六花「勇太が私以外の女と浮気してる…」 (52)
富樫「寒くなかったか、七宮?」
七宮「ゆ、勇者! どうして戻ってきたの?
邪王心眼のことはいいの?」
富樫「六花? なんで?」
七宮「なんでって…
二人は恋人の契約を」
富樫「そんなの、今はどうでもいいよ」
人気のない神社の一角で雨宿りしていた若い男女。
富樫勇太は七宮をやさしく抱き寄せると、耳元でこうささやいた。
「お前が転向してなければ、六花とは
付き合ってなかったと思う」
罪悪感より、女としての悦びが勝っていた。
七宮はぎゅっと富樫にしがみついたのだった。
雨に濡れた頬に、涙がこぼれ落ちる。
(もう我慢しなくていいんだ。私は勇者と。
富樫勇太君と……)
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期待機体マジ気体
勇太「少し顔をあげて」
七宮「うん」
キスを始めたら、止まらなくなった。
唾液のまじりあう音がわずかに響く。
「ん」
叩きつけるように降り続ける雨に消えていく。
「あ」
「携帯、落ちちゃったね」
「……」
「着メロが鳴ってる。邪王心眼からじゃないの?」
「いいんだ」
「え」
「どうせ下らない用事さ。
今は六花なんてどうでもいいんだ」
夏祭りの日だった。
突如夕立になり、一緒に来ていた丹生谷や凸森たちとは
離ればなれにかった。もちろん六花とも。
『ダークフレイムマスターよ。例の場所で貴様を待つ。
あんえんりゅうの秘密を解き明かすときがきた』
勇太は、雨宿りの場所を変えるつもりはなかった。
メールも黙殺した。さらに丹生谷には六花と
一緒に先に帰ったと嘘をついておいた。
「あとで絶対問い詰められるよ?」
「丹生谷か。あいつは少しおせっかいなだけだよ」
「モリサマーが知ったら、怒るだろうね」
「どうしてさ」
「モリサマが勇者と邪王心眼の恋を応援してたからだよ」
2つもスレ立てんなよ
六花は電柱の前で一人立ち尽くしていた。
何か嫌な予感がした。いつもなら勇太がすぐ迎えにきてくれるのに。
30分まっても誰も来てくれない。
丹生谷に電話しようと思ったが、思いとどまる。
少し記憶があいまいだった。
夕立のあと、どうしてみんなとはぐれてしまったのか。
強い雷の音。遠くの木に直撃したのだろうか。
不安で冷たくなった身体を抱き締める。
下着までとっくにびしょ濡れ。もう家に帰ろうと決心した。
(勇太のバカ)
大好きな少年の家に帰れば、こんな感情はすぐ消える。
そう思っていた。
なぜ建て直したのか
六花「勇太が私以外の女と浮気してる…」
六花「勇太が私以外の女と浮気してる…」 - SSまとめ速報
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「お帰りなさい六花ちゃん、ってなにこれ! びしょ濡れじゃない!」
玄関で樟葉にバスタオルを渡され、風呂に入るようすすめられた。
「勇太は?」
「お兄ちゃんならもう帰ってきてるよ。一緒じゃなかったの?」
衣服から水滴をたらしながら、勇太の部屋をのぞく。
普通にベッドで寝ていたから少し腹が立った。
(勇太は……恋人契約を忘れている!)
鼻をつまんでやろうかと思って近づいたとき、
変な臭いがした。勇太の胸元あたりから匂う異性の香り。
嗅いだことのある女の臭い。
勇太の中学時代の同級生の、ソフィアの臭い。
「嘘……」
彼の携帯を見ると、七宮からの秘密のやり取りの数々が。
もう六花のことは妹としかみてないと書かれていた。
「どうして……」
「おい六花。人の携帯を勝手に見るなよ」
「!?」
「人の気配を感じたから目が覚めたんだよ」
「ふっ、ダークフレイムマスターともあうものが、
一般人との戯れ事にうつつをぬかすとは」
「そういうの、もういい」
建てるならあっちに報告して依頼をしておけばいいよ
「え」
「俺はおまえのお守りをするために一緒にいるんじゃないんだよ」
「な、何をいってる」
「文化祭の時、十花さんにおまえの家族のことを頼まれたよな。
同情したし、思うことも色々あった。成り行きで
付き合っちまったけど、もううんざりだ。色々と疲れたんだよ」
それから15分以上、別れ話は続いた。
父を亡くしており、姉は海外生活。
六花の居場所は、富樫の勇太の家だけだった。
逃げることは許されなかった。
冷たい母と暮らすことも、頑固な祖父の家に行くのもいや。
「別に出てけって言ってるわけじゃない。
衣食住は今まで通り。ただあまり関わってくるな」
それは [ピーーー]といってるのと同じだった。衝動は止まらない。
「おい六花! 急に走ってどこ行くんだ!」
一分後?
「包丁を持ってきた。これで二人とも一緒に[ピーーー]る」
それから記憶をなくした。何時間も寝た。
嫌な夢をたくさん見たような気がした。
猛烈な眠気に打ち勝ってまぶたを開けると、
いつもの教室の風景がうつる。
「富樫よぉ。ななちゃん来ちまったぜ。早く起きろよ」
「あ、ああ。いま何の授業だっけ」
「英語だよ。おまえまだ寝ぼけてんのか」
教壇にたつ美人の英語教師。富樫たちの担任でもある。
「皆さん、突然ですけど、今日の授業は中止になります」
「は? 」
「ちょっと会議をしたいとおもいまぁす。まずは富樫君を拘束してね」
丹生谷がアイコンタクトすると、親友のふかちーとベッキーが
手錠とロープを持って富樫へ近づいてきた。
「う、うわああああああ! くるなあああああ!」
反射的にべっきー(戸次、かわいこちゃん選手権第二位)を突き飛ばした。
丹生谷や男子たちの席を巻き込み、派手に転ぶ。被害は大きい。
「富樫容疑者が抵抗したので、暴力制裁を許可しまぁす」
九十九七瀬の一言により、クラスメイトらが富樫を囲む。
壮絶なリンチが始まった。
殴る蹴るはもちろん、鉄パイプを降り下ろすものもいた。
あまりにも理不尽な暴力になすすべもなく、大往生する富樫。
歯が折れ、口から血をはく。
左手はいうことを聞いてくれそうになかった。
「おまえら、何が目的だ」
「分からないのか」
クラスメイト、米良は虚ろな目でそう言った。
修学旅行で富樫のルームメイトだった太った男子だ。
「富樫。おまえは存在しちゃいけないんだよ。このクラスにな」
歯を食い縛る。何を思ったか近くにあった椅子を
窓へ放り投げた。富樫のいる方向ではない。
強化ガラスはびくともしなかったが、問題は一人の女子だった。
「米良くん」
「は、はい!」
恋愛マイスターを自称する、
ゆるふわ系美少女。巫部風鈴だ。
感情のこもってない目で米良を威嚇していた。
「イライラしてるのはみんな一緒だよ。
でも委員長が怒っちゃうから、その変にしておこうね?」
「す、すみませ……」
「うん。別に私は怒ってないの。ただ、委員長の丹生谷さんがね?」
ちらりと森夏をみると、膝にできた傷を女子たちに治療させている。
ベッキーは背中を強打したので安静にしてる。
「富樫君。あなた、すごくいけないことをしたわ」
丹生谷に返事をする余裕はなかった。右手の薬指が猛烈に痛む。
鼻血はまだ止まっておらず、上着を赤く染めていた。
「思い当たること、あるわよね?」
人権なんて簡単に奪うことができる。
森夏の瞳がそう告げていた。教室はしたすでに無法地帯だった。
おもしろい
細目の男子が奇声をあげる。
富樫に襲いかかったのだが、別の男子に止められ、大混乱になる。
外傷と極度のストレスで消耗した富樫は、そのまま意識を失った。
目が覚める。病院の個室のベッド、に寝ていた自分。
2年4組の惨事が嘘でない証拠に、身体中包帯を巻いてる。
とくに頭痛がひどかった。
「とがしくぅん……」
「ひっ」
甘ったるい呼び方に巫部風鈴を思いだし、
ベッドから飛びおりようと思ったほどだった。
「とがしくぅん、ちゃんと寝てなきゃだめだよぉ」
「なんだ……くみん先輩の寝言かよ。びっくりしたな」
巨乳の上級生は椅子に座り、ベッドの布団に
寄りかかりながら寝ている。
「くみん先輩。起きてくださいよ」
「ん?」
「先輩」
「あー、おはよう富樫うえくぅん。三日ぶりだねぇ」
「三日ぶり?」
「富樫君が寝てる間にね、世の中は大きく変わったんだよ?」
「起き抜けになにを言ってるんですか?」
「富樫君はねぇ、2年4組から半革命分子として起訴されてるよ」
「はん、かくめい? また中2病ですか」
「違うよ」
設置された小型液晶テレビをつける。
信じられないことに、軍人らしき人が町で市民を捕らえていた。
映画ではなく、ニュース映像だった。
「これは中国のニュースですか」
「日本のだよ。滋賀県はもう評議会ができちゃったから、
反対主義者は粛清されちゃうの」
福岡の強制収容所が写される。民間人、政治家問わず、
多数の半革命分子がトラックや列車で輸送されいた。
「ここはね、日本だけど日本じゃないの」
「どういう意味ですか」
「革命が起きたんだよ。一部のエリートたちがね、行政権力を独占したの。
軍事力と、警察の力を」
「そんなの信じられるわけ……」
「でもテレビ見てみなよ。NHKでもやってるよ。
自民党も民主党も崩壊しちゃったんだって」
「は? じゃあ今はどこが政権を握ってるんだ!」
病室の扉が開かれ、軍服を着た白人たちと丹生谷が入ってきた。
「富樫君、裁判まで時間がないから早く傷を治してね」
「裁判……? 意味がわからない。おい丹生谷、おまえ、
本当にどうしちまったんだよ!」
「富樫君、口答えしないほうがいいよ」
「くみん先輩! これが落ち着いていられますか!」
「この国、裁判なしの銃殺系も許可されてるから」
「な……?」
丹生谷は、銃を構えた兵士に止めるようロシア語で指示を出した。
「同志モリサマちゃん、まえよおり発音上手になったね」
「ありがとう同志くみん。
内務人民委員の下部組織で教育をうけたのよ」
丹生谷は裁判の日程を事務的に伝え、立ち去ろうとした。
完全に別人になってしまった級友の背中に、富樫は問いかける。
「おい、待ってくれ! 他のみんなはどうしてるんだ!
七宮は、六花は、凸森は!?」
「ソフィアとバカ一年のことは知らないわ。死んではいないと
思うけど。私の権限はクラスの人間にしか及ばないから安心して」
「まさか、六花は」
「このまえの会議中、何度もあなたを助けようとしたの。
クラスの総意に逆らうのは半革命分子よね?」
だから強制収容所に送ってあげたわ。淡々とそう告げた。
(なん……だって……六花は……たしかにワガママで子供っぽくて、
イライラすることもたくさんあった)
(でも、おれはあいつのことを恨んでるわけじゃない。
どうしてあいつが物騒な場所に行かされてるんだよ……)
(それに、俺を助けようとしてくれただって……?
こんなに冷たく振った俺を……。こ、これが現実なのか……?)
こんな非常事態だからこそ思う。
六花にもう一度会いたいと。
七宮にも、凸森にも電話は繋がらない。
丹生谷とくみんはソビエト共産党の一員。
そしてここはソビエト・日本社会主義共和国。
本州、九州、四国にはソビエトという行政区分ができている。
それらの地域の人には人権など存在しないのだ。
もしかしたら、母や樟葉、夢葉まで逮捕されるかもしれない。
中国やカンボジアの歴史を調べればわかる。
共産主義者は容赦を知らないのだ。
(俺は裁判のあと、投獄されるだろう。だが絶対に生き延びて見せる。
六花を救えるのは、俺しかいないんだ)
『共産主義国家でも恋がしたい』
つづく
期待機体マジ気体……どうしてこうなった……
なんなんだこれは…!(白目)
凸守な
ついに明日が裁判当日だ。
短い入院期間の最終日に、
丹生谷森夏は再び勇太の病室を訪れた。
「思ってたより元気そうね」
「これが大丈夫に見えるのか?
精神的に最悪の状態だ。今すぐ
おまえら全員殺してやりたいよよ」
「妙な気を起こさないでね。
あなたは黙って裁判に
かけられればいいのよ」
「……おまえ、本当に丹生谷か?」
勇太の知ってる丹生谷森夏は、こんな冷たい女
じゃなかった。六花との恋をサポートしてくれ
たし、困ったことはなんでも相談に
のってくれるほどのお人好し。
「クラスの連中もどうしちまったんだ。
授業中に暴力をふるってくるなんて、
完全に異常者の集まりじゃないか」
「先生が熱心な共産主義者だからね。
他のみんなも感化されたのよ」
「共産主義者だと?
いったいどんな思想なんだ?」
「分かりやすく言うと、日本やアメリカの
政治思想と真逆の考えね。マルクスや
エンゲルスって人が提唱者なんだけど…」
それは、反資本主義、反民族主義、反民主主義など、多数の基本原理からなる。
「国民から自由に考える権利を奪うわ」
「……正気か?
そんなの奴隷と同じじゃねえか!」
「でもね、国民は国家に管理されて、
初めて本当の幸せを得られるのよ」
丹生谷は富樫に結婚願望はあるか、ときいた。
「そりゃ、人並みにはある。
相手だっているしな」
「そう。じゃ、あなたはきちんとした会社に
入れると思う? 人間的な生活が
おくれると思う?」
「うちは偏差値の高い高校だし、それなりの
大学には入ればなんとかなるだろ」
「甘いわね」
「なぜだ、いい会社に入れば高級が
もらえるんだろ?」
「給料の高さに比例して労働時間は
長くなるわ。休みもほとんどもらえない」
「何が言いたい」
「高給。聞こえは良いわね。
どれだけ稼いでも自由な時間はないから、
結果的に会社の奴隷になるのと一緒よ」
「なら、楽な仕事につけばいいじゃないか」
「そんな仕事が私たちに残っていたかしら」
「どういう意味だよ。確かに日本は不景気
だったが、探せばホワイトな会社だって
あるだろ」
「例えば?」
「公務員とかさ」
森夏は声を出して笑った。
「公務員ですって」
「なにがおかしいんだよ」
「まさに不景気の資本主義における、
貴族的存在ね。特権階級よ」
公務員試験とは、あくまで表向きの試験で
あり、実際は縁故採用が99%を占める。
採用を可能にしてるのは、彼らの血筋のみ。
親がその会社に勤務している。それだけで
難関試験を、たとえ10点でも突破できる。
面接試験も全く意味がない。
公務員といっても多様な仕事があり、どれも
楽なものばかりではないだろう。富樫の
問いにたいし、
「たとえば市役所などは、豊富な年間休日や
昇給、ボーナスが約束されるのよ」
富樫は、公務員のボーナスが減額されて
いると主張した。また、公務員でも警察などの、危険をともなう仕事もあると言った。
転勤が多いことから子育てにも向いてない。
「民間でも販売、営業の仕事には転勤は
つきものよね? 危険な仕事なら工場、
建築現場、一次産業でも漁業なんて
相当に危険よ」
さらに、民間企業ではサービス残業は
当たり前、週休2日は全く保証されず、
有給休暇すらまともにとらせてもらえない
「非正規雇用だったらもっと過酷ね。
社会保証なんてなにもないんだから。
体を壊したら簡単に首よ」
「くっ、頑張って就活しても、まともな
企業なんて残ってないということか」
「人ではなく、社畜としての人生が
待っているわ。休みの日は体力を
回復させるために費やすから、
お金を使う時間的、精神的余裕がない」
丹生谷は、全ては少人数で会社を回そうとする
経営のしかたに問題があると説明した。
不景気を作り出したのは、お金の循環が
さまたげられるから。
国民が溜め込んだ、膨大な個人金融資産。
民間企業の内部保留金。
銀行の貸し渋り。永遠のデフレが続く。
「一番の原因はね、景気循環というシステムを
生み出す資本主義そのものなのよ」
「資本主義か。今まで真剣に考えたこと
なかったな」
国民の大半は民間企業で働いている。
巨大な農地を持っていたり、会社を経営する側
てないかぎり、生産手段を持たないのだ。
「私たちのお父さんお母さんがそうね。
会社からお給料をもらって生活してる
わけだから、国に生かされてるわけ
じゃないの」
「てことは、俺たち大半の人間は、
資本家連中に生殺与奪の権利を
与えられているのか
」
若者が大企業や公務員への就職を希望
するのは、安定した会社がいいからではない。
「会社の奴隷になりたくないからよ。
優良な中小企業ほど辞める人がいない
から、採用の空きがない」
「たとえブラック企業でも、自分の好きな仕事なら頑張れるかもしれないじゃないか」
「新卒の離職率の高さ、知ってる?
学歴は関係ないわよ?
過半数は3年以内に辞めてるわ」
専門学校をでたからといって、自分のなりたい
仕事につけるわけじゃない。大学院卒でも、
経験豊富な中途採用者との競争を強いられる
「私たちは、仕事をしないと生きていけない。
採用担当者たちは、バブルの頃に苦労しないで
入社したおじさんたち。あんな人たちに
圧迫面接されて、人格まで否定されるのよ?」
「確かに理不尽だな。うちの母さんだって
何社も受けてようやく夜勤の仕事を見つけたよ」
なにがどうなってんの
丹生谷は大きな声で言った。
「旧日本国政府は、国民に多大な納税の義務を押し付けておきながら、なにも手助けしてくれなかったわ! 肝心の企業が人を求めて
ないのよ! 欲しいのは会社に従順な奴隷だけ」
1日の労働時間が12時間を越える仕事は普通に
存在する。seのような座り仕事だけではなく、
工場や倉庫などの肉体労働まで。
「資本主義経済の増税は、何も産み出してない! 国会議員の定員削減、公務員のボーナス減額の話は、なかったことにされたわ!
国会では話題にすらあがらないのよ!」
デフレにより、物価は下がる一方、
税金は変動しない。国民の血税は、国会中継
中に居眠りしてる議員たちの生活費や娯楽費に
使われてしまう。
「…確かに政府は卑怯だな。
若者は生活が安定しないから結婚すら
できないじゃないか」
結婚の自由。自由恋愛。この物語の確信であり、富樫が制裁された理由でもあった。
自由恋愛とは、差別を生み出す制度だ。
2年4組では、富樫のようにくみんや凸守など
学年を問わず女の子に囲まれているリア充も
いれば、米良のようにモテない男もいる。
米良は修学旅行の際に、リア充爆発しろ、と
富樫に叫んでいた。
卒業後も、富樫のようにいろんな女の子と
関わってきた者は恋愛経験値が高く、
結婚するのも容易になる。
学生時代に異性に縁のないものは、それが
一生のコンプレックスになる。
「結婚は、個人の自由よ。しない自由もあるわ」
晩婚化、少子化を産み出してるのは
自由資本主義そのもの。非正規雇用者の増大、
正社員の低賃金化、お見合い結婚の減少。
「でも、できちゃった婚は増えてるんだろ」
「ほとんどが離婚、幼児虐待につながってるけどね」
結婚、妊娠、出産には、相当なお金がかかる。
子供を養っていくには、安定した十分な給料が不可欠だ。無計画な結婚の末に待つのは破産。
「結果的に乳飲み子のいる母親が働きに
出るのよ。はたして託児所があいてる
かしらね。待機児童は膨大な数よ」
「社会保証がしっかりしてれば、
こんなことにはならないなにな」
「たとえばフランスでは、出産後、妻の給料の
70%が3年間国から至急されるわ」
「まじかよ」
「さらに育児に必要なお金も国がだしてくれるわ。あの国って、かんたんな治療なら医療費もタダなのよね」
「同じ資本主義国家でもこんなに違うのか」
労働時間も違う。フランスでは原則7時間。
残業はほとんどなく、有給休暇は使いきらないと上司から怒られる。有給休暇はドイツも同じだ。
連休にバカンスに行く人が多いという。
その他の色々な社会保証制度を比較すると、
日本国などただの奴隷製造国家。
文明が100年遅れてるといっても過言ではない。
「ソビエトでは、医療費、育児費は原則無料。
共同住宅での生活は住宅ローンや家賃からも
解放するわ」
さらに、共産党はブラック企業を殲滅する。
1日8時間労働、週休2日制を目指す。
「資本家階級からの搾取を防ぐ。
かつてのソビエト社会主義共和国が
目標としたことよ」
結婚の奨励。暖かい家庭での育児。
健全な労働環境。まさに理想的な国家だ。
しかし、ソビエトには数百万を越える囚人がいた。
強制収容所送りになった、半革命主義者だ。
極寒のなかで鉄道や運河の建設に従事し、
大きくの者が命を落とした。
かわりの囚人がたくさんいて、むしろ数が
増える一方。各地の収容所は囚人で一杯になった。
「一時期はソ連のGDPの40%を奴隷労働が
生み出していたのよ」
「なるほど。そいつらを無賃金で死ぬまで
働かせてるんだから、確かにもうかるな」
死ぬまで働かせるのは、日本国の
ブラック企業も同じようなものである。
「他にも農家から収穫の大半を強奪して
諸外国に売って外貨をかせいでたり、
色々やってたんだけどね」
「正しい国民を幸せにするための、
半革命主義者の制裁か。社会保証制度の
裏にはこんな恐ろしい現実があったんだな」
海外、ヨーロッパとか税が日本と比べて高いから保証もしっかりしてるって聞いたことがあるような。
私有財産の廃止。貯蓄は許さず、国が没収。
ブルジョア階級は全ての権利を失う。
「国営企業の賃金は低いけど、税金として
引かれた分だけ、様々な生活費を国が
保証してくれるの」
フランスでは、日本国と同じ物価で社員の
平均月収は11万程度。
貯蓄する余裕はないが、生活には困らず、
気楽に結婚もできるのだ。
「ここからが本題よ。富樫君は自由恋愛で
たかなしさんをふって七宮とくっついた」
「何が悪い。六花と結婚する義務は俺にはないぞ」
以下のURLから登録すると、漏れなく500円分のポイントが手に入ります!
■PC/スマホから登録する
http://www.dmm.co.jp/netgame/social/friend_invite/-/invited/=/fid=cf61d86beb291ac501cd68a41bcef3c8/
■ケータイから登録する
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登録が終わったら自分の紹介ページを出して、招待URLを貼り付けましょう。
招待側は1500円分のポイントが手に入ります!
計2000円分のポイントが手に入ります!!
俺はどうやらスレを間違えてしまったようだ……
「でもあんた、ずいぶん前に小鳥遊さを
抱いたんでしょ。飽きたら別の女に
優しくするようになったわね」
七宮の恋心を利用した、ゲスな犯行だった。
「あんた、本当は七宮のこと、
全然愛してない。もちろん小鳥遊さんの
ことも好きでもなかった」
「なぜそう言い切れる?」
「監視カメラ」
「あ?」
「4組の会議で決めたのよ。あんたの家に
監視カメラと盗聴器を仕掛けるって」
富樫の女遊びは、女の子たちの心に
深い傷を負わせる。
それを未然に防ぐための強硬措置。
平日の昼間にクラスメイト4人が潜入し、
20台以上仕掛けた。
「樟葉ちゃんの部屋でおもしろいものを
見つけちゃったわ」
樟葉の机の引き出しには、大量の
コンドームが入っていた。六花が寝たあと、
こっそりと妹の部屋に入る兄。
監視カメラは正確な情報しかうつさない。
丹生谷の話を聞いてるうちに、富樫を
激しい耳なりと頭痛が襲った。真実を
認めたくない、脳の逃避行動だった。
意識を失い、気がついたときには日付が
変わっていた。富樫は車椅子に乗せられ、
校内の廊下を移動していた。
ちゃんと制服を着せられてるのにびっくりした。
2年4組は裁判所と化してる。入った瞬間、
クラスメイトたちの視線が刺さった。
「ニブはね、富樫君が共産党に忠誠を
誓えば、収容所送りは勘弁してくれると
思うよ?」
と車椅子の後ろから巫部の声。新学期が
始まった頃、富樫に六花とのデートの
アドバイスをしてくれた、優しい少女。
「丹生谷にまだ良心が残ってればな。
俺は全てを諦めたよ」
Yシャツの奥に包帯の感触。手で触ると震えて
しまう。これは夢ではなく、
また制裁現場に戻って来てしまったのだ。
「そんなに悲観しなくても大丈夫だよ。
ニブが本当に富樫君を粛清したかったら、
病院であんなに長話しないって」
今回の裁判で弁護人を勤めるのは、この
巫部風鈴なのだ。証人として収容所から
連行された六花の姿も見える。
瞳から光彩が失われ、手入れしてない髪は
ボサボサだった。富樫は、収容所でどんな目に
あうのか考えるだけで奥歯がガタガタ震えた。
意味わからん
とんでもないスレにきてしまったんだな…
「巫部さん、君はどうして俺の味方をしてくれるんだ?」
「六花ちゃんに頼まれてるんだよ。
富樫君のこと……そう。色々とね」
「なんだよ。その言い方は。
訳ありってことか?」
「うん。今は言えないの。
時間が出来たら話すよ」
ダンダン
教卓が乱暴に叩かれ、裁判官の一色誠が号令をかける。
「これより富樫被告の裁判を始めます。まず罪状を読み上げますが……」
メモを片手にたどたどしく話す姿から、無理矢理言わされてるのが分かる。
富樫のことを心から同情しており、
目があうたびに涙目になってるくらいだ。
「小鳥遊六花さんは、あなたに裏切れたことで
凶暴化し、殺人未遂を犯すに至りました。
全ての原因は、富樫被告の自由資本主義的な思想にもとずいた……」
検察側で陳述書を読んでるのはふかちー。
丹生谷の親友で共産主義者の筆頭だ。
富樫は以前、体育の授業後に紙をおろした彼女を見て惚れそうになったことがある。
サイドポニーの時よりずっと大人っぽくて、
かったるそうな表情にぐっときた。
「民族主義的な歴史を持つ日本では、古い価値観をいまでも捨てきれずにいます。
恋愛の主導権は男性にあるため、男性が女性に
興味を示さなくなった時点で、少子化は加速します」
富樫は見逃さなかった。ふかちーが冷や汗をかきながら、
傍聴席にいる丹生谷を何度も見ていたことを。
彼女も一色と同じように家族を人質にとられていた。ふかちーの場合は小学生の弟だった。
もし裁判で富樫に有利な発言をしたらスパイと疑われ、家族は全員揃って収容所行きになる。
婚活サイトによるボッタクリ商法が流行っている。出会いのない女性ほど理想が高くなり、
婚期を逃す。
かといって非処女の女性もイメージが悪い。
女性の側は、男性からのアプローチを待つのが基本。六花にとって富樫との出会いは無駄ではなかったと、弁護人の巫部は語っていた。
「交際を初めてから六花さんは笑顔が増えました。私や丹生谷委員長への恋愛相談も日に日に増え、女の子らしくなっていきました」
経験は決して無駄にはならない。たとえ破局でも、一度も恋愛したことのない者とは天と地の差だ。
本当に魅力のない女性だと、死ぬまで男性から
腫れ物扱いされることになる。
不景気の資本主義社会では、男性側が経済的合理性を目指し、結婚しない選択肢を平気でとる。
リストラの恐怖。非正規雇用の増大。
一度でも離職したら犯罪者のように扱われる、
過酷を通り越して拷問に等しい転職活動。
とりあえず自分だけ食えれば良い、と結婚の選択肢を脳内から除外し、二次元や風俗に逃げれる男性。
女性はそうはいかない。男性よりさみしがり屋で、一人でいるのが耐えられない。
肉欲的な恋愛感を持つ男性とは対照的に
精神的な繋がりを重視する。
さらに大きく若年の女性労働者の過半数は非正規雇用だ。
力仕事や危険な仕事をほぼ男性が独占してる以上、女性の就労先はどうしても限られる。
男女平等とは空論だ。男女雇用均等制は実際には事務職や販売職に女性を優遇採用して
無理矢理雇用数を確保しているにすぎない。
経済的にも一人でいるのは、男性より、よっぽど辛い
一色が被告人に質問する。
「付き合っていた当時、
小鳥遊六花さんに恋愛感情はありましたか?」
「正直言ってよく分かりません。
六花の姉さんからよろしく頼まれていたのもあり、その場の流れで面倒を見ていただけです」
「では、好きではなかったと?」
「そうなりますね」
ここで丹生谷がふかちーを睨むように見つめた。ふかちーはびくっと震え、すぐに勇太に質問を投げた。
「監視委員らにより、富樫君たちが17回デートしてることが明らかになっています。本当に嫌いならデートをしますか?」
「なんでそんなこと聞いてくるんだよ?
俺が浮気性のクソ野郎だって立証したいんだろ? おまえらはよ」
「委員長の見てる前ですので不適切な発言は控えてください。あなたは小鳥遊さんのことを愛してましたよね?」
「まあそれなりには好きだったよ。なんでも
言うこと聞いてくれそうだったからな。
だがあいつは、どこまでいっても
中二病のままで、女らしいところがなかった」
六花がキスすらさせてくれないことにずっと苛立っていた。
ある日、六花の部屋で強引に押し倒し、情事におよんだ。
驚きと恐怖から最初は抵抗した六花だったが、
回数を重ねるごとに勇太を受け入れるようになった。
六花は、身体をあずけることで本当の恋人契約が結べたのだと思っていた。だが、富樫の心は空っぽだった。
森夏や巫部にもらったアドバイスも、
こんな一瞬で消えてしまう
快楽の為だったのかと思うとむなしくなった。
六花に飽きてしまったのだ。
ふかちーは証人席に六花をよんだ。
六花は大好きな勇太の罪が少しでも軽くなるよう、
どんな発言でもするつもりだった
丹生谷はこっそり六花に近寄り、こう耳打ちした。
「あなたが思ってる通りのことを言いなさい。
嘘をついたら十花さんにスパイ容疑をかけるわ」
六花はガタガタ震え、拳を握りしめながら
勇太を弁護する発言をした。ふかちーの
質問にたいし、勇太は他の女に騙されてるだけで、
今でも愛し合ってることに代わりないと。
「夫婦でいえば倦怠期。勇太と最後に寝たのはずいぶん前。
七宮が現れたのはちょうどそんな時でした。女から
積極的に男を誘うのはかえって嫌われるという、
巫部さんのアドバイスの通り待ち続けました」
六花が破局の原因は、適切な指導をしてくれなかった巫部、
そして略奪愛を平気で行う七宮にあるとした。
「では、あなたと富樫君はまだ恋人同士だということですか?」
「はい。勇太は七宮に洗脳されてるだけです。
きっと富樫樟葉もグルです」
ふかちーはハンカチで汗をふいた。
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