飛鳥「そのキャラクターって、つくっているよね?」 菜々「ギクッ!?」 (53)

短いですがお付き合いいただけたら幸いです。
当方SSに不慣れなため、キャラクターを違和感を覚えたり、いろいろと至らない点もあるかもしれませんが、どうぞ広い心でご容赦いただけると幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399553007

 ボクこと二宮飛鳥は、思春期特有の悩みである『ああ、いつもと変わらない日々は退屈である』なんて、そんな事を考えながら街を歩いているところを一人の男性によってスカウトされる形で、肩書を得た。
 『アイドル』、――曰く偶像。
 いつだって液晶の向こう側にいて、けれど決して手の届くものではないのだろうと思えたそれは、ボクにとってまさしく『非日常』であった。だからボクはそれに飛びついた。
 その日、ボクは渡された名刺と連絡先をもって帰宅し、両親を説得、両親にはボクに声をかけてきた男性、プロデューサーからも説得をしてもらって、晴れて親の応援も得られたボクは地元を離れて事務所のあるという都心へと引っ越すことと相成った。
 あれよあれよという間に、ボクの周囲は色を変えた。
 新しい環境、毎日が大変で、レッスンや営業をトレーナーさんやプロデューサーとたくさんこなした。すごく忙しかったし、辛くなかったと言えば嘘になるけれど、それでもボクは事務所の先輩や、姉の様に優しい事務員さんのおかげでその全てを乗り越えることができた。
 そしてボクは、無事立派な『新人アイドル』になることができたんだ。


「――んだけれど、ちょっと聞いてくれないかプロデューサー」

「ん? どうしたんだ、思いつめたような顔して。なにか悩みでもあるのか?」

「そりゃあ人は常に悩みくらい抱えているさ、それを捨ててしまったら、それはもう自分じゃないよ。――って、違う違う、今はボクが相談をするところなんだった」

「おう、どんとこい」

「それじゃあキミ相手に遠回しな言葉なんて意味をなさないだろうから単刀直入に言うんだけど、ボクってここから先アイドルとして成功できるのかな?」

「……またすごい事を聞くな」

「なんだ、そこで歯切れ悪くなられちゃうとボクとしてはとても悲しいんだけど、あの日ボクに言ってくれた言葉は嘘だったのかな? やっぱりオトナは信用ならない」

「いやいや、嘘なんかじゃないさ! 俺はお前を一目見たときに確かに『ティン!』と来たんだ、お前はきっとトップアイドルだって目指せる逸材だよ、事実ここまでレッスンだってトントン拍子じゃないか、この前だってライヴもしっかり盛り上がっていたじゃないか」

「……そうだね、ああそうさ、ボクはしっかりアイドルだ」

「どうしたんだ? なんだか飛鳥らしくもないな」

「思春期の中学生にはね、たまにどうしても不安になってしまう時ってものがあるのさ」

「んー、なんでもないならいいけれど……なんかあったらすぐ相談してくれよな?」

「そうだね、キミは頼りにならなくもないから、その時が来たら頼らせてもらうことにするよ」

 ボクがアイドルを初めて数ヶ月、ボクはある事について考えることが増えていた。
 ――偶像のアリカタ。
 アイドルというのはポップカルチャーの中心だといっても過言ではないだろう、昨今アイドルという存在は多くの人々、様々な層に支持されて、認められている。ボクの学校のクラスでだって、その存在はしばしば話題にあがるし、人気の的であったりする。ボクが活動を始めてからボクに近づいてきたヤツらがいたりする辺りに『アイドル』が持つ力というのが見え隠れしている気がしないでもない。つまりそういう事なのだろうね。
 実際、ボクは自身もアイドルという存在は少なからず気になっていた。――ここでいう気になっているというのは決して『アイドルになってチヤホヤされたい』といった自己顕示欲を源とするそれではなく、よく目にする文化の一つとしてという意味だ。 その程度の『気になっている』であった。

 けれどどうにも、今ではその程度の関心では済まない話となってきてしまっているのだ。なにせ今のボクは当事者に他ならないのだから、当然と言えば当然である。いやがおうにも、そのアリカタについて考えてしまう。
 人々の想像の中に生き、人々の夢想を受け、幻想としてファンに応える、言ってしまえばマボロシのような存在、理想や夢を売る仕事とも言えるのかもしれない。それだけであるならば漫画や小説のような『創作物』といった例があるだけに納得するのは容易いのだけれど、だがそれらの物事は大前提として『メタ』から目を背けることによって成り立つものなんだ。
 それに対してアイドルとは、自らが偶像であると『メタ』を前提として提示した上で、つまり偶像を偶像であると自ら申告して、活動する存在であるのだ、それは冷静になってみればとても奇妙な存在だと言えるんじゃないだろうか。
 そんな役を演じている身としては、それなりに『偶像』として役を果たせるような煌びやかさを意識したりすることも大切だと、ボクは思うのだ。
 思うのだが、じゃあ果たしてボクにそれはあるのだろうか。

 アイドルであるための『個性』。
 プロデューサー曰く、ボクは十分に個性的であるらしい。自覚はある、ボクは所謂『痛いヤツ』であり、きっとそういうところが個性として受けているのだろう。
 けれどそれは、天然のものだ。
 思春期の少女のちょっとした至りである、周囲の話を聞いた限りでは一過性のものであるという話だ。ではボクが所謂『痛いヤツ』でなくなった時、ボクはどうなってしまうのだろう、そう考えずにはいられない。
 未来に不安を見出して震えることは愚かなことなのだろうが、それによって現在を害してしまっては本末転倒であるのだろうが、でもやっぱり気になってしまうのだから仕方ない。
 プロデューサーに相談して、一つ思ったことがある。
 ボクの信頼と信用の置くプロデューサーは、今回ばかりは当てにならない。なぜならば彼は今のボクに可能性を見出しているからである。未来のボクに期待を持っているのならば、どうしたって底を疑う問いに対して希望的観測以外の回答は得られないのだ。

「アイドルか。未知の存在さ、ボクにもね」

やめなされやめなされ
(17)をいじめるむごいことはやめなされ…




「先輩であるところの事務所の人気アイドル、前川みく……なるほど」

 手元の週刊雑誌を読みながら、ふむと相槌を打ってみる。

 同じ事務所のアイドル、ボクの先輩にあたるその人の特集記事が組まれていたから、コンビニで少し立ち読み中である。

 アイドルのアリカタについて考えるにあたって、なによりも参考になるのはやはり身近な――一般人とは違った意味で身近な先輩アイドルの存在だろう。

 そういった意味で、参考になるという意味で、彼女はとても良い人材だと思う。

 猫ドル。なんとも滑稽な響きであるが、彼女の個性を一言で表すならばそうなる。語尾に『にゃん』とつけたり、その身のこなしがであったり、彼女は名実ともに『猫の様に可愛らしいアイドル』である。

 実際、ボクは何度か事務所で会っていて面識もあるけれど、本当に猫のような性格をしていた。プロデューサーに過剰なまでに甘えてスキンシップを取って困らせたかと思えば、まるで何ともないように別の事に興味を示して去っていく辺りなど、まさに猫そのものであった。

 だが、それでいて彼女は自身のキャラクターを意図している節がある。完全な天然ではなく、かといって完全な作り物でもない絶妙なバランスで、彼女は『アイドル』となっていた。

期待

 そんな彼女は、同性のボクから見てもとても魅力的であり――

「あれ、飛鳥ちゃんにゃ、奇遇だねこんなところで」

 ――突然の声に慌てて振り返ればそこには件の先輩アイドルこと前川みくがいた。びっくりである。 

 独特な語尾で語りかけてきた彼女は現在ピンクを基調とする私服に身を包んでおり、アイドルとしての彼女としてではなく、一個人としての前川みくであることが見て取れる――のだが、不思議なことに彼女の頭とお尻には猫耳と尻尾が見えた。

 いや、語弊がある、見える気がしたというほうが正しい。なにせ相手は自分より身長が低いと言えど高校生である、まさか私服で猫のコスプレなどするはずはないだろう。……ないと信じたいところである、でなければ痛いヤツであるボクをもってしても少しばかり痛々しいと言わざるを得ない。

 ともかく、それだけ彼女は自分の個性をキャラクターとして定着させているという事なのだろうか、オーラとか、その類のあれなのだろうか。その類のあれであってほしいところである。

「ああ、こんにちは前川さん」

「む、なんだか固いにゃー。みくの事は、みくにゃんって呼んでくれていいよ」

「そうですか?」

「敬語もいらないよ」

「そうかい、じゃあ普段通りにさせてもらうよ」

「それがいいにゃ。ああ! それみくの載ってる雑誌! 読んでくれてたのにゃ?」

「ああ、うん。たまたま目に止まってね、インタビューとか、まだボクは受けたことがないから参考にと思って」

「それはとっても嬉しいにゃ。ふふ、先輩をしっかりと見習って良いアイドルになるにゃあ」

「……良いアイドルか……、ねぇみくさん、ちょっと質問いいかな?」

「むむ、なんにゃなんにゃ、どんな質問もみくにまっかせなさーい、にゃ」

「良いアイドルってなに?」

「……にゃ?」

「だから、良いアイドルってなんなのかなぁ、って。ボクはずぅーと考えているんだ、いったいなにが正しくて、良いのか。アイドルのアリカタもそうだけれど、そこに世界の作った基準があるならば、それを知るのもまた一つの道だと思うんだ。だから尊敬するところである先輩アイドルであるみくさんに、意見を聞かせて欲しいな」

「え、えっとー、それはー」

「それは?」

「だからー、えっとー」

「…………」

「に、にゃあ☆」

「……はぁ」

「ため息!? 今みく後輩に呆れられたにゃ!?」




 よく考えれば、個性の大部分を無意識に培っている彼女は、言ってしまえばボクと同じ部類の人間であった。だから彼女の成功はなにかの理論に基くモノではなく、彼女の持つ感性によるところの結果であるのだろう。ならばそこからボクの得られるものはあるはずがなかった。

 彼女はとても素晴らしく、魅力的なアイドルである。だが、目指す場所は同じであっても、向かう方法は似ても似つかないのでは、参考にはならない。

 事務所のソファで次の仕事までの待機をしながら、自然とため息が漏れる。

 なかなかどうして、アイドルのアリカタとは難題だ。

 そもそも大衆に発信する側であるアイドルが呈する個性とは、即ち『受ける』イメージである。なにをするにもアイドルの性質上それが前提となるだろう、ならば過去にあったと聞くアイドルのイメージはどうであったのだろうか。

「――あ」


 一つだけ、心当たりがあった。

 その昔、昭和の時代を生きたアイドルは永遠の17歳と自らを称し、トイレに行かないだの、排泄物がピンク色であるだとか、挙句自らを遠い星のお姫様だと言い張ったりと、いろいろと突拍子もない設定を背負っていたと親から聞いた事があった。

 今を生きるボクからすれば、きっと昔は今ほどネットワークやコミュニティも広がっていなかったからこそ、より非日常的に写ったのだと思うのだが、それでもさすがにその設定は作る側も信じ込む側にも苦笑を漏らさざるを得ないと思う。

 だが、なるほど確かに一理あるのかもしれない。だってそれは全部意識して作られた個性であるのだから、つまり偶像であることを自称しなかった偶像が、昔のアイドルであったという事なのだろうか。

 今は偶像であって、それを理解されていても、そこには多少のリアリティがなければ『暗黙の了解』が保たれない。昔はその敷居が低かったということだろうか。だからといってボクはそこまで極度に偶像を演じる気はないのだが。

 どちらにしろ理解するには多少苦しむところであ――

「おっはようございまーす! 阿部菜々永遠の十七歳! 今日も元気にアイドルしますよー! キャハッ☆」
 
 ――あ……。


 事務所の扉を勢いよく開けて入ってきたのは、またもボクの先輩アイドルである阿部菜々さんだった。

 ボクよりも一回り小さな身長に、ウサギの耳に見立てられた大きなリボンが特徴的な十代の少女である。――と、いうのが彼女の見た目である。

 ボクの所属するプロダクションにおいて、彼女は一位二位を争う人気を誇っている、まさしくボク達新人アイドルの憧れとなるポストに君臨している。

 ちなみにボク自身も幾度となく顔を合わせているので、お互いにそれなりに気の知れた仲になっていた、菜々さんはとてもいい人で、年下であるボクにもすごく丁寧な言葉で話しかけてくれるし、しっかりボク達を助けてくれる、まさに頼れるお姉さんのような人である。……いや、むしろなぜだろうか、少しお母さんという表現のほうがしっくりくる気さえしてしまう。

 そんな素晴らしい人が目の前にいる、けれどボクはその状況で確かに表情を歪めていた。

(――あぁー、そういえば居たね……ボクの近くに、凄く近くにいたのをすっかり忘れていたよ)

「あれ? 今日は事務所に飛鳥ちゃん一人ですか? Pさんはともかく、ちひろさんが留守なのは珍しいですね」

「おはようございます菜々さん、ちひろさんはなんだか買い出しがあるらしくてね、こうしてボクが帰ってくるまでの留守番役なんだ」

「なるほどそうだったんですね! お疲れ様です飛鳥ちゃん、それじゃあ帰ってくるまで菜々も一緒にお留守番ですね」

「そうなるね……」

「あれ、どうして顔を背けるんです?」

「ソンナコトハナイサー」

 先ほどまで考えていたことがことであるだけに、なんだか申し訳ない気持ちでまともに顔を見ることができないでいると、心配そうにこちらを覗きこんできた。やめてくれ、凄く申し訳ない気持ちになってしまうじゃないか。

 なんだか気まずい――いや、良く考えてみれば、この状況はまたとないチャンスなのかもしれない。考えても見れば、つい先ほど結論を出したばかりではないか、過度な設定の盛り込みもまた一つの個性であり、かつ、それを自ら架しているという事は自覚ある偶像に他ならない、つまり意識的なキャラクターを扱っている目の前のアイドルならば――阿部菜々さんであれば、ボクの考えるアイドルのアリカタについてなにかを得ることができるのではないだろうか。

 …………いや、無理だろう。
 自称十七歳で、ウサミン星からやっきているラブリィメイドさんに、キミのそれは作っているキャラクターなんだろ? なんて、とてもじゃないが言えない。

 少なくとも、ボクには言えない。言えるわけない。

「――飛鳥ちゃん?」

「うわ! 菜々さん!? ちょっと顔近いよ、近い」

 目と鼻の先だった。きっと考え込んでいた隙に近ずかれてしまったのだろう、考え事をしていて周りが見えていなかったなんて恥ずかしい限りだ。

「もしかして、なにか悩み事ですか?」

「へ? い、いや、そりゃあ人間一つや二つは悩みは抱えているものだろう? だからボクだってないというわけでは――」

「やっぱり! そうだったんですね!」

「え、え……」

「アイドル、大変ですもんね……それが中学生の女の子が親元を離れて一人で頑張っているなんて、そりゃ悩みだってできちゃいますよね……でもまかせてください! 菜々はいつでも、女の子の味方ですよ! 人生の大先輩にどーんと話しちゃいましょう! 楽になりますよ、きっと!」

 あ、まずい、これはなにか盛大な勘違いをされている。というか大先輩って、確か菜々さん17歳って言ってたような……ボクは14歳なんだけれど。
 けれどある意味チャンスかもしれない、相手のほうから質問を促しているのだから、このタイミングでならば多少失礼な質問をしても許されるかもしれない。

「いや、え? でもほら、(キャラ付けについてなんて)言っていいのかな?」

「いいんですよ(辛いのに無理しなくて)、ほらドンと来なさい!」

 も、もう知ったことか! なんとでもなれ!

「え、えーっと、じゃあ……」

「はい、なんでしょう」



「菜々さんってそのキャラクターって、つくっているよね?」 



 瞬間、その場の空気と、菜々さんの表情が固まった。

アカン

ここからやっとスレタイの内容なのですけれど、もう眠くて限界です
申し訳ないのですが、今夜の更新はここで打ち止めとさせていただきます
まだ見てくれている人がいるのかは定かではありませんが、もし待っていてくださった方がいたのなら、申し訳ございません
かならず完結させますので、明日まで待っていていただければ幸いです

いったん乙
楽しみにしてる

ウサミンの名字間違ってるよ
阿部じゃなくて安部やで

うわ、名前の漢字間違えるなんて、恥ずかしい……

教えていただきありがとうございました、以後このような事のないよう再発防止に努めます

うわ、名前の漢字間違えるなんて、恥ずかしい……

教えていただきありがとうございました、以後このような事のないよう再発防止に努めます

お疲れ様、眠いと誤字っちゃうのもちかたないね。

次回の更新楽しみに待ってるで~

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう…

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

次の飛鳥はよくやってくれることでしょう……

変なの沸いてんな

大変お待たせしました、ただいま自宅に帰宅いたしましたので、ぼちぼち書いて投下していきたいと思います

イッチガキタデー

お疲れ様です、続き楽しみにしてますよー

「な! なななな! なに言ってるんですかぁ!? やだなぁ、もう、菜々は菜々ですよ、もう、まったくもう、もうまったく」

 目が泳いでいた、凄い量の汗をかいていた、なんだかしゃべり方が違和感に溢れていた。
 ――ああ、やっぱり。と言わざるを得ない。ここまで来たら行けるところまで行くべきだろう、ボクはボクの背中を自分で押す。

「作っているよね?」

「…………」

「人生の大先輩」

「ギクッ」

「家に転がるビール缶」

「な、なぜそれを!?」

「ダウト」

「……キャハ☆」

「…………はぁ」

「ため息!? 今菜々後輩に呆れられちゃいました!?」

「いや、呆れてはないさ、ちょっと引いたかな」

「もっとひどいですよ!」


「マジカルメイド」

 俯き、ぷるぷると肩を震わせている。

「ウサミン星」

 心なしか震えが大きくなった気がする。

「永遠の十七歳」

 耳まで真っ赤である。

「あと、なんだったかな、えーっと、ハートウェーブ?」

 涙目であった。

「も、もうやめてぐださい」

 号泣されてしまった。

「ああ、ご、ごめん、まさか泣かれてしまうとは思わなくて……」

飛鳥さん容赦無いな

「うぅ……ぐすん、それで、いったいなんなんですか? 菜々が何をしたって言うんですかぁ」

「いや、ホント申し訳ないことをしちゃったな、でもほら、過去はどうしたって刻まれていくばかりなわけであるのだし、やっぱりなにより前へと進むことを優先していきたいと思うんだボクは」

「菜々の優しさに付け込んで、ひどいですよ飛鳥ちゃん」

「それはさて置いてだ」

「置かないでください!」

「……ラブリィ17歳☆」

「置いておきましょう! その辺にぽいっとしときましょう!」

 どうやら、利害関係は一致したようである。

 さて、少々悪ノリが過ぎてしまった。

 けれどそれに関して言えば、目の前の憧れのアイドルであるところの菜々さんがあまりに可愛らしすぎるのがいけないのだ。これは別に無理矢理に責任を押し付けているだとかそういったことではなくて、同性であるボクから見ても『設定』で凝り固まったアイドルである彼女はとても個性的で魅力的なのである。

 しかし、そこでボクはまた新しい事に気がついてしまった。

 そう、菜々さんの設定って、わりと周囲にバレていたり、察さられていたりするのだ。なにせ中学生であるところのボクに見破られてしまっているのだから。

 これは、よくよく考えてみれば先にあげた昭和のアイドルの偶像のアリカタとは似て非なるものであるのではないだろうか、もちろん彼女は偶像をそのまま素直に受け取ったとしても十分すぎるほどに魅力的であるのだが、では今の様に『偶像を疑ってかかった時』に発生するこの可愛らしさはいったい何なのだろうか。

 言ってしまえば副産物、完全を目指した不完全が辿りついたある種の極致。

 恐るべきは、両側面がきっちりと機能して、隙も生じぬ二段構えとして成立している点なのかもしれない、それこそがアイドル『ウサミン』の真の魅力であるのだろうか。

 とにもかくにも、目の前のアイドルはボクの目指している『アイドルのアリカタ』を体現しているといって差し支えない逸材であるだろう。なにせ後に引けないと漏らすほどにアイドルに対して真摯的であるのだし。後に引けない年齢であるのか……。

すいません、明日朝が早いのでそろそろ寝ます

昨日明日には終わらせると言っていたのに、ほとんど進んでいなくて申し訳ないです。
この土日中には必ず完結させますので、また少しの間待っていただければ幸いです。

明日は朝のうちに少しだけ更新ができるかもしれません。

ウサミンの一人称はカタカナやで(小声)

いろいろ穴だらけでもうしわけなさすぎる……

今度きっちり治させていただきます




「うう、もういいですよ、認めますよぅ、ナナは設定作ってますよーだ」

 ソファの上で体育座りを決め込まれてしまっては、ボクとしても大変心苦しい。その相手が一回り以上も年上であるとわかってしまった今となってはより、である。
 ここはボクの相談に付き合ってもらうためにも、一度フォローを入れなければいけない。
 
「ファンのみんなの幻想になるために、自らの姿を一から構築しなおす……考えてみればすごいじゃないかな、やっぱり菜々さんはボクの求めている――ううん、きっとみんなの理想のアイドルなのかもしれないね」

 ちらり、と流し目。
 虚実ない羨望の言葉であるが、やはりあそこまで落ち込んでしまっていてはその程度で機嫌を治してしまうことはないだろうから、まずはジャブといったところだ、さぁ、どの程度の結果を――

「……え、えへへ、そうですかねぇ。ナナ、立派に理想のアイドルできてますかね? うわ、なんだかそう言ってもらえちゃうと嬉しいですね、キャハ☆」

「すっごい笑顔だ」

「え? なんですか?」

「いや、なんでもないさ。うん、やっぱり菜々さんはとても可愛らしい、アイドルとして正しいアリカタなんだろうなと、そう思っただけだよ」

「うぇへへ」

 ――なんだか、アイドルのしていい顔なのか怪しいラインではあるのだけれど、この際つつくのはやめておくことにした。

「ところで菜々さん、ボクの悩みを聞いてくれるって言ってくれたけれど、それからだいたい数十分間は経ってしまっているのだけど、あの言葉はまだ有効なのかな?」

「あ、やっぱり悩みがあったんですね! いいですよ、理想のアイドルのナナにドンと任せてください、力になりますよ」

「ありがとう、それじゃあ言葉に甘えることにするよ。 ボクはつい最近アイドルになった、今は新人アイドルとして客観的に見ても平均以上にファンに支持されているという自覚もある、言ってしまえば受けているって自覚があるんだ、ファンのみんなや、ボクを支えてくれているプロデューサーには凄く感謝してるよ」

「いいことですね」

「うん、とっても喜ばしい事だよ。でも、だからこそボクは最近ずっとある事を考えてしまうんだ、これが答えが全く見えない難題でね」

「ある事……ですか?」

「アイドルのアリカタ、それが今ボクにはどうしても理解らないんだ」

「在り方ですか? むむ、なんだか難しい話ですね、いったいどうしてそんなことを? 飛鳥ちゃんはファンの方も多いですしあまり気にしなくても大丈夫だと思うんですけれど」

「たしかに今のボクは、確かに完璧とは言わないまでも、とても満足のいく環境を生きているよ、でもそれはいったいいつまで続くのかって考えてしまったら、そこにはなんの確証もない。プロデューサーはボクにボクの望むセカイを見せてくれた、今ボクは確かに非日常を謳歌している、でも……」

 ――だからこそ、今を失うことが恐くて、未来(ミチ)への変革が怖い。

 最後の一言は口に出すことが憚られてしまって伝えることはできなかったが、菜々さんには言わんとすることは伝わってしまった、もとい、伝わってくれたらしいく、またうんうんと唸っていた。

「つまりボクは、アイドルとしていったいこれからどう在るべきなのか――というより、どうあれば良いのかを探しているんだ。『個性』を持つという事がその解であるところまではなんとなく理解ったんだけど、けれどボクにとってそれがどう在るべきなのかがまたわからなくてね、『痛いヤツ』というボクの個性は天然なものだ、だから菜々さんのように自分の意志でそこにある個性を獲得したいのさ。なにをアドバイスを聞かせてくれたりはしないかな?」

「んー、そうですね。もうこの際なのでナナは個性については認めますけれど、でもそれは――ずれていると思いますよ」


「……え?」

 予想外だった。

 目の前の理想像は、けれどボクをひたと見つめて、先ほどまでの雰囲気を一蹴するほどの真剣な眼差しでボクを見つめていた。

 その姿はメディアで見ることのできる可愛い『ウサミン』でも、事務所で快く接してくれていた『菜々さん』のそれでもないと、何の確証もなくボクは思った。

 では、今目の前の少女は――女性は、いったい誰なのだろう。

「あくまでナナの意見なのであまり深くは考えなくていいと思うんですけど、飛鳥ちゃんのその考えは少しズレてると思います」

 論すように言う。

「いったいどこが間違っているのかボクには――」

「どこも間違ってなんてないです、でもずれてます。 だって飛鳥ちゃん、全然楽しそうじゃないじゃないですか」

「楽しそうじゃない? ボクがってことかい?」

「そうです、さっき飛鳥ちゃんファンの皆さんに応援されて嬉しいって言ってたのに、さっきの話を聞いてたら全然アイドル活動が楽しそうじゃないじゃないですか、そんなのおかしいです」

 ――おかしい。

「そんなことはないよ、ボクはこの非日常をきっちりと楽しんでいる。少なくともなにをするにも今まで通りだったあの頃よりは格段に」

「じゃあどうしてそんなに――苦しそうにアイドルについて話すんですか?」

約束通り土日には終わらず、日をまたいで月曜日になってしまいましたが全部書き切れましたので今から一気に投下しちゃいます

約束を果たせなくてすいませんでした

「え」

 びっくりした。と言う言葉がなによりしっくり来た。

 言われて視線を向けた窓、そこに映るボクの表情は確かにお世辞にも『楽しそうな顔』はしていなかったから。

 さっき菜々さんの表情を散々に言っていたが、今のボクの表情こそまさしく偶像の――アイドルしていい『表情』ではなかった。

「ナナはですね、ちょっと恥ずかしい話ですけれど、小さなころからずーっとアイドルになることが夢だったんです。ナナがまだ子供の時にですね、女の子が魔法でアイドルに変身するアニメがあったんですよ」

「……アニメ?」

「はい、それがすっごく可愛くて、それ以来ずっとアイドルに憧れてました。ノートに自分が考えたアイドルの設定を書いたりしてましたねぇ、きっと飛鳥ちゃんの言う『痛いヤツ』だったのかも」

「でも、やっぱり普通の女の子じゃ、特別なアイドルにはなれなかった。でもずーっと、それでもずーっとずっーと諦められなくて、何度も何度もがんばって、失敗して、がんばって、がんばってたら――見てください、今飛鳥ちゃんの前にはみんなのアイドル、ラブリィ17歳、『ウサミン』がいますよ」

 そういうと、菜々さんは両手を広げておどけた調子で、すごく可愛らしく微笑んだ。


 ――ああ、なるほど。これは確かに楽しそうだ。羨ましいほどに。

 きっと苦労して、がんばって、折れかけて、立ち上がって、辛かったことだっていっぱいあったのに、それでもきっと菜々さんは今こうして楽しそうに、幸せそうにしているのだ。

「ナナは確かにアイドルとしてちょこっとだけ、ほんのちょこっとだけ、ホントにホントにちょーーーっとだけ自分を作ってますけど、でもそれは別にみんなに喜んでもらうためじゃないくて――それもありますけど、なによりナナがそうありたいから、ナナは『ウサミン』でいるんです。そして幸せなことにファンの皆さんはそんなナナを応援してくれます、それってとってもすっごいことで、思わずにやにやしちゃうくらい嬉しい事なんですよ?」

「幸せなこと、嬉しいこと……か」

「そうです、だからナナは飛鳥ちゃんももっと簡単に考えていいと思うんです! 飛鳥ちゃんは今が楽しいって言ったじゃないですか、ならそれでいいじゃないですか、ファンのみなさんはそんな飛鳥ちゃんを応援してくれてるんですから」

「そうなのかな? でもこれから先、ボクがみんなに飽きられたら? 例えば人気がなくなってしまってアイドルでいられなくなったら?」

「未来がどうあっても、そうして飛鳥ちゃんを応援してくれている人達は、きっとずっと、飛鳥ちゃんを応援してくれますよ、ううん、きっとなんかじゃないです、絶対です。少なくともナナはそんな飛鳥ちゃんをずっーと応援しちゃいます! だって飛鳥ちゃんはこんなに魅力的じゃないですか!」

 ボクは今なんとなく理解できた気がした。

 残念ながらそれはボクの追い求めていたアイドルのアリカタではなかったけれど、でもそれよりももっともっと大切な、アイドルをやる上で最も大切な物。

 ボクは結局なんだかんだと言い訳を並べ立ててたけれど、なにより安心が欲しかったのだろうなと、今にして思う。言ってしまえば受けたかっただけだとも言えてしまうかもしれない、それはボクの嫌いな『空気を読む大人』と通じるもので、なにより嫌っていたはずなのに皮肉なことにボクは無意識にそこへと向かっていたらしい。

 でも、今ハッキリした。


 残念ながらそれはボクの追い求めていたアイドルのアリカタではなかったけれど、でもそれよりももっともっと大切な、アイドルをやる上で最も大切な物。

 ボクは結局なんだかんだと言い訳を並べ立ててたけれど、なにより安心が欲しかったのだろうなと、今にして思う。言ってしまえば受けたかっただけだとも言えてしまうかもしれない、それはボクの嫌いな『空気を読む大人』と通じるもので、なにより嫌っていたはずなのに皮肉なことにボクは無意識にそこへと向かっていたらしい。

 でも、今ハッキリした。

「そうだね、確かになんだかズレていたよ。ボクらしくもなく、ボクらしからぬことを考えてた。どうあるべきかじゃなくて、どうありたいか、そういうことなんだね?」

「ふふふ」

「む、笑わなくてもいいじゃないか」

「いえ、ごめんなさい、ふふ、だって飛鳥ちゃん急に楽しそうな顔をするんですもん」

「ーーなっ!? そんなこと」

「何はともあれ、力になれたなら嬉しいです。ナナも場数を踏んでますからね! これからも困ったらお姉さんを頼ってくれていいんですよ?」

「……もうつっこまないからね。でもありがとう、おかげで目が覚めた。そう言えばプロデューサーも言っていたね、本当にボクらしくなかったよ。これからはボクとみんなを信じてありのままで、それを好きになってもらうために頑張るとしようかな」

「はい、そうしちゃいましょう! あ、噂をすれば帰ってきたみたいですよ。おはようございます、プロデューサーさん!」

 菜々さんの視線の先には開いた玄関扉、そしてプロデューサーが立っていた。

「お、菜々は今日も元気そうだな。飛鳥もこの後すぐに仕事だからな、準備しとけよ」

「ボクはいつでも行けるよ」

「あれ、お前……」

「なんだい?」

「いや、気のせいならいいんだけどさ、なんか吹っ切れた?」

「ふふ、まぁ、少しね。ーーあ、そうだプロデューサー一つ質問いいかな?」

「ん? なんだ?」

「別に対したことじゃないさーー」





 ーーキミも、ずーっとボクを応援してくれるよね?


おわり

諸事情により携帯からの投下になりいろいろおぼつきませんでしたが以上で終了となります。


ウサミンってネタにもされますけど凄い人ですよね、ほんとに。
飛鳥もあんな性格だからこんな悩みを持ったりするかなーって妄想から出来上がりました。
本当はスペースウサミン引いちゃったので書いちゃった感もあります。

ではお付き合いいただいた方々本当にありがとうございました。

乙でした、楽しく読ませてもらいましたで。次回作をまた書く時があればまた読みたいねぇ。

あと、最近「おっ」って思って覗いてたやつが立て逃げだったりしてたから、個人的には完結させてくれるだけで嬉しいんやで。お疲れ様でした。

飛鳥は毛嫌いしてた感のあるキャラなんだけど
このSSでちょっと認識を改めた

頼子さんに隠れてるけど、大デバフもちのグリッタ飛鳥が
Co無課金・初心者には有益なカードなので当分使うことになりそうだしww

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