PM 5:00
女「まさか 私と同じ考えをしている人がもう1人いるなんて思わなかったよ」
男「こっちもです先輩」
女「まあ生憎 1人だと思っていたからなんのおもてなしの準備も出来ていないんだけどね」
男「こちらこそですよ」
女「ちょっと待ってくれ 少し2人で遊べる道具を探してみる」ゴソゴソ
男「ところで……先輩の名前ってなんですか?」
女「女だよ」ゴソゴソ
男「俺は男です」
女「とりあえずトランプを見つけたが」
男「ババ抜きでもやりますか のんびりと」
女「そうだね じゃあカードを配ってと」
男「女さんはどうして学校に?」
女「こんな時間に学校にいるんだ 君だって同じ目的だろう」
男「泊まりですね」
女「しかも教師には内緒にね 君は――」
男「ちょっと黙ってもらえますか 後2枚なんで」
女「はい」
女「今気付いたんだが」
男「なんですか?」
女「ババ抜きは2人だと全く盛り上がらないね」ハァ
男「負けたからって腹いせは止めてください」
女「次は2人専用のトランプゲームをやろう」
男「……スピードとか」
女「それなら私にもルールがわかる トランプを半分にして」
男「いきますよ スピード!!」
女「」バッバッ
男「」バッバッ
女「」バッバッ
男「」バッバッ
女「」バッバッ
男「」バッバッ
女「しゃあっ! 私の勝ちだね」
男「…………」
女「どうしたんだい 負けてぐうの音もでないとか」
男「これって勝負が決まるまでひたすら無言ですよね」
女「まあ寂しくはあるね 真剣になっちゃうから喋りかけられないし」
PM 6:00
女「そろそろ夕飯時か」
男「うちだと7時なんですけど 早くないですか」
女「私は6時なんだよ 昔は7時からアニメがやってたからね」
男「とりあえずカップ麺ならありますけど 明日の朝の分まで合わせて2つ」
女「私も似たようなものだが せっかく学校にいるんだから”らしい”ものを食べようじゃないか」
男「らしい?」
女「まずは家庭科室に行こうか 話しはそれからだ」
男「鍵は?」
女「マスターキーぐらい 既に職員室から拝借ずみさ」
男「それで そろそろ家庭科室に来た目的を」
女「先週 私の学年で調理実習があってね」
男「カレー粉の余りが……」
女「まだ他のクラスもやる予定だから食材も冷蔵庫に残っているだろう」
男「カレーに入れる野菜に レタスやタマゴ サラダも作れるな」
女「ふっ こんな素敵な先輩と一緒になれたことを幸運に思うがいい」
男「でも先輩」
女「なんだい?」
男「米がないんですけど」
女「」
男「多分 米だけは学校で用意するんじゃなくて各自持ち寄りだったから残ってないんじゃ」
女「……甘いね その甘さが戦場では命取りだとは教わらなかったのかい?」
男「残念ながら そんなことを教えてくれる人がいなくて」
女「私が米がない可能性を考えていなかったとでも?」
男「めっちゃびっくりしたリアクションとってたじゃねいですかー」
女「各種調味料が入っているところにあるはずだよ」ゴソゴソ
男「……?」
女「小麦粉に薄力粉 それに強力粉が」
男「まさか……」
女「そうだ カレーうどんを作ろう」
男「先輩 うどんなんて作れるんですか!?」
女「水に小麦粉と強力粉とか入れて混ぜる 後は君に任せるよ」スッ
男「待て待て待て!! 俺だって作れないですよ っていうかその作り方も適当でしょ!!」
女「うどんのコシを出すには男の力が必要だ 私がカレーを作っている間に頼んだ」
男「無理ですよ 俺がカレーを作るんで先輩はうどんを!!」
女「くっ! カレーは私にしか作れないということがなぜわからん!!」
男「エゴでしょそれは! 箱の裏側に書いてある作り方で作れば誰でも作れるでしょうが!!」
女「じゃあじゃんけんで決めようじゃないか」
男「なにがじゃあなのかわからないですけど いいですよ」
じゃーんけーん
女「うどんは出来ているかい?」
男「全然固まらないんですけど 水っぽさがヤバイ」
女「これを使うといいよ」ポイ
男「これって生クリーム混ぜる奴ですよね 機械の」
女「カレーを煮ている間に私はサラダに取り掛かろう」
男「凄いよこれぇ」ヴィイイイイイイイイ
女「それで これはどういう有様だい?」
男「可能な限り 混ぜてみたんですけど固まる気配ゼロで」
女「まあ過ぎたことをぐちぐち言っても仕方ないな」
男「それでカレーは?」
女「過ぎたことをぐちぐち言っても仕方ない」
男「カレーは?」
女「」
女「仕方がなかったんだ 私は調理実習のときはいつも片付け係りだったからね」
男「先輩ってもしかして……いや なんでもないです」
女「カップ麺でも食べようか お湯ならば失敗のしようがない」
男「ですね」
女「」ズルズル
男「」ズルズル
女「こうして2人で食べていると」
男「なんですか?」
女「火垂るの墓を思い出さないかい?」
男「全く思い出さないんですけど!!」
女「どうして蛍食べたらあかん?」
男「……食べてもいいんじゃないですかね 別に」
女「ところで 君のご両親は君がここにいることを知っているのかな?」
男「知らないですよ 今実家に帰省してますし」
女「へぇ 君は一緒に帰らなかったのかい」
男「この歳にもなって実家に帰省はなんとなく気恥ずかしくて」
女「そんなことじゃ駄目だと思うけどね」
男「先輩の両親は」
女「仕事だよ」
男「あっ! そうですか」
女「その気を遣いました感はどうかと思うな」
男「じゃあ気を遣わせない返しをしましょうよ」
PM 7:30
女「さて腹ごしらえも終わったところで」
男「ところで?」
女「映画鑑賞でもしようか 視聴覚室にあるプロジェクターでね」
男「視聴覚室で映画なんてタイタニック以来ですよ まあ3時間ぶっ続けは無理だから途中で寝ましたけど」
女「まあ普通の映画さ普通の」ガチャガチャ
ガメラ 大怪獣空中決戦
男「懐かしすぎワロタ」
女「ガメラ平成三部作の一作目だ 私が小学生の頃に上映しててね」
男「俺も好きでしたよ 子供向けとは思えないほど グロいシーンが多くて」
女「これを見るだけでも日本の特撮技術は世界に劣っていないんだけどね」
男「この頃ってモスラ3部作にゴジラ それにウルトラマンとか特撮好きには堪らない時代で」
女「でもガメラ3部作 売り上げ目標に届かなくて3部で終了したんだよね」
男「好きだったんだけどなぁ」
女「モスラ幼虫とかよく見てみると気持ち悪いからね 昔は平気だったのに」
男「キャタピー嫌いだったカスミの気持ちが今ならわかるわ」
PM 9:00
女「次は屋上にでも行こうか」
男「あぁ 普段は立ち入り禁止の屋上にも今ならいけるんですね」
女「まずは理科室に行こうか」
男「理科室?」
女「望遠鏡を持って天体観測でもしようじゃないか」
男「理科室って1階ですよね」
女「そうだが」
男「望遠鏡担いで屋上まで行くのは」
女「男の君に決まってるじゃないか」
男「」
男「重い辛いもう嫌だ」
女「アニメや漫画での学校の屋上は階段から続いているじゃないか」
男「無視ですか」
女「うちの学校ははしごなんだよね」
男「しかも手摺りが地面から2メートルぐらい離れた場所にしかないっていうね」
女「君が先に上って私が下から手渡すよ」
男「はいはい」ヨジヨジ
女「こうして見ると……良い尻をしている」
男「女の人に尻を褒められたのは初めてなんですけど 喜んでいいんですか?」
女「恥じることではないだろう」
女「到着! 望遠鏡の準備は出来たかな?」
男「……人は痛みがないと学習できない生物だと思います」
女「いきなりなんだ」
男「望遠鏡の使い方がわからない」
女「いや そんなに難しいものじゃないだろう 双眼鏡と似たような――
女「」
男「無理でしたね」
女「け 顕微鏡なら使えるし!!」
男「双眼鏡ならなんとか……」
女「……」
男「……」
女「ところで ここの屋上がアニメ漫画の屋上と違うところがまだあるんだけど 気付くかな?」スタスタ
男「いやいや 先輩危ない!!」
女「答えは鍵がかかっていて人が入れないから柵がないってところなんだよ」
男「あの 本当にそんなギリギリの場所に立ってると落ちますよ」
女「落ちたら落ちたさ……いや 本当は少しだけ落ちてみたいと思ったり」
男「おい」
女「あははっ! 冗談だよ 半分ぐらいはね」
男「そういう冗談は嫌いなんで止めてください」
女「半分は本気なんだよ」
男「…………」
女「例えば今私が死んだとして 一体何人の人が私のことを覚えてくれているのだろうか」
女「そんなことを考えたらふと死にたくなってね 少しフラフラとここに来たわけだ」
女「君は 女親議員って知ってるかな」
男「知らないですけど 名前からして……」
女「私の父だよ こんな時でも日本国民のために仕事をしてくれる誇りある父だ」
女「母はいない まあ世界的に見て片親なんて珍しくもないんだけど その親が議員なのは珍しいのかな」
女「だからかな あまり家にもいない 私は友達を作るのも下手でね いつも家に1人だった すべて私が悪いんだけど」
女「君は父の名前を知らないんだろう 事実 国民に100人以上いる議員の名前をすべて覚えている人なんていないのさ」
女「父なんて国民に名前も覚えてもらえない1人なのにね」
男「先輩は もっとお父さんと話がしたかったんですか」
女「まあね 今ではもう叶わない夢さ」
あんまり長くないのでもう2回ぐらいの投稿で終わらせます
今日はもう眠いのでおやすみなさい
乙
良さげな雰囲気だ
なんか雰囲気がいい
ガメラ4やらないんですかねぇ?
>>22
真面目な話 ガメラ平成三部作自体が目標収入に届いてなかったし 3が届いていれば直ぐにでも4の話が出てたらしいけどそれもなしに
その7年後に愛知万博に合わせて小さき勇者たちもやったけど 制作費が平成の約3倍程度あったにも関わらず 興行収入が
平成と似たりよったりという大爆死
今は特撮といえば戦隊や仮面ライダーが代表的だけど 今はそっちも収集目的があるグッズがあるからそっちで収入が取れる
だからといって嫌いってわけじゃなくて自分も好きだけど
それに昔と違って今は映画自体 そんなに見る人がいないから 怪獣物で新作なんかは難しいかと あるとしたらゴジラぐらいだろうし ハリウッドに期待で
可能性があるとすれば 来年でガメラ50周年だから 節目で新作を……規制規制で面白いものが出来るかどうかは微妙ですけど
女「父はもう少し私といる時間を作って欲しかったなと」
男「えっと あんまり気の利いたことは言えないんですけど」
女「現実はそんなものだよ ここで君から投稿制限かかるレベルの説教なんてされようものなら 私は全裸でここから飛び降りるしね」
男「それは女性を全裸で学校の屋上から突き落とす変態殺人犯の汚名を着せられるので止めてください」
女「ふむ 私は全裸なのに君は汚名を着るのか」
男「ちょっと自分でも上手いと思ったから止めてください」
女「実は私は友達がいない」
男「知ってます」
女「もし君が私と同じ学年で同じクラスだったら 良い友達になっていたと思わないかな? っていうかなんで君は1年早く生まれてないんだよ ホントマジで」
男「なんでいきなりキレるんですか? それなら先輩が1年遅く生まれていればよかったじゃないですかもー」
女「あぁそれは無理だね 私は8月生まれだから」ドヤァ
男「勝ち誇った顔止めて!!」4月生まれ
女「私はこれでも人見知りなんだが 君とは初めから普通に話せるね 不思議だ」
男「俺も結構人見知りですよ いやなんていうか……苦手なんですよね人が」
女「ほぅ どういう意味だい」
男「例えば自分の家族でもなに考えてるかわからないじゃないですか」
女「私と父の関係みたいにね はい続けて」
男「そういう風に考えると他人って自分と同じ言語を喋るだけで そこらの犬猫とそんなに変わらないんですよね」
女「……うん 君がNO,1だ」ポン
男「優しく肩に手を置くのを止めろよぉ!!」
女「でも そんな君も私とは普通に話せているわけだ」
男「似たもの同士 どこか惹かれあったのかもしれませんね」
女「ならさしずめ君はジョバンニか」
男「そうなると先輩は物語の最後に死んでしまうんですが」
女「まあそれはともかく」
男「ともかくって……」
女「学校が銀河で私がカムパネルラか」
男「銀河鉄道のカムパネルラはリア充なのに 現実ときたら」
女「うるさいよ でもまあ カムパネルラは最初から自分が最後には死んでしまうことを知っていたんだよ」
男「…………」
女「でも そんな運命だったとしても疎遠になっていた親友のジョバンニと一緒に旅が出来て本当に楽しかったんじゃないかって思うんだ」
女「人生において 伴侶でも家族でも親友でも良い そういう人が一生に1人でもいれば それは幸せなんだろうね」
女「だからこそ 私にとっては君がジョバンニなんだよ」
男「……どうも」
PM 11:00
女「さて そろそろ良い時間だし戻ろうか」
男「ちなみに望遠鏡は……」
女「君が持っていくに決まっているだろう」
男「ですよねー」
女「じゃあ私は先に保健室で待っているとしよう」
男「俺1人で行くんですねわかります」
女「……そうだ! 君の携帯のメルアドを教えてくれ」
男「えっ? このタイミングで教える意味が……もしかして怖いんじゃ」
女「まさか 登録人数一桁のアドレス帳の人数を増やしたいだけだよ 早急に」
男「これって先輩もダメージ受けてますよね まあいいですけど」ポチポチ
男「俺がジョバンニか……」スタスタ
男「生涯に1人 必要な存在とか まるでプロポーズでしょ」スタスタ
男「恐らく 本人にその気がないのが1番酷いけど」スタスタ
男「それとその話の後に俺に望遠鏡運ばせるとか 重いし」スタスタ
男「……実は先輩 恥ずかしくて1人で悶えてたりとか」スタスタ
男「ここまで独り言で男「」ばかりで男「」がゲシュタルト崩壊を……」スタスタ
男「」ポリポリ
男「これじゃ逆だな」
女「私がカムパネルラか……」スタスタ
女「自分で言っておいてなんだが 今思い出してもあれは流石に恥ずかしかったな」スタスタ
女「まるで愛の告白じゃないか 自分からこんなゲロを吐くようなセリフが吐けるなんて全く驚きだ」スタスタ
女「しかも それを聞いたジョバンニはなんともいえない顔をしてるしね」スタスタ
女「まああれでマトモな返しをされてたら私も困ったが うん」スタスタ
女「銀河鉄道の作者 宮沢賢治は偶にジョバンニとカムパネルラを混同していた 私と彼はそんな関係なのかもしれないね」スタスタ
女「……後 半日か」
次回投下ぐらいで 終わりにします
待ってる
今日は終わりまで投下 寝落ちしたら明日の朝から頑張ります
PM 12:00
男「……先輩 なにしてるんですか?」
女「布団に入りながら上布団から顔を半分だけ覗かせるテクニックだが」ヒョッコリ
男「それは素晴らしいことだと思いますけど 不意打ちでやられるとガチホラーなんで止めて下さいホントマジで」
女「君には失望したよ」ハァ
男「それよりも どうして電気つけないんですか 点けますよ」
女「なるほど 君は付ける派か?」
男「……そっちはやったことないんでわかりません」
女「最近は保健体育の授業で付け方を習わないのかい?」
男「サラッと下ネタに走るのも止めてよ」
女「……私と一緒に寝るかい?」
男「いや ベッド2つあるんで別々で寝ますよ」
女「私と一緒に寝るかい?」
男「だから……」
女「私と一緒に寝るかい?」
男「暗闇でエンドレスループは怖いんで止めてくださいって!! わかりましたよ!!」
女「それを選ぶなんてもったいない!!」
男「なにこのどちらを選んでも面倒くさい選択肢」
女「こうやってシリアスな雰囲気をブチ怖さないと 素直になれないのさ わかるだろう?」
男「1人が怖いなら怖いって言えばいいのに」ボソッ
女「なにか言ったかな? 私は難聴って設定を持っているから聞こえなかったが」
男「ナニモアリマセンヨー」
女「こうやって1つのベッドで寝ていると……」
男「フランダースの犬でも思い出しますか」
女「あれは出版されているベルギーでは当初 日本ほどの人気はなかったらしいね」
男「あっちの人たちにしたら負け犬の物語に見えたから でしたっけ」
女「一緒に死んでくれる犬がいたネロは本当に負け犬だったのかな それほどまでに愛をくれる誰かがいたのなら それはそれで勝っていると私は思うけどね」
男「少なくとも俺たちよりは上なんじゃないですか」
女「パトラッシュ 君は私が死ぬときには 一緒に死んでくれるかな」
男「わんわん!!」
女「…………」
男「…………」
女「私は今すぐ死にたい」
男「客観的に見るとバカップルの会話ですからね」
女「まだ起きてるかな」
男「結構ギリギリですけど」
女「先程の約束……違えたら許さないよ」
男「……わかってるよ カムパネルラ」
女「……ぐぅ」
男「」
男「すぅすぅ……」
女「起きろ 早く」ユッサユサ
男「むぅ なんですか……」
女「来客のようだよ」
女「数分前に校庭に車が止まって 中から人が出てきてね」
男「来客って 忘れ物でも取りに来たんじゃないですか」
女「この近くにまで来てるんだよ 杞憂だといいが 私たちがここにいることがバレると困る」
男「あぁ だからベッドから叩き落されて下に連れ込まれたんですかそうですか」ヒリヒリ
女「シッ! この近くまで来ている」
コツコツ……
男「……」
コツコツ……ピタッ
女「止まった……」
ガラッ!!
女親「女! ここにいるのか!?」
女「パパ!?」ガタッ
男「パパ……?」
男「えっ!? パパって……」
女「……ゴホン 父さん!?」
男「いや今パパって 先輩 家ではパパって呼んでるんですか?」
女「そんなことはどうでもいいじゃないか それでパパ 仕事はどうしたんだい?」
女親「お前を探してたに決まってるじゃないか!!」
女「パ……父さんがいなかったら困るんじゃ」
女親「私はお前がいなかったら困るんだ! だがまだ生きてくれていて良かった!!」ギュッ
女「パパ……」
女親「ところで 君が男くんかい」
男「そうです 始めましてパパさん」
女「君がパパにここを伝えたのかい?」
男「最近は国会議員の方もやっているTwitterで連絡させてもらいました いやこんな時間にTwitter覗いているかは賭けでしたけど」
女「君は全く お節介だな」フゥ
男「銀河鉄道の夜の最後は知ってるでしょう」
女「そうなると君がカムパネルラになるんだが」
男「ここが終点だよジョバンニ」
女「……そうだね 私はもう帰らなくちゃいけないんだろう パパ 少し外で待っていてくれるかい」
女親「わかった 後悔だけはしないようにな」
バタン
女「……フゥゥゥゥゥゥゥゥ」
男「大きな溜息ですね」
女「この際だから少し素直になろうと思ってね」
男「愛の告白でもするんですか?」
女「まあそれも考えたが」
男「考えたんだ」
女「ただ……なんだろうな……うん 涙が止まらないんだよ」ポロポロ
男「いやいや! どうして泣くんですか お父さんにも会えてよかったじゃないですか」
女「君は寂しくないのかい 私がいなくなったら君はこんな暗闇に1人 残されるんだぞ」
男「……まあ寂しいったら寂しいですけど 俺はまあ1人には慣れてますし それに……」
男「先輩と出会ってまだ半日程度ですけど でも不思議なことにどこか心が満たされるような ずっと昔に無くしたと思ってた宝物を見つけたような」
男「多分 前世は兄妹かなんかだったんじゃないですかね」
女「君は安産型だしね」
男「尻の話はもう止めて」
男「お父さんと素直に話 出来ますか?」
女「君に心配されなくてももう大丈夫さ 話したいことなら沢山あるからね」
男「実は俺 未来から来た先輩の息子 とかそんなのだったら驚きますか?」
女「もしそうだったら 私は今も未来も君を愛してやまないんだろうね」
男「だったら来世は先輩の子供になれるように今から立候補しておきます」
女「君は最後の最後まで そんな調子なんだね」スッ
男「涙を流してる子にいつもの姿を見せるしか出来ない不器用な性格なんで」
女「いや もう泣き止んだし随分と楽になったよ」
男「それはよかったです」
女「私はそろそろ行くよ……それとカムパネルラ 最後に1つ」
男「なんですか?」
女「君は日本の国会議員の名前を知らないというが せめて自分の国の総理の名前ぐらいは覚えておいて方がいいよ」
男「善処します」
バタン
AM 9:00
男「あかん 寝すぎた」ガバッ
わーわーぎゃーぎゃー
男「外もうるさいな 校庭に結構な数の車が止まってるし」
男「……屋上に行くか」スタスタ
男「あれ? 先輩からメール着てる」カチャ
男「…………」
男「……」
男「…」
男「」
男「――これはずるいなぁ」
男「銀河鉄道の夜の最後はカムパネルラが死んでジョバンニがそれを知って終わりだけど」
男「このメールを見ると少しだけ気持ちが揺らぎそうになるなぁ」
男「えっと返信は……ここ電波死んでる」
男「屋上で電波が復活すればいいけど」
男「屋上の鍵を開けてっと」ガチャ
男「誰も入って来られないように入り口になんか置いておこう」
男「見ろ! 人がまるでゴミのようだ!!」
男「……こうやって見ると 先輩が飛び降りたくなる気持ちがわかるな」
男「まあやらないけど」
男「あぁああああああああああ!! 少し横になろう」ゴロン
男「……惜しいことしたかなぁ」
男「女先輩 すっごい良い人だったのに あんな人 もう2度と出会えないんだろうな」
男「ずっと病院で暮らしてきて いつ死ぬかわからないから親にも捨てられて 先生や看護師さんたちも感情移入しないように必要以上に話しかけてくれないし」
男「せめて最後ぐらいは学校に来たいと思って抜け出してきたら先輩に会って」
男「一生で1番 充実してた時間だったなぁ」
男「…………」
男「メールでも書こう」
AM 11:59
男「あれ? メールを必死に推敲してたらこんな時間に」
男「えっと 屋上で1番高そうなのは……あの給水塔の上か」スタスタ
男「残り……5秒!?」
4
男「最後の最後なので 先輩にこのメールが届きますようにっと」
3
男「そー」
2
男「し」
1
男「ん!!」ピッ
終わり
明日もし 隕石が地球に落ちるなら 一体なにをしたいですかっていう話です
それと銀河鉄道の夜は自分が小学生の頃に1番好きだった話で その頃に丁度 自分がいたクラスで夏休みに学校に泊まろうってことになり
参加者自由にしたら来たのは自分と友達合わせて6人でしたけど
夕飯にカレーを作ったり視聴覚室でDDRをやったり 夜に学校の前にある自販機に先生に内緒でジュースを買いに行ったりと
今でも覚えている思い出を少しでも皆さんにも感じてもらえたら幸いです
1年ぶりぐらいに書きましたが また機会があればなにか書こうかと思っているので その時はまたお願いします
なんか懐かしい気分になった。
半分の月がのぼる空ってラノベ見てから銀河鉄道の夜読んだけど、心に来る話だったのは今も覚えている。
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