しえな「武智が見舞いに来た」 (23)
目を覚ましてから、数日が経った。
”目を覚ましてから”というのは、別に”朝起きたら”という程度のものではない。目を覚ましてからの前には”逆に暗殺されそうになって”という一文が付く。
とにかく、腹立たしくも自分が情けないが。結果としてこうなってしまった以上、考えるのはこれからの事だ。
暗い思考を切り替えて、未来について考えよう。
そう、今回の件は全て忘れ……
『しえなちゃーん! お見舞いにきたよ~っ!!』
病室のドアを無遠慮に開け、当然のように乗り込んできたのは……今まさに記憶から抹消しようと思っていたモノの、一つだった。
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乙哉「やっほーしえなちゃん。元気してた?」ニコ
しえな「……」
しえな「どうしてお前がここにいるんだ」
乙哉「走りから連絡あってさ~『剣持さんが善戦の末、敗北したっス。なので励ましてやってください』ってね♪」チョキチョキ
しえな「あの女……」ハァ
しえな「あと、そのハサミはなんだ? 早くしまえ 」
乙哉「『励ましてやって』なんて言われたら、あたしとしてはとりあえずカットでしょっ」アハ
しえな「……」
しえな「ボクは病人なんだ。見舞いはいいから帰ってくれ。そして二度と来るな」シッシ
乙哉「あ~、激闘の末倒れたんだから疲れてて当たり前だよねー。わかるよ、うんうん」
しえな「……」
乙哉「で、どうだった? 東。強かったっしょ」ニコッ
しえな「……」
しえな「……ま、まあまあだったな」
(´;ω;`)ウッ
乙哉「おー、あたしもそこそこやったつもりだけど。しえなちゃんはどう闘った?」
乙哉「ハサミのみでヤったあたしと違って、しえなちゃんなら色々考えたんでしょー??」
しえな「っ」
しえな「そ、そうだっ」
しえな「ボクは、演劇をやることになった黒組で演出を引き受け……それぞれの癖や特徴など情報を集めに集めた…っ!」
乙哉「さっすが。賢いなあ、しえなちゃんは」アハッ
乙哉「……それで、どう”善戦”したの?」
しえな「っ……」
しえな「そ、それはだな……」
乙哉「アイツってさ、格闘だけじゃなくナイフの扱いも上手くなかった? 本当、噂通りの実力だったよね~」
しえな「そ、そうだな」
しえな「……あのナイフはヤバかった。卑怯だよ本当」ウンウン
乙哉「本当、切り傷中々癒えないんだよねえ」
乙哉「ん?」
乙哉「……しえなちゃん」
乙哉「パッと見、無傷に見えるんだけど気のせいかな」
しえな「!」
しえな「あっと、えと……」
しえな「……アイツ、ナイフ投げてこなかった? 暗闇だったから、ボクを狙いにくかったんだろうな。幸い当たらずに済んだ」
乙哉「へえ……」
しえな「……」
乙哉「そうなんだ。それはラッキーだったね!」ニコッ
しえな「あ、ああ……」ズキ
乙哉「それならさー…」
乙哉「最後は何でヤられたの? あたしの場合は晴ちゃんに邪魔されてさー」プンプン
しえな「……そ、そうソレ。一ノ瀬」
しえな「ボクもアイツに邪魔さえされなきゃ… 看護士「はい剣持さん、容態はどうですか~」
しえな「……」
看護士「少し前まで毒が効いていたんですから安静にしていてくださいねー」
乙哉「……」
……
看護士「それじゃあ、お大事に」ペコッ
ガチャンッ
乙哉「……”毒”?」
乙哉「えっ、晴っち ”毒”使ってきたのっ!?」
しえな「~~」ダラダラ
アニメしえなちゃん回だったのか
乙哉「”白兵戦最強”に”毒使い”って」
乙哉「裏の世界でも通用するコンビじゃん。手強すぎでしょ!」
しえな「……」サアァ
しえな「あ、あのな……? 武智…」
乙哉「でも……」
乙哉「その二人とやり合って奥の手まで出させたしえなちゃんって、本当にスゴイとあたしは思うよっ!」パアァッ
乙哉「やるだけやってダメだったんだから、もうこの内容に胸を張っていこうよ! ねっ?」ニコ
しえな「……」
しえな「あ、ああ……あの毒は…強烈だったな(本当)」
乙哉「へぇ~、まああたしの時は麻酔効果のある花を使ってきたなぁ」
しえな「”毒使い”?」
乙哉「うん、”毒使い”」
しえな「でも……桐ヶ谷のやつ、覚えてろよ」
乙哉「ん? 晴っちの話でしょ??」
しえな「えっ」
乙哉「えっ」
乙哉「柩ちゃんがなんか関係あるの?」
しえな「そ、それは……」
乙哉「もしかして、毒と関係ある……とか?」
しえな「っ」
乙哉「そしてしえなちゃんはほとんど戦闘してないとか?」
しえな「……武智?」
乙哉「そもそも戦闘どころか予告票見せる前にヤられちゃったとか??」
しえな「お前……知ってたな!?」
ガタッ
乙哉「やだなーそんな怒んないでよ~」アッハッハ
しえな「おい! 待てこら!!」カアァ
……
ハァ、ハァ…
乙哉「いやー、からかい甲斐があるなぁしえなちゃんは」アハハ…
しえな「くそっ、体調が万全だったら……」
しえな「……そもそも、知っててどうして来た? 嫌がらせか??」フン
乙哉「やー……違うよ」
乙哉「……しえなちゃん、落ち込んでるだろうなと思ってさ」
しえな「……っ」
乙哉「ほら、言ったじゃん? はじめに」
乙哉「……”カットしにきた”って」
乙哉「しえなちゃんの事だから、忘れようとして胸の奥に仕舞い続けるんだろーなーって、考えてさ」
乙哉「その暗い気持ち、カットしてやろうと思って」ニコッ
しえな「……武智」
乙哉「スッキリした? ……あたしは、しえなちゃんの事が大好きだから」ヘヘ
しえな「……ま、まあ…」
しえな「…………ちょっとだけ、な」ポリ
しえな「……ここだけの話、な」
乙哉「?」
しえな「武智が寮部屋の中でチョキチョキやって、家具とかに少し痕が残ったりしていたんだが…」
しえな「……お前がいなくなってからも、その切り痕を見てボンヤリしていてさ」
しえな「いま思えば寂しかったんだろうな……」
しえな「だから、こうして再びお前と会えて……ボクは嬉しいよ」ニコッ
乙哉「っ」ボッ
しえな「? どうかしたか??」
乙哉「い、いや……なんでもないよ」カアァ
しえな「大丈夫か? 幸い、ここは病院だから…」
乙哉「だから大丈夫だって! それ以上近づくとバラすからっ」
しえな「たく、わからんやつだな……」ハァ
確かに、ボクは恥ずべき退場の仕方をした。
それは武智の言う通り、吐き出さなければ胸の奥にずっと引っかかっていたものだろう。
乙哉「ちょっとタンマっ、なんかダメなんだって。顔がちーかーいーっ!」カァ
しえな「むう、これではまるでボクがいじめをしているみたいじゃないか」プン
あの学園生活で、何かを成す事は出来なかったかもしれない……。
しかし、得たものはあったようだ。
……室内に咲く2つの笑顔が、その証明なのだろう。
<了>
しえなちゃんと武智さんは、目線が違っても同じ道を歩けるはずだと思っています。
乙です。
乙ッス!
とてもよかった。
また書いて欲しいッス
>>1の優しさが泣ける
おっつ!
しえ乙いいな前に乙晴とかあったが全然こっちが良い
内容もとても良かったよ
乙!
退場した2人の元気そうな姿を見れて嬉しい限りです
同室カプは素晴らしいな
乙乙
アニメのしえなはかませとも言えない程見せ場無いからなあ乙
予告状見せてなかったからノーカンでもよかったのに鳰たそきびしい
このSSまとめへのコメント
普通にいい話だった…乙しえイイナッ!