ギンコ「雪ノ下?」雪乃「誰かしら?」 (30)
現代にも蟲師が居る設定でよろしくです。
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ギンコ「ふぅ……光脈筋をたどって久しぶりに麓におりてみれば、何とも景色が変わってしまったな」
ギンコ「冬の海風が冷たいもんだ。そう言えばこの近辺に、例の血筋の分家が住んでいる筈だがな」
ギンコ「ちょうどいい、雪山籠りの前に彼等のつてで、蟲道具を無心しておこう」
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結衣「ヒッキー、何見てんの?天井なんか見上げちゃって」
八幡「いや、なんか上にチラチラと虫みたいな、綿埃みたいなのがフワフワとよ……」
雪乃「ついに幻覚が見えるようになったのかしら、ヒッピーが谷くん」
八幡「おい、俺が葉っぱでも吸ってラリッてるみたいに言うなよ」
結衣「じゃああれだよ!フライドフィッシュ!」
八幡「マグロナルドのセットじゃねーんだよ。それを言うならスカイフィッシュだろ」
雪乃「……比企谷くん、それが見え始めたのはいつ頃からかしら」
八幡「ああ、確かあれは……」
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昨晩
小町「お兄ちゃーん!小町は納戸から去年浸けておいた梅酒の瓶を発見したのです!
つきましては、お兄ちゃんに晩酌してあげたいと思います!
これって小町的にポイント高い!」
八幡「梅酒じゃなくて梅ジュースな、一応俺も小町も建前上未成年って事になってるからな。
それに、その瓶って去年のヤツだったっけか?」
小町「あっれぇー?確かそうだったと思うけど……違った?
まぁいいじゃん!多分同じ梅酒もとい梅ジュースだよ!!」
八幡「仕方ねぇな……もう取り出しちまったしな。ホラ、氷いれてやっからコップ出しな」
小町「はいはーい♪」
八幡・小町「かんぱーい」
小町「ごくっごく……あれ?」
八幡「おい、これ……もう酒じゃねーかよ」
小町「あはっはっは!あははははははははははは!!!」
八幡「おい酔い回るの早過ぎだろ……しかも笑い上戸だったのかよ」
小町「うひゃっはははははは!!!あーお兄ちゃんの周りに蟲がぶーんぶーん飛んでるー♪」
八幡「マズい、完全に出来上がってるな……仕方ねえ、小町の部屋まで連れてって寝かすか……
あれ……?何か、俺も妙な幻覚が……」
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八幡(あの時以来、俺の周りに、妙な虫と言うか植物というかがまとわりつくのが
見えるようになった……これを幻覚と言わずして何であろうか)
面白いクロス 漆原って今なに書いてるんだろう
携帯から
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八幡「……つーわけで、まだ幻覚が見える。まぁ二日酔いってほどじゃねーんだけどな。
朝、小町に確認したらまだ見えるって言ってたし、一応誰にも言うなとは注意しておいてある」
雪乃「……そう。貴方にしては上出来ね。
小町さんの容態が少し気掛かりではあるけれど、話を聞く限りでは大丈夫そうね
多分、今夜までには幻覚も収まるわ」
八幡「おい、俺は心配じゃねーのかよ」
雪乃「ゴキブリガ谷くんのしぶとさなら、何を食べたり飲んだりしても生き残れるのではないかしら」
八幡「おい、俺が小学三年の時のあだ名を当てるんじゃねーよ。
給食わざと残さなきゃいけなくなるじゃねーかよ」
結衣「悲惨な小学校生活だぁ……」
八幡「にしても雪ノ下、妙に詳しいじゃねーか」
雪乃「コホン!……それは、まあ親戚に、内科医がいるので……
それより比企谷くん、今度その、梅酒の入った瓶を持ってきてくれるかしら」
八幡「えぇ……?マジかよ。あれ結構重いんだけど。
それに運んでる途中お巡りさんに見つかったらアウトなんだけど?」
雪乃「それは盲点だったわね……
貴方が警察のブラックリストに載っているのを忘れていたわ」
八幡「俺ってどんだけ要注意人物なわけ!?道理で夜中に食い物漁りに台所行くと
なんか光る目が俺を追い掛けて来るわけだ」
結衣「それってカマクラちゃんだし」
雪乃「かわいいわね……コホッ、ともかく、その瓶は厳重に封をし直して誰にも飲ませないようにする事ね。
近いうちに、本意ではないけれど貴方の家に行ってその瓶を預からせてもらう事にするわ」
八幡「ああ、はいはい……」
気になるクロス。一部地域で蟲師の続編が放送されるな
確認
失敗
続行します
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比企谷家
八幡「ようやく幻覚が見えなくなったな……すげえ気持ち悪かったぜ」
小町「えー?小町的にはちょっと面白かったのになー、だって普段見えないものが見えるんだよ?
普通そんなものが見えたら、聖遺物起動詠唱を歌いながらデュランダルを繰り出すんだから!」
八幡「お前はガングニール持ってねえだろうが。
むしろ事故って大怪我した俺の方がガングニールを持つ資格あるだろ」
小町「えぇー……お兄ちゃんはプリキュアのラブハートアローでも持ってなよ。
ところで今晩から雪が降って積もり出すって天気予報で言ってたけど
お兄ちゃん、時々オナカ出して寝てる事あるから気をつけた方がいーよ?
小町、部屋で凍死した人の妹とか言われて後ろ指差されるのは嫌なんだけど」
八幡「んー、気を付けとく」
小町「そいじゃ、おやすみー」
八幡「……行ったか」
八幡「この梅酒、マジで何なんだろな」ちゃぽん
八幡「不思議な、味だったよな……
雪ノ下には妙に厳重に注意はされたが、最後に一口くらいは良いだろ……」ゴクッ
八幡「……うむ、また幻覚が見え始めたな……」
八幡「……?何だ!?何か……床の下が光って見えるぞ?
光の道……?」
八幡「外に向かって流れているみたいだ。ちょっと寒みいけど、見てみっか……」
家の外
八幡「おぉ、寒ぅ。
しかし、この光の道、すげえ綺麗だな……思わず見とれちまうぜ。
ひょっとしてこの先にヒディアーズが出てくるんじゃねーだろな。
俺にもチェインバーがいてくれねーかな、人付き合いとか支援啓発して欲しいんだが」
八幡「むぅ、この先は海の方に続いてるな。
何か、虫みてぇな幻覚もだんだんうじゃうじゃと増えてきてるよな……」
××「おい、アンタ」
八幡(……何だ?白い髪の変な男がこっちをじっと見てるぜ……
もしかしたら俺の独り言を聞かれちまったのか?
いやいや、俺じゃなくて近くにいる他の誰かに声を掛けた可能性もあり得る、
ここは、聞き流しておいて黙ってスルーが基本)
××「おい、聞こえないのか?アンタ、蟲が見えるんだろ?」
八幡「!!」(ヤベっ、思わず目を合わせちまった……!)
××「……そう恐がらなくてもいい。アンタ、この道沿いに走ってる光の筋も見えるんだろ?」
八幡「……ええ、そうですが。
貴方、何者ですか?」
ギンコ「あぁ、失礼。俺は、蟲師のギンコっていうんだ。
それで、アンタが見えてる光の筋だが、あまり見過ぎるなよ。
魅入られて目の毒となる。それを俺達は、光脈という」
八幡「何ですか?蟲師って」
ギンコ「そうだな……その光脈の近くにまとわりついてる、ちらちらした虫みたいなのは
全て実存する。それを俺達は「蟲」あるいは「みどりもの」という。
そいつらは、昆虫とも爬虫類とも一線を引いて、生命の原生体に近いもの達だ
そして光脈は、蟲達の根源、生命の素でもある」
ギンコ「蟲は人によって見えたり見えなかったりする。その力を「妖質」というが
何かのきっかけで、その感覚を操れたり、忘れたりもするんだ。
俺達蟲師は、その蟲にまつわる色々な厄介ごとを、解決するのが生業でね」
八幡「なるほど……じゃ俺が見えてるのも……」
ギンコ「そう、アンタは最近になって見え始めたみたいだな。
近いうち、色々と話を聞かせて欲しいのだが。名は何と言う?」
八幡「比企谷……八幡です」
ギンコ「じゃ、近いうちに……ああそうだ、この近くに
雪ノ下という名字の家は無いか?確かこの辺りだったと思ったが」
しばらく来ないうちに街が様変わりしたようで、迷っちまったんだ」
八幡「!!……雪ノ下の知り合いか何かですか?」
ギンコ「何だ、雪ノ下家の縁の者だったかな?」
八幡「いいえ……ただ知り合いに同じ名字のヤツがいるってだけですが
で、雪ノ下に何の用ですか?」
ギンコ「ああ、彼等も同じ蟲師の家系でね。それで蟲道具の調達を頼みたいのだが。
それで、住所とか知らないか?」
八幡「本家は知らないですけどね。その知り合いが住んでる住所くらいなら」
ギンコ「そうか、それだけでも教えてくれないか?」
~~
ギンコ「分かった。ありがたい。じゃ。
それと、あまり蟲を見ても関わろうとするんじゃない。
関わり過ぎると、普通の人間には害となるものだ。
普通の生物とは似て非なる、奇妙な隣人という認識でいた方が良い……」
八幡(……何なんだかよく分からんが、蟲師とか蟲とか、
そんな物があるなんて初めて知ったぜ……)
八幡「ふぅ、寒さむぅ。俺も帰るとするか」
翌朝
結衣「ヒッキー!やっはろー!ねぇ、幻覚まだ見えてるの?」
八幡「あぁ、まだ見えてるぜ。小町はもう見えなくなった見てえだがな」
戸塚「はちまん!幻覚って何?」
結衣「あっ、さいちゃん!やっはろー!あのねヒッキーが変なの飲んで
幻覚が見えるようになったんだって!」
八幡「お前その言い方だと完全にハーブキメてやらかした人みてえじゃねーか。
(まあ実態は大して変わらんのだが、それを言っても更に誤解されるだけだな)
まぁ、ちょっと二日酔いみたいになっただけだ」
戸塚「えっ!?はちまん、お酒飲んだの?」
八幡「あーいやいや、梅酒だタダの梅酒」
戸塚「梅酒かぁー。僕も梅酒くらいならちょっとだけ飲んだ事あるよ!美味しいよね!
でも一応僕達未成年だから、いつか二十歳になったら居酒屋に行こうね!」
八幡「お、おぅ!!(やばい戸塚と二人きりで飲みに行ったらその後の展開が!!)」
結衣「ひ、ヒッキー!!さいちゃん!!私も私も!!一緒に連れてってよ!!」アワアワ
雪乃「あら、おはよう。蟲が谷くん。朝から蟲でも食べたみたいな顔してるわね」
八幡「おい、俺の食性は至って普通だ。今からでも天下一品食えるまである。
それにムシの字が何か違うぞ」
雪乃「そうかしら?そう言えば、例の瓶は持ってきたのかしら?」
八幡「だから重くて持って来れねえと言っただろうが。
……そう言えば昨日の夜、お前の家に誰か来なかったか?」
雪乃「……貴方。まさか、ギンコさんに会ったのかしら?」
八幡「やっぱり知ってんのかよ」
雪乃「予定変更ね……やっぱり今日、貴方のお家に伺うとするわ」
結衣「えっ!?えっえっ!?
ゆきのんがヒッキーの家に行くの!?わっ私も行く行く!!」アワアワアワアワ
八幡「由比ケ浜が何で慌ててんだよ。別に来る必要ねえんじゃねーの」
戸塚「はちまん!僕もはちまんの家に行ってみたい!」
八幡「もちろん大歓迎だ」
結衣「即答だ!?」
放課後・近所の公園
小町「ひっさしぶりに凄い大雪だねー」
大志「比企谷さん、あまりはしゃぐと転ぶよ」
小町「大丈夫大丈夫!あ、ここの滑り台の陰でカマクラ作れそう!」
大志「じゃ、僕が雪を運んで来るよ!」
小町「よっしゃ!雪を掘るぞー!」
~~
小町「ほらほらー!出来たぁ!」
大志「うん!立派なのが出来たね!」
小町「私一人くらいなら余裕で入れるよ!
あれ?滑り台の裏になんか変なのが一杯……いるような。
え?えっ?えっ!?」
大志「比企谷さん、どうしたの?」
小町「耳が……聞こえない」
シンフォギアネタ……
カタツムリみたいな奴のネタか
柔らかい角のやつか
続きです
ーーーーーーーーーー
比企谷家
雪乃「ここが小町さんの家……なかなか素敵なお家ね」
八幡「おい、俺の家でもあるんだが」
戸塚「わぁ!はちまんの家って初めて!なんか人の家に入るのってドキドキするね!」
八幡(俺は戸塚を中に入れると思うとドキドキするぜ……入ってきちゃらめぇ!)
雪乃「何か目つきの酷い野犬が今にも襲いかかりそうな顔をしているのだけど」
八幡「おい俺は至って平和主義的な猫気質だぞ。四六時中寝る習性が同じまである」
結衣「さあさ、お家に入ろ!カマクラただいまー!トイレはこっちね!」
八幡「何でお前がこの家の住人のように振る舞うんだよ」
雪乃「なぜ由比ケ浜さんが、この家の間取りを知っているのかしら……」
八幡「ああ、夏頃にこの家に来た事もあったからな」
雪乃「何て事かしら……由比ケ浜さん、身体に異常はないかしら?」
八幡「何か家の中でやらかしたの前提かよ」
雪乃「あら……カマクラちゃんね」ニャー
雪乃「……にゃー」
結衣「ふぇっ!?ゆきのんが猫語!?」
雪乃「はっ!!さ、さあ比企谷くん、さっさと例の瓶を出して頂戴」
八幡「ホレ、これだよ」チャポン
雪乃「ちょっと貸してもらえるかしら。蓋、開けるわよ……」キュッキュッポン
結衣「あ、なんか良い匂いだね、それに、綺麗な黄金色……
ちょっと舐めてみたいなぁ」
雪乃「駄目よ!!」
結衣「ふぇ!?ビックリした……ゆ、ゆきのん目が恐いよ?」
雪乃「いえ、ごめんなさい……でもこれは、実は大変危険なものなの……」
八幡「まさか俺が飲んだからとかいうオチじゃねえだろうな」
雪乃「何を言っているのかしら?さすがに自虐が谷くんの言う事は違うわね。
ところで、この梅酒は全体的に黄金色に輝いているわね。この匂いも……
これは多分、吸蜜糖という蟲に冒されているわね」
八幡「スイミツトウ?なんだそりゃ」
雪乃「……」カササッ
結衣「きゃあ!!何!?ゆ、ゆきのん……その箱の中に何かいる!?」
雪乃「これは猩々髭という蟲よ。光酒を嗅ぎ付ける性質があるわ。
やっぱり、猩々髭も集まっている。これは光酒に近いモノになってるわね。
吸蜜糖で作られた酒を飲んだ人は、ある期間だけ蟲を見る事が出来る」
八幡「おい、雪ノ下。
お前、何で蟲とか光酒とか知ってんだ?それにその懐の道具は……」
雪乃「あら、そうね……比企谷くん、昨日ギンコさんに会ったという事は
蟲や蟲師について、何か知っているという事で良いかしら?」
八幡「ん、あーそういや何か言ってたな。全部覚えてる訳ではないが
俺が見えてる蟲とかいうやつについての概要説明は一通りだったか」
雪乃「そうね……なら事情を知らない由比ケ浜さんや戸塚くんの為にも
ざっとかいつまんで話すと……」
~~
戸塚「へー、そんな生き物が居たなんて、知らなかったなぁ」
結衣「まさに大自然の脅威だよね!」
八幡「脅かされてどうすんだよ。まぁだいたいあってるかもだけどな」
雪乃(本当に、彼等にはどこまで話したら良いのか、少し判断に困ったけど
ギンコさんがあのように言っているのなら、仕方ないわね……)
ーーーーーーーーーー
回想
雪乃邸
雪乃「あら……?誰かしら……?」ピンポーン
ギンコ「雪ノ下か?」
雪乃「はい、どちら様でしょうか?」
ギンコ「ああ、蟲師の、ギンコですが」
雪乃「あら……こんばんは、お久しぶりですね。
ですが、こちらは本家では無いのですが……」
ギンコ「知っている。本家の住所を教えてもらいたいのだが」
雪乃「そうですか……そういう事でしたら」ピッ ガチャッ
雪乃「どうぞ……お入りになって下さい」
ギンコ「やれ、ありがたい。お邪魔します」
雪乃「生憎何もありませんが、粗茶ならどうぞ……」
ギンコ「ああ、どうも……何ぶん、外は雪が降る程の寒さでね」
雪乃「それで、本家の住所はこちらに記してありますわ」
ギンコ「なるほど、昔より少し内陸側に場所を移したのか。
これから急に冬山に籠らねばならないもんで、
それで足りない蟲道具や薬等を少しばかり調達せねばならないものでね」
雪乃「ギンコさん、余っている道具や薬なら
少しですがここにもありますわ。もし良ければ」
ギンコ「いや、そこまでは……本当に良いのか?」
雪乃「ええ、私はまだ当分、蟲師としての仕事はしないつもりですし」
ギンコ「そうか……そういえば、淡幽がお前さんに会いたがっていたが」
雪乃「淡幽さんが……。そういえば、暫くあそこに行ってなかったわね」
ギンコ「だろう?と思って、先程淡幽に文を出しておいた。
もうウロに返事が来ている頃だと……おっ来てるな」カタタタッ
雪乃「ウロなんて……未だ使っているのですね」
ギンコ「そう思うだろう?まぁネットやメール全盛の現代ではあるが
機密保持にはこういうアナログな手段が一番なんだよ」
雪乃「確かに。電子通信とは全く別系統かつ現代科学では解明出来ない技術で
作り出された閉鎖系情報ネットワークですしね。それで?」
ギンコ「ああ、ほれ」ピラッ
雪乃「ふふっ、足が少し動くようになって、少々の遠出も出来る位になったのね。
それにスマホが欲しいけど、たま婆様からの許可が下りないとか」
ギンコ「スマホね……まぁ蟲師にゃ必要の無いもんだが
年頃の淡幽ともなれば、そういうもんも欲しがるもんかな」
雪乃「私も、久しぶりに淡幽さんにお会いしたいですわ……
早速、文で返事を出しますので、少々お待ち下さい」
ギンコ「あぁ、大丈夫だ。
淡幽も雪乃も、互いに友人の少ない幼なじみなんだから
もっと頻繁に会ったところでバチもあたらんだろうに」
雪乃「友人が少ないという所は余計です。
ところで……最近、蟲の活動が妙に活発になったと思いませんか?
この街でも、あまり見かけない山郷の蟲まで出るようになって
それに光脈まで少し乱れを生じているように見受けられますわ」
ギンコ「む……そうだな。
妖質を得て蟲を見始める人間も増えるかもしれないな。
もし身近で、蟲を見たり蟲による障りを被る人間が現れたら
その時は手助けしてやるといい。
お前さんも蟲封じの免許皆伝しているのだろう?
であれば、ここから道具を拝借するのは止めにしとくよ」
ーーーーーーーーーー
雪乃(それでギンコさんは、その後すぐに本家に向かった。
ギンコさんがなぜ急に冬山に向かわねばならないのか、
それに淡幽さんの文の内容も……)
結衣「ゆきのーん?どしたの?ぼーっとして」
雪乃「え?え、ええ、別に何もないわ……」
雪乃(本来、山奥に生息してこんな所にまで現れない吸蜜糖まで
こういう風に顕現しているとしたら……その原因は何?)
戸塚「でも本当に綺麗な梅酒だよねー。金色にキラキラ光ってるね。
これがその雪ノ下さんの言う蟲で作られたなんて、なんか素敵だね」
雪乃「ええ、でもやはり飲んでは駄目……身体にどんな影響があるか
分かったものではないわ。それで比企谷くん、まだ蟲は見えるかしら?」
八幡「あー……も、もう見えなくなったかな」
雪乃「嘘ね。貴方、猩々髭の動きを正確に目で追っていたわね」
八幡「ぐっ」
雪乃「という事は、昨日の夜も飲んだわね?」
八幡「はぁ……飲んだよ。ただし昨日はたったの一口だけだ」
雪乃「本当?だとすると、もう昨日の内に効果は無くなっている筈だけど。
それに、この家の下を走っている光脈も見えているのよね?」
八幡「確かにまだ見えてるけど、それがどうしたんだよ」
雪乃「ひょっとすると、この梅酒を切っ掛けにして
貴方の妖質が、芽生えてしまったのかもしれないわね……」
八幡「何だって?もしかしてその妖質ってのは、あのギンコって人が言ってた
蟲を見る体質ってやつか?何てこった……」
結衣「ヒッキーが珍しく落ち込んでる!?」
八幡「ふっふっふ……そんな訳が無かろう!!
ついに俺にも常人とは異なるアビリティーが芽生えたという事だよ!
はあっはっはっは!!!」
結衣「ヒッキーキモイ。どっかの中二病の人と同じだし」
ーーーーー
材木座「ファッッッックション!!うむうう、誰ぞが我の噂をしているぞ!!
もしや我のファンが陰ながらに応援しているのかも知れん!!いざ出て参られよ!!」
ーーーーー
八幡「あーいやいや、本当言うとマジで困る。
大体なに?そのマジで中二病臭いネーミング。どこの陰陽師?ストブラ?レイヴンズ?
そんな能力に目覚めた所で、日常生活に足しにならないどころか迷惑になるまである」
雪乃「まあ、完全に否定は出来ないところがつらいわね……
でも、それで生計を立てている人達も居ない事はないのよ?
先程の話の続きだけど、私の血筋の人達は古来より代々、蟲師を営んできたのよ」
八幡「やっぱりそうだったのかよ……」
戸塚「その蟲師って人達は何をしているの?」
雪乃「そうね、そもそも蟲は、知らず知らずに人々の生活に入り込んで
利を得られる事もあれば災いをもたらす事もあるの。
蟲師は、そのうち蟲による障りを解明し、取り除くのが仕事なのよ。
その存在価値は、文明化された現代にあっても薄まる事はないわ。
むしろ現代でも新興宗教や占いやジンクスなどが蔓延っているでしょう?
蟲は、そういうモノの核を成している場合が殆どなの」
結衣「んっん?でも、何で蟲とかあまり噂に上って来ないのかな?
学校でも都市伝説とか人気だし、そんな凄い話だったら
絶対噂になると思うんだけど?」
雪乃「それは、蟲にまつわる知識体系が、蟲師達によってほぼ完全に秘匿されているの。
蟲師は縦型の組織こそ作って来なかったものの、横の繋がりは堅持してきたわ。
相互監視こそ情報の管理には一番重要だった訳ね。
でも、最近は別の事情が出てきて、こうして貴方達に話す事が出来る。
というか、話さざるを得なくなった……」
戸塚「えっ、それってどういう事?なんかちょっと危ない事でもあるの?」
雪乃「ごめんなさい。これ以上は話す事は出来ないわ……
そういえば、小町さんは未だ帰って来ないのかしら?
もうこんな時間だし、外は大雪なのに心配ではなくて?」
八幡「ああ、そういやそうだな。
小町に電話してみっか……」ピッピッ
八幡「あー、もしもし?え?誰だって?
お前にお兄さんと呼ばれる覚えはねえぞ!!……なに?小町が……?」
ーーーーーーーーーー
公園
大志「お兄さーん!!こっちです!」
八幡「だからお前にお兄さんと呼ばれる筋合いは1万年経っても無いからな。
それで、小町は?」
小町「聞こえない……何も聞こえないのに凄いうるさいよぉ……」
大志「さっきまで雪で滑り台の下にカマクラ作って遊んでたんですけど、
比企谷さんがカマクラの中に入った途端に、耳が聞こえなくなったって……
僕もあとで入ったら、片耳が聞こえなくなっちゃって」
雪乃「そのカマクラの中を見させてもらえるかしら。
よいしょっと……少し狭いわね……あら、やっぱりだわ」
八幡「やっぱりって、何が居るんだよ?
よっと……うわ!?何だこの滑り台の裏にびっしりいやがるのは?カタツムリ?」
雪乃「いいえ。これは「呍」という蟲よ。
呍は元々山奥に居る蟲で、普段は山の自然が作る音を食べているの。
でもこういう雪の日は、山が音を出さなくなるので人里にまで降りて来る事があるわ。
そして人間の蝸牛管に取り付き、人の周りの音を全て食べてしまうわ。
ちょっと小町さんの耳を見せてもらってもいいかしら……
やっぱり、粘液が付いてるわね。小町さんも大志さんも、この呍に冒されているのね」
結衣「えっ?あれ?ねえ、小町さんの額に、角みたいなのが生え始めたよぉ!?」
雪乃「これはどういう事かしら……ひょっとしたら。
ちょっと二人とも、ひとまず比企谷くんのお家に戻りましょう。
そこで出来る限りの事をしてみます」
ーーーーーーーーーー
比企谷家
戸塚「小町さん、大丈夫?」
小町「聞こえない……お兄ちゃん、何も聞こえないのに凄い音がするよぉ……」
雪乃「とにかく、二人をソファに座らせて。
比企谷くん、お湯を沸かして。それと、お塩はあるかしら」
八幡「塩?何に使うんだ」
雪乃「それは、この塩を沸かしたお湯に適量入れて
それからこの急須に入れます。大志君、聞こえなくなった耳を貸して」チョロー
大志「うぁっ辛っ!!!何だこれ!!ぺっ!ぺっ!
耳から口に入ってきた!!
……あれ?聞こえるぞ?」
八幡「うぁ!?何か耳から白いのが出てきたぞ!?」
雪乃「それは塩を嫌う呍が溶けながら出てきたのね。
大志君はこれでもう大丈夫そうね、問題は小町さんね」
小町「聞こえない……凄いうるさい……静かにしてよぉ……」
雪乃「小町さんは……恐らくだけど「阿」という蟲にも冒されているわね。
阿は呍と共に行動して、呍が作った無音を食べてしまうの。
そうすると、今度は違う音の層を拾ってしまう。
こうなってしまうと、先程の治療は効果がないの……
症例があまりにも少なくて、1件だけ伝えられている文献だと
他にもどんな薬を用いても効かず
発病してから1年後に亡くなってしまったとか……」
八幡「お、おい!!雪ノ下!!お前、蟲師の血筋とか言ってただろうが!!
どうにか出来ねえのか!?」
雪乃「ごめんなさい……これ以上は私の手には負えないわ……
一度、お姉さんかお母さんに連絡を取らないと……」
八幡「陽乃さんか……それは難しいもんだな」
結衣「でっ、でも、他にも出来る限りの事してみようよ!?
私、ネットでし調べてみるからっ!!」ピッピッ
ピンポーン
ピンポーン
八幡「誰か来たな……はい?どちら様でしょうか?」
ギンコ「昨日はどうも」
雪乃「っ!?ギンコさん!?」
ギンコ「いや、どうも。
さっき、公園近くでちらっと君達の姿が見えたもんでね。
それで、もしや困り事かと思い、失敬ながら後を追ってみたもんで」
八幡「アンタ、そういや蟲師だったな。
コイツは小町、俺の妹なんだが、治せるか?」
ギンコ「ああ、まあその角を見りゃ大体の症状はわかる。
この子は阿にやられたな?」
雪乃「……そのようです」
ギンコ「なら、話は簡単だ。
なに、ついこの前も同じ症状を呈した患者を診たのでね。
それじゃ、小町さん。
両手を両耳にしっかり当ててごらん」
小町「んっ……あれ?」ポロッ
戸塚「あっ!角が取れたよ!?」
小町「お兄ちゃん!!耳が聞こえるようになったよ!!
ってわわわ!?何か手にどろっとしたのが付いてる!?」
ギンコ「ああ、それは大丈夫。
死んだ阿の残滓だから、放っておけばまた光脈に回帰する」
小町「ふぇえええ……一体なんだったのかなぁ」
ギンコ「阿という蟲は、どうやら他の生物が生きている音を嫌うようだ。
耳に手を当てると、ゴオッとした音が聞こえるだろう?
それは身体の血流が成す音だと言われている。
それを阿に聞かせてやれば、自然と阿は溶け出してしまうわけだ」
雪乃「ありがとうございます……
何とお礼を言って良いのか」
ギンコ「いや、俺は特に何もしていないから気にしなくて良い。
それよりも雪乃、お前さんはもう少しばかり蟲師としての
知識と術を磨いておいた方が良いだろう。
何しろ、雪ノ下家でも最も有望な蟲師と呼ばれていたのだからな」
結衣「えっ!?ゆきのんなんか凄いね!」
雪乃「ですが……私はもう仕事はしないと」
ギンコ「だが、現にこうやって小町さんを助けようとしただろう。
それに、最近の光脈の異常からして、今後この界隈でも
蟲絡みの事件が増えないとも限らん」
雪乃「でも……本家の方とはもう」
ギンコ「ああ、分かっている。
俺は蟲道具調達の為、しばらくこの千葉付近を廻っているから
困った時にはいつでも連絡をくれ。
綺に頼んで、ウロを雪乃の家に届けさせるから
連絡はそのウロを通じてすればいい」
雪乃「わかりました。それでは、宜しくお願いします」
ーーーーーーーーーー
奉仕部
結衣「ゆきのん、最近部室に来ないねー。
来ても、すぐに帰っちゃうし」
八幡「ああ、アイツなら例のギンコとか言うヤツに付いて
蟲師の修行をし始めたみてえだけどな」
結衣「何か人ごとみたいに……
ヒッキーだって蟲が見える能力がついたんでしょ?
だったらゆきのんを手伝ってあげればいいのに」
八幡「雪ノ下に使い回されて摩耗するブラックな未来しか見えねぇな」
ガララッ
雪乃「あら……腐酒が谷くん、久しぶりね」
八幡「人を火落ち菌に冒された日本酒みたいに言うな。かもすぞ」
平塚「おぅ、皆揃ってるな。
雪ノ下から、不思議な要望があったんで
該当する案件を持ってきたんだが」
雪乃「平塚先生、ありがとうございます」
平塚「じゃあお前ら、入って来い」
ゾロゾロゾロゾロ
結衣「ひぇっ!?」
八幡「な、何だ?二十人以上いるんだが」
平塚「これが、雪ノ下から提示された条件に合致する
とある問題を抱えた学生達だ」
雪乃「全員、最近蟲絡みの事件に巻き込まれた人達よ」
八幡「」
雪乃「今日から、ここを奉仕部あらため「蟲師部」とします。
蟲絡みの案件は全てここで処理しますので
比企谷くん、由比ケ浜さん、お手伝いを宜しくお願いしますね
特に蟲の見える、比企谷くんはね」ニッコリ
第一部 完
一体いつになったら第二部が始まるんだろうか
突然ですが宣伝です!
ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!
文句があればこのスレまで!
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/)
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