔王はいずれまた、この世に現れる」

戦士「その時、俺やお前はこの世に居ないかもしれない」

戦士「だから…未来に希望を残したいんだ」

戦士「俺の我流剣法でも、誰かの、何かの役に立つかもしれねぇ」

戦士「俺もこの世に何かを残したいんだよ」

戦士「お前は国を残す」

戦士「武闘家は武術を残す」

戦士「魔法使いは魔法を残す」

戦士「俺は…戦う術を残したい」

戦士「それに俺の弟子が勇者になるかもしれねーしな!」

勇者「わかったよ、戦士」

勇者「俺がやろうかと思ってたんだがなぁ」

勇者「ぶっちゃけ国王代理とか超大変でよぉ」

勇者「剣を振る暇もねぇんだ」

勇者「剣の腕もすっかり鈍っちまったぜ」

勇者「だから、助かる」

勇者「よろしく頼む、戦士!」

戦士「あぁ!」



戦士「は?お前も王都に残る?」

武闘家「うん」

戦士「お前、道場はどうすんだよ!師範だろ?」

武闘家「王都に支部を出す事にしたから」

戦士「なんで、お前そんな事を…」

武闘家「言ったでしょ!約束守ってもらうって!」

武闘家「私、戦士から一本取ったよね?」

戦士「う…あれは俺、手加減してたし!」

武闘家「関係ありませーん」

武闘家「正々堂々戦って、私はあんたから一本取った!」

武闘家「白目剥いて倒れてたでしょ?」

戦士「白目剥いてたかどうかはわからんが…確かに俺は一本取られたな」

武闘家「だから!約束、守ってよね!」

戦士「それってひょっとしなくても、結婚の事…だよな?」

武闘家「うんっ!」

戦士「あぁ…そうだな…えっと、その…」

戦士「武闘家、俺は…」

武闘家「いつもみたいに『どうすればいい?』なぁんて眠たい事言ったら…」
パキポキ

戦士「言わねぇよ、バカ」

戦士「武闘家、俺と結婚してくれ!」

武闘家「あっ!?えっ!?い、良いの??」

戦士「俺もお前の事が大好きだ。小さい頃からずっとな」

武闘家「もうっ!不意打ちでそんな事…」

戦士「これからも、俺が道を踏み外しそうになったら」

戦士「お前の蹴りで目を覚まさせてくれな、武闘家!」

武闘家「任せてよ!戦士っ、世界で一番愛してるよっ!」




数十年後

?「ひいじいちゃん、用事って何?今日も剣術の稽古?」

?「あぁ…剣術もそうじゃが…聞きたい事があってな」

?「何?」

?「お前、精霊様の声を聞いたって本当か?」

?「うん!毎日じゃないけど、たまに話しかけてくるよ!」

?「でも、頭の中に直接話しかけてくるから、周囲には変な目で見られるけどね」

?「ひいじいちゃんは信じてくれる?」

?「あぁ、信じるよ…実はワシも精霊様の声を聞いた事があるんじゃ」

?「マジで?」

?「それどころか、天界の入り口で、精霊様に会った事もあるんじゃ」

?「マジで!?すっげー!」

?「しかしまさかワシの曾孫が次の勇者とはなぁ」

?「は?勇者?俺の事?まさかぁ」

?「精霊様の加護を受けたから、精霊様の声が聞こえるんじゃよ」

?「精霊様の加護を受けられる人間は世界で只一人『勇者』だけなんじゃ」

?「じゃあ、ひいじいちゃんも勇者様だったの?」

?「はっはっは、一瞬だけな」

?「どういう事?」

?「そんな事よりな」

?「勇者がこの世に誕生したという事は…」

?「世界のどこかで、魔王が復活したという事じゃ」

?「えっ!?ま、魔王?マジで?世界どうなっちゃうの?」

?(武闘家…俺はどうしたらいい?)

?(…)

?(ふふっ…そんな事は決まってるよな!)

?(この若き光に、生き残る術を!俺の持つ技術全てを教える!)

?「お前は近い将来、旅立たねばならん」

?「うぅ…でも俺なんかに…魔王を倒す力なんてないよ!」

?「勇者に必要なのは力だけではないっ」

?「勇気だ!」

?「お前は旅を通して、それを身につけるだろう」

?「信頼出来る仲間と共に、魔王を倒すんじゃ!」

?「…わかった!やってみるよ!」

?「ま、とりあえず、ヨボヨボのワシから一本取ってからじゃがな!」

?「よーしっ!今日こそひいじいちゃんに勝ってみせるっ!」

老戦士「その意気じゃ!来い!新たな勇者っ!」

若勇者「いっくぞー!」
ダダッ!


おわり



たいそう乙



ひたすら乙



すばらしく乙


エタるんじゃないかと思ったけど
余計な心配だったな
ところで>>1は他にも書いてる?
この文章の書き方に見覚えあるんだけど

とにかく乙



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