初春「垣根さん!新しい服ですよ!」垣根「しま○らはやめろよ!」(482)

初スレ初SSです
地の文有り

禁書原作と超電磁砲漫画は既読ですが、超電磁砲アニメは未視聴です

ここ間違ってるよー、とかこれはねェよってところがあれば教えていただけると嬉しいです
いろいろ至らないところもあると思いますが、よろしくお願いします

その薄暗い部屋の中には巨大な培養器とそれに繋がるいくつかの機械があった。
ゴポゴポと音を立て気泡を発生させるそれの中には、10歳前後の少年がぷかぷかと浮かんでいる。

色素の薄い髪、幼いながらも端正な顔立ち。町を歩けば殆どの人間が彼のことを美少年だと評するだろう。

その少年の瞳は固く閉ざされており、目を覚ます気配はない。

少年の浮かぶ培養器の他に、部屋の中には白衣を着た男がいた。
男の腹部からはどくどくと血が流れており、今にもその命は終わりを迎えようとしている。

男は朦朧とする意識の中、培養器に繋がれた機械へと手を伸ばした。

いつか学園都市へと復讐をしようと、密かに進めていたこの計画。
三つに分かれた脳味噌を使い、それを元に体を作り上げ、培養器の中で育てながら、自分好みに調整していくーーー
はじめのうちはうまくいっていると思っていた。出し抜けていると思っていた。しかし結果はこの様だ。
せめて一矢報いてやねば死んでも死にきれない。

血の流れる腹部を押さえながら男はモニターを操作する。
まだ製造途中であるが、そんなことは言っていられない。
常識の通じないことを豪語するこの男のことだ。そのくらいどうとでもなるだろう。

男は半ば投げやりになりながら実行のキーを押す。
培養器の中から液体は消失し、残った少しの培養液と共に中から少年が放り出された。
 
「やあ、調子はどうかね?」

口の端から血を流しながら男は少年に問う。
これで学園都市の軍事産業にほんの少しではあるが打撃を与えることができるだろう。ザマーミロだ。

ゲラゲラと嗤いながら絶命していく男の傍らで培養器から放り出された少年は、ゆっくりと目を開き、辺りを見回した。
死に行く男と、水浸しの自分。そもそもここはどこなのだろう。
何一つ理解できないまま少年は自分の体に視線を落とした。その目が大きく見開かれる。

「なんだ……、こりゃ……」

声変わり前のアルトが薄暗い部屋に響いた。

***

首を回すとゴキり、とおっさんのような音がした。
女子中学生としてこれはいかんだろう、と初春飾利は寮へと続く道をひとり歩きながら考える。
風紀委員としての業務は大変だがやりがいがあるし、自分も誇りをもって行っている。
だからといってそれを理由としておっさんのような振る舞いをしていいのであろうか。答えは否だ。

(そういえば佐天さんにもらったバスソルトがまだ家にあったなー。あれでもいれてゆっくりお湯に漬かることにしよう)

うんうん、とうなずきながらまた首をコキコキと鳴らす。
さっさと家に帰って疲れをとらないと本格的にヤバそうだ。女子としての自分の尊厳とか。

完全下校時刻を過ぎた街は静かで女の子一人で歩くのにはあまり適していない。
自然と初春の歩くスピードも早くなる。
いくら風紀委員だといっても初春のレベルは1で、その能力も単なる保温能力だ。運動神経だってそんなにいいほうではない。
スキルアウトに絡まれたら一貫の終わりだ。
暴力の嵐にさらされることなど、できることなら二度と経験したくはない。


ズキリ、と右の肩が痛んだ気がした。
思い出すのは軽薄な笑顔と自分を見下したような声。
自分の肩にめり込む靴底の感触。
そして薄れていく意識の中で見た白い白い大きな羽ーーー

初春は過去、抗いきれない圧倒的な力に蹂躙されつくされたことがある。
辛うじて命は助かったものの、その恐怖は未だ体に染み付いて離れることはない。

それまでだって、風紀委員として何度となく危険な場面に立ち会ってきたし、銀行に入ってきた強盗に人質にとられたこともあった。
だが、あそこまで一方的に自分ひとりに向けられる暴威にさらされたことなど一度もなかった。
絶対的な力への恐怖。
そのとき真の意味でのレベルの違いというものを見せ付けられた気がした。

しかし、自分をあんな目に合わせたあの青年はもういない。
あの時、別の目的があったとはいえ、自分のことを助けてくれた第一位の能力者、一方通行に殺され、死体は学園都市側に回収されたらしい、ということを風の噂で聞いた。
その噂では脳味噌を三分割にされ、冷蔵庫ぐらい大きな機械を体に取り付けられ無理やり生きながらえさせられているらしいがという話だが、そんなもの死んでいるのと大差ないだろう。
もう、自分にはもう関係のないことだ。


暗くなるだけだからこれについて考えるのはもうやめにしよう、と、初春は二三度頭を振り、陰鬱思考を振り切るかのように寮への道を走り出した。

学生寮まで辿り着くころには、なけなしの初春のHPは殆ど0に近かった。

(夜のよくわからないテンションに任せて走るんじゃなかった……)

ぜーぜーと荒い息を吐きながら、自分の部屋を目指す。

(ごはん……、いや、お風呂……、ていうかねむりたいもうねむりたい……)

全部凍らせたままとかなんとか。
 
ふらふらした足取りで部屋に入って明かりをつける。


見慣れた自分の部屋のはずなのに違和感があった。
異物があった。

ベランダに面する窓が開き、カーテンがはためいている。

あるはずのない、いるはずのないものがそこに存在している。

三対六枚の白い翼。
レベル5の第二位、未元物質を操る暗部の帝王ーーー垣根帝督。

「よお、お嬢さん。俺の事、覚えてるか?」

その男を8つほど若返らせたような少年が、初春の部屋に、目の前に存在していた。

投下以上です

miteoruzo

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\ゝ---ニ=て r'⌒ハ l__   イ⌒(_、ノ ̄      _,. '´
 ヽ,__, ゝ\ニ---┴┴"∠  '´    `ヽ   _,. '´
     ヽ_____  ⌒)ノ__ 彡    } _,. '´

           ̄   'vc\ ヽ__ノ-‐



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_|田|_|ロロ|_| ロロ| | | _|ロロ|_| ロロ|_|田||ロロ|_|田|_.| ロロ|_

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面白そうだね 期待

最後のレスで、急に読みやすくなったなw
文章上手いし、設定も面白い!
垣根と初春のコンビ……よくわかっていらっしゃる
スレタイとの落差にワロタww

これからも期待期待

ピンクのサラシ巻いたツインテのお姉さんが、ものすごい勢いで初春の家の方角に飛んで行ったのだが気のせいか?

おお、なんかおもしろそうw
期待

ていとくんと初春かー

wktkして待ってます。

帝春は大好物なので期待

          /. . . . . . . . . . . . . . . . \/
       / / . . . . . . . . . . . . . . . . ∨    テクマクあわきん☆
      . ..′. . . . . i. . . . .}. i |. . . . {       テクマクあわきん☆
       i. i.i. . i. i.|. .|. / . 7爪「. . . . 〉
       |/|.i. . iイ厂|イ . 〃⌒|/. . 从      この光でみんな
      {⊆⊇}. j/iィ=ミ|/   ""i: :从 {       ちっちゃくな~れ☆
      |////|:小″  '__, -ヘ  |/ ノ:人                     ,ノ
     ∨//从{人  ∨  } ∠{_{{ . 乂_                _,ノ

    _{ニニ}___}≧: ._`ー イ.:.:.:.:.//) . . } ゙'ー'^'ー'^'ー'^'ー'^'ー'^'ー'′
 〃´≠´(く//{\._.__〔_:.:.:.:>ヘ:.:.:.{/. . . ノヽ
 {{/. ./{  ̄  ∨:.:.:.:く:/.:.__}/. . . /.:.:.人
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人. ..\__/.:.:.:.ト-/. . . / \/. ./.:.:.〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.厶_
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スレタイとのギャップww

超期待してます!

一方さんの服はファッションセンターしましま製と言う話がだな

>>20 テメーの仕業かアレッシィイイイイイ!

>>1です
レスありがとうございます、がんばります

一日に何回もすみませんがまた22時ごろになったら投下させてもらいます

それでは

期待してますww

絶対完成させてくださいww

ごくせんの教室ってなんでいつも同じなんだろう
学校違うんじゃねぇのかよ…

投下します

自分の部屋に不法侵入者がいる。
それだけで恐怖に慄くのは十分な理由だと思う。

さらにその闖入者には純白の羽根が生えているのだ。
少しの珍事くらいなら日常茶飯事なこの都市でも、そんな非日常(メルヘン)なやつはそうそう居ない。

加えてそれの顔は初春のトラウマを抉るような造形をしている。

あの日、初春を肉体的にも、精神的にも踏みにじった男のミニチュア。
それが何故だか自分の部屋にいる。


ガクガクと震える足をどうにか動かし初春は逃げようと努力する。
しかし焦っているためかドアノブの上の手は滑り、扉を開けることも出来ない。
逃げ場はない。

せめて目の前のの少年はいったいなんなのか。
自分に何の用があるのか。
それを知ろうと口を開くも、喉の奥が粘ついていてうまく言葉を発することが出来ない。
それでもなんとか声を発しようと唾液が分泌されずカラカラになった口を開く。

「…っ、はぁ…、なん、なんですか、いったい…!」

震える声で漸く絞り出したそれは、初春が思うよりずっと弱々しかった。


「そう怖い顔すんなよ。別にとって喰やぁしねぇって」

幼い顔に不釣り合いな軽薄そうな笑みをうかべ、そう答える。
答えになっていないのだが、返事が帰ってきたということは会話をする意思があるらしい。

「ここお前の部屋なんだろ? 家主が玄関に突っ立ってねぇでさっさとこっちこいよ」

そういいながら少年は初春に向かって手招きをする。
近づいた瞬間襲いかかってくるのではないかと一瞬身構えたが、

「つうか窓開けっぱだとやっぱ寒ぃな」

などと言いながら自分が入ってきたであろう窓をカラカラと閉めるその行動に何だか拍子抜けてしまう。

少しだけ落ち着きを取り戻した初春は、とりあえず少年の言う通りに靴を脱いで部屋へと入る。

ここで少年に逆らったらどうなるかわからない、という恐怖も確かにあった。
しかしそんなことよりこの少年への興味のほうが大きくなっていくのを初春は感じていた。

何故この部屋にいるのか。

何故あの男にこんなにも似ているのか。

「自分のことを覚えているか」と訪ねたが、どういうことなのか。

初春は抑えられない好奇心によって動かされる自分自身に、死んでも知らないぞ、と人ごとのように心の中で呟いた。

少年の顔と背中の羽根にばかり気を取られていたせいで気づかなかったのだが、よくよくみなくとも、少年の格好はおかしかった。

手にはサラリーマンが使うような無骨な黒いカバン、足は裸足、何故か白衣を身に纏っている。

その白衣も少年には大きすぎるのか袖がグルグルと捲られており、裾は地面についていた。

しっかりとすべて止められたボタンのその上からは何故か素肌が覗いており、思わず凝視してしまう。

(え、え? もしかしてこの子、この下何にも……!?)

「お察しの通り、この下は全裸だ」

初春の思考を読み取ったかのように少年はニヤニヤとしながらそう答える。

何これセクハラじゃないのか。
むしろ少年の肢体を凝視した自分のほうがセクハラなのか。

初春は顔を真っ赤に染めながらあうとわけのわからない言語を吐き出す。

そんな初春を他所に、少年は床に腰を下ろす。
裸白衣で床に直座りとなると、なんだかよからぬものが見えてしまいそうな気もするが、白衣の裾が長すぎたため、その心配は回避される。
まったくもって優秀なやつである。

「まあこのふざけた格好についてはおいおい説明するとして、だ」

少年は初春を見上げてにやりと笑う。

「まずは自己紹介といこうじゃねえか」

なあ、お嬢さん。その喋り方はやっぱり自分を蹂躙した男と同じもので、

「レベル5、序列は第二位」

まさか、と初春は思う。
そんなはずがないと、否定する。

「垣根帝督だ。あん時ぶりだな、肩は平気か? お嬢さん」

死んだはずの人間が目の前にいた。

「それで?お前の名前は?」そのあとに続いた質問に初春は答えることができない。

有り得ないはずの現実が目の前にひろがる。

「ありえない……」

気付けばそう呟いていた。

少年ーー垣根はニッとわらってそのつぶやきに答える。

「おいおい、ここは天下の学園都市だぜ? そりゃまぁ普通に生きてたら拝めるわけもねぇが、人一人作り上げるのなんて造作もねえ。十八万ありゃあできちまう」

「例えば超電磁砲の模造品とかな」クスクス笑いながらそう紡ぐ。
垣根が何を言っているか初春には理解できない。

死んだ、と聞いていた。
そりゃあ生きているという噂だってあったが、噂は噂だ。
その噂ですら人間の尊厳もへったくれもない状態で生かされているといっていたくらいなのに。
目の前の垣根はサイズは違えど五体満足で笑っている。

人工的に人間を作る、なんてことは禁忌ではないのか。
許容してもいいことなのだろうか。

頭の中で情報が行き交う。

初春の中の学園都市がぐにゃぐにゃと歪む。

裏側が表側を侵食する。

「まあ詳しいことは俺にもよくわかんねぇ。俺の体を作り上げた研究者ももう死んでたしな」

混乱する初春をよそに垣根はペラペラと話し続ける。

「で、だ。研究者が俺を復活させたせいかなんかしらんが殺されたみたいでな。こんな中途半端な姿で培養器からでてきちまったっつうわけだ」

「全裸で出てきて着るもんなんにもなかったから、その辺にあった白衣かっぱらってきた」、と笑う垣根の声が初春にはどこか遠くから聞こえてくるような気がする。

正直いっぱいいっぱいだ。
どこから手を付けていいのかもうわからない。

わからない、からもう全部ぶん投げることにした。

初春は何かを諦めたように一つため息をつく。

もう固定観念は捨てよう。
倫理とか道徳にまで気を配っていたら、この非現実とは向き合えない。
きっと、目の前の少年の言うとおり、彼は垣根帝督その人なのだ。

初春は垣根を正面に腰をおろし、その目を見る。

「なんで生きてるかとか、正直よくわからない部分は多いけど、とにかく貴方があの、第二位の、垣根さんだってことはわかりました。でも、あの、なんでわたしの家に居るんですか……?」

なんでか生き返ったことはわかった。
もうそれはどうだっていい。
でもなんでこの人はここにいるんだろう?
初春にはそれがわからない。

「ああ、それな」

垣根は友人に向けるような気安さで初春に向かってこう告げた。

「行くとこねぇんだ。暫く泊めてくれ」

「ふぇぁ!?」

大きな爆弾を投下して垣根帝督(小)と初春飾利の物語は再び交差した。

以上です

また三日いないにこれたらいいなと思います
それでは

   _____
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  ||/ γ´⌒`ヽ.| γ´⌒`ヽ

  ||  {i:i:i:i:i:i:i:i:}.| {i:i:i:i:i:i:i:i:}
  ||. ( ´・ω・)| (・`   ) やあ!
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  ||  し─J  |  し─J
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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  ||/ γ´⌒`ヽ.| γ´⌒`ヽ

  ||  {i:i:i:i:i:i:i:i:}.| {i:i:i:i:i:i:i:i:}
  ||. ( ´・ω・)| (・`   ) その服かっこいいね
  ||. (::::::::::::) | (:::::::::::::)
  ||  し ─J |  し─J

    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   _____
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  ||/ γ´⌒`ヽ.| γ´⌒`ヽ

  ||  {i:i:i:i:i:i:i:i:}.| {i:i:i:i:i:i:i:i:}
  ||. ( ´・ω・)| (・`   ) しまむらで買ったのかい?
  ||. (::::::::::::) | (:::::::::::::)

  ||  し─J  |  し─J
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

しまむらくん、それに>>1乙である

期待してる

定温物質が徐々に増え始めたな
嬉しい事限りないぜ
期待

>>1乙乙
期待してます

>>1です
地の文ってクソ難しいですね。

投下します

暫く泊めてくれ。垣根は確かにそう口にした。

その垣根からの突然の申し出は漸く落ち着きを取り戻した初春の頭を再度混乱の海に叩き落した。


どうして見るからに怪しい人間を泊めなければならないのか。
どうして過去自分を殺そうとした人間を囲わなければいけないのか。

初春は自分がそれを許容できるほどお人好しでも善人でもないことを知っている。
知っているはずなのに、拒絶の言葉は口から出てこない。

どうにか垣根の要求を断ろうとカラカラと空回りする頭を懸命に動かし、初春は言葉を捜す。
ただ迷惑です、と一言言えば少しは現状が変わったのかもしれないが、混乱する初春の頭ではそんな一言さえ発することができない。

(どうしよう、どうしよう、どうしよう)

なんだか目頭が熱くなってきた気もする。
あうあうとよくわからない単語だけが口から漏れる。

情報処理が得意な脳味噌も、こんな非常事態に働かなければ意味がないではないか。

今にも泣き出しそうな初春をよそに、垣根はおもむろに立ち上がると二段ベッドの梯子に手をかける。

「それじゃあ、俺はもう眠いからもう寝さしてもらう。二段ベッドって初めてだからなんかおもしれーなあ。あ、俺壁側に寝るからお前柵側な」

「え、いや、そこで寝るんですか!? ていうか一緒に寝るつもりなんですか!?」

「俺もお前もちっせーから二人で寝てもそんな狭くもなんねーだろ。俺も凹凸のないガキに興味なんかねーし、お前もショタに手ぇだすような変態じゃねんだろ? だったら一緒でも何の問題もない。それじゃおやすみー」

殆ど一方的に言い渡されて、あとは垣根の規則正しい寝息しか聞こえてこなくなった。

泊めるだけならまだしも気付けば一緒に床に就くことまで決定している。
出て行ってもらうタイミングはとっくに逃していた。

(警備員に連絡……、でもなんて事情を説明すればいいのか……)

(変な男の子が家に勝手に入ってきたと思ったら、死んだはずの第二位でした、とか?)

(いやいや、ただの悪戯電話だと思われて終わりってオチが目に見えてます……)

膝を抱え込んで打開策を検索するも答えは出てこない。

(はじめて会ったあの日のほうが、もっとちゃんと応戦できてた気がします……)

あの時は蹂躙される中でも、風紀委員としての矜持や打ち止めを守るために、垣根に対峙できていた。
しかし、今の自分はどうだろう。

勝手に家に押し入られて、よくわからない相手方の事情なんかを説明されて、気付いたらベッドを占拠されていた。

普段の初春であれば、結果は変わらないかもしれないがそれでももう少し毅然とした態度でいられたはずだ。

だが現実は、脳みそが空回り、口は渇き声もでず、結果として垣根を受け入れる形になってしまった。

(死んだはずの垣根さんが生き返って私のとこまでやってきた……)

(なんで私のところなんだろう……、会ったのなんてあの一回だけで、名前も何にも知らないはずなのに……)

(そして、どうしてわたしはそれをうまく拒絶することができなかったんだろう……)

考えても考えても答えは出てこない。

初春は無意識のうちに垣根に対して罪悪感を抱いていた。

自分の近くで死んだ人間。
自分が関わって死んだ人間。

別に初春が原因で垣根は死んだわけではない。
寧ろ初春は被害者であり、初春には何の非もない。

だが、関わってしまった。垣根が死ぬ直前に、一方通行と交戦するその前に、初春は垣根と関わってしまった。

もしかしたらあの時、初春の行動が違っていれば、垣根が死ぬことはなかったのかもしれない。
あの行動がまちがっていたとは思わない。
だがもし違っていたら、別の行動をとっていたら……。

だから自分に非はなくとも、その死について初春は酷く意識してしまう。
感じなくてもいいはずの罪悪感を感じてしまう。

それが結果として、初春に拒絶の言葉を出せなくしていた。

時計を見るともう今日が終わりを迎えようとしていた。
そういえばお風呂もごはんもまだだったな、と初春は思い出す。

だが食欲も沸いてこず、風呂に入る気力さえももう初春には残っていない。

(お風呂もごはんも明日の朝でいいや)

今はもうただ眠りにつきたい。

制服を脱いでパジャマに着替える。
そしていざ寝ようという時に初春は気がついた。
そういえばどこで寝よう。

現在、初春のベッドは垣根が使っている。

彼の言うとおり一緒に寝ればいいのかもしれないが、正直そんな気にはなれない。
二段ベッドだし、下の段に寝ればいいのではないかとも思うが、荷物が散乱しているし、そもそも布団がない。

コチコチと時計の音とスースーという垣根の寝息だけが部屋に響き渡る。
睡眠時間はどんどん削られていく。

床の上に丸まってみた。
硬くていたい。おまけに寒い。

二段ベッドを見やると垣根の横には誰かのためのスペースがきちんと空けてあった。
誰のためのものかなんてことは重々承知である。

寒い、眠い、つらい。
だんだんとこの三文字が初春の頭の中を支配していく。
垣根の横でも別にいいんじゃないかという思考が頭の中に広がる。

(もうどーにでもなーれ)

やけくそになった初春は垣根の横のスペースに自分の体をすべりこませた。

以上です

次くらいにはスレタイ回収出来たらいいなあ

それでは

乙乙

【しまむらくんプラモ】

                   シール
┏━━┳━┳━┳┳━┓┌─────┐
┣γ´⌒゙`ヽ╋(, ´・ω・)┫│    (~)     |
┣━━━━╋┳━━┳┛│ γ´⌒`ヽ ゙|

┣(      )┫ し─ J┫  │  {i:i:i:i:i:i:i:i:} .|
┗━━━━┻━━━┛  │   :::::::::::::   |
                └─────┘

【完成図】

   (~)
 γ´⌒`ヽ
  {i:i:i:i:i:i:i:i:}
 ( ´・ω・)

  (:::::::::::::)
   し─J

>>1乙しかし春上さんは旅行中なの……

なの?

>>51
アニメは未視聴って最初にいっているからね
まあそこは脳内補完でいいじゃないすか

>>51
アニレーはパラレル要素も強いから
まあ絆理ちゃんと暮らす事になったって補完すればいいんじゃない

>>1
小さくなっても相変わらずイイ性格してるな、ていとくんww

物語としまむらのせいできずかなかったよ

>>52-53ありがてぇとk(グシャァ

四円

マダカナー

まだかなまだかなー

ダークマダー

まだー?

>>50
 *横からのアングルに注意*

     l)
     |`ヽ
 γ´⌒{i:i:i:}

 (  ´・ω)

  (   ::::::)
   し─J

久しぶり






                   (~~~)
                 γ´⌒⌒`ヽ  テンションあがってきた
                 {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
                (・ω・`≡´・ω・) =3
        `)⌒`)      (:::::::::::::)
       ≡≡≡;;;⌒`)    ミ≡≡彡
      = ≡ ≡  ;;⌒`)⌒`)
    ┣“┣“┣“┣“┣“┣“

まだかな…

おひさしぶりです>>1です

引越しと新生活とか上司しねとかでなかなか時間がとれませんでしたすんません

ものすごく少ないですが投下します

初春飾利は白いもやの中にいた。
となりには白い鳩。
初春の体右半分に体をぴったりとよせてきており、なんだかあたたかい。

もふもふもふもふ、もふもふもふもふ。

大きくて白い羽に体を預けてその体温を堪能する。


(あったかい、しあわせ……)

(ふかふか、もふもふ…...、きもちー……)

(あれ、そういえば鳩ってこんなに大きい鳥だったけ……)


鳩の体躯の大きさに疑問を持った瞬間、唐突に初春の世界は暗転した。
気付けば、自分の部屋の天井が真上にあり、首をかしげる。
どうやら夢を見ていたらしい。

(あれ、でも右側はまだあったかい……?)

何故だか自分の右側が何妙にあたたかいことに初春は気付いた。
もしかしたら本当に白いもふもふ、もとい鳩がいるのかもしれない。

(それはさすがにないですよねー)

苦笑しながら右側に首を傾ける。


「……ッ!?」


白いももふもふは存在しなかったがその代わりに真っ白な白衣を着込んだ少年が寝ていた。

見知らぬ少年と同衾している事実に呼吸が止まるかというほど驚いたあと、昨晩あったことを初春は思い出す。

この少年は自分を殺そうとした第二位で、何故だか縮んで、自分の部屋に転がり込んできた、ということを。


昨夜は無理やり色々なことに納得して、受け入れてはみた。
だがやはりそう簡単に許容できるようなことではない。

人事であれば「それどこのコナンくんだよ、爆笑」ですんだ事柄だろう。
しかし自分の身近で起こるとなると洒落にならない。

しかも相手は自分を殺しかけた人間である。
爆笑、の一言ではすまされない。


(えーっと、これからどうしよう……)


勢いで垣根と一緒の布団で眠ってしまったものの、問題は何一つ解決していない。

眠気のせいか、はたまた許容量異常のことが起こったせいか鈍く回転する頭で初春は考える。

どうやったら、この男は出て行ってくれるのか。
そもそもなんで初春の家なのか。

(…お風呂に入ってこよう……)

とりあえず、難しいことはあとで考えることにした。

***

(とりあえずもう一度垣根さんと話をしよう)

熱いシャワーを頭から浴びながら初春は考える。

昨日は一方的に話しをされて、初春が物事を尋ねるタイミングなんて殆どなかった。
ついでに言えば度胸と、冷静な思考力もあんまりなかった。

だから今日は毅然とした態度で接しよう。初春は思う。
そうしたうえできちんと「出て行ってください」と頼もう。
初春は決意を胸にする。

“出て行ってもらう”ことを“頼もう”と考えている時点で、自分の立場が物凄く下になっていることに小市民初春は気付かない。

(やるぞ、やろう、やってやるんです、三段活用!)

ふけば飛びそうな小市民的決意を胸に風呂場から勢いよく飛び出し部屋に戻ると、二段ベッドの上の茶色と目が合った。

瞬間硬直。

初春の中のやってやんよ、してやんよ!がしおしおとしぼんでいく。

ベッドの上の主はそんな初春の様子など気にも留めずぼりぼり頭を掻いたり、まだ眠たいのか目をこすってみたりしていた。
少しくらい初春のことも考えてもらいたい。

とりあえずここで硬直していてもしかたない、ひとことビシッと言ってやらねば。
初春はあくびを隠しもしない垣根に向かって口を開く。

「あさごはん、たべますか……?」

「おー」

悲しいくらいに初春は小市民だった。

***

パンとインスタントスープと適当にあった野菜をぶちこんだサラダの簡単な朝食を作り、並べ、垣根と向き合うこと早10分。
朝が弱いのか、初春の目の前に座る少年はもそもそとパンを咀嚼するだけで言葉を発しない。

昨晩はあんなにぺらぺらとひとりで喋っていたのにこの違いは何なのだ、と初春は思う。

しかし、突破口は自分で切り開かなければならない。
待っているだけではだめなのだ。
初春は目の前でスープの熱さに咽る垣根に向かっておそるおそるといったように口を開く。

「あのー、垣根さん……?」

「食事中に話しかけんな、行儀悪ぃ」


一蹴された。瞬殺だった。


というか、お行儀のはなしとか、人の家に勝手に不法侵入した挙句、人のベッドを勝手に使い、あまつさえ食事まで取っている野郎に言われたくない。

しかも全裸白衣という、うれしくないオプションつきだ。


正直、初春は少しイラっときた。
なんかもうイラっときた。

苺ジャムをべったべったと塗りたくった食パンを右手に構える。


おおきく振りかぶって、


そのまま垣根の顔面に投げつけた。



初春が小市民から戦士にジョブチェンジした瞬間だった。

以上です

また休みのうちにがんばりたいです

では

あー、あと春上さんについては名前しか知らないのでサクッと脳内削除してありました
すみません、アニレー見よう見ようと思ってはいるんですが時間が……

皆さんの中で適当に脳内保管お願いします

スレタイで

垣根「服が濡れてメルヘンできない……」

初春「垣根さん!新しい服ですよ!」

シャキーン

垣根「元気100倍!未元物質!」

一方通行「カーキクーケコー」

みたいな内容かと思ったら違った

おつ
>>71
安心しろ俺もだ

ジャムパンを垣根にスパーキング!

ニヤニヤ出来る帝春を頼む

なぜ投げたしwwwwww

>>1です

今日も短いですが投下します


>>71
ご期待に添えなくて申し訳ないです
むしろそんな話読みたい


>>74
多分ニヤニヤできないですすんません
ニヤニヤ分は他の良スレにたくさんあるのでそちらでぜひ!

垣根の顔面にぶちあたったパンがずるりと落下した。
落下したパンはそのまま白衣に張り付き白い布地を赤く汚す。
なんだかちょっとグロい。

一方落下する前にパンのいた場所、つまり垣根の顔面は苺ジャムのせいでべたべただった。
ジャムのカラーリングが白だったらちょっと危ういような惨状が目の前に広がる。
どこぞの座標移動が見たら大変なことになっていたかもしれない。

そんな色が色なら発禁ものの顔をふるふると怒りで震わせ、垣根白衣の上のジャムパンを床に叩き付けた。

「なにっすんだ、クソボケ!見てみろべったべたじゃねえか!行儀以前の問題だろこんなん!」

「ちょ!なにするんですか!床がジャムまみれになるじゃないですか!」

「先に人のことジャムまみれにしたのはてめぇだろうが!」

「だいたい全裸で白衣でいきなりアポなしで女の子の部屋に不法侵入する人に、お行儀の話とかされたくないです! ばーかばーか!」

「ハッ! 昨日も今日も散々人にビビってたやつがたいそうな口聞くじゃねえか」

「うるさいですね、もうなんだかどうだってよくなってきたんですよ! なんで人の家でこんなにふてぶてしいですか、あなた!」

「あー、常識が通用しねえのが俺の売りだからなぁ」

「そんな売り、さっさと売りにだしちゃってください!
ていうか常識が通用しないんじゃなくて常識知らずなだけなんじゃないですか?」

鼻で笑いながら垣根の発言を一蹴する。
そこにはいままでおどおどと垣根の出方を伺っていた少女の姿はどこにもなかった。

「いってくれんじゃねえか小娘……。じゃあなにか? 人様のことボロクソに言って、
ジャムパン投げつけてくるようなテメェには有り余るほどの常識っつうもんがあるってえのか?」

「少なくともあなたよりは」

「上等だクソ女、表でろ」


ぎゃんぎゃんと吼え合い、睨み合う二人の間にもう遠慮などはない。
まあ遠慮していたのは初春だけなのだが。

今のところ垣根が能力を使う気配はない。
侮られているのか、気を使われているのか。おそらく前者か。
とりあえずは、丸腰の格下相手のくだらない喧嘩に能力を使用するつもりはないらしい。

しかし能力を使用されたら最後で最期。

漸く戦士として立ち上がることのできた初春のちっぽけな命なんてあっけなく散ってしまうだろう。
それくらいの実力差があった。
そんなこと、序列を聞いただけでも明らかであるし、一度殺されかけた前例もある。

しかしここで引くわけにはいかない。
引く気も無い。

恐れとか不安とか、罪悪感だとか。
今の今まで初春にいいたいことを言わせてくれなかった気持ちを振り払って垣根を睨みつける。
今の初春のステータスを見ることが出きれば、勇気の部分は漢と表示されていることだろう。
P3Pなら天田君が攻略可能なレベルだ。

「っていうかほとんど面識のない、あまつさえ殺しかけた人間の家に転がり込んでくるってどういう了見ですか!
もっとそういう筋のお友達のところとか行ってくださいよ!」

「うるっせえな!俺の知ってる人間なんて暗部のやつらしかいねえんだからしょうがねえだろ!
そんなやつら頼ったら、結局また研究所に逆戻りで人体実験のオンパレードじゃねえか!」


人体実験と言う単語に初春の息がつまる。
初春の知らない世界、裏の世界。

思い返せば昨日この男は自分は何某かの目的で学園都市にもう一度体を与えられたと、作り出されたと言っていたではないか。

そんな存在の人間が、裏の人脈を頼ったとなれば、結局また暗闇の中で利用されるだけになることなど、わかりきっていることだった。

そもそも垣根は序列第二位なのだ。
利用価値など、いくらでもある。


出て行ってください。
その一言を口にしたいのにできない。
初春は垣根に向かって口を開き、結局何も言うことができず、俯いた。

言えなかった。
自分は関係ないはずなのにどうしてもその一言が言えなかった。

かわりにずっと疑問に思っていた「どうして私のところなんですか」と言う言葉がぼそぼそとした声で紡がれる。


唐突にしおらしくなった初春に対しどうしたらいいかわからず、小さく舌打ちをして垣根はポツポツと語り始めた。

「暗部の人間に頼って、また学園都市に利用されるのなんてこりごりだった。
だが俺には表の世界に知ってる顔なんていねえし、頼れるやつだってしらねえ。
白衣さみいし、いくとこねえしで途方にくれてる時、お前のこと見つけた。
殆ど面識もなさそうな最終信号のことを命がけで守ろうとするようなお人よしだったらつけ込めるじゃねえかと思って、お前んちに侵入した」

実際半分くらいうまくいったしな、そう言って小さく笑う。


「で、お前はどうすんの?俺のこと追い出すか?」

試すように、茶化すように垣根は初春に向かって問いかける。
初春は答えられない。

行き場のない視線を宙に投げ、出してどうしたらいいのか、と答えを探す。
もちろんその辺に答えが書いてあるわけがない。

ふらふらとさまよう初春の視界の端に部屋にかけている時計が映った。
短針が9を指していた。

本日は平日で、学校は8時半からで、今は9時を少し過ぎたところで。

「あーーーーーッッッ!!!!」


学校の存在などすっかり忘れていた。
初春は絶叫したあと、鞄に適当に筆記用具などを詰め込み、垣根の存在など忘れたように服を脱ぎ散らかし、制服に着替える。

着替える途中に水色に花を散らした清純系なパンツやらブラやらが惜しげもなくさらされたがそんなことを気にしている余裕もなかった。

垣根は垣根でそんな光景を見ても動じることなく、寧ろ初春の憐れな体つきに同情した。
アンダーとトップが殆ど一緒じゃないか。かわいそうに。

バタバタと玄関まで行き、靴を履く。

それから一度垣根の方を振り向き、

「さっきの件は保留で!」

そう叫んで初春はあわただしく家を出て行った。

保留ということは、つまり、とりあえずはここにいてもいいということだろうか。
やっぱり自分が思ったとおり、あれは酷いお人よしだ、と垣根は思う。
きっと初春はこのままずるずると垣根の存在を受け入れていく羽目になるのだろう。


(そういえば結局、あいつの名前聞いてねえなあ)


あれが帰ってきたら、もう一度名前を尋ねてみよう。
そう思い、垣根はジャムでずるずるの顔やらを洗うために勝手に風呂場を拝借した。

以上です

いつになったらスレタイ回収できるんだろう…

>>82
気長に>>1のペースで回収していってくれよ

応援してる

初春は寛容さと勇気が上がった!
寛容さオカン級まではまだまだか
ついでに垣根コミュもまだ始まっていないようだ…乙

十分ニヤニヤ出来たんだけど

2828がとまらない!
乙ー

                     /V\(_oく¨´(`Y⌒Y´L__
                  r'Y⌒)L__人| (__,゚ヽ__)V´Y7
               ∠ (_,ィ_jー<_ノ匕レⅣV※(´ oくミ、
                厶ィ ..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..`¨マ__,く
              ,′ ..::::::::i::::|:::::|:::::!:::::::::i:::::';::::::::..廴j
               | ..::::::::|::::|::::|:;:::|::: |:::}:::::| ::::|:::::::i:|::::|
               | .:::i:::::|:ーヒ刋::L:::ト廴::L::::|:::::::i:|::::|
             V:::|::::jィrz=r、`   ァr=zrミ`|::::::从:::{
              ム从::{` Vソ      Vソ〃j:::::::;':个 、
                 厶ィヾ,,,¨´   '     ¨´,,,厶ィく::从
                  从{     , 、      __ツ::「 `
     r、 ,、            ‘ ,   {__)     小::!'⌒` いやいや、なめてもらっちゃあ困りますね
__r //r'‐っ        ___个. 、     ,. イ::ハ:::| 
 ̄⊂ニ{丶 {└‐、    , {,////ト从i }¨ ´ ト 乂__ヾ_    私だってレベル1の超能力者!結構自信あるんですよ
     \   ‘,  / V//////i′   「///////ヽ
      `ヽ  | /   V/////|ー、__//////// }  え?能力?すごいですよ~強いですよ~!
        │  |/   丶 Ⅳ////l三////////  |

                /V\(_oく¨´(`Y⌒Y´L__
               r'Y⌒)L_人| (__,゚ヽ__)V´Y7
                  ∠ (_,ィ_j <_ノ匕レⅣV※(´ oくミ、
             厶ィ..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...`¨マ__,く

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            〃|::i:|::::| -‐    ‐- `ヾ:|::::::从:::{

               /' ム从:::{,r==ミ     r==ミ、 j:::::::;':个 、
           rイ′ 厶ィヾ,,,    ,      ,,,厶ィく::从
            / }     从{    _      __ツ::「 `
          /‐く}      ‘ ,   {   )    小::!'⌒` ま、保温なんですけどね
        / 二_‘     ___个..、 ー '  . イ::ハ:::| 
.        ′  ィ_}   , {////ト从i }¨ ´ ト 乂__ヾ_
       |    }   / V///// i′   「///////ヽ
       |  _/  /   V//// |ー、__//////// }
       │  i  /   丶 Ⅳ///,l三////////  |

>>87
なにこれかわいい

>>1です

また少しですが投下します

***

初春が学校に到着したころには一限目の終わりのチャイムが高らかに鳴り響いていた。

昇降口から教室に向かわずそ職員室へと走り、自分の机で優雅に茶をすすっている担任教諭へと頭を下げる。
日ごろの行いのせいか、はたまた風紀委員という立場のお陰か、教員うけのあまり悪い方ではない初春は、一言二言、注意をされたのみで、あっさり教室へと帰された。



「めずらしーねー、初春が遅刻なんてさー」

教室へ入り、自分の席について一息つくと、黒く、長い髪が特徴的なクラスメイトから話しかけられた。

「佐天さん……、おはようございます……」

クラスメイト--佐天涙子は、「髪の毛ぼさぼさー」と言いながら初春の髪の毛を手櫛で整える。
そのやさしい手つきに目を細めながら、初春は「色々あったんですよ」と適当に遅刻の理由を答える。

「いろいろ?」

佐天は女の子らしく小首をかしげてその色々について尋ねる。

一瞬、すべて佐天には話してしまおうか、という考えが初春の頭の中に浮かんだ。
この優しい友人に話したら、初春のことを心配して力になってくれるかもしれない。

しかし、なんとなく裏の香りのするこのことに、佐天を巻き込みたくなかった。
それにあまりこのことを人に話せば、垣根の立場が危うくなるかもしれない、ということも心の隅のほうに引っかかっていた。

少し考えた末、適当にぼかしつつ、比喩も織り交ぜて佐天にその色々について話すことにし、口を開く。

「えーと、鳩が……」

「は?鳩?」

「はい。真っ白な小鳩が部屋に入ってきちゃって、出てってくれなくて」

「ふーん。そりゃー災難だったねー」

ほんとは小鳩なんかじゃないんですけどね、初春は口の中だけで呟く。

佐天は佐天で、真っ白い鳩とか珍しいーなー、もしかして高く売れたり…?とぶつぶつ言っている。
とりあえずその呟きは聞かなかったことにする。

そうしてなにやら不穏な独り言を繰り返していた佐天は、唐突に初春にむかってにっと笑い、自信満々といった風に告げる。

「でもさ、きっと初春はその鳩追い出せなくて、結局ずるずる飼っちゃうことになると思うなー、あたし」

「な、なんでですか!」

友人の予言に初春は声を荒げる。
自分でもなんだかそうなりそうな予感がひしひしとしているのに、人にまでそんなことを言われたらなんかもうそうとしかならないような気がする。
冗談じゃない。

「だって、初春だもん。きっとそうだよ」

大好きな友の笑顔が今は悪魔の微笑みに見えた。

***

「まあ初春のことですから、きっとその鳩はずるずる追い出せないままになるとおもいますの」

放課後、風紀委員の詰め所にて佐天にしたものと同じ話をツインテールの同僚にしたときも、同じような反応が返ってきた。

「白井さんまで何でそういうこと言うんですかー」

「だって初春ですもの」

一蹴された。本当に哀しくなるほど同じ反応である。

なんだか垣根と暮らすことが、どんどん外堀から埋められ決定していっている気がしてならない。
そりゃあ、人体実験だのなんだのの話を聞いて追い出すことをためらわれたのも事実だ。

利用されて搾取されて使い潰されて。

そんなことを聞いたら追い出す気も萎えるってもんだろう。

しかしだからといって自分を殺しかけた相手にそこまでやさしくしてやる義理はない。
義理はないはずなのになんだか色々もやもやする。

結局なんだかんだでまあしょうがないかーくらいに思い始めている自分がいることに気付いて、初春なんともいえない気持ちになった。
なんだか受け入れ態勢に入っている気がする。

(あ、そういえば垣根さんの白衣苺ジャムまみれにしちゃったし、服買って帰らなきゃですかねー)

なんていうかもういろいろ駄目駄目だった。

「だいたい初春は押しが強いんだか弱いんだかよくわからないところはありますけど、まあ基本はお人よしですし、
今もそういえば鳩のえさってどこに売ってるんだろー、とか考えてるんじゃありません?」

「そ、そんなことないですよ!」

(まあ、男の子用の服ってどこに売ってるんだろうくらいは考えてましたけど!)

ぐぬぬぬぬと低く唸る初春を他所に、白井はひらひらと手を振りながら、

「今日は比較的何も起こっていないようですし、事務処理もあらかた終わってますから初春はもう帰ってもいいですわよ。鳩のえさを買いに」

半ば馬鹿にした様に告げた。

以上です

あと少しでスレタイに行ける気がする……!

>>1乙!ってミサカはミサカは言ってみたり!

ついにしま○らに王手かかったで!

全裸白衣よりしまむらのがマシだろう
てか初春が男の下着買うのか…
興奮する

乙!
初春の扱い……ナデナデ

第二のショタコン誕生か・・・
胸が熱くなるな

舞ってるぜ

まだかなまだかなー

>>96
ですよねー

>>1です
いつにもまして相当短いんですが切りがいいんで投下します
いつも少しづつですみません

>>96
ですよねー

>>1です
いつにもまして相当短いんですが切りがいいんで投下します
いつも少しづつですみません

***

「ただいまかえりましたよーっと」

ここ最近自分一人での暮らしだったため馴染みの薄い言葉を言いながら初春は自宅のドアをくぐる。
返事はない。

もともとこんな挨拶に答えてくれるような人間には思えなかったし、
返事がないことに違和感を覚えるほどでもないが、
自分の他に人間がいるのに返事がないことはどことなく寂しい気がする。

あとそういえば昼食の用意とかそういうのを失念していたような気がする。

見た目10歳児だが中身は大人。
それぐらい自分でなんとかしているだろうが、
見た目のせいかなんだか心配になる。

よもや血糖値下がりすぎて倒れていないだろうな。


「垣根さーん? 生きてますかー?」


声をかけ、靴を脱ぎ、部屋のなかへと目を向ける。



そこには、



初春の体育着を上下着込み、
テレビに向かい必死になってコントローラーを操作しいる垣根が、
食パンをくわえていた。

おお、帰ったか。体育着借りてる。あとプレステも借りた。
ところでペイルライダーってどうつくんの?」

「えーっと、まず依頼こなさないとっ……、て、そうじゃなくって!
垣根さんその服の! 下! ええっと、あのパンツとかは……!」

「いやもともと白衣しかきてねーんだから、お前のパンツ借りねえかぎりはいて
ねえよ。
あ、流石にパンツは借りてねえから安心しろ」

「あああああ安心って!できるわけないじゃないですか!
勝手に人のタンス漁った挙句ノーパンで人の服着ないでくださいよ!」

「お前が投げたパンのせいで一張羅台無しにされたんだからそれぐらい大目にみ
ろよ!」


それを言われたら初春はもう押し黙るしかない。
あの体育着はもうなんだか着る気になれないなあ、となんだかくやしい思いをしながら右手に持っていた紙袋の持ち手を強く握る。

(あれ、紙……袋……?)

いまのいままで存在をすっかり忘れていた紙袋の存在を思い出し、初春はあー!と大きな声をあげた。

「垣根さん服! 服脱いでください!」

「お前いきなり大胆だな……。さっきまでパンツがどうだって騒いでたくせに……」

「違いますよ! ばか! 服ですよ、服!」

初春は某ファッションセンターの名前がでかでかとかかれた紙袋を垣根の目の前に掲げると、心底うれしそうな顔をする。
垣根の視線は紙袋に書いてある店名に注がれ、初春とは正反対に位置するであろう表情を作る。



「垣根さん!新しい服ですよ!」

「しま○むらはやめろよ!」



垣根の絶叫が二人の部屋に響いて消えた。

以上です

やっとこスレタイ回収ー

また明日あたりこれたらきます

ああ、あと>>104のはじめの鍵かっこが外れてるので、脳内補足おねがいします

超楽しいです!
期待してます!

追い付いた
また一つ目が離せないスレを見つけてしまった……
是非とも完走してほしい

>>1
ていとくん!名前隠れてないから!

乙なのよな

体育着を上“下”着込み……
下はブルマなんだな!?そうなんだな!?ていとくん!……すみません、乙なのです

>>110
やっちまったー
脳内でむの字を消しておいてください

>>112
君とはいい酒が飲めそうな気がする

というわけで、>>1です
今日も張り切って投下します

えんじ色のパーカーにベージュのハーフパンツ。
くるぶしまでの靴下に、ハイカットのスニーカー。

無難といえば無難。
地味だといえばそれまでの初春チョイスの服が垣根の目の前に鎮座する。
この際初春のセンスだとか、垣根の趣味だとかそんなものはどうでもいい。
垣根にとって重要なのはそんなものではない。


「下着がもっさりブリーフってどういうことだよ。それだけが納得いかねえ」

「だって子供用パンツってだいたいこんなもんでしょう。
おとなしく着替えてください」

「なんでこの年になってもっさり白ブリーフとか履かなきゃなんねんだよ。
断固拒否したい」

「大丈夫です、今の垣根さんは10歳児です。
同じような境遇のコナンくんだってきっとブリーフはいてますよ」

「コナンくんは関係ないだろ。だいたいあいつ小学1年生じゃん。6歳じゃん。
6歳と10歳の差はかなり大きいぜ」

「人に服買ってもらっておいて文句言わないでくださいよ!
こっちはレベル1で奨学金的にもあんまり裕福じゃないんですから!」


垣根の勝手な言い分に怒りながら、初春は買ってきたブリーフを垣根の顔面にグリグリと押し付けたる。

「ブリーフを顔に押し付けるのはやめろ! ていうかノーパン体育着には恥じらい見せたくせに、
ブリーフは普通につかんで顔面に押し付けてくるってお前の恥じらいポイントはどこだよ!
判断つきづれぇよ!」

「だってこのブリーフは未使用じゃないですか。だったらまあズボンと似たようなものじゃないですか」

「えー、女子ってそういうもんなの? わけわかんねえ」

「御託はいいので、折角買ってきたんだし、ほら、早くこれ着てみてくださいよ。多分それなりに似合うと思いますよ」

「これが似あわねえやつとか児童だとあんまいねえ気がするんだが……。つうかいい加減顔にブリーフ押し当てんのやめろ」


何かをあきらめたように、垣根は顔に押し当てられたブリーフを受け取り、床に広げてあったしま○らブランドの服を拾うと、それを持って脱衣所へと向かいかけ、


「あ、そうだ、俺が持ってきた黒い鞄あったろ?あれン中に金入ってるから。今日の服の分、適当にぬいとけ」


くるりと振り返り、そう言って脱衣所の扉を閉めた。


(黒い、鞄……?)

そういえばそんなものを持っていたような気がする。
初春は部屋の中をきょろきょろと見回すと、目的のものをベランダに面する窓の横側に、目的のものが転がっているのを発見した。

(お金って、全裸で白衣だったくせにどこからそんなものもってきたんでしょう……?)

半分以上死んでいた人間の口座は生きているものなのだろうか?
まさか道端で人を襲って……?

初春の頭の中に色んな考えが浮かんで消える。
本当にこの鞄を開けてもいいものだろうか。
なんだか不安になってくる。

なんだかすこしドキドキしながらその黒い鞄のジッパーをあけ、中をのぞく。



そこには、


大量の福沢諭吉鎮座しており、


初春の心臓は止まった気がした。


「くぁwせdrftgyふじこlp……!!!!!????」


驚いてとりあえず鞄の蓋を閉める。
あんな数の諭吉と、初春は出会ったことがない。

事件の香りが、なんだか事件の香りがしますよ、と混乱する頭でわちゃわちゃ考えていると、

「着替え終わったんだけどー」

垣根の能天気な声が響いてきた。


「いやー、やっぱ俺元がいいからなんでも似合うわ。自分で自分が怖え」

「ちょ、え、あれ、お金、何なんですか!?どうしたんですかあんなにたくさん!?犯罪ですか!?犯罪は駄目なんですよ!?悪いことなんですよ!?」

「お前なんだいきなりテンション上げて。思春期か?」

「だから!お金!なんだかいっぱい!」

「あー、あれな。俺の近くで死んでた研究員がもってたからかっぱらってきた。
俺のこと好き勝手いじくりまわしてくれたんだからこれくらいいいだろ。もう死んじまってるし」

そういう問題ではない気がする、と初春は思う。
だが裏の世界のことになると、初春はもう何もいえない。
そういうものとして受け入れなければ、自分の身がもたない気がする。



垣根に対しての恐怖心が、もう初春の中に残っていないというわけではない。
はじめよりは薄まったものの、まだやっぱり存在はしている。

“受け入れてやる義理もない”と思っている自分も、“もう諦めて一緒に住めばいいじゃないか”と思っている自分も心の中に存在する。

着る服も買ったし、金も大量にあるようだし、ここで追い出してもこのしたたかな少年ならどうとでも生きていけるような気がする。

それでも、それでも結局のところ、垣根がにらんだとおり、佐天が指摘したとおり、白井が鼻で笑ったとおり、初春はお人よしの初春だった。


はあ、と溜息をひとつ吐いて垣根の目を見る。

「なんだかうやむやなまま、一緒に住むことが決定しちゃいそうなので、もうそれはよしとします。
ただ、ここに住むならひとつだけ、約束してください。」


一呼吸置いて、垣根の方に手を差し出す。


「人を殺したり、そういう悪いこと、絶対にしないでください」


それが守れるならここにいてもいいです。そう言って初春は垣根の返事を持つ。

垣根は自分の頬を少し掻いたあと、


「明日ID偽造してこようと思ってんだけど、それも悪いことに入るのか?」


と尋ねて、初春の手をとった。

以上です

ていとくンが初春さんの名前を聞くタイミングを逃し続けてるんですがどうしたらいいんだろう…

ちょっwwwwwwwwww
ブリーフを顔に押し付けられるていとくん……ゴクリ
初春、GJ



ブルマからブリーフか…
流石は常識が通用しない男だな

あわきんが見たら発狂するぞ…
ふぅ…

最近定温物質のSSが増えてきてホクホクですわ

ブリーフよりトランクス派の>>1です

捏造寮監とか微妙にでてくるので注意
アニレーで寮監出てたらすみません

投下します



偽造されたIDカードを見ながら、こういうとき暗部にいたことがあってよかったな、と垣根は思う。

普通に生きていれば出会うことのない裏の裏。
IDの偽造を承ってくれるアテなど、普通に生きている10歳のガキだったらなかっただろう。

だが、暗部にいなければそもそもこんなことにはならなかったんじゃないだろうか。
ぱっと浮かんだもっともな考えに気付かない振りをする。

いやいやきっと自分は第二位だから暗部にいなくたってこんなことがあったかも知れないじゃないか。
うんうんと誰にするわけでもない言い訳を考え、垣根は一人うなずく。

なんだか恥ずかしくなって、床に転がるソレを道端に転がる石と同じ要領で蹴りつけた。
途端苦しそうなうめき声がソレからあがる。

物を見つめるような瞳でソレを見やりながら、花頭をの言葉を思い出す。



初春と一緒に住む条件として、殺しはしない、と垣根は約束をした。


だから殺すことはしなかった。


ただ、もう一生口はきけないだろうし、満足に思考することもできないだろう。
この辺に転がしておけば、もしかしたらそのまま息絶えるかも知れない。
が、それはコレの運が足らなかったからだけで、自分の管轄外だ。

大体、こんなところで、こんなことを生業にしているやつなんて自分と同じクソ野郎でしかない。
そんな野グソをどうにかしたところでワルイコトにはならないだろう。


「あー、クソ。クソの血で靴が汚れた」


もう一度ソレ――ID偽造を頼んだ男を蹴りつけて、垣根は薄暗い路地へと繋がる扉を開ける。

「じゃーな、おっさん。気が向いたら救急車でも呼んでやるよ」

あ、でも俺今携帯もってなかったわ。垣根の呟きは血だらけの男には届かなかい。



男と、ばら撒かれた一万円札だけがぐちゃぐちゃに壊された室内に残った。

***

「今日は1日何をしてたんですか、垣根さん?」

お茶碗にご飯をよそいながら初春は垣根に尋ねる。
ちなみにこの茶碗は今日学校帰りの初春が垣根のために100円ショップから購入してきたものだ。

そんなウサギさんとくまさんが楽しそうにダンシングしている中国産の茶碗を受け取りながら垣根は問いに答える。

「ID偽造してたー。ちょっと時間かかったわー」

耳鼻科の待合室超混んでたー、みたいなノリで返ってきたが、あきらかに普通じゃ聞けないような答えに、初春は持っていたしゃもじを床にべしゃっ落とす。


そういえば昨日、そんなことをいっていたような気がするが、まさか本当だったなんて。
ただの照れ隠しじゃなかったなんて。

頭の花をフルフルと揺らしながら初春はもう一度垣根に尋ねる。


「えっと、もう一度聞きたいんですけど、今日何をしてたんですか……?」

「だからID偽造してたんだよ、あいでぃー。この街でこれないとやりにくくって仕方ないだろ」

そう言って偽造したらしいIDカードを初春のもとに放ってよこす。
どこからどうみても立派なIDカードだった。
ご丁寧にどこだかよくわからない学校名まで入っている。




いつ撮ったのか顔写真もしっかりと入り、名前もしっかり記入済みだった。

ただ、そこには偽名を使ったのか、垣根、という字は見られない。
代わりに苗字の部分にはなんだか初春のよく知った二文字が並んでいる。

見間違えかも知れない。
目をこすって上を向いて瞬きを数回してからまたカードに目を移す。

だが見間違いなどではない。

そこにはただはっきりと


“ 初 春  帝 督 ”


の四文字がきれいに並んでいた。


とりあえずそのカードはめんこよろしく床に叩きつけておいた。



「おい!なにすんだテメェ!高かったんだぞソレ」

「あなたの苗字って知ってますか!? 垣根ですよ、か・き・ね! なんでそこに初春姓がしっかりがっつり刻まれてるんですか!」

「ああ、偽名だよ偽名。一応な。俺有名人だし。それと俺、お前の弟っていうことになってるからよろしくお姉ちゃん」


にっこり笑ってとんでもないことを口にする。
垣根の発言に初春の頭がついていかない。


「なってるって……!どういうことですか、っていうかどこでそんなことになってるんですか!」

「ここの寮監。ホームシックで寂しくて仕方ないから姉ちゃんのところで一緒に暫く暮らさせてくれって涙、上目遣いコンボで頼んだらあっさりOKでてよ。さすが俺。つーかここのセキュリティ色々まずいんじゃね?」

「勝手に何やってるんですか!」

「だっていつまでも窓から出入りしてるわけにもいかないだろ。俺そんなん嫌だし」

どこまでも勝手な垣根の言い草に初春は唖然とする。
人の家に居候させてもらって、この態度はどういうことなのだろう。
神経がいかれてるのではないだろうか。

さらに爆弾は投下される。


「あとちょっと捏造が酷すぎて初春家、羅刹の家みたくなっちまった。ごめんな」


華奢な少女の手でちゃぶ台がひっくり返された。

初春の部屋のカーペットはこの前から食い物まみれになりすぎていてそろそろ買い替え時かもしれない。

おっしゃ、りあるたいむきた

***

朝、初春は寮監に、辛いだろうけどがんばって生きてね、と言って学校に送り出された。

どうやら自分は初春家の時期党首候補で垣根は初春父の後妻がこさえた腹違いの弟ということになっているらしい。
ちなみに虐待同然の行為を強いられながら育った垣根をいつもかばい、
守り続けていた初春は意地の悪い親戚の陰謀で学園都市にとばされ、
党首争いからも無理やりはずされ、毎月金だけ渡されほぼ絶縁状態。
自分をかばってくれた姉のいなくなった垣根は虐待に耐えながらも何とか毎日暮らしていたとかなんとか。
それからまた松本清張もびっくりなどろどろとしたなんやかんやがあって、見事垣根は学園都市にくることができ、愛する姉の下を尋ねてきたのだという。


ホームシックとか関係ないやん、と初春は思う。
寂しいとかそう言うレベル超えてますやん。初春は心の中で突っ込む。


色々話がおかしいことに何故寮監は気づかなかったのだろう。
学校にある個人調査票にも初春の家がそんなたいそうなものでもないことが書いてあるはずである。


寮監のねじがゆるいのか、はたまた垣根の話術がすごいのか。


まあ垣根の外見は黙っていれば美少年だ。
本気を出して猫を被れば天使にみえなくもない。羽も生えるし。


(きっと見た目にだまされたんだろうなあ)


これを期に寮監がショタに目覚めていなければいいなと初春は思う。



(垣根さ……、ちがった。ていとく君は家でいい子にしててくれるんでしょうか……。
ていとく君、ていとく君……。うー、やっぱりいいづらいです……)


昨日、二人でひっくり返したちゃぶ台を片付けているとき、姉と弟設定なのだから下の名前で呼ぶべきだろうと、垣根は言った。
外に出たときにそんなことでボロがでたら困るから、と。


友人の名前すら苗字にさん付けの初春にとってそのハードルはとんでもなく高い。
しかも相手は男。
ハードルはさらに上がる。


「無理ですよ男の人呼び捨てとかしたことないですし!恥ずかしいです!」

「姉弟で苗字呼びとかどんな複雑なご家庭だよ!いや、まあ設定上多少複雑になってはいるが」

「じゃあ垣根さんも私のことお姉ちゃんって呼んでくれるんですか!上目遣いで頬染めて!」

「いや、そんな恥ずかしいことできねーよ!そして上目遣いオプションいらなくねえ!?」


結局激論の末、初春は名前に君付けで呼ぶことを了承し、垣根は通常名前呼び、寮監の前でのみお姉ちゃん(オプションで上目遣いつき)ということで片が付いた。



垣根が初春の元にきてかれこれ四日。
たったこれだけしかたっていないのに随分疲れたように感じる。


気付いたら見知らぬ男と同棲していて、毎日同じ布団で寝ている。
そして昨日からその人が弟になって下の名前で呼び出す寝密度っぷり。

性別が反転したらそれなんてエロゲー状態である。
リアルなのでクソゲー以外のなにものでもないが。


(どうなっちゃうんでしょう、私のこれから……)


遠い目をして空を見上げる。
見上げた空はアホみたいに青かった。




以上です

ていとくンが初春さんの名前を聞くイベントを入れるところが結局見つからな方のでスルーしました

乙乙
ここの垣根猫被るのが上手いなwwwwww



初春の方は垣根のことなんて呼ぶようになるの?
てい君?

淡希さんいつから寮監に転職したんだろね

とにかく乙ー

おっつー
初春帝督ってていとくん婿入りかよwwと思ったら弟か


あわきんがアップを始めたようです

初春ご愁傷様乙
ていとくん、なんか小さくなって逆にいろんな意味でパワーアップしてるなww

>>137
そこはやっぱり、ていとくん(ていと君)なのでは
というかそんなに有名なら下の名前も変えた方が…

>>137>>140
一応初春はていとく君、ていとくンはかざりと呼ぶ設定になってます
イメージと違っていたらすまない
ひらがな呼びなのは可愛さを表すためであって変換がめんどいからじゃないよ!

というわけで>>1です
平日にお休みってたまらんですね投下します


帰宅した初春に開口一番、買い物に行きたい、と垣根は言った。
自分の衣服は、この前初春が買ってきたしまむら一式と、
三枚千円のもっさりブリーフしかないから、と。


「いってらっしゃい」

「いやいや、一緒に来てくれよ。なに普通に送り出そうとしてんだよ」

「大人なんだから一人でも行けるでしょう。
ていうか今日昼間暇だったんなら行ってきたらよかったじゃないですか」

「いや、雪子と千枝とりせちーを三股するのに忙しかったし。別に暇じゃねえし」

「めっちゃ暇そうじゃないですか」


しかし、ちょうど明日は土曜で学校も、ついでに言えば風紀委員も休みである。
初春に断る理由は特にない。


「しかたないですね。それじゃあ明日セブンスミストにでも行ってみましょうか。
ていうかなんで一緒に?」

「だって俺この辺詳しくねえし、子供服とかどうしたらいいかわかんねえし」


つーか、この年で子供服買うのとか恥ずかしいし、と垣根は付け加える。

恥ずかしいも何もそれをお前が着るんだよと初春は思わなくもなかったが、
とりあえず口に出すのはやめにして、わかりましたとだけ返事をしておいた。

***


「ちょっとまて、靴紐がうまく結べねえ」


土曜日、玄関先でもたもたと靴紐を結んでいる垣根をみて、
この人は本当に第二位だったんだろうか、と初春は溜息を吐く。

実際強いんだろうし、羽も生えるし、すごいんだろう。
しかし数日一緒に暮らしてきて、
あの自分を殺そうとしていた時と今とではなんだかギャップがありすぎるせいか、
そんな風に思えなくなってくる。


(まあ下手に怖いよりもこっちの方がいいですよね)


垣根の前に膝をついて靴紐を結んでやる。


「今日日、6歳児だって自分の靴紐くらい結べますよ。
なんでその三倍近く生きてたていとく君がそれできないんですか」

「今日はたまたま調子が悪かっただけで、
いつもは三回に一回くらいの頻度で縦結びじゃなくなんだよ」

「はいはい、今度結び方ちゃんと教えますから、できるようになってくださいね」

「なんだか軽くばかにされてる気がするんだが。おらかざり、さっさと行くぞ」


待たせてたの自分じゃないですか、
という初春の呟きを軽く無視して垣根はドアを開け外に出る。

そんな姿はやっぱりただの10歳児にしか見えなかった。

***

垣根のための服を何着かと、初春の服を一着。
それとメッセンジャーバッグをひとつ買って、
買い物が終了する頃には昼を完全にすぎ、時計の短針は3を指し示していた。


「女の買い物は、長いって言うけど長すぎだろこれは」

「だってお金あんまりないですし、いろいろ見て悩みたいじゃないですか」

「しかも買ったの結局一着じゃねえか。
俺の買い物よりお前の買い物の時間の方がはるかに長かったぞ」

「それは、まあ、えっとすみません……」


垣根の腹からは先ほどからグーだとかキュゥだとかあきらかにはらぺこな音が鳴り響いている。
その音を聞いていると、初春はなんだか申し訳ない気持ちになる。


「だったら自分の買い物はもう終わってるんだし、
先に帰るなり、その辺でご飯食べるなりしてくればよかったじゃないですか」

「あほか。買い物中女ほっぽって一人だけ飯食ってるとか男じゃねえだろ」


変なところで紳士だった。
初春はますます申し訳ない気持ちになる。


「これでもういいならさっさと飯食いに行こうぜ。さすがに限界なんだが」

「そうですね、確か上のほうにレストラン街があったと思うのでそこで……」


そこまで言いかけて初春はあっ、と短く声をあげる。


「すいません、ていとく君。
私まだ買う物があったので、先に上に行っててくれませんか?
確か上にクレープ屋さんがあったと思うので、
そこでクレープでも食べて待っててください」


そう言って垣根の手に千円札を握らせる。


「いや、だから女ほたらかしでなんか食ってるわけにもいかねえだろ。
付き合うからっささとすませろ」

「いやこればっかりはそう言うわけにも行かないんで、
先に上行っててください。お願いします」


垣根は少し首をかしげたあと、ああ、と何か納得したような顔をしてにやりと笑う。


「下着、買いに行くならまかせておけ?
少しでも色気出るようにアドバイスしてやるよ」

「いらないですよばか! いいからさっさと行ってください!
すぐ行きますから!」

「へーへー。わかりましたよー」


千円札をぴらぴらと振りエスカレータなのにもかかわらず軽やかに駆け上っていく垣根を見送って、
初春は下着屋へと足を向けた。

***

目的の階まで到着すると、確かに初春の言うとおり、クレープ屋は存在していた。
おやつ時であるためかそれなりに賑わっており、中は女子で溢れかえっている。


(あの中、特攻すんのはなんだか勇気がいるな……)


別に垣根にとって女子は苦手なものではない。
むしろ大好物である。

しかしこう群れになられると若干気後れもする。
しかも今の自分の形は小学生なのだ。
前の姿なら適当に微笑んでおけばそれなりにおいしい思いもできたのだが、
今の自分ではどうなのか。

鳴る腹をそのままに、特攻しようか初春を待とうか考えていると後ろから肩を叩かれた。


「ぼくどうしたの?クレープ食べたいの?」


振り向くと、髪を二つに結んで、
ピンクさらしにブレザーを羽織った奇抜なファッションのおねーさんが、
自分と目線を合わせるようにすこし腰を曲げて微笑んでいた。
なんだかどこかで見覚えがある気もする。
反応のない垣根に女は再度語りかける。


「どうしたの?もしかして迷子?誰かとはぐれちゃった?」


猫なで声ってこういう声のことを言うんだろうか。
不自然なくらい甘い声に、
なぜか背筋がぞっとするのを感じながら垣根は女に向かって口を開く。


「ツレの買い物が長いから先にここ来てクレープでも食ってろっつわれたんだけど、
クレープ屋の中入りづらくってとりあえず見てた」

「ああ、あの中女のひとばっかりで確かに少し怖くなっちゃうかもしれないわね。
待ってるのってお友達?」

「いや、……姉ちゃん」


自分で決めた設定ながら初春のことを姉だと呼ぶのになんとなく変な感じがした。
擬似家族ごっこか、あほらしい。
なんだかドロドロしたものが心のそこから溢れてくるような気がして、
それ以上は考えないようにしようと目の前の女に視線を向けると、
なんだか口元を押さえて真っ赤な顔でぷるぷると震えていた。


「やばい、やんちゃ系ショタの姉ちゃん呼び、ほんとうにやばい……!」

「えっと、あの、おねーさん?どうした?」

「いや!えっと!なんでもないわ!
ところで私が君の分のクレープも買ってきてあげようか?」


女の申し出に垣根はどうしようか、と暫く考える。
なんだか自分を見るこの女の視線はどこか危険なものを孕んでいるし、どうしたもんか。

しかし、垣根の腹は限界だった。
お腹と背中がくっつきそうだった。
背に腹は変えられないというのはこのことか、
と思いながら垣根は女に向かって笑いかける。


「それじゃあお願いしてもいいか?」


素早い動きで笑顔の垣根を携帯電話でカシャっと一枚写真を撮ったあと、
女はまかせて!と叫んでクレープ屋に消えていった。

なんとなく自分の判断は間違いだったんじゃないかと垣根は少し嘆いた。

***

店先は混んでいたはずなのにどういった魔法を使ったのかものの数分でクレープを手に入れ、
女は戻ってきた。
ちょっと笑顔が全快過ぎて怖い。


「おまたせ!はいどうぞ」

「いや全然まってねえけど……。つうか自分の分は?」


女の手にクレープはひとつしか握られておらず、それも垣根に渡してしまった。
じゃあこの女はいったいなにを食べるのだろう?


「ああ、私はいいのよ。なんだかもうお腹いっぱいだから」


そういってまた携帯電話のシャッターをきられた。
肖像権の問題云々とか考えないのだろうかこの人間は。
あまり深く突っ込んだら負けな様な気がしてクレープにかぶりつく。

なるほど、人がごった返していただけあってなかなかにうまい。
クリームも甘すぎないし、フルーツも新鮮だった。

腹も減っていたこともあり夢中で食べる。
途中口の端にクレープをつけて、もぐもぐと咀嚼していたらまたシャッターの音がした。

そろそろ怒っても許されるような気がする。


「あのさ、そろそろ無断で人の写真撮るのやめねえ?」

「ごめんさい。ひさびさの上玉過ぎてつい」


そう言って嫌そうな顔をする垣根の顔をもう一度パシャリ。
どうやら言葉は無力らしい。

というかこの女は自分の写真をとっていったい何に使うんだろう。
怖い。怖すぎて聞けない。

ちらりと横を向けばにこりと微笑まれた。
多少引きつっているが自分も笑い返してみる。
パシャリ。


(何この人怖い、たすけてかざり……!)


願ったところで救世主は現れない。
最後の希望も舞い降りない。
ヒーローなんて、いない。

この世に絶望しかけ、背中から這える白いももふもふでこの辺いったいどうにかしちゃおうかな、
と言う発想まで追い込まれたところでそれは垣根の前にかけてきた。



「ていとくくーん!お待たせしました、お昼にしましょー!」



救世主が。

ちょっと遠く離れたところからぶんぶんと紙袋を振っている初春の元に垣根は駆け出す。
食べかけのクレープは横にいる変態に押し付けた。
ショタの食べかけ、といいながらぷるぷる震えている姿はこの際見なかったことにする。


初春に駆け寄り、その手をぎゅっと握る。
初春の体が若干こわばったような気がしなくもないが気にしない。
あんなに恐ろしい思いは暗部にいた頃でもなかなか味わったことがない。
だいたいみんな話し通じたし。

とりあえずさっさとこの場から離れようと困惑する初春をよそに垣根はその手を引いて歩き始める。


後ろからまたシャッターを切る音が聞こえた気がしてたまらず走り始めた。

以上です

しまった謎のお姉さんの名前を出しそびれた

大丈夫、誰でもわかるから

小萌先生病院連れてってやれよ

  どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!
   三           三三
        /;:"ゝ  三三  f;:二iュ  三三三

  三   _ゞ::.ニ!    ,..'´ ̄`ヽノン
      /.;: .:}^(     <;:::::i:::::::.::: :}:}  三三
    〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__

    ,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ
  . 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
    };;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll



   どうしてこんなになるまで放っておいたんだ! ?
   三           三三
       ∧/;:"ゝ  三三 ∧f;:二iュ  三三三

  三   ( ^ω^ )    ,.( ^ω^ )^)
      /.;: .:}^(     <;:::::i:::::::.::: :}:}  三三
    〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__

    ,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ
  . 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
    };;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll



                     ♪
                ∩∧__,∧∧__,∧∧__,∧

  =、`ー-="⌒ヽ      ヽ( ^ω^ )7ω^ )7ω^ )7  ♪
  ,..シ'=llー一'";;;ド'    /`ヽJ   ,‐┘  ,‐┘  ,‐┘
   ̄ ̄ll          ´`ヽ、_  ノ 、_  ノ 、_  ノ
             ♪    `) )  `) )  `) )

            どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!
                 どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!

早く手術室に運んでやれwwwwwwww

乙~
ていとくんが貰ったクレープにかけてある『赤い』ソースはイチゴではなかったという…

大変だああああああああああああああああ
変態だああああああああああああああああああああああ

大変だああああああああああああああああああああ
変態だああああああああああああああああああああああああああ

ていとくんただの少年じゃないですか

乙!
きっと一生に一度味わうか味わないかの恐怖だったんだろうな……

謎の女・・・・いったい何者なんだ・・・・・・

トラウマかくていとくん

あわk……謎のお姉さんの人気に嫉妬

>>1です
胃がいたいので今日は中途半端なとこまで投下します

***

二人で手を繋いだまま家まで続く道をとぼとぼと歩く。
結局逃げるようにセブンスミストから出てきてしまったので昼食はとれていない。

何故いきなり垣根が自分の手をとって走り出したのか初春は知らない。
垣根も、そのことについて何も説明しない。

ただ初春の手を握って、その少し前をとぼとぼと歩く。

そういえば勢いで手を繋いでここまできてしまったのだが、初春は嫌ではないのだろうか。
少し冷静になって行き着いた思考に、まあ普通に嫌だろうなと勝手に結論付け、
垣根は初春と繋いだ手を離す。
初春は一瞬きょとん、とした顔になりそのあと、
「どうしたんですか?」とアホみたいな顔で垣根に向かって尋ねた。
どうしたもこうしたもないだろうに、と垣根は思う。


「いや、いきなり手とって駆け出して悪かった。
ちょっとあそこから一刻も早く逃げ出したくてな」

「別にかまわないですけど何かあったんですか?
なんだか尋常じゃなく手汗びっちょりだったんですけど」


手汗びっちょりだったのか、それはますます嫌だったろう。
申し訳ない気持ちになって、垣根はもう一度悪かったと謝罪の言葉を口にする。

そんな垣根に初春は少し困ったように笑って、もう一度垣根の手をとる。


「もういいですから、ほら帰りましょう。
私お腹すきました。何か食べるもの買って帰りましょう」

本当のこどもにそうするように、垣根の手を握って初春は少し前を歩き出した。


「……なんでまた手繋ぎなおしてんだよ花女」

「だってていとく君、まだなんだか何かを怖がってるように見えますし。
それに人の体温って触ってるとなんだか落ち着く感じしません?」


だから落ち着くまでこーしてますよ。そう言って笑う。


「……お前、ほんとうにお人よし」

「あー白井さんとかにもよく言われます。でも別に普通ですよ」

「普通の人間は自分のこと殺しかけた人間をじぶんちで匿ったりしねえ」

「勝手に押しかけてきて人の家にいついてる人の台詞じゃないですよねそれ」

「俺、結構な数の人間殺して生きてんだけど、そんなやつの手握って歩くとかいやじゃねえの?」


少し、意地悪な質問をした。
瞬間、初春の少しこわばる。


(まあそんなもん聞いて平静でいられるような人間じゃあねえよな、こいつ)


垣根は初春と繋いだ手を離そうとしたが、更に力強い力で握り締められた。
少し痛い。


「そら、まあ、いやですよ。当たり前じゃないですか」


少し俯いて、ぽつりと呟く。
繋ぐ手に力を籠めたまま初春はまくし立てる。


「そもそも、一般人に人殺しを許容しろっていったて無理な話ですし、
そもそもそんなもの許容できてたら今頃風紀委員なんてやってませんよ。
だいたい人殺しはいけないことで、どんな人間だって殺すのはいけなくって、
みみずだっておけらだってあめんぼだってみんなみんな生きてて友達で、
あれ、自分でも何が言いたいのかわからなくなってきました……」


頭の中の考えがまとまらないまま、思ったことを口に出していたせいか、
最後の方は支離滅裂で、意味がわからなくなっている。

そんな初春だって理解できないことを垣根が理解できるはずがない。
どうして初春が自分の手を離さないのか垣根にはわからない。

嫌ならこの手を離せばいいのに、嫌だと言ったくせに。
こんな血にまみれた手を握り続ける必要なんてないのに。
初春は垣根の手を離さない。


離さないまま、なんだか泣きそうな声で、


「でも、もう殺さないって、悪いことしないって約束してくれたじゃないですか」


はじめてした約束を口にした。

***

なんだか気まずい雰囲気のまま、繋いだ手は離さずに歩く。
会話はない。
ただ、帰り道を家に向かってひたすらに歩く。


垣根帝督の思い出の中に、人と手を繋いで歩くという思いではなかなかに少ない。

遠い昔、まだ父と母という絶対的な存在をまだ信じていたとき、
その手を握って歩いた記憶がおぼろげに残っているのみで、
この街に来てからはそのような経験はしたことがない。

だいたいにおいて、垣根の手は力を振るうためにあった。
能力を行使し、他人を追い詰めるためにあった。

そんな手を、何の利害も求めずに握ってくれる存在など垣根は知らない。
悪党の自分を否定して、それでも一緒にいてくれる存在を垣根は知らない。


お人よしだからつけこんだ、身の振り方が決まるまでの隠れ蓑の主。
たったそれだけの存在に垣根は酷く揺さぶられる。

こんな時にどうしたらいいのか、垣根にはわからなかった。


とりあえず、この重苦しい雰囲気をどうにかしようと口を開きかけたとき、


「いや。やめて……!」


女の悲鳴がどこからともなく響いた。

***

女の悲鳴を聞くやいなや、初春はあれほど頑なに握り続けていた垣根の手を離し、走り出した。


「ていとく君!ごめんなさい!先に帰っててください!」

「おい、かざり!」


少し振り向いて垣根の方に向かってそう叫ぶ。
今日はあいにく腕章を持っていないが、そんなことで見過ごすわけにも行かない。

携帯電話で支部に連絡を入れながら、悲鳴がしたと思しき裏路地の中に駆け込む。


(つながらない……)


全員出払っているのか、何らかの事情があるのか。
軽く舌打ちをして、留守電に現在地と状況を簡単に残す。

路地をいくつか曲がると、黒く長い髪が印象的な、どこか神秘的な雰囲気すら漂わせた少女が数人の男に囲まれていた。


「痛い。離してほしい」


そう言って顔をゆがめる少女に対して男たちは品の無い笑みを浮かべてさらに距離をつめる。
非戦闘要員である初春がこういった場面で前に出ることはあまり無いのだが、そう言う風にもいっていられない。



「風紀委員です!その人から手を離してください!」


裏路地に、弱弱しくも凛とした声が響いた。

以上です

誰か良く聞く胃薬知ってたら教えてくださいクソ痛い

おつ。
1秒も我慢出来ないくらい凄く痛いなら病院行け。胃痛にも色々ある。胃じゃない可能性もあるし。

おつー
>>1
お大事に

盲腸だったらどうする

おつ

>>1大丈夫か?

心配してくれた方ありがとうございます>>1です
胃痛は普通に寝たらなおりました
やれやれだぜ

今回ぬるいですがリョナっぽい描写があるので苦手な人注意
大好物な人もぬるすぎるので注意
投下します


少女を取り囲む男の数は三人。
喧嘩自慢の男でも勝てるか微妙な数だ。

恐怖から震える足に力をこめて初春はもう一度男たちに向かって叫ぶ。

「その人をはなしてください!」

男たちはそんな初春をちらっとみて、
「風紀委員だってよ」「ワンショーしてねえじゃん」「つーかかわいくねえ?」
「いやでもちょっとロリはいってね?」「おまえロリコンかよ、キモー」
「おじょーちゃんはさっさとおうちに帰ってくださーい」
などと勝手なことを言っている。

少女の周りからどく気配も、手を放すそぶりすらみせない。
ただにやにやと品定めでもするように初春をみる。


勢いにまかせて飛び出した初春に何か策があったわけではない。
はっきり言ってノープランだ。
もしかしたら支部にの残した留守電をきいて、
白井なり他の風紀委員なりが駆けつけてくれるかもしれないが、望みは薄い。

とにかく、少女だけでも逃がさなければ。
非戦闘員の自分に何ができるのか、初春は必死に考える。

初春の能力は保温だ。
触っている対象の温度を一定に保つことのできる能力。
ただそれだけの能力。
日常生活で重宝することはあっても、この場を打破するにはなんの役にも立たない。

ともなるとやはりここは特攻しか手段ない。

初春は震える足で地面を蹴り、少女の手をつかむ男の体に肩から突っ込んだ。


勢いよく初春に体当たりをくらった男は、手をつかむ少女もろとも地面に倒れた。
瞬間、少女から手が離れる。

初春は倒れた男の足にしがみつき、その近くにいた別の男の足を掬うように蹴り上げる。
地面に這い蹲った状態での蹴りの威力などたかが知れている。
それでもないよりはましだったようで、男のバランスがわずかに崩れた。
少女が逃げるための道が開く。

「逃げてください!!」

初春は少女に向かって叫ぶ。

また別の男の手が伸ばされてくるのを少女はすんでのところでかわす。
初春を残して逃げることを戸惑う少女に初春は更に叫ぶ。

「早く!」

自分は風紀委員だから大丈夫だ、と。

少しの間考えるようなそぶりを見せた後、少女は再度自分に伸びてくる手を振り払って走り出した。

「助けを!よんでくるから!」

そう叫んで路地から抜け出した少女を見送り初春は息を吐き出す。
少女を逃がすことはできた。
今度は自分の番だ。


体勢を立て直した男が三人、不機嫌そうな顔で初春を見下ろしている。
ああ、この顔は見覚えがある。
この顔は、対象を痛めつけようとしているときの顔だ。

地面に膝をついたままで初春は三人の男を睨みつけた。

***

初春の腹に男のつま先がめり込んだ。
初春の口から声とも呼べないような音が漏れる。
昼間に何も食べていなかったことが幸いしてか吐瀉物を撒き散らすようなことは無かったが、
それでも口から胃液やら唾液やらが流れ出す。

どこか遠くのほうから「おいおいその辺にしとけよ」などという下品な笑い声が聞こえる。
正直、今の初春は意識を保っているのがやっとだった。
いたぶられた体の痛みで、ようやく意識を繋いでいるような状態である。


少女が逃げたあと、初春は男たちに髪の毛を掴まれ、引きずられ、裏路地に面した廃ビルに連れ込まれていた。
どうやらこの場所がこの男たちの縄張りであるらしい。


床に倒れ、鼻血まみれの唾液まみれで、それでも初春は負けじと男たちを睨みつける。
その瞳が、男たちの嗜虐心を煽る事を初春は知らない。


男のうちの一人がしゃがんで初春と視線を合わせる。
にやにやと笑うその顔が腹立たしくて初春の眉間にさらに皺がよる。


「なあおじょーちゃん。そんな顔してっけど自分の立場とかわかってる?」

男の幽かな笑いを含んだ声がビル内に響く。

「そんな怖い顔して俺らのこと睨みつけるより、少しでも尻尾振って媚売ったほうがいんじゃねーの?」

なあ、と後ろ二人に同意を求めるように振り向く。
後ろでその姿を同じような顔で傍観する男二人もそーだ、そーだとその声に続く。


「俺たちだって、オンナノコこんな風に痛めつけるなんてすきじゃねーしなあ」

「ああ、どうせだったら、優しくかわいがってやりてぇよなあ」

「でも女ボコリながらセックスとかまだしたことねーし、ちょと俺興奮してきたかも。
そっちのが締まりいんだろ?」

「お前やっすいAVのみすぎじゃねーの?」


下品な会話に、下品な笑い声。
不快で不快で仕方ないのに、立ち上がることさえもできない。
悔しくて涙が出そうにあるが、こんな男たちの前で泣くのなんて嫌だった。
歯を食いしばって耐える。


もう少し自分の能力が高ければ世界は変わったのだろうか。
もう少し自分の身体能力が高ければ立ち上がれたのだろうか。

非力な自分を恨むことはあっても、少女を助けたことを初春は後悔しない。
ただ、自分の非力さを嘆く。

誰のせいにもしない、すべて自分で背負う。
そういう強さが初春にはあった。

そんな初春だからこそ、垣根帝督を受け入れることができたのかもしれない。

そんな初春だからこそ、垣根帝督は身を寄せる場所として頼ったのかもしれない。


そんな初春だから、こそ、



「おい、そこで何してんだクソ野郎ども」



慣れない道を走り、汗だくになりながらも、垣根提督は助けに来たのだ。

以上です

また休み中に来たい

更新待ってた!超乙です!

舞ってましたー
おつ!

いい所で切りやがる

あの時とは逆に初春を救う小さな英雄(ヒーロー)として舞い降りたていとく君がカッコカワイイです乙

>>180の最後の行を盛大に誤字って死にたい>>1です

今日もきっと色々誤字ってると思いますが、投下します
読み直してるはずなのになあ

***

走り回って漸く見つけてた初春はボロボロだった。
顔面は鼻血のせいか血だらけ、服は泥だらけ、服から覗く白い腹も今は青黒く変色している。
辛うじて意識はあるようだったが、虫の息だ。

初春を囲むように存在する男たちが口々に何かを喚いているが、
蝿の羽音のようなその声は垣根には届かない。
ただ視線は一点、初春飾利へと注がれる。


いったい誰がこんなことをしたのだろう。
決まっている。目の前のゴミどもだ。
いったいこいつらをどうしてやればいいのだろう。
決まっている。皆殺しだ。


心の奥底から湧き上がるどろりとした感覚に身を任せながら垣根は考える。
さてどう料理してやろうか。
どう甚振ってやろうか。

手始めに白く輝く六枚の翼を現出させ、男たちに向かってその翼を放つ。
鋭利な鈍器と化した翼はあっけなく男たちをぼろ雑巾にかえ、床にねじ伏せる。

殺さないよう加減はした。
簡単に殺してやるつもりなど毛ほどもない。

現に床に這い蹲る男たちの体はまだぴくぴくと動いているし、意識もあるようだ。
ただ現状を理解できているかどうかはわからないが。

口から唾液をだらだらと流し、うつぶせに倒れうめき声をあげる男の一人に近づき、
垣根はその前髪をつかんで顔をあげさせる。
なるほど、クソ野郎にはクソ野郎にお似合いな下品な面がついているものだと、頭の隅でどうでもいいことを考える。

「なあ、クソ野郎。お前ら何やってんの?」

顔には笑顔を貼り付けて、背筋がぞっとするような声色で、垣根帝督は男に尋ねる。
男は答えない。いや、答えることができない。
圧倒的な力の前に、口を開くことすら叶わない。

薄く笑って垣根はさらに続ける。

「普通だったら雑魚の相手なんてしてやる気もおきねえんだけどな」

翼にありったけの力をこめる。

「今日は特別だ」

笑みを更に深める。



「地獄の底まで相手してやるよ」



男にめがけて翼が振り下ろされた。

***

結果として、垣根の翼は男を貫くようなことにはならなかった。
男の体数センチ上で止まっている。


「……どういうつもりだ、かざり」


いつの間に立ち上がれるまで回復したのか。
垣根の翼に初春がしがみついていた。


「殺しちゃ、だめ、です……」


息も切れ切れで、喋ることもやっとだろうに。
それでも初春は垣根から離れない。


「お前こんなにされてまで、こいつらのことかばうのか?どんだけお人よしなんだよ」

「……そういうんじゃ、あり、ません……」

「俺が来なきゃお前こいつらにぐちゃぐちゃに犯されてたんだぜ。その辺ちゃんと理解できてんのかよ?」

「それでも、殺しちゃ、だめ……、です……」

「こいつらまた別の女でおんなじことするぜ。そんなやつら生きてる価値ねえだろ」

「それでも……!」

初春の言葉が途切れる。垣根の羽根を抱きしめる腕に力がこもる。


「約束、したじゃないですか。もう、殺さないって。
約束破ったら、一緒に暮らせないです。それは私、許容できないです」

垣根がどんな人間だろうと、相手がどんな人間だろうと、どんな事情があって、どんな理不尽なことがあろうとも。
初春飾利に殺人を許容することはできない。
それを許容してしまったら、初春は初春でなくなってしまう。
だからその一線は決して越えない。超えることを許せない。


もう気を失ってしまいたかった。
初春の足は、もう殆ど力が入らない。
それでも諦めることなんてできないから、必死にその羽根に縋る。

「せっかく、だんだん仲良くなれて。お洋服だって買って。
ていとく君のものだって色々増えたのに、こんな終わりは嫌、です」

無理やり始められた同居生活だったけれど。
まだ完全に信じられたわけではないけれど。
こんな後味の悪い終わり方は嫌だった。

それに、と初春は切れ切れな言葉を繋ぐ。

「私はていとく君のお姉ちゃんだから。弟が間違ったことをしようといたら、全力でとめます」

嘘だらけの姉と弟ではあるけれど。
出会ったのもつい最近であるけれど。

「だから、おうちにかえりましょう?」

初春は、約束を交わしたあの夜に垣根帝督ときちんと向き合おうときめた。
家族になろうときめたのだ。

***

気付けば初春は白いベッドの上に寝かされていた。
幽かに薬品の匂いが漂うここはどうやら病院らしい。
体を起こしてみると腹部のあたりがズキリと傷む。
そういえばお腹蹴られたんだなあ、とぼんやり考えていると、自分の足元のあたりに突っ伏している垣根の姿が目に入った。


「ていとく君」


声を掛ける。
返事はない。
眠っているのかと思ったがそういうわけでもないようで、顔の下に敷いてあった腕がぎゅっとこわばる。

もう一度、ていとく君、と名前を呼んでみる。

たっぷりと間をおいたあと、どこか気まずそうな、どこか拗ねたような小さな声で、「殺してねえ」と一言だけ呟いた。

痛む腹を押さえながら初春は初春はそんな垣根の頭に手を伸ばす。
なんだかこうするのがあっているような気がしてその頭をよしよしと撫でる。

払いのけられるようなことはない。
本当にお姉ちゃんになったみたいだ、そう思って少し笑う。
そのままやさしい手つきで垣根の頭を撫で続ける。


「ていとく君がここまで連れてきてくれたんですか?」

「……あのあときた、警備員のやつらが救急車呼んでくれた」

「あの人たちは?」

「しらん」

「警備員の人に何か聞かれませんでしたか?」

「別に。ただお前についててやれって言われた」


質問に対して、そっけない言葉ばかり返ってくる。
垣根はまだ顔をあげようとしない。
初春はまだ頭を撫で続ける。


そうして、しばらくたったあと、垣根は「知らないんだ」とポツリと呟いた。


「人間を殺すのが悪いことだって言うのは知ってる。それを平気でやってる自分がクソ野郎だってことも知ってる。全部わかってる。
でもそんな生き方以外、誰も教えてくれなかったじゃねえか。
自分の敵は殺して、ムカつくやつは殺して、そういう生き方しか教えてくれなかったじゃねえか。
だから知らねえ。わかんねえ。
それ以外に、このクソったれた世の中で、どうやって生きていけばいいのか知らないんだ」


自分の世界を汚そうとしたやつがいた。
だから殺そうと思った。
でもそれは駄目だと初春は言う。
それならばどうやってこの世界を守っていけばいいのか。
力以外の方法を、垣根帝督は知らない。


シーツを強く握って縮こまるように体に力を入れる垣根をみて、初春は思う。
ああきっと、この人の情緒はまだ成長しきっていないのだと。

心が成長しきる前に、暗闇に落として、ゆっくりと心を潰して。選択肢をどんどん奪って。
そうやって大人の都合のいい道具として育てられてきたから。
こどもらしくあるべき時間を十分に過ごすことができなかったから。
だからきっとこの自分より年上の怖い人が、時々その姿相応に見えてくるのだろう。


そんな垣根を初春は哀しいと思った。
どうにかしたいと思った。
ゆっくりと口を開く。


「わからないなら私が教えます」


撫でる手をそのままに、語りかけるように言葉を繋ぐ。

「さっきも言ったでしょう。私は今、ていとく君のお姉ちゃんなんです。」

弟なんていたことがないから、うまくできるかわからないけれど。
そう言って少し笑う。

幸い、垣根は今外見年齢10歳だ。
時間だって、これから一緒に暮らしていくのであればいくらだってある。
だから、


「ふたりでゆっくり、やり直してみましょう」


「ね?」と、いって微笑む。
かきねはゆるゆると顔だけを初春の方に向けて「ばっかじゃねえの」と、少し泣きそうな声で呟いた。

以上です
次からはなにもなかったかのようにほのぼの日常編が始まるよ!多分

乙!
>>180の誤字に今気付いた
初春さんマジ天使じゃね?

いやいや、初春さんはマジ天使だよ
おつ

初春さんマジ天使

>>1です
投下します

***

学生の本分は勉強である。

学園都市――人口の半分以上が学生であるこの街は昼間は殆どの人間が勉学に励んでいるため、街の中は閑散としている。

そんな人気ない昼の学園都市のとある公園で垣根帝督は一人寂しくブランコをこいでいた。
キーコギーコとブランコからどこか哀愁漂う音が響き渡る。

なぜ自分はこんなところでリストラされたサラリーマンよろしくブランコこいでなきゃならんのだろう。
ブランコと共に揺れる自分のつま先をみつめながら垣根は思う。

時間は12時間前、昨夜の9時にに遡る―――――

***

「そういえばていとくちゃんは学校にきちんと行ってるの?」

配線だか配管だかの工事のお知らせを伝えに来た寮監は玄関先で応対する初春にこう尋ねた。
初春が学校に行くのを見送ったことは何度となくあるが、
垣根がここにやってきたから学校に向かうその姿を一度も見たことがないのだ、と。

見たことがないのなんて当たり前だ。
昔は一応存在したが、今の垣根に通う学校なんてものはない。
偽造IDは一応あるものの、本格的な戸籍なり何なりはないのだから通うことは不可能だ。
だいたい、学校に入学するためにシステムスキャンだのなんだのされたら一発で正体がばれる。

それにいまさら10歳児と楽しくお勉強ができるほど垣根の頭はゆるくない。
某高校生探偵はほんとよくやる、と見当違いなところに思いを馳せる。



だがここに来て学校に通っていないことが仇になるとは思わなかった。
寮監に自分がいることを話したのは間違いだったのか、と垣根は小さく舌打ちをする。

うまいこと言ってくれ、そう初春に目配せをする。
初春は任せてくださいといわんばかりに親指をぐっと立てた。


その仕草はなんだかダサい気がする、ということはとりあえず伝えないことにする。


「あの、ですね、ていとく君はですね、」


初春が寮監に対峙する様を垣根は見守る。
ちょっと病弱だ、とか、転入の手続きが滞ってるとかその辺の答えが妥当だろう。
思うより頭の回転は遅くないようだからもっといい手を考えてくれているのかもしれない。
少し期待する。



「お花係さんなので、毎朝物凄く早く学校に行ってるんですよ!」


予想斜め上の回答がその口から飛び出した。


お花係てなんぞ。
垣根の頭は混乱する。
さらに初春のホラは続く。


「ていとく君は心優しいいい子なので、毎朝お花に水をあげに早く学校に通ってるんですよ!
ええそりゃあもういい子なんで!
ていとく君のお陰で学校の花をもうすくすく育っちゃって、まるでラフレシアですよ!
なんかもうすごいんですよ!
だから大丈夫です心配しなくてもうちの子はちゃんと学校に行ってます!
なんなら明日は私と一緒に登校しますんでその雄姿をとくとご覧ください!」


雄姿ってなんだよ。
意味わかんねえよ。

垣根悲痛な叫びは妙にヒートアップした初春には届かない。

がんばってね、との言葉を残し去っていく寮監を見送り、玄関から戻ってきた初春は妙に勝ち誇った顔をしていた。
俗に言うドヤ顔である。

以前初春家を羅刹の家に仕立て上げたことへの復讐か、はたまた本気で“うまいこと”だと思っているのか。


垣根の口からため息が漏れる。

「お前……、ほんともう……ばっかじゃねーの……」

なんかもうそれしか言えなかった。

***

そんなわけで朝も早くから初春と共に寮を出る羽目になった垣根は特にやることもなくひたすらにブランコを漕いでいる。
はじめはなんだか楽しめていたこの遊具も1時間以上漕ぎつづけていればもうお腹いっぱいだ。

新しい乗り方を考案してみる。


「行くぜ必殺未元操漕!!」


妙にむなしかった。
大人しくブランコに座りなおしまたつま先をみつめる。


(飛んでベランダから部屋に入るかなあ。でも見つかったら厄介だしなあ。)


それにそんなことしたら初春になにやら小言を言われるやも知れない、と垣根は思いなおす。

これからも外でこうやって学校に行った振りをする必要があるのなら外で遊べる携帯ゲーム機の購入を検討するべきなのかもしれない、
と現代人じみた思考がふと過ぎり、本格的に脳みそがそっちの話題にシフトする。


(PSPかDSか。はたまた一回り回ってワンダースワンとかいいかもしれない。)


ブランコを漕ぎながら思案する垣根のみつめるつま先あたりに自分のものではない影が落ちた。


「こんな時間になにこどもが一人でブランコなんて漕いでるんですか?超不審者ですよ?」


少し顔をあげたら、ニットのワンピースと靴下の間の白い太ももが見えた。

半端ですがとりあえず以上です


あと試験やら原稿やらで次来れるのが一ヶ月以上先になるかもしれません
できるだけ早く戻って来れるよう頑張ります
それでは

絹旗きたぁああああああああああああああああああ

小さいていとくん想像できないから大きいままのていとくんがブランコ乗ってるの想像しちゃった。
ちょっとキツい

  きたか…!!

  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /

ここで絹旗ときたか
おつー

座って>>1を待ってな、それが俺たちにできることだ

こんばんわ>>1です
試験勉強が煮詰まって死にたくなったのでちょっとだけ投下させてください
自分以外の受験生全員爆発しろ

>>206
よろしければ想像の添え物としてお使いください
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1715453.jpg.html


それでは投下します


太ももから更に視線を上げる。
きれいな栗色のボブに愛らしい顔が見えた。

垣根はこの顔を知っている。
この顔を叩き潰してやったことがある。
垣根が世間的に死んだあの日、『遊んで』やった組織の構成員。
第一位の演算パターンを利用して作られた劣化品。

あの日敵として自分に立ちはだかった少女が何の警戒心もなく話しかけてきている。
これはいったいどういう状況なのだろう。

少女の問いに反応できないまま、垣根はその顔をただぼーっと見上げる。
少女は垣根の乗るものの横のブランコに座り、もう一度何してるんですか?と尋ねてきた。


「世間一般ではこどもはこの時間、超学校に通ってるはずですけど、あなたはこんなところで何してるんですか?
もしかして超いじめられっこの超不登校児ですか?」


少女はガシャンとブランコをきしませ、垣根の方に身を乗り出すように体を傾ける。
前のめりのような姿勢になったため襟ぐりのあたりが少し開いて見えたがときめくような山や谷は見られない。
なんだか少しがっかりする。がっかりしたので問いに対する返事はしない。


「いい加減何かしらの返答をもらえないと一人で話してる私が超ばかみたいなんですけど」

「……テメェだってこんな時間にうろうろしてんのはかわんねえだろ。お前こそ超いじめられっこの超不登校児か?」


鼻で笑いながらそう返すと、少女は少し驚いたような顔をし、それから少し頬を膨らませる。
なんだか食いすぎたリスのようだな、と思う。


「うわ、顔はかわいらしいのに超口悪いですね。年上の人間への口の利き方がなってないから超いじめられるんじゃないですか?
というかあなたのその顔、どこかで見た覚えが超あるんですが、どこかであったことありましたっけ?」

「ガキに古典的なナンパとかどうなんですかね、おねーさん?」

「そんなんじゃ超ないですよ!ただどこかで見た覚えが超あるんですが……。なんか超嫌な場面で……」

「嫌なことなら思い出す必要なんかねえだろ。生憎俺とお前は初対面だ。それ以上でもそれ以下でもねえ」


ガシャンと音をたてて垣根はブランコから立ち上がった。
このままここで話をして自分の正体がこの女にばれたら厄介だ。

暗部に繫がりのある人間に今の状況がばれるのはあまりいいことではない。
最悪、回収されてまた使い潰される。
そんなのはごめんだ、と垣根は思う。

それにこの少女はきっと自分のことを恨んでいるだろう。
直接最後の手を下したわけではないが、『アイテム』が崩壊したのは殆ど垣根のせいだ。
もしかしたら殺しにかかってくるかもしれない。

相手が殺しにかかって来たなら、殺されないために応戦するしかない。
力を、振るうしかない。
そうすることをきっと、あの女は嫌がるだろう。
ここにいない花頭のことを思う。
だから垣根はこの少女に自分の正体がばれる訳にはいかない。


「じゃあな。ちゃんと学校いけよ、超いじめられっこ」


手をぴらぴらと振って公園の出口へと向かう。
さえ、居場所がなくなってしまった。これからどうしようか。

そんなことを考えながら歩いていたらパーカーのフードを思いのほか強い力で後ろに引かれた。
つぶれた蛙のような声が垣根の口から漏れる。
ついでに勢い余って尻餅をつく。


「女の子放置して帰ろうなんて超男の風上にも置けませんよ、それ」


後ろ斜め上を見上げたらニットのワンピースと靴下の間の白い太ももが見えた。
なにこれデジャブ。

***

公園のベンチで少女と並んでいちごおでんを飲みながら、垣根はどうしてこうなったと頭を抱えたくなった。

初春のあほな嘘のせいで外に出る羽目になった。だから公園で一人楽しすぎる感じで遊んでいた。
そしたらアイテムの元構成員に話しかけられて首を絞められて気付いたら一緒に茶ァしばいてた。
何を言っているかわからねーと思うが状態である。
ポルナレフつれて来い。

いちごおでんを一気にあおりながらちらりと横に座る少女を見やる。
黒豆サイダーをちびちびと飲むその顔は何を考えているのかまったくわからない。
もしかしたらすでに自分の正体は割れていて、今仲間を呼んでいる最中なのかもしれない。
いざと言う時のために相手を傷つけないかつ自分も傷つかないような都合のいい演算をあれこれ組み立てていると突然少女がくるりとこちらを向いた。


「それで、あなたは本当になんでこんな時間にこんなところでブランコなんて超一人でこいでたんでたんですか?」


嫌にその部分にこだわるな、と思った。
垣根が学校に行っていないことがこの少女にとってそんなにも重要事項なのだろうか。
なんと答えるのが一番手っ取り早くこの場を去れるのかわからなかったので、垣根はまた口を紡ぐ。
それを少女はどう捉えたのか、心配そうな顔でみつめてくる。
よもや本当にいじめられっこの不登校児だと思われたのだろうか。
なんだかいたたまれなくなりあわてて口を開く。


「学校はちょっと、レベルとかそういうめんどくせぇ理由があって今はいってねえ。
だからいじめとかそう言うんじゃねえからそんな顔して見るな」


言ってから半分くらい本当のことを言っていることに気がつく。
自分がまだ、きちんと垣根帝督をやっていた頃のことを。

あの頃もろくに学校なんて通っていなかった。
だいたいクラスメイトなんて一人もいなかった。
だからいじめられることもなかった。
そのかわり友達もできなかった。
研究員と仕事仲間と自分の敵とそれとゴミ。
垣根を構成する世界はそれだけだった。少し前までは。

なんだか胸の奥から苦いものがこみ上げてきて思わず眉間に皺がよりそうになる。
嫌なものを吐き出すように二三回深呼吸をして横の少女をみやると、もうあの心配するような、同情するような目で垣根を見てはいなかった。
しかし今度は自分の仲間を見るような、同士をみるようなそんな目で垣根をみつめていた。


「あの、え、と私も、超そんな感じというか、いや、ちょっと違くはあるんですけど、そのレベルの問題というか、研究所とかの問題で、超学校行ってなくって。
それで、最近、もういいから学校行ってもいいよっていう風に超いわれたんですけど、今更超どうしていいかわからなくって。
いきなり普通に生きていいよって言われても、普通ってどうしたらいいのかわからなくって」


それで今日も学校超さぼっちゃいました。

照れたように、恥じるようにそう言って笑う。


なるほど、こいつは道連れが欲しかったのかと垣根は思う。
こんな風に、学校に行けないのは自分だけではないと、そう思う材料が欲しかったのか、と。

いままで暗闇の中にいたのに、いきなり明るい場所に放り出されたら戸惑うのも無理はない。
垣根だって今のただ緩やかに過ぎていく生活がどこかままごとのように感じることがある。
だから少女の気持ちがなんとなくわかる。
なんとなくわかるから、どうにかしてやりたいと思った。


「初春だ」


自分の名前は言えないから、最近できた、自分をこんな気持ちにさせる“姉”と同じ名前を口にする。


「下の名前は、ちょっとあれなんで言えねえが、苗字は初春だ。お前の名前は?」

「……絹旗……、絹旗、最愛です」


少女――絹旗は少し笑って自分の名前を告げた。

以上です
今度こそ試験と原稿が終わるまで自重します
多分

あと絹簱とインデックスとアニューゼたんは俺の嫁

乙!!試験と原稿頑張れよ~続きも待ってる!

>>217 アニューゼ糞ワロタwwwwww そこで名前間違えんなよww

そのメンツから察するに
打ち止めやアンジェレネも好きそうだな



例え>>1だろうと絹旗がお前の嫁とは認めんぞ

>>1はまだか・・・・

あげんじゃねーよ…期待させやがって

末尾0のキチガイ率は異常

復活に期待

>>219
あぎゃあまたやっちまった
ちょっとアニェーゼたんに踏まれてくる

昔からカタカナの読めなさには定評がる>>1です
余談ですがリメエア様もリメリエさまだと思ってました
死にてェ

>>220
何故ばれたし

>>221
よろしいならば決闘だ


それでは投下させてもらいます
またなんか間違いがあったら罵ってくれると嬉しいです

***

「折角出会った学校行けない仲間ですから超仲良くしてくださいね、初春!」

先ほどの少し沈んだ様子からは一転して、元気に笑いながらそう垣根に告げる。
自分に対して仲間意識全開の笑顔を向ける絹旗になんだか騙しているような気にならないでもないが、
こんなに喜んでくれているのだ、むしろ自分はいいことをしたのだろう、と垣根は自分を正当化する。

「それで、あの、初春」

(しかしこの女、小学生の仲間が増えてそんなにうれしいもんなのか……?)

「えーっと初春……?」

(いくら仲間が欲しいからって小学生って……。俺高学年にも差し掛かってねえような外見だし…)

「おーい初春ぅ?」

(まさかショタ……コン……?いや、こいつまだ中学生…・・・もしや小学生なのか?なんかちんまいしな)

「初春ってば!超聞いてるんですか!!」

いきなり両の肩をつかまれ、体をがくがくと揺さぶられた。
思考の海に沈んでいた垣根の意識は急激に浮上する。
目の前には少し怒ったような絹旗の顔。

自分で名乗ったにも関わらず、『初春』の二文字が自分を呼ぶものだと気付かず、ついシカトぶっこいてしまったらしい。
そういえば今俺初春じゃん。


「悪ぃ、自分のことだと認識できなかった」

「なんでですか、この場に初春はあなたしかいないでしょう。
ていうか私とあなたしかいないんですから例えば私があなたのことをビチグソ野郎と呼んでいたとしても超反応してくださいよ」

「なんでだよ、意味がわからねえよ」

ていうかなんでわざわざチョイスがビチグソ野郎だよ。
もっと他にオンナノコがいいそうな言語がたくさんあったはずだろうに。
絹旗の言葉選びのセンスの雑さに垣根はげんなりとする。

「うるさいですね、そんなことは超どうだっていいんですよ。
それよりもなんで自分の名前が認識できないんですか?もしかして超偽名ですか?」

下の名前も教えてくれないですし、超怪しすぎます。
そう言って絹旗は垣根をいぶかしげにみつめる。

はいそうです、と正直に言うわけにもなれず、垣根は学園都市第二位の頭脳をフル回転させて考える。
この場を切り抜ける小洒落た台詞を何か、何か、何か。

「えーっと、あれだ、ほら、つまり……」

絹旗の顔をみつめ、拳を握る。


「ずっとヒキコモリだったから、苗字で呼ばれる機会がなかったんだ」


そうして、搾り出した答えは初春の言ったお花係のうそよりも最低なものだった。


絹旗は、歯切れの悪い調子でそうですか、と呟き垣根から顔を背けた。
垣根もたまらず下を向く。
所詮自分も初春と同レベルの人間だったということか。
昨日散々馬鹿だと罵ってやった人物と自分がまさか同じ土俵で戦っていたとは思うまい。

ちらりと横を向いてみる。
絹旗が気まずそうにえー、だのあーだのうめき声をあげていた。
明らかに気を使われている。
あらやだ死にたい。

無言のまま淡々と時間だけが過ぎる。
実際には五分もたっていない短い時間だったのだが、なんだか気まずくなってしまった二人にはその時間がやたらと長く感じられた。
ぼっちはいいけどヒキコモリは許容範囲外だなんて差別だと思う。

もう無理だ、耐えられない。
なんだか目じりに涙が溜まってくるような気さえしたので、垣根は勢いよくベンチから立ち上がった。
帰ろう、そうだおうちに帰ろう。
こんな針の筵に座り続けるよりも寮監に見つかって初春に起こられた方が100万倍マシだ。
先ほどまで昔と今のギャップに苦しむ絹旗をどうにかしてやりたいとかちょっといいことを思っていたがもう無理だ。
むしろ自分がどうにかして欲しい。

さわやかな笑顔を顔に貼り付け、じゃあなと言い放ち公園の出口に駆けださんと地を蹴る。
が、その足が地を蹴る前に後ろから伸びてきた手にパーカーのフードを引かれまたベンチに座らされる。
垣根の口から再度蛙のつぶれたようなうめき声があがり、ついで咽る。
なにこれ本日二度目のデジャヴ。


「なんで超帰ろうとしてるんですか……」

そりゃあなんか気まずかったからに決まってるだろう。
しかしげほげほと咽る垣根にその言葉を紡ぐことは叶わない。
そんな垣根の様子など無視して絹旗は続ける。

「ヒキコモリだっていいじゃないですか!そりゃあ、ちょっと超なんて言っていいかわからなくなりましたけど……」

語尾が不自然に小さくなる。
ていうかちょっと超ってなんだ。どっちだ。

「せっかく、せっかく仲良くなれそうなんですから、逃げないでくださいよ……」

垣根のフードをぎゅっと握りながらなんだか泣きそうな声でそう呟く絹旗に頭を抱えたくなる。
最近、半泣きの女にこんな風に責められることが多い気がしてならない。

さてどうしたものか。
前回と同じパターンであればここで女の悲鳴があがるところだが当然そんなことはない。
絹旗にフードをつかまれたままあーだこーだと考えていると、絹旗の方から「名前……」と呟く声が聞こえてきた。

「あ?」

「……下の名前、教えてくれたら逃げようとしたこと許してあげます」

「なんで俺が悪いみたいな流れになってんだ?」

「だって女の子から逃げようとしたじゃないですか、それも二回も。跪いて超許しを請うてもいいレベルですよこれは」

「その理屈はおかしい」


「そんなに下の名前超おかしい仕様なんですか?大丈夫ですよ、学園都市なんてDQNネームの宝庫ですから。ちょっとやそっとで超笑ったりしませんよ」

「いや、まあ確かにDQNネームにはDQNネームだがそれが理由じゃねーよ」

「じゃあなんで教えてくれないんですか」

「ちょっととある人物とかぶってて……その、すきじゃねえんだよ」

「そんなの別に超どうだっていいじゃないですか」

「うるせえな、とにかく嫌なんだよ。がんばって初春で反応するように努力するからそれで我慢しろ」

むぅっと絹旗は拗ねたように唇をとがらす。
そして何か思いついたように笑顔になりパンと手を打ち鳴らした。

「そうだ!それならなにか渾名を教えてください!なにか家族間で呼ばれてる略称とかあるでしょうきっと!」

名案だというように顔を輝かせフードを強く引く。
首が絞まって苦しいのだが絹旗がそれに気付くことはない。

初春は垣根のことをていとく君と呼ぶ。これはモロなのでアウト。同様の理由で寮監の呼ぶていとくちゃんもアウト。
あと呼ばれたことがあるのは能力名の『未元物質』か皮肉をこめたメルヘン野郎か。
基本は苗字で呼ばれていたので渾名なんてもので呼ばれた記憶がない。


ああ、でもそういえば昔。
まだこの街に来る前。あいつらに泡銭で売られる前。
母親だったモノのやさしい声で呼ばれたあの名前……。


「……てい君……」

「なるほど、てい君ですか。私もそう呼んじゃって超おっけーですか?」

「勝手にしろ」

あといい加減フードから手を離せ。
そう言えば、すみません、と言って絹旗は垣根のフードから手を離した。

「それでは改めまして。超よろしくおねがいします、てい君。私のことも最愛ちゃんでいいですよ」

「呼ばねえけど」

「なんでですか呼んでくださいよ、ほら、りぴーとあふたみー、さいあいちゃん」

「もあいちゃん」

「……殴りますよ」

「児童虐待で訴えてやんよ」


差し出された手を少し考えたあと握り返しながら軽口を叩く。
ああそういえばこんなやり取りをついこの前もしたな、と本日三度目のデジャヴに垣根は軽く噴出した。

以上です
初春さんを期待してるひとはごめん
しばらくでてこない

>>1が生きてて良かった!

ひゃっほーーー!!このSSが俺の翼だぜぇえええ!

どれだけ時間かけてもいいから完結させてくれたらありがたい

乙乙
生きてたか良かった

>>1の書き方好きだわ。時間かけても問題無いのでどうか完結まで見届けさせてください

初春が出ない?
全く問題無いな、もあいたんが出るならぶっちゃけ植物園なんてどうでも…
おや、こんな時間に匿名のメールが来たようだ

こんにちはこんばんわ生きてます>>1です
ちょっとですが投下させてもらいます

あと絹→浜描写があるので注意


人口の殆どが学生である学園都市の昼間の公園に人影があるわけもない。
晴れて不登校仲間となった絹旗と垣根は、二人以外誰も存在しない公園で意味のない雑談に興じた。
昨日みた映画の話、よく行くファミレスのドリンクバーの種類が豊富だという話、
最近セブンスミストにできたクレープ屋のクレープは絶品だという話、
最近漸く本当の意味で、ひとつになれた仲間の、話。

殆ど絹旗の話す内容に垣根が相槌を打つという形で継続される言葉のキャッチボール。
聞き役に徹しているような形の会話でも、初春以外の人間との会話はなんだか新鮮で面白かった。


話をしてみると、絹旗最愛という少女は少し変わった少女だった。
何よりもB級を求め、何よりもB級を愛す。
時々それがCだのDだの更に奥深くまで潜ってしまうがそれはお愛嬌だ。
B級映画について話をするその様はなんだか輝いており、垣根もわけもわからず圧倒された。


だからだろうか。そんな彼女の愛する男も、どうやらB級のようだった。


「それでですね、その浜面っていうのは超駄目男で超浜面なんですよ」

「超浜面の意味がわからん。スーパーサイヤ人の親戚かそれは」

「そんな超大層なもんじゃあないですよあれは。まあ時々、本当に超時々ですけど、かっこいい時もありますけどね」

どんどん小さく早口になり、最後はごにょごにょと何言ってるんだかわからない形になりながらも絹旗はそう紡ぐ。

―――浜面仕上。
先ほどから絹旗との会話の中に10回に1回くらいの頻度で現れるその名前の主は垣根の記憶が正しければ、あの日、能力追跡を守るために戻ってきた無能力者だ。
確か、原子崩しを潰して最終的にアイテムを壊滅に追い込んだ野郎だったはずだが、どんな魔法を使ったのか。
またアイテムを再建し、なかよしこよしに興じているらしい。
あの原子崩しを倒したと聞いたときも驚いたが、さらに手懐けたという事実は賞賛に値する。
自分が見たときはただのゴミクズのようなチンピラだったはずだが、本当に人は見かけによらない。

そんなゴミチンピラこと浜面は能力追跡、原子崩しに続いてどうやら絹旗までも手懐けているようで、垣根は更に感心する。
お世辞にも顔が整っているとはいえない馬面、しかも無能力者。
奇跡を打ち消す右手を持っているわけでもないし、魔法が使えるわけでもない。
それでも戦って、居場所を手に入れた。居場所を、作ってやった。
それがどれだけ凄い事か垣根だって理解できる。垣根にだってわかるのだから、近くで見ていただろう絹旗は言わずもがなだったのだろう。


不良が犬を拾うような、いつも意地悪なあいつが突然優しくなるような。所謂ギャップ。

下っ端だと思っていた自分より弱いチンピラが、自分をきれいな場所へと引き出してくれた。
きっとそのギャップはすさまじい。


絹旗からその言葉を直接聞いたわけではない。
全部垣根の憶測だ。
でもきっと、これは、間違っていない。



「……なあ、お前、その浜面ってやつのことすきなの?」



聞いた瞬間絹旗の握る缶がメコリとへこんだ。
飲みかけの黒豆サイダーが飲み口からドクドク溢れる。
ニットワンピースの袖口が黒く変色していくが、絹旗はその事実に気付かないのか、はたまた気付いていてそのままにしているのか、
袖口をシカトして油の差してないロボットみたいな動きで垣根の方を見た。


「ななななな、ななな何言っちゃってるんですか、てい君。そんな超ばかみたいな事が超起こるわけないじゃないですか。
今の話のどの部分を聞いてたらそんなありえない話が超出てくるんですか?ちゃんちゃらおかしくて超茶が沸きますよ、へそで」

「どこをどう聞いててもそう言う風にしか聞こえなかったんだが。だってお前そいつの話ばっかしてたしな」


気付いてなかったのか?そう笑ってやれば、手を振り回しながらなにやら弁解の言葉を口にした。正直、手を振り回すたびに黒豆サイダーの汁がこちらに飛んでくるのでやめていただきたい。


「たしかに!その!超嫌いではありませんが!そういうのでは超ないですし!すきとか、そんなの!別に……!」

「いや顔真っ赤にしてそんなこといわれたって信憑性ねえよ。いい加減に楽になれ」

「だから超違うって言ってるじゃないですか!」

「はいはい、うそうそ」

「だからっ……!」

黒豆サイダーの缶を更に握り潰して絹旗は叫ぶ。
垣根の顔に残りの黒豆サイダーがかかったが謝ることもせず、そのまま俯いてポツリと呟く。


「滝壺さんがいるのに……、そんなこと……、超あるわけないじゃないですか……」


泣きそうなその声を聞いて、垣根はとりあえず黒豆サイダーの件について怒鳴るのをやめた。

以上です
少なくてごめんぬ

明日仮免で吐きそうなので勉強してくる

>>1乙!
待ってたよ!
そして舞ってるよ!

来いいいてええええたあああああ!!!!!
>>1超乙!
もあいちゃんかーわいい

もあいたんが可愛いすぎて生きるのが楽しいです
ああくそ可愛いなぁ

もあいちゃんマジモアイ!

仮免受かったので投下します


泣きそうな少女に追い討ちをかけるほど自分の性根は腐っていない、と垣根は思う。
いくら自分の顔が黒豆サイダーでべたべたでも、その原因が目の前のこの女だったとしても。
理由はどうであれ自分のせいで泣きそうなのだ。
だから、今にも暴れだしそうな自分の能力を理性で押さえ込む。
そんな垣根の葛藤を知ってか知らずか、絹旗はまだつぶれた缶を握り締めたまま、俯いている。


(こういう時、どうしたらいいいのかとか、よくわかんねえな)


何しろそういったことに対しての経験値が物凄く少ない。
泣いて縋ってくる女を殺したことや、泣いて善がる女を貫いた経験であれば何度となくあるが、唇をかみ締めて泣くまいと耐える女の慰め方などよくわからない。

こんな時、初春ならばどうするのか。
きっと「泣いてる女の子にはやさしくしてあげるのが男の子ですよ、ていとく君」なんて甘っちょろいことを言うのだろうなと思う。

やさしく、やさしくするというのはどうすればいいのだろう。
垣根は自分の記憶を探る。
優しくされた記憶が極端に少ない自分の脳内を探る、探る、探る。



そうして思い出されたのは、初春が自分の頭を撫でる、あたたかい手だった。


そのやさしい手の記憶を手繰り寄せながら垣根は絹旗の頭に手をのばす。
あんなにうまくはできないかもしれない。
力の加減だってこれであっているのかわからない。
それでも絹旗の頭の上で、よしよしとその手を動かす。


「そいつにすきなやつがいよーと、いまいと、お前の心は自由だろ。別にすきだっていいじゃねえか」


さらさらと流れる髪の手触りを感じながら、垣根は自分がそうしてもらったように手を動かす。
一瞬絹旗の肩がびくりと震えたが、振り払われるようなことはなかった。

そのまま頭を撫で続けていると、俯く絹旗の手の甲に雫が一滴、二滴と落ちた。


「……年下に、慰められるなんて、格好悪すぎて超涙が出てきます……」

「そうか」

「だから、この涙は、悔し涙です。浜面のことも、滝壺さんのことも、超一切関係ありません」

「おう」

「だから、これはふたりのせいでなくて、超てい君のせいです」

「俺かよ。まあいいけどな」


自分のせいならば仕方ないと、垣根は絹旗の涙がとまるまでその頭を撫で続けた。

***

大分落ち着きを取り戻した絹旗は自分の目元をニットワンピースの袖口でごしごしと拭った。
袖に染み込んだ黒豆サイダーが目に入ったせいで、涙目になってはいたが、先ほどのような悲壮感はもう感じられない。


「落ち着いたか?」

「はい、もう平気です。というかてい君のせいなんですから、もう少ししおらしくしててください」

「なんだか酷く理不尽な物言いだな、おい。まあ、そういうことにしといてやるよ」


垣根が笑ってそう答えると、絹旗も同じように笑った。
赤く染まる目元がまだ痛々しくはあったが、きっともう大丈夫だろう。

ベンチから勢いよく立ち上がり、絹旗は垣根に正面から向き直る。
立っている絹旗を見上げる形になり、垣根は顔をあげた。
そこには、先ほどまで泣いていたこどものような顔ではなく、どこかその体に不釣合いな大人びた表情で笑う絹旗がいた。


「仮に……。仮に、もし、私が浜面のことがすきだったとして、それはやっぱり口に出しちゃいけないです。
浜面も、滝壺さんも、超甘ちゃんですから、そんなのがばれたら多分、超決定的に、何かが変わっちゃいます。
私は今のアイテムが超すきで、ここだけがいてもいい場所なんです。
だから、私は浜面なんてすきじゃないです。すきになんて、超ならないです」

何かを諦めたようにそう言って笑う。
まるで自分に言い聞かせるようにいった絹旗の言葉が、垣根にはひどく哀しいもののように響いた。


「お前は、それでいいのか?」

「それでいいも何もそうなんですから。他になんにもありませんよ」


そう言ってまた笑う。
結局のところ、絹旗本人がそれでいいと言っているのだ。
垣根にはどうすることもできない。


(まあ、そこまで親身になってやる義理もねえしな……)


そう考えてからまた、そういえば初春ならばこんな時どうするのだろう、
と考えている自分がいて、随分感化されたものだと垣根は少し自嘲気味に笑った。

***

「それでていとく君は今日はどうやって一日暇を潰してたんですか?」


晩御飯のさばの味噌煮をつつきながら、初春は垣根に尋ねる。

あのあとすぐ、アイテムとファミレスで飯を食うという絹旗と別れ、公園の水道で顔面をがしがしと洗い、電気屋を巡ったり、
公園の木に蜂蜜を塗ったり、ありの巣の隣に偽蟻の巣を作ったりして独り遊びに興じていたのだがすぐに飽きて、二時過ぎには寮に戻りPS2と戯れていた。
幸い寮監には見つからなかったがこれがこれからも続くとなるとぞっとする。

もぐもぐと白米を咀嚼しながら今日の出来事をどのように初春に話そうか垣根は考える。
事細かに本日の顛末を話して聞かせてもいいのだが、なんだか面倒くさいし、それに一人遊びの内容がなんだか恥ずかしい。
少し考えてから、米を嚥下して口を開く。


「……女子中学生と恋バナ」


目の前の初春が怪訝な顔をしたが気にせず白米を口に放り込んだ。

以上です
いつも投下量が少なくてすみません

あと絹旗編はもうちょっとだけ続くんじゃ

乙、てい君マジ天使

乙!

木に蜂蜜は俺もやった記憶があるな
クワガタが欲しくて必死だったあの頃が懐かしい

もうちょっとと言わずずっと続けても問題ないな

ないな

問題なんてある訳がなかった

問題?何それおいしいの?

そろそろいいだろ?

まだか~?

いつもいつも間が空く上に短い投下で申し訳ありません>>1です

とりあえず投下します


翌朝同じ時刻、垣根帝督は昨日と同じように公園にいた。
理由は簡単、初春に追い出されたからである。
学校もない、やることもない。そんな人間が日中うろついていても何も楽しいことがないことをあの女はわかっていないと垣根は思う。
それでも、寮監に見つかったらだとか、家の中ばっかりだと体に悪いだとかそんな風に少し困った顔で言われてしまうと従うしかなくなってしまう。
自分をこんな風に操れる人間なんて今までいなかったのに。
何もかも始めてづくしのこの生活をなんだかくすぐったく感じながら、昨日蜂蜜を塗りたくった木のひとつに目を向けた。


「なん……、だと……!?」


予定ではクワガタやらカブトやらがわらわら群がっているはずだった。
酒池肉林の入れ食い状態でうっはうはのはずだった。
しかし現実はどうだろう。
垣根が蜂蜜を塗った部分には鈍く光る体を持つカナブンと斑模様の蛾の大群が群がり、女こどもが見たら泣くんじゃないかという戦場を作り上げていた。
思わず垣根も目をそらす。
グロい。これはちょっとグロい。


「……まあ今日日カブトムシとかデパートで買えるしな。わざわざ野生でハントする必要性とかまったくねえし、ねえし……」


ちょっと涙目になりながら木から一歩二歩と後ずさる。
それから一目散にブランコのある場所へと駆け出した。

***

「あ!てい君!!」

半泣きでブランコを漕いでいるとなじみの薄い名前で呼ばれた。
涙を拭って顔をあげる。
そこには昨日と同様絹旗がいて、垣根の顔を見るなりおろおろと慌てだした。


「ど、どどど超どうしたんですかてい君!涙目っていうか泣いてるじゃないですか!」

「都会の自然に放浪されただけだ、気にするな」

「超意味がわからないんですが……。ああ、こすっちゃだめですよ!真っ赤になっちゃいますよ、ほら」


そう言って自分の袖口でごしごしと垣根の顔を拭う。
結局それならば手で擦っても同じなんじゃあないかと垣根は思ったが、
絹旗があまりにも心配そうな顔をするのでそのままにさせておいた。
我ながら丸くなったなあと思う。


「てい君大丈夫ですか?超落ち着きました?」

「おぶっ!顔、擦りながらっ!話しかけんの、ぶっ、やめろっ!いい加減いてえ!!」

「それは超失礼しました。で、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」


多少ひりひりと痛む顔をしかめながら垣根が答える。絹旗はほっとしたようにへにゃりと笑い「それはよかったです」と口にした。


「しかし今日も今日とて独りブランコですか。超寂しいですね」

「お前だって独り公園じゃねえか。哀しさで言ったらどっこいどっこいだ」

「まあそれもそうですけど。結局、人は超一日ではそう簡単に変われないって訳ですよ」

「何だその口調。しかしなるほど違いない」


垣根の横のブランコに座り、雑談に興じる。
内容のない他愛のない会話。
不思議と悪い気はしない。


垣根の漕ぐブランコと速さをあわせるように足を動かしながら絹旗は楽しそうに言葉を紡ぐ。


「といわけでてい君」

「ん?」

「今日も超楽しくお話をしましょう!」


とりあえず垣根の本日の予定が決定した。

***

昨日と同様、缶ジュースを片手にどうでもいいような話をつらつらとする。

しかし昨日と違った点がふたつ。

ひとつは、垣根も相槌を打つばかりでなく、例えば先ほどのカブトムシの話だとか、“姉”の話だとか、当たり障りのないことを話して聞かせたこと。

もうひとつは、不自然なほどに。
本当に不自然なほどに絹旗の口から“浜面”と言う単語が紡がれなくなったことだ。


きっとそこを敢えてつつくような真似をすれば、昨日の惨劇が再び襲い掛かってくるのだろう。
だから垣根は絹旗に合わせる。
不用意にそのことについて触れない。

時折絹旗が「はま……」とだけ言って口篭るところも見ない振りをしてやる。
哀しい顔も気付かない振りをしてやる。

泣いたら面倒くさい、また黒豆サイダーを顔面に浴びるのはごめんだ。ただそれだけだ。
別に自分が優しいからとか、そういうことは一切ない、と思う。


それなのに、帰る間際、絹旗は笑った。

「てい君は超優しいですね」そう言って、笑った。

***

「なあ、かざり。俺ってやさしいか?」


垣根の正面でセロリをもしゃもしゃとする初春に、今日絹旗に言われたことの真偽を尋ねてみた。
初春は黒目がちな目をきょとんとさせて垣根をみつめる。
いきなり何を言っているんだろうこの子は、という視線がなんだか痛い。


「質問の意図がわからないんですが、なんなんですか?いったい」

「いや、だから、俺ってやさしいと思うか?」

「ていとく君がやさしいか、ですか?いや、まあ普通にやさしくないんじゃないですか」


今日だってお夕飯の準備、全然手伝ってくれませんでしたしね。そう言って初春は少しおかしそうに笑う。
そんな初春の反応になんだかむっとくるものがあったが、まあそうだよなあ、とセロリを初春の皿に移しながら垣根は思う。

たとえば初春のような人間をやさしい人間だと言うならば、垣根はきっとその正反対の位置にいるだろう。
人を踏みにじって、踏み潰して。堆く積み上げられた屍の上で生を啜り生きてきたような自分が優しい人間であれば、世界の半分以上の人間が聖者だ。

味噌汁を啜りながらそんなことを考えていると、垣根の頭に温かいものが乗せられた。初春の、手だ。


「でも、まあていとく君素質あるとおもいますよ。やさしくなれる」


わしゃわしゃと垣根の頭を撫で回しながらそんなことを言う。
なんだそりゃ、と垣根が心底訳がわからないという風に呟くと、「だから、やさしい人間になれる素質ですよ、素質。」と笑った。
意味がよくわからない。


「お前、何見てたらそんな風に思えんの?ばかなの?死ぬの?」

「ばかじゃないですし、死にませんけど。でもありますよ、絶対。」


それがまるで、当たり前のことだというように初春は力強く言葉を紡ぐ。


「だって、ていとく君はわたしの弟なんですから」


そんな根拠にもならないようなこと言って初春は微笑んだ。

本当にいきなりなにをいいだすんだこいつは、と垣根は思う。
弟だからなんだって言うのだろう。
そんな腹の足しにもならないようなことが、何の関係があるのか。
だいたい垣根はほんとうのところ初春の弟なんかではなし、むしろ年齢だけなら年上だ。


それでも、初春が自信たっぷりに、そんなことをいうものだから。

垣根も少し笑って、「それもそうかもな」と答えた。

以上です

もっとはやくかけるように頑張ります

>>1乙です
とミサカは遅筆でもがんばってくれる>>1に惜しみない賞賛を送ります

乙、待ってたぜ

>>1
カナブンと蛾の大惨事昆虫大戦に涙目なていと君(元暗部)がかわいいww

乙!待ってた!


絹旗ちゃん可愛い、いや本当に超可愛いです

絹旗かわいいよ絹旗

さりげなくセロリ苦手になってるてい君可愛い超可愛い

あれ以来セロリが苦手になり、今では昆虫で半泣きになる第二位とか可愛いww

どうか初春さんのことも思い出してあげてください

レスありがとうございます>>1です!
ちょっとはやく帰ってこれたので投下します

***

次の日も、その次の日も、垣根は公園で絹旗と他愛のない話をして過ごした。
だんだんそれが当たり前になりってきて、そのうち朝家から追い出されるのがあまり苦痛でなくなってきた事実に気付かない振りをしながら、今日も垣根は公園へと続く道をてくてくと歩く。


「てい君」


公園に辿り着けばみなれたニットのワンピースが、まるで飼い主を見つけた犬のようにかけてきた。
こういうのも、存外悪くないと思う自分にもやっぱり知らない振りをする。


「おはようございます、てい君。今日も寂しく独り公園ですか?」

「お前に言われたくねえんだけど。そしておはようございます」


笑顔で軽口を叩きあいながら最早定位置となるブランコに腰掛ける。
いつものように適当にぶらぶらと足を動かしながらくだらない雑談に花を咲かせ、笑いあう。
暗部にいた頃からは考えられないような温い日常――。
きっと絹旗も同じなのだろう。
時々戸惑うように苦笑するそれは自分とよく似ていると思った。



「それで、私がお花を摘みに行っている隙に、滝壺さんと麦野だけ超ナンパされてたんですよ……!私がいる時はそんなことなかったのにですよ!?
しかも1人はファミレスメニューにない鮭弁超がっついてる女ですよ!?ちょっとあれは腹が立ちましたね」

「お前ナンパしてるとなんかロリコンに見えるからじゃね?」

「そんなことは超ないですよ!見てくださいこの超はみ出さんばかりの色気を!」

「いや、すまん。まったくもって感じられん」

「小学生にすらそんなことを言われるなんて……!見てくださいよ、この超計算尽くされた絶対領域!萌えるでしょう?」

「自分で言ってて悲しくなんねえのそれ?ガキはガキらしく旗ついた飯食ってろよ」

「てい君のが超ガキじゃないですか!ランドセル背負って超ルンルンで学校に通ってるようなガキじゃないですか!」

「まあ学校行ってないけどな。俺も、お前も」

「いや、まあそりゃそうなんですが……」


絹旗の消え入りそうな語尾を聞きながら、垣根は思う。
本当は、こいつ学校に行ってみたいんじゃないのか、と。
こんなところで、ブランコに乗って、くだらない話を同じような境遇の少年とするのではなく、
学校に行って、同じくらいの年の人間と、接してみたいのではないか、と。


別段垣根と話すことが嫌なわけではないだろう。むしろきっとこの時間を大切なものだと思っているはずだ。

しかし、きっと恥ずかしいのだ。
新しく与えられた世界から逃げ、小さな垣根に縋っている自分が。

そして憧れているのだろう。
普通の十代の女の子がするような。
例えば教室での他愛ないおしゃべりだとか。
例えば机を寄せ合ってでのお昼ごはんだとか。
そんななんでもない、少し退屈な毎日に。

少し前ならば手が届くはずがないと思っていた毎日に。


「…なあ……」


垣根の口から出た言葉は思いのほか深刻な響きをもって絹旗にとどいた。
先ほどから打って変わって真剣な垣根の声に絹旗の双眸が不安に揺れる。


「……お前、学校行けよ」


届いた言葉に絹旗は目を見開いてみつめた。
信じられない、その目がそう言っているようだった。


「何、言っちゃってるんですか、てい君。だから、今更そんなの、無理だって超言ってるじゃないですか……!」

「そう思ってるのはお前だけだろ。別に誰もお前が学校行くのなんて止めてねえし、
もう何のしがらみもねえんだろ。じゃあ問題ねえじゃねえか」

「できないですよ……!いっぱいいっぱい人に言えないことして!汚いことして!
今更、今更どの面下げてあんなきれいな場所に入っていけって言うんですか!
てい君は私が何をしてきたか、知らないからそう言うことがいえるんですよ……!」

「俺も似たようなもんだって前言っただろ、あらかた想像はつく。でもそれ言い訳にしてたら先になんかすすめねえだろ。
自分のしてきたこと、忘れろとか、正当化しろとか、そんなことは言わねえ。
どんな理由があるにしろ、自分がクソ野郎だってことは頭に叩き込んでおけ。
それでも、そんなクソったれなそれがテメェの人生だ。うじうじうじうじ停滞してねえで、すきに生きろよ」

「……ッ!」


絹旗は勢いよくブランコから立ち上がると垣根をにらみつけた。
その目に光る涙を見て、ああこいつを泣かすのはこれで二回目だな、とどうでもいいことを考える。
スッと、絹旗が息を吸い込む音が聞こえた。
顔をくしゃりと歪ませて、裏切り者にむかって口を開く。


「もう……これ以上話しても、時間の無駄です……。今まで超ありがとうございました、もうここにはきません」


哀しいのを我慢するこどもみたいな声で、絹旗は告げる。
垣根は寂しそうに笑って、そうか、と答えた。

一瞬、苦しそうな顔をして、絹旗はくるりと後ろを向き、出口へと走り出した。
そんな絹旗の後姿を見送りながら、垣根はまたブランコを漕ぐために足を動かす。
となりでは無人になったブランコがゆらゆらと揺れていた。


まちがったことを言った覚えはない。
それでも、ひどいことを言ったという自覚はある。

ほんの一時であるが、自分に縋ってくれたオンナノコ。
それを切り捨てたのは紛れもない事実だ。


(やっぱ俺にやさしさの素質なんてねえよ、かざり……)


ここにはいない“姉”に向かって思う。


先ほど絹旗に言った言葉は、垣根自身にも言える事だ。
自分がしたことはどうやったって覆らないし、自分がクソ野郎だということは代わらない。
それでも一緒にやり直そうと言ってくれた人間がいた。
真っ当な生き方を教えてやると言ってくれた人間がいた。

だからくそったれでも、血まみれでも、また自分の人生をすきに生きてみようとおもった。
暗闇ではなく、光の中で。


絹旗もそう思ってくれたらいいと、垣根は思う。
自分とどこか似た、光の中に放り出された少女もそう思ってくれたら、と。

結果は惨敗で、絶縁宣言までされてしまったのだが。
やはり、初春のようにはいかないものだ、と垣根は苦笑する。


「ああ、くっそ。うまくいかねーもんだなあ」


誰に言うでもなく呟いた言葉がブランコのきしんだ音にかき消された。

***

その次の日も、同じように垣根は公園に向かった。
絹旗の姿は当然ながら、ない。

若干の寂しさを覚えながら今日も今日とてブランコを漕ぐ。
あの子犬のような笑顔がもう自分に向けられないのだということを考えると、胸が少し痛んだ。

寂しさをかき消す様に勢いよくブランコを漕ぐ。
なんだか余計にむなしくなってきて、漕ぐのをやめ、揺れるブランコにそのまま身を任せた。

見上げた空は馬鹿みたいに青くて、なんだか無性に叫びたいような衝動にかられる。
ためしに空に向かって大声で叫んでみた。


「ちんこぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


なんだか無性にすっきりしたような気持ちにない、もう一回叫んでみようと息を吸い込んだところで咽た。
げっほげっほと涙目で咳き込んでいると、若干引いたような声で「えーっと……、大丈夫かぁ?」と声を掛けられた。
顔をあげる。

野暮ったいジャージに、パサついた茶髪。
あほなチンピラを絵に描いたらこいつが出来上がるのではないかと風貌の男が若干顔を引きつらせ、そこに立っていた。垣根はこいつを知っている。


「えーっと、猥褻物の名前を高らかに叫んでるとこ申し訳ないんだが、お前がてい君?でいいのか?」


若干挙動不審なそぶりを見せながら、垣根に向かってそう確認する。
その際、少し小首をかしげるような動作をしたのだが、こんな大男がやっても全然かわいくない。むしろ吐き気がする。
垣根の眉間に皺がよる。
それをどう勘違いしたのか、チンピラはわたわたとあわて、「いや、俺怪しいもんじゃねえんだけど!人攫いだとかショタコンじゃねえから!!」と付け足した。
そしてコホンと一度咳をしてから垣根に目線を合わせるように屈む。


「俺は浜面ってもんなんだけど、絹旗の仲間って言ったら、なんとなくわかるか?」


世紀末帝王兼、下っ端チンピラ兼、絹旗最愛の思い人、浜面仕上はそう言ってニカっと笑った。

以上です

ようやく世紀末帝王が出せて満足です

いいタイミングだったか、乙ぱい

来てたぜやっほー!

絹旗可愛いよ絹旗


なぜ卑猥物の名前を叫んだしww

他に叫ぶことなかったのかwwww

他に・・・うんことか?もしくはまn(ry

ごっ、がァァああああああああッ!!!

かs

そろそろ一カ月か

おい

そして七週間になる まだー?(AA略

まだー?

スレが落ちないって事は>>1が保守してるワケで

2ヶ月目オメデト

更新は未だなのか……?

あ、もうこれこねぇわ

もう書かないなら書かないって言えば良いのにね
書かないってのが言いにくいのか?

まだか

>>304
ageないでくれよちくしょおお。。

追いついてしまった・・・
マダー

土下座レベルで遅刻してますすみません>>1です

リアルと原稿がアレで、本当にすみません
ついでにパソコンが寿命を迎えまして本当にすみません

生存報告様に急いで書いたのともしもしで書いたのでいつもよりさらに短いです

それでは投下します

***


「ほい、どうぞ」
「……どうも……」


目の前に差し出されたいちごおでんを受け取り律儀にお礼をいう。
初春の躾の賜物であるが、躾けられた垣根本人はその事実に気づいていない。
紫の上計画は本人の預かり知らぬところで着々と進行中であるが、
今この場面とは一切関係のない話なので割愛させていただく。


垣根の隣、いつもならば絹旗の定位置であるブランコに浜面はどかりと腰をおろす。
ブランコが懐かしいのか目をキラキラさせて、いざ漕ぎ出さんと大地を蹴りかけたので、
垣根はあわててそのアホヅラに声をかけた。


「ちょっとまて、ブランコを楽しむのは後にしろ。
お前は一体何をしに、つうか俺に何を言いにここにきたんだ?
絹旗のことで俺に文句言いに来たんじゃねえのか?」

「あー、そうだった。ブランコの懐かしさについハッスルするとこだった。
お前に言いたいことがあって来たんだよ、てい君」


やはりか、と垣根は思う。
絹旗を泣かせたから。
大切な仲間を傷つけたから。
この絹旗のヒーローは文句を言いに来たのだろう。
間違ったことを言ったと思っていないし、後悔だってしていない。
だから、文句の一つや二つ、それで満足してくれるのであれば甘んじて受けようと思った。
流石に手でも出されたら自慢の六枚羽根でぶっ飛ばしてやるが。


ただ、ひとつ、垣根には気に食わないことがあった。
一方的に文句を言われる前に、これだけは言ってやらねばと思うことがあった。
言葉を続けようとする浜面に向かって口を開く。


「どうでもいいが、てい君はやめろ。虫唾が走る」

「ええ!?絹旗はそう呼んでんじゃん!」

「女に呼ばれんのと男に呼ばれんのじゃ全然ちげえだろこのチンカス。それぐらい察しろ皮被り野郎」

「なんか酷い言葉でなじられた!小学生に!傷つくからやめて!
つうかてい君って呼び名しか知らないんだからしょうがねえじゃん!」

「一応初春っていう苗字がある」

「畜生……なんなのこの仕打ち……。じゃあ初春って呼べばいいのか?」

「だが、その名前だと反応できねえ」

「意味ねえじゃん!!」


なんなの最近の小中学生って俺をバカにしなきゃ生きていけない生物なの?
浜面の悲痛な叫びが二人っきりの公園に吸い込まれて霧散する。
その面持ちがあまりに悲惨で、思わず同情しそうになる。
初春菌に侵された垣根の脳内は以前より割とお花畑だ。
ミジンコみたいな浜面になけなしの優しさをもって接してやる。


「わかったおれも鬼じゃねえ。初春って呼ばれたらなるべく反応できる様、努力してやる」

「でも俺大分てい君呼び板についてきてんだけど」

「気持ちが悪い」

「いまさら呼び名変更とか正直たるい」

「お前さっき他の呼び名知らねえからとか言ってたじゃねえか!他のがあるならそっち使えよ!」

「でも呼ばれて反応遅れる様なやつよりも、呼ばれ慣れてるやつの方がきっとてい君も気が楽だと俺は思う」

「じゃあ俺もテメェのこともしーちゃんって呼んでやるからな!
その年でしーちゃんとか恥ずかしい渾名で呼んでやるからな!」

「ああ、うん、それは別に構わねえけど」


構わないのか、まじか。
垣根は額然とする。
しかし、もうこうなったら後に引けないのが垣根クオリティである。
人気のない公園で、妙に可愛らしい渾名で呼び合うチンピラと小学生の組み合わせは果てしなくシュールだった。

以上です
今度はもう少し書き溜めてから来ます

おつ!

乙!

よかった
生きてたんだね

超乙!

待ってたよ!乙!

書き溜めると言った癖に全然書きたまらなかったのでもう投下します>>1です

今回ももしもしで書いてるので少ないです

***

それからかれこれ1時間。
浜面はなかなか本題に入らず、やれ麦野がどーした、やれ絹旗がどうした、
滝壺マジ俺のオアシス、沼地だけどという話を垣根相手に展開し続けた。
正直どうだっていい。


「それでな、やっぱ男として好きな女の一人や二人守れる様になりたいわけだ、俺も。
てい君も男ならわかんだろそのへん?」

「わかった、もうわかった。だからいい加減本題入れお前」


せっかちな男はもてねえぞ、と笑う目の前の馬面に殺意が湧いてくる。
しかもなまじっかこの男がどこぞの幻想殺しまでとはいかなずとも、
十分なフラグキングであるという事実がさらに殺意を増長する。
リア充死ね。氏ねじゃなくて死ね。

垣根から漏れ出る殺意を感じ取ってひぃ、という悲鳴じみた声が浜面から上がる。
情けない面構えがさらに情けないことになってなんだか哀れだ。

そうしてわかったわかったと苦く笑って、丸めていた背中をしゃんと伸ばす。


「俺はな、お前に礼を言いに来たんだ」


心底似合わないまじめな顔でそう告げられる。
礼ってなんだ、お礼参り的なそれか。
馬鹿みたいい口をぽかんと開けたアホ面をさらしたあと、
垣根は意味がわからないとでも言うようにはあ?と一言呟いた。


「なんで、礼?あいつ、泣いてたんだろ?」

「おお泣いてたぞ、ガキみたいにわんわん。おかげで俺の一張羅、鼻水でぐちょぐちょ」

「だったら……!」

「お前、言ってくれたんだろ絹旗に。好きに生きていいって」


垣根の言葉を遮るようにして浜面は紡ぐ。


「絹旗はまあ確かに泣いてた、わんわん。
でもお前酷いこと言われたーって泣いてた訳じゃなくて、逆にお前に酷いこと言ったって、もう嫌われたってわんわん泣いてたんだぜ。友達だったのにって。
あいつだって本当はわかってるんだ。どうするべきかなんて、とっくに」


何かを思い出すように空を見上げ、それから垣根の方を向く。


「あいつがどこまで話したのかしんねーから曖昧な言い方しかできねえけど、
俺もあいつもあんまお天道さまに顔向けできねえようなことばっかやってたわけ、これまで」


そう言って自嘲気味に笑う。


「でもそれもようやっと終わりになって、さあ青春を謳歌しようじゃねえかってなった時思っちまったわけだ。
こんな自分が幸せになっていいわけがないってさ」


ばかだよなあ。
やさしげに目を細めて呟く。


「俺はさ、そんなお優しい人間じゃねえから、正直な話、滝壺とか絹旗とか、
そう言う周りのやつらが笑って過ごせるんだったら後のことは割りとどうだっていいんだ。
割り切れる。これからの幸せのために生きていける。
でもあいつは、絹旗は違ったみたいで、まだ、過去に囚われてる。」



ブランコのぎしぎしときしむ音と浜面の声だけが公園に響く。


「俺たちはさ、あいつのこと守ってやることはできても、背中を押してやることはできなかったんだ。
あいつが先に進めない理由も理解できるから、どうしても過保護になっちまって、全部先送りにしちまってたんだ。
いつか時間が解決してくれるだろう、って。本当はそんなんじゃあ駄目なのにな。」


浜面は再度背筋をしゃんと伸ばして、そうして垣根に頭を下げた。
命乞い付き土下座ならば経験があるものの、こんな風に頭を下げられるのは初めてで、垣根は妙な居心地の悪さを覚える。

「だから、ありがとうてい君。絹旗が前に進むきっかけをくれて。
まだ、時間はかかるかもしれねえけど、それでもきっともう大丈夫だ。
俺の家族に向き合って、背中を押してくれて、本当にありがとう」


顔をあげ、朗らかに笑う。
その顔になんだか照れくさくなって、垣根はふいと顔をそらした。
そうして一言「かいかぶりすぎだ、ばーか」と呟いて手に持つ缶をぐっと煽った。

***

浜面と公園で話をしてから数日が過ぎた。
垣根は未だ1人でブランコを漕ぎ続ける毎日を続けている。
そろそろ別の遊びを見つけるべきだろうとは思っているのだが、なかなか踏ん切りがつかない。
もしかしたらあのニット姿がまたひょっこり現れそうな気がして、ただ毎日ブランコを漕ぎ続ける。

ぎこぎこと垣根の動きに合わせてブランコが軋む。
少し前までは同じように揺れていた隣のブランコが揺れることはない。
強く漕ぎ出す。ぎいこぎいこ。軋む音が大きくなる。
隣のブランコはやっぱり静かなままだ。

漕ぐのをやめて、絹旗のことを考えてみた。
浜面は、あいつはもう大丈夫なのだといった。
それなら、もういいじゃないか。
それでも何故だかこの公園から動く事が、垣根にはできない。
足で砂をいじりながら、何かきっかけが欲しいな、と思う。
何か、この公園から動き出すための、きっかけが。


随分と自分は丸くなったものだ、と自嘲気味な笑みがこぼれる。
昔はこんな風に他人を気にかけることなんてなかったというのに。

なんだかセンチメンタルな気分になってきたので、今日はもう帰ろうとブランコから腰を浮かす。
よっこらせー、と年寄り臭い掛け声とともに立ち上がる。
視線を出口に向けると、見慣れない制服姿が見えた。
チェックのプリーツスカートに、クリーム色のブレザー。胸元には赤いリボン。
見慣れない制服に身を包んだその人物を、垣根は知っている。
頭がうまく働かない。


「てい君!!」


なつかしい、あの子犬みたいな、声がした。

以上です

絹旗編次くらいで終わります、多分

乙、 待ってるんで完走してくれー

乙でした
いつまでも待ちますよ

乙、次も待ってる

相変わらずGJ
次回にも期待


ていとくんショタ化とか胸熱
子供の触れ合いがリアルでもにょもにょする
あと浜面大人で珍しく格好いいぞ。この浜面はいい浜面

もちろんほっぺにチューはありますよね?
ありがとうのお約束です氏ね

あけましておめでとうございます>>1です

ほっぺにちゅーはありませんが投下します


あんなに会いたいと思っていたくせに、いざ目の前に会いたいと思う人物がいると、体も頭もうまい具合にはたらかないらしい。
公園の出入り口に立つ制服姿の少女、絹旗はゆっくりとブランコから半分腰を浮かせた状態で固まる垣根の前に立った。
垣根の頭はまだうまく回らない。


「超お久しぶりです」

「……お、おお……」

「元気でした?」

「……おお」

「浜面に会ったらしいですね」

「……おお」

「さっきから『おお』ばっかりじゃないですか」


くすくすと笑いながら絹旗は垣根の隣のブランコに腰を下ろす。
垣根もそれに倣って再度そこに腰掛けた。


先ほどまで無人だったそこに、絹旗の姿がある。
その光景になんだか現実味がなくて、都合のいい夢なんじゃないかとすら思える。
ためしに自分の頬を引っ張ってみた。
普通に痛い。

そんな垣根の行動を見て、「幻じゃあないですよ」と絹旗は笑った。


「今日超はじめて学校、行ってみました」


絹旗の腰かけたブランコがゆらゆらとゆれる。
垣根はゆれる絹旗をぼんやりとみながら次の言葉を待った。
絹旗の視線は地面に向けられていて、その表情はよくみえない。


「校門のとこで超しり込みしてUターンしてきちゃいましたけど、またがんばってみようと思います」


そう言い切るか言い切らないかのところで絹旗は勢いよくブランコから立ち上がり、垣根の前に立つ。
表情はちょっと泣きそうだ。

立ち上がり、自分より少し高い位置にある絹旗の顔を見上げると、絹旗はくしゃりと顔を歪めて泣き笑いのような表情を作った。
もう一押し何かあれば泣き出してしまいそうな雰囲気にどうしていいかわからなくなり、垣根は反射的に絹旗の頭に手を伸ばす。
以前そうしたようにゆっくりと撫でてやると、目じりに溜まるものがゆるゆると溶け出し、零れた。
泣かせまいとのばした手はどうやら逆効果だったらしい。
絹旗の流す涙がはらはらと落ち、地面に染みを作る。

泣かせるつもりなどなかったのにどうしてこうなった。
というかもしかしなくても俺が悪いのか。
どうするのが正解なのかわからずただ絹旗の頭をわしゃわしゃと力任せに撫でていると、絹旗の腕が伸びてきて、垣根はそのまま抱きしめられた。


涙交じりで時々むせ返りながら、絹旗は抱きしめたままの垣根に向かってごめんなさい、ごめんなさいと繰返す。
悪いことをしたこどもが、ただひたすらに親に許しを請うように、その言葉だけを懸命に。

ごめんなさい、ごめんなさい、ていくん、ごめんなさい。ともだちなのに、だいすきなのに、ごめんなさい。

嗚咽に混じって聞こえる馬鹿みたいに素直な言葉が垣根に届く。
垣根は絹旗の背に手を回し、親がこどもにそうするように、とんとんと優しく叩いてやる。


「別に気にしてねえし、怒ってもねえよ。それよりお前がんばったんだなあ」


えらいえらい。
呟きながら背中を優しく撫でてやると、まわされた腕の力が更に強くなり、嗚咽がすこしだけ、大きくなった。

絹旗の嗚咽がおさまるまで、ただただそうしてブランコの前で抱き合う。
いままで少し肌寒く感じていた公園が、今日はなぜか暖かかった。

***

泣き止んだ絹旗と少し話し、お決まりの「また今度」の挨拶を交わしたあと、垣根は自分の住む寮への道をてくてくと歩く。
すぐに全てがうまくいくとは思わないが、あの様子ならば絹旗はもう大丈夫だろう。
なんだかすがすがしい気分になり、自然と足取りも軽くなる。
今なら空も飛べそうだ。いやまあ実際飛べるけど。

少々浮かれすぎた頭でもって歩いていたせいだろうか。
なんというか前方不注意。
平たく言えば角から出てくる人影とモロにぶち当たり、よろけて地面に転がった。
以前であればこんな失態犯すこともなかっただろうに。

とりあえずぶつかった人物にたいして謝罪をしようと顔を上に向ける。
「悪い」と口に出そうとして、『わ』の形を口が作ったところで時間が止まった。
脂汗がだらだらと流れて、落ちる。

ここから、ここから早く逃げなければ。
頭はそう思っても体が動かない。
演算もうまく組む事ができない。

そんな垣根の様子に気付いているのかいないのか。
垣根がぶつかった“女”は、地面に未だ座り込む垣根に対して優雅に手を差し伸べ、微笑を浮かべる。
















「こんにちは、ぼく。また会ったわね」


ピンクさらしにブレザー姿の痴女、結標 淡希はそう言ってきれいに笑った。

以上です

今年もよろしくお願いします


ことよろ

おつー

これホラーSSだっけ?

イイハナシダn……うわあああああああああああああああああ乙


絹旗マジ天使……だったのに、あわきんに余韻とか全部持ってかれたわ

うわあああああ 逃げる事のできないショタコンに再開してしまったぁぁぁあ


久々にほんわかした、ついでにもう一度絶望した

あわきん登場だけでギャグ補正がはいってしまう… 流石ショタマスター

こんなつもりじゃあなかった>>1です
15巻のかっこいいあわきんがすきです
本当です

いつもよりもさらに短いですが、また間隔が空きそうでこわいので投下します
あわきんをsageるつもりはなかったんだ本当なんだ……!

呆けたように地面に座り込んだまま動かない垣根のだらりと垂れ下がる腕をとって立たせ、
結標は垣根と目線を合わせるべく少し前かがみになる。
初春や絹旗では拝むことのできない麗しい谷が見えるが、今はそんなことはどうだっていい。


「怪我とかしてない?大丈夫?ちゃんと前見て歩かないと危ないわ。
気をつけないと駄目よ」


眼前から発せられるやさしい言葉に素直にこくこくとうなずくと、
結標は満足そうに笑って垣根の頭をいいこいいこ、と優しく撫でた。
やさしいはずのその手つきになぜか冷や汗が流れ、背筋が冷たくなっていくのがわかる。
口の中が粘つく。
足も棒のように動かない。
一方通行と対峙した時でさえ感じなかった恐怖が体を支配する。

このままここにいたらやばい。
垣根の本能がそう告げる。
カラカラに乾いた喉から「それじゃあ」という言葉を搾り出し、
ガチガチに固まった足をぎこちなく動かして結標の横を通り過ぎようとした。


しかし、できなかった。



「ちょっと待って。
ねえ暇ならちょっとお姉さんとお話しない?」


そう言っていく手を阻むように、垣根の小さな肩に、結標の華奢な手が置かれる。
特に力が入っているわけでもない、女の、か弱い、手。
それなのにどうしてだろう。
垣根の足は力を失ったように動いてはくれない。


「ねえ?」


女の甘い声が鼓膜をくすぐる。
全身にびりびりとした恐怖が伝う。


(逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ!)


なけなしの思考力でもって、演算を組む。
六枚の羽根が背に現出したのを横目で確認すると、一気に地を蹴り羽ばたいた。

流石に空までは追ってこれまい。
そう思って眼下に目を向け、唖然とする。

そこにいたはずの、女の姿はどこにも見当たらない。











「天使って、本当にいたのね」


感心したような声が背後から響き、垣根の細い腰にするりと腕がまわされる。


(まさか、空間能力系―――ッ!)


垣根が思考するよりも早く、二人分の座標がその場から移動した。

以上です

また近いうちに

おまわりさんこっちです!

さよならていとくん

いやああああああああああああ乙

何このクソスレ
お前ら本当にこれ面白いと思ってんのwwwwww

ふふふ

ていとくんぺろぺろ

ていとくん。君のこと忘れないから

ていと君・・・生きろ・・・!

ホラーwwwwww
ていとくん死ぬなww

さよならてい君の純潔

エロパロ板で浮気してたら来るのが遅れました>>1です
いつものように量は少ないですが投下します


「ごめんなさいね。でもゆっくりとお話できる場所がこんなところしか思い浮かばなくって」


今まで見えていた空の色はなく、打ちっぱなしのコンクリートが四方に広がっている。
どうやらどこかの廃ビルあたりに連れ込まれたらしいことを理解した垣根は、
建物の中にさっと目を走らせ逃げ道を確認した。

羽目殺しの窓と、出入り口と思しき四角く切り取られた空間が二つ。
最悪ここを破壊して逃げ道を確保するという手もあるが、
あまり大事にすると後々厄介なことになりそうなので、できれば使いたくない。
手足をばたばたと動かし、腰に手を回し自分を抱き上げる結標の拘束から何とか抜け出し、後ろに飛んで距離をとる。

空間移動系能力者。
しかも2人分の質量をこれだけ遠くに運ぶことができるのだ。
おそらく高位の能力者に違いない。
その能力者に対して距離をとるということがどれほどの意味を持つのかはわからないが、垣根の精神衛生上、距離をとらないとなんだかいろいろきつかった。


「生憎俺は変態と仲良くおしゃべりしてられるほど暇でも酔狂でもねえ。さっさと目の前から消えてくれ」

「あら、前は楽しくおしゃべりしてクレープ食べたじゃない。あの時からまた会いたいなって思ってたのよ」

「都合のいいように記憶改竄してんじゃねえよ!」


じりじりと距離をつめてくる結標から逃げるように一歩二歩と後退する。
流れる汗がべたべたとして気持ち悪いが、そんなことに構っている余裕など今の垣根には存在しない。
こつんと背中に壁が当たる。行き止まりだ。

目の前には変態。
しかもチートばりに距離をつめてこられる能力つきときたものだから神さまは残酷だ。
こんな変態にそんな能力与えるなよ。

垣根は涙目になりながら目の前の変態をキッと睨みつけた。
が、結標にとってそんなものご褒美でしかない。
こうかはばつぐんだ!悪い意味で。


「そういえば、さっきの羽根すごくかわいかった。ねえお姉さんにもう一度見せてくれない」

「見せもんじゃねんだよばーか!いいから離れろ!近い!距離が!」

「もしかして照れてるの?そういう初心な反応お姉さんだいすきよ」

「お前なんなの、自分の都合のいいようにしか聞こえない翻訳機でもついてんの?
あきらかに拒絶以外のなにものでもねえよ!」

「そうよね、大人のお姉さんにいきなり話し掛けられたりしたら照れちゃうわよね。
でも初対面っていう訳でもないし、そんなに緊張しなくてもいいのよ?」

「頼むから超解釈を押し付けんなッ!」

半泣きで叫ぶ垣根の方に結標の細い指が伸びた。
そのまま頬をするりと撫でられ「可愛いわね」、という呟きが垣根の鼓膜を揺らす。
寒気が全身に走り、肌が泡立つ感覚が広がる。

目の前の変態は、垣根の頬を撫でつつ何事かを囁いてくる。
頭が拒絶しているのか、何を言っているのかはよくわからない。
結標の砂糖をどろどろに溶かしたような甘ったるい声が鼓膜を揺らす。

どうしてこんなことになったのだろう。
自分は何か悪いことでもしたのだろうか。
いや昔は散々やってきたかもしれないが、今は概ね言い子じゃないか。
今までのことが走馬灯のように脳内を駆け巡る。

絹旗のこと。
浜面のこと。
初春のこと。

暗部にいたころの、こと。

あの頃は自分にこんな風に触れてくるやつなんていなかった。
いさせやしなかった。
邪魔なやつは排除したし、容赦なんてしなかった。

なのになんだ。今のこの様は。

自分が、この自分が、学園都市第二位の能力を持つ自分が、こんなところで痴女によって理不尽にいいようにされようとしている。
こんなことがあっていいのだろうか。


いい訳が、ない。


頭の端の方で何かがぷつん、と切れる音が聞こえた。
垣根の背に六枚の羽根が現れ、風圧で結標の体が後ろに飛ぶ。
吹き飛ぶ瞬間「天使ktkr」という言葉が聞こえた気がするが、そんなことはどうだっていい。

俺は誰だ。
俺の名前を言ってみろ。


「天下の垣根帝督なめてんじゃねえぞ、ゴラ」


チンピラじみた台詞が建物内に響いた。

以上です


凄んでるはずなのになんか和んだ

おつ

エロパロにていくんがあわきんに陵辱されるSSを投下してたんですねわかります

こんな妙なタイミングで暗部の頃の暗い過去思い出すのかとかエロパロどこさとか
本名言っちゃうのかよとか色々思ったけど、とにかく更新早くて嬉しいのでいちおつ

乙。ていと君の活躍に期待

乙乙

とりあえずパンツは脱いだ

今来た

超期待します

やっと追いついた。がんばって完走してくださいね。

>>369>>370
エロパロは禁書全く関係ないとこで変身ヒーロー系です

てなわけで>>1です
なんちゃって戦闘描写がひどいので生ぬるい気持ちでみてください

***

手始めに白い翼を結標に向かって振り下ろす。
すんでのところで座標を移動し、結標はその攻撃をよける。
どうやら応戦する気はあるようで、移動したのは垣根が羽根を下ろした位置から2メートル程度しか離れていない場所だった。
軽く舌打ちをしたあと、結標を見上げ、口を開く。


「このまま帰るっつうんだったら見逃してやる。悪いが俺とお前じゃあレベルが違う。さっさと目の前から消えてくれ」

「あら、さっきまでウサギみたいにぷるぷる震えてたのに天使モードになった途端強気ね。
でもね、私にだって引けない時があるのよッ」


結標の言葉が終わるか終わらないかのところでコンクリートの塊が垣根の頭上に現れた。
重力に逆らえず落下してくるそれに目の端で捕らえ、羽根の一枚を使って叩き落す。


(かわいらしいけど、あの羽根は正直邪魔ね……)


結標は垣根の背で広がる羽根を取っ払らおうと座標移動を心みた。
しかしうまくいかない。
そもそもあの羽根がなんであるのかわからない段階での座標移動など殆ど不可能に近い。
いったいあの羽根はなんなのだろう。


(まあかわいらしいしなんだっていいか。邪魔だけど)

仕方なく垣根の足に向かい、転がる大きな釘を座標移動させる。
逃げられない程度に足を傷つける予定だったそれは、移動させた瞬間垣根が地を蹴り移動したため何もないところにぼとりと落ちた。


「あら残念」

「こども相手にえげつねえ攻撃するな、お前」

「だって、そうでもしないとあなた逃げちゃうじゃない」


悪びれもせずそう言い放つと、垣根の四方にコンクリートの塊を出現させる。
四方を囲み動きを制限した後、再度アキレス腱の辺りを狙って鉄釘を移動させる。

翼をはためかせ、上に跳ぶことで垣根はその攻撃も避ける。
それを予想していた結標はその上にコンクリートの塊を移動させる。
それを翼で打ち砕く。
打ち砕いている瞬間を狙って再度足に向かって座標移動。
後方に飛んで回避。

いたちごっこのようなやり取りが続く。


(埒が明かないわね……)

大仰な台詞を吐いた割りに垣根は結標に対してはじめの一撃以外一切攻撃をしてこない。
ただ、結標が繰返す単調な攻撃を砕き、避け、こちらをじっと見据えている。


(もしかして私を傷つけることを躊躇してる……?
恥ずかしがり屋でぶっきらぼうででも本当は心やさしいって何このショタ最高の物件じゃない……!?
これは是非とも仲良くならないと結標淡希の名が泣くわ……!)


今すぐにでも垣根を抱きしめたい衝動にかられ、実行に移す。
座標はショタの腰の辺り。
トラウマを克服した自分に怖いものはなし。
演算、そして実行。
いつものように点から点へ。





なのに、どうしてだろう。

ショタの腰は目の前になく、眼前には壁。
もう少しで壁にめり込んでいる。
そんな位置に、結標は、いた。

「惜しかったなあ、もう少しでコンクリートと濃厚なキスできたっていうのによ」


背後から聞こえる愛らしい声を聞きながら結標は考える。
演算は完璧だったはずで、自分がこんな位置に存在するはずがない。
込み上げてくる吐き気をどうにかおさえつけ必死に考える。


「どうして……」

「空間移動って言うのは繊細な演算が必要なもんなんだろ?」


笑いを含んだような垣根の声が結標の耳を打つ。
振り返った先にある、弱者を嘲るような笑顔になんだか興奮した。
そんな結標の様子など気にせず垣根は続ける。


「ここ一体の空間にちょこっと異物を混ぜ込ませてもらった。残念ながらここはテメェの見知った世界じゃねえ」


結標には垣根が何を言っているのかよくわからない。
わからないが、座標移動をろくに使えなくなった自分が詰みの状態であることは理解できる。


そして、なんだか今まで感じたことのないような胸の高鳴りを覚えることも。

「さあて、メス豚、」


どこか芝居がかった垣根の声が結標の鼓膜を揺らす。
結標の動悸が激しくなり、息が苦しくなる。




「お仕置きの時間だ」




結標淡希、17歳。
新しい扉を開けた瞬間だった。

以上です

投下して気づいたけどあわきんの年って17でよかったんだろうか……

ヤバイ性癖があわきんにIN!  TO BE CONTINUED

おつー

乙。高2だっけかあわきん


追い払うための行為が逆に寄せ付けることに繋がってしまうわけだ
哀れ、垣根提督

小学生の奴隷になるあわきんか・・・


胸が熱くなるな

当初はほのぼのを書く予定だった>>1です

どこで間違えたのかもうわからない…
投下します

***

尻を突きだす形で床に這い蹲るように倒れている結標の痴態。
目の前に広がるその光景に何の感慨も抱かず、
垣根は結標の正面に肩膝を立てて座るとその前髪を掴み、顔を上げさせ薄く笑った。

こどもの顔に似合わぬ軽薄そうな笑みに何かを感じたのか、結標の喉の奥の方から引き攣ったような音が鳴る。
しかしその双眸は今から再度施されるであろう『お仕置き』に対しての期待に満ちており、情欲に潤んでいた。
結標の口の端からぼたぼたと唾液が垂れ、コンクリートを濡らす。


「いい面構えだなあ、おい」

「ふぇ……あ、は、」

「誰が喋って良いつったよ、あ?」


半開きになった結標の口の中に空いているほうの手を突っ込んで、指でぐちぐちとかき回す。
結標は一瞬苦しそうに眉根を寄せたが、特に抵抗もせず、歯を立てぬようその指を受け入れた。
飲み下せない唾液が顎をつたってだらだらと流れ、コンクリートに落ちる。

結標の口内から指を引き抜くと銀色の糸がつうっと伸びて途中でぷつん、ときれた。
垣根は結標の唾液でべたべたになった自身の手を眺め、不快そうに顔を歪ませた後、結標のブレザーで手を拭う。
その一連の動作を結標はただただ惚けた顔でみつめていた。


「なあ、」


垣根の愉悦を含んだ声がコンクリートに囲まれた室内に響く。
喋ることを許可されない結標が、それに答えることはできない。
ただただ、無理矢理に上げさせられた顔で、垣根の顔を見上げる。
そんな結標の様子に笑みを深め、垣根は問いかける。


「テメェはなんだ?言ってみろよ」


なあ、おい。
そう言って答えを促すように前髪を強く引いた。
結標は一瞬視線を彷徨わせた後、小さな声でぼそぼそと何事かを口にする。


「ああ?聞こえねえなぁ。もっとしっかり声だせ」

「……わた、しは、汚い豚です……、メス豚です……ッ、ご主人さま……ッ!」


結標の答えにニッと笑って、垣根は掴んでいた結標の前髪から手を離す。
支えを失った結標の頭は重力に従ってコンクリートの上に落ちた。
ゴッ、と鈍い音が部屋に響く。


「よくできました」


そう言って転がる頭を撫でてやれば、長い髪の隙間から覗く結標の唇がうれしそうに弧を描いた。


「とりあずお前に守ってもらいたいことはふたつだ」


そう言って垣根は指を2本立てる。
コンクリートにうつ伏せになっている結標にそんな動作は見えないが、大切なのは雰囲気だ。
問題はない。


「ひとつはむやみやたらに俺の前に現れるな。偶然とかそんな言い訳も認めねえ」


俺の姿が視界に入ったら全力で座標移動しろ。
ていうか寧ろ視界にも入れるな。
少しだけ理不尽な命令がまず下る。

あともうひとつ、と垣根の声が続く。


「俺が呼んだら三秒以内に来い。んで用が終わったらさっさと帰れ」


でも俺携帯とか持ってねえから、呼んでるのとかは気配で察知しろ。
先程よりも無茶苦茶な言葉が発せられる。

しかし、この命令を守る、という選択肢以外結標には残されていない。
この数時間で鍛えられられたドM心が、垣根に逆らうことを許さない。

はい、ご主人様。

結標はそう答え、垣根の命令に従う旨を示す。
そうすると垣根の靴先が結標の顎にかかり、顔を上向かせられた。

三日月型に細められた垣根の目と目が合う。


「きちんと約束守れたら、時々はこうして遊んでやる」


楽しそうにそう告げられた言葉に結標の心が躍る。
新しい扉は完全に開ききった。


「はい……ッ、ご主人様……!」


そうして垣根専用メス豚が誕生した。

***

結標になじみの公園まで送らせたあと、垣根は寮へと続く道をてくてくと歩く。
今日一日だけで、やたら濃い時間を過ごした気がするのは多分気のせいではあるまい。
妙に疲れたしさっさと飯食って風呂入って寝よう。
そう思い歩調を速めようとしたところで後ろから声がした。


「ていとくくーん!」


間の抜けた声で名前を呼ばれる。


「かざり?」


振り返ると、てこてこと走る初春の姿が見えた。
足を止める。
初春は垣根の隣まで来るとははふはふと息を整え、そうして垣根と並んで歩き始めた。


「帰りの時間が一緒になるのなんて珍しいですね。いつも私が帰る頃には家に居るのに」

「ああ、今日はなんか色々あってな。つーか、お前荷物多くないか?」


そう言われた初春の両手には紙袋が1つづつぶら下がっており、なんだか重そうだ。
そのうちの1つを持ってやろうと紙袋を受け取ると、ずしりとした重みが右手にかかった。
垣根の体が少し斜めに傾く。


「なんかやたら重いんだが、何入ってるんだ、これ?」

「えっとですね、この前ていとく君が『やさしくなりたい』って言ってたじゃないですか」

そんな斉藤和義みたいなことを言った覚えがないのだが、
なにかの化学反応で初春の中ではそうなったらしい。
とりあえずシカトして先を促す。


「それでですね、友達に頼んでやさしい男性が出てくる少女マンガとか借りてきました!」

「……は?」


初春が何を言っているのかよくわからない。
よくわからない、が、一応垣根のことを思って行動してくれたらしい。
大分見当違いではあるが。

初春が自分の事を考え、よくわからない頑張りを見せていた時、自分はなにをしていただろう。
決まっている、奴隷調教だ。
その事実に垣根はなんだか死にたくなる。


「これ読んで、一緒にやさしい人間目指しましょうね」


そう言って笑う初春の顔が直視できない。
ごめんなさい、ほんとメス豚相手にハッスルしててごめんなさい。
やさしい人間からかけ離れた行動とっててごめんなさい。


沈む垣根の様子など全く気付かず、初春は垣根の手をとって歩き出す。
垣根は申し訳なさ過ぎて、その手を握り返すことができなかった。

以上です

次からはきっとほのぼのです

1乙
ほのぼの調教・・・恐ろしい子・・・!

アヘ顔あわきん脳内再現余裕でした乙

あわきんの妄想じゃなくてガチだったかww

おつー

おつ
ほのぼのってなんだっけ?

修羅場希望

おつ。まさかの展開だったわww
次も期待してる

どうしてこうなったwwwwww
あわきん本人は幸せそうだから何も問題ないな

ステイルの中の人のライブに行ってきました、>>1です
すげー興奮した


ちょっと今回からしばらく文体がいつもとちょっと違うかんじです
わかりにくかったらごめん

○月×日(水) はれ

かざりにやさしい人間になるためには自分の行動を省みる必要がある。
よって日記をつけて1日の行いを反省してみてはどうか、と提案された。
めんどくさいから嫌だといったのだが、その瞬間あの小動物のような眼で見られてどうしようもなくなった。
あれはずるい。なんだかさからえない。ひきょうだと思う。

よって飽きるまでの期限付きと、絶対に中身を見ない、という約束でこれを書くことになった。

とりあえず今日は変態と遊んで疲れたのでもうねる。絹旗のこととか色々あったはずなのに変態のせいでなんかもう余韻とかぶち壊しだ畜生。

○月△日(木)くもりのちあめ

雨が降りそうなので出かけた振りだけして家にいた。
ちょうどかざりの借りてきた『やさしい男性』なるものが出てくる少女マンガが大量にあったのでそれを読んで過ごすことにした。

読んでいた漫画に出てきた風早という男が顔面的にも精神的にもイケメンすぎてなんだか死にたくなった。
イケメンでクラスの人気者でさわやかでいいやつとかねーよ……。ねーよ……。
風早はこんなにさわやかでリア充な日常を送っているというのに、
方や俺は奴隷調教とかして遊んでたのかと思うと本当に死にたくなる。
自分の人生にもう一回絶望したくなった。
読んでて何度かベランダから飛び降りそうになった。
恐ろしい漫画である。

かざりの借りてきた少女マンガはこんなイケメンばかり出てくるのかと思うと恐ろしくなってこれ以上読めなかった。
なんだか精神が不安定になって歯がぐらぐらしてきた気がしたので、
かざりの本棚からジョジョ五部を取り出してきてそれを読んで心を落ち着ける作業に没頭した。
メローネもチョコラータもゲス野郎過ぎて安心した。


とりあえず今度あのメス豚に会ったらやさしくしてやろうと思う。
そういや名前しらねえや。
まあいいか。

○月▼日(金)はれ

公園でハトにパンの耳をあたえていたらお高い珈琲カップみたいな色合いのシスター?がやってきて、横で羨ましそうに見ていた。
こいつもハトにえさをやりたいのかと分けてやったら、満面の笑顔でお礼を言ってパンの耳を食いだした。
お前が食うのかよ。
なんだかやたら美味そうに食うので、残りのパンの耳全部くれてやった。

パンの耳を全部食い終わった後、シスターは大きく手を振って去っていった。
なんだかいいことをしたような気がして気持ちがよくなった。
これで一歩、俺は風早に近づけたのかもしれない。


帰り際に絹旗を見かけた。
なんだか同じ制服を着たツインテールの女と歩いていたので話しかけるのはやめておいた。
どうやらなんとかなっているらしい。よかった。


帰ってからもう一度少女マンガにチャレンジしてみた。
やっぱり駄目だった。死にたい。
基がイケメンすぎて死にたくなった。
俺も親に見捨てられた女子高生の保護者になってやりたい。

ていうか親やら世間やらに見捨てられた俺が女子中学生に保護者になってもらってるじゃん。
俺がヒロインポジションじゃん。


かざりのほうがヒーローに向いてる事実にまた死にたくなってきた。
ねよう。

○月●日(土)はれ

今日は風紀委員の仕事がないらしいかざりと家でDVDをみた。
これも例の『やさしい男性』が出てくる系少女マンガ的それだった。
死にたい。

一本目は妙に昭和臭い格好をした女とバイオリン作りになりたいの男が出会って、
歌って、坂道登って、結婚しようみたいな、そんなはなしだった。
「お前を乗せてこの坂上るって決めたんだ」じゃねーよ。
勝手に決めてんじゃねーよ。
リア充死んで欲しかった。

なんか男の方がちょっとストーカーぽくて気持ちわるかった。
自分の読みたい本先回りして全部読んでるとかこえーよ。
どんな精神系能力者だよ。

でもかざりはなんでかきゅんきゅんきてるみたいだった。
わけがわからん。
風早のがどうみてもイケメンだろう。


次に見たのが時をかける系少女の話だった。
登場人物がドリカム編成だったが、ちょっとゲイに人気ありそうな方の男はストーリー上そんなに重要でもなかった。
ていうか千昭がイケメンすぎて死にたくなった。
俺この日記の中で何回死にたくなってるんだろう。
あー、青春してえ。
女子とチャリ二人乗りしてえ。

終わった後、かざりが「これで最後かもしれないんだから千昭はちゅーぐらいするべきですよ!」とか言ってラストに不満を漏らしていた。
意味がわからん。
そんなもんなのか、と尋ねたらなんかドヤ顔で「お別れのちゅーは鉄板ですよ」とか言ってた。
ドヤ顔が腹たったのでほっぺた潰してたこちゅう顔つくってやった
殴られた。

○月△日(日)あめ

なんか節々が痛い。成長痛かもしれん。
かざりが風紀委員でいなかったのでこれ幸いと1日寝て過ごした。なんか調子でねえからまた寝る。

以上です

あとていとくンが見てた漫画は「君に届け」と「たいようのいえ」です
自分はどっちも読んでて死にたくなります
DVDは「耳をすませば」と「時かけ」です
天沢くん気持ち悪い

天沢くん気持ち悪くねぇし
むしろ気持ちいいぐらいだし

ていとくンなんてもん読んでんだ…

絹旗が幸せそうで何より
てか、インさんwwww


あわきんを奴隷調教出来るとかリア充にも程があるのに…ていとくン爆発しろ

初春がヒーローでていとくンがヒロインか…。
新しいな。嫌いじゃないぜ。

奴隷調教の次は餌付け調教のフラグが……

最初厳しくした後に優しくするとか完全に洗脳の手段じゃないですか垣根せんせえ……

ここは帝春………なのか?

いえ、ここは素敵なお姉さんである結標淡希とていとくんのスレよ

>>418
帝春の気持ちで書き始めたらなんだかよくわからなくなりました

こんばんわ>>1です
春コミの原稿が終わらなくてむしゃくしゃするので投下します
例によって短いです

○月■日(月)くもり

まだ節々が痛い。が、まあそのうち直るだろう。

いつものように公園に行ったら浜面ことしーちゃんがリストラしたサラリーマンよろしくブランコを漕いでいた。
正直係わり合いになりたくなかったので回れ右して帰ろうかと思ったら見つかってつかまった。
なんか同棲してる彼女と喧嘩して家を追い出されたらしい。
「浮気か?」と尋ねたら「ちげえよ!」と怒鳴られた。
なんでも彼女の楽しみにしていたプリンをそうとは知らず遊びにきていた絹旗に出してしまったらしい。
予想以上にくだらなくてなんかもう勝手にしてくれと思った。

それから一緒に色鬼とか氷鬼とかして遊んだ。
どうでもいけど2人で氷鬼とか無理ゲー過ぎる。
タッチされた瞬間おわりじゃねえか。

でもまあなんか、割と、楽しかった。
また機会があったら遊んでやってもいいとおもう。

○月◎日(火)はれ

本当に俺が呼んだら来るのか試してみようと思って、空に向かってメス豚を呼んでみた。
マジで来た。びびる。
なんなの、盗聴とかされてんの?
自分で命じておいてなんだがマジで3秒以内に来られると怖い。
なんで速攻呼び出し?に答えられるのかは聞いてみたら愛だと答えられた。
愛ってすげえ。

風早を見習ってメス豚にやさしくしてやろうと思っていたので、とりあえず今日はやさしくしてやることにした。
何かしたいことがあるかと聞くとペットショップに行ってリードと首輪を選んで欲しいと請われた。
ド変態じゃねえか。
そのあと買った首輪をはめてほしいだとかリードを引いて欲しいだとか頼まれたら周囲の目線的にたまらないので、
どうにか手を繋いで服屋で服を選んでやることで妥協してもらった。
手を繋いだ瞬間メス豚からもれた、「ショタの高めの体温デュヒヒ……」と言う呟きが大変気持ち悪かった。
なので蔑んだ眼で見てやったらなんかひどく興奮していて、さあに気持ちが悪かった。
なんでもこいつのご褒美なるな。
ドMっていうのは最強の戦闘種族なんじゃないかと思う。

服屋からの帰り道、学校帰りらしい絹旗と遭遇した。
なんかしらんがわなわなと震えてメス豚を指差しながら、「何ですかその女……!」とまるで夫の浮気現場を目撃した妻みたいなことを言い出した。

説明がめんどくさかったので知り合いのメス豚だと言っておいた。
久しぶりなので色々話したかったのだが、なんだかぶつぶつ言ってて自分の世界に入ってる感じだったので放置して帰った。
なぜかメス豚は絹旗のほうを向いて勝ち誇った顔をしていた。
なんなんだこいつら。

○月□日(水)はれ

なんだかだるい気がする。風邪か?

いつものように公園に行ったら絹旗がブランコを漕いでいた。
なんだか俺を待ってたらしい。
学校はいいのか聞くと、「そんなことより大切なことがあります」と真剣な顔で言われた。

まさか学校でいじめとかにあったのかと聞くとどうやらそう言うわけではないらしく、なんでかしつこくメス豚について聞かれた。
どうやら俺が変な露出狂にたぶらかされていると思ったらしい。

ある意味あっているのでなんともいえないが、あいつはもう俺の所有物なわけだから、とくに俺にとって不利益なことはしてこないだろう。
しても廃棄するだけだし。

そんなようなことをもう少しマイルドな言葉で説明してやったら、目に涙をいっぱいためて「不潔です!」と叫んで帰ってしまった。
もしかしたらまた嫌われてしまったのかもしれない。
軽く落ち込む。

家に帰ったらよほど俺がしょんぼりとした顔をしていたのか、かざりがやたら心配してきてちょっとうっとおしかった。
でも頭をなでてもらうのはそんなに嫌いじゃあない気がする。
子供扱いっぽくて腹たつけど。

以上です
また脱稿した頃にきます

乙なんだよ!

乙です
ここの垣根モテモテじゃねーか…くそ、爆発しろ…!


身体壊さない程度に頑張って下さいね

絹旗かわいいな

帝春期待して読んでたがメス豚×ショタていとくんもいいな

あわきん無双

ふざっ…ふざけるな!
お前、お前もあいたんを、もあいたんをお前ッ…!



許すまじ

へいへい

ほいほい

そぉい!

よいしょ!!

どっせい!!!

上段正拳!!

お前の来週はいつ来るんだよと

帝春なんてなくね?初春の弟の青春ストーリーじゃね?

もうすぐ2ヶ月

おいこら

あっ…

んっ…

んぅっ…

もう来ない

終わったな

まだ諦めたらあかん

諦めるも何も、二ヶ月経過していつ落ちてもおかしくない状態だし

いつもながら本当にすみません>>1です
もうすこしおつきあいくだされば幸いです

○月*日(木)はれ

今日は学校帰りのかざりと遭遇したので、そのまま一緒に夕飯の買い出しにいった。
キャベツが1玉298円もして、手が出せなかった。
葉物の高さを2人で嘆いていたら、頭がやたらつんつんと尖った世の中の不幸を一身で受け止められそうな顔面の男が、
それに同意して一緒に悔しがってくれた。
みんな苦労しているらしい。

結局なぜか投げ売りのような安さで売られていたセロリを大量に買い、あと適当に肉とか買ってスーパーを出た。
今日は俺もう肉しか食わない。

かざりは俺と外を歩く時、必ずと言っていいほど手をつないでくる。
最近はそれにも大分慣れたが、改めて考えるとやはり気恥ずかしい。

俺の手が今日はやたらと熱かったらしく、眠いんですか?と半笑いで聞かれた。
むかつく。

多分最近続いている風邪っぽいのが原因だろうけど、むかつくからいってやらなかった
やたら心配されてうざそうだし。
今日も早く寝よう。

○月★日(土)あめ

だるいのがぬけない。
なんなんだいったい。
ねる。

○がつ◇に ち (すい)

うあー
しんどい。まじしんどい。
なので  にっき は
          もーい
                ーや
















***

最近、垣根の様子がおかしい。
なにが、と尋ねられても詳しく答えることなど出来ない。
だが、奥歯に何かが詰まったような違和感を、初春は感じていた。

話しかければ答えてくれるし、手伝いを頼めばしぶしぶといった態度であるが答えてくれる。
初春が暇な日であれば一緒に買い物にも出かけるし、ゲームに興じたりもする。
いつも通りといえばいつも通りなのに、しっくりこない違和感が心の隅に残る。

例えば、頭をなでようとするとやんわりと拒絶されるようになった。
例えば、一緒に出かけるときに手をつながなくなった。
そして今までは面倒だからそのままで、と言っていたのに、唐突に一緒に寝なくなった。

思い返せば違和感はそこら中に散らばっていた。
だがそれ以外は、別段今まで通りであったし、あまりにも垣根の振る舞いが自然だったから、気づかなかった。
そうだ、この違和感は、それは、


(最近、ていとく君に、触れさせてもらってないんだ……)


違和感の正体はわかっても、その理由までは初春にはわからなかった。

***

学校へ向かう初春と分かれ道で別れた後、垣根は初春の姿がもう見えないことを確認した後、来た道を引き返した。
体から、嫌に冷えた汗が噴き出る。
うまく力の入らない体を引きずりながら、初春の部屋へと続く道を歩く。
こんなところを親切な第三者に見つかり、病院にでも担ぎ込まれたらやっかいだ。
慎重に、慎重に足を進める。


垣根の体が不調を訴えだしてから一カ月ほどの時間がたった。
はじめはただ、倦怠感が体を支配するだけだった。
だが今では体中熱を帯び、正直立っているだけでもしんどい。
おそらく、この造りものの体にガタがきたのだろう。
無理やり作り上げて、無理やり脳味噌を定着させ、ロクにメンテナンスもされないまま、培養機から放り出されたのだ。
むしろここまで生きてこれたことのほうが奇跡に近い。

初春には、この体調の変化が見破られないように、細心の注意を払った。
顔色の悪さを悟られないように能力を駆使したり、いつも以上に皮肉気に振る舞ったりもした。
いつものように、初春が学校に行くのに合わせて家を出て、外で遊んでいる振りもした。
いつも通りをいつも以上に心がけて。
全力で演技をして、自分が元気であることをアピールした。
体に触れられると、今の自分の体温が異常に高いことがばれてしまうので、接触は避けるようにした。手をつながないことや、頭をなでられないことに、初春の眉毛がすこし下がったことに気づいて、気づかない振りをした。

だが、もうだまし続けるのも限界がきたらしい。
きしむ体がそう訴え掛けている。

このことに初春が気づく前に、この家を去らなければ。
体の不調がどうにもならないと気づいたときにそうは思ったのに、なかなかそれを実行することができない。

もう少し、あともう少しだけ。
垣根の心にそれだけがぐるぐると渦巻く。

初春の傍は、暗闇の中にいたころと違って、なんとなく息苦しい。
やさしいやさしいぬるま湯の中に、全身を付け込まれているような感覚は、
昔自分が捨て去ったものを想起させて、なんだか泣きたいような気持にさせてくる。
それなのに、たまらなく心地よくて、苦しいのに、離れることができない。
自分がいるべき場所じゃないなんてことはとっくに気づいているのに、
初春の造ってくれた垣根だけのこの場所を、捨てることはひどくむずかしかった。


(でも、こんなん見たら、あいつ絶対泣くだろ、どうにかしようって、思うんだろ)


今の自分を助ける方法なんて、おそらく暗部の中にしかない。
そして、初春をそこにだけは、近づけたくない。


(明日になったら、出て行こう……。せめて、今日まで……、今日までは……)


先延ばしにし続けてきた明日を漸く定めて、垣根はまた一歩、家へと足を進める。
初春と、それから自分の家へと。

寮まであと数メートルという地点で、体の力ががくりと抜けた。
膝から崩れるように倒れ、地面に手をつく。
ぜーはーと荒い息を吐きながら、体に力が入るのをまっていると、
カツカツとヒールの音が近づいてきて、垣根の頭上に影を落とした。
善意の第三者か、最悪知り合いか。
大丈夫だからほっといてくれ、そう告げようと、なけなしの力を振り絞って顔を上げると、顔をくしゃりと歪ませた。
さいあくだ。心底不快感をあらわにした声で呟く垣根の声に、影の主は笑いを含んだ声で答える。


「久しぶりだっていうのに、随分な挨拶ね。せっかく助けにきてあげたっていうのに」


派手なドレスを纏った少女はきれいな笑顔を崩さないまま、そう告げた。

以上です
次は一ヶ月以上開けないうちに来ます

定規さんが来たか……


戻ってきてくれてよかった
本当にいつ落とされてもおかしくなかったからな・・・

おかえり!
そして定規さんきたーーーー

乙!
楽しみに待ってるよ

きたああああああああああああああ
おつ!

おつおつ、落とされるのが不安だっただけに投下がより嬉しく感じるわ
次も期待してます

待ってる 期待 必ず

舞ってる

こんばんわ>>1です
ちょっと立て込んでてしばらく書けそうにありません
目処が立たない場合落とすことも視野にいれています

本当にごめんなさい
目処が立ったらまた来ます

舞ってる

全裸で待ってる。

定期的に報告に来てくれれば落ちないし安心できる
ところで絹旗は俺の嫁なんですがね

落とさなきゃそのうちくんだろ

というわけで保守をします

(^ω^)

私待つわ
いくらでも待つわ

(^ω^)←初春

(^ω^)←垣根

お久しぶりです>>1です
生活の目処がたたず、続けることが困難だと判断したため、HTML化依頼を出してきました
楽しみにしてくださった方、申し訳ありません

今までみてくださって本当にありがとうございます
また、時間ができたら、こんどこそ完結させて何処かにあげたいと思います

失礼します

乙。生きろ

乙でした
また続きが読める日が楽しみです

書き終えられないなら最初から書き始めるなks

>>481

黙れよ読者様

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