P「アイドルとの距離」 (38)
処女作だから何か変なことしちゃったら指摘するなりそっ閉じしてくれると嬉しい
書き溜めもないからすぐ終わるかもしれない、構想はあるけど似たような話があるかもしれない
そんなでよければ
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名前間違えなきゃいいよ
「……ふー」
「また溜息ついてますよ、プロデューサーさん」
最近、溜息をつくことが多くなった気がする。
そして、それに気付いた音無さんに笑顔で指摘されることも、多くなった。
「アイドルの目の前じゃ、疲れてなんていられませんしね」
たはは、と、自分で分かるくらい乾いた笑いを飛ばしながら音無さんに返す。
なんたって、俺はプロデューサー。
* * *
『IDOL(アイドル)』。
和訳すると、"偶像"だったり、"偶像視される人"だったり。
ファンは、決して届くことのない恋心を抱いていると分かっていても、その恋心を抱き続ける。
そのためか、「アイドルは恋愛をしてはいけない」なんていう、俺からすればおかしなルール――暗黙の了解も存在する。
常に、ファンからは手が届くことのない、アイドルという存在。
そのアイドルたちを、常に身近に感じて、
そのアイドルたちの、素の姿を見てきて、
そのアイドルたちの、第一号のファンである俺も、
彼女らに向けて、届かない恋心のようなものを抱いているのかもしれない。
彼女たちが上手く羽ばたけるように、彼女たちの最善を考えて行動してきたつもりだ。
その最善や、彼女たちの努力の結果が、こうして彼女たちの輝かしい日々へと繋がっていると確信している。
ただそれは、親離れを目の当たりにした、親のようでもあって。
* * *
「……プロデューサーさん、最近ちょっと元気ないみたいですね」
「んん、そんな風に見えてましたか」
音無さんがコーヒーを淹れてくれたようで、かちゃり、とカップが置かれた。
どこか音無さんの笑みは柔らかい。
「今日は寒さも和らいで、窓を開けると気温がちょうどいいみたいですよ」
そう言いながら、音無さんは事務所の窓を開け放つ。
コーヒーから上る湯気は、俺の鼻腔を掠めて、都会の喧騒の中に紛れていった。
「……プロデューサーさん、最近ちょっと元気ないみたいですね」
「んん、そんな風に見えてましたか」
音無さんがコーヒーを淹れてくれたようで、かちゃり、と目の前にコーヒーカップが置かれた。
どこか音無さんの笑みは柔らかい。
「今日は寒さも和らいで、窓を開けると気温がちょうどいいみたいですよ」
そう言いながら、音無さんは事務所の窓を開け放つ。
コーヒーから上る湯気は、俺の鼻腔を掠めて、都会の喧騒の中に紛れていった。
書き込みエラーは大抵でまかせだぞ
* * *
暇があれば事務所でやいのやいの騒いでいた亜美や真美も、今では立派な芸能人だ。
亜美は竜宮小町の一員として。真美も、今では別のユニットで活発に活動している。
事ある毎にお菓子を作ってきてくれた春香や、ソファで居眠りばかりしていた美希も。
もはや、俺たちの見えないところまで、真っ直ぐ羽ばたいていった。
俺は、そのことをとても嬉しく思っているし、みんなだって同じ気持ちだろうと、思う。
けど、
やっぱり寂しいもんは、寂しい。
我ながらガキっぽいとは思う。
それでも、テレビの向こうで活躍するみんなを見るたびに、
暮らしている世界が違うという現実を、まざまざと見せ付けられている気がして。
俺がみんなのために仕事を持ってくるたびに、みんなは俺から離れていく。
そんなことがあるはずないのに、慣れから来る倒錯は、すんなりと俺の中に入ってくる。
例外などない。
俺も、紛れもなく、彼女らという偶像のファンだった。
* * *
「……ふふ」
「どうかしたんですか、音無さん」
突然、音無さんがくすくすと笑い始めた。
まるで、どこか抜けた勘違いをすした子供を、端から眺める保護者のように。
「いえ。何か思い悩んでいるプロデューサーさんを見ていたら、つい」
「はあ……悩んでるって分かってるのに、笑うのってどうなんですか」
また溜息。今度は、寂寞から来るそれではなかった。
音無さんは将来、いいお嫁さんになるんだろうな、と思った。
「プロデューサーさんは、深く考えすぎなんです」
「え?」
またも、突然だった。
言うと同時に音無さんは席を立ち、窓際へと歩みを進めた。
「大方、アイドルのみんなが来なくて寂しいー、なんて考えてるんじゃありませんか?」
「……まあ、当たらずともいえども遠からず、ですかね」
嘘だ。音無さんの言葉は、ぴたりと俺の心境を言い当てている。
その通りだった。結局のところ、アイドルに会えなくて寂しいだけなのだ。
デビュー前後は、あれだけアイドルとコミュニケーションを取っていたというのに。
音無さんは、表の通りの見える限りを眺め、ついさっき開け放った窓を閉めてしまった。
今日の音無さんは、どこかおかしいと思う。
「プロデューサーさんは、運命って信じますか?」
「……あずささんの物真似ですか?」
「いいえ、違いますよ。笑い話でもありません」
コーヒーを淹れてくれたときのような柔らかい笑みで、音無さんは俺に語りかける。
「私はそれを、ついさっき信じざるを得なくなりました」
「は……?」
「ほらほら、これです」
音無さんはそう言うと、俺の許に駆け寄って手を取り、
自身のデスクのパソコンの画面を見せてきた。
そこには、一通のメール。
差出人:春香ちゃん
件名 :もしかして
内容 :プロデューサーさん、私たちがいなくて寂しがってませんか?
もしそうなら、プロデューサーさんを絶対、おうちに帰しちゃダメです!
今さっき、○○スタジオでお仕事のメンバーと、××テレビでお仕事のメンバーが
偶然一緒になって、今から事務所に向かうんです!
お願いしますね、小鳥さん!
「……何だ、こりゃあ」
「ふふ。よかったですね、プロデューサーさん?」
つまり何か。
運命っていうのは、俺とアイドルたちが引き寄せ合ってるとか、そんな感じか。
正直、一度読んだだけでは理解できなかった。
いや、理解はしたんだろうが、納得はできなかった。
そんなことって、あるのか。
「もう少ししたらアイドルのみんながやって来ますよ」
音無さんに言われて、はっとした。
納得できるかどうかは別として、アイドルたちは事務所にやってくるんだ。
「深く考えなくたっていいんですよ。
プロデューサーさんは、アイドルの誰より近くにいるんですから」
――アイドルたちを、常に身近に感じて――
――アイドルたちの、素の姿を見てきて――
――アイドルたちの、第一号のファンである俺――
『ただいまーっ!!』
瞬間、事務所のドアが勢いよく開け放たれて、高い声がいくつも、事務所に響き渡った。
「みんな、久し振りにみんな揃って嬉しいのは分かるけど、できるだけ静かに――」
「「兄ちゃ→ん、お久しぶりぶり→!」」
「こーら、亜美も真美もじゃれつかないの!プロデューサー殿は疲れてるんだから!」
「プロデューサー!一昨日ロケで沖縄行ったついでに、サーターアンダギー買ってきたぞ!」
「プロデューサー、先日の音楽番組、見ていただけましたか?」
「プロデューサー!」
「プロデューサー――」
「――って、言っても聞かないか。窓ガラス、少しは防音になってるといいなぁ」
「お、お前ら……」
「プロデューサーさん、やっぱり寂しかったみたいですね」
「は、春香。誰にそんなことを」
「音無さんに、メールでお返事いただいちゃいましたから!」
「……そっか」
音無さんは、春香のメールを見て俺の様子を察した上で、わざわざ窓まで閉めてくれたのかと、今更気付いた。
本当にあの人は、将来いいお嫁さんになるだろうな。
それに――、このアイドルたちも。
俺が不安で仕方がないときも、俺を信じて頑張ってくれているのに。
テレビの向こうにその姿が映っても、その姿はあの頃の俺たちがいたからこそなのに。
俺は、一体何を心配して、寂しがる必要があったというのか。
そうだ。
なんたって、俺はプロデューサー。
「ねえみんな、寂しがりのプロデューサーのために、いつものあれ、やろうよ!」
「あ、真ちゃん、それいいかも!」
「うっうー!プロデューサーも小鳥さんも、みーんなでやりましょー!」
「社長はいらっしゃらないけど~。うふふ、後でやり直せばいいわよね~」
「ってコトで、ほら! ぐずぐずしてない!
円陣組んで、手重ねて!」
伊織に言われるがまま、俺も音無さんも円陣に組み込まれて、
手を真ん中へ突き出し、みんなの手の上に重ねる。
「ハニーってば幸せ者なの。こんなの、ファンサービスでもしてあげないよ?」
「ふふ。プロデューサーは、非常に頑固なお方ですから。こうでもなさらない限り、身をもって実感することはないのでしょう」
「……そうかもな。俺はやると決めたらやる男だ」
「何よそれ。意味分かんない」
伊織の突っ込みに、円陣を組んだみんなが笑いを零す。
「よーしっ。じゃあ、"765プロのみんな"で、プロデューサーさんを元気付けちゃうぞーっ!」
春香の掛け声で、みんなの力に手が入る。
誰よりもみんなをそばで支えてきて、
誰よりもみんなと信頼しあっていて、
誰よりもみんなを大好きでいる――
俺は、ファンである前に、プロデューサーなんだから。
「765プロー、ファイトーっ!」
『おーーっ!!』
俺は誰よりも、アイドルたちの……
お前たちの、そばにいるんだ。
おしまい。
結局すごい短編になった
次書くことがあればもうちょっと頑張る
HTML化依頼してきます。読んでくれた方ありがとうございました
おつ
乙
( ;∀;) イイハナシダナー
乙、上手くまとまってて良かった
次も期待してます。
乙
おつー
処女作でここまで出来る>>1は素晴らしい
面白かったww
もっと行間空けたほうが読みやすいかも
引き込まれた
映画見たあとこのPと同じような気持ちになったなあ
乙
乙しかない
乙
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