やえ「何をプレゼントするか決めましょう」
紀子「うむ」
良子「去年あげたのはなんだっけか。被らないようにしないとな」
やえ「確かくもモンのぬいぐるみね」
良子「そうだったか。アイツはゆるキャラ好きだったな」
やえ「くもモンはゆるキャラをうたっておきながら妙にリアルだったから私は好きじゃないけど……毛深いし、足はしっかり8本あるし」
良子「お前は苦手だよな、ああいうの」
やえ「そうね……」
紀子「……心中は察する」
良子「そうなると今年はぬいぐるみ系は回避しておくか」
やえ「そうね」
紀子「……今年は違う路線で攻める」
良子「ほう。例えばどういう」
紀子「木村は料理が得意だった筈だ。調理道具などはどうだ」
良子「確かに別路線だな。しかし、包丁とかプレゼントするわけにもいかないだろう。まあ必ずしも包丁でなくてもいいけどな」
やえ「マイ包丁を持つ高校生か……」
紀子「……確かに組み合わせとして妙だな」
良子「それならマイ箸とか良いんじゃないか。調理からは離れるが」
紀子「なるほど」
やえ「それはありね……」
由華「お疲れ様です」ガラッ
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やえ「由華。お疲れ様」
良子「おう。良いところに来たな」
由華「何かしているんですか?」
紀子「木村の誕生日プレゼントを決めている」
由華「あっ、日菜先輩の……誕生日、近いんですね」
良子「そうだ。というわけで由華の案もくれ。何をあげたら喜ぶかな」
やえ「ちなみに今はマイ箸が候補に挙がっているわ」
由華「あっ、それ良いですね」
やえ「でもいろんな案が出た方が良いから、何かあると助かるわ」
由華「そうですね。うーん……」
由華「鞄、とかどうですか?大きすぎますかね……」
良子「なるほどな。確かにアリだが、好みを当てきれるかどうかだな。使ってもらえなかったら邪魔になるし、値も張るしな」
由華「そうですね……」
やえ「それなら傘とか」
紀子「良いな。しかし梅雨は明けてしまった今、出番は限られるのでは無いか」
やえ「それはそうね……」
紀子「……中々思い付かないものだな」
由華「難しいですね……」
良子「そうだな。いっそ本人に聞いてみるか」
やえ「それは難しいわ。今回はサプライズで行くんだから」
良子「そうだよな……」
やえ「とりあえず、気付かれないように決めていきましょう」
良子「ああ」
日菜「お疲れさまー」ガラッ
やえ「お、お疲れ様……」
良子「お疲れ」
日菜「んー?何か話してたの?」
やえ「あっ、えっと……」
紀子「……初戦の相手について少し、な」
やえ(!)
やえ(ナイス紀子……!)
やえ「そう。どうも油断ならない高校がいるようでね」
日菜「?……ふーん、そうなんだー」
良子「阿知賀女子という学校が初戦の相手らしいんだが、どうやらそこはウチの県大会優勝を唯一阻んだ高校らしい」
日菜「そうなんだー……警戒しないといけないわねー」
やえ「でも、調整はここまで順調に来ている。普段通りにやれば何の問題もない筈」
紀子「……その通りだ」
良子「晩成の力を見せつけてやろうぜ」
日菜「そうねー♪」
やえ(……ふう)
やえ(とりあえずやり過ごしたか……)
ーーーーーーーーーー
やえ「今日の練習は終了です。お疲れ様でした」
一同「お疲れ様でした!」
ガヤガヤ
やえ「ふぅ……」
日菜「お疲れさまー」
やえ「お疲れ様」
日菜「やっぱりみんな上々の仕上がりねー」
やえ「そうね。頼もしい限り」
やえ「おかげさまで私も調子が良いわ。明日が試合でも良い位」
日菜「さすがねー」
良子「その通りだ」
日菜「りょうちゃん。お疲れさまー」
良子「おう。お疲れ」
良子「ところで、麻雀の仕上がりは確かに順調だ。しかし気が付けば試験も近い。ふたりとも勉強はしているか」
やえ「私は大丈夫」
良子「即答だな……」
紀子「危ないのはお前だけではないのか、上田」
やえ「お疲れ、紀子」
紀子「うむ」
良子「そう言ってくれるな、割りと本気で不安なんだ。今日も帰って勉強だ」
日菜「そうなんだー。頑張ってるならきっと大丈夫だよー」
良子「そうか。お世辞でもありがたいぜ」
日菜「わたしもそろそろ勉強やりはじめてるよー」
良子「飲み物が横にないと辛くなるんだよな」
日菜「そうそうー。最近は自分専用のマグカップが欲しいと思うようになったわー」
良子「そういうのがあれば気分も違うな」
紀子「……そもそも日頃の授業をしっかり聞いていれば問題無いのではないか」
良子「そうもいかないから困るんだよ……っと、あまり長話もしていられないな。そろそろ帰るぜ。勉強があるからな」
やえ「私達も帰ろうか」
日菜「そうねー」
紀子「うむ」
…………
……
…
すいません、今日はここで止めます
続きは明日以降書きます
ーーーーーーーーーー
やえ「……」スタスタ
由華「やえ先輩!」ササッ
やえ「由華」
由華「途中まで一緒に帰りましょう」
やえ「ええ」
…………
……
…
由華「日菜先輩の誕生日プレゼント、なかなか決まりませんでしたね……」
やえ「そうね……考え出すと結局何が良いのか分からなくなるわね」
由華「難しいですよね……」
由華「……でも」
由華「私、やえ先輩からプレゼント貰った時、本当に嬉しかったの覚えてます」
由華「気持ちがあれば、なんだって嬉しいはずですよ」
やえ「あ、あれは皆で用意したものだって……」
やえ「……まあでも、そうかもね」
由華「焦らず考えましょう」
やえ「そうね」
由華「やえ先輩は、プレゼント嬉しかったですか?」
やえ「もちろん。あの時はありがとう」
由華「あの時は皆さんで案を出しあったんですけど、今なら私の案を押し通しますね」キリッ
やえ「そ、そう……」
由華「やえ先輩が好きなキャラのぬいぐるみ、押さえてるんですから」
やえ「い、いつの間にそんな情報を……」
由華「勘です♪」
やえ「そう……」
由華「とにかく、その人の好きなもの、欲しいものをあげたいですよね」
やえ「うん……あっ」
由華「どうしました?」
やえ「そういえば……」
やえ「さっき日菜と話した時、自分のマグカップが欲しいと言ってたような……」
由華「それですよ!」
由華「やりましたね。欲しいものを聞き出すよう誘導したんですか?」
やえ「いや、良子が喋ってて自然に」
由華「良子先輩に感謝ですね」
やえ「そうね。早速明日皆に話してみるわ」
ワイワイ
良子「よし。練習終わったか」
紀子「普段の土曜は午前・午後の二部練だが、今日は珍しい」
やえ「監督が用事みたいだし、試験も近いからちょうどいいだろうということでね」
良子「なんにせよ、俺らには好都合だな」
由華「日菜先輩の誕生日プレゼントを買いに行くんですね」
良子「そうだ。買うものは、マグカップで決定でいいな」
紀子「……うむ」
やえ「ええ」
由華「はいっ!」
やえ「そういえば、日菜はもういないわね」
紀子「……寄るところがあるらしい」
やえ「そう。それならちょうどいい」
良子「アイツは鋭いからな。俺らが一緒にいるところを見られたら勘付かれるかもしれない」
やえ「うん。そういう意味でも、ちょうど良かった」
良子「よし。じゃあ早速行くとするか」
…………
……
…
ザッ
良子「この雑貨屋か」
紀子「ここならマグカップもいろいろと種類があるだろう」
やえ「そうね」
やえ「早速探しましょう」
スタスタ
やえ「さて、食器のコーナーは……ん?」
由華「やえ先輩?」
やえ(これは……)ジーッ
由華(くまのぬいぐるみ……)
由華「やえ先輩」
やえ「ん、んー?どしたー」
由華「……欲しいんですね。そのくまのぬいぐるみ」
やえ「えっ?なっ何を……た、ただ視界に入っただけでそんな……」
由華「隠さなくても良いんですよ。やえ先輩がそういうの好きなの、なんとなく分かりますから」
やえ「そ、そんな……」カァァァァ
良子「……アイツらは何をしてるんだ」
紀子「いや、あれで良い。我々で探すぞ」
良子「そうかい……」
日菜「あれー?りょうちゃん。どうしたのー?」
良子「おっおう日菜!奇遇だな……」
日菜「ほんとねー♪」
日菜「わたしはノートが尽きちゃって、買いにきたんだけどー」
良子「ほ、本当か?奇遇だな。俺らもそうなんだ。俺のノートが尽きたからちょっと他の奴らに付き合って貰ってる」
紀子「私だけでなく小走と巽も来ている。呼んでこよう」
良子「ああ。頼むぜ」
日菜「みんな来てるのねー……」
良子「お、俺らはノート探そうぜ」
日菜「そうねー」
ーーーーーーーーーー
由華「これなんか、かわいいんじゃないですか?」
やえ「そっ、そうね……」
紀子「おい」ザッ
やえ「!?」ビクッ
やえ「なんだ、紀子か……」
紀子「楽しい時間を過ごしているところ済まないが」
やえ「ど、どういう意味よそれ……」カァァァァ
由華「……」カァァァァ
紀子「木村が来ている」
やえ「えっ」
紀子「今は上田が機転を利かせて行動を共にしている。その隙に我々で買い物を済ませるぞ」
やえ「なるほど……」
やえ「……状況は分かったわ。相応しいマグカップを、手早く見つけましょう」キリッ
由華「はいっ!」
紀子「う、うむ……」
紀子(切り替えの早い奴だ……)
ーーーーーーーーーー
日菜「このノートは使いやすそうねー」
良子「そうだな」
やえ「やあ日菜」
日菜「やえちゃん」
良子「来たか」
紀子「……」
由華「お疲れ様です」
良子「皆揃ったな。こっちは今選んでるからもうちょっと待っててくれ」
やえ「新しいノートを探しているのね」
日菜「そうなのよー」
良子「……」チラッ
やえ「良いものがあるといいけど……」ガサッ
良子(あの袋……)
良子(しっかり買ってきたみたいだな)
ーーーーーーーーーー
日菜「今日は良い買い物が出来たわー」
良子「おう。これで勉強が捗るな」
日菜「そうねー♪」
やえ「それは良かった」
紀子「上田は落第しないようにな」
良子「するかよ!……まあ今日はいい息抜きにもなって良かったぜ」
やえ「そうね。また明日から宜しく」
良子「ああ。じゃあ俺はこっちだから」
日菜「わたしもー」
やえ「また明日」
紀子「うむ」
…………
……
…
由華「やえ先輩」ササッ
由華「一緒に帰りましょう」
やえ「由華。ここからだと由華の家は反対方向じゃ……」
由華「遠回りします」
やえ「そ、そう……」
由華「驚きましたね。まさか日菜先輩が来ているなんて……」
やえ「そうね、若干焦ったわ。日菜は勘も良いから……でも、良子のおかげでどうにか助かった」
由華「本当ですね」
やえ「あとはこれが日菜のお気に召すかどうか……こればっかりは渡してみないと分からないわね」
由華「そうですね……」
由華「日菜先輩、喜んでくれるといいですね」
やえ「うん」
由華「……なんか良いですね、こういうの」
やえ「そうね。ただ、いろいろと気を回すから気疲れするとも私は思うけど」
由華「渡す人によっては、そこも含めて楽しめるものですよ」
やえ「そうかな……」
由華「早く次のやえ先輩の誕生日が来ればいいのにな」
やえ「えっ」
やえ「そ、それってどういう……」カァァァァ
由華「あっでも、それじゃあやえ先輩卒業しちゃいますね。それはだめだ」
やえ「……」
やえ「ま、まあ誕生日じゃなくても楽しみはいくらでもあるでしょう」
由華「ん、確かにそうですね。私にとっては今この瞬間も、凄く楽しい時間です!」ニコッ
やえ「!」ドキッ
やえ「そ、そう……それは良かった……」
やえ(なんだろう……由華、今日は随分と突っ込んでくるな……)
ーーーーーーーーーー
良子「お疲れー」ガラッ
やえ「お疲れ様」
良子「おうやえ。早いな」
やえ「今日のことについて考えてたの」
良子「そうか。今日が日菜の誕生日だな」
やえ「そう。とにかく悟られないよう、あと、どのタイミングで渡すか」
良子「うーん……やっぱり練習後じゃないか?」
やえ「確かにそうね」
紀子「……」ガラッ
由華「お疲れ様です」
良子「おう。良いタイミングだ」
やえ「ちょっと聞いて」
紀子「うむ」
由華「はい」
やえ「今日が日菜の誕生日だからプレゼントを渡そうと思うんだけど、タイミングとしては練習後で良い?」
紀子「良いだろう」
由華「それで良いと思います」
やえ「よし。それなら決まりね」
やえ「あとは、渡す時まで気付かれないように」
良子「ああ。まあ練習に集中していれば大丈夫だろう」
由華「こういうのは下手に隠そうとせず堂々としてた方が逆にばれないですよね」
やえ「そうね」
初瀬「お疲れ様ですっ!」ガラッ
百花「お疲れ様ですー」
やえ(そろそろ部員が集まってきたか……)
やえ「じゃあそういうことで」
良子「おう」
紀子「うむ」
由華「はいっ!」
ーーーーーーーーーー
チャッ
パシッ
やえ「……」ソワソワ
良子「やえのやつ、目に見えて落ち着きが無いな」
由華「そうですね……」
良子「アイツは隠し事が苦手だからな。俺はなんだかんだアイツが一番危ないんじゃないんじゃないかと思っているんだが……」
初瀬「……」パシッ
紀子「……」ピシッ
やえ「……」ソワソワ
やえ「……」パシッ
日菜「!」
日菜「ロンっ」
やえ「!?」
やえ「……はい」ジャラッ
良子「ああ、言わんこっちゃない」
由華「明らかに普段と違いますね……」
日菜(……やえちゃん?)
ーーーーーーーーーー
やえ「お疲れ様でした」
一同「お疲れ様でした!」
ガヤガヤ
やえ「ふぅっ……」
日菜「やえちゃん!」
やえ「日菜。お疲れ様」
日菜「やえちゃん、どこか具合悪いの?」
やえ「えっ」
日菜「さっきの対局、あの待ちにやえちゃんが無警戒で振り込むなんてありえないよ……」
日菜「練習中も落ち着きなかったし……」
日菜「大会が近いのに、やえちゃんがそんな調子だったら、不安だよ……」
やえ「日菜……」
良子「そろそろ良いだろう」
日菜「りょうちゃん……?」
良子「まあなんだ、やえのこの様子にはちゃんと理由がある」
紀子「そういう事だ」
由華「……」
日菜「……それって、どういう……」
やえ「日菜。実は」ガサッ
やえ「……これ」
日菜「これは……」
やえ「日菜。誕生日、おめでとう」
日菜「……!」
良子「今日は日菜に気付かれないように、と振る舞ってた結果がこの様子だってわけだ」
紀子「悟られないようにしたのは我々も同じだが」
由華「やえ先輩はちょっと態度に大きく出ちゃったんですよね……」
日菜「……」
良子「この前雑貨屋で会っただろう?」
日菜「うん」
良子「実はな、あれ、お前へのプレゼントを買うためだったんだ」
日菜「えっ?……じゃあ、りょうちゃんがノートを探してたのは……」
良子「すまん。その場しのぎの嘘だったんだ」
日菜「そうだったの……」
良子「いや、結局あれを家での勉強に使わせて貰ってるからな。大いに役立ってるぜ」
良子「ま、まあなんだ。おめでとう」
紀子「……おめでとう」
由華「おめでとうございます、日菜先輩!」
日菜「みんな……」
日菜「……最近、みんなの様子がちょっとおかしいとおもってたんだー……」
日菜「わたしが部室に入ってきたとき、気付かれないように話題を変えたりしてたし」
やえ(うっ……)
日菜「よく考えたら、雑貨屋もわたしだけ誘われてないし」
紀子(やはり、思うところはあったのか……)
日菜「加えて今日のやえちゃんの様子でしょー、なんだか本当に不安になったんだけど……」
日菜「こういうこと、だったんだ……」
やえ「……ごめん日菜。不安にさせて悪かった」
日菜「ううん……開けていい?」
やえ「うん」
良子「もちろん」
日菜「……ん」ガサガサ
日菜「これは……」
良子「この前、専用のマグカップが欲しいと言ってただろう?」
やえ「気に入ってくれるといいんだけど……」
紀子「……」
日菜「わぁー……」
日菜「……嬉しい」
日菜「ありがとうー」ニコッ
良子「良かった」
やえ「うん」
紀子「……うむ」
由華「こっちまで嬉しくなりますね」
日菜「なんだか不安も一気にとれたわー♪」
良子「それは良かった。まあやえが動揺しまくりだったからな」
やえ「なっ……し、仕方ないじゃない!」
日菜「ふふっ♪まあ、理由がわかってほっとしたわー」
やえ「うん。私も別に調子が悪いわけじゃないから安心して」
日菜「よかったー。頼りにしてるわよー♪」
日菜「大会、がんばりましょうー!」
良子「おう!」
紀子「……うむ」
由華「はいっ!」
やえ「まあ、余程の事がない限り県大会は大丈夫だと思うけど。問題はインターハイね」
良子「そうだな。と言ってたら物凄い打ち手がいたりしてな」
紀子「……見たことの無いようなトリッキーな打ち手か」
日菜「ドラが集まる性質を持ってたり、とかー」
やえ「ふふっ、それは面白い」
日菜「……みんな、本当にありがとうー」
日菜「改めて、大会、がんばりましょうー♪」
一同「おーっ!」
カンッ
終了です
ありがとうございました
乙です
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