海未「秋の夜長に」 (46)

・設定はSIDとかアニメとかごっちゃになってるので、生暖かく見守っていただけると幸いです

・地の文は海未ちゃん一人語り。SID風に捉えていただけると

・前スレにて次はエリチカって言ったんですけど、先に海未ちゃんサイドからで何卒

一応続編・・・というかスピンオフ?よろしければこちらもご覧ください。

真姫「だいすきな先輩」
真姫「だいすきな先輩」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400166168/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400253585

綺麗な月が出ている夜のことでした。

日課のお稽古を終えて、火照った体を冷やそうと縁側に座ります。

夜空を見上げれば吸い込まれるようなお月様。

海未「すっかり秋ですね……」

気づけばあっという間の日々でした。

穂乃果の思いつきでμ’sが立ち上がって。

観客のいない初ライブを越えて。

どんどんメンバーも増えていって。

9人のμ’sが結成されて。

廃校もなんとか食い止められて。

……本当にいろいろなことがありましたけど。

もう一度ラブライブに挑戦することができて本当に良かったです。

海未「まあ、まだまだこれからなんですけど。」

くすっと苦笑い。

穂乃果は優勝すると言いましたものね。

海未「しかし、もう秋……ですか。」

この私がまさかアイドルなんて、と思っていた春から気づいたら秋。

それだけ夢中で走ってきたということ……なのでしょう。

けれど、時の流れというのは本当に早い。

まだ半年もある。もう半年しかない。

海未「秋の夜長とはよく言ったものですね……余計なことまで考えてしまいそうです。」

これから冬が来て、春が来る。

そうしたら……。

μ’sは9人ではいられない。

どうしても絵里、希、にこの3人は卒業してしまいます。

海未「……。」

想像しただけで泣いてしまいそうです。

絵里はμ’sの個性的な面々を本当によくまとめてくれます。

希は……ときどきおふざけが過ぎますが、その実誰よりメンバーをよく見ています。

にこは誰よりもアイドルに対して真摯です。μ’sが危ういとき、誰より早く立ち上がっていました。

たった数ヶ月しか一緒にいなかったというのに、こんなにも……。

こんなにも、心の深い場所にみんながいます。

海未「私は、彼女たちに恩返しができるのでしょうか……。」

どれだけ感謝したって足りない。

音ノ木坂学院の廃校はイヤだって気持ちはあっても1人じゃ立ち上がることができなかった私。

どうせ無理だってどこか諦めていた私。

そんな私の手を強引にでも引っ張っていってくれたのは。

紛れも無くμ’sのみんなです。

大事な、大事な仲間。大好きな友達。

ずっとずっと、こうしてみんなで歌って踊っていられたらどんなに幸せでしょう。

けれど卒業はどうしたって来るもの。私達だって同じ。

むしろ、この音ノ木坂学院を卒業できることが幸せなんです。

だって、私達の手で残せたから。

海未「いけません、こんなことでは……。」

頭では分かっているんです。

だけど寂しい。3年生の笑顔を思い浮かべると切ないです。

すごく……すごく寂しくて、つい電話をかけてしまいました。

電話のコール音が数度鳴って。

絵里『あら、海未?珍しいわね、どうかした?』

海未「いえ、とても月が綺麗なので話し相手が欲しいなと思いまして。」

絵里『……ふふ、それって愛の告白かしら?』

いたずらっぽく絵里がそんなことを言います。

こ、告白?

って……あ!

海未「ち、違います!そんなつもりでは!」

絵里『ふーん、そんなに否定されると傷ついちゃうわぁ。』

海未「い、いえ、絵里が好きではないという意味では決して……!」

絵里『じゃあ私のこと……好き?』

囁くようなその言葉にドキッとしてしまいます。

海未「わ、私は……!」

絵里『ふふ……ふふふ……』

そんな絵里の笑い声を聞いて、やられた、とすぐに悟りました。

海未「……絵里?」

絵里『もう、海未ってばそんなに真に受けなくてもいいのに♪』

海未「……絵里ぃ……」

絵里『うふふ、私女優もいけるかしら?』

もう、この人は……真面目なようでこれですから敵いません。

海未「勘弁してください……。」

絵里『ごめんごめん♪それで、何かあったかしら?』

海未「いえ、本当にちょっとお話したかっただけなんです。」

あなた達のこと考えてたら寂しくなって、なんて言えるはずもありません。

絵里『そう?じゃあちょっとだけおしゃべりしましょうか。』

それから、絵里とはとりとめのない話をしました。

μ'sのこと、生徒会のこと、勉強のこと……進路のこと。

えりうみめっちゃ好き

μ'sのこと、生徒会のこと、勉強のこと……進路のこと。

海未「絵里は……受験ですよね?」

絵里『そうね、大学には行くつもり。』

明確な夢が定まっているわけではないけどね、と苦笑い。

海未「そう、ですよね……頑張ってくださいね、なんて私が言う必要もないんでしょうが。」

絵里『任せなさい、かしこいかわいいエリーチカ、だからね♪』

そんなことを言って、いつも通りにおどける絵里。

やっぱり、寂しい。

海未「例えば……の話なんですけど……。」

ぽろっと、口からそんな言葉が漏れてしまいました。

絵里『うん?』

海未「大切な人と、離れ離れになってしまうとします。そんなに遠くないうちに。」

とても、とても大切な人たちと……。

海未『そんなとき、絵里なら別れの瞬間までどうやって過ごしますか?』

よりにもよって、なんで絵里に聞いてしまったんでしょう。

頭のいい絵里のこと。私の悩みなんて簡単に見通してしまいそうなのに。

絵里『そうねえ……。』

絵里はふっと息をついて。

絵里『私なら、きっと……。』

ゆっくりと、優しく絵里は言葉を紡ぎます。

絵里『その「大切な人」との一瞬一瞬を心に刻むわ。』

絵里『大切であればあるほど、絆が深ければ深いほど、別れは辛い。』

絵里『だけどね、きちんと「大切な人」と向き合わないと、きっと……。』

絵里『きっと、別れの瞬間に後悔すると思うの。「もっと一緒にいたかった」って。』

絵里『そんなの悲しいでしょ?だから、目一杯……。』

絵里『出来る限りの全力で日々を楽しむと思う。』

絵里は誰のことを思い浮かべながら話しているのでしょうか?

分からないけれど、言葉の1つ1つが心にすっと沁みて。

絵里『それが私なりの答えかな。』

目から熱いものが流れそうになりました。

海未「ありがとう、ございます。」

声が震えそうになるのをこらえながら私はお礼を言います。

海未「参考になりました。本当に…。」

絵里『そう?それなら何よりよ。』

絵里は何も聞きません。

やっぱりこの人はすごいと思います。

海未「絵里、あの……。」

絵里『なあに?』

海未「……頑張りましょう、ラブライブ。」

絵里『ええ、もちろんよ♪』

私も、まずはやれることをやろうと思います。

この頼りになる、とっても素敵な先輩に恥じないよう。

海未「あ、もうこんな時間なんですね。」

ふっと時計を見ると結構な時間になっていました。

絵里『あら、ホントね。そろそろ休みましょうか?』

海未「はい、遅くまでありがとうございました。」

絵里『いいのよ、可愛い後輩のためなんだから♪』

あ、後輩って言いましたね。

海未「ふふ、おやすみなさい、絵里先輩。」

絵里『あ、こら、先輩禁止って……!もう。おやすみなさい、海未。』

電話が切れて、もう一度空を見上げます。

相変わらずの綺麗なまんまるお月様。

そんなとき、ふっと頭に詞が浮かんできました。

さっきの絵里の言葉に、私自身の思い。

μ'sのみんなとのたくさんの思い出。

たくさんのものが混じり合って。

ちょっと切ないけれど、きっと最高の詞が書ける気がします。

この気持ちがまだ熱いうちに書きましょう。

思いの丈を、目一杯、精一杯。

後悔のないように、一瞬一瞬を心に刻んで。

完成したら、すぐにみんなに見せましょう。

曲も付けたいですし、まずは真姫でしょうか。

うん、秋の夜は長いですからね。ゆっくり、ゆっくり考えましょう。

たくさんの感謝と、エールを込めて。

見ててくださいね、先輩方。

さて、ちょっと短いですが海未編は以上です。ここから真姫編に繋がる・・・という感じでしょうか。

思いの外うみえり要素が強くなって自分でも驚いてますがこれはこれで。次回こそエリチカサイド書くと思います。

ではでは、拙文失礼致しました。


次も期待

乙!文章が海未ちゃんっぽくていいね!


こういうのすき

出先なものでID変わってますがちょっとだけ続きを書きます。

その数日後のことです。

昼休み、真姫と待ち合わせをしました。

そう、歌詞を渡すために。

歌詞カードを渡すと真姫の顔色が変わります。

真姫「ちょっと海未、この歌詞……」

真姫「これじゃまるで……。」

彼女が何を言いたいのか、すぐに分かりました。

海未「……ええ、いわば卒業ソングです。」

私は言葉を引き継ぎます。

真姫の口から言わせないように。

真姫「ま……まだ卒業式まで半年もあるじゃない!これからラブライブ本選だって……!」

真姫は戸惑ったような声を出しました。

大きな瞳が不安げに揺れているのが分かります。

海未「分かっています。けれど……大事な、大事な曲なんです。」

海未「秋の夜長はいけませんね。つい考えてしまうんです……色々なことを。」

真姫「……」

頭のいい真姫のこと。

全て分かっているはずなのです。その事実を見つめたくないだけで。

だって私もそうだから。歌詞を書き上げた今だってそうです。

けれど、私は伝えなければいけないと思う。

大切なこの想いを。届けたい気持ちを。

海未「大事なことですから、じっくり時間をかけて作りたかったんです。この曲を……真姫と、みんなと一緒に。」

私は口下手ですから、上手く言葉で伝えることはできません。

ですけど、きっと伝わると思っています。

これまで共に過ごしてきた真姫なら。みんななら。

真姫「……そうね、分かった。ちょっと時間もらうわ。」

海未「ええ、お願いしますね……真姫。あ、分かっているとは思いますが……。」

真姫「3年生にはナイショ、でしょ?分かってるわ。」

真姫は踵を返して教室に戻っていきました。

心なしか、肩が沈んでいるようにも見える背中を見送って。

海未「真姫1人に背負い込ませるのは……酷だったでしょうか。」

ぽつりと呟きます。

しっかりしているようでもやっぱり1年生。

もし困ってるようだったらちゃんとサポートしてあげないといけませんね。

けれど、そんな心配は無用だったようです。

数日後、真姫は3年生を除く5人を音楽室に呼び出しました。

凛「急に呼び出すなんたどうしたんだにゃ?」

真姫「……あのね、新曲ができたの。」

穂乃果「へー、すごいすごい!」

無邪気に喜ぶ穂乃果。

ですが、言わなければなりません。

真姫「ただ……これはラブライブのための曲じゃないわ。」

ことり「どういうこと?」

そこからは私が引き継ぎます。

海未「3年生へ贈る歌……です。」

みんなはハッとした顔をしました。

花陽「そっか……卒業、しちゃうんだよね……」

花陽はそれだけで泣きそうです。

いつも元気な凛も何も言いません。

穂乃果も、ことりも……うつむいて唇を噛んでいるようです。

海未「なんで今、と思われるかもしれませんが……。」

海未「ちゃんと想いを伝えたかったんです。全力で。」

私はできる限りちゃんと伝わるように、ゆっくりと話します。

海未「私にとって……みんなにとって。大事な大事な人たちですから。」

海未「じっくり時間をかけて、できる限りの想いを込めて歌いたい。そう思ったんです。」

相変わらず口下手だなあ、と自分に対して苦笑い。

真姫「私も……最初は戸惑ったけど。」

真姫「だけど、ちゃんとありがとうって言いたいと思ったの。」

真姫「だから……まずは聞いてほしい。」

穂乃果「……うん、分かった。聞かせて?」

穂乃果は決意を固めたように目を閉じます。

それに倣うように他のみんなも目を閉じて聞き入ります。

真姫「じゃあ、弾くわ。」

真姫「曲名は、『SENTIMENTAL StepS』よ。」

真姫の指が動き出して、音を紡いでいきます。

ちょっと寂しげで、だけど決して暗くはない。

そこに、真姫の歌声が乗ります。

私の気持ち、きっとみんなが持っているであろう気持ち。

そんな歌詞がすっとメロディに乗って。

曲に揺られて、1つ1つの言葉を噛み締めて。

気づくと、真姫が最後の鍵盤を叩いて。

真姫「……どう、かしら?」

真姫「ってうぇぇぇ!?」

凛「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃぁぁぁぁん!」

凛が真姫に抱きつきます。

凛「すっごく良かったにゃ……すっごく……ぐすっ……」

花陽「もう凛ちゃん……でも、ホントに……すっごく良かったよ」

1年生達が泣きながら真姫に駆け寄ります。

ことり「ずるいなあ、海未ちゃん……ずるいよ?」

穂乃果「穂乃果たちにも内緒でこんな曲作って……もう!」

泣き笑いの顔で私に抱きついてくる幼馴染。

そんな私も、真姫も、涙をこらえるのに精一杯です。

思っていたよりずっと……ずっと素敵な曲になったから。

海未「ありがとう、真姫……素晴らしい曲です。」

真姫「何言ってるのよ、あなたの歌詞のおかげよ。海未。」

しっかりと握手をしながら周りを見れば。

気づいたら音楽室はみんな子どもみたいにぐすぐすと泣いている子だらけ。

海未「もう……まだ完成じゃないんですよ?」

そう、完成じゃありません。

海未「みんなが3年生に伝えたいこと、教えてください。」

私だけの言葉じゃもったいないから。

海未「できる限り、歌詞の中に込めたいんです。」

海未「このノートに好きなこと、書いてみてください。」

私がそう言うとみんながわっと寄ってきて。

『じゃあ私は~……』

『凜も凜も!』

こうなったらいつものμ's。いつものペース。

気づいたらボロボロになったノートを胸に抱えて。

海未「それじゃ、今後はこっそりこの曲も練習するということで……いいですか?」

『はい!』

元気のいい声が返ってきて。

ちょっぴり、この曲を3年生に聞かせるのが楽しみになってきた。

そんなある日のことでした。

ひとまず、海未編これで本当に終了です。

思いつきでざっと書いてみましたがいかがだったでしょうか?

次回のエリチカ編で本シリーズの締めとするつもりですので、よろしければまた読んでいただけたら幸いです。

では、html化依頼出してまいります!


めっちゃよかった
続き楽しみにしてます!!


感動した

おつ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom