海未「あなたのハートを取り出すミラー! ってなんでですかー」 (143)

海未「またまた机の上に怪しげな手鏡とメモが……」

海未「今度という今度は引っ掛かりませんからね」

海未(まあ一応メモくらいは読んでおこう)

海未「なになに? 『1、鏡を見ろ』」

海未(……鏡自体にとりわけ変わったところはない、か)

海未「それで……『2、鏡を見ると異世界との入れ換えが始まりますので気をつけて』」

海未「……え?」

海未(そんなの雑な)

海未「わっ、眩しい――――――――

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海未「あれ? ここは……私の部屋?」

海未「な、なんだ驚いた……」

海未(……ん? なぜ私は穂乃果の写真を持っているんでしょう)

海未(それより日付は……よし、1日しか変わってない)

海未「……1日しか!?」

海未(おかしい、今日は休日だったはず。それなのに昨日に戻ってる)

海未「いけない……何回も不思議な出来事に巻き込まれ過ぎて危機管理が疎かになってしまってる」

海未(しかも制服を着ているし……私の部屋があるからには、私がこの世界に存在しているということ……入れ換えってあったし)

海未「ということはパラレルワールド?」

ことり「海未ちゃーん、起きてる?」

海未「ことり? ……起きていますよ」

海未(ことりが呼びに来るなんて珍しい……いつもは穂乃果なのに)

ことり「下で穂乃果ちゃん待ってるよぉ」

海未(なぜそんな距離が……)

海未(もしかしてあの柱の影に隠れているのは……穂乃果?)

穂乃果「……」

ことり「穂乃果ちゃーん、海未ちゃん来たよ」

穂乃果「……」

海未(なぜか疑惑の視線が)

海未「穂乃果、おはようございます」

穂乃果「……えっ」

海未「何ですかその反応は。挨拶くらいきちんと返しなさい」

海未(はっ、まさか穂乃果とあまり仲良くない世界だったり……)

穂乃果「い、いや……いつもみたいに『ああいつ見ても美しいそのうなじ、ペロペロしたいです!』とか来るのかと思って……」

海未「……何言ってるんですか?」

穂乃果「ま、まさか海未ちゃん……元に戻ったの!?」

海未「元に?」

穂乃果「よかったぁ……」

海未(何のことだかさっぱりわからない)

ことり「穂乃果ちゃん、よかったね」

穂乃果「うんっ!」

海未「あの、二人とも……」

穂乃果「真面目で優しい海未ちゃん……久しぶりだなぁ。えへへ」

海未「失礼ですね、私はいつもこうですよ」

穂乃果「うんうん、そうだったねぇ」

海未(……信じてくれていない。でも仲のよさはあまり変わらないみたい)

絵里「あら3人とも、もう来てたの?」

海未「絵里!?」

海未(絵里の家はもっと遠かったはずでは……)

ことり「絵里ちゃんおはよう」

穂乃果「おはよー」

絵里「おはよう……って海未、今日は穂乃果にべったりじゃないのね」

海未(!?)

海未「そ、それってどういう……」

穂乃果「今日は海未ちゃん復活記念日だからね! お祝いしなきゃ!」

絵里「なんだかわからないけど楽しそうじゃない」

ことり「海未ちゃんが元に戻ったんだって」

絵里「……そういえばそうね」

海未(この世界の私っていったい……)




  海未「ん? ここはどこでしょう……たしか私はロリ穂乃果の写真を眺めていたはず……」

  海未(一見すると私の部屋のように見えますが……本棚にこっそり隠してある残りの穂乃果アルバムがない)

  海未「しかも今から穂乃果との至福の登校タイムのはずなのに……」

  海未「日付も違うということは……まさか別の世界に来てるとか」

  海未(引き出しの中の等身大穂乃果ポスターもないあたり、そう考えて間違いはなさそうですね。あれは簡単に解錠できないようにしてあるから……)

  海未(他のところはいつもの自分の部屋と何ら変わりはないし……)

  海未「ん? 何でしょうこの鏡……」

  海未「はっ! そんなことより穂乃果の香りが近づいてくる!」
  
  穂乃果「うーみちゃん!」

  海未「穂乃果っ!」

  穂乃果「うおぉ、海未ちゃん元気いいね。どうしたの?」

  海未(あ……れ? 穂乃果との距離がこんなにも近い)

  海未「……合意と見てよろしいですか」

  穂乃果「なんだかわからないけどいいよ」

  海未「好きです穂乃果!」

  穂乃果「やったね、私たちついに両想いだよ!」

  海未(穂乃果が抱きついてくるなんて……夢? でもこの香りと感触は本物……)

  ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃん起きて…………お邪魔しましたー」

凛「今日は穂乃果ちゃんと海未ちゃんの距離が近いにゃー」

花陽「二人はなかよしさんだからねぇ」

真姫「え、今のってそういう意味なわけ?」

海未(3人はいつも通り……というかこちらの私は穂乃果に何を)

穂乃果「本当によかったよぉ」

ことり「穂乃果ちゃんうれしそう」

にこ「海未ちゃん、なんだか疲れてない? ストレスは体に毒にこっ!」

海未(にこの様子と髪を結ぶ位置がおかしい)

希「あれ、ウチの隠しおやつがない……食べたんは誰やー?」

真姫「さっき自分で食べてたじゃない」

希「そうやった?」

絵里「というか持ち込んじゃダメじゃない、こら」

希「持ち込みオッケーにしてやー」

絵里「生徒会役員になってから出直してきなさい」

希「てへっ」

海未(希は生徒会役員じゃない……結構違うところがたくさんある)

凛「海未ちゃんどうしたの? 元気無さそうだけど」

海未「だ、大丈夫ですよ」

花陽「今日は穂乃果ちゃんに……その……抱きついてないんだね」

海未「!?」

海未(だ、抱きつくだなんてそんな……)

穂乃果「?」

海未(こんなかよわい子犬のような穂乃果にそんなことは……)

海未(というか今まで穂乃果しかスキンシップされなかったせいで余計にそう見えるだけであって……)

穂乃果「これからは海未ちゃんと毎日手を繋いで学校行こうかなぁ」

海未「くっ……」

海未(こちらの私がスキンシップ過多だったせいで穂乃果の考えがメルヘンチックで…………私の中のいけない嗜虐心が目覚めそう)

海未(ええい、しっかりしなさい園田海未! 穂乃果は私のことを信じて……)

穂乃果「海未ちゃん大好き」

海未「」

凛「汗がすごいにゃー」

ことり「海未ちゃん、タオルだよっ」

真姫「ちょ、海未タオル食べてるわよ!?」

花陽「食べちゃったのぉ!?」

希「ウチも見習わな」

絵里「これ以上話をややこしくしないで……」

にこ「海未ちゃんってそういうキャラだっけぇ?」

  海未「今日は学校ないんですか?」

  ことり「ないよぉ」

  穂乃果「海未ちゃん、髪サラサラー」

  海未「ふふ、くすぐったいですよ」

  海未(穂乃果の膝枕……しあわせ)

  ことり「二人とも仲良しだね」

  穂乃果「うん!」

  海未「はい!」

  海未(穂乃果の話から察するに、こちらの私は奥手だったと見て間違いないはず)

  穂乃果「海未ちゃん、今日は秋葉原でライブだよー」

  海未「!?」

  ことり「何の曲を歌うんだっけ」

  穂乃果「えーっとね……メモがどこかに……あった」

  穂乃果「午後四時から駅前に新しくできたお店の近くで……」

  海未「4時!? あ、あと2時間もありませんよ……?」

  海未(穂乃果の膝枕は捨てがたいけれどお客さんを待たせるわけにはいかない)

  穂乃果「……ほんとだ! は、早く準備しないと……」

  海未(本気で忘れてたらしい)

  ことり「衣装は誰か持っていってる?」

  穂乃果「絵里ちゃんと真姫ちゃんが持っていってるよ」

  海未(穂乃果が下着姿に……くっ、なぜこちらの私はカメラを常備していないんですか)

海未「うっ……」

穂乃果「どうしたの海未ちゃん」

海未「いえ、何でも……」

海未(なぜか悪寒が)

ことり「そういえばライブは明日だっけ?」

海未(こちらでもライブの日程は変わってない……)

真姫「ん、それは来週じゃなかった?」

絵里「そうね」

ことり「そうだったねぇ。間違えちゃった」

海未(変わってた)

花陽「あ、明日、みんなはどうするの?」

希「あらら、かよちんがそんなこと聞くなんて珍しい。どうしたん?」

花陽「たまにはみんなで……遊んでみたいなぁ、なんて思って……ほら、明日は祝日だから…………やっぱりダメ?」

にこ「おぉ、ナイスアイディア! にこもそれにさんせーいっ」

凛「凛も凛もー!」

穂乃果「穂乃果もー」

ことり「じゃあ私もっ」

絵里「私は大丈夫だけど……真姫や海未は?」

真姫「別に構わないわ」

海未「はい、私も特に用事は……」

海未(カレンダーにはライブや行事のこと以外は書いてなかったし)

希「あれー? ウチには聞かないままなん?」

絵里「パワースポット巡りに誘ってきたでしょ? ここ最近ずっと」

希「だってガード固いんやもん」

絵里「生徒会の仕事があるだけなんだけど……」

希「そ、そんなトリックが……」

ことり「お仕事忙しいなら手伝うよっ」

穂乃果「うんうん、私たちがいるよ」

絵里「大丈夫。すぐ片付くから」

希「終わったらパワースポット……」

絵里「行きません」

花陽「あのー……」

凛「どこに行こうかなー」

真姫「祝日だからどこも人多いでしょ」

にこ「あれ ? 真姫ちゃん意外とマジメ? みんなと遊びに行くの楽しみ?」

真姫「ち、違うわよ!」

花陽「あ、あのぅ……」

海未「ちょっと、花陽の話を……」

海未(ん? もしかして……まとめ役がいない?)

海未(こちらの私の役目、ということかも……)

海未「みんな、静かにしてください。発案者の花陽が言いたいことがあるみたいですよ」

希「そうなん?」

花陽「うん」

絵里「あ、ごめんなさいね。うるさくしちゃって」

花陽「ううん、気にしないでいいよぉ」

凛「凛としたことが一生の不覚! かよちんのことに気付けなかったなんて……」

真姫「そんな大袈裟な」

にこ「今日の海未ちゃん、なんだか先生みたいにこ」

海未「それはどういう……」

凛「そういえばこういう風にきっちりやるのって初めてかもにゃー」

海未(じゃあこれまでは……さりげなく呼び掛けていた、とか? こちらの私はそんなことができたんだ……)

穂乃果「それで話って?」

花陽「いくところがまだ決まってないから……みんなで決めようかなぁ、って思って…………」

希「パワースポットや!」

花陽「えっ?」

絵里「ちょ、希、みんなを巻き込む気?」

希「ふっふっふ、甘いで。ウチが調べもなしにそんなこと言うわけないやろ?」

ことり「?」

希「実はそのパワースポット巡りでスタンプを集めると……」

凛「……集めると?」

希「その近くのお店で使えるクーポン券がもらえるんよ!」

穂乃果「クーポン券?」

絵里「なんだか急に世俗的になったわね」

希「しかも! その付近にはテレビでも紹介されたケーキバイキングのお店が!」

凛「ケーキ!」

ことり「おいしそう!」

海未「メインそっちのけで楽しむ気満々ですね」

海未(というかそこまでしないと人の来ないパワースポットって……)

花陽「パワースポットも複雑だよね……」

穂乃果「でもパワースポットを巡りに行くんだから……あれ?」

真姫「……明日は絶対混むでしょ」

  海未「ま、間に合った……」

  ことり「あれ? まだ誰も来てないよ?」

  穂乃果「あ、こっちこっち。お店が出来たからこの後ろ側からステージの裏口にに入れるんだよねー」

  海未(このお店、私のいた世界ではまだ建ってなかった)





  にこ「3人ともおっそーい!」

  ことり「ごめんなさい」

  海未「すみません」

  穂乃果「ごめんねみんな、穂乃果がちゃんと時計見てなかったから……」

  希「まあまあ、みんな無事に間に合ってよかったやん」

  にこ「もう……希は甘いんだから」

  希「事件に巻き込まれたのかも、とか心配してたのはどこの誰やろ」

  にこ「……早く着替えてきなさい」

  穂乃果「にこちゃん顔真っ赤だよ?」

  ことり「大丈夫?」

  にこ「うるさーい!」

  希「奥にみんないるから謝っておくんやで?」

  穂乃果「わかった!」

  海未「はい」

  海未(こちらのにこはツンデレで希はお母さん。やっぱり全然違う)




  花陽「あ、穂乃果ちゃん! ことりちゃんも海未ちゃんも!」

  絵里「間に合ったのね!」

  ことり「ごめんなさぁい」

  穂乃果「ごめんねみんな、着替えどれだっけ」

  真姫「ここよ、リハーサルまであと5分もないからリボンは私がやるわ」

  凛「凛はマイクつけるにゃ!」

  海未「すみません」

  海未(この4人はあまり変わっていない)

  穂乃果「真姫ちゃんくすぐったぁい」

  真姫「仕方ないでしょ」

  海未(羨ましい)

海未(明日のこの時間帯はライブのはず……ちゃんと行けたかな)

ことり「明日楽しみだねぇ」

穂乃果「うん、晴れるといいね」

海未「明日は晴れると思いますよ」

海未(学校にあった新聞に載っていた、ここ最近の天気は変わらなかったし……)

ことり「海未ちゃん預言者だー」

海未「ふふ、そんな偉いものじゃありませんよ」

絵里「天気予報は……雨って書いてるけど」

穂乃果「ほ、穂乃果は携帯より海未ちゃんを信じるよ」

海未「はっ」

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「いえ……」

海未(……穂乃果のその前触れもなくそっと抱きつくの、クセになりそうで怖い)

ことり「チーズケーキ……たべたい」

海未(ことりが呑気なのは変わらないなぁ。安心した)

  絵里「本番までもう少しよ!」

  穂乃果「よーし、がんばろー!」

  海未(穂乃果の腋! 顔をうずめたい!)

  ことり「おーっ!」

  凛「がんばるにゃー!」

  花陽「うぅ、やっぱり何度やっても緊張するぅ」

  希「大丈夫やって、練習してきたんやから」

  花陽「そうだよね……よぉし」

  海未「じゃあ今日は花陽が一人でやってみますか?」

  花陽「えぇっ!? そんなのできないよぉ……」

  海未「じゃあ私たちがいれば大丈夫ですね」

  花陽「そ、そうかも」

  にこ「……海未?」

  海未「にこも気を引き締めて」

  にこ「はぁ……遅刻したあんたに言われたくないわよ」

  穂乃果「くっ」

  ことり「うっ」

  にこ「あ、いや、別に責めてるわけじゃなくて……」

  真姫「……」

  海未「どうしました?」

  真姫「何でもないわ」

  海未「スカートめくれてますよ」

  真姫「!?」

  海未「なんて、冗談です」

  真姫「ちょっと海未っ!」

  海未「そうそう、自然体で自然体で」

  凛「……なんだか緊張してきたかも。ここでやるの初めてだし……」

  絵里「大丈夫よ凛。いつも通りにやればいいんだから」

  海未「はい。それにうまくできたら絵里がラーメンをおごってくれるそうです」

  凛「ラーメン!?」

  絵里「ええ何杯でも……ってそんな約束してないわよ!」

  海未「あ、始まりそうですよ」

  絵里「ちょ、そんな」

  凛「ラーメン!」

  にこ「こ、このまま行くの?」

  真姫「グダグダじゃない!」

  穂乃果「よーし、じゃあ穂乃果一番乗りー!」

  希「ウチは二番!」

  凛「凛さんばーん!」

  絵里「そんなバラバラに出てどうするのよ……もー!」

ことり「じゃあまた明日」

絵里「いつものところで待ち合わせね」

海未「はい」

穂乃果「明日の朝ごはんは食べないでおこうかな」

海未「ちゃんと食べなさい」

穂乃果「はーい」

海未「……」

海未(……今までのメガネやら指輪やらは期限がそんなに長くなかった。そして恐らく今回も……)

海未(でも今回はイレギュラーすぎる。あの鏡は……って、あれ?)

海未「鏡、どこに置いたっけ……」

海未(た、たぶん机の上に置いているはず)

海未「部屋に入れば見つかる……きっと――――――――



海未(なかった……)

海未「じゃあ私はどうやって元の世界に帰れば……」

海未(もしかして二度と帰ることはできない?)

海未「いや、そんなはずは……それではこちらの私は何の前触れもなく入れ換えかれたということに……」

海未「……どうしよう」

  ことり「終わったぁ……」

  海未「無事終わりましたね」

  穂乃果「大成功だよ!」

  凛「もうヘトヘトだにゃー」

  花陽「私も……」

  海未「ふふ、みんな頑張ってましたからね」

  絵里「あら? じゃあ練習量を増やしましょう、とか言わないの?」

  海未「さあ、気づいたら増えているかもしれませんよ?」

  花陽「えぇぇ!?」

  凛「新しいパターンにゃ!」

  真姫「これくらいで弱音をはいてちゃダメよ。まだ私たちはすることが残ってるんだから」

  穂乃果「えーっと……そうだ、片付け手伝わないと!」

  ことり「衣装着替えてからね」

  穂乃果「あ、そうだった」

  海未(ふふふ、無事に穂乃果の汗を拭いたタオルを回収しましたよ)

  希「なぁ海未ちゃん」

  海未「ふふふ……え? こほん、なんでしょう」

  にこ「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

  海未(まさかバレた? いや、私の手際のよさは常人に見切れるはずが……)

  海未「そのお話は片付けが終わってからで構いませんか?」

  にこ「ええ」

  海未(いや、この落ち着き様からすると何か違うことで話があるらしい)

海未(……どこにもない)

海未「うぅ、いったいどうすれば……」

海未(……さびしい)

海未(いやいや、こんなところで弱気になっていてはいけない!)

海未「今日は早めに寝て明日に備えましょう。考えるのは明日でもいいはず!」

海未(何より花陽があんな風に張り切っているのは珍しいし……でもこちらの世界ではどうだったかわからないか)

海未「枕も変わっていないし、ぐっすり眠れるはずですよね」

海未(……ん? 枕元に何か……)

海未「これはまさか……」

にこ「あんたは何者なの?」

海未(ほう……まさかそうくるとは)

海未「私は園田海未ですよ?」

にこ「……やっぱり違うわね、希」

希「そうやね、海未ちゃんなら『そんなくだらない話をしにつれてきたのですか?』って言うてるもん」

海未「えっ、私そんなに冷たくありませんよ?」

希「……ふっふっふ、残念でーしたっ」

海未(なっ……返しはこれで完璧なはずなのに)

にこ「答えが完璧すぎるのよ。本当の海未ならそんな顔色ひとつ変えずに答えないわ」

希「海未ちゃんはすぐに顔にでるからなぁ。今のもきっと動揺してるやろうし」

海未(うかつだった。この2人……侮れない)

海未(しかしここで本当のことを言っても信じてもらえそうには……いや、無駄な誤解を招かないためにも真実を伝えるべきかな)

海未(多少頭のアレな子だと思われても致し方ない)

海未「実は私、この世界の園田海未ではないんです」

希「それってパラレルワールドみたいな感じなん?」

海未「おそらくはそうかと」

海未(あれ? 意外と信じてくれている)

にこ「……今度はそういうパターンなのね」

海未「前にもこんなことが?」

にこ「パラレルワールドは初めてよ」

海未(こちらの私は何をしていたんだろう。そういうキャラだったとか?)

希「つい最近まで吸血鬼やったしなぁ」

海未「何ですかそれ」

にこ「まあいろいろあったのよ……」

海未(その意味深な遠い目は何)

希「それ以外に変わっているところと言えばー……」

にこ「ちょ、希……」

希「わしわし!」

海未「きゃあああっ!?」

希「……本物よりでっかい」

にこ「……反応が、ってことよね」





にこ「……とまあこんな感じにいろいろあったのよ」

希「えりちと花陽ちゃん、それに真姫ちゃんも知ってるで?」

海未(……そんな壮絶な出来事が)

にこ「あ、それと穂乃果とことりも知ってるわ」

海未「それだと知らないのは凛だけ、ということですか?」

にこ「……あれ?」

希「でも指輪の方の解決策をくれたのは凛ちゃんやんな?」

海未「……」

にこ「……凛に相談してみましょうか」

海未「……はい」

海未「これ、どうやって使えば……っていうか使えるんでしょうか」

穂乃果『海未ちゃん電話だよー』

海未「穂乃果!?」

海未(あ、これが携帯の着信音なんだ……)

穂乃果『海未ちゃん電話だよー』

海未「……花陽からだ」

海未「もしもし」

花陽『や、夜分遅くにすみません! 小泉花陽と申します!』

海未「はい、こちら園田海未です。まだ夜分には早いですよ」

花陽『海未ちゃん? よかったぁ……間違えてたらどうしようかと思ったよぉ』

海未「大丈夫ですよ。どうしました? 明日について何か連絡ですか?」

花陽『あ、そうじゃなくてね。お礼を言いたくてお電話しました』

海未「お礼?」

花陽『うんっ、今日は海未ちゃんがみんなをまとめてくれたでしょ?』

海未「ああ、いいんですよあのくらい。いつものことですから」

花陽『うん、でもありがとう。じゃあまた明日ね』

海未「はい」

海未「……それにしてもこれ、どうすれば……」

  海未「凛」

  凛「なに?」

  海未「ちょっとお話がありまして」

  凛「ま、まさか凛だけ特別練習メニュー追加!?」

  海未「違いますよ。今から話すのは……」

  凛「い、今から……やるの?」

  海未(こちらの私はどれだけスパルタだったんだ)

  凛「海未ちゃん、休むのも大事だにゃー。根を詰めすぎるのはよくないよ?」

  海未「……そんな風に見えますか?」
  
  凛「見えるにゃ」

  海未「……」

  海未(私は私で根っこの部分は変わらないんでしょうね)

  海未「そういうときはどうすればいいと思いますか?」

  凛「おいしいものを食べてぐっすり眠れば完璧にゃ!」

  絵里「な、なんで私のほうを見るのかしら」

  凛「絵里ちゃんが一緒にラーメン食べにいってくれるって言ったからー」

  絵里「あら、おごりはいいのね」

  凛「お金で買えないものもあるからにゃ。ねー、かよちん」

  花陽「そうだねぇ」

  絵里「……ま、いいわ今日くらい。付き合ってあげようじゃない」

  凛「やったー! じゃあ真姫ちゃんもどう?」

  真姫「え、なんで私なのよ」

  海未「誘ってほしそうな顔をしていたからでは?」

  真姫「う……」

  海未(からかったつもりが……図星だったらしい)

  海未(……結局あまり収穫は得られなかったなぁ)

海未(眠れない)

穂乃果『海未ちゃん明日何着てく? 動きやすい服にする?』

海未「そうですね、明日は歩くみたいですし」

海未(完全になつかれてしまった。こちらの私の印象はどうなってるんですかまったく)

穂乃果『まだ雨降ってないみたいだし大丈夫だよね』

海未「そうですね」

海未(まあこれも悪くないかも……)

海未(でもやっぱり元の世界の穂乃果のほうが……落ち着くかな)

海未(結局この割れた鏡の使い方、わからなかったなぁ)

  海未(眠れない)

  海未「……」

  穂乃果「すぅ……」

  海未(穂乃果がこんなに近くで寝ているなんてッ!)

  海未「……とりあえずカメラを買っておいてよかった」

  海未(またお泊まりだね、と穂乃果は言っていたし……数回も穂乃果とお泊まりとはうらやま……けしからん)

  海未「……さ、触るくらいなら」

  海未「そーっと……」

  穂乃果「……くぅ」

  海未(…………)

  海未(でもこちらの穂乃果は反応が薄くて少しさびしいかも)

  海未(穂乃果はほっぺを触られたら「ひゃわぅ!」ってかわいい声をあげるのが……ああ思い出すだけで鼻血が)

  海未(ふふふ、これはこれでアリなんですけどね……)




海未「……あれ、私がいる。夢か」

  海未「私が出てくる夢なんて……穂乃果のほうがよかった」

海未「せめてパラレルワールドの私なら話ができたものの……」

  海未「ん、私鏡なんて持ってたっけ」

海未「あぁっ! そ、その鏡!」

  海未「え?」




海未「あなたがあちらの……」

  海未「なるほど……やはり私の見立てはあっていたようですね」

海未「あ、今日のライブ、大丈夫でしたか?」

  海未「えぇ。そちらのほうは?」

海未「まあいろいろと不便はありましたがなんとかなりましたよ」

  海未「さすが私ですね」

海未「ふふ、あなたこそ」




海未「この鏡、あなたも持っていると思っていましたよ」

  海未「ああ、これは魔法の鏡らしいです」

海未「誰がくれたかわかりますか?」

  海未「いえ、机の上にメモと一緒に乗っていました」

海未「そうでしたか……ではなぜこの鏡、ベッドの下から出てきたんですか?」

  海未「それはわかりません。私はその鏡自体初めて見ましたから」

海未「そうですか……ではなぜ穂乃果はあんなにあなたのことを怖がっているんですか?」

  海未「え?」

海未「そういう行動は慎んで……」

  海未「……甘いですね」

海未「えっ」

  海未「涙でうるんだ穂乃果の目を見たことはありますか?」

海未「何言ってるんですか、ありますけど自分で意図的にそういう風にしたことはないです」

  海未「私はただ穂乃果を怖がらせることだけが好きなわけではないんです」

海未「はぁ……」

  海未「そう、私はあの穂乃果のような天使……じゃなかった、天使のような穂乃果の笑顔を見るためにああいう振る舞いをしているんです」

海未「へー」

  海未「ちゃんと聞いてください」




  海未「そして穂乃果のかわいさは……」

海未「私もう寝ていいですか」

  海未「まだダメです、二割も語ってないんですから」

海未「なんだか無理してませんか?」
  
  海未「そんなことないですよ」

海未「ふむ……じゃあこうしましょう、無事に帰る方法が見つかったら聞きます」

  海未「……まあ戻れないと私も困りますからね」

海未「それでは契約成立ですね。まずこの鏡を使っての移動は必須だと思うんですが……」

  海未「そもそもこの鏡は誰がくれたんでしょう」

海未「ああ、そういえばそうですね」

  海未「誰でしょう、私たちの部屋に自由に出入りできる仲の人と言えば……」

海未「μ'sのメンバーなのは確実でしょう」

  海未「はい、それともうひとつ疑問なんですけれど……」

海未「何ですか?」

  海未「鏡を送った人物はきっと私たちが入れ替わっているかどうか確かめるはずです。でもそれは一体どうやって行うんでしょう」

海未「……その人物は私たちのように入れ替わっているのでは? 戻る方法も知っているはずですし」

  海未「そう、その通りです」

海未「ふむ……」

  海未「ではこの問題の元凶を双方で探してみる、ということになりますね」

海未「はい」

  海未「あ、一応もしもの時のためにメールアドレスを教えておきます」

海未「私のと一緒じゃないんですか? それに届くかどうかも……」

やっぱ漫画版ほのえりって神だわ

  海未「私のアドレスはオンリーワンでありナンバーワンです。それに鏡に向かって送信すればきっと届きますよ」

海未「ずいぶん柔軟に対応できるんですね。私はもう三回目なのに未だに慣れません」

  海未「別の世界に来たんですから、悩んでいてはもったいないでしょう?」

海未「……尊敬しますよ」

  海未「こちらなら別人になれるから、かもしれません……」

海未「え、それって――――――――

うみたそ~




海未「はっ」

海未(やっぱり夢……)

海未「ん? この紙は……」

海未(夢じゃなかった)

  海未「おはようございます」

  穂乃果「おはよー……」

  海未(あ、メールが来てる)

  海未「だから言ったでしょう、信じれば届くんですよ……」

  穂乃果「海未ちゃん何か言った?」

  海未「いえ、何も」

  海未(ねぐせ穂乃果かわいい)

  穂乃果「海未ちゃーん、抱きつかれたら穂乃果起きれないよー」

穂乃果「海未ちゃんおはよう!」

海未(穂乃果が起こしに来た)

海未「まだ時間まで三時間もありますよ?」

穂乃果「あ、迷惑だったよね……ごめん」

海未(くっ、かわいい)

海未「大丈夫ですよ」

穂乃果「本当? じゃあお話ししよう」

海未「はい」

穂乃果「うーんと、何から話そうかなぁ。話したいこといっぱいあったんだー」

海未(もともとこちらの私は穂乃果と仲がよかったみたいだけれど……)

穂乃果「海未ちゃん、もしかして元気ない?」

海未「えっ?」

穂乃果「難しい顔してたから」

海未「……穂乃果は鋭いですね」

穂乃果「そうかなぁ? お母さんからも雪穂からも鈍いって言われるんだけどね」

海未「そうでしたか、じゃあ多数決で鋭くないかもしれません」

穂乃果「えぇっ!? あ、でも前にことりちゃんも鋭いって言ってくれたから引き分け!」

海未「ことりが?」

穂乃果「うん、何だか悩んでるみたいだったから」

海未(そんな風には見えなかったけど……私が鈍いのかな)

穂乃果「でも今は悩んでないみたいなんだよね」

海未「そうですか……」

ことり「海未ちゃんおはよう」

海未「ことり!? い、いつから?」

ことり「さっき来たの。あ、穂乃果ちゃんもおはよう」

穂乃果「おはよう、さっきことりちゃんの話してたんだよー」

ことり「そうなの?」

海未(ことりはやっぱりあまり変わってないなぁ)

海未(ん? ことりが変わってないということはつまり……)

海未(いや、深読みしすぎですよね)

穂乃果「ことりちゃん元気になった?」

ことり「私はいつでも元気だよ? 穂乃果ちゃんも元気そう」

穂乃果「今日はみんなで遊ぶ日だからね」

  穂乃果「今日もお休みだけどどこか行く?」

  海未「デートですか」

  穂乃果「デートだね」

  海未(しかし絵里に会わないと……くっ)

  海未「せっかくですからみんなを誘ってどこか遊びに行きませんか」

  穂乃果「海未ちゃん泣いてるの?」

  海未「よーしさっそくでんわだーあははー」

  穂乃果「海未ちゃんしっかり」

  海未(正直話を聞いた限りでは絵里が一番あやしい)

  海未(よく巻き込まれていたそうだし今回もきっと……)

  海未(……でもこちらの絵里はいつも通りなんですよね……)

  穂乃果「?」

希「ついに来たで、この日が!」

凛「これで凛たちも念願のスピリチュアルアイドルとして正式デビューにゃ!」

にこ「オカルトって少しファンタジーな感じで悪くないかもねっ」

絵里「あれ? あんまり人はいないみたい」

希「そういえば……」

凛「まさかすでに凛たちのパワーが!?」

花陽「そうなのかなぁ?」

海未「違いますよ」

真姫「ただ人気がないだけでしょ……希、テレビに出たって本当なの?」

希「うん、タレントさんが歩いてる後ろに映ってたで」

絵里「それは見切れただけじゃ……」

ことり「でも知る人ぞ知る名店かもしれないよ?」

海未「その知る人がいるか怪しいんですよね……」

真姫「何それ……まあいいわ、とりあえずそのパワーなんとかってのを巡ってみましょう」

穂乃果「真姫ちゃん楽しそうだね」

真姫「珍しいから見てみたいだけよ。別にみんなで遊べるのが楽しいって訳じゃないんだから」

にこ「ツンデレにこ」

真姫「何それ、気候?」

海未(それはツンドラ)





  絵里「ここに9枚の遊園地の優待券があります。ご近所の皆さんがくれたものです」

  花陽「ゆ、優待券……」

  絵里「そしてこれは今日だけしか使えません……」

  真姫「開園まで時間ないわよ」

  希「えりち、巻いて巻いてー」

  絵里「というわけで……今日は目一杯楽しみましょう!」

  穂乃果「いえーい!」

  凛「わーい!」

  海未(この遊園地、たしかこの前みんなで行ったような……)

  海未(よし、このことを覚えているかどうかカマをかけてみよう)

  希「ふっふっふ、ウチお弁当作ってきたで」

  海未「まさか焼きそばじゃ……」

  希「それは見てのお楽しみ」

  絵里「たこ焼きかしら」

  ことり「お好み焼きかも」

  希「ウチのイメージどうなってるん?」

  にこ「私も手伝ったから大丈夫よ」

  希「にこっちもその返事はおかしいやん、海未ちゃんーみんながいじめるぅ」

  海未「はいはい、もんじゃですよね」

  希「ちがーう!」

  絵里「まぁそれは置いといて……」

  穂乃果「目指せアトラクション全制覇!」

  ことり「おー!」

  凛「凛は無難にジェットコースターあたりを攻めるにゃ!」

  真姫「……」

  にこ「あ、今メリーゴーランド見てた」

  真姫「ち、違うわよ」

  にこ「仕方ないわねー、一緒に乗ってあげようじゃない」

  真姫「ちょ、引っ張らないで……ああもう」

  絵里「穂乃果にセリフとられた……」

  花陽「げ、元気出して絵里ちゃん」

  絵里「はなよぉ……」

  海未(さっそく穂乃果とはぐれた……しかもみんなに聞きそびれた)

  海未(いや、くよくよしてても仕方ない。絵里に探りをいれてみよう)

  海未「絵里、あの……」

  絵里「なんだか久しぶりね、こうして普通に休日を過ごすなんて」

  海未「え?」

  絵里「ここ最近変なことに巻き込まれ続けたでしょ? まあ私も関わってたし……毎回」

  花陽「あ、そうだったねぇ」

  海未(違う……絵里と花陽はこちらのことを知っている)

  希「あ、フリーフォールが空いてるみたいやな」

  花陽「えっ」

  絵里「フリーフォール? 何それ」

  希「楽しいアトラクションやで」

  絵里「並びましょう」

  花陽「え、絵里ちゃん、考え直さない?」

  絵里「……ダメ?」

  花陽「……がんばります」

  海未「酷な……」

  希「もちろん海未ちゃんも乗るんやで?」

  海未「」

  海未(希も違う。明らかにこっちの方が強い)

希「まずはここ!」

真姫「……山ね」

にこ「登るの?」

希「ううん、この湧き水がそうみたい」

凛「あ、ここ何か書いてあるよ」

絵里「なになに……『スピリチュアルスタンプラリー』?」

花陽「かみさまに怒られそう……」

海未「とりあえずスタンプ押しておきましょうか」

穂乃果「あれ? でも押すところ2つしかないよ?」

ことり「……そんなに人気ないのかなぁ」

希「おぉ、力が……」

凛「凛にも変な感じが……」

海未「何をそんな……ってえぇっ!?」

海未(2人が光ってる……!)

穂乃果「どうしたの?」

ことり「海未ちゃん?」

海未「いや、その……」

希「どうしたん?」

凛「海未ちゃんパワーもらった?」

海未「あ、あれ? さっきまで光ってたのに……)

海未(でももしかすれば……このパワースポットを使えば元の世界に帰れるかもしれない)

真姫「早く次の場所行くわよ」

  花陽「」

  絵里「」

  希「次はどれ乗ろか?」

  海未(まさに死屍累々)

  海未「希、私は帰る手段を探すのもあるので……」

  希「そっかぁ、残念やな」

  海未「え?」

  希「また遊びに来てな」

  海未「……はい。今度はもんじゃ食べに来ます」

  希「もう一回り大きくしよっかなぁ」

  海未「そ、その手つきは……いやああああ!」

  海未(や、やられた……完全に油断していた)

  海未(もしかしてやられるなら大丈夫なんじゃ……いやいや、今はそんな話置いておこう)

  海未(ここから近そうなのは……にこと真姫のところかな、メリーゴーランドと言っていたし)

  真姫「……ごめん」

  にこ「……うるさい」

  海未「どうしたんですか?」

  真姫「う、海未!?」

  にこ「な、なんでもないわよっ?」

  海未「へー」

  海未(あやしい)

  真姫「違うのよ! 一緒に乗るって言ったから……」

  にこ「バカ、膝の上に座らせようとするからあんな……」

  真姫「仕方ないじゃない……だってあんなにちっちゃくて……」

  にこ「だ、だからってあんな風に……ああああ!」

  海未「乗せたんですか、膝の上に」

  真姫「そうよ……動き出しちゃって降りられなかったの」

  海未「ほうほう、それで?」

  真姫「ゆっくり馬が進んでるのに合わせてにこちゃんが楽しそうに揺れるのよ……それで無意識のうちに……こう、ぎゅっと」

  真姫「……って何話してるのよ私……もうやだ」

  にこ「その上子どもに、なかよしさんとか言われて……やってらんないわよ」

  海未(まあどちらの世界でもあなたたちはなかよしさんですよね)

  海未「それでにこの抱き心地のほどは?」

  真姫「……あったかかった」

  にこ「!?」

  海未「なかよしさん」

  真姫「あぁぁ……!」

  にこ「や、やめ……」

  海未「にことまきはなかよしさん」

  真姫「」

  にこ「」

  海未(勝った)

希「次はこれやな!」

真姫「鏡みたいね、この岩」

希「そうそう、本当の自分を見つめられるらしいで」

海未(なるほど……鏡か。一応あちらの私にメールしてみよう)

凛「触ったら指紋つきそうだにゃー」

にこ「普通の鏡としても使えそうにこ」

穂乃果「ほんとだね」

海未(しかし入れ替わっているのを見抜くというのはなかなか難しい……)

海未(明らかに別の性格の穂乃果や希やにこ、それに住む場所の違いに順応できている絵里はありえない)

海未(これでもまだ半分、か)

ことり「海未ちゃん変な顔になってるよ?」

海未「えっ……ああ、鏡に映った姿が、ということですね」

ことり「海未ちゃんが変なわけないよっ」

海未「そうでしたか」

海未(そうか、こちらの私はことりと普通に仲が良かったのか……)



  海未(あ、メールが来てる)

  海未(穂乃果と希とにこと絵里が外れた、それと鏡のような岩)

  海未「まあこちらで見ていると花陽と真姫は入れ替わってなさそうですけど……」

  海未(……残りは凛と…………ことり?)

  凛「あ、海未ちゃん! よかったぁ……」

  海未「凛?」

  海未(よかった? 私を探していた?)

  凛「突然ですが海未ちゃんにインタビューです!」

  海未「はい」

  凛「……お手洗い、どこかにゃ」

  海未(あちらの頼れる私を前提とした答え。凛も外れ、と)

海未(あ、メールだ)

海未(真姫と花陽と凛が外れ……ということは残っているのは……)

海未(…………ことり?)

ことり「海未ちゃんもマカロン食べる?」

海未「あ、いただきます」

穂乃果「ここのケーキおいしい!」

絵里「へぇ、パスタとかもあるのね」

にこ「真姫ちゃんお口についてるよ? そんなにお腹すいてたのぉ?」

真姫「……そんなわけないでしょ」

海未(真姫……あなた嘘つくとき目を逸らすんですよね……)

希「今ならわかる!」

凛「凛にも見える!」

希「このシュークリーム……」

凛「他のより重い!」

花陽「えぇっ、そうなの?」

希「じゃあこれはかよちんに食べてみて?」

凛「きっとかよちんならわかってくれるにゃ!」

花陽「そ、そんな……2人が見つけたんだからいいよぉ」

希「そんな遠慮せずに」

凛「そうそう、しょくよくのおもむくままに!」

海未(そんな難しい言葉を使う凛はおかしいから除外、と)

花陽「じゃあ3つに分けて食べない?」

希「おぉ」

凛「かよちん天使にゃ!」

花陽「大袈裟だよぉ」

海未(バイキングって何だっけ)

穂乃果「海未ちゃん、これおいしいよ」

海未「穂乃果、口についてますよ」

穂乃果「ふぁ」

海未「はい、とれましたよ」

穂乃果「ありがとう! じゃあまた取りに行ってくるね」

海未「はい、いってらっしゃい」

ことり「次は何食べようかなぁ」

海未「ことりもついてますよ」

ことり「え? わ、ぷ」

海未「とれましたよ」

ことり「えへへ、ありがとう」

海未「はしゃぐのは構いませんが、身だしなみには気を付けてくださいね」

ことり「うん。でも海未ちゃんの家で食べたチョコフォンデュもおいしかったなぁ」

海未「……ああ、ありましたね」

海未(私のいたところでは絵里を吸血鬼からもとに戻すためにやったけれど……こちらの世界でも別の時にやったのかな? とりあえず話を合わせておこう)

ことり「絵里ちゃんすぐもとに戻ったんだっけ?」

海未「!」

海未(それを知っているということは、まさか本当にことりが……?)

ことり「海未ちゃん? どうしたの?」

海未「いえ、何でも……」

ことり「あ、チョコフォンデュある! 海未ちゃんの分もとってこようか?」

海未「わ、私は遠慮しておきますね」

海未(……本当にどうして)

海未「絵里」

絵里「んー?」

海未「……最近チョコフォンデュを食べませんでしたっけ」

絵里「そんなことあったかしら? 真姫は覚えてる?」

真姫「いや、知らないわ」

海未「……そうですか」

海未(ということはやはり……)





  穂乃果「海未ちゃん見て見て! お化け屋敷!」

  海未「結構本格的ですね」

  海未(作り物だとわかっていれば怖くはない)

  穂乃果「……ほほう、やっぱりね」

  海未「?」

  穂乃果「ことりちゃんは観覧車の方に行ったよ。きっと海未ちゃんを待ってると思う」

  海未「え? どうしてそんな急に……」

  穂乃果「ほら、はやくはやく!」

  海未(穂乃果といられないのは惜しい……でもあちらの私のことも考えると……くっ)

  海未「また戻ってきますから!」

  穂乃果「うん、待ってるよ」

  海未(でも鏡を渡したのが本当にことりだったとしたら……)

  海未「……少しだけ、心当たりがあるかも」




  海未(だって私はことりに……)






  海未「ことり!」

  ことり「あ、海未ちゃん遅かったね」

  海未「……それは答えに気付くのが、ということですか?」

  ことり「あ、ばちゃったんだ」

  海未「考えてみれば簡単なことでした……私は……」

  ことり「続きは観覧車に乗ってからでいいかな?」

  海未「……はい」

  「どうしてこんなことをしたんですか?」
  
  「んー……じゃあ問題、そうした理由を当ててみて? 制限時間は……」

  「私があなたをほったらかしにしていたから……そうでしょう?」

  「……海未ちゃん、気付いてたの?」

  「ええ、ずっとまさかと思っていました。ことりはそういうことをしませんから……だからこそ私はそれに甘えていたんです」

  「ううん、海未ちゃんは悪くないよ……私ね、いやな子なんだよ」

  「ことり?」

  「ずっと一緒にいるのは私も同じなのに、どうして海未ちゃんは私を見てくれないのかな。私がいけないのかな……気がつけばそんなことばかり考えてるの」

  「……」

  「嫉妬、そう嫉妬だよ。醜くて汚い嫉妬……こうなったのも全部私のせい」

  「ことり、それは違っ……」

  「何も違わない! ごめんね……ただ私は……」

「いたっ」

  「え? 海未ちゃん今何か言った?」

  「何も言ってませんよ」

  「でも今の声はたしかに……」



海未「そこまでですよ2人とも」

ことり「ケンカはよくないよっ」


  ことり「あっちの世界の海未ちゃん!? どうやって……」

  海未「戻ってこれたんですか?」

海未「ええもちろん。お節介な私があなたたちの仲を取り持つために」

  海未「仲を?」

  ことり「戻ってきたんだね」

ことり「うん。ごめんね、約束守れなくて」

  ことり「……もうばれてるからいいんだよ。それにもともと海未ちゃんに気づかれた時点で終わりだったから」

海未「では本題に入りますよ……ってここ観覧車の中ですか?」

  ことり「うん、でもこんなにたくさんの人が乗ったら……」

ことり「ゆ、揺れてるよ、海未ちゃん怖い!」

  海未「定員は3人って書いてあります……というか二人はどこから出てきたんですか!」

海未「ああもうそんなのは後です!」

ことり「海未ちゃん、これ落ちちゃうの……?」

海未「大丈夫ですから、ことり離れて」

  ことり「え? 私くっついてないよ?」

海未「あなたじゃなくて…………もうこれ使いますよ!」







  海未「痛っ……ってここは夢で見た……」

海未「そうです、この鏡は地面に叩きつければこちらに転送できるんです……おしりいたい」

  ことり「えぇっ!? そんな使い方じゃないよ!?」

ことり「え、そう言ってなかった?」

  ことり「地面に向けて使うと相手の近くに落とされるから気を付けてって……」

海未「ことり……?」

ことり「ご、ごめんなさぁい!」

海未「まあそんなことは置いておいて……そこの私っ!」

  海未「は、はい!」

ことり「海未ちゃんかっこいい」

海未「ことり、あとでケーキを買ってあげますから5分間だけ静かにしているように」

ことり「デート一回がいい」

海未「はいはい」

ことり「やったぁ! じゃあ静かにします」

  ことり「……私、楽しそうだなぁ」

海未「えぇと、どこまで話しましたっけ」

  海未「私の名前を呼んだところまでです」

海未「そうでした。そう、あなたはもっと積極的になりなさい」

  ことり「積極的に? 海未ちゃんは穂乃果ちゃんに積極的だけど……」

海未「それです!」

  海未「!」

  ことり「び、びっくりしたぁ……」

海未「なぜ穂乃果だけなんです、あなたが好きで愛しているものはそれだけですか?」

  海未「そ、それは……」

海未「この際ですし……というか私ですし、はっきり言いますよ」

海未「あなたは嘘吐きです、それも自分に対して」

  海未「……」

  ことり「……?」

海未「らちが明かないので率直に言いますよ」

  海未「ま、待って……」

海未「あなたはμ'sが大好きです、μ'sのみんなが大好きなんです。もちろんことりも含めて」

  ことり「え……」

海未「しかしあなたは……と言っても私ですが、愛情表現が苦手なんですよね。不器用さんです。違いますか?」

  海未「……違いません」

海未「それに加えて極度の恥ずかしがり屋さんです。穂乃果には昔からしょっちゅうくっついていたけれど、ことりや絵里、他のみんなにはしたくてもできない……ですよね? 意識してしまって気恥ずかしいから」

  海未「はい」

海未「だからあなたは『自分は穂乃果が好きだ』と暗示をかけることによってそのことを隠そうとした。他の人へ表現したい愛を」

  海未「はは……参りましたよ。私には敵いません。どうしてわかったんですか?」

海未「あなたのオンリーワンでナンバーワンのアドレスに、『love umyi's』が入っていますよね?」

  ことり「うん、でも何でumiじゃないのかなって……」

海未「ええ、私もそこが気になりました。でも私が間違えるとも思えません。だから……」

  海未「……いいアイディアだと思ったんですよ、でも気づかれるとそんなに恥ずかしいとは……」

  ことり「何? 何のこと?」

海未「loveと来たら穂乃果を示すものが来るはずなんです。でもそれはなかった。そこで考え方を変えました」

  ことり「考え方を?」

海未「並び替えてみてください。そのおかしな部分を……そしてloveを間に挟むんです」

  ことり「間に……あっ」

海未「そう、『I love myu's』になるんですよ。まさに内気な性格らしい暗号だと思いました」

  ことり「それって……」

海未「えぇ、ことりが嫉妬なんかしなくても、充分愛されてます」

  海未「本当にダメなんです。どうすればいいかわからなくて……」

  ことり「海未ちゃん……私は嫌がったりしなかったのに」

  海未「……ことりはその……ふわふわして柔らかくていい匂いがして、近づいていいのかどうか、触っていいのかどうか……」

海未「え、意識するってそっちですか?」

ことり「じゃあお手本を見せてあげましょう」

海未「えっ」

ことり「もう5分たちましたー♪ ぎゅーっ!」
海未「ちょ、ことりっ……倒れるっ」

  ことり「わ、私、すごいことしてる……」

  海未「ええ、私もすごい体勢になってます……」

海未「ど、どうです……手を繋ぐくらいなら造作もないでしょう……ぐふっ」

ことり「ここには私と海未ちゃんしかいないし……いつもはできないことをしようかなぁ」

海未「まだ続けるんですか!?」

  海未「ふふっ、ありがとうございます。少しだけ自信が持てました」

海未「ふ、不本意ですが結果オーライです」

  ことり「じゃあ……その」

  海未「はい、わかってます……」

  海未「ぎゅーっ!」






ことり「ふたりとも幸せそうだったねぇ」

海未「そうですね……腰が痛いです」

ことり「ごめんね海未ちゃん、勢いつけすぎちゃって」

海未「いえ、我慢させていた私も悪いんです。それにしてもことりはどうして入れ替わったんですか?」

ことり「自分に頼まれちゃったからね。最初はびっくりしたけど海未ちゃんに起こった最近のことを見てたら……信じてみようかなって」

海未「なるほど……それでいつから変わっていたんですか?」

ことり「海未ちゃんの部屋に鏡を置いて、それを使って入れ替わったの。だから……昨日の明け方かな?」

海未「え、そんな早くに来ても家が開いてなかったんじゃ……」

ことり「おばさんには寝起きドッキリって言ったらオッケーくれたよ」

海未「ぐぬぬ……」

ことり「それにしても海未ちゃん、よくわかったね」

海未「仮にも私のことですから。あとは写真ですね」

ことり「写真? あのちっちゃい穂乃果ちゃんが写ってたやつ?」

海未「はい。私の性格からして写真を放ったままだとは考えづらかったんです。だから近くにアルバムがあると思って……」

ことり「ロリ海未ちゃん、見たかった……」

海未「ことり、今真面目な話をしてるでしょう」

ことり「はーい。それでそれで?」

海未「穂乃果にくっついている写真はたくさんありましたが、他の誰かと写っているものはほとんど顔が強張っていたんです」

ことり「海未ちゃん探偵さんみたい」

海未「言ったでしょう? 私のことですから」

ことり「じゃあ……私のことはわかる?」

海未「それは……」

ことり「じゃあ今から私が何をするか……」

海未「見なくてもわかりますよ、きっと私の膝を狙っています」

ことり「ばれちゃった」

海未「そんなことより景色を見ましょう。ちょうど今一番高いところですよ」

ことり「海未ちゃーん、私と景色どっちが大事なのー?」

海未「ことりと話しながらこの景色を見るのが好きです」

ことり「え? 私が好き?」

海未「もちろん」

ことり「……」

海未「どうしました、顔が真っ赤ですよ?」

ことり「きっと夕日のせいだよ」

海未「まだ昼ですが」

ことり「海未ちゃんのせいだよぉ!」





穂乃果「あ、おかえりー」

海未「ただいま」

ことり「ただいまー」

穂乃果「1日ぶりかな?」

ことり「ばれてる!」

穂乃果「だってー海未ちゃんは積極的だしことりちゃんはそわそわしてたからすぐにわかったよ」

海未「さすが穂乃果ですね」

穂乃果「2人ともかわいかったけどね」

海未「前言撤回です。私やことりなら何でもいいんですね」

穂乃果「裏を返せば海未ちゃんやことりちゃんのすべてを愛せるということです。えっへん」

海未「……はぁ、まあ穂乃果にはばれているだろうと思ってましたよ」

穂乃果「海未ちゃんはお見通しだね」

海未「見通したのはあなたです」

ことり「穂乃果ちゃん、私、海未ちゃんとのデート権を獲得しました!」

穂乃果「いいなぁ、穂乃果もほしい!」

海未「別に権利がないとできないわけじゃ……」

ことり「じゃあ月曜日と水曜日は穂乃果ちゃん」

穂乃果「火曜日と木曜日はことりちゃん」

ことり「金土日は3人で!」

穂乃果「きまりだね!」

海未「なんですかそれ」

穂乃果「1週間のデートプランだよ」

海未「あの、学校があるんですけど」

ことり「あっ……」

穂乃果「そういえば……」

海未(本当に忘れていたのか)

海未「……仕方ありませんね、土日だけですよ?」

ことり「やったー!」

穂乃果「海未ちゃん大好き!」

海未「……私も2人が大好きですよ」







海未「ことりは鏡を通してきたんですよね? でも割れてませんでしたよ?」

ことり「ああ、あれはあっちから呼んでもらったから」

海未「そんなことできるんですか?」

ことり「うん、あとあれは使ったら割れちゃうみたいなの。叩きつけたからじゃないよ?」

海未「へぇ……使い切りなんですか?」

ことり「ううん、どこかにある湧水で濡らして、鏡みたいな岩に映すと直るって向こうの私が言ってたよ。そしたらまた使えるみたい」

海未「それってあの湧水と岩じゃ……」

ことり「……ああ!」

海未「また別の日に行ってみましょうか」

ことり「うん」




海未「まずは絵里あたりからスキンシップを試みて……」

ことり「海未ちゃん頑張って!」

海未「はい……でも手を握っててくれませんか?」

ことり「いいよっ」

海未「ありがとうございます。これで絵里にも……」

絵里「呼んだかしら?」

海未「!?」

ことり「!?」

絵里「あら、何か落ちたわよ? ……この鏡、割れてるじゃない」

海未「じゃあこちら側の鏡はまだ使えるわけですね」

ことり「うん、だから……」

海未「絵里に見つからないように……」

絵里「呼んだかしら?」

海未「うわぁ!?」

ことり「絵里ちゃん!?」

絵里「あら、その鏡かわいいわね……」

絵里「うわぁ、眩しいっ! ちょっとこれどうなってるの!?」

海未「絵里が光った……!?」

ことり「まさか向こうの絵里ちゃんも鏡を見て……!」




絵里「……ん? 私こんな場所にいたかしら、ねぇ海未、ことりも……何でうつむいてるの?」





   おわり





海未「大切な友達には隠し事はしないようにしましょう、私との……」


ことり「私たちとのお約束だよっ」

改行ミスやら入れ忘れやらミスばっかでワロタ……('A`)

遅れたけど海未ちゃん誕生日おめでとう

なんでですかシリーズ
1作目
海未「あなたのハートを読み取るメガネ! ってなんでですかー」
海未「あなたのハートを読み取るメガネ! ってなんでですかー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390392922/)

2作目
海未「あなたのハートに噛み付くヴァンプ! ってなんでですかー」
海未「あなたのハートに噛み付くヴァンプ! ってなんでですかー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391164958/)

繋がってるので読んでくれるとうれしい


リアルタイムであなたのSS読めてうれしい

>>133
さんくす
そう言ってもらえるとうれしい


面白かった!

おつです

乙です

初めて見たけど凄い面白い
前作の見てくるわ

>>135-138
ありがとう
ほのうみに嫉妬しちゃうことり→海未ちゃんが救う 展開を見たくてこうなりました


おもしろかた(・8・)

全編見てます。楽しいSSありがとうございます!次回作も楽しみにしてますねー

乙です
独特の話の流れが好きです

>>140-142
読んでもらえてうれしい
次はたぶん前にあったリクエストのやつになると思います

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