伊織「野球対決?」
やよい「ですか?」
P「ああ。来月に、765プロのみんなで野球の試合をやることになった」
響「なんでまた、野球なの?」
P「この前の『ガチンコ! アイドル勝負!』で、春香が女子高校野球の選手と対戦しただろう?」
美希「ああ…あの、春香がマグレでホームラン打ったやつ」
春香「マグレじゃないよ!」
千早「相手は女子高校野球で全国大会優勝した投手だったわよね? マグレでしょう」
真美「絶対マグレだよ」
春香「もう、なんでっ!?」
亜美「で、それでなんで試合なんてやることになったの?」
高木「天海君のバッティングを見て、番組のディレクターがティンと来たらしい」
律子「社長」
高木「そのディレクターが野球好きでな…アイドルが野球の試合をする姿を見たいんだそうだ」
律子「見たいんだそうだって…相手はどこの誰なんですか」
P「春香と勝負した投手のところだ。あちらもあれでは納得出来なかったらしくて、快く承諾してくれたんだと」
あずさ「あら? と、いうことは、お相手さんは、その子のチームなんでしょうか?」
P「…そうなりますね」
律子「全国大会優勝チームが相手…? みんな素人ですよ…?」
雪歩「メ、メタメタのボロボロにされるに決まってますよぉ…」
高木「その点は心配しないでくれたまえ、こっち側にはハンデがつくことになっている」
貴音「はんで…とは?」
高木「攻撃では、こっちは満塁の状態でスタート。守備では、相手は2アウトからスタートになる」
P「こっちは1本でも打てば得点、1アウトでも取ればチェンジってわけだ」
真美「でかいんだか小さいんだかよくわからないね」
伊織「守備は少なく、私達の打席数は変わらないってわけね」
やよい「はんでって、なんですか?」
P「露骨に点差つけるよりはこういう形にした方がいいってさ」
真「うーん…まぁ、仕方ないのかな…やらせはもっと嫌だし」
高木「それと…みんな、移動するぞ。着いてきたまえ」
春香「?」
バーン
やよい「わ、野球のグラウンド!」
春香「芝生ですよ、芝生!」
高木「ふふ、私の知り合いが球場を持っていてね…期間中、貸してもらったのだ!」
P「本番まで、練習場として好きに使ってくれていいそうだ」
真「練習場かぁ、ここで特訓ですねっ!」
春香「なんか、熱血って感じ!」
響「よしっ、本番勝てるようにみっちり練習だ!」
律子「そんな時間ないわよ。本分を考えなさい」
亜美「えー? せっかく借りたのに?」
伊織「ま、仕事を蔑ろにするわけにはいかないものね」
千早「歌の時間がなくなるのは、ちょっと」
美希「トックンとか…メンドーなの」
P「まぁまぁ、今日は予定を入れてないから思う存分できるぞ!」
春香「はいっ、了解です!」
高木「そこに道具を用意してある、遊び感覚でいいからやってみてくれたまえ」
P「一応、本番までにバットの振り方、あとキャッチボールくらいは出来るようにしておいてくれ」
雪歩「じ、自信ないです…」
やよい「大丈夫ですよ雪歩さん! 野球のことなら私に任せてください!」
P「そういえば、やよいの趣味は野球だったな」
やよい「はい! たまに、弟達と一緒に草野球に混ぜてもらってます!」
あずさ「うふふ、それじゃやよいちゃんがみんなの先生ね~」
やよい「がんばります!」
やよい「じゃあ、まずはみんなでキャッチボールしましょう!」
春香「はいっ、やよい先生! なんちゃって」
真美「そんじゃグローブ持ってこよー!!」
律子「…あれ? もしかして、私も…ですかね?」
高木「いや、律子君には監督をやってもらうことになった」
律子「え!? わ、私が監督…?」
P「へぇ、律子が監督やるのか」
律子「もう、そういうこと勝手に決めないでくださいよ…」
ゴソゴソ
貴音「はて? これは…なんでしょうか?」
真「それは、キャッチャーミットだね。キャッチャーが使うグローブだ」
貴音「ふむ」
響「たかね、キャッチャーやってみたいの?」
貴音「きゃっちゃぁ…というのはよくわかりませんが、少し気に入りました」
キャッチャー似合いそうな尻してるもんな
やよい「受ける人は、グローブを胸のあたりに持っていってー」スッ
千早「胸…」
あずさ「あら~」ドタプーン
千早「くっ」
やよい「投げる人は、前の方で投げてください」シュッ
雪歩「わわ…!」
ポロッ
雪歩「あ…! ご、ごめんなさいぃ…」
やよい「だいじょーぶです! 最初のうちは捕れなくても、後で捕れればいいかも」
やよい「とにかく、ボールに慣れてください! この球は当たっても、そんなに痛くないですから!」
雪歩「ボールに、慣れる…」
真美「うりゃー! 真美はサウジアラビアだーっ!」ポンッ
亜美「なんの!」パシッ
律子「サウスポーでしょ、二文字しか合ってないわよ!」
響「うりゃ!!」ビシュ
パシッ
真「おっと…! 響、やよいが言ってただろ、もっと前!」ヒュッ
P「あの辺りは大丈夫そうだな」
律子「ですね、元々運動神経はある方ですから」
千早「んっ」ヒュン
美希「よっと」パシッ
P「お、美希。いい動きしてるじゃないか」
美希「えっ、そう? あはっ、ちょっとイイトコ見せちゃおっかな!」ヒュン!
千早「きゃ…!」パシッ
律子「この二人は、飲み込みが早いわね」
春香「えーいっ! 天海選手、投げまし…」ズルッ
ヒューン
伊織「ちょっと、どこ投げてんのよ!」タタッ
春香「あ、あはは…ごめんごめん…」
P「うーん…」
あずさ「そーれっ」ポーン
貴音「む…」ポロッ
律子「貴音、最初のうちは普通のグローブ使った方がいいんじゃないの?」
貴音「そうでしょうか…」
春香(こうして始まった、野球の練習)
春香(キャッチボールの次は、プロデューサーさんがノックをしてくれました)
春香(ポジションなんてわからないので、私達は自由な場所で受けています)
P「それ!」キン!!
パシッ
やよい「えいっ」ヒュッ
伊織「きゃっ!」ポコン
真「…上手いなぁ、やよい」
P「今の、よく捕れたな。まるで高校球児だ」
やよい「えへへ…その『こーこーきゅーじ』だったっておじさんに教えてもらいましたから!」
亜美「ありゃ?」スカッ
真美「わっ!」ポロッ
千早「…?」キョロキョロ
春香(流石に、キャッチボールとは勝手が違うようで。私達はエラーを連発)
春香(でも、その中でもやっぱり違うのは、やよいと…)
真「それっ」パシッ
響「よし!」
美希「キャッチなの!」パシッ!
P「いいぞ!」
春香(真に響ちゃんに、美希。この三人は、すぐにボールを拾えるようになりました)
春香(特に美希は、面倒とか言ってたのに、どういうわけかやる気マンマンです)
春香(それから、ピッチャーを決めるための、投球練習…)
亜美「えいさー!」ヒョイッ
パシ
真美「ほいさー!」ポイッ
パシ
亜美「亜美の方が速かったよ!」
真美「ええ? 真美の方が速いって!」
響「そりゃ!」ヒュッ
ゴォォッ
ズバッ! ポロッ
真美「うおっ!?」
響「えっへへー、球投げるのは自分が一番速いね!」
貴音「ですが…制球はあまりよくありませんね」
響「自分の速球なら、コントロールなんてなくてもなんくるないさー!」
雪歩「えいっ…!」ポーン
ノロノロ
パスン
貴音「ないすぼぉる」
伊織「遅いわね…」
やよい「でも、コントロールは結構いいですよ!」
春香「よーし、次は私…」グッ
春香「そりゃ…あぁぁっ!?」グラッ
ドンガラガッシャーン
ゴォッ!!
貴音「!?」
バッシィィィン!!
貴音「く…」
律子「ちょ…何、今の!?」
あずさ「あらあら。春香ちゃん、すごいわね~」
春香(そして、素振り…)
ブンッ
真「よーし、ヒットくらいは打てるようにしないとね」
春香「本番でもホームラン、ホームラン!」
あずさ「そーれっ!」ブルン
雪歩「うぅ、重い…」
真美「もっと小さいの使ったらいいんじゃない?」
千早「高槻さん、私もバットの振り方がよくわからなくて。教えてくれないかしら」
やよい「はい! いいですよ!」
ワイワイ
律子「こんな調子で、大丈夫なんでしょうか?」
P「うーん、いいんじゃないか? うちらしくて」
律子「ハンデがあると言っても、相手は全国優勝チームですよ? これじゃ…」
P「なんだ、あーだこーだ言ってた割にはやる気だな律子」
律子「ええ、まぁ。監督をやるからには、出来る範囲で、全力でやりますよ」
春香(その日から、私達は仕事の合間に練習…)
春香(…と言うわけにもなかなかいかなくて。野球から離れる日が続きました)
春香(そして3日後…私達は全員、練習場に呼び出されました)
千早「あの。今日はどうしたのですか?」
伊織「練習してないこと? 仕方ないでしょ、仕事が忙しいんだから」
P「いや、そういうわけじゃなくてだな…」
小鳥「今日はみんなに、お客さんが来てるの」
春香「あ、小鳥さん」
小鳥「もう、聞いたわよ! 私がいない間に面白そうな話進めちゃって!」
律子「はいはい。もういいでしょう、その話は」
美希「ハニー、お客さんって誰?」
P「対戦相手の南第六高校…」
P「通称、南六高の選手だ」
小鳥「どうぞ、筒井さん、二屋さん」
筒井「こんにちは」
春香「あっ! お久しぶりです!」
筒井「ええ…お久しぶり」
千早「彼女が、春香と勝負したという?」
P「ああ。全国優勝投手だ」
筒井「南六高の筒井です。よろしくお願いします」ペコ
あずさ「あらあら、ご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いします~」ペコ
二屋「そんでうちがキャプテンの二屋だにゃ」
亜美「にゃ、だって真美」
真美「変な喋り方だにゃー」
伊織「ありがちなキャラ付けね。アイドルにもそういうのいるっけ」
二屋「そこ、馬鹿にするにゃ!」
雪歩「あの…今日は何の御用で…?」
筒井「私達、対戦相手の765プロさんがどのような練習を行っているのか気になりまして」
筒井「今日は、見学させていただきたいと思っているのですが」
やよい「練習を、けんがくですか?」
響「それって、偵察ってことか!?」
亜美「ダメダメ! うちの秘密特訓を見せるわけにはいかないのだ!」
律子「へぇ、隠すほど凄いことやってるわけ?」
亜美「うぐ」
P「まぁ、そういうわけで見られて困るようなこともないので」
小鳥「どうぞ、こちらのベンチに」
筒井「どうも」ペコ
二屋「それじゃ、見せてもらうとするかにゃ」
グッ
響「うりゃ!!」ヒュン
貴音「ないすぼーる」パシッ
真「せーの…」
真「そら!」キンッ
やよい「よいしょっと」パシッ
やよい「はいっ」ポイッ
P「おお、とりあえず形にはなってるじゃないか」
律子「一部だけ、ですけどね」
筒井「ふっ…」
二屋「にゃははは!」
小鳥「? あの、何か…」
筒井「くす…いえ、失礼…」
春香(その日は二回目の練習でしたが、みんないい感じで動けていました!)
春香(けど…)
律子「今日は、わざわざ来てくださってありがとうございました」
P「どうでした? うちのアイドル達は」
筒井「あの、悪いことは言いません」
P「へ?」
筒井「試合、中止にしてください。無駄ですよ、これじゃ」
真「は…? なんだって…?」
春香「ちょ、ちょっと!? 何を言いだすんですか!」
筒井「TV中継あるんですよね? 国民の皆さんは、アイドルの人達がボロボロにやられる姿なんて見たくはないと思いますけど」
二屋「だにゃ。見てる限りだと、ハンデなんてあっても話にならんにゃ」
響「なんだお前達! 自分達のこと、馬鹿にしてるのか!?」
二屋「馬鹿にしてると言うか…」
筒井「この程度なら、1点も与えずに勝てますよ。私達」
小鳥「ちょ、ちょっと…」
筒井「失礼。あんまりな練習でしたので」
春香「あ、あんまりって…」
伊織「…まぁ、そう言われるのも仕方ないかもしれないけどね」
やよい「え? 伊織ちゃん…」
千早「本職の人から見れば私達のやっていることなど、おままごとみたいなものなのでしょう」
春香「ち、千早ちゃんまで…」
美希「ま、ミキ達はアイドルで野球選手じゃないからね…」
二屋「にゃんだ、そっちにもわかってるのがいるんじゃにゃいか」
春香「で、でも!」
筒井「?」
春香「私、この前ホームラン打ちましたよ!」
筒井「ああ、あったわね。そんなことも…」
春香「私と勝負してください!」
P「お、おい春香…落ち着け…」
律子「南六高さんは、今日は見学に来たんだから…」
筒井「私は構いませんよ。あのマグレのホームランのことをいつまでも言われるのも…」
筒井「不愉快ですので」
春香「…!!」
>>22
>春香「私と勝負してください!」
春香「私と勝負してください! また、ホームラン打ってみせます!」
で
筒井「………」ザッ ザッ
二屋「にゃはは」
貴音「あの方が、捕手ですか」
雪歩「なんか、凄く慣れた感じ…」
春香「あの、守備は…」
筒井「いりません。前に飛ばせたらそちらの勝ちでいいです」
響「あったまくるなぁ、あいつ!」
美希「春香、ナメきられてるの」
亜美「はるるん! そんなヤツやっちゃえやっちゃえー!」
真美「かっとばせー、はーるーるーん!」
筒井「………」スッ
春香(ワインドアップ…来る!)グッ
ズバン!!
春香「………え?」
小鳥「ストライク…」
二屋「次」
バンッ!!
春香「…っ」ブルン
小鳥「ストライク!」
春香(なに、これ…こんなんだったっけ…?)
ズバァン!!
小鳥「ストライク! バッターアウト!」
春香「あ、あれ…」
筒井「もしかしたら…と思ったけど」
筒井「やっぱり、まぐれだったみたいね」
筒井「これでわかった? あなた達には私の球は絶対に打てやしない」
春香「………」
律子「春香…」
筒井「もう一度言いますが、試合の話…恥を晒す前に断った方がいいですよ。それでは」ザッ
真「待て!」
筒井「…?」
真「ボクとも戦え! ボクが打ってやる!」
響「自分も! こんなことされて黙ってられるか!」
やよい「わ、私もやります!」
二屋「どうする?」
筒井「…いいわ。全員相手しても」
春香(筒井さんの球は…想像以上でした)
春香(高い運動神経を持つ真も…)
小鳥「ストライク、バッターアウト!」
真「な…」
春香(響ちゃんも…)
小鳥「ストライク、バッターアウト!」
響「こ、こんなの…無理だ…」
春香(そして…)
ポーン
やよい「わっ!?」グラッ
パシッ
小鳥「ストライク! バッターアウト!」
やよい「あぅ…」
P「チェンジアップ…あのストレートに混ぜられたらリズムが狂わされるぞ」
春香(唯一の経験者であるやよいも、所詮は草野球レベル。まるで歯が立ちませんでした)
真美「やよいっちまで…」
あずさ「すごく速かったわね…見えなくなっちゃいそう」
貴音「よもや、ここまでとは…」
亜美「うぅぅぅぅ…!」
千早「まぁ…仕方ないでしょう」
伊織「そうね。こんなものよ」
雪歩「こんなの、無理ですよ…」
美希「あふぅ」
小鳥「み、みんな…」
律子「………無理、ですかね」
P「え?」
律子「やはり、企画自体が無謀だったんですよ。断りましょう」
P「…そう、だな…」
筒井「中止ですか。賢明な判断だと思います」
春香「り、律子さんもプロデューサーさんも何言ってるんですか…」
律子「春香、周りを見て」
春香「え…」
ズーン…
春香「み、みんな…どうしたの?」
律子「春香。あなた達はアイドルよ、野球選手じゃない」
律子「いくらハンデがあろうと、野球で勝つことなんて…最初から、不可能だったのよ」
春香「そ、そんなことないですよ! ねぇ、みんな!」
シーン…
P「春香…」
筒井「これで、もやもやしてた気分も少しは晴れた。わざわざ試合するまでもないわね」
春香「ま、待ってよ…」
筒井「あなた、まだわからないの?」
筒井「私は、最高の球を投げられるよう、毎日血が滲むような努力をしているのよ」
筒井「あなた達のような、バットもまともに握ったこともないような人に負けるわけがないわ」
春香「わ、私は…!」
千早「春香、もういいでしょう」グイッ
春香「千早ちゃん、放して!」
千早「本職の人に勝てなかったくらいで…」
筒井「まぁ、あなた達のように大して努力したことのない連中にはわからない感覚でしょうけど」
千早「……………」
千早「…………は?」
二屋「アイドルはかわい子ぶってればみんなにちやほやされてるから楽だにゃー」
伊織「…なんですって?」
筒井「それでは。テレビの前で応援していますよ」
伊織「待ちなさい」
二屋「にゃ?」
伊織「アンタ達、今なんつった?」
二屋「にゃにって…」
千早「ちょっと水瀬さん。これくらいで腹を立てていては駄目よ」
千早「えぇ、いくら謂れのないことで貶されたりしても…」ゴゴゴゴ
筒井「…なにか?」
美希「やっぱ、試合やる? みんな」
二屋「へ?」
貴音「ええ。その方がよろしいようですね」
雪歩「私も…今のは、流石に聞き逃せないよ…」
あずさ「うん、やりましょう」
筒井「人の忠告は受けておくものよ?」
響「ヘン、だーれがそんなん聞くか!」
筒井「私達に勝てるつもり? そんな体たらくで」
真「今は無理だよ。でも、必ず勝ってみせるさ」
筒井「口だけではなんとでも言えるわ」
やよい「口だけじゃないです! 765プロは負けません!」
二屋「まぁ、それだけやる気あるなら、ハンデでちょっとはいい試合になるんじゃにゃいか?」
真美「ハンデ? ねぇ、今ハンデとか聞こえたんだけど?」
亜美「別にいらないんじゃん?」
千早「そうね、ハンデなんて必要ない」
律子「え」
筒井「…後悔するわよ」
春香(そう言い残して、筒井さん達は帰っていきました)
美希「と…いうわけなの」
P「お、お前ら…」
真美「いいじゃん! あいつらスッゲーむかつくし、ハンデで勝っても嬉しくないよ!」
亜美「そーだそーだ! 765プロの恐ろちさを見せてやる!!」
律子「まぁ、みんなが怒るのも無理はないですね」
小鳥「ええ。自分だけでなく、事務所の仲間…ライバル達…彼女達の住む世界を、全て否定するような言葉でしたからね…」
P「しかし…練習時間は限られてる、必死になって練習しても勝てるのか…?」
真「限られてなければ、試合まで一ヶ月…充分時間はありますよ」
P「は…まさか、お前達…」
春香「律子さん、プロデューサーさん! 試合までの仕事、全部キャンセルしてください!」
P「おいおい、何言ってるんだ!」
律子「そんなこと、できるわけないでしょ!!」
伊織「私からも頼むわ、律子。ちょーっとこのままじゃおさまりがつきそうにないのよね…」
響「うがー! あいつら、絶対に倒す!」
律子「私だってあの子達にはむかついたけど、そんなこと言われても…」
高木「いいじゃないか」
小鳥「しゃ、社長!? いつの間に」
高木「やる気があるというのは素晴らしいことだ。彼女達が燃えているのなら、それをサポートするのが我々ではないかね!?」
律子「え、えぇ…?」
高木「諸君、仕事に関しては私がなんとかしておこう! だから気にするな!」
P「しゃ、社長まで…」
春香「ありがとうございます! よーし、みんな練習しようっ!!」
律子「あーもう、頭が痛い…」
春香(こうして、765プロの1ヶ月の予定は、野球の練習で埋まることになりました)
春香(この出来事は、もっと大きな亀裂や反発を生むと思いましたが…)
春香(高木社長の人柄と、担当ディレクターの権威と、「また765プロか」との声で案外何事もなく収まり…)
春香(こうして、火が点いた私達は真剣に練習に取り組むようになりました!)
律子「まずは基礎技術から! 基礎がないと何も身に付かないわよ!」
「「「はいっ!!」」」
P「本当にやる気だな、律子」
律子「もうヤケクソですよ! 勝つつもりなら徹底的にやらないと!」
春香「走り込みとか、したほうがいいですか?」
律子「必要ない! あんた達に体力は充分あるわ! 目にもの見せてやりなさい!」
雪歩「っとと…」パシッ
雪歩「そ、それっ!」ポンッ
やよい「ないすです!」パシ
響「うりゃぁ!」シュッ
ヒュン!!
貴音「ないすぼぉる」バシィ!
真「おっ、いいフォームだね響!」
響「ああ! 帰ってからもビデオとか本とか読んで研究してるんだ!」
亜美「ひびきんが本を読むなんて…」
真美「こりゃ本気ですな!」
響「なんだよー! 自分、本は結構読むぞ!?」
貴音「響、少々気づいたことが」
響「なに?」
真美「よーし、真美達は遠足だ!」
真「遠投ね」
亜美「んっふっふー。ちょっとずつ距離を広げて、最終的には端から端まで投げられるようになるのだ!」
真「ボクも負けてられないな…」ブンッ
千早「せっかく、高槻さんとキャッチボールをしていたのに…」
伊織「いいから、さっさと投げる」
バシッ!
伊織「ちょっと千早、もっと高めに投げなさいよ」
千早「ごめんなさい。水瀬さんなら、これくらい捕れると思ったのだけれど」
伊織「この…」シュッ
千早「…!」サッ
パシィ!
千早「…ええ、その調子よ水瀬さん。送球が足下に来た時の…練習になるわ!」
パンッ
伊織「上等、とことん付き合ってやるわ…」
P「そりゃ!」ポイッ
カッキーン!!
P「うお…またか…」
美希「ねぇねぇハニー、ミキ凄い?」
P「あ、ああ…凄いぞ美希」
美希「えへへ…」
ヒュルルルル…
パシッ
あずさ「うふふ。きゃっ~ち、とっ」
P「え!? なんであずささんがあんなところに!?」
美希「あずさ! そこ守るトコとゼンゼン違うって思うな!」
あずさ「ごめんなさい、時々わからなくなっちゃって~」
P「いえ、でも今のはファインプレーですよ!」
美希「むー…」
春香(そして、仕事が空いてしまった分ですが、社長達も結構抜かりなくて…)
『アイドル達の練習風景を見に行こう! 練習場は入場無料!』
『アイドルが野球!? 前売りチケット好評発売中! ~月~日、プレイボール!』
ガヤガヤ…
真「そらっ!」パシッ
「おお、あれを捕るか!」
「キャー! 真様、凄ーい!!」
「飲み物はいかがですかー!」
「765プロのグッズ販売中でーす! 今だけの野球仕様でーす!」
春香(なんと、練習する私達を使って、広告を出したり出店を出したりして儲けを出していました!)
ジーッ…
春香(そして、私達の練習風景はTV局のカメラからお茶の間に流れ…)
「なぁ、765プロのアイドル達が野球するんだって」
「えぇ? アイドルがスポーツなんてできるのかぁ?」
「それがさ。練習してるとこ見に行ったんだけど、みんな結構いい動きしてるんだよ」
「ねーねー、野球の試合どうする? 765プロの娘が出るらしいんだけど」
「響ちゃんがピッチャーなの? 野球はよく知らないけど、見に行こうかな!」
「相手どこ? 南第六高校? 知らねぇなぁ…」
「あっ、ここ女子高校野球で全国優勝したチームじゃないか! 勝てるのか!?」
「あのやる気、本気で勝つ気なんだろうな」
「野球は中継でしか見ないけど…これは生で見てみたいぞ!」
春香(前売りチケットは、なんと完売!)
春香(チケット代、広告料、他諸々で、仕事を休んだ分…いえ、それ以上の利益を叩き出したのです!)
春香(そして激しい特訓の末…ついに、試合の日がやってきました…!)
ガヤガヤ…
ワー ワー
律子「球場は超満員ね…」
やよい「ま、まさか、ドームで試合できるなんて思いませんでした…」
春香「プロデューサーさんっ! ドームですよ、ドーム!」
春香「…あれ、プロデューサーさんは?」
律子「プロデューサーなら…」
小鳥『皆様、本日はご来場ありがとうございます!』
春香「あれ、このアナウンスの声は…」
小鳥『実況は私! 美人事務員として評判の765プロ、音無小鳥です!』
P『そして私は本日解説を勤めさせていただきます、同じく765プロの…』
春香「ええっ!? 小鳥さんとプロデューサーさんが実況解説!?」
P『しかし、私達がやるとなると765プロ寄りの実況解説になってしまいそうですが…』
小鳥『ディレクターにはそれでいいと言われてます。心配しないでください』
P『あえてか! 承知の上か!』
ハハ…
小鳥『ちなみに皆様もお聞きの通り、この放送は場内全体に聞こえています』
小鳥『なので、私がウグイス嬢も兼任することになりました!』
P『小鳥だけに?』
小鳥『言うと思いましたよ!』
ハハハ…
律子「何やってんだか…」
美希「なーんか、仲良さそう…」
ザッ…
律子「あ、ほら! 南六高が来たわよ」
伊織「見たことのない顔ばかりね」
律子「左からリードオフマンの松尾、俊足の日野、ゴールデンルーキーの赤場、主砲の白馬…」
雪歩「な、なんか凄そうな響きですぅ…」
律子「ええ。南六高は全国優勝するだけあって、実力者揃いのチームよ」
あずさ「物知りですねぇ、律子さんは」
律子「監督ですから。相手のことは調べてあります」
春香「南六高…!!」
真「絶対勝つ…!」
やよい「うっうー!!」
メラメラ
二屋「うわ、こっち睨んでるにゃ…」
松尾「筒井と二屋があんなこと言うからでしょ、まったく…」
二屋「それにしても、この観客…気に入らないにゃー…」
赤場「なんでですか? こんなにいっぱい見てくれる人がいるのに」
日野「そうそう、全国大会の決勝でもこんなに観客入らなかったよ!」
二屋「だから、気に入らないんだにゃ」
筒井「まぁ、アイドルに比べれば所詮私達は日陰者」
二屋「筒井…」
筒井「勝ちましょう。勝って私達南六高の名前をみんなに残しましょう」
「「オォー!!」」
ワー ワー
小鳥「そろそろ、時間ですね…」
P「これ、後日放送されるんですよね? ついに俺も地上波デビューか…」ヒソヒソ
小鳥『(無視)それでは、みなさんお待ちかね! 本日のオーダーを発表します!』
ワアアアアアア…
春香(さぁ、試合開始です!)
南六高(先攻)
8日野
9松尾
3灰賀
5白馬
2二屋
6桐生
4隠出
7赤場
1筒井
765プロ(後攻)
1我那覇
7水瀬
6菊地
5星井
4高槻
2四条
3如月
9三浦
8双海亜
パチパチパチパチ…
春香「あれ?」
真「勝つぞ、みんな!」
亜美「負けるわけないよ、あんなに努力したんだもん!」
律子「んなわけないでしょ、相手は子供の時からずっと野球に打ち込んでるような連中よ! 向こうの方がよっぽど努力してるわ!」
千早「まぁ…そうですよね」
律子「だけど、アイドルとしての活動の中で培ったガッツ、根性、そして団結! これらは相手にも負けないと思うわ!」
響「うん!」
律子「相手が強くて当然! でも、あんた達も強くなった! それなら最後まで試合はわからない、それが野球! さぁ、みんな!」
「「「765プロ、ファイト…オーッ!!」」」
あずさ「さぁ、行きましょ~」
伊織「にひひっ、ほえ面かかせてやるわ」
やよい「うっうー! 頑張ります!!」
春香「あれ?」
※本来実況とウグイス嬢兼任とか絶対にありえないことだと思いますが、お祭りのような、そういうものだと考えてください
雪歩「みんな、頑張って…!」
真美「負けたら認知しないかんねー!」
律子「こら、どこで覚えたそんな言葉!」
春香「? …?? ????」
小鳥『765プロのみんなが守備位置につきます!』
美希「うーん…」キョロキョロ
真「どうしたの、美希?」
美希「真クン、実況席ってドコ?」
真「心配しなくても、プロデューサーならちゃんと見てるよ」
美希「そういうことじゃないんだケド…ま、いっか」
貴音「こほん。では…」
貴音「しまっていこー」バッ
小鳥『くすっ…キャッチャーの貴音ちゃんが、みんなに声をかけています』
P「音無さん、アナウンスアナウンス」ヒソヒソ
小鳥「あ、そうでした」ヒソヒソ
小鳥『さぁ、1回表、南第六高校の攻撃は1番センター日野さん!』
日野「筒井さんが言ってましたよ」
貴音「?」
日野「1ヶ月で随分とサマになっているって」
貴音「それは、どうも」
審判「プレイボール!!」
日野「~♪」
律子「この一番…絶対塁に出しちゃ駄目よ、みんな…」
小鳥『日野さんは、春の全国大会では4試合でなんと…10盗塁!?』
P『出塁率を見るに、三盗(三塁への盗塁)も狙わないと出ない数字ですね。驚異的な足の速さを持っているようです』
響「行くぞ…」スッ
小鳥『さぁ、響ちゃんまず一球目、足を上げて…』
響「はっ!」ビシュ
小鳥『投げました!』
ゴォォォ
貴音(甘い…)
日野「♪」スッ
カキン!!
小鳥『おっと、初球から当ててきた!』
P『プレイボール直後の甘い球を狙ってきました』
テン テン
小鳥『打球はゴロとなって一二塁間に…』
やよい「はいっ!」パシッ
小鳥『あっと、しかしセカンドが軽快に捌きます!』
千早「ああ、高槻さん…一生懸命でかわいい…」
やよい「それっ」ポンッ
P『一塁に送球、これは楽々アウトですね』
響「よしっ」
テン テンテン
響「…へ?」
小鳥『いや、これは…ボールが一塁ファールグラウンドに転がっています!』
千早「………」ポワーン
小鳥『エラーです! 千早ちゃんの捕球エラー!』
P『何をやっているんだ千早!!』
千早「?」
日野「よーし…」タタタッ
小鳥『おっと、ランナー一塁を回り…』
貴音「と…」ヒョイッ
小鳥『二塁へ向かって飛び出しましたが、貴音ちゃんが素早くカバーに入っています!』
真「貴音!」スッ
貴音「はい」グッ
日野「わっと!!」キキーッ
小鳥『これでは二塁までは間に合わない! ランナー、慌てて一塁に戻ります!』
貴音「………」ス…
小鳥『貴音ちゃん、投げません。これでノーアウト一塁』
P『打球が強かったのと、貴音がカバーに入るのが早かったのが救いですね。どちらかでなければ楽々二塁に行かれてました』
小鳥『と言うか千早ちゃんがエラーしなければよかったのでは…』
P『ですね。まぁ、それは言っても仕方ないです』
小鳥『南六高、続きましては2番ライト松尾さん』
小鳥『さぁ、765プロ先頭打者を出し…』
審判「タイム!」
ゾロゾロ…
小鳥『おっと、タイムがかかりました!』
P『内野陣がマウンド上に集まっていますね』
真「ちょっと、千早! 何やってんのさ!」
響「せっかくアウト取れたのに…」
美希「やよいに見とれてエラーってどうかと思うな」
貴音「面妖な」
千早「ごめんなさい、高槻さんのせっかくの好プレーを…」
やよい「大丈夫ですよ、千早さん! 失敗は誰でもあります!」
千早「た、高槻しゃん…」
響「とにかく…次は頼むぞ?」
千早「ええ、次は同じ過ちをしないようにするわ」
ゾロゾロ…
小鳥『守備位置に戻ります。一体なんだったのでしょう』
P『さぁ』
審判「プレイ!」
小鳥『さぁ、気を取り直して次の打者は松尾さん』
P『松尾選手は南六高では日野選手に次ぐ俊足で、打撃のセンスもなかなかのものを持っているそうです』
小鳥『セオリー通りなら、ここはバントでしょうか?』
日野「………」ジリジリ
P『いや…あのランナーならバントは考えなくてもいいですね』
響(絶対、走ってくるよな。律子が言ってたもん)チラッ
真「………」クイッ
響(うん、わかってる! 練習通りでしょ!)
貴音「………」スッ
グッ
小鳥『響ちゃん、セットポジションから…』
響「はっ!」ビシュ
小鳥『投げ…あっと、これは!?』
スタッ
小鳥『貴音ちゃんが立っている、外してきました! 完全に盗塁を読んでいた!』
日野「~♪」タタタタ
小鳥『…!? が、走っています! ランナー強攻策に出た!』
パシッ
貴音「ふっ」シュビッ
小鳥『貴音ちゃん、モーションが速い! これは刺せるか!』
ズザザッ
小鳥『足から滑り込む!』
真「アウトだ!」パシィ
小鳥『真ちゃんがボールを…受け取りざまタッチしました!』
二塁審「セーフ!」
小鳥『ああっと、しかしセーフ! これがセーフです!』
P『響のセットポジションに球速にウエスト、貴音のモーションに肩、真の捕球にタッチ…どれも悪くはありませんでしたが…』
小鳥『しかし、盗塁成功! なんという足!』
P『こうなるとやっぱり、あの走者をエラーで塁に出したのは痛かったですね』
小鳥『さぁ、ノーアウト二塁!』
響「くぅ…」チラッ
日野「へっへーん♪」
小鳥『あの足、もう一度走ってくると思いますか?』
P『恐らく、しないでしょう。わざわざそんなことしなくても、充分帰れますから』
響「ふっ!」ビシュ
キン!
小鳥『打った!』
響「あっ!!」クルッ
やよい「はわっ!」ピョイン
コォォォォ
小鳥『あああ! 打球が内野の頭を越えます! これは長打に…』
あずさ「よいしょっと」パシッ
松尾「えっ!?」
小鳥『ならない! 落下したすぐそこにあずささんが待っていました!』
あずさ「やよいちゃん、そーれっ」ポーン
やよい「はい!」パシッ
日野「うわっと」キキーッ
小鳥『俊足の二塁ランナーも、これでは本塁までは突っ込めない! 三塁で止まりました!』
P『これは守備位置がよかったですよ。普通の守備位置なら右中間を抜ける長打…追いついても、ランナーを帰すところでした』
小鳥『あずささんは、どうしてそんなところにいたんですかね…』
P『まぁ、失点を防いだことですしいいとしましょう』
小鳥『続きましては、3番ファースト灰賀さん』
灰賀「がぅ…」
小鳥『ノーアウトのままクリーンナップへ! 響ちゃん、抑えられるのでしょうか!』
灰賀「ぐるる…」
貴音(打つ気満々…と言ったところでしょうか)
クイッ
貴音(響、高めに速球を。間違っても入れないでください)
響「」コクッ
ヒュッ
小鳥『投げた!』
灰賀「フンッ!」カンッ
審判「ファール!!」
小鳥『今のは高い! ファールです!』
P『きわどい球も、積極的に打ちに来ますね』
貴音(次は、ここに)ス…
響「………」コクリ
貴音(球速は要りません。中に入りすぎなければ大丈夫です)
ビシュゥ!
小鳥『さぁ二球目は…』
灰賀「クァッ!!」グッ
貴音(取った!)
灰賀「ケッ!?」ブンッ
ゴンッ!
小鳥『おっと鈍い音! 今のもボール球!』
P『打ち気のバッターに上手く引っ掛けさせましたね』
ギュルルル…
小鳥『あっ…でも、これは三遊間のど真ん中に勢いよく飛んでます!』
P『ボール球を打っても、こういう打球を飛ばしてくるのがこの打者の怖いところです』
小鳥『この打球、抜けるか…!?』
真「っとぉ!!」パシィ!!
小鳥『ああっと、深いところで追いついた! さっすが真ちゃん、凄い守備範囲です!』
真「」チラッ
P『本塁は間に合いそうにないですね…』
小鳥『1点は仕方ありません。ですがこれでゲッツー! ランナー一掃できます!』
真「やよい!」トス
やよい「はい!」パシッ
二塁審「アウト!」グッ
松尾「まったく…」
小鳥『6、4!』
やよい「千早さん!!」クルン シュッ
小鳥『3…』
テン テンテン
やよい「………」
真「………」
響「………」
シーン…
千早「ハッ! 私は一体…」
小鳥『今、スコアボードに、1の文字が刻まれました…』
P『何をやっているんだ千早!!』
小鳥『また、さっきの焼き直しのような捕球エラー! 痛恨の二回目です!!』
響「っと!」パシッ
クルッ
小鳥『今、響ちゃんが球を拾いましたが、この間に打者は二塁に進んでいます』
小鳥『ワンアウト二塁で次の打者は4番サード白馬さん!』
白馬「………」ゴゴゴゴゴゴ
小鳥『白馬さんは1年の頃から南六高の主砲をつとめ、高校通算60本もの本塁打を打っている強打者です!』
P『60本って、ドラフトの目玉か何かですか!?』
律子「タイム」
小鳥『あっと、ベンチから律子さんが出てきました』
律子「守備を交替します」
春香「………」スクッ
小鳥『えーと…守備の交替をお知らせします。レフトの伊織ちゃんがファースト、ファーストの千早ちゃんがレフトに入ります』
春香「………」スッ
真美「なんでいおりんなの? 千早お姉ちゃん、背が高いからって入れたのに」
律子「そうね。守備もよかったしまさかこんなことになるとは思わなかったわ…」
真美「いおりんなら、あずさお姉ちゃんとかお姫ちんの方が背高いじゃん」
律子「真の守備を考えると、伊織が一塁やった方が都合がいいのよ」
真美「??」
千早「高槻さんから遠ざけられてしまったわ…」
伊織「自業自得でしょ」
響「もう、本当なら無失点で終わってたのに!」
貴音「響。先程1点は取られても仕方ないと話したではありませんか」
響「たかね…」
貴音「あの場面からの1点は仕方ありません。そして今の失策は響が残りを完璧に抑えれば、同じ事です」
響「…そうだね」
審判「プレイ!」
小鳥『さぁ、依然ピンチが続きます765プロ!』
響「よし、いっちょやるかっ!」パシッ
ビシュン!!
小鳥『響ちゃん、快速球が唸ります!』
パシィッ!
白馬「………」
審判「ボール!」
小鳥『しかしこれはボール球!』
P『バッター、ピクリとも動きません』
響(…次は…)
ビシュゥ!
白馬「」カッ
ガッキィィィン!!
響「げ!?」
小鳥『ああっと! レフト線、これは大きい!』
P『切れる…』
三塁審「ファール!」
小鳥『ファールです! タイミングが早かったか、助かりました!』
キィィン!!
ゴギャッ
小鳥『またも三塁線へのファール! なんて打球でしょう!』
貴音「………」スッ
P『ですが、これで追い込みました』
響「」コクリ
小鳥『バッテリー、サインを決め…』
シュパン
小鳥『投げます!』
白馬「」グッ
小鳥『あっと、これはど真ん中…』
カクン
白馬「!」ブンッ
小鳥『!? 落ちました! 三振です!!』
P『フォークか、響の奴…』
審判「ストライク! バッターアウトッ!!」
白馬「………」
響「えへへ、やった…あいつが一番強い打者なんだよね」
小鳥『ツーアウト二塁、次の打者は5番キャッチャー二屋さん』
二屋「にゃー」
P『3番4番に比べると劣りますが、この打者も侮れません』
二屋「なんにゃ、その解説は!」
響「うりゃ!!」ヒュッ
パシッ
審判「ボール!」
小鳥『高いか、ボールです』
響「ふふーん」
貴音(響が少し舞い上がっていますね…間を置きましょう)
スッ
小鳥『貴音ちゃんがミットを下向きにしています』
響(? たかね?)
貴音「………」
響(なんだよー、いい気分だったのに)
ス…
小鳥『キャッチャー構えました』
響(よし、こいつ抑えて気持ちよく帰る!)グッ
P『響のフォームから余分な力が抜けましたね』
ヒュン!!
二屋「にゃー!!」キン!!
コォォォォ
小鳥『当たったっ!! 打球が外野に大きく上がっていきます! センターが追いかける、追いつけるか!?』
亜美「やっはー!」ピョン パシッ
小鳥『ジャンプして捕ります!』
審判「スリーアウト、チェンジ!」
小鳥『これでチェンジ! 響ちゃん、1点に抑えました!』
響「よしっ!」グッ
貴音「やりましたね、響」
響「へへーん、自分完璧だからな!」
小鳥『ところでプロデューサーさん。今の亜美ちゃん、ジャンプしなくても届いたと思うのですが、何の意味が?』
P『ないですね。亜美の足なら余裕で追いつけましたし、単に目立ちたいだけでしょう』
ワアアアアァァァ…
小鳥『ですが、今のジャンピングキャッチで場内は沸いております』
P『このムードで1回裏の攻撃を頑張ってほしいところです』
響「よーし! 行くぞっ!」
小鳥『そして1回裏、765プロの攻撃! 1番ピッチャー響ちゃん!』
ワァァァァァァ!!
響「さぁ、来い!」グッ
小鳥『ここは先頭バッター出したいところですね』
P『相手は全国優勝の左腕、そう簡単には出してくれないと思いますよ』
二屋(ピッチャーのくせに1番か…)
二屋(ま、どうでもいいかにゃ。筒井の球は打てっこないにゃ)
筒井「」ス…
響(さっきは自分、初球を叩かれたからな…)
小鳥『さぁ、ワインドアップから…まず一球目!』
響(こっちも、初球を…)
シュッ
響「叩…」ブンッ
フワ…
響「!? 遅…」グルン!
ドサッ
響「く…」
パン!
審判「ストライクッ!!」
小鳥『あっと、初球からチェンジアップ!? 響ちゃん、尻餅をついてしまいました!』
響「たた…」
小鳥『これに加え、筒井さんには速球があります! 響ちゃんは打てるのでしょうか!?』
P『速いと言っても、特訓したあいつらなら打てない球ではないと思いますが…』
ビシュ!!
パァン!!
P『ですが、遅い球を見せられれば緩急で数字以上に速く見えますよ…』
響「わわっ!!」
ブンッ
審判「ットライッ! バッターアウトッ!」
小鳥『ああ、一球もかすらず三振です!』
P『最初のチェンジアップに完全にリズムを狂わされましたね』
小鳥『765プロ、次の打順は2番レフト…じゃない、ファーストの伊織ちゃん! 頑張ってー!』
クギュゥゥゥゥゥウ!!
伊織「何よ、このわけのわからない歓声は!?」
ギュン!!
伊織「ちょ…」
バシィ!!
審判「ストライク! バッターアウト!」
伊織「く~っ!」
小鳥『ああっと、続く伊織ちゃんも三振!』
P『筒井選手、立ち上がりは順調のようですね…』
春香「くーっ、あんなに練習したのに…」
雪歩「打てなかったら、どうしようもないよ…」
ドヨン…
真(まずいな、ベンチのムードが暗くなってる…)
真(みんなが『やっぱり勝てるわけがない』、『自分達のやってきたことは無駄だった』なんて思ったら…すぐに試合が終わっちゃう)
真(ボクが…なんとかしないと)
小鳥『さぁ、続いての打者はお待ちかね、3番ショート真ちゃん!』
キャアアアアアア!!
P『客席から黄色い声援が上がります』
筒井「………」ポン ポン
真(響、伊織と三振で来ている…)
真(打たれるなんて、微塵も思ってないはずだ)
真(だから…ボクにも同じように初球はストライクを入れてくるはず、そこを叩く!)
真(球種はストレートかチェンジアップか…)
真(ストレートだ。チェンジアップだったら踏みとどまってやる、三振は絶対にしない)
真(相手は打たせて詰まらせるより、ここも三振を取らせたいはず。だから外の…)
小鳥『投げなした!』
ビシュ
真(高めか!)ヒュッ
ゴォォ
真(って、内角!? でも、この球速なら…)グラ…
小鳥『真ちゃん、体を傾け…』
クンッ
真「…!?」
真(これは…ストレートじゃない! シュートか!?)
真「ちょ、ちょっと…」
二屋(ここも三振狙い…なんて思ったかにゃ?)
真「ぐっ!!」ブンッ
二屋(打ち上げて終わりにゃ)
ゴイン
ポンッ ポンッ
小鳥『打った! 三塁線に転がしました!』
二屋「に゛ゃっ!?」
P『おっと、これは上手い所に転がっています』
真「うおおっ!!」ダダダッ
白馬「………」パシッ
ヒュッ
小鳥『真ちゃん、走る! サード、投げる! 間に合うか!?』
真「だぁっ!!」ガッ
パシ
ズザザザ
小鳥『ああっ、真ちゃんも転がった!!』
P『同時は…』
一塁審「セーフ!!」
小鳥『セーフです! 真ちゃん、ツーアウトから塁に出ましたっ!』
キャー!! キャァァァ!!
二屋(い、今のがヒットになるにょか…?)
P『今のシュート、普通なら打ち上げるところなんですが…上手く転がしましたね』
真(はぁーっ…今のがギリギリの内野安打か、情けない…)
真(点取れるのかな、これ…? いや…)
真(ボクが出れば、みんななら…やってくれるはずだ)
春香「みんな! 真がヒット打ったよ! 打てるんだよ!」
やよい「どんな形でも、ヒットはヒットです!」
春香「さぁ律子さん! 私を代打に!」
律子「初回に何言ってんの。さ、次は…」
小鳥『4番サード美希ちゃん!』
ワァァァァァアアア!!
小鳥『美希ちゃん、正直4番を打つようなタイプには見えないんですけど大丈夫なんですかね?』
P『じゃなかったら4番に置かれたりしませんよ』
美希「………」
二屋「765プロ、アイドルのくせに筒井からヒット打つなんて、結構あなどれんにゃ…」
二屋「ま、でもここで終わりだけどにゃー」
美希「………」
二屋「…聞いてるのかにゃ?」
筒井「」ス…
フワ…
小鳥『第一球…抜いた!』
美希(いち、にの、さん、し)
パシン
審判「ストライク!」
二屋「?」
小鳥『美希ちゃん、チェンジアップを見逃し!』
ヒュン
美希(いち、にの、さん、し)
クンッ
パシン
審判「ットライッ!!」
小鳥『これも見逃した! 今のはシュートですかね?』
P「美希…?」
小鳥「プロデューサーさーん?」ヒソヒソ
二屋(こいつ、何か狙ってきてるのかにゃ? ストレート…?)
二屋(いや…素人が筒井のシュートとストレートを見分けられるとは思わんがにゃ…)
真「………」
二屋(まぁ、ランナーもいるし…念のためここで一球外すかにゃ)スッ
筒井「」スゥ…
小鳥『セットポジションから…』
ビシュ!!
小鳥『投げました!!』
オオォォォ
二屋「!?」
二屋(な、中に…中に入ってきてる…!)
ォォォ
美希(いち、にの、さん…)グッ
美希(しっ!)ブンッ
カッイーーーーーン!!
筒井「え?」
二屋「へ?」
小鳥『はい?』
P『ん?』
スカーン!!
シーン…
小鳥『は…』
ワアアアアアアアアアアアァァァ!!
小鳥『入ったぁぁぁ! ドームの客席に入る逆転のツーランンンン!』
ァァァァァァァ…
二屋「嘘にゃろ…」
筒井「………」
美希「あはっ☆」タタタ
ワァァァァ…
小鳥『今、美希ちゃんが嬉しそうにホームに戻ります!』
真美「ミキミキ! 凄いよ!」
美希「えっへん! ミキにかかればカンタンなの!」
真「簡単に、か…ボクの立場ないなぁ…」
千早「そんなことはないと思うけれど。真がいたから2点入ったのでしょう?」
雪歩「そ、そうだよ」
律子「手放しに褒めたくはないんだけど…よくやったわ、美希」
美希「ふふ~ん♪ これでハニーも『凄いなミキ』とか、『ミキ大好き』とか言ってくれるよね!」
小鳥『765プロ、逆転の一打が飛び出ました! さぁ、続いては…』
P『この調子でどんどん攻めてほしいところです』
美希「あれ…?」
小鳥『5番セカンドやよいちゃん』
ウォォォォォォオォォオォォォォオオォォオッッォォオォォオォォォオォォォオォオ!!!!!!!!!!!!!!
美希「何も言ってくれないんだ…」
春香「ちゃ、ちゃんと心の中では美希凄いって思ってるよ!」
伊織「そ、そうよ。堂々と言っちゃったら色々と大変なのよ!」
美希「それでも…言ってほしかったな…」
貴音「美希…」
あずさ「美希ちゃん、よしよし」ナデナデ
美希「くすん。あずさぁ~」
二屋(気を取り直して…)
やよい「よろしくお願いしまーす!」ガルウィーン
二屋(次はこいつかにゃ…1ヶ月前、筒井にチェンジアップを使わせた奴)
ザッ
二屋(にしても、ちっこいにゃぁ…)
小鳥『さぁ、やよいちゃんが打席に立ちました!』
P『何かやってくれそうな感じがしますね』
ビシュゥ!!
やよい「うっ!」キィン!!
審判「ファール!」
小鳥『ストレートに合わせています!』
P『先程も言いましたが、ストレートだけなら当てることはそう難しくないと思います。ただ問題は…』
フワ…
小鳥『あっと、抜いた! チェンジアップ!』
やよい「はわっ!」グッ
筒井「!」
小鳥『溜めて…』
やよい「えいっ」ブルッ
キン!
審判「ファール!」
小鳥『これも合わせた! 打球はバックネットにぶつかりファール!』
P『打球が真後ろに飛んだ…上手くタイミング合わせましたね。これは期待できますよ』
やよい「ふ~んふ~ん♪」グリグリ
二屋(つま先を立てて、足を浮かさず腰の回転だけで打ってるにゃ…だからこの緩急にも対応できるのかにゃ)
二屋(でも、このちっこい体でこんな打ち方じゃ長打にはならない! 内角を攻めるにゃ!)バッ
筒井「………」フルフル
二屋(え?)
小鳥『おっと、マウンド上の筒井さんが首を振っています』
P『筒井選手がサインに首を振ることはあまりないそうですが』
二屋(もう、使っちゃうのかにゃ?)
筒井「………」
二屋(白馬の時のお返しってわけかにゃ…そういうことなら)
筒井「」スッ
小鳥『サインが決まったようです、ワインドアップから』
ビシュ!
小鳥『投げました!』
スポーン
小鳥『って、あら…これは暴投…』
P『サインに夢中で汗を拭き忘れ…』
ギョルン
やよい「え…」
ズバァ!!
やよい「あ…」
小鳥『………』
P『………』
審判「ストライク! バッターアウト!」
アァァァァァ!!
小鳥『カ…カーブです! 縦に大きく割れました…!』
P『実況席の映像からでも、はっきりとわかりました…』
小鳥『筒井投手、こんな球を持っていたとは…』
P『データはほとんどありませんね…あるというのは聞いていましたが、噂以上でした』
小鳥『これを混ぜられると、追加点は難しいかも…』
P『その前に美希が2点取ってくれたのは幸運でしたね』
春香「あ、ほら美希! プロデューサーさんが美希のこと褒めてるよ!」
美希「幸運じゃないの。ミキ、頑張ったのに…」
春香(ど、どうすればいいんだろう…)
小鳥『2回表、南六高の攻撃! 6番ショート桐生さん!』
P『なんにしても、765プロには今のショックを引きずらないで守りについてほしいところです』
桐生「よろしく」ニコッ
貴音「はい」
「ねぇねぇ、あの子結構イケてない?」
「えー、そう? 真王子の方がよくない?」
小鳥『桐生さんは、その中性的な容姿で女生徒に人気だそうです! 真ちゃんみたい!』
亜美「だってさ、まこちん!」
真「いや、別に張り合ったりしないからね?」
美希「………」
春香「うわー、美希やっぱりまだ落ち込んでますよ…律子さん、私を」
律子「うるさい」
バシィッ!!
美希「………」ポイ
伊織「ちょっ…!」パシッ
一塁審「アウト!」
桐生「まいったな…」
小鳥『美希ちゃん、三塁線への強烈なゴロでしたが難なくキャッチしました!』
伊織「美希! もっと上に投げなさいよ! 伊織ちゃんが捕れたからよかったものの!」
P『ですが、送球は逸れてましたね。今のは伊織の手柄です』
美希「………」プイ
伊織「ったく、アイツは…今試合中だって、わかってんの?」
小鳥『7番セカンド隠出(いんで)さん』
P『隠出さんは話によると次期主将候補とされているそうです』
隠出「」スッ
小鳥『これはどうしたことでしょう、ランナーもいないのに最初からバントの構えです』
P『バスターですかね?』
貴音(バントはありません、気にせず行きましょう)
響「」コクリ
小鳥『さぁ、響ちゃん投げた!』
ヒュン
スッ
審判「ボール!」
小鳥『第一球は外れてボール』
P『あっさりバットを下げましたね、揺さぶって四球狙いでしょうか? それともやはりバスター狙いか』
審判「ボール!」
審判「ストライク!」
審判「ボール!」
響「む…」
小鳥『響ちゃん、バントの構えに揺さぶられてワンスリー』
P『響は本職の野球選手じゃないですからね。わかっていてもやりにくいんでしょう』
隠出「」バッ
小鳥『バッター、依然バントの構えを崩しません』
P『何が狙いなんですかねぇ、次はバッティングカウントですが』
貴音「………」スッ
響(ど真ん中…)グッ
響「えりゃ!」ヒュン
小鳥『投げました!』
サッ
小鳥『またバットを下げます!』
P『バスターか? それともこれも見逃し…』
コン
小鳥『え? あ…バントです! 一塁線に転がしました!』
伊織「セーフティバントですって…!?」
P『揺さぶっていたのは一塁三塁か…! 散々バントはしないと思わせて…』
小鳥『これは意表をつかれた! セーフになるか!?』
伊織(駄目だ、間に合わない…)
響「伊織、伏せ!」
伊織「は?」バッ
ガシッ ヒュン
やよい「はいっ」パシッ
一塁審「…アウト!」
小鳥『おおっと、響ちゃんの反応が早かった! アウトです!』
真「よ! たっ」パシ ヒュッ
伊織「うし!」パンッ
一塁審「アウト!」
赤場「ひーん…」
審判「スリーアウト、チェンジ!」
小鳥『南六高8番レフト、赤場さんの打席はショート正面! 響ちゃん、三人で抑えました!』
律子「よしよし…いい感じね」
美希「あふぅ…」
春香「美希、最初のゴロよく捕れたね…」
美希「あれくらいなら別に大したことないの」
小鳥『さぁ、2回裏! 765プロの攻撃ですっ! 打順は…6番キャッチャー貴音ちゃん!』
ワアァァァァァ!!
カィン!!
貴音「む…」
パシッ ヒュッ
審判「アウト!」
小鳥『チェンジアップ後の直球に上手く当てましたが、これは平凡なゴロ! ショートに転がしワンアウト』
P『タイミングは合ってました、次はやってくれますよ』
小鳥『続く7番レフト千早ちゃんは…』
審判「フォアボール!」
千早「………」ポイ
小鳥『よく見てフォアボール。選びました』
P『バット、全く振りませんでしたね』
小鳥『ランナーが出て、回るは8番ライトあずささん!』
あずさ「よしっ、がんばりましょう」
オォォォォォ!!
カッキーーーン!!
筒井「な!?」
オォォォォ…
あずさ「あらあら」
バイーン
一塁審「ファール!」
ァァァ…
小鳥『ドーム上部の看板に当たる、大きなファール!』
P『チェンジアップを思いっきり引っ張りました』
小鳥『これはもしかすると…』
ビシュン!!
あずさ「きゃ…」ブルン!
小鳥『と、思ったらストレートを振り遅れ!』
P『タイミングが全く合ってませんね』
あずさ「あら…」ブルン
バシィ
審判「ストライク! バッターアウト!」
小鳥『直球で三振! どうしたことでしょう、全球チェンジアップ狙いなんでしょうか!?』
P『と、言うよりタイミングが致命的にズレているとしか…』
小鳥『き、気を取り直して9番センター双海亜美…』
亜美「うりゃ!」カイン
ポーン
パシッ
一塁審「アウト!」
小鳥『…は初球ボール球に手を出し、ファールフライであっさりアウト! 結局、ランナー一塁のまま二回の攻撃は終了です!!』
P『まぁ、これで次の回は1番からなのでよかったのかもしれません』
真「リードくらいとりなよ、千早…」
千早「なぜ?」
小鳥『3回表、南六高の打順はエースから! 9番ピッチャー筒井さん!』
響「こいつか…」
筒井「…よろしくお願いします」ペコ
貴音「よろしく」
小鳥『左打席に立ちます』
P『投手に集中するため9番に置かれているそうで…一発もある危険な打者ですよ』
貴音(まずは、外角…低め…高くさえなければいいです)
響「………」グッ
ヒュン!!
筒井「」ピク…
パシィ!
審判「ストライク!」
貴音(手を出してこない、得意な球を打つ打者なのでしょうか…?)
貴音(では、外しながらここ中心にすとらいくを取りましょう)
審判「ボール!」
小鳥『高めのボール! これで2ー2です』
P『ストライクを取ったのはどちらも外角低め』
貴音(響、あと一つ外せますが)スッ
響「」フルフル
貴音(では、これで…)
響「」コクッ
小鳥『さぁ、これで決まるか? ピッチャー構えて…』
シュパッ
小鳥『投げます!』
筒井「………」グッ
貴音(振る気ですか? しかしこれは…)
小鳥『これはフォークです! 低い、ワンバウンドになります!』
ガッ
貴音「へ」
響「は?」
キーン
小鳥『あああーっ!? す、掬い上げましたっ!! フォークを!』
P『おいおい、ワンバウンドするクソボールだぞ? 手を出そうとしたら空振るだろう普通!』
響(あいつ、最初から自分が投げる球がわかってたみたいだ…)
響(同じ投手だから…ここで、自分が決めにいくって…知ってたんだ)
バンッ!!
小鳥『打球はフェンス直撃! センターが追いかけます!』
亜美「うおおおおお!」ガシッ
ヒュン!
真「く…」パシッ
筒井「ふぅ…」ザザッ
小鳥『懸命に送球しますが間に合いません! スリーベースです! 765プロ、先頭打者をいきなり三塁に到達させてしまいました!!』
P『スリーベースか、女の子が野球するにはドーム球場はちょっと広すぎますね』
小鳥『それなのにフェンス直撃させた筒井さんを褒めましょう』
P『どう頑張ってもセンターフライにしかならないと思うんだけどな、あれ…』
小鳥『さぁ、打者一巡して次の打者は…1番センター日野さん!』
日野「~♪」
律子(ノーアウト三塁…相手はどう攻めてくるかしら…?)
律子(セーフティスクイズ…こいつの足なら充分ありえる…)
律子(まだ3回、セオリー通りなら一か八かのプレーより大怪我を避けるべきだけど…)
律子(相手は横綱、1点の重みはこっちとは全然違う…)
律子(あーもう、どうするべきか…)
春香「律子さん、響ちゃんはショックを受けてます。ここは私をリリーフに」
律子「黙ってて」
小鳥『あ、ああっと!?』
伊織「ったく、律子の奴…」
やよい「うー! やります!」
真「よし、来い!」
美希「あふぅ…」
小鳥『765プロ、前進守備です! 1点も与えないつもりか!』
P『まぁ、同点にされたら追いつける保証はありませんからね』
小鳥『しかし、前進守備は内野の守備範囲を狭めます…下手すると…』
P『ええ、点を与えた上で出塁される可能性も大です』
小鳥『みんな、ここは踏ん張りどころよ! 頑張って!』
響(えーと、つまり…)
響(とにかく、三塁ランナーを帰しちゃ駄目なんだよね)ヒュッ
美希「」パシッ
小鳥『響ちゃん、三塁に牽制球を投げます』
>>100行ったんで中断…
>>43
松尾は「元」リードオフマンだった…
響「」チラッ
小鳥『響ちゃん、三塁に目線を送り…』
ヒュッ!
小鳥『投げ…あっ!?』
筒井「」タッ
日野「♪」スッ
小鳥『走った、走ってきました! そしてバッターはバントの構え! スクイズです!』
P『やられた…! これは決まる!』
響「くっ! させるもんか…!」タッ
コン
小鳥『バットに当て、ピッチャー正面に転が…あら?』
響「たかね!」パシッ
貴音「」フルフル
小鳥『響ちゃんがキャッチ、本塁に投げようとしますが貴音ちゃんが静止させ一塁を指差します』
響「なんでだよ、1点やったら…って…」チラッ
筒井「」ズザザ
小鳥『三塁ランナーは塁に戻っています!』
響「え!?」
貴音「響!」
響「あっ!」クルッ
ヒュン
日野「よっと」タン
伊織「アウトよ!」パシン
一塁審「セーフ! セーフセーフ!」
小鳥『セーフです! 内野安打!』
P『スクイズは囮か…安全に出塁しました』
響「くぅ…」
小鳥『依然ノーアウト! 一三塁です!』
追いついた支援
小鳥『さぁ、次のバッターは2番ライト松尾さん!』
響「ふーっ…」
P『チャンスのままクリーンナップには回したくありませんね』
真「」ザッ
やよい「」ザッ
小鳥『765プロの守備位置は前進守備のまま』
P『このまま傷口を広げる結果にならなければいいんですが』
キンッ!!
響「!」
小鳥『打った! セカンド正面への強いゴロ!』
P『これは…』
日野「」タタタタ
筒井「」タタッ
やよい「う…」パシッ
小鳥『捕りました! ゲッツーも狙えますが…三塁ランナーが本塁へ走っています!』
P『2アウトを取るか、あくまでも1失点を防ぐか…』
やよい「うーっ!」ブンッ
小鳥『やよいちゃん、すぐさま本塁に送球! 1点を守りに来ました!』
P『いや、投げるのが早い…!』
筒井「フン…」ピタッ
音無『ああっ、三塁ランナーが止まりました! これはオールセーフになりますよ!』
P『これは1アウトも取れない、フィルダースチョイスになる…!?』
やよい「えへへ…」ギュ
小鳥『いや、送球していません! 偽投です! ボールは手から放れていません!』
筒井「な…なんですって!?」
やよい「真さん!」トス
小鳥『やよいちゃん、三塁ランナーが止まったのを見て、振り返りながら下手で二塁送球!』
真「よしっ!」パシッ
二塁審「アウト!」
日野「うひゃー」
小鳥『二塁フォースアウト! そして…』
真「」チラッ
筒井「!」ビクッ
真「伊織っ!」ヒュッ
小鳥『真ちゃん、三塁ランナーに目線を送り、一塁送球!』
伊織「今度こそ…!」パシッ
一塁審「…アウト!」
小鳥『アウトです! ゲッツー!! 一気にツーアウトです!』
P『しかも、三塁ランナーは帰れない! 最高の形です!』
律子「やったわね、みんな!」
真美「えーっ、何今の!? 何やったの?」
雪歩「す、すごい…」
伊織「ナイスよ、やよい!」
やよい「えへへ、ちょっとひっかけちゃったりして!」
真「いい流れだね!」
小鳥『ノーアウト一三塁から一気にツーアウト三塁! ここで765プロは前進守備を解除します』
P『ヒットやエラーで点に繋がるのは変わりませんが…失点のパターンは大分減りました』
P『これであとは1アウトを取ればチェンジ、三塁ランナーを気にしなくてよくなりますから…かなり楽になりましたよ』
灰賀「ぐるる…」
小鳥『続いては3番ファースト灰賀さん!』
響(これは抑えなきゃだな、たかね…)
貴音「」コクッ
小鳥『765プロ、このまま無失点に抑えられるでしょうか!?』
P『大丈夫だと思いますよ。野球には流れってものがあって…』
小鳥『おっと、初球打ち上げました!』
P『今のプレイで、流れは765プロにあります』
ィィィィン…
小鳥『打球は高く高く、ライト定位置に…あっ!?』
ガラーン
小鳥『だ、誰もいない!? あずささんはどこに!?』
あずさ「あら?」
P『あ…フェ、フェンスの前に立っています!』
小鳥『だから、なんでそんなところに!?』
あずさ「もっと、前の方だったのね~」
小鳥『あずささん、急いで…? ボールの方に走りますが…』
テトテト
P『お、遅い! 間に合うのでしょうか!?』
アァァァァァァ…!
響「ちょ、ちょっと…これ…」
小鳥『大丈夫だって言ってたじゃないですか!』
P『俺…私だって、こんなもの予測してませんよ!』
あずさ「よいしょ、よいしょっ」バタバタ
小鳥『頑張ってるのは伝わってきますが…これは、追いつけません!』
「うりゃりゃりゃりゃりゃー!!」
小鳥『おっと!? 落下点に誰か走り込んできます!』
ズザザザザザ
亜美「捕った! 完…」
小鳥『亜美ちゃんです! 亜美ちゃんがセンターから滑り込んできました!』
ヒュルルル…
亜美「あ」パコンッ
小鳥『あああああああ!! 弾いた!?』
P『そりゃそうだ、スライディングキャッチなんてやったことないだろ!?』
パシッ
あずさ「ふぅ…」
P『お、追いついてきたあずささんがキャッチしました…』
小鳥『し、心臓止まるかと思いました…』
ワァァァァァァァァ!!
筒井(この回、絶対に点を取れると思っていた…)
小鳥『3回表が終わり、次は765プロの攻撃です!』
筒井(765プロ…我那覇響、菊地真、高槻やよい…そして星井美希…)
春香「へっくし!」
小鳥『南六高が守備につき、ボールを回しています』
白馬「筒井…」ポンッ
筒井「………」パシッ
筒井(気に入らない!)グッ
ヒュン
二屋「にゃっ」バシィン!!
小鳥『さぁ、打者一巡してこの回の先頭打者は1番ピッチャー響ちゃん!』
響「よしっ」
アァァァァァァァ!!
P『1番からの好打順、ここで点差を広げておきたいところ』
響「まずは、自分が出てやる!」
二屋(こいつは初回、チェンジアップでいいように振り回されたのが頭にこびりついているはず…)
二屋(この回はチェンジアップを投げる必要なんてないにゃ)
パンッ
響「」ピクッ
審判「ボール!」
小鳥『ボールから入ってきました南六高バッテリー』
二屋(流石にこんなボール球には手を出してこないみたいだけど…)
二屋(頭の中ではいつ遅い球が来るか…ストレートの次はチェンジアップなんじゃないか…そう考えてるんじゃないのかにゃ?)
二屋(もう一本ストレートだにゃ)
ヒュン
響「やぁっ!!」キンッ!!
二屋「に゛ゃ!?」
小鳥『引っ張って打ちました! レフト前!』
P『響の頭には、初回のことなんてもう残ってないようですね』
赤場「先輩!」ヒュッ
桐生「ああ」パシッ
響「おっと」
小鳥『返球が早い! 一塁でストップ!』
P『しかし、ノーアウトでランナーが出ました。これはいけますよ』
小鳥『さぁ、次のバッターは二番ファースト伊織ちゃん!』
ワァァァァァァァ!!
伊織「もう、律子の奴…この伊織ちゃんにこんなことさせるなんて…」
スッ
小鳥『伊織ちゃん、最初からバントの構えです』
P『セオリー通りですね。この後はクリーンナップですから、ゲッツーは避けたいところ』
二屋(さっきはまずったにゃ…でも、こいつがバント狙いなら話は簡単だにゃ)
響「………」ジリジリ
二屋(あの程度のリード、あの程度の足なら…当てさせても二塁で刺せるにゃ)
筒井「」グッ
二屋「」チラッ
響「」タッタッ
二屋(もっと全力で走らなきゃ駄目にゃ! ワンアウトいただきだにゃ!)
筒井「ふっ」シュビ!
ギュン!
小鳥『投げました!』
伊織「高い…!」グッ
小鳥『伊織ちゃんバットを…』
グイン
伊織「…!」
パンッ!
審判「ストライク!」
伊織「伸…伸びた…!?」
小鳥『あっと、これは高い! 当てられません!』
響「うぎゃ!? ま、まずいぞっ…!」ダダダ
筒井「二屋!」
小鳥『これでは単独スチールの形に…え!?』
二屋「にゃ…」グッ
筒井「何!?」
小鳥『あれ、しかしキャッチャー投げない!』
響「あれ?」ズザザ
小鳥『響ちゃんは楽々二塁到達! これはどうしたことでしょう?』
P『これはバッテリー間の意識のズレのせいですね』
小鳥『えーと? つまり、どういうことです?』
P『投手の筒井選手は当てさせず、なおかつ二塁で刺せると思って投げていました』
小鳥『実際、今のはちゃんと投げてれば刺せるところでしたよ』
P『ですが、捕手の二屋選手は伊織のバント処理を意識していたのでしょう。多分、サインは真ん中に出ていたんじゃないでしょうか』
P『それが、高めに来た。そして球はバットに当てさせることなくミットに収まりました。二屋選手にとっては予想外のことだったのでしょう』
P『結果はこうです。今のプレイ、バッテリー間で上手く連携が取れていませんでした』
二屋「う…」
P『伊織がちゃんと当てられれば何も問題はなかったんですけど。それならワンアウト二塁…あるいはワンアウト一塁になっていたかも』
伊織「う、うるさいわね!」
真「まぁまぁ伊織、結果的にはよかったよ」
伊織「アンタもうるさい!」
小鳥『ノーアウト二塁! ピンチの後にチャンスが巡ってきました765プロ!』
P『しかも響が刺されない限りは4番まで回ります』
二屋(今のは…全部うちのせいだにゃ)
二屋(ワンアウト一塁にするよりは塁から出たランナーを刺せた方がいいにゃ…)
筒井「………」
二屋(そして、筒井にはそれができた)
二屋(エースを信用できなくて、女房役はつとまらんにゃ)
伊織「このままランナー帰してやるわ」
小鳥『伊織ちゃん、バントの構えをやめヒッティングに行きます』
P『相手は格上、確実に点を取りたいのなら三塁に送るのもアリだとは思いますけどね』
審判「ボール!」
審判「ボール!」
小鳥「連続でボール! ワンツー!」
P「今の時代、ツーワンと言うらしいですが」
小鳥「こっちの方がわかりやすいと思います!」
ヒュン!!
伊織「この…!」ブンッ
パンッ!
審判「ットライクッ!」
小鳥『空振り! 追い込まれました!』
ヒュッ
小鳥『5球目!』
伊織(これは…低い? いえ、でも入ってるかも…)
伊織(見逃してアウトになるくらいなら…)
カンッ
小鳥『当てました! 転がした! 当てただけのバッティングです!』
響「うおりゃー!」
P『でも、響が走っています』
パシッ
隠出「うーむ…」
ヒュッ
小鳥『セカンドが拾いますが、三塁は間に合いません、一塁に投げます!』
一塁審「アウト!」
小鳥『一塁はアウト! 伊織ちゃん、結果として三塁に送った形となりました!』
真「ナイスバント、伊織」
伊織「うるっさいわね! これで点取れなかったら承知しないんだから!」
真「うん、頑張るよ」
小鳥『さぁ、次からはクリーンナップ! 三番ショート真ちゃん!』
キャー!! キャーキャー! ヒュゥゥゥゥゥー!!
小鳥『あっと、これは…!?』
バーン
小鳥『南六高、前進守備です! これ以上は、1点もやらないという意思表示でしょうか!』
P『強気ですね…』
真(とにかく、思いっきり振ろう)
真(外野フライなら点になるし…ゴロになっても前進守備なら抜ける可能性は上がる)
筒井「………」
審判「ストライク!」
審判「ボール!」
小鳥「まずはポンポンと投げ込み1ー1」
ヒュッ
真「」グッ
真「はっ!!」キィン!!
筒井「!」
小鳥『真ちゃん、打ちました! が…』
キュルルルル…
小鳥『少し力負けしたか、これはライト線へのファールフライです!』
松尾「」タッタッタ
小鳥『ライトの松尾さんが追いつく!』
筒井「捕るな!」
松尾「!」ピタッ
ポテン
一塁審「ファール!」
小鳥『これは捕らない! 落としました! ファールです!』
P『今のはきわどいところですね、捕ったと同時に三塁の響が走って、ギリギリ間に合うかどうか…』
小鳥『タッチアップで点になる可能性があるなら、落としてファールにする…よくあるプレイです』
松尾「まったく、うちのエースは…」
真(こっちを舐めてるわけじゃない)
真(むしろ、そうでないからこそ1点もやりたくないんだ)
小鳥『2ストライクから、次の投球は…』
ギュン!
真「わ!?」ビクッ
パァン!
小鳥『内角への、ぶつかりそうになるボール! 真ちゃん、思わずのけぞります!』
ブーブー!! ブーブー!!
P『観客席の女性ファンからブーイングが飛んでいます』
小鳥『み、みなさん! 落ち着いてくださーい!』
P『再び並行カウント』
真(内角球でのけぞらせるってことは…)
真(次は外角のきわどい球だ! ちょっとくらいならボールでも打つ)スッ
響「」コクッ
小鳥『真ちゃん、響ちゃんに静止のポーズ』
P『前進守備ですからね。無理して突っ込む必要はないですよ、内野抜けたら戻って来ればいい』
小鳥『筒井さん、セットポジションから…』
筒井「」ビシュ!
ギュルン!!
小鳥『投げた! ボールは外角に…』
真(よし、ドンピシャ…!)クッ
スパァ!
真「!」ブルン
パシッ
審判「ストライク! バッターアウト!」
オオオオオォォォォ!?
小鳥『ああっと! 真ちゃん、三振! 三振です!』
P『大きく曲がりましたね。初回にやよいに使ってたのと同じボール…』
真(カ…カーブ…!)
真(なんて変化だ、外角に来たと思ったら、懐まで飛び込んで来たぞ…)
小鳥『なんというカーブなんでしょう! これを打てるのでしょうか!?』
P『まぁ、相手は全国優勝投手ですから。一筋縄では行きません』
小鳥『しかし、次は初回にツーランホームランを打っている美希ちゃんです!』
P『さぁ、ヒットは出るのか』
小鳥『ここは、なんとしても…』
審判「ストライク! バッターアウトッ!」
P『え…』
美希「あふぅ」
小鳥『な、なんと美希ちゃん、あっさり三振してしまいました!? 二者連続です!』
P『別人だ…さっきとは…』
審判「チェンジ!」
小鳥『ワンアウトでランナー三塁まで送りましたが…点を取れません、765プロ!』
小鳥『次は4回表、折り返し地点まで来ました!』
春香「あれ? 折り返し地点って…野球は9回までじゃ?」
律子「女子野球ではプロでも7回までよ」
小鳥『南六高の打順は4番サード白馬さんから』
白馬「………」ゴゴゴゴゴ
P『…チャンスのうちに、点は取りたかったですね』
小鳥『まぁまぁ、まだリードしてますし』
響「気を取り直して…いくぞっ」ヒュッ
小鳥『響ちゃん、一球目を、投げ…』
白馬「」ゴォッ!
キィィィィン!!
響「え!?」
貴音「な…」
小鳥『あ… ………』
白馬「………」
ポイッ
小鳥『白馬さん、バットを投げゆっくりと歩き始めました』
ゴォォォッ
亜美「うおおおおおーっ!!」タタタタ
小鳥『た…高い…非常に高く上がっております! 亜美ちゃんが必死に追いかけます』
亜美「」クルッ
小鳥『追いつきました! 落下点に立ちます!』
亜美「」タ…タッタッ
小鳥『い、いえ、バック走に移りました! まだ後ろです、打球が落ちない、まだ落ちてきません!』
亜美「わ!」ドンッ
亜美「あれ、もうフェンス…」
P『野球には、流れがある…』
コーン
P『今、流れはもう…南六高だ』
アァァァァ…
小鳥『は、入った、入っちゃいました!』
小鳥『なんということでしょう! 響ちゃん、初球をスタンドまで運ばれてしまいました!!』
響「うぁ…」
白馬「」トンッ
小鳥『ソロホームラン、ベースを踏んでこれで同点です! あっさりと同点に追いつかれてしまいました!』
春香「」タッタッタ
小鳥『おっと、ベンチから春香ちゃんが出てきました』
P『伝令でしょうか』
真美「」ガシッ
雪歩「」ガシッ
春香「」ズルズル…
小鳥『真美ちゃんと雪歩ちゃんにベンチの中まで引っ張られていきました』
P『なんだったのでしょう』
ワー ワー
響「………」
響(そんな…せっかく、リードしてたのに…)
貴音「響」ヌッ
響「わっ!?」
小鳥『放心の響ちゃんのもとに、貴音ちゃんが駆けつけています』
響「たかね…ホームラン打たれちゃった」
貴音「そうですね。ですが、まだ同点ではないですか」
響「でも…」
貴音「…このまま逆転されますか?」
響「!」
貴音「取られてしまったものは仕方ありません。ですが、これ以上取られれば逆転を許すことになる」
響「………」
貴音「次を取らせないようにしましょう。響、行けますね?」
響「…うん」
審判「プレイ!!」
小鳥『さぁ、試合は振り出しに戻り次のバッターは、5番キャッチャー二屋さん!』
二屋「このまま逆転にゃ」
響(そうだ…)
響(このまま点を取られたら、逆転…765プロは負けちゃうんだ!)
響(自分が頑張らないと…!)グッ
ヒュン!
バシン! バンッ! バンッ! スパン!!
審判「フォアボール!!」
響「…!」
二屋「うにゃ、儲けたにゃ」ポイッ
小鳥『響ちゃん、ストレートのフォアボール! ノーアウトからランナーを歩かせてしまいました!』
P『先程のホームランが頭に残っているのでしょうか』
小鳥『ノーアウトで逆転のランナーが出て大ピンチの765プロ!』
小鳥『南六高の次のバッターは6番ショート桐生さん!』
桐生「よし、続こうかな」
P『このままズルズル行けば逆転も有り得ますよ』
響「う…」
貴音「」スッ
響(え!?)
貴音「………」
響(ど…ど真ん中!? 駄目だって、そんなの!)フルフル
小鳥『響ちゃん、サインに首を振ります』
貴音「………」
響(ミットの位置は…動かない…)
貴音「………」
響(た、たかねぇ…)
響(もう…)スッ
小鳥『響ちゃん、足を上げて…』
響(知らないからな!)ビシュ!
小鳥『投げます!』
桐生「ド真ん中? プレゼントかい?」
キンッ!!
小鳥『初球打った! 強烈なゴロが三遊間を襲う!』
響(ああっ、やっぱり打たれ…)
真「はぁっ!!」バシィ!!
小鳥『おっとぉ! 真ちゃん、横っ飛び! 飛びついて止めました!』
響「!」
二屋「足からで大丈夫かにゃ…」ズザザ
小鳥『一塁ランナー、二塁に滑り込む!』
真「っとぉ…」ムクッ
真「ふっ!」シュッ
小鳥『真ちゃん、体勢を立て直し一塁に投げます!』
P『ギリギリか…』
コォォォォ
伊織「低っ!」パシッ
桐生「」トンッ
小鳥『伊織ちゃん体を伸ばして捕球! しかしバッター一塁到達!』
P『きわどいが、これは…』
一塁審「アウトォ!」
小鳥『アウトです! 一塁フォースアウト!』
P『あの体勢からいい送球でした』
ワァァァァァァ!!
桐生「やるぅ」
律子「よしよし、これよ。これよこれ」
やよい「ないすしょーと!」
真「響! あとアウト2つ!」
響「………」
響(そうだ、点を取らせないってのは打たせないのと違う)
響(打たせないのが一番安全かもしれないけど…そんなのムリに決まってる)
小鳥『7番セカンド隠出さん』
響(打たせて取る…それが野球の基本だ!)ヒュッ
審判「ボール!」
審判「ボール!」
響「………」グッ
ビシュ!!
隠出「」キンッ!
小鳥『2ボールから、すくい上げた!』
やよい「はわっ」ピョイン
小鳥『あっと、これはセカンドの頭上越えます! ヒットです!』
P『上手いところに落としましたね』
亜美「やっ、と」パシッ
小鳥『これで一三塁です!』
やよい「あぅーっ、ごめんなさい…」
響「大丈夫大丈夫、なんくるないさー」
響(まだ点を取られたわけじゃない…)
小鳥『7番レフト赤場さん』
響(打たれても、ランナーを帰さなければ失点はないぞ!)
バシン!!
審判「ストライク!」
貴音(いい感触です、響)
クンッ
赤場「わ…」ピタ…
バシ!
審判「ボール!」
小鳥『落としました、これはボール』
P『三塁ランナーがいるのに強気ですね…』
貴音(気迫のこもったいいボールです)
ヒュン!!
赤場「ど真ん中…」グッ
カキィィィン!!
貴音(この球なら…)
ギュィィィィン
小鳥『強烈! ライナーが三塁線に…』
パァン!!
美希「っと」
赤場「な…」カラン
貴音(捉えても、こうなる!)
小鳥『美希ちゃん、真上を通るライナーを華麗に捕球しました!』
二屋「うにゃ…!」
響「やった!」
小鳥『ランナー飛び出…』
美希「あふぅ…これでベンチに帰れるの」ポイ
小鳥『して、いる…これでダブル…』
P『………え?』
小鳥『み、美希ちゃん…ボールを、三塁コーチャーボックスに投げました…』
美希「あふぅ」スタスタ
二屋「………」タッタッタッタ
美希「?」
真「うおおおっ!!」ガシッ
二屋「や、やった…」トンッ
真「く…」
小鳥『真ちゃん、追いかけていってボールを拾いますが、投げられません! 三塁ランナー、悠々とホームイン!』
P『これで同点…』
美希「あれ?」
真「み、美希…」
美希「これ、どうしたの、真クン?」
真「まだ、ツーアウト…」
美希「あー…」
>>138
>P『これで同点…』
P『これで逆転…』
小鳥『一塁ランナーは二塁に進んでおります、ツーアウト二塁! 依然ピンチが続きます!』
美希「響、ごめんなさいなの」
響「もー! 正直、こういうのは勘弁してほしいぞ!!」
小鳥『次のバッター、9番ピッチャー筒井さん』
筒井「…悪いけど、もう一点貰うわ」
小鳥『先程フェンス直撃のヒットを打った筒井さん…』
小鳥『本来なら追加点なしでチェンジだったこの場面、響ちゃんは大丈夫なのでしょうか!』
P『大丈夫なのでしょうかって』
キン!
パシッ
美希「デコちゃん!」ヒュッ
伊織「デコちゃんゆーな!」パシン
一塁審「アウト!」
P『心配なんてしてないでしょ』
小鳥『美希ちゃんがあっさりゴロを捌いてアウト! チェンジです!』
響「よしっ」
筒井(さっきとは…全然投球が違った、我那覇響…)
筒井「…フン」
響「って、よしじゃない! 逆転されてる!」
貴音「取られたら取り返せばいいではないですか」
あずさ「美希ちゃん、ちょっとは落ち着いたかしら?」
美希「へ? 何が?」
伊織「しっかりしてよ。アンタが4番なんだから」
美希「…ねぇ。ミキ、そんなにだらしなく見えた?」
やよい「へ? えーっと…」
真「次の回、やよいからじゃない?」
やよい「はわっ、そうでした! いってきまーす!」
美希「うーん…」
小鳥『さぁ4回ウラ、765プロの攻撃です!』
小鳥『先頭バッターは5番セカンドやよいちゃん!』
やよい「よろしくお願いしまーす!」ペコリ
ワァァァァァァァ!! アアアアァァァ!! ヒューヒュー!
やよい「」グッ グッ
小鳥『つま先を立てて、前の打席と同じ構えです』
P『まずはコツコツと単打狙いと言ったところでしょうか』
筒井「………」
小鳥『やよいちゃんは先程は三振してしまいましたが、今度の打席は打ってほしいところ』
P『緩急には上手く合わせていましたからね。カーブがあるとわかった今どう対応してくるか』
律子「先頭打者が出るかどうかで得点率は大きく変わってくるわ」
春香「律子さん、そろそろ代打行きません?」
律子「頼むわよ、やよい…」
筒井「」ポン ポン
小鳥『筒井さん、ロージンバッグを左手に塗っています』
二屋(初球からカーブ…もっと深く植え付けとくにゃ)
筒井「」コクリ
スッ
小鳥『さぁ、ワインドアップの姿勢から』
ビシュゥ!!
小鳥『投げました、これは!』
ギュルルッ!
やよい「………」
スパァ!
審判「ボール!」
筒井「ん」
二屋「ん?」
小鳥『カーブです! なんという変化! 初球から使ってきました!』
P『あのカーブを、どう攻略するのかがカギになりそうです』
二屋(今の見逃し方…)
やよい「ふぅーっ」
二屋(…もう一球、同じとこに)
筒井「………」
ビシュッ!
やよい「………」
パオンッ!
審判「ストライク!」
二屋(全く打つ気が感じられない…)
やよい「うぅー」
二屋(こいつ、カーブは捨てる気かにゃ…?)
二屋(だったら、お望み通りカーブを続けてやるかにゃ…?)
筒井「………」
二屋(いや…)
二屋(今日の筒井のカーブはよくにゃい…)
二屋(いや、よすぎるにゃ…! 曲がりすぎてコントロールが定まってにゃい)
二屋(今だって、同じところと言ったのにストライクに入ってきたにゃ…)
やよい「ふーんふーん♪」
二屋(こいつには万が一打たれても大怪我にはならんにゃ)
二屋(打たせる…)スッ
二屋(ただ、入れるのは変化球だにゃ…次の球種はシュート)ピッ
筒井「………」スッ
小鳥『筒井投手、腕を上げ…』
ヒュン!!
小鳥『投げました!』
やよい「」ブルン
クッ
やよい「!」
ガッ
二屋(あれ…)
二屋(リーチが短い分綺麗に入った…? まずくないかにゃ…これは)
やよい「うっうーっ!!」グッ
キィィィィィン!
ドッ
小鳥『左中間割った! 割りました! これは長打になります!』
赤場「おおおっ…」
パシッ
小鳥『レフト追いつきました!』
赤場「たぁっ!」ヒュッ
桐生「」パシッ
小鳥『中継まで回しますが…』
やよい「」ザッ
小鳥『これは悠々セーフ! 二塁到達、ツーベースヒットです!』
二屋(何やってんだにゃ…)
二屋(打たせると決めたら筒井を信じて直球で行くべきだったにゃ…)
二屋(変に欲を出すからこうなるんだにゃ)
ペコッ
P『キャッチャーの二屋選手が頭を下げましたね』
小鳥『?』
二屋(次、次!)
相手の日野の元ネタって、ファミスタのピノだったり?
>>148
南六高のメンバーの名前は全員ファミスタの初代ナムコスターズから来てます
>>149
そうなのかー
足が速いってことでピノだけは分かったけど、ファミスタはほとんどやらないから他のメンバーもそうだったとは…
面白いしどうなるか期待
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