雰囲気岳(9)
「…はっ、はぁっ、はあ…」
「…」チラッ
(良かった…もう付いてきてない…)
「な…なんとか逃げ切れたかな…」
(…でもそれももう
時間の問題なんだ…)
(奴等に見つかる前に…)ゴソゴソ
(これを…誰かに…)
「…」
ー
……ここは……?……
……暗い……暗い……
……冷たい床の上……?……
………
……何が……何故……どうして……
……僕はただ……来ただけなのに……
………
……どこに……?……
………
ー
……オオオオオオッ!
……来いッ!
……たぎった血潮を止められるならな!
………
……例え何度も倒されようとも!俺は決して折れないッ!
……挫けないッ!
……そして……負けないッ!
ー
……ええ?……うん……
……そんな事無いよ?
……だって……
……か、顔が赤くなんてなってないよ!
………
……馬鹿……
……もう!先行くからね!
ー
……月の無い闇夜だ……何も出来やしまい……
……例えそれが獲物を狙うフクロウだとしてもな……
………
……クククッ……
……知っているか?
……ババリアの山賊は闇を舞い……
……闇を支配し……闇に酔い……
……闇に殺された……
………
……なあに……冴えねえ親父の戯言さ……
……気にするな
ー
……男ならテッペン目指すっしょ!
……何の?そりゃお前……テッペンって言ったらテッペンだよ……
………
……うるせえな!いいんだよ!
……俺はこう言う生き方なんだからよ
……そこに何もねえならそこに何かを作ってよ!
……そこに一直線に向かって突っ走ってけばよ!
……楽だろ?そんな生き方さ
………
……出来ねえじゃ無くてやってやれだ!
……ごちゃごちゃ言ってねえで行くぜぇッ!
ー
……ふん……不味い飯だ
……ましな物は作れないのか?
……時間をかければ旨くなる物でも無いだろ……
……いい素材を使ったから旨くなる物でも無い
………
……物の持つ特性を活かしてだな……
……何?だったらお前が作ってみろ?
……なら、明日もう一度ここに来いッ!
……貴様が作った物よりも旨い物を作ってやる!
……己の舌が如何に劣っているかわからせてやるぞ!
………
……
………
……
ここは雰囲気岳……
過去から続く人の持つ可能性をただ写し出す場所……
人の感情を現実にし写し出す場所……
…………
そこから何かが始まるわけではない……
終わり無き交わりもなく……ただ写し出す……
…………
雰囲気だけを
雰囲気が人の未来を支配する
ここはその様な場所……
…………
ここは雰囲気岳……
おわり
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