美琴「だって私は、姉だから」(531)




・もし5巻の時一方通行の立場が美琴だったらっていう話
・更新はゆっくり
・二番煎じかも。ごめんなさい

じゃあまったり更新しますー






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330005603(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)



御坂美琴という少女は、とある闇を抱えている。
彼女を元にして作られた体細胞クローン、通称『妹達』。そしてその『妹達』を実験動物としたとある実験。
だが、先日とある少年によって実験は凍結した。
10032人の“人間”は、命を救われたのだ。
だからこそ、美琴は今ふらふらと夜の街をふらつくことができる。

「救われた……か」

しかし、と少女は心の中で思う。
結局、私の力では誰一人救えなかったんだと。
自分は、一人では妹を守ることすら、できないのだと。

「……高望みが過ぎるのかしらね」





ふぅ、とため息をつく。
救われたのだから、それでいいじゃないか。
そう割りきることが――どうしても美琴にはできなかった。
それは、姉としての意地なのかもしれない。
妹を守るのが――姉の役目だから。

「おいおい幼女ホームレスかよ」

「すっげ、レアだぜレア!」

「だから、ミサカはホームレスじゃないってさっきからいってるってミサカはミサカは主張してみたり!」

……幼女ホームレス?
と、美琴は首を傾げた。前方には明らかに分かりやすい不良がたむろっていて、彼らの体で顔は見えないが、女の子らしき甲高い、しかし平淡な声が聞こえる。
どうやら不良が幼女に絡んでいるらしかった。





「……まったく」

科学がどんなに発展しても、この手の馬鹿はいなくならない。
そのことをしみじみと実感しつつ、美琴はそちらの方へ近づいていく。

「ちょろっと――アンタら、何やってんの?」

「ああん? ガキはとっとと家に帰んな」

「あっ――」

「おっ上玉じゃん」

美琴は不良を無視して、囲まれている女の子へ近づいた。なぜかその女の子は青い毛布を被っていて、こちらからは顔はおろか着ている服さえ見えない。



「あ、あの――」

「?」

女の子が何かいいかけたが、それを遮るように無視された不良達が声を荒げた。

「おらぁっ無視すんじゃねぇっ!」

「なめやがって!」

そんな不良達を、彼女は

「……うざったいわね」

瞬間、バチバチィ!! と紫電が不良達を襲った。
一撃で倒れる、しかし絶対にしなない程度の、絶妙な威力だった。

期待


「やっぱり……ってミサカはミサカは確信してみる」

女の子はなにやらウンウン頷いている。
――と、彼女は気付く。

(――ミサカ、?)

もしかして、と美琴は眉をよせる。この平淡な声も、なんとなく懐かしい感じがするし。

「ねぇ、アンタ。その毛布とっぱらって、よく顔見せてみなさい」

その瞬間、ぎくりと女の子は身をすくませる。
少女は2、3歩後ずさりしつつ、

「へってミサカはミサカはたじろいてみたり!!まさかお姉様といえど往来でミサカを素っ裸にするのはってぎゃあああ!!」

「ああもう、めんどくさいわね」

少女の抵抗もむなしく、美琴はその青い毛布をとっぱらった。

「……っ」


――顔が見えた。
その顔は、自分の幼少期、10歳ころの顔に似ている――否、瓜二つ。
全くもって、同一のもの。

(……間違いない、この子は――)

美琴がそれを結論付ける前に、

「あ……あ、ああ……」

――少女の裸の胸が。
――少女の裸のへそが。
――少女の裸の太ももが。

「……へ?」

見えた。
美琴の口元がひくつく。
少女の瞳にはちょっぴり涙がたまっている。




美琴の幼少期に瓜二つの少女は、完全無欠の素っ裸だった。
それはつまり、美琴が素っ裸なのと同じようなことで――




「「ぎゃああああああああっ!!」」





直後、良く似た二つの声が二つ分の絶叫をした。





終わりー。
こんな感じで続けていきます。

ほうほう

おつおつ


続きに期待

細けぇことだが、助かったのは打ち止め抜かして9969人では?

これは中々…



このパターンは読んだことがないので期待してる

今までありそうでなかったような
乙です

なんかおもしろそう 乙

こっちの立場入れ替えパターン見たこと無いな
期待

ふむ
期待

いいねえ

ほう
期待

美琴が杖つきながら打ち止めと仲良く歩いてる図が浮かんだぜ

微笑ましい…



あれ?美琴銃弾防げなくね?

あらかじめ天井くンを音速の数倍でふっ飛ばしておけばいいのよ


「で、ミサカは造られてる途中で計画が終わっちゃって、製造途中で培養機から取り出されたからこんなナリをしているわけで、だから別に第三次計画とかが勃発してるわけではなく、何が言いたいのかと言うとお姉様のそのつり上がった瞳を元に戻して欲しいなあ、ってミサカはミサカはお願いしてみるんだけど」

一気にまくしたてた少女――打ち止めに、はあ、とため息。
一応つり上がった瞳が元に戻ったお姉様に、打ち止めはさらに説明を加える。

「お姉様、確か研究者との繋がりを持ってたはずだよね? ってミサカはミサカは確認してみる。布束って人」

「……別に繋がりと言える繋がりじゃないわよ。連絡先も知らないし」

「でっでもでも、お姉様のハッキング能力があれば連絡をとるくらいできるよね? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

「……はあ、まあ、できるけど」


やったあ! と喜びを露にする打ち止め。
そういえば、と美琴は思案する。実験後、残った妹達は皆外部組織だかなんだかに保護されたと布束からきいたが、なにせ数は1万人弱もいる。その全てを把握できていない可能性だってある。つまり、この少女は妹達の管理から漏れて、保護もされずにこんなナリで夜の街を歩いているのだろうか。
……あながち幼女ホームレスも間違っていないんじゃないだろうか、と少々不安になる美琴。

「……ってわけなんだけど……って聞いてる?」

「あっ……ああ、ごめん。何?」

「だから、その研究者とコンタクトをとってもらって、ミサカのこの不安定なハードとソフトを完成させてほしいの、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

「……コンタクト、ねぇ……」


「お姉様、妹のわがままは聞くべきだよ、ってミサカはミサカは諭してみたり」

「アンタねぇ……まあ、いいわ」

ぽん、と打ち止めの頭に手をおき、くしゃくしゃと撫で回す。

「妹のわがままを聞くのは、姉の役目なんだもの」

その顔が――凄く、優しいものに打ち止めには見えた。
こういうところが他の個体達は好きなのかな? と彼女はぼんやり思った。






向かうべきは今日泊まるホテルだ。
さすがにこの子を連れて寮に帰るわけにもいかない。なら、そこらへんのホテルで一泊すればいいや、と美琴は結論づけた。こういうところはお嬢様感覚の美琴なのだった。
全裸(毛布はかぶっているが)の打ち止めには一階に置いてある小さい服屋で適当に服を見繕い、彼女達は割り当てられた部屋に入った。

「おー、ここがホテルの個室なのねーってミサカはミサカは初めて入る場所に感嘆を漏らしつつ着替えてみる」

「着替えるか喋るかどっちかにしなさい」

「じゃあ喋るってミサカはミサカは即答してみたり!」

美琴の注意にそんな憎まれ口を叩きつつ、打ち止めは着替え終えた。
簡素な淡い色彩のワンピースなのだが、中々に似合っている。それを言うのは自画自賛みたいでいやなので、絶対に口には出さないが。

「お腹減ってる? パンとかお菓子とかは部屋についてるみたいなんだけど」

「あっじゃあ貰うってミサカはミサカはお腹減ったアピールをしてみる」

打ち止めはルンルンしながらパンだのなんだのが入っている籠に近づくと、食べたいものをあーだこーだと選び出す。
それを見ながら、美琴はなんだかなぁ……とちょっぴり思う。
今まで会ってきたどの妹達より感情が豊かだ。
それはとても喜ぶべきものだし、勿論姉として凄く喜んでいるのだが、時々動揺してしまう。慣れてないのかもしれない。


(――もし)

美琴は思う。

(あの子達が元々こんなに感情豊かだったのなら――)

彼女はすっと目を細めた。

(……何かが、変わっていたのかな)

戦うことを放棄し、
殺されることを拒否し、
誰も死なずに、
――そんな、夢物語が。

(……なんて、今更言ってもしょうがないか)

はあ、と嘆息した。
打ち止めは相変わらず美味しそうにパンを食べている。
そのスピードから見て、どうやら相当お腹が空いていたらしかった。


「ねぇ……打ち止め」

「なに? ってミサカはミサカは応えてみたり」

美琴は一瞬だけ言葉を詰まらせ、言おうとしていた言葉を飲み込み、違う言葉を言う。

「……それ、美味しい?」

「? お姉様も欲しいの? ってミサカはミサカはパンを半分に裂きつつきいてみたり」

打ち止めにパンをもらい、それを咀嚼しながら、美琴は心の中で思った。

(……まだ、自分達のことを――)



今日の分終わりー。
初めて5巻見たとき「服くらいかってあげようよ……」と思ったので美琴には服を買い与えてもらいました。

>>13 うわぁああ……はずかしい……。そうですごめんなさい

乙です 

美琴が一方通行の立場と言う事は、
原作の一方通行の出番は全て美琴になるわけだが…

おちゅん

乙ですの

>>32逆に考えるんだ。原作での美琴の出番が一方さんになるんだと考えるんだ

>>32 >>34 つまり上条「恋人をやってほしいだって?」一方通行「……あァ」が始まるんですねなるほど

>>35
別スレ立てて同時進行にしちゃえよw

〉〉35
他にも猟犬部隊ふっとばしたり妹達に遭遇したり友達(上条)を追っかけてロシアに行ったり…

百合子なら許す


>>37 なにそれ楽しそうwww あれ?ってことは木原テレに美琴がぼろぼろにされるのか……。それもいいかもしれない

しかし私はそろそろ本気で抱えてるスレの数がやばいので、誰か書いてほしいな!絶対読みに行きますwwそんな楽しそうなのww

一度は妄想してた話を書いてくれるとは!
期待!

乙!
このSSパターンのほうが違和感なくて良いな
原作は一方の出番増やすために妹達問題から完全に外されちゃってるし

今書いてるSSが終わったら書こうとしてたネタががががががが

>>39 まてよ。打ち止めが攫われて木原テレにボコられるって事は…翼フラグ?

展開予測してスレを潰す作戦ですね



「――てってミサカはミサカは体を揺さぶってみたり。ねえねえー」

そんな声で美琴の意識はうっすらと覚醒した。

「黒子……うるさい……夏休みくらい寝かしなさいよー……」

美琴はむにゃむにゃ言い、再び眠りの世界へ旅立とうとする。
そんな駄目姉を見て、打ち止めは慌てて再び体を揺さぶった。こちらはお腹が減っているのだ。もう9時なのだ。個室に置いてあった食べ物は昨日で尽きてしまったし。

「おーねーえーさーまーってばー!!9時だよ9時9時!!起きる時間ー!!」

「……黒子じゃない?」

ようやく目が覚めた美琴は、はっと事実に気が付いた。そういえば、末妹とホテルに泊まったんだった。
美琴はあふ、と欠伸をし、起き上がった。


「お姉様、ミサカお腹が減ったの、ってミサカはミサカは訴えてみる」

「はいはい、どこかに食べに行きましょうか」

「やったあ、ってミサカはミサカはお腹をさすりながら喜んでみる!」

乱れた着衣を整え、二人はホテルのレストランへと向かう。レストランにはあんまり人がいなかった。
本日、8月31日。
宿題やってない馬鹿が頑張ってそれを片付ける日。
よって、皆家に引きこもりであんまりいないのである。嫌すぎる理由だった。

「ミサカ、ハンバーグ!」

「私は朝メニューBで」

こってりしたものとあっさりしたものをそれぞれオーダーし、二人はレストランから見える景色をぼんやり眺める。


「……えへへ」

「?」

打ち止めの脈絡のない笑顔に、美琴は首を傾げた。

「お姉様とこんなことをする日が来るなんて、ミサカ考えもしなかった、ってミサカはミサカはしみじみ言ってみたり」

打ち止めは目を細めて、幸せそうに言った。
一瞬だけ脳裏に浮かぶのは、死んでいったあの子達。

(……私、は)

何をすべきなのだろう。
贖罪をしなくてはならない。
あの子達を救わなければならない。
わがままを、聞いてあげなければならない。
それが分かってはいながら、美琴には具体的に何をすればいいのか分からなかった。


「ねぇ、お姉様」

「何?」

「お姉様、今、幸せ?」

ぱちくりと目を開いた美琴に、打ち止めは真剣な目を向けた。
美琴は数秒かかって――ようやく、口を開く。

「そうね――」

幸せか、否か。
そんなもの、決まっている。

「たまたま不良に囲まれているところを助けてあげたら、毛布の下は全裸で、それが私の妹の一人で、そしたらなんだかついてくるわ、わがままはいっぱいいわれるわ――」

どんどん眉が下がっていく打ち止めを視界の端にいれながら、美琴は言い切った。


「――こんな、幸せなことはないわ」


わがままを言われるのが嬉しい。
頼ってくれるのが嬉しい。
どうしようもなく嬉しくて。
それってつまり――自分を、姉だと認めてくれているからこその言動で。
だから。


「私は……幸せすぎるくらいだわ」

「……そっ……か」

打ち止めは、ほっとしたように息を吐いた。

「うん……お姉様が幸せなら、ミサカも幸せだよってミサカはミサカは伝えてみる」

そのあと二人は、無言でそれぞれオーダーしたものを食べた。
それで良かった。
言葉を交わさなくても、全然気まずくない。
――それが家族、なのだから。





終わりー。テスト近いので更新さらにゆっくりになります。

>>42 書くつもりだったんですか!?そ、それは大変失礼しました……。
   wktkしてます!!たったら教えてください!!

>>43 翼……だと……?え?美琴がばっさばっさ……文字通り天使……いいかもしれない。

乙!
これからも期待
続き待ってるよ~

テストがんばれ



異変が起こったのは、ホテルの個室に戻った直後だった、

「んぁ……」

打ち止めの体が力が抜けたようにがくんと崩れ落ちた。

「ちょ、アンタ大丈夫!?」

「だい……じょうぶ、ってミサカはミサカは……答えて……みた、り」

明らかに大丈夫じゃないのに、大丈夫だという打ち止めに、美琴はうろたえながらも冷静に対処しようとする。

「え、えと……まず、病院……よね。あ、でもこの子たち……病院にいけないんじゃ……。ううん、多分今妹達を受け入れてくれてる病院なら――」

「おね……さま……」

打ち止めは美琴の言葉を遮って話しかける。

「な、何?」

「多分……これ、培養機から取り出されたせい……だから、早く……培養機にもどして……ほしいかな、ってミサカはミサカはお願いしてみる……」

「わ、わかった」

美琴はPDAを取り出し、布束への連絡先を探るため能力を行使する。
数分でそれは見つけられた。


「よし……」

ほっと一息吐いて、美琴はその番号へ電話をかけた、
すぐに向こうとつながった。

『Who? って、オリジナルね。どうしたの? こちらは忙しいのだけれど』

「こっちも急用なのよ!! アンタ、今培養機を用意できないかしら!!」

『……What? どうして?』

「……打ち止め、って子を、知ってる?」

『……、あなたが、どうして』

「知ってるのね!?」

美琴は思わず強くたずねると、『……ええ』と肯定の意が返ってきた。

『今、捜索中よ。もしかして、あなた――』

「今、隣に打ち止めがいるの!! すっごく調子が悪くて……!」

『Oh……わかったわ。今から言う場所に来て。勿論、打ち止めをつれて』

布束から場所を聞き、美琴は打ち止めを背負い、打ち止めの負担にならない程度の速度で歩きだした。





「布束……さん!」

美琴は勢いよく扉を開けた。
中にいた布束は、書類から美琴へと視線を移す。

「Oh……早かったわね」

布束は美琴に近づくと、はぁ、と嘆息した。

「かなり容態が悪いようね」

「治るわよね、この子!!」

「……まあ、今のところわからない、と答えておくわ」

「アンタ……っ」

布束は美琴の言葉を遮って、とある資料を顔に突きつけた。
美琴は布束に打ち止めを渡すとそれを読み、はっと息を詰まらせる。

「……これ、は……」

「この子の容態が悪いのは、培養機から出てしまったから、だけではないわ」

布束は、冷酷に美琴の真実を伝える。



「この子の頭の中に不正なプログラムが上書きされたからよ」



「な……っ」

布束はもう一度ため息をついて、美琴に説明を始めた。

「打ち止め。この子は本来実験に使われる予定のない個体なの」

「……?」

「20001号。それが、この子の検体番号よ。思い出してみなさい。実験に使われる予定の個体は、ジャスト20000だったことを」

「……、あ。なら……どうして?」


そして、布束は話し始めた。
打ち止めが妹達の司令塔だということを。
そして、ウイルスのことを。
美琴の妹達は危機にさらされていると。
全てを聞き終えて。
自分の妹がまた――利用されていると知って。

「なんで……なんでよ……」

腹が立った。
こんなことを平気でする天井亜雄に。
そして、こんな現状を作り出した自分に。

「なんで、この子達が何かしたの!?この子達はこんなことをされるようなことをしたの!?」

「してないわ」

美琴の叫びを、布束は一言で断じた。

「But……利用価値があるから」

「……っ」

「だから、こんなことをされるのでしょうね」

利用価値。
それは、一番利用価値が高いレベル5の一人だからこそ、実感できる。
酷い言葉だ。
利用価値。
人をものように扱って。


「……とりあえず、ウイルスの起動時間は九月一日〇〇時〇〇分だから、それまでには必ずワクチンを完成させてみせるわ」

美琴を慰めるように布束はそういった。
打ち止めは絶対に殺させないと。
その優しさに触れて、美琴は僅かに強張った顔を緩める。
と同時に、思うのだ。


結局、また、誰一人救えやしない。


自分じゃ、妹の一人だって、救ってやることはできない。
守らなきゃいけないのに。
守らなきゃ、いけないのに!!!
と、美琴は何か嫌なものを感じ取った。
何か。
何かが、くる。

「……っ!!」

思わず打ち止めと布束を突き飛ばした。自身も衝撃で後ろに飛ぶ。
そして、ビュイン、と。
壁に穴が空いた。
美琴は知っていた。この能力を。
自身とよく似た、このチカラを。
これは――

「久しぶりだなぁ、超電磁砲」

そう言いながら、空いた穴から入ってきたのは。

「第四位……っ麦野沈利……っ!!」


第四位、麦野沈利。
この女とは、かつて潰し回っていた施設で対峙したことがある。

「なんで……アンタがここにいるのよ……」

「ああん?よくわかんねぇが、プランのために、布束を殺せ、という命令がきたんだよ」

布束がびく、と肩をふるわせた。
美琴は問う。

「プラン?」

麦野沈利は答えない。
ただ、嘲るように笑う。
そして、

「ふっざけんなっ!!」

美琴は思わず叫んで、布束の前に立った。そして、美琴が放った紫電に麦野沈利が放った原子崩しが軌道から逸れる。布束を狙っていた原子崩しは、あらぬ方向へと飛んでいった。

「チッ」

麦野沈利は楽しそうに舌打ちする。
美琴はぼそりと後ろに立っている布束に言った。


「打ち止めを連れて逃げて」

「でも……」

「いいから!!」

布束はしばし視線をさ迷わせて、頷いた。

「生きて」

「……っ」

それだけ言い残して、布束は突き飛ばされたときに床に落としてしまった打ち止めを抱えて走り出した。

「させるか――よっ」

麦野沈利の原子崩しを美琴は慌てて防ぐ。布束はその隙にこの部屋から逃げだした。

「めんどくせぇ……まあいい、てめぇを殺してから追いかけてやるよ!!」

ビュインビュインと立て続けに放たれる原子崩しの軌道を美琴は正確に逸らしていく。
――いける。
美琴は不敵に笑った。

「ふん、私が満身創痍の時でも勝てなかったくせに、一体何しに来たのよ、この格下」

「なんだとガキィ!!」

美琴の安っぽい挑発に麦野沈利は声をさらにあらげた。

「ガキガキうるさいのよ、おばさん」

電撃は通用しないと分かっている美琴は、磁力を使って麦野沈利に攻撃を仕掛けていく。






布束は走っていた。
あの優しい少女の頼みを絶対に果たそうと、精一杯走っていた。
もうすぐ、この施設から出られる。
そう思って薄く笑った時。

「―――――、?」

耐え難い痛みが、左足を襲った



>>60 訂正。改変前をコピーしてた



布束は走っていた。
走りながら、薄く笑う。
自分なんか見捨てて、打ち止めと二人で逃げ切れば、もうそれでよかったのに。
打ち止めを助けるのは、ほかの研究者でもよかったはずなのに。
甘い、と思う。
それ以上に、優しい、と思う。
優しくて甘い彼女に、自分はあの時からずっと憧れていた。

『私がまいた種だもの。自分の手で片をつけるわ』

あんなふうに、一人で抱え込んでいる彼女に、もう何も背負わせたくないと思った。
だから布束は走る。
精一杯、走る!!
――と、

「―――――、?」

耐え難い痛みが、左足を襲った



本日はこれで終わり。
……テストなんて私はしりません。


テストなんか放り投げてしまえば良いよ何とでもなる


何というwwktkな展開

芳川さんポジションか


続きに期待



その頃、美琴と麦野沈利の戦いは終わろうとしていた。
優勢は――美琴だった。
満身創痍のときでも、麦野は美琴に勝てなかったのだ。
これは当然の結果といえる。

「チェックメイトよ、おばさん」

ガツン!!と麦野沈利の頭に鉄塊がぶつかった。
ガクン、と麦野沈利の体が崩れる。
ついでに当分は起きれないように電撃を浴びせると、「ふぅ」とため息をついた。

「さて、打ち止めたちを追いますか」

美琴がそう呟いたときだった。

「それは無理だなあお嬢さん」

「……え?」

ぱっと声がした方を振り向く。
そして目に入ったものに、思わず息が詰まる。

「……ひ……あ、が」


吐くかと思った。
そこに居たのは、布束と打ち止めを両脇に抱えた見知らぬ少年。
その少年はどうでもいい。
今は、

「ぬ……のた、ば……さん……?」

かつての記憶がフラッシュバックする。
9982号。
実験。
一方通行。
バッチ。
そして、あの子のちぎれた足。

「あ……あ、……っ、いやああああああああああああああああっ!!!!!」

脇に抱えられた布束は、もう五体満足ではなかった。
左足を、ちぎられていた。
まるで、あのときのあの子みたいに。

「な……なんで……っ」


「へぇ、ほんとにお嬢さんはちぎれた足が苦手なんだな」

にやにやと笑った少年は、ぽいっとナニカを美琴のほうに投げた。
――左足。
布束の、ちぎれたほうの左足を。




「      !!!!!!!!!!!!」



自分でも何を叫んだのか分からなかった。
ただ叫んだ。
まるで気が触れたとしか思えない美琴に、少年は嬉しそうに顔を歪めた。

「なかなかに魅力的じゃねぇか。お嬢さん」

「なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!」

「なんで……ねぇ。全部お前のせいだよ、超電磁砲」

ここにきて、少年の呼び方がお嬢さんから超電磁砲にかわった。
はっきりと、美琴を糾弾するように。



「妹達が10032人死んだのも、この女が左足をちぎられたのも、全部お前のせいだ」

「私……の、?」

「そうだ。妹達のほうはお前も分かっているだろうが、この女のほうはわけが分からないよな。いいぜ、分かるように説明してやる。本来、この幼女……打ち止めだったか。は、お前が憎んでいるヤツと出会うはずだった」

「憎んでいる……ヤツ……?」

美琴の問いを無視して、少年は続ける。

「だが、お前が先に出会ってしまった。これじゃプランはご破算だ」

プラン。
その言葉は、先ほど麦野沈利も言っていた。
回らない頭で、美琴は必死に考える。

「だから、上はこうするしかなくなった。――お前を、そいつの代わりにプランに組み込むしか、な」

「……そ、れが……布束さんとなんの……」


「プランに組み込むためには」

美琴の言葉を遮ってさらに少年は言葉を重ねる。

「お前自身が、この幼女を助けなくちゃならねぇ」

だからこの女はダウンさせられるために左足をちぎられたんだ、と。そう少年は締めくくった。
つまり、と美琴は結論をだす。
そのプランとやらに私を組み込むために、布束の左足はちぎられたのか。

「ふ……ざ、けんな……」

「あん?」

「ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

その剣幕に、少年は一歩だけ後退りをした。

「何が実験よ!何がプランよ!!!!そうやってあの子達を、布束さんを傷つけて!!勝手にアンタ達の都合で私の大切な人たちを奪って起きながら、何が、何が何が何が何が私のせいだ!!ふざけんな!!ふざけんじゃないわよ!!!」

施設が揺れた。
美琴の感情に伴い膨れ上がった磁力につられ、鉄材が移動しようとしているのだ。
能力の暴走。
今や、施設そのものが彼女の武器になりつつあった。
くく、とそんな化け物じみた少女の所業をみてなお、少年は笑う。


「俺の役割はプランの確立だけだったが――」

少年は打ち止めと布束を地面に置いた。
そして、バッサア、と少年の背中から翼が生えた。
白い、天使のような翼が。

「これくらいなら、許されるだろ」

「ああああああああああああああああああああっ!!」

こうして。
学園都市第二位と第三位の能力者は激突した。




壮絶。
まさしく、それは化け物と化け物の戦いだった。

「うああああああああああっ!!」

「やるなお嬢さん。だが俺に常識は通用しねぇ」

雄叫びをあげながら美琴が放った巨大な鉄塊をどうやったのか自身にぶつかる直前に消す少年。
第二投、第三投も当然のように消される。
磁力による攻撃は当たらないと判断した美琴は今度は砂鉄の剣を少年にぶつける。
だが、やはり当たらない。
第四位が美琴に勝てなかったように、美琴もまた、少年には勝てない。
美琴は知らないが、少年もまた、美琴より序列の高い第二位の能力者なのだから。

「さて、そろそろ飽きてきたし、こっちから行くぜ」

少年は翼を一度だけふるった。

「……?」

美琴は首を傾げたその時、

「――――ッッッッッッ!?!?!?!?!?」

がしゃん、と体が崩れ落ちた。

「っと、やりすぎたか?」


そう少年が言ったのも聞こえない。
美琴の体には無数の深い切り傷ができていた。
そこから流れ出した血が制服に染み込み、大きな染みを作っていく。制服もところどころ引き裂かれ、その下にもやはり切り傷が出来ていた。

「何、を……」

「お前は俺には勝てねぇよ、お嬢さん」

地面に倒れた美琴に、少年は打ち止めを投げた。

「――、っあ」

美琴は痛みを堪えてそれを受け止める。

「じゃあな」

少年はそう言って施設から出ていった。

(とり……あえず、布束さんのためにも救急車を……)

とあるカエル顔の医者がいる病院へ救急車を頼むと、「すぐ行く」と言われ、通信は切れた。
そして、そこで大量出血により美琴の意識は落ちた。





思い出すのは、死んでいったあの子達。
そして、自身の力では誰一人救えなかったふがいない自分。

「お姉様は――」

ビクリ、と体を震わせた。
粘っこい声だった。
憎悪と嫌悪と遺恨と怨恨と敵意をぐちゃぐちゃのどろどろにして、それ言葉にして吐き出しているような、そんな声。

「誰一人、ミサカを救ってくださいませんでしたね――」

いや。
やめて。
そう言いたいのに、喉から出るのはひゅーひゅーという乾いた空気の塊だけ。

「こんなにもたくさんのミサカを殺したくせに――」



「いやああああああああああああああっ!!!」

はっと飛び起きる。
あたりを見渡すと、知らない場所だった。
いや、ここは病室?

「……? あ、そっ……か……」

あの後、多分病院に運ばれたんだろう。部屋には病院特有の薬品の匂いが漂っていた。
身体中に巻かれた包帯を見て、はあ、とため息をつく。
――と、そうだ。

「打ち止め!」

「……お姉様……?」

返事は案外近くから返ってきた。っていうか隣から返ってきた。
美琴が毛布を持ち上げると、その中に打ち止めが横たわっていた。

「良かっ……た……、お姉様が無事で、って……ミサカはミサカは安堵のため息をついて……みる……」

打ち止めは自身の体調なんか無視して、打ち止めは美琴に笑いかける。
そんな打ち止めに美琴の心は傷んだ。この子をほって何をやっていたんだ、私は。
ふと病室につけられた窓をみると、あたりは真っ暗だった。


(そうだ!今何時……っ!)

ウイルス起動まであと何時間なのか。病室に時計がつけられていないせいでわからない。
と――、

「み、さか、は……」

打ち止めの口が、動く。



「み、さ――……カ、ミサ。カはミサ、カはミサ!カはミサカはミサカはミサカはミサカはミサカはミサカミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサミサm《ujj0058@Misakagrミサqw0014codeLLgGミサかミサカvdeydla9((jkeryup@〔iig;**uui%%edvauqanqansicdaiasbna:――――――ッ!!」



「え――?」

美琴は思わず打ち止めを見つめた。
打ち止めは熱に浮かされた表情でよくわからない言葉を叫んでいる。

(――ウイルスが、起動準備をしてるんだ)


美琴は瞬時にそう悟った。
どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう。
布束はあてにはできない。左足をちぎられたのだ。早々簡単に復活できないだろう。
第一、ワクチンは完成していない。
だからといって、美琴に打ち止めは殺せない。
トラウマがある、というのもあるが、それ以上に、御坂美琴は打ち止めの――姉、だから。
しかし、あの子達を見捨てることもできない。
だとすれば。
残された道はたった一つ。

(私が、やるしか……っ)

だがどうする?
どうやって、この子をウイルスから救う?
この子を殺さずに、あの子達を救う?

(この子を殺さないためには、ウイルスを削除するしか……。やらなきゃいけないのは、ウイルスコードだけを検出して、打ち止めの脳内の電気信号を操って、検出したウイルスコードだけを正確に削除する……)

学園都市の中で三番目の頭脳を持つ少女は、少女の妹のためその頭脳をフル回転していく。

(感染前の人格データと感染後の人格データの差を求めることで、ウイルスコードを浮き彫りにできる。データが必要だわ。感染前の人格データが……)

あいにく、美琴はそんなデータを持っていない。
ならば、どこから入手する?


(打ち止め。実験。妹達。電磁波。欠陥電気)

はっと美琴は気付いた。

(――そうだ。ミサカネットワーク……!!)

そこには打ち止めの感染前の人格データが蓄積されているはずだ。

(……多分)

美琴は自嘲気味に笑った。

(全てが終われば、この子は全て忘れてしまう)

全てを――失って、しまう。
それでも。
やるしかない。

「だって、私は、姉だから」

妹を守るのが役目だから。
言い聞かせるように呟いて、美琴は目を閉じた。


打ち止めは今もミサカネットワークと繋いでいるはずだ。
ミサカネットワークは脳波を繋げることによって構築されている。

(――なら!!)

美琴は打ち止めの頭に手を触れた。
そこからミサカネットワークへと接続していく。
1秒、2秒、3秒、4秒……、
そして。

繋がった。


実験動物学習装置痛い実験痛い、痛い殺されるために生まれてきた痛いミサカ達のお姉様痛いです絶対能力進化1号は死んだ樹形図の設計者レベル5のクローン2号が3号が第三位の超電磁砲痛い右手がお姉様お姉様お姉様お姉様ミサカ痛い反射一方通行痛いミサカは実験実験黒猫5号も6号も7号も8号も9号も10号も11号も12号も13号も14号も15号も16号も17号もこのミサカも全部全部当たり前に死んでいく――



――痛いよ。
――お姉様。




「か……っ、は。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


胃の中のものを全て吐き出した。
1号から、10031号までの、死んでいく記憶。
狂うかと思った。
狂いそうだった。
――それでも、御坂美琴は手を離さない。
絶対に、離さない。
そして、たどり着いた。

『――お姉様』
『お姉様、何を――』
『ありがとうございます、とミサカは感謝を隠しきれずに――』
『――お姉様、まさかここまで――』

一万弱の妹達が自分に話しかけてくる。
とある妹は心配の言葉を、
とある妹は感謝の言葉を、
とある妹は驚愕の言葉を、
そして、
とある妹達の一人が言った。



『お姉様。どうしてここまでミサカ達のために――』



その言葉を、聞いて。
美琴は、自分でも驚くくらい、優しい笑みを浮かべた。


『だって私は、姉だから』



妹達からの声が――途絶えた。
美琴は言う。

『お願い、アンタ達を助けるために、打ち止めの感染前の人格データが欲しいの』

その瞬間、美琴の頭の中に打ち止めの感染前の人格データが入った。
どうやら妹達が入れてくれたらしい。

『ありがとう』

『……こちらこそ――ありがとうございます、お姉様。いつもミサカ達を守ってくれて――』

(……っ)

滲む涙を必死で押し留め、美琴は生体電気を操るために演算を始めた。





その頃。

「ここかあ、超電磁砲……!!」

にたり、と気味の悪い笑みを浮かべる女が、美琴のいる病院の玄関の前でたっていた。

「前回と今回、テメェにやられた分の借り、しっかり払ってもらおうじゃねぇかあああああ!!」





『――どうですか、とミサカ10032号は報告を要請します』
『そろそろ近いかと、とミサカ19002号は報告します』
『あと5分もすれば到着するでしょう、とミサカ17600号は捕捉します』
『大丈夫――ミサカ達はお姉様の妹なのですから、とミサカ14422号は不敵に笑ってみます』
『ふむ、そうですか――


 ――天井亜雄捜索部隊のほうはうまくいっているようですね、とミサカ10032号は結論を出します』





御坂美琴は必死に戦っていた。
打ち止めのウイルスコードを削除するために。

(大丈夫、いける……!)

今度こそ、自分の力で妹を守ってみせる。
その意地が、決意が彼女の力になっていく。
あと一分といったところか。
美琴は笑う。
そのことが、嬉しくて、思わず笑ってしまう。
ようやく、義務を果たせるときがきたのだから。
嬉しくないわけがない。

(これが学園都市最高の電撃使いよ。これが第三位の超電磁砲よ。これが――アンタ達の姉なんだから!!)


しかし、その時だった。

「超電磁砲!!」

「っ!?」

バン!!とドアが破られた。

(な……っ)

「昼間のツケを払ってもらいにきたぞぉ!!」

目が血走っている麦野沈利に、ぞく、と美琴の体が震えた。
同時に、ヤバい、とも思う。

(今、絶対に手を離せないのに……っ)

そんなことをすれば、ウイルスが起動してしまう。
しかし、このままだと打ち止めもろもろ原子崩しで殺されてしまう。


(なんで、こんなときに……っ)

あと30秒。
30秒なのに。

「……ん?なにやってんだ?ふん、まあいい、抵抗しないってんなら、おとなしくぷちっと殺されてろ!!」

麦野沈利はそう吠えて、肩のすぐそばに球体を浮かせる。

(――くる!!)

あと20秒。
美琴は目をつむって、打ち止めを庇うように強く抱いた。
あと15秒。
ビュイン、と原子崩しが放たれる音がして、
そして、それは美琴と打ち止めを、




――貫かない。



「……え?」

確かに美琴と打ち止めを狙っていた原子崩しの軌道は、美琴から僅かに逸れて、窓を貫いていた。
ぱちくりと目をあけると、そこには。

「大丈夫ですかお姉様、とミサカは――」

「まったく、間に合ってよかったです――」

「しかしこの棟から人を全員追い出すのに時間がかかってギリギリでしたね、と――」

「お姉様こんばんわ、とミサカは――」

「5人がかりでようやくわずかに軌道をずらす程度ですか、とミサカはため息を――」

美琴は理解した。
駆けつけてきてくれた妹達が、原子崩しの軌道をずらして美琴たちを助けてくれたのだ。
ぽかんと口を開いている美琴に、とある少年から御坂妹と呼ばれている妹達の一人が、こう言った。



「今度は、ミサカ達がお姉様を守る番です、とミサカはここに宣言します」



そして、0秒。
ウイルスは、全て削除された。




同時刻。

「観念しなさい、天井亜雄」

「ひ……っ」

路地裏の地面に転がされた男は、情けない声をあげる。

「よくも、ミサカ達を、そしてお姉様を危ない目にあわせてくれましたね」

同じ顔をした少女達は怒っていた。
自分達を危機に陥れたことに。
そして何より、自分達の姉が危ない目にあったことに。

「ミサカ達はともかく――お姉様まで、とは」

ハン、と珍しく感情を露にした妹達の一人に、天井は必死で命乞いをする。

「ま、まままま待って――」

だが、少女は聞かない。
聞く耳を持たない。
持つわけがない。

「適当に刑務所でも入って――」

三人の少女達は同時に電撃を右手にかき集め、そして、

「一生悔いてろ、とミサカ19002号は吐き捨てます」

それを天井亜雄に、容赦なくぶつけた。



「さて、と」

打ち止めから離れ、美琴は麦野沈利を睨み付ける。
それは強い瞳だった。
麦野沈利はそれに少しだけ怯む。
守るべきものをもったものだけが宿す、特別な何かを美琴はもっていた。

「このストーカーの格下が。格の違いってのをもう一度みせてやるわ」

先ほどの妹達の言葉を思い出す。
“しかしこの棟から人を全員追い出すのに時間がかかってギリギリでしたね、と――”
つまり、この棟に誰もいない。
配慮をしなくていいということだ。

「さっさと終わらせるわよ、妹達」

その言葉に、妹達は頷いた。

「「「「「はい、お姉様」」」」」



美琴が磁力で持ち上げたベッドを投げ、妹達が原子崩しの軌道をずらそうと紫電を放つ。
姉妹の息は、かつてないほどぴったりだった。
当たり前だ、ネットワークを通じて無言でやりとりをしているのだから。
――と、

『どうやら天井亜雄への処罰は終わったようです、とミサカ10032号は報告します』

『天井……亜雄?たしか、ウイルスを入れたっていう……』

『はい、とミサカ10032号は肯定します』

『なら、あとはこいつを撃退すれば日常に帰れるってことね』

美琴なニヤリと笑う。
そして、ブンッ、とテーブルを投げた。

「な、めんじゃないわよぉおおおお!!!」

麦野沈利が原子崩しを放った瞬間、

「チェックメイトです、とミサカ10032号は宣言します」

麦野沈利が電撃に干渉する前に。
バチィ、と紫電が散って――全て、終わった。




「……お、わっ……たあ……」

床に倒れた麦野沈利をみて、美琴は感慨深くそう呟く。

「はい、お姉様、全て終わりました。とミサカ10032号は同意しま――あれ?」

びちゃ、とそばにたっていた御坂妹の服が血に濡れた。
御坂妹の血ではない。
美琴の血だ。

「あ、傷口開いちゃった……か、も……」

そう言っている間にも美琴の来ている服がさらに赤く染まっていき、

「……、ぁ」

がたん、と床に崩れ落ちる。
こうして、美琴は1日に大量出血で二回も気絶するレア体験をしたのだった。






――第5巻再構成、終――

一気に終わらせてみました。疲れた……。
しかし100スレいかなかったですね、うーむ。
次回はエピローグを投稿します。
……それにしても戦闘描写が苦手すぎる。
一つ一つの戦闘があっさりしすぎたかなぁ?もっと練習します……。
……テストどうしよう。

ついでに。
入れたかった展開をここで投下してみる。



「……ご、めんなさ……い、お姉様……ってミサ……カはミサカは……謝って……みる……」

打ち止めが、必死に口を開いた。
美琴は思わずたずね返す。

「……打ち止め……?」

「……ミサカ達はもう……自分たちのこと……実験動物……って言わない……から……」

「――」

「……ごめんなさい、お姉様……」

だからお姉様。
ミサカを、助けて――。

「……あは、」

「あは、あははははははっ!!」

「お姉、様……?」

「ははは、はははははははははっ!!」

「はは――は、はは。……わかった」

「……?」

「私が、アンタを絶対助けてみせる」

「……おね……さま……」

「大丈夫、――お姉様に任せなさい」

「……うん、わかった……ってミサカはミサカは頷いてみる……」



テストがんばー

おつおつ
テスト頑張りなさいww

乙なんだよ

布束さん……原作で闇に落ちたこと考えたら、足の一本のほうがまだましなんだろうか……

乙でした
テスト頑張ってください


むぎのんかませすぎワロタw

おつ
こっから続かないのか残念




「……あのね、布束さん」
「……何かしら」
「ひとつだけ、お願いがあるんだけど」






「ふはははー!!もう誰もミサカを捕まえられないってミサカはミサカは宣言してみたり!!」

「ああもう!!どうして子供ってこんなに元気なのかしら!」

「頑張れお姉様、とミサカは幼女との遊びを放棄します」

「……アンタねぇ」

公園には三人のよく似た少女の楽しげな会話が響いていた。
……実はこの三人、こっそり病院から抜け出してきていたりする。

「にしても平和よね」

「脈絡が一切ありませんが、そうですね、とミサカは同意します」

美琴達が追いかけてくれないことにぶーたれて、ブランコを漕ぎ始めた打ち止めを見ながら、美琴は笑う。

「……お姉様」


「なぁに?」

「本当に良かったのですか、とミサカは確認します」

「……」

笑みをフッと消して、美琴は黙った。
御坂妹はさらに言う。



「ミサカ達の新たな司令塔になる――なんて」



布束に先日お願いしたもの。
それは――打ち止めのかわりに自分が司令塔になるためのプログラム。

確かに、ミサカネットワーク、しかも司令塔になれば、妹達の危機をすぐに察知できる。
――しかし。


「今回の件でいやと言うほど分かったではないですか、とミサカは言葉を重ねます。どうしてですか、どうしてそこまでミサカ達のために命を……っ」


『but……利用価値があるから』

布束の言葉を思い出す。
それはつまり、いつでも狙われているぞ、ということだ。
とくに、司令塔なんかになれば――その一万の妹達をたった一人で掌握できるのだから――命を狙われるリスクはもっと高い。
美琴は分かっていた。
分かっていても――彼女は、この道を選ぶ。
だって。


「だって私は、姉――だから」


守ってみせるのだ。
これからは、自分の手で、必ず。
御坂妹は、そんな美琴を眩しそうに眺めながら、あきれたようにため息をはく。


「まったく、困った姉です、とミサカは――」

「あーっ!!ミサカもお姉様とお話するのー!!ってミサカはミサカはお姉様にとびつきながらわがまま末っ子の位置を主張してみる!!」

「わっ!?いきなり抱きつかないの」

「……ミサカだって妹です、とミサカもお姉様に抱きついてみます」

「……妹……、ふふっ」

耐えきれずに美琴は笑った。
それをみて、打ち止めは満面の笑みを、御坂妹は小さな笑みを浮かべる。
誰がどうみても――仲のいい、姉妹だった。




布束さんは無事カエル医者の手によって左足は繋がれたみたいです。

最後までむぎのんの扱いが酷くてすみませんでした。
再構成って楽しいですね。
短かったですが、ありがとうございました。

おつ

乙!

乙!
この設定引き継いで9月30日の再構成もそのうち書いてほしいかも

乙!
姉妹っていいなあ…


いい話なんだが少し急ぎすぎというかプロットを読んでる感じがした

番外編でその頃上条さんと一方さん希望

乙!なんか続きも読んでみたいな…すっげえ大変そうだけどww



だからそれは、きっと恋だったのだと思う。

最初は、標的対象の一人でしかなかった。
どこにでもいる、ちょっと能力が高いだけの女子中学生。
まあ確かに、顔はよかったかもしれないけれど、ただ、それだけだ。

でも、いつからだ。
自分は、いつから。

彼女の強さが羨ましかった。
彼女の決意がまぶしかった。
彼女の笑顔は綺麗だった。
彼女の言葉は温かかった。

そして何より、彼女の弱さがたまらなく愛おしかった。

標的だったのに。
標的だった――はずなのに。
武器を向けたくなかった。
武器を向けなくてはならなかった。

これは絶対に抱いてはならない想い。
敵に恋心を抱くなんて――なんたる滑稽。なんたる無様。

なのに。


彼女の甘さは致命的で。
彼女の優しさは決定的だったから。


だから自分は決めた。
彼女に止めてもらおうと。
彼女が自分を止めれなければ。

そのときこそ、自分は任務を遂行するため、心を捨てよう――、と。




「打ち止め、やっほー」

「お姉様、いらっしゃい!えへへー。ミサカすっごく楽しみだったんだから!ってミサカはミサカは満面の笑みで答えてみる!!」

9月5日。
美琴は3日振りに打ち止めに会っていた。
美琴は2日で退院し(が、いまだに傷は深く残っていて、体育は見学を命じられている)、学校があったりして、会うことができなかったのだ。
打ち止めはぽふ、と美琴の体にだきつくと、すりすりと頬をこすらせる。
某後輩がみたら、怒りのあまり卒倒しそうだ。いやむしろ感激するかもしれないが。お姉様と小さなお姉様がー、と。

「他の妹達は?」

「他の個体は今調整にいってるんだよ。だからミサカを目いっぱいあまやかすといいー!ってミサカはミサカは命令してみたり!」

「はいはい」

二人は病室のベットに腰掛けると、この3日間であったことをたくさん話し合う。
べつにミサカネットワークで話せばいいじゃんと思われるかもしれないが、やはり直にあって話すほうが楽しい。
いつか世界にいるいまだあったことがない妹とも会ってしゃべってみたいものだ、と彼女は思う。


「へぇ、毎日楽しそうねー」

「でもお姉様といるほうがいい!ってミサカはミサカは主張してみる!」

「ありがと。私も打ち止めといるときは楽しいわよ」

「えー、他のミサカといるときよりも?」

「……え?」

「たとえば10032号とか!色々いるし!どのミサカと一緒にいるときが一番楽しいのってミサカはミサカは問い詰めてみる!!」

「そ、それは……」

美琴は苦笑いを浮かべる。
なんだか、たくさんいる子供のお母さんってこんな気持ちなのかなぁ、と思う14歳なのであった。


「そ、それより打ち止め!け、ケーキ買ってきたのよケーキ」

「む、露骨なそらし方かも。ってミサカはミサカは半眼になってみたり」

「じゃあ食べないの?」

「食べる!!ミサカケーキ食べる!!」

美琴は立ち上がり、部屋においてある電気ポットでお水を沸かす。
打ち止めがケーキの箱をあけると、そこにはモンブランやチョコケーキ、ショートケーキなど色とりどりで美味しそうなケーキが沢山入っていた。
箱には某超有名ケーキ店の名前が書かれていて、これがレベル5の財力か、と打ち止めは感嘆する。
ついでに、ちゃんとケーキはこの病院にいる妹達の分まであった。

「お姉様なに食べるー?」

「私はアンタ達の残りでいいわよ」


『ミサカ10032号はチョコケーキを!!チョコケーキを所望します!!』

『ではミサカ13577号はモンブランを!!モンブランは渡しません!!』

『み、ミサカ19090号だってモンブランがほしいです!!』

『ならばミサカ10039号はショートケーキの覇者になりましょう!』

「あ、あはは……」

突如始まった妹達のミサカネットワーク上の口論に苦笑しつつ、美琴は沸いたお湯をこぽこぽとコップにそそぐ。
そして打ち止めにコップを手渡しながら、彼女は問う。

「で、結論は?」

『『『『「チョコケーキ!!」』』』

「オイ」

これならそれぞれの希望を聞いて買えばよかったかなぁ、と彼女は少々後悔した。


上条「恋人をやってほしいだって?」一方通行「……あァ」はいつか>>42がやってくれると信じて、海原編で再構成を。
ちょうどテストも終わりましたし、なにより続編希望のスレが嬉しかったので。


すぐ終わらせるにはもったいない設定だぜ


やはり美琴のストーリーとしては上条さんのあの誓いの言葉は欠かせんが
さてこの再構成ではどうなるやら・・・・・・


「はぁ……」

病院から出た美琴は、ぐいー、と伸びをした。
今日の調整から戻ってきた4人の妹達も加え、6人でわいわい騒いだので、結構疲れた。
早く帰って寝るか、と彼女は今後の予定をざっくり決める。

「あれ?」

美琴は驚いて立ち止まった。
目の前には、妹達の一人がいた。

「……お姉様」

「さっきの4人……じゃないわよね。ほかのとこに預けられている妹達の一人かしら」

「……はい、とミサカは肯定します」

こくり、と妹達の一人は頷いた。

「こんなところでぶらぶらしてないで早く帰んなさいよー。そろそろ完全下校時間が過ぎるしね」

「……、あの、お姉様」

「なに?」

「明日、時間空いていますか、とミサカは尋ねます」

「ん?あいてるけど……」

「なら、ミサカと……遊んでくれませんか、とミサカはお願いします」

「あははっ、いいわよ。じゃあ、明日の4時にここに集合でいいかしら?」

「……はい、お姉様。ありがとうございます」

ぺこり、と頭をさげてその妹達の一人は走っていった。
美琴は姿が見えなくなるまで見届けてから、寮へ帰るため歩き出した。



次の日。

「やっほー!」

美琴の挨拶に、妹達の一人もぺこりと頭を下げながら返す。

「……お姉様、こんにちは」

「早いわねー。私、10分前につくように頑張ってきたのにさ」

「ミサカは……やることがありませんから、とミサカは答えます」

ふふ、と笑う美琴に、妹達の一人も笑い返した。
だけどその笑みは――
なんだかとっても、悲しそうに見えた。

「……?」

何か悩み事でもあるのだろうか、と彼女は首を傾げる。
できうることなら、自分に相談してほしいのだが。


「……お姉様、どこへ行きますか?とミサカは尋ねます」

「あっ、そうねー……うん、じゃあケーキ食べに行こうケーキ!」

「ケーキ、ですか……」

「そ。10032号達が食べたケーキ屋さん。美味しいのよ?紅茶も有名でさ」

それに、と美琴は続ける。

「9982号とも、行ったことあるのよ……ね」

「……」

パン、と沈んだ空気を払拭するように頬を叩くと、

「じゃあ、行きましょっ」

美琴は妹達の一人の手をとって駆け出す。

「……はい」

妹達の一人は、小さく頷いて、ついていった。







「……ぁ」

少女は目を覚ました。
そしてその瞬間、激痛に襲われた。

「――ッッッ!!!!」

ハッと右足を見ると、数センチほと肌が剥ぎ取られていた。
激痛に歯を食い縛りながらキョロキョロと辺りを見渡すと、そこは知らない場所だった。
そうだ――、自分は、何者かに襲われて、そこから、記憶がない。
とりあえずネットワークに繋ごうと接続を試みるも、なぜだか繋がらない。
この部屋に変な仕掛けでもしてあるのかもしれない。

「………さ、ま……」

少女は無意識に呟く。
あまりの痛みに涙がこぼれそうになりながら、ポツリと。

「たすけて、おねえ……さま……」



「あはは、美味しかったわね」

美琴が笑いかけると、妹達の一人はそうですね、と同意した。
この1時間で分かったことだが、どうやらこの妹は他の個体より口数が少ないらしい。または、テンションが低い、か。それも個性だ、と彼女は内心嬉しく思う。

「そういえば聞いてなかったわね。アンタ、検体番号なに?」

「……17857号です、とミサカは即答します」

「17857号かー、うん、把握したわ。次はねー、そうだ!ショッピングに行きましょう!」

「ショッピング……ですか……?とミサカは返します」

「そ!ゲコ太買いましょうゲコ太!」

「……子供趣味は相変わらずのようですね、とミサカは苦笑します」

「もう!みんなして!昨日10032号にも言われたのよね……。はーあ」

「……別に、いいと思いますよ」

「へ?」

「そういうところも、魅力の一つだと……そう、ミサカは思います」

「そっそうかしらっ?ありがとっ」

顔を真っ赤にしてお礼を言う美琴に、17857号は小さく笑った。
愛おしむように。
泣きそうな顔で。



ずる、ずる……と少女は体を引きずる。
この部屋から出られれば。
もしかしたら、ネットワークに繋げるかもしれない。
そして、お姉様が――助けに、来てくれるかもしれない。
そんな希望だけをたよりに、少女は手を使って這うように進んでいく。

「お、姉様……」

ずる、ずる、ずる……。
果てしない時間が流れているように感じた。

「おねえ、さま……」

苦悶の表情を浮かべ、滝のような汗を流しても、彼女はずるずると這い続ける。
そして。
あ、と彼女は声をあげた。
――たどり着いた。
上半身だけ起こして、必死に手を伸ばし、ドアノブを下ろす。
そして、扉を押すと、ギィ、と開いた。
その瞬間、ネットワークに繋がった。
少女は――17857号は、言う。
17857号は叫ぶ。
この声が届くように、必死で。

「助けてください……っ!!お姉様!!」





「……え?」

それは突然だった。
急に、強いメッセージがミサカネットワーク経由で美琴に届いた。

『助けてください……っ!!お姉様!!』

妹達からのSOSだ。
誰だ。誰からだ。
それは――

「17857……号?」

目の前の“17857号”から表情が――消えた。




愛しい少女の目の前で、“彼”は思う。

気づいてしまった。
仲良しごっこは、もうおしまいか。
……残念だ。
なんて、あっけない。
はあ、と心の中だけで自分はため息をつく。
――楽しかったですよ、御坂さん。
愛しています。
さようなら。



「待って……アンタは……アンタは誰……?妹達の一人、なのよね……?17857号なのよね……?」

得たいの知れないものを見るような顔で、美琴は“17857号”に詰め寄る。
“17857号”は――静かに笑って、否定した。

「いいえ、“僕”は一介の魔術師ですよ、“御坂さん”」

「まじゅ……つ?」

“17857号”は懐から何かを取り出すと、美琴の方にむけた。

「――――ッ」

まさしく、それは幸運だった。
美琴が反射的に横に飛んでいなければ、ビームのようなものにあたり、死んでいただろう。

「ああもう、何なのよっ」

バチィ!!と紫電が散る音が響いた。

(原子崩しみたいなモノ……?でも待って、それじゃああの子達と――私と同じ顔をしている説明がつかないわ)

美琴は磁力を使って高速移動をしながら、“17857号”から逃げ始めた。
“17857号”は何度も何度も原子崩しのようなもので美琴を攻撃してくる。
わりと的は大雑把らしく、時々かなり美琴から外れて撃たれるのだが、それゆえに危ないと美琴は思う。このままでは、周りの人も巻き込んでしまいかねない。

(あの子達と同じ顔の人間を攻撃するのは気が引けるけど……!)

せめて昏倒させるだけに留めようと、彼女は近くに落ちていた鉄パイプを磁力でぶん投げた。

「甘いですね」

「チッ!!」


舌打ちする。鉄パイプは原子崩しのようなもので消し去られた。
分が悪い、と彼女は正直に思う。
この子たちとは戦えない。
戦うことができない。

「……っ」

たとえば、電撃なら、一発だろう。
あの速度を避けられる人間なんて、そうそういないはずだ。
だけど、それはつまり、“妹達”に確実に危害を加えることを意味する。

(どうしよう――)

だからいま、逃げる回ることしかできないのだが。
どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう。

そのときだった。

「お姉様ーってミサカはミサカは叫んでみたり!!」

「な……っ」

「…………」

疑問と戸惑いが同時にあふれ出す。
なぜ、ここに打ち止めがいるのだ。
どうして、こちらに向かってきているのだ。


「あの……馬鹿っ!!」

美琴は悪態をつきながら、打ち止めのところまで一直線に駆けつけた。

「なんで、なんでアンタこんなところに!!」

まるで無茶をした子供を叱り付ける母親のように。
心配したからこそ、彼女は打ち止めを怒鳴りつける。
打ち止めはびくっ、と体を震わせると、

「ご、ごめんなさい……ってミサカはミサカは謝ってみたり。でも、お姉様が心配で――ひゃっ」

打ち止めが言い切る前に、美琴は打ち止めを抱えて空中に跳んだ。先ほどまで美琴たちがいた場所が、“17857号”によって破壊される。

「心配ならミサカネットワークを経由して聞けばいいでしょうが!!」

「お姉様が応じてくれなかったんじゃん!!ってミサカはミサカは言い返してみたり」

「え?」

慌ててミサカネットワークの記録を読み直すと、確かに何度も打ち止めから呼びかけられていた。
他の妹達からも、何回もきている。

「……えーっと、ごめん」

「分かればよろしい、ってミサカはミサカは上から目線でいってみる」

そういっている間にも、“17857号”からの攻撃はやむことがない。
このままでは、自分はともかく打ち止めが――。


(……本末転倒じゃない、これじゃ)

妹を守らなきゃいけないのに。
これじゃあ。
ふっ、と自嘲気味に笑った。

(……よし)

美琴は意思を固め、打ち止めに確認する。

「あの人は――妹達じゃ、ないの……よね?」

「違うよ、ってミサカはミサカは否定してみる。同じ顔なだけの、ただの他人だよ」

「そう――」

そして、
美琴は。

「ごめん」

バチィ!!と、紫電が散った。
それは、反応する暇もなく“17857号”を貫く。

「な――」

“17857号”は、倒れた。



17857号から一通り事情を聞き、美琴は“17857号”のもとへ歩いていった。
打ち止めは物陰からこっそり見守ることにした。先に帰っていろとはいわれたが、心配なものは心配なのである。

「ねぇ」

ゾク、と背中に悪寒が走った。
それほどまでに、美琴の声には怒りがこもっていた。

「私を狙ったことはどうでもいい。レベル5だし、そういうのは慣れてるから。……でも、なんで、あの子を狙ったの?」

「……さて、なんででしょうね……」

「痛い目にあいたいの?その気になればアンタの下半身くらい簡単に吹っ飛ばせるのよ?」

「……僕はあなたがそんなことをできない人だって、しっていますけどね」

「……」

ふん、と鼻を鳴らして美琴は黙った。
どうやら、話す気がないと判断したらしく、それ以上問い詰めようとはしない。

「……魔術」

「……え?」

「魔術という言葉を、覚えておいてください」

「……まじゅ、つ?」

「あなたの知らない法則……とでもいいましょうか。まあ、多分あなたがかかわることはないと思いますが、一応、ね」

魔術。
それはあれか、ゲームとかに出てくる、いわゆる魔法使いが使うものだろうか。
こんな科学の街で魔術という言葉が出てくるとは。と、科学で創られたクローンである打ち止めは、怪訝そうに顔をしかめた。


「あのね、御坂さん」

「……何よ」

「僕はあなたのことが好きなんですよ」

「……、は、はぁああああ!?」

打ち止めは慌てて口を押さえる。こっちまで驚愕の叫びをあげてしまいそうだった。
好き――?
襲った、くせに?
そんな美琴の対応に、“17857号”は苦笑する。

「……アンタ、本気?」

「本気ですよ。うそ偽りなく、あなたのことを愛しています」

「……なら、どうして私と同じ顔をしているあの子を狙ったのよ」

「……あの人たちを使えば、あなたは必ず僕を倒すだろうな、と。僕は、あなたにとめてほしかった」

“17857号”の言葉に、アンタ、身勝手ね、と美琴ははき捨てた。
知っていますよ、と“17857号”は笑いながら返す。


「それにしても、とめてほしかった――ってことは、なにかしら、あったわけね、やっぱり」

「企業秘密です」

「最低」

「知っていますよ」

「教えて?」

「駄目ですよ」

「残念」

おどけた風にいう美琴。
最初から、話してくれるとは思っていなかったらしかった。
まあ、最初に言ったときも教えてくれなかったのだから、当然ではあるのだが。

「ねぇ、アンタさ」

「なんでしょう」

「名前、なんなの?」

少しだけ、“17857号”は黙った。
数秒たって、ようやく口を開く。

「    」

その言葉は、打ち止めには聞こえなかったけれど、美琴には聞こえていたらしい。
そう、とだけ頷いた。

「ねぇ、アンタは、私のことが好きなのよね?」

「……はい、そうですよ」

「なら、お願い、聞いてくれる?」

にっこりと笑う美琴に、“17857号”はこくりと頷いた。
どうやら、聞いてくれるらしい。
本当にすきなのだな、と打ち止めはぼんやり思った。
もしくは、罪滅ぼしなのかもしれないが。
好きな人の大事な相手を傷つけたのだから。


「私の妹、まあ、分かってるわよね。妹達。あの子達をね、守ってほしいの」

「……」

「あの子たちさ、布束さん……とある研究者さんがいうには、利用価値があって、狙われやすいんだって。だから、お願い」

「……、御坂さん」

「なぁに?」

「ひとつだけ、付け加えてもいいですか?」

「……何を?」

「その中に、あなたを入れても、いいですか?」

「……私を守るっていうの?負けたくせに?襲ったくせに?」

「ええ。駄目――ですかね」

「……勝手にしなさい」

「ありがとうございます」


そういうと、美琴は立ち上がり、打ち止めのほうに近づいてきた。

「アンタ、まだ帰ってなかったの?」

打ち止めに気がつくと、美琴は驚いたようにいった。
打ち止めはえへへ、と誤魔化すように笑う。

「ねぇお姉様」

「? 何?」

「大好きだよ、ってミサカはミサカは心中を吐露してみる」

「……うん、私もよ。じゃ、本物の17857号を迎えに行きますか。既に何人かの妹達は行ってるんだろうけど」

「うん!!ってミサカはミサカは同意してみたり」

そんな仲良くここから立ち去る二人を、“17857号”はじっと見ていた。
眩しいものをみるかのように、目を細めて。



お久しぶりです。海原(偽)編終わりです。
結構前に書き終わってたんですが、どうしても納得いかず、かと言ってこれ以上いいものがかけず、なんだか無駄に更新を伸ばしてしまってすみません。
もっと頑張ります。
8巻内容か12巻内容か……、様子を見て更新しようと思います。
ではまた。

流石エツァリ。大胆な告白だぜぇ

美琴ってこういうストレートな言葉に案外弱そうだよね
それにしても海原(本物)じゃなくて御坂妹に変装するとは…義妹に原作よりも白い目で見られそうですねエツァリさんww

乙 美琴と妹達の姉妹の絆・・・・・・いいねぇ

この再構成では上条さんは完全に蚊帳の外の予定なんだろうか?
偽海原編は魔術も絡むし、そもそも美琴が狙われた理由が上条さんが原因だったはず(この作中で描写がないので監視理由と攻撃動機は原作通りと勝手に判断)
まったく上条さんが関わらずに、いきなり偽海原(ここだと偽妹達か)が絡んでくるのが強引すぎ・・・・・・あくまで個人的にはですが

しかし、上条さん関係がまったくない美琴ってのも結構物足りないもんなんだな

>>144
なぜ美琴を狙ったかは、いずれわかると思ふ…よ?

面白いわこれ
御坂姉妹を中心にした話ってあんまりないしもっと見たい
お姉ちゃんを発揮する美琴はイケメンだなぁ


エツァリと美琴の二人を描写した作品て少ないから嬉しい!

>>144
5巻から始まってるってことは妹達編は上条さんが一方通行倒して凍結させたはずだよな
まだ出てこないだけで上条さんが全く関係してないとは言い難いんじゃね?

だからこそ、このSSで上条さんと美琴のやりとりが見れたら嬉しいなーと思っちゃうけど(チラッ

いやーここまできたらいけるとこまで上条さんと一方さんを空気にしてもらいたい気もするな
そっちほうが色々妄想を掻き立てられるというか……ぐへへへ


なんかこの話の一方さんは百合子な気がする

偽海原はインデックスが上条さんの所に居候始めた後に調査に来たんだし
5巻までで3巻以外美琴と上条さんは接点ないんだよな

人によっては恋人ごっこの一件がないと上条勢力と認定するにはちと弱いと思うかもしれんし
なにより偽海原の心境的には上条さんを消すほう選ぶだろってんで美琴狙ったのに疑問が残るのはしゃぁない

脅威度を美琴>上条とみなしたなら十分ありえる展開だと思うが
擬似的とはいえ巨大な演算装置手に入れた能力者とか怖いだろ

>>151
自分が言ってるのはあくまで偽海原『が』美琴を消すほうを選んだって点についてだよ
組織の方が>>151ように判断した可能性は自分も十分ありえると思うしね


上条さんは12巻再構成までずっとがん無視の予定だったんですが、>>147でいわれたので。
速攻で書いてみました。



「あれ?御坂久しぶりだな」

「ああ、アンタか」

病院から退院した日。
病院からの帰り道で、御坂美琴は久々に上条当麻に出会った。

「最近会わなかったけど、なんかあったのか?」

「……あー、色々あってね、入院してたのよ」

「入院!?御坂が!?」

レベル5が入院レベルの怪我を負うのかー、と思っているらしい。
美琴ははぁ、と嘆息した。

「私だって人間よ?怪我くらい負うっての」

「ま、そうだな」

「ところでアンタ、うちの妹に手ぇ出したらぶっとばすわよ」

「いきなり!?」

「生まれてまもない純情なあの子達とアンタが不用意に出会っちゃったら……考えるだけで怖気が……っ」

「おーい御坂さんそれは俺を貶してるのか?それともただのシスコンなのか?」


「強いていえば前者ね」

「容赦ねぇなおい!あとお前の妹は明らかに純情じゃねぇ!」

「うるさいわね、こっちは退院直後なのよ。もっと労わりなさい」

「労わるような言動をさせてください!」

上条の渾身のツッコミに、美琴は「はいはい」と簡単にあしらう。
なんて無茶苦茶な女子中学生なんだ……と上条は泣きたくなった。
でもまぁ、女子中学生なんてこんなもんである。
そして、

「あのさ」

散々騒いだ帰り際、美琴は最後に、こういった。



「あの子達を助けてくれて、本当にありがとう」



それは、あの日伝えられなかった感謝の言葉。
ぺこり、と頭を下げて、美琴は走っていった。
信じられないものをみた上条は、たっぷり10分間は固まっていたのだった。





5巻を経てない美琴は、上条さんに対して恩人とは思っていても恋愛対象ではないと思うんですよね……
なのでわりとあっさり。
御坂姉妹中心の物語はかなり好きです。
レールガン7巻からして妹達は上条ルートじゃなくて美琴ルートにいきそうなんだけどなぁ……
先に立ち上がったのも美琴だったし……



仕方ないよ
あんまり言いたくないけど、
妹達の内の二人は自分を殺した相手の傍に何の嫌悪感も感じずいるんだし、
打ち止めはともかく番外個体のついては負の感情を拾って増幅するっていうのは、あってないような設定にしか見えない
美琴だって一方通行見て目くじら立てるけど、原作で妹達を気にかける描写がほとんどないから、なに言ってんだって気分になったよ

自分は超電磁砲7巻読むと美琴は既に上条さんに恋愛的好意を持ってると思ったけどな
まぁそこらへんの感じ方違うし人それぞれか

>>157
一方通行擁護する為に美琴は妹達を気にかけてない!って言い出す奴みたいな言い分だな

>>156
一応恋心自体は3巻終了時で抱いてるんじゃなかったっけ?
自覚するのは16巻だけども、何か特別な感情を抱いている事は自覚はしてたと思うんだが
超電磁砲7巻の後日談でも『どう見ても惚れてるだろ、これ』な描写で補強(?)されちゃってるし

>>157
言いたかないが一方通行を強引に主人公化した皺寄が酷いんだよな
一方通行主人公化は別にいいんだが、その為に美琴は妹達から引き離されるし
しかも再会したら描写面倒だから再会させたくないと言わんばかりに同日に上条関係のイベント入れるという徹底よう
打ち止めとの遭遇も不自然なスルーさせられちゃったしね、新約でもこれが続くのだろうかと思うと・・・・・・

>>158
不快に思われたなら謝るよ、すまん
少なくとも一方通行を擁護するつもりはないよどちらかというとあまり好きじゃないしね
美琴のあり方がどうかなって思っただけだよ

鉄橋は恋の合図は禁書3巻だし、美琴が上条さんに、何がしかの感情を抱いたのは、禁書1巻以前だよね。
そもそもエツァリが上条さんを狙ったのは、魔術の世界に関わり始めたからじゃないのか?
科学世界だけだったら何の問題も無かったけど、科学と魔術の両世界にシンパを持ったから危険視された訳だし。
上条さん抜きで、エツァリが美琴を狙ったなら、何故?って感じ。脅威度なら一方通行や垣根帝督じゃないの?
まあSSだからいいけどさ。

超電磁砲のほう読んでると美琴の恋愛関係ってすげー勢いで外堀埋められてるよな

5巻で恋愛感情が生まれるとも思えないが、先に言われてるように受け取り方って人それぞれなんだな


まあこのssはあくまで美琴と妹達の話なんだし上条さんその他サイドは無視で問題ないと思います
そういや今大王で大覇星祭やってるけどその話の再構成も面白そうだよね、まあ終わらないとなんとも言えないけどww

好きに書けばいいよ
外野気にするな

いいこと思いついた

3巻をまるっと無かったことにしちゃえば友情止まりでも違和感ないぜ!・・・・・・・・・・・・あれ?

美琴好きはこれだから・・・

一方厨の糞腐女子はコメント残すな迷惑だ。あとageんな

1巻時点でどう見ても好きになる一歩手前だけどな。
そこから進展するかは話の進み方次第とは思うが。

それでも報われずに終わりそうな美琴が愛しい

操祈の出番はありますか?



ついでに、6巻では美琴は入院中なので、インデックスにはあってません。


9月13月の深夜。
廃工場の中で、4人の少女たちは戦っていた。
正確には、3人対1人だが。

「くっ――」

3人のうちの1人である19090号は歯噛みした。なんたる無様、と自嘲気味に自分を叱咤する。
肩から溢れ出す血を必死で抑え、その痛みに顔をしかめた。ふとした瞬間に涙がこぼれてしまいそうだ。
結標淡希――それが、19090号達が戦っている相手である。
いつもなら自分達を床に転がして嫌な笑みをにたにた浮かべているのだが、今日はその姿は見えない。どうやら座標移動という自分の能力を生かして、見えないところから攻撃を仕掛けているらしい。
美琴にばれないように最新の注意を払いながら、19090号はミサカネットワークで報告を始める。

『怪我が思っていたよりも酷く、今日はこれ以上このミサカは使いものにならないでしょう、とミサカ19090号は、……っ、客観的に自身に判断を下し……痛ッ』

『了解しました、とミサカ10039号は返答します』

『今日はここまでのようですね、とミサカ13577号は銃をおろしながらため息をつきます』

『すみません……と、ミサカ19090号は謝罪します』

『いえ、あなたが謝ることではありません、とミサカ10032号は否定します』

ミサカネットワークから接続を切り、ふう、ともう一度ため息。
結標淡希は自分達が今日はもう戦わないと悟ったのだろうか。もう攻撃はやんでいた。
肩を貫くコルク抜きから目を背け、19090号は歩くのをやめる。


(もし――)

19090号は思う。

(もし、お姉様なら、こんな無様な姿を見せずにさっさと解決してしまうのでしょうか、とミサカは苦笑いを浮かべます)

だけど、あの完璧超人のお姉様に頼るわけにはいかない。
そう、これは意地なのだ。
守られてばかりではいけない。
何より、お姉様の隣にずっとたっているために。
ずっと一緒にいたいから。
今、彼女に頼るわけには――いかないのだ。
ガキ臭い考えだと思う。
それでも。

(お姉様……)

目をつむり、彼女はドサッと倒れ込んだ。
お姉様、と。





「1、19090号ッ!?アンタどうしたのよその怪我!!」

「階段から転げ落ちました、とミサカはしれっと答えます」

「ミサカネットワークで言ってくれてもよかったのに」

「……、お姉様に無用な心配をかけたくなかったので、とミサカは理由を述べます」

9月14日。
いつも通り病院に遊びにきた美琴は、妹の怪我を見て心配そうな顔になっていた。
そんな姉を見て、19090号は内心申し訳なく思う。
多分、自分たちが結標淡希と戦っていることを知ったら――多分、この人は。

(激怒して……心配してくれて……そして、またミサカ達を守るために戦うのでしょうね……)

ふぅ、と気づかれないように溜息をついた。まったく、妹思いが過ぎる姉を持つと大変なのである。
もちろん、嬉しくて嬉しくてたまらないけれども。

「お姉様」

「何ー?」

「怪我が治ったら、ミサカと遊んでください、とミサカはお願いします」


「あはは、デートってこと?」

「で、でででデート!?」

思わずあたふたする。……デート、か。
少しだけにやけてしまったのを、気づかれてないだろうか。ちょっぴり心配だ。

「そ、そうですね……デート、です、とミサカ19090号は肯定します」

「私は基本的にあいてるから、いつでも言いなさい」

「そういえばお姉様、友達が少ないのでしたね、とミサカはふむふむ頷きます」

「少なくないわよっ!!」

「……」

これ以上つっこむと可哀想なのでやめておこう。
妹に同情される姉とは、いかに。
19090号ははぁ、と溜息をついた。




時間のギリギリまで妹逹と談笑すると、御坂美琴は病院から出た。
赤く染まった夕焼けは綺麗で、思わず見とれること数秒。
道行く人々が不審な目でこちらを見ていることに気付き、ようやく我にかえった美琴は、いそいそとその場を後にした。

(確かあそこの路地を通れば近道だったわよね……、久々に使いますか)

たとえ路地に不良がたまっていたとしても、美琴の相手になるものなんてほんの僅かだろう。危険はゼロに近い。そう判断した美琴は路地に入っていく。
その路地は3人分くらいの広さがあり、人もいなかったのですいすい通れる。早く帰ろう、と美琴は足を急ぎ足にした。




10032号は実験でのダメージが大きいため、戦闘はできない。
なので、彼女の役割はハッキングとミサカネットワークを介した情報収集である。

『結標淡希がスーツケースを受けとりました、とミサカ10032号は報告します。中身はやはりレムナントのようです、至急動ける個体は破壊または強奪に向かってください、とミサカ10032号は指示します』

『了解しました、とミサカ13755号は銃に手をかけます』

『ミサカも行きます、とミサカ19090号も宣言します』

『19090号、あなたは昨日怪我を負ったはずでは?とミサカ10039号は尋ねます』

『大丈夫、全然動けます、とミサカ19090号は返答します』

『そうですか、とミサカ10039号は安堵しながらサマーセーターを手にとります』

『やっぱりお姉様に頼った方がいいよーってミサカはミサカは自分のふがいなさを感じながら提案してみる。もう一刻の猶予もないんだよ?』

『しかし……やはり、同意はできません。あなただってミサカ達のことでお姉様に負担をかけたくないでしょう、とミサカ19090号は諭します』

『それともあなたは違うのですか?とミサカ10039号は冷たく問い放ちます』


『そっそれは……そうだけど……。なら、ヒーローさんは?ってミサカはミサカはさらなる案を提示してみるんだけど』

『それにしたって同じです、とミサカ10032号は切り捨てます。いいから黙ってミサカ達の会話をお姉様から隠蔽していてください、とミサカはお願いします』

『……。わかった、ってミサカはミサカは頷いてみる』

全く困った末っ子です、と御坂妹は嘆息した。勝手にお姉様に告げ口しなければいいのだが。
こういう時、お姉様なら苦笑しながら頭を撫でてくれるのかな、と御坂妹は少しだけ考えて、すぐにその雑念を振り払った。
集中すべきは、今。
余計なことを考えている暇など、ありはしないのだ。

(……ミサカ達だって、自分の身くらい、守れます)

膨大な量のデータを見ながら、御坂妹は心の中で呟く。
と、閲覧していた監視カメラの中のひとつに、美琴の姿が映った。
ショートカットをするためなのか、美琴は路地裏に入っていった。
……、待て、たしかその先には。
その路地に続く道には。

(……お姉様、そこには、結標淡希が……!!)



そうか、意識しはじめたのは5巻からと思ってたんですが、そういえばそうでしたね。
ですが、このスレではあくまで恩人としてみることにします。

>>171操祈は出る予定は今のところないですね……すみません

今日の投下はこれで終わりです


話の流れ的に黒子のポジも妹達が収まるのかな
続きに期待

ところで上条はあくまで恩人ってのはいいんだが
結局のところ偽海原はなんで美琴消そうとしたんだ?
そこがどうしてもうまい解釈が思い浮かばないんだが・・・・・・
まあ『細けぇことはいいんだよ』って言われたらそこまでなんだけどね

おつ
あわきんktkr


ん?6巻で美琴がいない……?
!く、黒子ォォおおお!!

水翼美琴「そうね」「私も、ずっと一緒にいたかった」

乙!
これはいい再構成



「――――ッ!?」

嫌な予感がした。
思わず美琴が体を捻ったのと、先ほどまで美琴がいた場所にコルク抜きが浮かんだのはほぼ同時。

「な……」

「あら、ようやく察知能力がついたの?良かったわね、余計な傷を負わずにすんで」

「……アン、タは……」

コツコツと足音をならし、路地の奥から出てきたのは、ツインテールの女だった。口ぶりから察するにさっきのコルク抜きは彼女がやったのだろう。
いきなり虚空に現れたコルク抜き――それと同じような現象を、美琴は毎日のように目にしている。

「空間移動系……能力者?」

「?何を今さら……、もしかして貴女、オリジナル……?」

オリジナル、という呼称は、本来『あの子達』を知らなければ使えないはず。それを使えるということは、つまり。

「あの実験の関係者……?」


ありえる、と美琴は思った。
時期的には少しばかり遅いが――いや、むしろ騒ぎが収まった今だからこそ――あの実験を台無しにした張本人の一人である美琴を狙いにきたのかもしれない。
が、予想に反してツインテールの女は鼻で笑うと、「それは違うわ」と否定した。それから、ふぅ、と気だるそうに嘆息する。

「まさか、オリジナルだとは思わなかったわね……。貴女には、できれば出てきてほしくなかったのだけれど」

「……?」

「どうやら貴女、何もしらないみたいね。貴女の大事な大事な妹達から何も聞いていないの?」

ピク、と美琴の眉が動く。
そういえば、先ほどこの女は自分のことを既知の存在だと思っている話しかけていた。
そして、自分と誰かを見間違えていた。
見間違えるほど自分に似た存在――それは、妹達以外考えられない。何より、この女は妹達のことを知っていた。
さらに、最初のコルク抜きの攻撃。
これらをあわせて考えるに――、


「もしかしてアンタ、うちの妹達と殺しあいでもしてるわけ?」

へぇ、と女から感嘆の声が漏れる。

「さすがは学園都市第三位の頭脳と言ったところかしら?まあ、安心しなさい、殺しあいなんてそんな物騒なことしていないから」それを聞いて、美琴はほっと、胸をなでおろ――「ちょっと何回か叩きのめしてあげただけよ」――せなかった。

「……どういうこと?アンタがあの子達を襲ってるの?それともあの子達がアンタを襲ってるの?どちらにしても、理由は何?」

「貴女、妹のことに過剰に反応するわね。そんなに大事?ただの人形なのに」

「――ッ、いいから答えなさいッ」

苛立ちをこめて軽く電撃を散らすと、女はまた息を吐いた。それがさらに美琴を苛々させる。

「私は襲われてるほうよ。理由は、自分で調べなさい。大事な妹に聞いてもいいかもしれないわね。まあ向こうは隠したがってるみたいだけれど」


「……じゃあ、襲われてるほうなのにどうして私を……妹達を襲ったのよ?」

「目障りだったからよ。頭の周りで蝿がブンブン飛び回られたら、叩き潰したくなるでしょう?」

ま、今回はそれが裏目に出たようだけれど、と女はつまらなそうに言う。

「……、」

自分の妹を蝿呼ばわりされてカチンときたが、ここは押さえておくことにする。
しかし、妹達の方が加害者……なのか?女の言い分だと、そうらしいのだが、あの子達が理由なく人を襲うとは考えられない。それも、自分に隠しながら。
何かある、と美琴は思った。
必ず、何かある。


「……もういいわよね。私も忙しいの」

「あっ……」

それを問い詰める前に、女は路地の奥へと消えてしまった。追おうかどうか考えている間に、角を曲がったのか姿が見えなくなってしまった。
美琴は嘆息すると、もう一方に問い詰めるためミサカネットワークを通じて妹達に呼び掛ける。

「で、どういうこと?」




妹達から返ってきたのは、「ミサカ達は何も知りませんっ」という駄々っ子みたいな言葉だった。その後何度呼び掛けても無視された。上位権限を使って無理やり吐かせてやろうか、と一瞬だけ考えたが、やめた。

(よく考えれば、あの子達にだって私に隠したいことが一つや二つあるわよね……)

寂しいが、仕方がない。
なんでもかんでも、姉だからと首をつっこむのも、そろそろやめた方がいいのかもしれなかった。
もう一度だけ――今度は寂しさを織り混ぜて――ため息をつくと、美琴は寮に戻るため、再び歩き出した。



少ないですが今日の分は終わり


>>182 ほかの人に助けてもらったんじゃないですかね……?
   一応生きてる設定です

>>183 あなたは一体どこまでかけとwwでも私も見てみたいです


ロシア編かぁ……大変だろうけど書けたら楽しいんだろうなぁ……

>>180 >>151の考えが一番近いと思います。
   海原自身が美琴を狙ったのは、>>116みたいな感じですかね

   恋人ごっこで標的が決まったって見方もあるのか……
   うーん、難しいですね

   
   

>>192
まあ、思ったとおりに書けばよいよ


こっちの偽海原は原作よりもかなりヘタレなんだなw

>>恋人ごっこで標的が決まったって見方もある
標的が決まったと言うより
『美琴が上条勢力に入り驚異となる決定的な証拠になった』って感じじゃないかな
そして偽海原の任務は上条及び上条勢力の調査と排除
だけど美琴を殺したくないから上条を狙う方を選択しましたって流れ

まだかい


「……ミサカは……」

とある病院の病室で、小さな少女は踞っていた。

「……ミサカはどうするべきなのかな……ってミサカはミサカは自問自答してみる……」

はあ、と何度目になるかもわからないため息をつく。
確かに、分からなくもないのだ。
下位個体の“我が儘”は、自分だって抱いているものだから。
守られるばかりじゃ嫌だ。
お姉様が傷つくのは嫌だ。
わかる、わかるけれども――

(……お姉様……)

同時に、さっきバレた時、お姉様が介入すればよかったのに、とも思う。
彼女なら、きっと――すぐにこんな事件、事件とも思わないで片付けてしまうだろう。
そして、すぐに自分達のところに帰ってきて、ケーキを買ってくれたり、遊んでくれたり、甘やかしてくれるのだろう。


「……どうして、こんな風になっちゃうんだろう、ってミサカはミサカは呟いてみる」

腹がたった。
意地張って、敵わないって分かっているくせに戦場に向かう下位個体達に。
こんな状況を作り出した結標淡希に。
なにより、妹達を止めることもできなければ、戦力にもなれない自分に。
非力な腕力。小さな体躯。能力は他の個体よりもあるのに。他の個体と同じように武器の知識はあるのに。
ぐ、と拳を握りしめた打ち止めは、そういえば、と思い出した。
9月2日――天井亜雄の事件から二日後の深夜。
先に眠ってしまった美琴の横顔を眺めながら、打ち止めはミサカネットワークを介して下位個体たちととある話題で盛り上がっていたのだった。
とある話題――それは、

『ミサカ達はお姉様のことをどう思ってるのかな? ってミサカはミサカは魅惑の深夜タイムに聞いてみる!』

自分たちの敬愛する、お姉様のこと。

『ガキ――失礼、子供はさっさと寝てろ、とミサカ10032号は諭します』

『ま、まあまあそんな固いこと言わなくてもいいじゃないですか、とミサカ19090号は修学旅行の夜気分を味わおうぜ、と暗に誘います』


『確かに19090号の言う通りですよ、とミサカ15074号も賛同します』

『どうもなにも、大好きですが、とミサカ13755号は自分の意見を述べます』

『うん!ミサカも大好き――!ってミサカはミサカは同意してみる!』

『お姉様は親でもあり姉でもありますからね。というより、お姉様を嫌いな個体なんていないのではないですか?とミサカ16957号はぶっちゃけます』

『確かにそうですね、とミサカ14758号は同意します』

『……なら――』

『?』

『お姉様は、ミサカ達をどんな風に思っているのでしょう』

それは、たしか19090号の発言だったと記憶している。
19090号はいつもより少しだけ低い声で、妹達全員にこう言った。

『そしてミサカ達は、お姉様にどんな風に思っていてほしいのでしょう――と、ミサカ19090号は問いかけます』


お久しぶりです
私生活が忙しい上に行き詰ってしまい、すごく短いです。すみません
次はもっと早くこれるように頑張ります

おつ

だって私は■■だから

乙乙!
無理しないで頑張ってくだせえ



10039号、13755号、19090号の三人は10032号の言われた通りの場所に向かっていた。勿論、結標淡希を追うために。
ついでに、それ以外の学園都市にいる個体は、結標淡希と協力している人間達のほうへ向かった。
今、結標淡希は一人きりのはず。
狙うなら、今だ。

「そろそろですか、とミサカ19090号は呟き……上です!!」

ふと見上げた空に大きな鉄塊が浮かんでいた。三人の少女は咄嗟に飛び退く。
ズドン、と鉄塊は大きな音と共に地面に落ちた。

「結標淡希……!」

「ふふ、昨日は直接顔を合わせることはなかったわよね?」

声がするほうに振り向くと、結標淡希がスーツケースに腰かけていた。
――スーツケース。

「そのスーツケースをミサカ達に渡してください、とミサカ10039号はお願いします」

「いやよ」そう言った結標は、笑っていた。「やっぱり怖いの?人形のくせに。実験を再開されることが。自分たちがまた死ぬことが」

「……」

19090号達は黙った。
少しだけ考えて、慎重に言葉を選ぶ。


「確かに、ミサカ達はもう誰一人として死ぬわけにはいきません。それはつまり、死ぬことが怖いのかもしれません」

でも、とミサカは続けた。
でも、それ以上に。

「お姉様が――泣いてしまうから」

「……、」

「いえ、お姉様は泣かないでしょうね。あの人はきっと、泣かない――否、泣けません。あの時、他人に手を差し伸べられなければ、泣けなかったように」

そのくせ、溜め込むんですよ、と。
19090号は、目を細めて、そう言った。

あの人は――それが罰なのだと、きっと考えているから。
自分が泣いては駄目なのだと。
泣く資格などないのだと。

馬鹿みたいに、優しくて。
あまりにも、背負いすぎる。
そんな大好きな姉に、少しだけ思いを馳せて。

「だからミサカ達は、レムナントを組み直されるわけにはいかない。絶対に、実験を再開させられない。そう、考えています、とミサカ19090号は答えます」

「……くっ、あは、あははははははっ。滑稽な姉妹ごっこだわ!」

「……あの人にも言われましたが、それは違う、とミサカ10039号は否定します」


ぐ、と結標の息が詰まる。
それは、人形なんて呼べないほど、強い眼差しだった。
断固とした口調で、妹達は宣言する。

「ごっこではなく、たしかに姉妹なんです、とミサカ13755号は宣言します」

おもしろくない、と結標は思った。
こういうのは、とても、つまらない。

「……くだらないわね」

結標はそれだけ言って、さっと軍用ライトを横にふった。妹達は一斉にそこから飛び退く。先ほどまで三人がいた場所にはコルク抜きが浮かんでいた。

「で、そのお姉様は助けにはきてくれないの?」

「どうでしょうかね、とミサカ19090号ははぐらかします!!」

いいながら、19090号はバババババ!!!と銃を結標に撃つ。弾丸が結標に届く前に、彼女の前に車が二台現れ、それを阻む。
更にヒュッと結標は軍用ライトを縦にふった。

「あがっ!!」

その隙に電撃を放とうとしていた10039号のわき腹に、コルク抜きが数本刺さった。もしくは現れた、か。
刺さったあたりから、じわり、と制服に大きな血の染みが広がっていく。


「……か、……っは……!」

これだけの傷を負えばこの個体はリタイアだろう。
ふっ、と崩れ落ちる妹達の一人を見下ろしながら、彼女はため息をついて、

「ッ!?」

バチィ、という音に思わず身を引いた。目の前を無数の電撃が通り過ぎていく。
そういえば、もう一人いたのだった。
舌打ちしつつ、結標は電撃が放たれたほうに振り向いた。だが、いない。

「どこに……っ!」

「上ですよ、とミサカ13755号は答えます」

はっと上を向いた――が、いない。嘘だ、と結標が気付く前に13755号は電撃を放つ。
――が、

「甘いわね!!」

結標と13755号の間に鉄板が現れ、まるで避雷針のように電撃はそちらへ向かい、結標には当たらない。
13755号はチッ、と舌打ちした。
結標も忌々しげに顔を歪める。

「さっさとくだばってくれると助かるのだけれど」

「そちらこそ、さっさと倒れてください、とミサカ13755号は切り返します」


もう一度結標がライトを横に振った。13755号はすぐさま後ろに飛んだものの、コルク抜きが腕を貫いた。
ぶしゅり、と肉が裂ける音がする。その余りの痛みに、13755は思わずうめき声を上げた。
追い討ちをかけるように、結標は肩や脇腹、太ももにもコルク抜きで19090号の体を貫く。
もう一匹、しとめた。
そう結標が勝利の笑みを浮かべる前に、19090号は電撃を放つ。

「っっっっ!!!!!」

19090号に気がつかなかった結標は、それをもろに食らう。衝撃で後ろに吹っ飛んだ。
さらに追い討ちをかけようと銃に手を掛けた瞬間、銃にコルク抜きが突き刺さり、弾が出なくなる。

「……チッ、とミサカ19090号ははしたなく舌打ちをします!!」

使いものにならないと判断した19090号はそれを結標へと投げつける。
結標はそれを咄嗟に横に転がることで間一髪、それを回避した。そしてゴロゴロと転がりながら、19090号の体に無数のコルク抜きを転移させる。
激痛が全身を襲い、19090号はばたんと前に倒れた。
結標はそれをみてニヤリと笑うが、彼女もさきほどの電撃が効いたのか立つことができない。
そんな結標に、19090号は最後の力を振り絞って、電撃を放とうとする。
それに気づいた結標も、手近にあったコルク抜きを、19090号の体に転移させるために演算を開始した。

「……おね、……さま。みさかは……っ!!」

「絶対に、私は……!!」

そして二人の少女の絶叫が、9月14日の夜空に響いた。





「……ただいまー」

「お姉様、お帰りなさいませ……ってあら?何かありましたの?テンションがいつもの半分以下しかありませんわよ」

「……なんでもないわよ」

先に帰ってきていたらしい後輩、白井黒子をあしらいつつ、ボフ、と美琴はベッドに倒れ込んだ。
案外、自分で思っているよりダメージが大きかったのかもしれない。なんだか今日はもう、動きたくなかった。
こんなにメンタルが弱かったのか、と美琴は少なからず驚いていた。――いや、あの子達だから、か。
妹を守ることが、姉の義務で。
それだけが、死んでいったあの子達への報いに、少しでもなると、信じていたから。
それを、当の本人である妹達に拒否されたことが、こんなにも。

(……私、最低だあ……)

ふ、と自嘲気味に笑う。
少しは、認められたと――思っていたのに。
やっぱり、自分は――、

『お姉様!!!!!!』

びくり、と体を震わせた。
肉声ではない。これは、ミサカネットワークからのメッセージ。
それも、どうやら打ち止めからのようだ。
いきなり体を震わせた美琴に不審な目を向ける白井に誤魔化しつつ、彼女は「どうしたの?」と問う。


『ど、どうしよう……どうしよう、お姉様……っ』

『落ち着きなさい』

『お姉様……っ、お姉様……っ』

『いいから!!』

ハッ、と動揺していた打ち止めは、ようやく落ち着きを取り戻す。
美琴はそれに安堵し、もう一度問う。

『……どうしたの?』

『あ、あのね、お姉様……っ、1、19090号達……結標淡希のところに向かったミサカ達が……!!』

世界が、止まった気がした。



19090号は薄く笑う。
結標はダウンした。そう、自分達は勝ったのだ。
最後の最後で、結標は演算を間違え、19090号の体にはコルク抜きは刺さらなかった。
そして、19090号の電撃は、結標を貫いた。
その結標は、目の前で転がっている。どうやら意識を失っているらしい。
ぐ、と小さくこぶしを握り締める。
勝った。
勝った、のだ。
あの人を、守れた――、のだ。

(お姉様……)

声を出す気力など、流れ出た血とともにどこかへ行ってしまった。
だから、心の中だけで、思う。


(ミサカは……ずっと、考えていたんです……。ミサカがあなたをどう思っているか。そして、ミサカがあなたにどう思われたいか。あなたがミサカ達のことをどう思っているのか)

思い出すのは。
9982号と出会ったときの、身構えた姉の顔。

(ミサカはあなたのことが大好きです)

9982号の実験後の処理のとき、『生きているんでしょ』と訴えかけた、必死な叫び。

(大好きです……大好き、です)

10031号と出会い、私の前に現れないで、と叫んだ、苦悩に満ちた表情。

(だから、守りたかった。守られるばかりじゃ、嫌だったんです)

第10032次実験で10032号の手を握ってくれたときの、あの泣きそうな声。

(……でも、あなたは)

よろしく、と。
わがままを聞いてくれた、あのときの嬉しさ。

(あなたは、ミサカたちのことを、どう思っているのですか?)

『だって私は、姉だから』と、そういってくれたときの、喜び。

(もしかして、ミサカ達は――)




(ミサカ達は、あなたの重荷になっているのでは――ありませんか?)




それはとても、怖いことだと思う。
裏切られるよりも。
憎まれるよりも。
なにより、耐え難い。

(だって、ミサカ達がいなければ、あの実験のときはもちろんのこと)

19090号は、きつく目を閉じる。
本当は、こんなこと、考えたくないのに。
こんなこと、思いたくないのに。

(天井亜雄のときだって、魔術師……とかいう胡散臭い男のときだって、あなたは、危険にさらされずに、済んだじゃないですか)

だから――。


本当は、



心の底で、どこか、









ミサカ達なんて、生まれてこなければよかったのに、なんて――












「思うわけないでしょ馬鹿妹!!!!!!!!!!」









「……っ」

思わず目を開いた。
19090号は動かない体に歯噛みをしつつ、声がしたほうに必死に目を向ける。
そして、



ああ――、と。


思わず、声をこぼしそうになった。


そこにいたのは、敬愛する自らの姉。
走ってきたのか、息も絶え絶えに、けれどしかし、まっすぐに立って、自分を見つめていた。


「ミサカネットワークに馬鹿なこと垂れ流しすぎなのよ、アンタ」

そういって、笑う。
どうにかして笑い返そうとしたけれど、どうしても頬は動かなかった。

「本当に、馬鹿な妹ね。そんなこと、思うわけないのに」

美琴は近づいてきて、19090号のそばにしゃがむ。
そして、ゆっくりと、傷口に触れないように丁寧にその頬を撫でる。
いとおしそうに、目を細めて。

「私が、アンタ達をどう思ってるかって? アンタ、それが聞きたいのよね。 ――いいわよ、教えてあげる」

「……、っ」

「私はさ、よかった、ってまず思ったの、さっき」

「……?」

少しだけ、首が動いた。
傾げたのだと、分かってくれただろうか。


「アンタ達が私を遠ざけたのは、私を守りたいからだって」

「……はい……」

無理にしゃべらなくてもいいのよ、と美琴は19090号の口に親指を当てた。

「ちゃんと、私を姉だと、思ってくれてるからだって。私、嬉しかった」

「……」

「ねぇ、19090号。私はね、


――アンタ達のことを、大好きで大切な妹達だと、思っているのよ」


だから、生まれてこなければよかった、なんて。
いっぺんたりとも思っていない、と。

美琴はそう、言い切った。

「……っ、ぁ」

自分が何を言おうとしたのか、分からなかった。
だけど、何かを言おうと思った。
それは、きっと、衝動的な言葉で。
でも、絶対に、自分の本心だったのだろう。




「……本当に、もう、困った妹達なんだから」


はい。


「……ありがとうね、守ってくれて。嬉かったよ?」


……はい。


「……大好き」


……は、い。

ミサカも、です。




美琴が手配したのだろう、救急車が到着するまでの5分間。
ずっと、美琴は19090号の頭を撫でてくれていた。
それがとっても嬉しくて、でも、ほかの個体たちになんだか申し訳なくて。
きっと、後でずるいですと怒られるのだろうな、とすぐに訪れるであろう平和な日々を想像して。




この人の妹でよかったと。
19090号は、本当に、そう思った。





「……ああ、そうだ、19090号」

もう、意識が半分落ちかけていたとき。

「私はさ、アンタ達の姉だけど――親でも、あるのよ?」

そう言って、美琴はにっこりと、笑った。
……その笑顔は、妹達が今までみた中で、一番怖い笑顔だった。
ぞく、と背筋が震える。

「覚悟しておいてね?」

なんとなく、二度と目が覚めなくてもいいような気がしてきた。



今回は姉妹愛の確認の回。
すっごく悩みました。
まんま一方通行の役目を果たす美琴とか何人かの妹達が死んだりする展開とか色々考えて、結局この形に。

次は8巻再構成の後日談です。

おつ!

おつおつ


あわきんかませだけど、死人出るよりはこれでいいわ
消えた黒子の見せ場の埋め合わせ期待

姉妹愛は実にいい…



「私はさ」

事件から数日後。
とある病室に、六人の少女が集まっていた。
その中の一人、他の少女達の姉であり親でもある御坂美琴が、静かに話し出す
妹達と呼ばれる彼女の妹――あるいは娘――達は、どこかしゅんとした顔でそれを黙って聞いていた。

「姉としては、この前の行動はとっても嬉しかったって言ったわよね?」

こくりと、美琴の話に相づちを打つ妹達。
そのことは、よく覚えている。
否――忘れることなんて、できない。

「でもさ、それはあくまでも姉としての言葉。だから、今度は親として、アンタ達の無茶を叱る。妹のわがままをきくのは姉の役目で、子供の無茶を叱るのは、親の役目だからね」

はい、と妹達が頷いた。
最初から分かっていた。
きっとこの人は、怒るだろうな、と。
怒って、くれるのだろうな――、と。
たった一人のミサカ達のお姉様は。
たった一人の、ミサカ達の肉親なのだから。


美琴は一度だけ深呼吸をする。
すう、と息を吸った。
本当はこういうことは、したくない。
けれど、自分にしかこういうことができないのなら。
この子達を、怒ってくれないのなら。
自分が――やる。

(……親だもん、ね……)

そしてはあ、と息を吐くと、


妹達の一人の頬を思い切りぶった。



「……っ!!」


バチンッ、と音が響く。
思わず妹達は目を瞑った。
頬にくる痛みからではない。
ただ、そこにこめられた姉の――いや、親の哀しみが、痛いほど伝わったから。

「アンタ達は、今回自分がやったことを分かってるの!?」

がしり、と肩を掴まれた。
痛い、と思う。
心か、体か。
それは、分からなかったけれど。
……痛い。

「なんで、なんでこんなことしたのよ……っ!!もしかしたら、死んじゃうかもしれなかったのよ!?それが、分かってるの……っ!?」

悲痛な叫びだった。
分かっては、――いた。
それでも、譲れないものが、あったのだ。
けれどそれは、“姉”としての美琴に言う言葉で。
“親”として美琴に言うべき言葉ではない。
だから妹達はただ黙って、それを受け止める。


「もう、二度と無茶をしないで。絶対に、死ぬようなことをしないで。お願いだから。お願い、だから……!!」

泣きそうな声。
けれどこの人は決して、泣いていないのだろう。
ぎゅ、と抱きついた。
――温かい。

「ごめんなさい」

ポツリと言う。
心の底からの、謝罪の言葉だった。
美琴も、ぎゅ、と抱き返した。

「ごめんなさい、……ごめんなさい。……ごめんな、さい……」

「……うん」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「……うん」

まだお互い幼い親子は、抱きしめあいながら、そこに在る愛を確認する。
例えできかたが通常とは違ったとしても。
それは普通の親子となんらかわりない、愛だった。




「……そういえばお姉様」

「なに?」

「お姉様も大概無茶なされてますよね、とミサカ19090号はつっこみます」

「……、えーっと」

「お姉様もお姉様のお母様に叱られるべきではないでしょうか、とミサカ19090号はさらに指摘します」

「……あはは」



――8巻再構成、終――


本日の投稿終わり。
次は12巻再構成だと思います。

おつ


さて罰ゲームはどうなるのかな

はよはよ





『結局、私が一番悪かったのよね』






「お姉様ーっ!ってミサカはミサカは飛び付いてみる!」

直後、ぼふ、と美琴のお腹あたりに飛び付く打ち止め。
打ち止めが走ってきた方向に目をやると、小走りで妹達の一人――御坂妹と呼ばれている個体だ――が向かってきていた。

「お姉様に抱きつくのはミサカが先のはずでしたが、とミサカは約束を破った上位個体にジト目をむけます」

「えへへー、世の中は弱肉強食なのだー!ってミサカはミサカは胸をはってみる!」

そんな仲のいい妹達を笑みを浮かべて見守っている美琴だが、彼女もまた周囲の人々から温かい目で見守られていることをしらない。
本日、9月30日。
その日は午前中授業で終わるということを先日妹達に告げると、


『なら遊んでくださいとミサカ19090号は約束を理由にお姉様に迫ってみます!!』

『19090号は結標淡希の件でたくさんいい思いをしたはずです!!この10032号と遊ぶべきですお姉様、とミサカ10032号は主張します!!』

『ミサカだってお姉様と遊びたいです!!とミサカ10039号も主張します!!』

『ミサカも遊ぶー!ってミサカはミサカは駄々っ子スキルを発動してみる!!』

『お姉様このミサカと遊びましょう、とミサカ13577号は冷静にお誘いします!』

いや全然冷静じゃないしっていうか遊ぶとか一言も言ってないし。と美琴そっちのけで妹達で議論が始まり、数分後、御坂妹と打ち止めが美琴と遊ぶことになったのだと彼女達は告げてきた。
だから私は一言も遊ぶとか言ってないってば、とは当然言える雰囲気ではなく、結局美琴は二人と遊ぶことにしたのだった。


「どうですかお姉様、冬服に変わりましたよ、とミサカはお姉様に感想を求めてみます」

「いやそれ誉めたらナルシストっぽいじゃない」

美琴の言葉にむぅ、と頬を膨らませる御坂妹。一度本気で『双子の妹へのナルシストにならない容姿の誉め方』を検索する必要があるな、と彼女は思った。

「お姉様お姉様、ミサカお腹減ったから何か食べたいってミサカはミサカは頼んでみたり」

御坂妹ばかりと話している美琴に、自分の存在をアピールするかのように打ち止めはぐいぐいと美琴の裾を引っ張る。勿論、今が昼時というのもあるのだが。

「そういえばアンタ達ご飯食べてきたの?」

「いえ、ミサカも上位個体も昼食をとっていません、とミサカは答えます」

「私も食べてないし、じゃ、どこかで昼食をとりますか」

「わーい、ってミサカはミサカは両手を広げて喜びをアピールしてみる!」





(……最近、俺のところにくる実験の数が減っている気がする)

そんなことを思案しながらコーヒーをかごにいれるのは、一方通行と呼ばれる、白くて白い、学園都市最強の男。
いや、と彼はそれを否定する。
実験の数が減っているというよりは――実験の種類が変わった。
最近の彼に届く実験は、平和的な活用を目的としたものばかりで、あの『実験』のような血生臭くドロドロしたものが、全くといってこない。
もしやあの『実験』に失敗したことで役に立たないと思われているのか。
――それはない、と思う。
例えレベル0に負けたとしても、学園都市最強の能力は健在であるし、利用価値などいくらでもあるはずなのに。

(……何か企んでやがンのかァ……?)


残念ながらそれを確かめるすべがないので、今の彼は不審を抱くことしかできないのだが。
会計を済ませ、コンビニから出ると、ぐーっとお腹がなった。携帯で確認するともうお昼ご飯を食べるにはいい時間だった。
帰る前に飯でも食うか、と彼がキョロキョロと辺りを見渡したとき――


――ドクン、と。


心臓が大きく波打った。
彼の視線の先にいるのは、三人の少女。それも、似たような顔立ちの。
その顔を、彼はいやというほど知っていた。
どうして、と言おうとして、喉がカラカラなのに気がついた。


「何食べるー?」

「洋食はどうですか、とミサカは提案します」

「あそこにレストランがあるよ!ってミサカはミサカは指をさしてみたり!」

だって、彼は一万人以上、あの少女と同じ顔の少女達を殺したのだから。
なんでもない風景だったはずが、突然赤色を帯びて。
するはずもない血の匂いが、彼の鼻腔を擽る。

「ならあそこにしましょうか」

「早く食べたいよーってミサカはミサカはお腹をさすってみたり」

「確かに早く食べたいですね、とミサカは上位個体に同意します」

彼女達は自分には気が付かず、彼の目の前を通り過ぎていった。
楽しそうに。
幸せそうに。

一旦投下終わり。
夜これたら来ます。

おつ
期待してます

おお
なんか動きあるおかん
乙です


昼食を食べ終えるともう2時を過ぎていた。かなり並んでいたからだろうか。
しばらく外をぶらぶらと歩いていると、打ち止めはあるものを発見した。
あるもの――それは。

「アイス!アイス食べたいーっ!ってミサカはミサカは主張してみる!!」

学園都市で今流行っている、アイスのお店だ。
味は20種類程度。全てが美味しいと評判であるが、とりわけ人気なのは、目玉商品でもある牛乳に拘ったバニラ味だ。
打ち止めはぴょこぴょこあほ毛を揺らしながら、食べよう食べようと美琴にせがむ。そんな子供っぽい言動に美琴は苦笑して、しかしそれを親としてたしなめる。

「だーめ。さっきご飯食べたばっかりじゃない」

「それでも食べるのー!ってミサカはミサカは地団駄を踏んでみる!!」

が、彼女は親でありながら同時に姉でもあった。
妹の役目を聞くのは姉の役目、と言うのは全ミサカ共通の認識なので、どうせ買ってくれるのだろうな、と呆れ顔で二人を眺める御坂妹は思う。
そしてその予想は勿論当たった。
美琴はなんだかんだ言いながら、アイスのお店のほうへ足を向ける。

「むぅ……あっ、でも買ってくれるんだってミサカはミサカはお姉様の優しさというかただ甘いだけじゃね的な部分に呆れてみたり」

「……そんなこという子には買ってあげないわよ」

「ウソウソ、妹のわがままを聞くのは姉の役目だよほらほらーってミサカはミサカはアイスを買ってもらえるようににっこり笑顔を浮かべてみる!!」

はあ、と嘆息しつつもきっちり買ってあげるあたり、やはり彼女は甘かった。
ついでに、美琴も打ち止めも御坂妹も全員バニラ味である。


「ふむ、これはさすが話題となるだけはありますね。とても美味です、とミサカは正当な評価を下します」

「そうね、すっごくおいしい!んーっ最高!」

「えへへ、ミサカのいうこときいてよかったでしょーってミサカはミサカ……ごめんなさいってばお願いだからミサカのアンテナを引っ張らないでー!」

「こらこら、アイス落とすわよー」

アイスを片手にはしゃぎまわる妹たちに注意するが、あまり効果はないようだ。
そんな和やかな風景に微笑を浮かべながら、美琴はがじがじとコーンを齧る。
アイス部分だけでも十分に美味しかったが、コーンと一緒に口に入れるとさらにおいしさが増す。
これは100点ね、と美琴は心内で点数をつける。
普段割りといいものを食べている常盤台のお嬢様がそう評価するのだから、これはかなり凄い部類なのだろう。

「私、トイレいってくるわね」

先にアイスを食べ終えた美琴がそう言うと、打ち止め達はいってらっしゃーい、と手をふる。
アイスが溶けることを懸念したのか、じゃれあいは既にやめて仲良くアイスを舐めている。
その仲のよさにもう一度だけ笑みを浮かべると、美琴はトイレに行くために立ち上がった。
二人きりになった打ち止めは、残ったコーンの部分を全て噛み砕くと、あれ、ととあることに気がついた。

(アレって……もしかして……)

思い立ったらすぐ行動、というのはさすが彼女の妹か。
いつもだったら(毒を吐きながら)止めるはずの御坂妹も、今はバニラ味のアイスに舌鼓を打っていて、打ち止めの行動に気がつかない。
は、と御坂妹が気がついたときには、打ち止めの姿は見えなくなっていた。



今日は午前中授業ということで、上条当麻はインデックスと共に外に遊びに出ていた。
まずはご飯を食べよう。満場一致(といっても二人しかいないが)で決まったものの、上条と同じような思考をする学生はたくさんいたらしい。どこのお店にいっても人、人、人。めぼしいお店も見つからず、ふらふらと空腹で街中をうろつくだけの二人。
しかも、運の悪いことにモノレールから降りてきた大量の学生に、空腹の二人はされるがままに引き離されてしまった。
というわけで。

「インデックスー」

一応名前を呼んでみる。が、勿論返ってくるわけがなかった。
嘆息した瞬間、ぐー、とお腹が減った。
腹減ったなぁ、と上条は思う。
もう2時なのに、未だに昼食をとっていないのだから当たり前ではあるが。

「……不幸だー」

不幸中の幸いといえば、さすがのインデックスもこれは仕方がないと思ってか、一回も噛み付いてこなかったことか。
早く彼女を見つけて、さっさとご飯を食べようと上条はインデックスを探そうと歩き始めた。
その姿を人ごみの中、必死で追いかけている小さな体に気がつきもせずに。




「ええ!?打ち止めがいなくなったの!?」

素っ頓狂な声を上げたのはトイレから戻った美琴だ。
はい、と御坂妹は答える。

「ミサカが目を離した隙に……どうやらミサカネットワークから接続をきっているようですし、どこにいるのやら……」

「うーん、どこに行ったのかしらね……探しに行きましょうか」

「めんどくさいという本音を隠しつつ、はい、とミサカは同意します」

いやそれ隠せてないから、と美琴が突っ込んだ突如、


「……お姉、様?」



ビク、と美琴の体が震えた。
知っている、と思った。
背中かけられたこの声を。
自分はよく知っている。


「……黒、子?」


おそるおそる、後ろを振り返ってみた。
そこには、ルームメイトである後輩が、目を見開いて。

「お姉さまが……二人?」

知られてしまった。
美琴の体が強張る。
この子には知られたくなかったのに。
クローンの話も、実験の話も。


「……あ、ぅ……」

何か言おうとして、しかしそれは言葉にならない。
高速回転する頭には、これを乗り切る案が何一つとして浮かばなかった。

そのとき。

「なぜあなたはお姉様のことをお姉様と呼んでいるのですか?とミサカは不満気に質問します」

一歩踏み出して、いつもより冷え切った目で白井を見つめる、御坂妹。
え、と白井と美琴の声が重なった。

「アンタ、何を……」

「お姉様と呼べるのはミサカのような妹の特権です。ですから呼び名を改めるべきだ、とミサカは主張します」

「……え、えっと……その、お姉様……」

「あーっと、その子はね……」

「お姉様の妹です、とミサカはない胸を張ります」

美琴が弁解するより前に、御坂妹はそういいきった。
確かに間違ってはいない。……いないのだが、なんだかうそをついているようで後ろめたい。
まあ、本当のことは話したくないので、しょうがないのだが。
白井はいぶかしむ様に目を細くして、


「妹さん……ですの?」

「はい、とミサカは頷きます」

「そう、ですの……。どうして妹さんは常盤台の服を?」

「お姉様と同じ服がよかったのです、とミサカは咄嗟に……ではなく、理由を言います」

まだ怪しんではいるものの、とりあえず、白井は御坂妹にぺこりと頭を下げた。
たとえ噂のクローンだったとしても、愛するお姉様や妹さんは話してはくれないだろう。
なにより、美琴を困らせたくなかった。
最近は、なにかとゴタゴタがあったようだし。

「私は白井黒子と申しますの。お姉様のルームメイトで、ひとつ下の後輩ですの。よろしくお願いします、妹さん」

「ミサカのことはミサカとお呼びください、とミサカも頭を下げます。……あと、お姉様ではなく御坂先輩、または御坂さんです、とミサカは訂正します」

「い、いくら妹さんとはいえ、お姉様はこの白井黒子のものですの!」

「いえ、姉は妹のもの。つまりお姉様はミサカのものです、とミサカは宣言します」

「……あのー。二人とも?」


なんだか変な話になってきた、と美琴は頭を抱える。
が、そんな美琴そっちのけで二人は議論を交わす。

「いいですか、お姉様と呼んでいいのはミサカだけです、とミサカはもう一度繰り返します!」

「なんでですの!お姉様はお姉様ですの!いまさら御坂先輩なんて、いやですの!」

「ミサカはお姉様の妹です!」

「それでもですの!」

バチバチ、と二人の間に火花が散る。
というか御坂妹が放電していた。
思わず美琴はじりじりと後退する。なんとなく関わりたくない感じである。
が、二人はそれを許さない。

「「お姉様!」」

「はぃい!?」

はしたない声をあげてしまった。
二人は美琴に詰め寄ると、

「お姉様と呼んでいいのかミサカだけですよね、とミサカは詰問します!!」

「私だってお姉様と読んでいいはずですわよね!?お姉様!」

「え、えーっと……」


近い。顔が近い。
思わず後ずさりした美琴を追いかけるように、白井達も前へ前へと出る。
……やばい、なんだかこれはとってもやばい。
美琴はごくり、と生唾を飲み込んで、

「あ、あーの、うん、その……あとは二人で仲良くしてねーっ!!!」

その場から猛ダッシュで逃げることにした。ダッシュダッシュ。

「あっ!?とミサカは驚愕します!」

「逃げましたの!!」

なんだか後ろからそんな叫び声が聞こえるが、無視無視。
お姉様だって、少しくらいは休息がほしいのである。



本当はいれるつもりはなかったけど、確かに黒子の出番がなさすぎるなぁ、って思いまして。
今日の更新終わりー。

乙!

黒子可愛いなぁ 乙

おつ

>>1、乙です!



「よし……逃げ切れた……」

膝に手を置き、深呼吸をする。
それから、きょろきょろとあたりを見渡した。
人ごみの中に、あの子達はいない。
それを確認して、ほっと息をついた。
……まあ、さっきのがいやかと言われれば、そうではないのだけれども。
どころか、ちょっぴりうれしかったし。

「……さて、どうするかねー。打ち止め探しでもしますか」

誤魔化すようにそう呟いて、歩き出したそのとき。
美琴は何かに躓いて、転びそうになった。

「うわっ!?」

どてん、と美琴の体がその何かの上に覆いかぶさる。
慌てて立ち上がって、ひっかかったものに目を向けた。


「……?」

思わずまじまじと眺める。
何かとは、白い物体。
よく見ると、それは白い物体ではなく、人間である。
人間が倒れていた。
これは――、

「修道服……?」

この科学の街で修道服とは。珍しい。
……とか感心している場合ではなくて。
慌てて容体を確認するためにしゃがみこんだ。

「あ、アンタ大丈夫!?」

「う……ん……」


どうやら意識はあるようだ。ひとまずほっとした美琴は、どうしようかと悩む。
病気なら、救急車を呼んだほうがいいのだろうか。
そんな美琴の思いを知らず、修道服を着た少女はただ訴える。
人間の三大欲求のひとつが満たされていないことを。

「……おなか、へった……」

「……、」

ぴしり、と美琴の鞄をさぐる手が止まった。
……今、この子はなんと言ったのだろう。
よく見ると、この少女は外国人のようだ。修道服からはみでた銀髪に、薄く開かれた緑の目。それがさらに美琴を混乱させる。
彼女は率直に、今の自分の気持ちを呟いた。

「……はぁ?」



同時刻。
上条当麻はまだ街をさまよっていた。

「インデックス、ほんとどこいっちゃったんだろうなぁ……」

ぐい、と体を押し込み、ようやく人ごみから抜け出した。
開放感からか、一気に疲れが襲ってくる。上条は思わずそばにあったベンチに腰掛けた。
さて、どうするか。
インデックスを放置して、さきにご飯を食べる。
……噛まれるフラグたちまくりである。
だとすると、やはり見つけるしかないのか。

「一応アイツに携帯渡してるんだけどな……、ま、期待するだけ無駄か」


何度目になるかもわからないため息をつくと、上条は再び歩き出すために立ち上がった。
いっそ迷子届けを出すか、などと考えつつ、歩き出したところを、


「ヒーローさん!!!ヒーローさんってばってミサカはミサカは呼びかけてみる!!!!」


ぴたりと上条の歩みが止まった。
この声音は知り合いの少女によく似ているし、何より“ミサカ”だ。
妹達の誰かが、自分を見つけて声をかけてくれたのだろう。
くるりと上条は振り向き、そして驚きに目を見開いた。

「ロリミサカだと……!?」

「え!?いやミサカはたしかにロリだけど!?ってミサカはミサカは――!?」


今日の投下終わり。短い……?
番外通行でいちゃいちゃする話を書きたいのに息抜きではじめたつもりのssが終わらなくて全然かけない


がんばれw

期待してる




とりあえず美琴は、この見知らぬ修道服の少女をファミレスに連れて行くことにした。
少女は美琴が呆れるほど口に食べ物を詰め込むと、ようやく一息ついたのか、口にソースをつけながら、

「私の名前はね、インデックスっていうんだよ。……クールビューティーじゃないんだね」

インデックスは不思議そうに美琴の顔を眺めた。
心当たりはあるが、一応尋ねてみる。

「……クールビューティー?」

「えっとね、あなたににてて、無表情な人かも」

「ああ……あの子達の一人か。その子は私の妹よ。私は御坂美琴、よろしくね」

「うん、みこと!!」

にっこりとインデックスは笑った。それがまるで打ち止めの笑い方のようで、ふふ、と思わず笑ってしまった。
美琴はポケットからハンカチを取り出すと、それでインデックスの口元についたソースを拭い取った。


「ほら、とれた」

「ありがとうみこと!……なんだか君ってお姉さんみたいだね」

「妹がいるからねー」

「とうまもそうだったけど、学園都市はやっぱり一人暮らしが多いから、そういう風に思えるのかも」

ふむふむとなにやら納得しているが、……ちょっと待て。
なにやら知っている名前が出たような。

「……とうま?」

「え? うん、上条当麻だよ。知ってるの?」

「……ええ、まあ、妹の件で世話になってね。アンタ、あの馬鹿の知り合いなの?」

「知り合いっていうか……一緒に住んでるかも」

「アイツの彼女なの!?」

「え、ええ!?ち、違う……かも」

「ふぅん……そっか、あはは、なーんだ。あいつ全然不幸じゃないじゃない」


納得するように美琴は何回も頷いた。
ニヤニヤと笑う美琴にきょとん、とインデックスは首をかしげる。
何か、自分は面白いことを言ったのだろうか?

「あ、そうだインデックス。私、妹の一人を探してるんだけどさ。暇だったら一緒に手伝ってくれない?」

「うーん、でもとうまを見つけないと……」

「あの馬鹿を探してるの?」

「うん、さっきはぐれちゃって」

「アンタ、携帯とか持ってないの?」

「けいたい?あ、あるかも!えーっとね……」

修道服の中から携帯を取り出すと、美琴に手渡した。
美琴は断りをいれてからそれを開き、電話帳から上条の名前を探し出すと、そこへ電話をかけた。
すぐに、向こうと繋がった。


「やっほー、私。御坂美琴だけど」

『御坂か!インデックスの携帯から……ってことは、今一緒にいるのか』

「うん、さっき空腹で倒れてたところで出会ってね。ご飯食べさせちゃったけどいい?」

『本当か!?助かる、ありがとう御坂!』

「いえいえどう致しまして。ところでアンタ、この子借りていいかしら?私、妹を探してるんだけどね、一緒に探してほしいのよ」

『妹って……もしかして、ちっさい?あほ毛がたってる子か?』

「そうよ、よく知ってるわね」

『いや……今一緒にいるんだけど……』

「え、ほんと!?」

『ちょっと代わるな。打ち止め、お前の姉ちゃんからだぞ』

上条の声が遠くなり、電話越しに『お姉様から!?出る出るー!ってミサカはミサカは携帯を受け取ってみたり!』という打ち止めの声が聞こえた。
本当にあの子がいるらしい。不思議なことがあるものだ。


『……っと、お姉様ー!ってミサカはミサカは呼びかけてみたり!』

「打ち止め、アンタ勝手にどっかいかないでよね。まったくもう」

『えっと、ごめんなさい。ヒーローさん見つけたから、つい……ってミサカはミサカは言い訳してみる』

「まあいいわ。えっと、アンタはどうしたい?」

『もう少しヒーローさんとお喋りしてたいかも、ってミサカはミサカは我侭を言ってみる。……ごめんねお姉様。ミサカ達から誘ったのに……』

「ううん、いいのよ。別に。またいくらでも機会はあるわけだしね。今度の日曜日にでも、また遊びましょ」

『……!ありがとうお姉様!ところでそっちに10032号はいるのかな?ってミサカはミサカは尋ねてみる』

「……あー、ちょっとね、今はいないわ。あの馬鹿にかわってくれる?」

『うん!ってミサカはミサカは頷いてみる!』

また打ち止めの声が遠くなり、少しだけガチャガチャという雑音が混じった後、上条がまた電話に出る。

『俺に何か用か?』

「うん。いい提案があるの。今日の5時までインデックスと打ち止めを交換しない?」


『交換?』

「そ。せっかく今ちょうど反対になってるところだし。私もこの子と仲良くなりたいし。何より、打ち止めがアンタともっと話したいって」

妹煩悩なんだな、と上条は笑った。
かわいい妹を持つ姉は、皆こんなもんよ、と美琴も笑い返す。

『わかった。じゃあ5時に……あの鉄橋で』

「ええ、それまで妹をよろしくね、“ヒーローさん”?」

『ははっ、そっちこそ、お姫様をよろしくな、“お姉様”』

ブチリ、と通話は切れた。
顔をあげると、そこには彼の大事な人が美味しそうにご飯を食べていて。
この子の大事な人は、自分の大切なモノと一緒にいる。
なんて偶然。


(……きっと、明日も)


そんな明日は、
もうこないのだと。
少女は現時点で、知ることはなかったが。

投下は一旦終わり。多分夜来ます。


続き楽しみ。

俺的には打ち止めと一緒にいる=暗部に落とされるが成り立つと思ってないけど。特に御坂の場合。



夢を見る。
“私”は毎日のように、同じ夢を見る。
それは夢というには暗くて、重くて、悲しい夢だけれど。
そう、だからこれは――きっと悪夢なのだ。

夢の中で、“私”に似た女の子と“私”は、同じ問答を繰り返す。
あまりに滑稽で、あまりに戯言な、そんなやりとりだ。

だからそれに、意味なんてないのだろうけれど。


けれど確実に、ソレは“私”の心を抉り。



“私”の精神を、崩壊させる。




『結局、私が一番悪かったのよね』





始まりはいつも同じ言葉。
悪かったのだと、なんどもなんども繰り返す。
それは逆に、無様に許しを請うようで。


『例えば研究者』


淡い笑みを漏らし、少女は右のつま先を軸にくるりと一回転。
その表情とは裏腹に、紡がれる言葉は、酷く残酷で。


『私さえいれば、あんな計画思いつかなかったかもしれない』


淡々と何の感情もこもらない声。
ああ、あんなに顔は笑っているのに。
だからやっぱり、滑稽なのだ。



『例えばアイツ』


笑みが、一転。
悲しそうな、哀れむような表情で。


『私さえいなければ、10031人もの“人間”を、殺すことはなかったのに』


人間。それを強調するように。
そうだ、人間だ。
彼が殺したのは。
研究者が生み出したのは。
まぎれもなく、人間。

かわいそうに、と少女は呟いた。
かわいそうに。
本当に、かわいそうに。



『そして、私の妹達』


その言葉は、何よりも聴きたくなくて。でも、耳をふさぐことは許されないから。
だから、ぎゅ、と拳を固く握り締める。
皮膚に爪が食い込んで、少し痛い、と思った。


『私さえいなければ、死に向かうだけの生を受けることはなかったのに』


死へにのみひかれたレールに、なんの意味があるというのか。
ともすれば"妹達”という存在を全否定するかのように、少女は平然と言葉を吐き捨てる。


怖い、と思うのに。
この少女が、放つ言葉が、堪らなく怖くて、この場から逃げ出したいのに。
“私”はどうしても、目覚めに向かうことができない。
この場から、逃げ出すことが、できない。

だって知っているのだ。


この少女は“私”で。

”私”はこの少女だ。


だから、少女が何を言いたいのかも。

何を懺悔しているのかも。

一体どうして欲しいのかも。


全部――分かっている。

 
「                」




ほんの少しだけ、反論してみた。
それは初めての試みで、少女も意外そうに“私”を見つめた。

そして、

こくり、と少女は頷く。
今度はなぜか、にこにこと楽しそうに。


『もちろん、あの実験に関わった人間全員に、罪はあるわ』


またくるりと――2回転。
この少女の中では、ダンスが流行っているのだろうか?
そんな戯言を心の中で呟いて、思わず、クスリと笑いそうになった。
勿論、そんなことはしなかったけれど。




『例えば、研究者。
 あんな実験を計画し、殺すためだけに20001人もの命を乱造した罪』

ああ、と“私”は悲嘆の呟きを漏らす。
最初から気づいてはいたけれど。

『例えば、一方通行。
 10031人の人間を殺した罪』

にこにこ、にこにこ。
いや、よくみると――ぎこ、なのかもしれない。
笑顔が笑顔じゃなくて、けれどそれはまぎれもなく笑顔で。

だから、

やっぱり――、


『例えば、妹達。
 一方通行を何度も殺そうとし、最後の最後まで自分の大切さに気がつかず、10031人の自分達を殺した罪』







やっぱりこの少女は、



少女である“私”は、





どうしようもなく狂っているのだ。


 



『     』


少女が何かを言った。
けれどそれは聞こえない。

そうか、目覚めが近づいてきているのか、と。
そう気づいて、なんだか、悲しくなった。

どうせまた、この悪夢を見ることになるのに。

もう一度少女は言った。
先ほどと同じ言葉を、先ほどより大きな声で。


『     』


驚いて、それから、“私”は答える。
やはり、大きな声で。

「       」





ああ――、




この少女は、いつから狂ったのだろう。
“私”は、いつから狂ってしまったのだろう。


それは、ハジマリのあの日からか。

それは、絶望に染まったあの日からか。

それは、悲劇が幕を閉じた、あの日からか。


わからない。
わからない、わからない、わからない――。


     
   『「             」』



      うん、 そうだね。




今日の更新終わり!
それにしても御坂姉妹が仲いいssがなさ過ぎると思う

乙ー

次も待ってるー

乙ー

次も待ってる

おつおつ
更新待ってるよー




「それでね、お姉様はミサカ達のこと大切で大好きなんだって!そう言ってくれたんだよ!ってミサカはミサカは自慢してみる!」

ふらりと入ったファーストフード店で、上条はお昼ご飯分のハンバーガーセットとコーヒーを、打ち止めはポテトとジュースを啜っていた。
話し役は打ち止めで、それも美琴のことばかり。それを上条は微笑ましく眺めているといった状況である。
と同時に、上条は女の子の割りに危険な事に首をつっこんでいる美琴にちょっぴり不安を覚えるのだったが。

「御坂お前らのこと大好きだな」

「うんっ!ミサカもお姉様のこと大好きだもん!ってミサカはミサカは胸を張ってみる!」

ポテトの最後のかけらを口につっこむと、打ち止めはにっこりと笑ってみせた。
いいことだと、上条は思う。
あの実験は絶対に忘れてはならないけれど、それでも、囚われずにこうやって彼女達が姉妹でいられるのならば。
それはきっと、素晴らしいことだ。

「今度ねー、お姉様と遊園地に行きたいなぁってミサカはミサカは願望をつぶやいてみる」

「いいんじゃないか? 御坂なら連れてってくれるだろ」

「えへへ、そのときはヒーローさんと、今お姉様と一緒にいるシスターさんもいっしょがいいな!」

「アイツが遊園地にいってもお菓子とかお土産にしか興味なさそうだけどなぁ……」

「そういうこというから噛み付かれるんだよ!ってミサカはミサカは嗜めてみたり」

「そーかぁ?」

「そうなの!そういうのがオンナゴコロってやつなんだよ、ってミサカはミサカは教えてみる」


年下(それも実年齢は0歳)の子供に女心を教えられるとは。と上条の顔が苦笑になるが打ち止めは気がつかない。
なぜか、沈黙が降り立った。
打ち止めは新たに美琴の話をすることはなく、ただ目を伏せて、両手で紙コップをゆるく握った。
不審に思った上条がその沈黙を破る前に、打ち止めが口を開いた。

「……あのね、ヒーローさん」

「ん?」

「お姉様を守るには、どうすればいいかな……?」

不安そうに、そして真摯に打ち止めは尋ねた。
その瞳に、上条の心ははっと付かれる。
そして、そうか、とようやく気づいた。
自分は、こんな目を、インデックスにさせていたのか。

「きっとお姉様はね、ずっとずっとミサカ達を守り続けるよ。 あの人は優しい人だから。 ――ううん。弱い、人……だから」

「弱い、人……?」

「そうだよ。お姉様はとっても弱い。 強いくせに、本当に弱いんだよ、ってミサカはミサカは苦笑してみる。 ……本当に、笑っちゃうくらいに」

「そうか? 御坂はかなり強いと思うけどな。 お前の話を聞いてるときも、ずっとそう思ってたぞ?」

「……えへへ。ねえ、ヒーローさん。お姉様が適わない敵に、ミサカ達は適わない。ミサカ達は所詮お姉様の劣化品。
 だとしたら、どうやって、ミサカ達を守りたいお姉様を守れるの?」 



ずっと、ずっと疑問に思っていたことだったのだろう。
なんだか泣きそうな表情で、じっと上条のほうを見つめてくる。
そんな打ち止めに、上条は安心させるように笑いかけた。

「そういうときはな、人に頼ればいいんだよ。 俺ならいつでも力になるからさ」

「……いいの?」

「ああ、困ったときはお互い様だしな」

「……っ! ありがとう、ヒーローさん!!」

ちょっぴり目を赤らめて、にっこりと打ち止めは笑い返した。
カラン、と水浸しになった氷が、最下層へと落ちていった。





「もう、みこと!!映画館で寝るなんてっ!」

憤慨し、頬を膨らませたインデックスに、美琴はただただ謝罪する。
美琴とインデックスは、映画館に来ていた。最近上映を開始したばかりの新作ホラー映画を見に行こうと思ったからである。
が、美琴は途中で寝てしまい、結果、インデックスが一人で恐怖に怯えることになった。
最近寝不足だったとか、忙しかったからだとか、そういうのは理由にはならない。
だから謝る。ごめんなさい。

「……じゃ、じゃあ、あれを一緒にやってくれたら許してあげるかも」

ようやく観念したのか、ふぅ、とため息をついたインデックスは、つい、と“あれ”を指差す。
彼女の人差し指の先には、ゲームセンターがあった。

「ゲーセンで一緒に遊ぶの?」

「え、えっと、そうだけど、そうじゃなくって!そう!ぷりくら!ぷりくら一緒にとって欲しいかも!」

「そんなのでいいなら……いくらでも撮りましょうか」

「ほんと!?えへへっみっことーみっことー」

鼻歌混じりにスキップをしながら、インデックスはゲームセンターの中へと入る。
インデックスの後を追うようにゲームセンターの中に入った美琴は、あまりの眩しさに一瞬だけ眩暈を起こしてしまった。


(……寝起きだから、かな……)

頭を抑えつつ、頬を上気させたインデックスへ笑いかけた。
インデックスはずらりと並べられたプリクラの機械の中から何を選べばいいのかわからないようで、しきりに首をひねっている。

「うーん、みこと、何がいいかわからないかも」

「あはは、色々種類があるからね。じゃあ、私のお勧めにしようか?」

「うんっ!!」

元気よく頷いたインデックスとともに、美琴は自分が一番気に入っているプリクラ機の中に入る。
何個も照明が置かれたその中は、やはり眩しくて、思わず美琴は目を細めた。
好きなフレームを選んでね、と言われるままに時間制限内でフレームを選び終えると、美琴とインデックスはポーズをとる。

「おさるさんかも!!」

「え、ちょっ、私もやるのそれ!?」

「もちろん!!ほらみこともおさるさん!!」

「あ、え、ちょっと待――、あーっ!!撮られた!!」

「えへへ、次はー……命を一緒にやろうみこと!」


「アンタ外国人なのによくそんなこと知ってるわね!?ま、まあそれなら……」

「わわっ目を瞑っちゃったかも!」

「ま、そういう時もあるわよ。よっし次は……」

「……なんか例がほっぺにキスしてるね……」

「……やってみる?」

「まあほっぺくらいなら……」

「私の国では挨拶だし!!」

「そ、そうよね!えいっ」

「あ、これで終わりかも。わーい落書きタイムーっ!」

「ふふん、インデックスの髪の毛を黒色にしてやるーっ!」

「じゃあ私はみことの髪を銀髪にしてあげるかもっ!」

「あら、アンタ意外と黒髪似合うのね。じゃあ次の写真では眉を太くしてあげるわ」

「えっ!?あーっ!みことーっ!」

「えっへへー。どうよ」

「じゃあ私はー」

「えっ、それなら!」

「だったら!!」


そんな楽しげなやり取りから数分後。
インデックスは排出口をじーっと眺めていた。

「おおー。出てきたかも」

プリクラを取り出し、二つにパカっと割る。その半分を美琴に手渡した。
受け取った美琴はそれをにこにこと眺めながら、

「ふふ、携帯に張ろうかしら」

「あ、私も張るかも!!って、もうすぐ5時だ……」

「そろそろ鉄橋に向かわないとね。それにしても今日は楽しかったわねー」

「うんっ!!みこととお友達になれて、インデックスはとっても嬉しかったんだよ!」

「友達……か。ねぇ、インデックス。インデックスは昼間暇なんでしょ?」

「そうだけど……」

「なら、時々でいいから、私の妹のところへ遊びに行ってくれないかな。私だって頻繁に行ってるけど、それでもやっぱり暇だと思うの。
 あの子たちに、もっと人との触れ合いを経験させたいし……」

「……!! うんっ!!」

インデックスは嬉しそうに頷いた。彼女の脳内にはこれからできる沢山のお友達と、その人たちと楽しそうに遊ぶ自分の姿がうつっているのだろう。
美琴はインデックスの頭を一度だけ撫でると、二人は一緒に歩き出した。


今日の投下終わり。
みこインも結構好きだったりする

おつ

おつおつ
次も待ってるよー


やっと上条さんが出てきてホッとした
あと一方通行がでてきたのは何かの伏線かな?

海原については原作と同じように誰かに止めて欲しかったんじゃないかね
上条より先に美琴になったのは偶然だし上条を狙ったらif展開にならないしな

一方通行や垣根は個人の強さ
上条&美琴は組織的強さがあるから


インちゃん、かわええ


みこっちゃんマジ美味しいどこ取りだな~
作者の愛が見えるわ

みこイン大好きなんだがなかなか増えないよな
上条さん関連のいざこざ除けば美琴とインデックスって相性いいはずなんだが

>>305 御坂姉妹とエツァリ×美琴も少ないと思うんですよね 
    みんなもっと書けばいいのに


「お姉様ーっ!!」

「とうまーっ!!」

再会した直後、ぼふ、と自身の保護者に抱きつく二人。
美琴はそれを頭を撫でながら受け止め、上条はあたふたしていた。

「この子のおもり、ありがとうね」

「ははっ。とってもいい子でやりやすかったぞ」

「お姉様!おもりとはひどいかもってミサカはミサカは憤慨してみたり!」

鉄橋は夕日に照らされて、仄かに赤く燃え上がっている。
4人の影も、いつもより濃く映し出されていた。

「インデックスはどうだったんだ? お菓子とかねだって大変だっただろ」

「む。とうまそれは聞き捨てならないかも!」

「えーそんなことないわよ。インデックスもとってもいい子だったもん」

ねー、と美琴が同意を求めると、インデックスもねーと返してきた。
4人は揃って鉄橋から家路へと歩き出した。打ち止めは美琴の手を握りながらである。


「そういえばお姉様、10032号はどうしたの? ってミサカはミサカは尋ねてみる」

「あの子なら、映画見る前に一度ミサカネットワークで話したわよ。一緒に映画みる? って誘ったけど、なんか黒子との対決がどーのこーので先に帰ってて、だって」

「……その対決ってのが色々気になるけどまあいいや、ってミサカはミサカは考えるのを放棄してみたり!」

ついでに、その対決というのは美琴の癖や性癖などをお互いに問題を出して答えるといったものだったりする。勝敗は引き分けだったものの、ミサカネットワークというものがあるおかげか、若干10032号のほうが優勢だった。……というのはただの余談である。

「あ、なあ、御坂」

別れ際、上条は美琴を呼び止めた。
美琴は打ち止めと共に振りかえる。

「何?」

「今度さ、この四人で打ち止めと遊園地行きたいなって話になったんだが――どうする?」

問われて、そして美琴はプッと笑った。

「答えなんて分かりきってるくせに」

そんな美琴に上条も笑みを返す。

「だな」

その言葉に、打ち止めは心底嬉しそうに頬を赤らめた。
つまり、これは、きっと行くよってことで。
ふと姉を見上げると、美琴はにっこりと微笑んでいた。


「じゃあ、今度な」

「ばいばーい、みこと、らすとおーだー!」

「ええ、またね」

「ばいばいってミサカはミサカは手を振ってみる!」

すっかり日は沈み、真っ暗になったあたりは、すぐに彼らの姿を闇に溶け込ませてしまった。
美琴はぎゅ、と打ち止めの手を強く握ると、再び歩き出した。今度は、二人で。

「打ち止め、お菓子かって帰ろうか」

「うん、ってミサカはミサカは頷いてみるけど……お姉様、時間、大丈夫なのってミサカはミサカは尋ねてみる」

「今日は無断外泊しようかなー」

打ち止めの問いに目を逸らしながら答える美琴に、はぁ、とため息をついた。

「嬉しいけどなんだかちょっぴり複雑な気分、ってミサカはミサカは一人ごちてみる」

いや、もちろん泊まってくれるのは嬉しいのだけれど。
ポツポツと振り出した雨が打ち止めの服を濡らす。なんだか重たくなっていやだな、と打ち止めはのんきに思った。
しばらく歩くと、この暗闇には目を背けたくなるほど眩しい光が目に入った。スーパーだ。
そこに入ると、まずはお菓子のコーナーへ。

「ねえ、打ち止め。ちょっと私トイレに行ってくるから、ここで選んどいてくれる?好きなだけ選んでいいわよ」

「わかった、ってミサカはミサカは頷いてみる」

「あ、あんまりここから離れないようにね。スーパーからは絶対にでないこと。いいわね?」

「うん、ってミサカはミサカは素直ないい子になってみる」


にっこりと笑い、美琴は打ち止めの頭をぽんぽんと撫でてから、お菓子のコーナーから立ち去っていった。
しかし、向かうのはトイレなどではない。
スーパーの外……否、正確にいうのならば。

「コソコソ隠れてないで、でてきなさいっ!!!!」

瞬間、美琴を中心として砂鉄が渦巻き、5メートルほど離れたところに生えてあった木をざっくりと削り取った。
そこから飛び出すのは、黒い服の人間達。ざっと10人ほどというところか。
やはり、いつものとは違う、と彼女は思った。
上条達と街を歩いていたときから、ずっと感じていた気配。尾行していたのだろうが、美琴には筒抜けである。

「何か用?私、忙しいんだけど」

睨みつけ、軽く砂鉄の剣を振ったが、相手は何も答えない。本格的に振り出した雨が、さらに沈黙を煽った。
1秒、2秒、3秒と時間が過ぎていく。美琴は構えを解かず、それは向こうも同様に。
そして、いきなり構えていた銃の引き金を撃った。

「レベル5なめんじゃないわよっ」

十数発の銃弾を砂鉄で全て叩き落し、美琴は動けなくなる程度の威力の電撃を放つ。つけてきた目的を聞こうと思ったのである。
レベル5の自分を狙ってきているのなら、まだいい。
だが、あの子達を狙っているのなら。

(……容赦は、しない)


その言葉を噛み締めた瞬間、ハッと美琴の目は見開かれた。
美琴の放った電撃は彼らに直撃したものの、何か対策をしているのか、特に彼らは堪えていない。チッと舌打ちして、美琴は今度は先日白井から拝借した鉄矢を磁力を使って打った。
何本かは彼らの肉を貫いたものの、殆どは回避されてしまった。

(……何か特別な訓練を受けているとみて、間違いないわ)

だからといって警備員ではない。勿論、風紀委員でもない。
だとしたら――この学園都市の、闇に当たる部分の者か。
美琴の脳裏にあのオバサンと、圧倒的優位さで自分を打ちのめしたあの男が浮かび上がり、ギリ、と歯を食いしばる。

「アンタ達何者なわけ!? どうして私をつけたの?」

彼らは答えない。そのことに苛立ち、先ほどよりも強い電撃を放つために演算を開始しようとして――

「あ……?」

美琴の呼吸が、止まった。
そして、次の瞬間、耐え難い痛みが彼女を襲う。


(い、たい……?)

<削除>

(痛い、頭が、頭が、割れる、よう、にいた、い……痛、)

<改変><お姉様><最終個体>

(わ、れ……痛い、これは、痛いよ、助けて、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイ)

<上位個体><削除><ミサカネットワーク><接続不可能><命令>

(痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ痛――)





 
        オリジナル  ラストオーダー
<上位個体をお姉様から最終個体へと改変する作業を開始します>








「……っ、かは……!あああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1」

絶叫が響いた。
涙がぽろぽろと零れ落ちた。それと同時に、体も崩れ落ちて。
美琴を襲ったのは、単なる頭痛ではない。
これは、もっと別のナニカ。

「痛い、痛い痛い痛い痛いぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!!!!!!」

頭を両手で抑え、ただただ痛いと咽び泣く。美琴には、それしかできなかった。何が起こったのかさえ、分からなかった。
目の前に敵がいることも忘れ、ただ壮絶な痛みに耐える。がくがくと体は震え、なんだか異様に寒い。
そしてそんな美琴を、容赦なく蹴り飛ばす男がいた。

「ピーピーうっせぇなぁ、ガキ!!」

受身のとれなかった美琴は、なすすべなくごろごろと地面を転がっていった。途中で砂が口の中に混ざりこむ。地面に溜まった水が彼女の体をぐっしょりと濡らした。

「あ、ぐ……?」

口の中にはいった異物を吐き出すことすらできず、美琴は目だけを上へ向けた。
そして彼女は、目にしたくないものを見る。
は、と息を呑んだ。



「らすと、おーだ……?」



男の脇に抱えられていたのは、ぐったりと気を失った打ち止め。
明らかに、その顔色はよくなくて。
痛みに苛まれる頭が、なぜ、と言葉を吐いた。
なんで、どうして、こうなった。



雨は降り止まない。
美琴の頬を、一筋の水滴が滑り落ちていった。






そろそろ13巻の内容にいきそうですね
やっと木原君登場。長かった。

とっても乙

おつおつ
続き待ってる




美琴の足に、男は思い切り腕を下ろした。いやな音が体の内側から響き、美琴は思わず苦悶の声をあげた。

「俺の名前は木原っつうんだけど、木原くらい知ってるよなあ!」

木原。
確かその名前を、前に聞いたことがある。
……そうだ。

「木原……テレスティーナ……」

「おぉッご名答ーッ!!俺は木原数多「かえして……!」

美琴は木原の言うことを最後まで聞かずに、叫ぶ。
あの子を。
あの子を返せ。
カエセ!!
美琴が伸ばした手は、しかし木原が足で踏みつけたことによって打ち止めに届かない。あぐ、と声が漏れた。


「人の話は最後まで聞けクソガキィ!!」

いいながら、木原は美琴を踏みつける。頭を、腹を、腕を。踏まれるたびに美琴の体には血が流れ、痣が浮かび上がっていく。
美琴が歯を食いしばると、じゃり、と音がした。口の中がざらざらとして、ぺっと唾を吐き出したものの、その感触は消えない。
砂の味は、いつしか鉄の味に変わっていた。砂によって口内は傷つけられ、血が出ているらしい。

「さーて問題です。テメェはその頭に何をされているでしょーかぁ!?」

瞬間、頭を掴み持ち上げられた。抵抗しようと試みるが、演算が上手くいかず静電気程度の火花しか出せない。
木原は持ち上げた美琴を、地面へと叩き落とす。衝撃が美琴の背中を蹂躙した。

「あ、うぅ……っ」

「はっ!無様だなあ超電磁砲!!」

確かにそうだ、と美琴は思った。
今の自分は、とてつもなく無様だ。
笑えるくらい、無様で。
レベル5なのに。最強の電撃使いなのに。雷ひとつも、落とせないなんて。

「正解はぁーッ、上位個体をテメェからこの打ち止めってヤツに書き換えられてんだよ!!」

「……っ」


驚きに目を見開いた美琴は、思わず木原を見上げた。木原は相変わらずにやにやと嫌な笑いを浮かべていて、不快そうに美琴は顔をしかめた。しかしすぐに一際きつい頭痛におそわれて、それは嫌悪から苦痛へと塗り変わったのだが。

「改変にはちょいとばかし時間がかかるからな……その間テメェと遊んでるっつうわけだ。分かったかなぁ?」

「……どうしてそんなこと……?」

「これからの作業にはテメェが上位個体よりコレの方がやりやすいんだよ。ま、アレイスターには他の考え方があるみてえだけどな」

アレイスター……?
その言葉に、美琴は怪訝そうに眉を顰めた。
確か、その名前は――

「……おい、あと時間はどれくらいだ?」

美琴ではなく後ろにいる部下(らしき黒服)に尋ねる木原。部下は「あともう少しです」と告げた。
木原はんー、とつまらなさそうに首をかしげ、

「じゃ、このガキィぶっ殺して、さっさと行くか」

そう言って、打ち止めを部下に手渡そうとする。
ドクン、と心臓が波打った。


(や、めて……)

伸ばした手は、やっぱり、届かなくて。
びりびりと痺れる指先は、打ち止めの服の裾さえ、掴むことがなかった。

(かえ、して……)

赤く染まる視界の中で。
あの子が。
私の手から。
あの時のように。

(私の妹を、これ以上……奪わないで……!!!!!)

ナニカがぷっつりと切れたような気がした。
体の痛みも、頭の痛みも彼女の心には響かなかった。
ただ、返してと。
ちっぽけな願いを、叶えるために。

彼女は、自らに課したたった一つの誓いを、破った。

妹達にとって『生』の象徴であった彼女は。
例え彼のようにあの子達の『死』の象徴になったとしても。
それでも……、それでも構わないと、思えたのだ。
あの子達を――自分の手で、守れるのならば。


人間を、殺しても、かまわないと。



通常ならば重傷――いや重体と言われる傷を負い、脳に重大な負荷をおいながらも、美琴は無理やり立ち上がった。
あらゆるところから尋常でない量の血があふれ出ていたし、意識が朦朧としていたのに、それでも美琴は、笑っていた。
本当の本当に嬉しくて堪らないとでもいうかのように、口を思いっきりあけて、笑っていた。

「人、の……」

その笑顔が、憤怒の様に変わる。そして、ビリ、と紫電が小さく散った。
この状態で、電撃を放つ。
あり得ない、と思った木原達の反応が一瞬遅れる。
その一瞬が――電撃を操る能力者である美琴に対しては、大きな隙となった。

「妹に手ぇ出してんじゃないわよぉおおおお!!!!」

まさに気力だけで、美琴は高圧電流を放った。的確に打ち止め以外の敵を狙うように。
ともすれば、死んでしまうかのような威力の電撃を、彼女は生まれて初めて、ためらいもなく放った。
それは、あの日鉄橋で上条に打ったときよりも、遥かに高次元の、雷。

「あ……が……」

学園都市第三位の電流を浴びて、木原達は動けなくなる。美琴は各所から流れる血も、気を失ってしまいそうな強烈な頭痛も全て無視して、ただ打ち止めを、妹を守るためだけに歩きだした。
ようやく打ち止めのところまで辿り着くと、彼女はそれを抱える。頭を右手で支え、膝を左手で支えるといったお姫様だっこのような形だが、しかしそこには童話のような温かさなどない。
どこまでも冷たく、どこまでも暗い、狂気だけが満ち足りていて。


「あは、あははははは……」

ぎゅ、と腕の中の小さな温もりだけを頼りに。
美琴は正気を手放した。

「私が、私が守ってみせる……!!!!」

それが私の、たった一つできる、報いなのだと。
そう信じて、それを決して、彼女は疑わない。




最近頻繁に投下できて嬉しい
今日のところはこれで終わり

乙なんだよ


美琴まさかの暗部入りフラグか?
こりゃ15巻再構成も現実味が出てきてwwktkですな

おつおつ
次も楽しみにしてるよ~

乙!
美琴は禁書で結構多い殺れば出来る子だよな
相手が死なないように手加減する必要が無くなったら怖いね

みこっちゃんが暗部入るSSは少ないから是非とも



誰かがみこっちゃんを止めてくれると信じて

ふざけんな期待してる

だからこその上条さん

上条さんは黄色い人の相手で忙しいでしょ

木原がここであっさり死んでたら苦労はないんだろうけど木原くンだしなあ





荒い息をできうる限り押さえつけて、美琴はじっと隠れ潜む。
そこはとうの昔に廃墟と化した、以前は研究所であったであろう場所。
美琴は追われていた。
おそらくは、木原の部下に。

(まだ、仲間がいたなんて……)

現在の美琴に戦闘能力はない。それどころか大量出血と頭痛のせいで意識を保っているのがやっとだ。気を抜けばすぐさま気を失ってしまうだろう。
まずい、と思う。
辛うじて電磁波によって敵の位置が分かるので、それを頼りに逃げ続けていられるのだが、それも時間の問題だ。能力どころか歩くことさえままならないのだ。逃げ続けることなど不可能だ。

(……っ、せめてこの頭痛はおさまれば……!)

勿論、出血のほうも馬鹿にならないのだが、この強烈な頭痛さえおさまれば、能力を使えるようになる。それだけでも随分違うはずだ。
少なくとも、今よりは。
能力を使えない。そして、未知なる勢力に追われている。その緊張と心細さから、打ち止めを抱く腕に力を込めた。同時に圧迫されて塞ぎかけていた傷がまた開く。
だが、痛みを感じない。変なの、と美琴は不思議に思った。それが自身の体が相当やばい状態であることを表していると、彼女は気づけない。

(寒い、な……)

まだ末とはいえ9月である。寒いはずがないのに、彼女はたまらなく寒さを感じていた。
カタカタと微かに震える体を押さえつけ、必死に電磁波で敵の位置を探る。


(さっきの部下は後もう少しだって言っていたはず。……早く、早く……ッ)

まだ距離はあるが、しかし、すぐに見つかってしまうだろう。
それまでに能力が使えるようになっていなかったら――ほぼ確実に、お陀仏だ。
彼女だけでなく、多分、この子も。
それがやはりたまらなく怖くて、美琴はただただ早く、とだけ祈った、

その時。



<ミサカネットワークに改変完了しました>


<これより、各個体への書き換えを開始します>



「……ぁ、っ……」


一瞬、猛烈な頭痛の波が来たあと、先ほどまでの頭痛が嘘のように消え去った。
ぐらりと体勢が崩れたものの、すぐに立て直す。
ようやく、美琴は演算能力と正常な思考を取り戻した。
体力はかなり消耗したものの、これならある程度までなら戦えるはずだ。

(ミサカネットワークに書き換え完了したのか……今は各個体に設定しなおしているのね……)

割り込むか……? と少しだけ考えたが、やめた。今は余計な体力を消費したくない。後でもできることより、今できることをしなければ。
服の裾を破り、傷の深いところから止血していく。自分でやるので少々不恰好ではあったが、文句は言えない状況だ。
そんなことを気にするよりは。

(早く、あいつらを殺さないと)

――殺す。
正常な思考能力を取り戻して尚、彼女の壊れた部分はなおらなかった。そのことにためらいも何も覚えず、ただ淡々と思うだけだ。
腕の中にいる打ち止めは、未だ気絶していた。もしかしたら薬でも嗅がされたのだろうか。なんにしろ彼らが妹に手を出したのは明白なので、自分のやることは変わらないのだが。

(……近づいてる。もうすぐ、見つかっちゃう)

どうしよう、と美琴は考えた。打ち止めをここに置いていくか、連れていくか。数秒迷った後、彼女はここに置いていくことにした。先ほどのように打ち止めを拐われるのは嫌だが、戦場に連れていくのはもっと嫌だ。何より、今から自分がすることを、たとえ気絶していたとしても、見られたくなかった。
今からすることは、悪いことだから。

「……行ってくるね」

優しい顔で笑って、美琴は立ち上がった。
これから自分が行うことに、なんの感情も抱かずに。



なんか少ないですけど今日はこれで終わり
みこっちゃんなんだかんだで結構な重傷です

乙!
次も楽しみにしてるよ


しかし打ち止めを誰かに預けるって考えはなかったのかね
放置するよかはよっぽどマシだったような気がするが

厄介事の塊を一時的とはいえ他人に任せる人間じゃないでしょ

誰かに預けるような余裕が無いのでは?
あんなボロボロの状態ではそんな長距離移動できないし、敵はすぐそこまで迫ってきてるし。

妹達の事情を知ってて助けになりそうな人間ってのが上条さん、海原くらいしかいないしなあ
しかも今回上条さんとの電話交換イベント発生してないから連絡しようにもできないってのもあるんじゃないかしら



“学園都市第三位、常盤台の『超電磁砲』、御坂美琴。
 闇に落ちた者が多いレベル5の中で、稀な光の住人であり、それゆえに広告塔の役割をもつ少女。”
それが、猟犬部隊が持つ、美琴についての情報だった。

(今回の任務は割合簡単そうね)

猟犬部隊の一人、ナンシーはふぅ、と嘆息する。
現在、美琴を猟犬部隊は二つの班に分かれて追っている。一つの班は陽動で、ナンシーのいる班は奥へと追いこまれた美琴を殺し、打ち止めだけをさらってくるという役目だ。
別に今の彼女には戦闘能力はないのだし、ひとつの班でいいのではないかと思ったが、目を覚ました木原いわく、

『あのガキを甘く見るな』

らしい。よくわからない。
美琴は殺すことに躊躇いを覚える、善良な一般人のはずだ。
何を警戒する必要がある?
確かに、あと少しすれば頭痛もとまり、戦闘能力もある程度取り戻すだろうが、彼女はなにより殺せない。だから、問題ない。
殺せる自分達の敵では――

ぐちょり。


ぞくり、と悪寒が走った。慌ててその場から飛びのく。
何を、自分は今、踏んだのだろう。
何を――。

「あ、し……?」

ナンシーが踏んだのは、ちぎられた左足だった。
明らかに美琴のものではない、これは、きっと、自分の仲間のものだ。
思わず息が詰まった。

「なんで……」

ナンシーは目を大きく見開きながらつぶやく。
ガタガタと震える体が、嫌な予感を催していて。

「彼女は、光の住人じゃあ……?」

猟犬部隊は気づいていなかった。
自分たちが、元々自分を追い詰めすぎていた彼女をさらに追い詰め、狂わせてしまったことを。
そして、自分たちが間違った認識をしていることを。
“御坂美琴は、人を殺せない”
――そう確信していたからこそ。


「なによ……これ……」

猟犬部隊の一人、ナンシーはぺたりと地面にひざをついた。
それは、仲間も同様で。

彼らの視界に広がるのは、真っ赤な海。
それが血だと気がつくまで、彼らは数秒の時間を要した。

血の海から視線を上にあげると、そこには鉄材によって腕を突き刺されたり、足の一部がもがれた仲間たちがいた。

(――ッッッ!!!!)

思わず吐きそうになる。まだ息はしてるものの、早く医者にいかせないと。
いい医者を知っているという仲間にその場をまかし、彼女達は恐る恐る前へと進んだ。
そうしないと、自分たちもこうなるような気がして。

カツン、コツン、カツン、コツン。

重ならない足音が、誰のものかわかっていた。
分かっていて、銃を向けられなかった。
恐怖が、体中を支配して。


「こーんばーんわー」

明るい少女の声が場を満たす。
それは場違いで。だからこそ、オカシクて。

「えへへっ、ごめんね? お仲間殺しちゃったかもしれない。 まあいいよね。 そっちが先にやったんだから、おあいこってことで」

にっこりと笑う少女は、とても可愛らしかった。それは、まるで純粋そのもの。
けれど、それに慄然はすれども、見惚れることはない。
少女の服や皮膚にこびりついた赤いものが、チラチラと猟犬部隊の視界で踊っていた。

「じゃあ、アンタたちも、心の用意はもちろん出来てるわよね?」

なんたって殺しにきたんだもんねー、と少女は溌剌と笑った。
殺しにきたのだから、殺される覚悟も出来ているのだろう? と、当然のように問う。

コツン、と少女の靴の足音が、最後に猟犬部隊の聴覚に響き、


そして、



赤が、








今日の分終わり
ここの美琴と原作の一方さんが交わったらどうなるんだろうと思わなくもない


更新早くていいね

乙なんだよ

おつおつ
更新楽しみにしてるよ

>>347
お前も加害者(キリッ

前回の投稿から大分たってるけど
>1は大丈夫か?

待ってる




むせかえりそうな血の匂いで意識が戻った。
というより、正気が戻った。
気がつけば、自分の服は自分の血じゃないもので更に赤く染まっていた。

「……あーあ」

新品なのに。
せっかく今日、衣替えしたのに。
なんだか虚しくなって、はぁ、とため息をついた。
既に赤が大半を占めているブレザーを捨てようか一瞬迷って、しかしやめておく。後々めんどうなことになりそうだし。

「打ち止めのところに、もどりましょうか」

誰にでもなく一人呟き、右足を上げた。
ぺちゃり、ぺちゃり。明らかに床ではない感触を革一枚はさんだ向こう側で感じながら、しかし歩みを止めない。
ただ、気持ち悪いなぁ、とだけ思った。

明らかに、感覚は麻痺していて。
血の匂いに、もう慣れてしまって。

「……ま、いっか」

明るい言葉でその不安を振り払って、また足を動かす。
真っ暗な廊下。電気が通っていないこの廃墟の中を血まみれで歩く少女の姿は周りから見たらどう見えるのだろう。
ふ、と嘲笑にも似た笑みを顔に浮かばせる。ああ、きっと私は亡霊だ。

「そうじゃなければ、悪霊に取り付かれた女の子ね。うふふ、いいえて妙だわ」

使い方あってるか知らないけど、と責任を放棄した発言をする。悪霊。はてさてそれは、なんのことやら。
気がつくと、打ち止めを隠しておいた部屋へとたどり着いていた。ガラリとドアを開けて、中へ入る。


「ただいま」

おかえりなさい、は返ってこなかった。残念だ。
机の裏から打ち止めを引っ張り出すと、打ち止めのおなかを左のわき腹の近くで支えた。お姫様だっこをするだけの力はもうなかった。
打ち止めの膝から下は地面にすれていたが、きにしない。それだけの体力の余裕はない。引きずるように、一歩だけ踏み出した。

「大丈夫よ、打ち止め、私が守るからね……」

にっこりと、意識のない少女に笑いかけてまた、一歩、一歩と。
そうしながら、ただぼんやりと思考を巡らせる。
たわいもない、戯言を。

結局、自分がやるべきことは単純なことなのだ。

妹達を守る。
死んだあの子たちに、償いをする。

文章にしてたった二文。簡潔で率直な答えだ。
でも、それが難しいことなのだと、ようやくしった。
守るということが、アイツがあれだけ簡単に成していたことがどれだけ難しかったのか、今日、痛いほど身にしみた。

(……私は、弱い)

いまさらのように、思う。
第3位なんていいながら、結局自分は無様をさらしている。

だったら、どうすれば良かったんだろう。
自分は、何を選択すれば良かったのか。

(……分からない)


あの、第1位のような最強になればよかった?
あの、能力を打ち消すなんて馬鹿げた力を手に入れられればよかった?

そんなもの無理だ。この御坂美琴という少女には、電撃を操るしか、それしかできない。
あの子達を満足にまもれやしない、ちっぽけな力。そんなものしか、持つことができない。

(私じゃ、役不足だったんだ)

例えば、あの白い少年なら。
例えば、あのツンツン頭の少年なら。

もっと自分よりも簡単に、この子達を救えていただろうに。

(私が、こんなんだから……)

ああ、もう――
どうすれば、いいのかな。

左から伝わるぬくもりに視線を落とす。
絶対に答えは返ってこないのに。絶対に聞いてはいないのに。

「ねぇ、ひとつだけ、わがまま、いってもいいかな?」

少しだけ、逃げるために。
このクソッタレな現実から、目を逸らすために。

そんなことを、聞いて。
答えはないけれど、いいよね……?
少しくらいは、許されてくれるよね……?

……ねぇ、



あのね、私、





「わ、たし――」






その時、美琴は気がついていなかった。
体力の消耗によって、電磁波が使い物にならなくなっていることに。
そして、美琴の死角で、黒服が銃を構えていることに。

「ぁ――ッ」

美琴がその続きをいう前に、黒服が躊躇なく引き金を引いた。
刹那、美琴の左腕を何かが貫いた。
それが銃の弾だと美琴が気がつく前に、彼女は地面へと崩れ落ちた。

「……あ、れ……?」

身体の左側から、ぬくもりが、消え去った。
それどころか、すごく、寒い。
寒い。

(さ……む…………、い……)

打ち止めのほうに手を伸ばそうとして、指さえ、動かせない。
腕も、何も、動かせなくて。
薄れゆく意識の中、何よりも聞きたい声ではなく、憎悪しか生まれないあの下卑た笑い声が耳に届いたような気がして。



「             」



赤く、赤い闇の底へ。
私はずぶずぶと、沈んでいった。





かなりの量の書き溜めが消えてすっごく落ちこんだわ
短くてごめん




消えるとやる気無くすよな

おつおつ
次も待ってるよー


期待なんてしてないんだからね!!


結局のところ、自分は無力なのだ。
ウイルスに支配されて動けなくなってしまった個体達を見て、10032号は思う。
彼女たちがいるのは、いつも寝泊りしている病院の一室だ。
冷たい床の上でたったまま微動だにしない二人。それを見て危機感を覚える10037号。それはまるで絵画をみているようだった。
同時に、御坂妹はぽっかりと空いてしまった存在をそこに認知する。

(……上位個体)

いつもはいるはずの打ち止めが、そこには存在していなかった。
ずっと帰ってこない。これがお姉様と遊んでいるだけなら、嫉妬はすれど心配はしなかったのに。

(……今日は、本当にどうしてしまったのでしょうか、とミサカ10032号はため息をつきます)

楽しかったのになぁ、とすぐさっきまであったあの幸せを噛み締める。
本当に、楽しかったのに。
お姉様と遊んで。打ち止めのおもりをして。白井とかいうのに会って。お姉様をめぐって対決をして。
なのに。
いきなり、美琴から打ち止めに上位個体が変わった。
戸惑っている間に、今度は、更新が完了した個体達から、ウイルスのせいで動けなくなってしまった。

(19090号と13577号は既にもう……。今は12999号ですか……。そろそろ、ですね)

今お姉様は何をしているのだろう、と10032号は思う。
なぜか美琴は上位個体ではなくなったときにミサカネットワークに入れなくなったのか、動向がつかめない。
一緒にいるらしき打ち止めも気を失っているので、正確な情報がわからない。

(どうやら戦闘を行っていることだけはわかるのですが……、お姉様は大丈夫でしょうか、とミサカはやきもきします)

自分には、なにもできない。上位個体に逆らうことはできないのだから、19090号たちを助けることもできない。
そのことを実感して、あの時のお姉様はやっぱりこういう気持ちだったのかな、と。
御坂妹は、虚しさを胸に抱きながら、そんなことを考えた。





ポケットの方から伝わってきた不快感を煽る振動で意識が戻った。薄く目を開くと、やけに視界が明るかった。そのことに疑問を少しだけ抱きつつ、眼球を横へずらす。
まず視界に入ったのが赤。それが血だと認識する前に床に視線を移し、壁から天井へ。その途中でごろんと体を回転した。その時に感じた壮絶な痛みは表す言葉もない。
特に、左腕。

「~~~~~っ!!!」

目に涙をため床で跳び跳ねるのは言うまでもなく無様だったが、しょうがないではないか。痛いのだから。
ようやく痛みに慣れ(ひいたわけではないのがポイントだ)、目を覚ました時から続いている振動を止めるためポケットに手を伸ばした。
もちろん震源は携帯であり、決してえっちぃことに使うアレではない。

「……でんわ?」

仰向けに地面に横たわったまま取り出して見てみると、知らない番号から電話がかかっていた。
ハテナマークを浮かべつつ、一応左側の受話器のボタンを押す。

「もしもし、どちらさまで――」

通常通りの反応をしようとして、しかし遮られる。画面の向こうから聞こえてきたのはオジサンの声。

「ハイハーイ、やっぱ生きてんじゃねぇかクソガキ!!確認のため電話しておいて正解――ィ!!つーか出んのおせえんだよ!!何時間待たせる気だ!!」

オジサン――もとい木原の声が聞こえ、そこでようやく美琴は夢現から現実に引き戻された。
同時に、今までのことを鮮烈に思い出した。
思わず携帯を握り潰してしまわなかった自分を誉めてやりたい。


「……アンタ、私の妹をどうしたの」

低い声だった。
自分が出しているとは、極力信じたくはないような、そんな声音。

「ハッハァー!外を見てみろよ超電磁砲!!!面白いもんが見れるぜえ!!」

「……それがあの子達に何か関係があるの?」

「ああ、てめえの妹が拐われた理由がある」

木原の言葉に顔を歪ませ、右腕を支えに、体を起こす。やはりズキズキと身体中が痛んだが気にしない。
そして窓ガラスの方へ目を向け――呼吸が、止まった。
誰に教えられたわけでもないのに、彼女は答えを呟く。


「てん、し?」


美琴は科学の街の住民だ。聖書はただの創作物だとしか捉えていないし、神様なんているわけがないと鼻で笑うような、そんな人間に分類されるのに。
天使、と。
同時に納得する。電気が通っていないはずのこの部屋がやけに明るかったのは、あれのせいか。
あの、翼にも似た刃のように鋭い光が、この部屋の光源と化しているのだ。


「……ねぇ、あの子達とあれに、なんの関係があるの」

先程とは違い、静かな――どこか不安を匂わせる問いかけだった。自分の妹達があんなのと関わっていて欲しくないと、母親のような思考で美琴は問う。
けれどそんな気持ちを、木原はいとも簡単にぶち壊す。

「ミサカネットワークを使って、“アレ”を出現させたみたいだな」

「……ッ、それって……?」

「てめえの妹はまるごと渦中の中ってわけだよ、超電磁砲」

美琴が何かを言う前に、ぶちり、と通話が切られた。
ぎり、と歯を軋ませる。同時に、自分の中にある何かも噛み千切りながら。

「私は、姉だ」

美琴はもう一度ポケットに手を突っ込むと、今度はPDAを取り出した。





空が明るい。
10032号は窓から外を眺めた。
電撃にも似た翼を伸ばし続ける『天使』は、きっとミサカネットワークを使われて出現したものであろう。
自分達が渦中にいるのに何もできない歯がゆさにを感じ、思わず拳を窓ガラスにぶつける。
バン、という音にまだ設定が完了していない10037号がびくりと震える気配がした。

(……お姉様)

現在10039号までもう更新されてしまっている。大半の妹達が動けなくなっているのだ。
何がおきているのか、御坂妹にはまったく把握できていない。
だからこそ、心配する。
敬愛すべき、たった一人の家族を。

(ミサカは……)

ぎゅ、と目をつぶった。
何をすればいいのか、わからない。
天使のほうへいけばいいのか。いったところで、何ができる?
ならば、お姉様のところか? でも、自分の力では、きっと荷物になるだけだ。

だから。
だから、ミサカは――、


「……馬鹿馬鹿しい」


それまでの全ての迷いを断ち切るように、はき捨てた。
それは、鋭い棘となって御坂妹の心に突き刺さる。
今まで何もしなかった自分が恥ずかしい、と思った。
何もできないからといって、何もしない理由にはならないのだから。

「……10037号、ミサカはお姉様のところへ行ってきます、とミサカ10032号は宣言します」

ドアノブを捻り、外に出る。
既に電光が弱まった暗い廊下の中を御坂妹は駆け出した。

「10037号!? あなたはなにを――」

驚いた様子の10037号の方へ振り向かず、その身体の自由が奪われるまで、彼女はただただ歩みを速める。



もっと書けると思ったけど無理だった
今日はここまで。

ミス
>>368
「10037号!? あなたはなにを――」
じゃなくて
「10032号!? あなたはなにを――」


やっぱ木原くん生きてたww



木原数多は呻き声一つあげずただ眠り続けている打ち止めを眺めていた。
――つまらない、と思う。
計画は滞りなく進んでいる。障害であった超電磁砲は難なく突破しし、多少の被害は出たものの(現に木原の体は未だに所々痺れを感じている)、計画に差し障る程ではない。
まるでレールの上の人生が如く。全てを突っ切って、何の迷いもなく天使を乗せた電車は走り抜けている。
それに、堪らなく腹がたった。
それは、彼が“失敗した実験”こそを成功とする木原の一族であったからかも知れないが――とにかく、部下の一人の足を飛ばすくらいには、彼の苛立ちは沸き立っていた。
もしもこれがあのクソ生意気な第一位であれば、もっとやりごたえがあったのだろうか? この煮え切らない苛立ちとは違うものを沸き立たせられたのだろうか?

(この程度かよ……)

アレイスターのプランはあの日変更を余儀なくされた。一方通行ではなく超電磁砲がプランの主軸になったのは、彼の最大の誤差だったのではないかとさえ思う。こんな劣化したプランの一端を握っているとは思いたくなかった。
もう一度打ち止めを見る。相変わらず指一つ動かさずただ天使を動かすためにその身を捧げる様はまるで生け贄のようだった。
それを見ながら、木原は思わず叫ぶ。

「超電磁砲ってのは、この程度なのかよオイ!!!!!!」

もっと楽しめると思っていた。代わりとは言えプランの主軸を握っているのだ。やりごたえのある仕事であると思っていたのに。
この程度か。
レベル5の第三位。
テメエは本当にこの程度なのか。
彼がまた苛立ちに身を任せて部下を虐めようと銃を握った時――、

変化は起こった。



「あ、がぎ……ぃ――異物を確認――かく、に――」



今まで一声も喋らなかったどころか指一本動かさなかった打ち止めが、目をいっぱいに開いて不可思議なことを呟き始めた。


「……なんだあ?」

さすがの木原も眉をしかめる。こんなことをやりだすのは聞いていない。
いぶかしむ木原を置いて打ち止めはただ対処に追われる。
ミサカネットワークの中に入ってきた異物の処理に。


「壁を確認――破壊します――不可能不可能不可能不可能―

 ―高次元の能力を察知――異物――10032号の更新を開―
 
 ―接続ができません――接続ができません――接続ができま
  
 せん――壁をウイルスと定義します――ウイルスの解析を開始

 します――ミサカネットワークと同種の波形を確認――これは―

 ―これ、は――」


ポツリ、と。
最低限の思考能力も奪われているなかで。
ふと、思わず呟いてしまったかのように。



「おねえ……さま?」



「――ッ!!!!!!」

木原は声にならない驚愕の叫びをあげた。
打ち止めが呟いていた乱文でなんとなく理解する。
最後に残った妹――10032号を天使の支配下から逃がすため、ミサカネットワークにハッキングして打ち止めの言う“壁”を作ったのだろう。
そしてそれは成功した。
打ち止め達は10032号に干渉することは出来なくなり、結果更新は10033号で止まってしまったのだ。

「やるじゃねえか……クソガキ」

冷や汗を書きながら、それでも木原は余裕の笑みを崩さない。

「テメエの大事なモン奪ってやるから――さっさと来いよ、超電磁砲!!テメエを絶望の底へ叩き落としてやる!!」






「あはは……」

血まみれの少女は勝利の愉悦に浸っていた。
ようやく――ようやく自分の力だけで、小さな形ではあるものの――あの子を助けることができた。

「ざまあみろ」

笑う。
げらげらと、今まで自分を利用してきたものたち、その全てを嘲笑う。

「これが超電磁砲だ」

自らを証明する代名詞。
私が私でいられているのは、こういうときなのだと。

「――これが、“お姉様”だ」

妹のために命を懸け、妹のために命を捨てる。
これぞ。
これこそが――

「御坂美琴だ!!!!!あはっあははははははははははははははッッッッッ!!!!」

響きやまない哄笑が、波紋の様に広がり、波打った。


少ないけどこれで終わり。最近よく書き溜めが消えてるんだけどなぜだ。
脳内妄想だけじゃ足りないから誰かエツァリ×美琴かいてくれないかな

おつかれさまでした

このスレは大好きだから俺からアドバイス…何か俺偉そうだなすまん。
よく二次創作で一方通行の黒い翼を他者が発生させてるけど、アレってかまちーの後書きや、ヤフー知恵袋に書いてある通り多分、一方通行が何らかの未知のエネルギーのベクトルを操作してる(粒子加速器)らしいから。御坂には多分出来ない?と思う。だから御坂は水翼で「ihbf殺wq」して欲しいという願望。

>>379
所詮鎌痴の後付け設定何だから美琴でも出来るでしょ

まあ、できても黒い翼じゃなさそうな気がするな
イメージ的に



思わず、10032号は立ち止まった。
その感触を確かなものにするため、疑問を声に出す。

「……ッ、お姉様……?」

ミサカネットワークから接続を切られ、支配から逃れた瞬間――御坂妹は敬愛すべきお姉様の気配を感じた気がした。
まるで自分を守るようにミサカネットワークと自分の間にたてられた壁は……そう、美琴の笑顔のように温かかったのだ。

「……また、あなたに守らせてしまいました、とミサカは嘆息します。
 ……けれど、この気持ちは……うれしい、なのでしょうか? とミサカはここにはいないあなたに向かって問いかけます」

ぎゅっと胸を押さえて美琴に感謝すると、御坂妹は再び走り出した。
姉が発する、電磁波の元へ。


ごめんちょっと時間ないんでこれだけ

実は水翼の美琴のやつ読んでないんでよく分からないことばかりなんだが頑張る

コピペですまんが

水翼:海水を利用して帯電した水でできた羽を作り
、その羽の側面から水素で作った推進剤を噴射し飛翔を行う。
   ミサイルを飛ばすほどの推進力を持つものと同じ原理で飛翔を行うため、飛翔速度はとても速く、
   時速100km程で飛ぶ飛行体に容易に後ろから追いついたり、
   水上を音速で爆走し、超音速ステルス戦闘機相手に有利に戦う『雲海の蛇』相手に引けの取らない戦いを行う程の機動力を持つ。
   飛びながらでも問題なく能力の使用はできる。
   ただし常に演算して推進力を使ってる問題上、自身が大ダメージを負うと演算ができず水翼を維持できなくなる。

2・30m程の距離で放たれたミサイルを自身の雷撃で打ち落とす反応。
また100m程の距離で放たれた弧を描きながら飛んでくる複数のミサイルに対し、翼で直進することで回避する。

数十人の銃持った奴&超能力者を相手に堂々と姿を晒しながら圧倒したり、近代兵器で武装した軍人達を電話の片手間に全員撃破する。
至近距離から撃たれたサブマシンガンを目視でよけることも可能。

>>385
最後のがもはや能力関係無しに化け物なんだが

設定を正確に描写するためにストーリーを修正した結果
書きにくくなったら本末転倒だし、
こだわり過ぎる必要はないと思うよ。

書きたいように書いてもらえるのが一番です。




空気中の水蒸気が飽和状態じゃなくてもつかえたっけ?
つか、最後三行は水翼関係なくねww

あれは敵方の兵器がたまたま相性よかったから使えたって感じじゃなかったっけ?
普段じゃ海辺でも無理だったような…

読者様だ早く書けって言ってたぞ



インデックスと上条は雨の中を走り回っていた。
この街に侵入した魔術師を倒すために。そして、友達を助けるために。
街は異常なまでに静かだった。きっと魔術師にやられてしまったのだろう。
美琴達は大丈夫だろうか? とインデックスは思う。ばいばいと最後に別れた姿を思い返して、ふ、と思わず笑みが浮かんだ。
例えこんなときだったとしても、やはり友達というのは心を温かくさせてくれる。

「ねぇ、とうま」

走りながら、彼の背中に話しかけた。
彼も走りながらなんだ? と返す。

「みこととらすとおーだーと一緒に遊園地行くとき、ひょうかも一緒に連れて行こうね」

「なら御坂妹も一緒がいいな。奇数だと遊園地じゃ困るだろ。……って男俺一人かよ」

「あはは。とうまくーるびゅーてぃーに変なことしないでね。みことに怒られてもしかたがないかも」

「アイツの妹煩悩すごかったからなぁ」

思い返して、二人で笑う。そんな素敵な未来が待っていることに、絶対に疑問を抱かない。
ひょうかは救う。絶対に救ってみせる。そして、必ず遊園地に行こう。
そう思って、インデックスは足を速めようとして――、

ぴたり、と。

動かなかった。足が地面に縫い付けられたかのように。
怖かった。それが彼女だと断定しまうことに。
視界に入っている上条も、同じように立ち止まっていて。
つまりそれは、そうするだけの衝撃的な光景で。


「み、こと」

小さく名前を呼んだ。彼女は気がつかなかった。
あれ? とインデックスは心の中で首をかしげた。おかしいな、さっきまであった日常はどこにいってしまったのだろう。
ぽろぽろ、ぽろぽろ、気がつかないうちにどこかに落としてしまったのではないだろうか。

ほんの数刻顔を見ていないだけで。
新しくなったばかりの新品な冬服はぼろぼろで。決して少量とはいえない血が彼女の内側からあふれ出していて。沢山のあざができて。傷もいっぱいあって。
目の前の美琴は、少し押しただけでも死んでしまいそうだった。
それほどまでに、彼女の周りには死が忍び寄っていた。

「みこと!!!!!!!!」

思わずインデックスは駆け寄った。漂う死を振り払うように。
ふらふらの体を抱きとめると、ようやく美琴はインデックスに気がついた。そして、もう一人駆け寄ってくるのも。

「……いん、でっくす? ああ、ごめんね。考え事とか、いろいろしてて」

「待って、どうしたのみこと!! なんでこんなにぼろぼろなの!? 誰にやられたの!? 魔術師!?」

「まじゅつ、し……? 魔術……。……ああ、そういえばそんなことをアイツがいってたっけ……。覚えておけって。
 ううん、インデックス。違うのよ。これはね、ちょっと転んだだけだから」

「嘘!! 転んだだけでそんな風になるわけないかも!! みこと、とりあえず病院いこう!! あの先生なら絶対みことを助けてくれるよ!!」

必死な形相なインデックスに淡く笑みをかけ、ふるふると首を振る。その笑みは、拒絶しているようにしか見えなくて。
美琴は自分の腕を握っているインデックスの手を振り払うように腕を動かしたが、インデックスは離れなかった。
今ここで離してしまったら、美琴はきっと死んでしまう。そんな予感があった。
と、美琴の右手を見た上条が、おそるおそるといった風に尋ねる。


「……御坂、お前まさか……撃たれた、のか?」

「……」

美琴は答えなかった。ただ、静かに目を伏せただけだった。
それは上条が言ったことが正解だということを、如実に表していて。
思わず上条は歯噛みをした。

「お前がそんなボロボロにされるって……もしかして、上位2名とでも戦ったのか?」

「……違うわ。ちょっと不覚をとっただけ。撃たれたのは流れ弾。気にしなくていいわ」

決してこちらに目をむけない美琴に、上条は苛立ったように声を荒げる。

「……なんでさっきから嘘ばっかりついてんだよ。お前、いっつもそうだな! あの時だって……!」

「いい加減にして!」

ぬらりくらりとかわそうとしていた美琴が、ついにキレた。
はぁはぁと荒い息をつきながら上条を睨み付ける。

「私はね! 急いでるのよ! 早くしないと木原は絶対打ち止めを殺す! インデックスも手を離しなさい! 私は私の力だけであの子を救ってみせる! それが私にできる最後の償いだから! 天使なんか知ったことか! そんなのにあの子を巻き込むなんて絶対に許さない!」

「待って!」

力を振り絞ってインデックスを突き放そうとして――逆に意気込まれた。
インデックスは真摯な瞳で美琴を見上げてくる。


「今、天使っていった? みこと、天使っていったよね!? それにらすとおーだーが巻き込まれてるって! それどういうこと!?」

「……っ、何でいちいち説明なんか……!」

「その天使はね、私の友達なの!!」

「……は、あ?」

美琴は自分の高ぶった感情が疑問によって鎮められていくのを感じていた。
深く息を吐いて、インデックスの顔を見る。
そこには、手がかりを掴んだという希望に満ちていて。

「お願いみこと。私の友達を助けるために、急いでるのはわかってるけど、お願い、教えて!」

「……俺からもお願いだ、御坂。協力してくれ。……それが打ち止めを救うてがかりになるかもしれないだろ?」

「何を……」

「……それにね、美琴。もしも打ち止めが天使が発動する鍵を握っているのだとしたら……多分みことじゃ打ち止めを助けられないと思う。魔術のこと、みことはしらないよね?」

「……ッ」

美琴はしばし逡巡したあと、簡潔に、しかししっかり情報が伝わるようにインデックス達に説明をした。
途中美琴の傷と話を照らし合わせて二人が泣きそうな顔でしかめたが気にしないようにしながら。
説明が終わると、インデックスは数秒だけ黙り込み、すぐにぱっと顔をあげた。


「……分かったかも。打ち止めが、核を握ってるんだ……。だから結び目をほどけばひょうかもらすとおーだーも助かるはず!!」

「よし!! じゃあインデックスは御坂とそっちに向かってくれ! ……今お前を向かわせるのは正直さけたいけど、木原とか猟犬部隊とかからインデックスを守ってもらう必要がある。俺がいけたらいいけど……まだ魔術師っていう敵がいるから無理なんだ。でもそっちは俺がなんとかする。……御坂、できるか?」

このできるか? は美琴の力量を確かめているわけではない。
ただ、その過程で美琴が出血多量やらなにやらで死んでしまわないか。それを聞いているのだ。

「……私、は」

ポツリと、美琴は言った。
自分の無力さを、かみ締めるように。

「……また、あの子達を自分ひとりでは救えないの?」

「……みこと」

気遣うようにインデックスが名前を呼んだが、答えなかった。
一瞬だけ泣きそうな顔になってから、それを隠すように無理して笑う。

「ま、今回は相手がでかすぎたってことよね。しょうがないわ。……インデックス、行きましょう」

「……、うん!」

「じゃあ、よろしく頼む!」

そう言って、二人と一人は背を向けて走り出した。
それぞれがやるべきことを果たすために。




「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

やはりまだこの距離を走るのはきつかったか、と10032号はとうとう立ち止まって息を整えた。
まだまだ美琴との距離は遠い。バスやタクシーなどを使えればよかったのだが、なぜだか街の機能は麻痺していて、そんなものは使えなかった。
街の異変は、やはりあの天使が関係しているのだろうか? 遠目に見える閃光を眺めながら10032号はぼんやりと考えた。

「……妹達の中で動けるのはこのミサカだけです。しっかりしなければなりません、とミサカは自身に叱咤します」

だからといっても、このコンディションで走り続けるのには無理がある。
ようやく息が整うと、再び御坂妹は足をあげた。

「……お姉様、どうかご無事で……!」

どこか祈るような気持ちで、御坂妹はそう呟いた。


今日はこれで終わり。少ないけどちょくちょく投下か書き溜めしてからどっさり投下かどっちがいいんだろう

>>385 ありがとうございます。それって水であればなんでもいいんだろうか
最後美琴化け物だわ

>>389 何それ初耳。何か条件でもあるんですかね?


水翼は「太陽の蛇」の高温攻撃で海水が沸騰し、飽和状態になった空気中の水分子を利用した水素ロケット
一気に燃料集められる海上だからこそ使えた技

ちなみに特典SS引っ張り出して確認して、俺が思っただけなんでちがったらすまそ

コピペだが

 御坂ができること


 雷撃の槍
 砂鉄剣
 電気錠やセキリュティの解除
 携帯端末から書庫への進入
 ネットを介した研究所器材の遠隔破壊
 警備ロボの制御を奪っての遠隔操作
 信号機トラブルを起こし交通渋滞を作るなどのクラッキング
 電磁力線を目視によるスキミング
 周囲の金属(マンホールの蓋・水道管・看板・砂鉄など)を盾にする
 道路の柱の側面に立ったり跳び付いて走る
 線路のレールを引き剥がして降り注がせる
 砂鉄の剣の応用で水分子を集めバーナーのように噴射して飛翔
 電磁波の反射波を利用してレーダーのように周囲の物体を感知(死角からの攻撃にも対応可能)
 電気を通した回線で記憶を読み取る(精神系能力に応用できる可能性)
 オゾンを合成して臭いシューズを脱臭

だってさ

乙!

何というか結局は電子を操ることができて、それって要するに分子や原子の一部に干渉できる訳だから…
その気になれば相当いろんなことに応用できちゃうんじゃないかなーとも思ってしまう今日この頃。
なんにしてもストーリーに合わせて自由にやっちゃえばいいと思う!

にしてもみこっちゃんが最終的に相当重体になりそう…いや今の時点で十分ぼろぼろなんだけどさ

少なくとも精神的にはもうボロボロだよな…

猟犬部隊殺しまくったから暗部いき決定だよね、美琴……


世の中はそうそううまくいかないらしい。

「……ッ、まだいたのね」

「あともう少しなのに……!」

木原のいるオフィスから役数十メートルというところで、美琴達は足止めを食らっていた。目の前に見えるオフィスがやけに遠く感じられる。
一応警戒しているのか、猟犬部隊がその周りをうろついていたのである。
普段の美琴なら一気に制圧して乗り込んでいただろうが、今はそんな体力はない。
どうしよう、と美琴が足を少し動かした瞬間、

「超電磁砲かっ!?」

「っ、チッ!!」

「……っ!」

気配に気づかれた。一瞬のうちに円を描くように囲まれる。
ぴったりと自分たちに突きつけられた銃口が、今はとても凶器に感じた。……本来は、それが普通なのだろうけれど。
隣にたつインデックスが怯えたように自分の手を握った。じり、と少しだけ後ずさりする。
数は30。明らかに今の自分が乗り越えられる人数ではない。

「……みこと……」

インデックスの震える声を聞いて美琴は胸が痛くなった。
出会って一日もたっていない、けれど大切だと思えるような自分の友達。
せめてこの子だけでも、逃がしてやらなければならない。彼女の友達と、上条と、なにより打ち止めのために。


(……まあ、別にいいんだけどね)

何が、とは言わない。分かりきっていることを繰り返す気にはならなかった。
結局先程怖いと思ったのも、自分ではなくインデックスが殺されるかもしれないから、というだけで。
ほんの少しだけ、脳裏に妹達やアイツのことが浮かんできて、しかしそれを容易く振り払う。
息を吸った。
まず目くらましに電撃を放とうと演算を開始して――

「……あ」

思わず、吸った息を吐いてしまった。同時に、心の中に温かいものが溢れ出してくる。
……まったく、と呆れたように、けれどどこか嬉しそうに心の中で呟いた。

「……ああもう、しょうがないなぁ……っ」

本当は、こんな手を使いたくなかったのだけれども。
じりじりと迫ってくる猟犬部隊。けれどもう怖いとは思わなかった。
……大丈夫。
アイツなら、信頼できる。

「インデックス、大丈夫だからすぐ動けるように体から力を抜いて」

「みこと……?」

周りに聞こえないように小さく吐かれた言葉に疑問を抱きつつ、インデックスは体から力を抜く。
美琴はそれを確認すると、すぅ、と大きく息を吸って――、







「エツァリ!!!!!!!!」







自分を守るといった男の名前を、思いっきり叫んだ。
同時に閃光が猟犬部隊の一角を貫いた。悲鳴をあげる間もなく彼らの下半身が消滅した。
ガサリと物音がして、光の届かない闇の奥から一人の少年が出てきた。呆れを滲ませた微笑を浮かべながら美琴に近寄る。

「まったく、いつから気づいてたんですか」

「いつからもなにも、アンタさっききたばっかでしょうが。電磁波で分かるわよ」

「これでも結構急いできたんですけどねぇ」

遅い、と文句を言う美琴にすみません、とエツァリは素直に謝った。
暗がりから抜け出し、ようやく顔が見えたエツァリに対しげ、と美琴はうめき声をあげた。

「何その顔。……私の苦手なやつのなんだけど」

「御坂さんに近づこうとしていたのでこの前粛清ついでにちょこっと皮はがさせてもらいました」

「うっわ最悪。皮と魔術とやらでその顔になるんだっけ? インデックス、分かる?」

「う、うん。アステカの魔術で……」

「私に好かれたいならもっと違う顔になりなさいよ。ってか元のままでいなさいよ」

「あの顔じゃ日本じゃ結構目立つんですよ。しょうがないじゃないですか」


エツァリと美琴は気軽に言葉を交わす。今の状況は、なんてことないかのように。
インデックスも思わず参戦してしまったが、結構この状況はやばい感じがするのだがいいのだろうか。
……それにしても、どういった間柄なのだろう。
美琴がエツァリと呼んだ彼を信頼していることは分かる。声と、それから顔でよく分かる。
自分では気づいていないのかもしれないが――美琴の顔は、僅かに緩んでいたから。
猟犬部隊がいきなりの闖入者に驚いている間に、エツァリは美琴の盾となるように前にたった。

「では、行ってください。……自分がいったら怒るでしょう?」

「当たり前」

インデックスはぎゅ、と美琴から手を強く握られた。反射的に握り返す。
美琴はエツァリに背を向けると、あっけらかんとした声で言った。
それでも横に立つインデックスには、美琴の頬がわずかに上気しているように見えたのだが。

「じゃあ、私への愛のために私を守ってね」

「了解しました。……やっぱり何だかんだいって乙女なんですね」

「うるさいわね。頼んだわよ」

「はいはい」

美琴がエツァリの方を向かずに軽く手を振ると、エツァリも苦笑しながら小さく振り返した。
どうせ見えていないだろうが、まあ気分ということで。

「……さて、と。御坂さんに呼ばれたんですから、きっちり足止めしましょうかね」

ゾク、とようやく体勢を整えなおした猟犬部隊の背筋が凍った。
超電磁砲がいるときには見せなかった、冷たく暗い、笑みだった。

「じゃあ自分の愛のために、死んでください」

避けられない閃光が、猟犬部隊に襲い掛かる。



エツァリ再登場。実はあの後美琴と何回か交流があったりする。
一応再登場フラグは張っておいたんですが、気づいた方はいらっしゃるのだろうか

>>398 >>400 おお、ありがとうございます  
       結構条件が厳しいんですね

美琴も十分チートじゃないか……

乙でした

美琴の水翼は名前忘れたけど兵器による攻撃で水蒸気が絶妙なバランスで充満。
さらにそれが風だかなんだかで僅かに電気を帯びていた、という奇跡としか言いようのない産物


美琴とエツァリの関係がいい感じすな
もしかして美琴もまんざらではない感じ?



自分を使い潰してくれてもいいよと思ってる人と、使い潰しきれない人の関係は萌える



油断していたか、していなかったかと問われれば、それはやはり前者だろう。
向こうは手負いの獣。周辺を守っている猟犬部隊がいればお釣がくるだろうと思っていた。事実そうであったし、彼らは街の現状からして彼女に助っ人がくるとは想定していなかったのである。先ほどのエツァリはイレギュラーみたいなものだ。
まあそういうわけで、木原も猟犬部隊も油断していた。
だからこそ。
いきなり手の中から銃が消えたことに、反応できなかった。
誰より早く我に返った木原が猟犬部隊の一人を盾にしたのと銃声と共に彼らの体を銃弾が貫いたのはほぼ同時。

「超電磁砲だ!!」

木原が叫んだものの武器を奪われた猟犬部隊は使い物になりそうになかった。その間にも彼女は猟犬部隊の足を、腕を銃弾で貫いていく。恐ろしいほど正確だった。木原は歯軋りをする。相手は磁力を使えるのだからこういうことになるかもしれないのは分かっていたのに。
しかし、妙だ。
超電磁砲は光の住人だ。例え使い方をミサカネットワークを通じて知っていたとしても、ここまで正確に銃を撃てるだろうか? 一つもおかしな方向へ行ってないだなんて――、

(待てよ……?)

そうだ。自分が言ったではないか。彼女は磁力使いでもあると。
銃の腕を正確にする必要はない。ただ彼女は撃てばいい。そしてそのスピードを殺さないように磁力で誘導していけば、正確に自分の打ちたいところに銃が撃てる。

(成る程……残り少ない体力をできるだけ消費しないいい方法だな。考えたなあ!)

ピュイ、と口笛を吹きたくなった。第1位の代えなのだ。これくらいはしてもらわないと。

「インデックス、行って!」

「うん!」


物陰から出てきたのは二人の少女だった。一人が超電磁砲だということは知っているが……あのシスターは誰だ?
とりあえず打ち止めの方へ駆け寄ろうとしていたので阻止しようとしたが、

「そのために私がいるのよ!」

木原の右腕を弾丸が貫く。痛みに思わず右腕を支えながら膝を床につけた。

「さっきのお返しって……とこかしら」

そういう美琴の右腕には破かれた制服がぐるぐる巻かれており、そこはじっとりと赤く湿っていた。
美琴はちら、とインデックスの方を見る。インデックスは木原から出来るだけ離れて、歌を歌いだした。

「……始まったか」

小さく呟く。美琴の役割はインデックスの作業の邪魔を誰にもさせないこと。本当はここから連れ出してやるつもりだったのだが、外にはまだエツァリに倒されていない猟犬部隊がいるだろう。
ならば、ここでやるしかない。
美琴は口の端を上げて、不適な笑みを作りながら木原に宣戦布告をする。

「きなさいよ木原数多。あの子達の姉を敵に回したことを後悔させてあげるわ!」

「言うじゃねぇか超電磁砲! その面を絶望に塗り替えてやるぜえ!!」

衝突が、始まった。


短いけど今日はこれで終わり。
エツァ琴の美琴はクーデレでいて欲しい

おつおつ
次も待ってるよー


エツァリ「夏祭り……ですか」

美琴「ええ。明後日あるんだって。一緒に行くわよ」

エツァリ「ええ、喜んで」

美琴「でね、私もちゃんと浴衣着てくるから、アンタも着てきなさい」

エツァリ「……浴衣、ですか」

美琴「そ。いい、これは命令だからね! 破ったら怒るわよ」

エツァリ「つまり一人だけ着てくるのは恥ずかしいってことですね」

美琴「……うるさいわね。まあそうなんだけど。恥ずかしいものは恥ずかしいのよ」

エツァリ「はいはい。では、明後日に」

美琴「……ええ」



エツァリ「御坂さんよくお似合いですよ」

美琴「うるさい。……やっぱその顔はなんでも似合うのねぇ。でもそれ禁止。素顔になりなさい」

エツァリ「いや、だから目立ちますって」

美琴「……アンタ、私がアンタ以外の男……っていうか海原だけど、そいつと付き合ってるっていう噂が流れていいの?」

エツァリ「それは……嫌ですね」

美琴「なら決定ね。人目につかないところにいってさっさとその顔とるわよ」



美琴「綿飴おいしいわね。最高」

エツァリ「自分はりんご飴派なんですけどね」

美琴「りんご飴って正直一回も食べたことないのよね。一口頂戴」パクッ

エツァリ「さり気に間接キスをするところが御坂さんの凄いところって痛い痛い痛い痛い」

美琴「アンタなんて豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃえばいいのに!」

エツァリ「恥ずかしいからって無理してツンデレにならないでください」

美琴「……まあいいわ。じゃあお返しにアンタも私の綿飴食べなさい。これで平等よ」

エツァリ「何か違う気がするんですけどけどねぇ」

美琴「うるさい」



エツァリ「金魚すくいですか」

美琴「金魚にビリビリしたらやっぱり効果抜群なのかしら」

エツァリ「ポケ○ンですか。……まあとりあえずやめといてくださいね」

美琴「それくらい分かってるわよ。うん、やってみますか」

エツァリ「電磁波で逃げられるんじゃないですか?」

美琴「……電撃使いって不便よね。絶対」



美琴「こういうところの食べ物ってどうして美味しいのかしら。お祭りパワー?」

エツァリ「そうかもしれませんね。まあ自分は御坂さんと食べる料理なら全てが」

美琴「ストップ。恥ずかしいこと言うな禁止。それにしても浴衣着てる子ばっかりね。浴衣を着ると皆大抵可愛さアップするわよね。こっちは浴衣パワーかしら」

エツァリ「まあ御坂さんならいつでも可愛」

美琴「だから禁止だってば!」


美琴「……そういえば、聞きたかったことがあるの。アンタもし私が別の男好きになったら、どうする?」

エツァリ「……どうする、とは?」

美琴「略奪愛か私を応援するか。どっち?」

エツァリ「そうですねぇ……。自分は、御坂さんが幸せだったら何でもいいですよ」

美琴「……ふぅん」ムゥ

エツァリ「……おや? お気に召しませんでしたか」

美琴「べっつにぃー。ま、その程度のものってことよね。どーせ」ムスッ

エツァリ「自分はどうして怒られているのか分からないんですが」

美琴「そういうのは自分で考えなさい。ヒントもなし!」

エツァリ「はぁ……。でも、それでも自分は御坂さんを好きでい続けると思いますよ」

美琴「それは駄目」

エツァリ「えー」



美琴「……焼きそば」

エツァリ「はぁ」

美琴「焼きそば買ってきて!」

エツァリ「え、ええ。わかりましたけど……」スタッ

美琴(あーあ……馬鹿よね、アイツ)

美琴(私の幸せってのが何なのか分かってないってのが駄目ね。全く)

美琴「……帰ったら妹孝行しよう! うん!」

エツァリ「妹孝行ですか」

美琴「うわっ!? なんだ、帰ってきたの」

エツァリ「なんだとは酷いですね。はい、焼きそばです」

美琴「……割り箸ひとつしかないの?」

エツァリ「ええ、自分はいらないので」

美琴「全部は多いわ。半分あげる」

エツァリ「いや、でも割り箸ないですし」

美琴「ならこれ使えばいいじゃない」モグモグ

エツァリ「……。なんというか、複雑な心境ですね」



エツァリ「さっきの質問、ずっと考えてたんですが」

美琴「……分かった?」モグモグ

エツァリ「御坂さんの幸せの中に、自分も含まれてるのかなあ……と」

美琴「……それで?」モグモグ

エツァリ「だから、応援する前に、最後に御坂さんに想いを伝えようと思います」

美琴「普段から十分すぎるくらい伝わってはいるんだけどね」モグモグ

エツァリ「はは。……それで、スッパリ諦めようと思います。あなたの為にも」

美琴「……及第点、かな」

エツァリ「それはそれは手厳しい」

美琴「でも合格は合格だから、ご褒美あげる」アーン

エツァリ「御坂さんって甘いですよね」モグモグ

美琴「妹達にはこんなもんじゃないわよ」

エツァリ「……ええ、まあ知ってますが」



美琴「へえ、結構綺麗じゃない」

エツァリ「来て正解でしたね」

美琴「ま、そうかもね。来年はあの子達と来ようかしら」

エツァリ「おや、自分は用済みですか」

美琴「……ふぅん、嫉妬?」クスクス

エツァリ「さて、どうでしょうかね」

美琴「じゃあその代わりクリスマスにまたこうやって遊びましょうか」

エツァリ「これってデートの予約ですか?」

美琴「さあね? ……指きりでも、しましょうか」スッ

エツァリ「はいはい」スッ

美琴「ゆーびきーりげーんまーん嘘ついたら……そうね、超電磁砲100発」

エツァリ「御坂さんらしいですね」

美琴「約束、してくれるわよね?」

エツァリ「ええ、勿論です」

美琴「……えへへっ」


衝動的に書いた夏祭りエツァ琴。それにしてもエツァリの本来の口調がわからん。
時系列はあんまり気にしてないです。
もっとエツァ琴広まればいいのに。

なんだ、この初々しさ    乙


これはいいエツァ琴



戦いは終わりに近づきつつも拮抗していた。
美琴の体力はもうギリギリで、銃弾も底をつきかけていた。一方の木原も身体中に穴があいていて、荒い息が立つことさえ苦しそうなことを如実に表していた。まあそれは自分も同じなのだが。
ヤバイな、と思う。

(……撃てる弾は後一発。また猟犬部隊を盾にとられたら届かない……! 銃でも投げられたらいいんだけど……そんな力どこにも残ってないし)

あと一発。あと一発で全てが決まるのか。
届いたら、勝ち。届かなかったら、負け。
成る程シンプルで分かりやい答えである。しかも負けは死――それも自分だけではない――を表しているのだから、負けるわけにはいかなかった。
ちらりと、後方に目をやる。
インデックスはまだ終わらないらしい。焦燥が余計に体を蝕んでいく。
そして木原も木原で、この状況に焦っていた。

(チップを壊しても少しも反応しねえなんて計算外だっつーの! やっぱりあのシスターから……いや、無理だな。超電磁砲が絶対に立ちはだかる)

銃を杖がわりにしてようやくたっている超電磁砲は爛々と光る目でこちらを睨み付けていた。絶対にあのシスターには手を出させないとでもいうように。
度合いでいけば、彼女の方が重体だろう。無理に無理を重ね、あの体で何時間も戦っているのだ。まだ怪我をしたばかりの自分の方が動けるはず。だというのに、木原は超電磁砲に勝てるかどうか不安だった。
上が見えない怪物のように。
こいつは何か違うのだと、そう思えてならないのだ。

「ち、くしょう!!」

全てを振り払うように拳を振り上げた。咄嗟のことに美琴は反応出来ず、頬を殴られ、そのまま床に倒れ込んだ。
その上に木原は馬乗りになる。体全体で美琴の動きを止めながら、腕に腹に、拳を振り上げる。
苦痛で顔を歪ませる美琴は、やはり自分を睨みつけていて。

「ッーっ!!」


美琴は歯を食い縛ると木原の髪を握った。そして思いっきりそれを引っ張る。ぶちぶちと嫌な音がして皮膚と一緒に髪が剥がれた。
余りの痛みに拘束する力を弱めた木原の元から逃れると、美琴は銃を手にした。
その重みを感じながら、美琴は躊躇なく木原へ銃口を向ける。

(しま――)

(やった!)

絶望する木原とは裏腹に勝利を確信した美琴は指先に力をこめた。
そしてそれを手間に押せばいいという――その時。


ぐらり、と。


力なく、美琴は倒れた。美琴は、そして木原も唖然とした顔でこの現状を受け入れる。
それは、あまりにも呆気ないゲームオーバーだった。
美琴の体が限界を告げたのだ。――否、とっくに限界を越えていた。気力だけで動いていたのだ。だからこそ、勝利を確信し気が緩み、体から力が抜けた瞬間、立つことができなくなったのである。
ガチャン、という銃が落ちる音と共に、呆けていた木原の顔に歪んだ笑顔が浮かび上がった。

「散々なめた結果がそれか!!ああ!?やってくれたなあクソガキ!!」

まるで今までの腹いせのように木原は美琴の腕を踏んづけた。そして暴力の嵐は終わらない。腕から肘へ、そして腹へ矛先は変わっていく。
一方身体中に暴力という暴力を受けながら、美琴は一切の反抗が出来なかった。
体は上に鉛でものせられたかのように重く、指一本動かせない。意識も薄れかかっていた。
目の前の景色が、淡く揺らいでいく。


(だ、め……。私、動かなきゃ、インデックス……打ち止め……)

分かっているのに、動けない。動かせない。銃を再び手に持つことも引き金をひくことも叶わない現状で、必死に彼女は意識を保ち続ける。
そんな美琴を、木原は嘲笑っていた。
やはり超電磁砲なんてこんなものだと。

「まだ意識はあんだろ? まずはあのシスターをぶち殺してからてめえを殺してやるよ。せいぜい絶望してろ!」

目を見開いた美琴をもう一度蹴り飛ばし、木原はインデックスの方へ足を向けた。
小さな体躯に暴力を振るうために。そして、死へと引き釣りこむために。

(やめて……)

美琴の脳裏にフラッシュバックしたのは、あの日死んだ妹達の一人だった。
走馬灯のように思い出す。あの子と過ごした、たった数時間の、けれどかけがえのない思い出を。
そうだ、あの子もそうだった。
会ったその日に死んでしまって。

(やめて……お願い、だから)

インデックスの、打ち止めによく似たあの天真爛漫な笑顔を思い出した。
それは、目を塞ぎたくなるくらい今の自分には眩しくて。明るくて。
だからこそ、あんな奴に奪われるなんて許せない。
否――、

(許、さない――ッッッッ!!!!!)

そして、意識が飛んだ。


今日のところはこれで終わり
覚醒美琴さんをどうするか決めかねているので、ちょっと更新が遅くなるかも

ついにここまで来た…
乙!

気長に待ってる!

乙!
次も待ってるよー

美琴覚醒でまさかのメインプラン昇格とかあったりしてw

「木ィィィィィィィィィィィィ原くンよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」

>>1は大丈夫か?



木原の足が止まった。背後で聞こえた音に、まさか、と思って振り返る。
その瞬間、木原は思わずへたりこむかと思った。

御坂美琴が――立ち上がった。
目を背けたくなるような量の鮮血を撒き散らし、ボロボロの体で、それでも。
木原にはにわかには信じられなかった。まるで何度殺しても死なないゾンビだ、と恐怖に竦んだまま思う。

「う、ぁ……が、」

意味を持たない“音”を口から漏らす美琴の背には、ゆっくりと、しかし確実に“何か”が集まっていた。
磁力を使って吸い上げた砂鉄でも、輝くばかりの電光でもないそれは、とあるものへと変貌しつつあった。

それは、翼。

どこまでもどこまでも神秘的な、青白い光を伴った、そう、それは天使のような。
自分が出現の片棒を担いだ天使とはまた違う、けれど似たような何か。

(こいつは……なんだ?)

先程からずっと胸底で燻っていた事を、ようやく言葉として脳裏に浮かび上がらせる。
御坂美琴。超電磁砲。電撃遣い。オリジナル。
どの言葉を並べても、今の彼女は表せない気がした。まるで、御坂美琴から大事な何かを取り除いたかのような。

「あ、ぁぁああ……あ、あ」

また言葉にならない言葉。何を紡ぎたいのか、何を紡いでいるのか、理解不能だ、と木原は思った。
意識、もしくは正気があるかどうかも分からない。
けれど、焦点の合わないその瞳は、確実に木原を捉えている。


「――、」

もしもあの翼の矛先が自分でさえなければ、きっとあれを美しいと思ったはずだ。
天上人のような、神々しいなにかを、あれは放っているから。
けれど、例えば天罰。
それを向けられたら、誰でも恐怖に喘ぐしかないように。
あの翼を向けられた木原は、ただただ、恐れをなして目を見開いていた。硬直した体とは反対に、心の中は荒れ狂っている。

(畜生!! どうなってやがる!? あれはなんだ! 超電磁砲の能力か!? それともまた別の何かを『自分だけの現実』に――)

ふと、木原の思考が止まった。
先程の問いが分からなかったからではない。逆だ。彼は気づいたのだ。

妹達を使ってAIM拡散力場を誘導させるのなら。
それの上位能力者である美琴は、自身にそれを集中させ、そして操ることもできるのではないか、と。

ああ、畜生――、

「テメエ、化け物だよ」

木原の最後の最後の悪あがきに、彼女は――天使は、笑うだけだった。
その顔は、笑っているようにも、泣いているようにも、苦しんでいるようにも見えた。
そして、木原に、死刑宣告を。

「ihbf殺wq」

木原数多に、天罰が下る。
優しくて温かい、けれど無慈悲な天罰が。



「……と! みこと!」

ゆさゆさと揺すぶられて、美琴は意識を取り戻した。視界を彷徨わせると、なぜか巻いた覚えのない包帯などが体に巻かれていた。
多少不恰好ではあったものの、きちんと止血がされている。
不思議に重いながら視界を上に持ち上げると、今度は泣きそうな顔のインデックスが視界に入った。

「いんで、っくす?」

小さく問いかけると、泣き顔が一転し、目を背けたくなるような輝くばかりの笑顔になった。

「みこと! 大丈夫? 怪我すごいかもなんだよ! 早く手当てしないと……!」

「いんでっくす。らすと、おーだ……は」

「大丈夫! ちゃんと結び目は解いたからね。それよりみことのほうが重体なんだよ!」

救急車呼んでくるから待っててね! そう言って慌しく出て行ったインデックスを、美琴はぼんやりと見つめていた。
インデックスが生きていて、打ち止めが助かっているということは、多分自分は勝ったのだろう。
木原数多に。そして、自分自身に。

「……あはっ」

思わず漏らした笑みは、先程までの狂ったような笑みとは違う、どこか温かいものだった。
インデックスが気を利かせてくれたのだろう。隣には、守りたかった打ち止めがいた。

「らすとおーだー……」

未だ意識が戻らない打ち止めの頭を、ゆっくりと撫でた。あたたかい、と思う。
よかった、と美琴は呟いた。よかった、これで帰れる。
頭を撫でながら、美琴は打ち止めに笑いかけた。

「らすとおーだー……かえろっか」

『それは無理だと思いますよ』


そんな美琴の笑みがは、即座に打ち消された。頭の中に響いた声が、彼女を警戒させる。
もしかしてまだ、残党が残っているのか。
そう思って辺りを見渡すも、誰もいない。
これはつまり。

『精神感応系の能力……?』

『ええ』

『アンタ……誰よ』

なんとなく話し方がアイツに似ていることに苛立ちながら、美琴は声低く問い詰めた。
相手はははっ、と笑ってから、

『学園都市の暗部……とでもいいましょうか』

その言葉だけで、美琴は全てを理解した。
ああ、こいつは、私をそちら側へ引き込もうとしているのか。
今まで散々利用して、踏みにじって、それでも尚――まだ。

(……分かりきってたことじゃない)

心の中で嵐のように荒れ狂う怒りを必死で押さえつけるように美琴は一回だけ深呼吸をした。
そして、当たり前のことを確認する。

『暗部……。そう、学園都市の闇ってわけね。なら、学園都市の最上部とも繋がってるわよね』

『……? それは、そうですが』

美琴が何がいいたのか分からないらしい。
彼女は有無を言わさないキツい言葉で言った。

『取引しなさい。私が暗部に入る代わりに、あの子達に手を出さないで。どうせ私をそちら側へ引き入れるために干渉してきたんでしょ?』

数秒の沈黙の後、男はおかしそうにくつくつと笑い声を立てた。
不快そうに美琴は眉をしかめる。


『成る程。まさかそちらからご提案いただけるとは思いもしませんでした。……いいでしょう。ただし、それ相応の仕事はしてもらいます』

どうせ、破る気満々なくせに。
そう思ったが口には出さない。とりあえずの約束ができたことだけでも上々だろう。

『ええ。そっちこそ、破ったらただじゃおかないわよ』

『迎えのものをよこしましょうか?』

『いらないわ。アンタだって分かってるでしょ』

『……ええ。彼に任せるとしましょうか。それでは』

電話を切ったときのような虚脱感が全身を襲った。もう声は聞こえない。
ほう、と美琴はため息をつく。

「……私って、酷い人間だ」

電磁波が告げている。彼がもうすぐ来ることを。
そして今から自分が、最低な願いを彼に要求することを。


お久しぶりです 
色々考えて結局こんな風に。ミサカネットワークで誘導云々が未だにちょっとよく分からないで、矛盾があるかも

乙でした

超乙
みこっちゃんやっぱ暗部落ちか
彼ってエツァリのことかな

うん?まてよ…一方さんの立場が美琴なら、まだ無双中か、「三下ァ…///」とかなってんのか!!?
つーか打ち止め以外にも守る人がいるのか…一方通報さん。

>>447
信者気持ち悪いです

>>448
ただのホモォなネタレスじゃん

>>449
ネタでも腐はキモイ

>>450
マジレスしてるお前の方がキモイ

>>450
キモイのはお前だ

みんなキモい


はいっこの話はおしまい!!

ほら散った散った


「はぁ……っ、はあ、みさか……さっ……!」

エツァリは息切れを起こしながら、それでも無我夢中で階段を駆け上っていた。
嫌な、とても嫌な予感がした。
想定した中で、最低の結末がまっているかのような。

世界がぐるぐると回っているような気がする。
錯覚とは分かっていても、なんだか気持ち悪かった。

全ての階段を上りきると、彼は勢いよく扉を開いた。
倒れこむように中に入ると、愛する人の名前を叫んだ。

「御坂さん!」

「……エツァリ」

ついた先で、美琴は打ち止めの頭を撫でていた。周りに横たわる猟犬部隊は目に入らない。
ただ、彼女だけを、エツァリは見ていた。
美琴の無事な姿にほっと安堵しつつ、エツァリは美琴のほうへ足を向ける。
そして、何か口を開く前に――

「エツァリ、お願いがあるの」

ドキリと、心臓が高鳴った。
美琴は、まっすぐ自分を見つめていた。
その光の強さに、そして裏側に潜む闇に気づき、エツァリは胸が痛くなった。


「アンタにやってほしい、大切なお願い」

警戒音が頭の中を巡る。
駄目だ、と思う。
このお願いは、絶対に聞いてはならないと本能が告げているのに。

「……なんですか」

思わず、聞き返してしまった。
美琴は、それをみてほんの少しだけ悲しそうな笑みを浮かべる。
ごめんね、といわれたような気がした。


「あのね、私を“そちら側”へ連れてってほしいの」


ドクン、と心臓が大きく波打った。
ああ、分かっていたのに。
なんていわれるのか、分かっていたのに。
どうして、聞いてしまったのか。

「……それ、は」

「学園都市の暗部に。ねえ、エツァリ。お願いだから」

「……自分に、それをしろと?」

「アンタじゃないと、駄目なの」

そう言う美琴は、やっぱり笑っていて。
けれどそれは、見ているこっちが苦しくなるような笑顔だった。


「ねえ、エツァリ。逆に聞くけどね、アンタの知らないところで私が闇に落ちたほうがいいって、アンタは思うの?」

「……ッ、でも、自分は……!」

「アンタがそっちにいった理由くらい分かってる。どうせ私のためでしょ。でもね、エツァリ。ごめんね」

言うな、と叫びたかった。
言わないでくれ。お願いだから、言わないでほしい。
けれど、彼女は言うのだ。


「私、あの子達のためなら、闇にだって堕ちてやるわ」


それはまるで、エツァリがいままでやってきた事柄を全て否定するかのような。
ごめんね、と美琴は謝罪した。
ごめんね、ごめんね。

「……分かりました」

「エツァリ……」

「自分が、御坂さんを闇へ連れていきます。……あなたを、守りながら」

少しだけ屈んで、美琴に手を差し伸べた。
美琴は、その手を躊躇わずに取る。

「……ごめん」


彼女の謝罪に首を振ることで拒否した。
今はそんな言葉、聞きたくなかった。
美琴は立ち上がると、最後に打ち止めのほうを向いて呟いた。


「さようなら、妹達」


あの日、死を前にしてあの子にいわれた言葉。
もしかしたら、それはちっぽけな復讐だったのかもしれない。
何も教えてくれずに、たださようならとだけ言って死んでしまった、あの子への。

もう、あそこへは戻れないのだ、と美琴は再確認した。
打ち止めの笑顔はもう見えない、あの子達の微かな表情の変化を楽しめない。
それでも自分は、それでいいのだと、そう思えたのだ。

くるりと踵を返す。

少女は妹達を守るために。
少年はそんな少女を守るために。

二人は闇に溶け込んで、消えた。




不規則に吐き出す息が鬱陶しい。額に新たな汗が浮き出るたび、御坂妹の眉は険しくなっていく。鼓膜に響く階段を昇る音が耳障りだった。
胸が苦しくて苦しくて、泣いてしまいそうだった。これが“悲しい”という感情なのだろうかと、足りない心で思う。それを断定するには情報が足りないと御坂妹は思った。

悲しい――とは、なんだろうか。
普通の人間ならば到底考えないことを、しかし特殊な生い立ちをもつ彼女は考える。

例を以て考えてみたら、幾分簡単かもしれない。そう考えて、一つ、例を挙げてみる。
例えば、お姉様が死んでしまったら。
考えるだけでぞっとした。体が震えて、歯が合わなくなり、胸がきゅっとなる。考えるだけでこれなのだから、実際にそうなってしまったら――、

(やめましょう、とミサカは思考を停止することを自身に課します)

頭を二度左右に振ってから、きちんと前を見据えた。まだ階段はある。その先にお姉様はいるはずだ。もう遅いから、打ち止めと一緒に寝ているかもしれない。数回だけ見た姉の無防備な寝顔を思い出すと、心がすっと軽くなった。

自分の生きる意味そのものである姉が、御坂妹は大好きだった。たった一人の、ミサカ達の姉。たった一人の――ミサカ達の家族。
クローンである彼女達は、美琴の親ですら自分の家族、あるいは血を分けているとは思えなかった。確かに美琴を生んだのは彼らだが、自分達の元となったのは美琴なのであって、姉の記憶ごしにしか知らない他人達ではないのだ。姉であり親。それが妹達共通の認識なのである。

自己の存在意義――ひいては生きる意味――を未だ確立していない今、そういう意味で美琴の存在は大きい。というより“全て”なのであった。彼女を失えば、妹達は生きる意味を見失い、自ら命を絶つ者も少なくないはずだ。

死ねないのはなぜだ? ――お姉様が悲しむから。
生きているのはなぜだ? ――お姉様と一緒にいたいから。

妹達の答えはあまりにシンプルで、だからこそ危ういものだった。元々死ぬために生まれた命だ。そこに価値はないと考えるものは未だ多い。

最後の階段を登りきった御坂妹は、息を荒げながら部屋のドアノブをまわした。祈るような気持ちで中へと足を踏み入れた。
掠れる声で探し人の名前を呼んだ御坂妹がみたのは、紛れもない絶望だった。


「……さま」

そこにあったのは倒れている人間。大量の出血跡。散らばった銃。ちぎれた手足。
けれど、そんなものはどうでもよかった。
たった一つ、彼女が望んだ景色はどこにもなくて。

視線の先にいるのは、たった一人。
それも、探し人ではない。

「どう……しよう、ってミサカはミサカはっ……」

思わずその小さな体躯を抱き締めた。ぽろぽろ流れる大粒の涙が御坂妹の肩を塗らしていく。
そこにいたのは、泣きじゃくる打ち止めだけだった。

御坂妹は理解した。
全てを理解して、けれど認めたくなかった。

「みこと……おねえ、さま」

「お姉様が……いなくなっちゃった」

二人の呟きはほぼ同時。
打ち止めの言葉が、御坂妹の心を鋭く突き刺さった。

ああ、そうだ。分かっている。
絶対に、お姉様は、帰ってこない。

彼女達の確かな道しるべは、自ら闇に消えていった。
最後に、一度だけ、駄々っ子のように辺りを見渡した。

「……お姉様」

お姉様は、いない。
もう、どこにも、いなかった。



まさか9982号の命日に「さようなら、妹達」って言わせられるとは思わなかった
次回は多分エツァリと美琴の再会話。だからちょっとだけ前に戻ります
美琴が幸せになれる日はくるのかなぁ

乙なんだよ

美琴とエツァリのペア(カップルとは呼ぶまい)が、格好良すぎて困る

ペアってか相棒? 恋愛より信頼関係を築いたって感じがするな  乙 

生存報告
最近忙しかったので更新できませんでした
学校始まるんで更新速度遅くなると思いますが、完結だけはしたいなぁと思っております
それでは。

舞ってます

舞ってるよー
無理せずのんびりやってくれ



ドアが開く音で目が覚めた。体のどこからも痛みを感じないのに驚きつつ、御坂美琴は体を起こした。
入ってきたのは褐色の少年。それも、よく知っている顔の。

「……エツァリ」

小さく名前を呼ぶと、穏やかな笑みが返ってきた。それがなんだか嬉しくて、しかし顔には絶対に出してはやらない。
エツァリと呼ばれた少年は美琴の方まで歩いてくると、近くに置いてある椅子に当然のように座った。
どうせ自分が眠っている間暇さえあればそこに座っていたのだろう。何とも分かりやすい少年だった。
美琴は呆れ半分嬉しさ半分からのため息を吐き出すと、端的に問う。

「……今日は何日?」

「10月3日。冥土返しに頼んでおいたのでもう傷は塞がっていると思いますよ。ただ、無理はしないようにと」

「そう。……あの子達には」

「バレていません。この部屋には特殊な加工がしてありましてね。御坂さんの電磁波が外に漏れないようになっているんですよ」

美琴がほっとしたような顔を見て、エツァリは複雑な表情を浮かべる。
美琴を自分自身の手で闇に落としているという背徳的な感情を、エツァリは常に抱えているのだった。
ポケットの中をまさぐり、エツァリは黒色のブレスレットを取り出した。そしてそれを美琴の手首に装着する。つけられた瞬間、美琴は違和感を感じ眉をよせた。

「何これ?」

「冥土返し作の、御坂さんの発する電磁波に細工をして、妹達には感知されないようにする機械です。ただし、余りに強い力を出すと機械そのものが壊れてしまうのでご注意を。レベル4が目安ですかね」

「……善処するわ。私の失踪はどのように対処されているの?」

「妹達があなたの代わりをしています。さすがに完璧にはできないようなので、できるだけ人に会わないように適当な事情をつけて入院って形にしているみたいですけどね」

「……ふぅん。あの先生には色々お礼を言わなきゃね」

その声音にほんの少しだけ寂しさを滲ませて、美琴は呟いた。
ベッドから立ち上がると、目眩と共に空腹を感じ、思わずしゃがみそうになったが、寸でのところでエツァリに支えられる。


「お粥でも持って来ましょうか?」

「人を病人扱いしないで。別に大丈夫よ。久々に動いたから体がびっくりしただけ」

美琴のつっけんどんな答えに苦笑しつつ、エツァリは美琴を抱っこした。所謂お姫様抱っこである。

「……何してんのよ」

ジト目で睨み付けてくる美琴にそれはご褒美ですと思ったかはさておいて、エツァリはとぼけた顔で返した。

「いえ、ご飯を食べに行こうかと」

「なら抱っこしなくてもいいでしょうが!」

「御坂さんふらふらじゃないですか」

「なら何か買ってきなさい!」

仄かに赤く染まった顔でそう命令されたので、仕方なくエツァリは美琴をベットに戻した。

「では、何を買ってきましょうか」

「……ベコベコバーガーのハンバーガー」

「……いきなりジャンクフードですか?」

それはちょっと、というような顔をしたエツァリに、美琴はポツリと呟いた。

「……一緒に食べたの」

「……?」

「……9982号と」

成るほど、と彼は頷いた。
少しだけ寂しさを覚えながら、彼は笑って「では買ってきます」と言い、部屋を出て行った。
ふぅ、と美琴はため息をつく。
ため息をついて、ドアの向こう側にキツイ口調で尋ねた。


「――で? アンタ達はいつまで隠れてるわけ?」

数秒の間があって、扉から入ってきたのは二人の男女だった。
一人は知っている顔だったことに、美琴は驚いた。

「……結標淡希」

「まさか貴女がこちら側に堕ちてくるなんて思っていなかったわ、超電磁砲」

つまり、美琴はこちら側には似合わない人物である、といいたいのだろう。
その言葉の裏に秘められた優しさに苦笑して、美琴は言った。

「ありがとう。それでも、それでいいんだって思えたのよ」

「……お礼を言われる筋合いなんてないわ。私は貴女の妹に酷いことをしたのだし」

「別に。あの後色々調べたんだけど、まあ……分からなくも、なかったから。これでこの話は終わり、ねっ?」

そう言って笑う美琴に、結標はバツが悪そうに顔を背けた。
やっぱりいい人なんだろうなぁ、と暢気に思いながら、美琴はもう一人の方へ視線を移す。

「それで、アンタは誰かしら」

「土御門元春。結標に対して俺の扱い酷すぎるんじゃないかにゃー」

胡散臭い笑みを浮かべる土御門に、美琴は引っかかりを覚える。
……土御門?
その土御門はやれやれと肩を竦めながら、

「俺の義理妹と仲がいいらしいし、折角の妹ラブ仲間なんだからもっと仲良くしたいぜい」

「……やっぱり、アンタ舞夏の……!!」

話には聞いていたが、まさかこんなところで出会うとは。
あんまりいい情報ではない。
こちら側にいるということは、つまりはそういうことなのだから。


その時、スッと土御門が出す空気が変わった。
反射的に美琴は身構える。

「……仕事の話だ、超電磁砲」

「……」

何となくこの人は好きになれない気がする。
そんなことを思いつつも、美琴は黙って傾聴する。

「俺と結標、海原――そんな顔をするな、一応アレでもアイツは隠れてなきゃならないんだよ――そしてお前。この4人が『グループ』のメンバーだ」

「ぐるーぷ?」

「ま、チーム名ってとこか。今日からお仲間だが信用はするなよ。海原は別かもしれないが」

「……分かってるわ」

信用すればいつか絶対に足元を掬われる。
まだ闇に漬かって間もない美琴でも、それくらいは分かっている。

そうだといいんだがな、と土御門は含みのある言い方をして、

「お前の初仕事は海原と一緒にスキルアウトのリーダー駒場利徳の殺害することだ」

最近のスキルアウトの所業や、能力者に対する反逆。
そんなことを説明されて、美琴は気に食わないな、と思った。
別にスキルアウトに、ではない。
それでもその内容に眉を顰めて、ほんの一瞬だけ、かつての友人達の安否を気にかけた。

まあ、何にしろ美琴が気に食わない理由はそこではなく。

「……なんでアイツと一緒なのよ」

「お前に人は殺せないからだ」

美琴の反抗を、たった一文で土御門は黙らせた。
ぐっ、と息が詰まった美琴に、土御門は畳み掛けて言った。


あの日、猟犬部隊と交戦していたとき。
圧倒するのは一瞬だった。一軍隊ほどの力を持つ彼女が、やられるはずがないのである。

だが。

あと一発。あと一発、それこそ心臓に電撃でも撃てば、彼らは確実に息を引き取る。
殺した方がいいことは分かっていた。いつか、復讐される可能性だってないわけではない。
こいつらが生きている価値のある人間ではないことくらい知っている。
それでも、無理だった。
分かっているのに、できなかった。
どうしても脳裏から目の前で死んだ9982号の姿が消えなくて。それどころか余計に鮮明に映って。

木原数多を前にした時でさえ、止めをさすことはできなかった。

図星をつかれた怒りでわなわなと震える美琴に、土御門はため息をついた。

「……まあ、それが理由だ。海原単体で行かせないのは、アイツの力は囲まれると厄介だからだ。ついでに結標はその間に奴らの資金を叩く。これでいいな?」

有無を言わさない土御門の態度に、美琴は嫌そうな顔で頷いた。
その時、絶妙なタイミングでエツァリが入ってきた。人がいるせいか、本来の顔ではなく海原の顔になっている。

「王子様がお帰りだにゃー」

「……そんなんじゃないわよ」

さっきとは打って変わって軽薄そうな土御門に、美琴は低い声で否定した。
それでも、ほんの少しだけ頬が緩んでしまったことは事実である。

エツァリからハンバーガーを受け取りながら、美琴はポツリと呟いた。

「グループ、ね」



ミス
>>470>>471の間にこれが入ります


「木原数多。猟犬部隊。それ以前の活動でも、お前は誰一人として殺していない」

「……っ、そんなわけ」

美琴は反論する前に、土御門は続けて言う。

「確かに四肢をもぎ取られたり、二度とこちら側では生きていけないようにはしてあったが……たった一人も、死んではいなかった」

「……たまたまよ、そんなの。私は確かに殺すつもりだったわ」

「……左足」

ピク、と美琴の眉が動いた。
その顔が、さっと青白くなる。

「ほとんどの者は、左足をやられていた。あとは右肩とか、物に押しつぶされていたりとか、な」

「……何がいいたいわけ?」

「確かにお前は殺すつもりだったんだろうな。でも、チラつくんだろう? 人を殺す、その一歩手前で、死んだ妹達の姿が脳裏に浮かび上がるんだろう?」

「……う、るさい」

そんなわけない。
そう言いたかった。

けれど、確かに事実だったから。

「お前には無理だよ。どんなにお前が殺すことをよしとしても、絶対に人を殺せない。どうしてもためらってしまう。一種のトラウマだな。しかも、克服できることはまずない」

「……ッ!!」

二人が入ってこなかったのは空気を読んでいたからです。
途中から結標さんが空気だ……。

本当は再会話を書く予定だったんですけど、どうにも筆が進まないので、先にSSの話を投下することにしました



美琴殺ってなかったかよかったよかった


続きが楽しみだ

いつも続きが気になる
美琴とエツァリの関係が良いね

暗部としての美琴がどんな風に過ごすのかとか、この美琴が一方通行と再開したらどうなるんだろうとか色々気にならせてくれるSSだな

続き待ってる

生存報告です……
私生活がやけに忙しいので更新はもうちょっと待ってください
10月の半ばには更新できると思います
それではまた。

生存報告乙

次も待ってる

待ってる!




景色は灰色。
お先は真っ暗。
唯一の居場所もなくなってしまった。

妹達はただ漠然と今を生きる。

彼女達はクローンだ。
その存在を受け入れてくれる人間など片手に足りるほどしかなく。
しかし、その中のたった一人さえ自分達の傍にいればよかったのに。


お姉様は、もういない。


あの人だけがいればよかった。
姉であり、親であるあの人だけが。
なのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。

病室から見える景色はやはり単色だった。
少し前までは、全てが新鮮で、よくあの人が遊びに来てくれて、『幸せ』だったのに。

……ああ、なんだろう。
自分達の幸せは、今なら痛いほどわかる。
けれど、

「おねえさまの、しあわせは」

分からない。
お姉様の幸せを、自分達は知らない。

『たまたま不良に囲まれているところを助けてあげたら、毛布の下は全裸で、それが私の妹の一人で、そしたらなんだかついてくるわ、わがままはいっぱいいわれるわ――』

『――こんな、幸せなことはないわ』

彼女はそんなことを、かつて言っていたけれど。
今思えば、本当にそうなのだろうか。
もしかして、あれも全て『お姉さま』としての演技だとしたら?
本当の『御坂美琴』は、自分達が生まれたことを疎ましく思っているとしたら?

――あの実験は、やはり『御坂美琴』の存在を歪ませたのではないだろうか。


思い出す、結標淡希のときの一件を。
自分が生まれてこなければよかったと、思われているかもしれないなんて、思ったとき。

『思うわけないでしょ馬鹿妹!!!!!!!!!!』

彼女はそう言った。
そう言ってくれた。――けれど。
妹、と呼んだ。
あの時、確かに『妹』だと――姉として、そう言った。

自分達は、『御坂美琴』という少女を知らない。
知っているのは、『お姉様』としての御坂美琴と、『お母様』としての御坂美琴だけ。
本当の、『御坂美琴』は……きっと、死んでしまったのだ。
否――自分達が、殺した。

ハンプティ・ダンプティが元には戻せなかったように。
一度壊れた『御坂美琴』はもう二度と元には戻らない。

……本当に、どうしてこんなことになってしまったのか。
ふ、と自嘲の笑みを浮かべた。彼女が消えて初めて顔に出した笑みだった。

「……お帰りなさい、お姉様……と、いうために」

ポツリと御坂妹は呟いた。
ああ、そうだ。もう、それしかない。
生きているのか、死んでいるのかもわからない姉の帰りを待つためだけに。


妹達はようやく、今を瞭然と生き始める。


彼女たちは決意した。
まるで道化のように、姉を演じ続けよう。
皆を騙して、姉が生きていることだけを信じて、帰りを待とう。

――残された者の末路は、あまりにも哀れで、悲惨だった。



長い間空けてしまってすみません
短い量ですが、今日はここまでです





きっかけは些細な一言だった。

「あの子達の顔……写真でもいいから見たいな」

いくらブレスレッドをつけていたとしても、顔が見れる程近くにいたら、絶対にバレてしまうだろうから。
そう言ってふぅ、とため息をつく彼女がどうも切なそうで、だから自分は、今こうやって駆け回っているのだ。





エツァリは美琴は好きだ。それはもう本当に好きだ。
愛してる、でも足りないくらいかもしれない。
口先だけではなく本当に命を張って彼女を守っているし、多分彼女を好きな想いは誰にも負けないだろう。
彼女の気持ちはどうにも分からないのだが。
普段の言動は嫌われているようにしか見えないが、時々甘えてはくれるし、少なからず好意は抱いてくれているのかもしれない。
まあ、どれだけ好意を抱かれてもどうせ一番にはなれないのだが。
彼女の一番は、いつだって大切な妹達なのだから。自分の最大の難敵はあの妹達だと本気で思う。

それでいい、と思う反面、やっぱり自分だけを見てほしい、とも思う。
彼女がああやって塞ぎこんでいる姿を見て、何もできないよりはずっと良いから。
身体を守れても、心までは守れない。
救うことができない。
この現状が、エツァリはたまらなく嫌だった。
陰鬱としながら病院内を歩いていると、3人の妹達を発見した。彼女らは一様に暗い顔をしており、美琴とは違うとわかっていても、胸が苦しくなった。

(あまりこのような顔を撮りたくはありませんが……しょうがないですね)

カメラを構えてボタンを押す。
何枚かシャッターを切る音がして、すぐにそこから立ち退いた。あとは打ち止めという子を撮影したら終わりにしよう。

「……はぁ」

なんだかストーカーみたいだな自分。そう思ったが今更やめるわけにもいかない。
どうせなら、暗部の仕事で心身共に疲れきっている彼女の本当の笑顔が見たい。
彼女の笑顔を最後に見たのはいつだっけ。

『ありがとう、エツァリ!』

そう言って笑う彼女の姿を想像して、どうしようもなく頬が緩んだ。
ああ、やっぱり自分は、御坂さんが大好きです、と。
心の中で、そっと呟いた。





その後。

「アンタ何それ?」

「前に言ってましたよね? 妹達の写真が欲しいって」

「いったけど……これって盗撮?」

「ええ、自分もばれては困――痛ッ!? ちょっと御坂さん痛いですよ!?」

「痛くしてんのよ馬鹿! 人の妹盗撮してんじゃないわよ! 変態! 馬鹿!」

「で、電撃はやめましょう電撃は!!」

「……ったく。……ありがとね。私のためにやってくれたんでしょ?」

「……はい」

「ご褒美は何がいい?」

「ではキスで」

「了解。超電磁砲ね」




今書いているss1より少し後のお話です。飛んでしまって申し訳ありません
できるだけ投下を早くできるようにがんばります。それでは。

やっぱりいいなぁ、この二人の関係

乙です
次回を楽しみにしてます

上琴のツンデレなミコっちゃんもいいけどエツ琴のクールなミコっちゃんも悪くない


焦らずじっくり推敲してくれ

確かにこのミコッちゃんはクーデレっていう感じがするな
実においしいです



目の前に広がる汚濁の赤に吐きそうになった。
隣の男には気づかれないように嘔吐物を喉で押しとどめると、代わりに言葉を吐き出す。

「……結標さん、かしら」

「さあ……まあ、とりあえず先に敵を倒してからにしましょう」

結標淡希がやられたと報告が来たのは数分前。
慌てて指示された場所に行ってみると、そこには広がる血の池と、その上に浮かぶ肉片があった。
これが少し前まで話していた結標淡希の姿なのか。
……ぐっ、と歯を食いしばる。
いつ死んでもおかしくない。それがこの世界のルールだ。
それを嫌でも実感させられる。

「駒場利得……アイツが」

黒いパーカーの下で美琴の顔が曇った。
それをエツァリは視認して、少し躊躇ってから美琴に微笑みかけた。

「決まったわけではありません。気を落とさないでください」

「分かってる」

気遣うような言葉に苛立ちを混じえて返し、つい、と後ろを振り向いた。
電磁波が告げている、人の影を確認するために。
そこには、巨体の男が立っていた。

「……アンタが駒場利得かしら」

「……ああ。お前は誰だ?」

「ちょっと訳アリの人間かしら。ま、とりあえず結標さんの仇、討たせてもらうわよ」

美琴が軽く睨むと、エツァリは困ったように笑って一歩後ろへ下がった。
ただし、槍を取り出しているところを見ると、何かあればすぐに参戦するつもりらしい。


「……気をつけて」

「うるさい。私を誰だと思ってるの?」

言うないなや美琴は周りに落ちている鉄材を磁力で操り駒場へと放った。後ろから届いた苦笑は完全に無視する。
瞬間、手首に着けられたブレスレッドが仄かに光を発した。

「……磁力操作系か?」

言いながら、駒場はその鉄材をすべて足蹴りで吹き飛ばした。
その速さに舌を巻きつつも、

「さあ、ねっ!」

はぐらかすようにもう一度鉄材を、今度は上から落とすように投げつける。
だが、それも全てあしらわれた。やはるあの、人間では考えられない速度を以て。

「あれー?」

軽く首をかしげる。
何かやっていることは間違いないだろう。
相手はスキルアウト、無能力者の集まりだ。能力を使っているとは考えにくい。
だとすれば――

「発条包帯……かな」

「……正解だ。よく知っていたな」

「まあね。でもそれ、結構危険よ?」

「そんなことは百も承知。覚悟はできている……」

ふぅん、と美琴は興味なさそうに頷いた。
反対に、駒場は興味ありげにその腕についたブレスレットを見る。


「……そのブレスレット」

「何よ?」

「それがどういうものなのかわからないが、弱点ではないのか?」

「……へえ。それで?」

「……使えなくしてやろう」

チッと小さく舌打ちした。別にこのブレスレッドは弱点ではないが、ないと困る。
あの子達に、見つかってしまうじゃないか。
美琴が電撃を放つ。しかしその時には、すでに駒場は美琴の目前へと迫っていた。
エツァリが、そして美琴が反応する前に彼はそのブレスレッドを打ち砕く。

「御坂さん!」

「……ッ」

焦燥混じりのエツァリの声が聞こえ、直後、慣れることのなかった違和感が消えた。
ブレスレッドによる電磁波操作がなくなったのだ。
折角冥土返しが作ってくれたブレスレッドは、バラバラになって落ちていった。

「……ッ、アンタ……、よくも……」

美琴がキッと睨み付けるも駒場は動じない。
ただ、轟、と爆風を撒き散らして美琴の腹に足を突き出した。

「――ッ!」

慌てて磁力で近くの壁に体を引き寄せ緊急回避をする。美琴はくるであろう衝撃を耐えるために歯を食いしばったが、ぶつかる直前にエツァリに抱きとめらた。
驚いて彼の顔を見ると、少し怒ったような顔をしていた。

「……やるなら本気でやってください。何を手加減しているんですか」

「……うる、さい……わかってる!」

おそらくは心配からきているであろうその言葉に怒鳴り声で返すと、エツァリの体を押しのける。
体を反転させると、駒場は不快そうに顔をしかめていた。

「……ふむ、弱点ではなかったんだな」

「残念なことにね」


憎まれ口を叩き、不適な顔で笑う美琴は、再び鉄材を宙に浮かせた。今度は4つや5つではない。30にも及ぶその鉄材は、美琴の手によって一つに束ねられ、駒場を襲った。
駒場の目が僅かに見開かれる。あまりの出力の圧倒さに驚いているのだろう。だが、そんなことで怖気づく彼ではなく、簡単に巨大な鉄の塊とも呼べるそれをぶち破っていく。
致命打どころか盾にすらならない。精精が目くらまし程度だ。
――そう、この程度、目くらましにしかならないことくらい分かってる。
だから、美琴がその鉄塊に望むのは、それだけ。
しかしそれは、勝利の布石となる。

「……ふん、この程度の膜を破ることなど、造作もない」

「そうね、でも、これならどうかしら?」

駒場は息を呑んだ。鉄塊を破った先に、美琴はいなかった。
そして、彼女の発する声は、自分の背後から聞こえていて――、

「チェックメイトよ。……なーんてね」

美琴は不適に笑う。
直後、駒場の体を雷撃が貫いた。




今日はこれで終わり。クーデレな美琴もいいですよね
新約5巻美琴の出番沢山あるといいなぁ

乙~

乙!
次回を楽しみにしてます

不適じゃなくて不敵な

あわきんが心配




「……で、結標さん、出てきたら?」

「あら、ばれてたの」

美琴の声に応じて数メートル離れた物陰から結標が出てきた。その体は無傷とはいえないが、目立った怪我は見えない。
そのことにほっとしてから、ふん、と鼻を鳴らした。

「さすがに気づくわよ。……そんな都合よく鉄材は落ちていないわ」

駒場への目くらましに使った大量の鉄材。
あれらはほとんど結標が能力によって用意してくれたものである。
ありがとう、と美琴が礼を言うと、結標は歯がゆそうな顔をして、

「貴女に倒れられたら私の仕事が増えるじゃない。それだけよ」

「……素直じゃないなぁ」

「御坂さんにだけは言われたくないで――痛ッ!?」

エツァリの軽口を電撃を電撃で黙らせる。確かにそうかもしれないが、他人から言われると腹が立つ。
美琴ははぁ、とため息をつきながら手首の辺りに目をやった。
そこは、少し前まではブレスレッドが装着されていた場所だ。

「どーしょうかなぁ……、あの子達に居場所ばれちゃう」

「ああ、そのことなら心配なく、予備を持っていますので」

「本当!? ゲコ太先生も気が利くわねー、助かったわ」

エツァリにブレスレッドを渡され、再びそれを手首につけた。同時にまた違和感を感じたが、今度はさほど気にならなかった。
美琴が路地裏から出ようとすると、結標がその背中に声をかける。



「……行くのね、駒場の言っていた頼みを果たすために」

ピク、と美琴の肩が揺れた。
彼らから少し離れたところには、エツァリによって殺された駒場の姿があった。
美琴は数秒だけ黙ってから、ポツリといった。

「友達がね……無能力者なのよ。だから、人事じゃないの」

「……ふぅん、それだけとは思えないけどね。貴女、お人よしも大概にしなさい。いつか寝首を掻かれるわよ?」

「……うん、ありがとう。でも、確かに友達が無能力者っていうのも、理由の一つなのよ?」

決して死んでいった駒場のためだけに動くわけではない、と美琴は答えた。そんな美琴に結標は苦笑する。
やはり彼女はお人よしだ。そう再認識しながら。

「じゃあエツァリ、私いってくるから」

「……いえ、そういうわけにはいきません」

「――えっ?」

呆けた声を出したが最後、首に衝撃を感じ、美琴は意識を失った。
ぐらりと倒れていく体を支えるのは、気絶させた張本人であるエツァリだった。
無言で抱きとめる彼に、結標が呆れたように声をかけた。

「優しいのね。愛する人には無理をさせたくないって奴かしら」

「そうですね。御坂さんは無茶ばかりしますから。……彼女をお願いできますか?」

「ええ、それはいいのだけれど。……行くの?」

「はい。自分がしなければ彼女がしますし。仕方がないです」

結標に美琴を託し、エツァリは困ったような笑顔で路地裏を出て行った。
その右手に、しっかりと槍を構えて。



すみません、一旦ここまで
筆が進めばまた夜投下します

このエツァリには幸せになって欲しいなぁ。
多少歪んでいてもいいから

乙ー

待ってる




全てが終わったときには夜の10時になっていた。
もう夜になったし、御坂さんにはできるだけ苛立った顔をされたくないので、顔を元に戻しておく。
と、美琴が待っているであろう部屋に向かっている途中で、エツァリはとあるものを発見した。
それは。

「御坂さん……ではないですね。あれは、たしか母親の……」

ポストの支柱を両腕で抱えこみ、ひくっと酒臭い息を吐きながら「気持ち悪いー」と言っている見た目大学生の女性は、まさしく前に書庫でみた美琴の母親だった。
名前は御坂美鈴。見た目に反してしっかり年齢は一児の母である。
よっぱらっているのだろう、支柱にほお擦りをしてニヤニヤ笑っていた彼女は、近づいてきたエツァリを視認すると、更にその笑みを深くさせた。
そう、それはまるでいい獲物を発見したときのような、美琴がゲームセンターでストレス発散道具を見つけたときのような、そんな顔。
……嫌な予感しかしない。エツァリの頬に冷や汗が伝うのもかまわず、美鈴はエツァリの腰に抱きつくと、笑顔で自己紹介をした。

「御坂美鈴さんですよー!趣味は数論のお勉強、特技は水泳、おっぱいは九十一センチでーす」

「……これは御坂さんに将来があると信じていいのか、それともその遺伝子を引き継いでいないと哀れに思うべきなのか……迷いますね」

「んー? なになにー? もしかして美琴ちゃんの知り合い?」

「え、ええ。まあ、御坂さんと自分は……仲間……みたいなものです」

「で、美琴ちゃんを好きだと!」

「!? 何でわかったんですか!?」

ビクッと反応したエツァリに、美鈴はさらに抱き締めを強くしながら、

「分かるわよー。だって美琴ちゃんの名前を言うとき、凄く優しそうな顔になるから」

「……そう、ですか」

好きな人の母親に娘が好きな事を知られてしまい、気恥ずかしく思うエツァリだが、更に恥ずかしいのはこの腰に回った手だ。
……どうにかして引き離せないものか。
他の女ならともかく、美琴に顔がよく似ているこの母親は非常にまずい。まずいったらまずい。

(もしこの状況を見たとして……御坂さんは、はたして嫉妬してくれるでしょうか)

おそらく答えはノーだろう。
自分は美琴が好きだが、美琴は自分のことをどう思っているかわからない。
せいぜい盾程度のもので、よくて使える駒か。
そんな風に考えて自嘲気味に笑うエツァリに、何を思ったのか美鈴が腰から首へと這い上がってきた。

「ちょっ何するつもりですか!!」

「え? ちゅーよちゅー! 美琴ちゃんより先にママが奪っちゃうぞー!」

「やめてください!!」

本気で嫌だ。
吐息(ただし酒臭い)がかかるほどに近い美鈴の顔をどうにかして押しのけたエツァリはタクシーを呼んだ。
これ以上この人に付き合っていたら確実に面倒なことになる気がする。

「ちょ、え、何々ー?」

「それではさようなら!!」

タクシーのドアを閉め、エツァリは思う。
……御坂さんにはできるだけお酒を飲まさせないようにしよう。





エツ琴いいね!

乙!
暗部の美琴はダークカッコいい

乙です!待ってます!


「……これであとあっちも含めて5箇所か……、今日はここで一旦終わりにしますか」

ガリガリと頭を掻いて、御坂美琴はそう決断した。これ以上の労働はあの子達に不審を抱かせかねない。
姉として、あまりこの事を知られたくはなかった。彼女達がどう思うか――何となく予想がついていたからだ。
そこは妹達関連の研究所だった。以前は美琴を絶望させ、破壊活動をやめさせるために分散された172箇所の実験施設の一つ。そして今は、独自に妹達を利用しようと躍起になっている研究所だった。
ただし、今は天井は落ち、その破片で機材は一つ残らず潰され、見るも無残に、研究所どころか建物としての存在意義すら失ってしまったが。
妹達関連の研究をしていた研究者の残党が、また何か企んでいると美琴が知ったのは、数日前のことだった。その日から連日潰し回っているわけだが――

(流石にあの時みたいな無茶はやめておかなくちゃ、ね)

かつては壁として一定の役割を持っていた、しかし現在は瓦礫に成り果て、ゴミとしか言い様のないそれを踏みつけながら美琴は出口を目指す。
ほとんどの人はもう既に逃げ出していた。残っている人も一人残さず意識を刈った。もう大丈夫だろう、警戒もせずに無防備に歩く。

(一旦寮に帰って一眠りしたら、あの子達の所へ遊びに行こうかな)

頭の中でつらつらとこれからの予定を簡単に立て始めた。またケーキを買っていこうかな、なんて思いながら。
その時、意識を取り戻した研究員が、自分目掛けて投石(瓦礫)しようとしていることに、美琴は気が付かなかった。
――美琴が電磁波で違和感を感じた時には遅かった。

「――あ」

インテリとは言え、大の男が投げた、ある程度の脅威をもった瓦礫だ。
綺麗な弧を描くそれは、真っ直ぐ美琴へ突き進んでいて。
それが目前に迫り、、ようやく美琴が行動をとろうとした瞬間、

「……え?」


神速の光が、瓦礫を跡形もなく消し去った。
そして、同じ光が研究員を襲い、次の瞬間には彼の上半身はなく、下半身だけがそこにあった。

「――全く」

さらに、コツリと。
小さな足音を響かせて、少女が呆れ顔で目の前に現れる。

「何をやってるんですか、御坂さん」

その声の持ち主は、自分と同じ顔の、けれどクローンではない、とある少年。
少し前に出会った、自分を好きだといった、そんな少年。
美琴が言う。
その少年の名前を。

「えつぁり?」

少年は笑った。
名前を呼ばれただけで、心底嬉しそうに。
まるでこれ以上ない幸せだとでもいうように。

「お久しぶりです……なんてほど、時間はたってませんかね?」

――それはエツァリと美琴の、一週間ぶりの再会だった。






「ちょっとアンタ付き合いなさい」

との一言でデパートに連行されたエツァリは、そこで素顔に戻され、買ってきたパーカーとジーンズを無理やり押し付けられた。
一応反抗しようとはしたものの、服をエツァリと照らし合わせながら、

「うん、中々かっこいいじゃない」

と普段は見せない素直な笑顔でいうものだから、全く、困った姫君である。
そんな笑顔で言われてしまったら、断れないじゃないか。
フードがあることが幸いした、とエツァリは思う。あまりこの顔は知られたくない。フードを深くかぶり、試着室からでる。
着替え終わったエツァリと共にデパートの中を巡り歩いていた美琴は、ふと思い出したようにいう。

「ご飯食べにいかない? もう夜の7時だし。それともアンタ食べた?」

「いえ、自分もまだです。どこがいいですか?」

「そーねぇ……、じゃああそこのファミレスにしましょ」

つい、と美琴が指を指したのはどこにでもあるファミリーレストランだった。
勿論エツァリが美琴の言うことに異論を唱えるはずもなく。
二人はレストランの席に座り、ぱっぱとメニューを頼む。直ぐにやってきたそれに舌鼓を打ちながら、彼らは雑談というにはどこか不穏な響きのある会話をする。

「アンタ、何してたの?」

「まあ色々と……、ですか。この街にいられるように、手配を」

「……ふーん、まあいいわ。私には関係ないし」

自分の頼んだメニューであるスパゲッティをくるくるフォークに巻きながら、美琴がツンとした態度をとった。
しかし、その裏にある心配をきちんと受け止めたエツァリは、お返しとばかりに言う。


「御坂さんこそ、最近色々動き回っているそうですね」

「……アンタ、どこまで知ってるの?」

「案外何も知らないかも知れませんよ? まあ、そこは企業秘密ということで」

「アンタねぇ……、ま、どーでもいいわ。アンタが私を止めようとさえしなければ」

「まさか。どうせ無駄でしょうから。そのかわり、助力はさせてもらいます」

「いらない」

「いります」

「いらないってば」

「いえ、自分がしたいんです」

意味のない押し問答が続く。
美琴がジト目で睨んでも、彼はそれを素通りさせる。
どうやら今回のことで引くつもりはなさそうだ。

「……しょうがないわね」

美琴はため息をついてスパゲッティを口に入れた。
降参、つまりはついてきてもいいよ、ということだろう。
エツァリの顔が思わず綻ぶ。


「ありがとうございます」

「か、勘違いしないで。認めたわけじゃないわよ。足引っ張ったらすぐ追いてくから」

「それでもいいですよ。足なんて引っ張りませんから」

随分な自信ね、と呆れ半分で美琴は言ったが、彼はニコニコと笑うばかり。
実際彼の力を見ているし、先ほども助けられたばかりなので、足を引っ張られるとは思ってはない――が。

(なーんか癪なのよね)

そう、それはどこか理不尽な気持ち。
手伝ってもらいたくないわけではない。
手伝ってもらって嬉しい、という気持ちは、確かに存在するのだから。
けれど、何かムカムカする。そう、エツァリに電撃をぶつけてしまいたいくらいには。
……そのムカムカは、しかしどこか心地よいものでもあって。

(……わかんない)

だから、この気持ちに対する結論は保留にしておく。
無理に結論付けるものでもないと、なんとなく頭の隅で分かっていたから。

「御坂さん」

「なに」

「……無理、しないでくださいね」

「……うるさい」

ほら、また、ムカムカしてきた。
だけどやっぱり、それはなんだか楽しい気持ち。



お久しぶりです。ようやくテストが終わったので更新再開
今度は今度でssの内容が進まないので二人の再会話を書かせてもらいます。飛んでしまってすみません
ほんのりエツ琴風味でお送りいたします、それでは。

いかん、このままではエツ琴に目覚めてしまう

いいぞもっとやって下さい

たまらんですわね



「はーい、こーんばーんわー。ごめんけど、眠っておいてね?」

決して世のためとなることを研究していない研究所で、場違いな明るい声が響いた。
そこに勤めている研究員の男性は、その声に反応する前に、バチィッと平行に迸る雷電によって意識を刈られた。

その声の主――御坂美琴とその付き人、エツァリは彼の後ろにある扉の電子ロックを能力であけ、さらに奥へと入っていく。
最後の研究所は、まさにあの『実験』の主要研究員が詰めている場所だ。
美琴の雰囲気がいつもより殺気立ち、しかしそれを隠すためにわざと明るく振舞っているのを感じながら、エツァリはあとに続いた。

再会の日の翌日、既に彼らは動き出していた。
もたもたしていてはまた何かよからぬ事をたくらみかられない。ならば、さっさと手を打つのが定石だろう。
そんなわけで、時刻は深夜。暗闇に紛れて彼らは最後の研究所へ身を投じている。

「あーあ、なんていうか、歯ごたえがないするめを噛んでるみたいっていうか」

「ふやけてるってことですか?」

「……いや、違うわよ」

美琴の能力によって、監視カメラは役に立たず、遭遇した研究員や警備員は残らず即意識を奪っているためか、驚くほど侵入は静かだった。
それを不満に思っているのか、美琴が口を尖らせる。
そんなわけで、順調に歩みを進めていた美琴は、ふと足を止めた。


「……あ」

小さくつぶやいたその先は、透明なガラスの向こう側。
そこには、人一人入れるくらいのサイズの培養機が、4つ並べてあった。
ビクン、と美琴の肩が大きく揺れる。
いやな記憶が一気に蘇ってきた。

(……ッ、あれも、全部壊していこう。全部、全部!)

培養機に背を向け、美琴は再び歩き出した。気遣うような気配が後ろから感じられたが、しかしそれを無視する。
脳裏に鮮明に映る妹達の顔を振り払い、ずんずん前へと進んでいく。
その間、美琴は無言だった。先ほどまでの取り繕ったようなテンションもなく、ただひたすら何かを堪えているような。
――まるで、なく寸前の子供のような。

(……まったく)

いつも沢山のものを身のうちに隠して、それで全て処理しようとして、そのくせ不器用だから隠しきれていなくて。
だからこうも、心配をかけさせてくれるのだ、この少女は。
……まったく、愛おしい。

そんなエツァリの心中など露知らず(知っていても無視されていただろうが)、美琴は最後の扉を開けた。
そこには、巨大な実験装置が並べられていた。一体何に使うのか、二人には検討もつかないが、大事なものなのだろう。


「……とりあえず、爆発させていきましょうか」

美琴は手を機材にあて、放電を始めた。
彼らが知る由もないが、一機数千万もするそれらは、美琴によって確実に破壊されていく。
高圧電流を受けた機材の一つが、ボン、と音を立てて爆発した。それに伴って湧き上がった炎があたりを熱していく。

「御坂さん、早々に出ましょう」

「……分かった」

全て破壊しつくしたのを確認すると、二人は実験装置からくるりと背を向けた。
そんな彼らの視線の先にいたのは、数十人の研究員。
彼らは一様に殺気立っていた。

「……なんで、今更現れたのかしら」

「さあ? とりあえず、潰すしかありませせんよね」

物騒すぎる会話をする彼らは知らない。
あの研究員達は、『実験』が凍結されたせいで職を失い、この研究所が壊れてしまえば今よりも深い闇へまっしぐらなことなど。
研究員が彼らの研究の成果であろう武器を持ち出したのをきっかけに、エツァリも槍を懐から出した。
美琴も交戦しようと演算を開始して――、

「――ッ!?」


ふと、気がついた。
一度だけ、彼女はそれを、見たことがあった。
記憶力が桁外れにいい彼女だからこそ、気がついたのかもしれない。
かつて絶望の中足掻いていたときにレポートの中で見た、『実験』の研究者の一人だ。

「ア、ンタ……」

名前は知らない。遺伝子のことが書いてあるレポートの中、顔写真が張ってあるのを見ただけだからだ。
中身は読む気がしなかった。読んでも意味がないと知っていたから。

「……アンタは、あの子達の――ッ!!」

美琴の憎悪の視線の先には、『芳川』というネームプレートの付けられた、若い女性が立っていた。



今日の更新はこれで終わり
超電磁砲2期とか嬉しすぎる。

ニートさん逃げて

悦有さんの再現率パネエ

続きまだかな

いつまでも待ってる

逃亡\(^o^)/

まだ諦めんよ…

待ってる

来て欲しいなあ
忙しかったりするのかな
美琴がすごくいい美琴なんだよな

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