【モバマス】エゴ:輝くステージに立ちたい【ビーストバインド】 (85)

小梅「……こ、この世界には、人間以外も、いて、ね。『魔物』って……呼ばれてる」

小梅「怪物、妖怪、宇宙人……ほとんどは……人間社会から、離れて、住んでる……」

小梅「人間と、『魔物』の、いちばんの違いはね……」

小梅「【エゴ】、自我の強さ、なの……」

小梅「強いエゴを、持つものは…… 現実も、曲げられる…… 空を飛んだり、死んでも、動いたり……」

小梅「人間でも……エゴが強すぎると……夜の世界に、仲間入り……うふふ……」

小梅「人間社会に、興味を持ってる、魔物も…… 魔物に共感する、人間も…… 根っこは同じ、だよ……」

小梅「……そういう、どっちつかずは、『半魔』って、呼ばれて…… あんまり、歓迎、されないね……」

小梅「……あ、あのね……『半魔』は、自分のエゴに、呑まれると、『魔物』になっちゃう、の」

小梅「『半魔』と、『魔物』の、いちばんの違いはね……」

小梅「【絆】、だよ……自分にとって、大事な、何か、誰か。……“人間らしさ”は、そこに、あるの……」

小梅「それを、失うと…… 『半魔』は、ただの、『魔物』になって……変わって、しまう」

小梅「あなたには、絆、ある……?」

小梅「あっ……そろそろ、事務所、戻るね……」

小梅「『半魔』だらけの、アイドル事務所、だよ…… うふふ……」

小梅「……来る?」

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・モバマス
・参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89_%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3

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――――――

―――

小梅「ここ……事務所…… あ、卯月さん、だ」

卯月「あっ、おはようございます、小梅ちゃん」

小梅「う、卯月さん……おはよう、ござい、ます……今日も、10分前集合、だね」

卯月「はい、皆さんに迷惑を掛けないように、決められた時間は守ります!」

小梅「さすが、です……」

卯月「今日は小梅ちゃんたちと同じスタジオでレッスンですね。一緒に頑張りましょう!」

†††

島村卯月
ルーツ:自動人形
エゴ:頑張りたい
絆:ニュージェネレーション

†††

小梅「う、うん……お手柔らか、に、お願い、します……?」

卯月「こちらこそ! ところで、他の二人はどうしてるんです?」

小梅「……ま、待ってるって、メール来た、から……事務所にいる、はず……そっち、は?」

卯月「凛ちゃんは直接スタジオに行くそうです。未央ちゃんは遅刻の確率が37%です!」

小梅「……そ、そう、なんだ」

小梅「お、おはよう、ございます……」

卯月「おはようございます! 島村卯月、今日も頑張ります!」

輝子「フ、フヒ……卯月さんは、今日も、元気……おはよう……」

幸子「おはようございます。……凛さんがまだ来てませんね。珍しいです」

卯月「凛ちゃんは直行ですね!」

幸子「なるほど。それならもう出ましょう、時間は有限ですよ!」

輝子「あ、卯月さん、そ、その口振りだと……未央は、や、やっぱり……」

卯月「遅刻の確率は……56%に上昇しました!」

幸子「フフン、ボクのカワイさに怖気づきましたかね!」

†††

輿水幸子
ルーツ:異能者
エゴ:人間でいたい
エゴ:ボクカワイイ!

星輝子
ルーツ:魔神
エゴ:本当の自分を知りたい
絆:142's

†††

輝子「ち、違うんじゃないかな……い、いつも通り、寄り道してる、気がする……」

幸子「普通に否定しないでください!? 悲しくなります!」

小梅「しょーこちゃん、さっちゃん、行くよ? 着替え、忘れないで、ね?」

卯月「私も行きますね、未央ちゃんには自力で頑張ってもらいましょう!」

幸子「頑張るような距離じゃないと思いますよ」

卯月「心がけですから」

輝子「いつもの、ことだ……フヒ、未央なら、平気な顔して、走ってくると、思うぞ……」

>>1にある一つ目のURL間違ってるんじゃない?正しくないページ名って出てくる











しゅーこはでますよね?(切実)

ビバあんまやったことないな

さっちゃんが人間でいたい異能者……
遺伝確率250億分の1で生まれてくる生粋のパーフェクトソルジャーかな?

キノ子魔神か。てっきり神格:森(キノコ)の乙女かと思ったが

あなべべさんルーツ魔女とかで

――――――

―――

小梅「お、おはよう……凛さん」

卯月「おはようございます、凛ちゃん!」

凛「おはよう、みんな。未央は……やっぱり遅刻?」

輝子「わ、割と、よくあること……フヒヒ……」

卯月「いけませんよね、頑張りが足りません!」

幸子「努力はともかく、気まぐれが過ぎるんですよ」

凛「注意しておくよ。でも、あの性格あっての未央だし、私たちニュージェネレーションだよ」

小梅「やっぱり……仲良し……」

卯月「もちろんです! でも遅刻はいけません!」

小梅「わ、わ。気を、つける……ね?」

幸子「ボクたちはちゃんとしてますよ! なんといってもカワイイボクがリーダーですから!」

凛「そうだね。今日はちょっと出遅れたけど…… 成果で負けるわけにはいかないかな。レッスンとはいえ」

†††

渋谷凛
ルーツ:御伽噺の住人/人狼
エゴ:足跡を残したい
エゴ:諦めない

†††

卯月「そうですね、みんなで頑張りましょう!」

輝子「フ、フヒヒ……私たちも、頑張る、ぞ……何といっても、親友だからな……」

小梅「うん…… 今日は、ボーカルレッスンだから……特に、手強い…… 卯月さんじゃないけど……頑張る」

幸子「カワイイボクたちは努力も惜しみませんよ! さ、着替えてきましょう!」

――――――

―――

明「はい、準備体操上がりでーす」

小梅「ありがとう、ございました……トレーナーさん……」

明「こちらこそ。いいんですよ、そもそも……」

凛「あ」

未央「おーっとぉーーー! ちょっと待ったぁーっ!」

輝子「フヒッ!?」

凛「遅いよ」

明「悪いのは、遅刻した未央ちゃんですからね」

未央「このちゃんみおを差し置いて! レッスンを始めようだなんて! 水臭いじゃーないかー!」

†††

本田未央
ルーツ:召喚獣
エゴ:楽しさを追求したい
絆:ニュージェネレーション

†††

卯月「はい、未央ちゃん13分の遅刻ですね!」

未央「よーし、ならば遅れを取り戻す早着替えをご披露しましょーう!」

幸子「少しは懲りましょう!?」

未央「ばーん! 終わり!」

小梅「き、着替えて、ない……」

凛「制服脱いだだけだね」

未央「学校の最後の授業、体育だったからさー! そのままレッスン着に着替えちゃった」

明「……コント終わりました?」

未央「あっはい! 柔軟やっておきまーす! レッスンはお先に、どうぞどうぞ!」

明「じゃあ、基礎のブレスからですね。皆さん仰向けになってくださーい」

絶対に魔物にならなそうなアイドルは結構いるよな、ダンサブルとか特撮ヲタとか

――――――

―――

小梅「凛さん、よかった……思わず、聴き入っちゃった……」

凛「明日はニュージェネレーションでLIVEバトルだからね。レッスンでつまづいたりできないよ」

幸子「むむむ、何ですかボクたちを通過点みたいに! 負ける気はありませんよ?」

凛「それでいいよ。幸子たちと一緒のレッスンでよかった。雰囲気があるから、いいプレッシャーになるよ」

輝子「こ、これ、褒められてる……のか?」

未央「褒めてる褒めてる! しぶりんはねー、いーっつも『142'sが同じ事務所でよかった』って言ってるんだから!」

凛「そッ……!?」

卯月「そうですね! 『142'sとLIVEバトルやったらどうなるだろう』『負けたくはないけど、どんな相手とやるよりもファンの記憶には残るだろうね』とも言ってました!」

輝子「おぉ……う、嬉しいこと、言ってくれるな、凛は」

小梅「は、恥ずかしい……! でも嬉しい……!」

凛「……そんな言葉覚えてないよ」

幸子「ふふふ、照れなくてもいいですよ凛さん! それでこそ、ボクたち142'sのライバル、ニュージェネレーションです!」

凛「ライバル……うん。幸子たちがいちばんのライバル。それは合ってるかな。ふふっ」

未央「するってーと、リーダーのしまむーとさっちーが、ライバル関係ってことになりますな?」

卯月「そうだね! 私、幸子ちゃんのライバルとして、頑張ります!!」

輝子「その理屈でいくと……私のライバルが、未央で……」

小梅「私が……凛さん……?」

凛「……て、手強……い? ……あ、ある意味、だいぶ手強いね」

輝子「未央みたいに、元気なダンスか……テンション上げても、身体が追いつくか、不安……」

未央「いやー、私もほっしーみたいに豹変? は無理だなー!」

幸子「パフォーマンスの傾向が違うのに、真正面から勝負してどうするんですか…… しっかりしてくださいよ?」

凛「ありがとう。大丈夫だよ、自分のやれることを精一杯やるだけ」

小梅「そうだ、明日のLIVEバトルって……相手は、誰なんです?」

卯月「はい、フリーで活動している『前川みく』さんです! 相手にとって不足なし! 頑張ってきます!」

――――――

―――

みく「み、認めないにゃーーーッ!?」

――――――

―――

幸子「おめでとうございます。さすが、このボクの先輩たちですね!」

卯月「はい、頑張りました! 僅差でしたけど、無事に勝利です!」

凛「でも、本当に手強かったよ。歌唱力もダンスもレベル高くて……私たち一人ずつでは負けていたかもしれない」

未央「こっちの振り付けに被せてアレンジして来たときは、なかなか焦らされましたぞ?」

小梅「うん……あんなの、私、できない……」

輝子「だ、大丈夫だぞ……私たちの武器は、ダンスじゃ、ないから……」

幸子「そうですね、いちばんの武器はカワイさですからね!」

凛「一応その認識は正しいんだよね……」

卯月「前川さんも強敵だったけど、やっぱり幸子ちゃんたちも強敵ですね!」

輝子「フヒ……現状把握くらいは、しないと…… ファン、欲しいからな……」

小梅「得意な、分野……ほしい……頑張ろう、ねっ」

未央「かわいい」

凛「かわいいね」

幸子「えっ、リーダーはボクですよ? えっ?」

卯月「幸子ちゃんはいつもカワイイから大丈夫です!」

幸子「あ……あ、はい、モチロンですよ! ボクはカワイイですから大丈夫ですね!」

未央「チョロい」

凛「チョロいね」

――――――

―――

みく「おかしいにゃ……みくだって巧くやれてたはずにゃ……!」

『LIVEバトルで負けるなんて失望しました。みくにゃんのファン辞めます』

みく「ううッ、なんで、なんで今回に限ってこんなに……!?」

『みくにゃんは時代に置いて行かれる予感』

みく「そういうの止めるにゃ!!?」

『ニュージェネレーションなだけに過去の世代にされるのか。失みフ辞』

みく「ちょっと本当に止めてよ!?」

みく「あァッ、もう!? なんで、どうしてこんな――」




みく「―― こ、れは……」



みく「……そうだにゃ。ポッと出のアイツらなんかに、負けを認めるわけにはいかないにゃ……!」


――――――

―――

卯月「お疲れ様です! 島村卯月、ライブ頑張ってきました!」

小梅「お、お疲れ様、です……麦茶、入れて来るね……」

凛「あれ、ちひろさんは?」

幸子「少し外出するとのことでしたよ。ボクと小梅さんで留守番中です! 輝子さんは寮に寄ってから顔を出すと」

未央「お疲れー! 今日もいいライブでしたなー! 先日のLIVEバトルの勝利を受けてか、いつものファンのみんなもいい顔してたよ!」

凛「うん……『いつもの』ファン、なんだよね」

未央「ん? しぶりんどーしたかなー、冴えない顔だぞー?」

小梅「常連さんが、いるなら……い、いいことだと、思うよ」

凛「前川さんに勝利してからそれなりに経ったのに、顔ぶれが余り変わってないんだ」

小梅「……あっ」

幸子「先日前川さんに勝った成果が、ほとんど出ていない?」

卯月「はい、その通りです! 島村卯月、ここ数回の増加率を確認したけど、微増です! 前川さんの平均動員数からは想定外に低い人数です」

未央「みくにゃんのファンは結束固いようだねぇ?」

卯月「そういうわけでもないみたい。ファンサイトやSNSだと、『みくにゃんのファン辞めます』宣言が、あのLIVEバトルの日から無視できない数になってます」

小梅「ファン、辞めたのに……ニュージェネレーションに……来て、ない?」

凛「確かに、決まった数のファンが、必ず勝ったほうに移動するわけじゃないけど……」

未央「ほとんど来ないなんてのも、これまた不思議な現象ですなー?」

「「「「「うーん?」」」」」

輝子「お、お疲れさ……フヒ? ……みんな、ど、どうしたんだ、考え事……?」

小梅「あ、しょーこちゃん。うん、少しね、変なことが、あって……」

輝子「変…… わ、私も変なもの、見た。フヒ、ちょっと面白かった……」

幸子「変なもの? どんなものですか、輝子ちゃん?」

輝子「お店の窓とか、看板とか、あと……電柱とかにもあったな……貼紙で」

未央「貼紙? 解った、何か小粋なジョークでも書いてあったんだ!」

輝子「フヒ!? ま、また未央は適当言って……あ、で、でもジョークと言えなくもないな……『みくにゃんのファンはじめました』とか『みくにゃんのファンに戻りました』とか……」

「「「「「!?」」」」」

ちひろ「はーい、皆さん、お疲れ様です! 幸子ちゃんと小梅ちゃんは、お留守番ありがとうございました」

†††

千川ちひろ
ルーツ:天使
エゴ:世界に輝きを与えたい
エゴ:約束を守る

†††

小梅「特に、何も、なかった……です」

幸子「カワイイボクに会いにファンが押し掛けて来ないかが心配でしたけど、留守番はつつがなく終わりましたよ!」

ちひろ「はい、助かりました。卯月ちゃん、凛ちゃん、未央ちゃんはライブお疲れ様でした」

未央「お疲れ様だよーん! ちひろさんはどちらへ?」

ちひろ「それなんですが、皆さん」

凛「……もしかして」

ちひろ「凛ちゃんは薄々気付いていますか―― 先日のLIVEバトルの後、その付近で"羽根"の力を借りたと思しき反応が見られたそうです」

輝子「い、一大事、だな……フヒッ」

ちひろ「揮われた力は僅かだったようですが、時間と場所から、卯月ちゃんたちに関係がありそうだとして、調査を任命されました」

卯月「解りました! 島村卯月、頑張ります!」

凛「ふーん……事件になりそうだったり事件が起きてたりしたら、そのまま解決すればいいかな」

未央「よーし、このちゃんみおとニュージェネレーションにお任せさ!」

小梅「私たち……何か、手伝う?」

ちひろ「うーん。今は調査の段階ですから大丈夫かな? 必要そうなら、追ってお願いしますね」

輝子「フヒ……わ、私にはまだ関係ない、な……寮戻って、トモダチの世話、しよ……」

幸子「ボクも戻ります。小梅さんはどうしますか?」

小梅「あ……私は、少し残ってから……戻る、ね」

卯月「それでは、私たちは行って来ます!」

未央「きまーす!」

凛「……もうすぐ、日が落ちるね」

――――――

―――

小梅「……"羽根"?」

小梅「私たちが住んでる、この『地球ドミニオン』を作った『ドミネーター』の使徒……『地球の守護者』の羽根、だね」

小梅「ほんの、数年前……『地球の守護者』は『虚無』に翼をもがれて、力が弱まった……今、地球に怪事件が増えている原因、だよ」

小梅「翼がもがれたときに散らばった、無数の"羽根"…… それは、地球を守る力の欠片で……」

小梅「手にすれば、とてつもない力を得る……だから、魔物も、半魔も、事情を知っている人間も含めて……思惑はそれぞれで……奪い合ってる……」



小梅「あ。ちょっと、余談、いい……?」

小梅「エゴが、強まりすぎた魔物は……エゴを具現化した、小世界を、作るの……それが『ドミニオン』で、そこまで至った魔物が『ドミネーター』」

小梅「……この地球も『地球ドミニオン』って呼ばれてる、ドミニオンのひとつ……『ドミネーター』は……明らかになってない、ね」

小梅「……"羽根"があれば、小さな町だって、作れる…… あ、ゾンビでいっぱい……とか、どう?」

トリニティか

>>11
ナンジョルノみたいな子がなんかしらきっかけに
堕ちて敵に回ってしまうのを楽しむゲームなんだよなぁ

第一版には執行者っていうまんま宇宙刑事なやつがあったんだがなあ

>>20
ゾンビサバイバルですね、わかるわ

>>23
トリニティにもいるぜ、宇宙刑事でウルトラマンで戦隊ヒーローなルーツ

――――――

―――

卯月「いつものように手分けして調査だね。もう18時になりますから、何かあったらすぐに連絡ですよ!」

未央「ローゼキモノに帰ってもらうくらいワケないから、心配ないない!」

卯月「態度の良くない人たちはともかく、凛ちゃんたちはまだ15歳なんだから。補導されちゃったりしたら後々大変ですよ!」

凛「そんなことまで心配しなくたって……その辺はいつも上手くやってるつもりだよ」

未央「いやー、しまむーの心遣いにおねーさん感激だよ! うっうっ、立派になって……」

凛「ツッコミ入れる時間も惜しいから行くね」

卯月「はい、頑張りましょうね!」

未央「えっ、ひどくない……?」

――――――

―――

卯月「二人とも、お疲れ様! 前川さんは、あれから数日で活動を再開していますね。SNSや動画配信がメインです」

凛「ホームのライブハウス、私たちとバトルしたあのハコは休業中だったね」

未央「うーん? ファンの前にも姿を見せてない? そんなちゃんみおはファンのたまり場の場所、聞いてきたんだけど……行ってみちゃう!?」

卯月「行きましょう!」

凛「ファンに直接話を聞けるなら、そのほうが話は早いよ」

未央「よっしゃー! レッツゴー三人ー!」

――――――

―――

  『ライブ? いつやってくれるんだろうねー。LIVEバトルの数日後に撮影会があったきりだよ』

卯月「その時の顔ぶれはどんな感じだったんですか?」

  『そりゃ、ホームで負けたわけだし……減ったよね。でも俺はファンを曲げないよ?』

卯月「そうなんですね! 変わらないファンがいてくれるのって、きっと素敵だと思います!」

  『まだ高校生で、事務所にも入らずにあれだけ頑張ってるんだから、俺たちが応援しないとねえ』

卯月「頑張り屋さんなんですね……改めて、尊敬しちゃいます!」

  『解ってくれる? うんうん……みくにゃんのファンにならない?』



  『常連の猫カフェでも見てませんねぇ』

凛「プライベートでも知り合いなの?」

  『うーん、一応そうですけど……ここではあくまでファンの一人ということでお願いします』

凛「連絡が取れたかどうかだけでも、と思ったけど……」

  『……LIVEバトル後の撮影会の後に『ファン辞めるなんて笑えない冗談いう子には、お仕置きしなきゃいけないにゃあ』ってメール来ましたね』

凛「ちょっと穏やかじゃないね。いたずら猫の気紛れなら、いいんだけど」

  『時々、ギクッとするようなこという子ですから。ところであなた……その眼鏡よりも! この眼鏡が似合うと思うんです! どうぞどうぞ!』



  『ニュージェネレーション…… 確かによかったけど、私はみくにゃん派ね』

未央「おおー。揺るぎないですねー? 実際に辞めちゃった人って、身近にいました?」

  『ファンを辞めるなんて言っていた裏切り者のことなんて。最近見なくなった、としか語れないわ』

未央「むむむー、そうですかー……別の、それこそニュージェネレーションのライブに行くとかいう話は?」

  『……そう言っていた人もいるけど、殆どは連絡が取れなくなっているから、実際にどうしたかは解らないわ』

未央「ですよねー! いやー貴重なお時間ありがとーございましたー!」

  『……ああ。やめると宣言して戻ってきた連中なら、知ってるわ』

>>22
そんなド外道な愉しみ方したことねえww

――――

――

未央「というわけで、我々ニュージェネレーションは一度寮に戻り、みくにゃんの出戻りファンの方々の調査を試みているのであります!」

卯月「具体的には、SNSのコメントを掘り返しています!」

輝子「じ、地味だな……机の下でもできる、情報収集……」

幸子「歩いて集めるばかりが情報でもないですし、切り口の問題ですよ。ところで、どうして卯月さんのノートパソコン持ち込んでまでボクたちの部屋にいるんですか……」

凛「三人で手分けするんだから、幸子と輝子のパソコンを借りたほうが早いでしょ?」

輝子「……凛と未央は、早く自分のを買おう、な?」

凛「家に帰ればあるよ」

幸子「それなら凛さんの家でやればいいじゃないですか!?」

凛「家族を巻き込みたくないから」

輝子「わ、私たちは巻き込んでいいのか……?」

未央「あれだよ、えーと、気の置けない友人ってやつ!」

卯月「私たちは、幸子ちゃんたちを信頼してるんですよ。仲間ですからね!」

輝子「う、うん……別に、巻き込まれることは、気にしてないから、いい……」

幸子「巻き込まれるというか…… まあ、助けることが嫌なワケではありませんし、部屋もパソコンも使ったっていいんですけど! ボクたちの就寝時間は考えてくださいね?」

卯月「はい、善処します!」

未央「いつもありがとーさっちー!」

輝子「気のせいかな、凄く適当にあしらわれた……未央はともかく、卯月さんまで……」

幸子「ボクは予習でもして寝ますよ……」

凛「卯月、未央。この人どうかな」

卯月「『LIVEバトルで負けるなんて失望しました。みくにゃんのファン辞めます』……LIVEバトルのすぐ後ですね」

未央「その三日後のみくにゃんの撮影会も、行った様子どころか気にした様子すらないですなー?」

凛「……その次の日の夕方に出掛けて、数日は何もメッセージが上がってないね」

卯月「次のコメントは前川さんのグッズ写真つき……前にも増して熱烈な前川さん推しに見えます」

未央「うわーこの空白の数日! 猛烈に怪しい!?」

幸子「その『夕方に出掛けた』ときの書き込みで、どの辺だかわかりませんか?」

凛「そうは言っても、ただのテイクアウトコーヒーの写真だよ。レシートが写り込んでるけど支店名は隠れてる」

輝子「このお店、いろんなところにあるし、風景もほとんど写ってないから、無理がある……一昨日私たちが行ったところとは、違うみたいだけど」

卯月「窓の外が少し写っているだけですね。交差点かな?」

未央「カフェラテと……ビワのタルトだって! 名前だけでも美味しそう!」

幸子「ああ、そのタルト美味しかったですよ。確か、『今日から期間限定』と、言って……ました、よね?」

輝子「う、うん。試しに食べてみよう、ってさっちゃんが頼ん…… あっ」

凛「この写真の日付、一週間前だよ? 一昨日から発売じゃ話が合わない」

未央「解った、タイムトラベラーだ!」

卯月「はい、今調べました。二週間前から先行販売していた店舗が何件かあります!」

未央「がーーーん! 外れた!?」

凛「それなら、風景と合わせてもう少し絞り込めないかな……」

卯月「他の情報とも照合してみますね。角度がこんな感じで…… この看板が……」

幸子「ボクのヒントが役に立ったようですね! カワイイボクは、観察眼も鋭いですから!」

輝子「タルトは偶然だけど……うん、書き込みに注目したのは、イイ線行ってた、かも……?」

卯月「店舗特定できたよ! ここです!」

凛「この店舗…… みくとバトルしたLIVEハウスのすぐ近く!」

未央「やっぱりあのハコに踏み込むしかないかな? かな?」

幸子「もう22時ですよ?」

卯月「猫は夜行性だから、何をしているのか見極めるなら、夜のほうが都合がいいかもしれません!」

未央「ちひろさんにはちゃんと連絡しておくから、まーなんとかなるでしょー! 心配御無用!」

輝子「あんまり、騒ぎにすると、活動に支障が出るから……注意、してね」

凛「未央の言う通りだよ。心配いらない。夜は、『本当の私たち』の時間でもあるから」

――――

――

凛「あのライブハウス、もう営業時間外だよね」

未央「もう深夜だもんね! 私たちも営業時間外だね!」

凛「……裏口の前にいるあの人たちは」

卯月「偶然、たむろしてるのかも?」

未央「偶然、猫耳付けて?」

卯月「確率的に有り得なくはないかも?」

凛「誰かが操って作った状況を、偶然とは言わないよ」

未央「うーん。よし、見る限り普通の人たちだし、何かあったら実力行使で!」

卯月「人通りは少ないし、騒ぎになる確率は低いですけど、それはちょっと……」

未央「大丈夫、私は気にしないから! それでは未央、行ってまいりまーす!」

卯月「えっ」

凛「ちょッ」

未央「すみませーん、ちょっとその建物に用事あるんですけど、どいてもらえますかー?」

  『……招待状は?』

未央「え。んーーー…… 持ってない? かも?」

  『ここは、猫の王国の入り口なんだけど。……何の用事があるって?』

未央「いやーははは…… 何の用事だったかなー……」

  『18歳未満がフラフラしていい時間じゃあないよね』

未央「んんんー、18歳未満のような、そうでないような! なんちゃって!?」

  『不注意すぎるんじゃないかなあ…… ニュージェネレーションのお嬢さん』

未央「いッ、バレてる!? やばいぞしまむー、しぶりーん!」

  『やっぱり三人ともいるんだねぇ』

凛「……地雷踏みに行った挙句、最後は自爆ってどういうことなの」

卯月「こうなった以上、隠す意味はなさそうですね!」

未央「くっ、しくじってしまった!」

凛「後で説教ね」

卯月「ご存知なら聞かせてください。前川さんのファンを辞めるといって行方不明になった人たちについて、何か知りませんか?」

  『……知りたければ、この中に入ればいいよ』

未央「あれっ? あっさり?」

  『君達が、みくにゃんのファンになってくれれば、万々歳だからね』

凛「ふぅん……虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってとこかな」

未央「猫だけに、ね!」

凛「……後で説教ね」

未央「お邪魔しまーす、で、いいのかな?」

卯月「島村卯月、お邪魔します!」

未央「うおっ、この雰囲気……!?」

†††

《資産:法則》
このドミニオン(ライブハウス内)では、みくにゃんがトップアイドルである。

†††

凛「このハコ……もしかして、と思ったけど」

卯月「ドミニオンだね。……でも、前川さんは魔物には見えませんでしたよ」

凛「LIVEバトルで見た限り、怪しい雰囲気はなかった。対戦相手も、観客も、ちゃんと見て、コミュニケーション取ってた」

未央「そもそも溜まり場行ったときに『みくにゃんのトモダチ』がいたよ! 絆を持っていながら、魔物、ましてやドミネーターだなんて!」

卯月「考えられるのは……"羽根"のせい、ですね。音響さんも照明さんも、まるで生気がありません……」

凛「操られてるのかな。……今日は調査だけかと思ってたけど、解決できそうだよ」

未央「し、しまったー! ステージに立つのに衣装持ってきてなーい!?」

卯月「大丈夫です! 衣装だけでパフォーマンスが決まるわけじゃありません!」

凛「私たち三人の本当の強さ、あの猫の女王様にも見せてあげよう」

――――

――

轟く歓声は、ライブハウスの許容人数からは想像し難いほど奮っていて、舞台の主役への熱狂を如実に顕していた。

前川みくにとって、この舞台こそが、自分を自分たらしめているもの、いわば世界そのものであった。

「ふふん。三人で雁首揃えて、よくお出ましだにゃ……ニュージェネレーション!」

みくはパフォーマンスを中断し、呼び掛けた仇敵に視線を向ける。それは猫の眼差し。妖艶かつ殺気を秘めた眼差し。

熱に浮かされたように声を上げるファンたちだが、ニュージェネレーションの三人はおろか、みくがパフォーマンスをしていないことさえ構わず、ただみくへの熱狂を叫ぶばかりだった。

舞台の上のアイドルと、観客席のファンが、お互いを認識していない。

「前川さん。あなたのファンを辞めたと言った人たちが行方不明になったり、突然戻ったりしていること。知っているんでしょう?」

感情を押し殺した声で問う卯月に対して、みくはその顔にニタリと笑みを貼り付けた。可愛らしさにそぐわない、不気味な圧力を有した笑顔だった。

「ファンを辞めるなんて言うから、シークレットライブに招待して、みくの魅力を再確認してもらってるだけだにゃ」

恐れか、怒りか、声色に僅かな震えを含ませて、未央が声を上げる。

「ねえ、みくにゃん。……何日くらい、ぶっ続けなの?」

「みくは適当に休んでるにゃ。何日も歌い続けるなんて、ヒジョーシキにゃ?」

「この人たちだよ!」

「んんー……心の底からファンに戻るまでは、ここにいるはずにゃ。それが、このライブのルールだからにゃ」

「じゃあ、あの人も、この人も、やつれた顔なのは……!」

未央は、退屈そうな様子の我侭な猫の女王を問い詰める。

「平気にゃ。サイリウム振ってコールしてる間は死にゃあしないにゃ」

興味なさそうに、ドミニオンのルールを語ったドミネーターみくの前に、ダンッ、と舞台を強く叩く音が響いた。

「勝手が過ぎるよ、前川みく」

跳び乗って来たのは凛だった。長髪をなびかせ、眼光鋭く舞台上から客席を一瞥する。

「輝きのない目。こんなのファンじゃない。ただのハリボテ、それこそ操り人形ってヤツだよ」

「……勝手はそっちだにゃ、みくの舞台に横槍入れて説教とか、図々しいにもほどがあるにゃ!」

「ハリボテ並べただけで観客がいないステージなんて、練習にもならないよ」

明らかな怒気を帯びた女王の一喝を、涼しい顔で受け流す。

「アンタにアイドルとしてのプライドがあるのなら、自分の力で勝負するべきだよ」

「そうだー! それに"羽根"は危ないんだぞー! すぐに手放して、元のみくにゃんに戻るんだー!」

「だッ…… 黙るにゃあッ……! みくは、みくはファンを失うわけにはいかないのにゃ!」

黒いオーラがみくの身体から吹き出す。

「みくは今まで独りでやってきて…… 自分の力だけで、やっとこの劇場まで来たんだにゃ! ポッと出のお前たちなんかに負けて集めたファンを奪われたら! またあの淋しい路上に逆戻りにゃ!!」

それは、彼女の内から爆ぜる負の感情。焦り、悲しみ、苦しみ、悔い、孤独感。

「仲間と一緒に、私に勝って笑ってる!! そんなお前たちに、孤独な敗者の私の気持ちなんて!」

気勢に一瞬怯んだ凛の横に、影が差す。いつもの笑顔を湛えた卯月だった。

「『人間』なら、誰だって、孤独を感じたことがあるはずですよ。私も、そうでした」

「私も最初は独りだったなー、たまたま仲間が見付かっただけとも言えるね!」

追って未央もステージに上がる。対面のみくの顔が、泣きそうな様子に歪む。

「夕方だったかな。溜り場でファンに会って、話を聴いたよ。みんな、みくが好きで、出て来ないことを心配していた」

凛の言葉に、みくは一度唇を引き結び、湧き上がる感情を堪える。が。

「そん、なのッ……! 解ってるにゃ!! ニュージェネレーションだって苦しんで頑張ってみくに勝ったんだにゃ!」

ぼろぼろっ、と大粒の涙がみくの頬を伝って落ちた。黒いオーラはいつの間にか収まったのか、表には感じられない。

「そしたらお前たちのファンが増えるのは当たり前で、だけど、みくのファンだってそんな簡単にいなくなるわけないって、本当は解ってるにゃ!!!」

しゃくりあげながら、恥も外聞もなく言葉を吐き出す。

「だけど、だけど、独りになるのは怖いんだにゃ! 本当は、こんなこと、もうやめたい、けど……!」

一頻り発言を終えたのか、深呼吸を一度。ギャラリーの歓声は響いていたが、耳には入って来ず、四人の間に言葉は途絶えた。

「んーっと、それじゃーさ、みくにゃん。よかったら――」

未央が、手を差し伸べた刹那。黒い爪が風を切り裂く。

『……認めたくないんだにゃ』

†††

前川みく
ルーツ:バステトの子ら
エゴ:アイドルでいたい
エゴ:猫キャラ

†††

そういって面を上げたみくの表情に悲しみや淋しさはなく、与えられた好意を切り裂いた悪意と狂気のみが湛えられていた。

「そんなのいけません! 元に戻って、反省してもらいますからね!」

しかし、その爪の一薙ぎは、未央の好意を破ることこそすれ、彼女を傷付けることはなかった。間に入った鋼の腕によって、護られていた。

「島村卯月、頑張ります!」

――――

――

果たしてアンドロイドは夢を見るのだろうか。

彼女にはわからない。



心魂機関(ゴスペルエンジン)を組み込まれ、心を持つアンドロイドに生まれた彼女は、

心を持たないアンドロイドでもなければ、肉の身体を持つ人間でもない。

どちらも解ることはわずかだ。

人形は、アンドロイドは、命令以外では動かない。不可能なことは不可能なままだ。

人間は違う。誰かのために自分から動ける。できるかわからなければ、頑張ることができる。



笑顔は素敵だ。ココロが暖かくなるから。

私も笑顔でいよう。

みんなの笑顔を守れるニンゲンになろう。



果たしてアンドロイドは夢を見るのだろうか。

彼女にはわからない。



だから彼女は夢を見る。

頑張って、みんなに笑顔を与えたい。

頑張って、みんなの笑顔を守りたい。

――

――――

――――

――

みくの黒い爪は、卯月の腕に阻まれ、未央への不意打ちには成り得なかった。

「うひゃぁっ!? し、しまむーありがとー!!?」

「やっぱりお前も半魔にゃ! それならそっちから片付けてやるにゃあ!!」

逃げ退る未央を庇う卯月に、みくが爪を向ける。

「前川さん! アイドルはみんなに笑顔を与えるものですよ!」

卯月は怯むことはない。彼女は鉄の心臓、心魂機関の持ち主だ。

「黙るにゃ、このポンコツぅ!!」

悪口を叩いて跳びかかるみく。対して一歩も動かず仁王立ちの卯月。

「解らず屋さんなんですから! 反省! して! くださいッッ!」

俄かに、卯月の両腕に回転機銃がポップアップするや、大量の弾丸を撒き散らす。

「いッ!? に゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃ!!??」

弾丸の群れはあやまたずみくを襲い、ステージもろともボロボロにしてみせる。"羽根"の力を得た魔物を一撃で打ち払うほどではないにせよ、機先を削ぐ形となった。

「お、お前!? 反省ってレベルじゃにゃいにゃ! だいたいそれがアイドルのやることにゃ!!?」

「……それ、アンタが今更言うことかな」

卯月の後ろから凛が呟く。毛髪はブルーグレイに変わり、ざわめくそれの合間から覗く耳は、既に狼のものに変容していた。

「……げッ、犬!?」

「狼だよ」

その凛の声は、みくの足元から聞こえた。一瞬にして、潜り込んでいたのだ。彼女は人狼、獲物を逃したりはしない。

「やっちゃえしぶりん!」

妖精をパステル調でデフォルメしたような、コミカルな姿。真の姿を現した未央から、星型の霊力の結晶が放たれ、凛の背中に張り付く。

「次はライブで勝負しようね」

結晶が弾け、霊力が凛の爪に漲る。ブルーグレイの竜巻が、みくを巻き込んだ。

「に゛ゃーーーーーーーッッ!?」

――

――――

しまむらさんの自動人形はいいなぁ

1レスでやられるなんて失望しましたけど、みくにゃんのファンは辞めません

あ?しまむらさんくそかっこいいんじゃ?^

――――

――

輝子「ひ、一晩で、解決したって、ちひろさんから、聞いたぞ……やるな……」

凛「偶然だよ。運良く話が聞けただけ」

未央「みんなにも見せたかったなー、この私の大活躍!」

凛「後で説教ね」

輝子「被害者も、無事だった、のは……めでたしめでたし、だぞ」

卯月「観客の皆さんも無事に帰れたようですし、一安心です!」

輝子「卯月たちのファンも、増えると、いいな?」

卯月「はい! また頑張りますよ!」

未央「でも、結局"羽根"は見付からなかったんだよねぇ」

みく「しょーがないにゃ。みくは、卯月チャンたちに負けて落ち込んでたところに、メール経由で力を与えられただけだったからにゃ」

「「「!?」」」

凛「……何の用? 事と次第によっては、もう一度懲らしめようか」

みく「おー怖いにゃあ、事情も聴かずに喧嘩腰とは、ずいぶん立派な番犬にゃ?」

凛「犬じゃなくて狼だって言ったよね?」

輝子「ま、ま、待て、待つんだ、凛…… さっき、ちひろさんが手続き、してたから……」

卯月「契約書と入寮申込書に記入してありますね」

未央「へっ? そ、それって、もしかしたらもしかしちゃったりする?」

みく「んー…… ……未央チャン。ほい。……さっきのやり直し。させるにゃ」

未央「……!! おー、おーーー! みくにゃん! よ、よかったら! 私たちの! 仲間に!!」

みく「に゛ゃに゛ゃに゛ゃ!? 力いっぱい振るにゃ!? 腕! 痛! 痛い! 抜ける!!」

輝子「あ、熱い握手……」

卯月「申込書に記入済みだから、もう仲間ですよ! いらっしゃいませ、みくちゃん!」

凛「……次はライブで勝負しようって、言ったのに」

みく「ケチケチするもんじゃないにゃ。同じ事務所だって、ライバルには変わりないにゃ?」

卯月「大丈夫ですよ! 凛ちゃんは、カッコイイこと言ったのにあっさりフイになってしまって悔しいだけで、みくちゃんが来てくれたことは嬉しいはずです!」

凛「なッ……!? ちょっ、卯月……!」

未央「案ずることなかれー! 今日から私たちは、仲間で、ライバルで、ともだちさ!! これからもよろしく、みくにゃん!」

みく「んふふふふ……事務所じゃ後輩だけど、業界じゃあセンパイにゃよ。うかうかしてたら、トップの座はイタダキにゃ?」

輝子「フヒヒ…… じゃ、じゃあ今日は、寮で歓迎会、だな……幸子たちにメールしとこう……」

――――

――



『みくにゃんがやられたようね』



『ダー。ですが、ミクは私たちの中でいちばんのスラーブイ…… 小物』



『いずれブツかるトキが来るかもナ! まあ今は放っておこう! それよりスシ食べたいゾ!』



『仰せのままに』



――

――――

>>43

×『いずれブツかるトキが来るかもナ! まあ今は放っておこう! それよりスシ食べたいゾ!』

○『いずれブツかるトキが来るかもナ! 今は放っておけばイイ! それよりスシ食べたいゾ!』

みくにゃんが一番の小物で爆笑しました。みくにゃんの絆になります!

――――

――

小梅「卯月さんは……"夢見るアンドロイド"、だよ」

小梅「誰に作られたかも、何のために作られたかも……定かで、ないけれど」

小梅「自分は、誰かの、素敵な笑顔のために生まれた…… そう信じて、アイドルを目指してる」

小梅「誰より幸せそうに……誰より頑張って、レッスンしてるよ」

小梅「ニュージェネレーションのリーダーだけど、それ以上に……みんなの、心の、支え?」

小梅「危ないときは、守ってくれる…… 頼りになる、お姉さん。えへへ……」

小梅「真の姿を現すと、全身に、継ぎ目とかが見えるね……腕からは機銃、ガトリングガンも、出てくる」

小梅「『危険の排除も、アンドロイドの役目なんですよ』って、言ってた……怒らせちゃ、ダメ、だね」

小梅「でもやっぱり、いちばん得意なのは、守ることだって……」

小梅「うん……卯月さんの力の根源は『頑張ること』そのもの、だから」

小梅「目標が、夢があるうちは、きっと、大丈夫……だと思う」

――

――――

いったい、なん・なん・なんとナニーリアなんだ…

パッション枠であやめオナシャス

――――

――

卯月「凛ちゃんの真の姿は、青みがかった灰色の髪の毛が綺麗なんですよ!」

卯月「狼の耳や尻尾が、スマートでカッコイイんです!」

卯月「まさに"狼王の娘"です!」

卯月「そうはいっても、凛ちゃん自身は人間の家に生まれています」

卯月「『先祖還り』や『物語に選ばれる』と言われる現象ですね」

卯月「そういうひとは、得てして、人間としての絆と魔物としてのエゴに挟まれて、悩んじゃうんです」

卯月「凛ちゃんもそうでした。少しですけど、荒れてて……だけど、一緒にアイドルを目指すことになって」

卯月「『自分がここにいること』を、示せるんだって解って」

卯月「今では、ご家族とも至って円満で、毎日楽しそうです!」

――

――――

>>45
一瞬、即昇華っておもったがこれBBTだった

――――

――

ちひろ「そうですね、夜中に卯月ちゃんから連絡をもらって。一般市民の皆さんには穏便に帰ってもらいましたよ」

ちひろ「みくちゃんですか? その時には、もう姿を消していました。"羽根"も見付からずじまいでしたね」

ちひろ「凛ちゃんたちも見なかったと言っていましたから、おそらくは、彼女もまた被害者なんでしょう」

ちひろ「私は……手紙だけ置いてきました。まだ、アイドルを続けて欲しかったので、力になれるならと思って」

ちひろ「何と言っても"魅惑の猫娘"ですからね。この事務所に来てくれれば、心強い戦力になってくれるはずです」

ちひろ「……『気まぐれ』に困らされないか、って? 案ずることなんてないですよ、見守りましょう」

ちひろ「みくちゃんはアイドルなんですから。きっと素敵な輝きを見せてくれます」

ちひろ「私が、彼女たちを信じなくてどうするんです」

ちひろ「世界に愛と希望を振りまく! その役目を、きっと果たしてくれますよ」

――

――――

やち天

――――

――

みく「幸子チャン、鮭あげるからコロッケよこすにゃ」

幸子「好き嫌いはいけませんよ。ボクは残さず食べますから!」

輝子「なめこの味噌汁……うまい……」

みく「にゃー! 晩御飯の献立が決まってるなんて聞いてなかったのにゃー!」

輝子「り、寮なんだから、当然…… 猫なのに、魚、嫌いなのか……フヒヒ、滑稽……」

みく「ふぎぎぎぎ……! 本来のネコは、別に魚が好物なわけじゃないにゃ!!」

幸子「ちゃんと食べないとレッスンで持ちませんよ? はい、一個あげます。鮭半分ください」

輝子「タケノコの煮物、半分あげる……鮭、もらう……」

みく「ふにゃっ!? ……ふ、二人ともありがとうにゃああ!!?」

輝子「これからは、ちひろさん、とかに……言っておくといい……ぞ」

幸子「泣くほど食べられないなら無理しても仕方ないですよ。まあカワイイ上に好き嫌いのないボクを見習うことですね!」

みく「ううぅ、ぐうの音も出ないにゃ…… この借りは明日のレッスンで返すにゃ!」

――――

――

輝子「グ、グミ……あげる」

みく「ありがとにゃん♪ ねーね、幸子チャン、輝子チャン」

幸子「はい?」

みく「今日は、ジムでレッスンにゃんだよね?」

輝子「そ、そう。涼しくてよかった…… 駅から歩いて、15分くらい、だな」

みく「にゃんか、さっき曲がった交差点に戻ってる気がするんにゃけど」

幸子「え? あれっ、そういえば?」

輝子「……さっき、いつもと違う場所で曲がった? か?」

みく「んもー、二人ともしっかりするにゃあ」


――――


みく「……この交差点、四回目、にゃ……?」

幸子「や、やっぱりオカシイ!? うわッ、もう30分以上歩いてますよ!?」

輝子「携帯……ず、ずっと圏外だぞ」

みく「あっ、みくの直感が危険を告げているにゃ!」

輝子「フヒ、フヒヒ……今更、過ぎる…… うん、明らかに、ヤバイ、な……」

幸子「ボ、ボクはただレッスンに行きたかっただけなのに! 何故!?」

みく「み、みんな落ち着くにゃ! まずは、まずはそう、えーっと……」

輝子「怪異の仕業かもしれない、から、気配とか、探ろう……」

みく「それにゃー!」

幸子「うう、こんな罠を張って迷わせるなんて、犯人はカワイイボクを捕らえたいんですかね!」

みく「幸子チャンはハート強いにゃあ」

幸子「そうは言ったものの……迂闊に別行動を取るのは、下策な気がしますね」

輝子「既に、誰かの術中……ドミニオンの中、だからな…… ルールが解らないと、どうにも……」

†††

《資産:閉鎖》
彼女たちは、この交差点付近に閉じ込められる。

†††

みく「そうは言っても、みくたち以外に人の気配がなくなってるにゃ。つまり目的は」

幸子「……ボクたち、ですかね。イヤです!! ボクは何としても脱出します!」

輝子「フヒ、私も同感、だぞ…… 仕掛け、調べて、みよう」


――――


みく「あ、あかんにゃ…… この交差点が、中心になってることくらいしか、解らにゃい……」

輝子「……こ、こういうの、何ていうか、知ってるぞ。と、徒労……」

幸子「やめましょう!?」

みく「ところで、気のせいでなければ、やたら寒くなってにゃい……?」

輝子「だ、だな…… ドミニオンに、閉じ込められてから、じわじわ下がってる……多分」

幸子「えっ? あ、あぁ、確かに、言われてみれば? ……ボクは暑さ寒さに強いので仕方ないですね!」

みく「いくら寒さに強くたって、これで気付かないとかどんだけにゃ!?」

幸子「た、偶々ですよ!? ボクは普通の人間ですからね!? ああ寒いなあ!」

――――

――

輝子「フヒ…… 寒い、これはヤバい…… 五月なのに、膝まで、雪……」

みく「さむいにゃ…… おなかすいたにゃ……」

幸子「立ち止まったらマズいです! そうだ、さっき買ったおやつ小魚がありますよ! ボクは用意周到ですね!」

みく「ふぎゃーーーッ!」

幸子「わーなんてコトを!!?」

輝子「あ、元気になった……幸子のおかげだ」

幸子「さすがボクですね! とはいえ、さすがに限界ですよね…… そこのビルの陰に行きましょう!」

みく「うぁっ…… 立ち止まったら、ほ、ホントに、寒……ッ! 幸子チャン輝子チャン、くっついて、くっついてにゃ!」

輝子「フヒッ!? むぎゅぎゅ……て、定番だけど、キツいドミニオン、だな…… "閉ざされた雪山"みたいに、なってる」

幸子「むむ……前川さん、このジャケットどうぞ。無いよりはマシなはずです!」

みく「ふにゃっ!? さ、幸子チャン、ありがとう……にゃ?」

幸子「ま、まあ、ボクは普通よりいくらか丈夫ですからね! 困っている仲間を助けることくらい当然ですよ! フフン!」

輝子「お、おぉ……優しさが、身に染みるな……」

みく「うぅぅぅ、基本一人だったみくだけど、仲間もいいモンだって実感してるにゃ……」

――――

――

幸子「……春も終わろうとしているこの時期、まして街中で、ビバークすることになるって」

輝子「フヒヒ…… 幸子には悪いけど、何が起きるのか解らないのが、怪異だから……な。あ、そのトタン板、使えそう」

幸子「これですね。よいしょ」

輝子「よし、壁と庇、できたから…… 少し、楽か?」

みく「……うん……」

幸子「むっ。輝子さん、その一斗缶の中に、火を点けてもらっていいですか? 前川さんが限界かもしれません」

みく「ち、違うにゃ…… 確かに寒くて辛いけど意識ははっきりしてるにゃ。それよりさっき、いっこ思い出したにゃ……」

輝子「何を、思い出した、んだ? ほら、火……暖かい、ぞ」

みく「……基本一人だった、って。言ったにゃ。一応、顔なじみくらいはいるんだにゃ」

幸子「それはそうですよ。人は独りでは生きていけません」

みく「みくは猫だけどにゃ」

幸子「……半魔も同じです」

みく「にゃひ。……顔なじみの中には、人間じゃないのも、モチロンいるんだけど……」

幸子、異能者で体力高い感じなのか
他も半魔なのに…




  『ドーブルイ ジェーニ。こんにちは、皆さん。お久しぶりですね、ミク』


「「「!!?」」」



幸子「わ、わわッ!? はッ、前川さん、あの、真っ白でキレーな人が、その顔なじみの……?」

みく「そう、そうだにゃ。あーにゃん……昔なじみ、だにゃ」

アーニャ「ンー、まずは名前ですね。私、アナスタシア、言います。アーニャ、呼んでください」

輝子「……この雪の中、平然と、歩いて…… や、やっぱり、お前が、元凶?」

アーニャ「ダー。私は、スニェージニャ・ジェンシェナ……"雪女"です、ね」

幸子「じゃ、じゃあこのドミニオンは……!」

アーニャ「ダー。私が、ドミネーターですね。ミクと、お話させてください」

みく「……いったい何の用があるにゃ。あの話だったら、キョーミないって言ったはずにゃ?」

アーニャ「でも、ミクは、あの力を借りました。ピェロー、"羽根"の力を」

みく「そッ、それは! あの時は参ってて…… そう、気の迷い! 気まぐれにゃ! もうしないにゃ!」

アーニャ「ミクが、私についてくるなら、他の二人は、帰っていいです。そうでなければ、痛い目に、遭うかもしれません……ネ?」

みく「だから、そういうとこがイヤだって……!」

輝子「……思うように、して、いいぞ。大事なことを、忘れなければ、私は、いい」

アーニャ「……ミク、いいトモダチを、持ちましたね? 大事なものが、傷付くのは、悲しいですよね」

みく「……ッ! みくは! 私は、そっちにはいかないにゃ! あーにゃん懲らしめてでも、ここから出してもらうにゃ!」

アーニャ「アー…… それは、とても残念です。アナタたちは、それでイイですか? ミクが、全部決めていますよ?」




幸子「モチロンイイです!」


みく「えっ、さ……っ!?」

アーニャ「オー。即答、ですね?」

幸子「当事者は前川さんですからね! 本人が嫌だと断ったんです、仲間としては尊重するべきです!」

輝子「フヒ、ほとんど、言われた…… さすが、リーダー」

みく「さ、幸子チャン、輝子チャン……良かったのにゃ?」

幸子「寛大で142'sのリーダーであるカワイイボクとして、当然のことをしたまでです!」

輝子「そ、そう…… 仲間が決めたこと、リーダーが賛成したことだし、私も、手伝うぞ……」

アーニャ「グルーブィ……手荒なことは、したくない、ですが…… 仕方ない、です」

白い肌、涼やかな銀髪、怜悧な眼差し。高貴さすら纏った彼女、アナスタシアは、ゆったりと歩む。

降り積もる雪の上を散歩するように、吹き荒ぶ風雪と戯れるように。ゆったりと歩む。

その先には、震える猫と、その仲間。

「コーシカ……猫だから、寒さ、苦手だと。そう言っていましたね、ミク」

鈴の音を想わせる澄んだ声で、ひとり確かめるように口を開いたアナスタシアは、指先を自分の唇に添える。

そうして、何事かを小さく呟いた瞬間、彼女の吹き付けた息が、雹混じりの吹雪、強烈なブリザードとなって三人を襲った。氷の魔法だ。

「ロシアの吹雪は、どうですか?」

†††

アナスタシア
ルーツ:転生者/マジシャン
エゴ:穏やかに暮らしたい
エゴ:栄光を手にしたい

†††

「ぐぬぬっ、やってくれますね!」

少女たちの視界は白く染まっていた。

暖を取っていた火も、急ごしらえの屋根と壁も、雪の嵐の前には共に儚く失われ、前後左右はおろか天地さえ曖昧な純白の中、三人は身を寄せ合う。

「フヒヒ…… 言うだけあるな、だいぶ、キツい……萎れそう、だ」

やや不気味な笑みを交える様子は変わらない輝子だったが、身を切り裂くこの冷気は厳しく、そう長くは耐えられないだろうことも、予想には難くなかった。

「輝子さん、いけますか?」

「フ、フヒ……っ?」

幸子は、吹雪の矢面に立つ形となり、雪女から顔を背けない。そのまま持ちかけてきた質問に答えようとした輝子は、刹那、傍らに重みを感じた。

「……みく?」

肩にかかった重みの主の名を呼ぶ。

「……うん」

か細い声。振り向いた幸子の視界には、寒さに震える力すら失ったみくの姿があった。その小さな体を、より小さい輝子に預けて目を伏せている、無力な猫娘の姿だった。

「ヤバい、ぞ…… だいぶ冷えてる……せめて吹雪を、止めないと」

「まだ、生きてる、にゃ……」

みくが、片目を薄ら開く。気持ちは折れていないようだったが、寒さに弱いのは真実なのか、一人消耗が激しい。

「ンー…… 二人とも、帰っては、もらえませんか?」

心地よい声が、吹雪にまぎれて耳に届く。ぞっとするほど、冷静で優しい声。

「私は、ミクとお話がしたいだけ、です。お二人は、巻き込まれている、ですよ?」

正論だった。幸子と輝子にとっては、所詮は他人のトラブルといえばその通りだ。

「お断りします! ボクは友人を大事にしたい主義なので!」

「フヒヒ、出来ない相談、だな…… 私は、そういう傲慢、嫌い、だぞ……」

それでも、二人はその提案に応じることはなかった。それが、彼女たちのエゴであり、絆だった。

「ピェツィヤーリナ……悲しい、ですね。怪我、させてしまうかも、しれません」

吹雪の合間に、言葉通り、悲しみにくれた表情を見せるアナスタシアが見える。氷塊がまとわり付いた両手を、三人へ向けた。

「少しだけ、眠ってください……穏やかに」

静かに囁くや、氷塊は瞬く間に巨大な氷柱へと育ち、投槍じみたかたちで、魔術師の手から放たれた。

氷柱は風雪の壁を破り、ガラスが割れるような音を立てて、無数に着弾する。雪が煙のごとくに舞い上がる。

次にアナスタシアが見たものは。

「お断りします! ボクはまだまだ元気ですよ!」

氷の槍の爆心地にいたはずの輿水幸子の姿だった。傷一つなく、震えることもなく、付け加えて言うならば、目の前まで飛び込んで来ていた。

「ツィウーダ、不思議、です…… 貴方も、マギヤ、魔法を?」

「あまり好きでも得意でもないですが、魔法は人間の技でもありますからね! ボクも一応使ってあげていますよ!」

「オー…… 貴方、面白いひとです。皆さんを守って、無傷…… マギヤだけではない、とても、とても不思議ですね?」

「カワイイボクは、普通より少し丈夫なんです! 驚いてくれてかまいません!」

胸を張り、訳知り顔の幸子。だが、アナスタシアもペースを乱されることはない。

「それは、とても、手強い、ですね……?」

対峙する二人。かたや、雪の魔女。かたや、不屈の超人少女。

均衡しようかという対峙を破ったのは、絶叫だった。

「ヒャッハァーーーーーッ! フ、フヒヒッ、フヒッ! この純白を! 真っ黒に染め上げてやる!」

タトゥーのような紋が浮かぶ顔、ゴシックめいた衣装。銀色の瞳と、一房ずつ色が変わった髪は、上級魔族の証。

「アー、デーモン、ですか……?」

「その通りだぜヒャッハァーーーー! トモダチの敵は私の敵だ! ゴー・トゥ・ヘェェーーーール!!」

指を曲げ、腕を交差する―いわゆるメロイック・サイン、デビル・サイン―と、アナスタシアの足元に、小さな赤い柱状のものがいくつも伸びる。

「わ、わッ!?」

幸子が転げるように下がるや、その柱状の何かは、沸き立つかのように禍々しくねじくれる。

「炎の柱に成長する、魔界産のカエンタケだ! フヒヒッ、火傷じゃ済まないぞォーーーーッ!」

「ッ……!」

アナスタシアが表情を変えたのと、爆炎の柱がそそり立つのは、ほぼ同時だった。

炎は轟音と共にうねり、天へと吹き上がると、辺りの雪に煤と灼熱を残して消えていく。

立ち込める煙と蒸気が、徐々に晴れる。

「フ、フヒッ…… やった、か……?」

「そういうこと言うと、また出てきますよ」

ぼやく二人だったが、油断はない。爆炎の中心地に目を凝らす。吹雪は止んでいたが、一面の銀世界は消えてない。このドミニオンの主、アナスタシアが健在であることの証左だ。

その通り、雪女はそこに立っていた。

「ンー…… 想像以上、ですね」

考えながらなのか、これまでに増して言葉を選ぶ。

「私は、ミクを連れていきたいです。でも、貴方たちは、断る、言います」

「モチロンです!」

自信満々に答える幸子に、首を小さく傾げるアナスタシア。

「何故、ですか?」

「……正直に言えば、巻き込まれるのはゴメンですよ。ボクは人間ですからね、こんなこととは無縁でいたい」

幸子は、ため息混じりに雪女の問いに答える。

「でも、友人を見捨てるのはもっとイヤです! それが人間です!」

得意げに、胸を張って掲げたのは、人としての根源にあるもの。ただの感情。友情とか、親愛とか、執着とか、そんなものだ。

「……フヒ。格好良く言えば、"絆"、だから……だな。ボッチの私にも、一応、あるぞ?」

輝子が、同意の補足を加えた。

「そう、ですか」

アナスタシアは沈思黙考する。

果たして何分だったのか、何秒だったのか。

「……ン。今回は、私が、帰ります。また、出直して、きますね」

短く告げると、踵を返して。

「ミクには、謝っていたと。伝えておいて、ください。ダ スヴィダーニャ……さようなら」

辺り一面の銀世界と共に、彼女は掻き消えた。



跡には、雪の欠片すら残らず。あっけないほどあっさりと、迷宮から開放された三人だったが、勿論レッスンには間に合わなかった。

――――

――

幸子「というわけだったんですよ。いやあ災難でしたね。ボクがいなかったらどうなっていたことか!」

小梅「無事で、よかった……!」

卯月「だからみくちゃん休んでたんだ。心配です!」

未央「寮戻ったらおやつあげよう! チータラとかどうかな?」

輝子「フ、フヒ、魚……」

凛「ねえ、二人とも。その、アナスタシア? って雪女。いったいみくの何が目的だったのかな」

輝子「え。……わ、わからない」

幸子「ボクもわかりません! 具体的なこと言ってなかったので!」

小梅「こ、困っちゃうね……?」

幸子「ああやって、思わせぶりなことだけ言って中身がないのはやめてほしいですね! レジェンドに多い気がしますよ!」

凛「私に何か文句あるの?」

幸子「凛さんは言いたいこというから、そこに文句はないです! でもすぐ怒るのやめましょう!」

凛「怒ってない」

卯月「大丈夫ですよ、幸子ちゃん。凛ちゃんはバツが悪いとついぶっきらぼうな言い方になっちゃうだけです!」

輝子「凛は、意外と、繊細だから、な」

幸子「そういえばそうでしたね。フフン、ステージではあんなに自信満々の凛さんがプライベートでは口下手だなんて、中々カワイイですね!」

凛「! !!」

未央「どうどう! 耳出てる! 耳! ほら、しぶりんはもう帰る時間だよー?」

ちひろ「ただいま戻りました♪」

小梅「お、おかえり、なさい…… どう、だった?」

ちひろ「天界では、特に問題視している様子はありませんでしたね。現場も確認してきましたけど、確かに"羽根"が直接関与している気配はなかったので、様子見でいいでしょう」

輝子「そ、そうか…… ところで、今度の仕事、どうなる……?」

幸子「怪我はともかく、ショック受けてましたからね。無理させたくはないです……まあ、現場はカワイイボクがフォローしますよ!」

ちひろ「そうですねえ…… スケジュール的には、未央ちゃんにヘルプしてもらうのがよさそうですか?」

小梅「私も、空いてる、けど…… みくさんの代役には、ちょっと……合わない、かも」

卯月「私は学校の都合で難しいですから、未央ちゃんお願い!」

未央「うひゃー休みが飛んで消えた! おっけーおっけー、この未央様にお任せだよ!」




  「待つにゃー!」


卯月「窓から侵入者ですね! 島村卯月、迎撃します!」

みく「やめるにゃーーー!? すとーーーーっぷ!?」

卯月「はい、解ってます! 冗談です!」

みく「じょ、ジョークでガトリングガン構えないでほしいにゃ!?」

ちひろ「それはともかく、怪我はもう大丈夫なんですか?」

みく「大丈夫にゃ! 勝手にみくを引きこもらせるんじゃにゃーい!」

幸子「勝手に、って…… 今日は朝食にも起きてこなかったじゃあないですか!」

みく「眠かったからにゃ」

未央「ひどい!」

幸子「学校も休んでましたよね?」

みく「眠かったからにゃあ」

小梅「ひ、ひどい……」

幸子「……ボクが一度寮に戻ったときも部屋の中でしたよね?」

みく「……眠かったから、にゃ」

輝子「フヒ、ひ、ひどい……」

幸子「……あの……」

みく「……えっ、いや、その…… 心配してくれてたのは、割と、嬉しい、にゃ。……ありがと」

幸子「……仕事は、できそうなんですか?」

みく「今日一日休んだから、かえってスッキリしたにゃ! 心配要らんにゃ!」

幸子「はぁ。……いいです! いいですよ、ボクは寛容ですから! ちひろさん、仕事は予定通りでお願いします!」

ちひろ「はい、わかりました。三人とも、よろしくお願いしますね」

未央「やったー休み確保だー!」

卯月「凛ちゃんと一緒にテスト対策ですね!」

未央「ちひろさーーーん仕事入れてぇーーー!?」

ちひろ「はい、ダメです♪」

――――

――


  『……そう。思っていたより、結束は強いのかしら』



  『ダー。今のミクは、独りではありません。簡単では、ないです』



  『待つのカ? 退屈は好きじゃナイぞ?』



  『そうね。停滞は堕落…… それなら、こんなケースは、どうかしら』


――

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――――

――

小雨の中、暗い路地から少女が姿を見せる。陶器じみて白い肌、黒目がちな釣り目、口元には薄い笑み。ビニール傘を肩に挟み、紙幣を指で弾く。

「ひのふのみの…… ふむー、アテが外れたかな? ま、これなら三日はイケるし、何はともあれおなかすいたーん♪」

数えた紙幣を三つ折に、ショートパンツのポケットに差し入れる。三番目に見つけた店で、いちばん高いものを食べよう。そう独りごちて傘を持ち直した彼女だったが、ひとまず足を止めることとなった。

「そこの貴女」

「うん? アタシ? どーしたの、お嬢ちゃん」

突然掛けられた声は、幼さが残る少女のものだった。

色白女が振り向けば、そこには短めのレインコートを羽織った、少し背の小さな姿。

「先ほどの様子、見せてもらいました」

レインコートは言葉を続ける。レインコートの下はハーフパンツにレギンス。背丈と声を踏まえれば、少女と推測できた。

「いやーははは。ナンパ断ってお金貸してもらうなんて、薄情すぎたかなー?」

「一部始終、見せてもらいました」

「……あちゃー……」

そう、嘘だ。幻術で騙して、"お駄賃"をせしめてきた。今頃あの男たちは、ゴミ袋相手に盛り上がったりミネラルウォーターで酔っ払ったりして、色白女と楽しい時間を過ごしていることだろう。

「ご心配なく。不逞の輩がどんな目に遭おうと、あたしの知ったことではないです」

色白女の内心には、すわ制裁かと、嫌な予感が過ぎっていたが、雨合羽はまずそれを否定する。

「お。よかったー♪ シューコちゃんハラハラしちゃったよ」

安堵の言葉に、名前を漏らす。色白女の名は、塩見周子。

「とはいえ人間に仇なす魔物であれば、力試しに都合が良いのも事実」

「……あ、これダメな感じだ。まだハラハラするシチュエーションだ」

通り過ぎたはずの嫌な予感が、一気に飛び込んできた。そう、雨合羽の少女の動線と同じ。

「征きます! 押忍!!」

「無茶苦茶やーん」

――――

――

有香「キャオラッ!!」

†††

中野有香
ルーツ:グラップラー
エゴ:強くなりたい
エゴ:魔物と拳を交えたい

†††

周子「か弱い女の子に何するのさー。て、女の子に言うセリフじゃーないかな?」

有香「……必倒の一撃。避けた様には、見えなかった、のに。……ふふふ、さすが魔物ですね!」

周子「もしもーし? 魔物やなくて半魔なんだけどなー? むしろ突き一発で街灯曲げちゃうキミのほうが……」

有香「鬼でも悪魔でも自律兵器でも、人間でないなら並べて魔物で問題なしです!」

周子「えー……シューコちゃん心外だなー」

有香「それなら、正体を見せてくれると嬉しいですね! 組手では使えない技、魔物相手にしか成立しない技をご覧にいれます!」

周子「んー。それは見せてくれるんじゃなくて、アタシに叩き込む気満々のよーな?」

有香「あなたの正体に依ります!」

周子「……うん。それじゃ、さいなら~♪」

有香「く、眩しッ…… ……キツネ?」

†††

塩見周子
ルーツ:化狐
エゴ:美味しいもの食べたい
エゴ:人間を化かしたい

†††

――

――――

――――

――

有香は走る。空手家たるもの、屋外の走破も修練のうちだ。相手は獣、容赦は要らぬ。いつしか人影のなくなった大通りには、水たまりを踏む音が連なって響く。

「参ったなー、あの子全然話聞いてないし……」

有香の目を眩まして逃れた周子だったが、撒くことは敵わず、術を交えて距離を稼ぐことが精一杯だった。

「命まで取るつもりはありません! さあ、手合せを!!」

「ほんまあかんわー……っ、ほーい」

周子が立てた二本指の先に火が灯る。そのまま指先を有香へ向けると、火の玉はその数を両手に余るほどに増やしながら、雨がぱらつく中を、有香の顔面めがけて滑空する。

「む」

有香の脚が止まる。火の玉の群れを正面に、小さな跳躍でサンダルを脱ぎ捨てると、脇を締めて腰を落とす。

「喝ッ!」

直後、両腕で描く二つの真円が半分を払い落とし。

「破ッッ!」」

続けざまの右の正拳が残りの半分を吹き飛ばす。

一瞬の静寂を挟み、受けと拳の衝撃に飛び散った雨が、水たまりを鳴らした。女狐の姿はない。

「……あっちだ」

姿を見失ったとて、残心を忘れぬ空手家が、妖術ひとつで気配まで損ねるわけもなく。サンダルを履き直した有香は、狐火を放った位置まで歩むと、脇の路地に入る。

路地の左手には、染みとヒビが刻まれた空きビル。解体予定の旨を記した立て看板が添えられた扉には、南京錠の外れた鎖が垂れ下がっている。

止まぬ雨を背に、扉を押し開いた。

――

――――

――――

――

周子「ほい、ほいほい、ほいっ♪」

  「何してンだ、お前」

周子「あれ、お先さん? おかまいなくー、すぐ終わらせますよってー」

  「おい、ここで暴れるつもりなら勘弁してくれよな」

周子「多分大丈夫ー。ちょっと厄介な子に目付けられちゃったん。なかなか撒けないから、一計を案じてるとこー」

  「……魔法使いってヤツか? 幻術ってーの?」

周子「んー……半分正解かな。よくおわかりねー?」

  「魔法は知らねェけど、アタシも"コッチ側"だからな」

周子「ひゅー。それなら、オネーさんもその猫ちゃん連れてここから離れたほうがいいよ、あの子、割と分別しないタイプに見えるんだよねぇ」

  「アタシはともかく、コイツはここに置くしかねェンだ。……喧嘩売られるなら買うだけだぜ」

周子「わーお。……んーっと、シューコさんはもう逃げるけど、オネーさんはここにいるんね?」

  「ところで正面はシャッター閉まってンぞ。上から非常階段くらいか」

周子「そやろねー。階段かいだーん……」

  「あ、裏口開いたな」

周子「うっそーん」

――

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――――

――

扉を開けた有香の前にあったのは、またも扉だった。

「……ん?」

開く。扉。開く。扉。

「幻術か!」

三回繰り返して気付き、前蹴りで扉に見える何かを蹴破る。

扉の先には、また暗い路地と、入ったビルとは異なるビルの入り口。


そんなわけはない。


レインコートを脱ぎ、脱ぎ揃えたサンダルの上に軽く畳んで置く。

丹田に力を意識し、周囲の流れに集中する。


「そこォァ!」


電信柱に上段回し蹴りを叩き込む。

やおら、蹴り飛ばした何かと共に周りの景色が吹き飛び、殺風景な廃ビルの内観が広がる。

ガチャン、という音と共に、蹴りでひしゃげた傘の骨が壁に叩き付けられる。

女狐は、その壁側から伸びる上階への階段の三段目から、有香を見ていた。

「おぅ、お前」

女狐に声を掛けようとした有香へと、女狐のものではない声が飛ぶ。黒髪ストレート、胸にはサラシを巻いて特攻服、といういかにもな女。足元の猫入りダンボールが気になる。

「アタシですか」

「ッたりめーだろ、カラテカちゃん。なァ、逃げる女追って楽しいか?」

特攻服は、仔猫入りの箱を女狐に押し付けながら、馬鹿にしたように言い放ち鼻で笑う。有香は眉をしかめた。

「む。……正直、物足りないです。魔物相手にしか試せない技がいくつもあるので、躍起になってしまいましたが」

「……あんなに追っかけといて、それひどない?」

「試させてくれるなら是非!」

「嫌やん!?」

一歩踏み出した有香に呼応して、周子が一段上がる。

「待てよ、カラテカ。……だったらよォ、アタシがやってやろうか?」

獣じみてニタリと笑う特攻服。その表情はかすかに狂気染みて、有香の闘争本能を揺り動かす。

「その顔……素敵です! 願ってもない! 神誠道場、中野有香! 立会いを所望します!」

「お前、同じ顔してるぜ! 向井拓海、"特攻隊長"だ! タイマン上等ォ! シューコ、ソイツ預かっとけよ!」

†††

向井拓海
ルーツ:都市伝説
エゴ:タイマン上等
エゴ:子どもと動物には優しい

†††

「えっ、これアタシ逃げられない流れと違う?」

――

――――

――――

――


  『ンー…… 喧嘩したら、トモダチ、ですか……?』


  『互いを害する経験を経て、好意的な感情を残す…… 興味深い価値観ね、非合理的だわ』


  『私は、ミクを傷付けましたが、拒絶、されましたね……』


  『アーニャは、ケンカしてもトモダチになれなかったカ? ムズカしいナ。ヤッパリ従えるのがラクだ!』


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