モバP「待ち人と石の記憶」 (33)
モバマスSSです。
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随分と久々な気がします。
こんばんは。
事務所
菜々「えー、そうなんですか?」
P「そうなんですよ」
ちひろ「なんの話してるんですか?」
P「蘭子が親元から離れて暮らしてるって話です」
菜々「てっきりお母さんと一緒だと思ってました」
ちひろ「まぁ、そう思いますよね」
P「それだけ親御さんに信じて貰ってる分、責任が重いですよね」
ちひろ「ですね」
菜々「そう言えばこっちに来た時にスカウトしたんですよね」
P「えぇ」
菜々「修学旅行とかで来てたんですかね?」
P「いや、親戚の家にとか言ってましたよ」
菜々「そうなんですね」
菜々「今日からーいちばーん――♪」
P「お、その歌は」
菜々「はい。気に入っちゃいました」
P「流石現役世代ですね」
菜々「なに言ってるんですかー?再放送を見てただけですよー」
P「俺は彼と同じ位立派な人間になれたんだろうかって、たまに思います」
菜々「…なれてますよ。誰かの為に自分を犠牲にするところとかそっくりです」
P「またまた。何を言ってるんですか」
菜々「Pさんはナナ達から卒業しないで下さいね」
P「別にどこかに引き抜かれるってことはないだろうから安心してくださいよ」
ガチャ
蘭子「煩わしい太陽ねっ!」
P「お、蘭子おはよう」
菜々「やみのまー」
蘭子「…他の者は?」キョロキョロ
P「まだ来てないな」
蘭子「ふむ…」
P「あ、そうだ蘭子」
蘭子「む?」
P「俺と初めて会った時のこと覚えてるか?」
蘭子「うん」コク
P「あの時なんで自分だけで来たんだ?」
蘭子「ふっ、愚問だな。我は魔王ぞ。誰かの手を借りるなどということが出来るか」
菜々「一人で来たいから来たって感じですね」
蘭子「あ、あと、ちょっと予定が…」
P「そうなのか」
蘭子「あ、でも…其の契りは未だ叶わず」
P「まだ、出来てないって?」
蘭子「…うん」
菜々「約束をすっぽかしちゃったんですか?」
蘭子「えっとね…笑わないで聞いて……くれる?」
蘭子「輝ける港にて、ふと我に語りかける物があったのだ。」
P「どこのことだ?」
蘭子「ひょ、兵庫県…」
菜々「あ、なるほど」
蘭子「えっと、お母さんの用事で、途中そこで降りて、時間を潰してたの」
P「なるほど」
蘭子「その、声のする方に言ってみた…の」
菜々「中々度胸ありますね…」
蘭子「そ、その声は我が鼓膜を震わせず、不思議と脳に直接語りかけてきたのだ」
P「そうなのか」
蘭子「石がだけど…」
菜々「石って石?」
蘭子「いかにも。ストーンよ」
菜々「あ、普通に英語ですね」
P「そりゃまた珍しいこともあるな」
菜々「え、経験があるんですか?」
P「いや、ないけど」
菜々「ですよね。びっくりしました」
蘭子「えっと、とりあえず、どうしたの?って聞いてみたの」
P「なんだって?」
蘭子「あなたには、遠く離れた場所で待っている人がいるって。アイオイだって」
菜々「どういう意味ですかねぇ…?」
P「…さぁ?」
蘭子「えっと…結局分からなかったんだけど…東の方だって…」
P「それで、ちょっと気になったから一人で来たのか」
蘭子「……」コクコク
P「なるほどな」
P「でも、危ないから今度からは止めてくれよ?」
蘭子「…うん」
菜々「不思議なこともあるんですねぇ…」
P「不思議なことと言えば、最近ウサミン星はどうですか?」
菜々「平常運行ですよー。メルヘンチェーンジ☆」キャピ
ちひろ「プロデューサーさんお時間大丈夫ですか?」
P「あぁ、そうでした。それじゃ、二人共行くぞ」
菜々「普通に流しましたね…」
菜々「あれ、なにかありましたっけ?」
P「収録。それじゃ行くぞー」
蘭子「いざ行かん!」
車内
菜々「ナナは今日もお仕事が楽しく出来て満足ですよ~」
P「いきなり何を言い出すんですか」
菜々「いえ、何となく」
蘭子「……」ポケー
P「蘭子どうしたー?」
蘭子「あ、いや、えっと…別に」
菜々「むむっ!?何か隠し事をしてますね。ナナにはまるっとお見通しですよ」
蘭子「えっと…その…」
P「気になったから探すのを手伝って欲しいって?」
蘭子「……」コクコク
菜々「見当はついてるんですか?」
蘭子「さっき…何か聞こえたの」
菜々「なるほど」
P「二時間くらいなら平気だな…よし、菜々さん頑張りますか」
菜々「えぇ、ウサミン星から電波を受信しちゃいますよ!」
蘭子「や、やみのまっ!え、えっと、あ、ありがとう…」ボソッ
菜々「蘭子ちゃんって可愛いですね…」ヒソヒソ
P「やっぱりそう思いますか」
菜々「えぇ!」
蘭子「こちらから精霊の声が聞こえる…」
P「こっちか」
菜々「なんだか事務所に近づいてきましたね」
P「そうですねぇ」
P「あ、そう言えば俺の家もこっちにあるんですよ」
菜々「え、そうでしたっけ?」
P「はい」
蘭子「あ、ここらへん…」
P「え…」
菜々「どうかしたんですか?」
P「いや、家が近くて。ちょっと駐車場に車置いてきますね」
菜々「行ってらっしゃいませー」
P「ただいま」
蘭子「この近くで――」
菜々「あ、なんか山が見えますね行ってみましょうか」
蘭子「…むぅ」
P「蘭子どうした?」
蘭子「別に何でもない…」
蘭子(折角カッコいいこと言おうとしたのに…)
P(懐かしいなぁ…この山)
菜々「何かありました?」
P「いえ、以前ここに来たことありまして」
菜々「そりゃ近くですからそういうこともあるとは思いますけど…」
蘭子「あ……こっち」
菜々「え、そっちですか。あ、危ないですよー」
P「こっちにも道があったんだな。けもの道っぽいけど」
P「菜々さんはここにいて下さい。服が服ですし」
菜々「なに言ってるんですか。ナナも行きますって」
P「そうですか?」
菜々「はい。蘭子ちゃんのこと心配ですしねー」
P「こんな場所があったなんてな」
菜々「秘密基地くらいにしか使え無さそうな場所ですね」
P「雨風防げる屋根なんてないですし、使えませんよ」
菜々「言われてみれば蔦っぽいのが入り組んでるだけですしね」
P「ちなみに菜々さんは秘密基地は作ったことがありますか?」
菜々「モチのロンですよ。皆と一緒に旗を作ったりしました」
蘭子「あ…これ」
菜々「え?あ、この石ですか?」
蘭子「いかにも。これぞ悠久の時を経て我を導き者よ!」
P「案外あっさり見つかったな」
菜々「あっさりですかね?結構真剣に探しましたけど」
P「まぁ、確かにそうですね」
菜々「ナナはちょっと体が痛いですもの…」
蘭子「え…なに?」
菜々「え?何か言ってるんですか?」
P「なんだって?」
蘭子「えっと…『尋ね、人は、見つけた。おめで、とう。それでは、息災を』だって…」
シャン…シャン…
P「何か聞こえないか?」
菜々「あ、本当ですね」
蘭子「……♪」
P「高砂や この浦舟に 帆を上げて…」
菜々「え?なんですって?」
P「そう言ってる気がしたんだよ」
菜々「ナナには聞こえないんですけど…」
蘭子「選ばれし者のみが聞こえる精霊の唄よ」
菜々「あ、あれっ?そうなんですかね…」アハハ
菜々(えっと…もしかして若い人にだけ聞こえる的な奴ですかね…)
車内
P「結局蘭子の尋ね人は誰だったんだろうな」
菜々「高砂…高砂…どっかで聞いた気がするんですよねぇ」
蘭子「誰だったんだろう…?」
蘭子(もしかして…?)カァァ
P「大丈夫か?」
蘭子「なっ…だ、大丈夫だからっ!」
P「ん?そうか」
P「…もしかして菜々さんのことかもな」
菜々「な、ナナですか?」
P「だって、話も合うし面倒見もいいし」
菜々「も、もうっ!ほ、褒めても何も出ませんからねっ!」ニヤニヤ
P「あ、そうか…分かった」
蘭子「…なにが?」
P「尋ね人ってアイドルの皆だったんじゃないか?」
蘭子「え…」
菜々「なるほどー。上手いこと言いますねぇ」
蘭子(そうなの…かな?)
事務所
P「ただいま帰りましたー)
菜々「かみのみですー」
P「楓さんの口癖が移りましたか」
菜々「ちょっと言ってみたかっただけですよー」
P「それじゃ、俺はちょっとこれから出掛けてくるな」
菜々「あ、送って下さってありがとうございました」
蘭子「闇に飲まれよ!」
頼子「珍しい組み合わせですね」
菜々「そうですか?」
蘭子「ふぅむ?」
頼子「この二人と私という構図が…です」
菜々「あ、そうかもしれませんね」
蘭子「決して負の感情を抱いているわけでは…」
頼子「たまたまですね…分かってますよ」ニコ
菜々「あ、頼子ちゃん、一つ質問いいですかー」
頼子「はい…私が答えられる範囲なら…」
菜々「高砂や、この浦舟にってどういう意味の唄なんですかね?」
頼子「婚礼の席に使われる謡ですね…どうかされましたか?」
菜々「あ、やっぱり!」
頼子「何がやっぱりなんでしょうか…」
菜々「いえいえ。こっちの話です」
菜々(どこかで聞いたと思ったら知り合いの結婚式の時だ)
蘭子「え、そうなの…?」
頼子「はい。割と有名な話ですね」
蘭子「それじゃ…アイオイってどういう意味…?」
頼子「相生ですか?恐らく、つがいという意味じゃないでしょうか…」
頼子「相生の松が有名ですね」
蘭子「つがい…?」
蘭子(えっと…それってそれってやっぱり…!)
蘭子「…きゅう」バタン
菜々「ら、蘭子ちゃん!?」
頼子「だ、大丈夫でしょうか…」
蘭子「ちょ、ちょっと…仮眠室で寝てき…ます」
菜々「あ、はい…」
頼子「顔が赤かったけど大丈夫でしょうか?」
仮眠室
蘭子「私を待ってた人…ってやっぱりPさんなの…?」
蘭子「でも、Pさんは皆って言ってたし…」
蘭子「でも、皆に会えたのもPさんと会ったからだし…」
蘭子「……っ」カァァ
蘭子「わ、我を地獄の業火で包みたまえっ!」
蘭子(は、恥ずかしくて死んじゃう…!)
事務所
頼子「それより、そんな質問をしてくるなんて何かありましたか?」
菜々「えっとですね…――」
頼子「なるほど。そんなことが…」
菜々「そうなんですよ」
頼子「なるほど。大体把握しました」
菜々「何をですか?」
頼子「蘭子さんが顔を赤くして倒れた訳を」
菜々「Pさん絡みですかね」
頼子「えぇ、恐らく」
菜々「……あの人はアイドルの皆が尋ね人だったって思ってますよ」アハハ
頼子「あの人、らしい…ですね」ハァ
菜々「しかし、なんで、松じゃなくて石だったんですかねぇ…」
頼子「そう言えば、今思い出しましたが、石は…出来事を記憶します」
菜々「そうなんですか?」
頼子「…はい。だから、その神様のことも覚えていたんでしょう…」
菜々「なんで蘭子ちゃんにはそれが見えたんでしょうかね?」
頼子「そこまでは…私は分かりませんけど」
菜々「実は、時を経て二人は…みたいな感じだと面白いですよね」
頼子「…そうですね。あくまで仮定の域を出ないですが…」
菜々「ナナも実は時を経て月から帰ってきたかぐや姫だったりして?」
頼子「わ、私も実は――」
ちひろ(微笑ましいですねぇ…きっと)
おしまいです。
短い話でしたが、読んで下さった方ありがとうございます。
不思議だけどいい話でした
野球シリーズも楽しみにしてます
乙
>>25
ありがとうございます。
野球は書くには書いたのですが、タイミングを見失ってしまっている状態ですね…。
乙
解説です。
今回参考にしたのは、能 『高砂』です。
『高砂や、この浦舟に帆を上げて、この浦舟に帆を上げて、月もろともに出で潮の、波の淡路の島影や、遠く鳴尾の沖過ぎて、はや住吉に着きにけり、はや住吉に着きにけり』
と言う唄は結婚披露宴の定番になっているそうです。
あらすじ
九州阿蘇神社神主友成が、都見物の途中に播磨(現在の兵庫)の名所高砂の浦に立ち寄ります。
そこで、友成は一組の老夫婦に出会います。そして、高砂の松の話をします。
そして、遠い地にあるのと合わせて相生の松と呼ばれていることを伝えます。
老夫婦は友成に高砂と住吉の相生の松の化身であることを伝え、再開を約束して消えていきました。
友成が彼らを追い、再開した際には君民の長寿を寿ぎ、平安な世を祝福したそうです。
ちなみに松は古来、神が宿る木とされ、常緑なため千歳と呼ばれました。
詳しくは以下のリンク先に。
http://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_015.html the能.com
おつでした
高砂って言葉だけだと百人一首の中にもいくつか詠ってるのあったよなぁ程度しか印象なかったけど、そういう話もあるのか
次回も楽しみにしてます
おつ
難しいことはどうでもいい、蘭子かわいい
そう言えばアイマスとジャイキリのクロスSSも書いてたんだっけ?
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