ガチャッ
乙哉「あっ、しえなちゃんおっかえりー!」チョキンチョキン
しえな「……」
パタン
乙哉「ええっ!?ちょっとなんで閉めるの!?しーえーなーちゃーん!!」チョキンチョキンチョキンチョキンジャキン
しえな「な、なんでじゃない!まずはその物騒な物をしまえ!!」
乙哉「えぇー…」チョキ
しえな「えー、じゃない!帰って早々部屋にハサミ振り回してる奴がいたらびっくりするだろ!!」
乙哉「いやぁー、ごめんねぇ?最近なーんモヤモヤしちゃってさ。よっきゅーふまん?ってやつ?」
しえな「知らないよ…ったく。花でも切ってろ」
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乙哉「んー…あっ、しえなちゃんしえなちゃん」
しえな「ん?」
乙哉「しえなちゃんさー、ちょっと髪伸びたんじゃない?」
しえな「あぁ、そういえば……って、なんだその目は」
乙哉「おさげ切らせ「死ね」
乙哉「ちぇーっ、つれないなぁ」
しえな「いやいや、つられてたまるか」
乙哉「こんなに頼んでるのに?」
しえな「……そんなに頼まれてないぞ」
乙哉「おーねーがーい!!あたし結構上手いよ?ほらほら!見てよこのハサミ捌き!」チョキンチョキン
しえな「うわっ!だから危ないって!」
乙哉「ねっ、先っちょだけ!先っちょだけで良いから!」
しえな「多分それ信じちゃいけない言葉だろ…。とにかく、駄目なものは駄目だ」ハァ
乙哉「……」
乙哉「分かった」
しえな「ほっ。分かってくれた……かっ!?」ドサッ
乙哉「なーんて、う・そ」シャキン
しえな「なっ!?…ちょっ、武智…っ」
乙哉「んふふふふ。しえなちゃん、ほーんと可愛いよねぇ。ぁっ…おさげだけじゃ足りないかもぉ…///」
しえな「…や、やめろ…」
乙哉「たーっぷり、可愛がってあげる………にゃっ!?」バシッ
乙哉「…ったたた……酷いよしえなちゃん!乙女の顔を台本で殴るなんて」
しえな「酷いのはどっちだ!!本当にヤられるかと思ったぞ!」ゼーハー
乙哉「あはっ!うん、本当にヤるつもりだったからねーあはは」ペロッ
しえな「………」ゾクッ
乙哉「ん?しえなちゃん?…おーい!しえなちゃーん?」
しえな「……も……や…」
乙哉「しえなちゃん?」
しえな「もう嫌だ!!こんなシリアルキラーと同じ部屋にいられるか!ボクは出て行かせて貰う!!」ダッ
乙哉「しえなちゃん、それフラグ………って、行っちゃった…」
乙哉「……」
乙哉「………花でも切ってこよう」
廊下
しえな「…ったく、武智の奴いつもいつも…ボクのおさげを何だと…」ドンッ
柩「わっ…」
しえな「…っと、すまない!」
柩「…あ、いえ。こちらこそ」
千足「平気か?桐ヶ谷」
柩「大丈夫ですよ。千足さん」ニコッ
しえな「……」
千足「?…剣持?」
しえな「あ、いや、4号室は本当に仲良いなぁと思ってな…」
柩「ふふっ。否定はしません」
千足「…武智と何かあったのか?」
しえな「…ん、まぁ…」
しえな「……あんなんじゃおさげが何本あっても足らないよ」ブツブツ
千足「?(おさげ…?)何があったかは知らないが、確かにシリアルキラーと一緒じゃ落ち着かないだろう。何かあったら相談くらいは乗ろう」
しえな「………ボクも生田目みたいな無害そうな奴と同室が良かったよ…」
柩「それは駄目です」
しえな「!?」ビクッ
千足「…桐ヶ谷?」
柩「駄目に決まってます。ねぇ剣持さん?」ニコ
しえな「……あ、あぁ。そうだな」ゾッ
しえな(な、何だろう…この威圧感は……)ブルブル
柩「じゃあ、ボク達はこれで」
しえな「あ、あぁ…」ホッ
柩「剣持さん…気を付けて下さいね(発言には)」ニコッ
しえな「…!」ビクッ
しえな「ふー……桐ヶ谷…侮れないな」ドキドキ
「兎角さんっ、たまにはカレー以外も食べなきゃ駄目だよ!」
「カレーは完全食だ。問題無いといつも言ってるだろ」
「お二人さん、これから食堂ッスかぁ?ウチもお供するッスー!」
「お前は来るな」
「えぇー、酷いッスよぉ」
「…と、兎角さんってば……あっ」
晴「しえなちゃん!こんばんは」
しえな「あ、あぁ…一ノ瀬と東か」
鳰「ウチもいるんスけど…」
兎角「呼んでないだろ」
鳰「えぇーっ!兎角さん冷たぁーい!!」
兎角「うるさい」チッ
しえな「……いじめは…いややっぱ良いか」
しえな「…なんだかんだ仲良さそうだな…」
兎角・鳰「!!」
鳰「えー?やっぱりそう見えるッスかぁ?」
兎角「お前は黙ってろ。おい、剣持!どこをどう見たらそうなるんだ!」
晴「ま、まぁまぁ兎角さん。仲良しは良い事だよ」
兎角「一ノ瀬っ」
晴「そういえば、しえなちゃん一人?武智さんは…」キョロ
しえな「…あいつの話しはしないでくれ」
鳰「んん?もしかして喧嘩ッスかぁ?同室なんだし仲良くしなきゃ駄目じゃないッスかー」
兎角「じゃあ、私とお前は同室じゃないから仲良くしなくて良いな」
鳰「兎角さぁん!それはあんまりッスー」
晴「……本当に喧嘩なら仲直りしないと。晴、協力しますよ!」
しえな「いや、別に喧嘩って訳じゃ…あいつの性癖にいよいよ呆れただけだ」
晴「せ、せーへき?」
鳰「あぁー、武智さんは特殊ッスからね。一々躱すのも身が持たないっしょー!いやぁ大変ッスねー」
しえな「走り、お前楽しんでないか?」
鳰「そんな事ないッスー!でも本当に嫌なんスかぁ?」
しえな「は?」
鳰「嫌よ嫌よも好きの内って言いますし、ウチと兎角さんみたいに!ねぇ?兎角さん!」
兎角「死ね」
しえな「…」
しえな(嫌よ嫌よも…?)
やべっ鳰ちゃんは乙哉さん呼びだったわorz
しえな「いや、ないだろ。そんなんで命かけられるか」スパッ
鳰「うわっばっさりッスか!」
晴「しえなちゃん!」ズイッ
しえな「!…な、なんだ一ノ瀬」
晴「あ、あのっ、武智さんにだって良い所あるんだよ!」
しえな「……そうか?」
晴「は、ハサミ上手いし!!」
しえな「今正にそれで困ってるんだが」
晴「…で、でも武智さん、しえなちゃんの事大好きみたいだし」
しえな「は?武智が、ボクを?」
鳰「確かにー。乙哉さんよく言ってるッスよ?黒組は美少女揃いだけどしえなちゃんが1番だーって」
しえな「……でも、武智はすぐボクのおさげ切りたがるし……ていうか、おさげしか見てないぞ!?」
鳰「本当にそれだけなら許可なく切ってるッスよー。寝てる間にちょきんッスよ!ちょきんっ!」チョキチョキ
しえな「…」
鳰「まぁ、要はあれッスかねー。あ・れ!」
しえな「あれ?」
晴「あれ、だね」クスッ
晴・鳰「「好きな子ほどいじめたい!!」」
鳰「ッス!」
しえな「は……はぁ!?」
しえな「ぼぼぼ…ボクはいじめを許さないぞ!」
晴「でも、しえなちゃんだって分かってるんじゃないかな?武智さんが本気で意地悪してる訳じゃないって…」
しえな「…」
しえな(……そういえば、さっきだってそんなに…)
晴「武智さん、きっとしえなちゃんに構って欲しいんだよ。もう少し、武智さんの事ちゃんと見てあげたらどうかな?」
しえな「…武智の事」ボソッ
兎角「おい、いつまでお喋りしてる。もう行くぞ」
晴「は、はーい!しえなちゃんも一緒にどう?」
しえな「いや、ボクは…」
晴「…そっか。じゃあ、また明日ね」タタタッ
鳰「待って下さいッスー!」
兎角「帰れよお前」
しえな「……」
しえな「武智の事……」
部屋
ガチャッ
しえな「……」キョロ
しえな「武智…は、いないのか」
しえな「ん?……ボクのベッドに何か…花?」ヒョイッ
ヒラッ…
“しえなちゃん、さっきは怖がらせてごめんねー?この花、すっごく綺麗でしょ!しえなちゃんに似合うと思ったんだ”
しえな「!………武智…」
“『武智さんにだって、良い所あるんだよ!』”
しえな「……」
“『もう少し、武智さんの事ちゃんと見てあげたらどうかな?』”
しえな「で、でもあいつは…おさげがあれば誰でも…」
“『本当にそれだけなら許可なく切ってるッスよー』”
しえな「……」
しえな「……武智…」
しえな「……ま、まぁ、花に罪は……」
しえな「………ぅ?」クラッ
“この花、ゲルセミウム・エレガンスって名前なんだよっ☆”
ドサッ
しえな「」zzZ
大浴場・脱衣所
乙哉「うーーーん……やっぱ違ーう…」
伊介「うわっ、伊介にこんな事しといて何それうざーい。殺しちゃおっかなぁ」
春紀「まぁまぁ、伊介様だけじゃないからさ」
涼「ふむ……香子ちゃんは似合うと思うんじゃが」
香子「……よせ、首藤」ゲンナリ
乙哉「なんか惜しい…」
伊介「むかつくぅー」
ガラッ
真夜「俺様登場!」
真夜「……って、うわっ何だこりゃあ!?」
乙哉「おっ、やっほー!番場ちゃん」
真夜「やっほー!……じゃ、ねぇ!一体なんだって皆おさげになってんだ?」
乙哉「可愛いかなーって」
伊介「もう、やってらーんないっ。髪に癖付いちゃう」パサッ
春紀「あ、結構可愛いかったのに」
伊介「!…ふっ、ふんっ////」
涼「わしだけ髪が短くて残念じゃ……どうじゃ?番場もしてやろうか?」
真夜「悪くねぇな…皆でお揃いの髪型にするのも真昼の夢なんだ」
涼「香子ちゃん、ゴム貰うぞ」アミアミ
乙哉「……」
乙哉「はぁ…やっぱ番場ちゃんも違うかぁ…」
香子「さっきから惜しいとか違うとか、一体何なんだ?」
乙哉「やっぱりおさげといえばしえなちゃんだよねぇーって」
涼「そういえば剣持を見かけんのぉ。いつもこのくらいに入りに来るはずじゃが」
乙哉「ん?あっ、もしかしたら今頃部屋で寝てるかもぉ」ニヤァ
春紀「…な、何か企んでないか?」
乙哉「んー?んふふっさぁ?」
涼「…」
乙哉「さぁーて、そろそろ部屋に戻ろっかな「武智」
涼「好きな子をいじめたくなる気持ちは分かるが、あまりやり過ぎるのは関心せんぞ」
乙哉「……」ピタッ
涼「いつか本当に愛想尽かされても知らんぞ?」クスッ
乙哉「えっ」
涼「まぁ、“シリアルキラーの武智乙哉”には分からんじゃろう。やり過ぎて愛想尽かされる前には……」
乙哉「!……っや、やめてよ!!」
乙哉(あれ…?何であたし……本当の事じゃん)
涼「のぉ、武智よ。最近のお前を見るに、剣持と絡んでる時の武智は本当に楽しそうに見えるぞ?獲物を狙うシリアルキラーではなく、ただの武智乙哉として…剣持との関係を築く事を…」
乙哉「…っは?」
乙哉(何それ……それって、あたしがしえなちゃんを好きみたいじゃん。ううん、好きだよ?しえなちゃんは可愛いし……なら、好きな相手を切り刻みたいって…気持ち良くなりたいって思うのって、トーゼンじゃん…)
涼「良いのか?剣持がいなくなったら、そんな事ももう出来なくなるんじゃぞ?」
乙哉「!」
乙哉(そしたら、また別の人……そうだよ。黒組ってあたし好みの美少女ばっかじゃん…)
乙哉(でも…あれ?皆可愛いのに…おさげなのに……)
乙哉(…足りない)
乙哉「何でだろ……好きな人は、切り刻みたくなるはずなのに……いつもそうなのに…」
乙哉「しえなちゃんがいなくなるの…嫌かも…」
乙哉「意味分かんない……いつもあたしは、そうやって満たしてきたのに…」
真夜「俺は性とかよく分かんねーけど」
乙哉「!」
真夜「好きと欲求は、必ずしもイコールとは限らないんじゃねぇーの?」
乙哉「…え」
真夜「自分の快楽優先するのは、それはただの“欲求”ってんだよ。相手の事を大事にしてぇって思ったらそれが“好き”って事だ。…そんな事もご存知ねぇーの?」
乙「……そういう…もん?」
涼「そうじゃな……好きな人と、ただ一緒に同じ時間を過ごせる…それだけで充分幸せな事もあるんだと、武智はそろそろ気付くべきかもしれんな…」フッ
乙哉「……同じ、時間」
涼「なに、人生まだまだ先は長い。焦る事はないじゃろ。まぁ、それでも我慢出来なくなったら、その時は相談くらいには乗ってやるがのぅ」
乙哉「……あたし…」
乙哉「………部屋戻る…」フラ…
部屋
しえな「」zzZ
乙哉「……」
乙哉「…しえなちゃん」
乙哉「…あたし、しえなちゃんが好きなのかな」
乙哉「それとも、欲求を満たしたいだけなのかな…」
しえな「」
乙哉「ね…しえなちゃん……」シャキ…ン
乙哉「…しえなちゃん……ごめんね…」
しえな「…ん……武…智…」
乙哉「…!」
しえな「た…けち……ふふ」
乙哉「……」
乙哉「……可愛い寝顔…」クスッ
ギシッ
しえな「…んっ……はっ!?」ガバッ
乙哉「あ、おはよっ!しえなちゃんっ」
しえな「たたたたたた武智っ!?…はっ、お、おさげ…おさげは…」ワサワサ
乙哉「やだなぁー、なんにもしてないよ…………今回は」ボソッ
しえな「こ、今回はぁ!?」
乙哉「ふふっ…ジョーダン」
乙哉「それよりさぁ、どんな夢見てたのかなぁ?随分幸せそーな寝顔だったけど」
しえな「…え……あっ///内緒だ!内緒!」
乙哉「……ふぅーん?」ニヤ
しえな「な、なんだその顔……あっ」クラッ
乙哉「あ、あんまり激しく動かない方が良いよ?まだ毒が抜け切ってないみたいだし」
しえな「…誰のせいだ。誰の」
乙哉「あはは!しえなちゃん、ほーんと可愛いっ」ギュッ
しえな「わっ…!ちょっ…武智?」
乙哉「こんな気持ち、初めて……」ボソッ
しえな「…え?」
乙哉「なんでもない……もう少し、こうしてて良い?」
しえな「はっ?…駄………」
しえな「………………今回だけだぞ」
乙哉「ありがとっ!しえなちゃん大好き」
しえな「なっ……ったく///」
乙哉「ふふっ」
乙哉(…初めてなんだ……誰かを“守りたい”って、思ったの…)クスッ
しえな「……」
乙哉「♪」
しえな「……おい、武智」
乙哉「ん?なぁに?」
しえな「流される所だったが、さっきの花はなんだ!」
乙哉「あ」
しえな「あ、じゃない!!」
乙哉「いやぁー、しえなちゃんとこっそり楽しもうかなって」
しえな「……」
乙哉「ごめん……もうしないから」
しえな「…当たり前だ」
乙哉「つっ次は、ちゃんとした花贈るから……貰ってくれる?」
しえな「!……ま、まぁ…花は嫌いじゃないからな」
乙哉「良かったぁー!じゃあ、次は山百合にしよう!」
しえな「山百合?」
乙哉「そっ!…しえなちゃんは、あたしの山百合……だから」
しえな「……」
乙哉「////」
しえな「…武智、訳分からない」
乙哉「がーん」
数日後・黒組教室
乙哉「しえなちゃーん!ねぇねぇ何読んでるのー?ねぇねえ!」
しえな「暑い。読みづらい。引っ付くな!」
乙哉「相変わらずつれないなぁ…しえなちゃん」
晴「しえなちゃん達、仲直り出来たみたいで良かったね」
鳰「やっぱり、嫌よ嫌よも好きの内だったんスねー。ね!兎角さん!」
兎角「私はお前が本当に嫌いだけどな」
鳰「あぁんっ酷いッスー!」
乙哉「しえなちゃん構ってよぉー!じゃないとおさげ…」
しえな「……」ジロッ
乙哉「ほ…ほどいちゃうよ!ほらほら!」シュルッ
しえな「うわっ!やめろっ武智!」
春紀「…平和だねぇ」
一旦おわり
続くかもしれない
しえな「っ…おい武智、何かにつけてボクのおさげをほどくのやめろ!」
乙哉「えー…良いじゃんそれくらい。ほどいた後はちゃーんと編み直してるんだしさ」
しえな「落ち着かないんだよ…」
乙哉「え?…あたしがこうしてるとしえなちゃん落ち着かないの?」ギュッ
しえな「…だからそうだって」
乙哉「やーだー、可愛いー!照れてるの?しえなちゃん」スリスリ
しえな「鬱陶しいんだよっ本が読みづらい!」
涼「まぁまぁ、ハサミを振り回すよりは健全で良いではないか」
しえな「首藤…」
涼「あれから本当にハサミを出さなくなったんじゃな。…ふむ、関心関心」
乙哉「あはっ!まぁねー、その節はどーもっ」
しえな「?」
乙哉「いやぁー、にしてもあの時の首藤さんの台詞には痺れたよー!“好きな人と同じ時間を過ごせる幸せ”……うーん、確かにその通りだなって」
涼「役に立てたようで何よりじゃ」フッ
しえな「……」
しえな「……武智」
乙哉「…しえなちゃん///」
しえな「なんだ武智、好きな奴いるのか?」
乙哉「ふぁっ!?」
乙哉「し…しえなちゃん……?」
しえな「最近大人しくなったのはそれか?」
乙哉「…」
しえな「やっぱり、恋をすれば人は変わるっていうのは「ていっ」ビシッ
しえな「あだっ!いきなり何するんだ!」
乙哉「しえなちゃん…あたし、しえなちゃんのそういう鈍感で抜けてる所、結構好きだよ」
しえな「?…あ、あぁ…」
しえな「??」
涼「…」クスッ
涼「…今日も平和じゃ」フッ
香子「……」
すまん…
もう少し続く…
香子「…」
涼「ん?香子ちゃんや、どうしたぼーっとして…」
香子「!あ……い、いや、何でもない」
涼「……?」
香子「……」
香子(…好きな人と、同じ時間を……か)
香子「…」ハァ
涼「……?」
・
・
キーンコーンカーン…
乙哉「んっんーぅ!はぁー、今日も授業かったるかったなぁー。お腹空いちゃった」
しえな「…禄に先生の話しも聞いてなかった癖に何言ってるんだ」
乙哉「なぁにしえなちゃん?あたしの事見ててくれたのー?嬉しいっ!」ギュッ
しえな「わっ!だから引っ付くな!」
乙哉「良いじゃん別に。仲良きことは美しきかな…って、首藤さんも言ってたよ!」
しえな「……なんだ、最近妙に首藤に懐いてないか?」
乙哉「んふふっ。まぁ、ちょっとね。あっ、でも安心して!1番はしえなちゃんだからっ」
しえな「…別に心配なんて」
乙哉「さっ、しえなちゃん食堂行こっ!席埋まっちゃう」
しえな「聞けよ」
鳰「ウチも頭使ってお腹空いたッスー…」
兎角「お前寝てたろ」
鳰「あっ、なんスか!?ウチの事見て…「ない」
鳰「ばっさりッスか…」
晴「クスクス」
涼「…どれ、香子ちゃん、わし達も食事にでも…」
香子「……」
涼「…香子ちゃん?」
香子「!」ハッ
香子「あ、あぁ…首藤……何だ?」
涼「……香子ちゃん…何かあったか?」
香子「え?」
涼「最近どうも上の空に見える…さっきの溜め息もちと気になってな」
香子「……」
涼「香子ちゃん?」
香子「…別に、何も」
香子「悪い首藤……今日は疲れたみたいだ。先に部屋に戻る…」タッ
涼「あっ…」
涼「……香子ちゃん…」
食堂
乙哉「んー…今日は何にしよっかなぁ」
しえな「ボクは和食の気分だな。よし、焼き魚定食にしよう」
乙哉「じゃあ、あたしも同じのにしよう!」
しえな「?別に好きなの頼めば良いじゃないか」
乙哉「あたしも和食の気分なんだよぉ!ほらっ、あたし達気が合うんだって!」
しえな「?…ふーん」
兎角「ビーフカレー大盛り」
晴「……またカレー」
鳰「まぁまぁ良いじゃないスかぁ。ウチもまたプチメロッス!」
兎角「なんで当たり前みたいにいるんだよ」
乙哉「いっただっきまーす!…あ、ねぇしえなちゃん、後で植物園行かない?」
しえな「植物園?」
乙哉「山百合がすっごく綺麗に咲いてるの!」
しえな「山百合……あぁ」
しえな(…あの約束、ちゃんと覚えてたんだな)
乙哉「ねっ、一緒に行かない?」
しえな「……良いけど」
伊介「ねぇ、春紀ぃー。そっちも美味しそう…一口ちょーだい」
春紀「おっ、良いぜ。伊介様、ほらっアーン」
伊介「あーん」
しえな「…公衆の面前で何してるんだあいつら」
乙哉「……その手があったか」ガクッ
しえな「…何の話しだ」
・
・
金星寮・3号室
涼「香子ちゃん、風呂どうする?」
香子「…今日はシャワーで良い」
涼「疲れた時は脚を伸ばした方が良いぞ」
涼「大浴場に行くのが面倒ならお湯溜めようか?疲れに効く入浴剤も…「首藤」
香子「構わなくて大丈夫だから」スタスタ
パタン…
涼「…」
涼「………はぁ…」
涼「……何か、してしまったかの」
涼「…」
涼「はぁ…風呂でもいくか」
ガチャッ
しえな「おっと…」
涼「おお、すまんの。ぶつからなかったか?」
しえな「あぁ、平気だ。首藤は今から風呂か?」
涼「そうじゃ。それより剣持よ、それはどうしたんじゃ?」
しえな「これか?さっき武智が植物園で何本か切ってくれたんだ」
涼「武智が?ふふっ…そうか。見事な山百合じゃの」
涼「人生の楽しみ……じゃな」フッ
しえな「人生の…?何だそれは」
涼「知らんのか?“人生の楽しみ”、山百合の花言葉じゃ」
しえな「…へぇ」
しえな「ん?」
“『しえなちゃんは、あたしの山百合だから…』”
しえな(…あの台詞って……)
しえな「…」
“『こんな気持ち、初めて…』”
しえな「……」
涼「剣持?…何をほうけておるんじゃ?」
しえな「…いっ、いや何でも…」
涼「…?まぁ良い。引き止めて悪かったな。じゃあの」スタスタ
しえな「あ、あぁ」
しえな「…」
しえな「…武智の好きな人って……」
しえな「いや…まさかな……」
乙哉「あたしがどうかしたの?」
しえな「うわああああっ!!」
乙哉「ちょっ、しえなちゃん声でっか!耳がキーンってなったよ」
しえな「たっ、武智…」
乙哉「なに?しえなちゃん、もしかして待っててくれたの?」
しえな「い、いや別に…ハサミはあったのか?」
乙哉「あったあった!やっぱり百合の所に忘れてたみたい」
しえな「あの武智がハサミを忘れるなんてな…」
乙哉「んー、今までのあたしじゃ考えられないよー。ま、今はそれよりも大事なものを見つけたしねー」
しえな「え…」
しえな(それって…)
乙哉「さっ、それより早く部屋戻ろっ?花を花瓶に挿さなきゃ」ギュッ
しえな「…あっ」
しえな(…手……)
乙哉「?なぁに?しえなちゃん」
しえな(……なんだろう…武智を見てると…なんか…)
しえな「…っな、なんでもない…////」
大浴場
カポーン
涼「ふぅ…」
涼「……一人だと、やはり広いな」
涼(……香子ちゃん…香子ちゃんの気持ちが分からん…)ハァ
涼「久しぶりじゃの……誰かを想ってこんな気持ちになるのは」
涼(…こんな感情は、とうに忘れたと思っておったが……)
涼「…わしもまだまだ若いって事かのぉ……なんてな」フフッ
涼「…」
涼「……はぁ…」
ガラッ
涼「!」
真夜「おっ!なんだ、一人か?」
涼「…番場か」
真夜「ん?なんだよ元気ねぇな。らしくねぇ」
涼「まさか番場に心配されるとは……案外人の事見とるんじゃな」
真夜「あ?…ふんっ、そんなんじゃねぇよ」
真夜「折角良い風呂だってのに、そんな顔してたらこっちまで辛気臭くなる」ザー
涼「……番場」
真夜「お?」
涼「好きな奴おるか?」
真夜「……は」
真夜「はぁっ!?」ガタガタン
真夜「な…っ……ちょ、待てっ!い…いきなりなんだってんだ////」
涼「なんじゃその反応……生娘か」
真夜「きっ……どうでも良いだろそれは!!…で、何だよいきなり」
涼「はぁー…」
真夜「おい」
涼「いや、すまん…今のは忘れてくれ。確かにわしらしくないわ」
真夜「…」
涼「……何だかおかしいんじゃ」
涼「……ふむ、おかしい……人生の酸いも甘いも噛み分けたこのわしが…」ブツブツ
真夜「…お、おい?」
涼「…………溺れそうじゃ…」ブクブクブク
真夜「やめろ!風呂に入れなくなるだろっ」
涼「…」ブクブク…
真夜「…まぁ、事情はよく分かんねぇけど…その………いるぜ?」
涼「ほ?」
真夜「だからっ……その…す…////」
涼「好きな奴か?」
真夜「…っ、す、好きっていうか、まぁ……た、大切にしたい奴…だけどな」
涼「…ほ、ほぉ。意外じゃな」
真夜「も、もう良いだろ!!この話しは終いだ!」バシャバシャ
ガラッ
乙哉「やっほー!あれ、珍しい組み合わせー。ねっ、何の話ししてんの?」
涼「おー、武智に剣持。ふふっ…恋バナじゃ。恋バナ」
しえな「!こ、恋…!?////」
真夜「おい!てめぇ…!」
乙哉「そなの?へぇー、混ぜて混ぜて!」
しえな「お、おい武智!」
涼「ん?どうした剣持、顔真っ赤じゃが…入る前からもうのぼせたか?」
しえな「!ち、ちがっ////」
乙哉「どしたのしえなちゃん?さっきから変だよ?」
しえな(誰のせいだ、誰の…////)
ガラッ
春紀「おっ、何か盛り上がってんじゃん?」
伊介「騒がし過ぎぃー」
千足「桐ヶ谷、足元滑らないようにな」
柩「ありがとうございます!千足さんっ」
乙哉「おー、どんどん揃うねぇ…んふふっラッキー!」
しえな「…」ムッ
乙哉「?…しえなちゃん、なんか顔怖いよ?」
しえな「…別に。視界が悪いから目を凝らしてるだけだ」モヤモヤ
伊介「やぁーだっ。そんなに目を凝らして何見るつもりよ」
しえな「へっ、変な意味とかじゃ…!!///」
伊介「ま、どうでも良いけどぉ。春紀ぃー、背中流してぇ」
春紀「はいよ、伊介様っ!」
千足「桐ヶ谷、頭洗ってやろう」
柩「えへへっ」
涼「…仲良き事は美しきかな」フフッ
涼「……ちょっと、羨ましいの」
乙哉「しーえなちゃんっ!」ギュッ
しえな「うっ、うわっ///…こんな所でくっつくな!」バシャッ
乙哉「良いじゃん、女同士なんだしさっ!」
しえな「うぅ…////」ブクブク
乙哉(…やばっ…何この反応///)ドキドキ
涼「…」フフ
真夜「…」
真夜「…一緒にいるのが当たり前だと思ってても、いつまでもそれが続くとは限らねぇ…」ボソッ
涼「!……なんじゃ?急に」
真夜「別にィ…こっちの話しだよ」
真夜「こうして生きてて、出会っちまって、好きになっちまったんだ…それが伝わんねぇ、相手の気持ちも分からねぇって、やっぱり……キツいよなァ」
涼「…」
真夜「だが、言える距離にいてそれをしねぇのは、ただの馬鹿だと思うぜ」
涼「……番場」
真夜「…」
真夜「…ま、今のはただのひとり言だけどなァ」パシャン
涼「…」フッ
涼「…ふっはははっ…」
真夜「!?」
乙哉「きゅ、急に…どうしちゃったの?首藤さん」
しえな「?さぁ…」
涼「いや、すまん…ふふっ…まさか、こんな若僧に説教されるとはな」
涼「歳取ると変に融通が効かなくなって敵わん…どれ、たまには若いモンの言葉に耳を傾けるのも良いかもしれんな」フフフ
春紀「…若僧とか若いモンとか……」
伊介「首藤サン、あんた一体いくつよ」
涼「ふふふ……さぁの。ふふふふふっ」
乙哉「首藤さんが壊れた」
真夜「…」クク
真夜「ま、オレもたまには、素直になってみっかな……」
千足「桐ヶ谷、流すから目を閉じててくれ」
柩「…」ギュ-ッ
金星寮・3号室
ガチャッ
涼「ただいま」
シーン
涼「?…香子ちゃん?おらんのか?」
香子「」スゥスゥ
涼「…なんじゃ、もう寝てしまったか」
涼「…ふふ。こうして見ると、暗殺者だなんて思えんの」ナデナデ
香子「んっ…せ……い」
涼「…!」
香子「…せん…ぱい……」グスッ
涼(……先輩?)
香子「イレー…ナ…先輩……ごめ…なさ…い」
涼「!」
涼「……香子ちゃん…」
香子「…」
涼「……」
涼「…」
涼「…許せ、香子ちゃん」
涼「…」
涼「……」チュッ
涼「……おやすみ。香子ちゃん」
カッチコッチ…
・
・
涼「」スゥスゥ
香子「…」
涼「」スゥスゥ
香子「…」
香子「……」
香子「………っ」
香子「…寝れるかっ!」ガバッ
涼「…ぅ……ぅん?」モゾ
香子「!」
涼「…」
涼「」zzZ
香子「寝るのかよ!」
香子「…」
香子(……さ、さっき首藤は何をした?)
*****
涼「……香子ちゃん…」
香子(…ん?なんだ、首藤帰ってきてたか)
香子(…嫌な夢を見た……悪いが、今は誰とも話したくないんだ。このまま寝かせて貰う…)
涼「……」
香子(……なんだ?首藤、私の事見てる…?)
涼「…許せ、香子ちゃん」
香子(?…許せ……?…やっぱり起き…)
香子(……え?)
*****
香子(…あの感触って……)
香子「…っ///」カァァ
香子(い、いや待て、ドッキリかもしれない。マシュマロとか…うん。きっとそうだ……)
涼「…ぅ……ん……こーこちゃん……好きじゃ…」ムニャムニャ
香子「……っ!////」
バサッ
香子(夢だ…あぁ。夢だ。さっさと寝て、目を覚まして、忘れよう…うん)
香子(……)
香子「…眠れない」
香子「…っ…首藤の……ばか///」
金星寮・5号室
しえな「…」
しえな(…な、なんだろう……武智の事をさっきから直視出来ない)
しえな「…」
乙哉「…?」
乙哉(…しえなちゃん、なーんかさっきからおかしい……?)ジー
しえな「……はぁ」
乙哉「…」
乙哉(……ちょっとアンニュイっぽいしえなちゃんも良いかも…///)ハァハァ
乙哉(やだ…イジメたくなっちゃ…////)ハッ
乙哉(…いや、ダメダメ!イジメ、だめ。絶対。しえなちゃんはあたしが守るって決めたんだから!)ブンブン
乙哉(剣持しえなには、誰も触らせない!)キリッ
乙哉(……)
乙哉(…でも、あれ?)
乙哉「…」
乙哉(あたし、何からしえなちゃんを守れば良いんだろ…)
AM 6:00・3号室
涼「…ぅ…うーん」モゾ…
涼「ん?香子ちゃん、もう起きとったか…今日は随分早起きじゃな」フアァ
香子「…」
香子「…あぁ。まぁな」
香子(……結局眠れなかった)
涼「んっんー!良い天気じゃなぁ。…よっこらせ、と」ゴソゴソ
香子「…もう行くのか?」
香子(首藤、たまに年寄りっぽいな…)
涼「んにゃ、ちょっと散歩にでもと思っての…香子ちゃんも良かったら…」
涼「…って、ん?どうした香子ちゃん、顔色が優れないようじゃが…?」
香子「…そ、そうか…?」プイッ
香子(……というか、首藤、なんでそんなに普通なんだよ…///)
涼「?…香子ちゃん、ちょっと」スス
香子「…?……ぅ…うわっ////」
香子(…な、何?顔がだんだん……まさか…キ…///)ギュッ
ピト
香子「……?」
涼「…ふむふむ。熱は無いようじゃな」
香子(…お、おでこ……!?…って、顔近…///)
涼「じゃが、まぁ、風邪の引き始めかもしれん…無理はせん方が…」
香子「…」
涼「香子ちゃん?」
香子「…あ、い、いやっ///…別に平気だ!」
香子「それより、散歩に行くんだろ?時間なくなるぞ!」グイグイ
涼「ほ?…あぁっ、香子ちゃん!?」
涼「…ちょっ、腰が…!香子ちゃ、もう少し優しく……」
パタン
涼「…」
涼「……追い出されてしまった」
香子「……」
香子「…はぁ」
香子「……しっかりしろ、私」
香子(…こんな事に気を取られている場合じゃないだろ)
香子(……私は…一刻も早くこの仕事を終わらせて…)
香子「…そしたら…私は……」ハッ
香子「……私は…この仕事が終わったら、どう生きていけば良いんだろう…」ボソッ
AM7:50・10年黒組
香子「……はぁ」
香子(…一ノ瀬を殺して、私はホームを出る。…この世界から、足を洗う…)
香子(……暗殺のない世界。そこで生きる事が、ずっと私の夢だったはずだ…)
香子(……)
香子「……そうすれば、私は幸せに…」
ガラッ
晴「あれっ?」
香子「!」ハッ
晴「神長さんっ、早いですね!おはようございます!」パアァッ
香子「!」
香子「……一…ノ瀬……」
兎角「一ノ瀬、一人で先に行くなと言ってるだろ!……ったく、お前がモタモタするから」
鳰「…朝は力が出ないモンでぇー」ニオッ
兎角「普段の無駄な元気を少しは温存しといたらどうだ」
鳰「あぁーん!酷いッスぅー」
晴「もう、兎角さんたら」クス
香子「…」
晴「…神長さん?」
香子「あ、あぁ…すまない。おはよう」
晴「おはようございます!」エヘッ
鳰「珍しッスねー、神長さんがぼんやりするなんて」
香子「そ…そうか?」
晴「神長さん、いつもビシッとしてますもんね」
神長「…」
晴「しっかり者で、かっこよくて、皆のリーダーって感じで…晴、憧れます!」パアァ
香子「…っ」
香子「……別に、私はそんなんじゃ…」
晴「え?」
香子「ハッ…いや、何でもない」
晴「?」
香子「…」
香子「………なぁ、一ノ瀬」
晴「?…はい?」
香子「お前は、本気で黒組を卒業するつもりか?」
兎角「!」
晴「……え」
鳰「おっ?もしかして予告票フラグっスか!?」
兎角「神長、お前…っ「しますよ」
香子「!」
晴「しますよ。晴は…晴は絶対に、黒組を卒業してみせます」ニコ
香子「……そうか」
晴「……あの…?」
香子「…その後は、どうするつもりだ?」
晴「え…?」
香子「黒組を卒業したら、その後はどう生きて行くつもりだ…」
晴「………黒組を、卒業……したら…?」
兎角「…」
晴「…晴は」
兎角「……」
香子「…」
晴「……考えた事なかったな」ボソ
兎角「…なっ」
鳰「おぉぅふ」
香子「!?」
晴「……」
晴「…ふふっ」
兎角「…一ノ瀬?」
晴「何だか、ワクワクしちゃいます!」
香子「は…」
鳰「ワクワク…ッスか…」
晴「今まで…晴はしたくても出来なかった事、たくさんあるから…」
兎角「…」
晴「だから、これからしたい事考えたら、何だかワクワクしてきちゃいました!」エヘ
晴「普通に友達作ったり、恋もしてみたいし……それで、それで人生エンジョイするのです!あっ、アルバイトなんかも良いなぁ…」
鳰「……結構、普通ッスね」
晴「えへへ…」
兎角「一ノ瀬…」
香子「…」
晴「それに……黒組の皆とも、本当はもっとずっと仲良くしていけたらなって…」
晴「黒組が終わっても、これから先何年先も、クラスの皆で集まったりして…皆で、今何してるの?なんて盛り上がって……そういうのに、晴は憧れてるんですっ!」
鳰「…晴は相変わらずッスねぇー。楽観的というか何というか」タハハ
晴「…駄目…かな?」
兎角「…」
香子「…」ガタ
晴「…神長さ……?」
香子「…一ノ瀬、よく分かった。…ありがとう」スタスタ
晴「へっ?…う、うん」
晴「あ…っ、神長さん、授業……」
香子「忘れ物をした。…すぐ戻るさ」
ガラッ
晴「…神長さん……」
鳰「何か仕掛けるつもりッスかねぇー」
晴「…」
兎角「一ノ瀬」
兎角「何があっても、私は一ノ瀬を守る…」
晴「…兎角さん」
兎角「お前はお前で、必ず黒組を卒業して、やりたい事を一つずつやれば良い」
晴「…兎角さん……!…ありがとう」ギュッ…
鳰「ウチもいるッスからね?ウチもいるッスからね?大事な事なんで2回言ったッス!!」
****
純恋子「…教室、入れませんわね」フゥ
真昼「…ぅぅ……////」
AM8:15 金星寮・3号室
ガチャッ
涼「やれやれ…ちょっとのつもりじゃったがもうこんな時間か。時間の流れは早いの…」ポリポリ
涼「香子ちゃんはもう行ったか………ん?」
“首藤、先に行っている。遅刻はするなよ。”
涼「…これは、少し急がんとな」フフ
ガチャッ
春紀「伊介さまっ!何で目覚まし止めちゃうんだよ!」
伊介「だってうるさかったんだもーん」
春紀「だもーんって…ほらっ急いで!まだ間に合うから!」
伊介「春紀もうるさぁーい。もう伊介後で行くから先行っててよ」シッシッ
春紀「追いてける訳ないじゃん。ほら、鞄貸して…って軽いなー。伊介様授業受ける気無いだろ」
伊介「トーゼン」
涼「朝から騒がしいのぉ…」
春紀「おっ、首藤さんじゃん」
伊介「急がないと遅刻するわよぉー?」
春紀「いや、それあたしらもだから」
涼「そろそろ本気で急がんとな…香子ちゃんに叱られてしまう」フフ
10年黒組教室
乙哉「…」
しえな「…はぁ」
乙哉(しえなちゃん昨日からずーっとこんなんだなぁー…こっちまで調子狂っちゃう)
乙哉「しえなちゃんしえなちゃん!」クイクイ
しえな「…」
乙哉(…おさげを引っ張っても反応がない)
乙哉「…」
乙哉(…ほどいちゃえ)シュルッ
しえな「……はぁ」
乙哉(…つまんない)
乙哉(……ポニテにしてみよ)ワシャワシャ
しえな「…」
乙哉「うわ、思ったより似合わない」
しえな「?……わっ!?何してるんだ武智!?」
乙哉「今更何言ってんのしえなちゃん?」
乙哉「…ていうかしえなちゃんさぁ、やっぱり昨日から変だよ?」
しえな「え?…そ、そう……か?」
乙哉「話し掛けてもずーっと上の空だし、似合わない溜息なんか吐いちゃってさ…」
しえな「似合わないは余計だ」
乙哉「…」
乙哉「しえなちゃん」
しえな「ん?」
乙哉「来いよ…」
しえな「は?」
乙哉「ギュッてしてやるよ」キリッ
******
伊介「なーんか今すっごくイラッとしたんだけど」
春紀「!?」
涼「おい、急ぐんじゃないのか?」
乙哉「……っ酷いよしえなちゃん!乙女の顔面を台本で殴るなんて!」
しえな「いやっ、すまない…つい…///」ドキドキ
乙哉「つい!?ついであの威力なの!?」
しえな「だから悪かったって…」
乙哉「はぁー…力になってあげようと思ったのに」
しえな「え?」
乙哉「なんか悩みでもあるんじゃないの?しえなちゃん」
しえな「!」
乙哉「あたしで良かったら聞くよ?」
しえな「武智…」
乙哉「しえなちゃんがそんなんだと部屋がジメジメするし」
しえな「武智はもう少し本音を隠した方が良いと思うぞ」
乙哉「冗談だってぇー!純粋にしえなちゃんの力になりたいだけだよー?」ギュッ
しえな「!……なっ、なんで///」
乙哉「えー?何でって、あたししえなちゃんが……」
しえな「え…?」ドキ
乙哉「…」
しえな「武智?」
乙哉「……」
乙哉「………っ!?///」
乙哉(…あ、あれ?あたし、何か……)
*・*・*・*
晴「…」チラ
晴(…神長さん、帰って来ない)
ガラッ
晴「!」
春紀「はぁー、ぎ…ギリギリ…」
伊介「朝から無駄に体力使っちゃったー」
涼「まぁまぁ、良い運動になったではないか……ん」キョロ
涼「……?香子ちゃんの姿が見えんの…」
鳰「神長さんならぁ、忘れ物取りに…って、首藤さん会わなかったんスか?」
涼「忘れ物…?いや……それ、いつじゃ?」
鳰「ん、そーいや大分時間経つッスね…」
涼「…!」
伊介「サボりじゃないのぉー?」
鳰「そんな伊介さんじゃないんスからぁーって…おぅふ。睨まないで下さいよ…」
涼「…」
鳰「でも神長さん、朝から様子が妙だったんでぇ、変な事考えてなきゃ良ーんスけど」
晴「!変な事って…」
涼「…」
涼「ワシ、香子ちゃん探してくる…」タッ
ガラッ
涼「!」
溝呂木「…っと。首藤?ホームルーム始めるぞ?」
涼「すまん先生……緊急事態じゃ!」ダッ
溝呂木「緊急事態ぃ!?お、おい首……ん?神長もいないのか?」
鳰「まーまー、放っておきましょうよぉー!2人共忘れ物らしいッスから」
溝呂木「…わ、わす……?何を?」
鳰「さぁー…」
鳰「一体何を、忘れてきたんだか…」フッ
ピシッ
鳰「!…った!何で消しゴム投げたんスか!?」
兎角「何かムカついた」
今日はとりあえずここまで
乙しえを中心にその周りで他カプも…ってスタイルで続けていく予定ッス
*・*・*・*
香子「…はぁ」
香子「……私は一体何をしてるんだ」
“『今まで…晴はしたくても出来なかった事、たくさんあるから…』 ”
香子「…」
“『だから、これからしたい事考えたら、何だかワクワクしてきちゃいました!』”
香子「…」
香子「……私は…」
「忘れ物とやらは見つかったのか?」
香子「…首…藤……!」
涼「人にこんなメモ残しておいて、自分は堂々と遅刻か?」ピラピラ
香子「…」
涼「…ふっ……まぁ良い。香子ちゃんはいつも真面目過ぎるくらいじゃ。たまには息抜きも必要じゃろ」
香子「…」
涼「…香子ちゃん」
涼「……一体何を忘れた」
香子「!」
香子「何…を」
涼「その忘れ物…」
涼「ワシと一緒でも、取り戻せんか?」
*・*・*・*
一方の黒組
溝呂木「…首藤と神長が帰って来ないが授業を進めるぞ。それが、僕の黒組担任として使命だからだ!」
溝呂木「さて、今日の生物は野外授業だ!この植物園内に生息する植物、生物の観察を各々するように!種類は問わないので、好きなものを選んで良いぞー!皆、こういうのも楽しいだろー?」ハハハ
伊介「だるぅーい…伊介パース」
溝呂木「…サボると単位取れないぞ?」
溝呂木「さ、気を取り直して。今から配るレポート用紙に記入して、授業終了までに提出するようにー!」
しえな「…」
乙哉「……」
・
・
伊介「はーぁ、何でこんなのやらなきゃなんないのよー…小学校の自由研究かっての」ピラ
春紀「たまにはこういうのも良いじゃん」
伊介「やってやんなぁーい…春紀ぃ、やっといて」
春紀「はいはい。良い子だから自分でやろうなー?」ナデナデ
伊介「……ムカつくぅ」
乙哉「…」
柩「千足さん、向こうの薔薇が綺麗でしたよ!行ってみません?」
千足「あぁ。そうだな」フフ
柩「千足さんは薔薇が似合いそうですね!」ニコ
千足「…そ、そうか?」
柩「♪」
しえな「…」
純恋子「ねぇ、番場さん?」
真昼「ぇぅ……は…はい…」
純恋子「せっかく素敵な植物に囲まれてる事ですし、お茶にでもしません?」ニコ
真昼「えっ……ぇっと…だ、駄目……です…」
純恋子「…ふふっ、番場さんは真面目ですわね。そういう所、嫌いじゃありませんわ」
番場「…あ……ぁぅ……///」
乙哉「……」
しえな「……」
乙哉「……」
乙哉(……どうしちゃったのあたし…さっきから…何か…)チラ
乙哉「……っ……////」キュゥッ
乙哉(しえなちゃんを見れない!!)
しえな「……」
しえな(…ボク、変だ。……武智が側にいるだけで…)ドキドキ
“『あたししえなちゃんが……』”
しえな(…あの時武智は何て言おうとしたんだろう…)
乙哉(…あの時あたし、何で続きを言えなかったんだろう……)
乙しえ「……はぁ」
乙しえ「!」
乙哉「…ど、どしたの?しえなちゃん」
しえな「!…いや、武智こそ……」
乙哉「えっ…と、そう!何調べよっかなーって!しえなちゃんは決まった?」
しえな「…ボクは……」
乙哉「あ!あたし、ヤマユリにしよっかな!ねっ、しえなちゃんも一緒に…」ギュッ
しえな「!」バッ
乙哉「…!」
しえな「…あ」
しえな(…思わず振り払ってしまった)
乙哉「しえなちゃん…」
しえな「…っ///」
しえな「た…武智……っ…///」
しえな「あ……あんまりボクに近付かないでくれっ…!」
乙哉「えっ…しえなちゃん?」
しえな「………っ////」ダッ
乙哉「しえなちゃん!」
ポツ…ン
乙哉「しえなちゃん…」
*・*・*・*
…キン……シャ…キ…
晴「見て見て!兎角さん!この花麻酔にもなるんだって!すごいいいいい!」
兎角「あまりはしゃぐな…転ぶぞ」
晴「えへへっ!大丈夫だもん」
兎角「……少しは元気になったみたいだな」
晴「え?」
兎角「今朝の事、気にしてたみたいだから…」
…キン……シャ…
晴「兎角さん…」
晴「大丈夫!晴は……晴には兎角さんがついてるから!」ニコ
兎角「晴…」
…キン……シャ…キン…シャキン…
兎角「…」
シャキ…シャキン…
兎角「……一ノ瀬、さっきから妙な音がしてないか?」
晴「…音?」
兎角「……まるで何かを切り刻むような」
シャキンシャキンシャキンシャキンシャキン
兎角「!」
晴「…兎角さん!」
兎角「一ノ瀬、私から離れるな……あっちか」
シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン…
「ふふ…ふふふ…ふふ」
シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン…
「ふふふ…ふふ……あは…あはははははは」
シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン…
兎角「!」
晴「!…た、武智さん!」
乙哉「…あははは……」
シャキシャキジャキン
兎角「お、おい!」
晴「……っ武智さん!武智さんやめて!!」ダキッ
乙哉「!…っ離して晴っち!こうしなきゃ…こうしないと駄目なの…っ!!」ヒュンッ
兎角「晴っ!離れ…」
晴「武智さ…っ、落ち着いて武智さん!」
*・*・*・*
柩「…あれ?えっと……」キョロキョロ
柩「おかしいな…確かここを抜けたら薔薇のコーナーの筈なのに…」
千足「道を間違えたか…少し戻ってみよう」
柩「ぅぅぅ…すみません、千足さん」シュン
千足「気にする必要はない。ゆっくり探せば良いさ…ほら見てごらん、あの花も綺麗だ」
柩「千足さん……!」ジーン
千足「それにしても、植物園だけでも相当な広さだな…桐ヶ谷、はぐれないように」ギュッ
柩「はい!千足さん、いつもありがとうございます!」ニコ
イチノセ!…ダメ!……サン…ッ
柩「…?何だか、あっちの方が騒がしいですね」
千足「あ、あぁ…何かあったんだろうか」
柩「…毒草のコーナーですね。あれは……一ノ瀬さんと東さん…?千足さん、行ってみます?」
千足「…」チラッ
千足(……毒………あの花は…)
柩「……千足さん?」
千足「………エンゼルトランペット…」ボソッ
柩「えっ?」
千足「!」ハッ
千足「……あ、あぁすまない。…邪魔したら悪いかもしれない……やめておこう」
柩「…」
柩「……そうですね」ニコ
千足「さ、行こう」
柩「はい!」
柩「……」
・
・
柩「千足さん?」
柩「……あの、どうかしたんですか?さっきから少し…」
千足「……いや、何でもない。すまない、少しぼんやりしていた」
柩「…」
千足「…桐ヶ谷?」
柩「いえっ」ニコッ
柩「これだけ種類があると、どれにしようか迷いますね」
千足「そうだな……薔薇だけでもこんなにあるなんて」
柩「千足さんは赤い薔薇が似合うと思います!」
千足「…そうかな」フフッ
柩「…」ホッ
柩「知ってますか、千足さん?薔薇の花言葉って、色によって違うんですよ」
千足「…へぇ」
柩「ピンクは、“上品”や“気品”。黄色は“献身・可憐・友情”。白は、“無邪気・清純・純潔”……“相思相愛”なんてものありますね」
柩「そして赤は、“愛情”や“情熱”…千足さんの優しさからは、いつも愛情が感じられます。やっぱり千足さんには、赤い薔薇が似合います」ニコッ
千足「……桐ヶ谷///」
千足「なら、桐ヶ谷は白薔薇だな」
柩「え?」
千足「無邪気で素直な桐ヶ谷にピッタリだ」フフ
柩「千足さん…」
柩「……本当のぼくは、そんなんじゃ」ボソッ
千足「桐ヶ谷?」
柩「……いえっ、ありがとうございます。千足さん」ニコニコ
柩「……」
柩(……エンゼルトランペット…)
柩「…どうして千足さんが」ボソ
このSSまとめへのコメント
乙しえさいこー
ギュってしてやるよでワロタ
乙しえ大好きです
乙しえ増えてほしい
続き気になる
続きよろしくお願いしますm(_ _)m