みほ「あれ? このトーナメント表……」(138)
みほ「う~ん……」
優花里「どうされたんですか、西住殿。トーナメント表に、何か不審な点でも?」
みほ「あ、ううん。そういう訳じゃなくって……」
優花里「大洗女子は、ちゃんと西住殿が引かれた番号の所にありますし、他も自分の記憶が確かなら、間違いは無い筈ですが……」
優花里(はっ! もしかして、黒森峰との対戦について考えておられたのでは!?)
みほ「あの、えっと……」
優花里(そうでした! 黒森峰といえば、西住殿が昨年まで通われていた学校! 西住殿が気になさるのも当然です!)
みほ「あ、秋山さん?」
優花里(それに気づかず、無神経な発言をしてしまうとは、秋山優花里、一生の不覚です……)ズーン
みほ「あの、別に深刻なことを考えていた訳じゃないから、あまり気にしなくても……」
みほ(そう、本当に大したことじゃなくて――)チラッ
┌───────┴───────┐
┌───┴───┐ ┌───┴───┐
┌─┴─┐ ┌─┴─┐ ┌─┴─┐ ┌─┴─┐
┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │
ヴ コ .黒 知 プ .ボ ア. .大. .サ マ ヨ ワ .B 聖. 青 継
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水 園 校 .付 園 ナ
産 属 女
高 学
校 院
みほ(――漫画や小説なんかだと、黒森峰とは決勝で戦う流れなんだろうな~と思っただけで……)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1372009478
みほ(それにしても……)
優花里「……」ドヨーン
みほ(なんだか気まずい……。何か、他の話題は……)
みほ「えっと……そういえば、この組み合わせだと、この前の練習試合の再選は、決勝まで持ち越しだね」
優花里「え? ……あ、はい。そうなりますね」
みほ「あの試合、みんな初めての対外試合だったけど、僅差だけどいい勝負になったよね。秋山さんも頑張ってくれたし」
優花里「私ですか!? いえいえそんな……。あれは経験者たる西住殿のおかげですよ」
みほ「そんなこと無いよ。みんな奮闘してくれたし、いい経験になったと思う。……次に戦うときは、勝てるかな」
優花里「……勿論です。今の我々は、あの試合を経験して一皮剥けました。そこに西住殿の指揮が加われば、勝利は確実です!」
みほ(あの試合を経験して――か。うん。確かにあの試合のおかげで、みんなの意気込みは変わったと思う)
みほ(本当に、あの練習試合のおかげだよ――)
――数週間前――
??「大洗女子学園? 戦車道、復活したの!? それはおめでとう!」
??「……OK! 試合はいつでも大歓迎よ!」
河嶋「会長、例の件ですが、会場の調整つきました。日曜で問題無いそうです」
会長「OKOK。んじゃ、その方向で進めといて~」
河嶋「はっ」
会長「……大会までに、やれることは全部やっとかないとね~」
訓練場
「土煙を上げるな!」
「開けた場所は、遮蔽物を利用して身を隠せ!」
「不用意に稜線を越えるな! 敵の的になるぞ!」
「川岸は越えられそうかどうかちゃんと調べろ!」
「桃ちゃんノリノリだね~」
華「以前乗ったときは気にならなかったのですが、やはり長時間乗ったままだと、車内の温度が大変な事になりますね」
沙織「本当だよ~。クーラーの付いた戦車とか無いの~?」
優花里「一応、近代の戦車なら冷却装置は搭載されていますが、残念ながら乗員用ではなく、電子装置を冷やすための物ですね」
麻子「赤道直下でもクーラー無しなのか? 無理だろそれは」
優花里「ええっと……そうですね。地域によってはそういうオプションもあるかもしれませんね」
沙織「ふ~ん。……そういえば、さっき言ってた稜線ってなに~?」
みほ「それは――――」
河嶋「今日の訓練、ご苦労であった」
全員「お疲れ様でした~」
河嶋「えー、急ではあるが、今度の日曜日、練習試合を行うことになった。日曜は、学校へ朝6時に集合!」
麻子「ろ、6時!?」
沙織「麻子は朝が弱いんだよね……。起こしに行ってあげるから、ちゃんと出なさいよ?」
麻子「うぅ……」
生徒会室
河嶋「これより作戦会議を行う!」
磯部・カエサル・澤「「「はい!」」」
河嶋「相手は経験豊富で、訓練も積んでいる。対して我々は、経験者が西住一人と心許ない。」
河嶋「そこで我々は、地形を利用した集中砲火を行う。作戦区域はこの場所だ!」
/ ̄ ̄\
_/ /| .|__
. | .|
. | .|
 ̄\ \| .| ̄ ̄
\__/
河嶋「1両が囮となって、こちらが有利になるキルゾーンへ相手を引きずり込み、高低差を利用して残りがこれを叩く!」
/ ̄ ̄\ ■――敵
_/◇/| .|________
. □ | .|※※ ←■ ■
. □ | .|※※ ←■ ■
 ̄\◇\| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\__/ ※――キルゾーン
磯部・カエサル・澤「「「おぉ……!」」」ザワザワ
みほ「……」
会長「西住ちゃ~ん。どうかした? 気になる事あったら言ってみ?」
みほ「……相手からすれば、当然こちらが囮を使ってくる事は想定すると思います。裏をかかれて逆包囲される可能性があるので……」
磯部・カエサル・澤「「「確かに……!」」」
河嶋「私の作戦に口を挿むな! そんなこと言うなら、お前が隊長をやれ!」
みほ「えっ!? す、すみません……」
会長「まあまあ。でも、それ良いかもね~。西住ちゃんがうちのチームの指揮とって!」
みほ「ええっ!」
会長「頑張ってよ~。勝ったら素晴らしい賞品あげるから!」
副会長「えっ? なんですか?」
会長「なんと、干し芋三日分!」
みほ「……え、えっと、負けた場合は何かあるんですか?」
会長「ん~。大納涼祭りで、あんこう踊りを踊ってもらおうかな~」
「ええっ……!」
「あんな踊りを!?」
みほ(ど、どんな踊りなんだろう)
みほ「――ってことになったんだけど」
沙織「あんこう踊り!? あんなの踊っちゃったら、もうお嫁にいけないよ~」
優花里「絶対ネットにアップされて、全国的な晒し者になってしまいます……」
華「一生言われますよね……」
みほ「そんなにあんまりな踊りなの……?」
――翌日――
みほ「聞いてはいたけど、冷泉さんってホントに朝弱いんだね」
優花里「皆無事にそろってよかったです!」
華「ご気分はもうよろしいのですか?」
麻子「ああ。しかし、街中で主砲を撃つのはやり過ぎじゃないか?」
沙織「あれくらいしないと絶対起きれなかったでしょ!」
麻子「い、いや……そんな事は……」
優花里「あ。対戦相手が来ましたよ!」
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=Y52YHeXmKwc
優花里「さすがは強豪校だけあって、見事な隊列ですね」
沙織「私たちはどれを倒せばいいの?」
華「この試合のルールは殲滅戦だったはずなので、全車両を撃破する必要があったのでは……」
沙織「あれ? そうだっけ」
麻子「おい。そろそろ始まるぞ」
河嶋「本日は、急な申込みにもかかわらず、試合を受けて頂き感謝する」
??「No problem! ……それにしても、すごい戦車だね」
??「ま、私たちはどんな相手でもWelcomだから。正々堂々、フェアプレイでいきましょう!」
華「あの方が、あちらの隊長ですか……」
優花里「ええ。中央にいるのが向こうの隊長の――」
審判「それでは、サンダース大学付属高校 対 大洗女子学園の試合を始める。一同、礼!」
サンダース大付属 対 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
M4中戦車 38(t)戦車
M4中戦車 八九式中戦車
M4中戦車 M3中戦車
シャーマン・ファイアフライ Ⅲ号突撃砲
沙織「なんだかフランクそうな隊長だったね」
優花里「サンダース大付属はワイルドというかおおらかというか、全体的にそういう校風ですから」
麻子「しかし、よく対戦校の隊長の名前を知ってたな」
優花里「インタビュー記事を読みましたから!」
華「……そろそろ時間ですね」
沙織「え~? 緊張するな~」
河嶋「用意はいいか、隊長?」
みほ「あ、はい!」
河嶋「全ては貴様にかかっている。しっかり頼むぞ」
みほ「……」ゴクッ
「試合開始!」
優花里「いよいよ始まりましたね!」
みほ「うん」
M3「あの~、それで、どうするんでしたっけ?」
みほ「まず、我々Ⅳ号が偵察に向かいますので、各チームは100mほど前進した所で待機していてください」
各チーム「「「「了解!」」」」
ケイ「全車前進!」
みほ「M4シャーマン4両、シャーマンファイアフライ1両前進中」
優花里「我々は、このまま囮役として、敵を誘い込むんでしたね! 他の車両はこれから布陣するところですか?」
みほ「うん。――各チーム、当初の予定通りに配置についてください」
各チーム「「「「了解!」」」」
アリサ「……あの戦車、見ました?」
ナオミ「……」
ケイ「あー、うん。カラフルだったね」
アリサ「一体、何を考えてあんな隠れる気が全くない塗装にしたんでしょうね?」
ケイ「ウチでも、あんな塗装をしたことはあったけどね。……標的用だったけど」
アリサ「呑気なものね。これなら、アレを持ってこなくて正解だったわ……」
ケイ「アレ? 何の話?」
アリサ「い、いえ、こちらの話で……。それより、一つアイデアがあるんですが――」
みほ「敵、前方より接近中。砲撃準備」
優花里「装填完了!」
みほ「……撃て!」ドーーン!
ケイ「仕掛けてきたわね!」
アリサ「敵は1両だけ……。隊長、先程のプランを実行しましょう」
華「すみません。外してしまいました……」
みほ「大丈夫。目的は撃破じゃないから。このまま後退して、待ち伏せ地点へ!」
ドーーン! ドドーーン!
みほ(向こうはしっかり喰いついてきた。敵の砲火は思ったより激しくないから、このまま無事にポイントまで着けそう)
みほ(だけど、何か違和感が……)
沙織「みぽりん危ないって! そんなに身を乗り出して、当たったらどうするの!?」
みほ「え? ああ、行進間射撃なら滅多に当たることはないし、こうしていた方が状況が分かりやすいから……」
沙織「でも、もしもの事があったら……」
みほ「心配してくれてありがとうね。じゃあ、お言葉に甘えて……」
ナオミ(あいつらが向かってる方向、アリサの読み通りだな。なら、作戦通りに……)
みほ「Ⅳ号、敵の戦車を引き付けつつ、待機地点にあと3分で到着します」
河嶋「Ⅳ号が戻ってきたぞ! 全員戦車に乗り込め!」
/ ̄ ̄\
_/◇/| .|____________
. □ | .| ←Ⅳ号
. □ | .| ←■
 ̄\◇\| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\__/
みほ「あと600mで、敵車両射程内です!」
みほ(ここまでは順調に進んでる。敵の様子は……)
河嶋「き、来た! 撃て撃てー!」
みほ「えっ?」
ドドドーーン!
みほ「前から!? ま、待って下さーい!」
沙織「味方を撃ってどうすんのよ~!」
ナオミ(同士討ちか? まあいい。それに、こっちは安直な囮作戦に素直に引っかかってやるほど、お人よしじゃない――)
みほ(さっきは驚いたけど、今のところ作戦に乱れはない。あとはどれだけ敵を削れるか……)
みほ「次に来る戦車が敵の車両です。射程内に入ったら――」
ドーーン!
河嶋・Ⅲ突・M3「「「な、何だ!?」」」
沙織「ど、どうなったの!? 敵の戦車はまだ見えてないのに……」
みほ「これは……まさか!」
優花里「この音は、ファイアフライの発砲音……。西住殿、これはもしや……?」
みほ「うん……。私たちは、ファイアフライからアウトレンジ攻撃を受けてる」
沙織「ア、アウトレイジ?」
優花里「アウトレンジ……射程圏外からの攻撃です。シャーマン ファイアフライの有効射程距離は、こちらの戦車より長い3000m。
つまり、向こうはこちらの射程圏外から、一方的に攻撃できるんです」
沙織「え~っ! 何それズルくない!?」
優花里「ただ、こちらの方が高所にありますから、向こうは仰角が取れない――上に向けて撃つにも限界がある筈なのですが……」
Ⅲ突「あいつ、弾痕を利用して、車体を傾けてる!?」
優花里「なっ!? そんなうまくいくかも怪しい戦法を!?」
沙織「何? 結局、どうすればいいの!?」
みほ(……この状況、確かに一方的に撃たれているけど、まだやり様はある。
ファイアフライから隠れた位置で待てば、向こうはこちらを攻撃出来る位置まで移動しなければならない。
その隙をつけば、まだこちらにも勝ち目はある!)
みほ「み、皆さん落ち着いて! 敵の攻撃の届かない位置に――」
みほ「――あっ! ま、待って!」
◆ ◆ ◆
――この時、M3は集団の最右翼に位置していた。
そこはキルゾーンに入った敵を攻撃するには問題ない位置だった。
しかし、回廊の奥に陣取るファイアフライはその位置からは見えず、その為に状況の把握が難しかった。
□│ │ |
│ │ |
□│ │ |__________
│段│ ・・
□│ │ ・・ ファイアフライ
│差│ ・・
□│ │・・ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
│・・│ |
■│ │ |
この位置はファイアフライの射線の外であるため、ファイアフライから撃たれることもなく、
M3の乗員が理解していたのは“自分達からは見えない位置から、敵が味方を撃っている”という事だけであった。
そして、そこから考え付いたのは“敵が見える場所へ出て自分達も反撃しよう”という単純な発想だった。
◆ ◆ ◆
M3「見えた! あれがさっきから撃ってきてる戦車ね!」
みほ(M3にはそのまま隠れててほしかったけど……って、ああっ! そこはダメ!)
みほ「待って! そこは出過ぎて――」
◆ ◆ ◆
沙織「――そういえば、さっき言ってた稜線ってなに~?」
みほ「平たく言うと、山と空との境界線かな。ここを越えるときは、非常に目立つので注意が必要なの」
稜線 ━■
↓ ━■ (□□)
/ ̄\(□□) / ̄ ̄ ̄
みほ「左の図は稜線を盾に、うまく隠れているけど、右の図は稜線の上に出てしまい、車両全体が身をさらしているため危険な状態なの」
みほ「だから、先程の言葉は、不用心に物陰から顔を出すなという事だよ」
沙織「へ~」
◆ ◆ ◆
ナオミ(あのピンクの戦車、完全に露出してる……いけるか?)
ドーーン! ガキン!
M3「撃たれた!」「当たった!」「どうしよう!」「やられた!」「逃げなきゃ!」
みほ「落ち着いて! 命中したけど撃破判定は出てないから、まだ――」
M3「もうやだ!」「逃げるの?」「そうだ、逃げよう!」「もう無理!」「脱出!」
みほ「待って! 逃げちゃダメだってば!」
ナオミ(動きが止まった。次で決める!)
ドーーン! パタッ
審判「M3中戦車、走行不能!」
サンダース大付属 5 対 4 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
M4中戦車 38(t)戦車
M4中戦車 八九式中戦車
M4中戦車 M3中戦車×
シャーマン・ファイアフライ Ⅲ号突撃砲
今日はここまでです。続きは2週間以内にはなんとか……
力作だ…
これは期待!
期待してる
ほぉ、期待する
本格的戦車道SSは俺の知る限り3作目
期待する
がんばれ
と言うかトーナメント1回戦が楽しみすぎるぜ
>>21
ミリオタの個人サイトで結構あったりする
ミリオタ以外には薦められないけど
おい
なんだよ
まだか
二週間くらいまてやアホ
戦車戦のSSって絶対難しいって
だから気長に待とうぜ
皆様、大変お待たせしました。
結局2週間目一杯使ってしまいましたが、これよりサンダース大付属戦後半を投下します
みほ(……今のはまさか、M3が!?)
みほ「武部さん、各車状況を確認――」
河嶋「撃て撃て撃てー! もっと撃てー! 次々撃てー! 見えるものすべて撃てー!」
みほ「えっ!? い、今は射撃を一時中断して、敵の主砲の届かない位置に退避してください!」
Ⅲ突「何!? どっちだ!」
八九式「コーチと監督、どちらの指示に従うべきなの!?」
ナオミ(よし。ピンクの戦車は仕留めた。次は旗の付いた赤い――)
ナオミ(いや、あれは露出部が少ない。それよりも、あの光って目立つ車両の方を……)
河嶋「もっと撃てー! 次々撃てー! 見える物すべて撃てー!」
副会長「桃ちゃん、あの戦車、こっちを狙ってない?」
河嶋「な、何!? た、退避ー!」
Ⅲ突「敵戦車、また発砲!」
ドーーン!
ナオミ(今のは……外したか? こちらからは見えなくなったが……)
ナオミ(まあいい。こちらはこちらの役目を果たすまでだ)
沙織「えっと、状況の確認だったよね。――八九式、どうですか?」
八九式「何とか大丈夫です!」
沙織「Ⅲ突は――」
Ⅲ突「言うに及ばず!」
沙織「M3……」
M3「」
沙織「応答なし……。38(t)!」
副会長「あれっ……あれれっ?」
会長「あ~。外れちゃったねー、履帯。38(t)は外れやすいからね~」
河嶋「無事な車両はとことん撃ち返せー!」
みほ(M3はおそらく撃破、38(t)は移動不能……)
みほ(数の上ではこちらが不利。だけど、向こうもファイアフライ以外は近づいてこないと有効打にはならないはず……)
みほ(……待って。向こうにファイアフライは1両だけだった。他の4両を、ただ遊ばせておくだけにするの……?)
みほ(これじゃファイアフライの射撃訓練で、他の車両の士気を維持できるかは怪しい。でも、ここからじゃ様子が見えないし……)
みほ「敵の他の車両はどうなってますか!」
Ⅲ突「シャーマンは1両が散発的に撃ってるだけで、他は隠れているのか姿が見えない!」
みほ(姿が見えない……? 撃ってる1両は目くらましのためだとして、他の3両は……!?)
みほ「まさか……! 秋山さん、地図を!」
ナオミ「こちらファイアフライ。敵は完全に引き付けた」
ケイ「OK! それじゃもう少しの間、足止めよろしくね!」
ケイ「アリサ! あなたのプラン通りじゃない! やるわね!」
アリサ「ええ。私たちはこのまま急ぎましょう。そうすれば……」
沙織「挿み撃ち?」
華「というと……この道からこう来るという事ですか?」
優花里「なるほど、わかりました! ファイアフライがあんな無理な射撃を行ったのは……!」
みほ「うん。向こうは私たちを撃破する必要はなかった。ただここに釘付けにしておくだけでよかった」
沙織「じゃああれは……」
ケイ「向こうが囮を使ってくるなら、こっちも囮で勝負よ!」
ナオミ「迂回に時間がかかるけど、このままいけば……」
ケイ「早くからこのプランを練ってたおかげで、向こうが気付く前にここまで来れたわ!」
ケイ「でも、他にも待ち伏せが出来そうな所はあるのに、なんであそこが敵の待ち伏せ地点だってわかったわけ?」
アリサ「……女の勘です」
ケイ「アハハ! そりゃ頼もしい!」
アリサ「…………」
アリサ(フフフ。順調ね)
アリサ(GEがある限り、負けはない。情報を制する者が、戦いを制するのよ!)
みほ(この状態で挟撃を受けたら、こちらの勝ち目は薄い。だとしたら……)
八九式「私たちどうしたら!?」
Ⅲ突「隊長殿、指示を!」
河嶋「撃って撃って撃ちまくれーー!」
みほ「このままいたら、やられるだけ……」
華「隊長は西住さんです」
沙織「私たち、みほの言うとおりにする!」
麻子「どこへだって行ってやる」
優花里「西住殿、命令してください!」
みほ(みんな……!)
みほ「Ⅲ突、八九式は私たちの後についてきてください。移動します!」
Ⅲ突・八九式「了解!」
河嶋「なに! 許さんぞ!」
みほ(おそらく向こうはこの道から来る。だったら……)
みほ「冷泉さん、このまま市街地に!」
麻子「わかった。飛ばすぞ」
アリサ(この先のT字路を曲がれば、敵はすぐそこね)
アリサ(念のため、もう一度確認を……)
アリサ(! これは――!)
アリサ「ファイアフライ、敵の様子は!?」
ナオミ「さっきから姿を現さない。隠れているのか――」
アリサ「気付かれた! 戦闘用意!」
ケイ「What!? ……ファイアフライ、敵と距離を詰めて。少し早いけど、私たちでカバーできるわ!」
アリサ(こちらの意図に気づいたなら、敵は市街地に抜けるはず。だとしたら、T字路を――)
アリサ「! 見えた! 主砲発射!」ドーーン!
みほ「発砲音……やっぱりこちらから来てた。各車被害はありませんか?」
アリサ「……外したか。このまま追撃する! ファイアフライもこちらに合流を!」
アリサ(市街戦か……隠れてまた待ち伏せでもするつもり? でも、私にはあれがある)
アリサ(無線傍受器――M4A1に取り付けたあれは、大会用に調整しているから持って来れなかった)
アリサ(だけど、あれは向こうが連絡なしの自己判断で隠れられたら、こちらには位置がわからない)
アリサ(でも、テストもかねて代わりに持ってきたあれなら……)
アリサ(G・アース。ラジコンヘリに取り付けたカメラからの俯瞰写真なら、どこに隠れたか一発でわかる!)
アリサ(500m上空からの撮影だから、お世辞にも精密画像とは言えないけど、相手があんな目立つ配色だから見つけるのは難しくない)
アリサ(……ちなみに命名は某ロボット漫画の機体名からとった。他意はないわ)
アリサ(逃がしてしまったとはいえ、これがあれば依然私たちの勝利は揺るぎない!)
アリサ(フフ……)
アリサ「フフフ……」
アリサ「アーッハッハッh――」
Ⅲ突「――こちらⅢ突、被害なし」
八九式「八九式、被害はありませんが……」
沙織「よかった。無事だって!」
麻子「T字路は一瞬で通過したからな。まぐれ当たりでもしない限り、平気だろ」
華「ですが、八九式は何かあったような口ぶりでしたが」
優花里「……あっ! 西住殿、八九式は我々より速度が――」
みほ「うん。でも、ここは見通しがいいから、こちらを見失うことは無いはず」
八九式「はい! 多少遅れてはいますが、隊長の姿はしっかり――」ブツン
ガッシャーーーン!
みほ「……八九式? 八九式、無事ですか!?」
沙織「応答ないよ! どうしたんだろ!」
華「後方から、何か嫌な音が聞こえたような……」
優花里「まさか……!?」
ケイ「Jejus! アリサ、大丈夫!?」
八九式「……わ、私たちは何とか無事ですが、戦車は……」
アリサ「も、もう1両……いた……だと……」ガクッ
パタッ パタッ
サンダース大付属 4 対 3 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
M4中戦車 38(t)戦車
×M4中戦車 八九式中戦車×
M4中戦車 M3中戦車×
シャーマン・ファイアフライ Ⅲ号突撃砲
華「出会い頭の事故!? それで、乗っていた方は無事なんでしょうか」
沙織「うん……みんな、大きな怪我はないみたい」
優花里「よ、よかったです~!」
みほ「…………」ドサッ
優花里「に、西住殿!?」
沙織「ちょっとみぽりん大丈夫なの!?」
みほ「……無事……なんだね?」
優花里(……あっ。そういえば、去年の決勝戦でも事故が……)
みほ「…………」
優花里(西住殿……)
八九式「――こちら八九式、走行不能! すみません! あとはよろしくお願いします!」
みほ「……! は、はい!」
沙織「さ、さすがバレー部、根性というか……」
優花里「……西住殿?」
みほ「……お願いされちゃったね。頑張らないと!」
優花里「は、はい!」
M4(アリサ車)「……車長失神、他の乗員は無事です」
ケイ「……OK。大事にならなくってよかったわ」
ケイ「…………」
ケイ「……みんな! 気持ちを切り替えていくわ! アリサの弔い合戦よ!」
「「おおーーっ!」」
M4(アリサ車)「……あ、あの、車長は失神しただけで……」
ナオミ「……1両走行不能? ……わかった。こちらもすぐに合流する」
ナオミ「……バックアップのM4と共に、このまま前進」
ナオミ「…………アリサがやられたか……」
ナオミ「…………」
ナオミ(罠からは逃がしたが、こちらの方が数では優位)
ナオミ(……見つけ次第、仕留める)
河嶋「私を忘れるな!!」
ナオミ「……!?」
河嶋「発射!」
ドーーン!
副会長「……桃ちゃん、ここで外す?」
ナオミ「……38(t)。生きていたのか!」
ナオミ(私たちが横を通り過ぎるのを待っての攻撃とは、なかなか度胸がある。だが――)
ナオミ「砲塔回せ! 敵は後ろだ!」
M4「了解!」
河嶋「あ、あわわわわ……」
会長「河嶋ァ! 再装填!」
河嶋「は! はい!!」
ナオミ(こちらが撃つのが早いか、向こうが撃つのが早いか……)
ナオミ(間に合うか、な――)
ドドーーン! ドーーン!
パタッ パタッ
ナオミ(……やられたか)
サンダース大付属 3 対 2 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
M4中戦車 38(t)戦車×
×M4中戦車 八九式中戦車×
×M4中戦車 M3中戦車×
会長「西住ちゃ~ん、1両撃破したけどこっちもやられちゃった。後よろしくね~」
優花里「……ということは、2対3! 僅差ですね!」
みほ「まだ、逆転のチャンスは残ってます! 市街地に入ったら、敵の隙をついて1両ずつ各個撃破を狙っていきましょう!」
Ⅲ突「了解!」
ナオミ「――こちらファイアフライ。1両撃破したが、こちらも随行のM4をやられた」
ケイ「……OK。こちらに合流して」
ケイ「…………」
ケイ「It's exciting! なかなかやるじゃない!」
ケイ「市街地に入るわ! 各車、警戒を厳に!」
Ⅲ突「…………」
Ⅲ突「フッフッフ」
Ⅲ突「Ⅲ突の売りは、無砲塔が故の車高の低さ!」
Ⅲ突「アンブッシュには最適の戦車!」
Ⅲ突「さらに大洗は我らの庭も同然!」
Ⅲ突「この店は既に廃業してて、1階は車庫状態になっていることも百も承知!」
Ⅲ突「こちらに気づかない敵をシャッター越しに――」
M4「…………」
Ⅲ突「――横合いから殴りつける!」ドーーン!
M4「……!」
ドカーーン! パタッ
サンダース大付属 2 対 2 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
×M4中戦車 38(t)戦車×
×M4中戦車 八九式中戦車×
×M4中戦車 M3中戦車×
Ⅲ突「ハッハッハ!」
Ⅲ突「こちらⅢ突、1両撃破!」
Ⅲ突「無砲塔最高! 突撃砲万歳!」
ナオミ「……見つけた」
Ⅲ突「何!? 敵が後ろに!」
Ⅲ突「発砲音で気付かれたか!?」
Ⅲ突「いかん! 逃げろ!」
Ⅲ突「そこを右に!」
ナオミ「……ちょこまかと逃げ回って」
Ⅲ突「くっ! 振り切れない!」
Ⅲ突「こちらから攻撃は――」
Ⅲ突「無砲塔だから、後ろに攻撃はできん!」
Ⅲ突「何てことだ!」
Ⅲ突「こんな時にはまるで役に立たないじゃないか!」
Ⅲ突「無念……!」
ナオミ「…………」
ナオミ「……!」ドーーン!
ドカーーン! パタッ
ナオミ「……よし!」
サンダース大付属 2 対 1 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
×M4中戦車 38(t)戦車×
×M4中戦車 八九式中戦車×
×M4中戦車 M3中戦車×
Ⅲ突「Ⅲ突、走行不能!」
ナオミ「……あと1両」
ナオミ「残っているのは……」
ナオミ「…………?」
ナオミ「……! 砲塔旋回!」
みほ「Ⅲ突の救援には間に合わなかったけど……!」
優花里「市街地戦では長射程なんて飾りです!」
ナオミ(くっ。今度は間に合うか……?)
華「……一発で、十分です!」ドーーン!
ナオミ(……これは、一歩遅かったか)
ドカーーン! パタッ
サンダース大付属 1 対 1 大洗女子学園
M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
×M4中戦車 38(t)戦車×
×M4中戦車 八九式中戦車×
×M4中戦車 M3中戦車×
沙織「やった~! すごいよ華!」
優花里「ファイアフライ撃破! これでどちらも最後の1両ですね!」
華「残りの1両はどこに……」
ケイ「…………」
麻子「……おい。前」
みほ「あれは……!」
沙織「え!? 嘘~!」
優花里「正面にシャーマン!?」
ケイ「……フッ」
みほ「……まっすぐこっちに向かって来てる」
麻子「ちょっと遠いぞ。路地行く?」
みほ(一番近い路地に入るとしても、ギリギリでM4の射程圏内に入る……?)
みほ「いえ、ここで決着つけます!」
沙織「うわ、こっちも向こうも真正面から向かっていくって……」
華「まるで西部劇の決闘……!」
みほ「そのまま突撃してください――!」
ドドーーン!
パタッ
「サンダース大学付属高校チーム、全車走行不能。よって、大洗女子学園の勝利!」
サンダース大付属 0 対 1 大洗女子学園
×M4中戦車 Ⅳ号戦車D型
×M4中戦車 38(t)戦車×
×M4中戦車 八九式中戦車×
×M4中戦車 M3中戦車×
――試合後――
麻子「…………」
華「…………」
沙織「勝った~!」
優花里「シャーマン相手に勝てるなんて……!」
みほ「……ふふっ」
ケイ「――あなたがキャプテン?」
みほ「え? ――あ、はい!」
ケイ「……Exciting! こんな試合ができるとは思わなかったわ!」ガバッ
みほ「……!!?!???」
沙織「い、いきなり抱きついた~~!?」
優花里「お、おお……!」
華「あら~」
麻子「……ハグだろ」
ケイ「なかなかトリッキーなプレイだったわ」サッ
みほ「……はっ! あ、い、いいえ。あの逆包囲こそ見事でした」
ケイ「アハハ……。でも、いち早くそれに気づいて勝利を手にしたのはあなたたちよ」スッ
みほ「あっ……! ありがとうございます!」ガシッ
ケイ「フフッ。――そうだ、まだ名前を聞いてなかったわね。私はケイ。あなたは?」
みほ「……西住、みほです」
ケイ(西住? う~ん……)
ケイ「みほ。いい名前ね! ウチにはいつでも遊びに来てね、みほ。ウチはいつでもwelcomeだからね!」
みほ「は、はい!」
ケイ「それじゃ、今度は公式戦で会いましょう! じゃあね~」
沙織「ホントにフランクな人だったね~」
優花里「予想以上でした! しかし、最後のあの突撃からの捻りこみは、確かにトリッキーでしたね」
みほ「あれは向こうにも読まれてた気がするけど……。それに、装甲の厚い相手だったらどうなったかわからないよ」
華「……あら、角谷先輩?」
会長「いや~。見事に勝ったね!」
会長「約束の干し芋3日分は艦に用意してあるよ。戻ったら渡すから」
沙織「ほ、干し芋?」
麻子「それより、遅刻3日免除の方が……」
会長「それじゃ、あとは自由時間だから! 出航までには戻んなきゃダメだよ~」
会長「あ、せっかくだから、あんこう踊りでも見ていったら~?」
みほ「あんこう踊り……」
沙織「気になるんだったら、見に行こうか?」
みほ「そ、想像以上だった……!」
優花里「あの踊りが回避できたのも、西住殿のおかげです!」
みほ「あ、あはは……」
沙織「まだ自由時間はたくさんあるよ! 次はどこ行く?」
華「でしたら――――」
そど子「出航ギリギリよ!」
麻子「すまんな、そど子」
そど子「その名前で呼ばないで!」
みほ「……あれ? 1年生のみんな……」
澤「西住隊長、戦車を放り出して逃げてすみませんでした!」
「「「「すみませんでした!」」」」
山郷「先輩たち、カッコよかったです!」
宇津木「すぐ負けちゃうと思ってたのに……」
大野「私たちも、次はがんばります!」
坂口「絶対がんばります!」
みほ「みんな……」
会長「これからは、作戦は西住ちゃんに任せるよ」
河嶋「えっ!」
会長「んでこれ。干し芋3日分!」
沙織「うわ、ホントに用意してたんだ……」
華「あら、これで3日分ですか?」
会長「公式戦で優勝したら、なんと干し芋1年分用意しちゃうよ~」
会長「サンダース大付属との再戦もあるし、公式戦も、負けられないね~」
みほ「はい。次も勝てるよう頑張ります!」
沙織「公式戦? そういえば、サンダースの隊長もそんな事……」
優花里「ええ。戦車道の公式大会です!」
――抽選会場――
「大洗女子学園、8番!」
優花里「1回戦はアンツィオ高校……」
沙織「それって強いの?」
優花里「ノリと勢いがあって、調子づくと手強いです」
沙織「えぇ~っ!? 大丈夫!?」
副会長「2回戦は、順当にいけば去年の優勝校ですね」
河嶋「どんなことがあっても負けられない……。負けたら我々は……!」
みほ(……うん。思い返してみても、本当にいい試合だった)
みほ(やっぱり、サンダース大付属と再戦を果たすまで、負けたくない……!)
本日の投下は以上です。次回も2週間以内に投下したいと思います。
……すみません。遅くなりそうでしたら、早めに連絡入れますので……。
足早に思うところもあったが乙
まあスレ放置さえなかったら満足ですよ
ジーザス!
練習戦で終わると思っていたから続くの嬉しい
冒頭の文章から負け試合だと勝手に思ってたから勝っちゃって驚きました(小並感
今読み返したらいい試合とか僅差とかは書いてるけど、勝敗は書いてなかったんだね
次も気長に待ってるぜよ
乙!
ついにアンチョビ出てくるか?
次回楽しみです
やったー一足先にアンチョビ戦が見れるぞ
撃破表? が整っていて見やすくていい!
でも車両が多くなってくると大変そう…
20両とか大丈夫?
乙!
哀れなアンチョビに魂の救済を・・・・。
乙!
哀れなアンチョビに魂の救済を・・・・。
プラウダ戦はどうやって士気を高めるんでしょうねぇ…
プラウダ戦はどうするのか楽しみではある
去年の優勝校と準優勝校が一緒のブロックって凄い偏りだよな
ごめんなさい。期限に間に合いそうにないです。
期待されていた方には申し訳ないのですが、もう少しお待ちいただけると幸いです。
いつまでも待つよ。
トリップつけようぜ
遅れましたが投下します。
>>74
心配させてごめん
――連絡船――
みほ「…………」
優花里(西住殿、先程から一人で海を眺めていますが、大丈夫でしょうか)
優花里(やはり、お姉さんとの事で気を落としているのでは? でしたらここは……)
みほ「……秋山さん?」
優花里「寒くないですか?」
みほ「あっ、うん。大丈夫」
優花里「全国大会、出場できるだけで私は嬉しいです」
優花里「他の高校の試合も見られるし、大切なのはベストを尽くす事です。たとえ負けたとしても――」
会長「それじゃ困るんだよね~」
優花里「え?」
河嶋「絶対に勝て。我々はどうしても勝たなくてはいけないんだ」
副会長「そうなんです。だって負けたら――」
会長「しーっ!」
副会長「あっ!」
優花里(負けたら――? 負けたら何があるんでしょうか……)
会長「まあとにかく! すべては西住ちゃんの肩にかかってるんだから」
会長「もし負けたら何やってもらおうかな~。考えとくね~。じゃ!」
優花里(行ってしまった……。いかにも意味深な台詞でしたが、一体……?)
みほ「…………」
優花里「……あっ! 大丈夫ですよ! 頑張りましょう、西住殿!」
みほ「……アンツィオ高校は情報が少ない。数で負けている現状、せめてチームの編成が分かれば戦いようもあるんだけど……」
優花里(チームの編成……。それさえあれば、西住殿も……!)
優花里(大会記録が少ないとなると、直接偵察に行くのが確実ですかね?)
優花里(……ここは、不肖秋山優花里が、西住殿をお助けせねば!)
待ってました!
――コンテナ船――
優花里「……ふぅ」
優花里(何とかうまく乗りこめました)
優花里(このアンツィオ高校行きの定期便、ちょうどいいタイミングで便が出ていて助かりました)
優花里(アンツィオ高校の制服も、このコンビニの制服も何とか入手できましたし、後はうまくばれないように気を付ければ……)
優花里(コンビニの定期船が着いたら、このまま店員を装ってアンツィオ高校に潜入)
優花里(校内で制服に着替えたら、情報収集です!)
優花里「――よし! 待っててください、西住殿!」
船員「ん? 今、向こうから声が聞こえたような……」
優花里(!!!)
船員「……気のせいか。こんな所に来る用事なんて無いしな」
優花里(思わず声が出てしまいました。これからは気を付けないと……)
――アンツィオ高校――
優花里(無事潜入成功です!)
優花里(アンツィオ高校の制服に着替えましたし、よほど目立つ行動をとらなければ、ばれることもないはずです)
優花里「えっと、戦車ハンガーはたしかあっちだから……」キョロキョロ
生徒「ねぇキミ、どうしたの?」
優花里「えぇっ!? あ、えっと……」
優花里(気付かれた!? いや、ここは堂々としていれば……)
優花里「いやぁ、別に大したことでは――」
生徒「もしかして、道に迷ったの?」
生徒「だったら案内してあげるよ。どこに行きたいの?」
優花里「あ、ありがとうございます。でも、大体の方角はわかりますし、自分一人でも――」
生徒「いいからいいから。そんなこと気にしないでいいって!」
生徒「さ、行こう行こう! 案内があった方が早いって!」
優花里(お、思った以上に押しが強い! そういえば、ノリと勢いのある高校だって言われてましたっけ……)
優花里(これ以上断るとかえって不自然ですし、ここは素直に従いましょう)
優花里「では、よろしくお願いします」
優花里「ここがハンガーですか!」
優花里「あれはセモベンテM40自走砲、あっちはM13/40中戦車!」
優花里「P40重戦車に、L3軽戦車まであります! ちっちゃい!」
生徒「せ、戦車が好きなんだね」
優花里「ええ! それはもう!」
優花里「あっ! 一回戦、頑張ってくださ~い!」
生徒「はは……。で、ブリーフィングルームだったらこっちだよ」
優花里「あ、はい!」
優花里(……ここまで案内してもらったのは助かりましたが、このままだと目立ってしまいますね)
優花里(そろそろこのあたりで一人にならないと……)
生徒「この部屋だよ。さ、入って。今灯りを点けるから」
優花里「はい。ありがとうございました。それではどうも――」
優花里(――あれ?)
優花里「あ、あの~」
優花里「この部屋、ブリーフィングルームにしては狭いような……」
生徒「ああ、それはね」
生徒「ブリーフィングルームだと、ドアが沢山あるでしょ?」バタン ガチャリ
優花里「そ、それはどういう意味で……」
優花里(あれ? ガチャリ?)
優花里「あの、もしかして、鍵、掛けました?」
生徒「ん? ああ、大丈夫だよ」
生徒「乱暴な事をするつもりはないから」
優花里(こ、これは……)
優花里(私の事がばれてた!)
優花里(ドアが一つしかない部屋に誘い込んだのは、私を逃がさないようにするため!?)
優花里(乱暴しないって言ったけど、取り調べはそんな優しいとは思えないし……)
優花里(いつから私がスパイだと気付いていた? まさか、最初に声をかけた時から!?)
生徒「ああ、落ち着いて。そんなに心配しなくていいよ」
生徒「まずは、互いに分かり合う事から始めよう」
優花里(し、氏名、階級、生年月日、認識番号しか言いませんよ!)
優花里(……あっ! でも、スパイには捕虜資格がないんでしたっけ!)
優花里(ど、どうしよう。こんなことでは……)
優花里(西住殿……!)
アンチョビ「――ん? お前ら、ここで何をしている?」ガチャリ
生徒「!?」
優花里(か、鍵が開いた!)
優花里(今こそ千載一遇のチャンス! 脱走を――!)
アンチョビ「お、おい、ちょっと待て――!」
優花里「ごめんなさい!」ダッ
優花里(何としても、追っ手を振り切って逃げて見せる……!)
♪~
出演 撮影 編集
秋山 優花里
協力
サークルKサンクス
アンツィオ高校
協賛
秋山理髪店
みほ「…………」
沙織「…………」
華「…………」
麻子「…………」
優花里「……っていう事があったんですよ!」
みほ「……えっと、このビデオは」
優花里「帰る途中、自分で軽く編集してきました。テロップもまだ仮なんですけど……」
沙織「いや、そうじゃなくて」
麻子「何という無茶を……」
優花里「頑張りました!」
みほ・沙織・華・麻子「「「「…………」」」」
沙織「っていうかさ……」ヒソヒソ
華「あれはやはり……」ヒソヒソ
麻子「まあ、そういう事だろ」ヒソヒソ
「……あれってどう見ても、ナンパだよね」
みほ「たしか、アンツィオの男子は女性に弱いとか聞いた事あるけど……」
麻子「あれ、結構危なかったんじゃないか?」
華「さすがに強引な事はしないでしょうが……」
沙織「……あたしもアンツィオに行けばモテるのかな」
みほ「あ、あはは……」
優花里「西住殿」
みほ「は、はい!?」
優花里「ほとんど情報収集ができず、申し訳ありません。ですが、こんな映像ですが、何かのお役にたてれば……」
みほ「ありがとう。映っていた戦車で大体の編成は予想できるし、頑張って戦術立ててみる!」
沙織「無事でよかったよ、ゆかりん」
麻子「体は大丈夫なのか」
華「ドキドキしました」
優花里「心配していただいて恐縮です。わざわざ家まで来てもらって……」
優花里「まあ、いつ追っ手に捕まるんじゃないかとヒヤヒヤしましたが」
みほ・沙織・華・麻子((((……もしかして、ナンパされてたことに気づいてないんじゃ?))))
優花里「ですが、その割には成果が芳しくなく……」
みほ「気を落とさなくても大丈夫だよ」
沙織「うんうん。あんなことできるなんて、それだけですごいよ!」
華「……あの」
華「先程の映像なのですが……」
ドーーン!
パタッ
「大洗女子学園の勝利!」
アンツィオ高校 対 大洗女子学園
フラッグ車 フラッグ車
×P40重戦車 38(t)戦車
沙織「わぁ……!」
華「やりましたね!」
麻子「1回戦突破だな」
優花里「八九式の速度向上が役に立ちましたね!」
みほ「練習戦の後、短い期間だったのに、自動車部は凄いね」
優花里「撤退戦で一両だけ遅れてましたから、何とかできないかとダメ元で自動車部に相談したんでしたっけ」
優花里「それで実際に何とかできちゃうなんて、流石ですよ」
沙織「それよりも、ゆかりんの方が凄いよ!」
優花里「あれはたまたまです……。それに、五十鈴殿が気付いて下さらなかったら、どうなっていたことか……」
華「わたくしも、最初は思いもよりませんでした」
華「まさか、あんなに詳しい作戦図が映っていただなんて……」
みほ「多分、秋山さんが連れ込まれた部屋は……」
優花里「作戦室か隊長室あたりだったんでしょう。なぜそんな部屋を尋問用に使おうとしたのかは釈然としませんが」
沙織「まだ気付いてないんだ……」
華「ですが、そのおかげで敵の作戦が読めて、こうして敵の裏をかくことができたんですから、いいじゃないですか」
河嶋「まさか本当にそのままの配置で来るとはな……」
副会長「話がうまく出来過ぎていて、何かの罠じゃないかと疑っていたのですが……」
みほ「フラッグ車の配置くらいは変えて来るかと思いきや、配置図通りの場所に布陣していて……」
優花里「何というか、拍子抜けでした」
河嶋「念のために、あれが罠だった時の対策とかも練りあげていたのだが、完全に杞憂に終わったな」
会長「もしかして、あの隊長、配置図とか見られたのに気付いてないのかもね」
副会長「まさか、そんな事は……」
沙織「へ~。そんな事まで考えてたんだ」
優花里「あ。それで思い出したんですが、試合前にあちらの隊長さんから声をかけられて……」
華「あら、そうだったんですか」
沙織「何を話したの?」
優花里「それが、尋問の様子が知りたいらしく、何かされなかったのか~とか、変な事を言われなかったのか~といった事を尋ねてきて……」
優花里「スパイだった私をあんなに心配してくれるなんて、とっても優しい人なんですね!」
みほ「ああ……う、うん」
麻子「大ごとになって不祥事沙汰になるのを嫌ったんじゃないか?」
沙織「しっ! ゆかりんは素直に感動してるんだから、水を差すようなことは言わないの!」
みほ「あはは……。でも、秋山さんのおかげで敵の作戦が読めたし、お揃いのジャケットや、戦車のペイントなんかで、士気が上がったのが見て取れたし……」
みほ「この戦いは勝てるべくして勝てたと思う」
麻子「だが、次はどうなんだ?」
優花里「2回戦は、順当にいけば、去年の優勝校が勝ち進むでしょうね……」
みほ「はい……。次はプラウダです!」
以上です。
アンツィオ戦を期待されていた方々には肩すかしとなってしまいました。
ですが、ご安心ください。アンツィオ戦は漫画版やOVAで見れます!(ステマ)
次回は……できるだけ早くとしか言えませんが、流石に1か月以内には投下したいと思います。
>>66
サンダース戦はフラッグ戦だったので、全車両を列記してましたが、大会ではフラッグ戦ですので、今回のようにフラッグ車と撃破された車両だけ表記する予定です
安定のアンツィオw
アンツィオの生徒をずっと女の子だと思っていて、部屋に閉じ込めてけしからぬことをしようとした時も依然として女の子だと思い続けていて
最後に男子生徒だったと気づいて自分の毒され具合に愕然とした
乙
ちょ、チョビ~
プラウダ戦は雪上じゃなくなるんでしょうか?
いやぁ~、アンツィオ戦は、手に汗握る白熱の試合でしたね~・・・(棒)
プラウダ戦に期待します。
あれ?アンチョビの八面六臂の大活躍は?
チョビの勇姿は皆の心の中にあるんだよ
待ってます保守
>>97
別に男だと明言したわけではないのでセフセフ
では、2回戦前半、投下します
――数日後――
┌───────┴───────┐
┌───┴───┐ ┌───┴───┐
┌─┴─┐ ┌─┴─┐ ┌─┴─┐ ┌─┴─┐
┏┛┐ ┏┛┐ ┏┛┐ ┌┗┓ ┏┛┐ ┌┗┓ ┌┗┓ ┌┗┓
┃ │ ┃ │ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ │ ┃ │ ┃
ヴ コ .黒 知 プ .ボ ア. .大. .サ マ ヨ ワ .B 聖. 青 継
ァ .ア .森 波 ラ .ン .ン 洗 ン .ジ │ ッ C グ 師 続
イ .ラ .峰 単 ウ プ .ツ 女 ダ .ノ .グ フ 自 .ロ 団 高
キ の 女 学 ダ ル .ィ .子 │ 女 ル ル. .由 リ 高 校
ン. .森 学 園 高 高 オ 学 .ス 学 .ト 学 .学 ア .校
グ 学 園 校 校 高 園 大 院 学 .院 .園. │
水 園 校 .付 園 ナ
産 属 女
高 学
校 院
河嶋「やはり、2回戦の相手はプラウダか」
会長「まあ、昨年の優勝校だし、当然そうなるよね~」
副会長「今の戦力で、2回戦勝てるかな……」
河嶋「絶対勝たねばならんのだ!」
会長「とはいえ、このままで勝てる相手じゃないからね~」
会長「予算があれば戦車を増やせるんだけど、無い物ねだりしてもしょうがないし」
副会長「現状でできることといえば……」
河嶋「1回戦に勝ったからといって、気を抜いてはいかん! 次も絶対に勝ち抜くのだ!」
一同「おおー!」
会長「まあ、訓練が一番効率がいいんだよね」
副会長「基本的に、消費するのは燃料と弾薬だけですし……」
会長「あとは、戦術でどこまで差を埋められるかだね~」
一同「お疲れ様でした!」
優花里「いい汗かきましたね!」
沙織「あたし、戦車に乗り始めてから痩せたよ~」
麻子「そういえば、私も少しだけ低血圧が改善されたような……」
華「血行が良くなったんですかね」
みほ「血の気が増えたのかな。戦車乗りって、頭に血が上りやすい人多いし……」
沙織「戦車健康法。これははやる!」
麻子「別に戦車道じゃなくても、運動部にはいれば同じだろ……」
河嶋「西住、次の試合の戦術会議をするぞ!」
副会長「それと、交換した方がいい部品のリストを作るの、手伝ってほしいんだけど……」
みほ「あ、はい!」
佐々木「先輩、照準をもっと早く合わせるにはどうしたらいいんですか?」
河西「どうしてもカーブがうまく曲がれないんですけど……」
みほ「バレー部の皆さん!? 待ってね、順番に――」
エルヴィン「隊長、躍進射撃の時間短縮短縮について……」
みほ「あ、あの……」
「ずっと乗ってると臀部がこすれて――」
「隊長、戦車の中にクーラーって――」
「先輩、戦車の話をすると――」
「私は彼氏に――」
みほ(そ、そんな一度に……)
優花里「あの、メカニカルな事でしたら、私が多少わかりますので」
華「書類の整理くらいでしたら、わたくしでも出来ると思うんですけど」
麻子「操縦関係は私が」
沙織「恋愛関係ならまかして!」
みほ(あっ……!)
華「みんなで分担してやりましょう」
沙織「みぽりん、一人で頑張らなくてもいいんだからね」
みほ「みんな……ありがとう」
――生徒会室――
華「グリースは1ダースでいいですか?」
副会長「はい。……よいしょ」
華「そちらの書類は――」
みほ(五十鈴さんはあっちで書類の整理か……)
会長「西住ちゃ~ん。チームもいい感じにまとまってきたじゃないの!」
みほ「あっ、はい!」
会長「西住ちゃんのおかげだよ。ありがとねっ」
みほ「あっ……。いえ、お礼を言いたいのは私の方で」
みほ「最初はどうなる事かと思いましたけど……。でも今は、みんなと戦車道をやって、本当に良かったと思ってます」
河嶋「それは結構だが、次も絶対勝つぞ」
会長「勝てるかねぇ~」
みほ「チームはまとまってきて、みんなのやる気も高まってますけど、正直、今の戦車だけでは……」
河嶋「やはり、厳しいか……」
華「あの、お話し中すみません。書類上では、他にも戦車があった形跡が……」
みほ「え……?」
河嶋「探せばあるものだな……」
優花里「ルノーB1bisに長砲身75mm砲。ポルシェティーガーまで見つかるなんて!」
華「それってすごいんでしょうか?」
優花里「ええ、それはもう!」
沙織「わっ、何か目がキラキラしてる」
優花里「Ⅳ号戦車の長砲身75mm砲は、Ⅲ突の主砲に優るとも劣らない威力を発揮しますし、ポルシェティーガーは主砲、装甲共にその上を行きます!」
みほ「でも、次の試合に間に合わせるのは……」
会長「いや、何とかなるかもよ?」
みほ「本当ですか!?」
副会長「自動車部にはもう連絡をしてあります。試合会場に着くまでに、何とか換装は終わる見込みだと……」
優花里「あれ? でもそれって……」
会長「そう。それだとテストをする時間がないんだよね~。下手したら、実戦でぶっつけ本番!」
会長「で、西住ちゃん、どうする? 最悪、Ⅳ号がただの置物になっちゃうけど……」
みほ(確かに、あの砲身が実戦に耐えうるものなのかはわからない。今回は換装せずに、今のままの戦力で戦う方が安全なのかもしれない)
みほ(だけど、相手はプラウダ高校。当然、使用車両はT-34系統やそれ以上の物を出してくる。それに対抗するには、今のままでは非力)
みほ(もし相手がアンツィオ高校なら、換装せずに確実な方をとったかもしれない。だけど……)
みほ「ちょっと五十鈴さんと相談させてください」
みほ「……決めました。主砲の換装をお願いします」
会長「おっ、西住ちゃん、賭けに出たね~。OK! 手配しとくよ」
みほ(これで、多少は戦力の補強ができた。できれば他にも何かほしい所だけど――)
会長「よし! じゃあ、次は戦術会議行こうか!」
みほ「は、はい」
河嶋「プラウダ高校の事についても聞かせてもらうからな」
みほ「う……」
みほ(プラウダ高校……。去年の決勝戦……)
みほ(あの時、前を行く車両が、雨で水かさを増した川に落ちて……)
河嶋「……そうか。わかった」
副会長「『地吹雪のカチューシャ』に『ブリザードのノンナ』ですか……」
会長「なんか、その二つ名って天候を操りそうな感じの名だね~」
みほ(え? いや、それはプラウダ高校が雪国だからで……)
会長「ほら、プラウダ高校の1回戦では天候が悪かったみたいだし、去年の決勝戦もかなり雨が降ってたんだっけ?」
みほ(ああ、そういえば……)
会長「それに、2回戦の会場も台風が来てるって話じゃない。コースによっては、試合当日に直撃するとか」
会長「まあ、偶然だと思うけどね。んじゃ、会議を続けよっか」
みほ「は、はい……」
みほ「……という訳で、短時間で一気に侵出し、フラッグ車を叩くというのも手ですけど、失敗したときに取り返しがつきません」
みほ「プラウダの挑発に乗らず、フラッグ車を守りながらゆっくり前進して、まずは相手の動きをみるべきだと思います」
河嶋「ふむ、敵の車両が挑発に来た場合、追いかけず、完全に無視するのか?」
みほ「そうですね。こちらの方が車両が少ないですし、できれば倒しておきたいところですが……」
みほ「深追いせず、待ち伏せに注意して、視界の開けたところでのみ追撃しましょう」
みほ「幸いといいますか、2回戦の会場は、プラウダ高校の最も得意とする積雪地帯ではありません。こちらにも勝機はあります!」
――試合当日――
華「これが、新しい砲身……」
ナカジマ「長砲身つけたついでに、外観も変えておきました」
優花里「F2っぽく見えますね!」
みほ「ありがとうございました、自動車部の皆さん」
ナカジマ「いえいえ。まあ、大変だったけど、すごくやりがいがありました」
河嶋「よく時間までに間に合わせてくれたな。助かった」
河嶋「次の相手は去年の優勝校、プラウダ高校だ。1回戦では秋山の情報もあって勝つことができた。だが、次も絶対に勝つぞ!」
澤「……そういえば、今回は偵察とかしなかったんですか?」
山郷「あ、そっか。今回はそんな話してないね」
優花里「」ビクッ
みほ「えっと、プラウダ高校は他校の偵察に特に厳しくって……」
優花里「」ガタガタ
みほ「プラウダに潜入したスパイで無事に帰ってこれた者はいないと言われるほどなんです」
優花里「鉄のカーテン……リシン……仕込み傘……210Po……」
みほ「さ、さすがに危害を加えるわけじゃないけど、何日か拘束されることになるので、代理要員がいないと厳しいから、今回は偵察は無しにしました」
沙織「ゆかりんは本当にあった怖い話か何かでも読んだの?」
華「流石に学生同士で過激な事はしないと思いますが……」
澤「そ、そうなんですか……」
河嶋「……よし、そろそろ時間だ。会場へ向かうぞ」
――会場――
優花里「……晴れましたね」
沙織「そういえば、台風来てたんだっけ?」
華「台風一過の快晴ですね」
麻子「その代わりに……」
カチューシャ「――じゃあね~。ピロシキ~」
ノンナ「ダスビダーニャ」
麻子「……ひどい嵐だ。散々煽って帰って行ったな」
沙織「なにあれ! いくらなんでも言い過ぎじゃない!?」
みほ(試合前から挑発してくるなんて……。しかも、心なしか、みんな乗せられてる気がする)
みほ(一応、気を付けておいた方がいいかな?)
みほ「相手は昨年の優勝校です。1回戦では偵察の情報によって勝てましたが、真っ向からぶつかっていたら、苦戦していたかもしれません。2回戦でも気を付けていきましょう」
みほ(これじゃあ弱いかな。でも、やりすぎるとこちらの士気が落ちるし……)
みほ「おそらく敵は、先程のように試合中でも挑発をしてくると思います。その時に、万全の態勢できっちりと迎え撃ちましょう」
みほ「相手は強敵ですが、頑張りましょう!」
一同「……おーっ!」
みほ(特に大きな不満は出なかったけど、実際に相手が目の前に来たらどうなるか……)
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=T1q_0PXmJOk
カチューシャ「いい!? あいつらにやられた車両は、全員コルホーズに飛ばすわよ!」
ノンナ「農業科の早朝当番ですね」
カチューシャ「いくわよ!」
一同「ウラー!」
プラウダ高校 対 大洗女子学園
フラッグ車 フラッグ車
T-34/76 八九式中戦車
はじめまして、光太郎と言うものです。
このサイトで小説書き始めたんで応援お願いします!
スマブラ~光と闇の物語~ 面白いです! - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377428345/)
クレハン「見るのだ愚か者!」
みほ「試合開始……」
みほ「陣形を組む前に、少し時間をもらいます。華さん、新しい主砲の試射を!」
華「わかりました」
みほ「あまりやりすぎると、向こうに付け入る隙を与えてしまいます。多くはできませんが……」
みほ(今日……試合当日に換装が終わったⅣ号は、他のテストはできても、射場に行って試射をする時間はなかった)
みほ(そこで、苦肉の策で、試合中に競技用の弾を使って試射をすることにした)
みほ(携行弾数が減ったり初動の時間をロスしたりと不利な点もあるけど、敵と撃ちあう前に試射は欠かせない)
華「撃ちます」
ドーーン!
華「――修正射、1発撃ちます」
みほ(主砲を換装した以上、以前と同じ感覚で撃っても、同じ所には当たらない。だから、それに対する慣らしが必要)
ドーーン!
華「……いけます。もう大丈夫です」
みほ「わかりました。全車、フラッグ車を守りつつ、前進!」
カチューシャ「向こうは何のつもり!? 撃たれた車両はいないわね?」
ノンナ「はい」
カチューシャ「……まあいいわ。ノンナ!」
ノンナ「わかってます」
みほ「これまでの所、敵影は無し……」
優花里「敵はいつごろ仕掛けてきますかね」
みほ「まだ先だと思うけど――」
ドーーン!
沙織「わっ! 撃たれた!?」
華「いえ、今のはかなり遠くの音では……」
優花里「西住殿、今のはKV-2の音では?」
みほ「何のつもりだろう……。まさか、こっちと同じことをしてるわけじゃないだろうけど」
ノンナ「予定通りです」
カチューシャ「いいわ。そのまま進めなさい」
ノンナ「はい」
カチューシャ「――ふふ。用意周到の偉大なるカチューシャ戦術を見せつけてやるんだから!」
カチューシャ「降伏してきたら、どうしてやろうかしら。コルホーズの草むしり? 麦踏み? 芋掘りもいいわね」
みほ(しばらく進んでいるけど、敵影は見当たらない。そろそろ来るころだと思うけど……)
みほ「……いた。 敵戦車。各車警戒」
みほ(敵は……1……2両だけ? 囮……いや、だとしても……)
ドーーン!
みほ(撃ってきた! 気付かれたけど、この距離は……)
みほ「砲撃用意してください。Ⅲ突も射撃!」
みほ(長砲身なら、T-34相手でも――)
ドーーン! ドドーーン! パタッ
優花里「命中しました!」
八九式「やった!」
Ⅲ突「昨年の優勝校を撃破したぞ!」
河嶋「試合前にさんざん言ってきたが、意外と大した事無いな」
みほ(1両撃破、残りの1両は――)
ドーーン!
沙織「撃ってきた? あ、逃げてく!」
みほ(敵は撤退。近くに不意打ちされそうな地形はないし、1両だけなら……)
みほ「全車両前進。追撃します」
八九式「待てーっ!」
M3「当たれーっ!」
ドーーン! ドドーーン!
T-34「…………」
河嶋「何だ? ジグザグに動き回って、往生際の悪い!」
Ⅲ突「これでは照準が……」
優花里「只でさえ行進間射撃は命中率が低いのに、これでは当たりません!」
みほ(敵は大きく蛇行してる。確かに命中率は下がるけど、あんな動きをしたら、速度が落ちて追いつかれるのに……)
みほ(何が狙い? こちらを引き付けたいとしても、あんなに大きく動く必要があるとは思えない。何か他に理由があるはず)
M3「痛っ!」
みほ「どうしました!?」
M3「あ、いえ……戦車が揺れて頭をぶつけちゃって」
沙織「そういえば、いつもより浮き沈みがひどいね」
みほ(確かに、酷い悪路。こんな状態だと、アレが起きるかも――)
みほ(――まさか、それを見越して!?)
みほ「各車、速度を――」
M3「うわっ!」
河嶋「今度は何だ!」
M3「そ、それが急に動きが……」
Ⅲ突「こっちもだ。くっ、しまった!」
八九式「一体何が……」
Ⅲ突「スタックだ! ぬかるみにはまって身動きが取れない!」
河嶋「何!? 2両も続けてスタックするとは……。なぜこちらばっかり!」
優花里「……ソ連の戦車は悪路を考慮して、履帯が広い設計なんです。しかし、西住殿、これはまさか!?」
みほ「うん……」
みほ(これがプラウダの狙い……!)
◆ ◆ ◆
会長「それに、2回戦の会場も台風が来てるって話じゃない。コースによっては、試合当日に直撃するとか」
◆ ◆ ◆
みほ(台風が来たとはいえ、会場がこんな状態になる程の雨だったなんて……)
みほ(会長の話じゃないけど、天候を味方につけたみたい)
カチューシャ「かかったわね! このカチューシャ様の偉大なる戦術に!」
ノンナ「うまくいきましたね」
カチューシャ「当然! 囮に出した車両はコルホーズの生え抜き達よ! あれくらい、出来て当たり前じゃない!」
ノンナ「農家出身の生徒ですね」
カチューシャ「それに、私自ら指揮を執って、あそこが泥濘化するよう仕向けたんだもの!」
ノンナ「KV-2の榴弾でしたね」
カチューシャ「そうよ! 戦車で土木工事をしようなんて発想ができるのは、このカチューシャ様くらいね!」
ノンナ「小さな土砂ダムが出来ていたり、地形に恵まれましたね」
カチューシャ「これで、『どうしてKV-2を編成に入れたのか』なんて聞いてきたバカにも、カーベーたんの凄さをはっきり見せつける事が出来たわ!」
ノンナ「KV-2、お好きな戦車でしたね」
カチューシャ「とにかく! 敵が動けないでいる所を、待機させていた車両で叩くわよ!」
カチューシャ「散々叩いた後で、降伏勧告を送ってやるわ! カチューシャの威光にひれ伏すのよ!」
プラウダ高校 対 大洗女子学園
フラッグ車 フラッグ車
T-34/76 八九式中戦車
他8両 他4両
以上です。
>>98
試合の順番以外はそのままなので、雪上は準決勝の予定です。
乙
車両数の差はアニメより少ないが練度の差で苦戦しそうだな
乙!
コルホーズわろた
KV-2活躍もうれしいな!
これまた苦戦しそうだな
どう打開するのか楽しみ
支援
支援
そろそろ続報が欲しいところ
貴重な戦車道SS
続き頼みますぜ
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