上条「お前………今俺を笑ったな?」 (148)

一話 天の光当たらぬ間隙を往くもの



不良1「待てやオラァ!!」

不良2「何処行きやがったあのツンツン頭ぁ!!」

不良3「クソッ、逃げ足の速い奴……」

不良4「でもなんか、あいつダセぇ恰好してたよな」

不良1「あー、そういやそうだったなぁ」

不良3「なんか学ランの右袖破いてて……」

不良2「鎖みてぇのジャラジャラさせてよー!」

不良4「やっべwwwwwwww思い出したら笑えてきたわwwwwwwwwwwww」



上条「今……俺を笑ったな?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395595150

不良1「おお?ご本人登場ですかwwwwwwwwww」

不良2「おーお前wwwwwwwwなんだっけさっきのwwwwwwww」

不良3「そいつに関わんなだっけwwwwwwwwwwww?」

不良4「怪我するぞ(キリッ だってよwwwwwwwwwwww」


上条「……はっ……どうやら俺もまだまだみてぇだな……」

不良1「ああん?」

上条「俺もまだ……本当の地獄を見たわけじゃないらしい……」

不良2「あーん?何言ってんだおまえ

ドッッッッシャァァァァァァァァン!!!!


御坂「全く……何やってんのよアンタは!」

上条「さあな……自分でも分かんねぇな」

御坂「……まったくホントに……わざわざ割って入った癖に、すぐ逃げるし、いったい何がしたいって言うのよ」

上条「……地獄を」

御坂「はぁ?」

上条「地獄を知れるかと思った……勘違いだったようだけどな」

美琴「その鬱陶しいしゃべり方、いい加減やめないと電撃食らわすわよ」

上条「ああ……羨ましいな。感情を簡単にぶつけられてよぉ」


美琴「だから……やめろって言ってんのよォォォォォォォォォ!!!!」


がッシャァァァァァァァァアァン!!!!

Henshin Change Kick Hopper!

上条「……足りねぇなぁ……」

美琴「ッ――――!!だから!」

ビシャァァァァァァァン!!

美琴「なんで!」

ズシャァァァアァァァアァァン!!

美琴「効かないのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

美琴「大体その駆動鎧何よ!?形状記憶合金とか言っても限度があるでしょうが!!」

上条「別に仕舞ってる訳じゃねぇよ……その都度作ってんだ」

美琴「それなのに私の電撃を防げるのがおかしいって言ってるのよ!!」

上条「電撃は鎧で防いでる訳じゃねぇ……」

美琴「……そう……ふふふ……でもいいわ、今日は見逃してあげる」

上条「へぇ……憐れんでんのか……」

美琴「違うわよ!!今日は……」



上条「おっ」

美琴「」ビクッ



上条「そう、そうだったな……気がつかなかった……」

美琴「な、何よ?」

上条「俺はこれから……更に深い地獄を見る」

美琴「ハァ?何言って」

上条「じゃあな……」

美琴「あ、ちょ」


Rider Jamp!



美琴「……話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

上条宅


上条「……ははは……やっぱりだ……」

上条「家電がショートしてやがる……」

上条「ご丁寧に回路は焼き切れてる……修理するような金も……」


上条「は……ははははははははははははははは!!」



上条「そうだ……これが地獄だ……感謝なんてしねぇぜ御坂美琴ォ……」

上条「俺は……不幸だ……」





後半へ続く

マジか…期待

上条「……朝、か……」

上条「……そうだ、布団は干せるのか……電気は要らねぇからな……」

上条「はっ……まあ、やっておくか……どうせ無意味だろうからな……」


ガララッ


インデックス「……」

上条「……ああん?」


ガシャッ


上条(……幻覚まで見るようになるとはな……だが……)

ガララッ


インデックス「ご……ご飯を……」


上条「……幻覚のクセに飯を食うか……よっぽど余裕があるんだな俺の妄想は……」

上条「……おい」

インデックス「ご飯を……」

上条「熱帯夜で酸味の効いたホットドッグが」

インデックス「いただきますなんだよ!!」

上条「ッ!?」

上条(……食った。そうか……俺は腐ったモン食ったことは無かったな……いや)

上条「飢えはした。だが切羽詰まってもいなかった…………なんだそりゃあ……」



インデックス「ふう……御馳走様なんだよ!!でも欲を言うならもう少し量がほしいかも」

上条「……笑ったな?」

インデックス「えっ?」

上条「俺を笑ったな?喰う物もねえってか……」

インデックス「えっと、そういうつもりじゃ……」

上条「ふざけてるよなぁ?テメェの方が地獄を見ていながら、俺を見下してんのか?」

インデックス「そ、そういう意味で言ったんじゃないんだよ!!私は……」

上条「私は、何だよ。あぁ?言ってみろよ……」ガシッ



パキン……

キミノトーナリー タタカウータビー ウマレカーワールー
メーニーミーエルー スーピーイードー コエテクー モーショーン

(只今、放送ニ、オ見苦しい点ガアッタ事ヲ、オ詫ビモウシアゲマス・・・・・・)

イッタイジブンイーガイー ダレノツーヨサー シンジラーレールー
コーウーソークノー ビージョーン ミーノガスナー ツイテコレルーナラー



上条「つまり、俺の右手は異能の類ならなんでも消す訳だから……そうなったんだ……」

インデックス「……」

上条「分かったかよガキ……」

インデックス「あなた……見たくせに偉そうじゃないかな?」

上条「その服のことなんざ知らなかったんだ……お互い様だろ……」

インデックス「ぜんぜん釣り合ってないんじゃないかな!!そもそも謝罪さえ一言も無いなんておかしいんだよ!」

上条「うるせぇ……食ったんならとっとと消えろ……」

インデックス「そういうわけにもいかないかな!何せ貴方は、この『歩く教会』を壊したんだから!その理由をはっきり教えてくれるまでは引き下がれないかも!」

上条「だから詳しい話は知らねえっつってんだろ……第一、なんでそんなモン着て歩いて、ベランダなんぞにぶら下がってたんだ、お前は」

インデックス「む、それは話をすり替えるつもりかな?そうはいかないんだよ!」

上条(……何なんだコイツは)

上条「自分の話をするつもりが無いなら……出ていくんだな」

インデックス「え?」

上条「出ていけ」


インデックス「……そうだよね。ご飯ほんとうにおいしかったんだよ。ありがとう、えーと……」

上条「……」

インデックス「……じゃあね」



上条(……感謝?……ふざけんなよ……魔術云々の話を信じてるあたりからして、どう考えてもまともな目に会ってねえだろうに……)

上条(それでも、笑いやがる……)

上条(……地獄に、救いはねえんだよ……)


上条「……あぁ……補習か……忘れてたな……」

上条「どうせ学校にたどり着けるかも怪しいもんだがな……」

上条「…………行くか……」




学校

小萌「ですから上条ちゃん、私だって出来る事なら課題を出したくなんてないんですよ?でもですね、こうやってあんまりにも日数が足りてなかったりすると私がどんなに頑張っても助けてあげられないのですよ」

上条「はぁ……」

小萌「ですから、まずは少しでも長く学校にいる事からでも……」

上条「へぇ……」

小萌「あの……大丈夫ですか?」

上条「大丈夫に見えるのか……?」



青ピ「うーんいつもの事ながらカミやんはボロボロやねー」

土御門「にゃー。もうどっからがファッションでどっからが怪我なのかも分からないにゃー」

小萌「今度はどうしたんです?」

上条「どうせ笑うんだろ……」

小萌「た、担任が自分の生徒の怪我を笑うなんてしないですよ!」

青ピ「いやーカミやん、すまんけど笑うわ。ラッキースケベとこの世の地獄が同時に訪れるその場面、想像したらもうアカンもんよ」

土御門「というかそんな怪我でどうして生きてるのか不思議だぜい。もうそれが能力でいいんじゃないかにゃー」

小萌「二人とも、上条ちゃんに失礼なのですよ!?」

上条「なんで……」

小萌「はい?」

上条「本当、何で生きてるんだろうなぁ……俺」


小萌「……も……」

青ピ「ん?」

土御門「んん?」



小萌「もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!少しでいいのでもうちょっと生きる気力を出してくださいなのですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


下校


上条「結局……行き帰りで四回撥ねられた訳か……ははは……そうだよなぁ、俺がこの世の最底辺……」

上条「地獄に生きる者……そうでなきゃおかしいだろう……」

上条「……生きてる。俺は生きてる……」

上条「生きてることは希望か?」



上条「……この寮の三階。階段から……あるいはベランダから落ちたら、その先には?」


 (インデックス『……じゃあね』)


上条「……クソッ……」



上条「……あん?」


インデックス「……」


上条「……ハッ。何だよ」

上条(何だって俺の部屋の前にまた居るんだか……しかもぶっ倒れてやがる)

上条(つっても家に、もうまともに食えるモンはねえけどな……)

上条「おい、ガキ。テメェ帰ったんじゃ……」

上条「ッ!?」



インデックス「」

上条「……血?」


ステイル「おや……邪魔者がいるね。どうやって入ったんだか」

上条「……誰だよ、あんた」

ステイル「それはこっちが訊きたいな。人払いの結界を張ったというのに……全く、厄介な」

上条「……まあ、どうでもいいか……」

ステイル「何?」

上条「どうでもいいんだよ……こちとら疲れてんだ……じゃあな」

ステイル「……なんだか知らないが、邪魔をしないというのなら構わないさ。何処へなりとも行きたまえ」


インデックス「……う……」


上条「……その怪我」

ステイル「うん?」

上条「そこのガキの怪我。理由は何だ」

ステイル「ああ……斬ったのさ。背中を」

上条「……ああ?」

ステイル「火織も、まさか歩く教会が機能停止していたとは思っていなかったようでね。かなり落ち込んでいたよ。まぁなんにせよ、生きてその子を回収できるのなら構わないけどね」

上条「……十万三千冊を、か」

ステイル「……ふむ、状況が変わったね。君はどうやら禁書目録のことを知っているようだ。この街でそんな事があるとは……見過ごせないな」




上条「……ハッ」

ステイル「灰は灰に(AshToAsh)―――塵は塵に(DustToDust)―――吸血殺しの紅十字!!(SqueamishBloody Rood!!)」



パキン――――


ステイル「なッ……何!?」



上条「……なぁ、ここには居ない……兄弟、ふざけてるよなぁ……」

上条「俺たちが地獄。俺たちがこの世の最底辺」

上条「そうだったはずだ……だがよ、何だこれは」

上条「得体の知れないモンを持たされて、追っかけられて、マンションから寮に飛び移ったり背中切られたりよォ……」

上条「……そんなモンなら俺にも覚えがあるし、兄弟もそんなもんじゃねえほどヒデェ目に会ったってのに……」



上条「……そのガキの場合、本人には、その原因の記憶も無いんだってなぁ?」


ステイル「……そこまで聞いていたのかい。それに今のは……」

上条「お前………今俺を笑ったな?」

ステイル「何?」

上条「こう思っただろう……『そんな程度の理解なのか』ってな……」

ステイル「……何だ。何なんだ君は!」

上条「上等だ……俺達より不幸な人間なんざ居ねぇ……すぐに分かる」




上条「来い……ゼクター」

ホッパーゼクター「」ギュィイイイイイ!!ギュイィィィィィィィ!!

上条「変身……!」



Henshin Change Punch Hopper!

ステイル「ふん……学園都市お得意の先端科学と言う奴かい。だがそんなもので……」

上条「……笑えよ」

ステイル「ッ……さっきから何なんだ君は!」

上条「まだ俺には希望があった……不幸でも笑えるかもってなぁ……駄目だよなぁ、兄貴がこんなんじゃぁ…………」



上条「俺達は一番下に居るんだ……俺より不幸でも笑ってる人間が居るなら……そいつは不幸なんかじゃねぇ……」

(インデックス『ふう……御馳走様なんだよ!』)

上条「不幸なふりをしているだけだ……その不幸はまやかしだ……」



上条「そんな幻想は……ぶっ[ピーーー]」




――――パキィン……


うそやん・・・・・・・

次回予告!!


ついに現れたミレニアムセブン最後の一人、強化月間《アッパータイム》。彼の繰り出す抜き打ちテストに、鈴科百合子は手も足も出ない。果たして彼女は、自らのプライドを打ち砕く足し算を間違える事が出来るのだろうか!?

次回!!『小萌先生が言っていた』


来週のスーパーヒーロータイムもよろしくな!!

ミサキーヌ…いやミコトーヌ?



この勢い嫌いじゃないぜ

キックホッパーとは懐かしい

殺すが[ピーーー]になるのを回避するためにsaga入れときんしゃい

補足。

上条はパンチホッパーとキックホッパーを状況に応じて使い分けます。設定にも、一機で両方に変身可能とあります。

>>26さん 完全に忘れてました。次から気を付けます。


ではみなさん、おやすみなさい。次回放送は明日の予定です。

乙。

小ネタで書いたけど本当にやってくれるとは嬉しい。
楽しみ。



モヤシはもしやもやしに変身するのか?・・・

これは期待

謎の勢いを感じる

謎の勢いか、これがクロックアップなのかも

矢車さんの弟になるも周りの人間を助けて矢車さんと対立する上条も見てみたいなーIM0)チラッ

スレタイが完全にひげくま

前回までのあらすじ

意外と料理スキルが高かった姫神の協力と白包丁の犠牲により、辛くも黒包丁を打ち破った

上条当麻。だが彼を狙う新たな刺客は、すぐそこに待っていた……

ステイル『さぁ、始めようか上条当麻!!中華料理の頂点に立つのは誰か、思い知らせてやろ

う!!』

折れた白包丁の代わりに上条が手に取ったのは……!!!!




キミノトーナリー タタカウータビー ウマレカーワールー
メーニーミーエルー スーピーイードー コエテクー モーショーン

イッタイジブンイーガイー ダレノツーヨサー シンジラーレールー
コーウーソークノー ビージョーン ミーノガスナー ツイテコレルーナラー



ドゥンドゥクドゥクドゥクドゥクォツッドゥン)二話 小萌先生が言っていた(ドゥンドゥクドゥクドゥクドゥクォツッド

ゥン




仮面ライダーカブ㌧は、ご覧のスポンスワァの提供でお送りします……


    北斗有情破顔拳
  \   テーレッテー    /
    \  ∧_∧   /

     .|∩( ・ω・)∩|   
    / 丶    |/  \
  /   ( ⌒つ´)    \






~CM~

BUMPが初音ミクとコラボだってさ!配信限定で、コラボシングル「ray」発売中だぜ!(ステマのような何か)



と言う訳で次から続き、参ります

――――Henshin Change Punch Hopper!


上条「……笑えよ」

上条「まだ俺には希望があった……不幸でも笑えるかもってなぁ……駄目だよなぁ、兄貴がこんなんじゃぁ…………」

上条「俺達は一番下に居るんだ……俺より不幸でも笑ってる人間が居るなら……そいつは不幸なんかじゃねぇ……」

上条「不幸なふりをしているだけだ……その不幸はまやかしだ……」

上条「そんな幻想は……ぶっ殺す!!」


ステイル「ふざけないで欲しいね……何をする気かは知らないけれど、邪魔をするのなら……」

ステイル「……容赦はしないよ」


ステイルの黒いカソックが激しくはためく。下から、前から、袖口から、幾何学模様を描いたカードがまき散らされる。

上条「ッは……」

カードは追い立てられる鳩のように飛び、壁や天井に張り付いていく。それが何を示すかなど、上条には分からない。ただ、何かの準備をしている事は分かった。

だから、それを邪魔することにした。


上条「失せろよ……!」

――Clock Up!

ベルト横のスラップスイッチを叩くと、エコーの掛かった音声が鳴る。それと同時に上条の全身を、タキオン粒子が駆け巡る。

常人には視認不可能ほどに加速されたとはいえ、異能が絡んでいるらしいそのカードを全て撃ち落とせるわけではない。完全に無効化するならば、右手で触れねばならないからだ。

故に、特定のカードを狙って落とす。一定の、同じ方向へ向かうもの。


とはいえ、その効果はあまり期待できない。例えば発生する異能が、一つのカードの効果を大量に発生させる仕組みであったなら、その計略はそれほどの成果は挙げられないだろう。

上条もそのことは百も承知だ。本当の目的は、『一瞬でカードが複数消える』現象を見せる事にある。


クロックアップ可能な時間は、それほど長くはない。上条はまとまった数のカードを撃ち落としたことを確認すると、インデックスの近くで停止した。

――Clock Over!


ステイル「馬鹿な……いったい何をした!?」

上条「教えるかよ……」

素早くインデックスを抱える。クロックアップしたままならば高速で逃げる事も出来るのだが……生身の人間までを加速させることは出来ない。だから隙を作る必要があった。

胸に垂れる血で彼女を滑り落とさないように、上条はしっかりとインデックスを掴むと走りだす。

全速力は出せない。ステイルのカードは未だ九割以上が健在で、それはもう寮全体に広がっている。

超人じみた能力を得たというのに、上条はそれを生かし切れない状況だった。

上条「ははは……最高に最低だな、おい」

階段の手すりを踏み台にして三角飛びする。アクションゲームのような軌道だが、しかしそういうものは大抵……丁度着地する位置に。

魔女狩りの王「ゴァアァァァァァァ嗚呼ぁ!!」

上条「ちッ!邪魔だ!」


焔のヒトガタが、上条を抱きしめるように出迎えようとする。片手が塞がった状況で応戦するのは得策ではない、そう判断した。上条は上がった脇の下を潜り抜けるようにして通り、ついでの様に右手を掠らせる。

だが、それは良くなかった。

焔のヒトガタに触れた手は、一瞬すり抜けそうになったものの、「芯」のような何かに阻まれて引っかかったのだ。

上条「なっ!」


インデックスを取り落さなかったのは、僥倖と言えるだろう。あちこちを階段の角にぶつけながら、上条は辛くも一階にたどり着くことに成功した。


休む猶予時間はない。階段の上からは、消せない焔が迫っている。

立ち上がって踏ん張る暇も無かった。上条は必死で右手を上に伸ばす。同時に、バキリという不穏な音がした。

焔のヒトガタ……魔女狩りの王は、その体を膨張させていた。踊り場を這う灼熱の体。双眸は虚空を探るが、伸ばされた右腕は性格に上条の位置を捉えていた。


上条の右手は、異能の存在ならば何であれ問答無用で消滅させる力を持つ。その名は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。昨夜、御坂美琴の雷撃を消したのもその力である。

しかしその「打ち消す」という性質上、消したそばから補充されるような異能には滅法弱かった。一度受け止める形になってしまうと、もう身動きが取れないからだ。

今が、まさにその状況だった。

上条「ハッ……これだよ……もう動きようがねぇんだから……まったく、どん詰まりってか?」


加えて、先ほどの異音。魔女狩りの王の左手が、階段の壁を破壊し始めているのだ。ヒビが徐々に広がってゆく。加えて、ステイル本人が迫っている。ライダースーツのセンサーはこんな時ばかり正確で、もう一つの階段をステイルが下りてきていることが簡単に分かった。

絶体絶命。その言葉がふさわしい。



なのに。

上条「……っは、っはははははははは!」

嗤う。嘲笑う。

上条「『こんなもん』かよ……ええ?魔術師(キチガイ)さんよぉ」

右手は魔女狩りの王の手を防ぐのに使っている。だが左手はフリーだ。

ジョーカーはもう手中にある。


――Clock Up!

再びの超加速。まずは右手を一度、迫る炎の塊から離す。そしてフックのように、魔人の尺骨に当たる位置を撃ち抜いた。

……幻想殺しの相殺速度は、クロックアップでは加速されない。しかし、複数回うちつける事は可能になる。


二回。三回。四回。

五回目で折れた。そこで一歩後ろに下がり、バックル位置にあるホッパーゼクターの脚部、ゼクターレバーを往復させる。

右腕のアンカージャッキが後退し、肘に爽青色の粒子が収束してゆく。タキオン粒子の光。


それでも、魔女狩りの王は消せないだろう。だが、目的はそうではない。


上条は、ひびの入った壁に狙いを定めて、拳を放った。

――Rider Punch!

アンカージャッキが解放され、蒼い奔流が拳と共に建材を叩く。

壁はいともたやすく砕かれた。

上条(……間に合わねぇか?)

残り僅かな時間で後退。インデックスを抱きかかえる。


――Clock Over!


魔女狩りの王「グォォォォォォぁァァァァァァ嗚呼ぁあああっぁぁあ!?!?」



体制を崩した魔女狩りの王は、前のめりに転ぶ。左腕で押していた壁が破壊され、右腕で押していた上条はそこには居ない。だが左肩は、僅かに残された柱につかえた。

そして前へ突き出る形になった右腕は、間一髪、上条の前で止まった。


尺骨の位置から折れていた為だ。本来の長さだったならば、間違いなく上条達に届いていた。

上条「……ははは……笑えよ赤髪、おい。俺は地獄に居るはずなのに、こうしてピンピンしてるぜ」

ステイル「……何者なんだね、君は」

上条「地獄兄弟さ……」

ステイル「……灰は灰に……」

上条「……あばよ」

ステイル「塵は塵にッ……!」

上条は駆け出す。ステイルは逃がすまいと追うが、単純な身体能力ならば上条の方が圧倒的に上だった。


ステイル「……吸血殺しの、紅十字……!」


せめて届けと、炎剣が投擲される。

しかし、掠りもしなかった。







ステイル「…………クソッ!!」





後半へ続く

http://www.youtube.com/watch?v=mJoTlSfo2kM

もうしわけありませんが今夜の更新は無理そうです

ごめんなさい

また来ます

一方さんはエターナルとかいいんじゃないかな。白いし、「ヒーロー」になり損ねたようなものだし。


あれ、劇中でカブトがクロックアップしながら一般人抱えて移動していたような・・・?

遊園地の時のは無傷だったからじゃね?

体内を駆け巡るタキオン粒子によって超高速での移動を可能にする とあるので、出血している人物を運ぶ場合は体外にタキオン粒子が漏れ出るため危険……という脳内解釈をしてます

他にも学園都市であるので、メカニックの一部設定には独自解釈が含まれていますが、極力読むのに影響がないようにするつもりです

紛らわしくてすみません



後半の投下を開始します。今夜中に二話最後までいけるかは心配ですが……

Rider Jamp !

上条「……はっ……まぁ、ここならすぐには見つかんねぇだろう」

インデックス「」

上条「……どうするつもりなんだろうなぁ、俺はよ……」

上条「一応どっかのスキルアウトからかっぱらったキットで、止血して傷も閉じたが……」

上条「……大量出血で血圧は下がったままだ」

上条「生理食塩水、だったか……濃度は覚えてねぇな」

上条「住人IDがねえんだから病院にも行けねぇし、闇病院なんて俺は知らん」

上条「……どうやらここまでらしいな?ガキ……」



インデックス「……肉体の深刻な損傷を確認。生命保全の為緊急起動します」


上条「……あ?」

上条「……誰だ、いや、何だお前は」

インデックス「私はイギリス清教内、第零聖堂区『必要悪の教会』所属の魔道図書館です。正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumですが、呼び名は略称の禁書目録で結構です」

上条「……その人格は……いや、違う。お前が『肉体の深刻な損傷』とやらを負う前の人格とは、別物か」

インデックス「その質問に回答する権限は私にはありません」

上条「……お前が魔道図書館になったのは何時だ?」

インデックス「その質問に回答する権限は私にはありません」

上条「普段表に出している人格と、今俺が話している人格は同じか?記憶を共有しているか?」

インデックス「前者についてですが、否定します。現在の私は、魔道図書館の保全の為にこの人間の肉体を魔術によって覚醒させています。貴方の知る文化においては、イタコ等の降霊術が近いでしょう。」

インデックス「後者についてですが、回答する権限は私にはありません」



上条「……何のために覚醒した?」

インデックス「この肉体の保全の為です。現在この肉体は、大量の生命力(マナ)を流出、喪失しています。このままでは生命の危険があります」


インデックス「魔術を使用し、早急にこの肉体の補修を行う必要があります」


上条「……その魔術を俺に使えってのか?」

インデックス「いいえ、それは不可能です。貴方は能力者である為、魔術を使用する事は出来ません」

上条「……無能力者……レベルゼロでもか?」


インデックス「開発を受けた者は例外なく、魔術を使用した場合即座に肉体が大きく自壊します。実例では全員が死亡しています」


上条「そうかよ……残念だったな、この街は能力者ばかりだ……」

上条「……クソみてぇな終わり方のようだな、お前の人生は」

インデックス「いいえ。能力を持たない人間であれば誰にでも魔術は使用できます」

上条「あぁ?…………だから何だ?」

インデックス「この学園内に、超能力開発を受けていない人物はいらっしゃいませんか?」

上条「そんな奴……」



上条「……居たなぁ。ピンク髪の魔法少女になんのかね、あのちっこい先生様は」

ピンポーン

小萌「はーい」

……ドン、ドンドン

――ッッドン!!

小萌「そのドアはアクティブな勧誘の方対策に丈夫になってるんですよー」

ガチャ

仮面ライダーパンチホッパー「……」

小萌「な……」



小萌「か、上条ちゃん?そんな恰好でどうしたんですか!?」



上条「……ちょっと上がるぞ」

小萌「ちょっ!?ま、まってくださいちょっといまいろいろと忙しいというかお酒の空き缶やらタバコの吸い殻やら散らかってるというか」

上条「…………」

小萌「無言ですか!?」

上条「勝手にどかすぞ……」

小萌「足で……ってぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?上条ちゃん何を背負ってるんですか!?」

上条「うるせぇ、でかい声出すんじゃねぇ」


小萌「どういう事なんですか上条ちゃん、私は――」

上条「見ての通りコイツは重傷だ。傷は塞いだが」

小萌「……ふう……ちゃんと、絶対に事情を説明してもらうのですよ?」

上条「んなあこたぁ分かってる……インデックス、起きてるか」

インデックス「……休眠より回復。再起動します」

上条「……先生」

小萌「はい?」

上条「コイツはちょっとアレな宗教でな。俺が救急車呼んでくる間、相手を頼む」

小萌「え?あの、電話ならここに……」


小萌「……あの恰好で行っちゃいました……」

インデックス「……あの」

小萌「は、はい!?なんですか!?」

インデックス「協力してくださるのであれば、私の指示通りにしていただきたいのですが」

小萌「ええと、私に出来る事はあんまりないというか、上条ちゃん何処でこんな重症の処置の仕方知ったんだというか……」

インデックス「傷口はほぼ塞がれましたが、喪失された生命力(マナ)はそのままです。補填を待つ余裕はありません」

小萌「???ま、マナ……ですか?」

インデックス「生命力。あるいは、活力とも言い換えられるでしょうか」

小萌「疲れてるのならなおさら、休んだ方がいいのでは……」

インデックス「通常であればそれで済みます」

インデックス「しかし現在、特殊な粒子……その影響で、体内の魔術的な機能に異常が発生しています」

インデックス「……儀式を始めたいのですが、よろしいですか?」

小萌「は、はいなのです……」

小萌(よくわかりませんが……なにかトランス状態にでも入ってるんでしょうか)

小萌(余計な刺激は禁物なのです……)


何処か、ビルの屋上



上条「……変身、解除」

バシュン……

上条「……あのロリ教師。何で俺だって分かったんだ?」

ホッパーゼクター「」ジジジジ

上条「……あんだよ」

ホッパーゼクター「」キュイイイイイイイイ!

上条「……テメェ、今俺を笑っただろう」

ホッパーゼクター「」ぴょん

上条「……逃げやがったか……んん?」



上条「……おう、兄弟」



一方「……兄貴」

一方「聞いたぜェ、大体のことは」

上条「……そうか」

一方「……らしくないんじゃねェか?」

上条「何がだ?」

一方「助けたじゃねェかよ、あの……禁書目録?とかいうガキをよ」

上条「助けたんじゃねぇよ……」

一方「言ッてたじゃねェか。俺たちは人助けなんかしない、自分の為だけに動くって」

上条「ああ、そうさ……これは俺の為だ」

一方「あァン……?どういう意味だよ」

上条「兄弟……禁書目録の話を誰に聞いたよ?」

一方「……アレイスターからの伝言とか名乗りやがッてたな。嘘だろォが」



上条「俺もだよ」

上条「奴らとしちゃあ気に食わなかったんだろう……折角俺に与えたゼクターが二人の人間に渡ったうえ、これまで俺たちはどうでもいい所でしか使わねェんだからな」

一方「……俺は、必要ねェから使わねェだけだ」

上条「……そうだろうな……奴らは元々、俺と、俺に敵対する『誰か』に渡したつもりだったんだろうが」

一方「タキオン粒子の能力増強効果検証……だッたか?」

上条「無能力者の俺と学園一の能力者のお前……まぁそんな所だろうよ」

一方「嘘くせェよな」

上条「奴らのいう事なんざ全部嘘だ。レベル6だのとかいう勝負だって、俺が乱入するところまで織り込み済みだろう」

一方「……負けたのもかねェ」

上条「知るかよ……結局ゼクター無しで勝っちまったな」



上条「だから、使わせようってんだろうよ」

上条「どうせ今回のは全部、どっかの誰かが仕組んだことだ。俺がどうしても首を突っ込みたがるようにな」

一方「……俺も混ぜてくれよ」

上条「あぁん?」

一方「ぶッ壊すんだろォが。その企みをよォ」

一方「俺も入れてくれよ。ぶっ壊すのに」

上条「構わねぇが……直接魔術師とか言う連中とやりあうのは駄目だ」

一方「……何でだ」

上条「方式が違う。奴らの攻撃は、お前の能力じゃ多分、完全には跳ね返せねぇ」

一方「ゼクターで加速すりゃァいいだろォが」

上条「向こうも恐らくそれに反応できる」

一方「それでも負けねェだろォが!兄貴の右手ならその魔術でも消せるんだろ!?」


一方「……見損なッたぜ、兄貴」

上条「あぁ?」

一方「こそこそしやがって。助けるつもりなんだろォが。あのガキをよ」

上条「ちげぇな、俺は」

一方「何が違うってんだよォ!?言ってみろよオイ!!」

上条「……」


一方「……俺たちは、誰にも強要されねェし誰にも手を差し伸べねェし、誰も救わねェ」

一方「何故なら、俺たちこそが救われるべきで……だが救いなんざもう無ェから」

一方「最高に最低な所まで来た俺達は、もう期待なんざしねぇ」

一方「何も為さねェし為そうとも思わねェ」

一方「そうじゃ無かッたのかよォ……」



上条「……一方通行(アクセラレーター)」


一方「……すまねェ、熱くなッた」

一方「……なァ、兄貴」

上条「何だ」

一方「ぶッ壊すんだろ?俺たちを使おうとするクソ共の予定表(スケジュール)をよォ」

一方「……そのつもりで乗ったんだろ?」

上条「……あぁ」

一方「本当だよなァ?」

上条「当たり前だ」

一方「……へッ。それでこそ兄貴だぜ」

一方「本の読みすぎで脳ミソがパンクするなんざ笑っちまうよォな話だが、それでも人間の記憶を移すならそんくれェの容量は要るだろォよ」

一方「禁書目録の記憶を、非装着者随伴クロックアップ時のタキオン粒子同調を応用してコピー」

一方「そのままゼクター内の、予備のタキオン循環貯蔵領域に再現して……」

一方「元の禁書目録は、原典とやらの記憶ごと消去して、一年おきの苦痛の原因も取り除く……それでただのガキに戻る」

上条「成程……ゼクターは奴らにくれてやるつもりだったんだろうな……ひょっとしたら最初からそのつもりだったのかもな」


ホッパーゼクター「」ギュイイイイ!!

ホッパーゼクター2「」キュイイイイイ!!


上条「あんなペットロボみてぇな形だし」

一方「あァ」


上条「つまり……あのガキが原典の知識を保持し、禁書目録としての役割を失なわないままに」

一方「一年おきの頸木を取り除く」



上条「……最初は俺がやる。顔は見知ってるし……魔術とかいうモンをぶっ壊すならこの右手が使える」

一方「頼むぜ、兄貴」

上条「……なぁ、兄弟」

一方「あン?」


上条「……いや、何でもねぇ」

上条「……俺達をいいように使おうなんて、使えるなんて思ってんなら」


上条「その幻想を……ぶっ殺してやるさ」







――――パキィン……

次回予告
タキオン。それは超光速で移動する粒子。特殊相対性理論では測れないその粒子は、単体では時間を超越するという性質上、魔術や超能力に影響を及ぼす場合がある。
クロックアップはこのタキオン粒子を、血管を通して全身の細胞、それを構成する原子に浸透させ、「時が止まったかのような高速」で挙動させる技術だ。
血管を通るという性質上、体内の器官の機能を間接的にモニターすることも可能である。
無論、脳も。

……魔術と科学が交差する時、新たな物語が始まる。

第三話『救済と絶望と』


弟は一方さんかwww
面白くなってきたな、乙

弟はまた光(ロリ)を求めようとするのか

原作(カブト)の感じだと兄弟逆の気がするんだが
光(の中にいる人間)を拒絶して闇の中にいる人間としか触れ合わない兄と
自分の居場所を失うが光(力や、人を救う事をモットーとするヒーロー)に未練が無いわけでは無く光の中に居場所を見つけたら兄とは別の道を行きそうな弟っていうイメージ

前回までのあらすじ

辛くも魔術師ステイシスから逃走した上条。

ミニマム教師小萌の手を借りてインデックスを治療する一方、妹の鈴科百合k……一方通行と接触し、改めて自分のスタンスを確認する。

誰にも従わない。誰も救わない。ただ、闇の底へ。その先にだけある、光を求めて。




キミノトーナリー タタカウータビー ウマレカーワールー
メーニーミーエルー スーピーイードー コエテクー モーショーン

イッタイジブンイーガイー ダレノツーヨサー シンジラーレールー
コーウーソークノー ビージョーン ミーノガスナー ツイテコレルーナラー



ドゥンドゥクドゥクドゥクドゥクォツッドゥン)三話 救済と絶望と(ドゥンドゥクドゥクドゥクドゥクォツッドゥン




仮面ライダーカブ㌧は、ご覧のスポンスワァの提供でお送りします……




        ___|二ニー-、、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l

        /rヽ三三三三三─‐-- 、;:;:;:;:;:;:;:|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
        ',i ,-三三三三三、   _,.ニ、ー-、!;: -‐二 ̄彡′
        ',、、ヾ三三'" ̄ ̄   `ー‐"    ヾ-'"  .〉′
        ヽ ヽヾ三,'    :::..,. -‐- 、     _,,..-‐、、,'
         `ー',ミミ     ::.弋ラ''ー、   i'"ィ'之フ l
         /:l lミミ     ::::.. 二フ´   l ヽ、.ノ ,'     
      ,.-‐フ:::::| |,ミ             l      /       
     /r‐'":::::::::| |ヾ        /__.   l    /      
 _,. -‐"i .|::::::::::::::::::',.',. \        ⌒ヽ、,ノ   /ヽ,_             
"    l ヽ:::::::::::::::::ヽヽ. \   _,_,.、〃  /l |    ___,. -、

     ',\\:::::::::::::::ヽ\  \  、. ̄⌒" ̄/:::::| |    ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
     \\\;::::::::::::\\  `、.__  ̄´ ̄/::::::::::l |    `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
       ヽ \`ー-、::::::ヽ ヽ    ̄フフ::::::::::::::ノ ./   ,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
          `ー-二'‐┴┴、__/‐'‐´二ー'".ノ   / _,. く  / ゝ_/ ̄|
               ̄`ー─--─‐''" ̄      / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
                              /  /  .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_

                              /  /  /   ̄   )  ノ__'-ノ
                             /      /    ゝニ--‐、‐   |
                            /           /‐<_   ヽ  |ヽ


第三話 救済と絶望と


上条(……どうにかこうにかロリ教師は誤魔化した……ガキも熱は出たがそれも引いた)

上条(後はどうにかして、一年おきに頭痛を起こしてるっつー魔術の……核?だったかをぶっ壊す……)

上条(そして魔術師共に全てを説明して、帰らせる)

上条(それで「上」の奴らの企みはぶっ壊れる……)

上条(……本当に?)

上条(クソ……駄目だ、奴らが何を狙ってるのかも分かんねぇのに)

上条(あんときゃ上手くいくと思ったが……)

上条(……俺は、何を迷っているんだ……)


インデックス「おっふろーおっふろー」

上条「…………つーか何をしてんだ俺は」


インデックス「ねぇとうま」

上条「あん?」

インデックス「ふふふ、なんでもない」

上条「……話が無いなら呼ぶんじゃねぇ」

インデックス「そ、そんなに怒らないでほしいかも……」

上条(……もうこいつ、魔術師共に渡しちまったほうがいいんじゃねぇのか)

上条(目の前で誰かが困ってるからって、それを助ける必要はねぇ)

上条(弟にはああいったが、そもそも「上」の奴らの仕組んだことに「関わらない」って選択肢もあるんだしな)

上条「……いやそれじゃ俺の気が済まねぇ」

インデックス「ご、ごめんなさいなんだよ……」

上条「テメェに言ったんじゃねぇよ」

上条(……俺はこんな平穏とは無縁の人間の筈だ……調子狂うぜ、クソ)

インデックス「ねぇ、とうま」

上条「同じ事言ったらぶん殴る」

インデックス「違うよ!!ジャパニーズセント―にはコーヒー牛乳があるって、小萌が言ってたよね?」

上条「……だから何だ」

インデックス「コーヒーとミルクってことは、カプチーノみたいなものなの?」

上条「……」

上条「テメェの国みてぇに洒落たもん期待してんなら、残念だったな」

インデックス「んー?えーと、それはどうなんだろう……」

上条「……お前、イギリス人じゃなかったのか」

インデックス「生まれはそうらしいんだけど……よくわかんないんだ。気づいたらこの国に居たから」

上条(……ん?)


上条(確か……記憶消去のサイクルは一年)

上条(此処に居る理由が分からないってことは……このガキ、一年以上前から日本に居たのか?)

上条(誰がここに連れてきたんだ……)

上条(……ああ、そうか)

上条(コイツには……)



上条「――あん?」

視界の端にひらひらする白い布が、いつの間にかなくなっていた。

周囲を見回すが、インデックスの小柄な体は何処にも見当たらない。

というより。

そもそも誰も居ない。上条の視界から、人間という存在だけを強制的に消し去ったかのようだ。まるでゴーストタウン、或いは辺り一帯神隠しか。

家屋の中にすら、人の気配は微塵もしなかった。

状況を察するには、十分だった。



上条「……ハッ。好都合だ、魔術師。そっちから出向いてくれるとはなぁ」


神裂「……」

女が一人。シャツの余った裾は腹で縛り、ジーンズは左足だけをバッサリと切ってある。

上条「ひでぇファッションセンスだな?おい」

神裂「単刀直入に言いましょう。大人しくあの子を保護させてもらいたい」

上条「……嫌だと言ったら?」

神裂「……ステイルから聞いているでしょう。私たちがどのような存在であるか」

上条「喫煙神父の話は煙たくて聞いてらんなかったぜ……」

神裂「……出来れば、魔法名を名乗らせないでいただきたいのですが」

上条「あん?なんだそりゃ」

神裂「本当に聴いていないのですね……」

神裂「魔法名と言うのは、魔術を行使する際に魔術師が名乗る第二の名前です。殺し名、と言った方が伝わりやすいですか?」

上条「なるほどねぇ……」

神裂「あの名を、私はもう使いたくない。ですから言っているのです」

上条「断る」

そういった直後。神裂の手元が一瞬ぶれたように、上条には見えた。

そして、上条の周囲が『ズレた』。

それは、斬撃だった。景色がおかしくなったように見えたのは、今の一瞬で同時に複数の物が斬られたからだ、と上条は今更理解した。

斬れているモノは、一つではない。

計、七つ。さっきの一瞬で、七回の斬撃を繰り出したというのか。それも、普通の刀の射程を無視している。

上条のすぐ横に、切断された風力発電の羽が落ちてきた。


神裂「名乗らせないでくださいと言ったはずです」

神裂「先に言っておきますが、私はステイルから既にあなたの力の事を聞いています。強力なパワードスーツを使う上、魔術を打ち消す能力者だと」

神裂「勝ち目がある、などと思わないでください」

上条「……羨ましいねぇ……好きに振り回せる力があって」


神裂「これは警告ではありません、命令です」

上条「俺は誰にも従わない」

また、斬撃。編集下手な奴の作ったアニメーションのように、風景が常識外の速度で変化する。

上条「また魔術か。羨ましいねぇ……そんだけの力があってよ」

神裂「ふざける余裕があると錯覚しているのですか?それとも命を捨てるつもりだとでも?」

上条「いいや……」


上条「勝ち目があるからな」


三度、神裂は刀を抜いた。

今度の斬撃は、脅しなどではなかった。性格に上条を狙い放たれる、必殺の七連撃。

それが放たれる、『筈だった』。

ホッパーゼクター「」ギュイイイイ!!

神裂「なッ……!?」

バッタ型のゼクターが、中空より現れて神裂の腕を打った。ゼクターは所有者の保護の為に、こうして敵を攻撃する場合もある。

元々人外に対して作られたゼクターの一撃は、『聖人』を怯ませるのには十分だった。

ホッパーゼクターは、一回着地すると次の跳躍で上条の手に収まる。

上条「変身……!」

神裂「ッやらせません!」


――――Henshin Change Kick Hopper!

上条「……はっ。何だ……その変な斬撃、ただのワイヤーか」

上条の頭に、胴に、足に、細い鋼糸が絡みついていた。ソレは装甲を削り、食い込んではいたが、それだけ。

刀を抜くような動作はブラフ。高速で叩きつけられる極細のワイヤーが、一瞬で七度の斬撃を繰り出す絶技の正体だった。

神裂「……言っておきますが、この刀は飾りではありませんよ。『七閃』を潜り抜けた先には、真説の『唯閃』があります」

上条「へぇ、そりゃぁすげぇな……」

上条「……その割には、ちっとも嬉しそうじゃねぇな」

神裂「……はい?」


上条「力がある癖にテメェは……俺たちと似た匂いがする」

上条「絶望に身を染めて闇に浸かろうとする者の匂いだ」

上条「……あのガキの持ってる魔道書が救済か?だが救われやしねぇよ……」

上条「そんなふうに何もかも諦めた目で……それなのにまだ、何かを求めているうちはな」

上条「もっと絶望しろよ。半端に期待を持ってる間は、お前は何にも出来ねぇ」

上条「光のない本当の地獄に来い。そうすればお前にも見えるはずだ……」

上条「闇の底にしか差さない光が……な」

上条(そうだった筈だ、なぁ、兄弟?)

上条(最近ちっとばかし迷ったが……こいつらと居れば、俺も思い出せそうだ……本当の地獄って奴を)



神裂「……ッざけんなよ……」

上条「あん?」

神裂「知ったクチ聞いてんじゃねえぞ素人風情が!!」

その時、上条は辛うじて接近する神裂を捉えられた。ただ、対処は殆ど出来なかった。

神裂の速度は音速に迫っていた。クロックアップを視認可能なスーツの眼が無ければ、消えたように見えていただろう。

上条の腹部を、強烈な衝撃が襲った。

上条「ッがぁ!?」

総合的な強度では学園の他のどの駆動鎧にも勝るであろう、ライダースーツ。その理由は特殊な合金、ヒヒイロカネの装甲によるところが大きい。

関節の可動範囲を最大限確保するため、装甲は主要な部位しか覆っていないのだ。

神裂の攻撃は、正確にその間隙を突いていた。

上条は数メートルも吹き飛ばされた。攻撃が鞘で行われたのは、奇跡とも言えそうな偶然でしかなかったかもしれない。

上条「ックソ……何なんだ、急に」

神裂「私は……私は好きでこんな事やってるんじゃありませんよッ!!」

上条「……どういう事だ。お前は魔道書を狙っているんじゃ……」

神裂「私は!友人だったんですよ!彼女と……インデックスと!!」

上条「……はぁ?」

インデックスが完治した後、上条は彼女から聞いたのだ。自分達を追っているのは、魔道書を狙う魔術師だと。

だが今、神裂は『友人』だと言った。

上条「……友人なら何で襲うんだ」

神裂「……友人で居る事に、耐えられなくなったんですよ」

上条「……」

神裂「あの子の脳は、十万三千冊の魔道書を記憶したことによって85%を既に使ってしまっている」

神裂「残りの15%では、一年分の記憶しか保持出来な――」

上条「そいつはデマだ」

神裂「……はい?」

上条「脳味噌はそんなに柔じゃねぇよ……」

神裂「そんな……」

上条「……」

神裂「では、私たちは今まで……今まで何をしてきたというのですか?」

上条「俺が訊きたいね……何なんだ、お前らは」

神裂「……私たちは、彼女を保護し……しかるべき時、一年おきに記憶を消去する役割を持っています」

神裂「……最初は、友人として接していたんです。でも……」

上条「はっ……そうかい……ならよぉ」


上条「なおさら、あのガキは渡せねぇな」


神裂「なっ……何故ですか!!」

上条「気に食わねぇ」


上条(やっぱりそうだ。あのガキは不幸なんかじゃねぇ)

上条(本人が知らないだけで……こんだけ真剣になってくれる仲間が居んじゃねぇか)

上条「はぁ……」

上条「羨ましいねぇ……」

神裂「……どういう、意味ですか」

神裂「貴方たちの科学なら、彼女を救えるとでも?」

上条「あのガキは救わねぇし……」

上条「お前らに渡しもしねぇ」

神裂「ッ何を言っているんだ貴様は!!」

神裂「いったい……いったい何がしたいんですか!!」

上条「壊したいんだよ」


神裂「ッ……貴様ぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


上条(誰の思惑も……何もかも、な)

――Clock Up!

Rider Jamp !

――Rider Kick!

――Clock Over!

神裂「ぐァッ……!?」

神裂火織は、聖人だ。その身に流れ込む莫大なテレズマを用いて、音速での挙動をも可能とする。その戦闘能力はイギリスでも十の指に入ると言われ……

それでも、クロックアップへの追従は出来なかった。

タキオンの奔流が乗った蹴りは、彼女の右肩を砕いた。もう刀は振るえまい。魔術で治癒させればいいが、すぐに再攻撃を受けるだろう。

異常だった。異常で異様で、救いようがなかった。悲壮でも強固な決意をした人間が、理不尽に蹂躙されていた。

上条「俺が『上』から聞いてねぇ話も色々とあるみたいだしな……」

上条「洗いざらい話してもらおうか……?」

神裂「ぐ……お、お前なんかに……」

神裂「お前なんかに、あの子は……!!」


――Clock Up!

Rider Jamp !

――Rider Kick!

――Rider Kick!

――Rider Kick!

上条「四肢全部ぶっこわしゃぁ、流石に止まるだろ」

――Clock Over!



絶叫は、誰にも聞こえなかった。








後半へ続く





バイオレンス条さんやな

エ口画像漁ってたらこんな時間だよ!!(逆ギレ)


書きながら思ったのは、矢車さんってこんなキチ○イじみた人だっけ・・・・・・?ってことを思いましたまる

この話は三話後半、四話前半後半で終わりの予定。
好評だったら続けるかもしんない。


本家並の話数でもええんやで(ゲス顔)

乙乙

jum....げふんげふん

追いついた

コートの片側だけ袖が無い地獄ファッションの癖に神裂さんのファッションセンスに触れるのか

参ったな、新学期が……始まってしまう

時間がなかなか取れませんが、一応続きは考えてあります

済みませんが、もうしばらくお待ちください

jampクソワロタ

ジャンプ

待とう

保守

10巻表紙のKJさんかっこよすぎるやろ……

どうも、>>1です
GW辺りに続き投下できればいいなぁと思ってます

10巻と9巻で対比になってるな

後半投下、開始します

小萌宅


上条「……ああ、逃げ切ったのか」

インデックス「あ……とうま、大丈夫だった!?」

上条「何がだ」

インデックス「私を追っかけてきたルーンの魔術師が、『あの男の方に行った彼女は、僕の何百倍も強いからね、諦める事だ』」

インデックス「って言ってたから……」

上条「……弱かったぜ」

上条(色々な)

上条「で、一つ聞きたいんだが」

インデックス「何?」

上条「お前、トランス状態の時の事何処まで覚えてるんだ?」

インデックス「えーと……とらんす?状態ってなに?」

上条「お前が俺の部屋の前まで来てから、この部屋で先生に魔術使わせるまでの事だ」

上条「何処まで覚えてる?」

インデックス「あ……やっぱり私、また『覚醒(めざ)』めてたんだね」

上条「どうなんだ」

インデックス「ぼんやり……覚えてはいるんだけどね」

インデックス「覚醒めてる間は、なんだか眠っているような状態なの」

インデックス「憑霊師(シャーマン)も、目覚めた状態から体内に霊を呼び込むよね」

インデックス「それと同じなの」

上条「シャーマンが分からねぇが……まぁ、だいたい分かった」

上条「……んでよぉ」

インデックス「……?」

上条はポケットから何かを取り出した。左手に吊られたそれは、インデックスにはなじみ深いモノだった。

ロザリオ。黄金色の十字架だ。

インデックス「と……とうま!!何で霊装なんて持って……」

上条「『Agito(起きろ)』」

インデックス「ッ……」

何故。インデックスの眼を、それだけが染めていた。

彼女の頸が一瞬、人形(マリオネット)の糸が切れたように落ちる。

そして、覚醒(めざ)める。

上条「……おい」

インデックス「はい、なんでしょうか」

上条「お前、記憶は何処まで共有してるんだ」

インデックス「……質問の意味が不明です」

上条「お前に、一年以上前の記憶はあるか?」

インデックス「その質問に回答する権限は私にはありません」

上条「その権限は誰にならあるんだ」

インデックス「イギリス清教所属、枢機卿(カーディナル)以上の階級保有者です」

上条「……」

上条「お前を追っていた二人の魔術師が誰か、知ってるか」

インデックス「いいえ。ですが使用する魔術体系、宗教特性から、大まかな所属を推察する事は可能です」

上条「どこだ」

インデックス「――」

インデックス「イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』だと思われます」

上条「お前の所属は」

インデックス「イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』です」

上条「おかしいとは思わねぇか」

インデックス「……質問の意味が不明です」

上条「何で仲間から追われてるのか、知りたいと思わないのか?」


インデックス「……私の存在意義(レーゾンデートル)は、私の記憶に格納された魔道書十万三千冊が敵対勢力の手に渡らないようにすることです」

インデックス「彼らが正式に魔道図書館の開示要求を、しかるべき手段を用いて為したならば」

インデックス「私は彼らに協力しましょう」

上条「……今奴らは、お前を追ってるだろう」

上条「だけど今のお前には、歩く教会は無い」

上条「その脆い体よりも丈夫で、俊敏で、かつ発見されにくい体があるとしたら?」

インデックス「質問の意味が不明です」

上条「その体から魔道図書館を引っこ抜いて、別の記録媒体に移る気はないかと言ってるんだ」

インデックス「……その記録媒体、とは……」

インデックス「今貴方が持っているその機械ですか?」


ホッパーゼクター「」ジジジジジ


上条「あぁ」

インデックス「不可能です」

上条「……何故だ?」

インデックス「第一に、その新たな記録媒体の安全性が正常に評価できません。現状その媒体については、貴方からのものしか情報が無いので、貴方が虚偽の情報提供をしている可能性が十分に考えられます」

インデックス「第二に、魔道書の原典は通常の記録媒体では保存できません。例えば写真に映したとしてもそれは単なる『写本』にしかなりません。またこの肉体の中にある原典を削除する事も出来ないので、結果『魔道図書館の写本』を作る事にしかならないでしょう」

インデックス「第三に、その必要性がありません。私は自衛用の魔力を保持している為、歩く教会の保護なしでも十分に自衛は可能です――そして、必要性が無い場合、防衛力の過剰強化は認められていません」



上条「……つまり、だ」

上条「媒体の安全性が確実で、媒体の『移動』が出来て、その必要性があればいいんだな」

インデックス「その可能性も十分に考えられます」

上条「…………そうか」

上条「ひょっとすると、その必要、あるかもな」

――――Henshin Change Kick Hopper!

インデックス「……はい?」

――爆発。

部屋の外で、深紅と橙のカタマリが膨れ上がった。まぶしい光が一瞬部屋を照らし……そして、押し潰す



家、というモノに含まれるありとあらゆる物品が、竜巻に巻かれるように宙を飛ぶ。だが部屋はそれほど

広くはない。

必然、ソレらは殺到する。爆炎と衝撃波に乗って、上条達へと。

――Clock Up!

上条「……土下座じゃ済まねぇな。はははは」

インデックスを担ぎ、衝撃波で割れた窓ガラスを通って屋外へと出る。前回は彼女が出血していたために

出来なかったが、ライダースーツは一時的になら他者をクロックアップさせることも可能なのである。

インデックスは生身だ。全力で離れる。



ステイル「……」

ステイル「逃げたか」

ステイルが従えるのは、炎の巨人。


『五体』もの、魔女狩りの王。


ステイル「……殺す。絶対に、お前だけは……!!」

――Clock Over!

上条「はっはは……ああ、やりすぎたかねぇ……」

上条「流石の俺でも、ちょっとばかし申し訳なくなるな……」

インデックス「……何をしたのですか?」

上条「あん?ちょっと身動き取れない間に悪戯しただけ……」

インデックス「そうではありません」

インデックス「今、貴方はどうやってあの場から、私を連れて逃げたのですか?」

インデックス「それに以前にも見ましたが、その恰好は……」

上条「……マスクドライダーシステム。さっきのちっこい機械を核にして、この特殊な駆動鎧を作るんだ

よ」

インデックス「貴方が先ほど言ったようにその核の内部へ機能を移した場合……」

インデックス「貴方の制御化に置かれることになるのでは?」

上条「それは無いな」

インデックス「……信用できません」

上条「なら聞くんじゃねぇよ……」

火柱が、小萌の住居を中心に上がっていた。だというのにやはり、気味が悪いほどに騒ぎは起きない。
また人払いか、と上条は適当に当たりを付けた。

上条「さて……どうしたもんかね」

上条「まあ取りあえずは……」

右手をかざす。まるでその手に吸い込まれるかのように火球が飛来し、消滅した。

上条「コイツをどうにかするか……ああ、面倒くせぇなぁ……」


ステイル「上条……上条当麻ぁぁぁァァァァァァァぁ!!」


火柱の中から、人間の形をした焔が現れる。それも五体。各々が独自の軌道で上条に襲い掛かるが、クロ

ックアップの敵ではない。

――Clock Up!

加速。右手の掌打で炎の巨人を、左の掌打で足場の屋根を破壊し、瞬く間に巨人の全てを行動不能にする



だが、その余波でインデックスの足場も崩れてしまう。

上条(計算通りだ……!!)

――Clock Over!

上条「ちっ……おい、禁書目録!!『さっさと逃げろ!!お前も死ぬぞ!!』」

インデックス「……」

服の空気抵抗と自動書記としての高速思考をフルに活用して、インデックスはどうにか床に降り立った。
上では戦闘が続いている。家は奇跡的に崩れないでいるが、それもいつまで持つか。

故に禁書目録は、思考する。どうするべきかを。

このまま自分がこの場に留まれば、間違いなく死ぬ。十万三千冊の名は伊達ではないが、それを持ってしてもあの炎の巨人を簡単に抑え切るのは難しい。一度撤退して術式の準備をするか、あるいはこの場で時間稼ぎをする必要がある。
あの少年……上条当麻に協力を仰ぐことも出来るかもしれない。だが、どの程度信用できるか。

仮に彼が協力してくれたとしても、『あのように無差別的な範囲攻撃ではこちらまで危うい』。
この場に留まれば巻き込まれかねないのだから、撤退しかない。

……一瞬だけ、緊急退避、という言葉がちらついた。最後の手段として自動書記に与えられた、唯一の選択権。他の媒体に原典を移動し、その後元の肉体を破壊する、という選択肢。
だが、それは即座に否定された。やはり、この場から逃げ出す方が成功する可能性が高い。



……彼女は知らなかった。上条が『クロックアップ中に、不要な攻撃をしている』事を。

わざわざ加速して攻撃した後に『元の位置に戻り、不可視の範囲攻撃に見せかけている』事を。

上条の最終目的は、『現状維持』。

誰も救わない。誰にも変えさせない。

何処の誰とも知れない人間が、しかし確かに進めているであろう『計画』を破壊する為の、上条の解答だった。

ステイル「貴様は……殺す……!!」

上条「そうかよ」

例えライダースーツと言えども、4000度の高熱にどこまで耐えられるかは怪しい。だから上条は、クロックアップを頻繁に使っての攪乱を主として戦闘している。

だが一方のステイルは、何も考えずにただ巨人を上条へ突っ込ませているようだった。

一撃で行動不能に出来るとはいえ、それが五体。

足場は不安定で、多勢に無勢で、一歩でも引けば負け。楽な戦いではなかった。


それでも、上条は笑っていた。


上条「っは……ッハハハハハハハハハハ!!」

ステイル「ッ貴様……!!」

上条「どうしたよ魔術師!?なんか変なモンでも見たか!?」

上条「『引ん剥かれて動かない同僚の女』とかよォ!!」

ステイル「黙れェェェェェェェ!!」


笑えよ、と、呟いた。

最低なやり方しか知らない自分を笑え、と。

焔塊の乱打を掻い潜り、足や腰などを攻撃してバランスを崩す。クロックアップの再使用制限が切れたらすぐに発動して、吹き飛ばす。

何度も家屋が倒壊し、その度に場所を変えた。もう最初の場所から一キロは離れただろう。

それだけの範囲の人払いがある、という事は、その領域内に居る限り焔の巨人からは逃れられないという事だ。頭部のセンサーで近くに人影がない事を確認すると、上条は撤退の為の戦闘に切り替えた。


――Clock Up!


走る。出来るだけ遠くへと。ライダースーツによって走力は大きく強化され、上条はバイク並の速度を出せるようになっていた。

――Clock Over!

別学区に入ったようで景色は変わり、実験施設が多く目につくようになっていた。

その中に、『火の粉が見えた』。

上条「ッ……!?」

ちと中断します

乙。神裂さんのひん剥かれ描写かもん

間に合わない。巨大な衝撃が、全身を叩く。ボールのように吹き飛ばされ、上条はろくに受け身も取れず転がった。

だが、熱は感じなかった。上条が顔を上げると、「六体の」炎の巨人が見えた。

いいや、その一体は。

上条「ッは……そんな隠し玉があったなんてなァ」

ステイル「たった一つ術式を破った程度で、僕に勝った気にならないで貰おうか」

ステイル「焔の巨人《スルト》と化した僕を……そう簡単に破れると思うなよ!!」

上条には言葉の意味が分からなかったが、どうやらステイルは自分自身を魔術で強化したらしい。なるほど、そう簡単には倒せないだろう。

だが、上条にはクロックアップがある。タキオンの力がある。右手のアドバンテージを失っても尚、逃げる程度の事は出来るはずだ。

はずだった。

――Clock Up!

Rider Jump !

――Rider Kick!

ステイル「――ッぁあああああああアアアア!!」

上条「なんッ……!?」

焔そのものとなったステイルが、上条の蹴りを「躱した」。

驚愕の隙へ捻じ込むように、裏拳での一撃が返される。

上条「ッ……!!クソォ!!」

右手で払う。また次の一撃が差し込まれるが、それは余裕を持って躱す。

――Clock Over!


上条「……どうなってやがる」

上条「クロックアップに追従だと?」

ステイル「……その力。尋常でない域の加速だろう」

ステイル「だけどね……世界の全てを睥睨する王の座からは、何もかも見えてるのさ」

ステイル「北欧玉座《フリズスキャールヴ》……逃れられると思うなよ!!」

フリズスキャールヴ。北欧神話に於いて、主神オーディンの座する玉座の名だ。
座った者はそこから世界の全てを見晴るかす事が出来るとされ、その視界からはトリックスターとして名高いロキでさえ逃れられない。

科学による単純な加速であれば、尚の事。

――Clock Up!

上条「ちィッ……」

あくまでも予測、認識ができる、というだけらしい。だがそれでも十分に厄介だった。
クロックアップしても、上条の初撃はぎりぎりで躱される。それだけならば二撃目を加えればいいだけだが、その隙を与えぬように他五体の焔人から拳が飛んでくる。

そして、クロックアップには時間制限がある。

――Clock Over!

そうなれば速度というアドバンテージは失われ、数の差という覆しようのない不利が襲い掛かる。

上条(……が、あっちに決め手があるわけじゃねぇ!!)

そう。一見優位な立場に居ながら、ステイルもまた攻めあぐねていたのだ。

本来クロックアップに追従するには、タキオン粒子の流れる目を持つほかに方法はない。だがステイルは、自身を極限まで強化する事によって無理矢理速度をクロックアップの域まで上げたのだ。
身体に負担が無い筈がない。勝負を決める切り札がこれ以上あるのならば、早々に使っているだろう。
焔の拳を当てられればダメージは与えられるだろうが、それが出来ない。

命中させても効かない上条。回避出来ても当てられない、ステイル。故に、互角。



――Clock Up!

――Clock Over!

――Clock Up!

――Clock Over!

加速と減速が繰り返され、蒼の蹴りと紅の拳が幾筋も交差する。掠って散る火花ですらも、時間の流れに置き去りにされる。

危険なシーソーゲーム。だがやがて、「その時」は来る。

上条(……見えた!)

――Clock Up!

無理があった強化の反動で集中力が切れたか、焔人の操作が甘くなった。燃え盛る腕の間を掻い潜って右腕を伸ばす。

異能の全てを消し去る幻想殺し《イマジンブレイカー》が、太陽のような衣を纏うステイルに触れる。

燃え盛る火炎が、消し飛ぶ。




パキリ、と。小さな音がした。

それはまるで、何かが砕けるような音だった。





そして、『ライダースーツの装甲が破断した』。

上条「な……ん……」

――Warning! Maskd Armour Released!

――Emergency Shutdown!

――Clock Over!

クロックアップの停止による急激な減速から使用者を保護するため、クロックアップ・システムが強制終了する。

時間流が本来の姿を取り戻す。

上条(んな馬鹿な!!まだ一撃も喰らってねぇ筈だぞ!?)

そう。まだ上条は一撃も受けていない。だが現に装甲は破壊された。そして粒子になって消えた。

ただ、一瞬だけ見えたその傷はどう見ても、炎で破壊されたようには見えなかった。どちらかと言うと、内部から破裂したような。

上条(まさか……まさか!!)

ステイル「はは……神に感謝するよ。まさかこんなラッキーがあるなんてね」

上条「ね、熱で……!?超高温と冷却を繰り返したせいで自壊したってのか!?」

マスクドライダーシステムの装甲は、ヒヒイロカネと呼ばれる特殊な合金で出来ている。その耐久力は凄まじく、伝説に謳われる金属の名がつけられた程だ。

だが、無敵ではない。絶対に砕けない金属など、正に想像の産物だ。


都合六つもの焔塊に晒されることで、装甲は加熱される。
クロックアップすると、装甲の主観時間は加速され、冷却される。

だが実際には、現実ではほんの一瞬しか時間は経っていない。カンマ一秒にも満たない一瞬の間に、数秒分冷却されるのだ。

一回だけならば耐えられただろう。あるいは二回でも三回でも、十回でも二十回でも。

だが上条とステイルは何回拳を交えたか?

いや、それだけでは壊れないのかもしれない。だが、上条は不幸だった。とてつもなく。


それこそ、『死んでしまうほどに』。

ステイル「楽に死ねると思うなよ……貴様は地獄にだって送ってやるものか」

ステイル「殺してくれと懇願しようが知った事か」

上条「ク、ソ……」

上条「ここまで、かよ……」

異教徒を断罪すら「しない」、破滅の焔が吹き荒れる。

紅蓮の津波が上条を飲み込み……そして、青緑色の焔を上げて弾けた。







上条当麻は、死んだ。






次回予告

これは喜劇か。悲劇か。
さあ、答え合わせだ。これを、ただの悲劇にしない為に。

天の道を歩けない者の、最後の願いを探そうじゃないか。

なぁ、昆虫野郎。

第四話『代償』

次話投稿は明後日か週末のつもりです……が、ひょっとしたらもっと先になります

そうなってもどうかお待ちください

待つ。

新約10巻。

どう見てもオティヌスがヒロインなんですけどォー……オティヌスをただのハーレム要員にしなかったのは評価する。というかそのままオティヌス√だったらいいのに。
まあサイトで立ち読みした部分だけですけど。

今夜か明日は続きを投下したいなぁって思います。

OK

面白いな
待機。

明日っていつの明日さ!

あしたっていまさッ!

ごめんほんとにごめん、今夜だからたぶん(おい)

もう後は大して書く事もない筈なので……

第四話『代償』




前回までのあらすじ

上条当麻は死んだ。

とうの昔に死んでいた。

だが、運命は彼の魂に安息を与えはしない。そうして彼は蘇る。


キミノトーナリー タタカウータビー ウマレカーワールー
メーニーミーエルー スーピーイードー コエテクー モーショーン

イッタイジブンイーガイー ダレノツーヨサー シンジラーレールー
コーウーソークノー ビージョーン ミーノガスナー ツイテコレルーナラー


恵まれたスレタイから糞みたいな>>1

学園都市内、某病院

医者「つまり、彼女は全身打ち身と打撲だらけで骨も数本逝ってる。相手は随分陰湿だね、致命傷は避けつつ、動けないよ

うにダメージを与えてる」

ステイル「……」

医者「私のような立場の人間が言うのは御法度だが、それでもあえて言わせてもらってる、よ」

医者「君たち、何?」

ステイル「……黙って治療をしてくれればいいんだよ、僕は」

医者「それは知ってる。上からもそういう話は来てるよ。でもまあ、治す立場の私としては、これを見過ごすのは信念に背

くことになる」

ステイル「余計な事を詮索しないでもらえるかな」

医者「それが出来たらやってる」

医者「だがね、それでも私は――」

ステイル「黙れと言ったんだッ!!」

医者「……ここは病院だって知ってる?」

ステイル「お前は……!!」

医者「君の言いたい事は分かってる。彼女の恰好を見たなら誰でも分かる」

医者「その上で言わせてもらうんだよ?」


ステイル「……彼女が何をしたというんだ」

医者「は?」

ステイル「……他の方法が無かったんだ。もうああするしか、あの子を守る方法は無かった……」

ステイル「それなのに、奴は……何も知らない癖に、横槍を入れて……」

ステイル「何もかも、滅茶苦茶にしていった……!!」



医者「熱くなる気持ちは、まあ分かる」

ステイル「何が分かる!?神裂はあの男にッ――!!」

医者「まあ確かに身も心もボロボロに見える、けど最悪の状況って訳でもない」

ステイル「貴様は――!!」



医者「君ひょっとして、あの子が強姦されたとでも思ってる?」


ステイル「なん……」

医者「あれね、ただの澱粉だよ。なんかいろいろ混じってる、けど」

医者「君知ってる?精液って大体はタンパク質で出来てる、って」

医者「まあさらに分けると精漿と精子に分かれる、んだけど」

ステイル「……」

医者「彼女にかかってたアレはまー、台所にあるもので出来るような子供だましの偽物である……って、君聞いてる?」

ステイル「……どういう……事だ……」

医者「『そう見せかけた』って言えば、中学生並に初心な君でも理解できる?」

医者「だから言っただろ?一体君たち何なの、って」

医者「この学校、『学園』都市だからね。風紀を乱す行為は、まあ看過出来ないんだ、見せかけだろうが何だろうが。分かる?」


ステイル(そんな……そんな筈はない。そんな事をして奴になんの利益が)

ステイル(僕を馬鹿にするために……ただそれだけの為にやったって言うのか!?)

医者「ねぇ、君聞いてる?」

ステイル「……彼女は」

医者「ん?」

ステイル「彼女は無事なのか」

医者「まぁ君が言ってる意味でなら、無事って事になる。元気ではないけど」

ステイル「……そうか」

医者「言っとくけど、彼女の意識はまだ眠ってる。話は出来ないけど、まあ帰る前に寄ってくことをお勧めする、よ」



病院廊下

ステイル(……何の為に)

ステイル(僕をわざわざ挑発した、その意図は何だ?)

ステイル(あの男は魔術を打ち消せる上に、パワードスーツでとてつもない身体能力を得られる)

ステイル(戦術的な意味があったとは思えない……)

ステイル(ひょっとして、僕を馬鹿にする、ただそれだけの為に……?)


神裂『――――』


ステイル「今は、あの子を探す方が先決、か」

ステイル「――済まない、神裂」

ステイル(絶対にあの子は、守ってみせる)

診察室

医者「……悲劇かな、それとも喜劇になる?どちらだと思う、『上条当麻』」

???「……俺はまだ『上条』じゃない」

医者「でも何時かはなる、そうだろ?『上条当麻』に」

医者「で、どっち?」

???「力がある奴は、より力がある奴に利用される。無い奴は、やはり利用される」

医者「ほうほう」

???「上条当麻は絶大な『力』を持っていた。だから、さらなる力を持つ『人間』に利用される事になった。だから悲劇」

???「――とは、言い切れない。『上条当麻』という流動的存在は、結局のところ、他者を救い続けている」

???「死んでなお、奴の第二の望みは叶え続けられる訳だ。どちらがどちらを利用しているのか、分かったものではないな」

医者「で、結局君はどちらになる?利用するか、利用されるか」


医者「ねぇ、検体14号」


ワーム(人間態)「……」

医者「13号はもうとっくに出発してる。そのうち禁書目録とコンタクトを取る」

ワーム「奴は救うんだろうな。ねじ曲がる前の上条当麻として、禁書目録を」

ワーム「そして同じように、屈折する。奴は禁書目録を救い、だというのに自分は救われていない事に気づく事で」

医者「皆は笑顔になり、自分には不幸になる。その繰り返しで彼は崩壊する」

医者「悲しいよねぇ、他の人は救えても、自分自身は救えないんだもの」

医者「でも今回はちょっと特別だったねー。まさか義兄弟を作る、なんて」

ワーム「記憶のチェックポイントは変更したのか」

医者「いや、今のところは様子を見る。記憶喪失で通せるならそれはそれでいいし」

ワーム「そうか」



ワーム「……『上条当麻』……死んでも受け継がれる記憶と力、か」








後半に続く

お!きてたか

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