夏海「ひか姉、山登り行こうよ!」
ひかげ「はぁ? なんだよ急に……」
夏海「だって連休で暇なんでしょ?」
ひかげ「まぁ、暇っちゃ暇だねぇ」
夏海「ならいいじゃん! ほら!」グイグイ
ひかげ「あ~もう! 分かったから服引っ張んなって!」
──────
─────
────
ボロ
夏海「うわっと!」ビクッ
夏海「ひか姉、ここら辺崩れやすいから気をつけてよ」
ひかげ「あいよー」
ひかげ「…──って、なんで岩山なんだよ!?」ハッ
夏海「いや~、せっかくだし、ちょっとハードコースをと……」
ひかげ「ハードコースをじゃねーよ! 落ちたらどーすんだよ!」
夏海「あはは、ひか姉は心配症だな~。そんな簡単に人が落ちる訳──…」ボロ
夏海「うわわっ!!?」ガシッ
ひかげ「ちょっ、おま…──うぎゃあああ~~~!!!」
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小鞠「…──で、こうなった訳?」
夏海「うぅ~…ウチの右腕が~……」
ひかげ「片腕無事なだけいいだろ! 私なんか両足ポッキリだっての!」
このみ「まぁまぁ」
このみ「ていうか、2人ともよくそれだけの怪我で済んだね~」
このみ「あの山、崖崩れとかで結構人死んでるんだよ?」
夏海&ひかげ「……」ゾゾー
小鞠「町のこ~んな大きな病院に運ばれちゃって、夏海はホント馬鹿なんだから!」
夏海「出来ればウチ、今は優しい言葉をかけて欲しいなぁ?」ウルリ
ひかげ「ふざけんな! 退院するまで愚痴ってやっから覚悟しとけよ!」
夏海「このみちゃ~~ん」ポフッ
このみ「おー、よしよし」ナデナデ
このみ「もうそろそろおばさんも着く頃だし、後はおばさんに甘えなよ?」ニコッ
夏海「うわぁ~~~!!」ガバッ
小鞠「ちょっと、なに暴れてんの! 病院なんだから静かにしなさいよね!」ギュー
ひかげ「全く、とんだ長期休暇になっちまったよ……」フゥ
このみ「まぁいいじゃない。1人じゃないんだし」
ひかげ「いやいや、夏海と24時間一緒とか絶対1人のがマシだって」
夏海「はぁ…母ちゃんやっと帰ってくれた……」ゲッソリ
ひかげ「人ってあんな怒れるもんなんだな。巻き込まれた私よかずっと怒ってたし」
夏海「うん、笑顔で許してくれたひか姉が天使に見えるよ」
ひかげ「許してねーし!! つか、目覚めてから一度も笑った覚えないわ!!」
ひかげ「そもそもさー、私まだ一言も謝られてないんだよね~?」ジトッ
夏海「あ、そっか。ひか姉に謝んのすっかり忘れてたわ」
ひかげ「忘れてんじゃねーよ!! 最優先事項だろうがー!!」ウガー
夏海「ひか姉、ウチのせいで大怪我させちゃってごめんね」
ひかげ「やっと謝ったか。まぁ、謝ったとこで絶対許してやんないけど」プイ
夏海「ひか姉、ホントごめん。ウチ反省してるからさ……」
ひかげ「声のトーン落としたって駄目なもんは駄目だっての」
ひかげ「大体、お前いつも口ばっかで全然反省してねーじゃねーか!」
ひかげ「どうせ今だって『謝ったんだから早く許せ』とか考えてんだろ?」チラッ
夏海「」イラリ
ピョン
ひかげ「お、おい…夏海?」
ダッ
夏海「そんなに言うならウチもこっから飛び降りて両足折ったるわ!!」ガララ
ひかげ「な゛──…っ!!?」バッ
ひかげ「おいおい! そんなとこから落ちたら骨折どこじゃすまないだろ!」
夏海「んなもんやってみなきゃ分かんないじゃん!!」
ひかげ「いやいや、下コンクリだし! 山と違ってクッションになるもんないから!」
夏海「じゃあいいよ! そこの階段で両足折れるまで飛んでやるから!」ダッ
ドシーン!!
夏海「──…えっ?」クル
ひかげ「う゛お゛お゛お゛お゛……」ピクピク
夏海「大丈夫、ひか…──!?」ガシッ
ひかげ「はぁはぁ……そういうのマジでやめてくんない? 私、超心配症だからさ」
夏海「ひか……うぅぅ」ジワリ
ひかげ「ホントはさ、小鞠もこのみもおばさんも夏海のことが心配だったんだよ」
ひかげ「けどお前ピンピンしてるし、安心してつい口が出ちゃったんじゃないの?」
ひかげ「それに私の手前、問題起こした張本人を気にかけちゃ示しがつかないしな」
夏海「ごめん、ひか姉! 本っっ当にごめん! ウチ一生責任取るから!」ボロボロ
ひかげ「あはは…分かったから泣くなって……」ニヘラ
ひかげ「いいよ、だからもう二度とこんな恥ずかしいセリフ言わすなよ?」ドサ
ひかげ「──…マジ死にたくなるから」
今、一生責任とるって……
夏海「うっ、いつつ…」
ひかげ「おい、右腕大丈夫か?」
夏海「大丈夫大丈夫、ベッドから落ちたひか姉と比べりゃこんなん余裕だって!」
ひかげ「ったく、無茶して私を持ち上げるから。素直にナースコールしろってのに」
夏海「いや~、ひか姉が体張ってくれたんだし、ウチも体張りたいじゃん?」ニカッ
ひかげ「私そういうの心底ホントどうでもいいんだけど…──」
ひかげ「!」ブルル
夏海「ん? どしたの、ひか姉?」
ひかげ「いやさ、足骨折した時ってトイレどーすんのかな~って……」フルフル
夏海「そりゃ、オムツなんじゃないの? 履かせて貰ってるっしょ?」
ひかげ「それが分かんないんだよね~。多分、履いてると思うんだけど」フルフル
夏海「ウチ確認してみよっか?」
ひかげ「おー、頼むわ」フルフル
ピラッ
夏海「…うん、ちゃんとつけてるよ」
ひかげ「よ、よし! じゃあ出していいんだな?」フルフル
夏海「因みに大? 小?」
ひかげ「え? 小だけど……」フルフル
ひかげ「つーか見られてると恥ずいから向こう向いててくんない?」フルフル
夏海「へいへい」クル
ひかげ「ふぅ……」
夏海「……」
夏海「…──あっ」
夏海「ひか姉! ひか姉!」クル
ひかげ「うわっ! こっち見んなっつってんだろ!」ビクッ
夏海「もう出ちゃった?」
ひかげ「まだだよ、だから向こう向けって──…」
ひかげ「お前、なに持ってんの?」
夏海「へ? 紙コップだけど……」
夏海「ねぇ、これ使えそうじゃない?」
ひかげ「いや、何にだよ……」
夏海「……」
ひかげ「……」
夏海「ひか姉のおし…──」
ひかげ「絶っっ対、嫌だっ!!」クワッ
夏海「ほら、いくらオムツ履いてるからって交換来るまでそのままじゃ嫌っしょ?」
ひかげ「そんなの普通に我慢するし!」
夏海「いいじゃ~ん、ウチに見られたとこで何も恥ずかしいこと無いって~」
ひかげ「お前それ絶対やってみたいだけだろ!」
夏海「失礼な! ひか姉の老後の面倒を見るのに慣れときたいだけなんですけどー」
ひかげ「はぁ!? 一生責任取るって、マジで言ってたの…?」
夏海「分かったらウチに身を委ねちゃいなよ~」モソモソ
ひかげ「やめろーー!! いてっ、痛い痛い! 痛いっつってんだろ!!」ジタバタ
夏海「暴れるから痛いんだ! 大人しくしなよ、ウチ左手しか使えないんだからさ!」
ひかげ「いーーーやーーーだーーーぁーーー!!!」
──────
─────
────
夏海「ひか姉、捨てて来たよー」
ひかげ「…そういう報告しなくていいから」プイ
夏海「これからはウチ、ひか姉の全てを知る女って名乗っちゃっていいかな?」ムフフ
ひかげ「あーもー! 名乗っていいからそっとさせろよ!」バン
夏海「夕食来たよ、ひか姉!」
ひかげ「こ、これが病院食……自慢出来る!」ゴクリ
夏海「ウチもうお腹ペコペコなんだよね~。それじゃ、いただき…──」
夏海「……」
ひかげ「ん? 食べないの?」
夏海「ウチ、右利きなんだけど」
ひかげ「まぁ、大抵の人は右利きだねぇ」
夏海「ウチ、左手しか使えないんだけど」
ひかげ「ちゃんとスプーン用意してあんじゃん。それ使って食べなよ」
夏海「味噌汁すくって食べるなんて、日本人としてどうなんでしょうか!?」バッ
ひかげ「知るか!! そんなに嫌なら直接すすれよ!!」
夏海「くっ、こうなったらしかたない…!」ヒョイ
スタスタ
ひかげ「むぐむぐ…──」ピトッ
ひかげ「うおぁ!?」ビクッ
夏海「ねぇねぇ、ひか姉~。ひか姉がウチに食べさせてくんな~い?♡」スリスリ
ひかげ「は…はぁぁぁ~!!?」
ほほう
最高
ひかげ「なんで私がお前に食べさせなきゃなんないんだよ!?」
夏海「だって~、ウチ和食は箸じゃないと受け付けないんだも~ん!」
ひかげ「そんなの練習すりゃ左手でも持てんだろ!」
夏海「え~、そういうのめんどいし……」
夏海「ほら、ウチの右手が治るまででいいからさー」アーン
ひかげ「それ退院までずっとじゃねーか!!」
ひかげ「──…ったく。ほらよ」スッ
夏海「むぐむぐ」ゴックン
夏海「へへっ、ひか姉はホント押しに弱くて助かるわ♪」ニコパ
ひかげ「私が押しに弱いんじゃなくて、お前がしつこいんだろ! …ほれ」スッ
夏海「わっ、ちょっと待…──はむっ」
夏海「むぐむぐ」
ひかげ「はぁ……」
ひかげ「…口、ついてるし」ヒョイ
夏海「あっ」
ひかげ「いつまで経ってもやりたい放題でいい加減大人になれっての!」パクッ
夏海「……」
夏海「──…ひ、ひか姉がそういうならウチ頑張って大人になっちゃお~かな?」テレ
夏海「もち、退院後に!!」バーン
ひかげ「今なれよっ!!」バン
夏海「ふぅ…食った食った……」
夏海「これで後は寝るだけなんて、病院生活も案外いいかも♪」バフッ
ひかげ「……」
夏海「あれ? どしたの、ひか姉?」
ひかげ「あのさぁ…私の家族って誰か1人でも見舞えに来たっけ?」
夏海「……」
ひかげ「……」
夏海「ひか姉、どんま…──」ガラッ
ナース「宮内さん、ご家族の方から電話ですよ」
ひかげ「噂をすれば……もしもし?」
一穂『おー、ひかげ元気かい? 大変だったねぇ。生きててくれて姉ちゃん嬉しいよ』
ひかげ「うん」
一穂『それで明日なんだけど~、れんちょんとほたるん連れて来てもいいかなぁ?』
ひかげ「うん」
一穂『ああ、あと小鞠は1人で先に行くってさ。夏海のことが心配みたいでさ~』
ひかげ「うん」
一穂『じゃあ、そろそろ電話切るね。高校の方には連絡しといたから。お大事に~』
ひかげ「うん。で、なんで今日来な…──」ツーツー
ひかげ「……」
ひかげ「姉ちゃんぜってー寝てたし……私が死にかけたってーのに……」ブツブツ
夏海「ひか姉、そろそろ消灯時間だってよー」
ひかげ「え? ああ、うん、おやすみー。──…ったく、私だって」ブツブツ
夏海「……」
モソモソ
ひかげ「ん?」
夏海「まぁまぁ、文句があるなら明日本人に直接言えばいいんだしさ……」ピトッ
ひかげ「何さり気なく入って来てんだよ。寝る時くらい1人にさせろって」プイ
夏海「そんなこと言わずに~、ウチら一緒に落ちた仲じゃん?」
ひかげ「一緒じゃねーよ!! 私は道連れにされただけじゃねーか!!」クル
夏海「だから一生責任取るって! 寧ろ骨折だけで一生貰えるなんてお得じゃない?」
ひかげ「いや~、貰えるもんが夏海の一生じゃ全然割に合わないっしょ……」
パッ
ひかげ「あっ、電気が…──」ギュッ
夏海「…大丈夫だよ、ひか姉。ウチ、絶対ひか姉の自慢になるいい女になるからさ」
トクン…トクン…
ひかげ「夏…海……?」
夏海「もち、退院後に!!」バーン
ひかげ「今なれよっ!!」クワッ
お わ り !
乙
最高だった
良かった
すばらしい
ひか姉のおむつ使用シーンはよ
ガスパン遊びじゃなかった
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