男「まっすぐ」 (13)
女「どこが変よ」
男「その、なんて言うの?方言がおかしい」
女「しゃあないやん、生まれて十年以上年向こうに住んどって、そこからわけも分からん都会に来てまったんやもん」
男「それでもさぁ、方言とか恥ずかしくねー?」
女「べっつにー、ウチあっちのが好きやもん」
男「そのエセ関西弁的なアレがムカつく」
女「ぶっ飛ばすぞ」
男「ごめんなさい」
女「確かに他所から来た人からは汚い方言ですねーとか、え?何それ?って言われる事も多いんやけどさ」
男「はぁ」
女「ムカつくとか知らんがな」
男「そうですか」
女「そうなんです」
男「今日はなんにします?」
女「オレンジジュース」
男「まいどありー」
女「言っとくけど金は払わんからな」
男「業務妨害しにきたんですかアンタは」
女「こんな寂れた喫茶店のどこが業務してんねん」
男「今!今してます!」
女「寂しい男やね」
男「こんな所にくる学生も随分と寂しいと思うんですけどね」
女「やかましいわくたばれ」
男「おお、怖い」
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女「あ、そういえばさー」
男「はいはい」
女「ここの休業日っていつなん?」
男「ん?気まぐれ」
女「はぁ?」
男「だって自営業ですし」
女「常連客とか困るやん、気まぐれとか」
男「………」
女「あ、ごめん、常連客なんておらんかったか」
男「痛い所を突いてくるなキミ……」
女「じゃあ日曜休みにしてや」
男「なんで?」
女「学校休みやもん」
男「それとこっちの休みに何が関係あるんで?」
女「……えーと……うーん……」
男「日曜は一番の稼ぎ時なんだよねー、モーニングのお客さんとかいるし」
女「………あーもうええわ!」
男「え?何?急にどうかした?」
女「うっさいボケ!こんな店二度と来るか!」カランカラーン
男「わけがわからない………」
女「……」カランカラン
男「お?」
女「オレンジジュース代じゃ持ってけボケ!!」
男「あ、どうもー」
女「ほなウチ帰る!」
男「あ、ちょっと待って」
女「……な、なんやねん……」
男「三十円足りない」
女「……」プルプル
女「乞食かお前!」
男「商売ですんで……あ!痛い、十円玉投げないで!」
女「アンタなんてモーニングの客に愛想振りまいとったらええんじゃタコー!!」カランカラーン
男「………わけがわからない」
女(……くううう!!!なんなんじゃあの鈍感野郎!気づけ!ボケ!!)
女(女が休みって言ったら、ちょっとぐらい察せや!)
女(あんな店二度と行くか!)
カランカラーン
男「いらっしゃーい……って、おお」
女「………も、モーニングセット……」
男「ありがとう、空いてる席座っててくれる?」
女(稼ぎ時って言っときながら客二、三人しかおらへんやんけ!!!空いとる席ばっかやし……)
男「お待たせしましたー、コーヒーとナポリタンです」カタカチャン
婆「はいどーも」
女(しかもナポリタンて、どう考えてもランチセットやんけやソレ!!)
オバチャン「あら珍しいね若い子なんて!」
女「……え?ウチ?」
オバチャン「いやん関西弁なんて可愛い!飴ちゃんあげる!!」
女「は、はぁ………」
男「お待たせしましたー、コーヒーとサバの味噌煮込みです」カタ
女(合わんやろサバ!!)
オバチャン「どうもー!いつ見てもイケてるわねマスター」
男「それだったらもうちょっと店にくる頻度多くして下さいよママさん」
女(ママさん?)
オバチャン「仕事明けでイケメンがいる店に行く、これほどの至福はないのよー。どう?こんなトコ閉めちゃってウチにこない?」
男「ゲイバーはちょっと……」
女(ゲイバー!!!?)
オバチャン「あら、ツレないのねん」クネ
女(すげぇ)
男「女ちゃんもうちょっと待っててね、すぐ持ってくから」
女「あ、はい」
女(なんだ、常連客っぽいのいるんやん……いや、別にちょっと売り上げに貢献したろうかな、とか、顔見に……とかやなくて、潰れたらわざわざ別の喫茶店探すの面倒なだけやし……)
オバチャン「あら?あなたもよく来るの?ここ」
女「まぁ、ぼちぼちですけど」
オバチャン「へぇ、惜しいわね。男だったらよかったのに」
女(何が惜しいねん!)
オバチャン「あ、もしかして……」
女「な、なんですか?」
オバチャン「マスター目当てで来てたり?」
女「はい?」
男「お待たせしましたー、コーヒーとホットサンドでーす」
女「!!」パクパク
男「どうかした?」
女「何でもないわ向こうで皿洗っとれ変態オールバック!!」
男「ええー、なにもしてないのに……」トボトボ
オバチャン「おほほ、素直じゃあないわねー」
女「う…うっさい………」カァ
女(………苦い)
女(備え付けの砂糖とミルク入れたけど、苦い)
女「………」
女(ホットサンドは、まぁまぁ美味しかった。うん、流石に失敗せんわな、あれぐらい)
女(色々料理も出来てたし、接客も出来てる……)
女(普通に仕事出来とるんやなぁ………)ボー
男「元気なさそうだな」
女「んー、元気やお……一応」
男「おお、でた方言」
女「何が?」
男「その”やお”って」
女「……ケンカ売っとるん?」
男「やだなーそんなわけないじゃん」
女「何しに来たん」
男「あー、これ、杏仁豆腐。今度からメニューに加えるから」カチャ
女「……金払わんよ」
男「酷い!……と言いたい所ですがー、サービスしといてやろう」
女「潰れてしまえ」
男「一応これ夢の舞台なんだからそういうのやめてあげて……」
女「でも、まぁ……ありがと」
男「ん、皿洗いしてくる」
女「……夢の舞台なぁ………」パク
女「あ、美味し…」
女「ほな、お金置いとくから」
男「あ、悪いな。すぐ行くー」
女「別にええわ。ちゃんと払ってくし、忙しそうやもん」
男「いやいやいや、これはしっかりしないと」
女「……」
男「おまたせ、ありがとうございましたー。またよろしく」ニコ
女「……これだけの為にわざわざ切り上げるんけ」
男「ん?」
女「気持ち悪い顔みせんな変態!こんな店、こんな店……んん……いや、また来るわ……」
男「珍しく素直だ……」
女「く……うっさい!!」カランカラーン
男「どうもー」
女(どうしてやねん……もうちょっと可愛らしく振る舞えんのけ、ウチは……)トボトボ
女「どないしたらええねん……」
友「女ちゃんおはよー」
女「あ、友……」
友「んん?いつも元気な関西娘がどうしちゃったの?」
女「あんさぁ……女性らしさってどうやったら身に付くん?」
友「女性らしさ?」
女「そっそ、ウチガサツやし、私服なんかも色気もなんもないでさー……」
友「恋か」
女「そんなトコや。難しいねん、女って」
友「ふんふん……」
女「ここの学校のじんは皆キラキラし過ぎやねん」
友「じん?」
女「じん」
友「?」
女「あ、ごめん、人ね、人らや」
友「ああ、なるへそ」
女「アカンねんなー…方言も全く抜けへんし、ふっつうの喋り方なんて背中ムズムズすんねん」
友「そういうのは女ちゃんらしさだと思うからそのままでいいと思うなぁ」
女「……そうなんかなぁ」
友「ただガサツって所は直した方がいいね。女捨ててるって思われたら終わりだよ」
女「なっ……」
友「あくまで男友達的な、友達としか見られない悲しい結末を迎えることになる……かも」
女「そ、それは嫌や!ウチやってちゃんと女なんや!」
友「ふふふ……だったらまず私が女ちゃんに化粧の仕方から伝授していこうじゃあーりませんか」
女「おお、なんや女神様っぽい!」
友「ふふ、崇めなさい、讃えなさい………」
女「後光が射してきたー!!」
友(……この謎のノリも封印させなきゃちょっとマズそう……)
女「なんかウチできる気がしてきたでー!!」
>>1お前は別スレだけかいとけ!
女「………」カランカラーン
男「いらっしゃーい、空いてる席にどうぞー」
女「…………」ドキドキ
男「ん?女ちゃん?」
女「よ、よっす…」ペコ
男「すっげー、なんか気合い入っちゃってんじゃん」
女「まぁな、結構頑張ったでさ」
男「お、もしかして……これからデートだったり?隅に置けないなぁこのヤロー」
女「はぁ?別にそんなんちゃうわ」
男「ふーん……今日はオレンジジュース?」
女「いや、今日はコーラの気分」
男「かしこまりましたー」
女「……」
女(デートでもなんでもない女がこんな格好で来るかアホー!!!)
女(なんやねんこのヒラヒラ!なんやこのゆるフワウェーブ!!なんなんやねんこの羽ばたけそうなまつげは!!!!)
女「……っけー、ちょっと気合い入れてみたで、来てみたら普通の反応け」
女(ちょっとぐらい可愛いとかなんかねーんかい!)
女「………」
女(可愛くもない女が頑張った所で無駄か……)
女(うああああああああああああああ)
男「はい、お待たせしました」コト
女「ありがと」
男「髪とかも結構変わったんだね、可愛いじゃん」
女(か……)
女「別にそんなんちゃうし、あっち行け変態、仕事戻れ」
男「お客さんとコミュニケーション取るのも仕事のうちだからいいんだよ」カタ
女(あっち行ってやホンマに!!顔あっついねん!!)
女「そんなこと言って可愛い学生にちょっとときめいとるんじゃないの?」
男「はずれではない」
女「は、ホンマに?」
男「ホンマでっせー」
女「ま、バカ真似すんなアホ!やっぱあっち行け!!」
男「デザートなんか食べる?」
女「話逸らすなやコラ」
>>6すいません> <
スレ間違い
申し訳ない
ちなみに支援
女(ウチが可愛いやってよ~、どうやねん!ウチやって頑張ったらちゃんと女の子出来るんや~)テレテレ
女(アカン、アイツが三割増で格好良く見える……いややぁもう)クネクネ
女(甘い!甘々やお!気分ええなぁ、デザートなんなんやろ)
カランカラーン
男「いらっしゃーい、空いてる席へどうぞー」カチャカチャ
女(おおお、えらい綺麗な女性ですやん……小柄やけども色気出てるわー)
小柄「………」テクテク
女(いやいやいや、なんのギャグやねん。確かにそこカウンターやけどもレジカウンターや!)
小柄「……」チリンチリーン
男「少々お待ちくださーい」タッタ
男「……げっ」
女「げ?」
小柄「久しぶりに会ったのに、げ、はないんじゃないですか?男くん」
女「…………」
女(知り合い!!?)
男「何しに来たんだよ……とりあえず席座って、仕事中だから」スタスタ
小柄「ふふ……はーい」
女(気になる!めっちゃ気になるあの二人の関係!!)
女(おそらく、彼氏彼女の関係だったに違いない………うぐ…自分で考えててダメージが……)ゲンナリ
男「お待たせしましたー、デザートの特製パフェでーす」カタ
女「おお!ヤバいめっちゃスゴい!!この店こんなシャレたもんも出せるんか」
男「まぁ一応喫茶店なんで」
女「なぁなぁ」コソ
男「ん?」
女「あれ、彼女?」
男「…………会社の、同僚…だった」
女「なんやねーんその間、いかにも図星ですよーみたいな反応やんねー」コソ
女(と言いながらも彼氏彼女とかじゃなくてちょっと浮かれてるんですけどね)
男「はぁ…とりあえずその話はまた今度にして、今話し込んでるとマズい」
小柄「……………」ギリギリギリギリギリギリ
女「はぁ?何を言うとんの?ええやんええやんちょっとぐらいやでさー」
男「マジで後にして。頼むから」スタスタ
女「…………けー、つまらんのー」
小柄「………誰だあのメス」ボソ
女「?」
男「お待たせしました、ご注文をどうぞ」
小柄「ふふ、えへ、えへへ……それじゃあ私、男くんで」
女(はぁ?)
男「メニューにあるものでお願いしますー」
小柄「ずっとずっとずぅっと、会社やめちゃった男くんのこと探してたんですよ。昨日ようやく部長さんがオシえてくれたんですよ、優しいですよね。あ、でも私は男くんしか見てないので大丈夫ですよ?えへ、ふふ、ふふふふっ」
男「いい加減にしてくれよ」
小柄「こんな所で、こんなお店やってたらダメじゃないですか……」
小柄「男くんが、他の人に見られちゃう」
女(なんやねんコイツ)
小柄「私たち、一緒にいるんだもんね。男くんが仕事なんてしなくていいように、私ががんばるから、ね?」
男「断る。この店は俺の夢だし、邪魔されたくない」
小柄「それでもいいけど……お客さん、入れたら困っちゃうなぁ」
女「いい加減にしやーの、店員さん困ってるで?」
小柄「………」
小柄「……それでね、男くん」
女(無視かいな!!)
男「客じゃあないなら帰ってくれ。仕事中だ」
小柄「……あなた、ちょっと邪魔かな……えへへ……帰って?」
男「客を帰そうとすんなよ……」
小柄「コレが飲食した分は私が払うからいいですよ?」
男「そういう問題じゃあなくてさ……」
女「あーもーズケズケとなんやねんアンタは!業務妨害で訴えられるで?」
小柄「………」
女「仕事中って分かるやろ?大人やんけアンタ」
男「おい、ちょっと」
女「客でもない他人にウチがギャーギャー言われる筋合いなんてあらへんわ!」
小柄「あなたは、何ですか?」
女「いやウチが聞きたいわ」
小柄「邪魔な客って、嫌ですよね、ふふふ」
女(邪魔な客?誰や?)キョロキョロ
小柄「……」
女「いやウチかーい!」
男「もうやめとけ」ガシ
女「そやそやー!ってなんでウチの手ぇ掴んどんねんっ、逆やろ」
男「コイツに目をつけられると面倒なんだよ。もう今日は帰った方がいい」コソ
女「確かに面倒そうやけどさ」コソ
男「な、だからやめとけ」コソコソ
小柄(このクソガキ…私の男くんと何喋ってやがる……)ギロ
女(コイツにつきまとわれたら、男さん絶対押し負けるやん………なんとかせな……どないしよ……)
女「……」ピーン
女「じ、実は男さんとウチ付き合ってるんよー!アンタの付け入る隙なんてないからはよ帰れー!」
男「はぁ!?」
小柄「……」ビキ
小柄「………ふふ……」ニィ
女「!」ゾク
小柄「帰りますね。ふふ、えへへっ……男くん、待っててね。それじゃ」
カランカラーン
女「……」
男「……あー……」
女「なんかめっちゃ怖い目しとったんやけど……」
男「なんて面倒な事してくれたんだよ……」
女「やってしゃあないやん!ああしいへんと……」
男「だからってあんな真似することないだろ」
女「ああしいへんと取られるやん…」ボソ
男「なにって?」
女「なんでもないわアホ!」
男「アホはお前だよ……」
女「ズバッと言わんから付き纏われるんや!へたれ!」
男「そりゃ言おうとしたし、ちゃんと断ってただろ?」
女「ああいうのは完膚なきまでに叩きのめしとくべきやんね」
男「それより……これからは帰り道とか気をつけた方がいいよ」
女「なんで?」
男「小柄は……俺に関わる親しそうな人間をとことん追い込むようなヤツなんだ」
女「そんな犯罪やん」
男「だから怖いんだよ、アイツは………」
女「それこそ訴えたればええやん」
男「訴えられないぐらい追い込まれるんだよ、俺も口出し出来ないぐらいに追い込まれた事もあるし……」
女「なんてヤツやねん……」
しえん
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