エルヴィン「調査兵団、食われて候」(53)

タイトルは語呂がいいからつけました。パクリとかいわないでください

あとキース教官がちょっとかっこいいです。でははじめます

エルヴィン「私がこの人類の希望を率いてもう長いが」


エルヴィン「今期の調査兵はとても優秀と聞いている」


リヴァイ「ミケや俺並に役に立つヤツはいねぇがな」


エルヴィン「巨人化能力を持つエレン、彼に執着するミカサ。彼女の実力はすでに調査兵団のナンバー3だ」


エルヴィン「さらに非凡な頭脳を持つアルミン君だ」


ハンジ「私もアルミンの才能は是非とも欲しいね」


エルヴィン「さらに2,3番の成績で卒業した二人は入隊時期がバラけていれば主席になったであろう優秀な者達だ」


ハンジ「二人はキースさんの通過儀礼を受けなかったらしいね」


リヴァイ「確かにそうだが……それがどうしたんだ?エルヴィン」

エルヴィン「今期は私が団長になって以来の大豊作だ。過去最多の21名の新兵を獲得した」


ハンジ「憲兵団になったのは4位の子だけだったらしいね。上位十位のうち8人獲得だなんて前代未聞だよ!」


エルヴィン「だが……次の壁外調査でその半数近くが死ぬことになる」


リヴァイ「どうだろうな?失敗すれば最悪調査兵団とエレンは解体になるぞ」


エルヴィン「成功する自信は全く無い」


ハンジ「私も同意見だね。常識だけで勝てる相手じゃない」


リヴァイ「でどうするんだ?まさかびびって止めるんじゃねぇだろうな」


エルヴィン「そのつもりも無い。ただ……私は段々と兵士を駒として見始めているんだ」


ハンジ「団長……」


リヴァイ「そうでもなけりゃこんな組織のトップは務まらねぇだろ」


エルヴィン「人が死にすぎた……4年で9割だぞ?中でもあのウォールマリア奪還作戦だ」


リヴァイ「あの時か……」


ハンジ「団長は最年長だからね。一番多くの人の死を見て来てる」


エルヴィン「私は無辜の……ただの農民と市民を巨人に食わせ続けた……」


リヴァイ「酔ってるのか?何をいきなりそんな話をしだすんだ」


ハンジ「まあまあ。吐き出させてあげようよ」


エルヴィン「あの時こうしていれば……寝る前にそう思うことがある」


リヴァイ「気に病んだって無駄だぞ」


エルヴィン「だから私は冷徹に作戦を実行する。作戦のこと以外を考えないようにするために」


ハンジ「しんみりしちゃったね……」

エルヴィン「だから……調査兵団の中でも経験を積んでいる君達に私の昔話を聞いてもらおうと思ってな……」


リヴァイ「お前がハゲてなかった頃の話か。ぜひ聞きたいもんだな」


エルヴィン「ハゲではない」


ハンジ「ハゲでしょ」


エルヴィン「もういい……」


ハンジ「おもしろそうだから早く!」


エルヴィン「ああ、あれはまだキースさんが団長だった頃の話だ……」


キース(フサフサ)「エルヴィン、そう気に病むな……」


エルヴィン(フサフサ)「団長こそ……さっきのブラウン(アニメではモーゼス?)の母親への対応……私には真似できません」


キース「あああれか……あれは私の本心だ。計算ではない」


エルヴィン「団長は兵士のことを駒だとは思っていないんですね」


キース「駒だと思っているつもりだったのだがな。私にとっては彼らは仲間だようだ……」


エルヴィン「団長は……死んだ兵士に対して、何かしてやれることはあると思いますか?」


キース「墓に名を刻み、花を添えて祈ることだ。それしかあるまい」


エルヴィン「やはりそうですか……団長は眠れないことはありますか?」


キース「そんなものはしょっちゅうだ。巨人に食われる夢を見て飛び起きたりすることもある」

エルヴィン「それでも……それでも団長を続けられる理由はなんですか?」


キース「私にとっては私の命も、誰の命も、どれだけの命も、壁の外での自由には変えられないのだ」


キース「思い出したか?新兵の頃の志を」


エルヴィン「……」


キース「私が団長を続けられる理由は、常に最古参の新兵でいることだ」


エルヴィン「……墓参りに行ってきます」


キース「ならこれをもっていけ」スッ


エルヴィン「ノミ……ですか」


キース「いつもは私が彫っているのだがな。今日からはお前が彫れ」


エルヴィン「は…はい……」

キース「私はもう疲れたよ。これからは兵士を殺すのではなく、育てる側に回るとする」


エルヴィン「では……団長を辞めて教官になられるのですか?」


キース「そうだ。お前も団長を辞めたら教官になれ。歓迎するぞ」


エルヴィン「そ、それでは・・・!」


キース「エルヴィン、これからはお前が団長だ」

リヴァイ「そんなことがあったのか……」


ハンジ「団長誕生秘話……!」


エルヴィン「それから数時間後、超大型巨人が現れた」


リヴァイ「なんだと……よりによってあの日だったのか」


ハンジ「私いたよその時!」


エルヴィン「そのときはキースさんも私も無事だったが……今回のトロスト区だ」


リヴァイ「あれから一月だな……」ズズズ


エルヴィン「キースさんは内地で生き延びたが……ずっとふさぎこんでいるそうだ」


エルヴィン「104期生の殆どがトロスト区で死んだ。無理もないだろう」



ハンジ「今期の子たちは可哀想だね……その分初めての壁外調査でも死に難かったらいいんだけど」


リヴァイ「俺は訓練兵団に所属していなかったからな。同期ってもんがよくわからねぇんだが」


エルヴィン「三年間同じ釜の飯を食い、苦楽をともにした仲間だ……死んで何も感じないわけにはいかん」


ハンジ「そういえばエルヴィンの同期ってどのぐらい出世してるの?」


エルヴィン「生き残っているものは殆どいない。せいぜい憲兵団にいるナイルぐらいだろう」


リヴァイ「……審議所に居た憲兵団の事実上のトップだったか」 


エルヴィン「訓練兵時代の話なら出来るが聞くか?」


リヴァイ「それもぜひ聞きたいな」


エルヴィン「もう20年近く前の話だ……」

エルヴィン「俺は主席だったか」


ナイル「お前には勝てないな……」


エルヴィン「だが良かったじゃないか、憲兵団に入れて。内地で暮らすんだろ?」


ナイル「なんだろうな……俺の意見が正しいという自信はある。だがお前の意見も正しい気がするんだ」


エルヴィン「どっちが正しいじゃなくて、どうするかだろ?」


エルヴィン「俺は調査兵団の団長になる。お前も憲兵団のトップに立つんだろ?」


ナイル「ああ。出世して親戚一同内地に引っ越すんだ」


エルヴィン「お前はキッツと仲が良かったよな?あいつは16位だったか……」


エルヴィン「あいつも内地に呼んでやるか?」


ナイル「あいつはただの腰抜けだ。俺は違う」


エルヴィン「お前が腰抜けじゃないなら、俺は狂れか」


ナイル「そうだ。狂ってるよお前」


ナイル「……死ぬなよエルヴィン」


エルヴィン「お前こそ……お前は死なないか」


ナイル「お互い出世して、内地で会おう」


エルヴィン「そうだな。精精ゴマのすり方でも勉強してろよ」


ナイル「お前こそ死んだふりの練習でもしてろ。じゃあな」


エルヴィン「じゃあなナイル」

リヴァイ「腰抜け野郎が……」


エルヴィン「だがヤツも悪い奴ではない」


ハンジ「キッツってあの!?小鹿隊長!?」


エルヴィン「確かピクシス指令がそう呼んで以来流行っているらしいな」


リヴァイ「まるで小鹿のように繊細な男……だったか」


ハンジ「よく知ってるじゃないのぉ?」


エルヴィン「……ぺトラとはどうだリヴァイ」

リヴァイ「何だ?」


ハンジ「唐突だけど気になるね!」


リヴァイ「何もねぇ……期待してるのか?」


ハンジ「そりゃもちろん」


エルヴィン「ぺトラはお前目的で調査兵団に入ったからな。いつの間にか精鋭の仲間入りをしていたが」


リヴァイ「どうでもいい……」


ハンジ「ひゅーっ!クールだねリヴァイ!」


リヴァイ「殺すぞクソメガネ」


エルヴィン「まあ抑えろリヴァイ……だがな、彼らの命は私たちにかかっているんだ」

リヴァイ「成功する自信はねぇんだろ?」


エルヴィン「全く無いな」


リヴァイ「審議所であれだけ啖呵切った後だ。まあやるしかねぇんだが」


ハンジ「あの時のリヴァイは怖かったねー!隣に座られてエレン、震えてたもん」


リヴァイ「怖がられるぐらいじゃねぇと上司はつとまらねぇだろ?」


エルヴィン「あれ以来エレンはぺトラとハンジになついて、私は寂しいよ…」


リヴァイ「女々しいこと言うんじゃねぇよ。ガキになつかれて何が嬉しいんだ?」


エルヴィン「そう言いつつもリヴァイは毎年新兵を気にかけているだろ?ハンジも最初は怖がっていたが段々」


ハンジ「段々リヴァイはただのちっさいおっさんなことに気付いたんだよねー」


リヴァイ「殺されたいのか?」

エルヴィン「そうそう、ハンジは同期に誰が居たんだ?」


リヴァイ「よくお前らは俺の事を無視するが……それは楽しかったりするのか?」


ハンジ「話し変わるねー!私の同期は……駐屯兵団のイアンとリコとミケだね」


ハンジ「あとは……調査兵団に入った子がいたんだけど死んじゃったんだよね……」


リヴァイ「確か3人居たな。名前は……クリスタ、エレン、ニコラだったか」


ハンジ「クリスタとエレンが入ってきた時、ちょっとドキッとしちゃった」


エルヴィン「よく覚えてるな。私も年かな」


エルヴィン「私の代など、三人しか調査兵団に行かなかった。私を含めてもだ」


エルヴィン「カレル、レーフ……最初の壁外調査で二人とも死亡した」

エルヴィン「カレル!クソッ、ガス切れな上馬も見失ったのか……!」


エルヴィン「キースさん!指示を!」


キース「そこに置いていくしかない!馬が戻ってくればカレルは助かる!」


エルヴィン「でもそんな……!あんまりです!」


キース「奇跡でも望まない限りカレルは助からない!エルヴィン!」


エルヴィン「……奇跡を信じます!」


レーフ「カレル!予備の馬だ!早く乗れ!」


カレル「レーフ!ひとつ貸しが出来た――」


エルヴィン「奇行種だ!!二人とも逃げろ!!」

キース「奇跡が起きたと思ったらこれか……レーフ!俺と一緒にヤツを仕留めるぞ!エルヴィンはカレルと馬をつれて先に行け!」


エルヴィン「ハイ!」


レーフ「ハイ!」


キース「ふんっ!」ザクッ


レーフ「オラァ!」ズパッ


ズシン……


カレル「ありがとうエルヴィン!」


エルヴィン「いくぞカレル!そっちの馬に乗り移れ!」


キース「よし、早く馬に乗れ!」


レーフ「ハイ!」

ハンジ「よかったじゃない!二人ともその時は助かったんでしょ?」


エルヴィン「その時はな……」


リヴァイ「その時は、か」


エルヴィン「まあ聞け。それから我々はあの旧市街に着いた」

何から取ってきたタイトルかと思ったら、町田康か

>>20正解です。

では少し投下します

エルヴィン「ここが……旧市街地……!」


キース「大昔の人類の遺跡だ。ここまで来ただけでもお前達にとっては価値があっただろう」


エルヴィン「はい……!」


カレル「すげぇ……!」


レーフ「……」


キース「……馬を下りろ。立体起動の準備だ」


エルヴィン「まさか巨人が…?」


キース「用心はしておけ。とにかく屋上に上る!馬をつなげ!」

エルヴィン「キースさん……すごく綺麗ですね……」


キース「私も、最初にこの光景を目にした時はお前のように泣いてしまったよ……」


エルヴィン「いつかここで生活できるといいですね!」


キース「そうだな…」





ハンジ「すごいね!あの旧市街地に行ったって!」


リヴァイ「あそこは巨人がわんさかいて視界も悪いせいでとにかく死人が出る」


エルヴィン「そうだ。それからしばらくして二人は死んだ」

ハンジ「巨人が来たの?」


エルヴィン「そうだ。部隊は壊滅状態、収穫は実質0のまま帰投した」


ハンジ「そっか……」


エルヴィン「二人のためにも、私は生きなければならない」


リヴァイ「………」


ハンジ「私の同期の三人も最初の壁外調査で死亡したよ。私は助けられなかった……」


リヴァイ「辛気臭せぇな……そんなんじゃ成功するものも成功しねぇぞ」


エルヴィン「だから最初から言っているだろう?成功する自信は全くないと」


ハンジ「無責任だけど同意見だよ!」

リヴァイ「全くなんて野郎どもだ……」


コンコン


エルヴィン「入りたまえ」


ぺトラ「失礼します!」


ミケ「……」



リヴァイ「何だお前ら?」


ぺトラ「兵長!エレンとグンタが料理当番なんですけど、あまりに不器用すぎて料理じゃなくて変な物質が出てきました!」


リヴァイ「……俺に頼まなくても炊事係が居るだろうが」


ぺトラ「それが……今期で料理できる子、ミカサちゃんだけなんですよ……だから皆手一杯で……」

リヴァイ「……仕方ねぇな」ガタッ


ハンジ「リヴァイは気持悪いぐらい几帳面だねー」


リヴァイ「チッ…行くぞぺトラ」バタム


ミケ「ハンジ、研究の件で話がある」


ハンジ「じゃあねエルヴィン団長!」


エルヴィン「寂しいぞー!帰ってこーい!」


ハンジ「そんなこといって、一人になりたい時もあるんじゃない?」バタム


エルヴィン「好きにしろ……」

エルヴィン「……」


エルヴィン「思いがけず一人になってしまったな……」


エルヴィン「明日に備えてもう寝よう……zzz」




エルヴィン「カレル!レーフ!!!」


カレル「俺のことはいい!早く撤退しろ!」


レーフ「人類の勝利に役立てて嬉しいです……御武運を!」

キース「逃げろエルヴィン!もう我々では彼らは救えない!!」


エルヴィン「そんな!?仲間が食われてるんですよ!!」


キース「俺の判断に従え!命令だ!!」


エルヴィン「……解りました。命令ですから……」


キース「彼らのためにも我々は生きるのだ!帰るぞ!シガンシナへ!」


エルヴィン「……ハイ!」


町人a「朝っぱらから騒ぎ立てて出て行ったかとおもったらもう帰ってきやがった……」


町人b「一体いくら俺たちの税が巨人の餌に使われたんだろうな……」


エルヴィン「……」ギロッ


キース「エルヴィン」

エルヴィン「……」


キース「後で見せたいところがある。ついて来い」


エルヴィン「?……ハイ」


エルヴィン「キースさん、見せたい所とは?」


キース「ここだ」


エルヴィン「これは……慰霊碑ですか」


キース「調査兵団の戦死者の名前がすべてここに彫られている。今日もまた、彫らねばならなくなったが」


エルヴィン「……キースさんが彫ってるんですか?」


キース「いや。最近までは団長が彫られていたんだがな、引退を考えてらっしゃるようだ」


エルヴィン「それで最近はキースさんが彫っているということですか?」

キース「そうなるな……私はじきに団長になるだろう。そしてお前も、じきにな」


エルヴィン「俺が……団長…」


キース「私が引退したらこのノミを渡す。お前が引退したら……私の教え子に渡すことになるな」


エルヴィン「教官になられるんですか?」


キース「引退したらの話だ。それに私とてそれまで生き残っているとは限らん。もちろんお前もだ」


エルヴィン「解ってます……死んでいった仲間たちのために、死ぬわけには行きません!」


キース「骨を埋めたら名前を彫って、花を生けて、目を閉じて、祈る。これだけでいい」


エルヴィン「カレルとレーフの名前……俺が彫ってもいいですか?」


キース「そうだな。私は少し用事があるから、それまでに彫っておいてくれ」スッ


エルヴィン「解りました」パシッ

エルヴィン「……」ゴリゴリ


エルヴィン「お前らの髪の毛一筋も取り返せなかったよ……」ガリガリ


エルヴィン「巨人を駆逐したら……あそこにもうひとつ慰霊碑を作ってやるよ」


エルヴィン「よし、何とか出来たな」


キース「おお!上手いじゃないかエルヴィン!」


エルヴィン「ありがとうございます」


キース「私は死んだ者の遺族に会いに行く。お前も来るか?」


エルヴィン「俺は……カレルとレーフの家族にあわせる顔が無いですから。花を買ってきます」


キース「そうか。まあそれもいいだろう!花はお前の好きなものを供えてやれ」


エルヴィン「解りました!」

エルヴィン(とはいえ……俺は好きな花なんてないぞ?お任せでもいいか)


エルヴィン(いや……確かあいつらが好きだといっていた花があったはずだ。あれでいいか)


エルヴィン「ヒナギクとシオンの花束をひとつずつください」


花屋「何本ずつにする?」


エルヴィン「10本ずつでお願いします」


花屋「その格好…あんた、調査兵団の墓に供えるのかい?」


エルヴィン「はい……よく解りましたね」


花屋「辛気臭い顔にそのだからね。あんた、なかなか良い選択だよ」


エルヴィン「そうですか……」チャリン

訂正

○花屋「辛気臭い顔にその格好だからね。あんた、なかなか良い選択だよ」

花屋「毎度あり!」


エルヴィン「………」テクテク


エルヴィン「……着いた」


エルヴィン「ほら、お前らが好きだって言ってた花だぞ」ファサ


エルヴィン「お前らが死んで……俺は強くなれたと思う」


エルヴィン「キースさんが言ってたんだ……仲間を殺されて生き残った兵士は強くなる…と」


エルヴィン「キースさんは俺の何倍も辛いのに……どうしてあんなに強くいられると思う?」


エルヴィン「慣れたからでもない。ましてや、冷酷なわけでもない」


エルヴィン「強いからだ……俺は弱いよ」


エルヴィン「俺がもっと強ければ……お前達を救えたのに」


エルヴィン「だから俺は強くなって巨人を駆逐して、仲間を守って、この世界を平和にする」


エルヴィン「待っててくれ……」

エルヴィン「夢か」


エルヴィン「縁起が悪い……」ムクッ


エルヴィン「カレル、レーフ……壁を壊す人類の敵のスパイを……これから捕らえる」


エルヴィン「平和への大きな進撃だ。成功させて見せる」


ぺトラ「団長!お目覚めですか?」


エルヴィン「ぺトラか。今起きたところだ」


ぺトラ「もうすぐ朝ごはんですから早く来て下さいね!」ドタドタ


エルヴィン「元気な子だな……彼女も私のせいで死ぬかもしれないのか」


エルヴィン「もういい。朝飯にしよう……」

リヴァイ「エルヴィン。起きたか」


エルヴィン「いつの間にかエプロン姿のお前にも慣れたな……」


リヴァイ「黙って食え」


エレン「リヴァイ兵士長が一番料理が得意だなんて知りませんでした!」


ハンジ「ナンバー2はエルドだからぺトラの立場無いよねー」


ぺトラ「ハンジさん!酷いですよ!」


エルヴィン「エレンは不器用だと聞いたが?」


グンタ「そうなんですよ!包丁を使う時は猫の手だって教えたんですけど」


オルオ「お前も不器用だろうが!」


エレン「人参を切ってたら巨人に見えてきたんですよ。だから細切れにしてやりました」

エルド「細切れにするだけなら良かったんですが、破片が飛び散りまくってリヴァイ兵士長に怒鳴られたんです」


リヴァイ「神聖な厨房を汚すことは赦さん」


エルヴィン「君たち、今日壁外調査に行くんだぞ?もうちょっとこう……シャキっとしたらどうだ」


オルオ「俺はもちろんしゃきっとしてましたよ!


ぺトラ「確かにそうですね。私たちがしっかりしないとエレンが危ないですから」


リヴァイ「緊張感が足りねぇな。俺が喝を入れてやろうか?」


エレン「俺はいいです!もう朝ごはんも食べたんで自主トレしてきますね!」ピュー


ハンジ「あーあ、エレンったらトラウマになってるよリヴァイ?」


リヴァイ「俺の躾が効いたんだ。喜ばしいことだ」


エルヴィン「私は少し会議室にいる。ぺトラ、お茶をついでくれるか?」


ぺトラ「ハイ!」ジョーロジョーロ


エルヴィン「……」ガタッ


リヴァイ「おいクソメガネ……エルヴィンは思いつめてるように見えたが」


ハンジ「そうだね。昨日以来昔のことを思い出しちゃったのかもね?」


リヴァイ「あいつは頭が回るが、その分余計な心配事をする」


ハンジ「それが原因でハゲに……」


リヴァイ「そうかもな……」

エルヴィン「………」ズズズ


エルヴィン「もうすぐ出発の時間だが……」


エルヴィン「こんな所で私一人が頭をひねったところで意味は無いな……」


エルヴィン「なのにどうして私はここにいるんだ…?」


エルヴィン「一人になりたかったんだな。きっと」


コンコン


エルヴィン「ぺトラか?」


ぺトラ「ハイ!団長、そろそろお時間です」


エルヴィン「今いく……」ガタッ


エルヴィン(成功を信じて目的達成だけを考えろ……何が起こっても不思議ではない。頭を柔軟に保て)


エルヴィン「行くか……」

ハンジ「これでどう?もう痒い所あってもかけないよ?身じろぎ一つできないよ。多分一生」


ハンジ「傷を塞げばふさぐほど、関接はより強固に固まっていく仕組みだ」


ハンジ「…しっかし肝心の中身さんはまだでないのか?何やってんだよリヴァイとミケは……」


エルヴィン「リヴァイ、ミケ」


リヴァイ「硬化する能力を持っているようだ……隙間がない分鎧より厄介になるかもな」


ミケ「……」フルフル


エルヴィン(鎧の巨人とは違って硬度は短時間しか持たないようだが……関係があるのか?)


エルヴィン(だとすれば鎧と超大型の中身は常に一緒である可能性があるな……探りを入れる価値はある)

エルヴィン「では発破の準備だ。腕を吹き飛ばしてうなじを露出させる。そこまで漕ぎ着ければ勝ちだ」


ケイジ「しかし……常備している砲では中身ごと吹き飛ばしてしまう可能性があります……」


エルヴィン「なら手首を切断するよう仕掛けてみよう」


リヴァイ「オイ」ゲシ


リヴァイ「いい加減出てきてくれないか?こっちはそんなに暇じゃないんだが」


リヴァイ「なあ?お前はこれからどうなると思う?お前はこの状況から抜け出すことが出来ると思うのか?」


リヴァイ「こっちの迷惑も少しは考えて欲しいもんだ」


リヴァイ「お前を引きずり出す方法を考えては試しを繰り返すんだぞ」


リヴァイ「お前は確か……色々なやり方で俺の部下を殺していたが…あれは楽しかったりするのか?」


リヴァイ「俺は今楽しいぞ。なあ……?お前もそうだろ?」


リヴァイ「お前なら俺を理解してくれるだろ?」


リヴァイ「・・・!そうだ…一つ聞きたいことがあった」


リヴァイ「お前の手足は切断しても大丈夫か?また生えてくるんだろ?」


リヴァイ「おまえ自身の本体のほうだ。死なれたら困るからな」


女型「スゥゥゥゥゥゥ」


リヴァイ「!」




女型「きぃやああああああああああ!!!!!」

エルヴィン「………断末魔……では無さそうだ」


リヴァイてめぇ……びっくりしたじゃねぇか」


ミケ「エルヴィン!全方位から多数の巨人が集まってくるぞ!」


エルヴィン「まさか…あれは号令だったのか!?」


エルヴィン「発破用意を急げ!」


ミケ「エルヴィン!先に東から来る。すぐそこだ!


エルヴィン「荷馬車護衛班!!迎え撃て!!!」


調査兵「無視だと!?奇行種なのか!?」


調査兵「三体突破します!」


リヴァイ「オイ…てめぇ…」ゲシゲシ


リヴァイ「さっき何かしやがったな」


調査兵「リヴァイ兵長!」


リヴァイ「……」ザクザクッ


エルヴィン(女型の巨人を食らっている……まさか無理やり巨人体から抜け出して、再び巨人化するつもりか)


エルヴィン「全方位から巨人出現!!」


エルヴィン「全員戦闘開始!!女型の巨人を死守せよ!」


エルヴィン(なんと言う数だ……これほど集まってくるとは)


エルヴィン(巨人に食われたところは再生していない……ミカサの報告どおりだな)


エルヴィン(だが女型の場合わざと食わせている。本当は再生できるのか…?)

エルヴィン(まずい!もう骨格まで見えている!)


エルヴィン「全員一時退避!!」


リヴァイ「オイ……エルヴィン」


エルヴィン「やられたよ」


エルヴィン(だが用心は必要だな)


リヴァイ「……何ってツラだてめぇ…そりゃ」


エルヴィン「敵には全てを捨て去る覚悟があったということだ。まさか……」


エルヴィン「自分ごと巨人に食わせて、情報を抹消してしまうとは……」


エルヴィン「総員撤退!!巨人達が女型の巨人の残骸に集中しているうちに馬に移れ!!荷馬車はすべてここにおいて行く!!」


エルヴィン「巨大樹の森西方向に終結し陣形を再展開!!カラネス区へ帰還せよ!!」

エルヴィン(今回は私の負けだ………だが次は、その次は……絶対に勝ってみせる)


リヴァイ「審議所でアレだけ啖呵きった後でこのザマだ……大損害に対して実益は皆無」


リヴァイ「このままのこのこ帰ったところでエレンや俺たちはどうなる?」


エルヴィン「帰ってから考えよう。今はこれ以上損害を出さずに帰還できるよう尽くす」


エルヴィン「……今はな」


エルヴィン(死骸の蒸気で視界が悪い。信煙弾での連絡に支障がでかねない…)


エルヴィン(そうか!蒸気に紛れて中身は逃げ出したのだ!となれば)


エルヴィン(女型は恐らくまた出現するはずだ。そうなればリヴァイ班を狙うだろう……ならば)


リヴァイ「俺の班を呼んで来る。やつら……そう遠くに行ってなければいいが…」


エルヴィン「待てリヴァイ。ガスと刃を補充して行け」

リヴァイ「?時間が惜しい。十分足りると思うが……なぜだ?」


エルヴィン「命令だ。従え」


エルヴィン(どちらにせよリヴァイが女型を捕らえることになる。ならば万全の状態で行くべきだ)


リヴァイ「…了解だ。エルヴィン」


リヴァイ「お前の判断を、信じよう」

ハンジ「エルヴィン…どうしてリヴァイに補給させたの?時間が無いのに…」


エルヴィン「ハンジ…君が言っていた推論を思い出したからだ」


ハンジ「ん・・・?」


エルヴィン「超大型巨人が消えた時、その中身を誰も見ていないのは…」


エルヴィン「中身が立体起動装置をあらかじめつけていたから蒸気に紛れて素早く逃げることが出来たのでは?といっていた件だ」


ハンジ「でもそれは…エレンが巨人から出た時の状況を考えると出来そうもないって結論付けたはずでは?」


ハンジ「装備は破損して戦闘服さえなくなってたし」


ハンジ「何よりエレン本人が自力で立つことさえ出来ないぐらい憔悴していた」


エルヴィン「女型の巨人は叫び声で巨人を引き寄せる能力を持っていた。我々はそれを予想できず、作戦は失敗した」


エルヴィン「あの敵を出し抜くには、発想を飛躍させる必要がある…」

エルヴィン「巨人の力に錬度があるとしたら、初心者のエレンを基準に考えるのは間違いだった」


エルヴィン「君の推論の通り敵が蒸気に紛れて脱出することができ…」


エルヴィン「我々と同じ装備を身にまとっていれば、兵士に紛れ込むことも出来るかもしれない」


ハンジ「それって……」


エルヴィン「リヴァイに補給させたのはエレンを狙って再び女型が現れると思ったからだ」


ハンジ「なるほどね」


エルヴィン「だが、リヴァイが補給のせいで遅れ、リヴァイ班が死ぬようなことがあっても困る。綱渡りだったよ」


ハンジ「中身さんはどこにいると思う?」


エルヴィン「間違いなくエレンのいるリヴァイ班のところへ行っているはずだ……間に合えばいいが」


ハンジ「精鋭を集めたリヴァイ班だよ?そう簡単には死なないと思うけど」

期待

うわ……すっかり忘れてました。申し訳ありません……
しばらくしたら書き溜め投下しますのでどうかご勘弁を

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