女「一時間だけでいい」(30)

男『えっ、何が?』

女『あんたと会って話すの』

男『…短くない?』

女『長く一緒にいたって話すことないでしょ』

男『一緒にいるだけで楽しくない?』

女『ない』

男『マジですか…』

男『俺は楽しいけどなー』

女『ふーん』

男『…二時間にしない?』

女『………』

男『…一時間ですね』

女『はぁ…まぁ直ぐにじゃなくていいけどね』

────
──


男「どしたの、女」

女「ん」

男「何か今、ボーっとしてたよ?」

女「ちょっとね…」

男「疲れてるの?」

女「あんたと話してるからね」

男「酷い?!」

女「ちょっと昔のこと思い出してただけ」

男「昔…冷え冷えの女の時かー」

女「何それ」

男「昔から冷めてたじゃん、女」

女「別に、そんなことないけど」

男「女は正に氷の女王だね、うん」

女「氷の女王って…」ハァ

女「女王でいいの?」

男「だって女美人だし」

女「…………」

男「照れてらっしゃる」

女「目潰すよ」

男「させぬ!」バッ

女「ちょっと痩せた?」

男「えっ、そうかな?」

女「モヤシに磨きがかかってるよ」

男「そんなとこに磨きかけたくないよ!」

女「ちゃんと食べなよ」

男「いや、でも一食しか食べないし」

女「その一食をたくさん食べなさい」

男「少食なのさ」キリッ

女「草食男子め」

男「あー、そろそろ時間だね」

女「……そうね」

男「…………」

女「…………」

男「えっと…」

女「じゃあ、もう行く」

男「あっ、うん」

男「また明日!」

女「…また明日」

翌日

女「これ、あげる」スッ

男「何これ、写真?」

女「前に景色見たいって言ってたから」

男「俺の為に撮って来てくれたの?」

女「気分転換に撮っただけ」

男「あはは、そっか」

男「おっ、すごい綺麗に撮れてるね」

女「素人が撮ったんだから、そこまでじゃないでしょ」

男「女は写ってないの?」

女「え?」

男「いや、女の写ってる写真がないからさ」

女「景色が見たかったんでしょ?」

男「うん、でも女が一緒に写ってる写真が一番見たかったんだよね」

女「…自撮りなんてするわけないでしょ」

男「いいじゃん自撮り、今時!」

女「いや、古いから」

男「じゃあ、今から撮りに行こう!」

女「今から…?」チラ

男「まだ40分あるし大丈夫だよ」ググ

女「っ…わかったから!」バッ

女「ゆっくりでいいから…」

男「うん…ごめんね」

女「…………」

公園

男「はぁ…はぁ…運動不足かな」

女「座って…」

男「うん…」スト

女「ゆっくり深呼吸して」サスサス

男「すーはー」

女「…落ち着いた?」

男「うん、だいぶ落ち着いた」

男「時間ないし、もう撮ろ?」

女「うん」

男「じゃあ、そこに立って」

女「…………」スッ

男「今日は満月だし、良い写真が撮れそうだね」

女「でもモデルが私じゃ微妙じゃない?」

男「俺は女を撮りたいんだよ」ピッ

女「…………」

女「写真なんか撮らなくても…」

女「私はあんたの側にいるよ?」

男「うん…だから、これはお守り」

女「お守り…?」

男「また女と会えますようにって」

女「っ…!」

男「…ほら、そんな顔しないで笑ってよ」

ふむ…続けろ下さい

女「男は私に笑ってほしいの?」

男「うん、女には笑ってて欲しい」

男「これまでも、これからも」

女「…………」

男「…………」

女「…綺麗に撮ってよね」ニコ

男「うん!」パシャ

男「ふぅ、けっこう撮ったね」ピッ

女「満足した?」

男「うん、満足した」ニコ

女「そ、ならもう帰ろ」

男「えー、もう少しだけここにいようよ」

女「ダメ、後15分しかない」グイ

男「はぁ、やっぱり1時間って少ないね」

女「…………」



男「ありがとね、女」

女「これくらいでお礼なんていいから」

男「ん、でも言いたかったから」

女「…もう行くね」

男「また明日」

女「…また明日」

翌日

男「…………」ニヤニヤ

女「何にやけてんの、キモい」

男「深くえぐられた!」

女「で、何でにやけてたの?」

男「いや、いつも起きると女が居てくれるからさ」

男「幸せだなーって」

女「寝てる時のあんたってすごいだらしない顔してるよ」

男「えっ?!」

女「ほら、早くご飯食べて」

男「ん、今日も美味しい」モグモグ

女「残したら怒るよ?」

男「母さんが作ったのに?」

女「……医者として怒る」

男「あはは、はーい先生」モグモグ

男は病気

男「ねぇ、女」

女「何?」

男「この病気って治るの?」

女「…治るに決まってるでしょ」

男「…………」

女「私が治してみせる」

男「頼りにしてる」ニコ

女「それに…私があんたに呪いをかけたんだから」

男「呪い?」

女「昔…あんたとは一時間だけでいいって…」

男「あー、言われたね」

女「だから…私にしか呪いは解けないのよ」

男「別に女のせいじゃないでしょ」

女「そうだとしても、私はあんたを助けたい」

男「…うん、ありがと」

女「それで今日は体調どう?」

男「んー、普通かな」

女「みたいね」

男「でも、やっぱり退屈だなー」

女「今日も外行く?」

男「今日は女とお喋りしよう」

女「わかった」

女「じゃあ、明日も来るから」

男「待ってるね」

ガチャ

女「……ふぅ」

男母「女ちゃん、いつもありがとうね」

女「あっ、いえ…」

男母「あの子の為に…ほんとに」

女「私がしてあげたいんです」

女「ずっと…男の側にいたいですから」

男母「ふふ、男をよろしくね」

女「えっ、あっ…はい」カァァ

翌日 ガチャ

男「…………」スースー

女「…………」

女(相変わらずだらしない顔)

女(病気なのに幸せそうに寝て…)

女(いつからだったろう)

女(ある日突然、男が遅刻し始めた)

女(今までしたことなかったのに…)

女(それからはずっと男は遅刻し続けた)

女(あの時の男…すごく不安定だった)

───
──


女『男、最近遅刻ばっかりね』

男『起きれないんだよね』

女『夜更かししてるの?』

男『いつも通りに寝てるんだけど』

女『ふーん…』

男『…………』

期待

病院

医師『ふむ、特に異常はありませんね』

男『そう、ですか…』

医師『いつも起きてる時間に必ず一時間遅れて起きてしまうんですよね?』

男『はい…母が起こしに来ても全く起きれなくて…』

医師『なるほど…』

男『…………』

医師『』

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